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技術 質量分析(MS)およびその他の計測器システムを較正し、MSおよびその他のデータを処理するための方法

出願人 セルノ・バイオサイエンス・エルエルシー
発明者 ヨンドン・ワンミン・グー
出願日 2004年10月20日 (16年2ヶ月経過) 出願番号 2006-536730
公開日 2007年4月12日 (13年8ヶ月経過) 公開番号 2007-509348
状態 特許登録済
技術分野 計測用電子管 その他の電気的手段による材料の調査、分析
主要キーワード プリセット基準 内部間隔 データ較正 公称間隔 質量重心 質量欠損 ピーク関数 実時間演算
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

質量分析(MS)計測器ステム用の少なくとも1つの較正フィルタを取得するための方法。質量スペクトル範囲内の測定された同位体ピーククラスタ・データは、与えられた較正標準に関して得られる。相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置は、与えられた較正標準について計算される。それぞれの質量スペクトル範囲内の中心に位置する質量スペクトル目標ピーク形状関数が指定される。計算された相対同位体存在量と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の畳み込み演算が実行され、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成する。少なくとも1つの較正フィルタを取得する畳み込み演算の後に、測定された同位体ピーク・クラスタ・データと計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間の逆畳み込み演算が実行される。ピーク幅正規化し、内部および外部較正組合せ、選択された測定されたピーク標準として使用することが規定される。これらの方法の態様は、他の分析装置に適用される。

概要

背景

質量分析(MS)は、分子イオン化および断片化(fragmentation)、断片イオンのその質量による分散、および適切な検出器でのイオン断片の適切な検出に頼る100年前からある古い技術である。異なる特性を有する異なる種類のMS計装を生み出すこれら3つの重要なMSプロセスのそれぞれを達成する方法は多数ある。

大きな分子を細切れにして多数の小さな分子にし、それと同時にそれらをイオン化して、質量分散の前に適切な帯電状態となるようにするために4種類の主要なイオン化手法が一般に使用される。これらのイオン化方式は、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)、高エネルギー電子の衝撃による電子衝撃イオン化EI)、他の反応化合物を使用することによる化学イオン化CI)、およびマトリクス支援レーザー脱離およびイオン化(MALDI)を含む。ESIおよびMALDIの両方は、さらに、試料導入の手段としても使用される。

試料中の分子がイオン化を通じて断片化され、帯電すると、それぞれの断片は、対応する質量対電荷比(m/z)を有し、これは、質量分散の基準となる。使用される物理原理に基づき、質量分散を達成するさまざまな方法があり、性質は類似しているが詳細は異なる質量スペクトル・データが得られる。いくつかの一般に見られる構成は、扇形磁場型、四重極型、飛行時間型(TOF)、およびフーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FT ICR)を含む。

扇形磁場型構成は、最も簡単な質量分散技術であり、異なるm/z比を持つイオンは、磁場内で分離し、検出器要素の固定された配列またはアプリケーションに応じて異なるイオンを検出するように調整できる小さな検出器の移動可能な集まりを使ってイオンが検出される空間的に隔てられた場所でこの磁場から出る。これは、試料からのすべてのイオンが時間順に分離されるのではなく空間内で同時に分離される同時構成である。

四重極型構成は、たぶん最も普及しているMS構成であり、この構成では、異なるm/z値のイオンは一組の(通常は4本の)平行な棒から、それらの棒の対に適用されるRF/DC比を操作することにより除去される。特定のm/z値のイオンのみが、与えられたRF/DC比でそれらの棒を通るトリップ切り抜け、その結果断片イオンの順次的分離および検出が行われる。その順次的な性質から、検出には検出器要素が1つあればよい。イオン・トラップを使用する他の構成は、四重極型MSの特別な実施例と考えることができる。

飛行時間型(TOF)構成は、断片イオンを電場の下で加速し、その後検出前高真空飛行管を通してドリフトする他の順次分散および検出方式である。異なるm/z値のイオ
ンは、異なる時刻に、検出器に到着するであろうし、到着時刻は、較正基準(複数でもよい)を使用してm/z値に関連付けることができる。

フーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FT ICR)では、断片化およびイオン化の後に、すべてのイオンをイオン・サイクロトロンに導入することができ、その場合、異なるm/z比のイオンはトラップされ、異なる周波数共鳴する。これらのイオンは、高周波(RF)信号および検出器上の時間の関数として測定されたイオン強度の適用によりパルスに従って送り出せる(can be pulsed out)。測定された時間領域データのフーリエ変換実行後、較正基準(複数でもよい)を使用して周波数をm/z比に戻して関連付けることができる周波数領域データを取り戻す。

イオンは、ファラデーカップを使用して直接検出するか、またはイオンを光に変換する変換器の後の電子増倍管EMT)/板(EMP)(electron multiplier tubes(EMT)/plates(EMP))または光増倍管(PMT)を使用することにより間接的に検出することができる。図5A、5B、および5Cは、従来技術により、m/z比の関数としてそれぞれプロットされた異なるイオン強度スケール110、120、および130上の典型的な質量スペクトル・データ・トレースを例示する図である。

過去100年間に、MS計装に関して長足の進歩を遂げ、高スループット高分解能、および高感度動作を目的として設計、製作されたさまざまな特色を持つ計測器が現れている。計装開発は、単一イオン検出をさまざまな同位体から出るイオン断片の観測を行える単位質量分解能を持つ大半の市販MSシステム上でルーチン作業として行うことができる段階に到達している。ハードウェアの精巧さとは著しく対照的に、現代的なMS計装によって生じる膨大な量のMSデータを体系的に、効果的に分析することについてはごくわずかのことしか行われてこなかった。

典型的な質量分析計では、ユーザは、通常、注目する質量スペクトルm/z範囲に入るいくつかの断片イオンを有する標準的物質を必要とするか、または供給される。ベースライン効果、同位体干渉質量分解能、および質量への分解能依存性前提条件として、少数のイオンの断片のピーク位置が、最大ピーク時に低次多項式当てはめにより重心またはピーク最大値に関して決定される。次いで、これらのピーク位置は、1次または他の高位次数の多項式を通じてこれらのイオンの知られているピーク位置に当てはめられ、質量(m/z)軸を較正する。

次に、質量軸較正の後、標準質量スペクトル・データ・トレースに対しピーク分析が実行され、ピーク(イオン)が識別される。このピーク検出ルーチンは、実験に基づいた複合プロセスであり、ピークショルダー、データ・トレース内のノイズ化学的背景(chemical backgrounds)または汚染に起因したベースライン、同位体ピーク干渉などが考慮される。

識別されたピークについて、重心計算(centroiding)というプロセスは、通常、積分されたピーク面積(integrated peak areas)およびピーク位置を計算しようとするときに適用される。上で概略を述べた多数の干渉要因および他のピークおよび/またはベースラインの存在下でピーク面積を決定する際の固有の難しさのため、これは、重心計算の質の客観的尺度なしで同位体ピークを出現させたり、消したりしうる多数の調整可能なパラメータによって悩まされるプロセスである。そこで、質量分析データ処理に対する従来のアプローチの多くの欠点のうちいくつかについて説明することにする。

欠点の1つは、質量精度の欠如である。現在使用されている質量較正では、通常、単位質量分解能(有意な同位体ピークの有無を視覚化する能力)を有する従来のMSシステム
において0.1amu(m/z単位)よりもよい質量決定精度は得られない。より高い質量精度を達成し、タンパク質同定のためのペプチドマッピングなどの分子フィンガープリンティング(molecular fingerprinting)の曖昧さを減らすために、四重極TOF(qTOF)またはFT ICR MSなどのより高い分解能を有するMSシステムに切り換えなければならず、コストが非常に高く付く。

他の欠点としては、ピーク積分誤差が大きいという点である。質量スペクトル・ピーク形状、その変動性、同位体ピーク、ベースラインおよびその他の背景信号、およびランダム・ノイズが関わるため、現在のピーク面積積分は、強いまたは弱い質量スペクトル・ピークに対し大きな誤差(系統誤差偶然誤差)を伴う。

さらに他の欠点としては、同位体ピークに関する問題点がある。現在のアプローチは、単位質量分解能を有する従来のMSシステム上では部分的に重なり合う質量スペクトル・ピークを通常発するさまざまな同位体からの寄与を分離するよい方法ではない。使用される実証的アプローチでは、隣り合う同位体ピークからの寄与を無視するか、またはそれらを過大評価し、その結果、支配的な同位体ピークおよび弱い同位体ピークの大きなバイアスに対する誤差を生じるか、または弱いピークを完全に無視することすらする。複数の電荷のイオンが関係する場合、隣り合う同位体ピークの間のm/z質量単位分離間隔が減るため、この状況はいっそう悪化する。

さらに他の欠点は、非線形演算である。現在のアプローチでは、各段において多数の経験的に調整可能なパラメータを伴う多段分離プロセス(multi-stage disjointed process)を使用する。系統誤差(バイアス)は、それぞれの段で発生し、コントロールされない、予測不可能な、非線形的な形で後の段へ伝搬してゆき、アルゴリズムにより意味のある統計量データ処理品質および信頼性の尺度としてレポートすることは不可能である。

他の欠点は、支配的な系統誤差である。工業プロセス制御および環境監視からタンパク質同定またはバイオマーカー発見までMSアプリケーションの大半では、計測器の感度または検出限度は、常に関心の的であり、測定誤差または信号中のノイズ寄与を最小にするため多くの計測器システムにおいて大きな努力が払われてきた。残念なことに、現在使用されているピーク処理アプローチでは、生データ中のランダム・ノイズをさらに超える系統誤差の発生源を生じさせることが多く、計測器感度の制限要因となる。

さらに欠点として、数学的および統計的な矛盾がある。現在使用されている多くの実証的アプローチでは、質量スペクトル・ピーク処理全体が、数学的にまたは統計的に矛盾するものとなっている。ピーク処理の結果は、ランダム・ノイズを含まないわずかに異なるデータ、またはわずかに異なるノイズを含む同じ合成データに関して、劇的に変化しうる。つまり、ピーク処理の結果は、ロバストではなく、特定の実験またはデータ収集によっては不安定な場合があるということである。

さらに、他の欠点として、計測器間のバラツキがある。これまで、機械電磁気、または環境許容誤差のバラツキのせいで、異なるMS計測器から得られた生の質量スペクトル・データを直接比較することは困難であるのがふつうであった。現在のアドホックなピーク処理が生データに適用された場合、異なるMS計測器からの結果、または異なる測定時期の同じ計測器からの結果を定量的に比較することの困難さを増すだけである。他方、連続質量スペクトル・データを直接比較するか、または異なる時期のある計測器、異なる計測器、または異なる種類の計測器からのピーク処理結果を比較する必要性は、確立されているMSライブラリでのコンピュータ検索を介した不純物検出またはタンパク質同定を目的として次第に高まってきている。差分解析のため試料のさまざまなグループからの質量スペクトル・データが互いに比較されるプロテオミクスメタノミクス、またはリピド
ミックスにおけるバイオマーカー発見に対するさらに大きな必要性が存在する。

したがって、質量分析(MS)計測システムを較正し、MSデータを処理するための、従来技術の上述の不備および欠点を克服する方法を用意することが望ましく、非常に有利なことであろう。
米国特許出願第10/689,313号
Hannesh, S.M., Electrophoresis 21、1202頁-1209頁(2000年)
Alan Rockwood et al.、in Anal.Chem.、1995年、67、2699
James Yergey, in Int.J.Mass Spec. & Ion. Physics, 1983年、52、337
William Press et al「Numerical Recipes in C」2nd Ed、1992年、Cambridge University Press、537頁
Gene Golub et al.「Matrix Computations」1989年、Johns Hopkins University Press、149頁
Yongdong Wang et al、Anal. Chem.、1991年、63、2750
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William Press et al「Numerical Recipes in C」2d Ed、1992年、Cambridge University Press、105頁
John Neter et al.「Applied Linear Regression」2nd Ed., Irwin、1989年、418頁
Gene Golub et al.「Matrix Computations」1989年、Johns Hopkins University Press、173頁
William Press et al「Numerical Recipes in C」2nd Ed、1992年、Cambridge University Press、71頁
Gene Golub et al.「Matrix Computations」1989年、Johns Hopkins University Press、170頁
John Neter et al.「Applied Linear Regression」2nd Ed., Irwin、1989年、300頁

概要

質量分析(MS)計測器システム用の少なくとも1つの較正フィルタを取得するための方法。質量スペクトル範囲内の測定された同位体ピーク・クラスタ・データは、与えられた較正標準に関して得られる。相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置は、与えられた較正標準について計算される。それぞれの質量スペクトル範囲内の中心に位置する質量スペクトル目標ピーク形状関数が指定される。計算された相対同位体存在量と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の畳み込み演算が実行され、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成する。少なくとも1つの較正フィルタを取得する畳み込み演算の後に、測定された同位体ピーク・クラスタ・データと計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間の逆畳み込み演算が実行される。ピーク幅正規化し、内部および外部較正を組合せ、選択された測定されたピークを標準として使用することが規定される。これらの方法の態様は、他の分析装置に適用される。

目的

このベースライン補正の目的は、実際に測定されたベースラインが理論的に計算されたものと必ず一致するようにすることである

効果

実績

技術文献被引用数
8件
牽制数
5件

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請求項1

与えられた較正標準について、質量スペクトル範囲内の測定された同位体ピーククラスタ・データを取得するステップ、前記与えられた較正標準について、相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置を計算するステップ、質量スペクトル目標ピーク形状関数を指定するステップ、前記計算された相対同位体存在量と前記質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の畳み込み演算を実行し、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成するステップ、および前記少なくとも1つの較正フィルタを取得するために前記畳み込み演算の後に前記測定された同位体ピーク・クラスタ・データと前記計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間で逆畳み込み演算を実行するステップを含む質量分析(MS)計測器ステム用の少なくとも1つの較正フィルタを取得するための方法。

請求項2

畳み込み演算を実行するステップおよび逆畳み込み演算を実行するステップのどれもが、フーリエ変換行列乗算、および行列演算のうちの少なくとも1つを採用する請求項1に記載の方法。

請求項3

計算ステップの後に実行される事前較正ステップにおいて、計算された相対同位体存在量の重心質量と測定された同位体ピーク・クラスタの重心質量との間の最小二乗当てはめに基づき測定された質量スペクトル同位体ピークを事前位置揃えするステップをさらに含む請求項1に記載の方法。

請求項4

生質量スペクトル・データに対し事前較正計測器依存変換を実行するステップと、試験試料に対応する計算されたデータ・セットに対し事後較正計測器依存変換を実行するステップとをさらに含む請求項1に記載の方法。

請求項5

事前較正計測器依存変換を実行するステップおよび事後較正計測器依存変換を実行するステップは、事前較正帯状対角行列および事後較正帯状対角行列をそれぞれ作成することを伴い、補間関数をそれぞれ実行するそれぞれの行列のそれぞれの帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素は前記事前較正計測器依存変換および前記事後較正計測器依存変換に対応し、さらに、少なくとも1つの較正フィルタから、ピーク形状および質量軸較正の両方を実行する較正帯状対角行列を作成するステップを含む請求項4に記載の方法。

請求項6

事前較正帯状対角行列、較正帯状対角行列、および事後較正帯状対角行列を乗算してトータルフィルタリング行列にしてから試験試料の較正を行うステップをさらに含む請求項5に記載の方法。

請求項7

ピーク形状および質量軸較正は、トータル・フィルタリング行列と生質量スペクトル・データとの間の行列乗算により実行され、さらに、較正された信号の質量スペクトル分散を推定するため他の帯状対角行列を作成するステップが含まれ、他の帯状対角行列は前記トータル・フィルタリング行列内の対応する要素の平方に等しい帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素を有する請求項6に記載の方法。

請求項8

さらに、加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップを含む請求項7に記載の方法。

請求項9

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項8に記載の方法。

請求項10

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項7に記載の方法。

請求項11

非一様な間隔をあけた質量取得間隔から一様な間隔をあけた質量間隔への事前較正質量間隔調整を実行するステップと、前記一様な間隔をあけた質量間隔から報告間隔への事後較正質量間隔調整を実行するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。

請求項12

事前較正質量間隔調整を実行するステップおよび事後較正質量間隔調整を実行するステップは、事前較正帯状対角行列および事後較正帯状対角行列をそれぞれ作成することを伴い、補間関数をそれぞれ実行するそれぞれの行列のそれぞれの帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素は前記事前較正質量間隔調整および前記事後較正質量間隔調整に対応し、さらに、少なくとも1つの較正フィルタから、ピーク形状および質量軸較正の両方を実行する較正帯状対角行列を作成するステップを含む請求項11に記載の方法。

請求項13

事前較正帯状対角行列、較正帯状対角行列、および事後較正帯状対角行列を乗算してトータル・フィルタリング行列にしてから試験試料の較正を行うステップをさらに含む請求項12に記載の方法。

