図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2008年6月12日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (18)

課題

遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)および空胞遠位型ミオパチー(DMRV)の原因である、変異型GNE遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物作出する。

解決手段

GNE遺伝子の塩基配列の一部(遺伝子産物であるGNEタンパク質の、キナーゼドメインをコードする部位)に、欠損置換または付加を生じさせる変異を加えることで、GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されている、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、およびそれを用いたDMRV治療薬スクリーニング方法

概要

背景

1981年、埜中らによって縁取り空胞遠位ミオパチー(Distal Myopathy with Rimmed Vacuoles,DMRV)が報告された(非特許文献1)。DMRVは、15から30発症することが多く、下腿伸筋群が初期より強く障害され(図1)、その後大腿屈筋群の筋力低下筋萎縮も加わり、発症10年以内に車椅子の生活を余儀なくされることが多い難治性疾患である。2001年、Eisenbergらによって、遺伝性封入体ミオパチー(Hereditary Inclusion Body Myopathy, HIBM)の原因がGNE(UDP-N-acetylglucosamine-2-epimerase/N-acetylmannosamine kinase)遺伝子の変異であることが示唆された(非特許文献2)。2002年、本発明者の浅賀らはHIBMとDMRVは同じ遺伝子の変異に起因する疾患であることを報告した(非特許文献4)。しかしながらGNE遺伝子欠損致死性であるため(非特許文献3)、GNE遺伝子ノックアウト動物をDMRVの病態解明治療方法開発研究のためにモデル動物として用いることは不可能である。
本発明者の浅賀らは、DMRVの日本人患者家系解析から、GNE遺伝子の1714番目塩基グアニン(G)からシトシン(C)に置換され、キナーゼ部位に含まれるGNEタンパク質N末端から572番目のアミノ酸残基であるバリン残基ロイシン残基に置換されているという点変異(V572L)を発見した(非特許文献4)(図2)。
GNEタンパク質は、シアル酸生合成の鍵となる酵素であり、ウリジンリン酸N-アセチルグルコサミンエピメラーゼ(UDP-N-acetylglucosamine 2-epimerase)及びN-アセチルマンノサミンキナーゼ(N-acetylmannosamine kinase)の2つの活性を持っている。リコンビナントGNEタンパク質の研究によりV572L変異ヒトGNEはキナーゼ活性が低下し、その患者の骨格筋O型糖鎖に影響があることが報告されている(Am J Pathol 166: 1211-1130, 2005)。さらに、GNE代謝産物であるN-アセチルマンノサミンやN-アセチルノイラミン酸を加えることで、DMRV患者から採取した細胞シアル酸化状態が回復したことが報告された(非特許文献5)。
しかしながら、現在においてもDMRVには有効な治療法は見つかっておらず、臨床現場では徐々に悪化していく状態を、手をこまねいて見ているしかないのが現状である。
J Neurol Sci 51: 141-153, 1981
Nat Genet 29: 83-87, 2001
PNAS 99: 5267-5270, 2002
Ann. Neurol. 52: 516-519, 2002
Rinsho Sinkeigaku. 2005 Nov; 45 (11): 943-945

概要

遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)および空胞型遠位型ミオパチー(DMRV)の原因である、変異型GNE遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物作出する。GNE遺伝子の塩基配列の一部(遺伝子産物であるGNEタンパク質の、キナーゼドメインをコードする部位)に、欠損、置換または付加を生じさせる変異を加えることで、GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されている、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、およびそれを用いたDMRV治療薬スクリーニング方法

目的

そこで、DMRVの病態解明と治療方法の開発研究のためにも、GNE遺伝子に変異を導入したトランスジェニックの作出が切望されてきた。しかしながら、その作出は困難であり、GNE欠損白血球患者由来繊維芽細胞ベルの開発研究にとどまっているのが現状である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、変異型GNE遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作出を目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

GNE遺伝子ゲノムDNAに変異が導入されていることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物

請求項2

前記変異がGNEタンパク質キナーゼドメインに導入されている、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項3

前記変異がGNE遺伝子のエキソン10に導入されている、請求項2に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項4

前記変異が点変異である、請求項1から3の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項5

GNEタンパク質のN末端から572番目アミノ酸残基であるバリン残基ロイシン残基置換されている、請求項4に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項6

GNE活性が低下している、請求項1から5の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項7

シアル酸生合成能不全である、請求項1から5の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項8

DMRV表現型発現している、請求項1から5の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項9

腎臓疾患モデル非ヒト哺乳動物である、請求項1から5の何れかに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項10

前記腎臓疾患が、糸球体腎炎間質性腎炎ネフロンろう,ネフローゼ症候群である請求項9に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項11

2ヵ月以上生存することができる、請求項1から10の何れかに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項12

前記非ヒト哺乳動物マウスである、請求項1から11の何れかに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

請求項13

請求項1から12の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部を用いる、GNE活性低下に因る疾病治療剤予防剤治療方法及び/又は予防方法スクリーニング方法

請求項14

請求項1から12の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部を用いる、シアル酸生合成能不全に因る疾病の治療剤、予防剤、治療方法及び/又は予防方法のスクリーニング方法。

