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技術 熱ショックタンパク質HSP60の分離方法

出願人 国立大学法人鹿児島大学
発明者 又吉盛健
出願日 2006年8月11日 (13年4ヶ月経過) 出願番号 2006-219450
公開日 2008年2月28日 (11年9ヶ月経過) 公開番号 2008-043216
状態 特許登録済
技術分野 微生物による化合物の製造 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 医療産業 吸光度測定法 モルガニイ ユウバクテリウム 酢酸ウラン 撹拌処理 クロストリディウム リゾスタフィン
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年2月28日)のものです。
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課題

簡便で、且つ効率的な熱ショックタンパク質HSP60の分離方法を提供することを目的とする。

解決手段

細菌のスフェロプラストを1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理する。

概要

背景

従来、細菌を40〜45℃の高温で培養すると、HSP60等の熱ショックタンパク質発現誘導されて菌体内に発現することが知られている(非特許文献1及び2)。また、熱ショックタンパク質は、細菌の他に、ヒトを含めた真核生物まで存在することが判っている(非特許文献3)。熱ショックタンパク質の真核生物の細胞局在としては、例えば、ミトコンドリアクロプラストが挙げられる(非特許文献4〜6)。また、熱ショックタンパク質は、タンパク質の折りたたみ変性タンパク質修正関与することが知られている(非特許文献7及び8)。

一方、これまで、例えばHSP60は、細菌でも細胞質内に存在すると考えられていた(非特許文献1、3及び9〜11)。そこで、従来より、HSP60等の熱ショックタンパク質の抽出方法では、細胞壁細胞膜破砕することが不可欠な工程であった。細胞壁や細胞膜の破砕後、種々の煩雑な分別方法を用いて、熱ショックタンパク質を精製していた(非特許文献12及び13)。このような従来の熱ショックタンパク質の分離方法では、出発材料である細胞を破砕して得られる懸濁液には膜破片リボソーム核酸、細胞質内タンパク質が混在するため、熱ショックタンパク質のみを精製するには、多くの工程を必要とし、煩雑で、時間を費やし、また最終的な収量が少ないといった問題がある。

従って、これまでに効率的に熱ショックタンパク質を分離する方法が知られていなかった。

Angelo Scorpioら, 「Journal of Bacteriology」, 1994年, 第176巻, p.6449-6456
F. Goulhenら, 「Infection and Immunity」, 1998年, 第66巻, p.5307-5313
Alejandro M. Vialeら, 「International Journal of Systematic Bacteriology」, 1994年, 第44巻, p.527-533
McMullin T.W.ら, 「Molecular and Cellular Biology」, 1987年, 第7巻, p.4414-4423
Jindal S.ら, 「Molecular and Cellular Biology」, 1989年, 第9巻, p.2279-2283
Paul V. Viitanenら, 「The Journal of Biological Chemistry」, 1992年, 第267巻, p.695-698
F. Ulrich Hartl, 「Nature」, 1996年, 第381巻, p.571-580
Bernd Bukauら, 「Cell」, 1998年, 第92巻, p.351-366
Gupta R.S.ら, 「Molecular Microbiology」, 1995年, 第15巻, p.1-11
Rafael A. Gardunoら, 「Journal of Bacteriology」, 1998年, 第180巻, p.505-513
Claire Hennequinら, 「Microbiology」, 2001年, 第147巻, p.87-96
Zahn R.ら, 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」, 1996年, 第93巻, p.15024-15029
Gabriela E. Bergonzelliら, 「Infection and Immunity」, 2006年, 第74巻, p.425-434

概要

簡便で、且つ効率的な熱ショックタンパク質HSP60の分離方法を提供することを目的とする。細菌のスフェロプラストを1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理する。なし

目的

そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、簡便で、且つ効率的なHSP60の分離方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

上記スフェロプラストが、細菌を細胞壁分解酵素で処理することによって得られるものであることを特徴する、請求項1記載の方法。

請求項3

上記方法が、細菌を細胞壁分解酵素で処理することで、スフェロプラストを形成する第1工程と、第1工程で得られたスフェロプラストを1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理することで、溶液中に熱ショックタンパク質HSP60を遊離する第2工程と、第2工程で得られた溶液を固液分離手段に供することで、液相中に熱ショックタンパク質HSP60を分離する第3工程と、を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。

