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技術 糖脂質または糖脂質類似化合物の分離または精製方法

出願人 株式会社カネカ
発明者 加藤智久
出願日 2008年1月30日 (12年0ヶ月経過) 出願番号 2008-019268
公開日 2009年2月5日 (11年0ヶ月経過) 公開番号 2009-023988
状態 拒絶査定
技術分野 糖類化合物
主要キーワード 速度層 CPC装置 コイル状チューブ 分配セル セルディスク 下降法 液液分配クロマトグラフィ 樹脂母体
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2009年2月5日)のものです。
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図面 (10)

課題

動物細胞植物細胞酵母由来糖脂質または糖脂質類似化合物を含有する試料から、糖脂質または糖脂質類似化合物を種類別に効率的に分離・精製する方法を提供する。

解決手段

液液分配クロマトグラフィを用い、二相溶媒系を特定の溶媒から選択することにより、糖脂質または糖脂質類似化合物を種類別に効率的に分離・精製できる。溶媒は、クロロホルム酢酸エチルヘキサンアセトニトリルアルコール類エーテル類、水または酸性水溶液またはアルカリ性水溶液から選択される。

概要

背景

糖鎖は構造が複雑であり、同じ生体分子であるDNAやタンパク質よりも産業上の利用の為の開発が遅れている。しかし、近年、糖鎖の研究が急速に進展し、産業上の利用への模索も進められてきている。特に、細胞分化ガン化、免疫反応等への糖鎖の関わりについて新しい事実が明らかにされつつある。例えば、細胞表層における糖鎖は、タンパク質や脂質と相互作用することによって、生体内における細胞分化、ガン化、免疫反応等の重要なプロセスに関与している。また、糖鎖は、細胞表層における細胞認識接着細胞間のシグナル伝達において重要な役割を担っていることも明らかになってきている。

天然型の糖鎖において、シアル酸を含む一群スフィンゴ糖脂質であるガングリオシドは、脳内微量ガングリオシドの構造解析や機能などを解明するために、イオン交換クロマトグラフィにより、ウシの脳から分離・精製されている。また、シアル酸のない中性糖鎖であるグロボ系構造についても、機能解明が進められている。糖脂質精製方法としては、イオン交換クロマトグラフィやHPLC、HPTLCなどが行われている。(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)

また、糖鎖を合成することも可能である。糖鎖の合成方法としては、化学的に合成する方法、分解酵素による方法、糖転移酵素を用いる方法などがあるが、それぞれ、工程が煩雑であったり、収量が低かったり、使用原料が限定されるなどの欠点がある。このような中、最近、動物細胞の機能を利用した糖鎖合成技術が注目されている。

動物細胞の機能を利用した糖鎖合成では、糖鎖合成経路の前駆体となる「糖鎖プライマー」を培地中に添加することにより細胞内に取り込ませ、糖鎖伸長を受けた生成物細胞外分泌されるようにする方法がある。このようにして生成される糖鎖伸長物を分離・精製し、有用な糖鎖のスクリーニング、あるいは産業利用するための研究が進められている。

しかしながら、動物細胞により伸長されて生成される糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、細胞種、「糖鎖プライマー」のオリゴ糖部分の構造により多種多様な糖脂質および/または糖脂質類似化合物が複数種類混在した状態で存在することや、「糖鎖プライマー」が残存することから、単一種類の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を得るためには、これらを分離しなければならない。

これまで動物細胞の機能を利用した糖鎖合成で得られる大量の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離・精製する方法例はなく、主に分析目的としたC18系固相カートリッジでの濃縮や、HPLCまたはHPTLCを用いた分離および/または精製方法が行われていた(例えば特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献4)。また、生体由来の天然型糖鎖化合物、特にガングリオシドの分離・精製は、主に陰イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィで行われていた(非特許文献6)。

また、動物細胞の機能を利用した糖鎖合成では、糖鎖合成経路の前駆体となる「糖鎖プライマー」を培地中に添加することにより細胞内に取り込ませたのち、糖鎖伸長を受けた生成物が細胞外に分泌されるが、未反応の「糖鎖プライマー」の多くが伸長されないまま、培地中に残るが、この未反応の「糖鎖プライマー」を効率良く回収する方法は未だない。

特開2000−247992
M. C. Z. Kasuyaら、Carbohydrate Research 329 (2000) 755-763
Johannes Muthing, Method in Enzymology, Vol312, Part B, 45-64
Stephan Ladisch and Ruixiang Li, Method in Enzymology, Vol312, Part B, 135-145
Robert K. Yu and Toshio Ariga, Methodsin Enzymology, Vol312, Part B, 115-134
Y. Hirabayashiら、J. Biol. Chem., 265 (1990), 8144-8151
Gerhild Van Echten-Deckert, Methods in Enzymology, Vol312, Part B, 64-79

概要

動物細胞、植物細胞酵母由来の糖脂質または糖脂質類似化合物を含有する試料から、糖脂質または糖脂質類似化合物を種類別に効率的に分離・精製する方法を提供する。液液分配クロマトグラフィを用い、二相溶媒系を特定の溶媒から選択することにより、糖脂質または糖脂質類似化合物を種類別に効率的に分離・精製できる。溶媒は、クロロホルム酢酸エチルヘキサンアセトニトリルアルコール類エーテル類、水または酸性水溶液またはアルカリ性水溶液から選択される。 なし

目的

そこで、本発明の目的は、主に生体由来の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を、細胞、細胞培養物またはその上清などから大量にかつ安価に分離および/または精製する方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

糖脂質および/または糖脂質類似化合物の分離および/または精製方法であって、クロロホルム酢酸エチルヘキサンアセトニトリルアルコール類エーテル類、水、酸または酸性水溶液、およびアルカリ性水溶液からなる群より選択される少なくとも2種以上を混和した二相溶媒系による液液分配クロマトグラフィに、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料を供する工程を含む、分離および/または精製方法。

