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課題
解決手段
概要
背景
近年、テニス、スカッシュ、バドミントン等のラケットスポーツ分野において、安価で耐久性に優れるという利点から、動物性繊維製ガット(所謂ナチュラルガット)に代わって合成繊維性ガットが一般に使用されている。
合成繊維製ガットに求められる要求特性のひとつに高反発化がある。近年では競技者技術の向上に伴いボールおよびシャトルの発射スピードが飛躍的に向上している。競技者のプレースタイルにもよるが、特にバドミントンの分野では、シャトル等のガットへの衝突から発射されるまでのレスポンスを向上させるため、高反発、所謂弾きの良いガットが求められている。
従来技術の中で、上述の要求特性を満足させるガットに関する検討が、芯糸素材、側糸素材、被覆層素材、および、応力−歪特性等、様々な側面から検討されている。
なかでも、本発明の如き応力−歪特性に着目した技術が特許文献1に記載されている。特許文献1には、「ポリアミド系の合成繊維よりなり、歪率が10%のときの張力が28〜60kgf/mm2のラケット用ガット」とすることで、反発力に優れたガットが得られると記載されている。すなわち、特許文献1記載の技術は、ラケットへ張設する前の伸張初期の特性に着目したものであり、10%伸張時の張力が高いほど反発力に優れたガットが得られることを示唆している。
特許文献1記載の方法を用いた場合、確かに通常ガットと比べて反発力に勝るガットは得られるものの、伸張初期の張力が高いためにラケットへの張設が難しくなるという問題点を有していた。
特開昭62−201166号公報
概要
本発明は、テニス、スカッシュ、バドミントン用途に好適なガットであって、高反発であり、かつラケットへの張設が容易なガットを提供することを課題とする。応力−歪曲線において、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の張力が8.75kgf/mm2以上であることを特徴とするガット。さらには、10%伸張時の張力が10〜26kgf/mm2であること、29.4kgf/mm2の張力を付与した際の伸びが11〜15%であること、応力−歪曲線において、41.3kgf/mm2時の伸びが12〜17%であることが好ましい。なし
目的
本発明は、テニス、スカッシュ、バドミントン用途に好適なガットであって、高反発であり、かつラケットへの張設が容易なガットを提供することを課題とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
近年、テニス、スカッシュ、バドミントン等のラケットスポーツ分野において、安価で耐久性に優れるという利点から、動物性繊維製ガット(所謂ナチュラルガット)に代わって合成繊維性ガットが一般に使用されている。
0003
合成繊維製ガットに求められる要求特性のひとつに高反発化がある。近年では競技者技術の向上に伴いボールおよびシャトルの発射スピードが飛躍的に向上している。競技者のプレースタイルにもよるが、特にバドミントンの分野では、シャトル等のガットへの衝突から発射されるまでのレスポンスを向上させるため、高反発、所謂弾きの良いガットが求められている。
0005
なかでも、本発明の如き応力−歪特性に着目した技術が特許文献1に記載されている。特許文献1には、「ポリアミド系の合成繊維よりなり、歪率が10%のときの張力が28〜60kgf/mm2のラケット用ガット」とすることで、反発力に優れたガットが得られると記載されている。すなわち、特許文献1記載の技術は、ラケットへ張設する前の伸張初期の特性に着目したものであり、10%伸張時の張力が高いほど反発力に優れたガットが得られることを示唆している。
0006
特許文献1記載の方法を用いた場合、確かに通常ガットと比べて反発力に勝るガットは得られるものの、伸張初期の張力が高いためにラケットへの張設が難しくなるという問題点を有していた。
特開昭62−201166号公報
発明が解決しようとする課題
0007
本発明は、テニス、スカッシュ、バドミントン用途に好適なガットであって、高反発であり、かつラケットへの張設が容易なガットを提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
0008