請求項15

請求項1から12の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部を用いる、DMRVの治療剤、予防剤、治療方法及び/又は予防方法のスクリーニング方法。

請求項16

請求項1から12の何れか1項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部を用いる、腎臓疾患の治療剤、予防剤、治療方法及び/又は予防方法のスクリーニング方法。

請求項17

GNE遺伝子の組換えDNAであって、適当な宿主のGNE遺伝子と入れ替えたときに宿主のGNE活性を低下させる組換えDNA。

請求項18

GNE遺伝子の組換えDNAであって、適当な宿主のGNE遺伝子と入れ替えたときに宿主のシアル酸生合成能を低下させる組換えDNA。

請求項19

GNE遺伝子の組換えDNAであって、適当な宿主のGNE遺伝子と入れ替えたときに宿主がDMRV表現型を発現する組換えDNA。

請求項20

前記変異がGNEタンパク質のキナーゼドメインに導入されている、請求項17から19の何れか1項に記載の組換えDNA。

請求項21

前記変異がGNE遺伝子のエキソン10に導入されている、請求項20に記載の組換えDNA。

請求項22

GNEタンパク質のN末端から572番目のアミノ酸残基であるバリン残基がロイシン残基に置換されている、請求項21に記載の組換えDNA。

請求項23

請求項17から22の何れか1項に記載の組換えDNAを含むベクター

技術分野

0001

本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、その作出に関するDNA及びトランスジェニック非ヒト哺乳動物又はその一部を用いたスクリーニング法に関する。

背景技術

0002

1981年、埜中らによって縁取り空胞遠位ミオパチー(Distal Myopathy with Rimmed Vacuoles,DMRV)が報告された(非特許文献1)。DMRVは、15から30発症することが多く、下腿伸筋群が初期より強く障害され(図1)、その後大腿屈筋群の筋力低下筋萎縮も加わり、発症10年以内に車椅子の生活を余儀なくされることが多い難治性疾患である。2001年、Eisenbergらによって、遺伝性封入体ミオパチー(Hereditary Inclusion Body Myopathy, HIBM)の原因がGNE(UDP-N-acetylglucosamine-2-epimerase/N-acetylmannosamine kinase)遺伝子の変異であることが示唆された(非特許文献2)。2002年、本発明者の浅賀らはHIBMとDMRVは同じ遺伝子の変異に起因する疾患であることを報告した(非特許文献4)。しかしながらGNE遺伝子欠損致死性であるため(非特許文献3)、GNE遺伝子ノックアウト動物をDMRVの病態解明治療方法開発研究のためにモデル動物として用いることは不可能である。
本発明者の浅賀らは、DMRVの日本人患者家系解析から、GNE遺伝子の1714番目塩基グアニン(G)からシトシン(C)に置換され、キナーゼ部位に含まれるGNEタンパク質N末端から572番目のアミノ酸残基であるバリン残基ロイシン残基に置換されているという点変異(V572L)を発見した(非特許文献4)(図2)。
GNEタンパク質は、シアル酸生合成の鍵となる酵素であり、ウリジンリン酸N-アセチルグルコサミンエピメラーゼ(UDP-N-acetylglucosamine 2-epimerase)及びN-アセチルマンノサミンキナーゼ(N-acetylmannosamine kinase)の2つの活性を持っている。リコンビナントGNEタンパク質の研究によりV572L変異ヒトGNEはキナーゼ活性が低下し、その患者の骨格筋O型糖鎖に影響があることが報告されている(Am J Pathol 166: 1211-1130, 2005)。さらに、GNE代謝産物であるN-アセチルマンノサミンやN-アセチルノイラミン酸を加えることで、DMRV患者から採取した細胞シアル酸化状態が回復したことが報告された(非特許文献5)。
しかしながら、現在においてもDMRVには有効な治療法は見つかっておらず、臨床現場では徐々に悪化していく状態を、手をこまねいて見ているしかないのが現状である。
J Neurol Sci 51: 141-153, 1981
Nat Genet 29: 83-87, 2001
PNAS 99: 5267-5270, 2002
Ann. Neurol. 52: 516-519, 2002
Rinsho Sinkeigaku. 2005 Nov; 45 (11): 943-945

発明が解決しようとする課題

0003

そこで、DMRVの病態解明と治療方法の開発研究のためにも、GNE遺伝子に変異を導入したトランスジェニックの作出が切望されてきた。しかしながら、その作出は困難であり、GNE欠損白血球患者由来繊維芽細胞ベルの開発研究にとどまっているのが現状である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、変異型GNE遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作出を目的とする。

課題を解決するための手段

0004

本発明によれば、GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されていることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されているため、GNE活性が低下しており、GNE活性低下モデル動物となり得る。また、GNEタンパク質はシアル酸生合成経路関与していることから、シアル酸生合成が不全となっており、シアル酸生合成能不全モデル動物となり得る。DMRVモデル動物となり得ることは言うまでもない。さらに、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の腎臓では、アルブミン尿尿細管拡張出血炎症性細胞浸潤糸球体数の減少が観察されることから、腎臓機能が不全となっており、糸球体腎炎間質性腎炎ネフロンろう,ネフローゼ症候群などの腎臓疾患モデル動物にもなり得る。

