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技術 樹状高分子−リポソーム複合体、及びこれを用いた薬剤輸送システム

出願人 学校法人東京理科大学
発明者 矢島博文内田勝美大堀良
出願日 2006年9月1日 (14年2ヶ月経過) 出願番号 2006-238289
公開日 2008年3月13日 (12年8ヶ月経過) 公開番号 2008-056638
状態 未査定
技術分野 医薬品製剤
主要キーワード 呼ばれる側 分岐回数 両親媒性高分子化合物 樹状高分子 温度感受性リポソーム 内包物質 血管壁組織 薬剤輸送システム
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この項目の情報は公開日時点(2008年3月13日)のものです。
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図面 (15)

課題

リポソーム樹状高分子とが、安定に結合した樹状高分子−リポソーム複合体を提供すること。

解決手段

イオン性基を有する樹状高分子と、リポソームと、を静電的に結合させた樹状高分子−リポソーム複合体であって、前記リポソームを構成する脂質二重膜は、前記イオン性基の有する電荷と反対の電荷を有する両親媒性脂質と、炭素数10以上25以下の炭素鎖を含む疎水性化合物を、直鎖状親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる両親媒性高分子化合物と、を含み、前記脂質二重膜において、前記両親媒性脂質と前記両親媒性高分子化合物とが疎水性部分において相互作用し、前記両親媒性高分子化合物の親水性部分は前記脂質二重膜から突出していることを特徴とする、樹状高分子−リポソーム複合体。

概要

背景

リポソームリン脂質を用いて、人工的に形成される脂質二重膜を有する閉鎖小胞であり、従来より生体膜の構造や機能の解析に用いられてきた。リポソームの有する脂質二重膜においては、リン脂質の疎水性部分が膜の内部に、リン脂質の親水性部分が膜の外表面に配置している。このため、例えば、リポソームの内腔水溶性分子包含させた場合、当該水溶性分子は膜の疎水性部分に遮断されて外部に漏出することがない。同様に、リポソームが有する脂質二重膜の疎水性部分に脂溶性分子を包含させることにより、親水性の環境であるリポソームの外部及び内腔から遮断される形で、当該脂溶性分子をリポソームに保持させることができる。このように、一定の閉鎖された空間に、特定の分子を保持することができることから、リポソームは、薬剤輸送システム担体として、また、遺伝子運搬体として、利用されている。

樹状高分子デンドリマーとも呼ばれ、中心部から規則的に分岐した構造を有する高分子化合物である。樹状高分子は、分子のサイズを段階的に変えることができ、サイズの大きな樹状高分子においては、表面に露出している官能基性質に応じて様々な性質を示すことが知られている。樹状高分子は、分子の設計次第で、内部に任意の化合物を包含させることも可能であり、このような性質のため、近年においては、薬剤輸送システムの担体として、注目を集めている。

一般に、樹状高分子は、コアと呼ばれる中心部分と、デンドロン呼ばれる側鎖部分とから構成される。樹状高分子の大きさを示す言葉として、「世代」という言葉が用いられるが、「世代」とは、デンドロン部分の分岐回数を示し、世代3.0といえば、デンドロンが4回にわたって分岐した樹状高分子であることを示す。

リポソームや樹状高分子を薬剤輸送システムに利用するにあたっては、薬剤輸送の効率を高めるよう、リポソームや樹状高分子の構造を設計することが可能である。例えば、リポソームを構成するリン脂質や樹状高分子に、塩基性の官能基を導入した場合、リポソームや樹状高分子がエンドソーム内でプロトンを吸収し、細胞質からエンドソームへのプロトン輸送を促進するため、エンドソーム内の浸透圧上がりエンドソームが破裂するという現象が見られる(プロトンスポンジ効果)。このプロトンスポンジ効果を利用することにより、リポソームや樹状高分子による薬剤の輸送を飛躍的に向上させることができる。

薬剤輸送システムに用いられるリポソームであって、薬剤の輸送に適した特性を有するリポソームとしては、特許文献1に、曇点を有する高分子化合物を表面又は内部に担持させてなる、温度感受性リポソームが開示されている。この温度感受性リポソームによれば、リポソームを曇点以上の温度の下に保持することにより、高分子化合物が疎水化して、リポソームの構造が変化し、内包物質を放出させることができるとされる。

また、疾病治療に適した特性を有する樹状高分子としては、複数の末端基を有し、このうち少なくとも1つの末端基がこれに結合されたアニオン性又はカチオン性含有部分を有する、デンドリマーを含む抗ウイルス性化合物が開示されている。この抗ウイルス性化合物は、HIV1及びHIV2、CMV及びHSVに対する本質的な抗ウイルス活性を示し、ヒトへの予防的、治療的用途に好適に用いることができるとされる。
特開平5−228358号公報
特開2006−070036号公報

概要

リポソームと樹状高分子とが、安定に結合した樹状高分子−リポソーム複合体を提供すること。イオン性基を有する樹状高分子と、リポソームと、を静電的に結合させた樹状高分子−リポソーム複合体であって、前記リポソームを構成する脂質二重膜は、前記イオン性基の有する電荷と反対の電荷を有する両親媒性脂質と、炭素数10以上25以下の炭素鎖を含む疎水性化合物を、直鎖状親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる両親媒性高分子化合物と、を含み、前記脂質二重膜において、前記両親媒性脂質と前記両親媒性高分子化合物とが疎水性部分において相互作用し、前記両親媒性高分子化合物の親水性部分は前記脂質二重膜から突出していることを特徴とする、樹状高分子−リポソーム複合体。

