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技術 電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法及びそのための器具

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所凸版印刷株式会社シャープ株式会社
発明者 平塚淳典木下英樹横山憲二坂入幸司丸尾祐二
出願日 2006年12月27日 (12年9ヶ月経過) 出願番号 2006-350976
公開日 2008年7月17日 (11年3ヶ月経過) 公開番号 2008-164319
状態 特許登録済
技術分野 電気化学的な材料の調査、分析
主要キーワード 親水性コーティング層 プラスチックブロック 乾燥媒体 重合室 乾燥固定 矩形溝 半楕円状 二次元形状
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年7月17日)のものです。
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図面 (7)

課題

電気泳動の結果の再現性を高めることができる、電気泳動用乾燥媒体への試料導入方法及びそのための治具を提供すること。

解決手段

乾燥ゲルへの試料の導入とゲル膨潤を2段階に分け、先ず、少量の試料溶液をゲルの長手方向の全長に渡る領域からその全量を吸収させ、次いで、膨潤液でゲル全体を膨潤させることにより、二次元電気泳動の再現性を向上させることができる。電気泳動用乾燥媒体に試料を導入するための治具は、治具本体と、該治具本体に設けられた前記試料導入溝具備する。

概要

背景

現在、タンパク質解析によく利用されている技術として二次元電気泳動(2DE)法がある。タンパク質の機能を分析するためには発現量の比較や翻訳後修飾の解析が重要であり、2DEはタンパク質の発現量と翻訳後修飾量を同時に検出できるため、今後、臨床検査などの現場でも利用されるようになるだろうと期待されている。現在、広く行なわれている2DEとして、例えば、一次元目にpH勾配ゲルを用いた等電点電気泳動を行い、二次元目にSDS-PAGEを行なうものがある。一次元目の等電点電気泳動に用いられるpH勾配ゲルは、細長短冊状のゲルであり、プラスチックフィルムにゲルを結合させた乾燥固定化pH勾配ゲル(IPG)が用いられている。

従来、細長い短冊状のIPGへのタンパク質試料の導入は、タンパク質試料をゲルの膨潤液に溶解した試料含有膨潤液中にIPGを浸漬することにより行なわれている。すなわち、IPGよりも幅広の溝を有する器具を用い、上記溝に試料含有膨潤液を入れ、その中にIPGを浸漬する。ゲルは、乾燥部分が残らないようにする必要があり、このため、ゲル全体を膨潤させるのに十分な量の試料含有膨潤液中に通常一晩浸漬する。

しかしながら、この従来法では一晩浸漬しても、二次元電気泳動の結果の再現性が必ずしも満足できない。すなわち、同一の試料について、同一の市販のゲルを用い、同一の方法で二次元電気泳動を行なっても、しばしば異なった結果が得られる。

特許文献1には、IPGに試料を導入する際に、電圧をかけることにより、試料の導入に要する時間を短縮する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1記載の方法では、再現性の問題は解決されず、また、試料タンパク質の電荷かんによっては、試料の導入に要する時間を必ずしも短縮できないと考えられる。

特開2005-345334号公報
特開2006-258685号公報

概要

電気泳動の結果の再現性を高めることができる、電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法及びそのための治具を提供すること。乾燥ゲルへの試料の導入とゲルの膨潤を2段階に分け、先ず、少量の試料溶液をゲルの長手方向の全長に渡る領域からその全量を吸収させ、次いで、膨潤液でゲル全体を膨潤させることにより、二次元電気泳動の再現性を向上させることができる。電気泳動用乾燥媒体に試料を導入するための治具は、治具本体と、該治具本体に設けられた前記試料導入溝具備する。

目的

本発明の目的は、電気泳動の結果の再現性を高めることができ、かつ乾燥ゲルへの試料の導入を迅速に行うことができる、電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法及びそのための器具を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
2件

この技術が所属する分野

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請求項1

細長短冊状の電気泳動用乾燥媒体に、電気泳動にかける試料を含む試料溶液を導入する方法であって、前記乾燥媒体の一方の面である試料導入面の少なくとも一部の領域である試料導入領域を前記試料溶液と直接接触させることを含み、前記試料導入領域は、前記試料導入面の長手方向の実質的に全長に渡る領域であり、前記試料溶液は、前記乾燥媒体の全体を膨潤させることができる量よりも少量であり、前記試料溶液の実質的に全量を前記乾燥媒体に吸収させて該乾燥媒体を部分的に膨潤させ、次いで、膨潤液で前記乾燥媒体の全体を膨潤させる、電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法

請求項2

前記乾燥媒体は、その一方の面が堅固な支持体に直接的又は間接的に支持されている請求項1記載の方法。

請求項3

前記乾燥媒体の長手方向の両端部は前記試料溶液と接触しない請求項1又は2記載の方法。

請求項4

前記支持体は、角棒状プラスチックブロックである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

前記乾燥媒体は、乾燥ゲルである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

前記乾燥媒体は、その一方の面がプラスチックフィルムに結合され、該プラスチックフィルムが前記支持体に支持される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。

請求項7

前記乾燥媒体は、二次元電気泳動一次元目用の乾燥ゲルである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。

請求項8

前記乾燥ゲルは、等電点電気泳動用のpH勾配ゲルである請求項7記載の方法。

請求項9

前記試料溶液は、二次元的形状が前記試料導入領域と実質的に同じ寸法及び形状を有する試料導入溝内に収容され、該試料導入溝内に収容された試料溶液を前記試料導入領域と接触させる請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

