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技術 βカゼインによって認識される複合体とその癌診断への応用

出願人 国立大学法人大阪大学
発明者 三善英知魚住尚史近藤昭宏
出願日 2006年9月27日 (14年11ヶ月経過) 出願番号 2006-262363
公開日 2008年4月10日 (13年4ヶ月経過) 公開番号 2008-082843
状態 特許登録済
技術分野 特有な方法による材料の調査、分析 生物学的材料の調査,分析 ペプチド又は蛋白質 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 解離条件 検出確率 分泌物質 レントゲン アポクリン 画像検査 結合性物質 NAK
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年4月10日)のものです。
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図面 (9)

課題

新規な癌の検査方法腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供すること。

解決手段

本発明の癌検査方法は、血清その他血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定する方法である。たとえば、血清検体のβカゼイン結合活性を測定する方法や、抗AHNAK抗体を用いたELISA法等によりβカゼイン結合性複合体を検出する方法によって、良好な癌の血清診断を実現できる。

概要

背景

現在、癌の検査において、レントゲン、CT、MRI等による画像検査、および組織検査と共に、血中の腫瘍マーカー量を調べる検査が一般に行われている。病巣が小さく画像検査や組織検査では判定が困難な場合も、腫瘍マーカーの検査によって癌の早期発見、ひいては癌の早期治療が期待できることから、これまでにも数多くの新規な腫瘍マーカーが見出され提案されている(たとえば、下記の特許文献1−3)。また、発癌リスクが高い集団を腫瘍マーカーによって決めることは、広義早期診断につながる(すなわち、この集団を徹底的に画像診断で追えば、早期癌発見される可能性が高い)。

現在行われている腫瘍マーカー検査の多くは、癌化に伴う異常糖鎖血中濃度を抗体等によって測定するものである。しかし、どのような分子上に異常糖鎖が付いているのかは不明なことが多い。たとえば、シアリルルイスAとも呼ばれる腫瘍マーカーCA19-9は、モノクローナル抗体NS19-9によって認識される糖鎖抗原であり、膵癌大腸癌などの癌患者血清で上昇する。しかし、CA19-9抗原提示している血清中分子群は明らかではない。

特開2006−242869号公報
特開2006−84224号公報
特開2005−117993号公報

概要

新規な癌の検査方法、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供すること。本発明の癌検査方法は、血清その他血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定する方法である。たとえば、血清検体のβカゼイン結合活性を測定する方法や、抗AHNAK抗体を用いたELISA法等によりβカゼイン結合性複合体を検出する方法によって、良好な癌の血清診断を実現できる。

目的

本発明は、以上の様な状況下なされたものであり、その課題・目的は、新規な癌の検査方法、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

血清その他血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定することを特徴とする癌の検査方法

請求項2

血清その他血液試料中のβカゼイン結合性分子複合体を測定することを特徴とする癌の検査方法。

請求項3

血清その他血液試料のβカゼイン結合活性を測定することを特徴とする癌の検査方法。

請求項4

上記分子複合体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を含む複合体である、請求項2記載の癌の検査方法。

請求項5

上記分子複合体が、AHNAKタンパク質を含む複合体である、請求項2記載の癌の検査方法。

請求項6

配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質とAHNAKタンパク質とを含むβカゼイン結合性の分子複合体。

請求項7

配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質とAHNAKタンパク質とを含むβカゼイン結合性の分子複合体であることを特徴とする腫瘍マーカー

請求項8

配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を用いたサンドイッチELISA法によって測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌の検査方法。

請求項9

配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を用いた表面プラズモン共鳴法によって測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌の検査方法。

請求項10

膵癌その他消化器系の癌の検査に用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌の検査方法。

請求項11

配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を含むことを特徴とする癌の検査用キット

請求項12

抗癌剤スクリーニング方法であって、候補物質を癌モデル動物投与した後、血中のβカゼイン結合性物質を測定することによって候補物質の抗癌作用を評価するステップを含むことを特徴とする、抗癌剤のスクリーニング方法。

