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技術 Aサイト層状秩序化型ペロブスカイトMn酸化物薄膜の製造方法

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者 中島智彦土屋哲男熊谷俊弥
出願日 2006年12月26日 (14年0ヶ月経過) 出願番号 2006-349693
公開日 2008年7月10日 (12年5ヶ月経過) 公開番号 2008-156188
状態 特許登録済
技術分野 重金属無機化合物(II)
主要キーワード 金属アセチルアセトナト 紫外線パルスレーザ 母物質 チタン酸ストロンチウム基板 焼成初期 絶縁体相 ペロブスカイト型マンガン酸化物 ヒドロキシ有機酸
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課題

基板上に結晶化したAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜形成を可能にする製造方法を提供する。

解決手段

基板上に形成された組成式RBaMn2O6-d(RイオンとBaイオンはペロブスカイト型構造(AMnO3型))のAサイトを占め、層状に交互に規則配列した結晶構造を持つことを特徴とするAサイト層状秩序ペロブスカイト型マンガン酸化物(式中、RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Hoの少なくとも1種類より選ばれる3価イオンであり、さらに、BaはCaやSrによって一部置換されていても良く、MnサイトにはCrやRu等の金属イオンが微量置換されていても良い。) から成る薄膜を形成させる方法において、上記物質各構成元素を含む有機金属薄膜を、熱分解してアモルファス化させた後、不活性気体中で、500℃〜800℃の温度に保持し、紫外レーザ照射して結晶化させることを特徴とするAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

概要

背景

IT関連技術を中心とした情報化社会発展に伴い、膨大な大きさのデータを取り扱う必要に迫られている。中でも大容量のストレージデバイス高性能化に対する需要が益々高まってきており、磁気光ディスクメモリや様々な電子機器に搭載される不揮発メモリの開発が進められている。また高記録面密度を持つ磁気ディスクには読み取り装置である磁気ヘッド高感度磁気センサーが必要とされるため、今後のさらなる磁気ディスクの大容量化に対応するために磁場に対して大きな応答を示す材料の開発が期待されている。

ペロブスカイト型構造を有するマンガン酸化物は従来から非常に大きな磁気抵抗効果を示す物質として注目されていた。この大きな磁気抵抗はMn3+とMn4+が電荷整列した絶縁体相が磁場を印加することで金属化され、電気抵抗率が何桁も減少する現象(巨大磁気抵抗効果)を示す(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。しかしながら、当初は室温以上で電荷整列を起こす物質が発見されていなかったために室温付近では磁気抵抗の大きな効率を得ることは出来ていなかった。

近年、室温巨大磁気抵抗材料のポテンシャルを持つ、電荷整列を室温以上起こす物質が発見された。非特許文献2に報告されているBi0.5Sr0.5MnO3や本発明者らによって発見されたRBaMn2O6(R:Y,希土類元素)である(非特許文献3)。これらの物質では室温よりもはるかに高い温度で電荷整列転移を示すために室温巨大磁気抵抗材料の候補材料として注目を浴びた。

しかしながらこれらの物質はその電荷整列が安定化されすぎているために数テスラ程度の磁場に対しては応答を示さず、室温での磁気抵抗効果は認められなかった。2005年になり本発明者らは、この問題を解決するためにRBaMn2O6に改良を加え、室温で巨大な磁気抵抗効果を示す物質Sm1-xLax+yBa1-yMn2O6を開発した。この物質の母物質であるSmBaMn2O6はペロブスカイト型構造のAサイト(Sm,Ba)を層状に規則配列させた構造を持っており、室温よりも高温の100℃付近で電荷整列を起こし絶縁体となる。しかしSmBaMn2O6の電荷整列相は非常に安定で磁場を9Tまで印加しても磁気抵抗効果は得られなかった。そこで、本発明者らは、この母物質にLaをドーピングし、結晶構造静電ポテンシャルを乱すとともにキャリアコントロールを行ったSm1-xLax+yBa1-yMn2O6では、室温で非常に大きな磁気抵抗効率を得ることに成功した(非特許文献4)。

