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技術 耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 鈴木励一中野利彦
出願日 2006年4月28日 (11年7ヶ月経過) 出願番号 2006-124713
公開日 2007年11月15日 (10年1ヶ月経過) 公開番号 2007-296541
状態 特許登録済
技術分野 溶接材料およびその製造 アーク溶接一般
主要キーワード オーバーラップ状 研削整形 メッキ無し 合格値 暴露状態 スプレー溶 SR処理 スプレー状態

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図面 (1)

課題

室温から−45℃程度までの環境でも高靭性を有するとともに、優れた低スパッタ性を有し、異材継手でも良好な耐候性耐割れ性および強度を有するガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接法を提供する。

解決手段

Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、C、Si、Mn、P、S、Cu、Cr、Al、Ti、Mo、N、Oを所定範囲内で含有し、残部がFeおよび不可避不純物とからなり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であり、必要に応じて、Cuを所定範囲内で含有するCuメッキ層を設けることを特徴とする。

背景

従来より、耐候性鋼としては、JIS G3114が規定されている。このJIS G3114は、暴露状態であっても錆が安定で緻密な状態を形成し保護膜となることで腐食進行を阻止する性質を有している。また、耐候性鋼は、その化学成分として、CuとCr、さらには、Cu、Cr、Niを適量添加していることを特長としている。この鋼材に対し適用する溶接ソリッドワイヤとしては、JIS Z3315に規定された「耐候性鋼用炭酸ガスアーク溶接ソリッドワイヤ」がある。これらの耐候性鋼や耐候性鋼用溶接ソリッドワイヤは、設計耐久年度が長く、メンテナンス軽減効果が大きい橋梁などに使われるケースが多い。

近年、このような耐候性鋼の利点をビル建築用として適用すべく、耐火鋼耐候性機能を付与したワイヤも開発されている(例えば、特許文献1、2)。また、橋梁の高能率施工を目指し、大入熱高パス間温度でも高強度、高靭性が得られる炭酸ガスアーク溶接用の耐候性鋼ソリッドワイヤも開発されている(例えば、特許文献3)。さらに、海岸付近施設される橋梁の塩害腐食防止を目的に、Crの含有量を極力低減させるとともに、Niを多く添加したワイヤも開発されている(例えば、特許文献4、5)。
また、電車などの車輌台車用として、鋼材としては、旧国鉄規格としてJRS 51304−2耐候性鋼があり、このJRS 51304−2耐候性鋼の溶接材料としては、一般的なJIS Z3315規格材が使われている。
特開平4−294891号公報(段落0013〜0026)
特開平5−200582号公報(段落0013〜0024)
特開2000−71091号公報(段落0015〜0036)
特開2003−311471号公報(段落0005〜0015)
特開2000−141081号公報(段落0008〜0030)

概要

室温から−45℃程度までの環境でも高靭性を有するとともに、優れた低スパッタ性を有し、異材継手でも良好な耐候性、耐割れ性および強度を有するガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接法を提供する。Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、C、Si、Mn、P、S、Cu、Cr、Al、Ti、Mo、N、Oを所定範囲内で含有し、残部がFeおよび不可避不純物とからなり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であり、必要に応じて、Cuを所定範囲内で含有するCuメッキ層を設けることを特徴とする。なし

目的

本発明はこれらの状況を鑑みて開発した技術であり、室温から−45℃程度までの環境でも高靭性を有するとともに、優れた低スパッタ性を有し、異材継手でも良好な耐候性、耐割れ性および強度を有するガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、前記ソリッドワイヤ鋼合金製のワイヤ素線からなるものであって、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.007〜0.030質量%、S:0.025質量%以下、Cu:0.30〜0.60質量%、Cr:0.50〜0.80質量%、Al:0.020質量%以下、Ti:0.05〜0.17質量%、Mo:0.10質量%以下、N:0.0090質量%以下、O:0.0150質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とからなり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であることを特徴とする耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤ。

請求項2

Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、前記ソリッドワイヤが鋼合金製のワイヤ素線の表面にCuメッキ層を設けたものであって、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.007〜0.030質量%、S:0.025質量%以下、Cu:0.30〜0.60質量%、Cr:0.50〜0.80質量%、Al:0.020質量%以下、Ti:0.05〜0.17質量%、Mo:0.10質量%以下、N:0.0090質量%以下、O:0.0150質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とからなり、前記Cuメッキ層がCu:0.25質量%以下であり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であることを特徴とする耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤ。

請求項3

前記耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、さらに、Ni:0.05〜0.80質量%、B:0.0005〜0.0030質量%、K:0.5〜20ppmのうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤ。

請求項4

請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤを使用し、耐候性鋼同士、または、耐候性鋼と炭素鋼とを溶接するガスシールドアーク溶接方法において、シールドガスとして、Ar:75〜95体積%で残部CO2、Ar:90〜98体積%で残部O2、およびAr:75〜95体積%で残部CO2+O2のいずれか1種である混合ガスを使用することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。

技術分野

0001

本発明は、耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法係り、特に、電車などの車輌用に用いられ、耐候性鋼ガスシールドアーク溶接する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接方法に関する。

