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技術 プラズマディスプレイパネルとその製造方法

出願人 パナソニック株式会社
発明者 福井裕介寺内正治辻田卓司
出願日 2007年10月5日 (12年5ヶ月経過) 出願番号 2007-261975
公開日 2008年1月31日 (12年1ヶ月経過) 公開番号 2008-021660
状態 特許登録済
技術分野 アルカリ土類,Al,希土類金属化合物 結晶、結晶のための後処理 ガス放電表示管
主要キーワード 高純度マグネシウム 境界周囲 MgO微粒子 MgO粉体 パルス幅内 焼成温度条件 受光信号波形 酸化マグネシウム微粒子
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (11)

課題

第一に、保護層を改質することにより、低電圧での良好な駆動を実現しつつ、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の両問題を解決する。また第二に、上記各課題の解決に加え、「放電遅れの空間電荷依存性」を抑制することにより、優れた表示性能の発揮が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。

解決手段

純度99.95%以上のマグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)又はマグネシウムのアセチルアセトンを準備し、この水溶液に少量の酸を加えて加水分解させ、MgO前駆体である水酸化マグネシウムゲルを作製する。これを空気中で700℃以上で焼成させ、(100)面及び(111)面で囲まれたNaCl結晶構造を有するMgO微粒子16a、16bを含む粉体を作製する。そして、これを誘電体層7の上に塗布して、MgO微粒子群16を形成する。

概要

背景

プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速の表示や大型化が容易であり、映像表示装置広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPが寿命特性や大型化の面で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。

図10は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図10に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および保護層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。

誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有電流制限機能を有する。
表面層8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電イオン衝突より保護すると共に、二次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該表面層8は二次電子放出特性耐スパッタ性光学透明性に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法(特許文献1、2)や印刷法(特許文献3)で厚み0.5μm〜1μm程度で成膜される。なお表面層8と同様の構成は、誘電体層7及び表示電極対6を保護する他に、二次電子放出特性の確保を目的とした保護層として設けられることもある。

他方、バックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁リブ)13が放電空間15を区画するように、井桁状等のパターン部1231、1232を組み合わせて形成される。誘電体層12表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。

フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11とが放電空間15をおいて互いに直交するように配置され、その各周囲で封着される。この際に内部封止された放電空間15には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガス約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
PDPで画像表示するためには、1フィールド映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。

ところで、近年の電化製品には低電力駆動が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細なPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大するので、書込放電確実性を上げるために動作電圧が高くなる問題が生じる。
ここで、従来のPDPにおいては以下の諸問題が存在する。
第一の問題として、表示電極へのパルス印加時において、パルス立ち上がりから放電開始するまでの「放電遅れ」が顕在化する問題がある。PDPを含めた近年のディスプレイ分野では、画素が高精細となり、走査線数が増加する傾向にある。例えばフルハイビジョンTVでは、従来のNTSC方式のTVと比べて、走査線の数が2倍以上になる。このようにPDPが高精細化すれば、これに伴う高速駆動が求められる。高速駆動のためには、書き込み期間印加するデータパルスパルス幅を狭くする必要がある。そこでデータパルスの幅を狭くすると、パルス幅内で放電が終了する確率が低下し、放電遅れの問題が大きくなる。これにより、本来点灯すべきセルに書き込みが行えず、不灯セルが生じうる不具合がある。

第二の問題として、放電ガス中のXeガス高濃度化すると、放電遅れの温度依存性も大きくなる問題がある。すなわち、Xeガスを多く利用する場合は、特に低温領域において温度依存性が大きくなり、放電遅れの発生が顕著になる。この問題は、実際にはPDPの駆動初期等において重要な問題となる。
第三の問題として、上記放電ガス中のXeガスの高濃度化に伴い、放電遅れの維持パルス数依存性(放電遅れの空間電荷依存性)が増大するといった問題もある。これは、パルス数が少ない場合に放電遅れの発生率が上がる問題であって、例えばサブフィールド中における維持パルス数が比較的少ないと、放電遅れが大きくなる問題として表面化する。

これらの各問題の対策として、MgO保護層結晶構造を変化させたり、或いはMgOにFe、CrおよびVや、Si、Alを添加物として加えることで、MgOの改質を図ることが講じられている。
また特許文献5には、誘電体層上或いは、真空蒸着方法スパッタ法で成膜したMgO膜上に、放電遅れの改善効果が期待できるMgO保護層を気相法で成膜したり、気相法で作製したMgOの粉体を誘電体層上に塗布する構成が開示されている。

また特許文献6のように、MgO保護層に添加するSi量を最適化したり、特許文献7のようにMgO保護層に対し、添加材料をSiに加え、Fe、Ca、Al、Ni、Kのいずれかも併せて添加する構成により、放電遅れの温度依存性(特に低温領域の放電遅れ)を改善する試みがなされている。
特開平 5−234519号公報
特開平 8−287833号公報
特開平 7−296718号公報
特開平10−125237号公報
特開2006−54158号公報
特開2004−134407号公報
特開2004−273452号公報

概要

第一に、保護層を改質することにより、低電圧での良好な駆動を実現しつつ、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の両問題を解決する。また第二に、上記各課題の解決に加え、「放電遅れの空間電荷依存性」を抑制することにより、優れた表示性能の発揮が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。純度99.95%以上のマグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)又はマグネシウムのアセチルアセトンを準備し、この水溶液に少量の酸を加えて加水分解させ、MgO前駆体である水酸化マグネシウムゲルを作製する。これを空気中で700℃以上で焼成させ、(100)面及び(111)面で囲まれたNaCl結晶構造を有するMgO微粒子16a、16bを含む粉体を作製する。そして、これを誘電体層7の上に塗布して、MgO微粒子群16を形成する。

目的

本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであって、保護層を改質することにより、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の両問題を解決することを目的とする。
また、その他の目的として、上記各課題の解決に加え、「放電遅れの空間電荷依存性」を抑制することにより、優れた表示性能の発揮が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
16件

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請求項1

電極誘電体層とが形成された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向に配置され、当該第1及び第2両基板の周囲が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、前記誘電体層の放電空間側の表面には、(100)面及び(111)面とで囲まれた結晶構造を有する酸化マグネシウム微粒子を含む酸化マグネシウム微粒子群が配設されているプラズマディスプレイパネル。

請求項2

酸化マグネシウム微粒子は、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面を有する請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項3

酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(100)面、切頂面に(111)面を有する請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項4

酸化マグネシウム微粒子は、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面を有する請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項5

酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(111)面、切頂面に(100)面を有する請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項6

酸化マグネシウム微粒子は、(100)面に相当する6面及び(111)面に相当する8面を持つ14面体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項7

酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(100)面、切頂面に(111)面を持つ請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項8

酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(111)面、切頂面に(100)面を持つ請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項9

酸化マグネシウム微粒子は、酸化マグネシウム前駆体焼成生成物である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