前記試料導入溝は、少なくともその底面の実質的に全面が親水化処理されている請求項9記載の方法。

請求項11

前記試料導入溝は、前記支持体を挿入するガイド溝の底面内に設けられ、前記支持体が該ガイド溝に挿入された状態で、前記試料溶液を前記試料導入領域と接触させる請求項9ないし10のいずれか1項に記載の方法。

請求項12

請求項9記載の方法を行なうための器具であって、器具本体と、該器具本体に設けられた前記試料導入溝を具備する、電気泳動用乾燥媒体に試料を導入するための器具。

請求項13

前記試料導入溝は、少なくともその底面の実質的に全面が親水化処理されている請求項12記載の器具。

請求項14

前記試料導入溝は、その長手方向の両端部が親水化処理されていない請求項13記載の器具。

請求項15

前記試料導入溝は、前記乾燥媒体を支持する支持体を挿入するガイド溝の底面内に設けられている請求項12ないし14のいずれか1項に記載の器具。

技術分野

0001

本発明は、電気泳動用乾燥媒体への試料導入方法及びそのための器具に関する。

背景技術

0002

現在、タンパク質解析によく利用されている技術として二次元電気泳動(2DE)法がある。タンパク質の機能を分析するためには発現量の比較や翻訳後修飾の解析が重要であり、2DEはタンパク質の発現量と翻訳後修飾量を同時に検出できるため、今後、臨床検査などの現場でも利用されるようになるだろうと期待されている。現在、広く行なわれている2DEとして、例えば、一次元目にpH勾配ゲルを用いた等電点電気泳動を行い、二次元目にSDS-PAGEを行なうものがある。一次元目の等電点電気泳動に用いられるpH勾配ゲルは、細長短冊状のゲルであり、プラスチックフィルムにゲルを結合させた乾燥固定化pH勾配ゲル(IPG)が用いられている。

0003

従来、細長い短冊状のIPGへのタンパク質試料の導入は、タンパク質試料をゲルの膨潤液に溶解した試料含有膨潤液中にIPGを浸漬することにより行なわれている。すなわち、IPGよりも幅広の溝を有する器具を用い、上記溝に試料含有膨潤液を入れ、その中にIPGを浸漬する。ゲルは、乾燥部分が残らないようにする必要があり、このため、ゲル全体を膨潤させるのに十分な量の試料含有膨潤液中に通常一晩浸漬する。

0004

しかしながら、この従来法では一晩浸漬しても、二次元電気泳動の結果の再現性が必ずしも満足できない。すなわち、同一の試料について、同一の市販のゲルを用い、同一の方法で二次元電気泳動を行なっても、しばしば異なった結果が得られる。

0005

特許文献1には、IPGに試料を導入する際に、電圧をかけることにより、試料の導入に要する時間を短縮する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1記載の方法では、再現性の問題は解決されず、また、試料タンパク質の電荷かんによっては、試料の導入に要する時間を必ずしも短縮できないと考えられる。

0006

特開2005-345334号公報
特開2006-258685号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の目的は、電気泳動の結果の再現性を高めることができ、かつ乾燥ゲルへの試料の導入を迅速に行うことができる、電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法及びそのための器具を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本願発明者らは、従来法で再現性が高くない原因を研究した結果、市販の乾燥ゲルの大きさが同一商品であってもバラツキがあり、かつ、試料含有膨潤液は、ゲルを膨潤させるのに十分な量が用いられるために、その全量がゲルに吸収されるわけではなく、一部が残留するため、ゲルに導入されるタンパク質試料の量がゲルごとに異なってくることが原因ではないかと考えた。そして、これを解決すべく研究の結果、乾燥ゲルへの試料の導入とゲルの膨潤を2段階に分け、先ず、少量の試料溶液をゲルの長手方向の全長に渡る領域からその全量を吸収させ、次いで、膨潤液でゲル全体を膨潤させることにより、二次元電気泳動の再現性を向上させることができ、かつ、同時に試料の導入時間を短縮できることに想到し、これを実験的に確認して本発明を完成した。

0009

すなわち、本発明は、細長い短冊状の電気泳動用乾燥媒体に、電気泳動にかける試料を含む試料溶液を導入する方法であって、前記乾燥媒体の一方の面である試料導入面の少なくとも一部の領域である試料導入領域を前記試料溶液と直接接触させることを含み、前記試料導入領域は、前記試料導入面の長手方向の実質的に全長に渡る領域であり、前記試料溶液は、前記乾燥媒体の全体を膨潤させることができる量よりも少量であり、前記試料溶液の実質的に全量を前記乾燥媒体に吸収させて該乾燥媒体を部分的に膨潤させ、次いで、膨潤液で前記乾燥媒体の全体を膨潤させる、電気泳動用乾燥媒体への試料の導入方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法を行なうための器具であって、器具本体と、該器具本体に設けられた前記試料導入溝具備する、電気泳動用乾燥媒体に試料を導入するための器具を提供する。

発明の効果

0010

本発明の方法により、電気泳動の再現性が向上する。また、本発明の方法では、少量の試料溶液を乾燥媒体の長手方向の実質的に全長に亘る領域から吸収させるので、試料導入に要する時間が短縮される。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明の方法に用いられる電気泳動用乾燥媒体は、通常、電気泳動用乾燥ゲルであり、好ましくは、二次元電気泳動の一次元目用の乾燥ゲル、例えば、IPGである。乾燥媒体は、細長い短冊状をしており、通常、幅が0.3mm〜3mm程度、長さが40mm〜200mm程度、厚さが0.05mm〜0.2mm程度である。また、電気泳動用乾燥ゲルは、通常、プラスチックフィルム上に結合された形態にあるものが用いられるが、本発明においても、このようなプラスチックフィルム上に結合された乾燥媒体を好ましく用いることができる。プラスチックフィルム上に結合された、IPGのような電気泳動用乾燥ゲルは、種々のものが市販されており、市販品をそのまま、又は市販品を所望の大きさに切断して用いることができる。

