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技術 定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置

出願人 富士ゼロックス株式会社
発明者 東武敏小俣誠岡崎仁齋藤雅人
出願日 2006年7月14日 (14年5ヶ月経過) 出願番号 2006-193923
公開日 2008年1月31日 (12年11ヶ月経過) 公開番号 2008-020784
状態 未査定
技術分野 電子写真における定着
主要キーワード 金属抵抗材料 電磁誘導装置 固定ヒータ 高強度樹脂 耐久性劣化 加圧パット 総合結果 液状シリコンゴム
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年1月31日)のものです。
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図面 (5)

課題

ウォームアップタイムを短くしても、定着部材耐久性が低下しない定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置を得る。

解決手段

定着ベルト20を構成する発熱層20B及び保護層20Cは、金属層であり、発熱層20Bの外側に配置される保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下となっている。保護層20Cの表面の硬度を高くすることで、表面における金属の結晶同士の結びつきがつよくなり、クラックに対して強くなる。また、表面の硬度だけを高くすることで、繰返しの折り曲げ変形に対しての追従性を低下させることはない。このように、クラックに対して強くなるために金属層を厚くする必要がないため、ウォームアップタイムを短くすることができ、さらに、定着部材の耐久性が低下しない。

概要

背景

省エネに対応した定着方法として、薄膜フィルム固定ヒーターを用いた定着装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような技術開発をきっかけに、定着用部材として膜厚の薄いベルト使い、その内面に面状の抵抗発熱体を配置して、加熱する方法が広く用いられるようになった。この方法では、ロールを中央から加熱する方法に比べて、断熱層である空気層を介さなくてよい上に、ロールの軸部を加熱する必要がないため、ロール中央から加熱する方法にくらべて定着が可能となる時間を短縮することができる。

しかし、上述のベルトと面状の抵抗発熱体とを用いた定着法では、ヒーターである面状抵抗発熱体自身が熱容量を持っており、十分に定着可能となる時間がユーザーにとって待ち時間感じられないほどに短縮させることが難しい。加えて、面状の抵抗発熱体の軸方向の温度均一化も困難であることから、十分な省エネ化高画質化がなされたとはいえないのが現状である。

一方、近年、電磁誘導加熱方式により定着用部材を加熱する方法が検討されている(例えば、特許文献3,4参照)。この電磁誘導加熱方式による定着方法について以下にその発熱原理を説明する。

電磁誘導加熱方式を利用した定着装置(誘導加熱定着装置)では、定着用部材や、加圧部材のほかに、コイルが用いられる。このコイルは定着用部材の内部あるいは外部の定着用部材に近接した位置に設置され、高周波電源電気的に接続される。また、定着用部材としては、表面に金属発熱層を有する構成であれば、ロール形状であろうがベルト形状であろうが形状に関わり無く、どちらでも誘導加熱は可能である。

このような定着装置による定着は以下のように行われる。まず、高周波電源により高周波交流電流をコイルに流す。このとき、コイルには電流の向きに応じコイルが巻回された面に直行する向きに磁束が発生する。この磁束は、コイルに近接して設置された定着用部材の金属発熱層を横切ることとなり、定着用部材の金属発熱層には、この磁束を打ち消す方向に磁界を発生するような渦電流が発生する。金属発熱層は、この層を構成する金属材料と層の厚さとで決まる抵抗値を持っているため、発生した渦電流による電気エネルギー熱エネルギーに変換される。

この時の金属発熱層が発熱し、定着用部材と加圧部材との成すニップを、未定着トナー像が形成された記録媒体が通過するとき、未定着トナー像が記録媒体に加熱圧着され、定着される。

この方法では、本来加熱したい定着用部材の表面を効果的、かつ、高熱効率で加熱することができるため、定着可能となるまでの時間(以下、「ウォームアップタイム」と称す場合がある)を極限まで短縮できる可能性がある。前述したように、誘導加熱定着装置では、定着用部材としてロールを用いたロールタイプと、ベルトを用いたベルトタイプとがあり、いずれの場合でも定着用部材に近接した位置に配置したコイルに高周波電流を流すことで、定着用部材の金属発熱層に誘導起電力を生じさせ、渦電流が流れることで金属発熱層が加熱される。

定着用部材がロールタイプの場合、金属発熱層としてはロールを構成する芯金を利用することができる。そして、コイルによって渦電流が発生し加熱されるような材質・厚さの芯金を選択することで定着可能温度までの加熱が可能である。しかし、ロールタイプでは加熱されるのが芯金であることから、従来の加熱方式と比べて、定着用部材表面と芯金との間に空気層が無いため定着可能な温度に達するのは速いのに対し、芯金自体に剛性が必要とされるため、管厚が数mm程度必要とされる。その結果、金属発熱層の機能を兼ねる芯金の熱容量は大きくならざるを得なく、加熱するのには時間がかかるため、ウォームアップタイムを十分に短縮できない。

一方、定着用部材がベルトタイプである場合には、金属発熱層を基材とした定着ベルトを用いる定着方法と、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けた構成の定着ベルトを用いる方法とがある。金属発熱層が基材を兼ねる定着ベルトの場合、基材としてある程度の強度が必要であるため、基材の機能も兼ねる金属発熱層の厚さは数十μm〜200μm程度は必要である。このためロールタイプの定着用部材ほどではないが、基材の熱容量が大きくなってしまうため、定着ベルト表面が加熱されるのにある程度の時間が必要となってしまう。また金属層が厚いために金属表面での歪が大きくなり、クラックが発生しやすいという問題がある。

また、加圧部材とこの定着ベルトでニップを形成するために、定着ベルト内部の加圧部材と対向する位置に、ニップに押圧力を加える押圧部材を配置しなければならない。この押圧部材は通常加圧部材と均一な圧力でニップを形成し、かつニップ幅を確保するためにゴムパッドを用いるケースが多い。しかしながら、このゴムパッドと金属からなる基材との摺動性が悪いため、パッド激しく劣化させてしまう場合があった。

一方、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けたタイプの定着ベルトの場合、基材に使われる耐熱性樹脂としては、ポリイミドポリアミドイミドなどのようなエンジニアリングプラスチックで、200℃以上の耐熱性があり、強度がある程度以上のものが使われている。基材が耐熱性樹脂からなる定着ベルトの場合は耐熱性樹脂からなる基材により強度が確保されているため、金属発熱層は発熱性能が十分に確保できるのであれば、その膜厚を薄くすることができる。そのため、金属発熱層が基材の機能も兼ねる定着ベルトと比較して、ウォームアップタイムの短縮が可能となる。また、基材が耐熱性樹脂からなるため、ニップを形成するために定着ベルトの内面に設けられるゴムパッドとの摺動性も良好である。

耐熱性樹脂からなる基材上に設けられる金属発熱層は、基材上に均一な膜厚で形成される必要がある。この金属発熱層の膜厚は、この層を構成する金属の種類にもより一概には言えないが、低抵抗な金属であるほど薄くすることができ、加えて定着可能な温度に達する時間が短くすることが可能となる。一般的には、金・銀・銅・アルミニウムなどの金属が金属発熱層を構成する材料として用いられる場合が多い。

これら金属の薄膜を耐熱性樹脂からなる基材上に形成する方法としては、めっき法・蒸着法・スパッタリング等の金属薄膜形成方法が挙げられる。金属薄膜金属種によって適切な膜厚が存在することは前に述べた通りだが、その膜厚が薄いほど定着ベルトそのものの剛直性緩和され、よりフレキシブルになるため適切なニップを形成しやすく、そのため良好な定着画質が得られる。また、薄いほど金属発熱層の持つ熱容量を低くできるため、ウォームアップタイムを短縮できるという利点もある。したがって、金属発熱層の形成に際しては、膜厚が薄くても十分に発熱するような低抵抗金属を選択し、この金属をなるべく薄く、かつ、均一に成膜することが必要となる。

しかしながら、上述の金属発熱層を耐熱性樹脂からなる基材上に形成した定着ベルトでは、金属発熱層の耐久性が充分でないのが現状である。特に、金属発熱層の熱容量を小さくしウォームアップタイムを短縮でき、さらに定着ベルト自体のフレキシブル性を向上させることで良好な画質を得るためには、金属発熱層の膜厚が薄ければ薄いほど好ましいが、その反面、金属発熱層の膜としての強度は低下してしまう。