背景技術

0002

従来より、耐候性鋼としては、JIS G3114が規定されている。このJIS G3114は、暴露状態であっても錆が安定で緻密な状態を形成し保護膜となることで腐食進行を阻止する性質を有している。また、耐候性鋼は、その化学成分として、CuとCr、さらには、Cu、Cr、Niを適量添加していることを特長としている。この鋼材に対し適用する溶接ソリッドワイヤとしては、JIS Z3315に規定された「耐候性鋼用炭酸ガスアーク溶接ソリッドワイヤ」がある。これらの耐候性鋼や耐候性鋼用溶接ソリッドワイヤは、設計耐久年度が長く、メンテナンス軽減効果が大きい橋梁などに使われるケースが多い。

0003

近年、このような耐候性鋼の利点をビル建築用として適用すべく、耐火鋼耐候性機能を付与したワイヤも開発されている(例えば、特許文献1、2)。また、橋梁の高能率施工を目指し、大入熱高パス間温度でも高強度、高靭性が得られる炭酸ガスアーク溶接用の耐候性鋼ソリッドワイヤも開発されている(例えば、特許文献3)。さらに、海岸付近施設される橋梁の塩害腐食防止を目的に、Crの含有量を極力低減させるとともに、Niを多く添加したワイヤも開発されている(例えば、特許文献4、5)。
また、電車などの車輌台車用として、鋼材としては、旧国鉄規格としてJRS 51304−2耐候性鋼があり、このJRS 51304−2耐候性鋼の溶接材料としては、一般的なJIS Z3315規格材が使われている。
特開平4−294891号公報(段落0013〜0026)
特開平5−200582号公報(段落0013〜0024)
特開2000−71091号公報(段落0015〜0036)
特開2003−311471号公報(段落0005〜0015)
特開2000−141081号公報(段落0008〜0030)

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、従来より使用されている耐候性鋼に用いられる溶接材料のワイヤでは、以下に示す問題があった。
耐候性鋼が多く用いられる分野としては、橋梁や建築分野の他に、電車などの車輌の台車があげられるが、特許文献1〜5に記載の溶接材料のワイヤは、橋梁や建築分野向けに開発されたものであり、また、炭酸ガス溶接法前提としたものであるため、スパッタが発生しやすい。そのため、これらのワイヤを用いて電車などの車輌の台車を溶接する場合には、(1)溶接部外観人目に触れるためスパッタ発生が非常に嫌われること、(2)C含有量が0.20質量%以上と高い鋳鉄鋳鋼との異材継手が多く、高強度な溶接材料の使用や、溶込みが深く母材希釈率の高い炭酸ガスアーク溶接では割れの問題が発生しやすいこと、(3)異材継手において急激な成分変化を生じると、選択的に腐食が進むため、溶接金属にもある程度耐候性が必要とされること、(4)常に疲労状態に曝されることから母材とのなじみ性が良く、高靭性が必要であること、(5)同じく疲労破壊を防ぐために、必要に応じて残留応力を除去するべく溶接後応力除去焼鈍(SR)が行われるが、溶接ワイヤ設計として考慮されていない、などの問題があった。
また、最近では炭酸ガスアーク溶接法からArを主体とする混合ガスを用いた溶接法が多く使われるようになっている。そして、特に海外において寒冷地高標高地への鉄道架設が進んできていることから、このような地域においても事故の際の車輌の衝突安全性を高めるため、従来の0〜−20℃程度の温度環境における靭性要求から、さらに低温の−45℃程度の温度環境における低温靭性が要求されるようになってきている。
しかし、特許文献1〜5に記載の溶接材料のワイヤは、炭酸ガス溶接法を前提としたものであり、また、低温靭性を備えていないため、これらの要求を満たすことはできないという問題があった。
また、電車などの車輌の台車用である耐候性鋼の溶接材料として、一般的なJIS Z3315規格材が使われているが、JIS Z3315では、シールドガス区分も規定されておらず、靭性規定も0℃、−5℃しかない。また、JIS Z3325には低温用鋼用ワイヤが制定されているが、耐候性能は備わっていない。そのため、これらのワイヤでも前記要求を満たすことはできないという問題があった。
したがって、Ar系混合ガスを前提として、低温靭性が優れ、かつ耐候性も備わった溶接ワイヤは開発されていないのが実状である。

0005

本発明はこれらの状況を鑑みて開発した技術であり、室温から−45℃程度までの環境でも高靭性を有するとともに、優れた低スパッタ性を有し、異材継手でも良好な耐候性、耐割れ性および強度を有するガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

前記課題を解決するため、請求項1に係る耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤは、Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、前記ソリッドワイヤが鋼合金製のワイヤ素線からなるものであって、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.007〜0.030質量%、S:0.025質量%以下、Cu:0.30〜0.60質量%、Cr:0.50〜0.80質量%、Al:0.020質量%以下、Ti:0.05〜0.17質量%、Mo:0.10質量%以下、N:0.0090質量%以下、O:0.0150質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とからなり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であることを特徴とする。

0007

このような構成によれば、析出元素のTi、Alの他、O、Nも抑制することで、SR時の溶接金属の靭性低下を防止することができ、Alの抑制により、低スパッタ化を得ることができる。また、Cu、Crの他、通常添加しないPをあえて所定範囲添加することにより、非耐候性鋼との異材継手の場合でも耐候性能を確保し、局部腐食を防げることで、溶接金属の耐候性を確保することができる。また、CとPの溶接金属の耐割れ性に及ぼす相関パラメータの上限範囲を規定することで、溶接金属の耐侯性を確保しつつ割れを防ぐことができる。その他、C、Si、Mnを所定量含有し、Moを抑制することで、溶接金属の強度を向上させることができ、Sを所定量含有することで、母材とのなじみ性が向上する。