これら物質開発が進む中、デバイス応用のために必要不可欠な薄膜化は成功していなかった。前述した電荷整列相を室温以上で示し、室温巨大磁気抵抗材料の候補物質のひとつであるBi0.5Sr0.5MnO3については特許文献4に報告されるようにパルスレーザーデポジション(PLD)法を用いて薄膜化に成功している。しかし、唯一室温で電荷整列転移を数テスラの磁場によって金属化し巨大磁気抵抗効果を発現させることの出来るAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は得られていない。

近年、新たな酸化物薄膜作製法として、紫外線パルスレーザを用いたある種の金属酸化物製膜法が開発されており、PLD法などの物理蒸着法とは異なる製膜プロセスとして注目されている。この手法は塗布光照射法と呼ばれており、金属有機酸塩ないし有機金属化合物MmRn(ただしM=Si、Ge、Sn、Pbの4b族元素、Cr、Mo、Wの6a族元素、Mn、Tc、Reの7a族元素:R=CH3、C2H5、C3H7、C4H9などのアルキル基、あるいはCH3COO−、C2H5COO−、C3H7COO−、C4H9COO−などのカルボキシル基、あるいはCOのカルボニル基:m、nは整数)を可溶性溶媒に溶かし、あるいは液体のものはそのまま、該溶液基板上に分散塗布した後、酸素雰囲気下でエキシマレーザ照射することを特徴とする、エキシマレーザによる金属酸化物および金属酸化物薄膜の製造方法である(特許文献5)。

塗布光照射法は、塗布熱分解(MOD)法として知られているような手法と異なり、高温下(500℃以上)で熱処理することなく基板上に金属酸化物を製造する方法であり、金属有機化合物(金属有機酸塩、金属アセチルアセトナト炭素数6以上の有機基を有する金属アルコキシド)を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光を照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法として知られている(特許文献6)。
ここでは、金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光、例えば、ArF、KrF、XeCl、XeF、F2から選ばれるエキシマレーザを用いて照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法が記載され、波長400nm以下のレーザ光の照射を、複数段階で行い、最初の段階の照射は金属有機化合物を完全に分解させるに至らない程度の弱い照射で行い、次に酸化物にまで変化させることができる強い照射を行うことも記載されている。また、金属有機酸塩の金属が、鉄、インジウム、錫、ジルコニウムコバルト、鉄、ニッケル、鉛、チタン亜鉛から成る群から選ばれるものであることも知られている。

またさらに、La、MnおよびCa、SrもしくはBaの各酸化物原料成分を含む前駆体塗布液被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜を結晶化させて、組成式(La1−xMx)MnO3−δ(M:Ca,Sr、Ba、0.09≦x≦0.50)で表わされる複合酸化物膜を形成する複合酸化物膜の製造方法において、前記前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜に対し波長が360nm以下である光を空気中で照射して薄膜を結晶化させることを特徴とする複合酸化物膜の製造方法が知られている(特許文献7参照)。
ここでは、被塗布物の表面に形成された薄膜に対して光を照射する光源が、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザ、XeFエキシマレーザ、YAGレーザの3倍波光またはYAGレーザの4倍波光が用いられ、被塗布物の表面に塗布される前駆体塗布液が、Laのアルカノールアミン配位化合物と、Mnのカルボン酸塩と、Mの金属またはアルコキシドとを、炭素数が1〜4である一級アルコール中で混合させ反応させて調整することが記載されている。

特許第2685721号(特開平8−133894号)
特許第2812913号(特開平9−249497)
特許第2812915号(特開平9−263495)
特開2005-200271号公報
特許2759125号明細書
特開2001-31417号公報
特開2000-256862号公報
Phys. Rev. B 60 (1999)9506.
J . Appl. Phys. vol. 93(2003) 7370.
J. Phys. Soc. Jpn. 71 (2002) 2843.
J. Appl. Phys. 98 (2005) 46108.

