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技術 制御システムの構築方法及び制御システム

出願人 株式会社デンソー
発明者 川合勝彦
出願日 2007年5月18日 (12年2ヶ月経過) 出願番号 2007-132988
公開日 2008年11月27日 (10年7ヶ月経過) 公開番号 2008-287581
状態 特許登録済
技術分野 フィードバック制御一般 内燃機関の複合的制御
主要キーワード パラメータζ フィードフォワード制御システム 誤差方程式 修正速度 操作量変化 単項式 フィードフォワード操作量 中間出力
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図面 (15)

課題

逆モデルに依らず、安定したフィードフォワード制御系構築することが可能な技術を提供する。

解決手段

本発明では、伝達関数P(z-1)を、遅延演算子z-1の多項式N(z-1),D(z-1)を用いて、P(z-1)=N(z-1)/D(z-1)で表現可能な制御対象を制御するに際し、次の方法で、制御システムを構築する。即ち、規範モデルM(z-1)を、伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)を含む関数M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定して、所望の規範モデルM(z-1)に対応する関数L(z-1)を導出する。そして、フィードフォワード操作量uff(i)を、関数L(z-1)及び伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式Uff(i)=D・L・r(i)に従って、算出するように、フィードフォワード制御系を構築する。このようにして、本発明では、逆モデルP-1を用いずに、フィードフォワード制御系を実現する。

概要

背景

従来、制御システムとしては、ステップ入力される目標値rから、制御出力理想値を、予め設定された規範モデルMに基づき算出し、これをモデル出力yrとして、モデル出力yr[=M・r]と制御出力yとの誤差eが小さくなる方向に、誤差eから制御入力uを算出し、算出した制御入力uに対応した操作を制御対象に加えることにより、制御対象をフィードバック制御するフィードバック制御システムが知られている。また、この種の制御システムとしては、状態フィードバックにより、制御入力uを算出する制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。

この他、制御システムとしては、制御出力yを帰還せず、目標値rから、予め設定された関数Wに基づき制御入力uを算出し(u=W・r)、制御対象を制御するフィードフォワード制御システムが知られている。また、フィードフォワード制御システムとしては、適応制御の手法により、制御入力uを補正する制御システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、従来の制御システムとしては、フィードバック制御系及びフィードフォワード制御系を組み合わせてなる2自由度制御システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。

フィードフォワード制御システムの構築方法としては、制御対象の伝達関数Pの逆モデルP-1を用いてシステムを構築する方法が知られている。この方法では、逆モデルP-1と、規範モデルMとを組み合わせて関数W=M・P-1を設定し、この関数Wにより、制御入力u、換言すると、フィードフォワード操作量u[=uff=W・r]を算出する。

このようにして制御入力uを算出するフィードフォワード制御システムでは、制御入力uと制御出力yとの間に、関係y=P・uがあるため、y=P・u=P・W・r=M・rとなり、上記制御入力uにより、制御出力yを、理論上、モデル出力yrと一致させることができる。逆モデルP-1を用いたフィードフォワード制御システムは、このような手法で、制御出力yがモデル出力yrと一致するように制御対象を制御するものである。
特開2002−130020号公報
特開2004−285915号公報
特開2006−144721号公報

概要

逆モデルに依らず、安定したフィードフォワード制御系を構築することが可能な技術を提供する。本発明では、伝達関数P(z-1)を、遅延演算子z-1の多項式N(z-1),D(z-1)を用いて、P(z-1)=N(z-1)/D(z-1)で表現可能な制御対象を制御するに際し、次の方法で、制御システムを構築する。即ち、規範モデルM(z-1)を、伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)を含む関数M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定して、所望の規範モデルM(z-1)に対応する関数L(z-1)を導出する。そして、フィードフォワード操作量uff(i)を、関数L(z-1)及び伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式Uff(i)=D・L・r(i)に従って、算出するように、フィードフォワード制御系を構築する。このようにして、本発明では、逆モデルP-1を用いずに、フィードフォワード制御系を実現する。

目的

本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、逆モデルに依らず、安定したフィードフォワード制御システムを構築することが可能な技術を提供することを目的とする。更には、フィードフォワード制御系とフィードバック制御系とを組み合わせて制御システムを構成することにより、従来よりも高精度な制御を実現可能な技術を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

時刻iでの制御入力u(i)に対する制御出力y(i)の関係を表す制御対象伝達関数P(z-1)を、遅延演算子z-1の多項式N(z-1),D(z-1)を用いて、式で表現可能な前記制御対象を制御する制御システム構築方法であって、目標値r(i)と前記目標値r(i)に対し実現されるべき制御出力の理想値yr(i)との関係yr(i)=M(z-1)r(i)を定義付ける規範モデルM(z-1)を、前記伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)を含む関数M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定して、前記規範モデルM(z-1)に対応する関数L(z-1)を導出し、前記目標値r(i)に対するフィードフォワード操作量uff(i)を、前記関数L(z-1)及び前記伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式に従って算出し、算出した前記フィードフォワード操作量uff(i)に基づき、前記制御対象をフィードフォワード制御するシステムを前記制御システムとして構築することを特徴とする制御システムの構築方法。

請求項2

前記制御システムは、制御出力y(i)と理想値yr(i)との誤差e(i)[=yr(i)−y(i)]をフィードバック量として、当該誤差e(i)に基づき、フィードバック操作量ufb(i)を算出し、前記算出したフィードバック操作量ufb(i)と、前記算出したフィードフォワード操作量uff(i)とに基づき、制御入力u(i)を算出し、当該制御入力u(i)を前記制御対象に加えて、前記制御対象を制御するシステムであることを特徴とする請求項1記載の制御システムの構築方法。

請求項3

前記誤差e(i)、及び、誤差変化量Δe(i)[=e(i)−e(i−1)],…,Δe(i−(n1−1))、及び、操作量変化量Δufb(i−1)[=ufb(i−1)−ufb(i−2)],…,Δufb(i−(n2−1))を要素とするn=(n1+n2)次元ベクトルを、状態ベクトルX(i)として定義し(但し、n1,n2は1以上の整数である。)、前記フィードバック操作量ufb(i)を、フィードバックゲインF=[f1,f2,…,fn]Tと状態ベクトルX(i)との内積に基づき、式に従って算出するシステムを、前記制御対象を制御する制御システムとして構築すること特徴とする請求項2記載の制御システムの構築方法。

請求項4

各時刻iでの制御入力u(i)に対する制御出力y(i)の関係を表す制御対象の伝達関数P(z-1)を、遅延演算子z-1の多項式N(z-1),D(z-1)を用いて、式で表現可能な前記制御対象を制御する制御システムであって、目標値r(i)を、予め設定された規範モデルM(z-1)に作用させて、モデル出力yr(i)[=M(z-1)・r(i)]を算出するモデル出力算出手段と、前記モデル出力算出手段により算出されたモデル出力yr(i)と制御出力y(i)との誤差e(i)[=yr(i)−y(i)]に基づき、制御出力y(i)がモデル出力yr(i)に一致するように、フィードバック操作量ufb(i)を算出するフィードバック操作量算出手段と、制御出力y(i)がモデル出力yr(i)に一致するように、フィードフォワード操作量uff(i)を算出するフィードフォワード操作量算出手段と、前記フィードバック操作量算出手段が算出したフィードバック操作量ufb(i)及び前記フィードフォワード操作量算出手段が算出したフィードフォワード操作量uff(i)に基づき、制御入力u(i)を算出し、当該算出した制御入力u(i)を前記制御対象に加えて、前記制御対象を制御する制御手段と、を備え、前記規範モデルM(z-1)は、前記伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)と、任意の関数L(z-1)との積M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定されており、前記フィードフォワード操作量算出手段は、前記目標値r(i)から、前記フィードフォワード操作量uff(i)を、前記関数L(z-1)及び伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式に従って算出する構成にされていることを特徴とする制御システム。

