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技術 微量タンパク質の同定を可能にするMALDI型質量分析装置用サンプルプレート

出願人 塩野義製薬株式会社
発明者 森田敦
出願日 2006年5月16日 (13年11ヶ月経過) 出願番号 2006-136340
公開日 2007年11月29日 (12年5ヶ月経過) 公開番号 2007-309673
状態 拒絶査定
技術分野 その他の電気的手段による材料の調査、分析
主要キーワード 測定行 蒸気雲 積算スペクトル 本プレート 同定解析 乾燥環境下 塗布板 タンパク質消化酵素
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2007年11月29日)のものです。
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図面 (6)

課題

解決手段

本発明の表面にタンパク質消化酵素固相化されているマトリックス支援レーザー脱離イオン化法質量分析装置用サンプルプレートを用いることにより、微量タンパク質の同定が可能になり、溶液中微量タンパク質のMALDIによる同定を、実験操作上のロスなく、簡便かつ高スループットで実施することができる。

概要

背景

プロテオーム解析は、多くのタンパク質を対象として網羅的に解析を行う手法であり、近年、質量分析装置の急速な発展並行して、この分野の研究が活発に行われている。プロテオーム解析において、質量分析装置は特にタンパク質の同定や構造の解析を効率良く行うために利用される。タンパク質解析を目的とした質量分析装置は、サンプルであるタンパク質をまずイオン化し、これを質量分析部に誘導して測定し解析するが、そのイオン化法として、主にマトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization:MALDI)法とエレクトロスプレーイオン化(Electro Spray Ionization:ESI)法の二つが利用されており、イオン化部を含む質量分析装置も二つの型に大別される。それぞれのイオン化法についてはそれぞれに特徴を有するが、一般的に多くのタンパク質をハイスループット同定解析する目的には、MALDI型質量分析装置が使用され、その方法にはPMF(Peptide Mass Fingerprinting)法が最も行われている。PMF法では、サンプルのタンパク質を、例えばトリプシンのような配列特異的にタンパク質を消化する酵素を作用させてペプチド断片とし、これをMALDIターゲットプレートアプライ後、さらにイオン化剤であるマトリックス試薬と混合して結晶化させた後、MALDI型質量分析装置で測定する。ここで得た複数のペプチド断片の質量/電荷(m/z)値のパターンは、タンパク質に固有のものとなるため、MASCOTサーチ等の専用解析ソフトを用いてデータベースと照合することにより、元のサンプル中に存在したタンパク質を類推し、同定結果を導くことが可能である。

このように、PMF法を用いてMALDI型質量分析装置で解析を行うことにより、効率良くタンパク質を同定することが可能であり、さらに質量分析装置はタンパク質やペプチドをイオン化して電気的に検出するため、非常に微量なものまで測定することが可能である。この特徴に着目して、例えば血液や尿等の生体試料に含まれる多くのタンパク質を液体クロマトグラフィー等で分離し、MALDIターゲットプレートにスポットして解析するLC(液体クロマトグラフィー)−MALDI法への応用が考えられる。しかし、本解析でLCの溶出画分中のタンパク質の同定を行うためには、多くの画分それぞれについて、トリプシン等の消化酵素で処理する必要がある。さらにこの操作を、非常に微量しかタンパク質が存在しない画分について実施する際、実験過程における回収量の低下により、極めて困難であることが予想される。これを解決する手段として、分離したタンパク質溶液をMALDIターゲットプレート上に直接スポットし、本プレート上でタンパク質消化酵素を作用させる方法が、Kajikawaによって報告されている(非特許文献1参照)。しかしこの方法における操作は、タンパク質試料をターゲットプレートへアプライした後、マトリックス試薬の添加、乾燥、トリプシンの添加、乾燥、溶媒添加による再結晶化、といった多くの操作を実施した後、質量分析装置で測定するというもので煩雑であり、一度に多くのサンプルを処理するためには適用が難しい。また、非特許文献1では、高濃度の1 mg/mlのタンパク質での検討を行っており、この文献を含む従来の方法では、微量なタンパク質の解析が極めて困難である。

