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技術 排ガス経路部材用フェライト系ステンレス鋼

出願人 日新製鋼株式会社トヨタ自動車株式会社
発明者 奥学冨田壮郎
出願日 2007年2月2日 (13年10ヶ月経過) 出願番号 2007-024253
公開日 2008年8月21日 (12年4ヶ月経過) 公開番号 2008-189974
状態 特許登録済
技術分野 排気消音装置 磁性鉄合金の熱処理
主要キーワード 排ガス経路部材 フェライト系ステンレス鋼材 延性脆性遷移温度 センターパイプ 共通条件 耐スケール剥離性 造管溶接 熱疲労試験
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課題

最高到達温度が高いタイプと低いタイプのいずれの排ガス経路部材に適用しても優れた熱疲労特性を呈し、かつ低温靭性にも優れたフェライト系ステンレス鋼を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:1.5%以下、Ni:0.6%以下、Cr:10〜20%、Nb:0.5超え〜0.7%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:1超え〜2%、V:0.2%以下、N:0.03%以下、B:0.0005〜0.02%、さらに必要に応じてAl:0.1%以下、あるいはさらにMo、W、Zr、Coの1種以上を合計で4%以下の範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、長径0.5μm以上のCu相およびNb化合物相がいずれも10個/25μm2以下である組織を有する自動車排ガス経路部材ステンレス鋼

概要

背景

エキゾーストマニホールド触媒コンバーターケースフロントパイプセンターパイプ等の排ガス経路部材には、耐熱性の良好なSUS444系の材料が多く使用されている。また、700℃を超える高温領域での耐高温酸化性および高温強度を改善した材料として、特許文献1、2には、Cuを1〜2質量%程度添加したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。鋼中のCuは加熱によりCu相として析出し、高温強度や熱疲労特性を向上させる作用を有する。この種のCu含有鋼は排ガス温度が高いタイプのエンジンに接続される排ガス経路部材に特に適している。

国際公開第03/004714号パンフレット
特開2006−117985号公報

概要

最高到達温度が高いタイプと低いタイプのいずれの排ガス経路部材に適用しても優れた熱疲労特性を呈し、かつ低温靭性にも優れたフェライト系ステンレス鋼を提供する。質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:1.5%以下、Ni:0.6%以下、Cr:10〜20%、Nb:0.5超え〜0.7%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:1超え〜2%、V:0.2%以下、N:0.03%以下、B:0.0005〜0.02%、さらに必要に応じてAl:0.1%以下、あるいはさらにMo、W、Zr、Coの1種以上を合計で4%以下の範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、長径0.5μm以上のCu相およびNb化合物相がいずれも10個/25μm2以下である組織を有する自動車排ガス経路部材ステンレス鋼。なし

目的

本発明は、最高到達温度が高い場合と低い場合のいずれの排ガス経路部材に適用しても優れた熱疲労特性を呈し、かつ低温靭性にも優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
7件

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請求項1

質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:1.5%以下、Ni:0.6%以下、Cr:10〜20%、Nb:0.5超え〜0.7%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:1超え〜2%、V:0.2%以下、N:0.03%以下、B:0.0005〜0.02%、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定義される[Ti]値に応じて下記(2)式または(3)式で定義される[Nb]値が0.5〜0.65の範囲となる組成を有し、長径0.5μm以上のCu相が10個/25μm2以下、かつ長径0.5μm以上のNb化合物相が10個/25μm2以下に調整された組織を有する排ガス経路部材ステンレス鋼。[Ti]=Ti−4(C+N)……(1)[Ti]≧0のとき、[Nb]=Nb……(2)[Ti]<0のとき、[Nb]=Nb+0.5[Ti]……(3)

請求項2

さらにAl:0.1質量%以下を含有する組成を有する請求項1に記載の排ガス経路部材用ステンレス鋼。

請求項3

さらにMo、W、Zr、Coの1種以上を合計で4%以下の範囲で含有する組成を有する請求項1または2に記載の排ガス経路部材用フェライト系ステンレス鋼

請求項4

当該排ガス経路部材は自動車エキゾーストマニホールド触媒コンバーターフロントパイプセンターパイプのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の自動車排ガス経路部材