0005

さらに、本発明によれば、GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されていることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部を用いた、疾病治療剤及び/又は予防剤スクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法は、DMRVや腎臓疾患等のGNEタンパク質、シアル酸生合成に関連した疾病の病態解明と治療方法の開発研究に用いることができるという効果を奏する。

発明の効果

0006

本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、GNE活性低下モデル動物、シアル酸生合成能不全モデル動物、DMRVモデル動物又は腎臓疾患モデル動物として用いることができる。また、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、モデル動物またはその一部を用いた、疾病の治療剤及び/又は予防剤のスクリーニング方法に用いることができる。本発明のスクリーニング方法は、DMRVや腎臓疾患等のGNEタンパク質、シアル酸生合成に関連した疾病の病態解明と治療方法の開発研究に用いることができるという効果を奏する。

発明を実施するための最良の形態

0007

本願発明者は、GNE遺伝子の点変異(V572L)がDMRVの原因であると考え、同じ点変異をGNE遺伝子に導入したマウスを作出し、この点変異がDMRV様病態を発症することを証明すると共に、DMRV発症の分子機構の解明と治療法の開発を目指して研究を進めてきた。言うまでもないが、GNEタンパク質の活性に変化をもたらす部位は、GNE活性が低下するという効果を有する限り、特に限定されるものではない。これは、表1表2及び図3からも容易に推察できる。表1表2及び図3に示すように、他の患者家系の解析から、V572L以外の変異を有するDMRVが存在することが明らかとなっている。特に、表1及び2には、国内外におけるDMRV患者に見られる具体的な点変異が示されている。
しかしながら、本願においては下記の実施例に示す様に、GNEタンパク質の機能及び構造を考慮して、好ましくはGNEタンパク質のキナーゼドメイン、さらに好ましくはGNE遺伝子のエクソン10において変異を導入させた。

0008

DMRVは、四肢の遠位が好んで侵される病型の骨格筋疾患であり、筋線維の中に細かい顆粒状の物質縁取られた空胞が見られることが特徴であるが(図4A)、細胞質内好塩基性封入体が観察されることも特徴である(図4B)。また、DMRVは、常染色体劣性の遺伝形式を示し、血清クレアチンキナーゼの軽度の上昇がみられることもある(J Neurol Sci 64: 33-43, 1984)。したがって、上記の病態は、本願のトランスジェニック非ヒト哺乳動物がDMRVモデル動物となり得るかの指標となる。

0009

また、糸球体腎炎や間質性腎炎、ネフロンろう,ネフローゼ症候群などは、腎臓の疾患であり、タンパク尿、尿細管拡張、糸球体硬化、出血(血尿)、炎症性細胞浸潤等が見られることが特徴である。

0010

GNEタンパク質は、シアル酸の生合成の鍵となる酵素であり、ウリジン2リン酸N-アセチルグルコサミン2エピメラーゼ及びN-アセチルマンノサミンキナーゼの2つの活性を持っており、ウリジン2リン酸N-アセチルグルコサミン(UDP-N-acetylglucosamine)からN-アセチルマンノサミン(N-acetylmannosamine)、N-アセチルマンノサミンからN-アセチルマンノサミン6リン酸(N-acetylmannosamine-6-P)の生合成に関わる酵素である。図5に示すように、哺乳動物細胞におけるシアル酸は、N-アセチルマンノサミン、もしくは、ウリジン2リン酸N-アセチルグルコサミンから、一連酵素反応によって合成される。N-アセチルマンノサミンのリン酸化によって生合成が開始し、続くフォスフォエノールピルビン酸(PEP)との縮合によってシアル酸9リン酸ができる。特異的な脱リン酸化酵素によってリン酸モノエステル加水分解されると、シアル酸は核内に輸送され、そこでCTPと縮合しCMP-シアル酸となり、活性化される。このように、GNEタンパク質はシアル酸の生合成に深く関与することが示されている。

0011

本願のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、GNE遺伝子の変異により、GNEタンパク質の活性が低下しているので、GNE活性が低下していることが原因の疾患のモデル動物になり得る。具体的には、DMRV,HIBM,Quadriceps sparing myopathyなどのモデル動物になり得ると考えられる。
また、GNE活性の低下により、シアル酸の生合成能が不全となっていることが予測されるので、シアル酸生合成能不全が原因の疾患のモデル動物にもなり得る。具体的には、DMRV、HIBM、Quadriceps sparing myopathy、ダウン症候群(Gulesserian等、Amino Acids. 2006 May 26)、筋萎縮性側索硬化症(Niebroj-Dobosz等、Immunochemical quantification of glycoconjugates in serum and cerebrospinal fluid of amyotrophic lateral sclerosis patients. Eur J Neurol. 1999 May;6(3):335-40.)、アルツハイマー病(Functional & Molecular Glycobiology)などのモデル動物になり得ると考えられる。特に、筋萎縮性側索硬化症およびアルツハイマー病については、細胞内封入体が疾患の発症に関与していると考えられている。ダウン症については、GNEの下流にあるシアル酸合成酵素(Sialic Acid Synthase,SAS)(図5)の低下が関与していると考えられている。