また、定着用部材は、記録媒体上の未定着トナー像を溶融すると同時に、圧力をかけて記録媒体により強固に固着させる。そのため、この定着ベルトに対向する位置に設けられた加圧部材(加圧ロール加圧パッド加圧ベルト等)との間にニップ荷重印加して使われる。このとき、金属発熱層が薄い場合、定着に必要なニップ荷重によって、クラックや亀裂といったディフェクトを生じるケースがあった。

さらに、ニップ荷重が低い場合においても、定着ベルトがニップ内を何度も通過し、繰り返し屈曲ストレスを受けることにより金属発熱層にクラック・亀裂等のディフェクトを生じることがある。

このような定着用部材において、金属発熱層にクラック・亀裂等のディフェクトが生じると、金属発熱層の抵抗が上昇したり、あるいは、金属発熱層内で電気的に絶縁状態になるため、発熱特性が低下することになる。また、発生したクラックが亀裂までにはいたらず、溝状のディフェクトになっていたとすると、局所的に膜厚が薄い部分ができた状態になり、その結果、溝部では異常発熱を起こしてしまう。この異常発熱により、定着ベルトの表面を被覆する離型層焼けた溶けたりして、定着用部材としての耐久性を著しく低下させる原因ともなっていた。

そこで、基材を構成する耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用い、基材の成形に際しこのポリイミド樹脂のイミド化率を制御することにより、基材に柔軟性を付与し、この基材上に設けられる金属発熱層への機械的なストレスを低減する技術が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
特開昭63−313182号公報
特開平4−44074号公報
特開平11−352804号公報
特開2000−188177号公報
特開2001−341231号公報
特開2004−70191号公報

概要

ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置を得る。定着ベルト20を構成する発熱層20B及び保護層20Cは、金属層であり、発熱層20Bの外側に配置される保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下となっている。保護層20Cの表面の硬度を高くすることで、表面における金属の結晶同士の結びつきがつよくなり、クラックに対して強くなる。また、表面の硬度だけを高くすることで、繰返しの折り曲げ変形に対しての追従性を低下させることはない。このように、クラックに対して強くなるために金属層を厚くする必要がないため、ウォームアップタイムを短くすることができ、さらに、定着部材の耐久性が低下しない。

目的

本発明は、上記事実を考慮し、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置を提供することが課題である。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有することを特徴とする定着用部材

請求項2

金属層の最表面を加熱硬化させ、前記最表面の硬度が、厚さ方向における前記最表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を得る加熱処理工程を有することを特徴とする定着用部材の製造方法。

請求項3

表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材と、前記定着用部材に磁界印加する電磁誘導加熱装置と、前記定着用部材の表面に圧接され、記録媒体加圧する加圧部材と、を備えることを特徴とする定着装置

請求項4

像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電手段と、前記像保持体の表面に潜像を形成させる潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写させる転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着させる定着手段と、を有し、前記定着手段に、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材を有することを特徴とする画像形成装置

技術分野

0001

本発明は、電子写真方式を利用した複写機プリンター等に適用される定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置に関する。

背景技術

0002

省エネに対応した定着方法として、薄膜フィルム固定ヒーターを用いた定着装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような技術開発をきっかけに、定着用部材として膜厚の薄いベルト使い、その内面に面状の抵抗発熱体を配置して、加熱する方法が広く用いられるようになった。この方法では、ロールを中央から加熱する方法に比べて、断熱層である空気層を介さなくてよい上に、ロールの軸部を加熱する必要がないため、ロール中央から加熱する方法にくらべて定着が可能となる時間を短縮することができる。

0003

しかし、上述のベルトと面状の抵抗発熱体とを用いた定着法では、ヒーターである面状抵抗発熱体自身が熱容量を持っており、十分に定着可能となる時間がユーザーにとって待ち時間感じられないほどに短縮させることが難しい。加えて、面状の抵抗発熱体の軸方向の温度均一化も困難であることから、十分な省エネ化高画質化がなされたとはいえないのが現状である。

0004

一方、近年、電磁誘導加熱方式により定着用部材を加熱する方法が検討されている(例えば、特許文献3,4参照)。この電磁誘導加熱方式による定着方法について以下にその発熱原理を説明する。

0005

電磁誘導加熱方式を利用した定着装置(誘導加熱定着装置)では、定着用部材や、加圧部材のほかに、コイルが用いられる。このコイルは定着用部材の内部あるいは外部の定着用部材に近接した位置に設置され、高周波電源電気的に接続される。また、定着用部材としては、表面に金属発熱層を有する構成であれば、ロール形状であろうがベルト形状であろうが形状に関わり無く、どちらでも誘導加熱は可能である。

0006

このような定着装置による定着は以下のように行われる。まず、高周波電源により高周波交流電流をコイルに流す。このとき、コイルには電流の向きに応じコイルが巻回された面に直行する向きに磁束が発生する。この磁束は、コイルに近接して設置された定着用部材の金属発熱層を横切ることとなり、定着用部材の金属発熱層には、この磁束を打ち消す方向に磁界を発生するような渦電流が発生する。金属発熱層は、この層を構成する金属材料と層の厚さとで決まる抵抗値を持っているため、発生した渦電流による電気エネルギー熱エネルギーに変換される。

0007

この時の金属発熱層が発熱し、定着用部材と加圧部材との成すニップを、未定着トナー像が形成された記録媒体が通過するとき、未定着トナー像が記録媒体に加熱圧着され、定着される。

0008

この方法では、本来加熱したい定着用部材の表面を効果的、かつ、高熱効率で加熱することができるため、定着可能となるまでの時間(以下、「ウォームアップタイム」と称す場合がある)を極限まで短縮できる可能性がある。前述したように、誘導加熱定着装置では、定着用部材としてロールを用いたロールタイプと、ベルトを用いたベルトタイプとがあり、いずれの場合でも定着用部材に近接した位置に配置したコイルに高周波電流を流すことで、定着用部材の金属発熱層に誘導起電力を生じさせ、渦電流が流れることで金属発熱層が加熱される。

0009

定着用部材がロールタイプの場合、金属発熱層としてはロールを構成する芯金を利用することができる。そして、コイルによって渦電流が発生し加熱されるような材質・厚さの芯金を選択することで定着可能温度までの加熱が可能である。しかし、ロールタイプでは加熱されるのが芯金であることから、従来の加熱方式と比べて、定着用部材表面と芯金との間に空気層が無いため定着可能な温度に達するのは速いのに対し、芯金自体に剛性が必要とされるため、管厚が数mm程度必要とされる。その結果、金属発熱層の機能を兼ねる芯金の熱容量は大きくならざるを得なく、加熱するのには時間がかかるため、ウォームアップタイムを十分に短縮できない。

0010

一方、定着用部材がベルトタイプである場合には、金属発熱層を基材とした定着ベルトを用いる定着方法と、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けた構成の定着ベルトを用いる方法とがある。金属発熱層が基材を兼ねる定着ベルトの場合、基材としてある程度の強度が必要であるため、基材の機能も兼ねる金属発熱層の厚さは数十μm〜200μm程度は必要である。このためロールタイプの定着用部材ほどではないが、基材の熱容量が大きくなってしまうため、定着ベルト表面が加熱されるのにある程度の時間が必要となってしまう。また金属層が厚いために金属表面での歪が大きくなり、クラックが発生しやすいという問題がある。

0011

また、加圧部材とこの定着ベルトでニップを形成するために、定着ベルト内部の加圧部材と対向する位置に、ニップに押圧力を加える押圧部材を配置しなければならない。この押圧部材は通常加圧部材と均一な圧力でニップを形成し、かつニップ幅を確保するためにゴムパッドを用いるケースが多い。しかしながら、このゴムパッドと金属からなる基材との摺動性が悪いため、パッド激しく劣化させてしまう場合があった。

0012

一方、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けたタイプの定着ベルトの場合、基材に使われる耐熱性樹脂としては、ポリイミドポリアミドイミドなどのようなエンジニアリングプラスチックで、200℃以上の耐熱性があり、強度がある程度以上のものが使われている。基材が耐熱性樹脂からなる定着ベルトの場合は耐熱性樹脂からなる基材により強度が確保されているため、金属発熱層は発熱性能が十分に確保できるのであれば、その膜厚を薄くすることができる。そのため、金属発熱層が基材の機能も兼ねる定着ベルトと比較して、ウォームアップタイムの短縮が可能となる。また、基材が耐熱性樹脂からなるため、ニップを形成するために定着ベルトの内面に設けられるゴムパッドとの摺動性も良好である。

