図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
樹脂材製の成形体本体を繊維で補強した複合樹脂成形体は、自動車部品を含め種々の部材に適用されている。
例えば、特許文献1には、ペレットと実質的に同一長さでペレットの長さ方向にほぼ平行に配列したガラス繊維を含有するペレット状のポリプロピレンを主体とする熱可塑性樹脂組成物を用い、これを成形してなるバンパービームが開示されている。
特許文献2には、靴底、特にスポーツ靴のための靴底において、担持する靴底組成として合成樹脂のマトリックスとこの合成樹脂内に加工された繊維とからなり、かつ他の靴底体と溶接或いは化学的な結合により互いに結合されている少なくとも一つの繊維複合部が使用されているものが開示されている。
特許文献3には、非平面状に成形された織物、編物などの繊維材料からなる二次元補強コア材料と、そのコア材料の表面を覆う樹脂表皮層と、樹脂表皮層と一体に形成されかつ樹脂表皮層から突出した樹脂製構造部とを少なくとも有し、樹脂表皮層と構造部は射出成形法で一体成形された樹脂成形体が開示されている。
特許第3242399号公報
特開平5−168503号公報
特開2002−254469号公報
概要
樹脂材製の成形体本体の表面に繊維シート材をインサートしてなる複合樹脂成形体において、引張強度及び曲げ剛性の向上をる。複合樹脂成形体10は、樹脂材製の成形体本体11の表面に繊維シート材12をインサートしてなる。繊維シート材12は、編物で構成されていると共に、その裏目側が成形体本体11に対向するように設けられ、且つ繊維表面が成形体本体11に溶融固化して一体化している。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0003
例えば、特許文献1には、ペレットと実質的に同一長さでペレットの長さ方向にほぼ平行に配列したガラス繊維を含有するペレット状のポリプロピレンを主体とする熱可塑性樹脂組成物を用い、これを成形してなるバンパービームが開示されている。
0004
特許文献2には、靴底、特にスポーツ靴のための靴底において、担持する靴底組成として合成樹脂のマトリックスとこの合成樹脂内に加工された繊維とからなり、かつ他の靴底体と溶接或いは化学的な結合により互いに結合されている少なくとも一つの繊維複合部が使用されているものが開示されている。
0005
特許文献3には、非平面状に成形された織物、編物などの繊維材料からなる二次元補強コア材料と、そのコア材料の表面を覆う樹脂表皮層と、樹脂表皮層と一体に形成されかつ樹脂表皮層から突出した樹脂製構造部とを少なくとも有し、樹脂表皮層と構造部は射出成形法で一体成形された樹脂成形体が開示されている。
特許第3242399号公報
特開平5−168503号公報
特開2002−254469号公報
発明が解決しようとする課題
0006
ところで、補強材として繊維シート材を用いた場合においては、繊維シート材自体を検討することにより複合樹脂成形体が性能向上する余地が十分に残されている。
課題を解決するための手段
0009
具体的には、請求項1に係る発明は、樹脂材製の成形体本体の表面に繊維シート材をインサートしてなる複合樹脂成形体であって、
上記繊維シート材は、編物で構成されていると共に、その裏目側が上記成形体本体に対向するように設けられ、且つ繊維表面が該成形体本体に溶融固化して一体化していることを特徴とする。
0010
上記の構成によれば、編物の繊維シート材の裏目側が成形体本体に対向するように設けられており、また、繊維表面が成形体本体に溶融固化して一体化しているので、繊維シート材を構成する繊維の補強効果が適性に発揮されることとなり、それによって編物のウェール方向に高い引張強度を得ることができると共にウェール方向においての曲げ変形に対して高い曲げ剛性を得ることができる。
0011
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された複合樹脂成形体において、
上記繊維シート材を構成する繊維が上記成形体本体を構成する樹脂材と同種の樹脂材で形成されていることを特徴とする。
0012
上記の構成によれば、繊維シート材と成形体本体とが同種の樹脂材で形成されているので、それらの間の高い密着力が得られ、それによって繊維シート材による高い補強効果を得ることができる。また、単一材料系で形成されていることにより高いリサイクル性を有することにもなる。
0013
請求項3に係る発明は、請求項1に記載された複合樹脂成形体の成形方法であって、
成形型のキャビティ内の所定位置に、編物の繊維シート材を、その表目側が成形面に対向するように配置した後、該繊維シート材の裏目側において、溶融した樹脂材から成形体本体を成形することを特徴とする。
