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技術 正極活物質の製造方法およびリチウム二次電池の製造方法

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 山村英行
出願日 2007年10月3日 (11年9ヶ月経過) 出願番号 2007-259741
公開日 2009年4月23日 (10年2ヶ月経過) 公開番号 2009-087891
状態 未査定
技術分野 電池の電極及び活物質
主要キーワード ペースト密度 フッ素系被膜 圧粉抵抗 金属リン化物 楕円球 ハンドプレス 物理力 窒化ケイ素製
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2009年4月23日)のものです。
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図面 (4)

課題

本発明は、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を形成することが可能である正極活物質を提供することを主目的とするものである。

解決手段

本発明は、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、上記SiO(2−x)被覆工程で得られた上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有することを特徴とするフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。

概要

背景

パソコンビデオカメラ携帯電話等の小型化に伴い、情報関連機器通信機器の分野では、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であるという理由から、リチウム二次電池が実用化され広く普及するにいたっている。また一方、自動車の分野においても、環境問題資源問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウム二次電池が検討されている。

しかしながら、現在市販されているリチウム二次電池は、有機溶剤溶媒とする有機電解液が使用されている。このようなリチウム二次電池においては、正極活物質電解質液とが接触して反応するため、充放電を繰り返すと、正極活物質、および電解質液の両者が劣化していき、充電放電する電気量が減少し、サイクル特性が低下してしまうという問題があった。

そこで、このようなリチウム二次電池の耐久性、サイクル特性を向上させるために、例えば、特許文献1においては、SiO2等で表面被覆されたLiMnO系正極活物質が開示されている。これは、正極活物質の最表面をSiO2等で表面被覆することにより、活物質粒子電解液との反応性を抑制する事ができるものである。しかしながら、絶縁性であるSiO2を被覆することにより、活物質表面での電子伝導パス阻害されて電子伝導性が悪化する。このことに起因して電池内部抵抗が上昇するとともに、放電時の正極内でのリチウムイオン挿入脱離が困難となったり、リチウムイオンの移動が困難となったりして、リチウム二次電池の負荷特性が低下するという問題があった。

特開2005−78800号公報
特開2004−192896号公報
特開2006−202678号公報
特許3157413号公報
特許3340515号公報

概要

本発明は、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を形成することが可能である正極活物質を提供することを主目的とするものである。本発明は、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、上記SiO(2−x)被覆工程で得られた上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有することを特徴とするフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。

目的

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を形成することが可能である正極活物質を提供することを主目的とするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、前記SiO(2−x)被覆工程で得られた前記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有することを特徴とするフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法。

請求項2

前記正極活物質が一般式LiyMOz(式中のMは、主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、V、Feの少なくとも一種を含む。また、式中のy、zの値の範囲はy=0.02〜2.2、z=1.4〜3である。)で表される正極活物質であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法。

請求項3

請求項1または請求項2に記載のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いて正極電極体を形成する正極電極体形成工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。

技術分野

0001

本発明はリチウム二次電池、特にサイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を形成するために用いられる正極活物質の製造方法に関する。

背景技術

0002

パソコンビデオカメラ携帯電話等の小型化に伴い、情報関連機器通信機器の分野では、これらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であるという理由から、リチウム二次電池が実用化され広く普及するにいたっている。また一方、自動車の分野においても、環境問題資源問題から電気自動車の開発が急がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウム二次電池が検討されている。

0003

しかしながら、現在市販されているリチウム二次電池は、有機溶剤溶媒とする有機電解液が使用されている。このようなリチウム二次電池においては、正極活物質と電解質液とが接触して反応するため、充放電を繰り返すと、正極活物質、および電解質液の両者が劣化していき、充電放電する電気量が減少し、サイクル特性が低下してしまうという問題があった。

0004

そこで、このようなリチウム二次電池の耐久性、サイクル特性を向上させるために、例えば、特許文献1においては、SiO2等で表面被覆されたLiMnO系正極活物質が開示されている。これは、正極活物質の最表面をSiO2等で表面被覆することにより、活物質粒子電解液との反応性を抑制する事ができるものである。しかしながら、絶縁性であるSiO2を被覆することにより、活物質表面での電子伝導パス阻害されて電子伝導性が悪化する。このことに起因して電池内部抵抗が上昇するとともに、放電時の正極内でのリチウムイオン挿入脱離が困難となったり、リチウムイオンの移動が困難となったりして、リチウム二次電池の負荷特性が低下するという問題があった。