請求項5

前記フィードバック操作量算出手段は、各時刻iにおいて、当該時刻iでの誤差e(i)、及び、誤差変化量Δe(i)[=e(i)−e(i−1)],…,Δe(i−(n1−1))、及び、操作量変化量Δufb(i−1)[=ufb(i−1)−ufb(i−2)],…,Δufb(i−(n2−1))と、予め設定されたフィードバックゲインF=[f1,f2,…,fn]Tとに基づき、フィードバック操作量ufb(i)を、式に従って算出する構成にされていることを特徴とする請求項4記載の制御システム(但し、n=n1+n2であり、n1,n2は1以上の整数である。)。

請求項6

前記フィードフォワード操作量算出手段は、前記伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)において係数及び定数項成分として表される前記制御対象の特性を表すパラメータ群{θ}の各値を、制御出力y(i)とモデル出力yr(i)との誤差e(i)が減少する方向に更新することにより、前記フィードフォワード操作量uff(i)を補正する構成にされていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の制御システム。

請求項7

前記フィードバック操作量算出手段は、前記フィードフォワード操作量算出手段による前記パラメータ群{θ}の更新に合わせて、前記算出したフィードバック操作量ufbを補正する構成にされていることを特徴とする請求項6記載の制御システム。

技術分野

0001

本発明は、制御システム構築方法及び制御システムに関する。

背景技術

0002

従来、制御システムとしては、ステップ入力される目標値rから、制御出力理想値を、予め設定された規範モデルMに基づき算出し、これをモデル出力yrとして、モデル出力yr[=M・r]と制御出力yとの誤差eが小さくなる方向に、誤差eから制御入力uを算出し、算出した制御入力uに対応した操作を制御対象に加えることにより、制御対象をフィードバック制御するフィードバック制御システムが知られている。また、この種の制御システムとしては、状態フィードバックにより、制御入力uを算出する制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。

0003

この他、制御システムとしては、制御出力yを帰還せず、目標値rから、予め設定された関数Wに基づき制御入力uを算出し(u=W・r)、制御対象を制御するフィードフォワード制御システムが知られている。また、フィードフォワード制御システムとしては、適応制御の手法により、制御入力uを補正する制御システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、従来の制御システムとしては、フィードバック制御系及びフィードフォワード制御系を組み合わせてなる2自由度制御システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。

0004

フィードフォワード制御システムの構築方法としては、制御対象の伝達関数Pの逆モデルP-1を用いてシステムを構築する方法が知られている。この方法では、逆モデルP-1と、規範モデルMとを組み合わせて関数W=M・P-1を設定し、この関数Wにより、制御入力u、換言すると、フィードフォワード操作量u[=uff=W・r]を算出する。

0005

このようにして制御入力uを算出するフィードフォワード制御システムでは、制御入力uと制御出力yとの間に、関係y=P・uがあるため、y=P・u=P・W・r=M・rとなり、上記制御入力uにより、制御出力yを、理論上、モデル出力yrと一致させることができる。逆モデルP-1を用いたフィードフォワード制御システムは、このような手法で、制御出力yがモデル出力yrと一致するように制御対象を制御するものである。
特開2002−130020号公報
特開2004−285915号公報
特開2006−144721号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、逆モデルP-1を用いてフィードフォワード制御システムを構築する方法では、逆モデルP-1の極が安定でなければならず、不安定極を有する逆モデルP-1では、安定したフィードフォワード制御システムを構築することができないといった問題があった。

0007

本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、逆モデルに依らず、安定したフィードフォワード制御システムを構築することが可能な技術を提供することを目的とする。更には、フィードフォワード制御系とフィードバック制御系とを組み合わせて制御システムを構成することにより、従来よりも高精度な制御を実現可能な技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

かかる目的を達成するためになされた発明(請求項1)は、制御対象の伝達関数P(z-1)、即ち、各時刻iでの制御入力u(i)に対する制御出力y(i)の関係を表す関数P(z-1)を、遅延演算子z-1の多項式N(z-1),D(z-1)を用いて、式

0009

表現可能な制御対象を制御するに際し、次の方法で、制御システムを構築するものである(但し、ここでいう多項式は、所謂単項式も含む。)。

0010

本方法では、目標値r(i)と当該目標値r(i)に対し実現されるべき制御出力の理想値yr(i)との対応関係yr(i)=M(z-1)r(i)を定義付ける規範モデルM(z-1)を、伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)を含む関数M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定して、所望の規範モデルM(z-1)に対応する関数L(z-1)を導出する。そして、この関数L(z-1)を用いて、制御システムを構築する。

0011

具体的には、目標値r(i)に対するフィードフォワード操作量uff(i)を、関数L(z-1)及び伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式

0012

に従って算出し、このフィードフォワード操作量uff(i)に対応した操作を制御対象に加えることにより、フィードフォワード制御を実現するシステムを、上記制御対象を制御する制御システムとして構築する。

0013

このように制御システムを構成すれば、伝達関数Pの逆モデルP-1を用いずに、安定した制御システムを構成することができる。従って、本発明によれば、逆モデルP-1の極が不安定である制御対象に対しても、安定したフィードフォワード制御システムを構築することができるといった利点がある。

0014

具体的に、上記制御対象を制御する制御システムとしては、フィードフォワード制御系とフィードバック制御系とを組み合わせてなる制御システムを構築されるのがよい。
即ち、制御出力y(i)と理想値yr(i)との誤差e(i)[=yr(i)−y(i)]をフィードバック量として、当該誤差e(i)に基づき、フィードバック操作量ufb(i)を算出し、算出したフィードバック操作量ufb(i)と、上記算出したフィードフォワード操作量uff(i)とに基づき、制御入力u(i)を算出し、当該制御入力u(i)を制御対象に加えて、制御対象を制御する2自由度制御システムを、上記制御対象を制御する制御システムとして構築するのがよい(請求項2)。

0015

上述したように、本発明の方法によれば、逆モデルP-1が不安定である制御対象に対しても、フィードフォワード制御を適用することができる。従って、本発明の方法によれば、逆モデルP-1が不安定な制御対象に対しても、フィードバック制御系及びフィードフォワード制御系を組み合わせて2自由度制御システムを構築することができ、高精度な制御を実現可能な制御システムを構築することができる。

0016

尚、上記フィードバック制御系としては、状態フィードバックによりフィードバック操作量ufbを求める制御系を導入することができる。但し、従来型状態フィードバック制御系では、次のような問題がある。

0017

即ち、yr(i)が一定値を採らず変動するシステムで、従来型のように、制御出力の変化量Δy(i)=y(i)−y(i−1)を要素に含む状態ベクトルを設定し、状態フィードバックの手法で、フィードバック操作量ufbを求めると、制御出力y(i)がyr(i)と一致しているにもかかわらず、変化量Δy(i)がゼロにならないため、フィードバック制御が働いて、過剰な制御入力uが制御対象に加えられてしまう問題がある。

0018

そこで、上記制御システムの構築に際しては、変化量Δyに代えて、誤差変化量Δeを採用し、この状態ベクトルに基づき、フィードバック操作量ufbを求めるようにするとよい。

0019

具体的には、誤差e(i)、及び、誤差変化量Δe(i),…,Δe(i−(n1−1))、及び、操作量変化量Δufb(i−1),…,Δufb(i−(n2−1))を要素とするn=(n1+n2)次元ベクトルを、状態ベクトルX(i)として定義し、この状態ベクトルX(i)に基づいて、フィードバック操作量ufb(i)を求めるシステムを、上記制御対象を制御する制御システムとして構築するのがよい。但し、Δe(i−j),Δufb(i−k)は、j∈{0,1,2,…,n1−1}、k∈{1,2,…,n2−1}としてΔe(i−j)=e(i—j)−e(i−(j+1))、Δufb(i−k)=ufb(i−k)−ufb(i−(k+1))である。また、n1,n2は、制御対象の伝達関数Pによって値が定まるものであり、1以上の整数値を採るものである。