このように、例えば多くのタンパク質を含む生体試料を、カラムクロマトグラフィー等の手法を用いて多くの画分に分離し、それぞれの画分に含まれるタンパク質をハイスループットに、且つ微量なものまで同定する場合、例えばMALDI型質量分析装置を用いたPMF法にてプロテオーム解析することが有効であると考えられる。しかし、溶液状にあるタンパク質をサンプルとして、効率的に分析する技術は、現在のところ報告されていない。
J. Mass Spectrom., 2005, 40, 1503-1504

概要

微量タンパク質の同定を可能にするMALDI質量分析装置用サンプルプレートを提供する。本発明の表面にタンパク質消化酵素が固相化されているマトリックス支援レーザー脱離イオン化法質量分析装置用サンプルプレートを用いることにより、微量タンパク質の同定が可能になり、溶液中微量タンパク質のMALDIによる同定を、実験操作上のロスなく、簡便かつ高スループットで実施することができる。 なし

目的

本発明は、微量タンパク質の同定を可能にするMALDI型質量分析装置用サンプルプレートを提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

該タンパク質消化酵素が、トリプシンリシルエンドペプチダーゼ、エンドペプチダーゼAsp-N、V8プロテアーゼからなる群より選ばれる1又は2以上の酵素である、請求項1記載のプレート

請求項3

酵素消化反応緩衝剤が固相化されている請求項1又は2記載のプレート。

請求項4

タンパク質安定化剤が固相化されている請求項1〜3のいずれかに記載のプレート。

請求項5

マトリックス支援レーザー脱離イオン化法に用いられる試料塗布板であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプレート。

請求項6

請求項5記載のプレートを備えた、マトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置。

請求項7

質量分析計に付置されている、請求項6記載の装置。

請求項8

請求項1〜5のいずれかに記載のプレートを用いたタンパク質の同定方法

請求項9

マトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置用サンプルプレートにタンパク質消化酵素を塗布し、乾燥させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプレートの作製方法

技術分野

0001

本発明は、微量タンパク質の同定を可能にするMALDI型質量分析装置サンプルプレートに関する。より具体的には、例えば、MALDI TOF−MSを用いた後続分析を容易にする、微量タンパク質の同定を可能にするサンプルプレートに関する。

背景技術

0002

プロテオーム解析は、多くのタンパク質を対象として網羅的に解析を行う手法であり、近年、質量分析装置の急速な発展並行して、この分野の研究が活発に行われている。プロテオーム解析において、質量分析装置は特にタンパク質の同定や構造の解析を効率良く行うために利用される。タンパク質解析を目的とした質量分析装置は、サンプルであるタンパク質をまずイオン化し、これを質量分析部に誘導して測定し解析するが、そのイオン化法として、主にマトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization:MALDI)法とエレクトロスプレーイオン化(Electro Spray Ionization:ESI)法の二つが利用されており、イオン化部を含む質量分析装置も二つの型に大別される。それぞれのイオン化法についてはそれぞれに特徴を有するが、一般的に多くのタンパク質をハイスループット同定解析する目的には、MALDI型質量分析装置が使用され、その方法にはPMF(Peptide Mass Fingerprinting)法が最も行われている。PMF法では、サンプルのタンパク質を、例えばトリプシンのような配列特異的にタンパク質を消化する酵素を作用させてペプチド断片とし、これをMALDIターゲットプレートアプライ後、さらにイオン化剤であるマトリックス試薬と混合して結晶化させた後、MALDI型質量分析装置で測定する。ここで得た複数のペプチド断片の質量/電荷(m/z)値のパターンは、タンパク質に固有のものとなるため、MASCOTサーチ等の専用解析ソフトを用いてデータベースと照合することにより、元のサンプル中に存在したタンパク質を類推し、同定結果を導くことが可能である。

