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技術 R−Fe−B系希土類焼結磁石およびその製造方法

出願人 日立金属株式会社
発明者 吉村公志
出願日 2006年3月23日 (14年7ヶ月経過) 出願番号 2006-081066
公開日 2007年10月4日 (13年0ヶ月経過) 公開番号 2007-258455
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 コア、コイル、磁石の製造 粉末冶金 永久磁石
主要キーワード 積層磁石 微小磁石 拡散状況 高出力モータ ブロック磁石 小型磁石 立方体形 加工変質
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

外郭部に重希土類元素RHが濃縮された主相結晶粒をR−Fe−B系希土類焼結磁石体の内部にも効率よく形成し、残留磁束密度の低下を抑制しつつ保磁力を向上させる。

解決手段

R−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法では、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有する少なくとも1つのR−Fe−B系希土類焼結磁石体を用意する工程(A)を行った後、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する箔または粉末をR−Fe−B系希土類焼結磁石体に接触させた状態でR−Fe−B系希土類焼結磁石体とともに処理室内に配置する工程(B)を行い、焼結磁石体を加熱することにより、箔または粉末から重希土類元素RHを焼結磁石体の表面に供給しつつ、焼結磁石体の内部に拡散させる工程(C)とを包含する。

概要

背景

Nd2Fe14B型化合物を主相とするR−Fe−B系の希土類焼結磁石は、永久磁石の中で最も高性能磁石として知られており、ハードディスクドライブボイスコイルモータVCM)や、ハイブリッド車搭載用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。R−Fe−B系希土類焼結磁石をモータ等の各種装置に使用する場合、高温での使用環境に対応するため、耐熱性に優れ、高保磁力特性を有することが要求される。

R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力を向上する手段として、重希土類元素RHを原料として配合し、溶製した合金を用いることが行われている。この方法によると、希土類元素Rとして軽希土類元素RLを含有するR2Fe14B相の希土類元素Rが重希土類元素RHで置換されるため、R2Fe14B相の結晶磁気方性(保磁力を決定する本質的な物理量)が向上する。しかし、R2Fe14B相中における軽希土類元素RLの磁気モーメントは、Feの磁気モーメントと同一方向であるのに対して、重希土類元素RHの磁気モーメントは、Feの磁気モーメントと逆方向であるため、軽希土類元素RLを重希土類元素RHで置換するほど、残留磁束密度Brが低下してしまうことになる。

一方、重希土類元素RHは希少資源であるため、その使用量の削減が望まれている。これらの理由により、軽希土類元素RLの全体を重希土類元素RHで置換する方法は好ましくない。

比較的少ない量の重希土類元素RHを添加することにより、重希土類元素RHによる保磁力向上効果発現させるため、重希土類元素RHを多く含む合金・化合物などの粉末を、軽希土類RLを多く含む主相系母合金粉末に添加し、成形焼結させることが提案されている。この方法によると、重希土類元素RHがR2Fe14B相の粒界近傍に多く分布することになるため、主相外郭部におけるR2Fe14B相の結晶磁気異方性を効率よく向上させることが可能になる。R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力発生機構核生成型(ニュークリエーション型)であるため、主相外郭部(粒界近傍)に重希土類元素RHが多く分布することにより、結晶粒全体の結晶磁気異方性が高められ、逆磁区の核生成が妨げられ、その結果、保磁力が向上する。また、保磁力向上に寄与しない結晶粒の中心部では、重希土類元素RHによる置換が生じないため、残留磁束密度Brの低下を抑制することもできる。

しかしながら、実際にこの方法を実施してみると、焼結工程(工業規模で1000℃から1200℃で実行される)で重希土類元素RHの拡散速度が大きくなるため、重希土類元素RHが結晶粒の中心部にも拡散してしまう結果、期待していた組織構造を得ることは容易でない。

さらにR−Fe−B系希土類焼結磁石の別の保磁力向上手段として、焼結磁石の段階で重希土類元素RHを含む金属、合金、化合物等を磁石表面被着後、熱処理、拡散させることによって、残留磁束密度をそれほど低下させずに保磁力を回復または向上させることが検討されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。

特許文献1は、Ti、W、Pt、Au、Cr、Ni、Cu、Co、Al、Ta、Agのうち少なくとも1種を1.0原子%〜50.0原子%含有し、残部R´(R´はCe、La、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種)からなる合金薄膜層焼結磁石体の被研削加工面に形成することを開示している。

特許文献2は、小型磁石の最表面に露出している結晶粒子半径に相当する深さ以上に金属元素R(このRは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を拡散させ、それによって加工変質損傷部を改質して(BH)maxを向上させることを開示している。