0005

特開2005−78800号公報
特開2004−192896号公報
特開2006−202678号公報
特許3157413号公報
特許3340515号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を形成することが可能である正極活物質を提供することを主目的とするものである。

課題を解決するための手段

0007

上記目的を達成するために、本発明においては、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、上記SiO(2−x)被覆工程で得られた上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有することを特徴とするフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法を提供する。

0008

本発明によれば、正極活物質表面に被覆されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、ならびにシリコンおよび酸素からなる成分(Si−O)とが電解液等との反応による正極活物質等の劣化を抑制してサイクル特性を向上させ、さらにフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、酸素(O)、ならびにフッ素およびシリコンからなる成分(F−Si)とが電子伝導のパスとなるなどして、電子伝導性を向上させて電池の内部抵抗等を小さくするとともに、リチウムイオン伝導が充分に行われ、負荷特性を向上させたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができる。

0009

上記発明においては、上記正極活物質が一般式LiyMOz(式中のMは、主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、V、Feの少なくとも一種を含む。また、式中のy、zの値の範囲はy=0.02〜2.2、z=1.4〜3である。)で表される正極活物質であることが好ましい。一般的で、汎用性に優れているからである。

0010

また、本発明においては、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いて正極電極体を形成する正極電極体形成工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法を提供する。

0011

本発明によれば、上記のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法により得られたサイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたリチウム二次電池を得ることができる。

発明の効果

0012

本発明においては、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させた正極活物質を得ることができるという効果を奏する。

発明を実施するための最良の形態

0013

本発明のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法およびリチウム二次電池の製造方法について、以下詳細に説明する。

0014

A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法
まず、本発明のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法は、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、上記SiO(2−x)被覆工程で得られた上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有することを特徴とするものである。

0015

本発明によれば、正極活物質表面に被覆されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、ならびにシリコンおよび酸素からなる成分(Si−O)とが電解液等との反応による正極活物質、および電解液等の劣化を抑制してサイクル特性を向上させる。
さらにフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、酸素(O)、ならびにフッ素およびシリコンからなる成分(F−Si)とが電子伝導のパスとなったり、電子伝導性を向上させる非晶質構造を形成したりする等して、電子伝導性を向上させて電池の内部抵抗等を小さくするとともに、リチウムイオン伝導が充分に行われ、負荷特性を向上させたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができる。

0016

このような本発明のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法としては、具体的には次のような工程を経ることにより、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができる。
例えば、まず、SiO(2−x)被覆工程によって、正極活物質とSiO(2−x)とを、遊星ボールミル等を用いて機械的に物理力をかけながら混合するなどして、図1(a)に例示する模式的な概略断面図で示すように、正極活物質1表面にSiO(2−x)被膜2が付着したSiO(2−x)被覆正極活物質3を得る。

0017

そして、上記SiO(2−x)被覆工程の後、フッ素処理工程が行われる。上記フッ素処理工程においては、例えばフッ素ガスに所定の時間さらすなどして、正極活物質表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成して、図1(b)の模式的な概略断面図で例示するように正極活物質1表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層4が形成されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質5を得るといった方法である。

0018

上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の機能については、明確ではないが、次のようなことが推論される。
すなわち、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質においては、正極活物質表面にSiO(2−x)が被覆された上記SiO(2−x)被膜をフッ素ガスに晒してフッ素処理することにより、SiがSiF4として揮発するとともに、正極活物質の表面部分の非晶質構造内部にフッ素(F)、酸素(O)、およびSiF4として揮発しきれなかった微量のシリコン(Si)がSi−O結合を作るなどして導入される。
この非晶質構造内部に導入されたF、ならびにSiおよびOからなる例えばSi−O結合とが電解液等との反応による正極活物質、および電解液等の劣化を抑制してサイクル特性を向上させる。
また、非晶質構造内部に導入された上記Fおよび上記Oが、電子伝導のパスとなり、電子伝導性を向上させて電池の内部抵抗等を小さくするとともに、リチウムイオン伝導性を向上させることができる。また、FおよびSiが上記非晶質構造内部に存在していることで、上記非晶質構造が電子伝導性、およびリチウムイオン伝導性をより向上することのできる構造となり、電子伝導性、およびリチウムイオン伝導性を効果的に向上することができる。したがって、負荷特性が向上する。
このため、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させることができるのである。