請求項10

酸化マグネシウム微粒子は、粒径が300nm以上である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

技術分野

0001

本発明は、プラズマディスプレイパネルとその製造方法に関し、特に誘電体層改質された保護層で覆ったプラズマディスプレイパネルとその製造方法に関する。

背景技術

0002

プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、気体放電からの放射を利用した平面表示装置である。高速の表示や大型化が容易であり、映像表示装置広報表示装置などの分野で広く実用化されている。PDPには直流型(DC型)と交流型(AC型)があるが、面放電型AC型PDPが寿命特性や大型化の面で特に高い技術的ポテンシャルを持ち、商品化されている。

0003

図10は、一般的なAC型PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図10に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、フロントパネルガラス3の片面に、走査電極5及び維持電極4を一対とする表示電極対6が複数対にわたり配設され、当該表示電極対6を覆うように、誘電体層7および保護層8が順次積層されてなる。走査電極5、維持電極4は、それぞれ透明電極51、41及びバスライン52、42を積層して構成される。

0004

誘電体層7は、ガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有電流制限機能を有する。
表面層8は、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電イオン衝突より保護すると共に、二次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該表面層8は二次電子放出特性耐スパッタ性光学透明性に優れる酸化マグネシウム(MgO)を用いて、真空蒸着法(特許文献1、2)や印刷法(特許文献3)で厚み0.5μm〜1μm程度で成膜される。なお表面層8と同様の構成は、誘電体層7及び表示電極対6を保護する他に、二次電子放出特性の確保を目的とした保護層として設けられることもある。

0005

他方、バックパネル9は、バックパネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。バックパネルガラス10には、データ電極11を覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁リブ)13が放電空間15を区画するように、井桁状等のパターン部1231、1232を組み合わせて形成される。誘電体層12表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。

0006

フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11とが放電空間15をおいて互いに直交するように配置され、その各周囲で封着される。この際に内部封止された放電空間15には、放電ガスとしてXe−Ne系あるいはXe−He系等の希ガス約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
PDPで画像表示するためには、1フィールド映像を複数のサブフィールド(S.F.)に分割する階調表現方式(例えばフィールド内時分割表示方式)が用いられる。

0007

ところで、近年の電化製品には低電力駆動が望まれており、PDPについても同様の要求がある。高精細なPDPにおいては、放電セルが微細化されて放電セル数も増大するので、書込放電確実性を上げるために動作電圧が高くなる問題が生じる。
ここで、従来のPDPにおいては以下の諸問題が存在する。
第一の問題として、表示電極へのパルス印加時において、パルス立ち上がりから放電開始するまでの「放電遅れ」が顕在化する問題がある。PDPを含めた近年のディスプレイ分野では、画素が高精細となり、走査線数が増加する傾向にある。例えばフルハイビジョンTVでは、従来のNTSC方式のTVと比べて、走査線の数が2倍以上になる。このようにPDPが高精細化すれば、これに伴う高速駆動が求められる。高速駆動のためには、書き込み期間印加するデータパルスパルス幅を狭くする必要がある。そこでデータパルスの幅を狭くすると、パルス幅内で放電が終了する確率が低下し、放電遅れの問題が大きくなる。これにより、本来点灯すべきセルに書き込みが行えず、不灯セルが生じうる不具合がある。

0008

第二の問題として、放電ガス中のXeガス高濃度化すると、放電遅れの温度依存性も大きくなる問題がある。すなわち、Xeガスを多く利用する場合は、特に低温領域において温度依存性が大きくなり、放電遅れの発生が顕著になる。この問題は、実際にはPDPの駆動初期等において重要な問題となる。
第三の問題として、上記放電ガス中のXeガスの高濃度化に伴い、放電遅れの維持パルス数依存性(放電遅れの空間電荷依存性)が増大するといった問題もある。これは、パルス数が少ない場合に放電遅れの発生率が上がる問題であって、例えばサブフィールド中における維持パルス数が比較的少ないと、放電遅れが大きくなる問題として表面化する。

0009

これらの各問題の対策として、MgO保護層結晶構造を変化させたり、或いはMgOにFe、CrおよびVや、Si、Alを添加物として加えることで、MgOの改質を図ることが講じられている。
また特許文献5には、誘電体層上或いは、真空蒸着方法スパッタ法で成膜したMgO膜上に、放電遅れの改善効果が期待できるMgO保護層を気相法で成膜したり、気相法で作製したMgOの粉体を誘電体層上に塗布する構成が開示されている。

0010

また特許文献6のように、MgO保護層に添加するSi量を最適化したり、特許文献7のようにMgO保護層に対し、添加材料をSiに加え、Fe、Ca、Al、Ni、Kのいずれかも併せて添加する構成により、放電遅れの温度依存性(特に低温領域の放電遅れ)を改善する試みがなされている。
特開平 5−234519号公報
特開平 8−287833号公報
特開平 7−296718号公報
特開平10−125237号公報
特開2006−54158号公報
特開2004−134407号公報
特開2004−273452号公報

発明が解決しようとする課題

0011

しかしながら、上記いずれの従来技術に基づいても、「放電遅れ」の発生と、Xeガスを用いた場合に発生する放電遅れの温度依存性(特に低温領域の放電遅れ)の改善、維持パルス数依存性(放電遅れの空間電荷依存性)の改善の諸問題をともに解決することは困難な現状にある。
このように現状のPDPでは、未だいくつかの解決すべき余地が残されている。

0012

本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであって、保護層を改質することにより、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の両問題を解決することを目的とする。
また、その他の目的として、上記各課題の解決に加え、「放電遅れの空間電荷依存性」を抑制することにより、優れた表示性能の発揮が可能なプラズマディスプレイパネルを提供する。

課題を解決するための手段

0013

上記課題を解決するために、本発明は、電極と誘電体層とが形成された第1基板が、放電空間を介して第2基板と対向に配置され、当該第1及び第2両基板の周囲が封着されたプラズマディスプレイパネルであって、前記誘電体層の放電空間側の表面には、(100)面及び(111)面とで囲まれた結晶構造を有する酸化マグネシウム微粒子を含む酸化マグネシウム微粒子群が配設されているものとした。

0014

ここで、酸化マグネシウム微粒子は、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面を有する構成にできる。当該酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(100)面、切頂面に(111)面を有する構成にすることもできる。
さらに、酸化マグネシウム微粒子は、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面を有する構成にすることができる。当該酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(111)面、切頂面に(100)面を有する構成にすることも可能である。

0015

また、本発明の酸化マグネシウム微粒子は、(100)面に相当する6面及び(111)面に相当する8面を持つ14面体とすることができる。当該酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(100)面、切頂面に(111)面を持つ構成とすることも可能である。或いは当該酸化マグネシウム微粒子は、主要面に(111)面、切頂面に(100)面を持つ構成とすることも可能である。

0016

さらに、本発明の酸化マグネシウム微粒子は、酸化マグネシウム前駆体焼成生成物として得ることが可能である。
また、本発明の酸化マグネシウム微粒子は、粒径が300nm以上のものが好適である。