特許文献3は、厚さ2mm以下の磁石の表面に希土類元素を主体とする化学気相成長膜を形成し、磁石特性を回復させることを開示している。

特許文献4は、R−Fe−B系微小焼結磁石や粉末の保磁力を回復するため、希土類元素の収着法を開示している。この方法では、収着金属(Yb、Eu、Smなどの沸点が比較的低い希土類金属)をR−Fe−B系微小焼結磁石や粉末と混合した後、攪拌しながら真空中で均一に加熱するための熱処理が行われる。この熱処理により、希土類金属が磁石表面に被着するとともに、内部に拡散する。沸点の高い希土類金属(例えばDy)を収着させる実施形態では、高周波加熱方式により、Dyなどを選択的に高温に加熱しているが、例えばDyの沸点は2560℃であり、沸点1193℃のYbを800〜850℃に加熱していることから、Dyは少なくとも1000℃を超える温度に加熱しているものと考えられる。さらに、R−Fe−B系微小焼結磁石や粉末は700〜850℃に保つことが好ましいと記載されている。
特開昭62−192566号公報
特開2004−304038号公報
特開2005−285859号公報
特開2004−296973号公報

概要

外郭部に重希土類元素RHが濃縮された主相結晶粒をR−Fe−B系希土類焼結磁石体の内部にも効率よく形成し、残留磁束密度の低下を抑制しつつ保磁力を向上させる。R−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法では、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有する少なくとも1つのR−Fe−B系希土類焼結磁石体を用意する工程(A)を行った後、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する箔または粉末をR−Fe−B系希土類焼結磁石体に接触させた状態でR−Fe−B系希土類焼結磁石体とともに処理室内に配置する工程(B)を行い、焼結磁石体を加熱することにより、箔または粉末から重希土類元素RHを焼結磁石体の表面に供給しつつ、焼結磁石体の内部に拡散させる工程(C)とを包含する。

目的

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、少ない量の重希土類元素RHを効率よく活用し、磁石が比較的厚くとも、磁石全体にわたって主相結晶粒の外郭部に重希土類元素RHを拡散させたR−Fe−B系希土類焼結磁石を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
6件

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請求項1

軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有する少なくとも1つのR−Fe−B系希土類焼結磁石体を用意する工程(A)と、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する箔または粉末を前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体に接触させた状態で前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体とともに処理室内に配置する工程(B)と、前記箔または粉末および前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体を加熱することにより、前記箔または粉末から重希土類元素RHを前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の表面に供給しつつ、前記重希土類元素RHを前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の内部に拡散させる工程(C)と、を包含するR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法。

請求項2

前記工程(C)において、前記箔または粉末と前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の加熱温度を700℃以上1000℃以下の範囲内に設定する、請求項1に記載のR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法。

請求項3

前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体は複数であり、前記複数のR−Fe−B系希土類焼結磁石体は、それらの間に前記箔または粉末を挟むように配置される、請求項1に記載のR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法。

請求項4

前記工程(C)は、前記処理室内を真空または不活性雰囲気で満たした状態で加熱処理を行う、請求項1に記載のR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法。

請求項5

軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−Fe−B系希土類焼結磁石であって、積層された複数の焼結磁石部分を備え、各焼結磁石部分は、表面から粒界拡散によって内部に導入された重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する、R−Fe−B系希土類焼結磁石。

請求項6

前記複数の焼結磁石部分の境界部には、前記重希土類元素RHを含有する層が存在している、請求項5に記載のR−Fe−B系希土類焼結磁石。

技術分野

0001

本発明は、R2Fe14B型化合物結晶粒(Rは希土類元素)を主相として有するR−Fe−B系希土類焼結磁石およびその製造方法に関し、特に、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有し、かつ、軽希土類元素RLの一部が重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)によって置換されているR−Fe−B系希土類焼結磁石およびその製造方法に関している。

背景技術

0002

Nd2Fe14B型化合物を主相とするR−Fe−B系の希土類焼結磁石は、永久磁石の中で最も高性能磁石として知られており、ハードディスクドライブボイスコイルモータVCM)や、ハイブリッド車搭載用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。R−Fe−B系希土類焼結磁石をモータ等の各種装置に使用する場合、高温での使用環境に対応するため、耐熱性に優れ、高保磁力特性を有することが要求される。