0019

このようなフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法においては、少なくとも、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成するSiO(2−x)被覆工程と、上記SiO(2−x)被覆工程で得られた上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理することにより、正極活物質表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理工程と、を有する製造方法であれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法における各工程について詳細に説明する。

0020

1.SiO(2−x)被覆工程
まず、本発明におけるSiO(2−x)被覆工程について説明する。本発明におけるSiO(2−x)被覆工程とは、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成してSiO(2−x)被覆正極活物質を得る工程である。

0021

本工程を経ることにより、例えば、上述した図1(a)の模式的な概略断面図に例示するように、正極活物質1表面にSiO(2−x)被膜2が付着したSiO(2−x)被覆正極活物質3を得ることができる。

0022

本工程において、正極活物質表面にSiO(2−x)を被覆して、SiO(2−x)被膜を形成する方法としては、上記正極活物質表面にSiO(2−x)被膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、機械的に付着する方法、CVD、およびPVD等のドライコーティング法ゾルゲル法などの溶液法等を挙げることができる。中でも本発明においては、機械的に付着する方法が好ましい。上記SiO(2−x)被膜を上記正極活物質表面全面に、むらがなく均一に形成することができるからである。上記機械的に付着する方法としては、例えば、遊星ボールミル、ビーズミルメカノフュージョン等の方法を挙げることができる。

0023

上記ボールミルを用いる場合は、例えば、所定のポット中に、所定のボール、上記正極活物質、および上記SiO(2−x)を添加して、所定の回転数、および所定の時間でボールミルを行う。このようなボールミル条件としては、正極活物質表面に、後述するような所望の量のSiO(2−x)を被覆することができる条件であれば特に限定されるものではない。

0024

具体的には、上記ポットに用いられる材料としては、例えば、ジルコニアアルミナ窒化ケイ素等を挙げることができ、中でも、窒化ケイ素が好ましい。削れにくく、削れることによる不純物混入が抑制されるためである。
また、上記ボールに用いられる材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素等を挙げることができ、中でも、窒化ケイ素が好ましい。削れにくく、削れることによる不純物混入が抑制されるためである。

0025

また、上記回転数としては、例えば、50〜500rpmの範囲内、中でも、100〜300rpmの範囲内であることが好ましい。
上記ボールミルする時間としては、例えば、1〜50時間の範囲内、中でも、1〜20時間の範囲内、特に、1〜4時間の範囲内であることが好ましい。ボールミルする時間が短すぎると、SiO(2−x)の被覆量が不十分なものとなるおそれがある。一方、ボールミルする時間が長すぎると活物質が割れるなどして劣化するおそれがあるからである。

0026

なお、本工程における上記ドライコーティング法とは、真空を用いたコーティング方法を示すものであり、具体的には、上述したCVD、およびスパッタ蒸着等のPVDを含む概念である。この方法は、主に金属や無機酸化物コーティングする場合に使用される。
また、上記溶液法とは、目的物質元素を含む原料溶液から出発して分解や重合などの反応を利用する方法である。利用する反応によってゾルゲル法クエン酸重合法などに分類される。比較的低温で目的物質を合成できるので省エネルギーの材料合成法である。

0027

本工程に用いられる上記SiO(2−x)は、上記正極活物質表面に被覆する珪素酸化物であり、通常、0≦x≦1である。また、具体的な上記SiO(2−x)としては、例えば、SiO2粉末SiO粉末等を挙げることができる。

0028

本工程において、正極活物質表面に被覆されるSiO(2−x)の被覆量としては、上記正極活物質表面に対するSiO(2−x)の被覆量を充分なものとすることができ、後述するフッ素処理を行った後に、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を得ることができる程度であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、上記正極活物質に対する質量百分率が例えば5〜10wt%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、SiO(2−x)の被覆量を充分なものとすることができなくなり、後述するフッ素処理を行った後において、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させることが可能なフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を得ることができないおそれがある。一方、上記範囲より多いと、SiO(2−x)が過剰となり、正極活物質表面に被覆されるものの他に、例えばSiO2の凝集体等が形成されてしまう。このようなSiO2の凝集体等が電池内に存在すると、容量が低下してしまうおそれがある。また、上記SiO2の凝集体等がリチウムイオンを取り込むなどしてリチウム二次電池としての可逆性がなくなり、サイクル特性が低下するおそれがあるからである。