0013

耐熱性樹脂からなる基材上に設けられる金属発熱層は、基材上に均一な膜厚で形成される必要がある。この金属発熱層の膜厚は、この層を構成する金属の種類にもより一概には言えないが、低抵抗な金属であるほど薄くすることができ、加えて定着可能な温度に達する時間が短くすることが可能となる。一般的には、金・銀・銅・アルミニウムなどの金属が金属発熱層を構成する材料として用いられる場合が多い。

0014

これら金属の薄膜を耐熱性樹脂からなる基材上に形成する方法としては、めっき法・蒸着法・スパッタリング等の金属薄膜形成方法が挙げられる。金属薄膜金属種によって適切な膜厚が存在することは前に述べた通りだが、その膜厚が薄いほど定着ベルトそのものの剛直性緩和され、よりフレキシブルになるため適切なニップを形成しやすく、そのため良好な定着画質が得られる。また、薄いほど金属発熱層の持つ熱容量を低くできるため、ウォームアップタイムを短縮できるという利点もある。したがって、金属発熱層の形成に際しては、膜厚が薄くても十分に発熱するような低抵抗金属を選択し、この金属をなるべく薄く、かつ、均一に成膜することが必要となる。

0015

しかしながら、上述の金属発熱層を耐熱性樹脂からなる基材上に形成した定着ベルトでは、金属発熱層の耐久性が充分でないのが現状である。特に、金属発熱層の熱容量を小さくしウォームアップタイムを短縮でき、さらに定着ベルト自体のフレキシブル性を向上させることで良好な画質を得るためには、金属発熱層の膜厚が薄ければ薄いほど好ましいが、その反面、金属発熱層の膜としての強度は低下してしまう。

0016

また、定着用部材は、記録媒体上の未定着トナー像を溶融すると同時に、圧力をかけて記録媒体により強固に固着させる。そのため、この定着ベルトに対向する位置に設けられた加圧部材(加圧ロール加圧パッド加圧ベルト等)との間にニップ荷重印加して使われる。このとき、金属発熱層が薄い場合、定着に必要なニップ荷重によって、クラックや亀裂といったディフェクトを生じるケースがあった。

0017

さらに、ニップ荷重が低い場合においても、定着ベルトがニップ内を何度も通過し、繰り返し屈曲ストレスを受けることにより金属発熱層にクラック・亀裂等のディフェクトを生じることがある。

0018

このような定着用部材において、金属発熱層にクラック・亀裂等のディフェクトが生じると、金属発熱層の抵抗が上昇したり、あるいは、金属発熱層内で電気的に絶縁状態になるため、発熱特性が低下することになる。また、発生したクラックが亀裂までにはいたらず、溝状のディフェクトになっていたとすると、局所的に膜厚が薄い部分ができた状態になり、その結果、溝部では異常発熱を起こしてしまう。この異常発熱により、定着ベルトの表面を被覆する離型層焼けた溶けたりして、定着用部材としての耐久性を著しく低下させる原因ともなっていた。

0019

そこで、基材を構成する耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用い、基材の成形に際しこのポリイミド樹脂のイミド化率を制御することにより、基材に柔軟性を付与し、この基材上に設けられる金属発熱層への機械的なストレスを低減する技術が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
特開昭63−313182号公報
特開平4−44074号公報
特開平11−352804号公報
特開2000−188177号公報
特開2001−341231号公報
特開2004−70191号公報

発明が解決しようとする課題

0020

しかしながら、ニップ部でのストレスによって金属発熱層が受ける機械的ストレスは、基材に柔軟性を付与しただけでは十分に緩和できないため、金属発熱層の耐久性劣化を十分に解決できるには至っていない。さらに、金属発熱層の耐久性劣化を解決するために、金属発熱層の外周側に保護層を設ける技術が提案されている(特許文献6参照)。

0021

しかしながら金属発熱層と保護層との接着性、保護層の熱容量、コストに課題がある。そこで、この解決のために保護層を金属にすることが考えられる。しかし、保護層の耐屈曲性が十分でないとクラックが発生しやすく、保護層として十分機能しないといった問題がある。

0022

本発明は、上記事実を考慮し、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない定着用部材、この定着用部材の製造方法、この定着用部材を備えた定着装置、及びこの定着用部材を備えた画像形成装置を提供することが課題である。

課題を解決するための手段

0023

本発明の請求項1に係る定着用部材は、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有することを特徴とする。

0024

上記構成によれば、加圧部材のニップによるストレスを受ける金属層の表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下となっている。このため、金属層の表面における金属の結晶同士の結びつきが強くなり、クラックが発生しにくくなる。また、表面の硬度だけを高くすることで、繰返しの折り曲げ変形に対しての追従性を低下させることはない。

0025

このため、金属層を薄くして、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない。

0026

本発明の請求項2に係る定着用部材の製造方法は、金属層の最表面を加熱硬化させ、前記最表面の硬度が、厚さ方向における前記最表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を得る加熱処理工程を有することを特徴とする。

0027

上記製造方法によれば、加熱処理工程で定着用部材の金属層の最表面を加熱硬化させるため、特別な加工装置が不要である。

0028

本発明の請求項3に係る定着装置は、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材と、前記定着用部材に磁界を印加する電磁誘導加熱装置と、前記定着用部材の表面に圧接され、記録媒体を加圧する加圧部材と、を備えることを特徴とする。

0029

上記構成によれば、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材に電磁誘導加熱装置が磁界を印加することで金属層に渦電流が発生し、金属層が発熱し加熱される。また、加熱された金属層と加圧部材のニップ部で記録媒体に転写された未定着トナーを定着する。

0030

ここで、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材が採用されているため、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない。

0031

本発明の請求項4に係る画像形成装置は、像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電手段と、前記像保持体の表面に潜像を形成させる潜像形成手段と、前記潜像をトナーにより現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写させる転写手段と、前記トナー像を記録媒体に加熱定着させる定着手段と、を有し、前記定着手段に、表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材を有することを特徴とする。

0032

上記構成によれば、画像形成装置に表面の硬度が、厚さ方向における前記表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下である金属層を有する定着用部材が採用されているため、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない。

発明の効果

0033

本発明によれば、ウォームアップタイムを短くしても、定着部材の耐久性が低下しない。

発明を実施するための最良の形態

0034

本発明の定着用部材及び定着装置が採用された画像形成装置の実施形態を図1〜4に従って説明する。

0035

図4に示されるように、本発明の画像形成装置40は、像担持体としての感光ドラム60と、感光ドラム60の表面を帯電させる帯電装置62と、帯電させた感光ドラム60の表面に潜像を形成する潜像形成手段としてのレーザースキャナ64及びミラー65と、潜像を現像剤により現像しトナー像を形成する現像手段としての回転式現像装置66と、トナー像を被転写体に転写する転写手段としての中間転写体68及び転写ロール70と、トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段であると共に、トナーを溶融加熱する定着用部材としての定着ベルト20、加圧部材としての加圧ロール22、定着ベルト20を加圧する加圧パッド24、及び定着ベルト20に磁界を印加する電磁誘導加熱装置26を備える定着装置28と、感光ドラム60の表面を清掃するクリーニング装置74と、感光ドラム60の表面を除電する除電装置76と、記録媒体を収納する給紙ユニット78と、記録媒体を順次送り出す給紙ローラ80と、送り出された記録媒体を一枚ずつ搬送するレジストローラ82と、記録媒体を案内する記録媒体ガイド84と、を少なくとも備えている。

0036

詳細には、感光ドラム60の周囲に沿って矢印A方向に順に、感光ドラム60に近接して設けられその表面を帯電させる(非接触型の)帯電装置62と、感光ドラム60の表面に形成された潜像にトナーを付与することによりトナー像を形成する回転式現像装置66と、外周面が感光ドラム60表面に当接し矢印B方向および矢印C方向の両方に回転可能な中間転写体68と、中間転写体68の表面にトナー像を転写した後の感光ドラム60の表面を清掃するクリーニング装置74と、感光ドラム60の表面を除電する除電装置76とが設けられている。

