図面 (/)
課題・解決手段
概要
背景
オレフィンのエポキシ化は、十分に確立された反応であり、一般に、遷移金属を含む不均一系触媒を必要とする。商業的触媒の初期の形態は、アモルファスシリカ上に支持されたチタンである(非特許文献1)。これを、水系の中で使用すると、触媒活性成分であるチタンが浸出し、チタン含有量の低下に比例して触媒活性を喪失する。このため、t−ブチルヒドロペルオキシドのような有機酸化剤が使用されている。しかしながら、有機系におけるt−ブチルヒドロペルオキシドの使用は、反応副生成物として、アルコール、即ち、t−ブタノールの生成をもたらす。このアルコールをヒドロペルオキシドまで再処理することは、エポキシドの製造コストを大きく増加させてしまう。
1983年に、Taramassoらは、ZSM−5と同形の結晶性でミクロポーラスのチタノシリケート(TS−1)が、有機又は無機反応系において、オレフィンエポキシ化に対して高い触媒活性を示すことを実証した(特許文献1)。実質的に全てのチタン触媒が、水性の環境に曝されると浸出するが、TS−1におけるチタン活性種は、この点において最も安定なものの1つである。TS−1は、副生成物として水を生じる過酸化水素を酸化剤として使用するといった新しい分野を開拓した。ここで、このエポキシ化プロセスは、より環境的に優しいものである。しかしながら、結晶性でミクロポーラスのTS−1及びその他の遷移金属含有ゼオライトは、微細な気孔を有し(通常、直径1.2nm未満)、これがいくつかの重要でかさ高い反応物質が活性部位に接近することを妨げる。ある大きな反応物質について、大きな気孔を有する触媒が、良好な触媒性能を有するために必要とされる。
非特許文献2には、Ti−MCM−41やTi−MCM−48等の遷移金属を含有するメソポーラス物質(即ち、1.5〜30nmの気孔直径を有する)が開示されている。これらの物質は独自の気孔構造を有する。即ち、Ti−MCM−41は、平行に規則的に配置された一次元の気孔を有する。これに対し、Ti−MCM−48は、三次元の秩序ある気孔を有する。
現在、三次元的に相互接続した気孔系を有する新しいメソポーラス物質が開示されている(TUD−1という名称である、特許文献2)。この気孔系は、反応物質と生成物の物質移動を容易にし、気孔閉塞の可能性を減らすといった、MCM−41を上回る長所を有する。このメソポーラス物質は、遷移金属を付加することによって機能化させることができ、エポキシ化の触媒として使用することができる。
米国特許第4410501号
米国特許第6358486号
R.A.Sheldon,I.WL.C.E.Arends,H.E.B.Lempers,Catal Today 1998,41,387−407
Pinnavaia et al.J.Am.Chew.Soc.,1996,118,pgs.9164−1971
概要
統合された方法は、オレフィンのエポキシ化をナイロン用のシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの製造と組み合わせる。シクロヘキサノンとシクロヘキサノールは、通常、シクロヘキサンの酸化によって製造され、シクロヘキシルヒドロペルオキシドが生成し、下流で除去又は分解される。ここで、本発明は、オレフィンのエポキシ化の酸化剤としてシクロヘキシルヒドロペルオキシドの中間体を使用し、一方で、価値の高い生成物を発生させる。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
触媒が存在するオレフィンのエポキシ化反応条件下で、少なくとも1つのオレフィンを有機ヒドロペルオキシドに接触させ、オレフィンエポキシドを含有するエポキシ化反応流出物を生成させることを含むオレフィンのエポキシ化方法であって、前記触媒は、遷移金属、及びランダムに相互接続したメソポアを有するアモルファスの多孔質無機酸化物を含み、前記メソポアは、メソポアとミクロポアを基準に気孔体積の少なくとも約97体積%を構成し、前記多孔質無機酸化物は、X線回折パターンの2θが0.5°〜3.0°の間にピークを有することを特徴とするオレフィンのエポキシ化方法。
請求項2
有機ヒドロペルオキシドがシクロヘキシルヒドロペルオキシドである請求項1に記載の方法。
請求項3
前記オレフィンが、3〜25の炭素数を有する請求項1に記載の方法。
請求項4
前記オレフィンが、3〜16の炭素数を有する請求項1に記載の方法。
請求項5