0029

また、本工程に用いられる、上記正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出することができる正極活物質であれば特に限定されるものではない。例えば、Liを含有する金属酸化物、Liおよび酸素を含有する金属リン化物、Liおよび酸素を含有する金属ホウ化物等を挙げることができる。中でも、一般式LiyMOz(式中のMは、主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、V、Feの少なくとも一種を含む。また、式中のy、zの値の範囲はy=0.02〜2.2、z=1.4〜3である。)で表される正極活物質であることが好ましい。一般的で、汎用性に優れており、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させた所望の上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質をより確実に得ることができるからである。

0030

上記正極活物質の形状としては、上記SiO(2−x)を被覆することができる形状であれば、特に限定されるものではないが、例えば球状、楕円球等を挙げることができ、通常球状である。上記正極活物質の平均粒径としては、例えば2μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。

0031

本発明において、上記正極活物質の形状、平均粒径は電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。

0032

なお、本発明において、上記正極活物質表面に、SiO(2−x)被膜が形成されているかどうかは、電子顕微鏡により確認することができる。

0033

2.フッ素処理工程
次に、本発明におけるフッ素処理工程について説明する。本発明におけるフッ素処理工程とは、上記SiO(2−x)被膜をフッ素処理して正極活物質表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成し、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得る工程である。

0034

本工程を経ることにより、正極活物質をフッ素処理して正極活物質表面にフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層が形成されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができる。これは以下の理由によるものと推定することができる。すなわち、正極活物質表面にSiO(2−x)が被覆された上記SiO(2−x)被膜をフッ素ガスに晒してフッ素処理することにより、上記SiO(2−x)被膜中の大部分のSiが、SiF4として揮発する。これとともにSiO(2−x)被膜中にFが導入される。これにより、正極活物質の表面部分にフッ素(F)、酸素(O)、および揮発しきれなかった微量のシリコン(Si)に起因したSi−O結合等からなる非晶質構造が形成される。このため、図1(b)の模式的な概略断面図で例示するように正極活物質1表面にフッ素、酸素、およびシリコンを含むフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層4が形成されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質5を得ることができる。

0035

本工程において、フッ素処理する方法としては、上記正極活物質表面にフッ素系被膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、F2ガスやNF3ガス等の熱分解ガスにより処理する方法、所定の正極活物質と炭酸リチウムとを混合し、所定の量のフッ化水素を含有する電解液を用いて、炭酸リチウムと電解液中のフッ化水素を反応させてフッ素処理する方法、正極活物質を合成する際にLiFを原料に混合させて焼成するなどしてフッ素を所定の量、含有させて、フッ素処理する方法等を挙げることができる。中でもF2ガスを用いる方法によりフッ素処理する方法が好ましい。一般的で汎用性があり、F2ガスの活性が高く、比較的低温で短時間に処理ができ、製造コストも抑えられるからである。

0036

本工程において、フッ素処理する際のフッ素処理の程度としては、上記正極活物質表面のSiO(2−x)被膜中にフッ素を導入することができ、サイクル特性が向上し、かつ負荷特性が向上した、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができる程度であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、少なくとも、上記SiO(2−x)被膜に起因するSiが残存する程度のフッ素処理であればよい。
また、上記フッ素処理の程度は、処理ガスガス分圧処理温度、処理時間を調整することにより、任意に制御することができる。

0037

上記処理ガスがフッ素ガスである場合の処理ガス中フッ素ガス分圧としては、例えば、5%以上であることが好ましい。フッ素ガス分圧を上記範囲とすることで、正極活物質表面のSiO(2−x)被膜中にフッ素を導入することができ、サイクル特性が向上し、かつ負荷特性が向上した、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができるからである。

0038

また、上記処理ガスがフッ素ガスである場合、フッ素ガスを注入した後の処理温度としては通常、常温以上であることが好ましい。正極活物質表面に対するフッ素処理を速やかに進行させ完結させることができるからである。

0039

また、上記処理ガスがフッ素ガスである場合、フッ素ガスを注入した後の処理時間としては例えば5分以上、中でも5〜10分の範囲内であることが好ましい。処理時間が短すぎると正極活物質表面のSiO(2−x)被膜中にフッ素を導入することが困難になるおそれがある。一方、処理時間が長すぎると、上記SiO(2−x)被膜に起因するSiが残存することができなくなり、所望のフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を得ることができないおそれがあるからである。