本発明者らが従来技術の背景に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、応力−歪曲線において、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の張力が8.75kgf/mm2以上であることを特徴とするガットが前述の課題を達成することを見出した。また、本発明のガットは、10%伸張時の張力が10〜26kgf/mm2であること、29.4kgf/mm2の張力を付与した際の伸びが11〜15%であること、応力−歪曲線において、41.3kgf/mm2時の伸びが12〜17%であることが好ましい形態である。
発明の効果
発明を実施するための最良の形態
0010
本発明のガット構造には特に限定は無く、通常知られたガット構造(例えば、芯糸+側糸+被覆層)を採用することができる。このとき、芯糸および/または側糸は接着剤等により含浸されていても良く、側糸と芯糸とが接着剤で結合されていても良い。また、芯糸、および、側糸の形態としてはマルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸、スリットヤーン等、公知の繊維を用いることができるが、製造コストの観点からマルチフィラメントを用いることが好ましい。また、ガットの太さを調整するために、用いる繊維の太さや加工形態は自由に変更できるし、側糸の外層に繊維や樹脂からなる層を有してもよい。
0011
本発明のガットに用いるフィラメントには、本発明の効果を損ねない程度、具体的にはフィラメントと添加剤の合計量に対して5重量%以下であれば、異種ポリマや各種の耐光剤、顔料、難燃剤、艶消剤、滑剤、顔料等の添加剤を含有しても良い。また、フィラメントの単糸断面は、丸断面以外にも、異型断面であっても良く、異形断面形状としては扁平型、三角型、C型、Y型、団子型、中空型、あるいはそれらの組合せ等を例示することができるがこれに限られるものではない。
0012
本発明のガットに用いる芯糸、側糸に用いる素材には特に限定は無く、本発明を満足する範囲であれば、脂肪族および/または芳香族ポリエステル、脂肪族および/または芳香族ナイロン、ポリオレフィン、等の通常知られた樹脂を使用することができる。しかしながら、耐久性の観点からはポリアミド系樹脂、なかでも、加工性、経済性、タフネスに優れたナイロン66を使用することが好ましい。ナイロン66を用いることで安価にガットを製造することができるばかりか、95モル%以上をヘキサメチレンアジパミド単位とすることで高強力、且つ、耐磨耗性に優れたガットが得られる。
0013
ナイロン66を用いる場合、共重合成分は5モル%未満であれば含有しても良く、ヘキサメチレンアジパミド単位が95モル%未満の場合には、ナイロン66マルチフィラメント中の結晶性が低下し、高強力なガットを得ることが困難となる。共重合成分としては、ε‐カプラミド、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタラミド、テトラメチレンテレフタラミド、キシリレンフタラミド等が例示できる。
0014
また、ナイロン66は銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有することが好ましく、さらに好ましい範囲は50〜100ppmである。銅金属量を上記範囲とすることで実使用において優れた耐候性、耐熱性を発現する。銅化合物としては、沃化銅、塩化銅、臭化銅等を例示することができるが、これに限られるものではなく、従来知られた無機及び有機銅塩や銅金属単体を用いることができる。また、ナイロン66フィラメントは、銅化合物に加えてアミン化合物、メルカプト化合物、リン系化合物、ヒンダードフェノール化合物等、他の耐熱剤を含有してもよい。なお銅化合物量の測定方法は特に限定されるものではなく、例えば、日本電子(株)製JXA−8200を用いた、検量線によるEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)法で測定すればよい。
0015
ナイロン66フィラメントの硫酸相対粘度は3〜5.5が好ましく、より好ましくは3.5〜5である。硫酸相対粘度が3未満の場合には、本発明で使用するガット用途に求められる強度のナイロン66フィラメントを安定して得ることができない。硫酸相対粘度が5.5を超える場合には粘度が高すぎるため、製糸性良くナイロン66フィラメントを得ることが困難である。
0016