目的

本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、リポソームと樹状高分子とが、安定に結合した樹状高分子−リポソーム複合体を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

イオン性基を有する樹状高分子と、リポソームと、を静電的に結合させた樹状高分子−リポソーム複合体であって、前記リポソームを構成する脂質二重膜は、前記イオン性基の有する電荷と反対の電荷を有する両親媒性脂質と、炭素数10以上25以下の炭素鎖を含む疎水性化合物を、直鎖状親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる両親媒性高分子化合物と、を含み、前記脂質二重膜において、前記両親媒性脂質と前記両親媒性高分子化合物とが疎水性部分において相互作用し、前記両親媒性高分子化合物の親水性部分は前記脂質二重膜から突出していることを特徴とする、樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項2

前記イオン性基がカチオン性基であり、前記両親媒性脂質がリン脂質である、請求項1に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項3

前記両親媒性高分子化合物が、ポリエチレングリコールと、炭素数10以上25以下のアルコールとを縮合させたポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項1又は2に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項4

前記両親媒性高分子化合物が、重合度50のポリエチレングリコールとオレイルアルコールとを縮合させた、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテルである、請求項1から3のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項5

前記疎水性化合物がホスファチジルエタノールアミンである、請求項1又は2に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項6

前記イオン性基がアミノ基である、請求項2から5のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項7

前記樹状高分子が、ポリアミドアミンデンドリマーである、請求項2から6のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項8

前記樹状高分子が、世代1.0以上世代6.0以下の樹状高分子である、請求項1から7のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項9

粒径が50nm以上100nm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項10

前記樹状高分子の末端に、細胞表層抗原に特異的に結合する細胞表層抗原認識分子を結合させた請求項1から9のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項11

前記細胞表層抗原が、癌抗原である請求項10に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項12

前記細胞表層抗原認識分子が、癌抗原を特異的に認識する抗体である、請求項11に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項13

前記細胞表層抗原認識分子が葉酸である、請求項10に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

請求項14

疾病治療に有効な薬剤標的細胞運搬する薬剤輸送システムであって、前記樹状高分子と、前記リポソームとに前記薬剤を含有させて運搬する、請求項1から13に記載の樹状高分子−リポソーム複合体を用いた薬剤輸送システム。

請求項15

前記樹状高分子と、前記リポソームとに、異なる薬剤を含有させることを特徴とする、請求項14に記載の薬剤輸送システム。

技術分野

0001

本発明は、樹状高分子リポソーム静電的に結合させた樹状高分子−リポソーム複合体、及びこれを用いた薬剤輸送システムに関する。

背景技術

0002

リポソームはリン脂質を用いて、人工的に形成される脂質二重膜を有する閉鎖小胞であり、従来より生体膜の構造や機能の解析に用いられてきた。リポソームの有する脂質二重膜においては、リン脂質の疎水性部分が膜の内部に、リン脂質の親水性部分が膜の外表面に配置している。このため、例えば、リポソームの内腔水溶性分子包含させた場合、当該水溶性分子は膜の疎水性部分に遮断されて外部に漏出することがない。同様に、リポソームが有する脂質二重膜の疎水性部分に脂溶性分子を包含させることにより、親水性の環境であるリポソームの外部及び内腔から遮断される形で、当該脂溶性分子をリポソームに保持させることができる。このように、一定の閉鎖された空間に、特定の分子を保持することができることから、リポソームは、薬剤輸送システムの担体として、また、遺伝子運搬体として、利用されている。

0003

樹状高分子はデンドリマーとも呼ばれ、中心部から規則的に分岐した構造を有する高分子化合物である。樹状高分子は、分子のサイズを段階的に変えることができ、サイズの大きな樹状高分子においては、表面に露出している官能基性質に応じて様々な性質を示すことが知られている。樹状高分子は、分子の設計次第で、内部に任意の化合物を包含させることも可能であり、このような性質のため、近年においては、薬剤輸送システムの担体として、注目を集めている。

0004

一般に、樹状高分子は、コアと呼ばれる中心部分と、デンドロン呼ばれる側鎖部分とから構成される。樹状高分子の大きさを示す言葉として、「世代」という言葉が用いられるが、「世代」とは、デンドロン部分の分岐回数を示し、世代3.0といえば、デンドロンが4回にわたって分岐した樹状高分子であることを示す。

0005

リポソームや樹状高分子を薬剤輸送システムに利用するにあたっては、薬剤輸送の効率を高めるよう、リポソームや樹状高分子の構造を設計することが可能である。例えば、リポソームを構成するリン脂質や樹状高分子に、塩基性の官能基を導入した場合、リポソームや樹状高分子がエンドソーム内でプロトンを吸収し、細胞質からエンドソームへのプロトン輸送を促進するため、エンドソーム内の浸透圧上がりエンドソームが破裂するという現象が見られる(プロトンスポンジ効果)。このプロトンスポンジ効果を利用することにより、リポソームや樹状高分子による薬剤の輸送を飛躍的に向上させることができる。

0006

薬剤輸送システムに用いられるリポソームであって、薬剤の輸送に適した特性を有するリポソームとしては、特許文献1に、曇点を有する高分子化合物を表面又は内部に担持させてなる、温度感受性リポソームが開示されている。この温度感受性リポソームによれば、リポソームを曇点以上の温度の下に保持することにより、高分子化合物が疎水化して、リポソームの構造が変化し、内包物質を放出させることができるとされる。