0003

このように、PMF法を用いてMALDI型質量分析装置で解析を行うことにより、効率良くタンパク質を同定することが可能であり、さらに質量分析装置はタンパク質やペプチドをイオン化して電気的に検出するため、非常に微量なものまで測定することが可能である。この特徴に着目して、例えば血液や尿等の生体試料に含まれる多くのタンパク質を液体クロマトグラフィー等で分離し、MALDIターゲットプレートにスポットして解析するLC(液体クロマトグラフィー)−MALDI法への応用が考えられる。しかし、本解析でLCの溶出画分中のタンパク質の同定を行うためには、多くの画分それぞれについて、トリプシン等の消化酵素で処理する必要がある。さらにこの操作を、非常に微量しかタンパク質が存在しない画分について実施する際、実験過程における回収量の低下により、極めて困難であることが予想される。これを解決する手段として、分離したタンパク質溶液をMALDIターゲットプレート上に直接スポットし、本プレート上でタンパク質消化酵素を作用させる方法が、Kajikawaによって報告されている(非特許文献1参照)。しかしこの方法における操作は、タンパク質試料をターゲットプレートへアプライした後、マトリックス試薬の添加、乾燥、トリプシンの添加、乾燥、溶媒添加による再結晶化、といった多くの操作を実施した後、質量分析装置で測定するというもので煩雑であり、一度に多くのサンプルを処理するためには適用が難しい。また、非特許文献1では、高濃度の1 mg/mlのタンパク質での検討を行っており、この文献を含む従来の方法では、微量なタンパク質の解析が極めて困難である。

0004

このように、例えば多くのタンパク質を含む生体試料を、カラムクロマトグラフィー等の手法を用いて多くの画分に分離し、それぞれの画分に含まれるタンパク質をハイスループットに、且つ微量なものまで同定する場合、例えばMALDI型質量分析装置を用いたPMF法にてプロテオーム解析することが有効であると考えられる。しかし、溶液状にあるタンパク質をサンプルとして、効率的に分析する技術は、現在のところ報告されていない。
J. Mass Spectrom., 2005, 40, 1503-1504

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、微量タンパク質の同定を可能にするMALDI型質量分析装置用サンプルプレートを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者は、鋭意研究の結果、微量タンパク質の同定を可能にするMALDI型質量分析装置用サンプルプレートを見出した。本発明により考案された、予めタンパク質消化酵素がMALDI質量分析用ターゲットプレートに固相化されているサンプルプレートは、微量なタンパク質の分析を可能とするものであり、さらにサンプルを直接ターゲットプレートにアプライして処理することにより、従来法より極めて高感度に検出することを可能にするものである。

0007

すなわち、本発明は、
(1)表面にタンパク質消化酵素が固相化されているマトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置用サンプルプレート、
(2)該タンパク質消化酵素が、トリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ Asp-N、V8プロテアーゼからなる群より選ばれる1又は2以上の酵素である、(1)記載のプレート
(3)酵素消化反応緩衝剤が固相化されている(1)又は(2)記載のプレート、
(4)タンパク質安定化剤が固相化されている(1)〜(3)のいずれかに記載のプレート、
(5)マトリックス支援レーザー脱離イオン化法に用いられる試料塗布板であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のプレート、
(6)(5)記載のプレートを備えた、マトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置、
(7)質量分析計に付置されている、(6)記載の装置、
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載のプレートを用いたタンパク質の同定方法
(9)マトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置用サンプルプレートにタンパク質消化酵素を塗布し、乾燥させることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のプレートの作製方法、に関する。

発明の効果

0008

本発明のMALDI型質量分析装置用サンプルプレートを用いることにより、溶液中の微量タンパク質のMALDIによる同定を、実験操作上のロスなく、簡便かつ高スループットで実施することができる。