請求項4

第3工程の後に、上記液相をタンパク質精製手段に供する工程を含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。

請求項5

上記細菌が大腸菌であることを特徴とする、請求項1又は3記載の方法。

請求項6

40℃〜45℃の温度下で培養した細菌を使用することを特徴とする、請求項1又は3記載の方法。

請求項7

上記細胞壁分解酵素がリゾチームであることを特徴とする、請求項2又は3記載の方法。

請求項8

上記塩溶液が塩化ナトリウム溶液であることを特徴とする、請求項1又は3記載の方法。

請求項9

上記固液分離手段が、遠心分離濾過及び吸着から成る群から選択されるものであることを特徴とする、請求項3記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、例えば、細菌のペリプラズムに存在する熱ショックタンパク質HSP60(以下、「HSP60」という)の分離方法に関する。

背景技術

0002

従来、細菌を40〜45℃の高温で培養すると、HSP60等の熱ショックタンパク質の発現誘導されて菌体内に発現することが知られている(非特許文献1及び2)。また、熱ショックタンパク質は、細菌の他に、ヒトを含めた真核生物まで存在することが判っている(非特許文献3)。熱ショックタンパク質の真核生物の細胞局在としては、例えば、ミトコンドリアクロプラストが挙げられる(非特許文献4〜6)。また、熱ショックタンパク質は、タンパク質の折りたたみ変性タンパク質修正関与することが知られている(非特許文献7及び8)。

0003

一方、これまで、例えばHSP60は、細菌でも細胞質内に存在すると考えられていた(非特許文献1、3及び9〜11)。そこで、従来より、HSP60等の熱ショックタンパク質の抽出方法では、細胞壁細胞膜破砕することが不可欠な工程であった。細胞壁や細胞膜の破砕後、種々の煩雑な分別方法を用いて、熱ショックタンパク質を精製していた(非特許文献12及び13)。このような従来の熱ショックタンパク質の分離方法では、出発材料である細胞を破砕して得られる懸濁液には膜破片リボソーム核酸、細胞質内タンパク質が混在するため、熱ショックタンパク質のみを精製するには、多くの工程を必要とし、煩雑で、時間を費やし、また最終的な収量が少ないといった問題がある。

0004

従って、これまでに効率的に熱ショックタンパク質を分離する方法が知られていなかった。

0005

Angelo Scorpioら, 「Journal of Bacteriology」, 1994年, 第176巻, p.6449-6456
F. Goulhenら, 「Infection and Immunity」, 1998年, 第66巻, p.5307-5313
Alejandro M. Vialeら, 「International Journal of Systematic Bacteriology」, 1994年, 第44巻, p.527-533
McMullin T.W.ら, 「Molecular and Cellular Biology」, 1987年, 第7巻, p.4414-4423
Jindal S.ら, 「Molecular and Cellular Biology」, 1989年, 第9巻, p.2279-2283
Paul V. Viitanenら, 「The Journal of Biological Chemistry」, 1992年, 第267巻, p.695-698
F. Ulrich Hartl, 「Nature」, 1996年, 第381巻, p.571-580
Bernd Bukauら, 「Cell」, 1998年, 第92巻, p.351-366
Gupta R.S.ら, 「Molecular Microbiology」, 1995年, 第15巻, p.1-11
Rafael A. Gardunoら, 「Journal of Bacteriology」, 1998年, 第180巻, p.505-513
Claire Hennequinら, 「Microbiology」, 2001年, 第147巻, p.87-96
Zahn R.ら, 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」, 1996年, 第93巻, p.15024-15029
Gabriela E. Bergonzelliら, 「Infection and Immunity」, 2006年, 第74巻, p.425-434

発明が解決しようとする課題

0006

上述したように、従来、細菌においてHSP60は細胞質内に存在すると考えられており、そのため、HSP60を分離するには細胞膜を破砕することが前提であり、その後煩雑な工程を必要とした(上記非特許文献2)。