請求項2

前記液液分配クロマトグラフィが、遠心液液分配クロマトグラフィまたは高速向流クロマトグラフィである請求項1記載の分離および/または精製方法。

請求項3

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が中性であり、前記二相溶媒系が、クロロホルム、アルコール類、および水を混和してなる請求項1または2記載の分離および/または精製方法。

請求項4

前記アルコール類がメタノールである請求項3記載の分離および/または精製方法。

請求項5

前記二相溶媒系が、クロロホルム、メタノール、および水を、5:6:4で混和してなる請求項4記載の分離および/または精製方法。

請求項6

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性であり、前記二相溶媒系が、アルコール類、酸または酸性水溶液、および水を混和してなる請求項1または2記載の分離および/または精製方法。

請求項7

前記アルコール類がn−ブタノールであり、前記酸または酸性水溶液が酢酸である請求項6記載の分離および/または精製方法。

請求項8

前記二相溶媒系が、n−ブタノール、酢酸、水を4:1:5で混和してなる請求項7記載の分離および/または精製方法。

請求項9

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性であり、前記二相溶媒系が、二種の異なるアルコール類および酸性水溶液を混和してなる請求項1または2に記載の分離および/または精製方法。

請求項10

前記二相溶媒系が、n−ブタノール、エタノール、および1%酢酸水溶液を混和してなる請求項9記載の分離および/または精製方法。

請求項11

前記二相溶媒系が、n−ブタノール、エタノール、1%酢酸水溶液を4:1:5で混和してなる請求項10記載の分離および/または精製方法。

請求項12

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性であり、前記二相溶媒系が、アルコール類、エーテル類、アセトニトリルおよび水を混和してなる請求項1または2記載の分離および/または精製方法。

請求項13

前記二相溶媒系が、n−ブタノール、t−ブチルメチルエーテル、アセトニトリル、および水を3:1:1:5で混和してなる請求項12記載の分離および/または精製方法。

請求項14

さらに、合成吸着剤による濃縮および/または精製工程を含む、請求項1から13までのいずれかに記載の分離および/または精製方法。

請求項15

さらに、固相抽出カートリッジ陰イオン交換クロマトグラフィ逆相HPLC順相HPLC、およびGPCからなる群より選択されるいずれかひとつ以上の精製工程を含む、請求項1から14までのいずれかに記載の分離および/または精製方法。

請求項16

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料が、動物細胞植物細胞、または酵母に、オリゴ糖プライマーを与えて培養することによって得られる請求項1から15までのいずれかに記載の分離および/または精製方法。

請求項17

前記糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料が、動物細胞、植物細胞、または酵母由来の、天然型糖脂質を含む請求項1から16までのいずれかに記載の分離および/または精製方法。

請求項18

請求項1から17までのいずれかに記載の分離および/または精製方法により糖脂質および/または糖脂質類似化合物を得ることを含む、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む糖鎖材料の製造方法。

請求項19

前記糖脂質類似化合物が、オリゴ糖鎖プライマーである、請求項1から18までのいずれかに記載の分離および/または精製方法。

技術分野

0001

本発明は、糖脂質または糖脂質類似化合物の分離または精製方法に関し、より詳しくは二相溶媒系による液液分配クロマトグラフィを用いた糖脂質または糖脂質類似化合物の分離または精製方法に関する。

背景技術

0002

糖鎖は構造が複雑であり、同じ生体分子であるDNAやタンパク質よりも産業上の利用の為の開発が遅れている。しかし、近年、糖鎖の研究が急速に進展し、産業上の利用への模索も進められてきている。特に、細胞分化ガン化、免疫反応等への糖鎖の関わりについて新しい事実が明らかにされつつある。例えば、細胞表層における糖鎖は、タンパク質や脂質と相互作用することによって、生体内における細胞分化、ガン化、免疫反応等の重要なプロセスに関与している。また、糖鎖は、細胞表層における細胞認識接着細胞間のシグナル伝達において重要な役割を担っていることも明らかになってきている。

0003

天然型の糖鎖において、シアル酸を含む一群スフィンゴ糖脂質であるガングリオシドは、脳内微量ガングリオシドの構造解析や機能などを解明するために、イオン交換クロマトグラフィにより、ウシの脳から分離・精製されている。また、シアル酸のない中性糖鎖であるグロボ系構造についても、機能解明が進められている。糖脂質の精製方法としては、イオン交換クロマトグラフィやHPLC、HPTLCなどが行われている。(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)

0004

また、糖鎖を合成することも可能である。糖鎖の合成方法としては、化学的に合成する方法、分解酵素による方法、糖転移酵素を用いる方法などがあるが、それぞれ、工程が煩雑であったり、収量が低かったり、使用原料が限定されるなどの欠点がある。このような中、最近、動物細胞の機能を利用した糖鎖合成技術が注目されている。

0005

動物細胞の機能を利用した糖鎖合成では、糖鎖合成経路の前駆体となる「糖鎖プライマー」を培地中に添加することにより細胞内に取り込ませ、糖鎖伸長を受けた生成物細胞外分泌されるようにする方法がある。このようにして生成される糖鎖伸長物を分離・精製し、有用な糖鎖のスクリーニング、あるいは産業利用するための研究が進められている。

0006

しかしながら、動物細胞により伸長されて生成される糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、細胞種、「糖鎖プライマー」のオリゴ糖部分の構造により多種多様な糖脂質および/または糖脂質類似化合物が複数種類混在した状態で存在することや、「糖鎖プライマー」が残存することから、単一種類の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を得るためには、これらを分離しなければならない。

0007

これまで動物細胞の機能を利用した糖鎖合成で得られる大量の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離・精製する方法例はなく、主に分析目的としたC18系固相カートリッジでの濃縮や、HPLCまたはHPTLCを用いた分離および/または精製方法が行われていた(例えば特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献4)。また、生体由来の天然型糖鎖化合物、特にガングリオシドの分離・精製は、主に陰イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィで行われていた(非特許文献6)。

0008

また、動物細胞の機能を利用した糖鎖合成では、糖鎖合成経路の前駆体となる「糖鎖プライマー」を培地中に添加することにより細胞内に取り込ませたのち、糖鎖伸長を受けた生成物が細胞外に分泌されるが、未反応の「糖鎖プライマー」の多くが伸長されないまま、培地中に残るが、この未反応の「糖鎖プライマー」を効率良く回収する方法は未だない。