0012

電気泳動用乾燥媒体は、本発明の方法においてそのまま用いることができるが、好ましくは、その一方の面が堅固な支持体に直接的又は間接的に支持されている。堅固な支持体上に乾燥媒体を支持することにより、後述する試料溶液との接触工程において、乾燥媒体が歪むことを防止することができ、取扱い性も向上する。さらに、試料溶液との接触工程において、後述する、細溝から成る試料導入溝に乾燥媒体を浸漬する際に、その自重により常に一定の圧力をかけることができる。乾燥媒体は、支持体上に直接支持してもよいし、乾燥媒体が上記のようにプラスチックフィルム上に結合されている場合には、該プラスチックフィルムを介して間接的に支持してもよい。上記の通り、乾燥媒体は、通常、プラスチックフィルム上に結合された形態にあるので後者が好ましい。支持体の、乾燥媒体を支持する面は、乾燥媒体と同じ寸法を有するか、又は、乾燥媒体の寸法よりも大きく、乾燥媒体の全面を支持するものであることが、乾燥媒体の歪みを防止する上で好ましい。また、支持体の厚みは、特に限定されないが、指で容易につまめる厚さが好ましく、0.3mm〜10 mm程度が好ましい。支持体の材質は、特に限定されず、プラスチックセラミックスガラス等を利用することができ、プラスチックで構成することが、製造の容易さ及び価格面から有利である。すなわち、好ましい態様では、支持体は、角棒状プラスチックブロックの形態にある。

0013

本発明の方法では、上記した乾燥媒体を、先ず、乾燥媒体の全体を膨潤させることができる量よりも少量の試料溶液と接触させて、その実質的に全量を乾燥媒体に吸収させ、しかる後、乾燥媒体を膨潤液と接触させて、乾燥状態の部分が残らないようにその全体を膨潤させる。ここで、「実質的に全量」とは、全量又はほとんど全量という意味であり、試料溶液を収容する溝(後述する試料導入溝)の表面が濡れている程度はよいが、液面を持つ液状の状態では残存しないという意味である。試料は、電気泳動にかけて分析しようとするいずれの物質であってもよく、多くの場合、タンパク質、ペプチド核酸等であるが、これらに限定されるものではない。また、試料溶液の溶媒は、特に限定されないが、通常、水系の緩衝液であり、ゲルの膨潤液を溶媒としてもよい。なお、ゲルの膨潤液としては、通常、例えば8M尿素、2% 3-[3-(クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、50mMジチオスレイトール、及び0.2%両性電解質を含む水溶液等が用いられており、これらは市販の二次元電気泳動用キット付属している。

0014

乾燥媒体の一方の面である試料導入面の少なくとも一部の領域である試料導入領域を、試料溶液と直接接触させることにより試料導入領域に試料溶液を導入する。試料導入領域は、乾燥媒体の長手方向の実質的に全長に亘る領域である。ここで、「実質的に全長」とは、全長又はほとんど全長という意味であり、両端部に電極を接続するための領域等、両端からそれぞれ数mm程度の領域は、試料溶液と接触させなくてもよい。

0015

以下、試料導入方法の好ましい1具体例について図面を参照して説明する。図1は、試料導入に特に適した器具を用いる方法を説明するものである。器具10は、細長い直方体状の器具本体12を具備し、器具本体12の上面には、溝14が形成されている。この溝14は、後述のように、支持体に支持された乾燥媒体をガイドする役割を果たすので、「ガイド溝」と呼ぶ。ガイド溝14の底面には、さらに細い溝16が形成されており、この細溝16には試料溶液を収容してその試料溶液を乾燥媒体に導入するので、「試料導入溝」と呼ぶ。器具10を構成する材料は特に限定されないが、成形の容易さや価格の点から、通常、プラスチックが用いられる。図1中、参照番号18は、プラスチックフィルム上に結合された乾燥ゲルを示し、20は、プラスチックフィルムを介して乾燥ゲル18を支持する、角棒状のプラスチックブロックから成る支持体を示す。なお、図1には、プラスチックフィルム付乾燥ゲル18を支持した支持体20が2本描かれているが、これは、試料溶液と接触する前の状態のプラスチックフィルム付乾燥ゲル18と、試料溶液と接触した後の状態のプラスチックフィルム付乾燥ゲル18を示すために、試料溶液との接触前後のプラスチックフィルム付乾燥ゲル18がそれぞれ描かれているのであり、プラスチックフィルム付乾燥ゲル18及び支持体20は1本しか存在しない。