発明の効果

0017

以上の構成を有する本発明によれば、MgO粉体は、(100)面及び(111)面(以下、「特定2種配向面」と称する。)の結晶面を有するMgO微粒子を含んで構成された特徴を有する。
ここで(100)面は、表面自由エネルギーが低い結晶面であるため、低温時及び常温以上の高温時の広い温度域にわたり不純物ガス(水、炭化水素炭酸ガス等)が吸着しにくく、不純物ガスの吸着の影響が特に大きい低温度域においても安定した電子放出特性を有する。一方、(111)面は電子放出が大きく、常温以上の温度範囲で良好な電子放出特性を有する。よって本発明では、(100)面及び(111)面からなる特定2種配向面で囲まれたMgO微粒子を誘電体層の放電空間側に配設することで、各結晶面の特性が相乗的に発揮され、広い温度範囲にわたって安定で良好な電子放出特性を有する。従って本発明のPDPによれば、広い温度範囲で「放電遅れ」を抑制するとともに、「放電遅れの温度依存性」の問題をも抑制し、高い画像表示性能の発揮が期待できるものである。

0018

なお、本発明のMgO粉体には、前記特定2種配向面の他、(100)面、(110)面、(111)面(以下、「特定3種配向面」と称する)の結晶面を有するMgO微粒子が含まれることもある。このMgO微粒子を用いる場合でも、前記特定2種配向面の結晶面を有するMgO微粒子と同様の効果が奏される。また、これに加えて放電遅れの空間電荷依存性の改善効果が期待できるものである。

発明を実施するための最良の形態

0019

以下に、本発明の実施の形態及び実施例を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDP1は保護層周辺の構成を除き、全体的には従来構成(前述の図10)と同様である。

0020

PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。パネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できる。そのほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネルを含めることができる。

0021

図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設された第1基板(フロントパネル2)および第2基板(バックパネル9)に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗下げられる。

0022

ここで、「厚膜」とは、導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また、「薄膜」とは、スパッタリング法イオンプレーティング法電子線蒸着法等を含む、真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。
表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi2O3)または酸化燐(PO4)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。

0023

誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。
誘電体層7の放電空間側の面には、膜厚約1μmの表面層8と、当該表面層8の表面にMgO微粒子群16が配設されている。この表面層8及びMgO微粒子群16の組み合わせにより、誘電体層7に対する保護層17が構成されている。

0024

表面層8は、放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させる目的で配される薄膜であって、耐スパッタ性及び二次電子放出係数γに優れるMgO材料からなる。当該材料は、さらに良好な光学透明性、電気絶縁性を有する。一方、MgO微粒子群16は、図5(a)〜(d)に示すように(100)面及び(111)面からなる特定2種配向面、又は(100)面、(110)面、(111)面からなる特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有する各MgO微粒子16a〜16dで構成されている。このMgO微粒子群16については詳細を後述する。

0025

なお、図1では説明のため、表面層8の表面に配設されるMgO微粒子群16を実際よりも大きく、模式的に表している。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面に、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等のいずれかからなるデータ電極11が、幅100μmで、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設される。そして、各々のデータ電極11を内包するように、バックパネルガラス9の全面にわたって、厚さ30μmの誘電体層12が配設されている。

0026

誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。
隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層12の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各々に対応する蛍光体層14が形成されている。なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。

0027

フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかる放電セル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。放電セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つの放電セルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネル外部において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が接続される。

0028

(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は、駆動時には各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加される。これにより任意の放電セル内で放電が発生し、励起Xe原子による波長147nm主体共鳴線と励起Xe分子による波長172nm主体の分子線を含む紫外線図1点線及び矢印)が蛍光体層14に照射される。蛍光体層14は励起されて可視光発光する。そして当該可視光はフロントパネル2を透過して前面に発光される。

0029

この駆動方法の一例としては、フィールド内時分割階調表示方式が採られる。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(S.F.)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全放電セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していく書込期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持期間、(4)維持放電により形成された壁電荷消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。

0030

各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化パルスリセットした後、書込期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させる書込放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧維持電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。

0031

初期化期間とは、それ以前の放電セルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す駆動波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧(初期化パルス)を印加し放電セル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すように放電セルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の表面層8及びMgO微粒子群16の表面には、l負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の表面層8及びMgO微粒子群16の表面には、正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5—データ電極11間、走査電極5—維持電極4間に所定の値の壁電位が生じる。

0032

アドレス期間(書込期間)は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択された放電セルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、放電セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧(走査パルス)を印加させる。すなわち、走査電極5—データ電極11には前記壁電位と同方向に電圧を印加させると共に走査電極5—維持電極4間に壁電位と同方向にデータパルスを印加させ、アドレス放電(書込放電))を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の表面層8及びMgO微粒子群16の表面には、負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の表面層8及びMgO微粒子群16の表面には、正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4—走査電極5間には所定の値の壁電位が生じる。

0033

維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、書込放電により設定された点灯状態を拡大して放電を維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電のための電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。

0034

この維持放電により、放電空間における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとサブフィールド単位の組み合わせにより、多色多階調表示がなされる。なお、表面層8に壁電荷が書き込まれていない非放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。

0035

消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
(保護層17の構成)
図4(a)は、PDP1における保護層17周辺の模式的な構造(表示電極対6は省略している)を示す図であって、図1の表面層8及びMgO微粒子群16周辺の模式的な拡大図である。PDP1の保護層17は、表面層8と、その上に配設されたMgO微粒子群16からなる結晶体で構成されている。

0036

表面層8は、MgO薄膜であって、誘電体層7上に真空蒸着法、イオンプレーティング法等公知の薄膜形成法で厚さ約1μmの範囲で成膜されてなる。なお、当該表面層8の材料はMgOに限らず、MgO、CaO、BaO及びSrOの群より選ばれた少なくとも一つの金属酸化物を含むように構成することもできる。
図5は、MgO微粒子群16に含まれる各MgO微粒子の形状を示す模式図である。MgO微粒子群16は、主として4種の形状の粒子16a、16b、16c、16dを含んでなる。

0037

図5(a)、(b)にそれぞれ示す粒子16a、16bは互いに(100)面及び(111)面の2面からなる特定2種配向面で囲まれたNaCl結晶構造を有する。図5(c)、(d)に示す粒子16c、16dは、(100)面、(110)面、(111)面の3面からなる特定3種配向面で囲まれたNaCl結晶構造を有する。ここで図5に示す各粒子16a、16b、16c、16dの各形状は、一例にすぎず、実際には図示された形状より若干歪んだ形状がある。図8(a)〜(d)は、それぞれ実際に作製されたMgO微粒子16a、16b、16cの形状と、従来例として、気相法で作製したMgO微粒子の形状を順次に示す電子顕微鏡写真である。

0038

図5(a)に示すMgO微粒子16aは、6面体を基本構造とし、その各頂点切除されたことにより切頂面82aが形成された14面体である。6面存在する8角形状の主要面81aが(100)面に相当し、8面存在する3角形状の切頂面82aが(111)面に相当する。
次に、図5(b)に示すMgO微粒子16bは、8面体を基本構造とし、その各頂点が切除されたことにより切頂面81bが形成された14面体である。8面存在する6角形状の主要面82bが(111)面に相当し、6面存在する4角形状の切頂面81bが(100)面に相当する。