0008

請求項2に係る耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤは、Arと、CO2またはO2の1種以上との混合ガスを使用する耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、前記ソリッドワイヤが鋼合金製のワイヤ素線の表面にCuメッキ層を設けたものであって、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.20〜1.00質量%、Mn:1.00〜2.00質量%、P:0.007〜0.030質量%、S:0.025質量%以下、Cu:0.30〜0.60質量%、Cr:0.50〜0.80質量%、Al:0.020質量%以下、Ti:0.05〜0.17質量%、Mo:0.10質量%以下、N:0.0090質量%以下、O:0.0150質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とからなり、前記Cuメッキ層がCu:0.25質量%以下であり、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数が22以下であることを特徴とする。

0009

このような構成によれば、析出元素のTi、Alの他、O、Nも抑制することで、SR時の溶接金属の靭性低下を防止することができ、Alの抑制により、低スパッタ化を得ることができる。また、Cu、Crの他、通常添加しないPをあえて所定範囲添加することにより、非耐候性鋼との異材継手の場合でも耐候性能を確保し、局部腐食を防げることで、溶接金属の耐候性を確保することができる。また、CとPの溶接金属の耐割れ性に及ぼす相関パラメータの上限範囲を規定することで、溶接金属の耐侯性を確保しつつ割れを防ぐことができる。その他、C、Si、Mn所定量含有し、Moを抑制することで、溶接金属の強度を向上させることができ、Sを所定量含有することで、母材とのなじみ性が向上する。
また、Cuメッキ層を施すことにより、ワイヤの伸線性が優れ、また、耐錆性チップ耐摩耗性を向上させることができる。Cuメッキ層を施す場合には、メッキのCuを低く規定することにより、溶接金属の低スパッタ化を得ることができる。

0010

請求項3に係る耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤは、前記耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいて、さらに、Ni:0.05〜0.80質量%、B:0.0005〜0.0030質量%、K:0.5〜20ppmのうち1種以上を含有することを特徴とする。

0011

このような構成によれば、Ni、B、Kを所定量含有することで、溶接金属の耐候性の向上、低温靭性の向上、低スパッタ化をさらに促進することができる。

0012

請求項4に係るガスシールドアーク溶接方法は、前記記載の耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤを使用し、耐候性鋼同士、または、耐候性鋼と炭素鋼とを溶接するガスシールドアーク溶接方法において、シールドガスとして、Ar:75〜95体積%で残部CO2、Ar:90〜98体積%で残部O2、およびAr:75〜95体積%で残部CO2+O2のいずれか1種である混合ガスを使用することを特徴とする。

0013

このような構成によれば、シールドガスとして、Ar+CO2、Ar+O2またはAr+CO2+O2の混合ガスを使用し、これらのガス組成を所定範囲とすることで、耐ブローホール性、低スパッタ性、高靭性、ビード形状改善に優れた溶接金属を得ることができる。

発明の効果

0014

本発明に係る耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤによれば、ソリッドワイヤの成分を所定範囲に規定することで、車輌の台車などの溶接に最適な耐候性鋼同士、あるいは耐候性鋼と鋳鋼・鋳鉄などの炭素鋼との異材継手のいずれにおいても、耐候性、低温靭性、強度、および耐割れ性が優れるとともに、低スパッタ性、ビード形状、耐ブローホール性、ワイヤ送給性などにも優れる溶接金属とすることができる。
また、本発明に係るガスシールドアーク溶接方法によれば、シールドガスの組成を所定範囲に規定することで、耐ブローホール性、低スパッタ性、低温靭性、ビード形状に優れる溶接金属とすることができ、耐候性鋼同士、あるいは耐候性鋼と鋳鋼・鋳鉄などの炭素鋼との異材継手のいずれにおいても、良好な溶接を行うことができる。
よって、本発明に係るワイヤや溶接方法により、車輌などの安全性、耐久性疲労特性美観などの向上に寄与することができる。

発明を実施するための最良の形態

0015

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、ソリッドワイヤの成分を所定範囲に規定することを特徴とする耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤおよびこのワイヤを用い、シールドガスの組成を所定範囲に規定することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法である。
これまで耐候性鋼用溶接ワイヤは橋梁・建築分野のみを対象として開発、使用されてきたため、CO2溶接が前提で、かつ共金継手のみを想定する成分設計であった。しかし、本発明の目的は、低温での高靭性、低スパッタ性、異材継手耐候性、SR処理での性能安定性などを考慮して、Ar混合ガス(Ar+CO2、Ar+O2、Ar+CO2+O2)用として最適化した耐候性ソリッドワイヤである。
ソリッドワイヤは、鋼合金製のワイヤ素線からなるものであり、所定量のC、Si、Mn、P、S、Cu、Cr、Al、Ti、Mo、N、Oを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とからなり、CとPの溶接金属の耐割れ性に及ぼす相関パラメータの上限範囲を規定したものである。
また、このワイヤ素線の表面に、Cuメッキ層を設けてもよい。