0037

なお、帯電装置62と現像装置66との間の感光ドラム60の表面には、感光ドラム60の表面に潜像を形成するために、各色の画像情報(信号)に応じたレーザ光が、ミラー65を介してレーザースキャナ64より照射される。

0038

また、現像装置66は、シアンマゼンタイエローブラックの4色のトナーをそれぞれ収容した各色の現像器(不図示)を備えており、現像装置66が回転することにより、感光ドラム60の表面に形成された潜像に各色のトナーを付与し、トナー像を形成することが可能である。

0039

中間転写体68の周囲には、感光ドラム60の他に、転写ロール70が設けられている。中間転写体68の外周面と転写ロール70表面とは圧接し、この圧接部を記録媒体が矢印D方向に挿通可能であり、圧接部を記録媒体が通過した際に、中間転写体68表面に保持されたトナー像が、記録媒体の表面に転写される。また、圧接部に対して、矢印D方向と反対側には給紙装置77が設けられ、矢印D方向側には定着装置28が設けられている。

0040

給紙装置77は、給紙ユニット78、給紙ローラ80、レジストローラ82および記録媒体ガイド84から構成される。

0041

中間転写体68と転写ロール70との圧接部への給紙は、給紙ユニット78に収納された記録媒体が、給紙ユニット78に内蔵された不図示の記録媒体押し上げ手段により給紙ローラ80に接触する位置まで押し上げられ、記録媒体が給紙ローラ80に接触した時点で、給紙ローラ80およびレジストローラ82が回転することにより記録媒体ガイド84に沿って矢印D方向に搬送されることにより行われる。

0042

また、定着装置28は、加圧ロール22と、加圧パッド24と、電磁誘導加熱装置26と、定着ベルト20とから構成される。定着ベルト20の表面には、表面と当接しニップを形成するように加圧ロール22が設けられている。ニップ部は、矢印D方向に対して、中間転写体68側に加圧ロール22が配置され、転写ロール70側に定着ベルト20が配置されることにより形成される。

0043

定着ベルト20及び加圧ロール22は、それぞれ、矢印V1方向及び矢印V2方向に連動して回転可能である。また、定着ベルト20を挟んで、加圧ロール22と対向し、加圧ロール22表面を押圧するように、定着ベルト20の内周面には加圧パッド24が設けられている。さらに、加圧パッド24に対して、加圧ロール22とほぼ反対側に、定着ベルト20の表面に対向し且つ近接するように電磁誘導加熱装置26が設けられている。

0044

次に、画像形成装置40における転写および加熱定着について以下に説明する。

0045

まず、感光ドラム60表面に形成された各色のトナー像は、感光ドラム60と中間転写体68との間に印加されたバイアス電圧により、感光ドラム60と中間転写体68との当接部において、各色のトナー像毎に画像情報と一致するように中間転写体68外周面に重ねて転写される。このようにしてカラーのトナー像がその外周面に転写された中間転写体68は矢印C方向に回転し、トナー像は、転写ロール70と中間転写体68との圧接部において、給紙装置によって、圧接部に搬送されてきた記録媒体表面に転写される。

0046

トナー像がその表面に転写された記録媒体は、矢印D方向に移動し、定着装置28により加熱定着され、記録媒体表面に画像が定着される。定着ベルト20の表面は、表面に対向して設けられた電磁誘導加熱装置26により加熱される。表面が十分に加熱された定着ベルト20は矢印V1方向へ回転し、加圧ロール22とのニップ部において、矢印D方向へと挿通される記録媒体表面のトナー像を加熱溶融することにより加熱定着する。このようにしてカラー画像がその表面に形成された記録媒体はさらに矢印D方向に搬送され、画像形成装置40の外部に排出される。

0047

次に定着装置28について説明する。

0048

図2に示されるように、本発明の定着装置28は、磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する発熱層を含む定着ベルト20と、定着ベルト20に当接してニップを形成し回転する加圧ロール22と、定着ベルト20の加圧ロール22が設けられた側と反対側の面を内側から押圧する加圧パッド24と、交番電流を流すことにより定着ベルト20の発熱層に磁界を印加する電磁誘導加熱装置26とを有している。

0049

このような定着装置28における定着は、未定着トナー像が形成された記録媒体を、定着ベルト20と加圧ロール22との間に形成されたニップ部に、加熱された定着ベルト20と当接するように挿通させて行われる。記録媒体がニップ部を通過する際に、未定着トナー像が溶融した状態で押圧され記録媒体表面に定着される。

0050

次に、このような定着装置の具体例について、詳細に説明する。

0051

図2において、20は、本発明の定着ベルト20である。この定着ベルト20に接するように加圧ロール22が配され、定着ベルト20と加圧ロール22との間にニップ部を形成している。加圧ロール22は、基材22A上にシリコンゴム等による弾性体層22Bが形成され、さらにその上層フッ素系化合物による離型層22Cが形成された構成を有する。

0052

定着ベルト20の内側には、加圧ロール22と対向する位置に、定着ベルト20の内面を押圧し、局所的にニップ圧を高める加圧パッド24が設けられている。この加圧パッド24は、定着ベルト20の内面に接してニップ部を押圧するニップヘッド24Bと、このニップヘッド24Bを保持するシリコンゴム等からなるニップパッド24Cと、ニップパッド24Cを支持する支持体24Aとから構成されている。

0053

さらに、定着ベルト20を中心として加圧ロール22と対向する位置に、電磁誘導コイル励磁コイル)26Aを内蔵した電磁誘導加熱装置26が設けられている。電磁誘導加熱装置26は、電磁誘導コイル26Aに交流電流を印加することにより、発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト20の発熱層に渦電流を発生させるものである。この渦電流が発熱層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着ベルト20の表面が発熱する。

0054

次に、定着装置28による定着について説明する。

0055

まず、不図示の駆動装置により加圧ロール22が矢印G方向に回転し、それにつれて定着ベルト20も矢印F方向に従動回転する。ここで、未定着トナー像86が形成された記録媒体88は矢印H方向に、定着装置28のニップ部に挿通される。この際、未定着トナー像86は溶融状態で記録媒体88表面に押圧され、記録媒体88表面に定着される。

0056

尚、図2に示した例では、ロール駆動(ベルトが従動)であるが、駆動方法ベルト駆動(ロールが従動)であってもよい。

0057

次に、電磁誘導作用による発熱原理を以下に説明する。

0058

まず、不図示の励磁回路により電磁誘導コイル26Aに交流電流が印加されると、電磁誘導コイル26Aの周囲に磁束が生成消滅を繰り返す。この磁束が定着ベルト20の図1に示す発熱層20Bを横切るとき、その磁束の変化を妨げる磁界を生じるように発熱層20B中に渦電流が発生する。この渦電流と発熱層20Bの固有抵抗によってジュール熱が発生する。なお、発熱層20Bについては詳細を後述する。

0059

この渦電流は、表皮効果のためにほとんど発熱層20Bの電磁誘導加熱装置26側の面に集中して流れ、発熱層20Bの表皮抵抗Rsに比例した電力で発熱を生じる。ここで、角周波数をω、透磁率をμ、固有抵抗をρとすると、表皮深さδは下式(A)で示される。

0060

・式(A) δ=(2ρ/ωμ)1/2

さらに、表皮抵抗Rsは下式(B)で示される。

0061

・式(B) Rs=ρ/δ=(ωμρ/2)1/2

また、定着ベルト20の発熱層20Bに発生する電力Pは、定着ベルト20中を流れる電流をIhとすると、次式(C)で表わされる。

0062

・式(C) P∝Rs∫|Ih|2dS

したがって、表皮抵抗Rsを大きくするか、あるいは電流Ihを大きくすれば電力Pを増すことができ、発熱量を増すことが可能となる。ここで表皮深さδ(m)は、励磁回路の周波数f(Hz)と、比透磁率μrと、固有抵抗ρ(Ω)により下式(D)で表わされる。

0063

・式(D) δ=503(ρ/(fμr))1/2

これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆に言うとほとんどのエネルギーはこの深さまで吸収されている。

0064

ここで、発熱層20Bの厚みは、上記式で表わされる表皮深さより厚く(好ましくは3〜20μm)することが好ましい。発熱層20Bの厚みが3μmよりも小さいと、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる場合があるためである。