0020

具体的に、本発明では、フィードバック操作量ufb(i)を、フィードバックゲインF=[f1,f2,…,fn]Tと上記状態ベクトルX(i)との内積に基づき、式

0021

に従って算出するシステムを、上記制御対象を制御する制御システムとして構築することができる。尚、本願明細書において、上付き文字「T」は転置を表す。

0022

このように状態ベクトルX(i)を設定してシステムを構築すれば、制御出力y(i)が理想値yr(i)と一致する時期に、フィードバック制御が働かないようにすることができ、過剰な制御入力uが制御対象に加えられて、制御出力yのオーバーシュートが発生するのを防止することができる(請求項3)。

0023

また、上記方法により、制御システムは、具体的に、次のように構成することができる。即ち、制御システムは、フィードバック操作量算出手段と、フィードフォワード操作量算出手段と、目標値r(i)を、予め設定された規範モデルM(z-1)に作用させて、モデル出力yr(i)[=M(z-1)・r(i)]を算出するモデル出力算出手段と、フィードバック操作量算出手段が算出したフィードバック操作量ufb(i)及びフィードフォワード操作量算出手段が算出したフィードフォワード操作量uff(i)に基づき、制御入力u(i)を算出し、当該算出した制御入力u(i)を制御対象に加えて、制御対象を制御する制御手段と、を備える構成にすることができる(請求項4)。

0024

この制御システムにおいて、規範モデルM(z-1)は、伝達関数P(z-1)の分子N(z-1)と、任意の関数L(z-1)との積M(z-1)=N(z-1)・L(z-1)に設定されており、フィードバック操作量算出手段は、この規範モデルM(z-1)から求められたモデル出力yr(i)と制御出力y(i)との誤差e(i)[=yr(i)−y(i)]に基づき、制御出力y(i)がモデル出力yr(i)に一致するように、フィードバック操作量ufb(i)を算出する。

0025

また、フィードフォワード操作量算出手段は、目標値r(i)から、フィードフォワード操作量uff(i)を、上記関数L(z-1)及び伝達関数P(z-1)の分母D(z-1)を含む式(2)に従って算出する。

0026

このように制御システムを構成すれば、逆モデルP-1が不安定な制御対象に対しても、フィードフォワード制御系及びフィードバック制御系を組み合わせて、高精度に安定的に制御対象を制御可能な制御システムを構築することができる。

0027

また、フィードバック操作量算出手段は、各時刻iにおいて、当該時刻iでの誤差e(i)、及び、誤差変化量Δe(i),…,Δe(i−(n1−1))、及び、操作量変化量Δufb(i−1),…,Δufb(i−(n2−1))と、予め設定されたフィードバックゲインF=[f1,f2,…,fn]T(但し、n=n1+n2であり、n1,n2は1以上の整数である。)とに基づき、フィードバック操作量ufb(i)を、式

0028

に従って算出する構成にするのがよい(請求項5)。このようにすれば、制御出力yがモデル出力yrと一致しているときに、フィードバック制御が働き、制御対象に対し過剰な操作がなされるのを防止することができ、制御出力yを安定的にモデル出力yrに一致させることができる。

0029

また、制御対象の特性は、種々の要因により動的に変化するため、伝達関数P(z-1)を構成する制御対象の特性に応じて定まるモデルパラメータを、予め固定値としておくと、上記特性変化に応じて、制御誤差が生じる。従って、上記制御システムには、適応制御の手法を取り入れるのが好ましい。

0030

即ち、フィードフォワード操作量算出手段は、D(z-1)において係数及び定数項成分として表される制御対象の特性を表すパラメータ群{θ}の各値を、制御出力y(i)とモデル出力yr(i)との誤差e(i)が減少する方向に更新することにより、フィードフォワード操作量uff(i)を補正する構成にされるのが好ましい(請求項6)。このように、制御システムを構成すれば、特性変動に応じた制御誤差の発生を抑制することができ、高精度な制御を実現することができる。

0031

また、同様に、フィードバック操作量算出手段は、フィードフォワード操作量算出手段によるパラメータ群{θ}の更新に合わせて、算出したフィードバック操作量ufbを補正する構成にされるのが好ましい。このように、上記制御システムを構成すれば、より一層、高精度な制御を実現することができる。

発明を実施するための最良の形態

0032

以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された車両制御システム1の構成を表す説明図である。図1に示すように、本実施例の車両制御システム1は、エンジン10を制御するものである。この車両制御システム1において、内燃機関であるエンジン10の制御は、当該システム1が備える電子制御装置(ECU)50が各種処理を実行することにより実現される。以下では、まず、車両制御システム1の全体構成について説明し、この後、ECU50で実行される処理の内容について具体的に説明する。
<1. 車両制御システム1の全体構成>
図1に示すように、本実施例の車両制御システム1においては、エンジン10の吸気管13の最上流部に、エアクリーナ15が設けられ、このエアクリーナ15の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ17が設けられている。また、エアフローメータ17の下流側には、モータ19によって開度調整されるスロットルバルブ20とスロットル開度を検出するスロットル開度センサ21とが設けられている。

0033

スロットルバルブ20の下流側には、サージタンク13aが設けられており、このサージタンク13aには、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ23が設けられている。また、サージタンク13aには、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド25が設けられ、各気筒の吸気マニホールド25の吸気ポート近傍には、燃料噴射するインジェクタ27が設けられている。

0034

この他、エンジン10のシリンダヘッドには、気筒毎に、点火プラグ29が設けられ、気筒内の混合気は、点火プラグ29の火花放電によって着火される。この他、エンジン10が有する吸気バルブ31及び排気バルブ32の夫々は、可変バルブタイミング調整機構33,34によって駆動されるように構成され、本実施例の車両制御システム1では、エンジン運転状態に応じて、吸気排気バルブタイミング(VVT角度)が調整される。

0035

また、エンジン10の排気管35には、排出ガス浄化する三元触媒等の触媒37が設けられ、触媒37の上流側には、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサ39が設けられている。この他、エンジン10のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ41、及び、エンジン回転速度を検出する回転速度センサクランク角センサ)43が設けられている。

0036

これら各種センサの出力は、ECU50に入力され、ECU50は、これらのセンサ入力に基づき、各種処理を実行する。具体的に、ECU50は、マイクロコンピュータ主体として構成されており、内蔵されたROMに記録された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、空燃比制御可変バルブタイミング制御スロットル開度制御アイドル回転速度制御等の各種のエンジン制御を実現する。

0037

以下では、本発明を、空燃比制御及び可変バルブタイミング制御に適用した例を説明するが、本発明は、これらへの適用に制限されることなく、種々の制御に適用することができる。
<2. 空燃比制御>
<2.1原理
本実施例の車両制御システム1では、運転状態に応じて、目標空燃比rを切り替え、目標空燃比rと、空燃比センサ39で検出された空燃比yとに基づき、インジェクタ27の燃料噴射量を調整し、空燃比制御を実現する。具体的に、本実施例では、フィードバック制御系とフィードフォワード制御系とを組み合わせてなる系により、空燃比制御を実現する。図2(a)は、本実施例の空燃比制御系の構成を表す機能ブロック図である。一方、図2(b)は、本実施例との対比として、従来手法で空燃比制御系を構築した場合の空燃比制御系の構成を表した機能ブロック図である。