0040

なお、本発明において、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層が正極活物質表面に被覆されているかどうかは、オージェ電子分光法AES)などの表面分析により確認することができる。

0041

上記正極活物質については、上述した「1.SiO(2−x)被覆工程」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。

0042

3.その他工程
本発明においては、本発明に必須の上記SiO(2−x)被覆工程、上記フッ素処理工程の他に、必要に応じて、上記フッ素処理工程の後に、真空保持工程等を有していても良い。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)真空保持工程
上記真空保持工程とは、上記フッ素処理工程により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を真空で保持する工程である。
本工程を経ることにより、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素を、正極活物質と、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層との界面付近まで充分に導入することができる。より具体的には、例えば、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を真空中で、所定の時間保持する方法等を挙げることができる。

0043

4.用途
本発明により得られるフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム二次電池に用いられる正極活物質等として、用いることができる。中でも自動車用のリチウム二次電池に用いられる正極活物質として用いることが好ましい。

0044

B.リチウム二次電池の製造方法
次に、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、上記「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いて正極電極体を形成する正極電極体形成工程を有することを特徴とする製造方法である。例えば、次のような工程を経ることにより、リチウム二次電池を得ることができる。
まず、上記「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いて、正極層正極集電体上に形成し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を形成する正極電極体形成工程を行う。
次に、負極層を負極集電体上に形成し、上記負極層と上記負極集電体とからなる負極電極体を形成する負極電極体形成工程を行う。
その後、所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように上記正極電極体と上記負極電極体とを設置する。さらに、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とにより挟持させたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を行うことにより、上述した所望のリチウム二次電池を得ることができる。
なお、上記正極電極体形成工程、上記負極電極体形成工程は、同時に行ってもよく、上記負極電極体形成工程を行った後、上記正極電極体形成工程を行ってもよい。

0045

本発明によれば、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法により得られたサイクル特性を向上させることが可能であり、かつ負荷特性を向上させたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いることにより、サイクル特性を向上させ、かつ負荷特性を向上させることができるリチウム二次電池を得ることができる。
次に、本発明により得られるリチウム二次電池について、図面を用いて説明する。図2は、本発明により得られるリチウム二次電池電極体の一例を模式的に示す概略断面図である。図2に示されるリチウム二次電池電極体は、正極集電体6、およびフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質(図示せず)を含有する正極層7、からなる正極電極体8と、負極集電体9、および負極活物質(図示せず)を含有する負極層10、からなる負極電極体11と、正極電極体8および負極電極体11の間に配置されたセパレータ12と、正極層7、負極層10、およびセパレータ12に充填されたリチウム塩を含有する電解質(図示せず)とを有するものである。通常、上記リチウム二次電池電極体を電池ケースに挿入し、その周囲を封口してリチウム二次電池を得ることができる。

0046

このような本発明のリチウム二次電池の製造方法においては、少なくとも上記正極電極体形成工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していてもよい。
以下、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。

0047

1.正極電極体形成工程
本発明における正極電極体形成工程とは、上述した「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を用いて、正極層を正極集電体上に形成し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を形成する工程である。具体的な方法としては、上述した「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を有する正極層が正極集電体上に形成された正極電極体を形成できる方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、所定の結着材を所定の溶剤に溶解して溶液を得た後、上記溶液中に、「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質と所定の導電化剤とを導入し、均一に混錬して正極層用ペーストを形成する。上記正極層用ペーストを所定の正極集電体上に片面塗布し、その後乾燥し、プレス等した後、所定の大きさに切り出すなどして正極電極体を形成する。これを、後述するセパレータの一方に設置する等の方法を挙げることができる。

0048

本発明に用いられる上記正極電極体は、少なくとも正極集電体と、上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を含有する正極層と電解質とからなるものである。
上記フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質については、上述した「A.フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の製造方法」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。

0049

上記正極層は、通常、導電化材および結着材を含有する。上記導電化材としては、例えば、カーボンブラックアセチレンブラック等を挙げることができる。上記結着材としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。

0050

上記正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウムおよびSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。