0007

また、疾病治療に適した特性を有する樹状高分子としては、複数の末端基を有し、このうち少なくとも1つの末端基がこれに結合されたアニオン性又はカチオン性含有部分を有する、デンドリマーを含む抗ウイルス性化合物が開示されている。この抗ウイルス性化合物は、HIV1及びHIV2、CMV及びHSVに対する本質的な抗ウイルス活性を示し、ヒトへの予防的、治療的用途に好適に用いることができるとされる。
特開平5−228358号公報
特開2006−070036号公報

発明が解決しようとする課題

0008

このように、薬剤輸送システムの担体として利用するため、あるいは、疾病の治療に利用するため、様々な特性を備えたリポソーム及び樹状高分子が開発されているが、これらはそれぞれ単独で用いられるものであり、リポソーム及び樹状高分子を組み合わせて用いた例は知られていない。樹状高分子やリポソームには、電荷を有する官能基を導入することが可能であるため、樹状高分子と、リポソームとに、それぞれ異なる電荷を保持させて、両者を静電的に結合させ、これを薬剤輸送システムに利用することは、理論的に可能ではあったが、樹状高分子とリポソームを静電的に結合させる際に、リポソームの破壊が起こり、安定な複合体を得られていなかった。

0009

一方で、安定な複合体を得ることができた場合、例えば、リポソームと樹状高分子とにそれぞれ、異なる薬剤を包含させて、患部に輸送することも可能となる。疾病の治療においては、複数の薬剤を併用して用いる例も多く知られており、上記のような薬剤輸送システムが実現すれば、単独の薬剤で治療することが難しい疾病の治療に大きく貢献するものと考えられていた。

0010

本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、リポソームと樹状高分子とが、安定に結合した樹状高分子−リポソーム複合体を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、両親媒性脂質の他に、所定の炭素数炭素鎖を含む疎水性化合物を、直鎖状親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる両親媒性高分子化合物を含む脂質二重膜を有するリポソームを調製し、これとイオン性基を有する樹状高分子と、を静電的に結合させたとき、安定して樹状高分子−リポソーム複合体を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。

0012

具体的には、本発明は以下のものを提供する。

0013

(1)イオン性基を有する樹状高分子と、リポソームと、を静電的に結合させた樹状高分子−リポソーム複合体であって、前記リポソームを構成する脂質二重膜は、前記イオン性基の有する電荷と反対の電荷を有する両親媒性脂質と、炭素数10以上25以下の炭素鎖を含む疎水性化合物を、直鎖状の親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる両親媒性高分子化合物と、を含み、前記脂質二重膜において、前記両親媒性脂質と前記両親媒性高分子化合物とが疎水性部分において相互作用し、前記両親媒性高分子化合物の親水性部分は前記脂質二重膜から突出していることを特徴とする、樹状高分子−リポソーム複合体。

0014

ここで、「リポソーム」とは、両親媒性の脂質を含む脂質二重膜により構成される膜小胞を指す。狭義には、「リポソーム」はリン脂質により構成されるものを指すが、本明細書においてはこれに限定されず、例えば、両親媒性の脂質の親水性部分に、リン酸基以外のイオン性基を有するものを含み、当該イオン性基がカチオン性基であるものも含むものである。また、「両親媒性脂質」とは、親水性部分と疎水性部分を有する脂質であり、脂質二重膜を形成可能な脂質であって、親水性部分にイオン性基を有するものを指す。

0015

さらに、「静電的に結合する」とは、陽イオン陰イオンとの間の静電的な相互作用に起因して、非共有結合的に結合することを指し、具体的には、リポソームの脂質二重膜中に存在する両親媒性脂質の有するイオンと、樹状高分子の有するイオン性基による、反対電荷を有するイオンとが静電的に相互作用して、結合することを指す。

0016

(1)に記載の発明によれば、樹状高分子がイオン性基を、リポソームの有する脂質二重膜を構成する両親媒性脂質がイオン性基を有するため、所定のpHにおいて、樹状高分子とリポソームとを静電的に結合させることができる。この際、リポソームを構成する脂質二重膜に両親媒性化合物が含まれており、かつ、その親水性部分が脂質二重膜から突出しているため、脂質二重膜と樹状高分子とが直接接触することがなく、樹状高分子の結合によって、リポソームの構造が破壊されることがない。

0017

また、両親媒性高分子化合物を構成する疎水性化合物に含まれる炭素鎖は、炭素数10以上25以下であるため、脂質二重膜を構成する両親媒性脂質の疎水性部分と両親媒性高分子化合物の疎水性部分とが、安定して相互作用することができる。すなわち、炭素数10以上25以下の炭素鎖はおよそ1nm以上2.5nm以下であるため、通常用いられるリン脂質により構成される脂質二重膜の厚みである5nmの半分の厚みに相当し、両親媒性脂質と両親媒性高分子化合物とで、安定に膜構造を形成することができる。

0018

(2)前記イオン性基がカチオン性基であり、前記両親媒性脂質がリン脂質である、(1)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0019

(2)に記載の発明によれば、樹状高分子のカチオン性基と、リン脂質のリン酸基とが、静電的に結合する。また、樹状高分子がカチオン性基を有するため、樹状高分子−リポソーム複合体がエンドソームに取り込まれた際には、所定のpHにおいてプロトンスポンジ効果を奏し、エンドソームを破裂させることができる。このため、本発明の樹状高分子−リポソーム複合体を薬剤輸送システムの担体として用いる場合には、標的細胞に効率よく薬剤を輸送することができる。