0016

本発明者らは、低スパッタ化を得る目的の他、SR時の靭性低下を防止すべく、析出元素のTiやAl量を抑制すると共に、O、Nも抑制する必要性を見出した。さらに、耐候性を確保するためにCu、Cr、必要に応じてNiの他、通常添加しないPをあえて所定範囲添加することによって、非耐候性鋼との異材継手の場合に耐候性能を確保し、局部腐食を防げることを見出した。さらに、Pを積極添加すると、一般には耐割れ性が低下するが、CとPの耐割れ性に及ぼす相関を見出し、その相関パラメータの上限範囲を規定することで耐侯性を確保しつつ割れを防げる範囲を導いた。一方で、Cuメッキを施す場合には、Ar+CO2溶接での溶滴移行特性を考慮して、Cu量をワイヤ全量とメッキ量のそれぞれについて規定することにより、さらなる低スパッタ化を得ている。これらの手法によって優れた低温靭性、低スパッタ性、耐候性、耐割れ性などを満足するワイヤとすることができることを見出した。
以下、ソリッドワイヤの成分の限定理由について説明する。

0017

<C:0.01〜0.12質量%>
Cは、溶接部の強度を確保するために必要な元素である。車輌や橋梁分野で最も汎用的な鋼材強度である490N/mm2以上の強度を得るためには、Cの含有量が最低0.01質量%であることが必要である。したがって、Cの含有量は、0.01質量%以上とする。一方、Cの含有量が0.12質量%を超えると、高温割れ低温割れ、CO爆発によるスパッタが発生しやすくなる。したがって、Cの含有量は、0.12質量%以下とする。なお、耐食性の面からは少ない方が好ましいため、より好ましくは0.08質量%以下とする。

0018

<Si:0.20〜1.00質量%>
Siは脱酸反応に必要な元素である。Siの含有量が0.20質量%未満では、脱酸不足ブローホールが発生し、また、強度不足となる。したがって、Siの含有量は0.20質量%以上、より好ましくは、0.40質量%以上とする。一方、Siの含有量が1.00質量%を超えると、靭性が低下し、スパッタも大粒化して増加する。したがって、Siの含有量は1.00質量%以下、より好ましくは、0.60質量%以下とする。

0019

<Mn:1.00〜2.00質量%>
Mnもまた脱酸反応に必要な元素であり、強度確保のためにも必要である。Mnの含有量が1.00質量%未満では、脱酸不足でブローホールが発生し、また、靭性不足、強度不足となる。したがって、Mnの含有量は、1.00質量%以上とする。一方、Mnの含有量が2.00質量%を超えると、溶接部の強度が上がりすぎて低温割れを起こす。したがって、Mnの含有量は、2.00質量%以下とし、より好ましくは、低スパッタ性の点から、1.80質量%以下とする。

0020

<P:0.007〜0.030質量%>
Pは一般に耐割れ性を劣化させる元素として有名であり、一般の鋼材に対しては少ないほど好ましいが、Pには耐候性を向上させる効果があり、本発明には必須である。耐候性鋼同士だけでなく、耐候性機能を持たない鋳鉄や鋳鋼といった鋼材との異材継手の場合には、CuやCrといった他の耐候性機能を持つ成分が希釈されて溶接金属の耐候性機能が低下しやすい。そのため、Pをある程度添加することで、耐候性機能を確保することが出来る。Pは微量の含有量で有効であるが、最低0.007質量%が必要であるため、Pの含有量は、0.007質量%以上とする。一方、Pの含有量が0.030質量%を超えると、耐割れ性が劣化する。したがって、Pの含有量は、0.030質量%以下とする。

0021

<S:0.025質量%以下>
Sもまた耐割れ性を劣化させる元素であり、靭性も低下させるが、0.025質量%以下であれば問題ない。したがって、Sの含有量は0.025質量%以下とする。一方、Sは母材とのなじみ性を向上させ、疲労強度を向上させる効果があり、好ましくは、Sの含有量が、0.005質量%以上であると耐割れ性を満足しつつ、外観と継手疲労性能を向上させることが出来る。しかし、Sは少ないほうが好ましいため、下限は設定しない。

0022

<Cu:0.30〜0.60質量%>
ここでのCuはワイヤ素線中のCu含有量とワイヤにメッキが施されている場合はそのメッキ分の付着量の合計である。
Cuは耐候性を高めるために必要な元素であり、Cuの含有量は、ワイヤ全体として最低0.30質量%必要である。したがって、Cuの含有量は、0.30質量%以上とする。一方、0.60質量%を超えると高温割れを発生しやすくなるため、Cuの含有量は、0.60質量%以下とする。

0023

<Cr:0.50〜0.80質量%>
Crもまた耐候性を高めるために必要な元素である。塩害耐食性にはCrは有害であるが、車輌用や一般橋梁用として使用する場合には、塩害耐食性は必要とされないので、一般的な耐候性鋼用としての性能を得るために積極的に添加する。耐候性を高めるためには、最低0.50質量%必要である。したがって、Crの含有量は、0.50質量%以上とする。一方、0.80質量%を超えると高強度になりすぎて低温割れが発生しやすくなるとともに靭性も低下する。したがって、Crの含有量は、0.80質量%以下とする。

0024

<Al:0.020質量%以下>
AlはSR時に低温靭性を劣化させると共に、スパッタを増加させる元素である。Alの含有量が0.020質量%を越えると靭性低下が顕著であり、さらにスパッタも多くなる。現在でも溶製時に清浄度上げるためにアルミキルドといわれる脱酸、脱窒処理が行われることが多々あるが、この場合、Alの含有量が0.020質量%を超える場合が多い。したがって、積極的にAlの含有量が0.020質量%以下になるように留意して製鋼処理すべきである。なお、Alは少ないほうが好ましいため、下限は設定しない。