0014
上記の構成によれば、請求項1に係る発明の複合樹脂成形体を容易に成形することができる。
発明の効果
0015
本発明によれば、繊維シート材を構成する繊維の補強効果が適性に発揮されることとなり、それによって編物のウェール方向に高い引張強度を得ることができると共にウェール方向においての曲げ変形に対して高い曲げ剛性を得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
0016
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
0019
ビーム本体11は、横長矩形の前面部11aと、その周縁に連続して後方に延びるように形成された側面部11bと、前面部11a中央に後方に断面コの字状に没入するように形成された横長矩形の没入部11cと、を有する。上側側面部11bと前面部11aと没入部11cの上側部とで構成された後方に開口したコの字溝、及び、下側側面部11bと前面部11aと没入部11cの下側部とで構成された後方に開口したコの字溝のそれぞれには、長さ方向に沿って間隔をおいて複数のリブ11dが設けられている。そして、没入部11cの後表面には、繊維シート材12が貼設されるようにインサートされている。
0020
ビーム本体11を形成する樹脂材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、単独種で用いられても、複数種がブレンドされて用いられてもいずれでもよい。また、樹脂材には、必要に応じて樹脂配合剤が配合されていてもよい。
0021
繊維シート材12は、表目及び裏目の区別のある編物で構成されており、例えば、平編などのよこ編の編物等が挙げられる。
0022
編物の繊維シート材12は、裏目側がビーム本体11に対向し且つウェール方向が横方向となるように、ビーム本体11の没入部11cの後表面に設けられている。また、編物の繊維シート材12は、繊維表面がビーム本体11に溶融固化して一体化している。
0023
このように編物の繊維シート材12の裏目側がビーム本体11に対向するように設けられており、また、繊維表面がビーム本体11に溶融固化して一体化しているので、繊維シート材12を構成する繊維の補強効果が適性に発揮されることとなり、それによって編物のウェール方向、つまり、バンパービーム10の横方向に高い引張強度を得ることができると共に、ウェール方向においての曲げ変形、つまり、バンパービーム10の前後方向の曲げ変形に対して高い曲げ剛性を得ることができる。
0024
編物の繊維シート材12を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの合成繊維の他、カーボン繊維やガラス繊維や金属繊維の表面に熱可塑性樹脂コーティングが施されたもの等が挙げられる。
0025
繊維シート材12を構成する繊維は、ビーム本体11を構成する樹脂材と同種の樹脂材で形成されていることが好ましい。繊維シート材12とビーム本体11とが同種の樹脂で形成されていれば、それらの間の高い密着力が得られ、それによって繊維シート材12によるより高い補強効果を得ることができる。また、単一材料系で形成されていることにより高いリサイクル性を有することにもなる。
0027
まず、図3(a)に示すように、成形型20を、射出成形機30に取り付けられた第1成形型21から第2成形型22を離間させた状態とし、編物の繊維シート材12を、第2成形型22におけるバンパービーム10の没入部11cの後表面を成形する成形面に、表目側が該成形面に対向し且つウェール方向が横方向となるように当接させて配置する。
0029
そして、図3(c)に示すように、射出成形機30から溶融した樹脂材を成形型20のキャビティC内に射出充填した後に冷却する。このとき、繊維シート材12の裏目側において、溶融した樹脂材からビーム本体11が成形されると共に、繊維シート材12を構成する繊維の表面がビーム本体11に溶融固化して一体化する。
0030
最後に、図3(d)に示すように、成形型20を型開きして成形されたバンパービーム10を取り出す。
0031
なお、以上の本実施形態では、複合樹脂成形体としてバンパービーム10を例としたが、特にこれに限定されるものではなく、ドアサイドビーム、パワープラントフレーム、車体フレーム等の自動車部品、その他の構造部材であっても本発明の複合樹脂成形体で構成することができる。
0033
以下の試験評価を行った。
0034
(試験評価1)
<試験評価用試験片>
−実施例1−