請求項14

ピーク形状および質量軸較正は、トータル・フィルタリング行列と生質量スペクトル・データとの間の行列乗算により実行され、さらに、較正された信号の質量スペクトル分散を推定するため他の帯状対角行列を作成するステップが含まれ、他の帯状対角行列は前記トータル・フィルタリング行列内の対応する要素の平方に等しい帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素を有する請求項13に記載の方法。

請求項15

加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。

請求項16

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項15に記載の方法。

請求項17

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項14に記載の方法。

請求項18

少なくとも1つの較正フィルタは、少なくとも2つの較正フィルタを含み、さらに、前記少なくとも2つの較正フィルタの間でさらに補間を行って所望の質量範囲内の少なくとも1つの他の較正フィルタを取得するステップを含む請求項1に記載の方法。

請求項19

補間ステップは、分解のための行列内ベクトルとして少なくとも2つの較正フィルタを集めるステップ、前記少なくとも2つの較正フィルタを含む前記行列を分解するステップ、前記行列の分解されたベクトルの間で補間を行って補間されたベクトルを取得するステップ、および前記補間されたベクトルを使用して少なくとも1つの他の較正フィルタを再構築するステップを含む請求項18に記載の方法。

請求項20

分解ステップは、特異値分解SVD)およびウェーブレット分解のうちの少なくとも一方を使用して実行される請求項19に記載の方法。

請求項21

1回の質量スペクトル取得で較正データおよび試験データの両方を取得するために連続注入およびオンライン混合のうちの少なくとも一方を介して、事前およびリアルタイムの一方で、較正標準を試験試料に追加するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。

請求項22

トータル・フィルタリング行列を生質量スペクトル・データに適用して較正された質量スペクトル・データを取得するステップを含み、前記トータル・フィルタリング行列は、質量スペクトル範囲内の与えられた較正標準について得られた、測定された同位体ピーク・クラスタ・データ、同じ較正標準について計算される、相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置、指定された質量スペクトル目標ピーク形状関数、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成するために前記計算された相対同位体存在量と前記質量スペクトル目標ピーク形状関数との間で実行される畳み込み演算、および前記トータル・フィルタリング行列に対する少なくとも1つの較正フィルタを取得するために前記畳み込み演算の後に前記測定された同位体ピーク・クラスタ・データと計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間で実行される逆畳み込み演算により形成される生質量スペクトル・データを処理する方法。

請求項23

適用ステップは、トータル・フィルタリング行列により要求されるものと同じ質量軸上に生質量スペクトル・データを補間するステップをさらに含む請求項22に記載の方法。

請求項24

適用ステップは、トータル・フィルタリング行列により与えられるものと異なる所望の任意の質量軸上に較正された質量スペクトル・データを補間するステップをさらに含む請求項22に記載の方法。

請求項25

加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含む請求項22に記載の方法。

請求項26

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項25に記載の方法。

請求項27

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項22に記載の方法。

請求項28

加重回帰演算をある範囲内のピークに適用するステップと、公称ピーク位置および推定された実際のピーク位置のうちの一方に対応する積分されたピーク面積およびピーク位置偏差のうちの一方として回帰係数報告するステップを含む検体の分離および分析のうちの少なくとも一方を実行するために使用される計測器システムから得られたデータに対応するピークを分析するための方法。

請求項29

ピーク形状関数目標ピーク形状関数により与えられるように計測器システムが較正された後に実行される請求項28に記載の方法。

請求項30

加重回帰演算の重みは、ピーク強度分散の逆数に比例する請求項28に記載の方法。

請求項31

適用および報告ステップは、積分されたピーク面積およびピーク位置偏差のうちの少なくとも1つの漸進的改善がプリセット基準を満たすまで反復される請求項28に記載の方法。

請求項32

分析ステップは、加重回帰の重みに基づき積分されたピーク面積およびピーク位置偏差のうちの一方について標準偏差を計算するステップをさらに含む請求項28に記載の方法。

請求項33

計算ステップは、積分されたピーク面積およびピーク位置偏差のうちの少なくとも1つについてt統計量を計算するステップをさらに含み、t統計量は計算されたピーク面積およびピーク配置のうちの少なくとも一方の統計的有意性検定し報告するように適合され、前記統計的有意性は、ピークの有無を示す請求項32に記載の方法。

請求項34

ピーク形状関数を格納するための行列の行の対の第1の行および前記第1の行内に格納されている前記ピーク形状関数の1次導関数を格納するための行列の行の対の第2の行とともに、行列の行の対を計算することを含む、ピーク成分行列を作成するステップをさらに含む請求項28に記載の方法。

請求項35

ピーク形状関数は、ベースライン成分を説明する線形および非線形関数のうちの少なくとも一方をさらに含む請求項34に記載の方法。

請求項36

ピーク形状関数は、目標ピーク形状関数および知られている計測器ピーク形状関数のうちの一方である請求項34に記載の方法。

請求項37

ピーク形状関数およびその1次導関数は、ある範囲において同じであり、両方とも公称ピーク間隔の同じ分数のところでサンプリングされる請求項36に記載の方法。

請求項38

行列の残りの行内の任意のピーク形状関数が位置のある範囲内のそれぞれの公称位置に対応して互いのシフトされたバージョンとして配列されるようにピーク成分行列を完成するステップをさらに含む請求項37に記載の方法。

請求項39

報告された偏差を公称位置に追加することによりピーク成分行列内の公称位置を推定された実際の位置に更新すること、および報告された偏差を前記推定された実際の位置に追加することにより前記ピーク成分行列内の前記推定された実際の位置をさらに精密化され推定された実際の位置に更新することのうちの一方をさらに含む請求項34に記載の方法。

請求項40

ピーク形状関数に対応するデータを補間して公称位置のそれぞれで他の1つのピーク形状関数を取得するステップをさらに含む請求項28に記載の方法。

請求項41

補間ステップは、分解のための行列内のベクトルとしてピーク形状関数を集めるステップ、前記行列に含まれる前記ピーク形状関数を分解するステップ、分解されたベクトルの間で補間を行って補間されたベクトルを取得するステップ、および前記補間されたベクトルを使用して前記公称位置のそれぞれで1つの他のピーク形状関数を再構築するステップを含む請求項40に記載の方法。

請求項42

分解ステップは、特異値分解(SVD)およびウェーブレット分解のうちの少なくとも一方を使用して実行される請求項41に記載の方法。

請求項43

公称位置のそれぞれでピーク形状関数の1次導関数を計算するステップをさらに含む請求項40に記載の方法。

請求項44

ピーク形状関数とそれに対応する1次導関数とを組み合わせることにより、ピーク成分行列を作成するステップをさらに含む請求項43に記載の方法。

請求項45

報告された偏差をピーク成分行列内の公称位置に追加することにより該公称位置を推定された実際の位置に更新すること、および報告された偏差を推定された実際の位置に追加することにより前記ピーク成分行列内の前記推定された実際の位置をさらに精密化され推定された実際の位置に更新することのうちの一方をさらに含む請求項44に記載の方法。

請求項46

ピーク成分行列は、ベースライン成分を説明する線形および非線形関数のうちの少なくとも一方をさらに含む請求項44に記載の方法。

請求項47

適用ステップは、逆行列および行列分解のうちの少なくとも一方を実行するステップをさらに含む請求項28に記載の方法。

請求項48

逆行列および行列分解のうちの少なくとも一方は、帯状であるという性質対称性、およびピーク成分行列の循環性のうちの少なくとも1つに基づく請求項47に記載の方法。

請求項49

逆行列および行列分解のうちの少なくとも一方の結果は、試験試料データを分析するのに先立って計算され、格納される請求項47に記載の方法。

請求項50

計測器システムは、質量分析計および分離装置のうちの少なくとも一方を含み、ある範囲内の位置は、質量に対応する請求項28〜49のいずれか一項に記載の方法。

請求項51

計測器システムは、液体クロマトグラフおよびガスクロマトグラフのうちの少なくとも一方を含み、ある範囲内の位置は、ピークの出現時刻に対応する請求項28〜49のいずれか一項に記載の方法。

請求項52

計測器システムは、分光システムを含み、ある範囲内の位置は、周波数、シフト、および波長のうちの1つに対応する請求項28〜49のいずれか一項に記載の方法。

請求項53

与えられた較正標準から、少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数を取得するステップ、質量スペクトル目標ピーク形状関数を指定するステップ、得られた少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数と前記質量スペクトル目標ピーク形状関数との間で逆畳み込み演算を実行するステップ、および前記逆畳み込み演算の結果から、少なくとも1つの較正フィルタを計算するステップを含む質量分析(MS)計測器システム用の較正フィルタを計算する方法。

請求項54

少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数は、較正標準の知られている分子から多数の同位体のうちの少なくとも1つを含む質量スペクトルのセクションから取得できる請求項53に記載の方法。

請求項55

取得ステップは、与えられた較正標準について、相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置を計算するステップ、ピーク幅の狭い同じ連続関数を使用して前記計算された相対同位体存在量と測定された同位体ピーク・クラスタの両方に畳み込み演算を実行するステップ、および少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数を取得するために前記畳み込み演算の後に前記測定された同位体ピーク・クラスタと計算された同位体ピーク・クラスタとの間で逆畳み込み演算を実行するステップを含む請求項53に記載の方法。

請求項56

少なくとも1つの較正フィルタは、少なくとも2つの較正フィルタを含み、さらに、前記少なくとも2つの較正フィルタの間で補間を行って所望の質量範囲内の少なくとも1つの他の較正フィルタを取得するステップを含む請求項53に記載の方法。

請求項57

補間ステップは、分解のための行列内のベクトルとして少なくとも2つの較正フィルタを集めるステップ、前記少なくとも2つの較正フィルタを含む行列を分解するステップ、前記行列の分解されたベクトルの間で補間を行って補間されたベクトルを取得するステップ、および前記補間されたベクトルを使用して少なくとも1つの他の較正フィルタを再構築するステップを含む請求項56に記載の方法。

請求項58

分解ステップは、特異値分解(SVD)およびウェーブレット分解のうちの少なくとも一方を使用して実行される請求項57に記載の方法。

請求項59

逆畳み込み演算を実行するステップはどれも、フーリエ変換および行列逆演算のうちの少なくとも1つを採用する請求項53に記載の方法。

請求項60

畳み込みおよび逆畳み込み演算を実行するステップはどれも、フーリエ変換、行列乗算、および行列逆演算のうちの少なくとも1つを採用する請求項55に記載の方法。

請求項61

取得ステップは、質量スペクトル・ピーク形状関数に対応するデータを補間して所望の質量範囲内の少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数を取得するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。

請求項62

補間ステップは、分解のための行列内のベクトルとして質量スペクトル・ピーク形状関数を集めるステップ、前記質量スペクトル・ピーク形状関数を含む行列を分解するステップ、前記行列の分解されたベクトルの間で補間を行って補間されたベクトルを取得するステップ、および前記補間されたベクトルを使用して少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数を再構築するステップを含む請求項61に記載の方法。

請求項63

分解ステップは、特異値分解(SVD)およびウェーブレット分解のうちの少なくとも一方を使用して実行される請求項62に記載の方法。

請求項64

実行ステップは、質量スペクトル目標ピーク形状関数と測定された質量スペクトル・ピーク形状関数および計算された質量スペクトル・ピーク形状関数のうちの一方との間で逆畳み込み演算を実行して、前記測定された質量スペクトル・ピーク形状関数および少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数を前記質量スペクトル目標ピーク形状関数に変換するステップを含み、計算ステップは、畳み込み演算から少なくとも1つの較正フィルタを計算するステップを含む請求項61に記載の方法。

請求項65

少なくとも1つの較正フィルタは、少なくとも2つの較正フィルタを含み、さらに、前記少なくとも2つの較正フィルタの間でさらに補間を行って所望の質量範囲内の少なくとも1つの他の較正フィルタを取得するステップを含む請求項64に記載の方法。

請求項66

他の補間ステップは、分解のための行列内のベクトルとして少なくとも2つの較正フィルタを集めるステップ、少なくとも2つの較正フィルタを含む行列を分解するステップ、前記行列の分解されたベクトルの間で補間を行って補間されたベクトルを取得するステップ、および前記補間されたベクトルを使用して少なくとも1つの他の較正フィルタを再構築するステップを含む請求項65に記載の方法。

請求項67

分解ステップは、特異値分解(SVD)およびウェーブレット分解のうちの少なくとも一方を使用して実行される請求項66に記載の方法。

請求項68

質量スペクトル目標ピーク形状関数と測定された質量スペクトル・ピーク形状関数および計算された質量スペクトル・ピーク形状関数のうちの1つとの間で逆畳み込み演算を実行するステップは、フーリエ変換および行列逆演算のうちの少なくとも一方を採用する請求項64に記載の方法。

請求項69

計算ステップの後に実行される事前較正ステップにおいて、計算された相対同位体存在量の重心質量と測定された同位体ピーク・クラスタの重心質量との間の最小二乗当てはめに基づき質量スペクトル同位体ピークを事前位置揃えするステップをさらに含む請求項53に記載の方法。

請求項70

生質量スペクトル・データに対し事前較正計測器依存変換を実行するステップ、および試験試料に対応する計算されたデータ・セットに対し事後較正計測器依存変換を実行するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。

請求項71

事前較正計測器依存変換を実行するステップおよび事後較正計測器依存変換を実行するステップは、事前較正帯状対角行列および事後較正帯状対角行列をそれぞれ作成することを伴い、補間関数をそれぞれ実行するそれぞれの行列のそれぞれの帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素は前記事前較正計測器依存変換および前記事後較正計測器依存変換に対応し、さらに、少なくとも1つの較正フィルタから、ピーク形状および質量軸較正の両方を実行する較正帯状対角行列を作成するステップを含む請求項70に記載の方法。

請求項72

事前較正帯状対角行列、較正帯状対角行列、および事後較正帯状対角行列を乗算してトータル・フィルタリング行列にしてから試験試料の較正を行うステップをさらに含む請求項71に記載の方法。

請求項73

ピーク形状および質量軸較正は、トータル・フィルタリング行列と生質量スペクトル・データとの間の行列乗算により実行され、さらに、較正された信号の質量スペクトル分散を推定するため他の帯状対角行列を作成するステップが含まれ、前記他の帯状対角行列は前記トータル・フィルタリング行列内の対応する要素の平方に等しい帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素を有する請求項72に記載の方法。

請求項74

加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含む請求項73に記載の方法。

請求項75

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項74に記載の方法。

請求項76

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項73に記載の方法。

請求項77

非一様な間隔をあけた質量取得間隔から一様な間隔をあけた質量間隔への事前較正質量間隔調整を実行するステップ、および前記一様な間隔をあけた質量間隔から報告間隔への事後較正質量間隔調整を実行するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。

請求項78

事前較正質量間隔調整を実行するステップおよび事後較正質量間隔調整を実行するステップは、事前較正帯状対角行列および事後較正帯状対角行列をそれぞれ作成することを伴い、補間関数をそれぞれ実行するそれぞれの行列のそれぞれの帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素は前記事前較正質量間隔調整および前記事後較正質量間隔調整に対応し、さらに、少なくとも1つの較正フィルタから、ピーク形状および質量軸較正の両方を実行する較正帯状対角行列を作成するステップを含む請求項77に記載の方法。

請求項79

事前較正帯状対角行列、較正帯状対角行列、および事後較正帯状対角行列を乗算してトータル・フィルタリング行列にしてから試験試料の較正を行うステップをさらに含む請求項78に記載の方法。

請求項80

ピーク形状および質量軸較正は、トータル・フィルタリング行列と生質量スペクトル・データとの間の行列乗算により実行され、さらに、較正された信号の質量スペクトル分散を推定するため他の帯状対角行列を作成するステップが含まれ、他の帯状対角行列は前記トータル・フィルタリング行列内の対応する要素の平方に等しい帯状対角にそったそれぞれの非ゼロ要素を有する請求項79に記載の方法。

請求項81

加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含む請求項80に記載の方法。

請求項82

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項81に記載の方法。

請求項83

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項80に記載の方法。

請求項84

1回の質量スペクトル取得で較正データおよび試験データの両方を取得するために連続注入およびオンライン混合のうちの少なくとも一方を介して、事前およびリアルタイムの一方で、較正標準を試験試料に追加するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。

請求項85

トータル・フィルタリング行列を生質量スペクトル・データに適用して較正された質量スペクトル・データを取得するステップを含み、前記トータル・フィルタリング行列は、与えられた較正標準から、少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数を取得し、質量スペクトル目標ピーク形状関数を指定し、前記得られた少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数と前記質量スペクトル目標ピーク形状関数との間で逆畳み込み演算を実行し、そして前記逆畳み込み演算の結果から、少なくとも1つの較正フィルタを計算することにより形成される生質量スペクトル・データを処理する方法。

請求項86

適用ステップは、さらに、トータル・フィルタリング行列により要求されるものと同じ質量軸上に生質量スペクトル・データを補間するステップを含む請求項85に記載の方法。

請求項87

適用ステップは、さらに、トータル・フィルタリング行列により与えられるものと異なる所望の任意の質量軸上に較正された質量スペクトル・データを補間するステップを含む請求項85に記載の方法。