0039

ここで主要面とは、上記6面体または8面体の中で同一ミラー指数を持つ面の面積の総和が最も大きいミラー指数を持つ面をいう。また切頂面とは、多面体の頂点が切除されたことにより形成された面をいう。
ここで、図5では一例として、MgO微粒子16aでは当該粒子全体の面積に対して(100)面が占める割合を50%以上98%以下としている。一方、MgO微粒子16bでは前記割合を30%以上50%以下としている。

0040

また、図5(c)に示すMgO微粒子16cは、16bにおいて隣接する(111)面の境界が切除されることにより、斜方面83cが形成された26面体である。これによりMgO微粒子16cでは、6面存在する8角形状の(100)面からなる切頂面81cと、8面存在する6角形状の(111)面からなる主要面82cと、12面存在する4角形状の(110)面からなる斜方面83cとを有する26面体となっている。

0041

また、図5(d)に示すMgO微粒子16dは、16aにおいて隣接する(100)面の境界が切除されることにより、斜方面83dが形成された26面体である。これにより、MgO微粒子16dでは、6面存在する8角形状の(100)面からなる主要面81d、8面存在する6角形状の(111)面からなる切頂面82dと、12面存在する4角形状の(110)面からなる斜方面83dとを有する26面体となっている。なお、焼成条件によっては、(100)面もしくは(110)面が占める面積が肥大する場合があり、このとき、(100)面もしくは(110)面が主要面となる。

0042

ここで、斜方面83とは、26面体において、2つの頂点を結ぶ線である辺が切除されたことにより形成された面をいう。
図6は、上記MgO微粒子16a〜16dのバリエーションの形状を示す図である。

MgO微粒子16aは、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面が形成されていればよい。例えば、図6(a)に示すMgO微粒子16a1のように、切頂面が1つ存在する場合や、図6(b)に示すMgO微粒子16a2のように、切頂面が2つ存在する場合である。このとき、切頂面が(111)面に相当し、主要面が(100)面に相当する。なお、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面が形成されているとは、7面以上を有する多面体であって、少なくとも1面が切頂面である構造を有していると言い換えることができる。 MgO微粒子16bは、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面が形成されていればよい。例えば、図6(c)に示すMgO微粒子16b1のように、切頂面が1つ存在する場合や、図6(d)に示すMgO微粒子16b2のように、切頂面が2つ存在する場合である。このとき、切頂面が(100)面に相当し、主要面が(111)面に相当する。なお、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面が形成されているとは、9面以上を有する多面体であって、少なくとも1面が切頂面である構造を有していると言い換えることができる。

0043

MgO微粒子16cは、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面、かつ、少なくとも1つの斜方面が形成されていればよい。例えば、図6(e)に示すMgO微粒子16c1のように、切頂面が6つ、斜方面が1つ存在する場合である。このとき、主要面が(111)面に相当し、切頂面が(100)面に相当し、斜方面が(110)面に相当する。なお、8面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面、かつ、少なくとも1つの斜方面が形成されているとは、10面以上を有する多面体であって、少なくとも1面が切頂面であり、かつ、少なくとも1面が斜方面である構造を有していると言い換えることができる。

0044

MgO微粒子16dは、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面、かつ、少なくとも1つの斜方面が形成されていればよい。例えば、図6(f)に示すMgO微粒子16d1のように、切頂面が8つ、斜方面が1つ存在する場合である。このとき、主要面が(100)面に相当し、切頂面が(111)面に相当し、斜方面が(110)面に相当する。なお、6面体構造を有し、更に少なくとも1つの切頂面、かつ、少なくとも1つの斜方面が形成されているとは、8面以上を有する多面体であって、少なくとも1面が切頂面であり、かつ、少なくとも1面が斜方面である構造を有していると言い換えることができる。

0045

ここで、MgO微粒子16a、16bを含むMgO微粒子群16を誘電体層7上に配設すれば、放電空間15に特定2種配向面が臨む構成になり、各結晶面による特性の相乗効果が発揮される。また、MgO微粒子16c、16dもMgO微粒子群16中に存在することで、特定3種配向面が放電空間15に臨むように構成される。
立方格子のNaCl結晶構造をとるMgO結晶は、主要な配向面として(111)面、(110)面、(100)面を有するが、このうち(100)面は、これら3つの配向面の中で最稠密面(原子が密に詰まった面)であって、その表面自由エネルギーが最も低い特性を持つ。このため(100)面を持つMgOは、低温時及び常温以上の高温時の広い温度域にわたり不純物ガス(水、炭化水素、炭酸ガス等)が吸着しにくく、当該不純物ガスにより不要な化学反応を生じにくい特性が得られる。これにより、特に不純物ガスの吸着の影響が大きいとされる低温度域においても、良好な化学安定性が期待できる(例えば、表面技術Vol.41.No.4 1990 50頁)。この配向面を持つMgOをPDPに利用すれば、低温時及び常温以上の高温時の広い温度域にわたり放電空間15内部の不純物ガス(特に炭化水素ガス)が吸着するのを防止でき、放電遅れの温度依存性はないとされる(J.Chem.Phys.Vol.103.No.8 3240−3252 1995)。しかしながら、(100)面は、低温時及び常温以上の高温時の広い温度域にわたり、電子放出量が小さいという欠点がある。これにより、(100)面のみに依存すると、放電遅れが発生してしまう。特にPDPの高精細化に伴うアドレス放電期間縮小によって、この放電遅れの問題がより顕著に発生することとなる。

0046

これに対し、(111)面は、常温以上で良好な電子放出特性を発揮する結晶面である。これにより、常温以上において放電遅れを防止することができる。一方、その結晶面の表面エネルギーは、上記3つの結晶面の内で最も高いため、常温以下では放電空間15内の不純物ガス(特に炭化水素系ガス)がMgOに吸着しやすい欠点がある。吸着された不純物ガスが結晶面の表面に凝集し、電子放出が妨げられる。これにより、(111)面のみに依存すると、放電遅れの温度依存性(特に低温領域での放電遅れ)が生じてしまう。

0047

そこで本実施の形態では、(100)面と(111)面からなる特定2種配向面で囲まれたNaCl結晶構造を有するMgO微粒子16a、16bと、さらに特定3種配向面として、(100)面、(110)面、(111)面で囲まれたNaCl結晶構造を有するMgO微粒子16c、16dを用いてMgO微粒子群16を構成している。
従ってPDP1では、特定2種配向面及び特定3種配向面を有するMgO微粒子16a〜16dを含むMgO微粒子群16を放電空間15に臨むように配設することによって、低温時(PDPの駆動初期や環境温度が低い地域での使用時)及び常温以上の高温時(駆動開始から一定時間経過後、又は環境温度が高い地域での使用時)の広い温度域にわたり、不純物ガスの吸着を防止して安定した電子放出特性を維持しつつ、且つ、「放電遅れ」と「放電遅れの温度依存性」の各問題を効果的に抑制できる。その結果、優れた画像表示性能を安定して発揮することが可能となっている。