0003

R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力を向上する手段として、重希土類元素RHを原料として配合し、溶製した合金を用いることが行われている。この方法によると、希土類元素Rとして軽希土類元素RLを含有するR2Fe14B相の希土類元素Rが重希土類元素RHで置換されるため、R2Fe14B相の結晶磁気方性(保磁力を決定する本質的な物理量)が向上する。しかし、R2Fe14B相中における軽希土類元素RLの磁気モーメントは、Feの磁気モーメントと同一方向であるのに対して、重希土類元素RHの磁気モーメントは、Feの磁気モーメントと逆方向であるため、軽希土類元素RLを重希土類元素RHで置換するほど、残留磁束密度Brが低下してしまうことになる。

0004

一方、重希土類元素RHは希少資源であるため、その使用量の削減が望まれている。これらの理由により、軽希土類元素RLの全体を重希土類元素RHで置換する方法は好ましくない。

0005

比較的少ない量の重希土類元素RHを添加することにより、重希土類元素RHによる保磁力向上効果発現させるため、重希土類元素RHを多く含む合金・化合物などの粉末を、軽希土類RLを多く含む主相系母合金粉末に添加し、成形焼結させることが提案されている。この方法によると、重希土類元素RHがR2Fe14B相の粒界近傍に多く分布することになるため、主相外郭部におけるR2Fe14B相の結晶磁気異方性を効率よく向上させることが可能になる。R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力発生機構核生成型(ニュークリエーション型)であるため、主相外郭部(粒界近傍)に重希土類元素RHが多く分布することにより、結晶粒全体の結晶磁気異方性が高められ、逆磁区の核生成が妨げられ、その結果、保磁力が向上する。また、保磁力向上に寄与しない結晶粒の中心部では、重希土類元素RHによる置換が生じないため、残留磁束密度Brの低下を抑制することもできる。

0006

しかしながら、実際にこの方法を実施してみると、焼結工程(工業規模で1000℃から1200℃で実行される)で重希土類元素RHの拡散速度が大きくなるため、重希土類元素RHが結晶粒の中心部にも拡散してしまう結果、期待していた組織構造を得ることは容易でない。

0007

さらにR−Fe−B系希土類焼結磁石の別の保磁力向上手段として、焼結磁石の段階で重希土類元素RHを含む金属、合金、化合物等を磁石表面被着後、熱処理、拡散させることによって、残留磁束密度をそれほど低下させずに保磁力を回復または向上させることが検討されている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。

0008

特許文献1は、Ti、W、Pt、Au、Cr、Ni、Cu、Co、Al、Ta、Agのうち少なくとも1種を1.0原子%〜50.0原子%含有し、残部R´(R´はCe、La、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種)からなる合金薄膜層焼結磁石体の被研削加工面に形成することを開示している。

0009

特許文献2は、小型磁石の最表面に露出している結晶粒子半径に相当する深さ以上に金属元素R(このRは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を拡散させ、それによって加工変質損傷部を改質して(BH)maxを向上させることを開示している。

0010

特許文献3は、厚さ2mm以下の磁石の表面に希土類元素を主体とする化学気相成長膜を形成し、磁石特性を回復させることを開示している。

0011

特許文献4は、R−Fe−B系微小焼結磁石や粉末の保磁力を回復するため、希土類元素の収着法を開示している。この方法では、収着金属(Yb、Eu、Smなどの沸点が比較的低い希土類金属)をR−Fe−B系微小焼結磁石や粉末と混合した後、攪拌しながら真空中で均一に加熱するための熱処理が行われる。この熱処理により、希土類金属が磁石表面に被着するとともに、内部に拡散する。沸点の高い希土類金属(例えばDy)を収着させる実施形態では、高周波加熱方式により、Dyなどを選択的に高温に加熱しているが、例えばDyの沸点は2560℃であり、沸点1193℃のYbを800〜850℃に加熱していることから、Dyは少なくとも1000℃を超える温度に加熱しているものと考えられる。さらに、R−Fe−B系微小焼結磁石や粉末は700〜850℃に保つことが好ましいと記載されている。
特開昭62−192566号公報
特開2004−304038号公報
特開2005−285859号公報
特開2004−296973号公報

発明が解決しようとする課題

0012

特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されている従来技術は、いずれも、加工劣化した焼結磁石表面の回復を目的としているため、表面から内部に拡散される金属元素の拡散範囲は、焼結磁石の表面近傍に限られている。このため、厚さ3mm以上の磁石では、保磁力の向上効果がほとんど得られない。