本発明のガットに使用するフィラメントの強度は9.5〜12cN/dtexが好ましい。通常ガットに用いられるフィラメントの強度は高々9cN/dtexである。9.5cN/dtexを超える強度を有するフィラメントを用いたラケット用ガットは今までに無く、9.5cN/dtex以上のフィラメントを芯糸に配することで、単位断面積当たりの強力が高く、細ゲージ化が可能なガットを得ることが可能となる。本来、フィラメントの強度に上限は無いが、各素材によって生産性良くフィラメントを得られる強度に上限があり、例えばナイロン66フィラメントの場合では12cN/dtexを超えるフィラメントを生産性良く得ることは現状技術では困難である。
0017
本発明のガットに使用するフィラメントの破断伸度は16〜24%が好ましく、より好ましくは16〜22%である。破断伸度が16%未満の場合には、ガットをラケットに張設する際に遊び部分が小さく、張設の際に与えた張力と実張力が異なるという問題や、ラケットに張設する際に結び難いという問題が発生する。また、破断伸度が24%を超える場合には打球の際の振動が大きく、打感に劣るガットとなる可能性がある。
0018
本発明のガットに使用するフィラメントは単糸繊度が1〜20dtexであることが好ましい。単糸繊度が1dtex未満では単糸繊度が細過ぎるため単糸当たりの強力が不足し、ガット製造工程において工程通過性が悪化してしまう。また、単糸繊度が20dtexを超える場合にはガットの耐久性が低下してしまう恐れがある。即ち単糸繊度が20dtexを超える場合には、打球の際に各単糸の屈曲を受けた部分の外側の伸びおよび内側の縮みが大きいため、ガットの疲労性が悪化する懸念がある。単糸繊度は1〜15dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10dtexである。
0019
本発明のガットに使用するフィラメントの総繊度は420〜3600dtexが好ましい。総繊度が420dtex未満の場合にはフィラメント製造時の生産性が悪くコストが上昇するという問題を有しており、総繊度が3600dtexを超える場合には製糸性良くフィラメントを得ることが困難となる。
0020
ガットに用いるフィラメントにN66フィラメントを用いる場合の非晶分子配向度(fa)は0.72〜0.9であることが好ましい。非晶分子配向度(fa)はナイロン66フィラメントにおける結晶分子を結ぶタイ分子の配向性を示しており、非晶分子配向度(fa)が0.7未満のナイロン66フィラメントをガットに用いた場合にはナイロン66フィラメントにおけるタイ分子の配向性が悪いため、高強力なガットを得ることが困難となる。また非晶分子配高度が0.9を超えるナイロン66フィラメントを製糸性よく得ることは現状技術では困難である。
0021
非晶分子配向度(fa)は、複屈折、密度から求めた結晶化度、及び結晶配向度を用い、下記R.S.Stein et al,J.Polymer Sci.,21,381,(1956)の式から求めることができる。
Δ=XfcΔ0c+(1−X)faΔ0a
ここで、Δ=複屈折、X:結晶化度、fc:結晶配向度、fa:非晶分子配向度、Δ0c:結晶部の固有複屈折、Δ0a:非晶部の固有複屈折、(Δ0c=Δ0a=0.73)
尚、複屈折率は、日本工学工業(株)製POH型偏光顕微鏡を用いてベレックコンペンセータ法により、密度は、軽液にトルエン、重液に四塩化炭素を用いた密度勾配管法によって25℃で測定できる。結晶化度は、次式を用いて計算するとよい。
結晶化度(X)={dc(d−da)}/{d(dc−da)}
この時、dcは結晶密度、daは非晶密度、dは試料の密度を表す。
0022
また、結晶配向度(fc)は、理学電気(株)製X線発生装置(4036A2型)を用い、CuKα(Niフィルターを使用)を線源として測定した(出力35KV、15mA、スリット2mmφ)。2Θ=20.6°付近に観察される(100)面を円周方向にスキャンして得られた強度分布の半値幅H°から下記の式を用いて求めればよい。
fc=(180°−H°)/180°
本発明のガットは使用するコーティング樹脂にも特に限定は無い。ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂は勿論のこと、天然樹脂を使用しても良く、異種ポリマや各種の耐光剤、顔料、艶消剤、滑剤、顔料等の添加剤を含有しても良い。
0023
本発明はガット径により効果を失うものではなく、用途に応じて適宜太さを変更すれば良い。