0012

さらに、本願のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、GNE遺伝子の変異により、腎臓機能が不全となっているので、腎臓疾患モデル動物になり得る。具体的には、糸球体腎炎や間質性腎炎、ネフロンろう,ネフローゼ症候群などのモデル動物になり得ると考えられる。

0013

本願において、「GNE遺伝子のゲノムDNAに変異が導入されている」とは、GNE遺伝子の塩基配列の一部に、欠損、置換または付加を生じさせる変異が加えられていることをいう。GNE遺伝子のゲノムDNAに変異を導入するためには、GNE遺伝子に対して欠失、置換または付加のうち、1つまたは2つ以上の方法を併せて使用してもよい。

0014

本願において、「GNEタンパク質のキナーゼドメイン」とは、GNEタンパク質が有するキナーゼ活性に関与する領域のことであり、N末端から約401番目から約600番目のアミノ酸残基に相当する。

0015

本願において、「GNE遺伝子のエキソン10」とは、GNE遺伝子塩基配列の1634番目から1816番目の塩基のことをいう。

0016

本願において、「GNE活性」とは、GNEタンパク質のエピメラーゼ活性及び/又はキナーゼ活性のことをいうものとする。

0017

本願において、「GNE活性が低下している」とは、変異型GNE遺伝子の発現産物のGNEタンパク質としてのエピメラーゼ活性及び/又はキナーゼ活性が天然型のGNEタンパク質よりも低下していることをいうものとする。

0018

本願において、「シアル酸生合成能不全である」とは、シアル酸の生合成能が、野生型と比較して低下していることをいうものとする。

0019

本願において、「縁取り空胞型遠位型ミオパチー表現型発現している」とは、筋線維の中に細かい顆粒状の物質で縁取られた空胞が見られること、細胞質内に好塩基性封入体が見られること、及び/又は血漿クレアチンキナーゼ値が上昇している状態のことをいうものとする。

0020

本願において、「腎臓機能不全」とは、腎臓の機能が低下又は障害を受けている状態のことをいうものとする。その指標として、尿細管拡張、糸球体硬化、出血(血尿)、炎症性細胞浸潤、尿中アルブミン濃度の上昇等が挙げられる。

0021

本願において、「腎臓疾患」とは、腎臓機能が不全となった状態のことをいい、具体的な疾患としては糸球体腎炎や間質性腎炎、ネフロンろう,ネフローゼ症候群などが挙げられる。

0022

本発明のGNE遺伝子に変異を持つトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、公知の遺伝子相同組み換え法ジーンターゲッティング法)により作製することができる。ジーンターゲッティング法は、本分野においては良く知られた技術であり、本分野の種々の実験書の教示に従って行うことができる。先ず、マウスのゲノムデータベースからGNE遺伝子のDNA塩基配列入手する。その情報をもとにGNE遺伝子の必要な領域をPCR増幅するか、ゲノムライブラリーから単離する。そして、そのゲノムの情報から、GNE遺伝子の機能を低下あるいは欠損させた配列を有するターゲティングベクターを、下記の方法により作製することができる。

0023

ターゲティングベクターを設計するにあたり、GNE遺伝子の構造に変化をもたらす部位は、GNE遺伝子の発現産物がGNEタンパク質としての活性を低下させるという効果を有する限り、特に限定されるものではない。

0024

また、ベクターを導入した組み換え体につき、ターゲティングベクターにより導入した薬剤耐性遺伝子を用いたスクリーニングサザンブロット法PCR法を用いたスクリーニングを併用して、選抜することが好ましい。そのために、それらのスクリーニングを容易に行う事ができるように便宜を考えてターゲティングベクターを設計することが望ましい。薬剤選択マーカー遺伝子として、ネオマイシン耐性遺伝子ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子等を使用することができる。また、ネガティブ選択用遺伝子には、HSVチミジンキナーゼ遺伝子ジフテリア毒素A遺伝子等を使用することができる。

0025

そのDNA断片試験管内において遺伝子操作し、GNE遺伝子の発現産物がGNEタンパク質としての活性が低下するような変異DNAを作製する。なお下記の実施例においては、下記に詳しく述べるCre−loxPのシステム(R.Kuhn et al.Science,269,1427−1429,1995)を用いて、GNE遺伝子を変異させることを可能とするベクターを構築し、GNEタンパク質の活性を低下させている。しかし、本発明はCre−loxPシステムを用いた方法に限定されるものではなく、Cre−loxPシステムを用いない最も一般的なトランスジェニックマウス作製方法によっても、GNEタンパク質の活性を低下させるような種々の改変を行うことができる。

0026

次いで上記の方法により作製したターゲッティングベクターを使用して、相同組み換えを行う。本願明細書において、「GNE遺伝子の相同組み換え」とは、GNE遺伝子と同一または類似の塩基配列を有する改変したGNE遺伝子を、ゲノム中のGNE遺伝子のDNA領域に、人工的に組み換えさせることをいう。

0027

目的とする遺伝子の相同組み換えが起こる頻度は低いことが知られており、目的とする相同組み換え体を得るためには、多数の組み換え体をスクリーニングする必要がある。しかし、受精卵では多数のスクリーニングを行うことが技術的に困難である。よって、受精卵と同様に多分化能を有し、かつin vitroで培養することができる細胞を使用することが好ましい。そして、その目的を達成するためには胚性幹細胞ES細胞)による方法を用いることができるが、それに限定されるものではない。