0038

従来手法としては、逆モデルを用いた方法が知られており、逆モデルを用いて制御系を構築する場合には、プラントの制御入力uと制御出力yとの関係を表す伝達関数が関数Pで表されるとき、規範モデルMと逆モデルP-1とを用いて、次式によりフィードフォワード操作量uffを求める。尚、本願明細書では、時刻iでのパラメータ値を、パラメータを表す記号の後に、(i)を付すことで表現する。例えば、uff(i)は、時刻iでのフィードフォワード操作量uffを表すものとする。

0039

また、規範モデルMの出力yr

0040

と制御出力(空燃比)yとの誤差e=yr−yから、フィードバック操作量ufbを求め、フィードフォワード操作量uff及びフィードバック操作量ufbの加算値u=uff+ufbを、プラントに対する操作量(制御入力)とする。

0041

従来では、このようにして、操作量uを求めることで、空燃比(制御出力y)が規範モデルMの出力yrと一致するように、制御を実現する。
しかしながら、この手法で制御系を構築する場合には、プラントの逆モデルP-1が安定でなければならず、逆モデルP-1の極(特性方程式の解)が安定極でない場合、このような逆モデルを用いる方法では、安定した制御系を構築することができない。そこで、本実施例では、逆モデルP-1が不安定な場合であっても、次の手法で、制御系を構築することにより、安定した制御系を構築する。

0042

具体的には、図2(a)に示すように、規範モデルMを、プラントの伝達関数Pの分子Nを含む関数M=NLに設定し、目標空燃比rに対する規範モデルMの出力yrを次式

0043

に従って求めるようにする。そして、この規範モデルMの出力yrと制御出力yとの誤差e=yr−yに基づき、状態フィードバックの手法により、フィードバック操作量ufbを算出するように、フィードバック制御系を構築する。また、これに組み合わせるようにして、次のフィードフォワード制御系を導入する。

0044

即ち、プラントの伝達関数Pの分母Dを含む関数W=D・Lを用いて、次式

0045

により、目標空燃比rに対するフィードフォワード操作量uffを求めるフィードフォワード制御系を導入する。

0046

このようにすることで、本実施例では、逆モデルP-1を用いずに空燃比制御系を構築する。この方法によれば、フィードバック操作量ufb=0のとき、y(i)=P・uff(i)=N・L・r(i)=M・r(i)となる。従って、上記のように制御系を構築すれば、逆モデルP-1を用いずに適切な制御系を構築できることになる。

0047

この点について、伝達関数Pの具体例を挙げて説明する。プラントに対する制御入力をuとし、プラントからの制御出力をyとした場合に、プラントの伝達関数Pが次のように表されるものとする。

0048

本実施例では、この場合に、関数N,Dを、次のように設定する。

0049

このようにして、本実施例では、関数Nを、伝達関数Pの分子が示す遅延演算子z-1を変数とする関数に設定し、関数Dを、伝達関数Pの分母が示す遅延演算子z-1を変数とする関数に設定する。但し、ここでは、伝達関数Pの分子及び分母を、夫々遅延演算式z-1の多項式H(z-1)

0050

で表現して、伝達関数Pを整理する(但し、ここでいう多項式は、所謂単項式も含む。)。そして、この状態で、関数N及び関数Dを、夫々設定する。また、規範モデルMを、関数Nを含む関数で表すことで、関数Lを導出し、規範モデルMに合わせて、例えば、次のように関数Lを設定する。

0051

そして、これらの関数L,N,Dに基づき、フィードフォワード操作量uffを求める。

0052

また、規範モデルMの出力yrを、次式

0053

に従って求め、この出力yrと制御出力yとの誤差e=yr−yに基づき、フィードバック操作量ufbを求める。そして、フィードバック操作量ufbとフィードフォワード操作量uffとの加算値u=ufb+uffを、制御入力として、空燃比制御を実現する。

0054

また、本実施例では、フィードバック制御系として、I(積分)動作を含む状態フィードバック制御系を構築することにより、誤差e=yr−yから上記フィードバック操作量ufbを求める。

0055

周知のように、I動作を含む状態フィードバック制御系を構築するに際しては、規範モデルの出力yr(i)と制御出力y(i)との誤差e(i)=yr(i)−y(i)、及び、フィードバックする状態変数xjの変化量Δxj(i)=x(i)−x(i−1)に基づき、状態ベクトルを、次のように設定し、

0056

上記状態ベクトルXを用いて、系の状態方程式を、次式

0057

で表現し、この状態方程式から、フィードバックゲインF=[f1,f2,…,fj,…,fJ,fI]を算出して、フィードバック操作量ufbの補正量Δufbを求める。

0058

即ち、上記状態方程式に対応する系の特性方程式

0059

が望ましい極を有するように、フィードバックゲインF=[f1,f2,…,fj,…,fJ,fI]を算出して、次式

0060

により、補正量Δufbを求める。

0061

そして、最終的に、フィードバック操作量ufb(i)を、次式に従って算出する。

0062

具体的に、式(9)で表される伝達関数Pのプラントを有する空燃比制御系に、状態フィードバック制御系を適用する場合には、制御出力y(i)が、次式

0063

で表されることから、一般的には、状態ベクトルX(i)を、制御出力yの変化量Δy(i)=y(i)−y(i−1)、及び、フィードバック操作量ufbの変化量Δufb(i−1),Δufb(i−2),…,Δufb(i−(d+1))、及び、誤差e(i)を用いて、次のように設定し、

0064

この状態ベクトルX(i)に基づき、フィードバック操作量ufbを求めることになる。

0065

しかしながら、このような状態ベクトルXの設定では、状態フィードバック制御系を、フィードフォワード制御系と組み合わせた際、状態フィードバック制御系が、フィードフォワード制御系と調和せず、過剰な操作が発生する。

0066

即ち、従来では、フィードフォワード制御系と組み合わせることを考慮せずに、状態フィードバック制御系を構築しているため、本実施例のように、フィードバック制御系及び状態フィードフォワード制御系を組み合わせて、空燃比制御を実現する場合に、上記従来技術を適用すると、制御出力yと規範モデルMの出力yrとの誤差eがゼロであるにもかかわらず、変化量Δyの作用により、フィードバック操作量ufbがゼロにならず、誤差e=0でフィードバック制御系を働かせる必要がない状態でも、フィードバック制御系が働いて、過補正が発生し、制御出力yを規範モデルMの出力yrに安定的に一致させることができないといった問題があった。

0067

そこで、本実施例では、状態ベクトルXを、次のように設定する。

0068

そして、この状態ベクトルXに基づき、式(23)及び式(24)に従ってフィードバック操作量ufbを算出する。このようにして、本実施例では、誤差eがゼロのときに、フィードフォワード制御系のみで空燃比制御が実現できるようにし、上述した過補正が発生しないようにする。

0069

尚、プラントの伝達関数が式(9)で表される空燃比制御系に、この状態ベクトルXを設定すると、系の状態方程式は、次式で表わされる。但し、ここでは、上記伝達関数Pに含まれるパラメータdの値がd=2であるものとする。

0070

また、系の特性方程式は、次式で表される。

0071

従って、この空燃比制御系では、上記特性方程式が、望ましい特定方程式

0072

に一致するように、次の連立方程式を解いて、フィードバックゲインFを算出する。

0073

このようにして、本実施例では、プラントのモデルパラメータa1,b1,b2に対応するフィードバックゲインFを算出し、上述した手法で、最終的に、フィードバック操作量ufbを求める。

0074

但し、モデルパラメータa1,b1,b2の真値は、未知であり、これらの値は、エンジン運転状態によって変動する。
従って、フィードバック操作量ufb及びフィードフォワード操作量uffの算出に当たっては、例えば、センサ入力に基づき、モデルパラメータa1,b1,b2の真値を推定して、推定値a1*,b1*,b2*に基づき、フィードバック操作量ufb及びフィードフォワード操作量uffを算出する。尚、値a1*,b1*,b2*の算出に当たっては、例えば、特許文献1に記載の公知技術を用いることができる。