0025

<Ti:0.05〜0.17質量%>
Tiは強い酸化性があり、シールドガス中のO2やCO2といった酸化性ガスと結びついて、一部はスラグに、一部は溶接金属に残留する。溶接金属中のTiは適量で結晶粒微細化し、高靭性を得ることが出来る。しかし過剰になると粗大な析出物となり脆性破壊の起点となる。特にSR処理では靭性低下が顕著である。炭酸ガス用に比べてAr混合ガスは酸化性ガスの分圧が低いことから、Tiの少量添加で溶接金属の結晶粒を微細化し、高靭性を得ることが出来る。具体的には、Tiの含有量が0.17質量%を超えると、靭性が低下するので、Tiの含有量は、0.17質量%以下、より好ましくは0.14質量%以下とする。さらには0.10質量%以下とすると、SR時の靭性も向上するとともにスパッタも小粒化し溶接作業性が優れる。一方、Tiの含有量が0.05質量%未満では結晶粒微細化の効果が無くなり、−45℃程度の使用には適さなくなる。また、比較的小粒のスパッタが多量に発生するので、Tiの含有量は0.05質量%以上、より好ましくは、アーク安定性向上の観点から、0.07質量%以上とする。なお、耐候性鋼用ソリッドワイヤのJIS規格Z3315にはTiは規定されていない。一般的には炭酸ガス用としては、高電流用としてTi:0.18〜0.25質量%を添加し、短絡溶接の低電流用としては無添加とする場合が多い。しかし、本発明はAr混合ガス用として少量の添加が最適である。

0026

<Mo:0.10質量%以下>
Moは一般的には溶接金属の高強度化の向上に用いられる元素である。しかし、車輌では上述したようにCの含有量が多い鋳鉄・鋳鋼との異材継手も多いため、溶接金属は強度過剰になりやすく、過剰強度は低温割れの発生に繋がる。したがって、鋼材に対して過剰な強度のオーバーマッチングは避ける必要がある。Moの含有量が0.10質量%を超えると、強度過剰による割れが発生しやすくなる。したがって、Moの含有量は、0.10質量%以下、好ましくは0.05質量%以下とする。なお、Moは少ないほうが好ましいため、下限は設定しない。

0027

<N:0.0090質量%以下>
Nは靭性を低下させる元素である。シールド不良時にも大気から窒素混入するため管理が必要であるが、ワイヤからも極力低減することが好ましい。Nの含有量が0.0090質量%を超えると靭性低下が顕著であることから、Nの含有量は0.0090質量%以下とし、より好ましくは、0.0070質量%以下とする。なお、Nは少ないほうが好ましいため、下限は設定しない。

0028

<O:0.0150質量%以下>
ワイヤ表面溶滴表面の酸素量は、多い方が溶滴移行特性改善のためには好ましいものの、酸素は溶接金属に入ると酸化物を形成し、SR時に析出して脆化させる。そのため、ワイヤ全体としては少ない方が好ましい。したがって、Oの含有量は0.0150質量%以下とし、好ましくは0.0100質量%以下、さらに好ましくは0.0050質量%以下とする。なお、Oは少ないほうが好ましいため、下限は設定しない。

0029

<不可避的不純物>
不可避的不純物として、例えば、Nb、V、Zrなどを含有することが考えられるが、本発明の効果を妨げない範囲においてこれらを含有することは許容され、これらの含有量は、0.050質量%以下が好ましい。

0030

<C×P×104で計算される係数:22以下>
上述のとおり、Cは強度の増強に、Pは異材継手の際に耐候性機能を補助するのに有効であるが、これらを含有することにより、高温割れ感受性も増大する。しかし、Cの含有量およびPの含有量を用いて、C×P×104で計算される係数を22以下に規定することにより、高温割れを防ぐことができる。つまり、C、Pにおいては、それぞれの範囲に規定するとともに、本式を満足する必要がある。なお、より好ましくは17以下である。

0031

本発明に係る耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤにおいては、ワイヤ素線の表面にCuメッキ層を設けてもよい。
メッキ層のCu:0.25質量%以下>
Cuメッキ層を施すことにより、ワイヤの伸線性が優れるため、低コストでの生産が可能となる。また、耐錆性やチップの耐摩耗性を向上させることができる。
Cuは熱間延性確保のために素線には添加せず、ワイヤにメッキしたメッキ分だけで全Cu規定量を添加する手段があるが、本発明では不可である。理由としては、これまでのCO2溶接法用であれば溶滴移行の安定性にはさほどメッキ分は寄与しないが、本発明のAr+CO2溶接の場合は、スプレー溶移行の安定性がワイヤや溶滴表面近傍の酸素量に強く影響を受ける。すなわち、Cuは非酸化性のため、メッキCuが厚いとワイヤ表面の酸素量は低く、溶滴表面付近酸化反応が進まない。その結果、溶滴の酸素量が低く抑えられ、表面張力粘性が小さく、溶滴離脱性が低下する。つまり、大粒のスパッタ発生や、ふらつきの原因となり、溶接作業性が低下する。したがって、メッキ層のCuの含有量は低い方が好ましく、0.25質量%以下であればスパッタ量抑制に対し許容範囲である。したがって、メッキ層のCuの含有量は、0.25質量%以下とし、より好ましくは0.20質量%以下とする。なお、メッキ層のCuの含有量は0質量%、つまりメッキ無しでも問題はない。

