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技術 低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型

出願人 本田技研工業株式会社
発明者 園田豊隆マーコス・オルフォファーマルチナ・ハーゼンイェーガーハインツ・アドルフ・シュライバー
出願日 2007年2月27日 (13年5ヶ月経過) 出願番号 2007-047160
公開日 2007年11月15日 (12年8ヶ月経過) 公開番号 2007-298025
状態 特許登録済
技術分野 非容積形ポンプのロータ 非容積形ポンプの構造
主要キーワード レイノルズ数領域 軸コード 変位率 臨界レイノルズ数 低レイノルズ数領域 層流境界層 後縁近傍 低レイノルズ数
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

軸流型圧縮機用翼型の高レイノルズ数領域での圧力損失低減効果を確保しながら、低レイノルズ数領域での圧力損失の低減を図る。

解決手段

レイノルズ数臨界レイノルズ数以下の遷音速領域において、翼型の背面側の流速分布がコード上で前縁から6%以内に超音速極大値を一つ有する。あるいはシェイプファクタがコード上で前縁から6%〜15の領域に極大値を有し、30%〜60の領域でほとんど一定であり、コードの60%より下流の領域で2.5まで漸増する。又、翼型の背面において前縁の直後で流速が極大値になる位置が従来の翼型(CDA)に比べて著しく前縁側に近づく。その結果として層流境界層から乱流境界層への初期遷移が促進され、遷移点の下流の翼型背面の後部の乱流境界層が極めて安定した状態に留まるようになる。

概要

背景

現在、小型から大型までの最先端航空用エンジン軸流型圧縮機翼列動翼静翼アウトレットガイドベーン)に広く用いられている翼型として、CDA(Controlled Diffusion Airfoil)が知られている。このCDAは遷音速領域においての背面での最大流速がコードの10%から30%の領域で発生し、流速超音速から亜音速衝撃波を伴わずに減速して、衝撃波損失が除去され且つ境界層が衝撃波と境界層との相互作用により剥離しないような流速分布を与えることを設計のコンセプトとしている。

また下記特許文献1には、低レイノルズ数領域における層流剥離泡の発生および乱流境界層発達を抑制して圧縮機の効率を向上させるとともにサージ余裕の減少を防止すべく、翼型の前縁から背面の前半部分に後半部分に比較して表面粗さが相対的に粗い粗面を形成したものが記載されている。

また下記特許文献2には、圧縮機用の翼型の背面の流速の最初の極大値の下流であってコードの15%以内の領域に流速が略一定の超音速部分を形成し、流速が最初の極大値になる位置に大きな第1の衝撃波を発生させることで、流速が略一定の超音速となる位置に発生する第2の衝撃波を弱め、これにより第2の衝撃波に伴う境界層の剥離を抑制して圧力損失を低減するものが記載されている。
特開2002−317797号公報
特開2004−293335号公報

概要

軸流型圧縮機用翼型の高レイノルズ数領域での圧力損失の低減効果を確保しながら、低レイノルズ数領域での圧力損失の低減をる。レイノルズ数臨界レイノルズ数以下の遷音速領域において、翼型の背面側の流速分布がコード上で前縁から6%以内に超音速の極大値を一つ有する。あるいはシェイプファクタがコード上で前縁から6%〜15の領域に極大値を有し、30%〜60の領域でほとんど一定であり、コードの60%より下流の領域で2.5まで漸増する。又、翼型の背面において前縁の直後で流速が極大値になる位置が従来の翼型(CDA)に比べて著しく前縁側に近づく。その結果として層流境界層から乱流境界層への初期遷移が促進され、遷移点の下流の翼型背面の後部の乱流境界層が極めて安定した状態に留まるようになる。

目的

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、軸流型圧縮機用翼型の高レイノルズ数領域での圧力損失の低減効果を確保しながら、低レイノルズ数領域での圧力損失の低減を図ることを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