発明を実施するための最良の形態

0009

本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。

0010

「マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization:MALDI)」法とは、試料をイオン化する方法の一種であり、例えばAnal. Chem. 60, 2299(1988) に記載されているが、一般的には次のような原理に基づいている。

0011

まず、レーザー光を吸収する低分子化合物マトリックス化合物)と予め混合した試料(タンパク質、ペプチド、核酸糖鎖等)を試料塗布板上に塗布、乾燥して結晶化した後、これにレーザー光(窒素ガスレーザー固体レーザーYAGレーザー)等がよく用いられる)を照射する。マトリックス化合物は、レーザー光を効率よく吸収するので、レーザー照射時にマトリックス分子励起され試料分子と共に気化される。励起、気化されたマトリックス化合物と試料とのプロトンの授受があり、高電圧をかけた電場においてイオンとなった分子加速され分析計へ導かれる。

0012

MALDI法によるイオン化法は、通常、「飛行時間型(Time Of Flight:TOF)質量分析計(MS:Mass Spectrometry)」に代表される「質量分析計」と組み合わせて用いられる。MALDI TOF−MS (マトリックス支援レーザー脱離−イオン化飛行時間型質量分析)は、以前から利用されている質量分析技術である。試料は著しく過剰のマトリックス材料中に分散される。マトリックス材料は入射レーザー光を強く吸収する。マトリックスはまた、分画なしでイオン化の確率を高める化学環境内で試料分子を分離するのに役立つ。試料スポット上に集束されるレーザー光の短パルスによって試料及びマトリックスが揮発する。次いで、形成されたイオン化試料は高電圧を印加することにより加速され、各試料の持つ質量に応じて無電解飛行管内で分離され、質量に依存した飛行時間を経た後、イオン検出器に到達し、電気的な信号として検出される。
MALDI法と組み合わせて用いることのできる「質量分析計」としては、四重極型質量分析計フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計等も挙げられる。

0013

「マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)型質量分析装置用サンプルプレート」としては、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法に用いられる「試料塗布板」を用いることができるが、本発明の目的を達成するものであればこれに限定されない。詳しくは、市販の試料塗布板を用いることができる。

0014

「試料塗布板」とは、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法における試料塗布板を用いることができるが、本発明の目的を達成するものであればこれに限定されない。また本発明において適用される試料としては、タンパク質及びペプチド等のタンパク質消化酵素の基質となる生体関連高分子の他、ペプチド系合成高分子やペプチド系低分子有機化合物等が挙げられる。タンパク質消化酵素の基質であれば特に限定されず、本発明のプレートは、いかなる試料にも適用することができる。

0015

「タンパク質消化酵素」とは 好ましくは、トリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、エンドペプチダーゼAsp-N、V8プロテアーゼ等が挙げられる。特に好ましくは、トリプシンが挙げられる。

0016

「固相化」とは、固体状態の相を形成している状況をいう。本発明において、タンパク質消化酵素酵素が「固相化されている」プレートとは、表面が該酵素を含有する層からなるプレートを意味する。タンパク質消化酵素酵素は、プレートに固定化されていてもよく、塗布されていてもよい。

0017

「酵素消化反応緩衝剤」とは、タンパク質消化酵素がタンパク質を消化する反応の際に、適度なpHやイオン強度の環境に調整する目的で添加される物質を意味する。例えば、トリプシンを反応させる場合は、pH調整を目的として重炭酸アンモニウム等を用いる。本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートに該酵素消化反応緩衝剤を固相化することにより、使用時、効率的にタンパク質消化反応が進む環境をサンプルプレート上で調整することができる。

0018

「タンパク質安定化剤」とは、タンパク質消化酵素の活性を長時間保つために使用することができる安定化剤を意味する。例えば、サッカロース等の糖や市販のタンパク質安定化剤を用いることができる。本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートに該タンパク質安定化剤を固相化することにより、長期間活性を保持したサンプルプレートを調整することができる。

