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技術 耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板

出願人 日新製鋼株式会社
発明者 藤本延和松元孝岩津智永平田健太郎
出願日 2007年1月31日 (13年10ヶ月経過) 出願番号 2007-021729
公開日 2008年8月14日 (12年4ヶ月経過) 公開番号 2008-184685
状態 特許登録済
技術分野 溶融金属による被覆
主要キーワード 柱補強材 溶接ビード近傍 原子間結合力 耐溶融金属 製造コスト増 ピンニング作用 拘束板 溶接構造部材
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

厳しい溶接条件でも溶融金属脆化割れを安定して抑止できる性質を備えたZn−Al−Mg系めっき鋼板を提供する。

解決手段

素地鋼板(めっき原板)を、質量%でC:0.01〜0.3%、Si:1.5%以下、Mn:0.05〜2.0%、P:0.1%以下、N:0.005%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0003〜0.01%、Cr:0.5〜3.0%であり、必要に応じてNb:0.3%以下、V:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびZr:1.0%以下の1種以上を含有し、あるいはさらにCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式を満たす組成の鋼で構成した耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。 Ti≧3.43×N ……(1)

概要

背景

Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、一般的な亜鉛めっき鋼板と比べ耐食性に優れる。従来、高品質溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造は難しいとされていたが、近年、工業的規模での溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造技術が確立され、最近では外装材のみならず各種構造部材の用途で溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板が使用されるようになってきた。

自動車部材建材をはじめとする構造部材は、めっき鋼板溶接して組み立てられる場合が多い。この場合、溶接時にめっき層鋼素地の一部とともに溶融する。これまでの調査によれば、一般的な亜鉛めっき鋼板に比べ、Zn−Al−Mg系めっき鋼板を使用した場合には、溶接熱影響部(HAZ)に微細粒界割れが生じやすいことが経験的にわかっている。この割れは、溶接時に材料の膨張収縮に伴って生じる引張応力に起因するものであり、溶融金属脆化割れと呼ばれる現象一種である。溶接時に溶融したZn−Al−Mg系めっきの成分が、亜鉛めっきの場合よりも溶融金属脆化割れの感受性を増大させているものと考えられる。

Zn−Al−Mg系めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性を改善するため、これまで種々の検討がなされてきた。特許文献1、2には、下地鋼金属組織フェライトと、ベイナイトパーライトあるいはマルテンサイトとの混合組織とし、結晶粒界を複雑化することによって溶融金属の粒界への侵入を抑制する手法が開示されている。特許文献3には、Ti、Nb、V、Mo、Zr等を添加した鋼板素材を用い、ピンニング作用のあるこれらの元素析出物を分散させて溶接時のオーステナイト域における結晶粒成長を抑制するとともに、これらの元素が溶接後に粒界に偏析する作用を利用することにより割れの防止を図る手法が開示されている。特許文献4には、Cr、Cu、Ni等がSiとともに濃化した強固で薄い皮膜が形成された下地鋼を使用することにより、鋼材表面の結晶粒界に溶融めっき金属が侵入することを抑制する手法が開示されている。

特開2004−315847号公報
特開2004−315848号公報
特開2006−97129号公報
特開2006−89787号公報

概要

厳しい溶接条件でも溶融金属脆化割れを安定して抑止できる性質を備えたZn−Al−Mg系めっき鋼板を提供する。素地鋼板(めっき原板)を、質量%でC:0.01〜0.3%、Si:1.5%以下、Mn:0.05〜2.0%、P:0.1%以下、N:0.005%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0003〜0.01%、Cr:0.5〜3.0%であり、必要に応じてNb:0.3%以下、V:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびZr:1.0%以下の1種以上を含有し、あるいはさらにCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式を満たす組成の鋼で構成した耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。 Ti≧3.43×N ……(1)

目的

上記各特許文献の手法はいずれも、Zn−Al−Mg系めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性の向上に有効である。しかしながら、本発明者らの更なる調査によれば、実際の溶接施工においては、溶接条件によって、これらの文献の手法を採用しても溶融金属脆化割れを食い止めることができない場合があることがわかった。
本発明は、厳しい溶接条件でも溶融金属脆化割れを安定して抑止できる性質を備えたZn−Al−Mg系めっき鋼板を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

質量%でAl:3〜22%、Mg:1〜10%、残部実質的にZnからなる溶融めっきを施しためっき鋼板において、素地鋼板を、質量%でC:0.01〜0.3%、Si:1.5%以下、Mn:0.05〜2.0%、P:0.1%以下、N:0.005%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0003〜0.01%、Cr:0.5〜3.0%、残部Feおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式を満たす組成の鋼で構成したことを特徴とする耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。Ti≧3.43×N……(1)