前縁(11)および後縁(12)間に正圧を発生する腹面(13)および負圧を発生する背面(14)を備えた翼型であって、背面(14)側の流速分布が、前縁(11)の位置を0%とし、後縁(12)の位置を100%としたコード上で前縁(11)から6%以内に超音速極大値を一つ有することを特徴とする、低レイノルズ数領域低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型

請求項2

背面(14)側の流速分布における超音速領域がコード上で前縁(11)から15%以内に限られることを特徴とする、請求項1に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項3

翼型の前縁部の翼厚分布変曲点を有することを特徴とする、請求項1に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項4

前記変曲点はコード上で前縁(11)から3%〜20%の範囲に在ることを特徴とする、請求項3に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項5

前記超音速の極大値はマッハ1.3以下であることを特徴とする、請求項1に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項6

前記翼型は圧縮機のアウトレットガイドベーンあるいは静翼あるいは動翼スパン方向の少なくとも一部において採用されることを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項7

前縁(11)および後縁(12)間に正圧を発生する腹面(13)および負圧を発生する背面(14)を備えた翼型であって、前記背面(14)での境界層シェイプファクタが、前縁(11)の位置を0%とし、後縁(12)の位置を100%としたコード上で前縁(11)から6%〜15%の領域に極大値を有し、30%〜60%の領域でほとんど一定であり、60%より下流の領域で漸増することを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項8

シェイプファクタの後縁(12)での最大値が2.5未満であることを特徴とする、請求項7に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項9

翼型の前縁部の翼厚分布が変曲点を有することを特徴とする、請求項7に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項10

前記変曲点はコード上で前縁(11)から3%〜20%の範囲に在ることを特徴とする、請求項9に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

請求項11

前記翼型は圧縮機のアウトレットガイドベーンあるいは静翼あるいは動翼のスパン方向の少なくとも一部において採用されることを特徴とする、請求項7〜請求項10の何れか1項に記載の低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型。

技術分野

0001

本発明は、航空用エンジン遷音速用の軸流型圧縮機翼列に対して好適に用いられ、特に臨界レイノルズ数(この値より低くなると、圧力損失が大幅に増加する開始点となるレイノルズ数)以下の低レイノルズ数領域において圧力損失を大幅に低減し得る翼型に関する。

背景技術

0002

現在、小型から大型までの最先端の航空用エンジンの軸流型圧縮機の翼列(動翼静翼アウトレットガイドベーン)に広く用いられている翼型として、CDA(Controlled Diffusion Airfoil)が知られている。このCDAは遷音速領域においての背面での最大流速がコードの10%から30%の領域で発生し、流速超音速から亜音速衝撃波を伴わずに減速して、衝撃波損失が除去され且つ境界層が衝撃波と境界層との相互作用により剥離しないような流速分布を与えることを設計のコンセプトとしている。

0003

また下記特許文献1には、低レイノルズ数領域における層流剥離泡の発生および乱流境界層発達を抑制して圧縮機の効率を向上させるとともにサージ余裕の減少を防止すべく、翼型の前縁から背面の前半部分に後半部分に比較して表面粗さが相対的に粗い粗面を形成したものが記載されている。

0004

また下記特許文献2には、圧縮機用の翼型の背面の流速の最初の極大値の下流であってコードの15%以内の領域に流速が略一定の超音速部分を形成し、流速が最初の極大値になる位置に大きな第1の衝撃波を発生させることで、流速が略一定の超音速となる位置に発生する第2の衝撃波を弱め、これにより第2の衝撃波に伴う境界層の剥離を抑制して圧力損失を低減するものが記載されている。
特開2002−317797号公報
特開2004−293335号公報