0075

また、モデルパラメータa1,b1,b2の真値の推定に関しては、適応制御の手法により、変動要素Kを用いて次のように実現することができる。即ち、式(9)で表されるプラントの伝達関数Pを、変動要素Kを用いて、次式に置き換える。

0076

このようにして、未知パラメータa1,b1,b2の内、パラメータb1,b2を、推定値(平均値)b1*,b2*と変動要素Kとを用いて、b1=K・b1*,b2=K・b2*で表し、未知パラメータを、K,a1とする。このとき、関数N,D,Lは、次のように設定することができる。

0077

そして、次の誤差方程式最小二乗法解くことにより、誤差eがゼロに収束するように、未知パラメータK,a1の真値を推定する。

0078

式(37)は、変形すると、次のようになる。

0079

但し、ここで用いるa1*(i),K*(i)は、時刻iでのa1,Kの推定値を表す。

0080

従って、パラメータζ(i),θ,θ*(i)を、次のように導入すれば、

0081

誤差方程式を、次のように表すことができ、

0082

当該誤差方程式を、固定トレース法などの周知の逐次最小二乗法で解くことができる。

0083

具体的に、固定トレース法では、パラメータλ1,λ2を設定し、パラメータΓ(i)の初期値Γ(0)を設定して、次式により、Γ’(i)及びΓ(i)を順に求める。ここでの記号「tr」は、後ろに係る行列対角成分の総和を表す。また、パラメータλ1,λ2は、推定値θ*の修正速度を定めるパラメータである。

0084

そして、前回の推定値θ*(i−1)を用いて、今回の推定値θ*(i)を次式により算出する。

0085

固定トレース法では、このようにして、未知パラメータθを、誤差e=0となる方向に推定する。

0086

従って、上述のように未知パラメータθを推定した場合には、推定値θ*に基づいて、フィードフォワード操作量uff及びフィードバック操作量ufbを、次のように算出することができる。

0087

このように、フィードフォワード操作量uff及びフィードバック操作量ufbを算出すれば、モデルパラメータa1,b1,b2の真値を、精度よく推定して、精度よく空燃比を制御することができる。

0088

以上、空燃比制御の原理について説明したが、続いては、空燃比制御に当たって、ECU50が実行する処理の内容について、具体的に説明する。
<2.2 空燃比制御処理>
図3は、ECU50が実行する空燃比制御処理を表すフローチャートである。ECU50は、運転状態に対応する演算周期dtで、当該空燃比制御処理を繰返し実行することにより、空燃比制御を実現する。以下では、図3を用いて、この空燃比制御処理について説明するが、ここでは、プラントの伝達関数Pが式(33)で表されるものとして、話を進める。

0089

ECU50は、空燃比制御処理を開始すると、まず、当該サイクル(時刻i)での目標空燃比r(i)を設定し(S110)、その後、ROMに記録された演算周期dtとパラメータA1,A2との対応関係を示すテーブルに基づき、パラメータA1,A2を、演算周期dtに対応した値に設定する(S120)。尚、パラメータA1,A2は、規範モデルMの応答速度を定めるパラメータである。具体的に、パラメータA1,A2は、一のパラメータαを用いて、次のように表すことができる。

0090

A1=−2α,A2=α2
S120での処理を終えると、ECU50は、プラントのモデルパラメータb1*,b2*を設定する(S130)。ここで、モデルパラメータb1*,b2*は、ROMに記録された固定値に設定されてもよいし、運転状態に基づいて周知技法(例えば、特許文献1参照)で算出した値に設定されてもよい。

0091

本実施例では、後述するように、変動要素Kを毎サイクル推定することにより、モデルパラメータb1,b2の真値を推定する。従って、S130では、毎サイクル、モデルパラメータb1*,b2*の値を更新する必要はなく、モデルパラメータb1*,b2*は、固定値にされない場合であっても、空燃比制御処理の演算周期dtよりも十分長い周期で更新されればよい。

0092

S130での処理を終えると、ECU50は、目標空燃比r(i)に基づき、式

0093

に従って、中間出力ymm(i)を算出する(S140)。中間出力ymm(i)の算出に当たっては、過去の値ymm(i−1),ymm(i−2)が必要になるが、空燃比制御初期において、これらの値が存在しない場合には、形式的に、これらの値をゼロと取扱い、中間出力ymm(i)を算出する。

0094

また、S140での処理を終えると、ECU50は、上記算出した中間出力ymm(i)に基づき、規範モデルMの出力yr(i)を算出する(S150)。具体的には、予め定めた関数Nに中間出力ymm(i)を作用させ、式

0095

に従い、規範モデルMの出力yr(i)を算出する。また、この処理を終えると、ECU50は、S160に移行し、図4に示す適応制御処理を実行する。

0096

図4は、ECU50が実行する適応制御処理を表すフローチャートである。適応制御処理を開始すると、ECU50は、まず式(39)に従い、パラメータζ(i)を設定する(S310)。また、パラメータλ1,λ2の値を設定し(S320)、設定したλ1,λ2の値及びパラメータζ(i)の値を用いて、式(43)に従い、Γ’(i)を算出する(S330)。尚、第1サイクルで、Γ’(i=1)を算出する際には、予め定められた初期値Γ(0)に従って、Γ’(1)を算出する。また、Γ(0)及びパラメータλ1,λ2の値は、予めROMに記録されているものとする。

0097

S330での処理を終えると、ECU50は、算出したΓ’(i)に基づき、式(44)に従って、Γ(i)を算出し(S340)、その後、次式に従って、ベクトルZ(i)を設定する(S350)。

0098

また、S350の処理を終えると、ECU50は、前サイクルで算出したθ*(i−1)及びΓ(i−1)及び今回のS350で設定したZ(i)を用いて、式(45)に従い、θ*(i)を算出する(S360)。その後、当該適応制御処理を終了する。

0099

尚、θ1*(i),θ2*(i)は、θ1*(i)=1/K*(i)、θ2*(i)=a1*(i)/K*(i)で表すことができ、K*の初期値K*(0)は、値1に設定されているものとする。また、a1*の初期値a1*(0)は、空燃比制御処理の第1サイクルのS130で、モデルパラメータb1*,b2*と共に設定されるものとする。

0100

また、S160で適応制御処理を終了すると、ECU50は、S170に移行し、直前の適応制御処理で算出したθ*(i)に基づき、式(46)に従ってフィードフォワード操作量uff(i)を算出する。

0101

また、この処理を終えると、S180に移行し、図5に示すフィードバック操作量算出処理を実行する。
図5は、ECU50が実行するフィードバック操作量算出処理を表すフローチャートである。図5に示すフィードバック操作量算出処理を開始すると、ECU50は、上述した原理で、現在設定されているパラメータa1*(i)=(θ2*(i)/θ1*(i)),b1*,b2*,A1,A2の値に基づき、フィードバックゲインF=[f1,f2,…,fd+1,fd+2,fI]を算出する(S410)。d=2である場合には、式(32)に示す連立方程式(但し、a1=a1*(i),b1=b1*,b2=b2*とする。)を解き、フィードバックゲインFを算出することになる。

0102

そして、この処理を終えると、S420に移行し、式(27)に従って、状態ベクトルX(i)を設定する。この後、ECU50は、設定した状態ベクトルX(i)に基づき、式(23)に従って、補正量Δufb(i)を算出し(S430)、算出した補正量Δufb(i)を、前サイクルのフィードバック操作量ufb(i−1)に加算して、式(24)に示すように、今サイクルで用いるフィードバック操作量ufb(i)を算出する(S440)。その後、当該フィードバック操作量算出処理を終了する。