0048

なお、微粒子のサイズが小さい場合や、微粒子全体表面積に占める割合が小さい場合は、各面に対応した上記の放電特性を充分に発揮しない場合がある。後述するように、気相法で作製されたMgO微粒子は、粒径に比較的バラつきがあり、300nm未満の粒径を有する微粒子は、(100)面で構成されるにもかかわらず、放電遅れの温度依存性の問題が発生することがある。しかしながら、前駆体焼成法で作製されたMgO微粒子は、粒径が均一で、ほぼ全ての微粒子が300nm以上の粒径を有する。これにより、ほぼ全ての微粒子が、各配向面に対応した放電特性を発揮することができる。

0049

またPDP1では、(100)面、(110)面、(111)面からなる特定3種配向面で囲まれたNaCl結晶構造を有するMgO微粒子16cを用いることによっても、上記MgO微粒子16a、16bと同様の特性が得られる。さらに、これに加えて、PDP駆動初期において、放電開始時に発生する空間電荷アシストを受けなくても充分な電子放出特性が得られるようになる。すなわち、(110)面は低温から高温までの広い温度域において電子放出が大きい特性があるために、(100)面及び(111)面に加えて(110)面にも囲まれてなるMgO微粒子16c、16dは、特定2種配向面を持つMgO微粒子16a、16bよりも電子放出量が大きい。

0050

このためMgO微粒子16c、16dを用いれば、維持放電期間において表示電極対6に印加するパルス数(維持パルス数)の大小に関わらず、安定した電子放出が可能になるというメリットがある(言い換えると、放電遅れの空間電荷依存性を低減できるメリットがある)。従って、MgO微粒子16c、16dを用いることにより、「放電遅れ」と「放電遅れの温度依存性」に加えて「放電遅れの空間電荷依存性」の抑制も可能となり、一層良好な画像表示性能の発揮が期待できるものである。

0051

ここで、従来の気相法で作製したMgOの結晶体と、(100)面、(110)面、(111)面の特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16c、16dの結晶体とのカソードルミネッセンス(CL)測定の結果を図9に示す。
図9に示すように、気相法で得た結晶体のCLスペクトルでは、200〜300nm付近での発光がほとんど検出されない。一方、特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16c、16dのCLスペクトルでは、当該付近において大きなピークの存在が確認できる。この200〜300nm付近の波長の光は、PDPの放電時にも発生するものである。さらに、この放電時に発生する200〜300nm付近の波長の光のエネルギーは約5eVであり、エネルギーレベルにおいて真空準位から5eV以内に存在するMgOの電子を励起し、二次電子として空間に放出することができる。

0052

このように、放電時におけるセル内に200〜300nm付近の波長の光が存在すれば、セル内に存在する空間電荷による電子放出のアシストが不要になる。ここで、気相法で作製したMgO結晶体を分散した保護層を用いたPDPでは、放電パルス数によって放電遅れが変化する現象があったが、この200〜300nm付近の波長の光があれば空間電荷依存性は無くなるため、このように現放電遅れが変化する現象はなくなる。

0053

上より、CL測定で深紫外光(DUV)が検出される、特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16c、16dを配設したPDPでは、これによって放電時に200〜300nm付近の波長の光が発生すると考えられる。よって、特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16c、16dを用いることにより、空間電荷依存性のないPDPを実現することが期待できるものである。

0054

次に、本実施の形態のMgO微粒子16a、16b、16c、16dが結晶構造において取り得る各結晶面の面積割合について説明する。
発明者らの検討によれば、PDPにおいて上記の効果を有効に得るためには以下の面積割合が望ましい。
MgO微粒子16aの表面における(100)面が、MgO微粒子16aの全表面において占める面積の割合は、50%以上98%以下の範囲が好適である。

0055

MgO微粒子16bの表面における(100)面が、MgO微粒子16bの全表面において占める面積の割合は、30%以上50%以下の範囲が好適である。

MgO微粒子16cの表面における(111)面が、MgO微粒子16cの全表面において占める面積の割合は、10%以上80%以下の範囲が好適である。

0056

同様に、MgO微粒子16cの表面における(100)面が、MgO微粒子16cの全表面において占める面積の割合は、5%以上50%以下の範囲が好適である。
さらに、MgO微粒子16cの表面における(110)面が、MgO微粒子16cの全表面において占める面積の割合は、5%以上50%以下の範囲が好適である。
MgO微粒子16dの表面における(111)面が、MgO微粒子16dの全表面において占める面積の割合は、10%以上40%以下の範囲が好適である。

0057

同様に、MgO微粒子16dの表面における(100)面が、MgO微粒子16dの全表面において占める面積の割合は、40%以上80%以下の範囲が好適である。
さらに、MgO微粒子16dの表面における(110)面が、MgO微粒子16dの全表面において占める面積の割合は、10%以上40%以下の範囲が好適である。 なお、MgO微粒子群16は、図4(a)のように表面層8の表面に分散させて被着させる他、各MgO微粒子16a〜16dの一部が表面層8中に埋設されるように配設してもよい。このような構成によれば、各MgO微粒子16a〜16dの表面層8への定着性増し、たとえPDP1に振動や衝撃が及んでも脱落防止できる効果も奏されるので好適である。

0058

また、図1及び図4では、MgO微粒子群16を表面層8の全面に形成した保護層17の構成を示したが、本発明はこの構成に限定するものではない。すなわち、本実施の形態1では誘電体層7の全面が表面層8で被覆されており、当該表面層8によって誘電体層7の保護機能担保されているので、当該機能の観点から、MgO微粒子群16は表面層8に対し、部分的に設けることも可能である。例えば表面層8の表面において、透明電極41、51に対応する領域や、表示電極対6の放電ギャップに対応する領域のみに設けても良いし、放電空間15に対応する領域(すなわち隔壁13に対応する領域を除く)だけに配設してもよい。また、一定範囲で微粒子16a〜16dの密度を変化させることもできる。これらいずれの構成であっても、本実施の形態1のPDP1と同様の効果が期待できる。

0059

<実施の形態2>
本発明の実施の形態2のPDP1aについて、実施の形態1との差異がある点を中心に説明する。図7は、実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。図4(b)は、PDP1aにおける保護層周辺の模式的な構造を示す図である。
PDP1aの特徴は、表面層8を用いず、誘電体層7の上に直接MgO微粒子群16を配設し、これを保護層とした点にある。MgO微粒子群16に含まれる粉体は、実施の形態1と同様のMgO微粒子16a〜16dである。

0060

このような構成を持つPDP1aによっても、駆動時には低温域及び常温以上の広い温度範囲において、良好な二次電子放出特性が発揮され、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の問題を効果的に抑制されることで、優れた画像表示性能が発揮される。また、MgO微粒子群16に含まれるMgO微粒子8cにより、放電遅れの空間電荷依存性についても改善が図られており、一層安定した表示特性が期待できるようになっている。

0061

これに加えPDP1aでは、表面層8の省略により、当該表面層8を成膜するための工程(スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む薄膜プロセス)が全く不要である。従って、その分、工程を省略でき、且つ、製造コストを低減できるという有効且つ大きなメリットがある。
なお、PDP1aではMgO微粒子群16により誘電体層7の保護機能を発揮させている。この保護機能を確保する観点によれば、MgO微粒子群16は誘電体層7の表面全体を被覆するように配設すべきである。