0065

次に定着ベルト20の構成について詳細に説明する。

0066

図1に示されるように、定着ベルト20は、その内周側から外周側へと、耐熱性樹脂層20A(基材)、発熱層20B、保護層20C、離型層20Eがこの順に設けられた構成であれば特に限定されない。また、カラー画像の高画質化や、白黒画像の形成速度向上のために、保護層20Cと離型層20Eとの間に弾性層20Dを設けてもよい。以下に、定着ベルト20を構成する各層についてより詳細に説明する。
[耐熱性樹脂層20A]
定着ベルト20における耐熱性樹脂層20Aは、電磁誘導加熱方式の定着装置28にこの定着ベルト20を用いて繰り返し周動搬送した場合に、定着時に耐熱性樹脂層20Aに隣接して設けられた発熱層20Bが発熱した状態でも物性低下がなく、高強度を維持できる必要がある。このため、耐熱性樹脂層20Aは耐熱性樹脂から主に構成される。

0067

耐熱性樹脂の代わりに金属フィルムを用いた場合は、定着ベルト20の内面と接触する加圧パッド24(図2参照)と金属フィルムとの摺動性を確保することが困難であるため、加圧パッド24を損傷してしまい、長期に渡って安定して画像を形成できない。

0068

従って、加圧パット24と接する側の層として、より摺動性の高い耐熱性樹脂から構成される耐熱性樹脂層20Aを設けることで、加圧パッド24との摺動抵抗がなく、押圧部材の寿命延長させることができる。また、耐熱性樹脂には断熱効果があるため、発熱層20Bで発生した熱を加圧パット24へ逃がすことなく効率よく使うことができる。

0069

用いることができる耐熱性樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミドサーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱高強度樹脂等が挙げられるが、この中でもポリイミド、またはポリイミドを主成分(50質量%以上)としたものが好ましい。また、耐熱性樹脂中に断熱効果のあるフィラーを加えたり、耐熱性樹脂を発泡させることにより断熱効果をさらに向上させてもよい。

0070

耐熱性樹脂層20Aの好ましい厚さは、定着ベルト20の長期に渡る繰り返しの周動搬送を可能とする剛性と柔軟性とを両立させる観点から、10〜100μmの範囲内が好ましく、30μm〜80μmの範囲内がより好ましい。また、耐熱性樹脂層20Aの厚みが10μm未満では剛性が弱く、周動搬送中に皺になったり、両端のエッジ部分に亀裂が生じてしまう場合がある。逆に100μmを超えると、柔軟性を確保できない場合があることや熱容量が増加するためウォームアップ時間が長くなる場合がある。さらに、金属層との接着性を向上させることを狙いに耐熱性樹脂層20A表面の粗度をRaが0.1〜5の範囲で粗くしても良い。
[発熱層20B]
本発明の定着ベルト20において、発熱層20Bは、電磁誘導コイル(励磁コイル)26Aから発生する磁界により渦電流を発生させることで発熱するための層である。かかる金属としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛などの単一もしくは2種類以上の合金のどちらでも選択可能である。この中でも銅、金、銀は固有抵抗が低いため、銅、金、銀およびこれらの合金が好ましく、コスト及び加工性から特に銅あるいは銅を主成分(「主成分」とは質量比で50%以上を意味し、保護層の場合も同様である)とする合金が好ましい。

0071

発熱層20Bの厚さは、熱容量の点から薄い方が好ましいが、厚さが3μm未満になると、抵抗値が高くなることにより、十分な渦電流が発生し難くなり発熱が不足し、ウォームアップ時間が長くなるか、或いは、定着可能な温度まで加熱することができなくなる場合がある。また、発熱層20Bの厚さが20μmを超えると、十分な発熱は得られるものの、発熱層20B自体の熱容量が大きくなってしまうことからウォームアップ時間が長くなってしまう場合がある。従って、発熱層20Bの厚さは3〜20μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmの範囲であることがより好ましい。

0072

また、耐熱性樹脂層20Aと発熱層20Bとの間に無電解メッキにより形成された金属層が形成されていてもよい。従来、ポリイミド等のフレキシブル基板と銅との積層板などで、密着性が高い膜を形成するためには、真空設備を用いた蒸着やスパッタリング等のPVD法で第一の金属層を形成する場合が多い。しかし、真空設備を使った成膜方法では、特に定着ベルト20のような円筒形状の基体に対してはバッチ処理が必要となるためコストアップとなる場合がある。そこで、PVD法で密着性を得る代わりに粗面化処理を行った耐熱性樹脂等で構成されている耐熱性樹脂層20Aを使うことで、触媒反応で形成された密着力の弱い無電解メッキにより形成された金属層でも、十分な密着が得られるため、低コスト化が可能となる。

0073

また、無電解メッキにより形成された金属層が、ニッケル、銅、クロムのうちの少なくとも一種類の金属により形成されていれば、発熱層を電解メッキで作製するための電極として使うことが可能である。
[保護層20C]
保護層20Cは、発熱層20Bに加わる機械的ストレスを緩和してクラック等のディフェクトを抑制し発熱層20Bを保護するために、それ自身が充分な耐機械的ストレス性を有していることが好ましい。そのために内部応力の絶対値が5kg/mm2以下であることが必要であり、好ましくは2kg/mm2以下、より好ましくは1kg/mm2以下である。内部応力が小さくなればそれ自身の耐機械的ストレス性が増すため0にすることが好ましいが、管理が困難となる。従って、実用的に充分な耐性を持っていれば良く、内部応力が5kg/mm2以下であれば機械的ストレスに対する実用上の耐性は十分である。

0074

さらに、保護層20Cに含まれる不純物金属の濃度は0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下である。不純物金属が0.1質量%を超えると、脆い膜になりやすく、信頼性が低下してしまう。

0075

また、クラック等のディフェクトを抑制し発熱層20Bを保護するために、十分な強度が確保できる厚みを有していることが好ましい。このため、保護層20Cの膜厚は少なくとも1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。

0076

膜厚が1μm未満の場合には、発熱層20Bを十分に保護することができず、発熱層20Bにクラック等のディフェクトが発生し、発熱特性が低下する等の問題を招いてしまう場合がある。

0077

従って、保護層20Cは強度を確保する点からは厚い方が好ましいが膜厚が厚くなるに伴い熱容量も増加してしまい、結果的にウォームアップ時間が長くなってしまう場合がある。このため、保護層20Cの膜厚は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。

0078

さらに、発熱層20Bの耐屈曲性を向上させるためには、定着ベルト20を屈曲させた時の折れ曲がりの中心が発熱層20Bの中にあることが好ましく、さらに好ましくは発熱層20Bの中心付近にあることが好ましい。折れ曲がりの中心が発熱層20Bの中にあるように、耐熱性樹脂層20Aと保護層20Cの弾性率、厚さを選択してやれば良い。

0079

なお、保護層20Cを構成する材料は、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、あるいは、これらの金属を主成分とする合金を用いることが好ましい。また、発熱層20Bが銅あるいは銅を主成分とする合金からなる場合には、保護層20Cはニッケルあるいはニッケルを主成分とする合金からなることが好ましい。この場合の作製方法としては、電解メッキが好ましい。電解メッキを用いることで、安価で、接着性が良く、膜厚均一性な保護層20Cを得ることが可能となる。電解メッキで作る場合は低電流でメッキすることにより不純物を簡単に取り除くことが出来るといった利点もある。

0080

既述のように、保護層20Cを始めとした金属層は、電解メッキで形成することが好ましい。電解メッキで形成し、内部応力を所望の範囲にするには、例えば、メッキ液中不純物濃度を0.1質量%以下としたり、電流密度を0.1〜10A/dm2の範囲で好ましい値に調整したり、レベリング材応力緩和材を添加することが好ましく、上記条件を適宜組み合わせることがより好ましい。

0081

また、ニッケルの電解メッキ法としては、ワット浴が知られている。しかし、ワット浴で作ったニッケル膜引張応力は大きいため、このままでは保護層20Cとしては使えない。そこで、硫黄含有有機化合物に代表される応力減少材を添加することが好ましい。応力減少材としてはサッカリンパラトルエンスルファミドベンゼンスルフォン酸、1,3,6−ナフタリントリスルフォン酸ナトリウム等がある。これらを適度に添加し、内部応力を減少させることで保護層20Cとしての使用が可能となる。添加量としては、3〜40mg/Lとすることが好ましい。