請求項2

素地鋼板を、さらにNb:0.3%以下、V:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびZr:1.0%以下の1種以上を含有する鋼で構成したことを特徴とする請求項1に記載の耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。

請求項3

素地鋼板を、さらにCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下の1種以上を含有する鋼で構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。

請求項4

前記溶融めっきは、質量%でAl:3〜22%、Mg:1〜10%を含有し、さらにTi:0.1質量%以下、B:0.05質量%以下、Si:2%以下、Fe:2%以下の1種以上を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板。

技術分野

0001

本発明は、溶接加工に供したとき、溶接熱影響部における溶融金属脆化割れの発生が抑止される溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板に関する。

背景技術

0002

Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、一般的な亜鉛めっき鋼板と比べ耐食性に優れる。従来、高品質な溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造は難しいとされていたが、近年、工業的規模での溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造技術が確立され、最近では外装材のみならず各種構造部材の用途で溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板が使用されるようになってきた。

0003

自動車部材建材をはじめとする構造部材は、めっき鋼板溶接して組み立てられる場合が多い。この場合、溶接時にめっき層鋼素地の一部とともに溶融する。これまでの調査によれば、一般的な亜鉛めっき鋼板に比べ、Zn−Al−Mg系めっき鋼板を使用した場合には、溶接熱影響部(HAZ)に微細粒界割れが生じやすいことが経験的にわかっている。この割れは、溶接時に材料の膨張収縮に伴って生じる引張応力に起因するものであり、溶融金属脆化割れと呼ばれる現象一種である。溶接時に溶融したZn−Al−Mg系めっきの成分が、亜鉛めっきの場合よりも溶融金属脆化割れの感受性を増大させているものと考えられる。

0004

Zn−Al−Mg系めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性を改善するため、これまで種々の検討がなされてきた。特許文献1、2には、下地鋼金属組織フェライトと、ベイナイトパーライトあるいはマルテンサイトとの混合組織とし、結晶粒界を複雑化することによって溶融金属の粒界への侵入を抑制する手法が開示されている。特許文献3には、Ti、Nb、V、Mo、Zr等を添加した鋼板素材を用い、ピンニング作用のあるこれらの元素析出物を分散させて溶接時のオーステナイト域における結晶粒成長を抑制するとともに、これらの元素が溶接後に粒界に偏析する作用を利用することにより割れの防止を図る手法が開示されている。特許文献4には、Cr、Cu、Ni等がSiとともに濃化した強固で薄い皮膜が形成された下地鋼を使用することにより、鋼材表面の結晶粒界に溶融めっき金属が侵入することを抑制する手法が開示されている。

0005

特開2004−315847号公報
特開2004−315848号公報
特開2006−97129号公報
特開2006−89787号公報

発明が解決しようとする課題

0006

上記各特許文献の手法はいずれも、Zn−Al−Mg系めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性の向上に有効である。しかしながら、本発明者らの更なる調査によれば、実際の溶接施工においては、溶接条件によって、これらの文献の手法を採用しても溶融金属脆化割れを食い止めることができない場合があることがわかった。
本発明は、厳しい溶接条件でも溶融金属脆化割れを安定して抑止できる性質を備えたZn−Al−Mg系めっき鋼板を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

発明者らの詳細な検討の結果、素地鋼板として、TiとBを複合添加し、かつCrの含有量を一定以上に増量した鋼を採用することにより、上記目的が達成できることを知見した。すなわち本発明では、質量%でAl:3〜22%、Mg:1〜10%、残部実質的にZnからなる溶融めっきを施しためっき鋼板において、素地鋼板(めっき原板)を、質量%でC:0.01〜0.3%、Si:1.5%以下、Mn:0.05〜2.0%、P:0.1%以下、N:0.005%以下、Ti:0.1%以下、B:0.0003〜0.01%、Cr:0.5〜3.0%であり、場合によってはさらにNb:0.3%以下、V:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびZr:1.0%以下の1種以上を含有し、あるいはさらにCu:1.0%以下およびNi:1.0%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物、かつ下記(1)式を満たす組成の鋼で構成したことを特徴とする耐溶融金属脆化割れ性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板が提供される。
Ti≧3.43×N ……(1)