0019

本発明のプレートは、MALDI質量分析装置用サンプルプレートの各スポットにタンパク質消化酵素又はその溶液を塗布し、乾燥させることにより作製することができる。乾燥は液体蒸発させ、プレート上にタンパク質消化酵素が、失活することなく、プレート上に固相化するに十分な温度(例えば、室温)と時間(例えば、1時間)行われる。

0020

本発明のプレートを用いることにより、微量なタンパク質の定量が可能となる。例えば、高速液体クロマトグラフィーHPLC)から溶出された溶液をそのまま用いることができる。例えば、濃度が10 pmol/mlの試料サンプルでも、測定することができる。
本発明のプレートは低温下(例えば、4℃)に置くことにより、数時間から数日間、例えば、4日間という、長期的な保存が可能である。本発明のプレートは、上記の「タンパク質安定化剤」を固相化することにより、さらに長期的に保存することができる。

0021

本発明のプレートを用いたタンパク質の同定方法も本発明に包含される。該同定方法は、例えば、以下の方法で行うことができる。
−本発明のプレートの各スポットに試料溶液分配する工程、
−37℃の湿潤下でインキュベーションする工程、
−室温にて乾燥させる工程、
マトリックス溶液を添加する工程、
−室温にて乾燥させる工程、
−本発明のプレートをMALDI型質量分析装置に装填し、続いて、プレート上の各スポットにある試料について測定行い、各試料の、タンパク質消化酵素との反応により生成したペプチドについて、質量(m)と電荷(z)の比(m/z)に対する検出イオン強度のグラフ、すなわち質量スペクトログラムを得る工程、を含む方法により行うことができる。

0022

これにより、タンパク質消化酵素により生成した試料由来のペプチドをMALDI型質量分析装置で測定する場合等に、微量の試料を効率よく、高精度に分析できるという目的を達成することができる。

0023

本発明で同定されるタンパク質としては、タンパク質及びペプチド等のタンパク質消化酵素の基質となる生体関連高分子の他、ペプチド系合成高分子やペプチド系低分子有機化合物等が挙げられる。

0024

「マトリックス溶液」とは、マトリックス化合物を含む溶液を意味し、該マトリックス化合物の選択は、分析を行う試料の種類や目的に依存する。「マトリックス化合物」は、試料塗布前、試料塗布と同時、又は試料塗布後にMALDIスポット上に塗布される物質を意味する。マトリックス化合物のは、試料分子(タンパク質、ペプチド等)を可能な限り分散し、これらをMALDI質量分析用ターゲットプレートに付着させ、レーザー照射中に蒸気雲を形成することにより試料分子を気相転移し、そして最終的に、1又は2つ以上プロトン付加又は脱プロトンにより試料分子をイオン化する。これにより、試料分子は質量分析計にてその質量を測定することが可能となる。100種を上回る様々なマトリックス物質が知られているが、タンパク質消化酵素で生成したペプチドの質量パターンからもとの試料タンパク質を同定する目的としては、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)がその代表例として挙げられる。

0025

本発明のプレートを備えたマトリックス支援レーザー脱離イオン化型質量分析装置も本発明に包含される。また、そのような装置は、飛行時間型質量分析計、四重極型質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計等の質量分析計に付置されていてもよい。