請求項88

加重回帰演算を較正された質量スペクトル・データに適用し、積分されたピーク面積、実際の質量、および前記質量スペクトル・ピークに対する他の質量スペクトル・ピーク・データのうちの少なくとも1つを取得するステップをさらに含む請求項85に記載の方法。

請求項89

加重回帰演算の重みは、質量スペクトル分散の逆数に比例する請求項88に記載の方法。

請求項90

多変量統計分析を較正された質量スペクトル・データに適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うステップをさらに含む請求項85に記載の方法。

請求項91

ピーク幅の測定結果を取得するためにピーク位置の関数としてピーク幅を測定すること、関数を決定するために前記測定結果に最小二乗当てはめを適用すること、および位置のある範囲にわたって前記関数の数学的逆を積分し、前記ピーク幅を正規化するために使用可能な変換関数を取得することを含む位置のある範囲内のピークを含むデータ・トレース内のピーク幅を正規化するための方法。

請求項92

ピーク幅の測定は、知られている標準に関して実行される測定に基づく請求項91に記載の方法。

請求項93

関数を使用してピーク幅を正規化することをさらに含む請求項91に記載の方法。

請求項94

関数の逆は、関数の逆関数である請求項91に記載の方法。

請求項95

積分するときに定義される定数は、変換関数を取得するときに削除される請求項91に記載の方法。

請求項96

スペクトルは、液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計からのスペクトルであり、関数は、少なくとも1つの対数演算を含む請求項91に記載の方法。

請求項97

スペクトルは、フーリエ変換質量分析計からのスペクトルであり、関数は、対数関数である請求項91に記載の方法。

請求項98

スペクトルは、飛行時間型質量分析計からのスペクトルであり、関数は、平方根関数である請求項91に記載の方法。

請求項99

スペクトルは、ガス・クロマトグラフ質量分析計からのスペクトルであり、関数は、対数関数を含む請求項91に記載の方法。

請求項100

スペクトルは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計からのスペクトルであり、関数は、逆関数である請求項91に記載の方法。

請求項101

少なくとも1つの内部較正標準を含むデータに対し外部較正を実行して外部較正データを与えること、および前記外部較正データを内部データ較正手順に対する入力データとして使用することを含む計測器により出力されるデータを較正するための方法。

請求項102

検出に先立ってオンラインおよびオフラインの混合の1つを使用して、試料とともに測定される内部較正標準を導入することをさらに含む請求項101に記載の方法。

請求項103

内部較正標準は、試料の既存の成分である請求項101に記載の方法。

請求項104

内部較正手順は、請求項1〜100のうちの少なくとも1つのステップを実行することを含む請求項101に記載の方法。

請求項105

データ内で標準として働く少なくとも1つのピークを選択すること、前記少なくとも1つの選択されたピークに基づき較正フィルタを導くこと、および較正されたデータを出力するために、前記較正フィルタを使用して前記データ内の他のピークを分析することを含む、内部標準を試料に追加することなく、複数の成分を含む試料からのデータを較正するための方法。

請求項106

選択は、複数のピークを選択することを含み、導くことは、それぞれの選択されたピークに対する較正フィルタを導くことを含み、さらに、選択されたピークの間の位置で分析するために追加較正フィルタおよびピークのうちの少なくとも一方の1つを出力するために補間することを含む請求項105に記載の方法。

請求項107

較正フィルタを生成しつつ、少なくとも1つの選択されたピークを元のピークと比較してほんの僅かな幅の知られている関数と畳み込むことをさらに含む請求項105に記載の方法。

請求項108

較正されたデータに統計分析を適用し、試験試料の定量化、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うことをさらに含む請求項105に記載の方法。

請求項109

請求項1〜100のうちの少なくとも1つのステップを実行することをさらに含む請求項105に記載の方法。

請求項110

質量分析計により出力されるデータのデータ分析関数を実行するためのコンピュータが関連付けられている質量分析計で使用するために、請求項1〜27、53〜103、または105〜108のいずれか1つの請求項の方法を実行するコンピュータ可読プログラム命令が置かれているコンピュータ可読媒体

請求項111

計測器システムにより出力されるデータのデータ分析関数を実行するためのコンピュータが関連付けられている計測器システムで使用するために、請求項28〜49、または91〜108のいずれか1つの請求項の方法を実行するコンピュータ可読プログラム命令が置かれているコンピュータ可読媒体。

請求項112

質量分析計により出力されるデータのデータ分析関数を実行し、請求項1〜27、53〜103、または105〜108のいずれか1つの請求項の方法を実行するコンピュータが関連付けられている質量分析計。

請求項113

計測器システムにより出力されるデータのデータ分析関数を実行し、請求項28〜49、または91〜108のいずれか1つの請求項の方法を実行するコンピュータが関連付けられている計測器システム。

技術分野

0001

本出願は、参照により内容全体が本明細書に組み込まれている、2003年10月20日に出願した米国特許出願第10/689,313号の一部継続出願であり、その優先権を主張するものである。

0002

本発明は、一般に、分析装置および質量分析(MS)の分野に関するものであり、より具体的には、そのような分析装置およびMS計測器ステム較正し、対応するデータを処理するための方法に関する。

背景技術

0003

質量分析(MS)は、分子イオン化および断片化(fragmentation)、断片イオンのその質量による分散、および適切な検出器でのイオン断片の適切な検出に頼る100年前からある古い技術である。異なる特性を有する異なる種類のMS計装を生み出すこれら3つの重要なMSプロセスのそれぞれを達成する方法は多数ある。

0004

大きな分子を細切れにして多数の小さな分子にし、それと同時にそれらをイオン化して、質量分散の前に適切な帯電状態となるようにするために4種類の主要なイオン化手法が一般に使用される。これらのイオン化方式は、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)、高エネルギー電子の衝撃による電子衝撃イオン化EI)、他の反応化合物を使用することによる化学イオン化CI)、およびマトリクス支援レーザー脱離およびイオン化(MALDI)を含む。ESIおよびMALDIの両方は、さらに、試料導入の手段としても使用される。

0005

試料中の分子がイオン化を通じて断片化され、帯電すると、それぞれの断片は、対応する質量対電荷比(m/z)を有し、これは、質量分散の基準となる。使用される物理原理に基づき、質量分散を達成するさまざまな方法があり、性質は類似しているが詳細は異なる質量スペクトル・データが得られる。いくつかの一般に見られる構成は、扇形磁場型、四重極型、飛行時間型(TOF)、およびフーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FT ICR)を含む。

0006

扇形磁場型構成は、最も簡単な質量分散技術であり、異なるm/z比を持つイオンは、磁場内で分離し、検出器要素の固定された配列またはアプリケーションに応じて異なるイオンを検出するように調整できる小さな検出器の移動可能な集まりを使ってイオンが検出される空間的に隔てられた場所でこの磁場から出る。これは、試料からのすべてのイオンが時間順に分離されるのではなく空間内で同時に分離される同時構成である。

0007

四重極型構成は、たぶん最も普及しているMS構成であり、この構成では、異なるm/z値のイオンは一組の(通常は4本の)平行な棒から、それらの棒の対に適用されるRF/DC比を操作することにより除去される。特定のm/z値のイオンのみが、与えられたRF/DC比でそれらの棒を通るトリップ切り抜け、その結果断片イオンの順次的分離および検出が行われる。その順次的な性質から、検出には検出器要素が1つあればよい。イオン・トラップを使用する他の構成は、四重極型MSの特別な実施例と考えることができる。

0008

飛行時間型(TOF)構成は、断片イオンを電場の下で加速し、その後検出前高真空飛行管を通してドリフトする他の順次分散および検出方式である。異なるm/z値のイオ
ンは、異なる時刻に、検出器に到着するであろうし、到着時刻は、較正基準(複数でもよい)を使用してm/z値に関連付けることができる。

0009

フーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FT ICR)では、断片化およびイオン化の後に、すべてのイオンをイオン・サイクロトロンに導入することができ、その場合、異なるm/z比のイオンはトラップされ、異なる周波数共鳴する。これらのイオンは、高周波(RF)信号および検出器上の時間の関数として測定されたイオン強度の適用によりパルスに従って送り出せる(can be pulsed out)。測定された時間領域データのフーリエ変換実行後、較正基準(複数でもよい)を使用して周波数をm/z比に戻して関連付けることができる周波数領域データを取り戻す。

0010

イオンは、ファラデーカップを使用して直接検出するか、またはイオンを光に変換する変換器の後の電子増倍管EMT)/板(EMP)(electron multiplier tubes(EMT)/plates(EMP))または光増倍管(PMT)を使用することにより間接的に検出することができる。図5A、5B、および5Cは、従来技術により、m/z比の関数としてそれぞれプロットされた異なるイオン強度スケール110、120、および130上の典型的な質量スペクトル・データ・トレースを例示する図である。

0011

過去100年間に、MS計装に関して長足の進歩を遂げ、高スループット高分解能、および高感度動作を目的として設計、製作されたさまざまな特色を持つ計測器が現れている。計装開発は、単一イオン検出をさまざまな同位体から出るイオン断片の観測を行える単位質量分解能を持つ大半の市販MSシステム上でルーチン作業として行うことができる段階に到達している。ハードウェアの精巧さとは著しく対照的に、現代的なMS計装によって生じる膨大な量のMSデータを体系的に、効果的に分析することについてはごくわずかのことしか行われてこなかった。

0012

典型的な質量分析計では、ユーザは、通常、注目する質量スペクトルm/z範囲に入るいくつかの断片イオンを有する標準的物質を必要とするか、または供給される。ベースライン効果、同位体干渉質量分解能、および質量への分解能依存性前提条件として、少数のイオンの断片のピーク位置が、最大ピーク時に低次多項式当てはめにより重心またはピーク最大値に関して決定される。次いで、これらのピーク位置は、1次または他の高位次数の多項式を通じてこれらのイオンの知られているピーク位置に当てはめられ、質量(m/z)軸を較正する。

0013

次に、質量軸較正の後、標準質量スペクトル・データ・トレースに対しピーク分析が実行され、ピーク(イオン)が識別される。このピーク検出ルーチンは、実験に基づいた複合プロセスであり、ピークショルダー、データ・トレース内のノイズ化学的背景(chemical backgrounds)または汚染に起因したベースライン、同位体ピーク干渉などが考慮される。

0014

識別されたピークについて、重心計算(centroiding)というプロセスは、通常、積分されたピーク面積(integrated peak areas)およびピーク位置を計算しようとするときに適用される。上で概略を述べた多数の干渉要因および他のピークおよび/またはベースラインの存在下でピーク面積を決定する際の固有の難しさのため、これは、重心計算の質の客観的尺度なしで同位体ピークを出現させたり、消したりしうる多数の調整可能なパラメータによって悩まされるプロセスである。そこで、質量分析データ処理に対する従来のアプローチの多くの欠点のうちいくつかについて説明することにする。

0015

欠点の1つは、質量精度の欠如である。現在使用されている質量較正では、通常、単位質量分解能(有意な同位体ピークの有無を視覚化する能力)を有する従来のMSシステム
において0.1amu(m/z単位)よりもよい質量決定精度は得られない。より高い質量精度を達成し、タンパク質同定のためのペプチドマッピングなどの分子フィンガープリンティング(molecular fingerprinting)の曖昧さを減らすために、四重極TOF(qTOF)またはFT ICR MSなどのより高い分解能を有するMSシステムに切り換えなければならず、コストが非常に高く付く。

0016

他の欠点としては、ピーク積分誤差が大きいという点である。質量スペクトル・ピーク形状、その変動性、同位体ピーク、ベースラインおよびその他の背景信号、およびランダム・ノイズが関わるため、現在のピーク面積積分は、強いまたは弱い質量スペクトル・ピークに対し大きな誤差(系統誤差偶然誤差)を伴う。

0017

さらに他の欠点としては、同位体ピークに関する問題点がある。現在のアプローチは、単位質量分解能を有する従来のMSシステム上では部分的に重なり合う質量スペクトル・ピークを通常発するさまざまな同位体からの寄与を分離するよい方法ではない。使用される実証的アプローチでは、隣り合う同位体ピークからの寄与を無視するか、またはそれらを過大評価し、その結果、支配的な同位体ピークおよび弱い同位体ピークの大きなバイアスに対する誤差を生じるか、または弱いピークを完全に無視することすらする。複数の電荷のイオンが関係する場合、隣り合う同位体ピークの間のm/z質量単位分離間隔が減るため、この状況はいっそう悪化する。

0018

さらに他の欠点は、非線形演算である。現在のアプローチでは、各段において多数の経験的に調整可能なパラメータを伴う多段分離プロセス(multi-stage disjointed process)を使用する。系統誤差(バイアス)は、それぞれの段で発生し、コントロールされない、予測不可能な、非線形的な形で後の段へ伝搬してゆき、アルゴリズムにより意味のある統計量データ処理品質および信頼性の尺度としてレポートすることは不可能である。

0019

他の欠点は、支配的な系統誤差である。工業プロセス制御および環境監視からタンパク質同定またはバイオマーカー発見までMSアプリケーションの大半では、計測器の感度または検出限度は、常に関心の的であり、測定誤差または信号中のノイズ寄与を最小にするため多くの計測器システムにおいて大きな努力が払われてきた。残念なことに、現在使用されているピーク処理アプローチでは、生データ中のランダム・ノイズをさらに超える系統誤差の発生源を生じさせることが多く、計測器感度の制限要因となる。

0020

さらに欠点として、数学的および統計的な矛盾がある。現在使用されている多くの実証的アプローチでは、質量スペクトル・ピーク処理全体が、数学的にまたは統計的に矛盾するものとなっている。ピーク処理の結果は、ランダム・ノイズを含まないわずかに異なるデータ、またはわずかに異なるノイズを含む同じ合成データに関して、劇的に変化しうる。つまり、ピーク処理の結果は、ロバストではなく、特定の実験またはデータ収集によっては不安定な場合があるということである。

0021

さらに、他の欠点として、計測器間のバラツキがある。これまで、機械電磁気、または環境許容誤差のバラツキのせいで、異なるMS計測器から得られた生の質量スペクトル・データを直接比較することは困難であるのがふつうであった。現在のアドホックなピーク処理が生データに適用された場合、異なるMS計測器からの結果、または異なる測定時期の同じ計測器からの結果を定量的に比較することの困難さを増すだけである。他方、連続質量スペクトル・データを直接比較するか、または異なる時期のある計測器、異なる計測器、または異なる種類の計測器からのピーク処理結果を比較する必要性は、確立されているMSライブラリでのコンピュータ検索を介した不純物検出またはタンパク質同定を目的として次第に高まってきている。差分解析のため試料のさまざまなグループからの質量スペクトル・データが互いに比較されるプロテオミクスメタノミクス、またはリピド
ミックスにおけるバイオマーカー発見に対するさらに大きな必要性が存在する。

0022

したがって、質量分析(MS)計測システムを較正し、MSデータを処理するための、従来技術の上述の不備および欠点を克服する方法を用意することが望ましく、非常に有利なことであろう。
米国特許出願第10/689,313号
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発明が解決しようとする課題

0023

上述の問題点は、従来技術の他の関連する問題とともに、質量分析(MS)および他の計測器システムを較正し、MSおよび他のデータを処理する方法である、本発明により解決される。

課題を解決するための手段

0024

本発明の一態様によれば、質量分析(MS)計測器システムの少なくとも1つの較正フィルタを取得するための方法が提示される。質量スペクトル範囲内の測定された同位体ピーク・クラスタ・データは、与えられた較正標準に関して得られる。相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量配置は、与えられた較正標準について計算される。それぞれの質量スペクトル範囲内の中心に位置する質量スペクトル目標ピーク形状関数が指定される。計算された相対同位体存在量と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の畳み込み演算が実行され、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成する。少なくとも1つの較正フィルタを取得する畳み込み演算の後に、測定された同位体ピーク・クラスタ・データと計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間の逆畳み込み演算が実行される。

0025

本発明の他の態様によれば、生質量スペクトル・データを処理する方法が提示される。較正された質量スペクトル・データを得るために生質量スペクトル・データにトータルフィルタリング行列(total filtering matrix)が適用される。トータル・フィルタリン
行列は、質量スペクトル範囲内の与えられた較正標準に関して得られる、測定された同位体ピーク・クラスタ・データにより形成される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、同じ較正標準について計算される、相対同位体存在量およびそれに対応する同位体の実際の質量位置により形成される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、質量スペクトル範囲内に中心を置く指定された質量スペクトル目標ピーク形状関数により形成される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、計算された相対同位体存在量と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間で実行される畳み込み演算により形成され、計算された同位体ピーク・クラスタ・データを形成する。トータル・フィルタリング行列は、さらに、トータル・フィルタリング行列に対する少なくとも1つの較正フィルタを取得する畳み込み演算の後に、測定された同位体ピーク・クラスタ・データと計算された同位体ピーク・クラスタ・データとの間の逆畳み込み演算により形成される。

0026

本発明のさらに他の態様によれば、質量分析(MS)計測器システムから得られた質量スペクトル・データに対応する質量スペクトル・ピークを分析するための方法が提示される。加重回帰演算は、質量スペクトル範囲内の質量スペクトル・ピークに適用される。回帰係数は、見かけの質量および推定実質量の1つに対応する積分ピーク面積および質量偏差の1つとして報告される。