0008

ここで、溶融めっきが「残部実質的にZnからなる」とは、Zn−Al−Mg系めっきの耐食性を阻害せず、かつ溶融めっき鋼板の製造自体が可能な範囲で、Zn、Al、Mg以外の元素の混入許容する趣旨である。例えば、溶融Zn−Al−Mg系めっき浴に一般的に含有される元素として、Ti、B、Si、Feが挙げられるが、これらはTi:0.1質量%以下、B:0.05質量%以下、Si:2%以下、Fe:2%以下の範囲で含有されて構わない。また「残部実質的にZnからなる」には「残部がZnおよび不可避的不純物からなる」場合が含まれ、「Ti、B、Si、Feの1種以上を上記の含有量範囲で含み、残部がZnおよび不可避的不純物からなる」場合も含まれる。(1)式の元素記号の箇所には、質量%で表される当該元素の含有量の値が代入される。

発明の効果

0009

本発明によれば、C含有量0.01〜0.3%の鋼が用いられる種々の用途において、耐食性に優れたZn−Al−Mg系めっき鋼板を使用した健全溶接部を有する溶接構造部材が提供される。したがって本発明は、従来、亜鉛めっき鋼板が使用されていた各種溶接構造部材において、信頼性を維持しながら耐食性レベルの向上をもたらすものである。

発明を実施するための最良の形態

0010

本発明では、めっき原板である素地鋼板として、Ti、B、およびCrを適量含有させた鋼を使用することにより、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の溶接時における溶融金属脆化割れを防止する。以下に素地鋼板の成分元素について説明する。

0011

Cは、鋼材の強度を確保するために必要な元素であり、求められる強度レベルに応じてC含有量が調整される。例えば建材用途として、柱補強材や、骨組接合する箇所の部材には、C含有量が0.07〜0.3質量%に調整された強度レベルの高い鋼が適している。また、自動車部材その他の比較的良好な加工性が要求される用途ではC含有量0.01〜0.07質量%未満の鋼が使用されることが多い。C含有量が高くなると延性低下に伴って加工性が低下するので、用途に応じてC含有量の上限を設定する必要がある。本発明ではC:0.01〜0.3質量%の鋼を対象とする。

0012

Siは、フェライト相に固溶し、鋼材の強度上昇に有効な元素である。その作用を十分に得るには0.01質量%以上のSi含有量を確保することが望ましい。ただし、Si含有量が増大すると、延性が低下したり、鋼材表面にSiが濃化してめっき性が低下したりする。このため本発明ではSi含有量は1.5質量%以下の範囲に制限され、0.5質量%以下とすることがより好ましい。

0013

Mnは、S起因の脆化を防止するとともに強度向上に有効な元素である。これらの効果を得るために0.05質量%以上のMn含有量を確保する。ただし、Mn含有量が増大すると、加工性や溶接性が低下したり、鋼材表面にMnが濃化してめっき性が低下したりする。このため本発明ではMn含有量は2.0質量%以下の範囲に制限され、0.5質量%以下とすることがより好ましい。

0014

Pは、延性に悪影響を及ぼすので、高加工性が要求される用途では低い方がよい。ただ、Pには強度を上昇させる作用があるため、高強度化が必要な用途では加工性やめっき性に悪影響を及ぼさない範囲で添加することができる。例えば0.01質量%以上のP含有が高強度化には有利であるが、上限は上記のような理由から0.1質量%に制限され、0.05質量%以下とすることがより好ましい。

0015

Sは、鋼の脆化を招くので、S含有量は0.03質量%以下に抑えることが望ましい。

0016

Nは、鋼中のBと反応してBNを形成する。BNの形成によってBが消費されると、耐溶融金属脆化割れ性を改善するために重要な機能を担うBの鋼中含有量(有効B量)を十分に確保することが難しくなる。このため、Nの含有量をできるだけ低く抑えることが重要である。本発明では後述のTiによってNを固定することでBNの形成を抑制するのであるが、それでもN含有量は0.005質量%以下に抑えておく必要がある。

0017

Tiは、強力な窒化物形成元素であり、上記のようにNをTiNとして固定することによりBNの形成を抑制する機能を有する。種々検討の結果、このようなTiの機能を十分に発揮させるには、下記(1)式を満たすようにTi含有量を確保する必要がある。
Ti≧3.43×N ……(1)
この(1)式は、鋼中に存在するNのほぼ全量を固定するために必要なTi含有量を示すものである。Ti含有量が(1)式を外れて低い場合は、有効B量を十分に確保することが難しくなる。
また、TiはCrの粒界偏析を促進させる作用があることがわかった。このため、後述のCrによる耐溶融金属脆化割れ性の改善効果を高める上でも有効である。ただし、過剰のTi含有は鋼材の加工性低下および製造コスト増大を招くので、Ti含有量は0.1質量%以下の範囲に制限される。