0026

以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。

0027

本実施例においては、質量分析計として、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法、Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization)型質量分析装置であるultraflex II TOF/TOF(BRUKERDALTONICS社)を用い、本検討におけるMALDI質量分析装置用サンプルプレート(ターゲットプレート)は、同装置に適応したMTP 384 target plate ground steel TF(BRUKER DALTONICS社)を使用した。なお、ここで用いたサンプルプレートは、表面処理を施していない通常のスチール製金属プレートを材料として行っており、これは他のMALDI型質量装置でも用意されている一般的なものであるため、装置、ターゲットプレート等に限定されるものではない。また、固相する酵素としては、一般的にPMF法(Peptide Mass Fingerprinting法)にて用いるトリプシン(Trypsin Gold, Mass Spectrometry Grade(Promega社))を代表例として用い、検討を実施しているが、その他、リシルエンドペプチダーゼ(Lys-C)、エンドペプチダーゼAsp-N、V8プロテアーゼ等のタンパク質消化酵素にも応用可能である。さらに、本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートの性能を確認するためのタンパク質として、評価用汎用されるBSA(ウシ血清アルブミン、Bovine Serum Albumin(SIGMA社))を使用した。質量分析装置による質量スペクトルのデータについては、YAG固体レーザーの強度を45%に設定し、500ショット積算スペクトルデータを解析に用いた。
酵素を固相化したMALDI質量分析装置用サンプルプレートは、次のように調製した。まず、凍結乾燥品として供給されるトリプシン(Trypsin Gold, Mass Spectrometry Grade)を、試薬使用説明書にしたがって再溶解した後、12.5ng/μlの濃度となるように反応緩衝液(100mM NH4HCO3溶液)にて希釈調製した。調製後、直ちに本酵素溶液をMALDIターゲットプレートのスポットに1μl(12.5 ng)若しくは2μl(25 ng)の容量にてアプライし、室温(25℃)にて1時間乾燥させた。ここで調製した酵素固相化MALDI質量分析装置用サンプルプレートは、使用するまで乾燥環境下、4℃にて保存した。

0028

酵素トリプシンの固相量に関する検討
トリプシンをスポットあたり12.5 ng又は25 ng固相し、調製した直後のMALDI質量分析装置用サンプルプレートの各スポットに、50、25、及び12.5 pmol/mlのBSA溶液4μlをアプライし、ウェットチャンバー内に入れて37℃にて5時間反応させた。反応後、プレートをチャンバーより取り出し、室温で乾燥させた後、各スポットに5 mg/mlのCHCA(SIGMA社)を含む0.1%トリフルオロ酢酸/60%アセトニトリル溶液を2μl添加し、室温で乾燥させた後、質量分析計ultraflex IIにて測定を行った。本測定により得られた質量スペクトルを図1(トリプシン固相量25 ng)及び図2(トリプシン固相量12.5 ng)に示した。なお、これらの質量スペクトル図は、横軸はm/z(質量(m)/電荷(z))、縦軸は検出イオン強度を示す。
この結果、トリプシン固相量12.5 ng及び25 ngのサンプルプレート両者において、BSAの酵素消化断片ペプチド由来する1479.90(m/z)、1567.75(m/z)、1639.94(m/z)等のイオンピークが50〜12.5 pmol/mlのBSA溶液サンプル全てにおいて、明らかに検出された。したがって、ここで調製したトリプシン固相MALDI質量分析装置用サンプルプレートは、同プレート上でタンパク質の酵素消化が起こり、この反応により生成したペプチド断片が直接質量分析で検出可能であることが示された。

0029

また一方で、コントロールとして精製水をアプライしたスポットでは1045.56(m/z)、2211.10(m/z)等の酵素トリプシンの自己消化断片ペプチド由来ピークも同時に認め、これらのピークのイオン強度はトリプシン固相量の多い25 ngのサンプルプレートの方でより大きく認めた。しかし、トリプシン固相量25 ngのプレートの方が、同12.5 ngと比較して、BSAの消化断片ピークのイオンもより大きく認め、また、S/N比ノイズ(N)に対する試料由来のシグナル(S)比であり、これが大きい程、条件として良好である)も大きいことから、質量分析のピ−クパターンからタンパク質を同定する場合、条件としてはより優れていると考えられた。さらに、酵素の自己消化ペプチド由来のピークのパターンを、コントロール(バックグラウンド)データとして同時に取得しておくことで、サンプル由来のピークのデータのみを選別し、処理することが可能であると考えられた。
上より、MALDI質量分析装置用サンプルプレートにおける酵素トリプシンの固相量を25 ngとして、以後の検討を実施した。