発明が解決しようとする課題

0005

ところで、航空用エンジンの小型化を図ろうとすると、圧縮機の動翼、静翼、アウトレットガイドベーンそのものが小型になるだけでなく、動翼の直径の減少に伴って周速も小さくなるためにロータボスに近い位置でのレイノルズ数が臨界レイノルズ数以下に低下してしまう。そのために、臨界レイノルズ数を越えるレイノルズ数を前提として設計されている従来のCDAを含む翼型では、臨界レイノルズ数以下の低レイノルズ数で圧力損失が増加して充分な性能を発揮できなくなる問題があった。

0006

また従来の航空機エンジン圧縮機翼の圧力損失は、非常に高い高度(即ち、40000〜45000フィート超)での巡航においては増加するが、これは、そこでのレイノルズ数が低い空気密度のために非常に小さいためである。

0007

本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、軸流型圧縮機用翼型の高レイノルズ数領域での圧力損失の低減効果を確保しながら、低レイノルズ数領域での圧力損失の低減を図ることを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、前縁および後縁間に正圧を発生する腹面および負圧を発生する背面を備えた翼型であって、背面側の流速分布が、前縁の位置を0%とし、後縁の位置を100%としたコード上で前縁から6%以内に超音速の極大値を一つ有することを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0009

また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、背面側の流速分布における超音速領域がコード上で前縁から15%以内に限られることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0010

また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前縁部の翼厚分布変曲点を有することを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0011

また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記変曲点はコード上で前縁から3%〜20%の範囲に在ることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0012

また請求項5に記載された発明よれば、請求項1の構成に加えて、前記超音速の極大値はマッハ1.3以下であることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0013

また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記翼型は圧縮機の翼のスパン方向の少なくとも一部において採用されることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0014

また請求項7の記載された発明発明によれば、前縁および後縁間に正圧を発生する腹面および負圧を発生する背面を備えた翼型であって、前記背面での境界層シェイプファクタが、前縁の位置を0%とし、後縁の位置を100%としたコード上で前縁から6%〜15%の領域に極大値を有し、30%〜60%の領域で概ね一定であり、60%以降の領域で漸増することを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0015

また請求項8に記載された発明によれば、請求項7の構成に加えて、境界層シェイプファクタの後縁での最大値が2.5以下であることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0016

また請求項9に記載された発明によれば、請求項7の構成に加えて、前縁部の翼厚分布が変曲点を有することを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0017

また請求項10に記載された発明よれば、請求項9の構成に加えて、前記変曲点はコード上で前縁から3%〜20%の範囲に在ることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

0018

また請求項11に記載された発明によれば、請求項7〜請求項10の何れか1項の構成に加えて、前記翼型は圧縮機のアウトレットガイドベーンまたは動翼または静翼のスパン方向の少なくとも一部において採用されることを特徴とする、低レイノルズ数領域で低損失を可能とする軸流型圧縮機用翼型が提案される。

発明の効果

0019

本発明の特徴によれば、レイノルズ数が或る臨界レイノルズ数以下の遷音速領域において、翼型の背面側の流速分布がコード上で前縁から6%以内に超音速流の極大値を一つ有し、且つ境界層のシェイプファクタがコード上で前縁から6%〜15%の領域に極大値を有し、30%〜60%の領域で該シェイプファクタのレベルは概ね一定に留まり、翼コードの60%より下流の領域で漸増する。翼コードの15%〜30%付近極大速度を示す従来の翼型(CDA)の設計に関しては、新しい翼列の翼型として、流速の極大速度が翼型の背面の前縁の直後に来るように設計されている。その結果として前縁部の後方近傍で層流剥離泡に伴う小さい衝撃波または一群の小さい衝撃波が発生する可能性があるが、その衝撃波または一群の小さい衝撃波によって層流境界層から乱流境界層への遷移が促進されることで、遷移の下流の乱流境界層が極めて安定した状態に保たれる。更には、初期の衝撃波が誘発した境界層遷移が、層流剥離泡が破裂する危険を伴う層流剥離の拡張および激しい剥離の拡張を回避することを促す。