0024
本発明のガット芯糸にマルチフィラメントを使用する場合、芯糸は撚りを施してあることが好ましい。撚りを施すことでマルチフィラメントの収束性が向上し工程通過性が安定する。本発明の範囲を損なわない範囲であれば撚り数に特に限定は無く、例えば10〜1000T/mの範囲を例示できる。
0025
以下にナイロン66マルチフィラメントを例に取り、ガット用フィラメントの製造方法の一例を示すが製造方法はこれに限られる物ではない。
0026
ナイロン66マルチフィラメントは、溶融紡糸した糸条を冷却固化後に油剤を付与し、ローラ間で糸条の延伸を行うことで得られる。なお、高強度繊維を得るためには3〜5段の多段延伸法を採用することが好ましい。以下の説明は3段延伸法で説明する。
0027
溶融紡糸に供するポリマの水分率としては0〜200ppmであることが好ましい。水分率の測定方法は通常知られた方法で測定すればよく、例えば、平沼産業(株)製カールフィッシャー水分計(AQ−2100)を用いた電量滴定法で測定することができる。
0028
紡糸温度は、共重合成分の有無等によって変更させることができるものの、通常は250〜300℃に設定される。
0029
紡糸口金の直下は、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜100cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲み、紡出糸条を200〜280℃の高温雰囲気中を通過させることが好ましい形態である。紡出糸条を直ちに冷却せず、上記加熱筒および/または断熱筒で囲まれた高温雰囲気中を通して徐冷することにより、紡出された糸条の配向が緩和され、単繊維間の分子配向均一性を高めることができるため、ナイロン66マルチフィラメントの高強度化が可能となる。一方、高温雰囲気中を通過させることなく直ちに冷却すると、未延伸糸の配向が高まり、かつ単繊維間の配向度分布が大きくなる。かかる未延伸糸条を熱延伸すると、結果として高強度で耐熱性に優れたナイロン66マルチフィラメントが得られない可能性がある。
0030
高温雰囲気中を通過した未延伸糸条は、次いで10〜100℃、好ましくは10〜75℃の風を吹きつけて冷却固化することが好ましい。冷却風が10℃未満の場合には通常装置とは別に大型の冷却装置が必要となるため好ましくない。また、冷却風が100℃を超える場合には紡糸時の単繊維揺れが大きくなるため、単繊維同士の衝突等が発生し製糸性良く繊維を製造することが困難となる。空冷装置は横吹き出しタイプでも良いし、環状型吹きだしタイプを用いても良い。
0032
油剤を付与された未延伸糸条は、引取りローラ(1FR)に捲回して引き取る。1FRの表面速度、即ち引取り速度は300m/分以上が好ましく、さらに好ましくは500m/分以上である。引取り速度が300m/分未満では生産効率が低いため採用し難い。引取り速度に特に上限は無いものの、工業的に安定して生産する場合には引取り速度は2000m/分以下が好ましい。
0033
上記引取り速度で引き取られた未延伸糸条は一旦巻き取った後、若しくは一旦巻き取ることなく連続して延伸する。2ケのローラを1ユニットとするネルソン型ローラを、給糸ローラ(2FR)、第1延伸ローラ(1DR)、第2延伸ローラ(2DR)、第3延伸ローラ(3DR)、および弛緩ローラ(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して延伸熱処理を行う。通常、1FRと2FR間では糸条を集束させるためにストレッチを行う。好ましいストレッチ率は1〜7%、さらに好ましくは1〜5%の範囲である。延伸熱処理を施された糸条は巻き取り機にて巻き取られる。
0034
延伸は2FRと1DR間、及び1DRと2DR間、及び2DRと3DR間で行う。この時、2FRと1DR間の延伸において、ドローポイント、即ち延伸により糸条が急激に細化する点が2FR上にないことが好ましい。また、ドローポイントは2FR出口から10cm以内にある事がさらに好ましい。ドローポイントの位置を上述の範囲とすることで、高強度なナイロン66マルチフィラメントを得ることが可能となる。ドローポイントの位置は繊維の配向度に応じて、延伸倍率、ローラ温度、ローラ表面摩擦を変更することで調節することが可能である。
0035