前記オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、シクロヘキセン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項1に記載の方法。
請求項6
前記オレフィンのエポキシ化反応条件が、0℃〜200℃の温度と100バール以下の圧力である請求項1に記載の方法。
請求項7
前記遷移金属が、Ti、Cr、V、Fe、Mo、W、Sn、及びGaからなる群より選択されるものである請求項1に記載の方法。
請求項8
前記遷移金属がTiである請求項6に記載の方法。
請求項9
請求項10
前記ゼオライトが、TS−1とTS−2からなる群より選択される請求項9に記載の方法。
請求項11
請求項12
請求項13
前記エポキシ化反応流出物が、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンをさらに含む請求項1に記載の方法。
請求項14
請求項15
請求項16
前記流出物中のシクロヘキサノールが脱水素化され、付加的なシクロヘキサノンを生成し、次いで前記シクロヘキサノンが、アンモ酸化の前に、前記流出物中のシクロヘキサノンと混合される請求項15に記載の方法。
請求項17
ナイロン前駆体の統合された製造方法であって、a)酸素含有ガスを用い、第1酸化反応ゾーンにおいてシクロヘキサンを酸化させ、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、シクロヘキサノール、及びシクロヘキサノンを含む第1中間体の流れを生成させ、b)触媒の存在するオレフィンのエポキシ化反応条件下で、少なくとも1つのオレフィンをシクロヘキシルヒドロペルオキシドに接触させ、オレフィンエポキシド、シクロヘキサノール、及びシクロヘキサノンを含むエポキシ化反応流出物を生成させ、c)前記エポキシ化反応流出物からオレフィンエポキシドを分離し、そしてd)前記エポキシ化反応流出物中のシクロヘキサノール及び/又はシクロヘキサノンをナイロン前駆体に転化させる工程を有する方法。
請求項18
前記触媒が、遷移金属、及びランダムに相互接続したメソポアを有するアモルファスの多孔質無機酸化物を含み、前記メソポアは、直径が約1.5nm〜約30nmの範囲であって、メソポアとミクロポアを基準に気孔体積の少なくとも約97体積%を構成し、前記多孔質無機酸化物は、X線回折パターンの2θが0.5°〜3.0°の間にピークを有し、前記多孔質無機酸化物は、約400m2/g〜1100m2/gの表面積を有する請求項17に記載の方法。
請求項19
前記エポキシ化反応流出物中のシクロヘキサノールとシクロヘキサノンが酸化され、前記ナイロン前駆体がアジピン酸である請求項17に記載の方法。
請求項20
前記ナイロン前駆体が、シクロヘキサノンオキシムを生成するエポキシ化反応流出物のシクロヘキサノンのアンモ酸化、及びカプロラクタムのナイロン前駆体を生成するシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によって生成したカプロラクタムである請求項17に記載の方法。
請求項21
前記遷移金属がチタンである請求項17に記載の方法。
請求項22
前記触媒が、アモルファス置換されたチタンを有する少なくとも1つのゼオライトをさらに含む請求項17に記載の方法。
技術分野
背景技術
0002
オレフィンのエポキシ化は、十分に確立された反応であり、一般に、遷移金属を含む不均一系触媒を必要とする。商業的触媒の初期の形態は、アモルファスシリカ上に支持されたチタンである(非特許文献1)。これを、水系の中で使用すると、触媒活性成分であるチタンが浸出し、チタン含有量の低下に比例して触媒活性を喪失する。このため、t−ブチルヒドロペルオキシドのような有機酸化剤が使用されている。しかしながら、有機系におけるt−ブチルヒドロペルオキシドの使用は、反応副生成物として、アルコール、即ち、t−ブタノールの生成をもたらす。このアルコールをヒドロペルオキシドまで再処理することは、エポキシドの製造コストを大きく増加させてしまう。
0003
1983年に、Taramassoらは、ZSM−5と同形の結晶性でミクロポーラスのチタノシリケート(TS−1)が、有機又は無機反応系において、オレフィンエポキシ化に対して高い触媒活性を示すことを実証した(特許文献1)。実質的に全てのチタン触媒が、水性の環境に曝されると浸出するが、TS−1におけるチタン活性種は、この点において最も安定なものの1つである。TS−1は、副生成物として水を生じる過酸化水素を酸化剤として使用するといった新しい分野を開拓した。ここで、このエポキシ化プロセスは、より環境的に優しいものである。しかしながら、結晶性でミクロポーラスのTS−1及びその他の遷移金属含有ゼオライトは、微細な気孔を有し(通常、直径1.2nm未満)、これがいくつかの重要でかさ高い反応物質が活性部位に接近することを妨げる。ある大きな反応物質について、大きな気孔を有する触媒が、良好な触媒性能を有するために必要とされる。