0016

図1に示す器具10を、その長手方向に直行する方向で切断した断面図を図2に模式的に示す。なお、図2は、器具及びその使用方法を説明するための模式図であり、寸法比率は必ずしも正確ではない。図2によく示されるように、器具本体12の上面にガイド溝14が形成され、その底部に試料導入溝16が形成されている。図2中、参照番号18aは乾燥ゲル、18bは、乾燥ゲル18aを結合しているプラスチックフィルムであり、図示の例では、乾燥ゲル18a、プラスチックフィルム18b、支持体20は、上から見た平面的寸法及び形状が同じである。ガイド溝14の幅は、支持体20の幅よりも若干(通常、0.2mm〜1.0mm程度)広い程度である。また、ガイド溝14の深さは、プラスチックフィルム付乾燥ゲル18と支持体20(以下、便宜的に「乾燥ゲル付支持体」)をガイド溝14の底面に載置した際に、支持体20の頂部が指でつまめる程度にガイド溝14から突出する程度に、乾燥ゲル付支持体の高さよりも浅いことが好ましい。また、ガイド溝14の長さは、乾燥ゲル付支持体の長さよりも長ければよく、通常は、乾燥ゲル付支持体の長さよりも1mm〜数mm長い程度である。試料導入溝16の幅は、特に限定されないが、乾燥ゲルの幅の20%〜80%程度であり、図示の例では1/3程度である。試料導入溝16を設ける位置は、特に限定されないが、図2に示すように、試料導入溝16の底面の長手方向に直行する方向の中央近傍が好ましい。また、試料導入溝16の深さは、試料導入溝16の上端部まで試料溶液が充填され、その試料溶液の全量が乾燥ゲル18aに吸収された場合でも乾燥ゲル18aの全体を膨潤させることができない量となる深さであり、特に限定されないが、通常、乾燥ゲル18aの厚さの2倍〜4倍程度が好ましい。なお、図2に示す例では、ガイド溝14の底面と側面の角度が90度に描かれているが、この部分は丸みを帯びていてもよく、また、ガイド溝14の底部はすり状になっていてもよい。同様に、試料導入溝16の底面と側面の角度も90度に描かれているが、この部分は丸みを帯びていてもよく、また、試料導入溝16の断面形状は、矩形に限らず半円状や半楕円状等であってもよい。

0017

乾燥ゲル18aに試料を導入する際には、先ず、試料導入溝16に試料溶液を入れる。試料溶液は、試料導入溝16の上端部ぎりぎりの所まで入れることが好ましい。このようにすることにより、試料溶液の液面は、表面張力のためにガイド溝14の底面よりもなりに少しだけ持ち上がる。この状態で、乾燥ゲル付支持体をガイド溝14に挿入して(図2中の下向き矢印)、ガイド溝14の底面上に載置する。この際、ガイド溝14の幅は、支持体20の幅より僅かに広いだけであるので、支持体20はガイド溝14によりガイドされる。特に、ガイド溝14の下部がすり鉢状になっている場合には、より的確に定位置にガイドされる。ガイド溝14の底面上に乾燥ゲル付支持体を載置すると、試料導入溝16の開口部と当接する、乾燥ゲル18aの領域(本発明でいう「試料導入領域」)は、表面張力で若干盛り上がった、試料導入溝16内に収容された試料溶液と直接接触し、試料溶液が乾燥ゲル18aに吸収され、乾燥ゲル18aの試料導入領域が膨潤する。このように、試料導入溝16は、その二次元形状(上から見た平面形状)が、試料導入領域と実質的に同じ寸法及び形状を有する。ここで、「実質的に同じ寸法及び形状」とは、完全に同じか又はほとんど同じ寸法及び形状を意味し、乾燥ゲルが試料溶液と接触した際に少量の試料溶液が試料導入溝16の上端部から側方漏れ出すことによって試料導入領域の幅が試料導入溝16より広くなる程度の差異許容される。なお、後述のように、試料導入溝16の底面に親水化処理を施す場合には、親水化処理を施した部分以外の、疎水性の表面を有する部分には試料溶液は行き渡らないので、親水化処理を施した領域のみで試料導入溝16が構成されていると考える。すなわち、この場合には、親水化処理を施した領域が試料導入領域と実質的に同じ寸法及び形状を有する。乾燥ゲル付支持体をガイド溝14の底面上に載置すると、支持体20の自重により、同じ支持体を用いれば、乾燥ゲル18aには同じ圧力がかかり、試料導入の条件を常に一定にすることに役立つ。乾燥ゲル18aがこのように試料溶液と接触すると、乾燥ゲル18aは、プラスチックフィルム18bに結合されているため、図2の横方向(水平方向)にはほとんど全く膨潤せず、図2の上下方向に膨潤し、膨潤したゲルは、試料導入溝16内に突出する。この様子が図1に模式的に示されている。すなわち、図1中、「膨潤前IPGゲル」と記載されている方が試料溶液との接触前の状態、「膨潤後IPGゲル」と記載されている方が試料溶液との接触後の状態を示す。図1中の湾曲した矢印は、乾燥ゲル付支持体をガイド溝14に挿入した後、取り出す動作を示している。図1に模式的に示すように、試料溶液と接触後の乾燥ゲルは、試料導入溝16の開口部と当接する部分、すなわち、試料溶液と接触した試料導入領域が上下方向に膨潤する。なお、乾燥ゲル18aと試料溶液の接触時間は、特に限定されないが、通常、1分間〜20分間程度、特に2分間〜10分間程度である。また、試料導入は、通常、常温で行なわれる。

0018

ゲルが試料溶液の実質的に全量を吸収した後、ゲル付支持体をガイド溝14から取り出し、次に、ゲルを膨潤液に浸漬して完全に膨潤させる。本発明の方法では、試料導入後に用いる膨潤液は、貴重な試料を含まず、市販されている比較的安価なものであるから、通常、前記したガイド溝14よりも幅広の溝状容器に膨潤液を十分量満たし、その中にゲル付支持体を浸漬することにより行なわれる。