0007

そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、簡便で、且つ効率的なHSP60の分離方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、細菌ではHSP60が細胞質内ではなく、ペリプラズムに大量に局在することを明らかにした。そこで、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、細菌を細胞壁分解酵素で処理することでスフェロプラストを形成し、得られたスフェロプラストをそれが破砕しないように1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理することで溶液中にHSP60を遊離させ、その後、破砕しなかったスフェロプラストを遠心分離で取り除き、得られた液相を固液分離手段に供することで、効率的にHSP60を分離できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0009

本発明は以下を包含する。
(1)細菌のスフェロプラストを1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理することを含む、ペリプラズム局在熱ショックタンパク質HSP60の分離方法。

0010

(2)上記スフェロプラストが、細菌を細胞壁分解酵素で処理することによって得られるものであることを特徴する、(1)記載の方法。

0011

(3)上記方法が、細菌を細胞壁分解酵素で処理することで、スフェロプラストを形成する第1工程と、第1工程で得られたスフェロプラストを1.5%〜5%の塩溶液中で撹拌処理することで、溶液中にHSP60を遊離する第2工程と、第2工程で得られた溶液を固液分離手段に供することで、液相中にHSP60を分離する第3工程とを含むことを特徴とする、(1)記載の方法。

0012

(4)第3工程の後に、上記液相をタンパク質精製手段に供する工程を含むことを特徴とする、(3)記載の方法。

0013

(5)上記細菌が大腸菌であることを特徴とする、(1)又は(3)記載の方法。
(6)40℃〜45℃の温度下で培養した細菌を使用することを特徴とする、(1)又は(3)記載の方法。

0014

(7)上記細胞壁分解酵素がリゾチームであることを特徴とする、(2)又は(3)記載の方法。

0015

(8)上記塩溶液が塩化ナトリウム溶液であることを特徴とする、(1)又は(3)記載の方法。

0016

(9)上記固液分離手段が、遠心分離、濾過及び吸着から成る群から選択されるものであることを特徴とする、(3)記載の方法。

発明の効果

0017

本発明に係る分離方法によれば、細菌からHSP60を効率良く分離することができる。特に、本発明に係る分離方法により得られたHSP60は未変性のものであり、疾患の検査薬治療薬及び治療方法などの開発に使用することができる。

発明を実施するための最良の形態

0018

以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るHSP60の分離方法(以下、単に「本発明に係る分離方法」という)により、細菌のペリプラズムからHSP60を分離することができる。

0019

熱ショックタンパク質(以下、「HSP」という)とは、ほとんどの生物細胞に存在し、正常な状態では新生タンパク質の折りたたみや移動等に関与し、細胞が生理的温度より高い温度(熱ショック)や様々なストレスに曝された時に更に合成が誘導され、変性したタンパク質の凝集を防いだり、正常に戻したりする重要な機能を有するタンパク質を意味する。そして、HSP60は、HSPファミリーの一メンバーである。

0020

本発明に係る分離方法では、HSP60発現を誘導すべく、例えば、40〜45℃(好ましくは42〜45℃)の温度下で、8〜24時間(好ましくは12〜16時間)培養した細菌を用いることができる。