技術分野

0001

本発明は、βカゼインによって認識される複合体とその癌診断への応用に関する。本発明は特に、癌の検査・診断に有用な技術を提供するものであり、たとえば、癌の早期診断治療効果の判定、再発を調べる検査などに利用することができる。

背景技術

0002

現在、癌の検査において、レントゲン、CT、MRI等による画像検査、および組織検査と共に、血中の腫瘍マーカー量を調べる検査が一般に行われている。病巣が小さく画像検査や組織検査では判定が困難な場合も、腫瘍マーカーの検査によって癌の早期発見、ひいては癌の早期治療が期待できることから、これまでにも数多くの新規な腫瘍マーカーが見出され提案されている(たとえば、下記の特許文献1−3)。また、発癌リスクが高い集団を腫瘍マーカーによって決めることは、広義の早期診断につながる(すなわち、この集団を徹底的に画像診断で追えば、早期癌発見される可能性が高い)。

0003

現在行われている腫瘍マーカー検査の多くは、癌化に伴う異常糖鎖血中濃度を抗体等によって測定するものである。しかし、どのような分子上に異常糖鎖が付いているのかは不明なことが多い。たとえば、シアリルルイスAとも呼ばれる腫瘍マーカーCA19-9は、モノクローナル抗体NS19-9によって認識される糖鎖抗原であり、膵癌大腸癌などの癌患者血清で上昇する。しかし、CA19-9抗原提示している血清中分子群は明らかではない。

0004

特開2006−242869号公報
特開2006−84224号公報
特開2005−117993号公報

発明が解決しようとする課題

0005

癌の早期診断、早期治療実現のため、良好な新規腫瘍マーカーが求められている。とりわけ、膵癌は今日最大の難治性癌の1つといわれており、癌と診断されたときには既に進行癌であることが多く、早期診断が可能な腫瘍マーカーは存在しないのが現状である。

0006

本発明は、以上の様な状況下なされたものであり、その課題・目的は、新規な癌の検査方法、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

一般的に極性をもつ正常の細胞では、細胞から分泌される物質の方向は決まっている。即ち正常細胞では、管腔(apical)側にタンパク質などの分子群を分泌しており、乳汁胆汁などには管腔(apical)側へ輸送されるタンパク質が多数含まれている。ところが、癌細胞になるとその極性が崩れて物質がランダムに分泌される。つまり、管腔(apical)側に分泌されるべきものが、基底膜(basolateral)側にも分泌されることになる。

0008

この極性の乱れ病理学的に癌と診断するのであるが、本発明者は、血中でのこの分泌物の有無によって生化学的に極性の乱れをとらえることができるのではないかと考えた。さらに、極性の乱れが生じた癌細胞がbasolateral側、つまり血管側に分泌する物質には、膜蛋白である糖タンパク質糖脂質を含むのではないかとの仮説を立て、レクチン様活性をもつ分子をヒトミルク中から検索したところ、βカゼインが同定された。このβカゼインとの結合活性指標にして極性の乱れをとらえるアッセイをしたところ、ヒト膵癌患者の血清では、このβカゼインとの結合活性が認められたのに対して、健常人の血清では殆ど陰性だった。また、ヌードマウス膵癌細胞移植して、経時的にβカゼインとの結合活性を測定すると、腫瘍の増大に伴って血清中の活性上昇が認められた。

0009

さらに、このβカゼインによって認識される分子群を精製し、その解析を行った結果、細胞輸送関与するタンパク質を含む複合体がβカゼインによって認識されること、および、このβカゼインが認識する複合体を高感度に測定することによって、膵癌その他の癌の危険群を早期に同定し得ること、等を見出し、本発明を完成するに至った。