0103

また、S180でのフィードバック操作量算出処理を終了すると、ECU50は、S190に移行し、式(47)に示すように、S180で算出したフィードバック操作量ufb(i)に、現在設定されている変動要素K*(i)の逆数(1/K*(i))を作用させて、フィードバック操作量ufb(i)を補正する。

0104

また、S190での処理を終えると、ECU50は、S200に移行し、S170で算出したフィードフォワード操作量uff(i)、及び、S190で求めたフィードバック操作量ufb(i)の加算値u(i)を算出する。そして、基本噴射量等の他の補正量uotherを算出し(S210)、最終的なプラントへの制御入力ufinal(燃料噴射量)を算出する(S220)。

0105

そして、このようにして求めた操作量ufinalで、インジェクタ27を制御することにより(S230)、本実施例では、空燃比制御を実現する。
<2.3 空燃比制御処理の変形例>
上述の空燃比制御処理では、パラメータΓを動的に更新して、パラメータθ*(i)を算出するようにしたが、以下に説明する変形例は、パラメータΓを固定値にして、θ*(i)の算出に係る処理負荷を抑えるようにしたものである。ここで説明する変形例の空燃比制御処理は、S160で実行する適応制御処理の内容が異なる程度であるので、以下では、図6を用いて変形例の適応制御処理の内容を説明するに留める。

0106

図6は、ECU50がS160で実行する変形例の適応制御処理を表したフローチャートである。変形例の適応制御処理では、S310での処理と同様、S510で、式(39)に従いパラメータζ(i)を設定した後、S520にて、行列Γの要素の値γ1,γ2を設定する。尚、行列Γは、パラメータθ*の修正速度を定めるものである。

0107

ここで、γ1,γ2は、ROMに記録されているものとする。即ち、S520では、ROMに記録された値を読み出し、行列Γの値γ1,γ2を設定する。

0108

S520での処理を終えると、ECU50は、S350の処理と同様、式(50)に従いベクトルZ(i)を設定する(S530)。そして、前サイクルで算出したθ*(i−1)及び上記設定したΓ及び今回のS530で設定したZ(i)を用いて、次式に従い、θ*(i)を算出する(S540)。その後、当該適応制御処理を終了する。

0109

このようにして、本変形例では、マイクロコンピュータに係る処理負荷を抑え、安価なマイクロコンピュータを用いて、ECU50を構成することができるようにする。従って、本変形例によれば、製品コストダウンを図ることができる。
<2.4空燃比制御のまとめ>
以上、変形例を含む空燃比制御の内容について説明したが、本実施例では、逆モデルを用いずに制御系を構成しているので、逆モデルが不安定なプラントに対しても、安定したフィードフォワード制御系を構築することができる。

0110

また、本実施例では、状態フィードバック制御系を、フィードフォワード制御系と組み合わせるに際し、状態ベクトルの変数として制御出力の変化量Δyを採用せず、誤差eの変化量Δeを採用することで、誤差eがゼロである場合、即ち、制御出力yが規範モデルの出力yrと一致する場合には、状態フィードバック制御系が機能しないようにした。従って、本実施例では、状態フィードバック制御系による過補正の発生を防止することができる。

0111

尚、図7(b)は、従来手法で状態フィードバック制御系を構築した場合の制御出力yの時間変化を表したグラフであり、図7(a)は、本実施例の手法で状態フィードバック制御系を構築した場合の制御出力yの時間変化を表したグラフである。図7に示すように、従来手法では、過補正が発生するため、規範モデルの出力yrと実際の制御出力yとの間に大きな差があるが、本手法では、過補正が発生しないため、制御出力yを精度よく規範モデルの出力yrに一致させることができる。従って、本実施例によれば、安定的に、高精度な空燃比制御を実現することができる。

0112

また、本実施例では、プラントの特性変動による影響を、適応制御処理により抑制するので、特性変動に依らず、高精度に、空燃比制御を実現することができる。
尚、上記実施例において、モデル出力算出手段は、ECU50が実行するS140,S150の処理により実現され、フィードバック操作量算出手段は、S180,S190の処理により実現されている。また、フィードフォワード操作量算出手段は、S160,S170の処理により実現され、制御手段は、S200〜S230の処理により実現されている。
<3.可変バルブイミング(VVT)制御>
続いて、本発明を、可変バルブタイミング(VVT)制御に適用した例について説明する。ここでの制御対象は、可変バルブタイミング調整機構33,34の油圧を制御する油圧制御弁、エンジン10、可変バルブタイミング調整機構33,34のカム位置を検出するカムセンサ(図示せず)からなる系である。即ち、本実施例において、可変バルブタイミング制御は、制御入力を油圧制御デューティとし、制御出力を、カム位置として実現される。
<3.1原理>
本実施例の車両制御システム1では、運転状態に応じて、目標カム位置rを切り替え、目標カム位置rと、カムセンサで検出されたカム位置yとに基づき、可変バルブタイミング調整機構33,34の油圧を調整することにより、可変バルブタイミング制御を実現する。具体的に、本実施例では、空燃比制御と同様、図2(a)に示すフィードバック制御系とフィードフォワード制御系とを組み合わせてなる制御系により、可変バルブタイミング制御を実現する。

0113

但し、可変バルブタイミング制御では、プラントの伝達関数Pが、次式

0114

に示すように、積分項を含むため、このままでは系が不安定で、安定した可変バルブタイミング制御を実現することができない。そこで、本実施例では、プラントに比例制御系を付加し、この系を新たなプラントとする。即ち、本実施例では、可変バルブタイミング制御系として、図8に示す制御系を採用する。図8は、可変バルブタイミング制御系の構成を表す機能ブロック図である。

0115

この制御系では、フィードフォワード操作量Uffとフィードバック操作量Ufbとの加算値Uを、上記新たなプラントへの入力とする。そして、上記新たなプラントでは、制御出力yと、操作量Uとの誤差U−yに、比例ゲインGを作用させて、元のプラントに対し、操作量u=G(U−y)を入力する。このようにして、本実施例では、可変バルブタイミング制御を実現する。

0116

ここで、制御入力がU、制御出力がyである上記新たなプラントの伝達関数P’を考えると、制御入力uと制御出力yとの間には、次の関係

0117

があることから、伝達関数P’は、次のように書き表すことができる。

0118

従って、可変バルブタイミング制御系では、この伝達関数P’の分子を、関数Nに設定し、伝達関数P’の分母を、関数Dに設定して、図8に示す制御系を構築する。ここで、パラメータdが値2(d=2)である場合を考えると、このときの伝達関数P’は、パラメータθ1,θ2,θ3,θ4を設定して、次のように表すことができる。

0119

従って、この場合には、関数N及び関数Dを、次のように設定する。

0120

また、規範モデルMを、関数Nを含む関数M=LNで定め、この関数Mを用いて、目標カム位置rに対する規範モデルMの出力yrを、式(7)に従って求める。具体的には、所望の規範モデルMと関数Nとの関係から求めた関数Lに対し、目標カム位置rを作用させて、中間出力ymmを求め、関数Nに、この中間出力ymmを作用させて、規範モデルMの出力yrを求める。例えば、関数Lが次式

0121

に設定されているときには、中間出力ymmを、式(61)に従って求め、更に、式(62)に従って、規範モデルMの出力yrを求める。

0122

当該可変バルブタイミング制御系では、このようにして求めた規範モデルMの出力yrと制御出力yとの誤差eから、フィードバック操作量Ufbを求める。また、この制御系では、関数Dに、中間出力ymmを作用させ、式(63)に従い、フィードフォワード操作量Uffを求める。

0123

そして、伝達関数P’に、フィードバック操作量Ufbとフィードフォワード操作量Uffとの加算値U=Uff+Ufbを作用させて、カム位置yを、規範モデルMの出力yrに一致させるように、可変バルブタイミング制御を実現する。