0028

現在マウス由来ES細胞株がいくつか確立されており、その一つに下記の実施例で使用しているE14TG2a細胞株がある。しかし、それに限定されるものではなく、他のマウス由来のES細胞株である、TT2細胞株、AB−1細胞株、J1細胞株、R1細胞株等を使用することもできる。これらのいずれのES細胞株を用いるかは、実験の目的や方法により適宜選択して決定することができる。

0029

GNE遺伝子を改変してその発現産物の活性を低下させたターゲティングベクターを公知の方法に準じてマウスES細胞に導入する。そして、ES細胞中の目的とするGNE遺伝子のゲノムDNA配列を、ターゲティングベクター中の活性が低下したGNE遺伝子による相同組み換えによって置換する。相同組み換えは、GNE遺伝子ゲノムDNA配列と、ターゲティングベクター中の非改変部分との配列との相同性を利用して、ある確率をもって生じさせることができる。

0030

ターゲティングベクターをES細胞に導入する方法としては、公知の電気穿孔法エレクトロポレーション法)、リポソーム法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法等も利用できるが、導入遺伝子の相同組み換え効率を考えると、電気穿孔法を用いることが好ましい。

0031

得られた組み換えES細胞につき、相同組み換えが起こっているかどうかのスクリーニングを行う。即ち、まずネオマイシン等の導入した薬剤耐性因子によりスクリーニングを行う。更にスクリーニングを確実にする為に、サザンハイブリダイゼーション法やPCR法により、スクリーニングを行う。これらのアッセイにより、染色体上に存在する野生型GNE遺伝子と導入したGNE遺伝子の間で正しく相同遺伝子組み換えが起こり、染色体上のGNE遺伝子に変異が移った細胞を選択することができる。

0032

こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を、野生型マウス胚盤胞または8細胞期の内に導入する。そして、このES細胞とのキメラ胚偽妊娠状態の仮親マウスの子宮移植し、出産させることによりキメラ動物を作製することができる。トランスジェニック動物は、現在はES細胞が確立しているマウスにおいて作製することができるが、将来の技術進歩により他の動物種においても作製が可能となるであろう。

0033

ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法としては、マイクロインジュクション法や凝集法が知られているが、いずれの方法を用いることも可能であり、当業者が適宜改変することができる。マウスの場合には、ホルモン剤(例えば、FSH様作用を有するPMSGおよびLH様作用を有するhCGを使用)により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウス交配させる。その後、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、8細胞期胚を用いる場合には2.5日目に、それぞれ子宮や卵管から初期発生胚を回収する。このようにして回収した胚に対して、ターゲティングベクターを用いて相同組み換えを行ったES細胞をin vitroにおいて注入し、キメラ胚を作製する。

0034

一方、仮親とするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などの処置をした雄マウスと交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠マウスに対して、上記の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、妊娠・出産させることによりキメラマウスを作製することができる。キメラ胚の着床、妊娠がより確実に起こるようにするため、受精卵を採取する雌マウスと仮親となる偽妊娠マウスとを、同一の性周期にある雌マウス群から作出することが望ましい。

0035

ES細胞に由来する生殖細胞を持つマウス個体が、このようなキメラマウスの中から得られた場合、このキメラマウスを純系のマウスと交配し、そして次世代個体ES細胞由来被毛色が現れることにより、ES細胞がキメラマウス生殖系列へ導入されたことを確認することができる。ES細胞が生殖系列へ導入されたことを確認するには、様々な形質を指標として用いることができるが、確認の容易さを考慮して、被毛色によることが望ましい。マウスにおいては野ネズミ色アグーチ色)、黒色黄土色、チョコレート色および白色などの被毛色が知られているが、使用するES細胞の由来系統を考慮して、キメラマウスと交配させるマウス系統を適宜選択することができる。また、体の一部(例えば尾部先端)からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッセイを行うことにより、選抜を行うこともまた可能である。

0036

この様に、胚内に移植された組み換えES細胞が生殖系列に導入された動物を選択し、そのキメラ動物を繁殖させることにより、目的とする遺伝子発現産物の活性が低下した個体を得ることができる。得られたGNE活性低下ヘテロ接合体マウス同士を交配させることにより、目的とする遺伝子欠損ホモ接合マウスを得ることができる。作出されたGNE変異遺伝子を保有するヘテロ接合体、あるいはホモ接合体は生殖細胞および体細胞のすべてに安定的にGNE遺伝子変異を有しており、交配等により効率よくその変異を子孫動物に伝達することができる。

0037

以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示に過ぎない。例えば、上述したように、変異を導入し、GNEタンパク質の活性に変化をもたらす部位は、GNE活性が低下するという効果を有する限り、特に限定されるものではない。

0038

以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0039

実施例1 GNE点変異(V572L)マウスの作出

0040

(1)ターゲティングベクターの構築
マウスGNE遺伝子のエキソン10にV572L (GTG → CTG)となるように点突然変異を導入することを目的としてターゲティングベクターを構築した。図6に、エキソン10に変異を導入するために本発明で使用したターゲティングベクターの構造、及び相同組み換えにより得られる遺伝子の構造を示す。図6において、□で囲まれた数字の5から12はエキソン5からエキソン12を、それぞれ示す。