0004
非特許文献2には、Ti−MCM−41やTi−MCM−48等の遷移金属を含有するメソポーラス物質(即ち、1.5〜30nmの気孔直径を有する)が開示されている。これらの物質は独自の気孔構造を有する。即ち、Ti−MCM−41は、平行に規則的に配置された一次元の気孔を有する。これに対し、Ti−MCM−48は、三次元の秩序ある気孔を有する。
0005
現在、三次元的に相互接続した気孔系を有する新しいメソポーラス物質が開示されている(TUD−1という名称である、特許文献2)。この気孔系は、反応物質と生成物の物質移動を容易にし、気孔閉塞の可能性を減らすといった、MCM−41を上回る長所を有する。このメソポーラス物質は、遷移金属を付加することによって機能化させることができ、エポキシ化の触媒として使用することができる。
米国特許第4410501号
米国特許第6358486号
R.A.Sheldon,I.WL.C.E.Arends,H.E.B.Lempers,Catal Today 1998,41,387−407
Pinnavaia et al.J.Am.Chew.Soc.,1996,118,pgs.9164−1971
発明が解決しようとする課題
0006
上記のTUD−1メソポーラス物質は、アモルファス性を有する。一方、アモルファスのTi物質は、一般に、上記の浸出の問題を有する。水以外の有機媒体の使用は、金属の浸出を最小限にすることができるが、別な問題を引き起こす。即ち、望ましくないアルコール副生物の生成を引き起こす。アルコールに相当する副生成物を有効に利用し、同時生成アルコールの最終的な発生なしで、バルク状の反応物質と有機酸化剤をエポキシ化のために使用することを可能にする方法が必要とされている。
課題を解決するための手段
0007
本発明では、オレフィンのエポキシ化方法を提供する。
本発明は、触媒が存在するオレフィンのエポキシ化反応条件下で、少なくとも1つのオレフィンを有機ヒドロペルオキシドに接触させ、オレフィンエポキシドを含有するエポキシ化反応流出物を生成させる工程を有する。このときの触媒は、遷移金属、及びランダムに相互接続したメソポアを有するアモルファスの多孔質無機酸化物を含み、メソポアは、メソポアとミクロポアを基準に気孔体積の少なくとも約97体積%を構成し、多孔質無機酸化物は、X線回折パターンの2θが0.5°〜3.0°の間にピークを有するものとして特徴付けられる。好ましくは、有機ヒドロペルオキシドはシクロヘキシルヒドロペルオキシドであり、これは、シクロヘキサンの酸化によって得ることができる。
発明の効果
発明を実施するための最良の形態
0009
本発明は、オレフィンのエポキシ化、及び有機ヒドロペルオキシドに対応するアルコールに、とりわけ、シクロヘキシルヒドロペルオキシドをシクロヘキサノールに転化させるための、新規な統合された方法を開示する。この統合された方法は、遷移金属含有メソポーラス物質を使用することができる。遷移金属としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる群、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される。また、ゼオライトの一部のケイ素がTi、Cr、V、Fe、W、Mo等によって同形で置換され、それによってエポキシ化活性を与える、米国公開公報2002/0074263号に記載のようなゼオライト含有メソポーラス物質を使用することもできる。また、本方法は、メソポーラス骨格とゼオライト骨格の双方に遷移金属(複数も可)を有する、上記の2つの触媒物質の組み合わせを使用することもできる。3つのタイプの触媒物質はいずれも、三次元的にランダムに相互接続したメソポアを有し、かさ高い有機物質の活性部位に対する近接性を改良し、物質移動の制限を抑制する。
0010