0009

特開2000−247992
M. C. Z. Kasuyaら、Carbohydrate Research 329 (2000) 755-763
Johannes Muthing, Method in Enzymology, Vol312, Part B, 45-64
Stephan Ladisch and Ruixiang Li, Method in Enzymology, Vol312, Part B, 135-145
Robert K. Yu and Toshio Ariga, Methodsin Enzymology, Vol312, Part B, 115-134
Y. Hirabayashiら、J. Biol. Chem., 265 (1990), 8144-8151
Gerhild Van Echten-Deckert, Methods in Enzymology, Vol312, Part B, 64-79

発明が解決しようとする課題

0010

現在糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料から糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離および/または精製するのに用いられているC18系固相抽出カートリッジあるいはHPLCやHPTLCを用いる方法では、カートリッジあるいは装置の価格が高く、大量の試料の処理には適さない。また、イオン交換クロマトグラフィに用いられている樹脂も高価である。このように、大量の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を効率的かつ安価に分離および/または精製する方法は未だなく、このような方法の開発が強く望まれている。

0011

そこで、本発明の目的は、主に生体由来の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を、細胞、細胞培養物またはその上清などから大量にかつ安価に分離および/または精製する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の二相溶媒系による液液分配クロマトグラフィにより、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料から糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離および/または精製することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。

0013

すなわち、本発明は、糖脂質および/または糖脂質類似化合物の分離および/または精製方法であって、クロロホルム酢酸エチルヘキサンアセトニトリルアルコール類エーテル類、水、酸、酸性水溶液、およびアルカリ性水溶液からなる群より選択される少なくとも2種以上を混和した二相溶媒系による液液分配クロマトグラフィに、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料を供する工程を含む、分離および/または精製方法を提供する。

0014

上記液液分配クロマトグラフィは、遠心液液分配クロマトグラフィまたは高速向流クロマトグラフィであり得る。

0015

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が中性である場合には、上記二相溶媒系は、クロロホルム、アルコール類、および水を混和して調製され得る。ここで、アルコール類はメタノールであり得る。さらに、この二相溶媒系は、クロロホルム、メタノール、および水を、5:6:4で混和して調製され得る。

0016

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性である場合、上記二相溶媒系は、アルコール類、酸または酸性水溶液、および水を混和して調製され得る。

0017

上記アルコール類はn−ブタノールであり、前記酸または酸性水溶液は酢酸であり得る。

0018

上記二相溶媒系は、n−ブタノール、酢酸、水を4:1:5で混和して調製され得る。

0019

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性である場合、前記二相溶媒系は、二種の異なるアルコール類および酸性水溶液を混和して調製され得る。

0020

上記二相溶媒系は、n−ブタノール、エタノール、および1%酢酸水溶液を混和して調製され得る。ここで、n−ブタノール、エタノール、1%酢酸水溶液は、4:1:5であり得る。

0021

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物が酸性である場合、上記二相溶媒系は、アルコール類、エーテル類、アセトニトリルおよび水を混和して調製され得る。

0022

上記二相溶媒系は、n−ブタノール、t−ブチルメチルエーテル、アセトニトリル、および水を3:1:1:5で混和して調製され得る。

0023

上記分離精製方法では、さらに、合成吸着剤による濃縮および/または精製工程を含み得る。

0024

上記分離精製方法では、さらに、固相抽出カートリッジ、陰イオン交換クロマトグラフィ逆相HPLC、順相HPLC、およびGPCからなる群より選択されるいずれかひとつ以上の精製工程を含み得る。

0025

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、動物細胞、植物細胞、または酵母に、オリゴ糖プライマーを与えて培養することによって得られ得る。

0026

上記糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、動物細胞、植物細胞、または酵母由来の、天然型糖脂質であり得る。

0027

本発明においてはまた、上記の分離および/または精製方法を用いて得られる糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む糖鎖材料の製造方法が提供される。

0028

本発明ではさらに、上記の分離および/または精製方法を用いて、培養細胞中にある糖鎖プライマーを回収する方法が提供される。

発明の効果

0029

以上のように、本発明を適用することによって、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料から、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を、工業的に容易に分離および/または精製することができる。よって、特に、有用な動物細胞などの生体由来の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を安価に大量に調製することが可能になり、糖鎖を利用した製品の開発の迅速な実用化が可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0030

以下、本発明の実施の形態について説明する。

0031

糖脂質とは、分子内に水溶性糖鎖と脂溶性基の両者を含む物質の総称であり、脂溶性基がセラミド(N-アシルスフィンゴシン) であるスフィンゴ糖脂質、アシル- あるいはアルキルグリセロールであるグリセロ糖脂質ステロイド(ステリルグリコシド,ステロイド配糖体)、ヒドロキシ脂肪酸(ラムノリピド) などの脂溶性基をもつグリコシドなどが含まれる。通常、糖脂質は天然に存在する構造のものを指す。本発明においては、天然に存在するものと同一の構造のものの他、天然には存在しない構造のもので、動物細胞などに糖鎖プライマーを加えて得ることができ、水溶性糖鎖と脂溶性基の両者を含む物質を、糖脂質と呼ぶこともある。または特に動物細胞などに糖鎖プライマーを加えて得られるこのような物質を糖脂質類似化合物と呼ぶこともある。本明細書においては、このような糖脂質類似化合物を、対応する糖鎖構造を有する糖脂質の名称して表記する。例えば、動物細胞等に糖鎖プライマーを添加して得られた糖鎖伸長生成物が、ガングリオシドGM3と同一の糖鎖構造を有する場合、該生成物をGM3型糖脂質類似化合物と記す。同様に、糖鎖伸長生成物がグロボ系糖脂質Gb3と同一の糖鎖構造を有する場合、Gb3型糖脂質類似化合物のように記す。