0041

1)カリフォルニア工科大学のマウスバクテリア人工染色体ライブラリー(BAC) (Male CJ7/129SV由来、Research Genetics, Huntsville, AL, USA)をスクリーニングし、マウスGNE遺伝子を含むBACを得た。
2)National center for biotechnology informationのデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov) 及びマウスBACの塩基配列を決定することにより得たデータから制限酵素地図を作製した。
3)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) 用のプライマーを設計
マウスBACを鋳型としてターゲティングベクターの長腕側 (9.0kb)と短腕側 (1.0 kb)を別々にPCRで増幅し、pBluescript IISK(+)ベクター(Stratagene, La Jolla, CA, USA)にサブクローニングした。
PCRで増幅された全てのエキソン領域並びにエキソンーイントロン境界部分は直接塩基配列を決定しPCRエラーが無いことを確認した。
尚、マウスGNE遺伝子のエキソン10は長腕側に含まれるようにPCRプライマーを設計し、長腕側PCR産物の3’末端と短腕側PCR産物の5’末端は一部重なる配列を含んでいる。
4)ターゲティングベクターの長腕側をサブクローニングしたベクター(長腕ベクター) 上のGNE遺伝子エキソン10にsite-directed mutagenesis法を用いてV572Lとなるように点突然変異(GTG → CTG) を導入した。
5)短腕ベクターにジフテリア毒素A遺伝子(大阪大学大学院生命機能研究科八木先生より分与)を導入した。
6)短腕ベクターのマウスGNE遺伝子のイントロン10にネオマイシン耐性遺伝子(loxP-Neo-loxPカセット)を導入した。
7)点突然変異 (V572L)、ネオマイシン耐性遺伝子およびジフテリア毒素A遺伝子を含む短腕ベクターの一部分を制限酵素切り出し、長腕を含むベクターにサブクローニングすることで目的とするターゲティングベクターを得た。

0042

(2)GNE点変異マウスの作出

0043

下記の実施例において示すように、本発明のトランスジェニックマウスを作製するにあたり、コンディショナルなトランスジェニックマウスの作製において汎用されている、Cre/loxPのシステム(R.Kuhn et al.Science,269,1427-1429,1995)を用いることも可能である。実施例においては既に述べたように、GNE遺伝子を変異させることを可能とする、ターゲティングベクターを用いている。
1)相同組換えES細胞クローンの単離
作成したターゲティングベクターを制限酵素(Kpn I)で切断して直鎖状にした後、エレクトロポレーション(250V, 500μF)によりマウスES細胞(E14-1)に導入した。ES細胞を250μg/ml G418を含むES細胞培地により7-10日間培養し、G418耐性のES細胞のコロニーを作らせ、順次約670個のコロニーを単離した。各ES細胞クローンより染色体DNAを調製し、PCRにより相同組換えクローンをスクリーニングした。たった一つであったがPCR陽性のクローンが同定できたので、そのクローンを凍結保存すると共に、PCR産物のDNA塩基配列を読むことにより、思いどおりの点変異がES細胞のGNE遺伝子に導入されたことを確認した。

0044

2)相同組換えES細胞からのネオマイシン耐性遺伝子の除去
相同組換えES細胞を融解・培養し、Cre遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(Adex-CANCre、東京大医科学研究所の斎先生より分与)を感染させた。感染させたES細胞からコロニーを作らせ、約30個のコロニーを単離し、Creが発現してloxP配列で挟まれたネオマイシン耐性遺伝子が除去されたES細胞クローンをPCRにより選別した。約80%のクローンで思いどおりの除去に成功しており、12個のクローンを凍結保存すると共に、各クローンの核型(染色体の数)をカウントした。

0045

3)相同組換えES細胞からキメラマウスの作出
核型の正常なクローンを2つ選抜し、野生型マウスの8細胞期胚とES細胞塊を接着させる凝集法(集合キメラ法)によりキメラ胚を作成し、偽妊娠受容雌マウスの子宮に移植した(図7)。各々のES細胞クローンからキメラ率の高い(毛色判定で80%以上)キメラマウスを複数匹得ることができた(図8)。

0046

4)キメラマウスからGNE点変異ホモマウスの作出
キメラ率の高い雄のキメラマウスと野生型のC57BL/6マウスとを交配し、ES細胞由来の精子が受精したF1マウスを得ることに成功した。尾部から調製した染色体DNAをPCRで解析することにより、GNE点変異ヘテロマウスが得られていることを確認した。ついでGNE点変異ヘテロマウス同士を交配することにより、目的のGNE点変異ホモマウスの作出に成功した(図9)。GNE完全破壊マウスは胎生致死であることが報告されているが、GNE点変異ホモマウスは正常に出生成長した。また、雌雄共に繁殖能力は正常であった。なお、先に選抜した2つのクローンの両方からGNE点変異ホモマウスを得ることができ、以下に述べるGNE点変異ホモマウスの病態は両方のマウスに共通に見られた。