0010

即ち、本発明は、医療上および産業上有用な発明として、下記(1)〜(12)の発明を含むものである。
(1)血清その他血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定することを特徴とする癌の検査方法。
(2) 血清その他血液試料中のβカゼイン結合性分子複合体を測定することを特徴とする癌の検査方法。
(3) 血清その他血液試料のβカゼイン結合活性を測定することを特徴とする癌の検査方法。
(4) 上記分子複合体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を含む複合体である、上記(2)記載の癌の検査方法。
(5) 上記分子複合体が、AHNAKタンパク質を含む複合体である、上記(2)記載の癌の検査方法。
(6) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質とAHNAKタンパク質とを含むβカゼイン結合性の分子複合体。
(7) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質とAHNAKタンパク質とを含むβカゼイン結合性の分子複合体であることを特徴とする腫瘍マーカー。
(8) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を用いたサンドイッチELISA法によって測定することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の癌の検査方法。
(9) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を用いた表面プラズモン共鳴法によって測定することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の癌の検査方法。
(10)膵癌その他消化器系の癌の検査に用いられる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の癌の検査方法。
(11) 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体、抗AHNAK抗体およびβカゼインからなる群から選ばれる1又は複数の分子を含むことを特徴とする癌の検査用キット。
(12)抗癌剤スクリーニング方法であって、候補物質を癌モデル動物投与した後、血中のβカゼイン結合性物質を測定することによって候補物質の抗癌作用を評価するステップを含むことを特徴とする、抗癌剤のスクリーニング方法。

発明の効果

0011

本発明によれば、新規な癌の検査方法、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供することができるため、癌の早期診断、治療効果の判定、再発を調べる検査などに有用である。

0012

検査対象となる癌の種類は特に限定されるものではないが、消化器系の癌(膵癌、胃癌肝癌、大腸癌、胆管癌など)が好ましく、またそれ以外の癌検査(たとえば乳癌検査)にも有効と考えられる。

発明を実施するための最良の形態

0013

以下、本発明の好ましい態様について説明する。
[1]本発明の癌検査方法
本発明の癌検査方法は、血清その他血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定するものである。上述のように、βカゼイン結合性物質として、細胞輸送に関与するタンパク質を含む複合体が本発明者によって同定されているので、血清中のこの複合体を測定することにより、癌の血清診断を行うことは好ましい方法である。

0014

また上記βカゼイン結合性複合体は、細胞輸送に関与するタンパク質として後述のCABINタンパク質のほかに、AHNAKタンパク質を含むことが本発明者によって明らかにされている(後述の実施例参照)。したがって、たとえば抗AHNAK抗体とβカゼインとを用いたサンドイッチELISA法によって、血清中の上記複合体を測定することが可能である。

0015

上記AHNAK(desmoyokin)は、高分子量タンパク質(約700kDa)として1989年に最初に報告(J. Cell Biol. 1989 Oct;109(4 Pt 1):1511-1518.)された核タンパク質である。このヒトAHNAKのcDNA配列アクセッション番号「NM_001620」で、またそのアミノ酸配列はアクセッション番号「NP_001611」でGenbankに登録されている(配列表の配列番号3にも、ヒトAHNAKのアミノ酸配列が示される)。本発明の癌検査において抗AHNAK抗体を使用する場合、抗体作製のための抗原としては、ヒトAHNAKタンパク質の全長を使用してもよいし、その部分配列からなるペプチドを用いてもよい。また、使用する抗AHNAK抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、いずれも常法にしたがって作製することができる。

0016

一方、βカゼインは、分子量約30kDaの乳腺特異的分泌タンパク質であり、乳中に分泌される。このヒトβカゼインのcDNA配列はアクセッション番号「NM_001891」で、またそのアミノ酸配列はアクセッション番号「NP_001882」でGenbankに登録されている(配列表の配列番号4にも、ヒトβカゼインのアミノ酸配列が示される)。なお、ヒトβカゼインは全長226アミノ酸からなるが、1−15番目の配列はシグナルペプチドである。本発明の癌検査においてβカゼインを使用する場合、ヒトβカゼインタンパク質の全長を使用してもよいし、その部分配列からなるペプチドを用いてもよい。

0017

βカゼインは、カルシウムイオンのない酸性条件で糖脂質を含む細胞膜に結合する。反対に、中性から弱塩基性条件でカルシウムイオンを添加すると、その結合は速やかに解離する。この性質を利用して、βカゼインの精製および後述のPolarity Assayによるβカゼイン結合活性の測定を行った。