0032

糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、糖鎖の性質により、中性、酸性に分けられる。酸性を示す糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、限定はされないが、ガングリオシドやスルファチドをはじめとするシアル酸残基硫酸基を有する各種糖脂質および/または糖脂質類似化合物が挙げられる。具体的には、GM1b、GD1α、GM3、GM2、GM1、GD1a、GT1a、GD3、GD2、GD1b、GT1b、GQ1b、GT3、GT2、GT1c、GQ1c、GP1c、GM4、SM4s、SM3、SGPGシアリルパラグロボシドSSEA−4、ジシアリルSSEA−3、GM1α、GD1β、SLex、SLec、SLa等の糖脂質およびこれらの糖脂質類似化合物(GM1型糖脂質類似化合物、GM2型糖脂質類似化合物、GM3型糖脂質類似化合物、GD1a型糖脂質類似化合物、GD1b型糖脂質類似化合物、GM1b型糖脂質類似化合物、GD1α型糖脂質類似化合物、GM3型糖脂質類似化合物、GM2型糖脂質類似化合物、GM1型糖脂質類似化合物、GD1a型糖脂質類似化合物、GT1a型糖脂質類似化合物、GD3型糖脂質類似化合物、GD2型糖脂質類似化合物、GD1b型糖脂質類似化合物、GT1b型糖脂質類似化合物、GQ1b型糖脂質類似化合物、GT3型糖脂質類似化合物、GT2型糖脂質類似化合物、GT1c型糖脂質類似化合物、GQ1c型糖脂質類似化合物、GP1c型糖脂質類似化合物、GM4型糖脂質類似化合物、SM4s型糖脂質類似化合物、SM3型糖脂質類似化合物、SGPG型糖脂質類似化合物、シアリルパラグロボシド型糖脂質類似化合物、SSEA−4型糖脂質類似化合物、ジシアリルSSEA−3型糖脂質類似化合物、GM1α型糖脂質類似化合物、GD1β型糖脂質類似化合物、SLex型糖脂質類似化合物、SLec型糖脂質類似化合物、SLa型糖脂質類似化合物など)が挙げられる。中性の糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、中性糖のみから成る糖脂質および/または糖脂質類似化合物類などのことで、限定はされないが、グロボ系列のGb3、Gb4や、それらの類似化合物であるGb3型糖脂質類似化合物、Gb4型糖脂質類似化合物などが含まれる。その他にも、Lac-Cer、iGb3、iGb4、アシアロGM2、アシアロGM1、パラグロボシド、グロボシド、Forssman抗原、SSEA−3、Lex、Ley、Lea、Leb、Lec、などの糖脂質やこれらの糖脂質類似化合物が含まれる。

0033

液液分配クロマトグラフィは、有機溶媒、各種水溶液、および水などから選択される少なくとも2種以上の溶媒を混和した二相溶媒系の上層または下層の一方を固定相とし、他方を移動相に用いて試料を分離する方法をいう。

0034

遠心液液分配クロマトグラフィ(CPC)とは、二相溶媒系の上層または下層の一方の液層を固定相としてドーナツ型ローターと呼ばれる円盤放射線状に内蔵されたセル内に満たし、分配セルを回転させて下層または上層を移動相として送液して成分分離を行う液液分配クロマトグラフィである。分離後試料成分をローターから全て回収でき、正溶出反転溶出の切り替えも容易に行える利点を持つ。例えば、極性の異なる化合物を含む場合、正溶出により溶出されない場合があるが、CPCでは固定相を回収できるため、試料を全量回収できる。

0035

本発明に用いるCPC装置は、固定相の保持をおこなう分配セルおよびそのセルを保持するローターを備え、これに送液ポンプおよび検出器を組み合わせた構造を有していれば、特に限定されることなく、どのような装置でも利用可能である。セルサイズ、回転速度層液速度は、装置のそれぞれの処理能力により異なり、特に限定はされない。CPC240(センシュー科学)を使用する場合、回転速度としては、500rpmから2500rpm程度の範囲で好ましく使用でき、送液速度は1mlから10ml/min程度が好ましく使用できる。

0036

高速向流クロマトグラフィ(HSCCC)とは、二相溶媒系の上層または下層の一方の液層を固定相としてコイル状チューブカラム内に遠心力で保持させ、下層または上層の他方の液層を移動相として送液して成分分離を行う液液分配クロマトグラフィである。分離後の試料成分をカラムから全て回収できるほか、順相/逆相、分析分取の切り替えも容易である。

0037

本発明に用いるHSCCC装置は、固定相の保持をおこなうカラム部分にJ型コイル惑星遠心装置を備え、これに送液ポンプおよび検出器を組み合わせた構造を有する。J型コイル惑星状遠心装置はコイル部分が回転(自転)し、かつコイル部分の保持装置も回転(公転)する原理を有していれば、特に限定されることなく、どのような装置でも利用可能である(例えば、限定はされないが、Easy-PREPcccセミ分取モデル)。

0038

カラム部分に巻きつけて流路およびカラムとなるチューブ部には一般にチューブ状に成型できる素材であれば特に問題なく用いることができる。好適な例としては内径0.5〜3mmのテフロン登録商標)チューブを挙げる事ができる。送液ポンプはロータリー型ペリスタ型など、一般に液体の送液に用いることのできるものであれば問題なく用いることができる。まずカラム部分に二相溶媒のどちらか一方を送液し、チューブを満たして固定相とする。続いてコイル部分を自転させ、遠心力で固定相を保持させる。この際の回転数は10〜10,000rpmを用いることができるが、好適な例としては1,000〜1,500rpmとすることが望ましい。糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料を溶媒に溶解させたサンプルをカラム部分に導入し、その後に二相溶媒の固定相に用いなかった他の相を移動相として送液する。移動相の送液速度は特に制限はないが、0.1〜10ml/分の間とすることが望ましい。

0039

CPC装置またはHSCCC装置のいずれの場合でも、溶出する移動相を適当な分析装置で分析する。この分析装置は、UV検出器RI検出器、ダイオードアレイ検出器、IR検出器蛍光検出器蒸発光散乱検出器などを用いることができる。