本発明の好ましい実施態様の1つの有利な特徴は、後述のナイロン製造のための前駆体であるアジピン酸又はカプロラクタムの生成である。一般に、O2含有ガスを使用するシクロヘキサンの酸化は、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、及びシクロヘキシルヒドロペルオキシド(CHHP)の混合物を生成する。そして、CHHPは、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンに分解される。最終的に、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物がさらに酸化されて、アジピン酸を生成する。あるいは、シクロヘキサノールは、脱水素化して、シクロヘキサノンを生成することができ、このシクロヘキサノンはヒドロキシルアミンと反応し、シクロヘキサノンオキシムを生成することができる。そしてベックマン転位によってカプロラクタムを得ることができる。本発明は、中間体のCHHPを酸化剤として有効に利用し、オレフィンを酸化させ、一方で、重要で有用なアルコール、即ち、シクロヘキサノールを生成させることができる。このため、CHHP中間体を十分に使用することができ、その分解プロセスを省略することができる。しかも、エポキシ化のアルコール副生成物は、アジピン酸又はカプロラクタムの生成のための前駆体として望ましい。このように、本発明は、オレフィンのエポキシ化とそれに続くナイロン前駆体の製造を組み合わせた統合プロセスを提供する。
0011
図1には、オレフィンのエポキシ化とナイロン前駆体の同時生成のためにCHHPを使用する統合システム100が示されている。CHHPは、シクロヘキサンの酸化によって得ることができる。先ず、シクロヘキサン供給101を、酸化反応ゾーン110に導入し、そこでO2又はO2含有ガス102によって酸化され、CHHP、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、及び未反応シクロヘキサンの混合物を含む流出物103を生成させる。
0012
シクロヘキサンの酸化は、種々の方法が当該分野で知られている。例えば、触媒が存在しない状態で、130℃〜200℃の温度と4バール〜50バールの圧力で、酸素含有ガスを用いることにより、CHHPを得ることができる。米国特許第5043481号は、シクロアルカンの酸化生成物を添加する類似の特徴を有する。欧州特許出願第1209143号は、環状N−ヒドロキシイミドと遷移金属化合物を含む触媒を用いるプロセスを開示している。米国特許第4675450号は、ホスフェートエステルの存在下でコバルト含有触媒を用いるプロセスを開示している。米国特許第3987100号は、コバルトとクロムの塩を含むシクロヘキサンに可溶の二元触媒を用いるプロセスを開示している。
0013
シクロヘキサンの酸化は、一般に、未転化シクロヘキサン、シクロヘキサノール、及びシクロヘキサノンの混合物中に約2重量%〜12重量%のCHHPを与える。
0014
場合により、CHHPは、先ず、通常の方法によって、オレフィンと反応させる前に、流出混合物103中で濃縮させることができる。濃縮の方法の一例として蒸留が挙げられる。例えば、米国特許第4080387号は、t−ブチルアルコールを用い、シクロヘキサンと共沸混合物を形成する方法を開示している。このため、蒸留カラムの底部ゾーンは、約10重量%〜30重量%のCHHP濃度を有する。
0015
次いで、エポキシ化反応ゾーン120の中に流出混合物103が導入され、エポキシ化触媒の存在下で、所望のオレフィン(複数種も可)を含む流れ104と接触する。この工程で、オレフィンは部分的に酸化されてエポキシドとなり、CHHPはシクロヘキサノールに転化される。
0016
原理的に、エポキシ化のための余分な溶媒は不要である。これは、CHHP含有流出物103が、比較的多量のシクロヘキサン及び多少のシクロヘキサノールとシクロヘキサノンを有するためである。しかしながら、場合によってはメタノールのようなエポキシ化のための一般的溶媒を、必要に応じて流出物103に添加することもできる。
0017
統合プロセスにとって適切なオレフィンは、炭素数3〜約25、好ましくは、3〜約16の直鎖、分枝鎖、又は環状のオレフィンの群から選択される。適切なオレフィンとしては、特に限定されるものではないが、プロピレン、ブテン(例、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン)、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、シクロヘキセン等が挙げられる。オレフィンの流れは、純粋なオレフィン、2つ以上のオレフィンの混合物、又は1つ以上のオレフィンと不活性物質との混合物とすることができる。
0018