0018

βカゼインは、たとえば次のような方法で調製することができる。市販されている無調整牛乳1.5リットルからmilk fat globuleを形成している細胞膜を超遠心により沈殿として回収する。共に沈殿した活性のあるカゼインを解離条件(20mM AcOH, pH8.0, 1% TritonX)で溶解した後、陰イオン交換樹脂DEAE)に添加し、酢酸などの酸で溶出することによりカゼインを精製することができる(たとえば20mM AcOH, pH2.7リニアグラジエントで溶出)。

0019

以下では、抗AHNAK抗体とβカゼインとを用いたサンドイッチELISA法によって血清中の上記複合体を測定する具体例について説明するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。

0020

まず、マイクロプレートなどに上記複合体を認識するβカゼインを固相化する。次に、この固相化プレートに検査対象の血清検体を添加して、固相化したβカゼインと血清検体中の複合体とを反応させる。反応条件は特に制限されないが、たとえば温度20〜30℃で1〜2時間である。血清検体は、血清成分による検出阻害を避けるため、予め希釈してから添加してもよい。希釈溶媒の種類は特に制限されず、水、生理食塩水緩衝液緩衝生理食塩水(たとえば、リン酸緩衝生理食塩水)等が使用できる。

0021

続いて、上記固相化プレートに、抗AHNAK抗体を添加して、上記複合体と反応させる。反応条件は特に制限されないが、たとえば温度37℃で1〜2時間である(以後の抗原抗体反応も同様の条件で行うことができる)。さらに、標識化抗体を添加して、上記抗AHNAK抗体と結合させる。この標識化抗体としては、抗AHNAK抗体と結合できればよいことから、たとえば、免疫学的手法において広く使用されている従来公知のIgG抗体等があげられる。

0022

最後に、抗AHNAK抗体と標識化抗体との結合を検出することにより、血清中の上記複合体を測定できる。検出方法は特に制限されず、使用する標識の種類に応じて従来公知の方法(たとえば、吸光度測定反射率測定蛍光強度測定発光量測定等)で行うことができる。なお、酵素を利用する場合は安定で比活性の大きなものが好ましく、β−ガラクトシダーゼβ−グルコシダーゼアルカリホスファターゼパーオキシダーゼリンゴ酸脱水素酵素等の使用が例示される。

0023

上記検出方法によって直接得られた値(たとえば、吸光度測定値)が予め設定したしきい値(カットオフ値)以上であれば、上記複合体の測定値は健常人と比較して高く、癌陽性と判断することができる。また、吸光度測定値などの検出値と上記複合体の血清濃度との相対関係を示す検量線を予め作成しておくことにより、検出値から血清検体中の上記複合体を定量することも可能である。

0024

もちろん、本発明の癌検査方法は、上述の方法に限定されるものではなく、ELISA法(酵素免疫測定法)以外に、放射線免疫測定法ラテックス凝集法、金コロイド粒子法等の免疫学的方法が採用でき、これらの方法により得られた結果から目視による判断・測定を行ってもよい。

0025

また抗AHNAK抗体の代わりに、CABINタンパク質に対する抗体を使用してもよい。ここで、CABINタンパク質とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、それをコードするcDNA配列は配列番号1に示される(Genbankにはそれぞれ「XP_943984」「XM_938891」で登録されている)。このCABINタンパク質は、上記複合体を構成するタンパク質の1つであることが本発明者によって明らかにされている。また、このCABINタンパク質は、ゴルジンと相同性を有し、siRNAでこの遺伝子をノックダウンして機能解析した結果、肝細胞でのタンパク質の輸送が阻害された(後述の実施例)ので、細胞輸送に関与していると考えられる。

0026

本発明の癌検査において上記CABINタンパク質に対する抗体を使用する場合、その抗体作製のための抗原としては、CABINタンパク質の全長を使用してもよいし、その部分配列からなるペプチドを用いてもよい。また、抗AHNAK抗体と同様に、使用する抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、いずれも常法にしたがって作製することができる。