技術分野

背景技術

0002

エキゾーストマニホールド、触媒コンバーターのケース、フロントパイプ、センターパイプ等の排ガス経路部材には、耐熱性の良好なSUS444系の材料が多く使用されている。また、700℃を超える高温領域での耐高温酸化性および高温強度を改善した材料として、特許文献1、2には、Cuを1〜2質量%程度添加したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。鋼中のCuは加熱によりCu相として析出し、高温強度や熱疲労特性を向上させる作用を有する。この種のCu含有鋼は排ガス温度が高いタイプのエンジンに接続される排ガス経路部材に特に適している。

0003

国際公開第03/004714号パンフレット
特開2006−117985号公報

発明が解決しようとする課題

0004

近年の自動車エンジン排気ガス経路部材は、エンジン周りに搭載される各種装置の増加に伴って限られた空間に収容する必要性が高まり、厳しい加工が施されて使用される場合が増えている。このため、排ガス温度がさほど高くないエンジンに適用される部材においても極めて優れた熱疲労特性を具備し、かつ優れた低温靭性を有するものが要求されるようになってきた。

0005

フェライト系ステンレス鋼の高温強度や熱疲労特性を改善する手段としては、前述の特許文献1、2ようにCuを適量添加する手段が知られており、特に特許文献2では700℃を超える高温域での高温強度を高める目的でNbを最大0.6質量%まで含有させる手法を採用している。しかしながら、発明者らの詳細な調査によれば、特許文献1、2のCu含有鋼では、最高到達温度が高い場合の熱疲労特性(例えば200〜900℃)は良好であるが、最高到達温度が低い場合の熱疲労特性(例えば200〜750℃)に関してはSUS444系材料に若干劣る場合があることがわかってきた。このため、特許文献1、2の鋼は排気温度の高い高出力エンジン搭載車への適用には有利であるが、排気温度の比較的低い小型エンジン搭載車への適用にはあまり適していない。また、高出力エンジンであっても使い方によって排気温度が変動しうることから、排ガス経路部材としては最高到達温度が低い場合にも良好な熱疲労特性を呈する材料を使用することが望まれる。

0006

本発明は、最高到達温度が高い場合と低い場合のいずれの排ガス経路部材に適用しても優れた熱疲労特性を呈し、かつ低温靭性にも優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

前述のように、最高到達温度が例えば900℃以上と高い場合の熱疲労特性はCu相の析出を利用することによって改善される。ところが、更なる検討の結果、最高到達温度が例えば750℃程度以下と低い場合の熱疲労特性については、Nbの析出形態コントロールすることによって改善されることが判明した。すなわち、Cu相とNi化合物相の析出形態をコントロールすることにより、最高到達温度が高い場合と低い場合の両方に対応できるフェライト系ステンレス鋼が実現できる。

0008

本発明では、質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以下、Mn:1.5%以下、Ni:0.6%以下、Cr:10〜20%、Nb:0.5超え〜0.7%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:1超え〜2%、V:0.2%以下、N:0.03%以下、B:0.0005〜0.02%、さらに必要に応じてAl:0.1%以下、あるいはさらにMo、W、Zr、Coの1種以上を合計で4%以下の範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で定義される[Ti]値に応じて下記(2)式または(3)式で定義される[Nb]値が0.5〜0.65の範囲となる組成を有し、長径0.5μm以上のCu相が10個/25μm2以下、かつ長径0.5μm以上のNb化合物相が10個/25μm2以下に調整された組織を有する排ガス経路部材用ステンレス鋼が提供される。
[Ti]=Ti−4(C+N) ……(1)
[Ti]≧0のとき、[Nb]=Nb ……(2)
[Ti]<0のとき、[Nb]=Nb+0.5[Ti] ……(3)

0009

(1)式のTi、C、Nの箇所、および(2)式、(3)式のNbの箇所には、質量%で表される当該元素含有量の値が代入される。当該排ガス経路部材として、例えば自動車のエキゾーストマニホールド、触媒コンバーター、フロントパイプ、センターパイプが好適な対象となる。もちろん、自動車以外の各種排ガス経路部材として使用しても構わない。