0051

また、本工程に用いられる上記溶剤としては、所望の上記正極層用ペーストを得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばn−メチルピロリドン等を挙げることができる。

0052

2.その他の工程
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、少なくとも上記正極電極体形成工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記正極電極体形成工程の他に、負極層と負極集電体とからなる負極電極体を形成する負極電極体形成工程、および所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように、上記正極電極体と上記負極電極体とを設置し、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とで挟持されたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を有する。これらの工程については、一般的なリチウム二次電池における工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。

0053

次に、上記負極電極体形成工程、上記電池組立工程において用いられる負極電極体、セパレータ、電解質、および電池ケース等について説明する。
本発明に用いられる上記負極電極体は、少なくとも負極集電体と、負極活物質を含有する負極層と電解質とからなるものである。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属リチウムリチウム合金、金属酸化物、金属硫化物金属窒化物、およびグラファイト等の炭素系材料を挙げることができる。中でもグラファイトが好ましい。

0054

上記負極層は、必要に応じて、導電化材および結着材を含有していても良い。導電化材および結着材については、上記正極層と同様のものを用いることができる。

0055

また、上記負極集電体とは、上記負極層の集電を行うものである。上記負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。さらに、上記負極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。

0056

本発明に用いられる上記セパレータは、正極層および負極層の間に配置され、後述する電解質を保持する機能を有するものである。
上記セパレータの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルセルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であってもよい。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータが、多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。

0057

本発明により得られるリチウム二次電池においては、上述した正極層、負極層、およびセパレータ内に、通常、リチウム塩を含有する電解質を有する。
上記電解質は、具体的には、液状であっても良く、ゲル状であっても良く、所望の電池の種類に応じて適宜選択することができるが、中でも液状が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。
上記電解質が液状の場合は、非水電解液が好ましい。リチウムイオン伝導性が、さらに良好となるからである。上記非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を有する。上記リチウム塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではないが、例えばLiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3およびLiClO4等を挙げることができる。一方、上記非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネートエチレンカーボネートジエチルカーボネートジメチルカーボネートエチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンアセトニトリルプロピオニトリルテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランジオキサン、1,3−ジオキソランニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルスルホキシドスルホランγ−ブチロラクトン等が挙げられる。本発明においては、これらの非水溶媒を一種のみ用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、上記非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。

0058

また、本発明により得られるリチウム二次電池は、通常、図2で例示されるようなリチウム二次電池電極体を、電池ケースに挿入し、その周囲を封口して形成される。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述したセパレータ、正極層、負極層等を収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型ラミネート型等を挙げることができる。

0059

3.用途
本発明により得られるリチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用のリチウム二次電池等として、用いることができる。

0060

なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

0061

以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。

0062

[実施例]
(SiO(2−x)被覆正極活物質形成)
正極活物質(LiCoO2)と、SiO(高純度化学社製、300mesh)とを、それぞれ10gずつ、窒化ケイ素製のポット中に、窒化ケイ素製のボールと共に挿入し、250rpmで10時間遊星ボールミル処理を行い、正極活物質(LiCoO2)表面に、SiO(2−x)を被覆させ、SiO(2−x)被覆LiCoO2を得た。

0063

(フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質形成)
SiO(2−x)被覆正極活物質形成で得られたSiO(2−x)被覆正極活物質を密閉容器封入して脱気した後、フッ素(F2)ガス(フッ素ガス分圧5%)を注入し、10分間保持して、正極活物質(LiCoO2)表面にフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層を形成するフッ素処理を行い、その後、30分真空に保持して、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2を得た。

0064

(負荷特性評価サンプル形成)
フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質形成で得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2とアセチレンブラック(電気化学工業社製)と結着材とが質量比で、87:10:3となるように混合し、負荷特性(圧粉抵抗)評価サンプルを得た。

0065

(正極電極体形成)
結着材であるPVdfを5%溶解させた溶剤NMP溶液3.45mL中に、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質形成で得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2粉末5.0gと導電化材であるアセチレンブラック0.57gを添加し、均一に混合するまで混錬し正極層用ペーストを形成した。
正極層用ペーストを厚さ15μmのAl集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで正極電極体を形成した。電極目付量は6.4mg/cm2であった。
この正極電極体をプレスし、正極層用ペースト厚さ30μm、正極層用ペースト密度2.4g/cm3とした。
その後、この正極電極体をΦ20mmとなるように切り出して正極電極体を得た。