0021

本発明に係る分離方法では、まず細菌を細胞壁分解酵素で処理する。すなわち、細菌からスフェロプラストを形成する。当該処理は、例えばpH6.0〜8.0(好ましくは、pH6.8〜7.2)下で行う。ここで細菌としては、HSP60がペリプラズムに存在するものであれば特に限定されることはないが、例えば、大腸菌(E. coli)等のエッシェリヒア(Escherichia)属、クロストリディウムボツリナム(Clostridium botulinum)及びクロストリディウム・ヒラノニス(Clostridium hiranonis)等のクロストリディウム(Clostridium)属、スピロヘータ・ステノストレプタ(Spirochaeta stenostrepta)等のスピロヘータ(Spirochaeta)属、サルモネラティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)及びサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)等のサルモネラ(Salmonella)属、シゲラフレキネリ(Shigella fexneri)等のシゲラ(Shigella)属、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等のエンテロバクター(Enterobacter)属、プルテウスブルガリス(Porteus vulgaris)及びプルテウス・モルガニイ(Porteus morganii)等のプルテウス(Porteus)属、エルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)等のエルシニア(Yersinia)属、アコレプラズマ・レイドロウイィ(Acholeplasma laidlawii)、アコレプラズマ・グラヌラルム(Acholeplasma granularum)及びアコレプラズマ・アキサンスム(Acholeplasma axanthum)等のアコレプラズマ(Acholeplasma)属、ペプトストレプトコッカス・プロダクタス(Peptostreptococcus productus)等のペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ユウバクテリウムレンタム(Eubacterium lentum)及びユウバクテリウム・エロファエンス(Eubacterium aerofaciens)等のユウバクテリウム(Eubacterium)属、トレポネーマファージデニス(Treponema phagedenis)等のトレポネーマ(Treponema)属、並びにリステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)等のリステリア(Listeria)属等の菌が挙げられる。特に大腸菌が好ましい。なお、同種又は異種のHSP60遺伝子を導入し、HSP60を過剰発現させた細菌も、ペリプラズムに当該HSP60が存在する限り、本発明の対象とすることができる。また使用する細胞壁分解酵素としては、例えば、リゾチーム、エンド-N-アセチルムラミダーゼ(Endo-N-acetylmuramidase)、アクロモペプチダーゼ(Achromopeptidase)、ムタノリシン(Mutanolysin)及びリゾスタフィン(Lysostaphin)等が挙げられる。特にリゾチームが好ましい。

0022

例えば、細菌をリゾチーム、ショ糖(0.5M)及びEDTA(2.5mM)を含有する緩衝液中に30〜37℃で30分間〜2時間インキュベートする。細菌に対するリゾチームの量は、例えば細菌108個/mlに対して100〜300μg/ml、特に200〜250μg/mlとする。リゾチーム処理後に、デカンテーションにより緩衝液を除去することで、スフェロプラストが得られる。

0023

次いで、得られたスフェロプラストを、スフェロプラストが破砕しない濃度の塩溶液中に懸濁し、例えばTHERMO-MIXERを用いて、当該懸濁液を10〜60秒間、特に20〜30秒間撹拌する。この工程により、スフェロプラストのペリプラズムに局在するHSP60が溶液中に遊離される。使用する塩溶液としては、例えば塩化ナトリウム溶液(以下、「NaCl溶液」という)、又はNaClを1.5%〜5%(好ましくは、1.75%〜2%)に調整したリン酸緩衝液もしくはトリス緩衝液等が挙げられる。特にNaCl溶液が好ましい。また、緩衝液のpHは、例えば、pH6.0〜8.0、好ましくはpH6.8〜7.2とする。さらに、スフェロプラストが破砕しない塩濃度は、リゾチーム等の細胞壁分解酵素の効力菌種によって適宜決定することができるが、この塩溶液の濃度は、細胞膜に結合しているHSP60の遊離に影響し、塩濃度が濃すぎるとHSP60は遊離しにくくなる。一方、塩濃度が薄すぎると、細胞膜が破砕し易くなり、細胞質内タンパク質が混入しやすくなる。そこで、塩溶液の塩濃度としては、使用する菌種によって、撹拌処理してもスフェロプラストが壊れない最も薄い塩濃度が好ましく、例えば、1.5%〜5%が挙げられ、好ましくは1.75%〜2%である。なお、塩溶液に代えて、例えばキレート剤をスフェロプラストに添加することで、ペリプラズムに局在するHSP60を遊離することもできる。

0024

次に、遊離したHSP60を含有する溶液を固液分離手段に供する。固液分離手段に供した後には、液相中にHSP60が分離される。ここで固液分離手段としては、HSP60を含有する液相とスフェロプラストに含まれる他の成分とに分離できるものであればよい。固液分離手段としては、例えば、遠心分離、塩析、濾過、吸着、電気泳動クロマトグラフィー等が挙げられ、これら手段を1種以上用いることができる。例えば、遊離したHSP60を含有する溶液を3000〜10000rpmで15〜60分間、遠心分離に供し、スフェロプラスト菌体を沈下させる一方、HSP60を含有する上清(液相に相当する)を分離することができる。