ドローポイントは、レーザードップラー速度計(TSI社製 LS−50M)を用いて2FR上から1DRまでの糸速度を測定し、速度が急激に1DR表面速度近くまで上昇する点をドローポイントとすればよい。
0036
1段目の延伸は2FRと1DR間で行い、2FRの温度は30〜80℃とし、1DRの温度を80〜150℃とし、1段目の延伸倍率は総合延伸倍率の20〜90%が好ましく、さらに20〜50%に設定するとより好ましい。
0037
2段目の延伸は1DRと2DR間で行うが、2DR温度は180〜240℃とし、2段目の延伸倍率は総合延伸倍率の20〜40%が好ましく、さらに20〜30%に設定するとより好ましい。
0038
3段目の延伸は2DRと3DR間で行うが、3DRの温度は180〜250℃とし、3段目の延伸倍率で目的となる総延伸倍率となるように延伸する。
0039
延伸を終えた糸条は3DRとRRとの間で0〜5%の弛緩処理を施した後、巻き取り機にて巻き取られる。弛緩処理により、熱延伸によって生じた歪みを取るだけで無く、延伸によって達成された高配向構造を固定したり、非晶領域の配向を緩和させ熱収縮率を下げたりすることができる。RRは非加熱ローラまたは、160℃以下に加熱したローラを用いる。通常、熱延伸時に加熱された糸条の持ち込む熱によって、RRは加熱の有無にかかわらず90〜150℃の温度となる。
0040
かくして、本発明のガットに用いるフィラメントを得ることができる。
0041
本発明のガットは応力−歪曲線において、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の張力が8.75kgf/mm2以上であることが必須であり、好ましくは9.5kgf/mm2以上である。この要件が従来技術と本発明の最も異なる点である。
0042
ガットは一定張力(例えばバドミントンガットの場合は25〜40ポンド)でラケットに張設される。本発明の29.4kgf/mm2という張力はラケットに張設された後にガットが受ける張力に相当する。応力−歪曲線において、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の応力が8.75kgf/mm2以上である本発明のガットはラケットへ張設した後のモデュラスが高いため、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の応力が8.75kgf/mm2未満である従来のガットと比較して反発力に優れ、結果としてボール、または、シャトルを打った際の球離れが早く、スピーディーな競技を可能とする。従来のガット開発では、ラケット張設後のガット挙動(モデュラス)に着目した技術は無かった。
0043
張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の応力に特に上限はないが、ラケットへの張設のしやすさ、競技時の肘への負担を考慮すると26.5kgf/mm2以下が好ましく、13.3kgf/mm2以下であることがより好ましい。
0044
本発明のガットは10%伸張時の張力が10〜26kgf/mm2であることが好ましい。さらに好ましい10%伸張時の張力として、14〜22kgf/mm2を例示することができる。10%伸張時の張力が10kgf/mm2を下回る場合は張力が低すぎるためラケットへの張設が困難となる可能性がある。一方、10%伸張時の張力が26kgf/mm2を超える場合には、伸張初期の張力が強いために肘へのダメージが大きくなる問題点や、伸張初期の張力が高いためにラケットへの張設が難しくなるという可能性がある。すなわち、本発明技術は特許文献1記載の技術と異なり、ラケットへの張設のしやすさ、および、プレイヤーの要求を満足する反発性を有している。
0045
本発明のガットは29.4kgf/mm2の張力を付与した際の伸びが11〜15%であることが好ましい。29.4kgf/mm2張力付与時、即ち、一般的なラケットへの張設張力下での伸びが11%未満の場合には張設時のガットの伸びが少ないため作業性が悪化する可能性がある。また、29.4kgf/mm2の張力を付与した際の伸びが15%を超える場合にはラケットへの張設時に伸びすぎるため、張設張力にバラツキが生じる可能性や、本来設計されたガット径よりも細くなる可能性がある。
0046