0013

一方、特許文献4に開示されている従来技術では、Ybなどの低沸点の希土類金属を対象とした実施形態において、確かに個々のR−Fe−B系微小磁石の保磁力は回復するが、拡散熱処理時にR−Fe−B系磁石と収着金属が融着したり、処理後お互いを分離することが困難であり、焼結磁石体表面に未反応の収着金属(RH)の残存が事実上避けられない。これは、磁石成形体における磁性成分比率下げ磁石特性の低減を招くのみならず、希土類金属は本来非常に活性酸化しやすいため、実用環境において未反応収着金属が腐食の起点になりやすく好ましくない。また、混合攪拌するための回転と真空熱処理を同時に行う必要があるため、耐熱性、圧力(気密度)を維持しながら回転機構を組み込んだ特別な装置が必要になり、量産製造時に設備投資品質安定製造の観点で課題がある。また、収着原料に粉末を使用した場合は安全性の問題(発火人体への有害性)や作製工程に手間がかかりコストアップ要因となる。

0014

また、Dyを含む高沸点希土類金属を対象とした実施形態においては、高周波によって収着原料と磁石の双方を加熱するため、希土類金属のみを充分な温度に加熱し磁石を低温に保持することは容易ではなく、磁石は、誘導加熱されにくい粉末の状態か極微小なものに限られてしまう。

0015

また、特許文献1から4の方法のいずれも、重希土類元素RHの膜(RH膜)を焼結磁石体の表面に形成した後、焼結磁石体の内部に拡散させるが、具体的製法において、RH膜を焼結磁石体上に成長させる過程で、成膜装置内部の磁石以外の部分(例えば真空チャンバー内壁)にも多量に希土類金属が堆積するため、貴重資源である重希土類元素の省資源化に反することになる。

0016

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、少ない量の重希土類元素RHを効率よく活用し、磁石が比較的厚くとも、磁石全体にわたって主相結晶粒の外郭部に重希土類元素RHを拡散させたR−Fe−B系希土類焼結磁石を提供することにある。

課題を解決するための手段

0017

本発明のR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法は、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有する少なくとも1つのR−Fe−B系希土類焼結磁石体を用意する工程(A)と、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する箔または粉末を前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体に接触させた状態で前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体とともに処理室内に配置する工程(B)と、前記箔または粉末および前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体を加熱することにより、前記箔または粉末から重希土類元素RHを前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の表面に供給しつつ、前記重希土類元素RHを前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の内部に拡散させる工程(C)とを包含する。

0018

好ましい実施形態において、前記箔または粉末と前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体の加熱温度を700℃以上1000℃以下の範囲内に設定する。

0019

好ましい実施形態において、前記R−Fe−B系希土類焼結磁石体は複数であり、前記複数のR−Fe−B系希土類焼結磁石体は、それらの間に前記箔または粉末を挟むように配置される。

0020

好ましい実施形態において、前記工程(C)は、前記処理室内を真空または不活性雰囲気で満たした状態で加熱処理を行う。

0021

本発明のR−Fe−B系希土類焼結磁石は、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有するR−Fe−B系希土類焼結磁石であって、積層された複数の焼結磁石部分を備え、各焼結磁石部分は、表面から粒界拡散によって内部に導入された重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有する。

0022

好ましい実施形態において、前記複数の焼結磁石部分の境界部には、前記重希土類元素RHを含有する層が存在している。

発明の効果

0023

本発明では、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)の粒界拡散を行うことにより、焼結磁石体内部の奥深い位置まで重希土類元素RHを供給し、主相外殻部において軽希土類元素RLを効率よく重希土類元素RHで置換することができる。その結果、残留磁束密度Brの低下を抑制しつつ、保磁力HcJを上昇させることが可能になる。また、重希土類元素RHを無駄に消費してしまうことなく、極めて効率的に磁石体の内部に拡散させることが可能になる。

発明を実施するための最良の形態

0024

本発明のR−Fe−B系希土類焼結磁石の製造方法によって作製される磁石は、焼結磁石体の表面から粒界拡散によって内部に導入された重希土類元素RHを含有している。ここで、重希土類元素RHは、Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種である。

0025

本発明のR−Fe−B系希土類焼結磁石は、重希土類元素RHの箔または粉末(以下、「RH拡散源」と称する。)から重希土類元素RHを焼結磁石体表面に供給しつつ、重希土類元素RHを焼結体の表面から内部へ拡散させることによって製造される。本発明の製造方法では、気化昇華しにくい重希土類元素RHの箔や粉末を希土類焼結磁石体に接触させた状態で適切な温度(好ましくは700℃以上1000℃以下)に加熱することにより、重希土類元素RHを効率的に磁石体内部に拡散させることができる。