0025

本発明においては、HSP60を含有する液相をさらにタンパク質精製手段に供することで、夾雑物を除去し、HSP60の純度を高めることができる。タンパク質精製手段としては、一般的にタンパク質精製のために用いられる方法であってよく、例えば、遠心分離、濾過、吸着、電気泳動、クロマトグラフィー等が挙げられ、これら手段を1種以上用いることができる。例えば、HSP60を含有する液相を、10000〜40000rpmで1〜4時間、遠心分離に供することで、沈査を除去し、液相を濃縮することで、HSP60の純度を高める。あるいは、遠心分離の回転数によっては、遠心分離後、上清を除去し、沈査を濃縮することで、HSP60の純度を高める場合もある。

0026

以上のように、本発明に係る分離方法によれば、細菌のペリプラズムからHSP60を効率良く分離することができる。分離したHSP60は菌体内に存在する場合と同様の機能を有する未変性のものである。本発明に係る分離方法で得られたHSP60の活性や純度は、例えば、吸光度測定法蛍光光度測定法酵素免疫測定法(EIA)等によって、測定することができる。

0027

上述したように、HSP60は細菌の他に、ヒトを含めた真核生物まで存在することが判っている。本発明に係る分離方法で得られたHSP60は、医療産業等の様々な分野で利用できる可能性が高い。

0028

従来、細胞膜を壊さずにペリプラズムに存在するタンパク質を分離する手段としては、先ず菌体をそのまま浸透圧ショックに曝し、細胞壁を通って外液に出てくるタンパク質を分離する方法がほとんどであった(上記非特許文献1及び2、並びにSusanna Pajuら, 「FEMS Microbiology Letters」, 2000年, 第182巻, p.231-235及びShinjiro Tachibanaら, 「FEMS Microbiology Letters」, 2003年, 第218巻, p.345-349)。しかしながら、この方法では、小さな分子のタンパク質しか外液に出てこず、収量も少なかった。

0029

また、別の方法として、菌体の細胞壁を細胞壁分解酵素で溶解することでスフェロプラストやプロトプラストとし、その外液に放出されるペリプラズム由来タンパク質を分離する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、細胞壁分解酵素が残存するという欠点があるため、ほとんど用いられていなかった。

0030

さらに、スフェロプラストには、遊離せずに細胞膜に結合したままのペリプラズム由来タンパク質が存在するということが考慮されてこなかった。

0031

一方、本発明では、スフェロプラストの形成に使用した細胞壁分解酵素液からスフェロプラストが破砕しない濃度の塩溶液にスフェロプラストを移し、その時点で細胞膜に結合しているHSP60を含めたペリプラズム由来のタンパク質を、撹拌処理で細胞膜より遊離させる。本発明によれば、細胞壁分解酵素も細胞質内タンパク質も含まず、且つペリプラズム由来タンパク質を大量に含有する外液を得ることができ、HSP60を効率よく分離することができる。

0032

さらに、大腸菌のHSP60(「GroEL」とも呼ばれる)は、HSP10(「GroES」とも呼ばれる)と組み合わさって機能することが知られている(上記非特許文献8)。この複合体は、GroEと呼ばれる。従って、細菌では、HSP10は、HSP60同様にペリプラズムに存在すると考えられる。そこで、上記に説明した本発明に係る分離方法に準じて、HSP10も分離できるものと考えられる。

0033

以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕大腸菌におけるHSP60のペリプラズム局在の確認及び分離精製
本実施例では、大腸菌において、HSP60がペリプラズムに局在することの確認及び分離精製を行った。

0034

まず、大腸菌E.coli B株を、PYG培地(peptone 1%, yeast extract 0.5%, glucose 1%, NaCl 0.5%)50mlにおいて45℃で6時間培養した(108細胞/ml)。培養後、菌体をPBSで2回洗浄した。