本発明のガットは応力−歪曲線において、41.3kgf/mm2張力時の伸びが12〜17%であることが好ましく、より好ましい範囲は13〜16%である。応力−歪曲線における41.3kgf/mm2張力時の伸びが17%を超えるガットは、張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸長時の応力が本発明の範囲から外れる可能性があるばかりか、伸びが大きすぎるためにガットへの張設が困難になる可能性を有している。一方、12%未満のガットは伸びが小さいためにラケットへの張設が困難になる可能性がある。
0047
本発明のガットは、本発明者らがガット特性に関しての種々の検討をおこなった結果見出されたものであり、ガット特性を特定の範囲とすることで、今までに成し得なかった高反発効果を達成した、従来技術とは全く思想を異とするものである。
0048
次に、本発明のラケット用ガットの製造方法についてバトミントン用ガットを例に取り示すが、ラケット用ガットの製造方法はこれに限られるものではない。
0049
前述の方法で得られたナイロン66マルチフィラメントに撚りを施し芯糸を得る。この時、芯糸として必要な繊度となるように使用するナイロン66マルチフィラメントの本数を調整し、必要に応じて合糸をしながら撚りを施せばよい。この時芯糸を接着剤等で含浸しても良いが、ガットの耐久性を向上させるためにも芯糸は接着剤等で含浸しないほうが好ましい。
0050
得られた芯糸に側糸を配し、樹脂コーティングを施す。芯糸に側糸を配する際には、必要に応じて側糸を接着剤で固定することも可能である。使用する側糸は限定されるものではなく、複数種の繊維を使用しても良いし、使用する側糸は必要とするガットの太さに応じて複数層となるように配置しても良い。また側糸を配する方法としてはブレイディング加工やワインディング加工等、公知の方法を採用できる。また、樹脂被覆の方法としては、ディッピング法、溶融コーティング法等を例示することができる。
0051
本発明の特性を有するガットは、樹脂被覆後に張力を付与した状態で施される熱セット時の温度および張力を制御すること、ならびに熱セット後に弛緩処理を施すことにより得られる。詳しくは、現在、特殊な場合を除き通常採用されている熱セット条件は温度が150〜190℃、ローラ間での延伸率が0〜15%であるが、これよりも高温高張力で熱セットを施し、さらに弛緩処理を施すことで本発明の如き特徴を有したガットを得ることができる。この時の熱セット温度としては、フィラメントの融点−50℃〜フィラメントの融点−10℃が好ましい。またローラ間での延伸率は10〜30%が好ましく、さらに15〜30がより好ましい。また弛緩処理としては弛緩率が0.5%〜10%であることが好ましく、さらに温度はフィラメントの融点−50℃〜フィラメントの融点−10℃で行うことがより好ましい。また、現在通常のガットにおいて使用されている強度を有するフィラメントを芯糸に適用した場合には高温高張力熱セット時に繊維が劣化または破断する恐れがあるため、前述の如き9.5cN/dtexを超えるフィラメント、なかでもタフネスに優れるナイロン66フィラメントを使用することが好ましい。
0052
かくして本発明のガットを得ることができる。
0053
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明する。明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
0056
[繊維の強度、伸度]:JIS L1013の方法で測定した。オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で測定した。各サンプルについて測定を5回行い、その平均値を求めた。
0057
[非晶分子配向度]:
非晶分子配向度(fa)は、複屈折、密度から求めた結晶化度、及び結晶配向度を用い、下記R.S.Stein et al,J.Polymer Sci.,21,381,(1956)の式から求めることができ、2回の測定の平均値を求めた。
Δ=XfcΔ0c+(1−X)faΔ0a
ここで、Δ=複屈折、X:結晶化度、fc:結晶配向度、fa:非晶分子配向度、Δ0c:結晶部の固有複屈折、Δ0a:非晶部の固有複屈折、(Δ0c=Δ0a=0.73)
複屈折率は、日本工学工業(株)製POH型偏光顕微鏡を用いてベレックコンペンセータ法により測定して得られた3回の試行の平均値を用いた。
0058
密度は、軽液にトルエン、重液に四塩化炭素を用いた密度勾配管法によって25℃で測定して得られた3回の試行の平均値を用いた。
0059