0032

ここで、ワイヤ成分は、Ni、B、Kのうち1種以上を含有することが好ましい。以下、これらの限定理由について説明する。

0033

<Ni:0.05〜0.80質量%>
Niは耐候性を向上させるために有効である。Cu、Cr、Pだけでは無塗装仕様は困難であるため、塗装使用とするが、Niを適量添加することで無塗装仕様とすることが可能である。Niの含有量は、0.05質量%未満ではその効果は発揮されないため、0.05質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましい。一方、Niの含有量が0.80質量%を超えると、耐候性の効果が飽和するだけでなく、溶滴の粘性が高まりすぎてスパッタ発生量が増加しやすいとともに、ビードが凸状になって劣化しやすい。また、Niは高価な元素なのでコストが過大となりやすい。したがって、Niの含有量は、0.80質量%以下が好ましい。

0034

<B:0.0005〜0.0030質量%>
Bは微量の添加で結晶粒微細化を促進し、低温靭性を向上させる効果がある。Bの含有量は、最低0.0005質量%でなければ微細化の効果は発揮されないことから、0.0005質量%以上が好ましく、0.0010質量%以上がより好ましい。一方、Bは高温割れを引き起こしやすい欠点もある。Bの含有量が0.0030質量%を超えると、割れが発生しやすくなる。したがって、Bの含有量は0.0030質量%以下が好ましく、Cの含有量が多い鋳鉄・鋳鋼との異材継手を考慮すると、0.0020質量%以下がより好ましい。

0035

<K:0.5〜20ppm>
KはArを主元素とする混合ガス溶接時にアークを安定させ、スパッタを減らす元素として効果的である。炭酸ガス溶接では一般的にこのような効果は働かない。Kは溶製時に添加することは困難なので、一般的には(1)伸線工程中に炭酸カリウムなどのK入り伸線潤滑剤使い、表面残留させる、(2)Kを含む溶液に浸漬させた後で焼鈍し、ワイヤ表面の粒界あるいは粒内に拡散させる、(3)青酸カリ溶液を用いて銅メッキを施すといった手段によって表面近傍に存在させる、などの方法により添加する。その効果は0.5ppmから有効であるため、Kの含有量は0.5ppm以上が好ましい。一方、Kの含有量が20ppmを超えると、アーク安定効果が飽和するとともにワイヤ表面の潤滑性が失われてワイヤ送給性が劣りやすく、また、メッキ密着性が悪くなって銅メッキが剥離し、やはりワイヤ送給性を損ないやすい。したがって、Kの含有量は20ppm以下が好ましい。

0036

次に、ガスシールドアーク溶接方法について説明する。
本発明のガスシールドアーク溶接方法は、前記した耐候性鋼用ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤを使用し、耐候性鋼同士、または、耐候性鋼と炭素鋼とを溶接するものであり、シールドガスとして、Ar+CO2、Ar+O2またはAr+CO2+O2混合ガスを使用するものである。

0037

シールドガス組成:Ar+CO2、Ar+O2、Ar+CO2+O2>
シールドガスはArを主体とし、少量の酸化性ガスCO2あるいはO2と混合した組成を前提とする。Ar+CO2の場合はArが75〜95体積%で残部CO2、Ar+O2の場合はArが90〜98体積%で残部O2、Ar+CO2+O2の場合はArが75〜95体積%で残部CO2+O2とする。
シールドガスがAr+CO2、Ar+CO2+O2の場合、Arが75体積%未満、Ar+O2の場合、Arが90体積%未満では、溶滴移行がスプレー状態を維持できず、スパッタが発生し、また、溶融池の過剰酸化のため、靭性が低下する。さらに、ビード形状もなじみ性が悪くオーバーラップ状となる。
シールドガスがAr+CO2、Ar+CO2+O2の場合、Arが95体積%、Ar+O2系の場合、Arが98体積%を超えると、過剰なスプレーアーク状態となり、Arを巻込んでブローホールが発生する。また、溶融池の粘性が高くなりすぎてビード形状が凸になり、さらに、酸素源が少なすぎると、母材側陰極点が不安定となり、アーク発生方向振れてしまい、スパッタも多く発生する。

0038

<耐候性鋼>
適用される耐候性鋼としては、一般的に用いられるCu−Ni系、Cu−Cr系、Cu−Cr−Ni系の400〜490N/mm2級鋼である。また、これらの耐候性鋼と鋳鋼、鋳鉄などの炭素鋼との異材溶接にも好適である。用途分野として車輌に好適であるが、一般耐候性用として問題のないものであるから、橋梁などの他分野で使うことは全く問題ない。