0020

高レイノルズ数領域での圧力損失を従前どおり低く留めながら、低レイノルズ数領域での圧力損失を大幅に低減することができる。しかも、この低レイノルズ数領域での圧力損失低減効果は、流入角が広い範囲で変化しても維持される。

0021

このとき遷音速低レイノルズ数における作動に関しては、翼型の背面側の超音速領域をコード上で前縁から15%以内に規制し、超音速領域の前記極大値をマッハ1.3以下に規制し、また翼型の前縁部の翼厚分布の前記変極点の位置をコード上で前縁から3%〜20%の範囲に規制することが好ましく、これにより前縁に極めて近い部分に弱い衝撃波を発生させて層流境界層から乱流境界層への遷移を促進することができる。

0022

また後縁における境界層のシェイプファクタの値を2.5以下に規制することが好ましく、これにより従来の翼型で発生していた後縁近傍での境界層の剥離を防止することができる。

0023

また本発明に係る翼型は圧縮機の翼のスパン方向の少なくとも一部において採用することができ、レイノルズ数が低い静翼や動翼、周速が小さいためにレイノルズ数が低くなる動翼のハブ側の部分に採用すると効果的である。

発明を実施するための最良の形態

0024

以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。

0025

図1は実施例および従来例の翼型を示す図、図2は実施例および従来例のコードに沿う翼厚分布を示す図、図3は実施例の翼型のコードに沿う流速の分布およびコードに沿うシェイプファクタの分布を示す図、図4は従来例の翼型のコードに沿う流速の分布およびシェイプファクタの分布を示す図、図5はレイノルズ数に対する圧力損失の変化を示す図、図6は流入角に対する圧力損失の変化を示す図、図7は実施例の翼型を用いた翼列を示す図である。

0026

本明細書において、翼型の長さCのコードに沿う任意の位置Xは、前縁11の位置を0%とし、後縁12の位置を100%とした比率X/Cで表示される。

0027

図1は航空用ターボファンエンジンの圧縮機の翼(アウトレットガイドベーン)に用いられる翼型を示すもので、実線は実施例、破線は従来例(CDA:Controlled Diffusion Airfoil)に相当する。この静翼は動翼の下流において軸線を中心として放射状に配置され、図7に示すような翼列を構成する。

0028

図2はコードに沿う翼厚(コード長無次元化したもの)の分布を示すもので、実線は実施例、破線は従来例である。実施例の翼型の翼厚分布の特徴は、従来例の翼型の翼厚分布に比べて最大翼厚位置が後縁12寄りにずれており、前縁11から最大翼厚位置への翼厚の増加が、前縁11の地点を除いて、従来の設計の一つに較べて緩やかな点である。特に、従来例の翼型の翼厚は前縁11からコードの30%近傍にある最大翼厚位置に向かって単調に増加しているのに対し、実施例の翼型の翼厚は前縁11とコードの45%近傍にある最大翼厚位置との間(コードの10%付近)に変曲点IPを備えている。即ち、実施例の翼型の翼厚は前縁11からコードの3%近傍まで急激に増加した後に増加率が小さくなって変曲点IPに至り、そこから再び増加率が大きくなっている。この変曲点IPの存在による前縁11の直後の翼厚の急激な増加率と、変曲点IPからコードの30%位置までの変曲点付近の翼厚の減少との組み合わせは、前縁11の直後の背面14における流速の急激な増加につながる。極大速度直後の流速減速の開始が、背面14前部における境界層の遷移およびその後の剥離を伴わない乱流の安定した境界層の発達を翼の後半部に形成することになる。更には、背面14における流速の減速の早期の開始により、後部における流速の減速率を従来の圧縮機翼型における該率より低くすることが可能となる。長い減速距離および吸入側後部の低減された圧力勾配が、境界層を安定に保つと共に剥離を防止する(境界層シェイプファクタ:2〜2.5未満)。