0035

次いで、洗浄後の菌体を、0.6Mショ糖-リゾチーム(200μg/ml)含有0.1Mリン酸塩緩衝液(pH6.8)に懸濁し、37℃で2時間処理した。スフェロプラストになった菌体は沈下するので、デカンテーションでリゾチーム液を捨てた。更に、1.75%NaCl溶液1mlを静かに加え、すぐにデカンテーションで溶液を捨てた。そのスフェロプラスト菌体に1.75%NaCl溶液20mlを加えて懸濁し、THERMO-MIXER(MODEL TM-100, TOKYO THERMONICS CO.,LTD Japan)で30秒間撹拌した。撹拌後、スフェロプラスト菌体懸濁液を3000rpmで15分間遠心分離に供し、スフェロプラスト菌体を沈下させた。上清を取り出し、更に10000rpmで1時間遠心分離に供することで沈査を除去し、さらに上清を濃縮した。なお上清の濃縮では、15mlの上清液透析膜チューブに入れ、一晩、蒸留水透析した後、Spectra/Gel Absorbent(SPECTRUM LABORATORIESINC. USA & CANADA社製)に埋めて、脱水し、濃縮した。

0036

撹拌前後のスフェロプラスト全菌体サンプル及び撹拌後の上清の濃縮サンプルをLaemmliの方法(Laemmli, U.K. 1970. Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophase T4. Nature, 227:680-685)に準じたSpearとRoizmanの方法(Spear, P.G. & Roizman, B. 1972. Proteins specified by herpes simplex virus. V. Purification and structural proteins of the herpes virion. Journal of virology, 9, 143-159)を用いて、SDS-PAGEに供した。

0037

図1にはリゾチーム処理前の菌体、及びリゾチーム処理後のスフェロプラスト菌体の電子顕微鏡写真を示す。また図2には、リゾチーム処理前の菌体懸濁液及びリゾチーム処理後のスフェロプラスト菌体懸濁液の写真を示す。

0038

図1及び図2に示すように、通常の桿菌状の菌体がリゾチーム処理によって完全に球菌状になり、菌体が破砕されない状態で沈下することが判る。

0039

一方、SDS-PAGEの結果を図3に示す。図3において、各レーンは以下の通りである。1レーン:撹拌前のスフェロプラスト全菌体サンプル、2レーン:撹拌後のスフェロプラスト全菌体サンプル、3レーン:撹拌後の上清の濃縮サンプル。また、図3において矢印で示すバンドがHSP60である。

0040

図3に示すように、撹拌後のスフェロプラスト全菌体サンプルではHSP60がほとんど消失し、撹拌後の上清の濃縮サンプルにHSP60の濃厚なバンドが見られることから、HSP60がペリプラズムに存在することが示唆された。

0041

さらに、抗HSP60モノクローナル抗体Ab-2(Clone LK2)(LAB VISION社製)を用いて、Maeno, N.らの方法(Nobuaki Maenoら, 「The Journal of Rheumatology」, 2001年, 第28巻, p.860-864)に従い、上述の撹拌後の上清の濃縮サンプルをウエスタンブロッティング分析に供した。結果を図4に示す。

0042

図4から判るように、図3の矢印で示されるバンドがHSP60であることが確認され、HSP60がペリプラズムに局在することが示唆された。

0043

〔実施例2〕HSP60が熱ショックにより誘導されることの確認
本実施例では、大腸菌のHSP60が熱ショックにより誘導されることを確認した。大腸菌 E.coli B株を、30℃又は45℃で培養したこと以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法で撹拌後の上清の濃縮サンプルを調製し、SDS-PAGEに供した。結果を図5に示す。

0044

図5において、各レーンは以下の通りである。1レーン:30℃で培養した大腸菌E.coli B株由来のサンプル、2レーン:45℃で培養した大腸菌 E.coli B株由来のサンプル。また、図5において矢印で示すバンドがHSP60である。

0045

図5から判るように、HSP60は、大腸菌のペリプラズム内において、30℃培養と比較して45℃培養で著しく増加した。

0046

〔実施例3〕超遠心分離機を用いたHSP60の濃縮
本発明者は、既にスパイロソームが細菌のペリプラズム内に存在することを見出し、その分離精製方法に関して出願した(特願2005-224021号)。そこで、スパイロソームとHSP60とを個別に分離精製できるか否かを検討した。