0018

Bは、溶融金属脆化割れの抑制に有効な元素である。その作用は、Bが結晶粒界に偏析して原子間結合力を高めることによると考えられる。SIMSによる分析では、本発明鋼高温のオーステナイト域に加熱することにより、Bはオーステナイト粒界に顕著に偏析することが確認されている。このようなBによる粒界強化機能を発揮させるには、前述のように、Nの低減やTiによるNの固定によって、BN形成に伴うBの消費を抑制して有効B量を確保することが重要である。その上で、B含有量(トータル量)は0.0003質量%以上を確保する必要があり、0.001質量%以上とすることがより好ましい。ただし、過剰のB添加は加工性劣化の原因となるのでB含有量(トータル量)は0.01質量%以下に制限される。

0019

Crは、高温でのオーステナイト粒界に偏析することにより、溶融金属脆化割れの抑制に顕著に寄与することがわかった。特許文献4に示されるように、従来、Zn−Al−Mg系めっき鋼板の素地鋼板として、CrとBを含有するものも存在した。しかし、そのような従来鋼を用いた場合、実際の溶接施工で溶融金属脆化割れが生じた事例が見られた。発明者らは詳細な研究の結果、従来鋼よりもCr含有量レベルを高めること、および、Tiを添加することによって、上記の問題が解消できることを突き止めた。具体的には、TiおよびBの添加量については上述の通りであり、Crの添加量については0.5質量%以上好ましくは0.5質量%を超えるCr含有量を確保することが極めて有効であることがわかった。このようにTi、Bの添加とCrの増量によって耐溶融金属脆化割れ性が顕著に改善されるメカニズムについては、現時点で明確にはなっていないが、一定量以上のBとCrが同時に高温のオーステナイト粒界に偏析することによって、BとCrの相乗効果によって従来鋼の場合よりも粒界エネルギーが低下し、粒界における原子間結合力が高められ、その結果、溶融金属脆化割れに対する抵抗力が顕著に増大したものと推察される。ただし、過剰にCrを含有させると鋼材の加工性が低下し、また靭性にも悪影響を及ぼすので、Cr含有量は3.0質量%以下の範囲に制限される。

0020

Nb、V、Mo、Zr、Cu、Niの各元素も、高温のオーステナイト粒界に偏析することにより溶融金属脆化割れを抑制する作用を有するので、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。その効果はBおよびCrとの複合添加によって一層顕著になる。各元素の上記作用を十分に引き出すためには、それぞれNb:0.01質量%以上、V:0.05質量%以上、Mo:0.05質量%以上、Zr:0.05質量%以上、Cu:0.05質量%以上、Ni:0.05%以上とすることが特に効果的である。ただし、これらの元素を過剰に添加しても溶融金属脆化割れの抑制効果飽和し、鋼材の靭性や加工性の低下、製造コストの増大を招くので、これらの元素を添加する場合は、Nb:0.3%以下、V:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下の範囲で行う。

0021

以上の組成を有する素地鋼板は、一般的な鋼板製造ラインにおいて常法により製造することができる。その後、公知の方法により溶融Zn−Al−Mg系めっきを施してめっき鋼板を得る。本発明に適用されるZn−Al−Mg系めっきは以下のようなものである。

0022

めっき層中のAlは、めっき鋼板の耐食性を向上させる作用を有する。また、めっき浴中にAlを含有させることでMg酸化物ドロス発生を抑制する作用もある。これらの作用を十分に得るには溶融めっきのAl含有量を3質量%以上とする必要があり、4質量%以上とすることがより好ましい。一方、Al含有量が22質量%を超えると、めっき層と素地鋼板との界面でFe−Al合金層の成長が著しくなり、めっき密着性が悪くなる。優れためっき密着性を確保するには15質量%以下のAl含有量とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。

0023

めっき層中のMgは、めっき層表面に均一な腐食生成物を生成させて当該めっき鋼板の耐食性を著しく高める作用を呈する。その作用を十分に発揮させるには溶融めっきのMg含有量を1質量%以上とする必要があり、2質量%以上を確保することが望ましい。一方、Mg含有量が10質量%を超えると、Mg酸化物系ドロスが発生し易くなる弊害が大きくなる。より高品質のめっき層を得るには5質量%以下のMg含有量とすることが好ましく、4質量%以下とすることがより好ましい。