0019

膨潤液で膨潤させたゲルは、次いで、二次元電気泳動に供される。二次元電気泳動の方法は、従来と全く同じでよく、一次元方向(ゲルの長手方向)に電圧をかけて等電点電気泳動等を行なった後、平板状のSDS含有ポリアクリルアミドゲルと接触させた状態で二次元方向(前記一次元方向に直行する方向)に電圧をかけて二次元目の電気泳動を行なうことができる。

0020

上記の通り、乾燥ゲルの幅は通常1mm〜3mm程度であり、試料導入溝の幅は通常その20%〜80%程度であるから、試料導入溝の幅は、通常、0.2mm〜2.4mm程度の細いものである。再現性よく、短時間で試料導入を行なうためには、上記した試料導入領域の全面から均一に試料溶液が吸収される必要があり、このため、試料溶液が試料導入溝の全体に均一に行き渡っている必要がある。上記の通り、試料導入溝は細いものであるので、試料導入溝の全体に均一に試料溶液を行き渡らせるためには、試料導入溝の底面の実質的に全面が親水化処理されていることが好ましい。試料導入溝の底面の実質的に全面に親水化処理を施しておくと、試料導入溝の一部に試料溶液を滴下すれば、試料導入溝の全体に試料溶液が均一に行き渡るので、簡便であり、好ましい。ここで、「実質的に全面」とは、全面又はほとんど全面を意味し、親水化処理の処理ムラ等のために、親水化処理が施されなかった部分が僅かに存在しても、試料溶液が均一に行き渡るのであれば、「実質的に全面」に親水化処理が行なわれたことに含まれる。

0021

親水化処理は、例えば、親水性ポリマーコーティングすることにより行うことができる。親水化処理の方法は特に限定されないが、親水性コーティング層は試料溶液を均一に試料導入溝全体に行き渡らせるために、均一な厚みを有していることが好ましく、しかも、試料導入溝の幅は狭いことから、各種の周知のコーター親水化ポリマーを塗布することは容易ではない。しかしながら、プラズマ重合を駆使してその場でモノマー重合させ、さらに必要に応じて酸素プラズマ等で処理することにより、幅の狭い溝の底面を、均一な層厚の薄い親水性ポリマーコーティング層被覆できる(特許文献2参照)。プラズマ重合に用いることができるモノマーとしては、エーテルのような親水性の主鎖を有するモノマーや、水酸基アミノ基、カルボキシル基等の親水性基を主鎖又は側鎖に有するモノマーであって、プラズマ重合により重合可能なものであれば何ら限定されるものではなく、好ましいモノマーの例として、アクリル酸プロパギルアルコールのような含酸素有機化合物アセトニトリル、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールプロピルアミンアリルアミンピリジンのような含窒素有機化合物等を例示することができるがこれらに限定されるものではない。また、ヘキサメチルジシロキサンのような疎水性層をプラズマ重合させた後にプラズマ処理で親水化を行ってもよい。さらにヘキサメチルジシロキサンと酸素を同時に供給してプラズマ重合して酸化ケイ素膜被膜することで、親水化を行ってもよい。この酸化ケイ素膜は、プラズマ重合法以外にも種々の薄膜形成手段、例えば蒸着法、スパッタ法CVD法などによって形成できる。また、試料導入溝の底面自体を酸素プラズマ等で処理することによっても親水性層を形成することができる。すなわち、親水性層は、好ましくは、
(a)水素プラズマ、酸素プラズマ及び窒素プラズマからなる群から選ばれる少なくとも一種プラズマによる処理、
(b)ヘキサメチルジシロキサン及びヘキサジエンからなる群から選ばれる少なくとも一種をプラズマ重合して形成したコーティング層に上記(a)のプラズマ処理を施す、又は
(c)アクリル酸、プロパギルアルコール、アセトニトリル、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、プロピルアミン、アリルアミン、ピリジンからなる群から選ばれる少なくとも一種をプラズマ重合する、ことにより形成することができる。
(d)酸化ケイ素膜を被膜することにより形成することができる。

0022

また、親水性層の層厚は、特に限定されないが、50nm〜200 nm程度が好ましい。プラズマ重合及びプラズマ処理の手法自体は周知であり、そのための装置も市販されているので、市販の装置を用いて容易に実施することができる(特許文献2)。試料導入溝は、その底面が少なくとも親水化処理されていればよい。側面も親水化処理されていてもよいが、底面のみを親水化処理することにより、試料導入溝に吸着する試料溶液の量を減少させることができるので、再現性をより高めることができ、好ましい。

0023

試料導入溝の長さは、乾燥ゲルの長さと同じか、それよりも両端部がそれぞれ数mm程度以下短くなっていてもよいが、これらの場合には、乾燥ゲル付支持体をガイド溝の底面に載置した際に、試料溶液と乾燥ゲルとの間に気泡が入る恐れがある。このため、試料導入溝の長さを乾燥ゲルよりも若干長くすることにより、乾燥ゲル付支持体をガイド溝14の底面上に載置した際に、乾燥ゲルの両端部の外側にそれぞれ空気孔が形成されるようにしてもよい。この場合、試料導入溝を乾燥ゲルよりもあまりに長くすると、必要な試料溶液の量が増大すると共に、試料溶液の実質的に全量が乾燥ゲルに吸収されなくなる恐れがあるため好ましくない。試料導入溝の長さは、乾燥ゲル付支持体をガイド溝の底面に載置した際に、乾燥ゲルの両端の外側に長さ数mm以下、好ましくは長さ0.2mm〜1mm程度の小さな空気孔が形成される長さであることが好ましい。なお、空気孔となる部分の底面には親水化処理を施してもよいが、この部分には親水化処理を施さずに疎水性領域としておくことにより、試料溶液がこの部分にまで到達しないようにすることも可能である(なお、この場合には、試料導入溝の長さは、上記の通り、親水化処理を施した部分の長さと解釈する)。こうすることにより、気泡を排気する目的は達成され、かつ、試料溶液の量も増やす必要がなくなる。