概要

基板上に結晶化したAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物の薄膜形成を可能にする製造方法を提供する。基板上に形成された組成式RBaMn2O6-d(RイオンとBaイオンはペロブスカイト型構造(AMnO3型))のAサイトを占め、層状に交互に規則配列した結晶構造を持つことを特徴とするAサイト層状秩序ペロブスカイト型マンガン酸化物(式中、RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Hoの少なくとも1種類より選ばれる3価イオンであり、さらに、BaはCaやSrによって一部置換されていても良く、MnサイトにはCrやRu等の金属イオンが微量置換されていても良い。) から成る薄膜を形成させる方法において、上記物質の各構成元素を含む有機金属薄膜を、熱分解してアモルファス化させた後、不活性気体中で、500℃〜800℃の温度に保持し、紫外レーザを照射して結晶化させることを特徴とするAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。なし

目的

これまで、室温巨大磁気抵抗材料であるAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物(RBaMn2O6)の薄膜化は成功していない。そこで本発明は、前述の塗布光照射法によって基板上に結晶化したAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物の薄膜形成を可能にする製造方法を提供する。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

基板上に形成された組成式RBaMn2O6-d(RイオンとBaイオンはペロブスカイト型構造(AMnO3型)のAサイトを占め、層状に交互に規則配列した結晶構造を持つことを特徴とするAサイト層状秩序ペロブスカイト型マンガン酸化物(式中、RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Hoの少なくとも1種類より選ばれる3価イオンであり、RとBaの比(R/Ba)は0.5〜2.0の範囲であり、R/Ba=1.0からずれた場合は多く入った方が、もう一方のサイトに固溶していても良く、さらに、BaはCaやSrによって一部置換されていても良く、MnサイトにはCrやRu等の金属イオンが微量置換されていても良い。dは0〜1の範囲をとる。) から成る薄膜を形成させる方法において、上記物質各構成元素を含む有機金属薄膜を基板上に塗布し、熱分解させてアモルファス化させた後、不活性気体中で、500℃〜800℃の温度に保持し、紫外レーザ照射しつつ、結晶化することを特徴とするAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項2

有機金属薄膜が、Rの化合物有機溶液、Baの化合物の有機溶液、Mnの化合物の有機溶液を混合した溶液を基板に塗布したものであり、有機化合物がβ−ジケトナト長鎖アルコキシドハロゲンを含んでもよい有機酸から選ばれる塩を用いた請求項1に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項3

有機溶液が、炭素数2〜30の有機酸、炭素数6〜20ヒドロキシ有機酸芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる1種である請求項2に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項4

照射する紫外光が400nm以下のパルスレーザである請求項1に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項5

SrTiO3基板に請求項3に記載した有機金属溶液を塗布し、熱分解させた後、不活性気体中でフルエンス:130mJ/cm2以上の波長248nmの紫外線を照射する、請求項1又は請求項2に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項6

有機金属薄膜を、熱分解してアモルファス化し、レーザ照射時にAサイト無秩序相が安定相として出現しない450〜1000℃程度の温度に保持してArやN2、He気流中または真空中などの還元雰囲気下で紫外レーザを照射することによって結晶化することを特徴とする請求項1に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項7

予め有機金属薄膜に紫外ランプを照射した有機金属薄膜を用いる請求項6に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項8

有機金属薄膜を室温で周波数10Hz以上とフルエンス30mJ/cm2以下の紫外レーザにより照射後、フルエンス30mJ/cm2以上のレーザ光を複数のフルエンスで照射することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項9

紫外レーザ照射によって結晶化させた薄膜を空気中もしくは酸素雰囲気中、450〜600℃で熱処理することによって酸素欠損をなくすことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項10

基板が、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ランタンアルミネート(LaAlO3)、酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム((LaxSr1-x)(AlxTa1-x)O3)、ネオジムガレート(NdGdO3) 、石英ガラス、から選ばれる無機酸化物単結晶基板の1種、もしくはシリコン、金属から選ばれる金属基板の1種である請求項1〜9のいずれかに記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

請求項11

基板上に異種の酸化物及び金属薄膜を形成した基材上に形成されることを特徴とする請求項10に記載したAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法。