好ましいエポキシ化触媒としては、三次元的にランダムに相互接続したメソポアを備えたユニークな気孔構造を有するアモルファスのメソポーラス無機酸化物であるTUD−1が挙げられる。メソポアは、メソポアとミクロポアを基準に、気孔体積の少なくとも約97体積%を構成する。また、そのメソポアサイズは、種々の触媒プロセスの要請に合致するように、1.5nmから30nmまで調整することができる。TUD−1は、気孔サイズの見返りとして、顕著に高い表面積(例、400〜1100m2/g)と気孔体積(0.4〜2.0cm3/g)を有することが実証されている。そのX線回折パターンは、25nm〜350nmの格子間隔dに対応し、2θで0.5〜3.0度に強い反射ピークを示す。TUD−1物質は、本願の先行技術文献として挙げられている米国特許第6358486号に開示されている。この触媒は、少なくとも1種類の遷移金属を含み、あるいは、いくつかの遷移金属の組み合わせを有することもできる。この遷移金属として、Ti、Cr、V、Fe、Mo、W、Sn、Ga等が挙げられる。遷移金属の含有量は、0.01重量%から90重量%である。触媒は、主として、ケイ素、酸素、及び遷移金属を含む。ここで、アルミニウムのようなその他の元素を幾つか含むこともでき、それらは意図的に添加することができる。構造的見地から、TUD−1は、米国特許出願公開第2002/0074263号明細書に開示のような、ミクロポーラスのゼオライト(例えば、TS−1及び/又はTS−2)をさらに含むことができる。上記特許出願は、本願の先行技術文献である。このゼオライトは、骨格中に上記の遷移金属を含むことができる。
0019
酸素分子、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド(例、t−ブチルヒドロペルオキシド)、及び有機過酸化物(例、ペルオキシギ酸)等の種々の酸化剤をアルケンのエポキシ化使用することができる。この一般的反応系(general reaction)には、数多くのいろいろなアルキルヒドロペルオキシド類を使用することができるが、この特定の発明には、シクロヘキシルヒドロペルオキシド(CHHP)が好ましい。好ましくは、有機反応系においては、反応系で使用される水はごく僅かである。
0020
エポキシ化反応ゾーン120において、約0℃〜約200℃の温度と約100バール以下の圧力で、好ましくは、約20℃〜約80℃の温度と大気圧から約30バールまで圧力で、エポキシ化触媒の存在下で、オレフィンの流れを、CHHPを含有する流れに接触させる。エポキシ化流出物105は、エポキシド、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、未反応オレフィン、及び未反応シクロアルカンを含む。次いで、分離ステージ130において例えば蒸留によって分離を行い、所望の生成物のエポキシド106、シクロヘキサノール107、及びシクロヘキサノン108、又はシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物(「KAオイル」として知られている)を得ることができる。未転化オレフィンは、オレフィンのリサイクル流れ109を経てエポキシ化反応ゾーン120に戻り、未反応シクロヘキサンは、シクロヘキサンのリサイクル流れ111を経て酸化反応ゾーン110に戻る。
0021
シクロヘキサノール107は、好ましくは、脱水素化反応ゾーン150に送られ、そこで通常の反応条件下で脱水素化されてシクロヘキサノンを生成し、次いで、それがシクロヘキサノンの流れ108に付加される。次いで、シクロヘキサノン108は、アンモ酸化反応ゾーン160に送られ、そこでヒドロキシルアミンと反応し、シクロヘキサノンオキシムに転化される。次いで、シクロヘキサノンオキシムは、反応ゾーン170に送られ、そこでベックマン転位によって、ナイロン前駆体のカプロラクタムに転化され、価値の高い生成物Pとして取り出される。脱水素化、アンモ酸化、及びベックマン転位は、当該分野で公知のプロセスである。
0022
別な実施態様において、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンのKAオイル混合物を酸化して、もう1つのナイロン前駆体であるアジピン酸HOOC(CH2)4COOHを生成させることができる。KAオイルを例えば硝酸を用いて酸化させるプロセスは、当該分野で公知の事項である。
0023