0027

さらに、本発明の他の癌検査方法として、表面プラズモン共鳴法などを用いて、血清検体中のβカゼイン結合性物質を測定(換言すれば、血清検体のβカゼイン結合活性を測定)する方法を採用してもよい。たとえば、同法を採用するビアコア社の装置を使用して、βカゼインをセンサチップ上に固定化し、その上にマイクロ流路を介して血液試料を一定の流速で送液することによって試料中のβカゼイン結合性物質を測定することができる(表面プラズモン共鳴法を用いた分子間相互作用解析については、たとえば「ポストシークエンスゲノム科学3プロテオミクス(中山書店)」146−154頁参照)。

0028

実際に上記方法でβカゼインとの結合性物質を測定したところ、ヒト膵癌患者の血清では、このβカゼインとの結合活性が認められたのに対して、健常人の血清では殆ど陰性だった(後述の実施例)。この血清診断では、膵癌での特異度感度は共に90%以上であり、本発明の癌検査によって非常に正確性の高い診断を実現することができた。

0029

また、本発明の癌検査において、上記方法で、抗AHNAK抗体や抗CABIN抗体をセンサチップ上に固定化し、血液試料中の前記複合体を測定する方法を採用してもよい。

0030

以上、本発明の癌検査方法について説明したが、上述した方法以外にも、従来公知の種々の結合アッセイ、分子間相互作用解析の手法を用いて、血液試料中のβカゼイン結合性物質を測定することが可能である。

0031

[2]本発明の分子複合体、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キット
細胞が癌化し極性の乱れが生じると、前記複合体が血中に多く出現すると考えられるため、この分子複合体は新規な腫瘍マーカーとして用いることができる。

0032

上記分子複合体は、脂質のほかに、CABINタンパク質およびAHNAKタンパク質を含むβカゼイン結合性の複合体と判断されることから、その検出は、βカゼイン、抗CABIN抗体および抗AHNAK抗体のいずれかを用いた分子間相互作用解析、抗原抗体反応などによって行うことが可能である。また、検出方法としてサンドイッチELISA法を用いる場合、βカゼイン、抗CABIN抗体および抗AHNAK抗体の中から1又は複数のものを使用することは好ましい方法であり、これらいずれかの分子と他の分子等とを組み合わせたサンドイッチELISA法により複合体の検出を行っても勿論よい。

0033

後述の実施例に示すように、カゼインカラムを用いてヒト胆汁から上記複合体を精製して解析した結果、そこには膜由来脂質複合体に加えて、AHNAKやCABINが存在すると考えられる。すなわち、両タンパク質をそれぞれ標識して共焦点顕微鏡で上記複合体を観察すると、両者は共局在しており、脂質と共に複合体を形成していると判断された。

0034

上記複合体は、たとえば後述の実施例で用いた次の方法により胆汁から精製することができる。まず、前記方法で調製したβカゼインをアフィニティーカラム担体(たとえばCNBr-activated Sepharose 4B(ファルマシア))に固相化する。次に、ヒトから採取した胆汁をたとえば2倍に希釈し、結合条件下(20mM AcOH, pH6.5, 5mMEDTA)で上記カラムにアプライする。十分に洗浄後、解離条件(20mM AcOH, pH8.0, 10mM CaCl2)で溶出することにより、βカゼイン結合性複合体を精製することができる。

0035

さらに、βカゼイン結合分子群として、他の細胞骨格に関わるタンパク質や膜輸送に関わるタンパク質なども同定された。具体的には、後述のComplement factor H precursor(H factor 1)などである。これらの分子も、上記の複合体と一緒に存在する可能性がある。つまり、本来分泌タンパクは、小胞(vesicle)に乗って運ばれるのに対して、今回同定された細胞骨格に関わる分子や膜輸送に関わる分子等が一体となって膜ごと分泌される、いわゆる膜がちぎれるような分泌形式アポクリン型)で複合体が分泌され、ヒト乳汁および胆汁に存在すると考えられる。この分泌の概念は、Enlargeosomeとして近年注目されており(Mol Biol Cell. 2004 Dec;15(12):5356-68.)、極性を持つ正常細胞の場合は一定の方向にのみ起こるが、極性を失った癌細胞の場合は多方向に分泌されると考えられる。