0020

(3) 前記両親媒性高分子化合物が、ポリエチレングリコールと、炭素数10以上25以下のアルコールとを縮合させたポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである、(1)又は(2)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0021

(4) 前記両親媒性高分子化合物が、重合度50のポリエチレングリコールとオレイルアルコールとを縮合させた、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテルである、(1)から(3)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0022

(3)及び(4)に記載の発明によれば、両親媒性高分子化合物を構成する親水性高分子化合物として、ポリエチレングリコールを用いたため、ポリエチレングリコールの分子運動によって、樹状高分子とリポソームとの相互作用を弱めて、リポソームが破壊されるのを防ぐことができる。ここで、ポリエチレングリコールの重合度は50であることが好ましい。重合度が低いポリエチレングリコールを用いた場合、樹状高分子とリポソームとの相互作用を弱めることができず、リポソームと樹状高分子との結合によって、リポソームが破壊される可能性がある。また、重合度が高いポリエチレングリコールを用いた場合、樹状高分子とリポソームとの相互作用が弱められすぎてしまい、安定な樹状高分子−リポソーム複合体を形成することができない。

0023

(5) 前記疎水性化合物がホスファチジルエタノールアミンである、(1)又は(2)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0024

両親媒性高分子化合物を合成する際に用いる疎水性化合物は、ホスファチジルエタノールアミン等の、両親媒性脂質を用いてもよい。すなわち、(5)に記載の発明によれば、両親媒性高分子化合物と両親媒性脂質とが、安定して脂質二重膜を形成することができる。

0025

(6) 前記イオン性基がアミノ基である、(2)から(5)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0026

樹状高分子に導入するイオン性基がカチオン性基である場合、イオン性基は生体内と同等のpHの条件であるpH7.2において、一部がプロトン化されて電荷を有し、かつ一部がプロトン化されずに、塩基性基として存在していることが好ましい。これにより、生体内及びこれと同等な条件下において、プロトン化されているカチオン性基がリポソームの脂質二重膜を構成するリン脂質のリン酸基と静電的に結合すると共に、プロトン化されずに残った塩基性基がエンドソーム内において、プロトンスポンジ効果を発揮する。(6)に記載の発明によれば、アミノ基は弱い塩基性を示すカチオン性基であるため、生体内において一部のみがプロトン化され、リポソームとの静電的な結合と、プロトンスポンジ効果と、の両方に寄与することができる。

0027

(7) 前記樹状高分子が、ポリアミドアミンデンドリマーである、(2)から(6)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0028

ポリアミドアミンデンドリマーは、末端に1級アミノ基を、分岐部分に3級アミノ基を有する。このため、(7)に記載の発明によれば、ポリアミドアミンデンドリマーは、リポソームと効率よく結合し、かつ、エンドソームに取り込まれた際に優れたプロトンスポンジ効果を示す。

0029

(8) 前記樹状高分子が、世代1.0以上世代6.0以下の樹状高分子である、(1)から(7)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0030

(8)に記載の発明によれば、樹状高分子の世代が世代1.0以上世代6.0以下であるため、リポソームと適切に複合体を形成することができる。

0031

(9)粒径が50nm以上100nm以下である、(1)から(8)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0032

腫瘍形成部における血管新生においては、血管が非常に短時間のうちに形成されるため、血管壁組織構築性が悪く、数百nm程度の隙間が開いていることが確認される。このため、この隙間を透過する大きさで、通常の血管壁を透過しない大きさの粒子を、癌患者投与すれば、当該粒子は、腫瘍組織にのみ取り込まれることとなる(EPR効果)。(9)に記載の発明によれば、樹状高分子−リポソーム複合体の粒径が50nm以上100nm以下であるため、当該樹状高分子−リポソーム複合体を癌患者に投与したとき、EPR効果を示し、癌治療のための薬剤輸送システムに好適に用いることができる。

0033

(10) 前記樹状高分子の末端に、細胞表層抗原に特異的に結合する細胞表層抗原認識分子を結合させた(1)から(9)のいずれかに記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0034

(11) 前記細胞表層抗原が、癌抗原である(10)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0035

(12) 前記細胞表層抗原認識分子が、癌抗原を特異的に認識する抗体である、(11)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0036

(10)に記載の発明によれば、樹状高分子の末端に、細胞表層抗原に特異的に結合する細胞表層抗原認識分子を結合させているため、患者に投与された際に特定の細胞に効果的に輸送される樹状高分子−リポソーム複合体を得ることができる。このとき、樹状高分子−リポソーム複合体上に、細胞表層抗原認識分子が比較的密に存在するため、細胞表層抗原を効率的に認識することができる。

0037

また、(11)に記載の発明のように、この細胞表層抗原が癌抗原である場合、癌患者に投与された際に癌細胞に効果的に輸送される、樹状高分子−リポソーム複合体を得ることができる。このような樹状高分子−リポソーム複合体の例としては、(12)に記載の発明のように、樹状高分子に癌抗原に対する抗体を結合させた樹状高分子−リポソーム複合体を挙げることができる。

0038

(13) 前記細胞表層抗原認識分子が葉酸である、(10)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体。

0039

癌細胞は、増殖に必要なビタミン一種である葉酸を吸収する能力が非常に高い。これは、癌細胞表面に葉酸に結合する葉酸受容体が多量に発現されているためである。(13)に記載の発明によれば、樹状高分子に葉酸が結合しているため、癌患者に投与した際に、樹状高分子−リポソーム複合体が葉酸受容体に結合し、効率的に癌細胞に取り込まれる。