0026

700℃以上1000℃以下の温度範囲は、重希土類元素RHの気化・昇華がほとんど生じない温度であるが、R−Fe−B系希土類焼結磁石における希土類元素の拡散が活発に生じる温度でもある。RH拡散源を磁石体表面に接触させた状態で上記温度に加熱すると、RH拡散源から磁石体の表面を介して磁石体内部へ重希土類元素RHの粒界拡散を進行させることができる。

0027

従来技術では、前述のように重希土類元素RHの膜(RH膜)を焼結磁石体の表面に形成した後、焼結磁石体の内部に拡散させるが、RH膜を焼結磁石体上に成長させる過程で、重希土類元素RHの成膜材料供給源を極めて非効率的に消費してしまうことになる。例えばスパッタリング法によってRH膜を焼結磁石体上に堆積する場合、重希土類元素RHのターゲットを焼結磁石体に対向する位置に配置した状態でスパッタリングする必要がある。このとき、ターゲットからスパッタされた重希土類元素RHは、スパッタ装置内において焼結磁石体が存在しない部分にも衝突し、そこにも堆積してゆく。同様のことが、重希土類元素RHの他の薄膜堆積技術(蒸着法など)を用いる場合にも生じる。すなわち、従来の薄膜堆積技術による場合、焼結磁石体に薄膜を堆積する工程で重希土類元素RHの多く(例えば80〜90%)が無駄に消費されてしまうという問題がある。これに対し、本発明では、重希土類元素RHの箔や粉末を焼結磁石体に接触させた状態で加熱処理を行うことにより、極めて効率的に重希土類元素RHを磁石体の内部に拡散させることが可能になる。

0028

RH供給源として箔を用いる場合、箔の厚さは1〜50μmの範囲内にあることが好ましい。箔の厚さが1μm未満になると、焼結磁石体の内部に拡散する重希土類元素RHの量(RH量)が不足し、保磁力の向上効果が少なくなる可能性がある。一方、箔の厚さが50μmを超えると、焼結磁石体の表層部分において未拡散のRH層が残存し、重希土類元素RHの効率的な利用が阻害されてしまう。また、厚い箔に含まれる全ての重希土類元素RHを焼結磁石体中に拡散すると、主相であるR2Fe14B型結晶相内にも多量の重希土類元素RHが拡散し、磁化の低下が顕著になる可能性もある。

0029

箔の大きさ(平面サイズ)は、焼結磁石体が板状の場合、箔が接触する面の面積整合させることが好ましい。ただし、拡散は粒界相を介して3次元的に生じるため、箔と焼結磁石体とが接触する領域の面積が小さくとも、焼結磁石体の全体に重希土類元素RHを拡散させることが可能である。従って、焼結磁石体の表面の全体を箔で覆う必要は無い。また、箔と焼結磁石体との接触領域は、複数箇所であってもよい。ただし、複数の接触領域の間隔は、拡散距離に比べて小さいことが好ましい。

0030

本発明者の検討によると、重希土類元素RHは、蒸気圧が低く、拡散のための熱処理工程(700〜1000℃)では昇華しにくく、無駄な消費を避けることができる。また、本発明のように箔または粉末の状態で焼結磁石体の表面に接触させておくと、重希土類元素RHが接触面を介して短時間で磁石体内部に拡散してゆくため、結果として、重希土類元素RHの無駄な昇華・気化を抑制することができる。より高い効率で重希土類元素RHを利用するには、箔や粉末を複数の焼結磁石体で挟み込んだ状態で熱処理を行うことが好ましい。

0031

箔の表面は平滑であることが好ましいが、凹凸を有していてもよい。また、箔に複数の孔が存在してもよい。1つの焼結磁石体に接触させる箔の数も一枚に限定されず、同一磁石体上に間隔を置いて複数の箔を配置しても良い。

0032

なお、箔が焼結磁石体との接触面よりも大きく、焼結磁石体からはみ出していても良い。ただし、上述の昇華により、拡散に利用されずに無駄に消費される重希土類元素RHの量を低減するためには、箔の全体または大部分が焼結磁石体の表面に接触していることが好ましい。

0033

RH供給源として粉末を用いる場合、箔と同様の理由により、粒径が1〜50μmの粉末を焼結磁石体の表面に接触させ、厚さ1〜50μm程度の粉末層を形成することが好ましい。焼結磁石体との接触面積を拡大し、拡散を促進するためには、個々の粉末粒子偏平な形状を有することが好ましい。また、接触面積を拡大するため、箔または粉末層を外側から押圧部材で焼結磁石体に対して押しても良い。この押圧部材は、拡散のための熱処理時に焼結磁石体と反応しにくいNbなどの金属材料から形成されているか、他の焼結磁石体から構成されていることが好ましい。