0040

本発明の液液分配クロマトグラフィに用いる二相溶媒系は、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、アセトニトリル、アルコール類、エーテル類、水、酸または酸性水溶液、およびアルカリ性水溶液からなる群より選択される少なくとも2種以上を混和して調製する。このうち、アルコール類として好ましいのは、メタノール、エタノール、ブタノールであるが、これに限定されない。酸性水溶液としては、酢酸水溶液が挙げられるが、これに限定されない。

0041

糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含有する試料から中性の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離する場合には、二相溶媒系が、クロロホルム、アルコール類、および水を混和してなるものであることが好ましい。ここで、アルコール類は、メタノールであることがより好ましい。特に、二相溶媒系が、クロロホルム、メタノール、および水を、5:6:4で混和して調製することが好ましい。この比率において用いられるメタノールは、95%から100%、好ましくは、97%から100%のものである。

0042

糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含有する試料から酸性の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離する場合、二相溶媒系が、アルコール類、酸、および水を混和して調製されることが好ましい。より好ましくは、アルコール類がn−ブタノールであり、前記酸または酸性水溶液が酢酸である。あるいは、二相溶媒系を、二種の異なるアルコール類および酸性水溶液を混和することで調製することも好ましい。この場合、より好ましくは、二相溶媒系が、n−ブタノール、エタノール、および1%酢酸水溶液を混和して調製されるものである。

0043

より好ましくは、酸性の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を分離する場合は、二相溶媒系は、n−ブタノール、酢酸、水を4:1:5で混和してなる。あるいは、二相溶媒系は、n−ブタノール、エタノール、1%酢酸水溶液を4:1:5で混和してなる。さらに、あるいは、二相溶媒系は、n−ブタノール、t−ブチルメチルエーテル、アセトニトリル、エタノール、1%酢酸水溶液を3:1:1:5で混和して調製することも可能である。これらの比率において、用いられるアルコール濃度は、95%以上100%以下、より好ましくは、97%以上100%以下のものである。

0044

溶出した移動相はそのままあるいは溶出時間毎分画し、固相抽出カートリッジ、逆相TLC、順相TLC、逆相HPLC、順相HPLC、GPC、アフィニティークロマトグラフィ、MS、LC−MS、TOF−MSなどの分析に供することにより、さらに詳細な分離、分析を行うことができる。その際に必要があれば移動相を減圧乾固などの方法により取り除いてから分析を行ってもよい。

0045

糖脂質および/または糖脂質類似化合物を含む試料は、限定はされないが、例えば、マウス、ウシ、ヒトなどの哺乳類、その他の動物、あるいは植物の組織または細胞、例えば脳やメラノーマ癌組織等の組織由来であり得る。あるいは、酵母などの微生物を培養して得られる培養細胞由来である。このような組織又は細胞から、天然型糖脂質を含む試料であれば、抽出などの操作によって得ることができる。

0046

抽出は特に限定されないが、細胞や組織を有機溶媒で、例えばクロロホルム-メタノール(2:1)などの溶媒でホモジナイズすることによってなされる。このような抽出物を本発明の方法に供して、糖鎖化合物、主に糖脂質および/または糖脂質類似化合物系の化合物を分離することができる。

0047

細胞培養物は、好ましくは動物細胞を糖脂質および/または糖脂質類似化合物が得られるような条件下にて培養することで得られる。動物細胞は特に限定されず、所望の糖脂質および/または糖脂質類似化合物の種類に応じて様々な動物細胞が用いられ得る。動物細胞の例としては、ヒト由来マウス由来サル由来、ラット由来などの哺乳動物細胞が挙げられ、特にB16マウスメラノーマ細胞ラットPC12細胞、マウスNeuro2a細胞、ラットRBL−2H3細胞、ヒトMOLT−4細胞、ヒトHL−60細胞、サル腎臓由来ベロ細胞などが好適に用いられ得る。培養は、通常の動物細胞の培養条件に従って行う。

0048

糖脂質および/または糖脂質類似化合物が得られるような条件とは、例えば、上記の動物細胞を、室温から45℃までの温度の間で1時間から70時間までの間の時間でDMEM/F12などの培養培地で前培養した後、糖鎖プライマーを添加した培地に置換してさらに培養を行い、糖鎖伸長反応を行うことなどである。

0049

ここで、糖鎖プライマーは、用いられる細胞種、所望の糖鎖構造により任意に選択することができる。限定はされないが、好ましい糖鎖プライマーの例としては、式(I):(G1)x(G2)y(G3)z−L−Xで表される化合物が挙げられる。ここで、式中、G1、G2及びG3は、それぞれ独立して環状構造単糖残基又はその誘導体であり、Lは、−O−(CH2)n−、−S−(CH2)n−、及び−NH−(CH2)n−から選択される連結基であり、Xは、−N3、−NH2、−OH、−COOH、及び−C1-C4アルキルから選択される基であり;x、y、及びzは、それぞれ独立して0〜10の整数であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0から3であり、x、y及びzの全てが同時に0であることはない。また、nは、8〜20の整数であり、好ましくは8〜16、特に好ましくは12である。単糖としては、限定はされないが、ペントース及びヘキソースを使用するのが好ましい。またアルドースケトースのいずれも使用することができる。従って、糖鎖プライマーも、本明細書では、糖脂質類似化合物ということができる。

0050

このような糖鎖プライマーを各種細胞の培地に添加して細胞を培養すると、細胞は、プライマーを取り込み、その糖鎖部分に更に糖を付加してグリコシル化し、その糖付加生成物を細胞内には蓄積せずに細胞外に分泌する。付加される糖は、細胞により異なる。

0051

得られる細胞培養物または細胞培養物から細胞を除いた上清は、糖鎖プライマーから伸長して得られた生成物である糖脂質または糖脂質類似化合物を含有する。この細胞培養物または細胞培養物の上清を本発明の液液分配クロマトグラフィに供する。

0052

本発明では、液液分配クロマトグラフィの前あるいは後に、固体吸着剤を接触させることにより、予め糖脂質または糖脂質類似化合物を含む濃縮液を調製したり、より純粋な糖脂質または糖脂質類似化合物を調製することも可能である。