0030

MALDI質量分析装置用サンプルプレートの保存に関する検討
MALDI質量分析装置用サンプルプレートは、本プレートを予め調製して保存しておき、必要時に直ちに使用できる状態にすることが、ハイスループット解析を目的として使用する上でも望ましいと考えられる。そこで、本プレートの4℃における保存安定性について検討を行った。

0031

トリプシンをスポットあたり25 ng固相し、調製したMALDI質量分析装置用サンプルプレートを乾燥条件下、4℃にて1日間、及び4日間保存後、各プレートのスポットに、50、25、及び12.5 pmol/mlのBSA溶液4μlをアプライし、ウェットチャンバー内に入れて37℃にて5時間反応させた。反応後、プレートをチャンバーより取り出し、室温で乾燥させた後、各スポットに5 mg/mlのCHCAを含む0.1%トリフルオロ酢酸/60%アセトニトリル溶液を2μl添加し、室温で乾燥させた後、質量分析計ultraflex IIにて測定を行った。本測定により得られた質量スペクトルを図3(1日間保存)及び図4(4日間保存)に示した。なお、これらの質量スペクトル図の横軸、縦軸は前項と同様に示した。

0032

本検討の結果、1日間保存したサンプルプレートではBSAのトリプシン消化断片ペプチド由来のピークが明確に確認でき、12.5 pmol/mlのBSAでも同定が十分可能なスペクトルを得ることができた。また、4日間保存したサンプルプレートにおいても、1日間保存の同プレートの結果と比較すると、BSAの消化断片ペプチド由来ピークのイオン強度が全体的に低下し、S/N比も小さくなる傾向を認めたが、十分にサンプルを消化する活性を保っており、12.5 pmol/mlのBSAでも同定が可能な質量スペクトルを得ることが可能であることがわかった。

0033

本検討では、消化酵素トリプシンをMALDI質量分析用ターゲットプレートに固相する際、反応緩衝剤(NH4HCO3:重炭酸アンモニウム)以外添加していない。一般的に、活性を持つタンパク質や酵素等はサッカロース等の糖や、その他市販のタンパク質安定化剤等を添加して乾燥すると、その活性が長期間保たれることがわかっている。本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートについても、消化酵素を固相する際に、糖やその他安定化させる添加剤を加えて処理することで、より長期間活性を保持したサンプルプレートが調製できる。

0034

MALDI質量分析装置用サンプルプレートの感度に関する検討
従来の方法により、溶液中のタンパク質を同定する目的でMALDI質量分析計による測定を行う場合、まずサンプルの溶液にトリプシン等の消化酵素を添加して、分析対象のタンパク質をペプチド断片としていた。ここで生成したペプチドフラグメントは、溶媒の成分によってはさらに逆相担体等を用いて脱塩精製した後、MALDI質量分析用ターゲットプレートにアプライし、CHCA等のマトリックスを添加して乾燥後、質量分析測定を実施してきた。これらの方法でタンパク質溶液を同定する場合、微量なタンパク質やペプチドは質量分析を行うまでの過程でサンプルを扱うチューブピペットチップ等の接触する材料に一部が吸着し、最終的に回収量が低下してしまうため、同定できないことがある。一方、本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートは、質量分析までに回収量が低下してしまう原因となる実験の工程が殆どないため、より微量なサンプルを感度高く同定分析することが可能と考えられ、例えばカラムクロマトグラフィーで分取した各分画の溶液に含まれる微量タンパク質を分析する際、非常に有用と考えられる。そこで、BSAの溶液を用いて、発明したMALDI質量分析装置用サンプルプレートを用いた方法の感度の確認と、微量タンパク質の同定における従来法との比較検討を行った。