0024

なお、図1及び図2に示す器具を用いる上記した方法は、特に好ましい方法であるが、本発明の方法は、上記器具を用いる場合に限定されるものではなく、より単純な器具を用いても実施することが可能である。例えば、上記具体例では、ガイド溝と試料導入溝との2段構造になっているが、ガイド溝は特に必要ではなく、基板表面に試料導入溝だけを形成したものも用いることも可能である。この場合、ガイド溝がないので、試料導入溝と乾燥ゲル付支持体との位置合わせは、操作者目視に基づいて行なう。この場合も、上記と同様、試料導入溝の少なくとも底面に親水化処理を施すことが好ましい。さらには、試料導入溝を設けることなく、疎水性の平面上に、試料導入領域と実質的に同一の寸法及び形状の親水化処理領域を設けただけのものも試料導入溝と同様に用いることができる。この場合には、親水化処理領域上に試料溶液を滴下すると、試料溶液は、親水化処理領域の全体に行き渡るが、疎水性表面には出て行かない。このため、試料溶液は、親水化処理領域上で、断面が半円形ないしは半楕円形に盛り上がった状態で保持されるので、このように保持されている試料溶液と乾燥ゲルを接触させることによっても本発明の方法を実施することができる。

0025

以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

0026

各例の記述に先立ち、各例に共通する実験手法について説明する。

0027

1.マウス肝臓溶解液の調製
-80℃に保存されているマウス肝臓組織メス刃先などで細かく砕いた後、0.4 g をテフロンホモジナイザー(テフロンは登録商標)に入れた。2 mlのLysis buffer (50 mM Tris-HCl(pH 7.6)、 20% Glycerol, 0.3 M NaCl, Protease inhibitor cocktail)を添加して、氷冷下でホモジナイズした。1000×g 4℃で10分間遠心分離を行い上清回収してさらに15,000×g、4℃で30分間遠心分離を行った。上清分画を回収してφ0.45μmフィルターでろ過した。

0028

2.タンパク質試料の脱塩および精製
上記1により得られたマウス肝臓溶解液中には二次元電気泳動の妨げになる塩や染色体DNAなどが混入している。そこでそれらを除去するために2-D Clean-Up Kit (商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス(株))を用いた。サンプル(<100 μg, <100 μL)に300μLの沈殿剤(precipitant)を添加して撹拌した後、上で15分間静置した。300μL の共沈殿剤(co-precipitant)をさらに添加して、14,000×gで5 min、 0℃で遠心分離をした。沈殿に40μL の共沈殿剤を添加して氷上で15分間静置後に14,000×gで5分、 0℃で遠心分離をして沈殿を回収した。25μLの純水を添加し後、14,000×gで5分間、0℃で遠心分離をして沈殿を洗浄した。1 mLの洗浄バッファー及び5μLの洗浄添加剤(wash additive)を添加後、撹拌して2hr、−20℃で静置した。14,000×gで 5分間、0℃で遠心分離をして沈殿を回収後、室温で約5分間風乾させた。得た沈殿を膨潤液に溶解して二次元電気泳動用(乾燥IPGゲルへの試料導入検討用)試料とした。

0029

3.タンパク質定量
タンパク質定量は2-D Quant Kit(商品名、GEヘルスケアバイオサイエンス(株))を用いて行った。まず、下記表1のように標準ウシ血清アルブミン(BSA)を希釈した。サンプルを約0.5〜50μgになるように1〜50μlずつ2本のチューブに入れた。500μlの共沈殿剤を加えて簡単によくボルテックスした。10,000×gで5分間遠心分離した後、上清を除いた。100μlの銅溶液を加え、さらに400 μlの蒸留水を加えた。さらに、1 mlの呈色試薬(working color reagent)を加えて、瞬時に混合した。15〜20分間室温インキュベートして、480 nmで吸光度を測定した。標準BSAの吸光度もとに標準曲線を書いてサンプルの定量を行った。

0030

0031

4. Sypro Ruby(商品名、インビトロジェン(株))染色方法
ゲルを電気泳動後に10%メタノール/7%酢酸水溶液(約100mL)中で1 時間振とうした。溶液をSyproRuby染色液(商品名、約50mL)に置換して、4 時間以上振とうした。高感度で見たい場合には一晩染色した。染色後、10%メタノール/7%酢酸水溶液(約100mL)中で30分間振とう後、ProXPRESS(商品名、パーキンエルマー(株))にて蛍光検出(em.480 nm/ex.680 nm)した。

0032

5.サンプル導入溝の再現性評価
サンプル導入溝の再現性評価は1.2mm×52mmのIPGおよび48mm×52mmのSDS-PAGEゲルを用いて評価した。検出および解析は方法5と同様に行った。