0082

その他に、スルファミン酸ニッケル浴スルファミン酸ニッケルハイスピード浴という方法も知られている。この方法で作った場合、温度、電流密度によって、内部応力の値が大きく変わる。従って、保護層20Cとしての使用目的に合うよう、内部応力が小さくなる条件でめっきすることが重要である。スルファミン酸ニッケル浴、スルファミン酸ニッケルハイスピード浴は内部応力が小さいために、光沢剤の添加量を少なくでき、ニッケル膜に硫黄成分を含まないため、耐熱性に優れるといった利点がある。
[離型層20E]
本発明の定着ベルト20は、記録媒体と当接する側の面が、定着時に溶融状態の未定着トナー像と固着するのを防ぐために、フッ素系化合物のような低表面エネルギー材料を主成分として構成される離型層20Eを含む。

0083

離型層20Eに用いられるフッ素系化合物としては、例えば、フッ素ゴムや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(以下、「FEP」という)等のフッ素樹脂などを用いることができるが、特に限定されるものではない。

0084

また、この離型層20Eの厚さは、10〜100μmの範囲内であることが好ましく、20〜50μmの範囲内であることがより好ましい。離型層20Eの厚さが10μm未満であると、記録媒体のエッジでの繰り返し擦擦により離型層20Eが摩滅する場合がある。一方、離型層20Eの厚さが100μmを超えると表面の柔軟性がなくなり、その結果トナーを押しつぶす力が働き定着画像粒状性が損なわれる場合がある。さらに、熱容量も大きくなるため、ウォームアップ時間が長くなったりする場合がある。
[弾性層20D]
本発明の定着ベルト20では、保護層20Cと離型層20Eとの間に、更に弾性層20Dを設けてもよい。特に、カラー画像を形成する場合に、弾性層20Dを設けることが好ましい。

0085

これは、カラー画像を形成する場合には、記録媒体上に黒・マゼンタ・イエロー・シアンの4色のカラートナー像が積層された状態で定着する必要があるためである。すなわち、積層されたこれら4色のカラートナー像に均一に一定以上の熱量を与えることで4色が十分に溶融しあって鮮明なカラー画像を得るため、弾性層20Dがない定着ベルト20を使うと、積層されたトナーを押しつぶしてしまう場合がある。このため、記録媒体に近い(つまり積層された下層にある)カラートナー像に対しては十分な熱が与えられないために、定着により得られるカラー画像の発色性が低下してしまう場合があるためである。

0086

また、白黒画像を形成する場合でも、特に高速化に対応するためには弾性層20Dを設けることが好ましい。これは弾性層20Dを設けることで弾性層20Dがニップ領域内で変形し、低荷重でも十分なニップ幅が得られるために、高速であってもトナー像への熱の受け渡しができて定着が可能となるからである。

0087

なお、弾性層20Dを構成する材料としては、公知の弾性材料を用いることができ、このような弾性材料としては、例えば、シリコンゴムやフッ素ゴムのような耐熱性のゴムを用いることが好ましい。

0088

このような耐熱性のゴムとしては、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製の液状シリコンゴムSE6744や、DuPont Dow elastmers社製のバイトンB−202等が挙げられる。

0089

ここで、保護層20Cの固有抵抗は、発熱層20Bの固有抵抗よりも大きくなっており、さらに保護層20Cの内部応力の絶対値が5kg/mm2以下となっていることが好ましい。

0090

保護層20Cの固有抵抗が発熱層20Bの固有抵抗よりも大きくなっているが、保護層20Cの固有抵抗ρAが、発熱層20Bの固有抵抗ρBの1倍を超えることが必要であり、2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましい。保護層の固有抵抗ρAは、発熱層20Bの固有抵抗ρBの1倍未満である場合にはウォームアップタイムが長くなることがある。また、1倍を超え2倍未満の場合では、ウォームアップタイムを確実に短縮することができるが、2倍を超える場合と比べるとやや不充分な場合がある。

0091

また、保護層20Cの固有抵抗ρAは、発熱層20Bの固有抵抗ρBよりも大きければ大きい程好ましいが、材料選択肢が狭まる等の実用上の観点からは、保護層20Cの固有抵抗ρAは、発熱層20Bの固有抵抗ρBの20倍以下であることが好ましい。ここで、固有抵抗の値は、JIS C 2525(1999年)「金属抵抗材料導体抵抗および体積抵抗率試験方法」に準拠し、ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計レスタGPMPC−T600型を用いて、4端子探針法により測定することができる。保護層20Cの固有抵抗ρAは、発熱層20Bの固有抵抗ρBよりも大きいことを条件に、2Ω〜30Ωとすることが好ましく、3Ω〜30Ωとすることがより好ましい。

0092

本発明の定着ベルト20は、発熱層20Bに対して記録媒体が位置する側とは反対側の面に耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層20Aを設けている。このため、発熱層20Bが耐熱性樹脂層20Aの機能を兼ねるような場合と比べると、耐熱性樹脂層20Aの断熱効果により発熱層20Bで発生した熱の定着用部材内面(記録媒体と接触しない側の面)側への流失が少なくなるため、ウォームアップタイムをより短縮することができる。さらに、定着ベルト20の内面に設けられる加圧パッド24との摺動抵抗を抑制することができるため、加圧パッド24の損傷を抑えてその寿命を延ばすことができる。

0093

さらに、定着ベルト20には、発熱層20Bの外周側に保護層20Cが設けられている。このため、定着ベルト20が繰り返し回転を行うことによってニップ内で変形を繰り返すことによる機械的ストレスが、保護層20Cにより緩和されるため、長期に渡って使用しても発熱層20Bでのクラック等の機械的ディフェクトの発生が抑制され、発熱特性を安定して維持することができる。

0094

このような保護層20Cを設けない場合には、発熱層20Bは、その両面に引っ張り力あるいは圧縮力を強く受けるために、クラック等の機械的ディフェクトが発生し易く、長期に渡って使用した場合には、発熱層20Bの電気特性や発熱特性が劣化してしまう。

0095

また、定着ベルト20には、フッ素樹脂等の表面エネルギーの低い樹脂材料から構成される離型層20Eを設けている。このような離型層20Eは、金属材料と比較すると熱伝導率が低い上に、強度にも劣る。しかしながら、本発明の定着ベルト20においては離型層20Eを設けるような場合において、この離型層20Eの厚みを、より熱伝導率が高く強度にも優れた保護層20Cの厚みで置き換えることで、定着ベルト20の強度を向上させることができる上に、ウォームアップタイムもより短縮することができる。

0096

なお、保護層20Cは、内部応力が小さいことが好ましい。内部応力が大きい場合は、応力が働いている反対側に屈曲しようとする場合にその材料がもつ伸び限界を超え、保護層20C自体にクラック・亀裂が生じてしまう。クラック・亀裂を生じないようにするには内部応力の絶対値が5kg/mm2以下であることが必要である。

0097

さらに、保護層20Cに含まれる不純物金属の濃度は0.1質量%以下であることが好ましい。不純物金属が0.1質量%を超えると、内部応力が小さくても、脆い膜になってしまい、繰返し屈曲ストレスに対する耐性が充分ではなくなる場合がある。

0098

ここで、不純物金属とは、例えば、保護層20Cがニッケルを主成分とする場合は、ニッケルおよびニッケルと合金を形成している金属以外の金属成分をさす。不純物金属の濃度を0.1質量%以下とするには、例えば、メッキ処理にて保護層20Cを形成する場合、メッキ浴内のメッキ液中の上記不純物金属の濃度を0.1質量%以下としておけばよい。メッキ液中の不純物濃度は、原子吸光やICP等により測定することができる。保護層20C中の不純物金属の濃度は、適切な溶媒に溶解して原子吸光やICP等により測定することができる。また、蛍光X線で測定してもよい。

0099

なお、発熱層20Bは銅、保護層はニッケルを主成分とすることが好ましい。発熱層20Bは機能から、金、銀、銅、アルミニウムを選択するのが好ましいが、コスト、作りやすさの点で銅がより好ましい。銅の上に蒸着が可能で、機能、コストを考慮すると保護層20Cはニッケルを主成分とした金属層が好ましい。