発明の効果

0010

本発明によれば、最高到達温度が高い場合の熱疲労特性(例えば200〜900℃)と、最高到達温度が低い場合の熱疲労特性(例えば200〜750℃)とを同時に改善したフェライト系ステンレス鋼材が実現できた。したがって本発明のフェライト系ステンレス鋼は、排ガス経路部材として高い排ガス温度で使用される場合から低い排ガス温度で使用される場合まで幅広く適用することができる。また、この鋼材は自動車排ガス経路部材に求められる基本的な耐熱性(耐高温酸化性、高温強度)を具備しており、低温靭性にも優れるので、厳しい加工条件が要求される昨今の排ガス経路部材として極めて有用である。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明の鋼は、CuとNbを含有するものであり、Cu相とNb化合物相の異なるタイプの析出相が実際の使用環境において形成されることにより、最高到達温度が高い場合でも低い場合でも、優れた熱疲労特性を発揮する。

0012

種々検討の結果、後述の組成を満たす鋼において、長径0.5μm以上のCu相が10個/25μm2以下、かつ長径0.5μm以上のNb化合物相が10個/25μm2以下に調整された組織状態を呈しているとき、使用時の加熱によって微細析出物の形成が十分に起こり、熱疲労特性の顕著な改善がもたらされることがわかった。換言すれば、Cu相およびNb化合物相とも、長径0.5μm以上の析出相が素材中にあらかじめ10個/25μm2を超える密度で多量に存在していると、加熱により微細な析出相が十分に生成せず、安定した熱疲労特性の改善効果が期待できない。なお、CuあるいはNbが後述の規定を外れて過剰に含有されている場合は、素材中に粗大なCu相あるいはNb化合物相が存在していても、微細な析出相が生成可能であれば熱疲労特性の改善が可能な場合はある。しかしこの場合は、粗大な析出相の存在によって低温靭性が低下する等の弊害を招くので好ましくない。

0013

Cu相は、いわゆるε−Cuと呼ばれる析出相であり、これは1方向に成長しやすいため通常はロッド状の形状となる。Nb化合物相は、Fe2Nbを主体とする析出物であり、Moを含有する場合はFe2(Mo,Nb)の形態をとるのが一般的である。このNb化合物相も1方向に成長しやすいため通常はロッド状の形状となる。したがって、これらの析出相のサイズは長径によって評価するのが妥当である。具体的には透過型電子顕微鏡TEM)による観察像に現れる析出物の長径(観察面における投影長さに相当するもの)を、ここでいう長径として採用すればよい。Cu相であるかNb化合物相であるかは、TEMに備えられている分析装置(EDXなど)を用いて同定できる。なお、Nb炭化物、Nb窒化物はここでいうNb化合物相から除かれる。炭化物および窒化物は、塊状または球状を呈することが多く、その形状から比較的容易にFe2Nb型の析出相と区別できる。形状からの区別が困難な場合には、上述した分析装置(EDXなど)を用いて同定できる。

0014

使用時の最高到達温度が900℃程度あるいはそれ以上に高くなる場合には、その加熱によってCuは十分に再固溶し、主に500〜700℃で微細なCu相が析出する。これにより、繰り返し加熱における疲労特性(すなわち熱疲労特性)が改善される。一方、最高到達温度が750℃程度以下と低いような繰り返し加熱の場合は、Cuが十分に再固溶しない。このため、Cu相の微細析出による熱疲労特性の改善効果が十分に得られない。

0015

本発明では、Cu相だけでは十分改善できない最高到達温度が低い場合の熱疲労特性をNb化合物相の微細析出によって補う。Nb化合物相は、700〜750℃の加熱によって極めて短時間ではあるが析出強化をもたらす。この短時間の析出強化現象が、200〜750℃といった範囲での熱疲労特性を顕著に改善することがわかった。そのメカニズムについては現時点で不明な点が多いが、Nb化合物相による短時間の析出強化によって、繰り返し加熱の初期におけるラチェット変形や圧縮応力によるバルジングが抑制され、これが最高到達温度が低い場合の熱疲労特性にとって有利に作用しているものと推察される。

0016

以下、成分組成について説明する。
CおよびNは、一般的にはクリープ強度等の高温強度向上に有効な元素とされるが、過剰に含有すると酸化特性加工性低温靱性溶接性が低下する。本発明ではC、Nとも0.03質量%以下に制限する。

0017

Siは、耐高温酸化性の改善に有効である。また、溶接時に雰囲気中の酸素と結合し、鋼中への酸素の侵入を防ぐ作用を呈する。しかし、Si含有量が過剰になると硬さが上昇し、加工性、低温靱性の低下を招く。本発明ではSi含有量は1質量%以下に制限され、例えば0.1〜0.6質量%に制限することもできる。