射出成形機((株)日本製鋼所型番:J350ED)に引張試験の試験片成形用の成形型を取り付け、超高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡(株)社製商品名:ダイニーマフィラメント本数1170本で1320dtex)で形成された平編物を、その表目側が成形面に対向するように成形型に配置した。そして、成形型温度を50℃及びシリンダ温度(樹脂材の温度)を280℃とした、溶融したポリエチレン樹脂(出光興産(株)社製 商品名:211J)を射出成形機から成形型内に射出充填し、長さ155.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmの板状の試験片を射出成形した。成形された試験片は、一方側の面に平編物の繊維シート材が、その裏目側が試験片本体に対向するように設けられてインサートされたものとなった。
0035
試験片は、平編物のウェール方向が長さ方向となったもの(以下、「ウェール試験片」という。)とコース方向が長さ方向になったもの(以下、「コース試験片」という。)との2種を成形した。そして、これらを実施例1の試験片とした。
0036
−実施例2−
成形型温度を20℃としたことを除いて実施例1と同様に試験片を成形した。そして、これらを実施例2の試験片とした。
0037
−比較例1−
シリンダ温度を240℃としたことを除いて実施例1と同様に試験片を成形した。そして、これらを比較例1の試験片とした。
0038
−比較例2−
成形型温度を20℃及びシリンダ温度を240℃としたことを除いて実施例1と同様に試験片を成形した。そして、これらを比較例2の試験片とした。
0039
−コントロール試験片−
実施例1〜2及び比較例1〜2のそれぞれの成形型温度条件及びシリンダ温度条件で、繊維シート材を有さない樹脂材だけの試験片を成形した。そして、これらをそれぞれC−1〜C−4とした。
0040
<試験評価方法>
実施例1〜2、比較例1〜2及びC−1〜C−4のそれぞれについて、精密万能試験機(島津製作所(株)社製製品名:オートグラフAG−IS)を用いて引張試験を行った。引張試験は、JIS K7161に準じ、クロスヘッドスピードを50mm/min、チャック間距離を115mmとし、常温下で行った。また、引張試験は、ウェール試験片及びコース試験片のそれぞれについて行った。
0041
そして、実施例1〜2及び比較例1〜2のそれぞれの引張強度を、対応する条件で成形されたコントロール試験片C−1〜C−4の引張強度を基準として正規化した。
0042
<試験評価結果>
図4及び表1は試験評価結果を示す。
0043
0044
これらの結果によれば、ウェール試験片については、実施例1〜2では、コントロール試験片に対し、引張強度がそれぞれ114%及び109%であり、比較例1〜2では、それぞれ103%及び102%であり、従って、シリンダ温度、つまり、成形温度が高い方が補強効果が高いことが分かる。
0045
形態観察したところ、実施例1〜2では、図5(a)及び(b)に示す平編物を構成する糸の曲線部分Cの繊維表面が試験片本体に溶融固化して一体化した形態が観察されたのに対し、比較例1〜2では、繊維表面が溶融固化した形態が観察されなかった。
0046
以上のことから、ウェール試験片については、実施例1〜2では、平編物を構成する糸の曲線部分Cの繊維表面が試験片本体に溶融固化して一体化し、各直線部分Lの繊維表面の溶融が上記曲線部分Cよりも少ないため、各直線部分Lがその長さ方向への補強効果を有効に発現し、その結果、全体としても高い補強効果が得られたのに対し、比較例1〜2では、各直線部分Lによる補強効果が十分に奏されず、そのために実施例1〜2程の補強効果が得られなかったものと推測される。
0047
また、ウェール試験片については、実施例1の方が実施例2よりも補強効果が高く、このことから、成形型温度を高くすることにより、平編物を構成する糸の曲線部分Cの繊維表面の溶融が促進されるものを推測される。
0048
一方、コース試験片については、実施例1〜2では、コントロール試験片に対し、引張強度がそれぞれ98%及び97%であり、比較例1〜2では、それぞれ93%及び95%であり、いずれもコントロール試験片よりも低いことが分かる。これは、平編物がコース方向に容易に伸縮するため、その補強効果が得られず、単に平編物の体積分の樹脂が無いために強度が低下したものと推測される。但し、正規化した引張強度は、実施例1〜2の方が比較例1〜2よりも高く、これも平編物を構成する糸の曲線部分Cの繊維表面が試験片本体に溶融固化して一体化していることによる効果であると推測される。
0049
なお、コース試験片については、実施例1と実施例2との間、及び、比較例1と比較例2との間で大きな差はなく、従って、成形型温度による影響はないものと思われる。
0050
(試験評価2)
<試験評価用試験片>
−実施例1−