技術分野

0001

本発明はAサイトが層状秩序化したペロブスカイト型Mn酸化物薄膜及びその製造法に関するものである。

背景技術

0002

IT関連技術を中心とした情報化社会発展に伴い、膨大な大きさのデータを取り扱う必要に迫られている。中でも大容量のストレージデバイス高性能化に対する需要が益々高まってきており、磁気光ディスクメモリや様々な電子機器に搭載される不揮発メモリの開発が進められている。また高記録面密度を持つ磁気ディスクには読み取り装置である磁気ヘッド高感度磁気センサーが必要とされるため、今後のさらなる磁気ディスクの大容量化に対応するために磁場に対して大きな応答を示す材料の開発が期待されている。

0003

ペロブスカイト型構造を有するマンガン酸化物は従来から非常に大きな磁気抵抗効果を示す物質として注目されていた。この大きな磁気抵抗はMn3+とMn4+が電荷整列した絶縁体相が磁場を印加することで金属化され、電気抵抗率が何桁も減少する現象(巨大磁気抵抗効果)を示す(特許文献1〜3、非特許文献1参照)。しかしながら、当初は室温以上で電荷整列を起こす物質が発見されていなかったために室温付近では磁気抵抗の大きな効率を得ることは出来ていなかった。

0004

近年、室温巨大磁気抵抗材料のポテンシャルを持つ、電荷整列を室温以上起こす物質が発見された。非特許文献2に報告されているBi0.5Sr0.5MnO3や本発明者らによって発見されたRBaMn2O6(R:Y,希土類元素)である(非特許文献3)。これらの物質では室温よりもはるかに高い温度で電荷整列転移を示すために室温巨大磁気抵抗材料の候補材料として注目を浴びた。

0005

しかしながらこれらの物質はその電荷整列が安定化されすぎているために数テスラ程度の磁場に対しては応答を示さず、室温での磁気抵抗効果は認められなかった。2005年になり本発明者らは、この問題を解決するためにRBaMn2O6に改良を加え、室温で巨大な磁気抵抗効果を示す物質Sm1-xLax+yBa1-yMn2O6を開発した。この物質の母物質であるSmBaMn2O6はペロブスカイト型構造のAサイト(Sm,Ba)を層状に規則配列させた構造を持っており、室温よりも高温の100℃付近で電荷整列を起こし絶縁体となる。しかしSmBaMn2O6の電荷整列相は非常に安定で磁場を9Tまで印加しても磁気抵抗効果は得られなかった。そこで、本発明者らは、この母物質にLaをドーピングし、結晶構造静電ポテンシャルを乱すとともにキャリアコントロールを行ったSm1-xLax+yBa1-yMn2O6では、室温で非常に大きな磁気抵抗効率を得ることに成功した(非特許文献4)。

0006

これら物質開発が進む中、デバイス応用のために必要不可欠な薄膜化は成功していなかった。前述した電荷整列相を室温以上で示し、室温巨大磁気抵抗材料の候補物質のひとつであるBi0.5Sr0.5MnO3については特許文献4に報告されるようにパルスレーザーデポジション(PLD)法を用いて薄膜化に成功している。しかし、唯一室温で電荷整列転移を数テスラの磁場によって金属化し巨大磁気抵抗効果を発現させることの出来るAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は得られていない。

0007

近年、新たな酸化物薄膜作製法として、紫外線パルスレーザを用いたある種の金属酸化物製膜法が開発されており、PLD法などの物理蒸着法とは異なる製膜プロセスとして注目されている。この手法は塗布光照射法と呼ばれており、金属有機酸塩ないし有機金属化合物MmRn(ただしM=Si、Ge、Sn、Pbの4b族元素、Cr、Mo、Wの6a族元素、Mn、Tc、Reの7a族元素:R=CH3、C2H5、C3H7、C4H9などのアルキル基、あるいはCH3COO−、C2H5COO−、C3H7COO−、C4H9COO−などのカルボキシル基、あるいはCOのカルボニル基:m、nは整数)を可溶性溶媒に溶かし、あるいは液体のものはそのまま、該溶液基板上に分散塗布した後、酸素雰囲気下でエキシマレーザ照射することを特徴とする、エキシマレーザによる金属酸化物および金属酸化物薄膜の製造方法である(特許文献5)。