0029

図3(A)は実施例の翼型のコードに沿うマッハ数Mの分布を示し、図3(B)は翼型のコードに沿う境界層シェイプファクタHの分布を示すものである。

0030

境界層の排除厚さδ* は、主流の流速をUとし、境界層の流速をuとし、翼型の表面から垂直に測った距離をyとしたとき、δ* =∫{(U−u)/U}dyで定義され、また境界層の運動量厚さθは、主流の流速をUとし、境界層の流速をuとし、翼型の表面から垂直に測った距離をyとしたとき、θ=∫{u(U−u)/U2 }dyで定義される。そして、シェイプファクタHは、H=δ* /θで定義される。Hは、同等の非圧縮性境界層における効果的な境界層シェイプファクタ(運動量厚さへの境界層の変位率)である。

0031

シェイプファクタHは境界層が層流であるか乱流であるかを示すパラメータであって、シェイプファクタHが例えば2.5以下のときに境界層は乱流となり、シェイプファクタHが例えば2.5より大きいときに境界層は層流となる。

0032

図3(A)および図4(A)はそれぞれ実施例および従来例の翼型の腹面13および背面14の速度分布を示すもので、特に背面14の速度分布において両者の間には顕著な差異が認められる。即ち、図4(A)に示す従来例の翼型の背面14の流速分布は、前縁11における局所的な速度のピーク(ここではマッハ1.07、図4(A)参照)を示し得るが、前縁11の直後にマッハ0.88から継続的な流速の加速が開始し、コードの15%位置でマッハ1.10の極大値に達する。その後、コードの30%位置まで超音速流速(M>1.00)の領域が延長され、その後に流速は緩やかに減少して後縁12においてマッハ0.60になる。流速極大値の下流では、激しい層流剥離泡が形成され、これがコードの45%位置まで伸びる。

0033

それに対して、図3(A)に示す実施例の翼型の背面14の流速分布は、前縁11に極めて近いコードの4%位置にマッハ1.26の極大値があり、前縁11からコードの15%よりも下流で流速がマッハ1.00以下に低下している。このように、流速の極大値が従来例に比べて極端に前縁11側に偏椅するという特徴は、前縁11の直後(実施例ではコードの3%位置までの領域)における翼厚の急激な増加や変曲点IPから下流側のコードの30%位置における翼厚の相対的一定性という翼厚分布(図2参照)に依存している。この翼厚分布により従来の翼型の流速分布(図4(A)参照)よりも流速の極大値が前縁11に近い位置に移動し、これにより前縁11の直後に弱い衝撃波を伴う圧力上昇が発生し、境界層の層流状態から乱流状態への遷移を誘発する。乱流境界層は、層流境界層に較べて、強い拡散により耐えることができる。よって、後縁12まで乱流境界層が安定に維持される。

0034

上記作用を、低い翼コードレイノルズ数(即ち、Re=120000且つM入口=0.76)での気流状態に関する図3(B)および図4(B)に示すシェイプファクタHに基づいて更に説明する。図4(B)からわかるように、従来例の翼型ではコードの30%近傍(a部分参照)でシェイプファクタHの極大値が存在して、延長された層流剥離がそこに発生する。境界層の弱い状態および後部の圧力上昇のため、境界層は再付着しない。シェイプファクタHは2.5を超える値に維持され、後縁12の近傍(b部分参照)で4.3まで増加して激しい乱流剥離が発生することを示している。

0035

それに対して、図3(B)に示す実施例のシェイプファクタHは、コードの12%位置(c部分参照)に極大値があって弱い衝撃波によって誘発された層流剥離泡の短い遷移を示している。遷移の下流では、コードの20%位置でシェイプファクタHが2.0をはるかに下回り、コードの30%〜60%の領域(d部分参照)でHが略一定に維持され、コードの60%よりも下流(e部分参照)でシェイプファクタHが漸増することが可能となり、後縁12に到達するまで2.5未満に維持される。このように前縁11に近いその後方の領域で境界層の遷移を引き起こし、その下流のコードの20%〜100%の広い領域において翼型の背面14に安定した乱流境界層を形成する。それによって、境界層の後部乱流剥離を防止して圧力損失を最小限に抑えることができる。