0018

Mnは、耐高温酸化性、特に耐スケール剥離性を改善する。また、Siと同様、溶接時に雰囲気中の酸素と結合し、鋼中への酸素の侵入を防ぐ作用を呈する。ただし過剰添加は加工性、溶接性を阻害する。またMnはオーステナイト安定化元素であるため、多量に添加するとマルテンサイト相が生成し易くなり、加工性等の低下要因となる。このためMn含有量は1.5質量%以下に制限され、1.3質量%以下とすることがより好ましい。例えば0.1〜1質量%未満に規定することもできる。

0019

Niは、オーステナイト安定元素であり、過剰に含有させるとMnと同様、マルテンサイト相の生成を招き、加工性等の低下要因となる。Ni含有量は0.6質量%まで許容される。

0020

Crは、フェライト相を安定化するとともに、高温材料重視される耐酸化性の改善に寄与する。ただし、過剰のCr含有は鋼材の脆化や加工性低下を招く。このためCr含有量は10〜20質量%とする。Cr含有量は、好ましくは材料の使用温度に合わせて調整される。例えば、950℃までの優れた耐高温酸化性が要求される場合は16質量%以上のCr含有が望まれ、900℃までであれば12〜16質量%の範囲で良い。

0021

Nbは、700℃を超える高温域での高温強度を確保するために非常に有効な元素である。この高温強度の向上は、本成分系ではNbの固溶強化による寄与が大きいと考えられる。また、NbはC、Nを固定し、靭性低下の防止にも有効である。これらのNbの作用は従来一般的なものであるが、本発明ではさらに、Nb化合物相の微細析出を利用して、最高到達温度が750℃程度以下と低い場合における熱疲労特性の向上を狙っている(前述)。このようなNbの作用を十分に得るためには0.5質量%を超えるNb含有量を確保する必要があり、0.6質量%を超えるNb含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のNb添加は加工性の低下、低温靱性の低下、溶接高温割れ感受性の増大を招くので、Nb含有量は0.7質量%以下に制限される。

0022

一方、NbはC、Nと結合しやすい。Nbが炭化物、窒化物として消費されてしまうと、固溶Nbによる高温強度の向上や、Nb化合物相による熱疲労特性の向上が不十分となる。そこで、下記(1)式で定義される[Ti]値に応じて下記(2)式または(3)式で定義される[Nb]値、すなわち有効Nb量を定義している。
[Ti]=Ti−4(C+N) ……(1)
[Ti]≧0のとき、[Nb]=Nb ……(2)
[Ti]<0のとき、[Nb]=Nb+0.5[Ti] ……(3)

0023

C、Nと結合しうる量以上のTi含有量が確保されているとき、すなわち有効Ti量[Ti]が0以上のときは、(2)式のようにNb含有量の値をそのまま有効Nb量[Nb]として採用してよい。一方、有効Ti量[Ti]が0より小さいときは、有効Ti量を補う分のNb含有量を確保する必要があり、(3)式のようにNb含有量より小さい値も有効Nb量[Nb]を採用する。

0024

本発明では、Nb含有量:0.5超え〜0.7質量%の範囲において、さらに有効Nb量[Nb]を0.5〜0.65の範囲に規定する。つまり、極めて狭い範囲でNb含有量を厳密に規定することが、高温強度、低温靭性に加え、最高到達温度が低い場合の熱疲労特性を向上させる上で重要となる。

0025

Tiは、一般にC、Nを固定し、成形性の改善および靱性低下の防止に有効である。特に本発明では、前述のように有効Nb量を確保する観点からTi含有量についても厳密な管理が必要である。具体的には、Ti含有量は0.05質量%以上を確保する必要がある。しかし、過剰のTi添加はTiNの多量生成に起因する表面性状の劣化を招き、さらに溶接性、低温靱性にも悪影響を及ぼすようになる。このためTi含有量は0.05〜0.3質量%に規定される。

0026

Alは、脱酸剤であり、また耐高温酸化性を改善する元素である。本発明においては0.1質量%以下の範囲でAlを含有させることができる。過剰のAl含有は溶接時に多量の酸化物を形成し、加工割れの起点として作用することがある。