0124

尚、本実施例の可変バルブタイミング制御系では、空燃比制御と同様、次の誤差方程式を逐次最小二乗法で解いて、未知パラメータであるθ1,θ2,θ3,θ4の真値を推定する。これにより、プラントの特性変動の影響を抑制して、高精度に可変バルブタイミング制御が実現できるようにする。

0125

即ち、本実施例では、誤差方程式を逐次最小二乗法で解いて算出した推定値θ1*,θ2*,θ3*,θ4*を用いて、次式に従い、フィードフォワード操作量Uffを算出する。

0126

また、可変バルブタイミング制御においても、フィードバック制御系として、I(積分)動作を含む状態フィードバック制御系を構築することにより、誤差eからフィードバック操作量ufbを求める。具体的に、本実施例では、伝達関数P’が、式(57)で表されることから、変動要素K=1に固定すると、制御出力y(i)は、次式

0127

で表されることとなる。従って、本実施例では、空燃比制御と同様の概念を適用して、状態ベクトルXを、次のように設定する。

0128

即ち、本実施例では、状態フィードバック制御系をフィードフォワード制御系と組み合わせることから、状態フィードバック制御による過補正の発生を防止するため、従来の状態フィードバック制御系では、Δy(i),Δy(i−1),Δy(i−2),Δy(i−3)と置くところを、−Δe(i),−Δe(i−1),−Δe(i−2),−Δe(i−3)と置いて、状態ベクトルXを設定し、過補正を防止する。

0129

尚、このように状態ベクトルXを設定すると、系の状態方程式は、次のようになる。

0130

従って、この状態方程式に対応する特性方程式

0131

が望ましい特性方程式

0132

と一致するようにして、フィードバックゲインFを算出する。尚、A1=−4α,A2=6α2,A3=−4α3,A4=α4である。具体的には、次の連立方程式を解いて、フィードバックゲインFを算出する。

0133

そして、このフィードバックゲインFに基づき、次式

0134

に従ってフィードバック操作量Ufbを算出することで、誤差eがゼロのときに、フィードフォワード制御系のみで可変バルブタイミング制御が実現できるようにし、上述した過補正が発生しないようにする。

0135

尚、本実施例では、適応制御を実現するため、算出したフィードバック操作量Ufbに対し、上述の手法で推定した1/K*=θ1*を作用させて、フィードバック操作量Ufbを補正する。

0136

そして、本実施例では、この加算値U=Uff+Ufbを制御入力とすることで、プラントの特性変動の影響を抑制する
以上に、可変バルブタイミング制御の原理について説明したが、続いては、可変バルブタイミング制御の実現に当たって、ECU50が実行する処理の内容について、具体的に説明する。
<3.2 可変バルブタイミング制御処理>
図9は、ECU50が実行する可変バルブタイミング制御処理を表すフローチャートである。ECU50は、運転状態に対応する演算周期dtで、当該可変バルブタイミング制御処理を繰返し実行することにより、可変バルブタイミング制御を実現する。以下では、図9を用いて、この可変バルブタイミング制御処理について説明するが、ここでは、プラントの伝達関数P’が、式(57)で表されるものとして、話を進める。

0137

ECU50は、可変バルブタイミング制御処理を開始すると、まず、当該サイクル(時刻i)での目標空燃比r(i)を設定し(S610)、その後、ROMに記録された演算周期dtとパラメータαとの対応関係を示すテーブルに基づき、パラメータαを、演算周期dtに対応した値に設定する(S620)。尚、パラメータαは、規範モデルMの応答速度を定めるものである。

0138

また、この処理を終えると、S130の処理と同様、プラントのモデルパラメータb1*,b2*の値を設定し(S630)、その後、目標空燃比r(i)に基づき、式(61)に従って、中間出力ymm(i)を算出する(S640)。また、ECU50は、算出した中間出力ymm(i)に基づき、規範モデルMの出力yr(i)を算出する(S650)。即ち、予め定められた関数Nに中間出力ymm(i)を作用させ、式(62)に従い、規範モデルMの出力yr(i)を算出する。その後、ECU50は、S660に移行し、図10に示す適応制御処理を実行する。

0139

図10は、ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行する適応制御処理を表すフローチャートである。適応制御処理を開始すると、ECU50は、式(65)に従い、パラメータζ(i)を設定すると共に(S810)、パラメータλ1,λ2の値を設定し(S820)、設定したλ1,λ2の値及びパラメータζ(i)の値を用いて、S330の処理と同様に、式(43)に従い、Γ’(i)を算出する(S830)。

0140

また、算出したΓ’(i)に基づき、式(44)に従って、Γ(i)を算出し(S840)、更に、次式に従って、ベクトルZ(i)を設定する(S850)。

0141

その後、ECU50は、次式に従い、θ*(i)を算出する(S860)。その後、当該適応制御処理を終了する。

0142

尚、θ1*(i),θ2*(i),θ3*(i),θ4*(i)は、θ1*(i)=1/K*(i)、θ2*(i)=(a1*(i)−1)/K*(i)、θ3*(i)=(a2*(i)−a1*(i))/K*(i)、θ4*(i)=−a2*(i)/K*(i)で表すことができ、K*の初期値K*(0)は、値1に設定されている。また、a1*の初期値a1*(0)及びa2*の初期値a2*(0)は、可変バルブタイミング制御処理の第1サイクルのS630で、モデルパラメータb1*,b2*と共に設定されるものとする。

0143

また、S660で適応制御処理を終了すると、ECU50は、S670に移行し、直前の適応制御処理で算出したθ*(i)に基づき、式(66)に従って、フィードフォワード操作量Uff(i)を算出する。そして、この処理を終えると、S680にて、図11に示すフィードバック操作量算出処理を実行する。

0144

図11は、ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行するフィードバック操作量算出処理を表すフローチャートである。図11に示すフィードバック操作量算出処理を開始すると、ECU50は、上述した原理で、現在設定されているパラメータa1*(i)(=θ2*(i)/θ1*(i)+1),a2*(i)(=−θ4*(i)/θ1*(i)),b1*,b2*,αの値に基づき、フィードバックゲインF=[f1,f2,f3,f4,f5,f6,f7,fI]を算出する(S910)。即ち、式(72)に示す連立方程式を解き、フィードバックゲインFを算出する。

0145

また、この処理を終えると、ECU50は、S920に移行し、式(68)に従って、状態ベクトルX(i)を設定する。この後、設定した状態ベクトルX(i)に基づき、式(73)に従って、補正量ΔUfb(i)を算出し(S930)、算出した補正量ΔUfb(i)を、前サイクルのフィードバック操作量Ufb(i−1)に加算して、今サイクルで用いるフィードバック操作量Ufb(i)を算出する(S940)。その後、当該フィードバック操作量算出処理を終了する。

0146

このようにして、S680でフィードバック操作量算出処理を終了すると、ECU50は、S690に移行し、S680で算出したフィードバック操作量Ufb(i)に、変動要素K*(i)の逆数(1/K*(i))を作用させて、式(74)に示すように、フィードバック操作量Ufb(i)を補正する。

0147

そして、この処理を終えると、ECU50は、S700に移行し、S670で算出したフィードフォワード操作量Uff(i)及び、S690で求めたフィードバック操作量Ufb(i)の加算値U(i)=Uff(i)+Ufb(i)を算出する。そして、他の補正量Uotherを算出し(S710)、最終的なプラントへの制御入力Ufinal(油圧制御デューティ)を算出する(S720)。