0027

本発明のさらに他の態様によれば、質量分析(MS)計測器システムの較正フィルタを計算するための方法が提示される。少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数は、与えられた較正標準から得られる。それぞれの質量スペクトル範囲内の中点を中心とする質量スペクトル目標ピーク形状関数が指定される。得られた少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の逆畳み込み演算が実行される。逆畳み込み演算の結果から、少なくとも1つの較正フィルタが計算される。

0028

本発明のさらに他の態様によれば、生質量スペクトル・データを処理する方法が提示される。較正された質量スペクトル・データを得るために生質量スペクトル・データにトータル・フィルタリング行列が適用される。トータル・フィルタリング行列は、与えられた較正標準から、少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数を取得することにより形成される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、それぞれの質量スペクトル範囲内の中点を中心とする質量スペクトル目標ピーク形状関数を指定することにより形成される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、得られた少なくとも1つの質量スペクトル・ピーク形状関数と質量スペクトル目標ピーク形状関数との間の逆畳み込み演算を実行することにより実行される。トータル・フィルタリング行列は、さらに、逆畳み込み演算の結果から、少なくとも1つの較正フィルタを計算することにより形成される。

0029

本発明のさらに他の態様によれば、トータル・フィルタリング行列を更新する方法が提示される。較正された質量スペクトル・データを得るために少なくとも1つの内部標準を含む生質量スペクトル・データにトータル・フィルタリング行列が適用される。新しいトータル・フィルタリング行列は、較正された質量スペクトル・データを入力として使用し、それに含まれる少なくとも1つの内部標準を標準として使用する前述の較正手順を適用することにより形成される。2つのトータル・フィルタリング行列を乗算するか、または2つのフィルタに畳み込み演算を実行することにより、更新されたトータル・フィルタリング行列を形成し、この生質量スペクトル・データおよび他の生質量スペクトル・データに適用して、外部較正および内部較正された質量スペクトル・データを得る。

0030

この方法は、さらに、検出に先立ってオンラインおよびオフラインの混合の1つを使用して、試料とともに測定される内部較正標準を導入することを含むことができる。内部較正標準は、試料の既存の成分であってよい。内部較正手順は、上記の方法のステップを実行することを含むことができる。

0031

本発明は、さらに、ある範囲の位置内のピークを含むデータ・トレースにおいてピーク幅正規化するために、ピーク幅をピーク位置の関数として測定してピーク幅の測定結果を求め、その測定結果に対し最小二乗当てはめを適用して関数を決定し、その範囲にわたってその関数の数学的逆を積分してピーク幅を正規化するのに使用可能な変換関数を求める方法を対象とする。ピーク幅の測定は、知られている標準に関して実行される測定に基づく。この関数を使用して、ピーク幅を正規化する。この関数の逆(inverse of the function)は、この関数の逆関数(reciprocal of the function)であってよい。積分するときに定義される定数は、変換関数を求めるときに削除される。スペクトル液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計からのスペクトルである場合、この関数は、少なくとも1つの対数演算を含むことができる。スペクトルがフーリエ変換質量分析計からのスペクトルである場合、この関数は、対数関数とすることができる。スペクトルが飛行時間型質量分析計からのスペクトルである場合、この関数は、平方根関数とすることができる。スペクトルがガスクロマトグラフ質量分析計からのスペクトルである場合、この関数は、対数関数を含むことができる。スペクトルがマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析計からのスペクトルである場合、この関数は、逆関数とすることができる。

0032

さらに他の態様によれば、本発明は、標準として働くデータ内の少なくとも1つのピークを選択し、その少なくとも1つの選択されたピークに基づき較正フィルタを導き、その較正フィルタを使用してデータ内の他のピークを分析し、較正されたデータを生成することにより、内部標準を試料に加えることなく、非常に多数の成分を含む試料からデータを較正する方法を対象とする。選択することは、複数のピークを選択することを含むことができ、導くことは、それぞれの選択されたピークに対する較正フィルタを導き、補間により選択されたピーク間の位置で分析する追加較正フィルタおよびピークの少なくとも一方のうちの1つを生成することを含むことができる。少なくとも1つの選択されたピークは、元のピークと比較して無視できるくらい小さい幅の知られている関数と畳み込むことができ、その間に較正フィルタを生成する。較正されたデータに対し、統計分析を実行し、試験試料の定量、同定、および分類のうちの少なくとも1つを行うことができる。上述の方法のうちのさまざまなものを、本発明のこの態様と併用することができる。

0033

本発明は、さらに、上述の方法のいくつかの態様を実践するための分析装置システムも対象とし、特に、本明細書で述べられている方法のうちの少なくとも1つを利用するように構成された、すべてのタイプのさまざまな種類の多数の質量分析計を対象とする。

0034

本発明のさらに他の態様によれば、データ記憶媒体は、分析装置システムに関連付けられたコンピュータに上述の方法のいくつかの態様を実行させ、特に、すべてのタイプのさまざまな種類の多数の質量分析計のうちの1つまたは複数に本明細書で述べられている方法のうちの少なくとも1つを実行させるためのコンピュータ可読命令を含むことができる。
本発明のこれらおよび他の態様、特徴、および利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明から、添付図面とともに読むことで、明白になるであろう。

発明を実施するための最良の形態

0035

本発明は、主に質量分析(MS)計測器システムを較正し、MSデータを処理するための方法を対象とする。後述のように、本発明の特定の態様は、他の種類の計測器の較正に非常に役立つ場合がある。

0036

本発明は、さまざまな形態のハードウェア、ソフトウェアファームウェア特殊目的プロセッサ、またはそれらの組合せで実装することができることは理解されるであろう。
本発明は、ハードウェアとソフトウェアとの組合せとして実装されるのが好ましい。さらに、ソフトウェアは、プログラム記憶デバイス上に実体として具現化されたアプリケーション・プログラムとして実装されるのが好ましい。アプリケーション・プログラムは、好適なアーキテクチャを含む機械にアップロードされ、その機械により実行されることができる。機械は、1つまたはそれ以上の中央演算処理装置(CPU)、ランダム・アクセスメモリ(RAM)、および(複数の)入出力(I/O)インターフェイスなどのハードウェアを備えるコンピュータ・プラットフォームとして実装されるのが好ましい。コンピュータ・プラットフォームは、さらに、オペレーティング・システムおよびマイクロ命令コードも含む。本明細書で説明されるさまざまなプロセスおよび関数は、オペレーティング・システムを介して実行されるマイクロ命令コードの一部またはアプリケーション・プログラムの一部(またはそれらの組合せ)とすることができる。さらに、他のさまざまな周辺デバイス追加データ記憶デバイスおよび印刷デバイスなどのコンピュータ・プラットフォームに接続することができる。

0037

さらに、付属の図に示されている構成要素であるシステム・コンポーネントおよび方法ステップの一部はソフトウェアで実装されるのが好ましいため、システム・コンポーネント(またはプロセス・ステップ)間の実際の接続は、本発明がプログラムされる方法により異なる場合があることがさらに理解されるであろう。本明細書の教示が与えられれば、当業者は、本発明のそれらの実装および類似の実装または構成を考えることができるであろう。

0038

本発明を使用できる典型的なシステムは、図1図2、および図3を参照しつつ説明される。
図1を参照すると、本発明の特徴を組み込んだ、上述のような、タンパク質またはその他の分子を分析するために使用できる、分析システム10のブロック図が示されている。本発明は、図面に示されている単一の実施形態を参照しつつ説明されるが、本発明は多くの代替え形態の実施形態で具現化できることは理解されるであろう。さらに、好適な種類のコンポーネントを使用することも可能であろう。分析システム10は、試料調製部分12、質量分析計部分14、データ分析システム16、およびコンピュータ・システム18を備える。試料調製部分12は、注目する分子を含む試料を、米国マサチューセッツ州のThermo Electron Corporation of Waltham社が製造するFinnegan LCQ Deca XP Maxなどのシステム10に導入するタイプの、試料導入ユニット20を備えることができる。試料調製部分12は、さらに、システム10により分析されるタンパク質などの、検体予備的分離を実行するために使用される、検体分離ユニット22を備えることもできる。検体分離ユニット22は、カリフォルニア州ハーキュリーズのBio-Rad Laboratories, Inc.社によって製造されて当業者によく知られているような、液体またはガス・クロマトグラフ分離用のクロマトグラフィカラムゲル分離ユニットのうちの1つとすることができる。一般に、電圧またはPH勾配ゲル印加され、これにより、タンパク質などの分子は、1次元分離に対する毛細管を通る移動速度(分子量、MW)および等電焦点(Hannesh, S.M., Electrophoresis 21、1202-1209頁(2000年))などの1変数の関数として分離されるか、または等電焦点およびMW(2次元分離)などによるそれらの変数のうちの複数により分離される。後者の実施例はSDS−PAGEと呼ばれる。

0039

質量分離部分14は、従来の質量分析計とすることができ、入手できるものであればどのようなものでもよいが、MALDI−TOF、四重極MS、イオン・トラップMS、またはFTICRーMS、またはqTOFまたは3段四重極(TSQ)などの何らかの組合せのうちの1つであるのが好ましい。MALDIまたは電気スプレー・イオン化イオン源を持つ場合、そのようなイオン源は、さらに、質量分析計部分14への試料入力を備えることもできる。一般に、質量分析計部分14は、イオン源24、質量対電荷比(または単に質量と呼ぶ)でイオン源24により発生するイオンを分離する質量スペクトル分析装置
26、質量スペクトル分析装置26からイオンを検出するイオン検出器部分28、および質量分析計部分14が効率よく動作するように十分な真空状態を維持する真空システム30を備えることができる。質量分析計部分14がイオン移動度分析計である場合、一般に、真空システムは不要である。

0040

データ分析システム16は、イオン検出器部分28からの信号をデジタル・データに変換する1つまたは一連アナログ・デジタル・コンバータ(図に示されていない)を含むことができる、データ収集部分32を備える。このデジタル・データは、リアルタイム・データ処理部分34に供給され、そこで、総和および/または平均などの演算を通じてデジタル・データを処理する。後処理部分36は、ライブラリ検索データ格納、およびデータ報告を含む、リアルタイム・データ処理部分34からのデータをさらに処理するために使用できる。

0041

コンピュータ・システム18は、試料調製部分12、質量分析計部分14、およびデータ分析システム16の制御を後述のようにして行う。コンピュータ・システム18は、従来のコンピュータ・モニタ40を備え、適切な画面表示上でデータの入力を行い、実行された分析の結果を表示することができる。コンピュータ・システム18は、例えば、Windows(登録商標)またはUNIX(登録商標)オペレーティング・システム、または他の適切なオペレーティング・システムで動作する、適切なパーソナル・コンピュータをベースとすることができる。コンピュータ・システム18は、通常、オペレーティング・システムおよび後述のデータ分析を実行するためプログラムが格納されるハードドライブ42を備える。CDまたはフロッピーディスク受け入れるドライブ44は、コンピュータ・システム18上に本発明によるプログラムをロードするために使用される。試料調製部分12および質量分析計部分14を制御するプログラムは、通常、システム10のこれらの部分用のファームウェアとしてダウンロードされる。データ分析システム16は、C++、JAVA、またはVisual Basicなどの複数のプログラミング言語のどれかで後述の処理ステップを実装するために書かれたプログラムとすることができる。

0042

図2は、試料調製部分12が試料導入ユニット20および1次元試料分離装置52を備える分析システム50のブロック図である。例えば、装置52は、1次元電気泳動装置とすることができる。分離された試料成分は、例えば、一連の紫外線センサなどのマルチチャネル検出装置54、または質量分析計により分析される。データ分析が実行される方法について以下で説明する。

0043

図3は、試料調製部分12が試料導入ユニット20および第1の次元試料分離装置62および第2の次元試料分離装置64を備える分析システム60のブロック図である。例えば、第1の次元試料分離装置62および第2の次元試料分離装置64は、2つの連続する、異なる液体クロマトグラフ・ユニットであるか、または2次元電気泳動装置としてまとめることができる。分離された試料成分は、例えば、245nmの帯域通過フィルタを備える紫外線(UV)検出器などのシングル・チャネル検出装置66、またはグレースケールゲル画像処理装置により分析される。ここでもまた、データ分析が実行される方法について以下で説明する。

0044

図4を参照すると、一般的に本発明により、生データが70で取得される。72で、より適切な座標系への順方向変換は、ピーク位置の関数としてピーク幅のバラツキを補正するように実行される。その後、プロファイルおよびピーク位置較正74が、以下で詳細に説明するように、本発明により実行される。76で、データの逆方向変換は、元の座標系に変換しなおすために実行される。この結果は、78の較正済みデータである。

0045

質量分析計較正および質量スペクトル・ピーク分析を組み合わせて1つの全体的な較正プロセスにし、上述のすべての問題点を解消する質量分析データを処理する新規性のあるアプローチについて、説明することにする。質量とピーク形状の両方における適切で正確な質量分析計較正は、質量スペクトル・データ分析の次の段階では正確なピーク同定、検体定量化、および試料分類を行うための強固な基盤を提示する。

0046

次に、本発明の例示的な一実施形態による質量スペクトル較正の説明を行うことにする。質量スペクトル較正の説明は、質量スペクトル較正標準、相対同位体存在量の計算、質量プリアライメント、質量スペクトル・ピーク形状関数、ピーク形状関数補間、較正フィルタおよびその補間、較正フィルタの適用、および較正フィルタを通る誤差伝搬に関係する説明を含む。
質量スペクトル・ピーク形状およびその質量依存性を考慮せずに単独で質量を較正する代わりに、それらすべてを含む完全な較正が全体的プロセスの一部として実行される。この完全な較正プロセスにはいくつかの重要ステップがあり、それらについては以下で詳細に説明する。

0047

次に、本発明の例示的な一実施形態による質量スペクトル較正の説明を行うことにする。質量断片が質量範囲全体にわたってばらまかれている較正標準を選択し、質量較正および質量スペクトル・ピーク形状情報の両方を与えるようにする。標準分子を形成する元素内の自然に生じる同位体が存在するため、通常複数の同位体ピークが、異なる存在比の同じイオン断片について観察することができる。

0048

ガス・クロマトグラフ質量分析法(GC/MS)で一般に使用される標準は、ペルフルオロトリブチルアミン化学式:C12F27N、分子量:671)である。これは、69、100、119、131、169、219、264、364、414、464、502、などでEI断片を持つ(スペクトルの例については図5を参照)。この標準は、通常、市販のGC/MS計測器に埋め込まれ、分子をコンピュータ制御弁を通じて較正時に容易に蒸発させMSシステム内に拡散させることができる。

0049

さまざまなイオン化方式に基づく他の標準は、注目する質量範囲カバーする複数の適切に特徴付けられたイオン断片に断片化することができるポリマーおよび合成ペプチドを含む。例えば、第2の断片化が実行されるタンデム型MSシステムでは、この二次的断片化−ペプチド・シーケンシングのよく知られているプロセス−のときに、連続するアミノ酸喪失のため、親ペプチド・イオンから規則正しい間隔で並ぶ質量スペクトル・ピークを有する質量スペクトルを得ることができる。ESIモードでの多くの無傷のタンパク質は、質量(m/z)範囲内で1桁またはそれ以上までカバーする質量スペクトル・ピークを発生する、ときには1から10またはそれ以上の複数の電荷(z)を帯びる。

0050

次に、本発明の例示的な一実施形態による相対同位体存在量の計算の説明を行うことにする。異なる同位体ピークの間で完全な質量分離を行わない質量分析計では、まず、相対同位体存在量および正確な質量位置を計算する必要がある。図6Aおよび6Bは、同位体ピーク間のこの制限された質量分離を示している。いくつかの公開されている方法を使用して、元素組成、イオン断片内に含まれる元素の知られている相対存在量、および電荷に基づいてこの理論的計算を実行することができる。これらの方法のうちいくつかは、Alan
Rockwood et al., in Anal. Chem., 1995年、67、2699およびJames Yergey, in Int. J.
Mass Spec. & Ion. Physics、1983年、52、337で説明されており、その両方の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。

0051

形式AaBbCcDd...のイオン断片について、同位体分布は、以下の式で与えられる。



ただし、a、b、c、d、...は、それぞれ、原子A、B、C、D、...の個数であり、ai、bi、ci、di、...は、それぞれ、同位体Ai、Bi、Ci、Di、...の自然存在比である。この表現は、すべての予想される同位体の質量位置および存在比を与えるように、拡大し、再編成することができる。例えば、図2Aおよび2Bのイオン断片については、それは、電荷1を持ち、また以下の式で与えられるCおよびFに対する自然存在比を有する、C3F5の元素組成を持つことが知られている。
C12=12.000000、c12=0.9893
C13=13.003354、c13=0.0107
F19=18.998403、f19=1.0000