0047

実施例2 GNE点変異(V572L)マウスの表現型

0048

(1)筋肉凍結切片の作製
マウスはエーテル麻酔下で頸椎脱臼により安楽死させた。
背筋大腿四頭筋前脛骨筋の3カ所の骨格筋を筋線維にそってなるべく長くなるように摘出した。
摘出された筋組織クリオモルドに対して筋線維を垂直にたてるように配置し、筋組織のほとんどが露出するように少量の包埋剤流し込んだ。
クリオモルドをピンセットではさみ、あらかじめ十分に冷却したイソペンタン中に沈め、細かく揺すりながら凍結させた。
イソペンタンは、100mlビーカーに70ml程を注ぎ入れ、液体窒素中にビーカーを浸けて冷却した。
クライオスタットを用いて10μmの厚さの切片を作製し、MASコートされたスライドグラス貼付けた。

ティシューテッククリオモルド2号(Tissue-Tek 4566)サクラファインテックジャパン株式会社
凍結組織切片作製用包埋剤(M.E CRYO COMPOUND)株式会社マイクロ・エッヂインスツルメント
クライオスタットライカ凍結ミクロトームCMシリーズLEICACM1900)ライカマイクロシステムズ株式会社
MATUNAMIMASコート付MICRO SLIDE GLASS
イソペンタン(isopentane)和光純薬166-00615

0049

(2)ヘマトキシリンエオジン染色法
ハリスヘマトキシリン液で5分間染色後、流水で10分間水洗。その後、0.5%エオジン液で1分間染色し、流水で1分水洗した。アルコール脱水し、キシレン透徹後、カナダバルサム封入した。なお、この実施例においては、下記の試薬等を用いて下記の条件で処理を行った。

試薬
ヘマトキシリン
Harris hematoxylin solution (Merck, Darmstadt, Germany)
エオジン
Eosin Y-solution 0.5% (Merck, Darmstadt, Germany)
カナダバルサム
Nacalai tesque

1. Harris ヘマトキシリン液 5min
2.水洗10 min
3. 0.5% エオジン液 1 min
4. 水洗 1min
5.アルコール脱水
70% 2分
80% 2分
95% 2分
99% 3分
99% 3分
6. キシレン 3分
7. キシレン 3分
8. カナダバルサムで封入

0050

(3)NADH-TR染色
凍結保存してあるNADH液を解凍しNBT液と1:1の割合で混ぜる。この混合液を凍結切片にまんべんなくかけ、乾燥しないように湿潤したチャンバー内に置き、37℃で30分間インキュベートした。次いでイオン交換水で軽く水洗し、アセトン分別し、水洗後グリセリンゼリーで封入した。

試薬
Gelatin (Difco)
Glycerol (Nacalai tesque)
Nicotinamide adenine dinucleotide, reduced (NADH) (関東化学)
Nitro blue tetrazolium (Merck, Darmstadt, Germany)

<グリセリンゼリー>
ゼラチンをイオン交換水で溶解しグリセリンフェノールを加えて80℃で混和した。37℃に温めて使用した。

1. 凍結保存してあるNADH液を解凍後NBT液に加えた。
2. 上記混合液をスライドガラス上の凍結切片にかけ、チャンバー内で37℃、30分間インキュベートした。
3. イオン交換水で軽く洗浄した。
4. 30%アセトンに数秒間浸漬した。
5. 60%アセトンに数秒間浸漬した。
6. 90%アセトンに数秒間浸漬した。
7. イオン交換水で軽く洗浄した。
8. グリセリンゼリーで封入した。

0051

(4)抗ユビキチン抗体を用いた免疫組織化学染色
作成した筋肉の凍結切片を、ペルオキシダーゼブロッキング溶液を用いて−20℃で20分間処理し,2%ヤギ血清を用いて常温で60分間ブロッキングした。その後、一次抗体を適当に希釈し4℃で一晩反応させ、TBSTで洗浄した後に二次抗体を反応させた。ABC RabbitIgGKit(VectorPK-6101)で処理した後,DAB溶液(VectorSK-4100)で発色させた。

0052

免疫染色に使用した一次抗体は、ウサギ抗ユビキチン抗体(DakoCytomation, Cat#Z-0458)である。二次抗体はヤギ抗ウサギIgGビオチン化抗体(Vector BA-1000)を用いた。

0053

(5)透過電子顕微鏡による観察
マウスを2.5%グルタールアルデヒドを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で心臓より灌流固定し、組織を取り出し同じ固定液でさらに1時間固定した。その後、1%四酸化オスミウムを含む0.1M リン酸緩衝液(pH7.4)で1時間、後固定した。次に上昇エタノール系列とプロピレンオキシドで脱水後、エポン包埋した。超薄切片作製後、酢酸ウランクエン酸鉛で二重染色し、透過電子顕微鏡(日立H7600)で観察・撮影した。

0054

(6)血漿クレアチンキナーゼ値測定
測定には3ヶ月齢から24ヶ月齢のマウスを、野生型個体11匹、ヘテロ個体27匹、ホモ個体28匹用いた。

0055

ヘパリンコート処理したヘマトクリット毛細管ドラモンド社製)を用いて、マウス尾部より30-50μlの血液を採取した。遠心分離操作(6,600回転、5分間)後、血漿成分のみを分離して試料とした。測定は富士ドライケム3500(富士フイルムメディカル製)及び同社製のクレアチンキナーゼ測定用スライドCPK-PIII)による比色法を用いて行った。