0100

さらに、発熱層20Bが銅、保護層がニッケルを主成分とした金属であれば、両層ともに、電解メッキにより形成することが可能であり、製造コストを低減することが可能である。

0101

次に発熱層20B及び保護層20Cについて詳細に説明する。

0102

定着ベルト20を構成する発熱層20B及び保護層20Cは、前述したように金属層であり、発熱層20Bの外側に配置される保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下となっている。1.1倍未満であると、繰り返し使用した際に発熱性が悪化する場合があり、2.0倍を超えると、紙詰まりが発生する場合がある。

0103

なお、金属層の厚さ方向の表面以外の硬度は、200〜600Hvの範囲であることが好ましく、300〜500Hvであることがより好ましい。

0104

保護層20Cの表面の硬度を高くすることで、表面における金属の結晶同士の結びつきがつよくなり、クラックに対して強くなる。また、表面の硬度だけを高くすることで、繰返しの折り曲げ変形に対しての追従性を低下させることはない。

0105

なお、本発明における「硬度」とは、超微小負荷硬さのことであり、超微小負荷硬さ試験方法(JIS Z2255:2003年)にて測定することができる。

0106

このように、クラックに対して強くなるために金属層を厚くする必要がないため、ウォームアップタイムを短くすることができ、さらに、定着部材の耐久性が低下しない。

0107

ここで、硬度を高くする表面の範囲を定義すると、外側は、発熱層20B及び保護層20Cから構成される金属層の最表面であり、内側は、金属層の最表面から金属層の層厚の50%以下である。50%を超えて硬度が高くなっている場合には変形に対しての追従性が劣ってしまい、好ましくない。

0108

なお、上記実施形態では、発熱層20Bと保護層20Cの2層から金属層が構成されたが、金属層は、1層から構成されてもよく、また、2層以上から構成されてもよく、金属層を構成する最表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.1倍以上2.0倍以下であればよい。

0109

次にこの定着ベルト20の製造方法について説明する。

0110

本発明の定着用部材の一形態として、定着ベルト20を挙げ、その製造方法を説明する。製造方法としては、公知の方法を利用することができる。なお、発熱層20Bや保護層20Cは膜厚が薄く、これらの層単体での取り扱いが難しいため、耐熱性樹脂層20A上に、発熱層20Bと保護層20Cと離型層20Eとをこの順に形成することが好ましい。また、必要に応じて弾性層20D等を適宜形成することができる。

0111

なお、保護層20C上に、「離型層20E」、あるいは、「弾性層20Dと離型層20Eと」を塗布法により形成する場合には、これらの層を塗布形成する前に、保護層20C表面や弾性層20D表面に必要に応じて適切なプライマー材料による前処理を行うことが好ましい。このような前処理を行うことにより各層間の接着性をより向上させることができる。

0112

なお、保護層20C上に「離型層20E」、あるいは、「弾性層20Dと離型層20Eと」を塗布法により積層形成する場合には、塗布形成された塗膜を加熱処理するプロセスを経て離型層20Eや弾性層20Dが形成される。

0113

このような塗膜の加熱処理に際して、保護層20Cが酸化しやすい金属から構成される場合には、保護層20C表面が酸化して、保護層20C表面に形成される層との密着性が低下してしまう場合がある。このような場合には、塗膜の加熱処理を不活性ガス窒素ガスアルゴンガス等)雰囲気下で行うことが好ましい。

0114

ここで、発熱層20Bと保護層20Cから構成される金属層の表面の硬度を高くするには、図1(B)に示す保護層20Cの最表面に加熱処理をすることで図1(C)に示すように硬度を高くすることができる。
次に、保護層20Cの最表面を加熱する加熱処理について説明する。
[WPC処理]
金属層表面材料と同等以上の硬さを有する非常に小さなショット(一般的に40〜200μm)を、100m/sec以上で噴射する。噴射速度が速いため、ショットが衝突した時に瞬間的に高熱が発生する。高熱で表面の金属が一度溶け、急冷するために金属の結晶は非常に細かくなる。細かくなったために、結晶同士の結びつきが強くなり、硬くなる。従って、クラックに対して強くなる。

0115

なお、熱は瞬間的に発生するために高温となるのは、金属層の表面のみである。そのため、金属層表面の硬度は厚さ方向の表面以外の部位の硬度に比べて硬くなる。
[レーザを用いた局部加熱]
金属層表面にレーザを照射する。局部加熱であるため、表面のみ高温となる。最表面のみ高温となり、「WPC処理」で述べたのと同じ効果で金属層表面が硬くなる。

0116

なお、用いるレーザとしては、YAGレーザが「炭酸ガスレーザと比較し金属表面での吸収率が優れている、高出力化が進んできている、化学的に安定している、光学特性が優れている」等の理由で好ましい。
[フラッシュ加熱による加熱処理]
加熱を瞬間的なon/offで行う。レーザもこの1種である。瞬間的なon/offで加熱を行うため、高熱となるのは表面近傍のみとなる。

0117

その他に、アーク放電による「放電加工」、熱電子による「電子ビーム加工」等の加工方法でも良い。

0118

以下、本発明の実施例を説明する。但し、実施例で用いた本発明の定着ベルトの作製方法は以下の例のみに限定されるわけではない。
−定着ベルトの作製−
実施例1
耐熱性樹脂層20Aの材料として、ポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚60μm、外径30mmの無端状ベルトを作製した。

0119

次に、この無端状ベルトの外周面にアルカリエッチング処理を行い、洗浄し、外周面に無電解ニッケルめっき処理を行ってニッケル層を0.5μm形成した。次にこの無電解ニッケルめっき膜を電極として、この上に電解メッキ処理により膜厚10μmの銅層(発熱層20B)を形成した。

0120

なお、上記電解メッキ処理の条件として、使用したメッキ液は、硫酸銅(70g/L)、硫酸(200g/L)、塩酸(50mg/L)からなり、液温30℃、電流密度は0.2A/dm2とした。

0121

続いて、この銅層上に硫酸Ni(250g/L)、塩化Ni(45g/L)、ほう酸(40g/L)、トップセリーナ73X(5ml/L、奥野製薬工業(株)、MU-2(5ml/L、奥野製薬工業(株))からなるメッキ液を用い、液温度50℃、ph4.0、電流密度3A/dm2の条件で電解メッキ処理により膜厚5μm、硬度400Hvのニッケル層(保護層20C)を形成した。

0122

次に、表面処理として、WPC処理による加熱処理を1秒行い、保護層20Cの表面の硬度を600Hvと高くした。

0123

さらに、表面処理を行ったニッケル層上に、シリコンゴム弾性層を200μm塗布し、200℃で1時間乾燥した。さらにフッ素樹脂(PFA)ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、その後380℃の炉内に1時間放置して、フッ素樹脂塗膜焼成することにより膜厚30μmのPFA層(離型層20E)を形成し、定着ベルト20を作製した。なお、ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計ロレスタGPMPC−T600型により測定した外周側金属層および内周側金属層の固有抵抗は、それぞれ、6.8Ωおよび1.7Ωであった。

0124

これにより、保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.5倍の定着ベルトを得た。また、硬度が高くなっている表面の内側は表面から金属層の層厚の50%以下であった。

0125

なお、硬度の測定方法としては、微小硬度計島津製作所製;島津ダイナミック超微小硬度計DUH−201)により測定した。

0126

実施例2
実施例1と同様の方法で、耐熱性樹脂層20A、発熱層20B、及び保護層20Cを得た。

0127

次に、表面処理として、レーザによる局部加熱処理による加熱処理を0.1秒行い、保護層20Cの表面の硬度を520Hvとした。

0128

さらに、表面処理を行ったニッケル層上に、シリコンゴム弾性層を200μm塗布し、200℃で1時間乾燥した。さらにフッ素樹脂(PFA)ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、その後380℃の炉内に1時間放置して、フッ素樹脂塗膜を焼成することにより膜厚30μmのPFA層(離型層20E)を形成し、定着ベルト20を作製した。なお、ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計ロレスタGPMPC−T600型により測定した外周側金属層および内周側金属層の固有抵抗は、それぞれ、6.8Ωおよび1.7Ωであった。

0129

これにより、保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.3倍の定着ベルトを得た。また、硬度が高くなっている表面の内側は表面から金属層の層厚の50%以下であった。