0040

(14)疾病の治療に有効な薬剤を標的細胞に運搬する薬剤輸送システムであって、前記樹状高分子と、前記リポソームとに前記薬剤を含有させて運搬する、(1)から(13)に記載の樹状高分子−リポソーム複合体を用いた薬剤輸送システム。

0041

(1)から(13)の樹状高分子−リポソーム複合体は、上述のような機能を有しているため、これを薬剤輸送システムに利用することにより、標的細胞に対して薬剤を、選択的かつ効率的に輸送することができる。これにより、副作用を抑えた、効率的な疾病の治療が可能となる。

0042

(15) 前記樹状高分子と、前記リポソームとに、異なる薬剤を含有させることを特徴とする、(14)に記載の薬剤輸送システム。

0043

(15)の発明によれば、樹状高分子とリポソームとに異なる薬剤を含有させることにより、異なる薬剤を同時に、標的細胞に輸送することができる。

発明の効果

0044

本発明によれば、リポソームを構成する脂質二重膜が両親媒性高分子を含んでいるため、リポソームと樹状高分子とが、安定して複合体を形成することができる。この際、樹状高分子に様々な機能を備えさせることにより、薬剤輸送システム等に用いることのできる、樹状高分子−リポソーム複合体を提供することが可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0045

以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。

0046

<樹状高分子−リポソーム複合体>
本実施形態に係る樹状高分子−リポソーム複合体は、樹状高分子と、リポソームと、からなる。

0047

[リポソーム]
本実施形態のリポソームは、脂質二重膜中に両親媒性脂質と、両親媒性高分子化合物と、を含む。また、脂質二重膜には、必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。リポソームを構成する脂質二重膜においては、両親媒性高分子化合物の疎水性部分と、両親媒性脂質の疎水性部分とが相互作用し、両親媒性高分子化合物の親水性部分が、脂質二重膜から突出している。両親媒性高分子化合物は、脂質二重膜中に略均一に分布しており、両親媒性高分子化合物の親水性部が、樹状高分子−リポソーム複合体中において、樹状高分子とリポソームとが直接接触することを防止している。これにより、樹状高分子−リポソーム複合体が安定に存在することができる。

0048

(両親媒性脂質)
両親媒性脂質は、リポソームを構成しうるものであれば特に限定されない。両親媒性脂質として、具体的にはリン脂質を挙げることができるが、リン脂質としては、グリセロリン脂質、及びスフィンゴリン脂質のいずれをも用いることができる。グリセロリン脂質としては、具体的には、ホスファチジン酸ホスファチジルグリセロールカルジオリピンホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルイノシトールを挙げることができる。スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリンスフィンゴエタノールアミン、及びセラミドシリアチンを挙げることができる。これらのリン脂質は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。

0049

リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数10以上25以下の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を好適に用いることができる。このような脂肪酸の具体例としては、飽和脂肪酸として、パルミチン酸、及びステアリン酸、不飽和脂肪酸として、オレイン酸を挙げることができる。

0050

リポソームの形成に用いるリン脂質は、市販されているものを用いることができる。例えば、「ホスファチジルコリン」(商品名、シグマ社製)を挙げることができる。

0051

(両親媒性高分子化合物)
本実施形態の両親媒性高分子化合物は、炭素数10以上25以下の炭素鎖含む疎水性化合物を、直鎖状の親水性高分子化合物の一方の末端に結合させてなる化合物である。

0052

(疎水性化合物)
疎水性化合物は炭素数10以上25以下の炭素鎖を含むものであり、炭素鎖は、飽和炭素鎖であっても不飽和炭素鎖であってもよい。また、分枝を有していても直鎖状であってもよいが、直鎖状の炭素鎖が好ましい。炭素鎖は、脂質二重膜中において、リン脂質の疎水性部分と相互作用する部位であり、脂質二重膜の膜厚の半分程度の長さであることが好ましい。これにより、炭素鎖を脂質二重膜中に安定に存在させることができる。

0053

疎水性化合物は、両親媒性高分子化合物の原料となる親水性高分子化合物に応じて、適宜選択することができる。しかしながら、生体内における安定性等の観点から、両親媒性高分子化合物における親水性部分と疎水性部分との連結部は、エーテル結合エステル結合、及びアミド結合であることが好ましいく、親水性高分子化合物と疎水性化合物とが、このような結合を形成するように、疎水性化合物を適宜選択することが好ましい。

0054

疎水性化合物としては、リン脂質等の両親媒性脂質を用いることもできる。両親媒性脂質としては、具体的には、ホスファチジルエタノールアミン、及びその誘導体を挙げることができる。

0055

(親水性高分子化合物)
両親媒性高分子化合物の原料となる親水性高分子化合物は、直鎖状で親水性の高分子化合物であれば、特に限定されない。親水性高分子化合物は、ホモポリマーであっても、ヘテロポリマーであってもよい。しかしながら、生体内における安定性、及び、親水性高分子化合物の運動性の点から、ポリエチレングリコールであることが好ましい。

0056

(その他の成分)
リポソームを構成する脂質二重膜には、安定性を向上させるためにその他の成分を含有させてもよい。具体的には、コレステロール、及び、ジデシルリン酸を挙げることができる。また、例えば、脂質二重膜にカチオン性基を有する化合物を含有させることにより、プロトンスポンジ効果等、新たな効果を期待することもできる。