0036

本発明の癌の検査用キットは、上記複合体を検出するため、βカゼイン、抗CABIN抗体および抗AHNAK抗体のうち少なくともいずれか1つを含んだ構成とすることができる。また、本発明の癌の検査用キットは、血液試料のβカゼイン結合活性を測定するため、βカゼインを含んだ構成とすることができる。

0037

[3]抗癌剤のスクリーニング方法
本発明は、血清診断による腫瘍の検出確率の向上、治療効果の判定、手術後の再発・転移の追跡確認などに利用できるが、癌の検査・診断のみならず抗癌剤の開発などにも利用可能である。

0038

たとえば、本発明を抗癌剤のスクリーニング方法に応用することも可能である。このスクリーニング方法では、抗癌剤の候補物質を実験動物(癌モデル動物)に投与し、その後、本発明の方法により血中のβカゼイン結合性物質を測定することで候補物質の抗癌作用を評価する。つまり、癌モデル動物を用いた実験において、当該動物から経時的に採血し、血清検体のβカゼイン結合活性を測定したり、あるいは血中の前記βカゼイン結合性複合体を検出することによって、簡易迅速に候補物質の抗癌作用を評価できる。

0039

以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1:極性の乱れをとらえる測定法(Polarity Assay)]
前述のように、細胞が癌化し極性の乱れが生じると、正常では血管側に分泌されない物質を血中に分泌するようになり、そのような分泌物質の中には、膜蛋白である糖タンパク質や糖脂質を含むのではないかと考えた。そこで、まずヒトミルクからプロナーゼ処理などによって、糖鎖を遊離させ、糖鎖のリガンドカラムを作製した。その後、このリガンドカラムを用いて、ヒトミルク中に含まれるレクチン様活性をもつ分子を精製したところ、βカゼインが同定された。また、市販のβカゼインについても同様の解析によってレクチン様の活性があることが判明した。

0040

次に、このβカゼインとの結合活性を指標に極性の乱れをとらえるアッセイ(Polarity Assay)を行った。このアッセイでは、表面プラズモン共鳴法を採用するビアコア社の装置を使用して、βカゼインをセンサチップ上に固相化し、その上にマイクロ流路を介して試料を一定の流速で送液することによって各試料のβカゼイン結合活性を測定した。より具体的には、センサチップ(CM5チップ)に精製したβカゼインをRU7000-10000になるように固相化した。試料が血清の場合は、結合条件下(20mM AcOH, pH6.5, 5mMEDTA)で血清を5倍に希釈し測定した。結合条件時のRU値の上昇を活性の値とした。各測定後チップを解離条件(20mM AcOH, pH8.0, 10mM CaCl2)で再生した。測定条件は装置(ビアコア2000)の通常の設定条件に従った。

0041

図1は、培養細胞培養上清をアッセイした結果であり、膵癌細胞株PK8)およびラット肝細胞初代培養ともに、培養開始後、βカゼインとの結合活性は経時的に増大したが、膵癌細胞株(PK8)の活性上昇はより顕著であった。また、この活性は、ウシ胎児血清中には検出されなかった。

0042

次に、膵癌患者および健常人の血清について、同様にβカゼインとの結合活性を測定した。その結果、膵癌患者の血清では健常人に比べてβカゼイン結合活性が有意に高く、設定したしきい値をもとに活性値から癌陽性か癌陰性かを判定した結果、膵癌患者49人のうち42人が癌陽性と判定された。一方、健常人84人のうち81人が癌陰性と判定され、健常人の血清では殆ど陰性だった。この血清診断では、膵癌での特異度は91.0%、感度は93.3%で、いずれも90%以上であり、信頼性の高い膵癌診断を実現することができた。

0043

このように、βカゼイン結合性物質は、培養細胞および癌患者の血清中に高率に存在することがわかった。また、図2に示すように、ヌードマウスに膵癌細胞を移植して、経時的にβカゼイン結合活性を測定すると、腫瘍の増大に伴って血清中の活性上昇が認められた。