0053

接触は、例えば、細胞培養物または細胞培養物の上清に直接固体吸着剤を加え、30分以上の時間で振盪するなどして行う。あるいは、カラムなどに予め固体吸着剤を充填しておき、充填したカラムに細胞培養物または細胞培養物の上清を流すことによって行う。

0054

さらに、接触工程終了後の固体吸着剤に適度な濃度の溶離剤を接触させて、固体吸着剤から糖脂質および/または糖脂質類似化合物を脱着させるとともに、脱着させた糖脂質および/または糖脂質類似化合物を溶離剤中に溶離させる溶離工程を行い得る。溶離剤は、限定はされないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、およびアセトニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であり得る。この工程は、糖脂質および/または糖脂質類似化合物と吸着体疎水性相互作用によって吸着していたものに、有機溶媒などの溶離剤を接触させることで、吸着剤から糖脂質および/または糖脂質類似化合物を脱着させて、さらにこの糖脂質および/または糖脂質類似化合物を有機溶媒中に溶離させる工程である。

0055

ここで、固体吸着剤は、スチレン系合成吸着体およびメタクリル系合成吸着体からなる群より選択される少なくとも1種であり得る。その他、フェノール系合成吸着体も用いることができる。培養物中または培養上清中の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を吸着させるスチレン系合成吸着剤としては、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体樹脂母体とするものが挙げられる。スチレン系合成吸着体として、具体的には、三菱化学社製ダイヤイオン(登録商標、以下同じ)HP20、HP21、セパビーズ(登録商標、以下同じ)SP207、SP825、SP850、SP875、ロームアンドハース社製アンバーライト(登録商標、以下同じ)XAD4、XAD16、XAD1180、XAD2000、Bayer社製VPOC1062、VPOC1064等が挙げられる。また、メタクリル系合成吸着体として、三菱化学社製ダイヤイオン(登録商標、以下同じ)HP1MG、HP2MG等を用いることができる。

0056

中性で糖鎖プライマーの12‐アジドドデシル‐βラクトシドは、培地上清に同量の酢酸エチルを添加し振盪することにより、酢酸エチル層に抽出できることにより予め除くことも可能である。よって、培地上清を吸着剤に接触させる前に、酢酸エチルによる抽出により中性である糖鎖プライマーである12‐アジドドデシル‐βラクトシドを除いておくと、吸着工程及び、溶離工程における負荷を軽減することが可能である。

0057

糖鎖プライマーは、ラクトースN-アセチルグルコサミンなどをドデシル基と結合することで作成し利用できる。更に、アジド基などの官能基アグリコン部分に導入しておけば、後の操作でその部分と別の化合物とを共有結合などで結合して固定化することが可能である。

0058

溶出した移動相はそのまま、或いは溶出時間毎に分画して、TLC、HPLC、アフィニティークロマトグラフィ、MS、LC−MS、TOF−MSなどの分析を行うことにより、さらに詳細な分離、分析を行うことができる。その際に必要があれば移動相を減圧乾固などの方法により取り除いてから分析を行うこともできる。

0059

また溶出した移動相をそのまま、或いは溶出時間毎に分画し、必要があれば移動相を減圧乾固などの方法により除いて、糖脂質および/または糖脂質類似化合物画分として利用することもできる。

0060

本発明においては、上記の方法で得られる組織や細胞からの抽出物、又は細胞による糖鎖プライマー伸長法により得られた試料に含まれる複数種類の糖脂質および/または糖脂質類似化合物を、液液分配クロマトグラフィを用いて効率的に分離できる。更に、細胞による糖鎖プライマー伸長法により糖鎖合成を行う場合、未反応の「糖鎖プライマー」が培養液中に多量に残るが、このような未反応の「糖鎖プライマー」も、本発明の特定溶媒による液液分配クロマトグラフィで、効率良く回収することも可能であることから、「糖鎖プライマー」を再利用することができるようになる。

0061

このようにして分離、精製された糖脂質および/または糖脂質類似化合物は、様々な糖鎖材料として、使用することができる。このような材料としては、特に限定はされないが、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を固相に固定化して得られるものが含まれる。糖鎖材料は、ウィルスバクテリア、および/または毒素吸着材、毒素の中和剤生体防御刺激抗炎症抗菌、および/または抗腫瘍転移に有用な薬剤診断薬細胞培養基材または特異的細胞分離基材、毒素などの検出基盤に好適に用いられうる。

0062

以下に、本発明の糖脂質および/または糖脂質類似化合物の精製方法および濃縮方法の具体例を実施例の態様で示すが、本発明はこれに限定されない。

0063

まず、触媒としてルイス酸であるboron trifluoride etherate (BF3・OEt2)とアジド基を導入したアルコールを用いてグリコシル化を行った後、脱アセチル化反応を行うことにより、「糖鎖プライマー」:12‐アジドドデシル‐βラクトシドを得た(Murozuka, Y., Kasuya, M. C., Kobayashi, M., Watanabe, Y., Sato, T. and Hatanaka, K. 2005, Chemistry and Biodiversity, 2, 1063, Kasuya, M. C., Wang, L., Lee, Y. C., Mitsuki, M., Nakajima, N., Sato, T., Hatanaka, K., Yamagata, S. and Yamagata, T. 2000, Carbohydr. Res., 329, 755.)