結晶化度は、次式を用いて計算した。
結晶化度(X)={dc(d−da)}/{d(dc−da)}
この時、dcは結晶密度(=1.24g/cm3)、daは非晶密度(=1.09g/cm3)、dは試料の密度。
0060
結晶配向度(fc)は、理学電気(株)製X線発生装置(4036A2型)を用い、CuKα(Niフィルターを使用)を線源として測定した(出力35KV、15mA、スリット2mmφ)。2Θ=20.6°付近に観察される(100)面を円周方向にスキャンして得られた強度分布の半値幅H°から下記の式を用いて求めればよい。
fc=(180°−H°)/180°
0061
[モノフィラメントの直線強力]:
JIS L1013の方法で測定した。オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で測定した。各サンプルについて測定を5回行い、その平均値を求めた。
0062
[ガット生産性]:連続生産を行った際の状況から2段階で評価した。
◎:長時間の安定生産が可能。0.05回/1万m未満
○:若干の糸切れが発生。0.05〜0.5回/1万m。
△:糸切れが多発。0.5回/1万mを超える。
0063
[ガット強力]:オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で測定した。また、その時得られる応力—歪曲線曲線より張力29.4kgf/mm2をゼロ点とした時の2%伸張時の張力、10%伸長時の張力を求めた。各サンプルについて測定を5回行い、その平均値を求めた。
0064
[ガット伸度]:オリエンテック社製テンシロン引張り試験機を用い、試長250mm、引張速度300mm/minの条件で応力—歪曲線を描画し、その曲線より29.4kgf/mm2の張力を付与した際の伸び、41.3kgf/mm2時の伸びを求めた。各サンプルについて測定を5回行い、その平均値を求めた。
0065
[モニター試験]:競技歴11年の競技者1名による実打試験において、25ポンドの張力でガットを張設したラケット(ヨネックス株式会社製 NS7000)を用いて1時間の実打試験をおこなった。通常販売品に近い比較例1のガット使用時の反発力・打球感を3点とし下記5段階で評価した。
5:特に優れる、4:優れる、3:普通、2:劣る、1:特に劣る
0066
(製造例)
[フィラメントAの製造]
80%ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート水溶液を重合缶に仕込み、300℃に加熱し重合を行い、相対粘度3.9となるように重合時間を調節した。得られたポリマーをペレット化し、直径2.5mm、長さ4.0mmのナイロン66ペレットを得た。得られたナイロン66ペレットをエクストルーダー型紡糸機を用いて280℃で溶融紡糸した。溶融ポリマはギヤポンプにて繊度が1050dtexとなるように計量した後、紡糸パック中で20μの金属不織布フィルターで濾過し、孔径0.3φで210ホールの口金から紡出した。口金面より3cm下には15cmの加熱筒および15cmの断熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度が250℃となるように加熱した。ここで筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
0068
油剤を付与された未延伸糸条を2本合糸した後、表面速度370m/分の速度で回転する1FRに捲回して引取った後5.95倍で延伸をおこなった。引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りローラと2FRとの間で5%のストレッチをかけた後、引き続いて3段熱延伸を行ない2200m/分の速度で巻き取った。1FRは非加熱、2FRは60℃、1DRは115℃、2DRは200℃、3DRは210℃とし、RRは非加熱とした。ローラへの糸条の捲周回数はそれぞれ、3回、4回、4回、4回、5回、4回とした。RRと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。交絡は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に2kg/cm2の高圧空気を噴射することにより行い、ナイロン66マルチフィラメントを得1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の40%、2段目の延伸倍率は35%、3段目の延伸倍率を25%に設定して延伸した。得られた繊維の物性は繊度2100dtex、強度9.8cN/dtex、伸度20%、非晶配向度0.79であった。