0052

したがって、このイオン断片に対する同位体質量(m)および相対存在量(y)は、以下のように計算することができる。

0053

このような同位体ピーク情報(質量位置と相対存在量の両方)は、後で、質量スペクトル・データの正確で完全な較正に使用される。

0054

次に、本発明の例示的な一実施形態による質量プリアライメントの説明を行うことにする。次のステップでより正確なピーク形状補間を行うために、スペクトルに対し同定可能な同位体ピーク・クラスタに基づき、まず標準質量スペクトルの事前位置揃えまたは事前較正を行う必要がある。同定されるそれぞれの同位体ピーク・クラスタについて、以下のように重心が計算される。



ただし、y0は、考察対象の同位体クラスタに対する実際に測定された質量スペクトル連続体データを含む列ベクトルであり、下付Tは転置、つまり、列ベクトルと同じ要素をすべて含む行ベクトルを表し、m0は、同位体クラスタが測定される質量軸に対応する列ベクトルであり(質量単位または時間単位を持つことができる)、1は、m0またはy0と同じ長さを持つ要素がすべて1の列ベクトルである。同様に、他の重心も、以下のように計算された同位体分布に基づいて計算できる。

0055

したがって、
m=f(m0) (式1)
という形の較正関係式は、質量範囲に対する使用可能なすべて明確に同定可能な同位体クラスタを使用して、測定された重心と計算された重心との間の最小二乗線形または非線形当てはめを通じて確立できる。

0056

ここでもまた、m0は、質量単位(m/z)でなく、むしろ、物理単位でなければならず、イオン強度はこの物理単位の関数として測定される。FTMSおよびTOFでは、m0は、自然に時間単位となり、多項式当てはめの一次および二次の項はそれぞれFTMSおよびTOFの主要な項となることに留意されたい。

0057

化学的ノイズまたは中性物質などの他の粒子が存在するため有意な背景信号を含むMSシステムでは、注目する質量スペクトル・ピークの前および後で収集されたデータのみを使用して低次のベースラインを当てはめ、このベースラインの寄与をy0から差し引いて重心m0のより正確な決定を下すのに有益な場合がある。しかし、これ以降、較正フィルタ全体に付属する精密化のためこの段階で絶対的質量較正を用意することが欠かせないわけではないことは明白であろう。

0058

次に、本発明の例示的な一実施形態による質量スペクトル・ピーク形状関数の説明を行うことにする。図6Aおよび6Bに示されているような同定されたそれぞれの質量スペクトル・ピーク・クラスタ(すべての有意な同位体ピークを含む)について、この質量における質量スペクトル・ピーク形状関数は、以下の逆畳み込みを通じて導くことができる。



ただし、y0は、実際に測定された同位体ピーク・クラスタであり、yは、この質量を中心とする特定のイオン断片に対する理論的に計算された同位体分布であり、pは、計算すべきピーク形状関数である。y0は、与えられた質量範囲内で連続的にサンプリングされた実際に測定された質量スペクトルであり、補間により、等間隔の質量間隔に容易に変換することができるが、理論的に計算された同位体分布は、上で示されている(m,y)など、離散的不規則な間隔で並ぶ質量でのみ定義される。

0059

この逆畳み込みを可能にする重要なステップでは、逆畳み込みの前に、狭いガウス・ピークをy0とyの両方に畳み込む数値計算を行う、つまり、以下のようにする。

0060

この事前畳み込みにより、y0とyの両方を同じ等間隔の質量間隔に連続的にサンプリングすることができる。この事前畳み込みを介したノイズ伝搬を最小にするために、ピーク幅が個別の同位体ピークのFWHMの数倍(例えば、4倍)小さいガウス・ピークを使用することが重要である。図7Aおよび7Bは、本発明の例示的な一実施形態による、事前畳み込みの前および後の測定された同位体クラスタ310をそれぞれ示す図である。図7Cおよび7Dは、本発明の例示的な一実施形態による、事前畳み込みの前および後の計算された同位体クラスタ320をそれぞれ示す図である。事前畳み込みは、ゼロを埋めた行列乗算または高速フーリエ変換FFT)を通じて行うことができ、両方とも、公開文
献、例えば、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、William Press et
al「Numerical Recipes in C」2nd Ed、1992年、Cambridge University Press、537頁で適切に確立されている。

0061

事前畳み込みと同様に、ピーク関数pを求めるためのy0′からのy′の逆畳み込みは、逆行列またはFFT除算を介して実行できる。行列が帯状行列であるため、逆行列に関する公開文献の効率的な計算アルゴリズムを利用できる。このようなアルゴリズムについては、さらに、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、Gene Golub et al.「Matrix Computations」1989年、Johns Hopkins University Press、149頁で説明されている。それとは別に、効率的な逆畳み込みは、FFT除算を介してでも実行できる。いずれの場合も、逆畳み込みプロセスにおけるノイズ伝搬を制御するために固有ノイズフィルタ処理をきちんと行うことが大事である。これは、逆演算の前に行列アプローチにおける小さな特異値を捨てるか、または小さな数による除算が発生する場合にFFT除算の実部および虚部を補間された値で置き換えることにより達成できる。小さな特異値を捨てることは、さらに、Yongdong Wang et al, Anal. Chem.、1991年、63、2750およびBruce Kowalski et al., J. Chemometrics、1991年、5、129で説明されており、その両方の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。図7Eおよび7Fは、本発明の例示的な一実施形態による、計算された導かれたピーク形状関数330および対応する逆畳み込み残差340をそれぞれ示す図である。逆畳み込みの後の残差が、測定されたデータy0の予想ノイズ・レベルに相当する大きさの確率的性質を持つように、逆畳み込み中に固有ノイズ・フィルタ処理をきちんと行うことが望ましい。

0062

化学的ノイズまたは中性物質などの他の粒子が存在するため有意な背景信号を含むMSシステムでは、注目する質量スペクトル・ピークの前および後で収集されたデータのみを使用して低次のベースラインを当てはめ、事前畳み込みの前にこのベースラインの寄与をy0から差し引くと有益な場合がある。このベースライン補正の目的は、実際に測定されたベースラインが理論的に計算されたものと必ず一致するようにすることである。

0063

次に、本発明の例示的な一実施形態によるピーク形状関数補間の説明を行うことにする。いくつかの他のピーク形状関数は、同じ標準試料の質量スペクトルからの質量スペクトル・ピーク範囲に対する他の適切に特徴付けられたイオン断片から同様に計算することができる。図8は、本発明の例示的な一実施形態による、例示的な逆畳み込みされたピーク形状関数410を示す図である。質量スペクトル範囲内の注目する他のすべての質量に対するピーク形状関数を求めるために、少数の計算されたピーク形状関数に関する補間が必要になる。ノイズ・フィルタ処理も可能な効率的な補間アルゴリズム考案されている。元の質量スペクトル空間内の補間の代わりに、これらの少数の使用可能な質量ピーク形状関数は、最初に以下の特異値分解SVD)を介して分解される行列Pに集められる。
P=USVT
ただし、Pは、ピーク形状関数が行に配列されたピーク形状関数行列であり、Uは、その列に左特異ベクトルを含み、Sは、下って行く特異値が対角線上にある対角行列であり、Vは、その列に右特異ベクトルを含む。SVDアルゴリズムについては、開示全体が参照により本明細書に組み込まれている、Gene Golub et al.「Matrix Computations」 Johns Hopkins University Press、427頁で説明されている。通常、質量の関数としてのピーク形状関数の整合性に応じて、ごくわずかの(3とか4とか)の特異値/ベクトルが有意であろう。例えば、すべてのピーク形状関数がとりわけ小さな質量シフトのみの場合に全く同じであれば、2つの有意な特異値/ベクトルのみを予想する。すべてのピーク形状関数が質量シフトなしで互いに同じである場合、特異値/ベクトルを1つのみ予想するであろう。これは、関わる特異値/ベクトルの個数が最小である、より経済的な分解および補間を得るために、プリアライメント・ステップが上で必要になる理由を説明している。

0064

左特異ベクトルの要素が質量に対してプロットされる場合、質量に対する滑らかな依存性、正確な補間に対し率直な機能的依存性を予想する。三次スプライン補間を、行列Uの第1のいくつかの列に適用し、質量スペクトル範囲全体をカバーする行の数がさらに多い、拡大行列Uを容易に求めることができる。補間されたピーク形状関数を含む拡大ピーク形状関数行列Pは、
P=USVT
を介して容易に構築することができるが、ただし、P内のそれぞれの行は、任意の補間された質量重心で1つのピーク形状関数を含む。図9は、本発明の例示的な一実施形態による、図8の逆畳み込みされたピーク形状関数410に基づく例示的な補間ピーク形状関数510を示す図である。

0065

ここでSVD分解をウェーブレット分解などの他の分解で置き換えて、異なる計算コストで類似の結果を得られることを指摘しておく。

0066

次に、本発明の例示的な一実施形態による較正フィルタおよびその補間の説明を行うことにする。得られたピーク形状関数を使用すると、MS計測器システムは、質量軸およびピーク形状関数の両方に関して完全に特徴付けられる。そこで、この特徴付けに基づき、完全な質量スペクトル較正を実行できる。この較正は、単一演算で実行され、異なる質量でのピーク形状関数は、正確な質量位置を中心とするより望ましいピーク形状関数(目標ピーク形状関数)に変換される。解析的または数値解析的に計算されたピーク形状関数は、原理的に、目標ピーク形状関数として使用できるが、特性として、滑らかなピーク関数および導関数数値定性のため)、解析的計算可能な関数および導関数(計算効率のため)、対称ピーク形状(後のピーク検出において正確な質量決定を行うため)、真の質量スペクトル・ピーク形状に類似していること(較正フィルタの簡略化のため)、実際に測定されたピーク幅よりもわずかに広いピーク幅(FWHM)(計算安定性および信号平均のため)といった特性を有する目標を持つことが望ましい。

0067

図10は、本発明の例示的な一実施形態による、質量分析較正に対し好ましい要求条件を満たす2つの例示的な目標610、620を示す図である。2つの例示的な目標610および620は、上述の要求条件を満たす。2つの例示的な目標610および620は、それぞれ、ガウス型およびガウス型とボックスカーの畳み込みである。

0068

与えられた重心質量のところのそれぞれのピーク形状関数pについて、以下のような較正フィルタfを見つけることができる。



ただし、tは、この与えられた質量を中心とする目標ピーク形状関数である。この畳み込みは、本質的に、数値的に計算されたピーク形状関数pをこの正確な質量位置を中心とする数学的に定義されているピーク形状関数に変換し、1回の畳み込み演算で質量とピーク形状の両方の較正を行う。較正フィルタfの計算は、適切なビルトインされたノイズ・フィルタ処理を備える逆行列またはFFT除算のいずれかを通じてピーク形状関数の逆畳み込みと同様の方法で実行することができる。図11は、本発明の例示的な一実施形態による、一組の質量について計算された較正フィルタの集まり710を示す図である。

0069

較正フィルタは、ピーク形状関数と同様に、質量とともに滑らかに変化することがわかる。補間は、一般に逆畳み込み演算に比べて計算効率が高いため、範囲全体にわたって疎らな間隔(例えば、1〜5amu間隔)で並ぶ質量で較正フィルタを計算し、その後較正フィルタを密集する間隔(例えば、1/8または1/16amu)の格子上に補間するのは計算面で都合がよいと思われる。ピーク形状関数の補間について上述のと同じアプロー
チを適用することができる。

0070

それとは別に、式2の中のピーク形状関数の計算をまとめてバイパスし、以下のように式2と3を組み合わせて単一ステップのプロセスにすることができる。



ただし、複数の標準質量での畳み込みフィルタfは、逆行列またはFFT除算を介して直接計算することができる。これらの畳み込みフィルタ上の補間は、特定の質量で望ましいフィルタを生成する(図11)。

0071

ここで計算された較正フィルタは、質量スペクトル・ピーク形状および質量スペクトル・ピーク位置の較正という2つの目的に同時に使用されることに留意されたい。質量軸は、すでに、上で事前に較正されているため、フィルタ関数の質量較正部分は、この場合、質量較正に対しさらに精密化を行うため、つまり、式1で与えられる最小二乗当てはめの後の残留質量誤差を説明するため、低減される。

0072

この較正プロセス全体は、質量スペクトル・ピーク幅(半値全幅またはFWHM)が動作質量範囲内でほぼ一致することが予想されるイオン・トラップを含む四重極型MSにおいてうまく機能するであろう。扇形磁場型、TOF、またはFTMSなどの他の種類の質量分析計システムでは、質量スペクトル・ピーク形状は、動作原理および/または特定の計測器設計により示される関係において質量とともに変化することが予想される。それでも、これまでに説明されているのと同じ質量依存較正手順は適用可能であるが、ピーク幅と質量/位置との間の与えられた関係と一致する変換されたデータ空間内で較正全体を実行することが好まれる場合もある。

0073

TOFの場合、質量スペクトル・ピーク幅(FWHM)Δmは、以下の関係式の中の質量(m)に関係することが知られている。



ただし、aは、知られている較正係数である。つまり、質量範囲上で測定されたピーク幅は、質量の平方根とともに増大する。以下のように質量軸を新しい関数に変換する平方根変換では、以下のようになる。



ただし、変換された質量軸で測定されるピーク幅(FWHM)は、以下の式で与えられる。



これは、スペクトル範囲全体にわたって不変である。

0074

他方、FT MS計測器では、ピーク幅(FWHM)Δmは、質量mに直接比例し、したがって、以下の対数変換が必要になる。
m′=ln(m)
ただし、変換された対数空間内で測定されるピーク幅(FWHM)は、以下の式で与えられる。



これは、質量と無関係に固定される。通常、FTMSでは、Δm/mは、10-5のオーダー、つまり、分解能m/Δmに関して105で管理されうる。

0075

扇形磁場型計測器では、具体的設計によっては、スペクトル・ピーク幅および質量サンプリング間隔は、通常、質量との知られている数学的関係に従い、これに対し、TOFおよびFTMSに平方根および対数変換が役立つのと全く同様に、予想される質量スペクトル・ピーク幅が質量に無関係となる特定の形の変換が役立ちうる。

0076

上述の変換は強化された較正に大いに役立つが、すべての計測器に適用されるさらに一般的な形式の変換があることが望ましい。これは、例えば、平方根変換の適用性が限定されており、対数変換では効率的な計算を実行するには、低い質量のピークが広すぎ、高い質量のピークが狭すぎる傾向があるからである。

0077

上述のさらに具体的なアプローチを含む、このより一般的な手法によれば、第1のステップは、複数の適切に配置されたピークが注目する質量範囲にわたって観測できる標準または標準混合の測定を介した質量の関数としてのピーク幅の測定である。この標準は、質量スペクトル計測器較正に使用されるのと同じであってよい。単位質量分解能以下の質量分析などの中分解能の質量分析の場合、ピーク幅測定の前に同位体存在量計算を使用してピーク形状関数に到達することで、上で概略が述べられている逆畳み込みプロセスを受ける必要がある。

0078

標準の例としては、
ペプチド混合物
タンパク質混合物、または
複数モノマー組合せに基づき最大2000amuまでのかなり広い質量範囲にわたって71amuの間隔を有する一定範囲のピークを形成する、PPGまたはPEGまたはポリアラニン(アミノ酸)などのポリマーがある。高分解能システムでは、同位体の分布は、計測器ピーク形状関数よりも有意性が高くなる。例えば、qTOF質量分析計システムでは、モノアイトピック・ピークと他の同位体からのピークとの間に十分な距離がありえるため、同位体分布を伴う逆畳み込みプロセスを通さずに計測器ピーク形状関数を測定されたモノアイソトピック・ピークから直接読み取れる。カリフォルニア州のフレモントのCiphergen Biosystems社のSELDIPBSIIシステムなどの質量分解能が非常に低いMSシステムでは、公称的に1質量単位間隔(単一電荷)または1/z質量単位間隔(複数電荷z)となる同位体分布は、高い質量では取るに足らないので、観測された質量スペクトル・ピークを計測器ピーク形状関数のみが出所であるように扱い、したがって、上で概要を述べた逆畳み込みステップを排除することができる。

0079

質量分析計の観測されたピーク幅は、TOF MS内の飛行管などの質量分析計自体により、イオン源(TOF MSの管に入るイオン・エネルギーの変動により、管からの時間変動が生じるか、または四重極MSでは、四重極に入るイオン・エネルギーの変動により、四重極から抜けるイオンの空間的および/または時間的分布が生じる)、気体または液体試料がイオン源に入る流量などに寄与する。TOF MSの場合、飛行管だけから生じるピーク幅の平方根依存性は、すべての寄与要因が考慮された場合生データ内で観察されるより一般的な二次関係に代わる

0080

観察されたピーク幅(Δm)対質量(m)への最小二乗当てはめの結果、質量の関数Δ
m(m)としてのピーク幅の解析的表現が得られる。質量へのピーク幅の強い依存性がある場合、変換された軸f(m)で観察されるようなピーク幅(例えば、半値全幅またはFWHM)がその質量範囲において一定になるように何らかの関数f(m)を介して質量軸を変換するのが好ましい。
f(m1)−f(m0)=f(m0+Δm)−f(m0)=定数