0027

Cuは、高温強度を高める上で重要な元素である。すなわち、本発明では前述のようにCu相の微細分散析出現象を利用して、特に最高到達温度が900℃程度以上と高い場合における500〜700℃での強度を高める。そのためには1質量%を超えるCu含有が必要である。ただし過剰のCu含有は加工性、低温靱性、溶接性を低下させるのでCu含有量は2質量%以下に制限される。

0028

Vは、Nb、Cuとの複合添加によって高温強度の向上に寄与する。また、Nbとの共存により、加工性、低温靱性、耐粒界腐食感受性溶接熱影響部の靱性を改善する。ただし、過剰添加すると却って加工性、低温靱性を招くようになるので、0.2質量%以下の範囲で含有させる。V含有量は0.01〜0.2質量%の範囲とすることが望ましく、0.03〜0.15質量%とすることが一層好ましい。

0029

Bは、二次加工脆性を改善するために有効である。そのメカニズムは粒界固溶Cの減少や粒界強化によるものと推察される。しかし、過剰のB添加は製造性や溶接性を劣化させる。本発明では0.0005〜0.02質量%の範囲でBを含有させる。

0030

Mo、W、Zr、Coは、本成分系のフェライト系ステンレス鋼の高温強度を向上させるために有効であり、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。ただし、多量の添加は鋼の脆化を招くので、これらの元素を添加する場合はその合計含有量が4質量%以下となるようにする。合計含有量が0.5〜4質量%の範囲となるように添加することがより効果的である。

0031

以上の組成を有するフェライト系ステンレス鋼は、一般的なステンレス鋼の製鋼プロセスにて溶製することができ、その後、例えば「熱間圧延焼鈍酸洗」の工程、あるいはさらに「冷間圧延→焼鈍→酸洗」を1回または複数回行う工程によって、板厚が例えば1〜2.5mm程度の焼鈍鋼板とする。ただし、仕上焼鈍においては、Nbの析出温度域とCuの析出温度域において、それぞれ適正な冷却速度とすることが重要である。例えば仕上焼鈍条件として、鋼材を950〜1100℃好ましくは1000〜1100℃に加熱した後、Nb化合物相の析出温度域である1000〜700℃の平均冷却速度加熱温度が1000℃未満のときは当該加熱温度から700℃までの平均冷却速度)を30超え〜100℃/秒とし、Cu相の析出温度である700〜400℃の平均冷却速度を5〜50℃/秒とする条件が採用できる。上記の組成調整とこのような熱処理条件によって、長径0.5μm以上のCu相が10個/25μm2以下、かつ長径0.5μm以上のNb化合物相が10個/25μm2以下に調整された組織状態の鋼材(焼鈍鋼板)を得ることができる。ここで、「仕上焼鈍」とは、鋼材の製造段階で行われる最後の焼鈍である。

0032

この焼鈍鋼板を用いて排ガス経路部材が構築される。管状部材の場合は、上記焼鈍鋼板を所定の管形状ロールフォーミングし、素材の突き合わせ部を溶接することにより造管して、溶接鋼管を得る。溶接方法としては、TIG溶接レーザー溶接高周波溶接等、公知の造管溶接法が適用できる。得られた鋼管は、必要に応じて熱処理工程や酸洗工程を経たのち、排ガス経路部材に成形加工される。

0033

表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、「熱間圧延→焼鈍・酸洗→冷間圧延→仕上焼鈍・酸洗」の工程にて、板厚2mmの焼鈍鋼板を得た。また、鋳造スラブの一部を用いて熱間鍛造にて直径約25mmの丸棒を作り、これを仕上焼鈍した。板材における仕上焼鈍、および棒材における仕上焼鈍は、鋼No.19を除き、いずれも1050℃×均熱分保持後、1000℃から700℃までの平均冷却速度が30超え〜100℃/秒の範囲となり、かつ700℃から400℃までの平均冷却速度が5〜50℃/秒の範囲となる条件で行った。鋼No.19では、1000℃から700℃までの平均冷却速度が10〜20℃/秒の範囲となるようにコントロールした以外、他の例と同様の条件で仕上焼鈍を行った(板材、棒材とも共通条件)。