0044

さらに、種々の疾患におけるβカゼイン結合活性を測定した結果、膵癌患者のほか、胃癌、大腸癌、肝癌といった消化器系の癌患者血清中に高い活性値を示すものが認められた。

0045

図3は、胃癌患者血漿のβカゼイン結合活性を、術前、術後と比較して示すものであり、術前は高い活性値を示していたが、活性は術後に低下した。

0046

[実施例2:βカゼイン結合性分子群の解析]
βカゼインをリガンドとして、ヒト胆汁からβカゼイン結合分子群を精製し、質量分析器などを用いてその解析を行った。その結果、βカゼイン結合分子群を含む分画中に、AHNAKタンパク質、およびCABINと命名したタンパク質が存在していた(図4)。また、この分画には膵癌の腫瘍マーカーとして知られるCA19-9を認識する抗体との反応性が認められ、胆汁中よりCA19-9が約2万倍(比活性)に精製された。

0047

上記CABINタンパク質は、ゴルジンと相同性を有し、siRNAでこの遺伝子をノックダウンして機能解析した結果、ラット肝細胞初代培養において胆管側への膜輸送系が障害された(図5)。これらの解析結果から、CABINタンパク質は細胞輸送(膜輸送)に関与していることが示された。

0048

AHNAKタンパク質も、元来の機能としては細胞骨格を担うタンパク質で細胞間相互作用に関係するが、間接的に膜輸送に関与していることが知られている。また、CABINタンパク質に緑色蛍光タンパク質(GFP)をつないだCABIN-GFPをラット肝細胞に発現させ、抗GFP抗体を用いてこれを精製した。その後、このCABIN-GFP および蛍光標識した抗AHNAK抗体を用いて、ヒト胆汁から精製されたβカゼイン結合性複合体におけるCABINおよびAHNAKの有無を観察したところ、CABINおよびAHNAKのシグナルともに強く認められ、かつよく一致(merge)し、両者は複合体において共局在していた(図6)。なお、上記CABIN-GFP融合タンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードする塩基配列は、配列表の配列番号5に示される(配列番号6には、アミノ酸配列が単独で示される)。

0049

こうした解析結果などから、癌化に伴い血中に分泌されるCABINタンパク質およびAHNAKタンパク質は、脂質と共に1個の複合体を形成していると考えられる。すなわち、本解析によりヒト胆汁から複合体が精製され、そこには膜由来の脂質複合体に加えて、AHNAKやCABINが存在し、細胞が癌化し極性の乱れが生じると、このβカゼイン結合性の複合体が血中に多く出現すると考えられる。

0050

上記βカゼイン結合性の複合体は、次の方法により胆汁から精製された。まず、前記方法で精製したβカゼインをアフィニティーカラムの担体(CNBr-activated Sepharose 4B(ファルマシア))に固相化した。次に、ヒトから採取した胆汁25mlを2倍に希釈し、結合条件下(20mM AcOH, pH6.5, 5mMEDTA)で上記カラムにアプライした。十分に洗浄後、解離条件(20mM AcOH, pH8.0, 10mM CaCl2)で溶出し、βカゼイン結合性複合体を精製した。

0051

さらに、βカゼイン結合分子群として、他の細胞骨格に関わるタンパク質や膜輸送に関わるタンパク質なども同定された。具体的には、Complement factor H precursor(H factor 1)、macrophin 1 isoform 4、ovarian cancer related tumor marker CA125、DNA topoisomerase(topoisomerase II alpha)、ryanodine receptor 3、ALR、KIAA1283 protein、poly-Igreceptor(SC)、Smad anchor for receptor activation、Centrosome- and Golgi-localizedPKN-associated protein(CG-NAP)、Collagen alpha 1(I) chain precursorである。これらの分子も、上記複合体と一緒に存在する可能性が認められた。