0064

500mL容量のフィブラセルTMサポートスピンナーバスケット(NEW BRUNSWICKCIENTIFIC社製)を用いて培養及び、糖鎖伸長反応を行った。バスケットに10gのフィブラセルディスクを保持させた容器に500mlのPBSを入れ、オートクレーブ滅菌した(121℃、20分)。その後、容器中の液を500mlの1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)を添加したOptiPROSFM培地(インビトロジェン社)に置換し、2×108cellsのベロ細胞を接種し、50rpmの回転数で1時間撹拌した。その後、100rpmの回転数に上げて、8日間培養を続けた。その間、2〜3日おきに培地を交換した。

0065

その後、1% ITS−Xサプリメント(GIBCO社製)と、1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)と、50 μM のドデシル‐βラクトシドを含むDMEM/F12培地に置換し、CO2インキュベーターの中で37℃にて96時間培養した。培養した後、培地全量を回収し、フレッシュな1% ITS−Xサプリメントと、1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)と、50 μM の12‐アジドドデシル‐βラクトシドを含むDMEM/F12培地に置換し48時間培養することを、更に2回繰り返し行い、約1.5Lの培地上清を得た。

0066

80枚の100mmのディッシュに各々、細胞数2×106cellsのベロ細胞を7mlの1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)を添加したOptiPROSFM培地に懸濁して播き、CO2インキュベーターの中で37℃にて48時間、培養した。培養後、1% ITS−Xサプリメントと、1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)と、50 μM の12‐アジドドデシル‐βラクトシドを含むDMEM/F12培地に置換し、更に、CO2インキュベーターの中で37℃にて48時間し、糖鎖伸長反応を行った。培養した後、培地全量を回収し、フレッシュな1% ITS−Xサプリメントと、1%のAntibiotic−Antimycotic(100×),liquid(GIBCO社製)と、50 μM の12‐アジドドデシル‐βラクトシドを含むDMEM/F12培地に置換し96時間培養することを、更に2回繰り返し行い、約1.5Lの培地上清を得た。

0067

上記のフィブラセルTMサポート付スピンナーバスケット、及び100mmのディッシュを用いて培養することによって得られた約3Lの培地上清に対し、50gのポリスチレン系の合成吸着剤HP20(三菱化学社製)を加え、2時間以上振盪し、糖脂質および/または糖脂質類似化合物を吸着剤に吸着させた。吸着後、水洗しメタノールで溶出した。更に、得られた溶出液を、減圧下で濃縮、乾燥させた。乾燥物を3mlのクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、濃縮液を調製した。

0068

CPC(CPC240、株式会社センシュー科学)により、濃縮物から生成物の分離精製を行った。条件としては、二層系の溶媒として、クロロホルム/メタノール/水(5:6:4)を用い、上層を固定相とし、下層を上から下へ通液させる、下降法にて行った。また、ローターの回転速度は700rpm、流速は4ml/minで行った。

0069

溶出液は10mlずつ分取し、各フラクションを500μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図1に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。フラクションNo.16から20にドデシル‐βラクトシド、No.26から40にGb3型糖脂質類似化合物が溶出されてきた。この方法では、極性の低い性質を持つ中性糖鎖である、Gb3型糖脂質類似化合物、未反応の「糖鎖プライマー」である12‐アジドドデシル‐βラクトシドを分離することができた。

0070

溶出されてこない画分については、反転溶出、つまり、固定相を下から上へ通液させることにより、固定相を押し出すことにより、回収した。同様に、溶出液は10mlずつ分取し、各フラクションを500μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図2に示す。フラクションNo.61から66において、酸性糖脂質および糖脂質類似化合物GM3型糖脂質、及び培地由来スポットが検出された。なお、フラクションNo.68から72において、Gb4型糖脂質類似化合物が溶出した。

0071

上記で得られた、ドデシル‐βラクトシド、Gb3型糖脂質類似化合物、GM3型糖脂質類似化合物、Gb4型糖脂質類似化合物を含む画分をそれぞれ集め、減圧下で濃縮した後、Sep−Pakカラム(Waters社製)にて精製した。得られた糖脂質および/または糖脂質類似化合物および、ドデシル‐βラクトシドを減圧下で乾燥させた。

0072

さらに、GM3型糖脂質類似化合物を含む画分については、乾燥後、3mlのクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解した後、CPCにより、n−ブタノール/エタノール/1%酢酸水溶液(4:1:5)を二層系の溶媒として用いて、下降法にて分離を行った。ローターの回転速度は1200rpm、流速は4ml/minで行った。

0073

溶出液は10mlずつ分取し、各フラクションを200μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図3に示す。フラクションNo.41から75にかけて、酸性の糖脂質類似化合物であるGM3型糖脂質類似化合物が検出された。全フラクションを集め、減圧下で乾燥させた。

0074

以上の結果より得られた、糖脂質類似化合物および、ドデシル‐βラクトシドの乾燥重量を測定した結果、ドデシル‐βラクトシドは21.7mg、Gb3型糖脂質類似化合物は8.3mg、Gb4型糖脂質類似化合物は5.1mg、GM3型糖脂質類似化合物は19.5mgであった。イオントラップ型質量分析装置HCTplus(BRUKEDALTONICS社製)により、MSn解析を行った結果を図4に示す。

0075

約20gのラット脳組織(Rat Brain Tissue、ROCKLAND,Inc)を乳鉢すり潰した後、100mlのクロロホルム−メタノール(2:1)を加え、5分間超音波処理し、37度のインキュベータ中で1時間振盪して脂質を抽出した。8,000rpmで10分間遠心してペレットと上清を分離し、ペレットに100mlのクロロホルム−メタノール−水(1:2:0.8)を加えて、37℃で1時間振盪し、再抽出した。8,000rpmで10分間遠心処理し、上清液を合わせ、総脂質抽出液を得た。脂質抽出液全量を減圧下で濃縮乾燥を行い、12mlのクロロホルム−メタノール(2:1)に溶解した。

0076

実施例1と同様に、CPCにより、生成物の分離精製を行った。2mlの脂質溶液注入し、二層系の溶媒として、n−ブタノール/エタノール/1%酢酸(4:1:5)を用い、上層を固定相とし、下層を上から下へ通液させる、下降法にて行った。また、ローターの回転速度は1,200rpm、流速は4ml/minで行った。

0077

溶出液は20mlずつ分取し、各フラクションを100μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図5に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.11から26にGT1b、フラクションNo.20から43にGD1a、フラクションNo.33から48にGD1b、No.58から92にGM1が溶出されてきた。