0062

<PDPの製造方法>
次に、各実施の形態におけるPDP1、1aの製造方法例について説明する。PDP1、1aとの違いは、実質的には保護層の構成のみであり、その他の製造工程については共通する。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラス10の表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ数μm(例えば約5μm)のデータ電極11を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。

0063

ここで、作製予定のPDP1を40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極11の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、データ電極11を形成したバックパネルガラス10の面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層12を形成する。
次に、誘電体層12面上に所定のパターンで隔壁13を形成する。この隔壁13は、低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法フォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターンで形成する。

0064

隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、AC型PDPで通常使用される赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布する。これを乾燥・焼成し、それぞれ蛍光体層14とする。
適用可能なRGB各色蛍光化学組成例は以下の通りである。

0065

赤色蛍光体;(Y、Gd)BO3:Eu
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α−ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミル撹拌混合して、15×10−3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。

0066

以上でバックパネル9が完成される。
(フロントパネル2の作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラス3の面上に、表示電極対6を作製する。ここでは印刷法によって表示電極対6を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法ブレードコート法等で形成することができる。

0067

まず、ITO、SnO2、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで、ストライプ等所定のパターンでフロントパネルガラス上に塗布し、乾燥させる。これにより透明電極41、51が作製される。
一方、Ag粉末有機ビヒクル感光性樹脂光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極41、51の上に重ねて塗布し、形成するバスラインのパターンに合わせた開口部を有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極41、51上に最終厚みが数μmのバスライン42、52が形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスライン42、52を細線化することが可能である。バスライン42、52の金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスライン42、52は上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。

0068

次に、表示電極対6の上から、軟化点が550℃〜600℃の鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO2材料粉末ブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが膜厚数μm〜数十μmの誘電体層7を形成する。
(特定2種配向面又は特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子の製造方法)
続いて、結晶体であるMgO微粒子群16を形成するために、予めMgO微粒子16a〜16dを作製する。その一例として、高純度マグネシウム化合物(MgO前駆体)を高温の酸素含有雰囲気(700℃以上)で均一に熱処理(焼成)することにより、前記MgO微粒子16a〜16dを得る。

0069

前記MgO前駆体に利用できるマグネシウム化合物には、水酸化マグネシウムをはじめ、マグネシウムアルコキシドマグネシウムアセチルアセトン硝酸マグネシウム塩化マグネシウム炭酸マグネシウム硫酸マグネシウムシュウ酸マグネシウム酢酸マグネシウム等が挙げられる。本発明では、これらの内のいずれか1種以上(2種以上を混合して用いてもよい)を選ぶことができる。選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるが、このような水和物を用いてもよい。

0070

さらに、MgO前駆体として用いるマグネシウム化合物の純度は99.95%以上が好ましく、99.98%以上が一層好ましい。これはマグネシウム化合物に、アルカリ金属ホウ素、珪素、鉄、アルミニウム等の不純物元素が多く存在すると、熱処理時(特に焼成温度が高い場合)に、粒子間の融着焼結が起こり、結晶性の高いMgO微粒子が成長しにくいのに対して、高純度マグネシウム化合物を用いれば、その問題を防ぐことができるからである。

0071

このような高純度のMgO前駆体を酸素含有雰囲気で焼成すると、作製されるMgO微粒子16a〜16dの純度も99.95%以上、あるいは99.98%以上の高純度となる。
次に焼成温度の設定を行なう場合、700℃以上が好ましく1000℃以上が一層好ましい。これは、焼成温度が700℃を下回る温度では、結晶面が十分発達せず欠陥が多くなり、微粒子への不純物ガスの吸着が多くなるためである。ただし、焼成温度が2000℃より高温に達すると、酸素抜けが生じてしまい、結果としてMgOの欠陥が多くなるため吸着が生じる。このため、1800℃以下が好ましい。
ここで、700℃以上2000℃以下の焼成温度条件で焼成を行なった場合、特定2種及び3種配向面で囲まれたMgO微粒子16a〜16dがともに生成される。本発明者による別の実験により、およそ1500℃以上の温度で焼成を行うと、(110)面が縮小していく傾向がみられることが分かった。したがって、特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16c、16dの生成頻度を上げるためには、700℃以上1500℃未満の焼成温度が好ましい。一方、特定2種配向面で囲まれたMgO微粒子16a、16bの生成頻度を上げるためには、1500℃以上2000℃以下の焼成温度が好ましい。

0072

なお、各MgO微粒子16a〜16dは、選別工程を得ることによって互いに分離することも可能である。
ここで、MgO前駆体としての水酸化マグネシウムを液相方法で作製する工程、及び、その水酸化マグネシウムを用いてMgO微粒子16a〜16dを含む粉体を作製する工程について具体的に説明する。
(1)出発原料として、純度99.95%以上のマグネシウムのアルコキシド(Mg(OR)2)やマグネシウムのアセチルアセトンを準備する。これらを溶かした水溶液に少量の酸を加えて加水分解することによって、MgO前駆体である水酸化マグネシウムのゲルを作製する。そして、当該ゲルを空気中で700℃以上2000℃以下で焼成して脱水することにより、MgO微粒子16a〜16dを含む粉体が作製される。

0073

(2)純度99.95%以上の硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)を出発原料とし、これを溶かした水溶液を用意する。そして、この水溶液にアルカリ溶液を添加して、水酸化マグネシウムの沈殿物を作製する。次に、水酸化マグネシウムの沈殿物を水溶液から分離し、空気中で700℃以上2000℃以下で焼成して脱水することにより、MgO微粒子16a〜16dを含む粉体が作製される。

0074

(3)純度99.95%以上の塩化マグネシウム(MgCl2)を出発原料とし、これを溶かした水溶液を用意する。そして、この水溶液に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を加えることによって、MgO前駆体である水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2)を沈殿させる。この沈殿物を水溶液から分離し、空気中で700℃以上2000℃以下で焼成して脱水することにより、MgO微粒子16a〜16dを含む粉体が作製される。

0075

上記した各液相方法(1)〜(3)では、純度99.95%以上の(Mg(OR)2)、(Mg(NO3) 2)あるいは、塩化マグネシウム(MgCl2)水溶液に、酸やアルカリ濃度コントロールしながら添加して加水分解することによって、非常に細かい水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2)の沈殿物を作ることができる。この沈殿物を空気中で700℃以上で焼成することによって、Mg(OH)2からH2O(水)が脱離し、MgOの粉体が形成される。この方法で生成されるMgO微粒子16a〜16dを含む粉体は、結晶学的に欠陥が少ないため、炭化水素系ガスの吸着が起こりにくい構成になっている。