0052

[実施例3:抗AHNAK抗体を用いたELISA法による癌診断]
血清中の上記複合体を検出することによって膵癌の血清診断が可能かを検討した。複合体の検出は、サンドイッチELISA法により行った。このサンドイッチELISA法は概略、βカゼインをコートしたdishにヒト血清(健常人および膵癌患者由来)を加え、洗浄後に抗AHNAK抗体を加え、それを発色により検出するという方法により行った。より具体的には、精製したβカゼイン(1mg/ml)を解離条件(0.1M炭酸水素ナトリウム溶液に溶解)でプレートに一晩かけて固相化した。次に、結合条件下(20mM AcOH, pH6.5, 5mMEDTA)で血清を40倍に希釈した後、プレートに添加して1時間反応させた。その後、結合条件下に1次抗体および2次抗体を順次添加し、それぞれ1時間反応させた。洗浄、および抗体の希釈は結合条件下に行い、希釈倍率は常法に従った。1次抗体には、AHNAK配列に特異的な19個のアミノ酸からなるペプチド(CSMPNIDLNLKGPKVKGDV:配列番号7)に対する抗体で、ウサギに免疫して作製された抗AHNAKポリクローナル抗体を使用した。2次抗体にはHRP標識抗ウサギIgG抗体を使用し、発色反応と検出は常法に従って行った。

0053

その結果、図7に示すように、膵癌患者では健常人に比べて検出値(吸光度測定値)が高く、図示のしきい値にしたがって癌陽性か癌陰性かを判定することによって、信頼性の高い癌診断を実現することができた。

0054

図8は、上記ELISA法(AHNAKAssay)によって膵癌の血清診断を行った結果と、前記Polarity Assayにより膵癌の血清診断を行った結果とを比較したグラフである。図示のように、いずれの方法も精度の高い診断を実現することができた。

0055

このように、試料のβカゼイン結合活性を測定し、あるいは、抗AHNAK抗体を用いたELISA法等により上記複合体を検出することによって、良好な癌の血清診断を実現できる。

0056

上記のような複合体分子の同定は極めてユニークなものである。近年、細胞の膜タンパクの分泌機構として、Enlargeosomeの概念が提唱されており、上記複合体分泌の機序は、この概念につながるものと考えられる。

0057

以上のように、本発明によれば、新規な癌の検査方法、腫瘍マーカーおよび癌の検査用キットなどを提供することができるため、癌の早期診断、治療効果の判定、再発を調べる検査などに有用である。

図面の簡単な説明

0058

膵癌細胞株(PK8)およびラット肝細胞初代培養におけるβカゼイン結合活性の経時変化を示すグラフである。
膵癌細胞(PK59)をヌードマウスに移植後、Polarity Assayによって血清のβカゼイン結合活性を経時的(1週、3週、6週)に調べた結果を示すグラフである。Normalは、PK59を移植しなかったヌードマウス血清の結果を示す。
胃癌患者の血漿のβカゼイン結合活性を、術前、術後と比較して示すグラフである。
ヒト胆汁から精製したβカゼイン結合分子群を含む分画中にCABINタンパク質およびAHNAKタンパク質が存在したことを示すウエスタンブロットである。
siRNAでCABIN遺伝子をノックダウンして機能解析した結果、ラット肝細胞初代培養においてタンパク質の輸送が阻害されたことを示す図である。あわせて、Macrophin、FICをノックダウンした結果およびコントロールの結果が示される。
CABINタンパク質に緑色蛍光タンパク質(GFP)をつないだCABIN-GFPをラット肝細胞に発現させ、抗GFP抗体を用いてこれを精製した。その後、このCABIN-GFP および蛍光標識した抗AHNAK抗体を用いて、ヒト胆汁から精製されたβカゼイン結合性複合体を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す図である。図中、「AHNAK-ab」は抗体を用いてAHNAKの局在を観察した結果、「CABIN-GFP」はGFPによりCABINの局在を観察した結果、「merge」は両者を重ね合わせた結果であり、両者の局在はよく一致した。
サンドイッチELISA法によって膵癌の血清診断を行った結果を示すグラフである。
サンドイッチELISA法によって膵癌の血清診断を行った結果と、Polarity Assayにより膵癌の血清診断を行った結果とを比較したグラフである。

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