0008

塗布光照射法は、塗布熱分解(MOD)法として知られているような手法と異なり、高温下(500℃以上)で熱処理することなく基板上に金属酸化物を製造する方法であり、金属有機化合物(金属有機酸塩、金属アセチルアセトナト炭素数6以上の有機基を有する金属アルコキシド)を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光を照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法として知られている(特許文献6)。
ここでは、金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光、例えば、ArF、KrF、XeCl、XeF、F2から選ばれるエキシマレーザを用いて照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法が記載され、波長400nm以下のレーザ光の照射を、複数段階で行い、最初の段階の照射は金属有機化合物を完全に分解させるに至らない程度の弱い照射で行い、次に酸化物にまで変化させることができる強い照射を行うことも記載されている。また、金属有機酸塩の金属が、鉄、インジウム、錫、ジルコニウムコバルト、鉄、ニッケル、鉛、チタン亜鉛から成る群から選ばれるものであることも知られている。

0009

またさらに、La、MnおよびCa、SrもしくはBaの各酸化物原料成分を含む前駆体塗布液被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜を結晶化させて、組成式(La1−xMx)MnO3−δ(M:Ca,Sr、Ba、0.09≦x≦0.50)で表わされる複合酸化物膜を形成する複合酸化物膜の製造方法において、前記前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜に対し波長が360nm以下である光を空気中で照射して薄膜を結晶化させることを特徴とする複合酸化物膜の製造方法が知られている(特許文献7参照)。
ここでは、被塗布物の表面に形成された薄膜に対して光を照射する光源が、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザ、XeFエキシマレーザ、YAGレーザの3倍波光またはYAGレーザの4倍波光が用いられ、被塗布物の表面に塗布される前駆体塗布液が、Laのアルカノールアミン配位化合物と、Mnのカルボン酸塩と、Mの金属またはアルコキシドとを、炭素数が1〜4である一級アルコール中で混合させ反応させて調整することが記載されている。

0010

特許第2685721号(特開平8−133894号)
特許第2812913号(特開平9−249497)
特許第2812915号(特開平9−263495)
特開2005-200271号公報
特許2759125号明細書
特開2001-31417号公報
特開2000-256862号公報
Phys. Rev. B 60 (1999)9506.
J . Appl. Phys. vol. 93(2003) 7370.
J. Phys. Soc. Jpn. 71 (2002) 2843.
J. Appl. Phys. 98 (2005) 46108.

発明が解決しようとする課題

0011

これまで、室温巨大磁気抵抗材料であるAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物(RBaMn2O6)の薄膜化は成功していない。そこで本発明は、前述の塗布光照射法によって基板上に結晶化したAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物の薄膜形成を可能にする製造方法を提供する。

課題を解決するための手段

0012

上記目的を達成するために本発明はAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜の製造において、塗布熱分解法における熱処理過程の一部を紫外光レーザー)照射で置き換える。すなわち、金属有機化合物の溶液を支持体上に塗布及び乾燥工程(1)、有機成分の熱分解仮焼成工程(2)、Aサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜への変換を行う本焼成工程(3)をへて製造する際に、工程(2)および工程(3)と並行してあるいは工程(2)の前に、紫外光(レーザ)、特に400nm以下の波長を照射することを特徴とするAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜の製造方法である。これにより、薄膜材料低温高速製膜(熱処理時間の大幅な短縮)が可能になるとともに、マスクの使用や紫外光の照射位置を精密に制御することにより、素子に必要なパターニングを製膜と同時に行うことができる。