0081

テーラー級数展開および他の派生手段により、上記の関係は以下の式に変換できる。



ただし、積分は、質量の範囲全体にわたって実行され、定数dおよび積分定数は、変換の目的に影響を及ぼすことなく無視されている。
LC qTOF MS計測器の場合、以下の形式の二次関係が存在する。
Δm=am2+bm+c
上記積分による変換は、以下の式で与えられる。



ただし、r1およびr2は、上記の二次形式の2つの根である。より具体的な場合、例えば、Waters MicroMass社が製造するqTOF II計測器の場合、ピーク幅は、以下の関係式で質量に関係することが判明している。
Δm=3.53e−8m2+1.35e−4m+1.32e−2
ただし、
r1,2=[−100−3724]
であり、したがって、変換は以下の形式となる。

0082

変換の他のいくつかの実施例は、以下のとおりである。
FTMS:
Δm∝m,f(m)∝ln(m)
TOF分析装置部分(流れおよび試料の考慮事項は考察されない):



低エネルギー・イオン化GC/TOF:
Δm∝bm+cm、f(m)∝ln(bm+c)
高エネルギー・イオン化MALDI TOF:

0083

それぞれの場合において、適切な積分が実行され、上で説明されている方法で式が導かれる。例えば、いくつかのLC TOF MS計測器では、二次項は重要でなく、Δm=bm+cという形式の本質的に線形関係があり、変換ln(bm+c)が得られる。ピーク幅が質量の平方に比例する計測器では、上述のように、質量の逆数に関係する変換を使用するのが適切である場合がある。

0084

FTMSに対する対数変換およびTOF−MSに対する平方根変換などの適切な変換または適切に設計され、適切にチューニングされた四重極またはイオン・トラップMSなどの特定の計測器の固有の性質のせいで、予想される質量スペクトル・ピーク幅が質量と無関係になった場合、全質量スペクトル範囲に適用可能な単一の較正フィルタを使って計算時間を大幅に短縮できる。これは、さらに、質量スペクトル較正標準に対する要求条件も簡素化する、つまり、追加ピーク(もし存在すれば)がチェックまたは確認のみに使用される較正では単一の質量スペクトル・ピークがあればよく、測定に先立って試料に追加または試料内に混合される内部標準に基づいて質量スペクトル・データのありとあらゆる走査の完全な質量スペクトル較正を行う準備が整うということである。

0085

次に、本発明の例示的な一実施形態による較正フィルタの適用の説明を行うことにする。

0086

上で計算された較正フィルタは、以下の帯状対角フィルタ行列に配列できる。



ただし、対角線上のそれぞれの短い列ベクトルfiは対応する中心質量について上で計算された畳み込みフィルタから取ったものである。fi内の要素は、畳み込みフィルタの複数の要素から逆順に取り出したもの、つまり以下のとおりである。

0087

この較正行列次元は、質量範囲が1/8amuのデータ間隔で最大1,000amuである四重極MSについては8,000×8,000となる。しかし、疎行列であるという性質から、通常の記憶要件は、5amuの質量範囲を覆う実効フィルタ長さが40要素で40×8,000程度にすぎない。

0088

図12は、本発明の例示的な一実施形態による、補間および質量プリアライメントと組み合わせたフィルタ行列アプリケーションの図形表現800を示す図である。較正全体に対して3つの成分、つまり、事前較正行列A、較正行列F、および事後較正行列Bがある。

0089

事前較正行列Aは、本質的補間関数を実行するそれぞれの非ゼロの列が対角線にそって並ぶ帯状対角の形をとる。この補間関数は、(a)間隔が非一様な生MSデータから間隔が一様なMSデータへの変換、(b)質量軸のプリアライメント、および(c)必要に応じてTOF、FTMS、扇形磁場型計測器、または他の計測器に対する固有の変換を含むことができる。

0090

較正行列Fは、ピーク形状および質量軸較正の両方を実行する帯状対角行列である。
事後較正行列Bは、事前較正行列Aと類似しているが、他の補間関数を実行するそれぞれの非ゼロの列が対角線にそって並ぶ帯状対角の形をとる。この補間関数は、(a)内部一様間隔から一様または非一様のいずれかの出力間隔への変換、および(b)必要に応じてTOF、FTMS、扇形磁場型計測器、または他の計測器に対する線形質量空間への逆変換を含むことができる。

0091

図12に示されている因数分解は、補間を補間が作用するy値と無関係のフィルタ演算として構造化できるラグランジュ補間により可能になる。ラグランジュ補間アルゴリズムについては、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、William Press et al「Numerical Recipes in C」2nd Ed、1992年、Cambridge University Press、105頁で説明されている。所定の質量間隔で生質量スペクトルを出力する計測器では、3つの行列すべてを較正プロセスの一部として事前計算し、予め乗算して全体的フィルタ処理行列にできる。
F1=AF
これは、異なる要素を有するFに類似の帯状構造を持つ。実行時に取得される質量スペクトル毎に、1回の疎行列乗算を行うだけでよい。
s0=sF1
ただし、sは、生MSデータを含む行ベクトルであり、s0は、所望の出力間隔で完全較正されたMSデータを含む他の行ベクトルである。この演算の実時間部分は、基本的に生の未較正データをフィルタ処理して出力用の完全較正MSデータにするので、計算効率が高いと予想される。いくつかのMS計測器では、それぞれの質量スペクトルが、異なりかつ非一様な質量間隔で取得される。この場合、事前較正行列Aは、取得毎に異なるが、ただし次回較正が実行されるまでF行列とB行列のみが固定される。これら2つの行列は、以下の実時間演算で事前に乗算することができる。
s0=sA(FB)
これは、取得毎に余分な補間または乗算のステップが加わるため計算量が増大することになる。それとは別に、コストの低い線形補間によるそれぞれの走査を事前定義された質量間隔上に補間し、そうして、走査毎に全較正フィルタ処理行列F1=AFBが変わらないようにすることにより計算効率を向上させることを選択できる。

0092

いくつかの計測器システムでは、それぞれの個別取得に対しオンザフライで完全な質量スペクトル較正を実行することが可能な場合があることに留意されたい。例えば、FTMSまたはTOFでは、対数または平方根変換の後、AおよびBを両方とも変化しないように保持しつつ同一の非ゼロ要素が対角線にそって含まれる新しい帯状対角行列Fを構築するために、式2および3を介してMSピーク(内部標準ピーク)に対し1回の逆畳み込みシーケンスがあればよい。こうして行われる完全な較正は、その後、同じ元のMSスペクトルに適用し、すべてのピーク上で完全較正を実行することも可能である(分析される内部標準ピークおよび他の知られていないピークを含む)。同じオンザフライ較正を、他の
MSシステムに適用することができ、その場合、ピーク形状関数は、実際に、変換がある場合もない場合も質量とは無関係であり、同一の非ゼロ要素が対角線にそって並ぶフィルタ行列Fを導く内部標準として質量範囲内のどこかに置かれた1つのMSピークの最小値を必要とする。内部標準は、適切に特徴付けられた同位体クラスタを持つ選択された化合物であり、予め試料調製ステップで試料または流れの中へオンラインでリアルタイムに注入、混合することができ、例えば、レセルピンは、LC/MS実験でTコネクタを介してカラムまたはポスト・カラム上に注入できる。内部標準により引き起こされるイオン抑制を低減するために、独立のイオン源内で内部標準を連続的にイオン化してから試料流からイオン内に混合することができ、イオン源としては、マサチューセッツ州ウォルサムのWaters Corporation社の多重化ESIスプレー源またはカリフォルニア州パロ・アルトのAgilent Technologies社の二重ESIロック・スプレー源などがある。

0093

計算効率のよい方法で、外部標準(異なるMS取得を通じて)を内部標準(同じMS取得の範囲内の)と組み合わせる更新アルゴリズムを通じてこの完全較正の一部分を実行できる。例えば、一番最近に測定された外部標準に基づく最新の使用可能な完全較正を、内部標準ピークを含む未知試料に適用することができる。較正の後、正確な質量配置および内部標準のピーク形状をチェックすることにより(ピーク分析については以下の次節を参照)、ピーク形状が変化しておらず、わずかな質量シフトのみが存在することを見いだすことができる。その結果、FBは、同じままにでき、行列Aに対する小さな更新を行うだけでよく、シフト補償を完全に行うことができる。

0094

外部較正および内部較正の組合せによるより包括的な更新は、外部較正を適用することと、少なくとも1つの内部標準を使用して、他の完全較正手順を介して外部較正を更新することとを伴う。外部較正と内部較正の両方を組み合わせる理由の1つは、固有の計測器ドリフトを取り扱うことにある。例えば、外部標準に関する計測器較正のバラツキは、寸法の変化をもたらす温度変化、質量分析計のさまざまな部分に印加される電圧の変化、およびイオン源へのさまざまな物質蓄積により発生しうる。較正のこのようなドリフトは、時間の関数として発生し、一般に、質量が異なれば異なるものである。このドリフトの大きさは、イオン計数ノイズのせいで計測器の理論的精度よりも大きくなる場合があり、そのため、実際の計測器精度を大幅に、ときには10倍以上も落とすことがある。

0095

数学的には、外部標準および内部標準の組合せを使用する較正は、以下のように表すことができる。



Yは、外部較正フィルタFE(上記の全較正フィルタF1と同じ形式)が適用される生データであり、内部較正フィルタFI(ここでもまた、上記のF1と同じ形式)が結果に適用され、外部および内部較正されるデータYEIを生成する。

0096

運用上は、少なくとも1つの内部標準を含む試料データは、生試料データを外部較正データに変換する、外部較正FEを受ける。次に、この外部較正データ・トレースは、外部標準データ・トレースとして処理され、必要な変換、実時間および更新ピーク形状関数に到達する内部標準の同位体分布との逆畳み込み、スペクトル範囲全体をカバーする補間または単純複製、外部較正FEについて指定された目標ピーク形状関数への偏差を補正するために追加フィルタ(FI)を計算するもう1つの逆畳み込み、必要ならばフィルタ上の補間、および必要ならば元の空間に戻す変換を受ける。つまり、較正プロセス全体が、外部較正データ・トレースをFIに到達するため本明細書で開示されている較正手順に入れる入力または生データとして使用してもう1回繰り返されるということである。

0097

図13は、図4に類似しているが、図4の一般ステップは、接尾語「A」を付けて再指定されている。異なる点は、70Aで内部標準を含む試料から取得されるデータの使用である(上述の化合物のうちの1つなど)。このデータに対し、ステップ72A、74A、76Aが実行され、78Aで外部較正データが出力される。結果は、70Bで、72B、74B、および76Bでの内部較正プロセスへの入力として使用され、外部較正フィルタと組み合わせるときに、外部と内部の両方の較正を考慮する追加較正フィルタが生成される。外部較正および内部較正の両方が行われるデータは、78Bで使用することができる。

0098

本発明のこの態様によれば、変換は、上述のように、ピーク配置およびピーク形状を決定する際に使用されるのと同じ関係を、同じ変換空間内で使用して都合よく実行される。
このアプローチを効果的に使用する一方法では、外部較正を、計測器ドリフトの性質に応じて、例えば日に1回(計測器測定を開始する前の)または数時間おきに行うべきであることが理解されるであろう。内部標準による較正は、さらに頻繁に行うこともでき、限度内で、毎回の試料測定におけるそれぞれの試料スペクトル走査について実行することができる。

0099

上で開示されているアプローチは、較正を実行するのに必要なのは単一の内部標準だけであり、そのため、注目する試料に由来しない物質の導入を最小限に抑えられるという点で有利である。しかし、特定のアプリケーションで必要な場合または望ましい場合、複数の内部較正標準を使用することもできる。いくつかのアプリケーションでは、内部標準は試料の一部として容易に使用することができ、例えば、知られている薬物(または知られている代謝産物)および知られていない代謝産物が保持時間内に互いの近くで共溶出または溶出し、自然発生の内部標準として使用されるLC/MSの実行時に薬物代謝産物が分析されるときに薬物自体を内部標準として使用できる。

0100

次に、本発明の例示的な一実施形態による較正フィルタを通過する誤差伝搬の説明を行うことにする。
質量スペクトル・ピークを適切に同定し、定量化するために、較正されたMSデータの分散を推定することが重要である。MS計測器の大半では、イオン強度測定に対する確率的誤差は、イオン計数ショット・ノイズにより支配される、つまり生MSデータの分散は、イオン信号自体に比例するということである。較正されたMSスペクトルの分散スペクトルs0は、したがって、以下の式で与えられる。
σ2∝sF2 (式4)
ただし、F2は、F1内の対応するすべての要素が平方されているF1と同じサイズである。その結果、フィルタ要素をすべて平方して、同じ生MSデータ上に対しさらに1回だけフィルタ処理が行われる。

0101

図14A、14B、および14Cは、本発明の例示的な一実施形態による、完全較正(図14Aと14Bの両方)の前後の質量分析(MS)スペクトルの第1のセグメント910および第2のセグメント920、および分散スペクトル930(図14C)を示す図である。

0102

次に、本発明の例示的な一実施形態による質量スペクトル・ピーク分析の説明を行うことにする。質量スペクトル・ピーク分析の説明は、ピーク行列の構築、加重多重線形回帰(WMLR)、有意なピークの検出、およびピーク分析の精密化に関係する説明を含む。

0103

上述の完全較正の後のMSスペクトルは、理想的には、効率的で、信頼できる、感度の高いピーク検出に好適である。この節の後のほうで明らかになるが、ピーク分析は、自然
の質量単位または変換された単位(FTMSまたはTOFまたは他の計測器に対し)で実行できるが、著しい計算量削減を行って、ピーク形状関数が質量範囲全体にわたって同じ幅である変換空間(本明細書では「較正空間」ともいう)内で質量スペクトル・ピーク分析を実行することができる。

0104

本発明は、特に以下の場合に有用である。
広範な質量スペクトル較正、および
ピーク検出、正確な質量数決定、ピーク面積積分、およびピーク存在の確率、質量精度、およびピーク面積信頼区間統計的尺度

0105

本発明の両方の態様に対する原理は、他の計装にも適用され、特に、LC、GC、CE、さらには核磁気共鳴(NMR)における難題である、ピーク判定またはピーク検出を取り扱う本発明の態様に適用される。

0106

測定ノイズが存在する場合、図15Aの形のデータ・トレースが観察できる。このデータ・トレースは、例えば、液体クロマトグラフィ分離カラムから分離されたタンパク質またはペプチドを検出する245nmで動作するシングル・チャネルUV検出器、同物に取り付けられた屈折率検出器、ガス・クロマトグラフィ分離カラムに取り付けられた水素炎イオン化検出器蛍光染料を付着したDNA断片を分離した後の電気泳動チャネル末端に取り付けられる蛍光検出器などから得られる。DNA断片または特定のペプチドなどの何らかの検体の有無を、それぞれの量などの定量的情報およびそれぞれの検体が検出器に到達したときの時刻などの定性的データとともに評価できるような、強固で健全ピーク検出アルゴリズムをこれらのアプリケーションに備えることが非常に望ましい。x軸が共鳴周波数におけるppmシフトであるNMRからの例は等しく適用可能であるため、x軸は必ずしも時刻である必要はない。

0107

図15Aの固有ピーク形状は、対称的ではなく、時刻または周波数などのx軸の変数とともに変化する可能性があり、これは、対称的ではなく、質量(m/z)とともに変化する質量スペクトル・トレースにおける質量スペクトル・ピーク形状関数の場合と全く同様である。本明細書で開示されているすべての正確な計算特性を利用するために、ピーク形状関数を較正して以下の特性を有する知られている数学的関数にすることが好まれる場合がある。
シフト演算を介した高速計算を行う対称ピーク形状関数
数値的安定性および最小化された誤差伝搬に対する範囲全体にわたって一様なピーク形状関数

0108

較正は、適切な間隔で並べられ、適切に分離されている化合物の混合を実行し、注目する範囲全体にわたる一組の測定されたピーク形状関数を確立することを伴い、そこから、すべて本明細書の中で述べられている、ラグランジュ補間、SVD補間、ウェーブレット補間、または他の適切に確立されている補間アプローチを使用する補間を介して、その範囲内の与えられた点におけるピーク形状関数を数値的に計算することができる。その後、これらの測定ピーク形状関数を、本明細書で開示されている較正フィルタを介してガウス型またはいくつかの適切な幅のガウス型およびボックスカーの畳み込みなどの所望の目標ピーク形状関数に変換することができる。

0109

図15Bは、図15Aで較正フィルタをデータ・トレースに適用した後の較正されたデータ・トレースを示している。これからわかるように、さらにピーク形状関数を範囲全体にわたって等しい幅を有する対称ピーク形状関数に変換した較正フィルタの適用により、かなりのノイズ・フィルタ処理が発生している。目標ピーク形状幅の選択は、適度な量のノイズ・フィルタ処理および信号平均化が確実に行えるように目標ピーク形状幅が測定ピ
ーク幅よりもわずかに広くなるように行われるべきであるが、分解能を著しく低下させてしまうほど、測定ピーク幅よりも広くなりすぎないようにしなければならない。