0035

MALDI質量分析装置用サンプルプレートの感度の確認については、4℃にて1日間保存したトリプシン(25 ng)固相サンプルプレートを用いた。スポットに6.3 pmol/mlのBSAを含む溶液4μl(タンパク質量として約1.8 ng)をアプライし、ウェットチャンバー内に入れて37℃にて5時間反応させた。反応後、室温で乾燥させた後、各スポットに5 mg/mlのCHCAを含む0.1%トリフルオロ酢酸/60%アセトニトリル溶液を2μl添加し、室温で乾燥させた後、質量分析計ultraflex IIにて測定を行った。図5に、本測定により得た質量スペクトルを示した。本質量スペクトルより、S/N比が4以上を示すイオンピークのm/z値データを抽出し、これらのうちバックグランドのトリプシン自己消化ペプチド断片由来のm/z値を除いた7本のピークデータ(m/z値: 927.56、1193.69、1439.89、1479.89、1567.84、1640.03、2045.11)を、質量分析データ検索ソフトのMASCOTサーチ(MATRIX SCIENCE社)のPeptide Mass Fingerprintingにより同定を試みた。その結果、これら全てのピークはBSAのトリプシン消化ペプチドの値と一致し、このデータよりサンプル中に含まれるタンパク質はSCORE 104で有意にBSAであることを判定することができた。

0036

一方、従来法による同定分析については、次のように実施した。まず、100及び50 pmol/mlを含むBSA溶液10μlを各1.5 mlサンプルチューブ(Treff社)に入れ、ここに12.5 ng/μlトリプシンを含む200 mM NH4HCO3の溶液を1μl 添加し、37℃にて16時間反応させた。反応後、各溶液のうち1μl(100及び50 pmol/ml のBSA溶液サンプルはそれぞれ6.4 ng、3.2 ngに相当)をMALDI質量分析用ターゲットプレートにそれぞれスポットし、さらに同容量の5 mg/mlのCHCAを含む0.1%トリフルオロ酢酸/60%アセトニトリル溶液を添加して室温(25℃)にて乾燥後、質量分析計ultraflex IIにて測定を行った。本測定により得られた質量スペクトルを図6に示した。結果、従来の方法ではサンプル由来のペプチド断片のイオンピークは全く検出されず、同定することも不可能であった。

0037

以上の結果より、考案したMALDI質量分析装置用サンプルプレートは、溶液状のタンパク質を予め酵素消化等の処理を行う必要なく、直接アプライすることにより、簡便に質量分析を行うためのサンプルを調製することを可能にした。また、実験操作が簡略化されているために、微量タンパク質の回収量が格段に向上し、その結果、従来法では検出、同定が不可能であった極めて濃度の小さいタンパク質溶液についても、質量分析計を用いた同定を可能とした。本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートを用いることにより、例えばカラムクロマトグラフィーにより分離した各画分中に含まれるタンパク質を同定する場合、従来法と比較して極めて簡便な方法で、スループット性高く、且つ高感度に分析することを可能にする。

0038

本発明のMALDI質量分析装置用サンプルプレートは、微量タンパク質の同定において使用することができる。本発明の微量タンパク質の同定を可能にするMALDI質量分析装置用サンプルプレートを用いることにより、溶液中微量タンパク質のMALDIによる同定を、実験操作上のロスなく、簡便かつ高スループットで実施することができる。

図面の簡単な説明

0039

トリプシン固相量25 ng、保存日数0日間のプレートにより得た質量スペクトル
トリプシン固相量12.5 ng、保存日数0日間のプレートにより得た質量スペクトル
トリプシン固相量25 ng、保存日数1日間のプレートにより得た質量スペクトル
トリプシン固相量25 ng、保存日数4日間のプレートにより得た質量スペクトル
BSA 6.3 pmol/ml の溶液を、1日間保存したトリプシン固相量25 ngのプレートで処理し、得た質量スペクトル
BSAをサンプルチューブ内でトリプシン消化後、得た質量スペクトル(通常法

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