0076

ここで、一般に気相酸化法で作製されるMgO微粒子は、粒径に比較的バラツキがある。
このため従来の製造工程では、均一な放電特性を得るために、一定の粒径範囲の粒子を選別する分級工程が必要である(例えば特開2006−147417号公報に記載)。
これに対し本発明では、MgO前駆体を焼成してMgO微粒子を得るが、当該MgO微粒子は、従来よりも粒径が均一で且つ一定の粒径範囲に収まっている。具体的には、本発明で作製されるMgO粒子のサイズは300nm〜2μmの範囲に収まっている。このため、気相酸化法で作製された結晶よりも比表面積が小さい粒子が得られる。このことは、本発明のMgO微粒子16a〜16dが耐吸着性に優れている一つの要因であり、電子放出性能を向上させていると考えられる。また、これにより本発明では、不要な微粒子を振り分ける分級工程を省略することも可能であり、工程の簡略化により製造効率及びコストの面で非常に有利な面がある。

0077

なお、MgO前駆体であるMg(OH)2は、六方晶系の化合物であり、MgOが取り得る立方晶系の8面体構造とは異なっている。従って、Mg(OH)2が熱分解してMgOの結晶を生成する結晶成長過程は複雑であるが、六方晶系のMg(OH)2の形態を残しながらMgOが形成されるため、結晶面として(100)面及び(111)面、さらに、これらに加えて(110)面が形成されるものと考えられる。

0078

これに対して、気相合成法でMgOを形成する場合は、ある特定面だけが成長しやすい。例えば、不活性ガスが満たされた槽中で、Mg(マグネシウム金属)を高温に加熱しながら酸素ガスを少量流し、Mgを直接酸化させてMgOの粉体を形成する方法では、結晶の成長過程で、Mgが酸素を取り込みながら(100)面のみが表面に現れ、その他の配向面は成長しにくい。

0079

その他のMgO微粒子の製造方法として、水酸化マグネシウムを焼成する方法と同様、MgO前駆体として、マグネシウムのアルコキシド、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等のNaCl型(立方晶系)でないマグネシウム化合物を用いて、直接700℃以上の高温で、熱平衡的に熱分解する工程を実施しても良い。これらの工程によれば、Mg元素配位している(OR)2基、Cl2基、(NO3) 2基、CO3基、C2O4基等が脱離する際に、(100)面だけでなく(110)面や(111)面も表面に現れる機構が働くことにより、特定2種配向面又は特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子16a〜16dを含む粉体が得られる。

0080

保護層形成工程)
続いて、実施の形態1又は2のいずれかの保護層を形成する。
実施の形態1の保護層17を形成する場合には、誘電体層7上に、MgO材料を用いて真空蒸着法やイオンプレーティング法等の公知の薄膜形成法により表面層8を形成する。
次に、形成した表面層8の表面上に、上記作製したMgO微粒子16a〜16dを含む粉体を、スクリーン印刷法やスプレー法で塗布する。その後、溶媒を乾燥・除去してMgO微粒子を定着させる。これによりMgO微粒子群16が配設され、実施の形態1の保護層17が完成する。

0081

一方、実施の形態2の保護層を形成する場合には、誘電体層7の表面に、直接前記MgO微粒子16a〜16dをスクリーン印刷法やスプレー法で定着させる。これによりMgO微粒子群16が配設され、実施の形態2の保護層が形成される。
以上の手順で保護層を形成すると、フロントパネル2が完成する。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間15の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、大気や不純物ガスを取り除く。そして当該内部に所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Ne−Xe−Ar系等のXe混合ガスを放電ガスとして封入する。混合ガス中のXe濃度は15%〜100%とする。

0082

以上の工程を経ることにより、PDP1又は1aが完成する。
なお、上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
性能評価実験>
本発明の性能効果を確認するため、実施例のPDP(サンプル1〜5)と、比較例のPDP(サンプル6〜10)を作製し、以下に示す各種実験1〜6に供した。

0083

まず各サンプルの調整に際しては、全サンプル1〜10に共通するPDPの構成として、走査電極と維持電極(表示電極対)における透明電極(ITO)の幅を150μmとし、Agからなるバスラインの幅を70μm、膜厚を6μmとした。表示電極対の放電ギャップを75μm、誘電体層の厚みを35μmとし、隔壁の高さを110μm、隔壁の幅を、底面で約80μm、頂部で約40μmとした。さらにアドレス電極を幅100μm、厚さ5μmとし、蛍光体層の厚みを15μmとして設計した。

0084

保護層形成工程においては、特定2種配向面又は特定3種配向面で囲まれたMgO微粒子を作製し、これを用いて保護層を形成した。当該MgO微粒子を得る際にMgO前駆体を熱処理する条件(熱処理条件)、作製したMgO粉体の塗布量、パネル内に封入するXeガスの濃度等の条件は、表1に示す通りとした。
実施例1(サンプル1及び2)では、実施の形態2に基づき、特定2種配向面を有するMgO微粒子16a、16bを90%程度含む粉体からなるMgO微粒子群16を配設して保護層を形成した。

0085

実施例2(サンプル3〜5)では、真空蒸着法(EB)やイオンプレーティング法でMgO蒸着層を形成後、その上に特定2種配向面を有するMgO微粒子16a、16bまたは特定3種配向面を有するMgO微粒子16c、16dを90%程度含む粉体からなるMgO微粒子群16を配設して保護層を形成した。
比較例のサンプル6は、真空蒸着法で成膜した(111)配向面を有するMgO蒸着層のみで保護層を形成した。

0086

比較例のサンプル7は、気相法で作製した単結晶MgOの微粒子を配設して保護層を形成した。
比較例のサンプル8は、真空蒸着法で作製されたMgO蒸着層の上に、気相法で作製した単結晶の最大粒径が1μm程度のMgO微粒子を配設して保護層を形成した。
比較例のサンプル9は真空蒸着法で作製されたMgO蒸着層の上に、気相法で作製した単結晶の最大粒径が3μm程度のMgO微粒子を配設して保護層を形成した。

0087

比較例のサンプル10は、真空蒸着法で作製されたMgO蒸着層の上に、高純度のMgO前駆体を600℃で焼成して作製されたMgO微粒子を配設して保護層を形成した。
実験1;(MgO微粒子の配向性の評価)
サンプル1、4、5、7〜9に対し、保護層中のMgO微粒子における(100)面と(111)面の面積比率を測定した。この面積比率は、実際には電子顕微鏡を使って目視で測定できるが、本実験では電子線解析等も利用して総合的に同定した。

0088

実験2;{TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)によるMgO微粒子の評価}
サンプル1〜10の保護層について、不純物ガス(水、炭酸ガス、炭化水素ガス)の吸着量を、昇温脱離ガス分析法(TDS)によって測定した。その結果を表1に示した。
表1に示す値は、サンプル10の保護層に吸着した不純物ガス(水、炭酸ガス、炭化水素ガス)の吸着量(10℃〜1200℃の間のガスの脱離量の合計)を1と規格化して、その相対値で示した。この相対値が小さいほどガス吸着量の少ない良好なMgO粉体であることを示す。

0089

実験3;(放電遅れ時間の評価)
サンプル1〜10のPDPについて、以下の方法でデータパルス印加時における放電遅れ時間を評価した。その結果を表1に示した。
各サンプル1〜10における任意の1画素に、図3に示す形状の初期化パルスを印加し、続いて、データパルスおよび走査パルスを繰り返し印加した。印加したデータパルスおよび走査パルスのパルス幅は、通常のPDP駆動時における5μsecよりも長い100μsecに設定した。データパルスおよび走査パルスを印加するごとに、パルスを印加してから放電が発生するまでの時間(放電遅れ時間)を100回測定し、測定した遅れ時間の最大値最小値の平均を算出した。