0110

標準混合物から直接測定されたか、または較正フィルタの適用後に数学的関数から計算されたピーク形状関数を使用すると、次回較正標準混合がシステムを通じて実行されるまで後から来る多数の知られていない試料に対しピーク分析を実行するために、必要ならば反復法ピーク成分行列の構築、およびWMLR(加重多重線形回帰)の適用に進むことができる。このようなピーク分析の結果は、検出されたピーク、ピーク配置、ピーク面積、およびピークの有無の確率およびそれぞれに対する信頼区間に関する対応するすべての統計量のリストである。図15Cは、すべてのピーク位置およびピーク面積が示されたとおりである、ピーク分析の部分的な結果をスティックとして示す。

0111

上で概要を述べた質量スペクトル較正の場合のように、時間または周波数軸を新しい空間に変換してから、ピーク形状の決定および変換を行うことが好まれる場合があり、また内部ピーク標準をそれぞれの試料に加えて、外部および内部の両方の較正で可能な最高の精度を達成するようにしたい場合がある。

0112

次に、本発明の例示的な一実施形態によるピーク行列構築の説明を行うことにする。ピーク分析問題は、質量スペクトル・トレースは、質量欠損を反映するピーク中心オフセットから公称的に1/z質量単位だけ離れたところに配置されている知られているピーク形状の多数のピークの線形結合であるというように定式化される。一価イオン(z=1)では、公称間隔は、質量欠損を反映するために正または負のいずれかの方向のいくつかのオフセットから1質量単位離れた間隔である。その後、質量スペクトル・ピーク分析問題は、多重線形回帰(MLR)として以下のように定式化できる。
s0=cP+e (式5)
ただし、s0は、完全に較正されたMSスペクトルを含む行ベクトルであり、Pは、その行内の公称間隔で並ぶ知られているピーク関数(それぞれ、1の解析的積分面積を有する)を含むピーク成分行列であり、cは、すべての公称間隔で並ぶピークに対する積分されたピーク強度を含む行ベクトルであり、eは、当てはめ残差である。ベースラインの寄与を説明するために、オフセット、一次線形項または他の高次非線形関数形式などのベースライン成分を対応する係数により増加された対応する行ベクトルcを持つP行列の行に加えて、これらのベースライン成分の寄与(もしあれば)を表すことができる。

0113

上述の完全質量スペクトル較正では、ピーク成分行列Pを解析的に計算することができ、その場合すべてのピークが解析的に積分されて単位面積が得られ、その結果、解析的に積分された面積を自動的に報告するc内の対応する推定値が得られ、これは、自動ノイズ・フィルタ処理および信号平均化(eの左)とともに近くに配置されている他のピーク(他の同位体ピークなど)から干渉を受けないことに留意されたい。ほぼ同じ理由から、近くの同位体ピークの間のバイアスのない同位体比測定を実行することも可能である。

0114

さらに、ピーク成分行列Pの構築は、上記の完全MS較正を実行して、公称質量間隔の正確な分数、例えば、1amuの1/4、1/5、1/8、1/10、1/12、1/16で、較正されたMSデータを出力することにより計算効率を高めることができる。このようにして、ピーク形状関数は、Pの1つの行について1回評価するだけでよいが、ただし、Pの他の行は、この1つの行を前または後に単にシフトするだけで形成されている。本発明の説明に関して述べた公称質量間隔は、一価イオンに対する1質量単位間隔または電荷zのイオンに対する1/z質量単位間隔を意味することに留意されたい。

0115

次に、本発明の例示的な一実施形態による加重多重線形回帰(WMLR)の説明を行うことにする。誤差項eは、較正の節で示されているような質量スペクトル範囲にわたって
一様な分散を持たないため、通常のMLRの代わりに以下の加重多重線形回帰(WMLR)を実行する必要がある。
s0diag(w)=cPdiag(w)+e (式6)
ただし、diag(w)は、式4によって与えられる対角にそって重みを持つ対角行列である。
w=1/σ2=1/(sF2)
ただし、すべての質量間で共有される比例定数は、回帰に影響を及ぼすことなく削除されている。

0116

式6の最小二乗解から、
c=s0diag(w)PT[Pdiag(w)PT]-1 (式7)
が得られ、その分散は、
s2{c}=e2diag{[Pdiag(w)PT]-1} (式8)
と推定され、ただし、e2は、加重平方偏差に基づき、
e2=ediag(w)eT/df
であり、eは、式5の当てはめ残差により与えられ、dfは、独立質量スペクトル・データ点の個数と行列Pに含まれる行の個数との差として定義される、自由度である(cの中の係数の個数は推定される)。式6の最小二乗解は、さらに、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、John Neter et al.「Applied Linear Regression」2nd Ed., Irwin、1989年、418頁で説明されている。

0117

質量間隔が1/8amuで質量範囲が1,000amuに届くMS計測器の場合、ピーク成分行列Pは、通常、1,000×8,000であるが、それぞれのピーク行(ベースライン成分に、対応する行内のすべての非ゼロがある)内の非ゼロ要素(5amu質量範囲をカバー)が40個以下と、ほとんど疎である。データ格納効率は、インデックスを作成し、公称質量間隔の正確な分数でサンプリングしたときにピーク成分は互いの単にシフトしたバージョンであるという事実を利用することにより劇的に高められる。計算に関しては、疎行列演算を介して、s0diag(w)PTおよび[Pdiag(w)PT]の両方を別々に事前に計算することによりうまく行く。後者の項の事前計算により、次元1,000×1,000の他の疎対称行列が得られるが、上記例では、対角の帯幅は〜120(それぞれの行内の非ゼロ要素)、半帯幅は〜60(対称性を考慮して)である。

0118

質量範囲全体にわたって同一および対称的なピーク形状関数を持つベースライン成分がない場合、上記の演算により、ブロック循環縮約を使用した[Pdiag(w)PT]-1への計算効率のよい変換に従うブロック循環構造を持つ疎行列[Pdiag(w)PT]が得られる。ブロック循環縮約は、開示は両方とも参照により本明細書に組み込まれる、Gene Golub et al.「Matrix Computations」1989年、Johns Hopkins University Press、173頁およびWilliam Press et al「Numerical Recipes in C」2nd Ed、1992年、Cambridge
University Press、71頁で説明されている。

0119

その質量範囲にわたる可変および非対称的ピーク形状関数を持つベースライン成分が存在する場合であっても、疎行列[Pdiag(w)PT]は、以下の特殊形式を持つ(例えば、オフセット、一次から二次への3つのベースライン成分を仮定する)。

0120

これは、ブロック対角システムとして効率よく解くことができる。ブロック対角システムについては、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gene Golub et al. 「Matrix Computations」 1989年、 Johns Hopkins University Press、 170頁で説明されている。

0121

真の質量スペクトル・ピークが公称質量と正確に一致しない場合、以下の一次結合式を持つ(一般性を失うことなく簡単のためベースライン成分を無視する)。



ただし、中心質量miを持つピーク形状関数piは、以下のようにテーラー級数を通じて一次まで展開することができる。



ただし、pi(mi)は、真の質量位置miを中心とするピーク形状関数であり、pi(mi0)は、miに近い公称質量位置mi0を中心とするピーク形状関数であり、Δmiは、真の質量位置と公称質量位置との差であり(質量欠損または複数電荷による公称質量からの偏差)、およびdpi(mi0)/dmは、公称質量mi0を中心とするピーク形状関数の解析的に計算される1次導関数である。

0122

質量欠損を考慮すると、以下の修正された式が得られる。



ただし、cn+i=ciΔmiおよびnは、考察対象の公称質量の個数である。行列形式に書き直すと、以下のようになる。
s0=cP+e (式9)
ただし、cとPは両方とも、導関数項の前の係数および導関数項自体により増加される。ピーク形状関数は、対称的である(したがって、ピーク形状関数自体に直交する)ように選択されるため、導関数を含むことは、ピーク成分行列Pの条件に悪影響を及ぼさず、最も正確な質量決定および最も反復性のあるピーク積分が得られることが重要である。

0123

上述の同じWMLRは、式9を解くために適用することができ、積分されたピーク面積c1、c2、cnに到達できる。さらに、式8は、こうして得られたそれぞれのピーク面積に対する標準偏差の計算に使用することができ、その結果、それらのピーク面積の質に関する的確な統計的尺度が得られる。

0124

実際の質量位置の改善された決定結果は以下のように得られる。
mi=mi0+Δmi=mi0+cn+i/ci (式10)
ただし、Δmi決定における相対誤差は、以下の式で与えられる。
|s(Δmi)/Δmi|=|s(ci)/ci|+|s(cn+i)/cn+i|
ただし、ciおよびci+nに対する標準偏差は、式8から直接得られる。つまり、シフト推定標準誤差は以下のとおりである。
s(Δmi)=[|s(ci)/ci|+|s(cn+i)/cn+i|]|Δmi|
これは、式10で与えられた実際の質量に対する標準誤差でもある。

0125

次に、本発明の例示的な一実施形態による有意なピークの検出の説明を行うことにする。最後の節のピーク面積推定結果(式7)およびその標準偏差計算(式8)に基づき、t統計量を以下のように計算することができる。
ti=ci/s(ci)、i=1,2,...,n
これは、自由度(df)と組み合わせて、濃度推定値ciが0よりも著しく高いかどうか、つまり、質量スペクトル・ピークの有無を統計的に検出することができる。通常、dfは、無限大とみなせるだけ十分に大きく、3.0よりも大きいt統計量または他のユーザ選択カットオフ値は、質量スペクトル・ピークの存在が統計的有意であることを示す。通常の3.0の値よりも高いt統計量のカットオフは、図12に示されている完全較正の後の個別質量スペクトル点がもはや統計的に独立ではなく、ノイズにおいて相関を有するという事実を説明するために必要になることがあることに留意されたい。現実的なカットオフ値は、コンピュータ・シミュレーションまたは実務経験を通じて確定することができる。

0126

図16Aは、本発明の例示的な一実施形態による、質量範囲にわたる可能な質量スペクトル・ピーク(図5から取った生質量スペクトル)に対する正確な質量位置(式10)の関数としてt統計量を反映するスティック・スペクトル1010を示す図である。図16Bおよび16Cは、本発明の例示的な一実施形態による、生MSスペクトル・セグメントのオーバーレイ1020およびその完全較正バージョン1030を示す図である。図16Dは、本発明の例示的な一実施形態による、対応するt統計量1040および臨界t値が12で設定されている水平境界線1050を示す図である。高度の同時ノイズ・フィルタ処理/信号平均処理およびピーク形状較正は、図16Bから明確にわかるが、これにより、図16Dに示されている高感度の結果を使いピーク分析を実行することが大幅に簡単になり、検出は、人為的結果または他の系統誤差発生源のないデータ内のランダム・ノイズによってのみ制限される。

0127

その後、t統計量がカットオフよりも上である質量スペクトル・ピークが、統計的に有意であると報告されるが、カットオフよりも下の質量スペクトル・ピークは、有意でないと報告されるであろう。t統計量とともに、正確な質量位置および積分されたピーク面積も、対応するイオン断片を有する特定の分子の同定および定量化に関して報告されるようにできる。F統計量はここではより厳密に適用されている可能性があるが、限界t統計量は、ピーク成分間の最小の相互作用(小さな共分散)のため十分である。F統計の多共線性および適用については、さらに、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、John
Neter et al.「Applied Linear Regression」2nd Ed., Irwin、1989年、300頁で説明されている。

0128

次に、本発明の例示的な一実施形態によるピーク分析の精密化の説明を行うことにする。高度の質量精度が望まれる場合、上で得た結果を初期推定値として取り扱うことにより反復ピーク分析プロセスを構築し、式10からの新たに計算された実際の質量配置を使用してピーク成分行列Pを更新することができる。更新された質量配置は、互いから1公称質量単位間隔をあけて並べられていないので、それぞれのピーク成分およびP内のその派
生形を有意なすべてのピークについて別々に解析的に計算する必要がある(上述のt検定に基づいて)。新しいP行列が構築されたら、以下のように、実際の質量配置に関する他の更新を与えてcに対する新しい推定値を計算することができる。
mi(k)=mi(k-1)+Δmi(k)=mi(k-1)+cn+i(k)/ci(k)
ただし、k=1、2、...およびmi(0)=mi0(公称質量配置)である。この反復による改良は、増分更新cn+i(k)が式8から予測される標準偏差に相当する値になったときに完了する。そのようなピークに対し利用できる信号対雑音比が高いため、このような精密化が実装されると極めて高い質量精度を強い質量スペクトル・ピークについて達成でき、例えば、図5の質量69のピークについては2ppmの質量精度となる。この質量精度は、検出に利用できるイオンの個数が減少するためピーク強度が減少するとともに低下する。つまり、質量精度は、データ内のランダム・ノイズによってのみ制限され、化学ノイズ、同位体ピークからの干渉、不規則なピーク形状、または未知のベースラインの存在など、他の人為的結果または系統誤差では制限されないが、それは、これらの人為的結果は、ここで取られる較正およびピーク分析アプローチにより完全に補償されているであろうからである。

0129

次に、本発明の多数の付随する利点および特徴のいくつかについて説明する。本発明は、数学的に的確で、統計的に健全で、物理に基づく質量分析データを処理する方法を提供する。本発明では、ノイズおよび同位体ピークの存在を方式全体における有用な付加的情報としてみなすと都合がよい。本発明では、ノイズ、同位体分布、複数電荷、ベースライン、ピーク同定、ピーク位置決め、およびピーク計量をすべて同時に1つの統合プロセスで取り扱う。本発明は、時折実行されるMS較正をルーチンMSデータ分析と組合せ、高分解能または低分解能のMSシステムにおける質量精度を劇的に改善することができる。単位質量分解能(FWHM=0.5〜0.7amu)を有する従来のMSシステムでは、1〜5ppmレベルの質量精度を達成できる。本発明は、組み込みベースライン決定、ノイズ・フィルタ処理/信号平均処理、およびピーク積分を含む。本発明は、GC/MSまたはLC/MSまたは他の時間依存のMS検出システム上のオンザフライのデータ整理に使用できるように計算効率が高い。本発明は、計測器診断およびデータ品質管理のための出力統計量を持つ。さらに、本発明は、ノイズおよび他の人為的結果に対する予測可能挙動を持つすべての線形演算子を伴う。本発明は、強いピークに対しては高い質量精度、ダイナミックレンジ幅が広い弱いピークに対しては高感度を達成する。本発明では、さまざまな(種類の)MS計測器の標準化を行い、また普遍的な高精度ライブラリ検索機能を実現する。これにより、高い質量精度が達成可能であるため分離を行わなくても複素行列により極めて安価に分子指紋分析を行うことができる。

0130

上記の質量スペクトル較正およびピーク分析は、少なくとも単位質量分解能を有する典型的な質量分析システムについて説明されているが、さらに、単位質量または1/z質量差の範囲内に置かれるピークを区別しない低分解能質量分析システムであっても、上記の質量スペクトル較正は大きな固有の利点をもたらすことは理解される。低分解能質量分析システムでは、スペクトル分解が欠如しているため明示的なピーク同定は実現可能でない。ピーク同定および定量化を含む従来のピーク分析の代わりに、完全な質量スペクトル・トレースは、多変量較正を介した検体定量化またはクラスタ分析またはパターン認識を介した試料分類のための多変量統計分析の入力として使用される。これらの多変量統計アプローチは、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bruce Kowalski et al「J.Chemometrics」1991年、5、129で説明されているような主成分分析PCA)または主成分回帰(PCR)を含む。これらの多変量統計アプローチの適用を成功させる重要な一要因は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yongdong Wang et al「Anal.Chem.」1991年、63、2750で説明されているような、試料と計測器との間の高い質量精度および整合するピーク形状関数である。本発明により導入された完全な質量スペクトル較正では、質量軸および質量スペクトル・ピーク形状関数の両方を異なる試料または計測器間で適
切に揃え、検体定量化たまは試料分類を目的とする高精度の多変量スペクトル比較を実行することができなければならない(バイオマーカー発見で使用される)。

0131

図17は、本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)計測器システムを動作させる方法を示す図である。MS計測器システムは、少なくともピーク形状および質量軸に関して較正される(ステップ1110)。ステップ1110は、以下のステップ1110A〜1110Gに分けられることは理解されるであろう。

0132

さらに、ステップ1110E〜1110Hはオプションであることも理解されるであろう。ステップ1110E〜1110Hが実行される場合、図19の方法を図17の方法の後に実行することができる。しかし、ステップ1110E〜1110Hが省略された場合、図20の方法を図17の方法の後に実行することができる。

0133

ステップ1110Aで、相対存在量および同位体の正確な質量配置が、与えられた較正標準について計算される。
ステップ1110Bで、同位体質量は、計算された同位体ピーク・クラスタ、および較正標準に対応する測定された同位体ピーク・クラスタに基づいて事前に揃えられ、それにより、MS計測器システムの質量軸を較正する。