0130

なお、硬度の測定方法としては、微小硬度計(島津製作所製;島津ダイナミック超微小硬度計DUH−201)により測定した。

0131

実施例3
実施例1と同様の方法で、耐熱性樹脂層20A、発熱層20B、及び保護層20Cを得た。

0132

次に、表面処理として、フラッシュ加熱処理による加熱処理を0.1秒行い、保護層20Cの表面の硬度を480Hvとした。

0133

さらに、表面処理を行ったニッケル層上に、シリコンゴム弾性層を200μm塗布し、200℃で1時間乾燥した。さらにフッ素樹脂(PFA)ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、その後380℃の炉内に1時間放置して、フッ素樹脂塗膜を焼成することにより膜厚30μmのPFA層(離型層20E)を形成し、定着ベルト20を作製した。なお、ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計ロレスタGPMPC−T600型により測定した外周側金属層および内周側金属層の固有抵抗は、それぞれ、6.8Ωおよび1.7Ωであった。

0134

これにより、保護層20Cの表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.2倍の定着ベルトを得た。また、硬度が硬くなっている表面の内側は表面から金属層の層厚の50%以下であった。

0135

なお、硬度の測定方法としては、微小硬度計(島津製作所製;島津ダイナミック超微小硬度計DUH−201)により測定した。

0136

実施例4
実施例2に対して、保護層20Cに対するレーザ局部加熱処理の時間を5秒とした。

0137

これにより、保護層の表面の硬度が680Hvとなり、金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.7倍の定着ベルトを得た。また、硬度が高くなっている表面の内側は表面から金属層の層厚の55%であった。

0138

比較例1
実施例1に対して、保護層20Cに加熱処理を行わなかった。

0139

これにより、保護層の表面の硬度が金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の1.0倍の定着ベルトを得た。

0140

比較例2
実施例2に対して、保護層20Cに対するレーザ局部加熱処理の時間を20秒とした。

0141

これにより、保護層の表面の硬度が840Hvとなり、金属層の厚さ方向の表面以外の部位の硬度の2.1倍の定着ベルトを得た。また、硬度が高くなっている表面の内側は表面から金属層の層厚の50%以下であった。
−定着装置−
実施例1〜3および比較例1〜3のそれぞれの定着ベルトを用いて、以下のようにして定着装置を作製した。すなわち、定着ベルト、加圧ロール、電磁誘導加熱装置、及び、定着ベルトと加圧ロールを圧接するための押圧部材を具備する定着装置を作製した。

0142

押圧部材は、定着ベルトの内径と略同一の外径部と、この外径部より大きな外形部と、定着ベルトの両端部にはめ込んで定着ベルトの軸方向への移動を規制するためのエッジガイドと、定着ベルトの内径より小さな径をもち加圧用ゴムパッド取り付け部を有するフォルダと、加圧用ゴムパッドとからなるものである。

0143

なお、この定着装置の組み立てに際しては、押圧部材、定着ベルト、加圧ロールは以下のように配置した。

0144

まず、フォルダのパッド取り付け部に加圧用ゴムパッドを固定した後に、押圧部材を定着ベルトの内周側に挿入したうえで、定着ベルトの両端部に押圧部材のエッジガイドを装着させた。続いて、押圧部材を内周側に設けた定着ベルトの外周面の周方向の一部分を加圧ロールと接触させて、加圧ロールの軸と押圧部材との間に荷重をかけることで、押圧部材のゴムパッドと加圧ロールとが、定着ベルトを介して圧接させニップを形成させた。なお、本実施例とは直接関係はないが、加圧ロールのかわりに2本もしくはそれ以上のシャフトローラに張った加圧ベルトを用いて、定着ベルトに圧接させてニップを形成してもよい。

0145

エッジガイド、フォルダを構成する材料としては、交流電流による誘導起電力の発生がなく、定着温度領域での耐熱性を有する樹脂(PPS)を用いた。

0146

また、この定着装置に用いた電磁誘導加熱装置の電磁誘導コイル(励磁コイル)は、互いに絶縁されたφ0.5mmの銅線を16本束ねリッツ線を用いて、これを定着ベルトの幅より長く、定着ベルトの円周方向長さの1/6〜1/4を覆う程度の幅を持つように巻回すると共に、定着ベルトの曲率に倣うような曲率を持たせることで、電磁誘導コイル(励磁コイル)と定着ベルトとのギャップが均一になるように形成した。なお、電磁誘導コイル(励磁コイル)と定着ベルトとのギャップが2mmになるように定着ベルトの外周面上に固定した。

0147

定着に際しては、この電磁誘導コイルに、励磁回路によって交流電流を流すことにより、電磁誘導コイルの周囲に磁界を発生させる。従って、発生した磁界が定着ベルトの発熱層を横切る際に、電磁誘導により横切った磁界を打ち消す方向の磁界を発生させるような渦電流が発熱層内に発生する。これにより、このときの渦電流値と発熱層の持つ抵抗に応じた発熱が得られる。

0148

加圧ロールは外径16mmの中実シャフト上に、弾性層として膜厚12mmの発泡シリコンゴム層を設け、さらにこの層を、膜厚30μmのPFAチューブを被覆したものである。

0149

この加圧ロールは、具体的には以下のようにして作製した。まず、PFAチューブの内周面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブと、中実シャフトとを成形金型内にセットした。続いて、フッ素樹脂チューブと中実シャフトと間に液状発泡シリコンゴムを層厚が2mmとなるように注入後、加熱処理(150℃×2hrs)によりシリコンゴムを加硫、発泡させて弾性層を形成することにより加圧ロールを作製した。

0150

この加圧ロールは、ギアを介してモーターと接続されており、加圧ロールを駆動することにより定着ベルトを従動させて、記録媒体を搬送するようにした。
評価方法
定着装置の評価は、DocuCentre Color400(富士ゼロックス社製)の定着装置を本発明の定着装置に置き換えて行った。用紙として富士ゼロックス社製J紙を用いた40万枚の通紙テストを行い評価した。

0151

評価項目は、定着ベルトの電気特性である力率の40万枚通紙前後での変化と、紙詰まり発生状況である。ここで、力率とは励磁コイルに高周波電流を流したとき、定着ベルトに設けた発熱層に渦電流が発生した結果、電磁誘導コイルに流している電流及び電圧位相差θを測定したときの、cosθの値を意味する。位相差θが0に近いほど力率は高くなり、より発熱しやすい状態であるといえる。なお、力率の具体的な測定・評価方法は以下の通りである。
<力率>
電磁誘導装置を横河電機社製インピーダンスメーターWT1600FCに変え、20kHzの高周波電流を電磁誘導コイルに流した時の、電流及び電圧の位相差θを測定し、力率(cosθ)を算出した。本願では、通紙テスト前の力率を1.0としたときの通紙後力率を相対評価した。
評価基準
通紙テスト後の力率は、0.9以上であり、紙詰まりが発生しなければ実用上問題なく、耐久性が低下しないといえる。
−評価結果−
実施例1〜4および比較例1、2で得られた定着ベルトを用いた上記画像形成装置において40万枚の通紙テストを行った。通紙試験前の力率を1としたときの通紙後の力率と、紙詰り発生状況結果、および総合結果図3に示す。総合結果は、通紙後の力率と、紙詰り発生状況結果とから、実用上全く問題ないものを「○」、実用上問題ないものを「△」、実用上問題があり使用できないもの「×」と判定した。

0152

図3に示されるように、本発明の定着ベルトは、40万枚通紙後でも力率0.9以上であり、30万枚まで紙詰まりが発生していないことが分かる。

図面の簡単な説明

0153

(A)本発明の実施形態における定着ベルトの断面図である。(B)本発明の実施形態における定着ベルトの加熱処理前の断面図である。(C)本発明の実施形態における定着ベルトの加熱処理後の断面図である。
本発明の実施形態に定着装置を示した構成図である。
本発明の実施例および比較例で得られた定着ベルトを用いた通紙テストの結果を表した図である。
本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。

符号の説明

0154

20定着ベルト(定着用部材)
20B発熱層(金属層)
20C 保護層(金属層)
22加圧ロール(加圧部材)
26電磁誘導加熱装置
28定着装置
40画像形成装置
60感光ドラム(像保持体)
62帯電装置(帯電手段)
64レーザースキャナ(潜像形成手段)
66回転式現像装置(現像手段)
70転写ロール(転写手段)

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