0013

すなわち、本発明は、基板上に形成された組成式RBaMn2O6-d(RイオンとBaイオンはペロブスカイト型構造(AMnO3型)のAサイトを占め、層状に交互に規則配列した結晶構造を持つことを特徴とするAサイト層状秩序ペロブスカイト型マンガン酸化物(式中、RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Hoの少なくとも1種類より選ばれる3価イオンであり、RとBaの比(R/Ba)は0.5〜2.0の範囲であり、R/Ba=1.0からずれた場合は多く入った方が、もう一方のサイトに固溶していても良く、さらに、BaはCaやSrによって一部置換されていても良く、MnサイトにはCrやRu等の金属イオンが微量置換されていても良い。dは0〜1の範囲をとる。)から成る薄膜を形成させる方法において、上記物質の各構成元素を含む有機金属薄膜を熱分解してアモルファス化し、不活性気体中で、500℃〜800℃の温度に保持し、紫外レーザを照射して、結晶化することを特徴とするAサイト層状秩序型ペロブスカイトマンガン酸化物薄膜の製造方法である。

発明の効果

0014

本発明は、従来不可能であったAサイトが層状秩序したペロブスカイト型Mn酸化物を種々の基板上に製膜することを可能とする発明であり、一部の組成をとるものは室温で巨大磁気抵抗効果を示すため、磁気ヘッドへの応用が期待される。また本発明は低温で製造効率が良いため、大量生産にも適する特徴を持つ。

発明を実施するための最良の形態

0015

本発明においては、先駆体有機膜の製造方法は、他の物理的手法スパッタリング、MBE、レーザーアブレーション)、化学的手法スプレー熱分解CVD)でも代用できる。また、本発明では、酸化物がAサイト秩序型ペロブスカイトMn酸化物を形成する金属として、RBaMn2O6-d(RイオンとBaイオンはペロブスカイト型構造(AMnO3型)のAサイトを占め、層状に交互に規則配列した結晶構造を持つことを特徴とするAサイト層状秩序ペロブスカイト型マンガン酸化物。RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Hoの少なくとも1種類より選ばれる3価イオンである。RとBaの比(R/Ba)はおおよそ0.5〜2.0の範囲であり、R/Ba=1.0からずれた場合は多く入った方が、もう一方のサイトに固溶していてもよい。またBaはCaやSrによって一部置換されていても良く、MnサイトにはCrやRu等の金属が微量置換されていても良い。dは0〜1の範囲をとる。)の金属組成で表される元素を含んだ先駆体膜を用いることが出来る。さらに本発明は、支持体として,ガラス基板チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ランタンアルミネート(LaAlO3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム((LaxSr1-x)(AlxTa1-x)O3)、ネオジムガレート(NdGaO3)、イットリウムアルミネート(YAlO3)単結晶、酸化アルミニウム(Al2O3) 、イットリア安定化ジルコニア((Zr,Y)O2, YSZ)基板から選ばれる1種等を用いることが出来る。また、本発明では、金属有機化合物が、β−ジケトナト長鎖のアルコキシド(Cが6以上)、ハロゲンを含む有機酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
Aサイトが層状秩序したペロブスカイト型Mn酸化物を形成する金属の有機化合物溶液を支持体上に塗布し、乾燥工程、仮焼成工程、本焼成工程の各工程で、紫外光を照射することを特徴とするAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜の製造方法である。本発明で用いる紫外光としては、レーザ光を挙げることができる。
目的に応じて、所定の工程途中や各工程の前後を選ぶことが出来る。また、金属の有機化合物溶液を基板にスピンコートし、溶媒除去のため恒温槽中130℃で乾燥後、レーザチャンバ内試料ホルダー試料を装着し、室温でレーザ照射することもできる。

0016

金属有機化合物を塗布し乾燥させた膜および本焼成初期膜のそれぞれに対してレーザ照射し、さらにこれらレーザ照射膜に対して適切な熱処理を施すことにより例えばSmBaMn2O6膜を作製した場合について述べると次の効果が確認された。
SmBaMn2O6膜を生成する金属有機化合物の溶液を支持体上に塗布、乾燥後、金属の有機化合物中の有機成分を500℃で熱分解させる仮焼成を行った後に、アルゴン気流中500℃程度の温度でレーザ光を照射することにより、Aサイトイオンが層状に規則配列したSmBaMn2O6-d(d ≒0.5)膜が生成することが判明した。得られた膜を500℃、酸素中で6時間程度熱処理することにより酸素欠損のないSmBaMn2O6が得られた。