0066

(負極電極体形成)
LiメタルをΦ19mmとなるように切り出して、負極電極体を得た。

0067

コインセル形成)
上記正極および負極、セパレータとしてPE製セパレータを用いて、CR2032型コインセルを形成した。電解液は、EC、DMCを体積比率で3:7で混合したものに、支持塩としてLiPF6を濃度1mol/L溶解させたものを用いた。

0068

[比較例1]
正極活物質として、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2の代わりに、SiO(2−x)被覆、フッ素処理のいずれも行っていないLiCoO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして負荷特性(圧粉抵抗)評価サンプル、およびコインセルを形成した。

0069

[比較例2]
正極活物質として、フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2の代わりに、SiO(2−x)被覆を行わず、実施例に示される条件と同様のフッ素処理のみ行ったフッ素被覆LiCoO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして負荷特性(圧粉抵抗)評価サンプル、およびコインセルを形成した。

0070

[評価]
(負荷特性評価)
実施例、比較例1、および比較例2で得られた負荷特性(圧粉抵抗)評価サンプルをそれぞれ0.5g量し、これを圧粉抵抗測定セル中に設置した。次に、ハンドプレスを用いて150kgf/cm2でプレスして、その時の抵抗を、テスターにより測定した。得られた結果を表1に示す。
サイクル試験
実施例、比較例1、および比較例2で得られたコインセルを用いて、サイクル特性について試験を行った。サイクル特性は、対Li電位が0.01〜1.5V、25℃-1/2Cで10サイクルのサイクル試験を実施した。初期放電容量を1として、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。得られた結果を図3に示す。

0071

0072

表1に示すように、負荷特性(圧粉抵抗)は、SiO(2−x)被覆後、フッ素処理を行った実施例では69(10C/1C %)となり、SiO(2−x)被覆、フッ素処理のいずれも行っていない比較例1においては65(10C/1C %)、フッ素処理のみ行った比較例2においては72(10C/1C %)となり、実施例は、比較例1よりも若干大きく、比較例2より抵抗は小さくなった。このことから、実施例においては、SiO(2−x)被覆後、フッ素処理することにより、LiCoO2活物質表面にフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層が形成されて、フッ素(F)、酸素(O)、およびFとSiとからなる成分(F−Si)が電子伝導のパスとなる等して、電子伝導性を向上させて電池の内部抵抗等を小さくするとともに、リチウムイオン伝導が充分に行うことのできるフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆LiCoO2が得られたことが確認された。

0073

また、図3サイクル試験結果に示すように、100サイクル後の放電容量維持率は、SiO(2−x)被覆後、フッ素処理を行った実施例では87%、SiO(2−x)被覆、フッ素処理のいずれも行っていない比較例1では77%、フッ素処理のみ行った比較例2では93%となり、実施例は比較例1よりも大きい値となり、比較例2に比べて若干小さい値となったが、良好なサイクル特性を示した。

0074

以上の結果から、実施例においては、正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO2)表面に被覆されたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、ならびにシリコンおよび酸素からなる成分(Si−O)とが電解液等との反応による正極活物質、および電解液等の劣化を抑制してサイクル特性を向上させ、さらにフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層中のフッ素(F)、酸素(O)、ならびにフッ素およびシリコンからなる成分(F−Si)とが電子伝導性を向上させて電池の内部抵抗等を小さくするとともに、リチウムイオン伝導が充分に行われ、負荷特性を向上させた正極活物質、およびリチウム二次電池を得ることができた。

図面の簡単な説明

0075

本発明におけるSiO(2−x)被覆正極活物質、および本発明により得られるフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質の一例を示す模式的な概略断面図である。
本発明におけるリチウム二次電池電極体の一例を模式的に示す概略断面図である。
実施例、比較例1、および比較例2で得られたコインセルの放電容量維持率のサイクル数に対する変化を示すグラフである。

符号の説明

0076

1 …正極活物質
2 … SiO(2−x)被膜
3 … SiO(2−x)被覆正極活物質
4 …フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層
5 … フッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質
6 …正極集電体
7 … 本発明により得られたフッ素−酸素−シリコン含有非晶質層被覆正極活物質を含有する正極層
8 …正極電極体
9 …負極集電体
10 … 負極層
11 …負極電極体
12 … セパレータ

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