0148

そして、このようにして求めた操作量Ufinalで、可変バルブタイミング調整機構33,34を制御することにより(S730)、可変バルブタイミング制御を実現する。

0149

以上、可変バルブタイミング制御処理について説明したが、この処理によれば、空燃比制御と同様、状態フィードバック制御系による過補正の発生を防止することができる。また、プラントの特性変動による影響を、適応制御処理により抑制するので、高精度に、可変バルブタイミング制御を実現することができる。
<3.3可変バルブタイミング処理の第一変形例>
上述の可変バルブタイミング処理では、パラメータΓを動的に更新して、パラメータθ*(i)を算出するようにしたが、以下に説明する第一変形例は、パラメータΓを固定値にすることで、θ*(i)の算出に係る処理負荷を抑えるようにしたものである。尚、第一変形例の可変バルブタイミング処理は、S660で実行する適応制御処理の内容が異なる程度であるので、以下では、図12を用いて適応制御処理の変形例を説明するに留める。

0150

図12は、S660で実行する第一変形例の適応制御処理を表すフローチャートである。この適応制御処理では、まず、式(65)に従いパラメータζ(i)を設定し(S1010)、その後、S1020に移行して、行列Γの値γ1,γ2,γ3,γ4を設定する。尚、行列Γは、パラメータθ*の修正速度を定めるものである。

0151

具体的に、γ1,γ2,γ3,γ4は、ROMに記録されており、ECU50は、S1020で、ROMに記録された値を読み出し、行列Γの値γ1,γ2,γ3,γ4を設定する。

0152

また、この処理を終えると、ECU50は、S850の処理と同様、式(75)に従いベクトルZ(i)を設定する(S1030)。そして、前サイクルで算出したθ*(i−1)及び上記設定したΓ及び今回のS1030で設定したZ(i)を用いて、式

0153

に従い、θ*(i)を算出する(S1040)。その後、当該適応制御処理を終了する。従って、第一変形例では、空燃比制御の変形例と同様、マイクロコンピュータに係る処理負荷を抑えることができ、製品のコストダウンを図ることができるといった利点がある。
<3.4可変バルブタイミング制御処理の第二変形例>
続いて、可変バルブタイミング制御処理の第二変形例について説明する。第二変形例は、上述の実施例とは異なる手法で、パラメータζ(i)を設定することにより、適応制御に係る処理を簡単にしたものである。

0154

具体的に、本変形例では、(1−z-1)の冪乗により、式(57)に示す伝達関数P’の分母を変形して、関数Dを次のように設定する。

0155

そして、誤差方程式を、次のように表現し、θ1,θ2,θ3を推定する。

0156

パラメータθ,θ*(i),ζ(i)を次のように設定すると、

0157

誤差方程式は、次のように変形することができる。

0158

従って、ζ(i),θ*(i)を、このように設定すれば、ζ(i),θ*(i)の次数を抑えながら、式(43)〜式(45)に従い、固定トレース法にて未知パラメータθの真値を推定して、推定値θ*(i)を求めることができ、少ない処理負荷で適応制御を実現できる。

0159

本変形例は、可変バルブタイミング制御処理に、このような手法を採り入れて、適応制御を効率化したものである。尚、図13は、S660で実行される本変形例の適応制御処理を表すフローチャートである。

0160

第二変形例のECU50は、図9に示す可変バルブタイミング制御処理のS660にて、図13に示す第二変形例の適応制御処理を実行する。S660で、この適応制御処理を開始すると、ECU50は、まずS1110にて、式(82)に従い、パラメータζ(i)を設定する。尚、Δymm(i),Δ2ymm(i),Δ3ymm(i)は、次式に従って算出することができる。

0161

この処理を終えると、ECU50は、パラメータλ1,λ2の値を設定し(S1120)、設定したλ1,λ2の値及びパラメータζ(i)の値を用いて、S330の処理と同様に、式(43)に従い、Γ’(i)を算出する(S1130)。

0162

また、算出したΓ’(i)に基づき、式(44)に従って、Γ(i)を算出し(S1140)、更に、次式に従ってベクトルZ(i)を設定する(S1150)。

0163

その後、ECU50は、次式に従い、θ*(i)を算出し(S1160)、当該適応制御処理を終了する。

0164

また、この適応制御処理を終了すると、ECU50は、S670に移行し、直前の適応制御処理で算出したθ*(i)に基づき、フィードフォワード操作量Uff(i)を算出する。具体的に、第二変形例では、次式に従って、フィードフォワード操作量Uff(i)を算出する。

0165

そして、S670での処理を終えると、ECU50は、上述の実施例と同様の手法で、フィードバック操作量Ufbを算出し(S680)、その後、S690で、フィードバック操作量Ufbを、式(74)に従って補正する。但し、本変形例では、θ1*,θ2*,θ3*の定義が、上記実施例とは異なる。

0166

即ち、本変形例では、

0167

である。従って、ここでは、上式右辺を、S680で算出したフィードバック操作量Ufbに掛けて、フィードバック操作量Ufbを補正する。その後、S700〜S730の処理を実行して、可変バルブタイミング制御を実現する。

0168

以上、第二変形例について説明したが、本変形例では、未知パラメータθの推定を簡単にしているので、可変バルブタイミング制御を、簡単な計算で精度よく実現することができるといった利点がある。
<3.5 可変バルブタイミング制御処理の第三変形例>
続いて、可変バルブタイミング制御処理の第三変形例について説明する。図14は、第三変形例の可変バルブタイミング制御処理を表すフローチャートである。

0169

第三変形例は、パラメータΓを固定値にすることで、θ*(i)の算出に係る処理負荷を抑えるようにしたものである。第三変形例の可変バルブタイミング処理は、第二変形例に対し、S660で実行する適応制御処理の内容が異なる程度であるので、以下では、図14を用いて適応制御処理の変形例を説明するに留める。

0170

第三変形例の適応制御処理を開始すると、ECU50は、まずS1210にて、式(82)に従い、パラメータζ(i)を設定する。また、この処理を終えると、ECU50は、S1220に移行して、行列Γの値γ1,γ2,γ3を設定する。

0171

また、この処理を終えると、ECU50は、S1150の処理と同様、式(85)に従いベクトルZ(i)を設定する(S1230)。そして、前サイクルで算出したθ*(i−1)及び上記設定したΓ及び今回のS1230で設定したZ(i)を用いて、式

0172

に従い、θ*(i)を算出する(S1240)。その後、当該適応制御処理を終了する。従って、第三変形例では、マイクロコンピュータに係る処理負荷を抑えることができ、製品のコストダウンを図ることができるといった利点がある。

0173

以上、本発明の実施例について説明したが、本発明が上記実施例に限定されるものではないことは、言うまでもない。

図面の簡単な説明

0174

車両制御システム1の全体構成を表す説明図である。
本実施例の空燃比制御系の構成を表すブロック図(a)及び従来の空燃比制御系の構成を表すブロック図(b)である。
ECU50が実行する空燃比制御処理を表すフローチャートである。
ECU50が空燃比制御の過程で実行する適応制御処理を表すフローチャートである。
ECU50が空燃比制御の過程で実行するフィードバック操作量算出処理を表すフローチャートである。
ECU50が空燃比制御の過程で実行する適応制御処理の変形例を表したフローチャートである。
本実施例の手法でシステムを構築した場合の制御出力yを表すグラフ(a)及び、従来手法でシステムを構築した場合の制御出力yを表すグラフ(b)である。
本実施例の可変バルブタイミング制御系の構成を表すブロック図である。
ECU50が実行する可変バルブタイミング制御処理を表すフローチャートである。
ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行する適応制御処理を表すフローチャートである。
ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行するフィードバック操作量算出処理を表すフローチャートである。
ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行する適応制御処理の第一変形例を表すフローチャートである。
ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行する適応制御処理の第二変形例を表すフローチャートである。
ECU50が可変バルブタイミング制御の過程で実行する適応制御処理の第三変形例を表すフローチャートである。

符号の説明

0175

1…車両制御システム、10…エンジン、27…インジェクタ、31…吸気バルブ、32…排気バルブ、33,34…可変バルブタイミング調整機構、39…空燃比センサ、50…ECU

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