0047

大腸菌E.coli B株を37℃で培養したこと以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法でリゾチーム処理、撹拌処理を行った。スフェロプラスト菌体沈下後の上清を、40000rpmで2時間、遠心分離に供した(以下、「1回目の遠心分離」という)。また、1回目の遠心分離後の上清を40000rpmで2時間、遠心分離に供した(以下、「2回目の遠心分離」という)。さらに、2回目の遠心分離後の上清を40000rpmで7時間、遠心分離に供した(以下、「3回目の遠心分離」という)。次いで、3回目の遠心分離後の上清を、実施例1に記載の方法と同様の方法で濃縮した。

0048

1回目の遠心分離後の沈査、2回目の遠心分離後の沈査、3回目の遠心分離後の沈査及び3回目の遠心分離後の上清の濃縮液を、SDS-PAGEに供した。結果を図6に示す。

0049

図6において、各レーンは以下の通りである。1レーン:1回目の遠心分離後の沈査、2レーン:2回目の遠心分離後の沈査、3レーン:3回目の遠心分離後の沈査、4レーン:3回目の遠心分離後の上清の濃縮液。また、図6においてHSP60と示すバンドがHSP60である。さらに、SPIと示すバンドがスパイロソームである。

0050

図6から判るように、超遠心分離機を用いて遠心分離を行うことで、HSP60とスパイロソームとを個別に分離することができる。

0051

〔実施例4〕HSP60のネガティブ染色による電子顕微鏡観察
本実施例では、HSP60のネガティブ染色による電子顕微鏡観察を行った。

0052

大腸菌E.coli B株を37℃で培養したこと以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法でリゾチーム処理、撹拌処理を行った。撹拌後、スフェロプラスト菌体懸濁液を3000rpmで15分間遠心分離に供し、スフェロプラスト菌体を沈下させた。上清を取り出し、更に10000rpmで1時間遠心分離に供した後、得られた上清をさらに40000rpmで2時間遠心分離に供した。

0053

遠心分離後に得られた沈査を、1mlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁し、それを試料として1%酢酸ウランを用いてネガティブ染色を行った。次いで、ネガティブ染色した試料を、日立H-300型電子顕微鏡により、加速電圧75kVで観察した。結果を図7に示す。

0054

図7において、上段の写真は、試料全体電子顕微鏡像で、四角で囲んだ箇所は、典型的なHSP60の形態が観察される部分を示す。中段及び下段の写真は、典型的なHSP60の形態が観察される部分の拡大図で、正面と側面の像を示す。なお、HSP60の分子的構造については、従来において既に発表されており、電子顕微鏡でも確認されている(上記非特許文献6〜8)。図7で示す電子顕微鏡像は、非特許文献6(第697頁, Fig. 2 B及びC)のHSP60の電子顕微鏡像と形態及びサイズがほとんど一致し、HSP60であることを確認した。

図面の簡単な説明

0055

図1は、実施例1におけるリゾチーム処理前の菌体及びリゾチーム処理後のスフェロプラスト菌体の電子顕微鏡写真を示す。
図2は、実施例1におけるリゾチーム処理前の菌体懸濁液及びリゾチーム処理後のスフェロプラスト菌体懸濁液の写真を示す。
図3は、実施例1における撹拌前後のスフェロプラスト全菌体サンプル及び撹拌後の上清の濃縮サンプルのSDS-PAGEの結果を示す。
図4は、実施例1における撹拌後の上清の濃縮サンプルのウエスタンブロッティング分析の結果を示す。
図5は、実施例2における30℃で培養した大腸菌E.coli B株由来のサンプル及び45℃で培養した大腸菌 E.coli B株由来のサンプルのSDS-PAGEの結果を示す。
図6は、実施例3における1回目の遠心分離後の沈査、2回目の遠心分離後の沈査、3回目の遠心分離後の沈査及び3回目の遠心分離後の上清の濃縮液のSDS-PAGEの結果を示す。
図7は、実施例4におけるHSP60のネガティブ染色による電子顕微鏡像を示す。

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