0078

実施例1に示したディッシュによる培養により、ベロ細胞によるドデシル‐βラクトシド(プライマー)からの糖鎖伸長物を調製し、HP20を用いて濃縮液を得た。

0079

高速向流クロマトグラフ(HSCCC)(Easy−PREPcccセミ分取モデル、クツワ産業株式会社)により、生成物の分離精製を行った。2mlの濃縮液を注入し、二層系の溶媒として、クロロホルム/メタノール/水(5:6:4)を用い、上層を固定相とし、下層を移動相として用いた。また、カラムの回転速度は700rpm、流速は2ml/minで行った。

0080

溶出液は10mlずつ33本分取した後、固定相による押し出しを行い、更に10mlずつ30本分取した。得られた63本のフラクションを500μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図6に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.30から35にプライマーであるドデシル‐βラクトシド、フラクションNo.51から55にGb3型糖脂質類似化合物が溶出されてきた。

0081

実施例2に示した方法と同様に、ラット脳組織より、総脂質抽出液を調製した。

0082

高速向流クロマトグラフ(HSCCC)により、総脂質抽出液よりガングリオシドの分離精製を行った。2mlの濃縮液を注入し、二層系の溶媒として、n-ブタノール/エタノール/1%酢酸(4:1:5)を用い、上層を固定相とし、下層を移動相として用いた。また、カラムの回転速度は1,000rpm、流速は2ml/minで行った。

0083

溶出液は5mlずつ25本分取した後、固定相による押し出しを行い、更に5mlずつ25本分取した。得られた50本のフラクションを100μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図7に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.23から35にかけてガングリオシド(GM1、GD1a、GD1b、GT1b)が他の不純物と分離して溶出されてきた。

0084

実施例2に示した方法と同様に、ラット脳組織より、総脂質抽出液を調製した。

0085

高速向流クロマトグラフ(HSCCC)により、総脂質抽出液よりガングリオシドの分離精製を行った。2mlの濃縮液を注入し、二層系の溶媒として、クロロホルム/メタノール/1%酢酸(5:6:4)を用い、下層を固定相とし、上層を移動相として用いた。また、カラムの回転速度は700rpm、流速は1.8ml/minで行った。

0086

溶出液は5mlずつ30本分取した後、固定相による押し出しを行い、更に10mlずつ20本分取した。得られた50本のフラクションを200μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図8に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.46から49にかけてガングリオシド(GM1、GD1a、GD1b、GT1b)が他の不純物と分離して溶出されてきた。

0087

実施例2に示した方法と同様に、ラット脳組織より、総脂質抽出液を調製した。更に、その300μlの総脂質抽出液からガングリオシドを以下のように調製した。強陰イオン交換カートリッジカラムInterSep SAX(2g)(GLサイエンス)に100mlのメタノール、100mlの水、100mlの0.8M酢酸ナトリウム、100mlの水、100mlのクロロホルム/メタノール/水(5:10:1)を順に通液した後、20倍(6ml)のクロロホルム/メタノール/水(5:10:1)で希釈した300μlの総脂質抽出液を通し酸性糖脂質を吸着させた。その後、100mlのクロロホルム/メタノール/水(5:10:1)で洗浄し、100mlのクロロホルム/メタノール/4M酢酸アンモニウム水溶液(5:10:1)により溶出し、酸性糖脂質抽出物を得た。この酸性糖脂質抽出物は、減圧下で乾燥させた後、5mlの1−Butanol/t‐ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/水(3:1:1:5)に溶解した。

0088

CPCにより、総脂質抽出液よりガングリオシドの分離精製を行った。5mlの酸性糖脂質抽出物の溶解液を注入し、二層系の溶媒として、1−Butanol/t‐ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/水(3:1:1:5)を用い、上層を固定相とし、下層を移動相として用いた。また、カラムの回転速度は1200rpm、流速は4ml/minで行った。

0089

溶出液は10mlずつ50本分取し、各フラクションを100μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図9に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.12から13にかけてGT1b、No.24から25にかけてGD1a、No.25から26にかけてGD1b、No.28から30にかけてGM1が溶出されてきた。

0090

実施例6に示した方法と同様に、ラット脳組織より、5mlの酸性糖脂質抽出物の溶解液を調製した。

0091

HSCCCにより、総脂質抽出液よりガングリオシドの分離精製を行った。5mlの酸性糖脂質抽出物の溶解液を注入し、二層系の溶媒として、1−Butanol/t‐ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/水(3:1:1:5)を用い、上層を固定相とし、下層を移動相として用いた。また、カラムの回転速度は1000rpm、流速は2ml/minで行った。

0092

溶出液は6mlずつ50本分取し、各フラクションを100μlずつ減圧下で乾燥し、少量のクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、HPTLCにより分析した結果を、図10に示す。展開溶媒としては、クロロホルム/メタノール/0.25% KCl水溶液(5:4:1)を用い、レゾルシノールにより発色を行った。No.35から36にかけてGT1b、No.36から37にかけてGD1b、No.36から40にかけてGD1a、No.46から50にかけてGM1が溶出されてきた。

図面の簡単な説明

0093

ベロ細胞によりドデシル‐βラクトシドから生成された糖脂質および/または糖脂質類似化合物をCPCによりクロロホルム/メタノール/水(5:6:4)を用い分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ベロ細胞によりドデシル‐βラクトシドから生成された糖脂質類似化合物をCPCによりクロロホルム/メタノール/水(5:6:4)を用い反転溶出にて分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ベロ細胞によりドデシル‐βラクトシドから生成された酸性糖脂質類似化合物であるGM3型糖脂質類似化合物をCPCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
分離したベロ細胞により生成された糖脂質類似化合物のMSn解析結果である。
ラット脳組織より天然型のガングリオシドをCPCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ベロ細胞により12−アジドドデシル‐βラクトシドから生成された糖脂質類似化合物をHSCCCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ラット脳組織より抽出した天然型のガングリオシドをHSCCCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ラット脳組織より抽出した天然型のガングリオシドをHSCCCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ラット脳組織より抽出した天然型のガングリオシドをCPCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。
ラット脳組織より抽出した天然型のガングリオシドをHSCCCにより分離したものをHPTLCにより分析した結果である。

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