0024

溶融めっき浴中にTi、Bを含有させると、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板において斑点状の外観不良を与えるZn11Mg2相の生成・成長が抑制される。Ti、Bはそれぞれ単独で含有させてもZn11Mg2相の抑制効果は生じるが、製造条件の自由度を大幅に緩和させる上で、TiおよびBを複合で含有させることが望ましい。これらの効果を十分に得るには、溶融めっきのTi含有量は0.0005質量%以上、B含有量は0.0001質量%以上とすることが効果的である。ただし、Ti含有量が多くなりすぎると、めっき層中にTi−Al系の析出物が生成し、めっき層に「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にTiを添加する場合は0.1質量%以下の含有量範囲とする必要があり、0.01質量%以下とすることが望ましい。また、B含有量が多くなりすぎると、めっき層中にAl−B系あるいはTi−B系の析出物が生成・粗大化し、やはり「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にBを添加する場合は0.05質量%以下の含有量範囲とする必要があり、0.005質量%以下とすることが望ましい。

0025

溶融めっき浴中にSiを含有させると、前記Fe−Al合金層の成長を抑制し、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の加工性を向上させる作用を有する。また、めっき層中のSiは、めっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効である。このようなSiの作用を十分に引き出すためには溶融めっきのSi含有量を0.005質量%以上とすることが効果的である。ただし、過剰にSiを添加すると溶融めっき浴中のドロス量が多くなるので、めっき浴にSiを含有させる場合は2.0質量%以下の含有量範囲とする。

0026

溶融めっき浴中には、素地鋼板を浸漬・通板する関係上、一般にはFeの混入が避けられない。Zn−Al−Mg系めっきにおいて、Feは概ね2質量%程度まで含有が許容される。めっき浴中には、その他の元素として例えば、Ca、Sr、Na、希土類元素、Ni、Co、Sn、Cu、Cr、Mnの1種以上が含まれていても構わないが、それらの合計含有量は1質量%以下であることが望ましい。

0027

めっき付着量は、鋼板片面あたり20〜300g/m2の範囲で調整することが望ましい。めっき付着量の制御は、一般的な亜鉛めっき鋼板の製造に準じてガスワイピングノズルを用いて行うことができる。ワイピングガスやめっき層凝固時の雰囲気ガスは空気(大気)とすることができる。すなわち空冷方式が採用できる。なお、めっき浴温が550℃を超えると、浴からの亜鉛の蒸発が顕著になるため、めっき欠陥が発生しやすく、かつ浴表面の酸化ドロス量が増大するので好ましくない。

0028

表1〜表4に示す組成の鋼を真空溶解炉にて溶製してインゴットを作製し、熱間鍛造熱間圧延酸洗冷間圧延の工程にて板厚3.2mmの冷延板を作製した。冷延板を水素窒素混合ガス中700℃で焼鈍した後、大気に触れない状態を保ったまま、直ちに以下に示すいずれかのめっき浴に浸漬し、溶融Zn−Al−Mg系めっきを施した。下記の「%」は質量%である。
〔めっき浴a〕Al:6%、Mg:3%、Zn:残部
〔めっき浴b〕Al:6%、Mg:3%、Ti:0.002%、B:0.0005%、Si:0.01%、Fe:0.1%、Zn:残部
〔めっき浴c〕Al:6%、Mg:3%、Si:0.1%、Fe:0.1%、Zn:残部
〔めっき浴d〕Al:12%、Mg:8%、Si:0.1%、Fe:0.1%、Zn:残部

0029

めっき浴温は約400℃であり、めっき浴から引き上げてめっき付着量を鋼板片面当たり約90g/m2に調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき層凝固時の冷却は空気冷却である。

0030

得られためっき鋼板から100mm×75mmのサンプルを切り出し、これを溶融金属脆化に起因する溶接最大割れ長さを評価するための試験片とした。
溶接試験図1に示すような外観のボス溶接部材を作製する「ボス溶接」を行い、その溶接部断面を観察して割れの発生状況を調べる方法で行った。すなわち試験片3の板面中央部に直径20mm×長さ25mmの棒鋼からなるボス突起)1を垂直に立て、このボス1を試験片3にアーク溶接にて接合した。溶接ワイヤは、YGW12を用い、溶接開始点からボスの周囲を1周して、溶接開始点を過ぎた後もさらにビードを重ねて少し溶接を進めたところで溶接終了とした。すなわち、溶接開始点と溶接終了点の間に溶接ビード6が重なるようにした。溶接条件は、溶接電流:217A、溶接電圧25V、溶接速度0.2m/min、シールドガス:CO2、シールドガス流量:20L/minとした。ボス1と試験片3と溶接ビード6からなる溶接後の部材をここでは「ボス溶接部材」と呼んでいる。