0034

前述のように、複数の焼結磁石体の間に重希土類元素RHの箔や粉末を挟みこんだ状態で熱処理を行っても良い。隣接する焼結磁石体に挟まれた重希土類元素RHの箔や粉末は、垂直方向に焼結磁石体を積層した場合、自重により生じる圧力で磁石体と充分広い接触面積を確保することができる。一方、水平方向に積層した場合は、両側から圧力を磁石体に印加してもよい。

0035

焼結磁石体によって箔や粉末を挟む場合、積層した複数の焼結磁石体のうち、両端に位置する焼結磁石体の露出面側からも重希土類元素RHを拡散させることが好ましく、そのためには、上記焼結磁石体の露出面(両端面)にも重希土類元素RHの箔や粉末を接触させておくことが好ましい。これらの両端面上に接触させた重希土類元素RHの箔や粉末を充分に磁石体内部に拡散させるためには、焼結磁石体の露出面に重希土類元素RHの箔や粉末を接触させたものを反応性の低いNbなどの箔に包み込んで熱処理することが好ましい。重希土類元素RHはNbなどの箔の表面にはほとんど堆積しないため、非常に効率的に磁石体内部に拡散する。

0036

拡散のための熱処理は、箔または粉末を接触させたR−Fe−B系希土類焼結磁石体を処理室内に静置させた状態で処理室の雰囲気全体を加熱することによって行っても良いし、高周波誘導加熱等により、重希土類元素RHの箔や粉末、および焼結磁石体を直接加熱することによって行っても良い。

0037

処理室内の加熱温度は700℃〜1000℃が好ましく、850℃〜950℃がより好ましい。この温度領域であれば、重希土類元素RHが焼結磁石体の粒界相を伝って内部へ効率よく拡散する。熱処理時には、実効的な接触面積を拡大し、拡散を促進するため、荷重を印加することが好ましい。このことによる効果は、10mm角程度の小物積層磁石の場合に顕著である。このサイズよりも大きく重い積層磁石の場合は、自重により充分に大きな接触面積を得ることが可能である。

0038

熱処理時の処理室内は不活性雰囲気が好ましい。不活性雰囲気であれば真空でもAr雰囲気でもよい。処理室内の真空度はRH金属の拡散量、すなわち保磁力の向上度には大きく影響しない。上記温度領域で拡散を行う場合、30〜180分程度の熱処理により、焼結磁石体の重量に対して0.1%〜1%の比率で重希土類元素RHを含有するように拡散を行うことができる。

0039

熱処理後の磁石は、拡散に消費されなかったRH箔や、相互拡散によって界面に濃化したRL層を介して、焼結磁石体が相互に接合される。接合された状態の磁石体は、そのまま、積層磁石として利用可能であるが、更に所望の形状および大きさを有する複数の磁石片に分離・加工しても良い。

0040

このようにして作製された積層磁石は、希土類金属層(重希土類元素RHおよび軽希土類元素RLを含有する層)を界面に有するため、これらの界面を横切るような渦電流が発生しにくくなり、全体として渦電流による発熱が抑制される。このため、モータに実装して使用される場合、優れた磁石特性を発揮することが可能になる。

0041

積層する焼結磁石体の間には、重希土類元素RHの箔や粉末層とは別に、Nbなどの金属の箔または粉末や酸化物など電気抵抗率の高い材質薄板または粉末を介在させてもよい。これにより、更に渦電流抑制効果が発揮される。

0042

本発明によれば、成膜のためにRH供給源をスパッタリングしたり、蒸発させる必要がないため、重希土類元素RHを磁石体の内部に効率よく拡散させることが可能であり、貴重資源である重希土類元素RHの省資源化に大いに寄与することとなる。

0043

さらに、同じ容積内での積載効率が高いので、生産効率が高い。また、大掛かりな装置を作製する必要が無く、一般的な真空熱処理炉が活用できるため、コストメリットがあり実用的である。

0044

本発明における拡散処理により、R2Fe14B主相結晶粒に含まれる軽希土類元素RLの一部を焼結体表面から粒界拡散によって内部に浸透させた重希土類元素RHで置換し、R2Fe14B主相の外郭部に重希土類元素RHが相対的に濃縮した層(厚さは例えば1nm)を形成することができる。