0017

従来の薄膜形成法では、図1(c)に示すようなAサイトイオンが固溶した結晶構造を持つ薄膜しか製造することが出来なかったが、本発明の製造方法によって、基板上に図1(a,b)に示すようなAサイトイオンが層状に規則配列したペロブスカイト型Mn酸化物薄膜を形成出来ることを確認した。

0018

本発明の具体例を示し、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明の実施例で使用した基板は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ランタンアルミネート(LaAlO3)、酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム((LaxSr1-x)(AlxTa1-x)O3)であり、原料溶液は、RBaMn2O6-d(RはY, La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Tb, Ho)を構成する各金属イオンの2エチルヘキサン溶液またはナフテン酸溶液を用いた。紫外光照射は、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザを用いた。

0019

エチルヘキサン酸サマリウム溶液にナフテン酸バリウム溶液、ナフテン酸マンガン溶液を定比で混合した溶液(C1)を作成した。C1溶液をチタン酸ストロンチウム基板に4000rpm; 10秒間でスピンコートし、500℃で10分間加熱した。その後、基板温度を500℃に保ち、Ar気流中で248nmのパルスレーザフルエンス:140mJ/cm2; 10Hz; 60分照射した。このようにして作製した膜について照射部のみ基板上にAサイトイオンであるSmとBaが層状秩序化したペロブスカイトMn酸化物薄膜がエピタキシャル成長した。図2に示したTEM像によりAサイトが層状に秩序化したエピタキシャル膜が得られていることが分かる。

0020

実施例1において、レーザのフルエンス:150mJ/cm2で照射した場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0021

実施例1において、レーザのフルエンス:130mJ/cm2で照射した場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0022

実施例1において、照射繰り返し数を50Hzとした場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0023

実施例1において、照射繰り返し数を5Hzとした場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0024

実施例1において、基板温度を600℃とした場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0025

実施例1において、基板温度を700℃とした場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0026

実施例1において、Smの一部もしくは全てをLaに代えた場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0027

実施例1において、Baの一部をLaに代えた場合、照射部にのみAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が形成された。

0028

実施例1〜9に示したAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜はどれも酸素が一部欠損しているが、得られた膜を500℃、酸素中で6時間程度熱処理することにより酸素欠損のないAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜が得られた。

0029

(比較例1)
実施例1において、レーザのフルエンス:120mJ/cm2で照射した場合、照射部にAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されず、Aサイトが固溶したSm0.5Ba0.5MnO3薄膜が得られた。

0030

(比較例2)
実施例1において、レーザのフルエンス:100mJ/cm2で照射した場合、照射部にAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されず、Aサイトが固溶したSm0.5Ba0.5MnO3薄膜が得られた。

0031

(比較例3)
実施例1において、レーザー照射時の雰囲気を空気中としたところ、照射部にAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されず、Aサイトが固溶したSm0.5Ba0.5MnO3薄膜が得られた。

0032

(比較例4)
実施例1において、レーザ照射時の温度を400℃としたところ、照射部にAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されなかった。

0033

(比較例5)
実施例1において、仮焼成温度を250℃としたところ、照射部にAサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されなかった。

0034

(比較例6)
実施例1において、レーザー照射の代わりに900℃、60分間焼成を行ったところ、Aサイト層状秩序型ペロブスカイトMn酸化物薄膜は形成されなかった。

0035

(比較例7)
実施例10で紫外レーザー照射によって結晶化させた薄膜を空気中もしくは酸素雰囲気中で熱処理を行い酸素欠損の改善を試みたが、熱処理温度が400度以下では酸素欠損は改善されず、800℃以上ではAサイトの層状秩序が乱れた。

図面の簡単な説明

0036

Aサイト秩序/無秩序型ペロブスカイトMn酸化物の結晶構造図
本発明の光照射膜のTEM像と電子線回折像

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