0069
[フィラメントBの製造]
80%ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート水溶液を重合缶に仕込み、300℃に加熱し重合を行い、相対粘度3.9となるように重合時間を調節した。得られたポリマーをペレット化し、直径2.5mm、長さ4.0mmのナイロン66ペレットを得た。得られたナイロン66ペレットをエクストルーダー型紡糸機を用いて280℃で溶融紡糸した。溶融ポリマはギヤポンプにて繊度が1050dtexとなるように計量した後、紡糸パック中で20μの金属不織布フィルターで濾過し、孔径0.3φで210ホールの口金から紡出した。口金面より3cm下には15cmの加熱筒および15cmの断熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度が250℃となるように加熱した。ここで筒内雰囲気温度とは、加熱筒長の中央部で、内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
0070
加熱筒の直下には環状吹きだし型チムニーを取付け、糸条に30℃の冷風を35m/分の速度で吹き付け冷却固化した後、糸条に油剤を付与した。
0071
油剤を付与された未延伸糸条を2本合糸した後、表面速度370m/分の速度で回転する1FRに捲回して引取った後5.50倍で延伸をおこなった。引取り糸条は一旦巻き取ることなく連続して該引取りローラと2FRとの間で5%のストレッチをかけた後、引き続いて3段熱延伸を行ない2200m/分の速度で巻き取った。1FRは非加熱、2FRは60℃、1DRは115℃、2DRは200℃、3DRは210℃とし、RRは非加熱とした。ローラへの糸条の捲周回数はそれぞれ、3回、4回、4回、4回、5回、4回とした。RRと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。交絡は、交絡付与装置内で走行糸条に対し略直角方向に2kg/cm2の高圧空気を噴射することにより行い、ナイロン66マルチフィラメントを得1段目の延伸倍率は、総合延伸倍率の40%、2段目の延伸倍率は35%、3段目の延伸倍率を25%に設定して延伸した。得られた繊維の物性は繊度2100dtex、強度9.0cN/dtex、伸度22%、非晶配向度0.70であった。
0072
[フィラメントCの製造]
80%ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート水溶液を重合缶に仕込み、300℃に加熱し重合を行い、相対粘度3.5となるように重合時間を調節した。得られたポリマーをペレット化し、直径2.5mm、長さ4.0mmのナイロン66ペレットを得た。得られたナイロン66ペレットをエクストルーダー型紡糸機により280℃で溶融紡糸した。溶融ポリマはギヤポンプにて計量し、吐出孔径は0.25mmの口金から溶融押出した紡出糸条を直ちに75℃の冷却温水浴中に導いた。冷却後の未延伸糸条を40m/分で引き取った後、一旦巻き取ることなくローラ間で5.5倍にスチーム延伸を行い、平均線径60μmのナイロン66モノフィラメントを紡糸速度200m/分で巻き取った。得られたモノフィラメントの直線強力は2.3Nであった。
0073
(実施例1〜4、比較例1、2)
表1記載のフィラメントに100T/mで撚りを施した芯糸に、前述のフィラメントCを側糸として16本螺旋状に巻きつけるワインディング加工を施しつつ、フェノール系接着溶液(アミランT−100L(東レ(株)製):フェノール:キシレン=15wt%:80wt%:5wt%)で70℃で加熱乾燥し、固定した後に220℃で溶融したアミランT−100L(東レ(株)製)を溶融ディップ法にて被覆した。樹脂固化後のガットを、表1記載の速度差で回転するローラ間に設置した230℃の乾熱炉で熱セットをした後、続けて230℃の乾熱炉で1%の弛緩処理をおこない、直径0.7mmのガットを得た。得られたガットの物性を評価して表1に示した。
0074
0075
表1より明らかなように本発明のガットは、比較例記載の通常の物性を有するガットと比較して非常に反発力に優れたガットである。