0056

(7)尿中アルブミン濃度測定
測定には3ヶ月齢から24ヶ月齢のマウスを、野生型個体10匹、ヘテロ個体21匹、ホモ個体18匹用い、ELISA法により測定した。

0057

GNE点変異(V572L)マウスの表現型
GNE完全破壊マウスは胎生致死であったのに対し、GNE点変異マウスは正常に生まれてきた。雌雄ともに妊よう性に異常はなく、外見上は特に異常は認められなかった。
DMRVは、筋線維の中に縁取り空胞が認められることが特徴であるが、細胞質内に好塩基性封入体が観察されることも特徴であり、これらの病理的変化が診断の決め手となる。本願発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の骨格筋を、月齢を追って解析したところ、明らかな縁取り空胞の形成は認められないが、患者でも病変が出やすい大腿四頭筋において、10ヵ月齢以降の個体において好塩基性封入体が観察された(図10及び図11)。15ヵ月齢まで観察を続けたところ、多くの筋繊維で封入体が観察された。さらに、電子顕微鏡を用いて15ヵ月齢のGNE点変異マウスの大腿四頭筋の封入体を観察したところ、オートファゴソームオートリソソームグリコゲノソーム様構造や管状構造が観察された(図12)。これらは、縁取り空胞の出現前兆であると考えられる。
また、再生筋線維と思われる像も観察されたことから、筋線維の破壊の指標となる血漿クレアチンキナーゼ値を測定したところ、野生型マウスに比べてGNE点変異ホモマウスとヘテロマウスで高い値を示す個体がいることがわかった(図13)。さらに、糸球体障害の指標となり、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症など糸球体に組織変化をきたす腎臓疾患患者の尿中に出現する尿中アルブミン濃度を測定したところ、野生型マウスとGNE点変異ヘテロマウスの間には大きな違いは見られなかったが、GNE点変異ホモマウスでは、有意に高い値を示し、糸球体に障害を有することが推察された(図14)。そこで、腎臓組織を採取し観察したところ、皮質においては尿細管拡張、出血及び炎症性細胞浸潤が見られ(図15)、髄質においては出血が見られ(図16)、腎臓機能が不全となっていることが明らかとなった。
さらに、本発明のGNE点変異ホモマウス、GNE点変異ヘテロマウス及び野生型マウスの500日齢までの生存率を確認したところ、離乳した全てのマウスにおいて1ヵ月や2ヵ月で死亡するマウスは確認されず、80日齢までの生存率がほぼ100%であった(図17)。その後、GNE点変異ホモマウスの生存率は、GNE点変異ヘテロマウス及び野生型マウスと比較して低い傾向を示したが、約40%が500日齢まで生存し、モデル動物として有用であることが明らかとなった。
以上のことから、本発明のGNE点変異マウスは、DMRVの特徴的な病態を発症しており、DMRVモデルマウスであることが明らかとなっただけでなく、腎臓疾患モデルマウスであることも明らかとなった。

0058

以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

図面の簡単な説明

0059

図1は、DMRV患者において下腿伸筋群が強く障害されることを示す像である。特に、図1AはDMRV患者の全体像を示す図であり、図1Bは下腿のMRI像を示す図である。
図2は、DMRV患者における遺伝子異常を示す図である。特に、図2Aは正常対照者の塩基配列を示す図であり、図2BはDMRV患者の塩基配列を示す図である。
図3は、DMRVに認められたGNE遺伝子変異の分布図である。
図4は、DMRVの病理を示す組織像である。
図5は、シアル酸の合成経路を示した図である。
図6は、本発明において行われた遺伝子相同組み換えの概要を示した模式図である。
図7は、本発明のキメラマウスを作製するための手順を示した模式図である。
図8は、集合キメラ法により作出されたキメラ胚及びキメラマウスである。
図9は、キメラマウスからトランスジェニックマウスの作製手順を示した模式図である。
図10は、月齢による大腿四頭筋の組織像を示す像である。特に、図10Aは3.5ヵ月齢、図10Bは、10ヵ月齢、図10Cは15ヵ月齢の本発明のマウス大腿四頭筋の組織像を示す図である。
図11は、15ヵ月齢の本発明のマウス大腿四頭筋の抗ユビキチン抗体を用いた免疫化学染色組織像を示す図である。
図12は、15ヵ月齢の本発明のマウス大腿四頭筋の電子顕微鏡像を示す図である。
図13は血漿中のクレアチンキナーゼ値を示す図である。横軸はマウス月齢を表し,各個体の値は凡例により図示している。
図14は、図尿中のアルブミン濃度を示す図である。図中の数値各遺伝子型における平均値を示し、各個体の値は凡例により図示している。
図15は、15ヵ月齢の本発明のマウスの腎臓皮質の組織像を示す像である。
図16は、15ヵ月齢の本発明のマウスの腎臓髄質の組織像を示す像である。
図17は、本発明のマウスの500日齢までの生存率を示す図である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