0045

R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力発生機構はニュークリエーション型であるため、主相外郭部における結晶磁気異方性が高められると、主相における粒界相の近傍で逆磁区の核生成が抑制される結果、主相全体の保磁力HcJが効果的に向上する。本発明では、焼結磁石体の表面に近い領域だけでなく、磁石表面から奥深い領域においても重希土類置換層を主相外殻部に形成することができるため、磁石全体にわたって結晶磁気異方性が高められ、磁石全体の保磁力HcJが充分に向上することになる。したがって、本発明によれば、消費する重希土類元素RHの量が少なくとも、焼結体の内部まで重希土類元素RHを拡散・浸透させることができ、主相外郭部で効率良くRH2Fe14Bを形成することにより、残留磁束密度Brの低下を抑制しつつ保磁力HcJを向上させることが可能になる。

0046

なお、Tb2Fe14Bの結晶磁気異方性は、Dy2Fe14Bの結晶磁気異方性よりも高く、Nd2Fe14Bの結晶磁気異方性の約3倍の大きさを有している。このため、主相外郭部で軽希土類元RLと置換させるべき重希土類元素RHとしては、DyよりもTbが好ましい。

0047

上記説明から明らかなように、本発明では、原料合金の段階において重希土類元素RHを添加しておく必要はない。すなわち、希土類元素Rとして軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を含有する公知のR−Fe−B系希土類焼結磁石を用意し、その表面から重希土類元素を磁石内部に拡散する。従来の重希土類層を磁石表面に形成する場合には、その段階で重希土類元素RHを無駄に消費してしまうため、効率的に磁石内部に重希土類元素を拡散させることは困難であったが、本発明によれば、重希土類元素RHの効率的な利用が可能になる。もちろん、本発明は、原料合金の段階において重希土類元素RHが幾らか添加されているR−Fe−B系焼結磁石に対して適用しても同様の効果が得られる。

0048

なお、本発明書における「処理室」は、焼結磁石体とRH供給源を配置した空間を広く含むものであり、熱処理炉の処理室を意味する場合もあれば、そのような処理室内に収容される処理容器を意味する場合もある。

0049

本発明では、焼結磁石体とRH供給源とが接触し、速やかに拡散するため、気化したRH金属が焼結磁石体処理室内の壁面などに付着することが少ない。また、処理室内の壁面がNbなどの耐熱合金セラミックなどRHと反応しない材質で作製されていれば、壁面に付着したRH金属は再び気化し、最終的には焼結磁石体表面に析出する。このため、貴重資源である重希土類元素RHの無駄な消費を抑制することができる。

0050

さらに、RH供給源と焼結磁石体とを接触配置するため、同じ容積を有する処理室内に搭載可能な焼結磁石体の量が増え、積載効率が高い。また、大掛かりな装置を必要としないため、一般的な真空熱処理炉が活用でき、製造コストの上昇を避けることが可能であり、実用的である。

0051

熱処理時における処理室内は不活性雰囲気であることが好ましい。本明細書における「不活性雰囲気」とは、真空、また不活性ガスで満たされた状態を含むものとする。また、「不活性ガス」は、例えばアルゴン(Ar)などの希ガスであるが、RHバルク体および焼結磁石体との間で化学的に反応しないガスであれば、「不活性ガス」に含まれ得る。不活性ガスの圧力は、大気圧よりも低い値を示すように減圧される。

0052

RH供給源に含まれるRHは、磁石界面におけるRH濃度の差を駆動力として、粒界相中を磁石内部に向かって拡散する。このとき、R2Fe14B相中の軽希土類元素RLの一部が、磁石表面から拡散浸透してきた重希土類元素RHによって置換される。その結果、R2Fe14B相の外郭部に重希土類元素RHが濃縮された層が形成される。

0053

このようなRH濃縮層の形成により、主相外郭部の結晶磁気異方性が高められ、保磁力HcJが向上することになる。すなわち、少ないRH金属の使用により、磁石内部の奥深くにまで重希土類元素RHを拡散浸透させ、主相外郭部のみを効率的にRH2Fe14Bに変換するため、残留磁束密度Brの低下を抑制しつつ、磁石全体にわたって保磁力HcJを向上させることが可能になる。

0054

なお、実験によると、重希土類元素RHの拡散浸透に伴って軽希土類元素RLは焼結磁石体内部から表面に向かって拡散し、磁石体表面にRL濃化層を形成することがわかった。このため、焼結磁石体内部における希土類元素の総量(主相の体積比率)は、ほとんど変化せず、残留磁束密度の低下が抑制される。