以下の例は、本発明の例証のために提供する。得られた物質のX線粉末回折(XRD)パターンは、グラファイトモノクロメーターを備えたフィリップスPW1840回折装置(CuKα線)を用いて記録した。サンプルは、0.02°のステップで2θが0.5°〜40°の範囲で走査した。透過型電子顕微鏡(TEM)の測定を、300kVで作動する電子源としてLaB6フィラメントを備えたフィリップスCM30T電子顕微鏡を用いて行った。窒素収着等温線をカンタクロームAutosorb−6Bで77°Kにて測定した。メソ気孔率は、BJH(Barrett−Joyner−Halenda)モデルを用いて計算した。WAX52CBを用いてガスクロマトグラフィー(GC)分析を行った。
0024
<実施例1>
先ず1.1重量部のチタン(IV)n−ブトキシド(純度99%、ACROS)を35.0重量部のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)(98+%、ACROS)と混合した。次いで、25.3部のトリエタノールアミン(TEA)(97%、ACROS)を撹拌しながら滴下して、上記の混合物に添加した。1時間の撹拌後、17.3部のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)(25%、Aldrich)を滴下して上記の混合物に添加した。最終的な均一混合物を室温で24時間にわたって熟成させ、100℃で24時間にわたって乾燥した後、1℃/分の昇温速度のもと700℃で10時間にわたって空気中で焼成した。
図2に示す物質のXRDパターンは、2θの約1.0°に1つだけの強いピークを呈しており、このピークがメソ構造の物質であることを実証している。図3のTEM写真は、弓なりの曲がりくねった気孔がランダムに接続して、三次元の気孔網状構造を形成していることを示す。窒素吸着からは、図4に示すように、917m2/gのBET表面積、4.5nmの平均メソポア直径、及び0.89cm3/gの合計気孔体積を算出した。
0025
<実施例2>
1.7部のチタン(IV)n−ブトキシド(99%)を、106部のTEOS(98%)と混合した。次いで、上記の混合物を撹拌しながらこれに77部のTEA(97%)と58部の脱イオン水の混合物を滴状で添加した。約1時間の撹拌後、この混合物に63部のTEAOH(25%)を滴状で添加した。この合成混合物のSi/Tiモル比は100であった。最後に、均一混合物を室温で24時間にわたって熟成させ、98℃で24時間にわたって乾燥した後、1℃/分の昇温速度とで650℃のもと10時間にわたって空気中で焼成した。この物質のXRDパターンを図5に示す。
0028
<実施例5>
実施例2と同様の手順で行った。ただし、17.2部のチタン(IV)n−ブトキシドを用い、反応混合物のSi/Ti比は10であった。得られた物質のXRDパターンを図5に示す。
最初の合成混合物の中に適当な量のチタン化合物を添加することで、本発明における触媒物質のチタン含有量を容易に制御することが可能であることが示唆される(実施例2〜5)。得られた実施例2〜5の物質のXRDパターンは、これらの物質がメソポーラスであることを実証している。
0029
<実施例6>
本実施例は、シクロヘキサンのシクロヘキシルヒドロペルオキシドへの自動酸化を例証する。テフロン(登録商標)の内張りのオートクレーブの中に、15重量部のシクロヘキサン、内部標準としての1部のクロロベンゼン、及び開始剤としての0.01部のジクミルペルオキシドを充填した。オートクレーブ中のこの混合物に、8体積%の酸素濃度を有する酸素と窒素のガス混合物を50ml/分の速度で1時間にわたって供給し、次いで約10バールに加圧した。この混合物を120℃まで加熱し、上記の酸素含有窒素ガスを用いて、圧力を15バールに調節した。
0030
反応の過程で、酸素が次第に消費され、圧力が低下した。1時間ごとに、酸素含有窒素を補充することによって圧力を15バールに調節した。22時間後、冷却と降圧によって反応を停止させた。室温まで冷却した後、分析と以降のエポキシ化のために反応混合物を回収した。
GC分析を用い、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、及びCHHPの含有率を測定した。また、CHHP含有率は、NaS2O3溶液を用いた滴定によって確認した。最終生成物は、シクロヘキサノン(0.5重量%)、シクロヘキサノール(0.76重量%)、及びシクロヘキシルヒドロペルオキシド(6.3重量%)を含有することがわかった。シクロヘキサンの転化率は6.2重量%であり、シクロヘキシルヒドロペルオキシドへの選択率は76.4重量%であった。最終的な反応混合物を、エポキシ化反応の前に、無水MgSO4を用いて乾燥した。
0031
<実施例7>