0036

図5は主流の入口マッハ数0.7におけるレイノルズ数に対する圧力損失の変化の一例を示すもので、レイノルズ数が600000以上の領域で実施例の翼型の圧力損失を従来例の翼型と同じレベルに維持しながら、レイノルズ数が400000未満の領域で実施例の翼型の圧力損失を従来例の翼型よりも小さくすることができる。実施例の翼型の圧力損失の低減効果はレイノルズ数が小さいほど顕著であり、臨界レイノルズ数120000において実施例の翼型の圧力損失を従来例の翼型の約4分の1に過ぎない。

0037

図6は主流の入口マッハ数0.7における流入角(翼列の前縁を結ぶ線に対して主流が成す角)に対する圧力損失の特徴的な変化を示すもので、例えばレイノルズ数が120000、流入角が130°のときの実施例の翼型の圧力損失を、従来例の翼型の約4分の1に抑えられる。

0038

図7は本実施例の翼型を用いた翼列の一部を示すものである。この図の横軸および縦軸は、圧縮機の回転軸の方向に沿うコードCax(軸コード)を基準とする百分率で表されている。

0039

以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。

0040

例えば、実施例の翼型はコードの4%位置に流速の極大値が存在するが、その極大値の位置はコードの6%位置以内にあれば良い。

0041

また実施例の翼型は超音速部分の最後部がコードの15%位置にあるが、その超音速部分の最後部はコードの15%位置よりも前方であれば良い。

0042

また実施例の翼型は流速の極大値がマッハ1.26であるが、その流速の極大値はマッハ1.30以下であれば良い。

0043

また実施例の翼型の翼厚の変曲点IPがコードの10%位置にあるが、その変曲点IPはコードの3%〜20%の範囲内にあれば良い。

0044

また実施例の翼型の境界層シェイプファクタHの極大値はコードの12%位置にあるが、その極大値はコードの6%〜15%の範囲内にあれば良い。

0045

また実施例の翼型の後縁12におけるシェイプファクタHの最大値は2.5であるが、2.5未満であれば良い。

0046

また本発明の翼型は、翼のスパン方向(翼高方向)の全域に亘って採用しても良いしスパン方向の一部だけに採用しても良い。即ち、アウトレットガイドベーンのスパン方向の一部に本発明の翼型を採用し、残りの部分に他の翼型を採用しても良い。特に動翼の場合には、ボスに近い翼根部分は周速が小さいためにレイノルズ数も小さくなり、その翼根部分に本発明の翼型を採用すると効果的である。このように本発明の翼型と既存の翼型とを適宜併用すれば、翼の設計自由度を高めることができる。

0047

また本発明の翼型は、ターボファンエンジンの圧縮機のアウトレットガイドベーンに限定されず、他の任意の航空用エンジンの圧縮機の動翼や静翼に対しても適用することができる。最も重要な利点は、本実施例を、動翼並びに静翼においても翼コードレイノルズ数が低い、高い高度の巡航で作動する航空機エンジン用圧縮機翼にて採用する際に達成される。

図面の簡単な説明

0048

実施例および従来例の翼型を示す図
実施例および従来例のコードに沿う翼厚の分布を示す図
実施例の翼型のコードに沿う流速の分布およびシェイプファクタの分布を示す図
従来例の翼型のコードに沿う流速の分布およびシェイプファクタの分布を示す図
レイノルズ数に対する圧力損失の変化を示す図
流入角に対する圧力損失の変化を示す図
実施例の翼型を用いた翼列を示す図

符号の説明

0049

11前縁
12後縁
13腹面
14 背面

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