0034

0035

板材の圧延方向および棒材の長手方向をそれぞれL方向と呼ぶとき、仕上焼鈍後の板材および棒材について、それぞれL方向に垂直な断面における金属組織観察を行った。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてCu相およびNb化合物相のサイズを調べ、25μm2当たりに観察される長径0.5μm以上のCu相およびNb化合物相の数を計測した。1つの試料につき少なくとも10視野の観察を行い、平均を採った。析出相の種類は、TEMに付属のEDX(エネルギー分散蛍光X線分析)装置にてFe、Nb、Mo、Cuを定量化することにより分類した。析出相が微細な場合には鋼素地成分元素一緒に検出されるため、析出相に照準を当てた上記4元素の分析値においてCuが50質量%以上となるものをCu相、Nbが30質量%以上となるものをNb化合物相と分類した。長径0.5μm以上のCu相が10個/25μm2以下のものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)として、表2のCu相の欄に結果を示してある。また、長径0.5μm以上のNb化合物相が10個/25μm2以下のものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)として、表2のNb化合物相の欄に結果を示してある。各鋼とも、板材と棒材との間で結果に差はなかったため、表2に示す析出相の評価は板材、棒材のいずれにも当てはまる

0036

板材を用い、衝撃試験を実施して低温靱性を評価した。衝撃を付与する方向が板の圧延方向となるようにVノッチ衝撃試験片採取し、JIS Z2242の衝撃試験を−75〜50℃の範囲で25℃ピッチで行い、延性脆性遷移温度を求めた。遷移温度が−25℃より低いもの(−25℃でも延性破面を呈するもの)を○(良好)、それ以外のものを×(不良)として評価した。

0037

棒材を用いて熱疲労試験を実施し、200〜750℃および200〜900℃の熱疲労特性を調べた。直径10mm、平行部長さ20mmとなるように標点間部を切削加工し(標点間長さは15mm)、標点間中央位置に直径が7mmとなるよう、R=5.7mmの切欠きを設けた丸棒試験片を作製し、大気中にて下記の条件で試験および評価を行った。なお、応力亀裂発生時の応力の75%に低下したときの繰り返し数熱疲労寿命と定義する。

0038

〔200〜750℃の熱疲労特性〕
拘束率(熱膨張に対する付与歪の比)を25%とし、「200℃×0.5分保持→昇温速度約3℃/秒で750℃まで昇温→750℃で2.0分保持→冷却速度約3℃/秒で200℃まで冷却」を1サイクルとするヒートサイクルを繰り返し、熱疲労寿命が1800サイクル以上を○(良好)、1500サイクル以上1800サイクル未満を△(やや不良)、1500サイクル未満を×(不良)と評価し、○評価を合格とした。

0039

〔200〜900℃の熱疲労特性〕
拘束率(熱膨張に対する付与歪の比)を20%とし、「200℃×0.5分保持→昇温速度約3℃/秒で900℃まで昇温→900℃で0.5分保持→冷却速度約3℃/秒で200℃まで冷却」を1サイクルとするヒートサイクルを繰り返し、熱疲労寿命が900サイクル以上を○(良好)、900サイクル未満を×(不良)と評価し、○評価を合格とした。
これらの結果を表2に示す。

0040

0041

表2から判るように、本発明で規定する化学組成およびCu相・Nb化合物相の析出形態を満たす本発明例のものは、最高到達温度が高い場合の熱疲労特性(200〜900℃)、および最高到達温度が低い場合の熱疲労特性(200〜750℃)の両方が改善されており、低温靱性も良好であった。

0042

これに対し、比較例であるNo.13〜15、17はNb含有量が少なく、有効Nb量[Nb]も不足したため、最高到達温度が750℃と低い場合に微細なNb化合物相の生成が不十分となって、200〜750℃熱疲労特性に劣った。No.16は、CuおよびNbを過剰に含有するため、粗大なCu相およびNb化合物相が多く存在していたにも関わらず、熱疲労特性の改善が可能であった。しかし、低温靭性に劣った。No.18はSUS444に相当する従来鋼であり、Cu含有量が低いが、Mo含有量が高いので200〜900℃での熱疲労特性は良好であった。しかし、有効Nb量が不十分であることから200〜900℃での熱疲労特性は改善されなかった。No.19は本発明で規定する組成を有する鋼であるが、仕上焼鈍においてNb化合物相析出温度域の冷却速度が遅すぎたことにより粗大なNb化合物相が生成してしまい、その後の加熱で微細なNb化合物相の析出が十分に起こらなかったので、200〜750℃の熱疲労特性に劣った。また、粗大なNb化合物相の影響により低温靭性にも劣った。

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