実施例1の試験片であって、長さ80.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmのものを上記と同様にして成形した。試験片は、ウェール試験片及びコース試験片の両方を成形した。
0051
−比較例3−
平編物を、その裏目側が成形面に対向するように成形型に配置したことを除いて実施例1と同様に試験片を成形した。そして、これを比較例3の試験片とした。比較例3の試験片は、一方側の面に平編物の繊維シート材が、その表目側が試験片本体に対向するように設けられてインサートされたものである。試験片は、長さ155.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmのもの及び長さ80.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmのもののそれぞれについて、ウェール試験片及びコース試験片の両方を成形した。
0052
−コントロール試験片−
C−1のコントロール試験片であって、長さ80.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmのものを上記と同様にして成形した。
0053
<試験評価方法>
−引張試験−
比較例3の長さ155.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmの試験片について、上記と同様に引張試験を行った。引張試験は、ウェール試験片及びコース試験片のそれぞれについて行った。
0054
そして、比較例3の引張強度を、対応する条件で成形されたコントロール試験片C−1の引張強度を基準として正規化した。
0055
−曲げ試験−
実施例1、比較例3及びコントロール試験片C−1のそれぞれの長さ80.0mm、幅12.5mm及び厚さ3.0mmの試験片について、引張圧縮試験機((株)今田製作所社製型式:SV−201)を用いて曲げ試験を行った。曲げ試験は、JIS K7171に準じ、クロスヘッドスピードを15.5mm/min、支持点間距離を48mmとし、常温下で行った。また、実施例1及び比較例3については、繊維シート材が下側になるように試験片を配置し、ウェール試験片及びコース試験片のそれぞれについて曲げ試験を行った。
0056
そして、実施例1及び比較例3のそれぞれの曲げ剛性を、対応する条件で成形されたコントロール試験片C−1の曲げ剛性を基準として正規化した。
0057
<試験評価結果>
図5、6及び表2は試験評価結果を示す。
0058
0059
これらの結果によれば、ウェール試験片については、実施例1では、コントロール試験片に対し、引張強度が114%及び曲げ剛性が115%であり、比較例3では、引張強度が100%及び曲げ剛性が93%であり、従って、平編物の裏目側を試験片本体側とした方が表目側を試験片本体側とするよりも補強効果が高いことが分かる。なお、ここで、ウェール試験片についての曲げ剛性は、平編物のウェール方向、従って、ウェール試験片の長さ方向においての曲げ変形に対する曲げ剛性である。
0060
これは、図5(a)及び(b)からも分かるように、平編物の裏目側に糸の曲線部分Cが及び表目側に直線部分Lがそれぞれ位置付けられており、実施例1では、試験片本体に対し、主として曲線部分Cが溶融固化して一体化し、直線部分Lがその長さ方向に有効に補強効果を発現するのに対し、比較例3では、試験片本体に対し、主として直線部分Lが溶融固化して一体化し、その長さ方向への補強効果が弱められるためであると推測される。
0061
なお、コース試験片については特に顕著な傾向は見られない。
0062
以上に説明したように、本発明は、樹脂材製の成形体本体の表面に繊維シート材をインサートしてなる複合樹脂成形体及びその成形方法について有用である。
図面の簡単な説明
0063
実施形態に係るバンパービームの斜視図である。
図1におけるII-II断面図である。
(a)〜(d)はバンパービームの射出成形方法を模式的に示す説明図である。
試験評価1の引張試験の結果を示すグラフである。
(a)は平編物の表目側の平面図であり、(b)は裏目側の平面図である。
試験評価2の引張試験の結果を示すグラフである。
試験評価2の曲げ剛性試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
0064
10バンパービーム(複合樹脂成形体)
11ビーム本体(成形体本体)
11a 前面部
11b 側面部
11c没入部
11dリブ
12繊維シート材
20成形型
21 第1成形型
22 第2成形型
30射出成形機
Cキャビティ
L曲線部分
S 直線部分
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