0033

6.二次元電気泳動
二次元電気泳動はプロティアIEFセルおよびcriterion Dodecaセル(共に商品名、バイオ・ラッドラボラトリーズ(株))を用い、これらの製品使用説明書に記載された標準プロトコールに沿って行った。一次元目の等電点ゲルおよび二次元目のSDS-PAGEゲルはバイオ・ラッドラボラトリーズ(株)の7cm IPGReadyStrip pH 3-10(商品名)および12%アクリルアミドレディーゲルJ(商品名)を使用した。二次元電気泳動後のタンパク質染色はSYPRO Ruby(商品名、インビトロジェン(株))を用いた。マーカーはMark12(商品名、インビトロジェン(株))を用いた。

0034

7.二次元電気泳動画像上のタンパク質スポット蛍光強度の再現性比
二次元電気泳動のスポットの検出および解析はProFINDER(商品名、パーキンエルマー(株))解析ソフトを用いて行った。ProXPRESS(商品名、パーキンエルマー(株))で得られたスポットの蛍光強度から変動係数を求めて、その変動係数を比較することによりスポットの再現性を比較した。

0035

8.サンプル導入溝作製
器具は切削加工機を用いて作製した。また、基板はアクリル材を使用した。

0036

9.親水膜コーティング
親水膜(SiOx膜)の成膜プラズマ重合装置を用いて行った。プラスチック基板を、プラズマ重合装置の重合室に設置し、重合室の到達真空度が1.5×10-3パスカルになるまで減圧を行った。次にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)と酸素を同時に、重合室内に導入した。HMDSおよび酸素の流量はそれぞれ5 sccmおよび100 sccmとし、プラズマ出力300Wで120秒間プラズマを発生させ成膜を行った。

0037

実施例1
1.器具の作製
アクリル板から成る器具本体に、図1及び図2に示したのと同様なガイド溝及び試料導入溝を形成した。ガイド溝の開口部の幅(長手方向に直行する方向の幅)は1.8mm、底面の幅は1.4mm、深さは1.0mm、長さは53mmであり、ややすり鉢状であり、底面の幅方向の両側の角は丸くしてある。試料導入溝は、ガイド溝の幅方向の中央部に形成され、幅が0.6mm、長さが52mm、深さが0.3mmであった。試料導入溝の底面の幅方向の両側の角は約90度であった。

0038

上記器具は複数個作製し、その一部には、上記した方法により、試料導入溝の底面及び側面に親水膜コーティングを施した。このときの膜厚は約70 nmと推定され、このとき得られたSiOx膜の接触角接触角計で測定した結果、6.9°であり、高親水性になった。

0039

2.試料の導入
プラスチックフィルム付乾燥ゲルは、長さ52mm、幅3mm、厚さ0.1mmの市販のIPGを長手方向に沿って切断して幅を1mmとしたものを用いた(従って、プラスチックフィルム付乾燥ゲルのサイズは52mm x 1mm x 0.1mm)。このプラスチックフィルム付乾燥ゲルのプラスチックフィルムに、長さと幅がプラスチックフィルム付乾燥ゲルと同じで、高さが14mmのプラスチックブロックから成る支持体を接着した。

0040

上記した試料溶液10μLを、試料導入溝の中央近傍1箇所に滴下した。試料導入溝に親水化処理を施していない場合には、試料溶液が液滴を形成して均一に広がらなかったが、親水化処理を施したものでは、試料導入溝全体に試料溶液が均一に広がった。以下の実験は、試料導入溝に親水化処理を施したものを用いて行なった。上記10μLの試料溶液により、試料導入溝の上端部まで試料溶液が満たされた。なお、試料導入及びそれ以降の操作は特に記載がない限り室温下で行った。

0041

上記した乾燥ゲル付支持体を、ガイド溝に挿入し、ガイド溝底面に載置した。乾燥ゲルの形状及び寸法と、試料導入溝の形状及び寸法が同じであるので、試料導入溝を乾燥ゲルで塞ぐ形となり、これにより乾燥ゲルが試料溶液と直接接触した。この状態で5分間放置した。その結果、試料溶液と接触している乾燥ゲルの領域が膨潤し、試料導入溝内部に入り込んだ。乾燥ゲル付支持体をガイド溝から取り出したところ、試料導入溝内には試料溶液が残っておらず、試料溶液の実質的に全量がゲルに吸収された。次に、溝(寸法55mm x 29 mm x 1.15mm)の中に膨潤液(組成:8M尿素、2Mチオ尿素、4%CHAPS, 20mM DTT, 0.5%両性電解質)を充填し、この溝の中にゲル付支持体を挿入し5分間放置してゲルを完全に膨潤させた。

0042

3.二次元目電気泳動
上記のようにして2μgのマウス肝臓溶解性タンパク質試料を導入したゲルをSDS平衡化し、SDS-PAGEゲルで4分間電気泳動を行なった。得られたタンパク質バンド総蛍光強度をQuantity one (商品名、バイオ・ラッドラボラトリーズ(株))で測定した。

0043

4.再現性の評価
上記操作を4回繰返し、総蛍光強度の平均値標準偏差及び変動係数を算出した。その結果、総蛍光強度(x1013)の平均は9.89、標準偏差(x1012)は6.71、変動係数(%)は6.79であった。

0044

比較例1及び2
A社から市販されている、プラスチックフィルム付IPG(比較例1)およびB社のプラスチックフィルム付IPG(比較例2)はそれぞれの標準方法に沿ってIPGゲル膨潤(タンパク質試料導入)を行った。上記したタンパク質試料を膨潤液に溶解した溶液を用いてゲルの膨潤を行なった。いずれのIPGもサイズは、70mm x 3 mm x 0.1mmであった。