0039

次に、本発明に係るソリッドワイヤについて、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
先ず、表1〜3に示す組成を有するワイヤを使用して表4に示す溶接条件により鋼材を溶接した。溶接においては、表1〜3に示すシールドガス組成のシールドガスを使用した。なお、比較例において、本発明の構成を満たさないものについては、数値下線を引いて示す。
鋼材としては、表5に示す490N/mm2級耐候性鋼(a)と鋳鋼(b)を使用し、
耐候性鋼(a)同士(以下(a)/(a)とする)の継手および耐候性鋼(a)と鋳鋼(b)(以下(a)/(b)とする)の異材継手の2種類の溶接試験を行った。
図1溶接母材継手開先断面形状を示す模式図である。図1に示すように、傾斜した端面を有し、板厚が19mmである鋼材1(耐候性鋼(a))と、板厚が25mmである鋼材2(耐候性鋼(a)または鋳鋼(b))の2枚の鋼材1、2を、その傾斜端面を対向させて、端面の先端を5mm離間させた状態で配置した。そして、形成された開先に対してガスシールドアーク溶接することにより溶接金属3を形成した。

0040

0041

0042

0043

0044

0045

次に、得られた溶接金属について、以下に示す、強度、低温靭性、耐候性、耐割れ性、低スパッタ性の試験と共に、耐ブローホール性、ビート形状、ワイヤ送給性の官能評価を行った。

0046

<強度>
強度については、溶接金属に620℃×1時間維持のSR処理を施し、(a)/(a)継手と(a)/(b)継手による引張試験を行った。
引張試験は、(a)/(a)継手において490N/mm2以上の引張強さを合格値とした。

0047

<低温靭性>
低温靭性については、シャルピー衝撃試験により、(a)/(a)継手と(a)/(b)継手による−45℃、0℃のシャルピー吸収エネルギー測定した。
シャルピー吸収エネルギーは(a)/(a)継手、(a)/(b)継手ともに−45℃で27J以上を合格とした。

0048

<耐候性>
耐候性については、(a)/(a)継手、(a)/(b)継手において耐候性能評価試験を実施した。耐候性能評価試験としては、JSSC(日本鋼構造協会)が推奨する腐食促進試験法である発露腐食試験を用いた。この腐食試験条件を表6に示す。耐候性能は腐食減量が(a)/(a)継手の場合80mg/cm2以下、異材継手である(a)/(b)継手を100mg/cm2以下を合格とした。

0049

<耐割れ性、耐ブローホール性、ビード形状、ワイヤ送給性>
(a)/(a)および(a)/(b)継手でのX線透過試験および超音波探傷による割れ(高温割れおよび低温割れ)とブローホールの有無の確認、その溶接時のビード形状とワイヤ送給性の官能評価を行った。割れやブローホールは無欠陥を合格とし、ビード形状は融合不良を防止するためにグラインダー整形が必要なかった場合、あるいは余盛における母材表面とのなじみ性が良いと判断される場合を合格(○)、融合不良を防止するためにグラインダー整形が必要であった場合、あるいは余盛における母材表面とのなじみ性が悪いと判断される場合を不合格(×)とした。ワイヤ送給性は送給不良によるアーク断続が発生しなかった場合を合格(○)、送給不良によるアーク断続が発生した場合を不合格(×)とした。

0050

<低スパッタ性>
低スパッタ性については、溶接中、溶接後にシールドノズルに付着したスパッタを回収し、重量を測定することで、スパッタ発生量により評価した。低スパッタ性は付着量2.0g以下を低スパッタの範囲として合格とした。
これらの試験結果を表7〜8に示す。
なお、(a)/(b)継手の引張強さと、(a)/(a)継手および(a)/(b)継手の0℃の吸収エネルギーは、参考値として示している。
また、低スパッタ性、耐ブローホール性、ビート形状、ワイヤ送給性については、(a)/(a)継手のものについて示す。

0051

0052

0053

0054

表7に示すように、実施例No.1〜32は、全てのワイヤ成分およびガスシールド組成が本発明の範囲を満足しているため、(a)/(a)(耐候性鋼同士)の継手、(a)/(b)(耐候性と鋳鋼)の異材継手いずれにおいても、0℃から−45℃の低温域までのシャルピー吸収エネルギーや耐候性、耐割れ性が優れており、引張強度も母材の規格下限以上を確保している。また、(a)/(a)継手において、ブローホール、ビード形状不良などは全く発生しない。また、低スパッタ性やワイヤ送給性にも優れている。

0055

一方、表8に示すように、比較例No.33は、Cの含有量が下限未満のため、強度不足であった。比較例No.34は、Cの含有量が上限を超えるため、高温割れが発生し、強度が高まって低温割れも発生するとともに、スパッタも多かった。比較例No.35は、Siが下限未満のため、強度不足となるだけでなく、脱酸不足でブローホールも発生した。比較例No.36はSiが上限を超えるため、吸収エネルギーが低く、スパッタも多かった。比較例No.37は、Mnが下限未満のため、強度不足となるだけでなく、脱酸不足でブローホールも発生し、また、吸収エネルギーも低かった。比較例No.38は、Mnが上限を超えるため、強度が高くなりすぎ、低温割れが発生し、また、スパッタも増加した。比較例No.39、40は、Pがともに下限未満のため、異材継手の際に耐候性が失われ、腐食減量が多かった。比較例No.41は、Pが上限を超えるため、高温割れが発生した。