0090

放電遅れは、放電に伴う蛍光体の発光を光センサーモジュール(浜松ホトクス株式会社製、H6780−20)により受光し、印加したパルス波形受光信号波形とをデジタルオシロスコープ(横河電機製、DL9140)で観察することにより確認した。
表1に示す値は、サンプル6の放電遅れ時間を1と規格化してそれぞれのサンプルの放電遅れ時間の相対値結果である。この相対値が小さいほど、放電遅れ時間が短いことを示す。

0091

実験4;(放電遅れ時間の温度依存性の評価)
サンプル1〜10のPDPについて、温度可変恒温槽を用いて、−5℃と25℃の環境温度における放電の遅れ時間を実験1と同様にして評価した。次に、−5℃での放電遅れ時間と25℃での放電遅れ時間の比を各サンプルについて求めた。
その結果を表1に記した。放電遅れ時間の比が1に近い方が、放電遅れの温度依存性が小さいことを示す。

0092

実験5;(画面のちらつきの評価)
サンプル1〜10のPDPについて、白色画像を表示させその際、視覚評価により、表示される画像にちらつきが見られるかどうかを評価した。
実験6;(空間電荷量依存性の評価)
上記実験4と同様にして、サンプル1〜10のPDPについて、アドレス放電前の維持パルス数が最大の時の放電遅れ時間、維持パルス数が最小のときの放電遅れ時間を測定し、維持パルス数が最大の時の放電遅れ時間に対する、パルス数が最小のときの放電遅れの時間の比を測定し、その結果を表1に示した。放電遅れ時間の比が1に近い方が、放電遅れの空間電荷量依存性が小さいことを示す。

0093

0094

<考察>
表1に示す結果から、実施例サンプル1〜5のPDPでは、MgO蒸着層の存在の有無にかかわらず、比較例サンプル6〜10のPDPに比べて、データパルス印加に対する放電遅れ時間の温度依存性と、空間電荷依存性において飛躍的に良好な性能を有することが確認された。一方、データパルス印加に対する放電遅れ時間そのものについても、少なくともMgO蒸着層を用いた構成と用いない構成との比較では、実施例サンプル1〜5の優位性が確認できる。

0095

また、実施例サンプル1〜5では、低温時での画面のちらつきは皆無であり、不純物ガスの吸着量についても大幅な低減効果が確認できる。
これらの各実験結果から、実施例において使用した特定2種又は3種配向面のMgO微粒子によって保護層の特性が大幅に改善されたことにより、優れた画像表示性能が発揮されたものと考えられる。具体的に実施例サンプル1〜5で不純物吸着量が低減されたのは、保護層中に存在するMgO微粒子が、低温度領域においても不純ガス(特に炭化水素系ガス)の吸着が起こりにくい(100)面と、常温以上での電子放出が優れている(111)面を備えているためと考えられる。

0096

さらに、実施例サンプル2のPDPを実施例サンプル1のPDPと比較した場合、及び、実施例サンプル3のPDPを実施例サンプル4、5のPDPと比較した場合、いずれも空間電荷依存性が特に低減されているのが確認できる。この理由は、これらのサンプル2、3が、低温から高温に至る広い温度域で電子を放出する特性を呈する(110)面を備えるMgO微粒子を有しているためであると考えられる。

0097

なお実施例サンプル1〜5では、いずれも高純度のMg前駆体を700℃以上の温度(1400℃から1800℃)で熱処理(焼成)し、得られたMgO微粒子を保護層の材料に用いている。この製法を採ることで、実施例サンプルでは比較例サンプルによりも粒子サイズが大きく、且つ、結晶学的に欠陥が少ないMgO微粒子が得られる。実施例サンプル1〜5では、このような良好な構成のMgO微粒子を用いたことで、上記性能が獲得されたと考えられる。

0098

一方、比較例サンプル6では、実施例サンプル1〜5に比べて放電遅れ時間が大きく、放電遅れの温度依存性も大きいことが確認できる。これは保護層が、本願発明の特定2種又は3配向面を有するMgO微粒子ではなく、真空蒸着法で成膜された(111)面をもつMgO蒸着層のみで構成されているため、実施例のような性能が発揮されなかったためと考えられる。

0099

また比較例サンプル7〜9では、放電遅れ時間及び放電遅れの温度依存性は、サンプル6と比べると小さいものの、それでも実施例サンプル1〜5と比べると大きいことがわかる。これは、保護層中にMgO微粒子が存在するものの、当該MgO微粒子は気相法で形成されたため、(100)面だけを持ち、(110)面や(111)面は持たないので、やはり本願発明の特定2種又は3配向面を有するMgO微粒子の持つ特性は発揮されなかったものと考えられる。

0100

さらに、比較例サンプル10は、放電遅れ時間は比較的小さいことが確認される。しかし一方で、放電遅れの温度依存性や空間電荷量依存性は、比較例サンプル6よりは小さいものの、実施例サンプル1〜5と比べると大きくなっている。
これは、比較例サンプル10では、MgO微粒子は低温(600℃)でMgO前駆体を焼成して得られたものであるため、MgO粉体に対して不純物ガスが多く吸着したためと考えられる。

0101

本発明のPDPは、特に高精細画像表示を低電圧で駆動できるがガス放電パネル技術として、交通機関及び公共施設家庭などにおけるテレビジョン装置及びコンピューター用の表示装置等に利用することが可能である。
また本発明によれば、Xe分圧の高い場合でも、駆動電圧の印加による放電の遅れが低減され、且つその温度依存性もないPDPが得られるので、画質温度環境に影響されにくい高画質テレビなどを実現できる。

図面の簡単な説明

0102

本発明の実施の形態1に係るPDPの構成を示す断面図である。
各電極とドライバとの関係を示す模式図である。
PDPの駆動波形例を示す図である。
各実施の形態のPDPの保護層周辺の構成を示す模式的な部分拡大図である。
MgO微粒子の形状を示す図である。
MgO微粒子のバリエーションの形状を示す図である。
本発明の実施の形態2に係るPDPの構成を示す断面図である。
MgO微粒子の形状を示す写真である。
MgO微粒子のCL測定波形を示すグラフである。
従来の一般的なPDPの構成を示す組図である。

符号の説明

0103

1、1a、1x PDP
2フロントパネル
3 フロントパネルガラス
サステイン電極
スキャン電極
6表示電極対
7、12誘電体層
8表面層
9バックパネル
10 バックパネルガラス
11 データ(アドレス)電極
13隔壁
14蛍光体層
15放電空間
16a 特定2種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子
16b 特定2種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子
16c 特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子
16d 特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子
16a1、16a2 特定2種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子のバリエーション
16b1、16b2 特定2種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子のバリエーション
16c1 特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子のバリエーション
16d1 特定3種配向面で囲まれた結晶構造を有するMgO微粒子のバリエーション
16MgO微粒子群
17 保護層

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