0031

ただし、溶接に際しては実験的に溶接割れを起こりやすくする目的で、図2に示すように試験片3を拘束した状態で行った。すなわち、試験片3を、120mm×95mm×板厚4mmの拘束板4(JISに規定されるSS400鋼材)の板面中央部に置き、予め試験片3の全周を拘束板4に溶接した。そして一体となった試験片3/拘束板4の接合体を水平な実験台5の上に2個のクランプ2によって固定し、この状態で上記のボス溶接を行った。本明細書ではこのような拘束状態で行うボス溶接を「拘束ボス溶接」と呼んでいる。この方法によれば、試験片3は拘束板4と全周溶接により一体となっていることから、ボス溶接時の入熱によって起こる膨張・収縮が拘束されるので、試験片3に作用する熱応力によってボス溶接時に溶接割れが生じやすくなり、溶接割れの明瞭な評価が可能になる。

0032

拘束ボス溶接後に、ボス1の中心軸を通り、かつ前記の溶接ビードの重なり部分8を通る切断面9で、ボス1/試験片3/拘束板4の接合体を切断し、その切断面9について溶接ビード近傍の試験片3(すなわちめっき鋼板母材である素地鋼板)部分の金属組織を顕微鏡観察した。顕微鏡観察によって当該断面内の試験片3の部分に観測される割れについて、試験片3のボス溶接側の表面から割れの先端までの割れの長さを測定し、最も長い割れについての測定値を「最大割れ長さ」とした。溶接部の強度や疲労特性を考慮し、最大割れ長さが0.2mm以下のものを合格とした。このような素地鋼板の割れは溶接熱影響部の旧オーステナイト粒界に沿って生じており、これは「溶融金属脆化割れ」であると判断される。
結果を表1〜4中に示す。また、図3には表1、表4に示される鋼について素地鋼板のCr含有量と最大割れ長さの関係を例示する。なお、各素地鋼板のS含有量はいずれも0.03質量%以下である。

0033

0034

0035

0036

0037

Ti、B、Crを適正範囲で含有する本発明例の素地鋼板は、いずれも溶接部近傍での溶融金属脆化割れが顕著に抑制され、最大割れ長さ0.2mmを超えるような割れは生じなかった。この拘束ボス溶接試験において、このように安定して溶融金属脆化割れが抑止されるZn−Al−Mg系めっき鋼板は、従来の同系めっき鋼板と比較して溶接部の強度および疲労特性についての信頼性が大幅に向上しており、建材、自動車をはじめとする種々の部材用途に好適なものである。

0038

これに対し、比較例であるB1鋼、B5鋼(これは特許文献3の発明に相当する鋼である)、およびB6鋼(これは特許文献1の発明に相当する鋼である)はCr含有量が不足しているかあるいはCrを添加していないことにより、この拘束ボス溶接試験で最大割れ長さ0.2mmを超える溶融金属脆化割れが生じた。B2鋼はB含有量が不足していることにより、やはり最大割れ長さ0.2mmを超える溶融金属脆化割れが生じた。B3鋼、B4鋼、B8鋼、B9鋼、B10鋼はTi含有量が(1)式を外れて低かったことによりBNが生成して有効B量が十分に確保できなかったと考えられ、B含有量およびCr含有量は適正であるにも関わらずZn−Al−Mg系めっき鋼板の溶接に伴う溶融金属脆化割れを抑制することができなかった。B7鋼(これは特許文献4の発明に相当する鋼である)はCr含有量が少なく、またTi含有量が(1)式を外れて低かったことにより、やはり最大割れ長さ0.2mmを超える溶融金属脆化割れが生じた。

図面の簡単な説明

0039

ボス溶接部材の形状を模式的に示した図。
拘束ボス溶接を行う際の試験片の拘束方法を模式的に示した断面図。
素地鋼板のCr含有量と最大割れ深さの関係を例示したグラフ

符号の説明

0040

1ボス
2クランプ
3試験片
4拘束板
5実験台
6溶接ビード
7 試験片全周溶接部の溶接ビード
8 溶接ビードの重なり部分
9 切断面

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