0057

[リポソームの製造方法]
リン脂質1当量に対して、両親媒性高分子化合物を1当量と、必要に応じてコレステロール1当量と、ジデシルリン酸を2当量以上3当量以下と、を混合し、有機溶媒中に溶解させる。ジデシルリン酸の添加量は、両親媒性高分子化合物を構成する親水性高分子化合物の数平均分子量に応じて適宜、決定することができる。すなわち、数平均分子量が2000以上3000以下であるときには、ジデシルリン酸を2当量以上3当量以下とすることが適当である。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、クロロホルムを挙げることができる。この脂質二重膜形成組成物フラスコに移し、エバポレーターを用いて有機溶媒を蒸発させ、脂質フィルムを形成させる。脂質フィルムには、pH7.4リン酸緩衝液又は、pH7.4のリン酸生理食塩水を添加して水和させ、5回凍結融解を行う。この結果得られる分散液を、60℃以上70℃以下の温度でエクストルーダー押し出し機)により、80nmの微細孔を有するポリカーボネート膜に10回以上20回以下透過させ、粒径の調整を行う。これにより、粒径が60nm以上70nm以下のリポソームが得られる。

0058

[樹状高分子]
樹状高分子はデンドリマーとも呼ばれ、中心部から規則的に分岐した構造を有する高分子化合物である。本実施形態の樹状高分子は、イオン性基が導入された樹状高分子である。イオン性基がカチオン性基である場合、当該カチオン性基は、生体内のpHと同等のpHであるpH7.2においては、一部がプロトン化されている。当該カチオン性基は、リポソームがリン脂質から構成されるリポソームである場合、リン脂質の有するリン酸基(pH7.2では、一部のプロトンが解離している)と静電的に相互作用して、樹状高分子とリポソームとの結合に寄与しうる。

0059

また、pH7.2においてプロトン化されていないカチオン性基であっても、より酸性の条件下では容易にプロトン化されうる。このため、エンドソーム内等、酸性の条件下においては、プロトンスポンジ効果を示す。これにより、本実施形態の樹状高分子を有する、樹状高分子−リポソーム複合体を薬剤輸送システムに利用した場合、標的細胞に効率的に薬剤を輸送することができる。

0060

樹状高分子には、必要に応じて細胞表層抗原に特異的に結合する細胞表層抗原認識分子を結合させることができる。これにより、樹状高分子−リポソーム複合体を薬剤輸送システムに用いる際に、標的細胞に特異的に薬剤を輸送することができる。

0061

(イオン性基の種類)
本実施形態の樹状高分子に導入することができるイオン性基としては、具体的には、アミノ基を挙げることができる。アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。

0062

(アミノ基を有する樹状高分子)
上記、アミノ基を有する樹状高分子としては、具体的には、ポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)、及び、ポリプロピレンイミンデンドリマー(PPI)を挙げることができる。この中でも、毒性の低さ、合成の容易性、及び、入手コストの点から、PAMAMが好ましい。PAMAMの構造を図1に示す。

0063

(樹状高分子の世代)
樹状高分子においては、デンドロン部分の分岐回数を世代と呼ぶ。すなわち、世代とは、樹状高分子の大きさを表す係数である。本実施形態の樹状高分子−リポソーム複合体に用いる樹状高分子の世代としては、世代1.0以上世代6.0以下であることが好ましい。上記世代の樹状高分子を用いることにより、樹状高分子と適切に、複合体を形成することができる。

0064

(細胞表層抗原認識分子)
本実施形態に係る樹状高分子には、特定の細胞表層抗原を認識する細胞表層抗原認識分子を結合させることができる。細胞表層抗原認識分子の標的となる細胞表層抗原としては、特に限定されず、トランスフェリン受容体、及び葉酸受容体等を挙げることができる。このような細胞表層抗原に結合する細胞表層抗原認識分子としては、トランスフェリン、及び葉酸等を挙げることができる。また、トランスフェリン受容体、及び葉酸受容体に対する抗体を用いることもできる。これらの細胞表層抗原認識分子は、単独で用いてもよいが、同一の標的細胞に発現しているものであれば、二種以上を併用してもよい。

0065

本実施形態に係る樹状高分子においては、細胞表層抗原認識分子は、樹状高分子の末端に存在するイオン性基を介して結合させることが好ましい。すなわち、樹状高分子の有するアミノ基と、細胞表層抗原認識分子の有するカルボキシル基等の官能基と、を縮合させることにより、細胞表層抗原認識分子と樹状高分子とを共有結合的に結合させることが可能である。これにより、細胞表層抗原認識分子を結合した樹状高分子を有する、樹状高分子−リポソーム複合体は、特定の標的細胞に効率的に輸送されるようになる。

0066

[樹状高分子−リポソーム複合体]
本実施形態の樹状高分子−リポソーム複合体は、上記樹状高分子と上記リポソームとを静電的に結合させることにより調製される。樹状高分子−リポソーム複合体の模式図を図2に示す。本実施形態の樹状高分子−リポソーム複合体は、リポソーム表面に存在する両親媒性高分子化合物の親水性部分による立体障害のため、樹状高分子とリポソームとが直接接触しない。このため、樹状高分子がリポソームと強く相互作用して、リポソームが破壊されることがない。