0134

ステップ1110Cで、ピーク形状関数は、計算された同位体ピーク・クラスタおよび測定された同位体ピーク・クラスタに対応して導かれる。
ステップ1110Dで、導かれたピーク形状関数に対応するデータを補間して、所望の質量範囲内の他のピーク形状関数を求める。導かれたピーク形状関数および他のピーク形状関数はそれぞれ、実際に測定された質量配置に対応する。
ステップ1110Eで、そのピーク形状関数および他のピーク形状関数は、所望の質量範囲の正確に中点を中心とする目標ピーク形状関数に変換される。
ステップ1110Fで、較正フィルタは、目標ピーク形状関数および計算されたピーク形状関数から計算される。
ステップ1110Gで、較正フィルタは、さらに細かい格子上に補間される。
ステップ1110Hで、較正フィルタが適用され、MS計測器システムの較正を行う。

0135

図18は、本発明の例示的な一実施形態による、図17の方法のステップ1110Hを示す図である。ステップ1110Hは、以下のステップ1210A〜1210Cを含む。
ステップ1210Aで、事前較正行列が計算される。事前較正行列の計算は、非一様な間隔で並ぶデータを一様な間隔で並ぶデータに変換することを含み、前記変換は、質量軸のプリアライメントを含み、適宜、TOF、FTMS、または他の計測器の変換を含む。
ステップ1210Bで、較正行列が計算される。較正行列の計算は、それぞれの列内の非ゼロ要素がシフト後に畳み込みフィルタの要素から逆順に取ったものである帯状対角行列を作成することを含む。
ステップ1210Cで、事後較正行列が計算される。事後較正行列の計算は、内部間隔から出力または所望の間隔に補間し、変換された空間を元の質量空間に変換して戻すことを含む。

0136

図19は、本発明の例示的な一実施形態による、MS計測器システムから得られる質量分析(MS)スペクトルを分析する方法を示す図である。
MSスペクトル内のピークは、完全較正後に分析される(ステップ1310)。ピーク形状関数は、質量をスペクトルの全範囲にわたって同じであることは好ましいが、必要というわけではない。
質量間隔が好ましくは公称質量間隔(例えば、1amuまたは1/z)の分数(例えば、1/4、1/5、1/8、1/10、1/12、1/16)である較正されたMSデー
タが受信される(ステップ1310A)。

0137

完全ピーク成分行列の行の1つの対を計算し、その対の一方の行は、単位ピーク面積に正規化された目標ピーク形状関数を格納し、その対の他方の行は、その対の一方の行内に格納されている目標ピーク形状関数の1次導関数を格納し、目標ピーク形状関数とその1次導関数は両方とも、公称質量間隔の分数のところでサンプリングされているようにする(ステップ1310B)。

0138

完全ピーク成分行列は、それらの行の残りのピーク成分が完全質量スペクトル範囲内のそれぞれの公称質量に対応して互いのシフトされたバージョンとして配列されるように行列のインデックスを作成することにより完成する(ステップ1310C)。

0139

加重多重線形回帰(WMLR)演算は、質量スペクトル分散の逆数を重みとして使用し、完全質量スペクトル範囲内のすべての公称質量において、積分されたピーク面積と質量偏差を計算することで実行される(ステップ1310D)。
すべてのピーク面積および質量偏差について標準偏差が計算される(ステップ1310E)。
公称質量は、対応する公称質量から計算された質量偏差を足し込むことにより実際の質量の中に更新される(ステップ1310F)。

0140

実行(ステップ1310D)、計算(1310E)、および更新(1310F)ステップを、ピーク面積または質量偏差の漸進的改善が、対応する標準偏差または他のプリセットされた基準よりも小さくなるまで繰り返す(ステップ1310G)。ピーク面積または質量偏差の漸進的改善が対応する標準偏差または他のプリセットされた基準よりも小さくない場合、完全ピーク成分行列は、実際の質量を使用して再構築され(ステップ1310H)、この方法はステップ1310Dに戻る。小さい場合、この方法は、ステップ1310Iに進む。

0141

ピーク面積のすべてについてt統計量を計算し(ステップ1310I)、統計的に有意な質量ピークに対するピーク面積および正確な質量を含む質量スペクトル・ピーク・リストを得る(ステップ1310J)。

0142

図20は、本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)スペクトルを分析する方法を示す図である。
MSスペクトル内のピークは、完全質量スペクトル範囲をカバーするピーク形状関数を決定した後に分析される(ステップ1410)。ピーク形状補間は、それぞれの公称質量において1つのピーク形状関数を求めるために実行される(ステップ1410A)。
ピーク形状関数の1次導関数は、すべての公称質量で計算される(ステップ1410B)。ピーク形状関数および対応する1次導関数は結合され、1つの完全なピーク成分行列にされる(ステップ1410C)。

0143

加重多重線形回帰(WMLR)演算は、質量スペクトル分散の逆数を重みとして使用し、完全質量スペクトル範囲内のすべての公称質量において積分されたピーク面積と質量偏差を計算することで実行される(ステップ1410D)。
すべてのピーク面積および質量偏差について標準偏差が計算される(ステップ1410E)。
公称質量は、対応する公称質量から計算された質量偏差を足し込むことにより実際の質量の中に更新される(ステップ1410F)。

0144

実行(ステップ1410D)、計算(1410E)、および更新(1410F)ステッ
プが、ピーク面積または質量偏差の漸進的改善が、対応する標準偏差または他のプリセットされた基準よりも小さくなるまで繰り返される(ステップ1410G)。ピーク面積または質量偏差の漸進的改善が対応する標準偏差または他のプリセットされた基準よりも小さくない場合、完全ピーク成分行列は、実際の質量を使用して再構築され(ステップ1410H)、この方法はステップ1410Dに戻る。小さい場合、この方法は、ステップ1410Iに進む。
ピーク面積のすべてについてt統計量を計算し(ステップ1310I)、統計的に有意な質量ピークに対するピーク面積および正確な質量を含む質量スペクトル・ピーク・リストを得る(ステップ1410J)。

0145

図21は、本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)計測器システムの較正フィルタを作成する方法を示す流れ図である。
1つまたはそれ以上の化合物が、質量分析(MS)標準として選択される(1510)。MS標準に関してMSプロファイル・データが取得される(ステップ1510A)。それぞれのイオン断片クラスタが同定される(ステップ1510B)。
ステップ1510Bの後、有意な同位体が存在するかどうかが判定される(ステップ1510N)。もし存在すれば、相対同位体存在量が正確な質量で計算される(ステップ1510C)。事前較正ステップを実行する(ステップ1510D)。事前較正ステップは、生データに対し事前較正計測器依存変換を実行すること、事前較正質量間隔調整を実行すること、および/または質量スペクトル同位体ピークの事前位置揃えを伴う場合がある。

0146

その後、ピーク形状関数を求めることが望ましいかどうかが判定される(ステップ1510E)。望ましければ、狭いピーク幅の同じ連続関数を使用して、計算された相対同位体存在量および測定された同位体ピーク・クラスタの両方に対し畳み込み演算を実行し、次いで、畳み込み演算の後、測定された同位体ピーク・クラスタと結果として得られた同位体ピーク・クラスタとの間で逆畳み込み演算を実行し(ステップ1510T)、少なくとも1つのピーク形状関数を取得し(1510P)、方法はステップ1510Qに戻る。そうでなければ、計算された相対同位体存在量と目標ピーク形状関数との間で畳み込み演算を実行し(ステップ1510F)、畳み込み演算の後、測定された同位体ピーク・クラスタとその結果得られた同位体ピーク・クラスタとの間で逆畳み込み演算を実行し(ステップ1510G)、少なくとも1つの較正フィルタを取得する(1510H)。

0147

さらに、ステップ1510Bの後、有意な同位体が存在するかどうかが判定される(ステップ1510N)。存在しなければ、事前較正ステップを実行する(1510O)。事前較正ステップは、生データに対し事前較正計測器依存変換を実行すること、事前較正質量間隔調整を実行すること、および/または質量スペクトル同位体ピークの事前位置揃えを伴う場合がある。
そうして得られたピーク形状関数(1510P)は補間され(ステップ1510Q)、その後、指定された目標ピーク形状関数(ステップ1510R)との逆畳み込み演算(1510S)が実行される。

0148

ステップ1510Sで、質量スペクトル目標ピーク形状関数と測定された質量スペクトル・ピーク形状関数および計算された質量スペクトル・ピーク形状関数のうちの一方との間で逆畳み込み演算を実行し、質量スペクトル・ピーク形状関数および少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数を、質量スペクトル・ピーク形状関数および少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数によりカバーされるそれぞれの質量範囲内の中点を中心とする質量スペクトル目標ピーク形状関数に変換する。少なくとも1つの較正フィルタは、質量スペクトル・ピーク形状関数および少なくとも1つの他の質量スペクトル・ピーク形状関数によりカバーされるそれぞれの質量範囲内の中点を中心とする質
量スペクトル目標ピーク形状関数から計算される(ステップ1510H)。

0149

2つの較正フィルタ間で補間演算が実行され、それにより、所望の質量範囲内の少なくとも1つの他の較正フィルタを取得する(ステップ1510I)。
完全較正フィルタ・セット(ステップ1510J)を、ステップ1510Hの較正フィルタから取得し、ステップ1510Iの補間から結果を得る。事後較正ステップを実行する(ステップ1510K)。事後較正ステップは、事後較正計測器依存変換を実行すること、および/または事後較正質量間隔調整を実行することを伴うことができる。
データは、事前較正ステップ1510O、ステップ1510Jの完全較正フィルタ、および事後較正ステップ1510Kに対応して組み合わされ(ステップ1510L)、それにより、全較正フィルタ・セットF1および分散フィルタ・セットF2を取得する(ステップ1510M)。

0150

図22は、本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)データを処理する方法を示すブロック図である。
MSプロファイル・データが、試験試料上で取得される(ステップ1610)。このプロファイル・データは、必要ならば補間される(ステップ1610A)。疎行列乗算を、全較正フィルタ・セットF1および/または分散フィルタ・セットF2で実行する(ステップ1610B)。その後、較正されたデータは、必要ならば、報告される質量間隔に補間される(ステップ1610C)。

0151

質量スペクトル分散は、それぞれの質量サンプリング点で報告され(ステップ1610G)、方法はステップ1610Hに進む。また、ステップ1610Cの後に、質量スペクトル・データが、質量およびピーク形状の両方について較正され(ステップ1610D)、方法はステップ1610Eに進む。

0152

ステップ1610Eで、使用されるMS計測器システムが、質量スペクトル・ピーク同定を行える十分に高い分解能を持つかどうかが判定される。そうであれば、方法は、質量スペクトル・ピーク同定のためステップ1610Hに進む。そうでなければ、方法は、ステップ1610Fに進み、明示的なピーク同定を行わずに完全質量スペクトル・データの直接比較を行う。

0153

ステップ1610Hで、質量スペクトル・ピーク定量化および正確な質量決定ステップが実行される。ステップ1610Fで、多変量較正を介して定量分析が実行されるか、または明示的な質量スペクトル・ピーク同定を行わずに完全質量スペクトル応答曲線を入力として使用しパターン認識/クラスタ分析を介して定性分析が実行される。

0154

本発明の原理は、生体組織または血液中などにあるタンパク質の非常に複雑な混合物が分析される状況にも適用することができる。それらの場合には、研究または診断を目的として、分析される化合物は、必ずしも純粋ではない。純粋に化合物が存在しているとしても、化学式または化学的同一性は知られていない場合がある。さらに、これらの非常に複雑な試料では、非常に複雑なスペクトルを有しており、標準較正化合物を追加するのは不都合であり、複雑な状況をなおいっそう解釈しにくいものとする可能性がある。最後に、標準較正化合物が試料測定の前に抜かされるという誤りが生じている場合がある。測定を繰り返すために試料を置き換えるのは難しいか、または不可能な場合がある。

0155

しかしながら、相対的較正を実行することにより本発明の原理を利用することは可能である。複雑な生物試料は、共通の背景を与えるいくつかの化合物を含むことが多い。例えば、血液は、一般に、ヘモグロビンおよびBSA(ウシ血清アルブミン)を含む。本発明の一般原理によれば、分析対象と同じ一般的性質を有する試験試料で測定される特定のピ
ークは、「判断基準」として選択できる。判断基準内の選択されたピークは、その後、分析される試料内の目標として処理される。これらの選択されたピークと、適宜、元のピークと比較して取るに足らない幅のガウス型などの知られている関数との畳み込みを実行し、目標を形成することができる。上で詳しく説明されている変換、フィルタ処理、畳み込み、および逆畳み込みを実行できる。判断基準のピークと比較できるように、分析される(計算されたピーク形状関数があるかのように取り扱われる)試料のピークに作用する畳み込みフィルタが導かれる。これは、範囲内のすべてのピーク位置をカバーするために複製または展開される畳み込みフィルタを使い判断基準としてただ1つのピークにより実行できる。判断基準の複数のピークが選択された場合、ピーク間の補間をそれらのピークの間の位置について実行できる。これらの手順は、分析される試料毎に従うのが有利である。

0156

これらのステップに従った後、結果として得られるデータは、さまざまな形態の微分解析を受ける可能性がある。パターン認識、判別分析、クラスタ分析、主成分分析、部分最小二乗分析、およびさまざまな多変量回帰分析を使用できる。絶対精度保証されない場合があるが、結果は、事前選別、選別、または医療診断に極めて有用と思われる。これは、医療研究または診断の目的に特に価値あるものと思われ、これは、特に、診断が他の、たぶんより侵襲的手法により独立に確認できる場合に価値がある。

0157

例示的な実施形態は、本明細書では付属の図面を参照しつつ説明されているが、本発明は、それらの正確な実施形態に制限されるわけではなく、また、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな他の変更および修正も可能であることは理解するであろう。このような変更および修正はすべて、付属の請求項で定められているとおり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。

図面の簡単な説明

0158

質量分析計を含む、本発明による分析システムのブロック図である。
1次元の試料分離、およびマルチ・チャネル検出器を備えるシステムのブロック図である。
2次元の試料分離、およびシングル・チャネル検出器を備えるシステムのブロック図である。
計測器較正を実行する方法の非常に高水準の流れ図である。
従来技術により、m/z比の関数としてそれぞれプロットされた異なるイオン強度スケール110、120、および130上の典型的な質量スペクトル・データ・トレースを示す図である。
6Aおよび6Bはそれぞれ、2つの異なる強度スケール上でのイオン断片C3F5に対する質量スペクトル・ピーク・データを示す図である。
7Aおよび7Bは、本発明の例示的な一実施形態による、事前畳み込み(pre-convolution)の前および後の測定された同位体クラスタ310をそれぞれ示す図である。7Cおよび7Dは、本発明の例示的な一実施形態による、事前畳み込みの前および後の計算された同位体クラスタ320をそれぞれ示す図である。7Eおよび7Fは、本発明の例示的な一実施形態による、計算された導かれたピーク形状関数330および対応する逆畳み込み残差(deconvolution residual)340をそれぞれ示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、例示的な逆畳み込みされたピーク形状関数410を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、図8の逆畳み込みされたピーク形状関数410に基づく例示的な補間ピーク形状関数510を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、質量分析較正に対し好ましい2つの例示的な目標610、620を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、一組の質量について計算された較正フィルタの集まり710を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、補間および質量プリアライメント(mass pre-alignment)と組み合わせたフィルタ行列アプリケーションの図形表現800を示す図である。
外部および内部の両方の計測器較正を実行しうる方法の非常に高水準の流れ図である。
本発明の例示的な一実施形態による、完全較正(14Aと14Bの両方)の前後の質量分析(MS)スペクトルの第1のセグメント910および第2のセグメント920、および分散スペクトル930(14C)を示す図である。
15Aは、質量分析計以外の計測器から発生しうるノイズを含むデータ・トレースである。15Bは、15Aで較正フィルタをデータ・トレースに適用した後の較正されたデータ・トレースを示す図である。15Cは、示されたすべてのピーク位置およびピーク面積により、15Bのデータのピーク分析の部分的な結果をスティックとして示す図である。
16Aは、本発明の例示的な一実施形態による、質量範囲にわたる可能な質量スペクトル・ピーク(図5から取った生質量スペクトル)に対する正確な質量位置(式10)の関数としてt統計量を反映するスティック・スペクトル(stick spectrum)1010を示す図である。16BおよびCは、本発明の例示的な一実施形態による、生MSスペクトル・セグメントおよびその完全較正バージョン1030のオーバーレイ1020を示す図である。16Dは、本発明の例示的な一実施形態による、対応するt統計量1040および臨界t値が12で設定されている水平境界線1050を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)計測器システムを動作させる方法を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、図17の方法のステップ1110Hを示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、完全質量スペクトル較正後のMS計測器システムから得られる質量分析(MS)スペクトルを分析する方法を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、ピーク形状関数の決定後のMS計測器システムから得られる質量分析(MS)スペクトルを分析する方法を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、質量分析(MS)システムを較正するオプションのステップを含む図17の方法を示す図である。
本発明の例示的な一実施形態による、MS計測器システムから得られる質量分析(MS)スペクトルを処理する方法を示す図である。

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