0045

A社装置(比較例1)では、2μgのマウス肝臓溶解性タンパク質を含む指定の155μlの膨潤液を膨潤カセット(A社)に添加して、70mmの3-10LのIPG(A社)ゲルを投入して室温で8時間放置した(比較例1)。なお、この膨潤カセットは、基板の中に、断面が矩形の溝を設けたものであり、溝の寸法は、幅5.4mm x 長さ82.2mm x 深さ6.38mmであり、溝の幅はゲルの幅の1.8倍である。

0046

B社装置(比較例2)でも同様に、2μgのマウス肝臓溶解性タンパク質を含む125μlの膨潤液をフォーカシングトレイ(B社)に添加した後、70mmの3-10LのIPG(B社)ゲルを挿入して20℃で16時間放置した(比較例2)。なお、このフォーカシングトレイも基板の中に、断面が矩形の溝を設けたものであり、溝の寸法は、幅3.7mm x 長さ79.5mm x 深さ1.15mmであり、溝の幅はゲルの幅の1.2倍である。

0047

膨潤処理後、ゲルを溝から取り出すと、なお、膨潤液は溝内に残留していた。続いて、実施例1と同様に二次元目電気泳動を行い、総蛍光強度を測定した。

0048

実施例1と同様、上記操作を4回繰返し、それぞれ総蛍光強度を測定し、平均値、標準偏差及び変動係数を算出した。結果を下記表2に示す。

0049

0050

表2に示されるように、市販品を用いた比較例1及び2では、いずれも総蛍光強度の変動係数が20%を超えている。これに対し、上記の通り、本発明の実施例1では、変動係数が6.79%であり、比較例1及び2よりも再現性が高いことがわかる。

0051

実施例2
実施例1の方法では、乾燥ゲル付支持体をガイド溝の底面に載置する際に、乾燥ゲルと試料溶液の間に気泡が入ることがあった。そこで、気泡が入ることを防止すべく、試料導入溝の長さを54mmにし、それ以外の条件は全て実施例1と同様にして試料導入を行なった。なお、乾燥ゲル付支持体を載置する際には、試料導入溝の両端部に、乾燥ゲルで被覆されない部分がそれぞれ生じる位置に乾燥ゲル付支持体を載置した。その結果、ゲルと試料溶液の間に気泡は全く入らなくなった。

0052

実施例3
実施例3は、20μgのマウス肝臓可溶性タンパク質を含む10μlの試料溶液を実施例1と同様の方法でゲルに導入して二次元電気泳動を行った。比較例3は、20μgのマウス肝臓可溶性タンパク質を含む125μlの試料溶液を上述の方法で二次元電気泳動を行った。二次元目の電気泳動ゲル上のタンパク質スポットを検出し、主なタンパク質スポット7個を選び、それぞれの蛍光強度を測定した。

0053

上記操作を4回繰返し、各スポットについてそれぞれ蛍光強度を測定し、平均値、標準偏差及び変動係数を算出した。結果を下記表3に示す。

0054

0055

表3から明らかなように、ほとんどのスポットにおいて本発明の実施例3の方法が、市販品を用いた比較例3よりも変動係数が小さく、全体として再現性に優れていることがわかる。

0056

実施例4
IPGゲルに短時間で均一にサンプルを導入できていることを確認するために、5本の細溝を持つ器具を作製して(図3−1)、4本の細溝に0.01%のCoomassie Brilliant Blue R-250色素を混合した試料溶液を添加した。37mm×5mmの乾燥IPGゲルシートを貼り付けたプラスチックブロックを細溝に接触させ5分間後の結果が図3−2である。5本のうち4本の溝にサンプル溶液を添加した結果、サンプル溶液は溝の形状のままIPGゲル中に導入された。溝の端面間の距離は狭く0.3mmで、サンプルが導入されたIPGゲルのその距離は約0.2mmであった。但し、隙間には僅かに色素が確認できたために、溶液が多少は漏れていると思われた。しかし、サンプル溶液を入れない溝を間に挟むことによって溶液の漏れを防ぐことができた。IPGゲルとサンプル溶液の接触面は保持されたままサンプル溶液が浸透することを確認できた。

0057

さらに、細溝が矩形でも同様のサンプル導入が可能であるか確認するために、図3−3のような矩形の細溝を作製してIPGゲルへのサンプル導入実験を行った。矩形溝の横の直線溝には0.01%のオレンジG色素(商品名、ナカライテスク(株))を含むサンプル溶液を添加した。その結果、サンプル溶液は矩形の細溝と同じ形状のままIPGゲルに導入された(図3−4)。矩形溝でも同様に、IPGゲルとサンプル溶液の接触面が保持されたままサンプル溶液を浸透できた。

図面の簡単な説明

0058

器具を用いる、本発明の方法の好ましい1具体例を説明するための模式的斜視図である。
実施例1に示す器具を、長手方向に直行する方向で切断した模式断面図である。
5本の試料導入溝を持つ器具の平面図である。
図1に示す器具の上から3本と5番目の試料導入溝に0.01% のCoomassie Brilliant Blue R-250色素を添加した試料溶液を導入した後のIPGゲルの写真である。
矩形と直線の試料導入溝を持つ器具の平面図である。
図3−3に示す矩形の溝には0.01% のCoomassie Brilliant Blue R-250色素を、直線の溝には0.01% のオレンジG色素を添加した試料溶液を導入した後のIPGゲルの写真である。試料溶液と乾燥IPGゲルとの接触時間は5分間である。

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