手順は実施例6と同じであるが、ただし、反応物を150℃に保持し、反応時間を4.5時間に短くした。最終的に、反応混合物は、シクロヘキサノン(0.47重量%)、シクロヘキサノール(0.74重量%)、及びシクロヘキシルヒドロペルオキシド(6.8重量%)を含んだ。シクロヘキサンの転化率は7.6重量%であり、シクロヘキシルヒドロペルオキシドへの選択率は84.9重量%であった。
0032
<実施例8>
手順は実施例6と同じであるが、ただし、反応温度を160℃に保持し、反応時間を0.5時間に短縮した。反応混合物は、シクロヘキサノン(0.12重量%)、シクロヘキサノール(0.34重量%)、及びシクロヘキシルヒドロペルオキシド(4.8重量%)を含んだ。シクロヘキサンの転化率は4.4重量%であり、シクロヘキシルヒドロペルオキシドへの選択率は85.3重量%であった。
0033
<実施例9>
本実施例は、1−オクテンのエポキシ化を例証する。実施例1で調製した触媒を、180℃のオーブン中で空気中にて終夜にわたって乾燥した。乾燥した触媒の1部(重量)を、温度調節器を備えたオイルバス中のフラスコ内に移した。真空装置に接続したフラスコを、減圧下で140℃まで2時間にわたって加熱し、全ての水分を除去した。次いで、この触媒を窒素の流れの中で80℃に冷却した。温度が安定した後、4質量部の1−オクテンと実施例6の反応生成物28質量部を、窒素ブランケットの下でフラスコ内に注入した。
20時間の反応後、反応混合物をGCで分析した。殆ど全てのCHHPが転化し(1−オクテンの転化率は約42重量%であった)、CHHP転化を基準に約90%の1−オクテンオキシド選択率であった。最終的に、反応混合物は、約6.4重量%のシクロヘキサノンとシクロヘキサノール、4.6重量%の1−オクテンオキシド、81重量%のシクロヘキサン、及び7.0重量%の1−オクテンを含んだ。
0034
<実施例10>
1−オクテンのエポキシ化を実施例9と同じ手順で行った。ただし、シクロヘキシルヒドロペルオキシドを含む反応混合物は実施例8のものとした。
48時間の反応後、反応混合物をGCで分析した。殆ど全てのCHHPが転化し、1−オクテンオキシドへの選択率は89%であった。1−オクテンの転化率は約32重量%に達し、1−オクテンオキシドへの選択率は約98.5重量%であった。
0035
<実施例11>
反応物質としてプロピレンを使用し、CHHPを用いたプロピレンオキシドの製造を例証する。濃縮したCHHPの反応混合物を酸化剤及び溶媒として用いた。これは、20重量%のシクロヘキシルヒドロペルオキシド、2重量%のシクロヘキサノン、2重量%のシクロヘキサノール、及び76重量%のシクロヘキサンを含有した。実施例3で調製した触媒を180℃で終夜にわたって乾燥した。5部の触媒を、窒素の流れの下でテフロン(登録商標)ライニングのバッチリアクターに移した。このバッチリアクターを窒素の流れの下で0.5時間にわたって180℃に加熱し、その後に80℃に冷した。20重量%のCHHPを含む反応混合物100部を撹拌しながらリアクターに充填した。次いで、無水プロピレンを用いてリアクターを20バールまで加圧した。ガス反応物質が液体になり、プロピレンの消費によって圧力が低下する。反応の1時間ごとにプロピレンを補充し、20バールの合計圧力に再調整した。
12時間後、反応混合物をGCで分析した。反応混合物は7.6重量%のプロピレンオキシド、19.9重量%のシクロヘキサノンとシクロヘキサノール、及び約0.9重量%のCHHPを含む。CHHPの転化率は約95%であり、プロピレンオキシドへの選択率は約85%である。
0036
上述の説明は多くの特定事項を含むが、これらの特定事項は、本発明を限定するものではなく、その好ましい実施態様の例示に過ぎないと解釈するべきである。当業者は、特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲と技術的思想との中で多くの別な実施態様を想起するであろう。
図面の簡単な説明
0037
本発明の方法の系統図である。
実施例1で得られた物質のX線回折パターンである。
実施例1で得られた物質のTEM像である。
実施例1で得られた物質の窒素吸着等温線と気孔径分布を示す。
実施例2、3、4、及び5で得られた物質のX線回折パターンを示す。
符号の説明
0038
100統合システム
109リサイクル流れ
110酸化反応ゾーン
120エポキシ化反応ゾーン
130分離ステージ
170 反応ゾーン
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成