0067

樹状高分子−リポソーム複合体の粒径は、50nm以上100nm以下であることが好ましい。腫瘍形成部における血管新生においては、血管が非常に短時間のうちに形成されるため、血管壁組織の構築性が悪く、数百nm程度の隙間が開いていることが確認される。このため、この隙間を透過する大きさで、通常の血管壁を透過しない大きさの粒子を癌患者に投与すれば、当該粒子は、腫瘍組織にのみ取り込まれることとなる。樹状高分子−リポソーム複合体の粒径が50nm以上であるので、癌患者に投与した際に、樹状高分子−リポソーム複合体が通常の組織の血管壁を透過しない。一方、樹状高分子−リポソーム複合体の粒径が100nm以下であるため、癌患者に投与した際に、腫瘍形成部の血管壁を容易に透過する。このため、当該樹状高分子−リポソーム複合体を癌患者に投与したとき、樹状高分子−リポソーム複合体が腫瘍形成部位に選択的に輸送され、癌治療のための薬剤輸送システムに好適に用いることができる。

0068

樹状高分子−リポソーム複合体はリポソームと樹状高分子とを混合し、室温で3時間保温することにより調製することができる。樹状高分子−リポソーム複合体を調製する際の樹状高分子とリポソームとの混合比率は、リポソームを構成するホスファチジルコリン1重量部に対し、樹状高分子1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。

0069

<薬剤輸送システム>
本実施形態の樹状高分子−リポソーム複合体は、樹状高分子、及びリポソームに薬剤を包含させて、薬剤輸送システムの単体として用いることのできるものである。薬剤をリポソームに包含させる場合、水溶性の薬剤であればリポソームの内腔に、脂溶性の薬剤であれば、リポソームが有する脂質二重膜の膜中に包含させることができる。また、疎水性のコアを有する樹状高分子の場合、脂溶性の薬剤を内部に包含させることができる。

0070

薬剤を包含したリポソームの製造方法は、以下のとおりである。

0071

水溶性の薬剤であれば、リポソーム製造時、脂質フィルムを水和させるために用いられるリン酸緩衝液、又はリン酸生理食塩水に当該薬剤を溶解させる。これにより、リポソームの形成と同時にリポソーム内腔に水溶性の薬剤が包含される。一方、脂溶性の薬剤であれば、脂質二重膜形成用組成物中に脂溶性の薬剤を混合して、脂質フィルムを形成させる。これにより、脂質フィルムの形成と同時に脂質二重膜中に当該薬剤が包含される。

0072

薬剤を包含した樹状高分子は、当該樹状高分子と目的とする薬剤とを溶媒中で混合することにより製造することができる。

0073

以上のように調製した、薬剤含有するリポソーム及び樹状高分子を用いて形成される樹状高分子−リポソーム複合体を、患者に投与することにより、当該薬剤を目的とする標的細胞に、特異的に輸送することができる。これにより、副作用が少なく、効果的な治療を行うことが可能となる。

0074

なお、樹状高分子−リポソーム複合体には、樹状高分子とリポソームとに、それぞれ異なる薬剤を包含することが可能である。これにより、例えば、多剤併用療法等において、複数主の薬剤を同一の標的細胞に輸送することが可能となる。

0075

<葉酸修飾PAMAMデンドリマーの合成>
合成反応
図3に葉酸修飾PAMAMデンドリマー合成の概略図を示す。アミン末端PAMAMデンドリマー(世代6.0)6.0g、葉酸800mgとジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1460mgをピリジンジメチルスルホキシドDMSO)混合溶媒に溶解させた。これを室温、遮光下で二日間攪拌し、反応溶液透析膜「MWCO3500」(商品名、Spectra社製)で透析し、DMSOと未反応の葉酸を除去した。凍結乾燥後ジエチルエーテルアセトン洗浄し、葉酸修飾PAMAMデンドリマー(FA−PAMAM)を得た。

0076

構造決定
図4、及び、図5に1H−NMRの結果を、図6に13C−NMRのスペクトルを、図7に13C−NMRのスペクトルにおける各ピーク各炭素原子への帰属を示す。なお、図6中、(a)は0ppmから200ppmのスペクトルを、(b)は10ppmから60ppmのスペクトルの拡大図を示す。さらに、図8には、紫外スペクトル分析の結果を、図9には、赤外線スペクトル分析の結果を示した。

0077

また、電位差滴定により、末端基の定量を行った。21.5mgのPAMAM(世代6.0)を0.1MNaCl水溶液10mlに溶解させ、0.1003N HClで滴定を行い、さらに0.1003N NaOHでて規定を行った。滴定結果図10の(A)に示す。同様に、上記合成したFA−PAMAM 20mgを0.1N NaCl水溶液10mlに溶解させ、電位差滴定を行った。結果を図10の(B)に示す。

0078

これらの結果より、FA−PAMAMが合成されたことが確認された。

0079

<FA−PAMAM修飾リポソームの調製>
[アニオン性PEGリボソームの調製]
ホスファチジルコリン、ジデシルリン酸、コレステロール、及びポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(重合度、約50)を、1:2:1:1のモル比でクロロホルム中に溶解させ、エバポレーターで溶媒を除去してフラスコに脂質フィルムを形成させた。このフィルムを1.5mlのpH7.4リン酸緩衝液、又は、pH7.4リン酸生理食塩水で水和させた後、5回凍結融解を行った。得られた分散液を60℃において、「mini extruder」(商品名、押し出し機、Avanti Polor Lipids社製)を用いて孔径80nmのポリカーボネート膜に10回透過させることにより、サイズ調整を行った。