0056

比較例No.42、43、44は、C、Pそれぞれ単独の範囲は規定を満足しているが、C×P×104が本発明の範囲を超えているため、高温割れが発生した。比較例No.45は、Sが上限を超えるため、高温割れが発生した。また、耐候性鋼同士ではかろうじて吸収エネルギーは満足したものの、異材継手の場合は満足しなかった。比較例No.46は、メッキ分のみで銅成分を構成しているが、その値が下限値未満であるため、腐食減量が多く耐候性が不足した。比較例No.47は、Cuが上限を超えるため、高温割れが発生した。比較例No.48は、銅メッキ量が上限を超えるため、溶滴形成時の表面酸化が抑制されたために、表面張力が高まり溶滴離脱性が悪く、スパッタが多かった。比較例No.49は、Crが下限未満のため、腐食減量が多く耐候性が不足した。比較例No.50はCrが上限を超えるため、吸収エネルギーが不足した。また、異材継手において強度過剰で低温割れが発生した。比較例No.51は、Alが上限を超えるため、吸収エネルギーが不足し、スパッタも多かった。

0057

比較例No.52は、Tiが下限未満であるため、結晶粒が粗大となって吸収エネルギーが低かった。また、アーク安定性も劣りスパッタが多かった。比較例No.53は、JIS Z3315 YGA−50WそのままのワイヤでTiが含まれていない。そのため、これも同様に結晶粒が粗大となって吸収エネルギーが低く、また、アーク安定性も劣りスパッタが多かった。比較例No.54は、CO2用のワイヤであり、Tiが上限を超えるものである。そのため、SR処理時に過剰なTi酸化物が析出することにより、吸収エネルギーが低下した。比較例No.55は、Moが上限を超えるため、異材継手の際に強度過剰となって低温割れが発生した。比較例No.56は、Nが上限を超えるため、ブローホールが発生し、そのため引張強さも低かった。また、脆化して吸収エネルギーも低かった。比較例No.57は、Oが上限を超えるため、溶融池での脱酸が促進され、吸収エネルギーが低下した。No.58は、Niが上限を超えるため、スパッタが多くなるとともに、溶融池の粘性が過剰となってビード形状が凸を呈した。そのため、パス毎研削整形が必要であった。No.59はBが上限を超えるため、高温割れが発生した。No.60はKが上限を超えるため、ワイヤ表面の潤滑性が損なわれてワイヤ送給性が劣り、アーク不安定であった。

0058

比較例No.61は、シールドガスがAr+CO2系であるが、Ar比率が下限未満であるため、溶滴移行がスプレー状態を維持できず、スパッタ発生量が多かった。また、溶融池の過剰酸化のため、吸収エネルギーも低かった。さらに、ビード形状もなじみ性が悪くオーバーラップ状となった。比較例No.62は、Ar+CO2系であるが、Ar比率が上限を超えるため、過剰なスプレーアーク状態となり、Arを巻込んでブローホールが発生した。また、溶融池の粘性が高くなりすぎてビード形状が凸になった。比較例No.63は、シールドガスがAr+O2系であるが、Ar比率が下限未満であるため、溶滴移行がスプレー状態を維持できず、スパッタ発生量が多かった。また、溶融池の過剰酸化のため、吸収エネルギーも低かった。さらに、ビード形状もなじみ性が悪くオーバーラップ状となった。比較例No.64は、Ar+O2系であるが、Ar比率が上限を超えるため、過剰なスプレーアーク状態となり、Arを巻込んでブローホールが発生した。また、溶融池の粘性が高くなりすぎてビード形状が凸になった。さらに、酸素源が少なすぎて母材側陰極点が不安定となり、アーク発生方向が振れてしまい、スパッタも多く発生した。

0059

比較例No.65は、Ar+CO2+O2系であるが、Ar比率が下限未満であるため、溶滴移行がスプレー状態を維持できず、スパッタ発生量が多かった。また、溶融池の過剰酸化のため、吸収エネルギーも低かった。さらに、ビード形状もなじみ性が悪くオーバーラップ状となった。比較例No.66は、Ar+CO2+O2系であるが、Ar比率が上限を超えるため、過剰なスプレーアーク状態となり、Arを巻込んでブローホールが発生した。また、溶融池の粘性が高くなりすぎてビード形状が凸になった。比較例No.67は、CO2用ワイヤの一種CO2ガス組合せの例である。そのため、スパッタ発生量が非常に多い、ビード形状のなじみ性が悪くオーバーラップ状となる、吸収エネルギーが低い、異材継手の際の溶込み過剰により低温割れ、高温割れの発生、異材継手の際の耐候性が低いといった数々の短所が生じた。

0060

No.68は、C、Pそれぞれ単独の範囲は規定を満足しているが、C×P×104が本発明の範囲を超えているため、高温割れが発生した。No.69は、CO2用のワイヤであり、Tiが上限を超えるものである。そのため、SR処理時に過剰なTi酸化物が析出することにより、吸収エネルギーが低下した。No.70は、シールドガスがAr+CO2系であるが、Ar比率が下限未満であるため、溶滴移行がスプレー状態を維持できず、スパッタ発生量が多かった。また、溶融池の過剰酸化のため、吸収エネルギーも低かった。さらに、ビード形状もなじみ性が悪くオーバーラップ状となった。No.71は、Ar+O2系であるが、Ar比率が上限を超えるため、過剰なスプレーアーク状態となり、Arを巻込んでブローホールが発生した。また、溶融池の粘性が高くなりすぎてビード形状が凸になった。さらに、酸素源が少なすぎて母材側陰極点が不安定となり、アーク発生方向が振れてしまい、スパッタも多く発生した。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更することができる。

図面の簡単な説明

0061

継手開先断面形状を示す模式図である。

符号の説明

0062

1耐候性鋼
2鋳鋼または耐候性鋼
3 溶接金属

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