0080

[FA−PAMAM修飾リポソームの調製]
アニオン性PEGリボソームにFA−PAMAM水溶液を混合し、室温下で3時間保温した。これにより、FA−PAMAM修飾リポソームが調製された。

0081

[FA−PAMAM修飾リポソームの確認]
キュムラント粒径の増大)
動的光散乱測定装置「DLS−7000」(商品名、大塚電子社製)を用い、10mWHe−Neレーザーを用いて、25℃の条件下における分散液の動的光散乱を測定した。結果を図11及び図12に示す。図11はリポソームの調製時、脂質フィルムを水和させる際にリン酸緩衝液を用いたもの、図12はリポソームの調製時、脂質フィルムを水和させる際にリン酸生理食塩水を用いたものについて、動的光散乱の測定を行ったものである。[FA−PAMAM]/[PC]は、ホスファチジルコリンの重量に対するFA−PAMAMの重量の比を表す。

0082

図11より、FA−PAMAMを添加した場合には、7nmから10nmのキュムラント粒径の増大が見られ、FA−PAMAMのリポソームへの吸着が確認された。図12に示されたように、塩が存在する条件下で、FA−PAMAMの添加量が少量である場合、リポソームが凝集したが、さらにFA−PAMAMを添加することにより、FA−PAMAMに被覆されたリポソームが形成されることがわかった。これは、FA−PAMAMとリポソームとの結合が静電的な相互作用によるものであることを示唆するものである。

0083

ζ電位の増大)
ζ電位測定装置「ELS−Z2」(商品名、大塚電子社製)を用いて、FA−PAMAM修飾リポソームについて、レーザードップラー法により電気泳動速度を求め、ζ電位を求めた。結果を図11及び図12に示す。図11はリポソームの調製時、脂質フィルムを水和させる際にリン酸緩衝液を用いたもの、図12はリポソームの調製時、脂質フィルムを水和させる際にリン酸生理食塩水を用いたものについて、ζ電位の測定を行ったものである。[FA−PAMAM]/[PC]は、ホスファチジルコリンの重量に対するFA−PAMAMの重量の比を表す。

0084

図11及び図12より、FA−PAMAMの添加量が増大するにしたがって、ζ電位が増大することがわかる。これにより、リポソームがPAPAMに吸着していることがわかった。

0085

電子顕微鏡観察
FA−PAMAM修飾リポソームを、モリブデン酸アンモニウムを用いた公知のネガティブ染色法によりネガティブ染色し、透過型電子顕微鏡「H−9500」(商品名、日立製作所社製)により、加速電圧200kVで観察を行った。結果を図13に示す。脂質フィルムにリン酸緩衝液を水和させて形成させたリポソームにおいては、FA−PAMAMが吸着したリポソームが確認された(図13(A))。脂質フィルムにリン酸生理食塩水を水和さえて形成させたリポソームにおいては、FA−PAMAMが低濃度においてリポソームの凝集体とリポソームとが観察され(図13(B)(a)、(b))、FA−PAMAMが高濃度において、凝集体は消失し、FA−PAMAMが吸着したリポソームが確認された(図13(B)(c))。

0086

蛍光測定によるリポソームの安定性の評価)
ホスファチジルコリン、ジデシルリン酸、コレステロール、及びポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(重合度約50)を1:2:1:1のモル比でクロロホルム中に溶解させ、エバポレーターで溶媒を除去してフラスコに脂質フィルムを形成させた。このフィルムを25mMのカルセインを溶解させたpH7.4、10mMリン酸緩衝液、又は、25mMのカルセインを溶解させたpH7.4、10mMリン酸生理食塩水、それぞれ1.5mlで水和させのち5回凍結融解を行った。得られた分散液を60℃で押し出し機「mini extruder」(商品名、Avanti Polor Lipids社製)を用いて、孔径80nmのポリカーボネート膜に10回通すことによってサイズ調整を行った。さらに透析を行い、リポソームに未封入のカルセインを除去した。FA−PAMAMを添加した際のカルセインの漏れ量を蛍光装置「F−4500 fluorescence spectrophotometer」(商品名、日立製作所社製)を用い、励起波長490nmにおいて評価した。カルセインの漏れ量は以下の式(1)にしたがって算出した。



[ここで、FはFA−PAMAMを添加した際の520nmにおける蛍光強度を、F0はFA−PAMAMを添加していない際の520nmにおける蛍光強度を、Fmaxは10質量%の「TritonX−100」(商品名、界面活性剤、シグマ社製)を添加した際の520nmにおける蛍光強度を示す。]

0087

図14に蛍光測定の結果を示した。リン酸緩衝液中、又はリン酸生理食塩水中においてカルセインの漏れ量は15%以下であった。この結果から、FA−PAMAMの添加により、リポソームの破壊が起こっていないことが確認された。

図面の簡単な説明

0088

世代2.0のPAMAMデンドリマーの構造を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の概略図を示す図面である。
葉酸修飾PAMAMの合成反応の概略を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の1H−NMRの結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の1H−NMRの結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の13C−NMRのスペクトルを示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の13C−NMRによる、帰属の結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の紫外スペクトル分析の結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の赤外線スペクトル分析の結果を示す図面である。
PAMAM及び葉酸修飾PAMAMの電位差滴定の結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の動的光散乱測定、及びζ電位測定の結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の動的光散乱測定、及びζ電位測定の結果を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の電子顕微鏡写真を示す図面である。
本発明の樹状高分子−リポソーム複合体の安定性に関する評価実験の結果を示す図面である。

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