0055

前述のように、R−Fe−B系焼結磁石は、ニュークリエーションによる保磁力発生機構を有しているため、主相外郭部における結晶磁気異方性が高められることにより、主相の粒界相近傍における逆磁区の核生成が抑制され、保磁力HcJが高まる。なお、Tb2Fe14Bにおける結晶磁気異方性はNd2Fe14Bにおける結晶磁気異方性の約3倍であるため、希土類元素RHとしては、DyよりもTbを用いる方が保磁力向上効果を高めることが可能である。

0056

また、拡散するRHの含有量は、磁石全体の重量比で0.1%以上1.5%以下の範囲に設定することが好ましい。1.5%を超えると、残留磁束密度Brの低下を抑制できなくなる可能性があり、0.1%未満では、保磁力HcJの向上効果が不充分だからである。上記の温度領域で、30〜180分熱処理することにより、0.1%〜1%の拡散量が達成できる。

0057

焼結磁石の表面状態はRHが拡散浸透しやすいよう、より金属状態の近い方が好ましく、事前酸洗浄ブラスト処理等の活性化処理を行った方がよい。ただし、本発明では、重希土類元素RHが気化し、活性な状態で焼結磁石体の表面に被着すると、固体の層を形成するよりも速い速度で焼結磁石体の内部に拡散していく。このため、焼結磁石体の表面は、例えば切断加工が完了した後の酸化が進んだ状態にあってもよい。

0058

本発明によれば、主として粒界相を介して重希土類元素RHを拡散させることができるため、処理時間を調節することにより、磁石内部のより深い位置へ効率的に重希土類元素RHを拡散させることが可能である。

0059

RH供給源は、少なくとも1種の重希土類元素RHを含んでいれば、金属でも合金でもよい。

0060

本発明によれば、例えば厚さ3mm以上の厚物磁石に対しても、僅かな量の重希土類元素RHを用いて残留磁束密度Brおよび保磁力HcJの両方を高め、高温でも磁気特性が低下しない高性能磁石を提供することができる。このような高性能磁石は、超小型・高出力モータの実現に大きく寄与する。粒界拡散を利用した本発明の効果は、厚さが10mm以下の磁石において特に顕著に発現する。また、複数の焼結磁石体を間にRH箔などを挟んだ状態で積層し、熱処理を行えば、全体の厚さをブロック磁石と同程度に大きくしても、内部に重希土類元素RHを効率的に拡散させた磁石を得ることができる。

0061

以下、本発明によるR−Fe−B系希土類焼結磁石を製造する方法の好ましい実施形態を説明する。

0062

[原料合金]
まず、25質量%以上40質量%以下の軽希土類元素RLと、0.6質量%以上〜1.6質量%のB(硼素)と、残部Fe及び不可避的不純物とを含有する合金を用意する。Bの一部はC(炭素)によって置換されていてもよいし、Feの一部(50原子%以下)は、他の遷移金属元素(例えばCoまたはNi)によって置換されていてもよい。この合金は、種々の目的により、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の添加元素Mを0.01〜1.0質量%程度含有していてもよい。

0063

上記の合金は、原料合金の溶湯を例えばストリップキャスト法によって急冷して好適に作製され得る。以下、ストリップキャスト法による急冷凝固合金の作製を説明する。

0064

まず、上記組成を有する原料合金をアルゴン雰囲気中において高周波溶解によって溶融し、原料合金の溶湯を形成する。次に、この溶湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法によって急冷し、例えば厚さ約0.3mmのフレーク状合金鋳塊を得る。こうして作製した合金鋳片を、次の水素粉砕前に例えば1〜10mmの大きさのフレーク状に粉砕する。なお、ストリップキャスト法による原料合金の製造方法は、例えば、米国特許第5、383、978号明細書に開示されている。

0065

粗粉砕工程]
上記のフレーク状に粗く粉砕された合金鋳片を水素炉の内部へ収容する。次に、水素炉の内部で水素脆化処理(以下、「水素粉砕処理」と称する場合がある)工程を行なう。水素粉砕後の粗粉砕合金粉末を水素炉から取り出す際、粗粉砕粉大気と接触しないように、不活性雰囲気下で取り出し動作を実行することが好ましい。そうすれば、粗粉砕粉が酸化・発熱することが防止され、磁石の磁気特性が向上するからである。

0066

水素粉砕によって、希土類合金は0.1mm〜数mm程度の大きさに粉砕され、その平均粒径は500μm以下となる。水素粉砕後、脆化した原料合金をより細かく解砕するとともに冷却することが好ましい。比較的高い温度状態のまま原料を取り出す場合は、冷却処理の時間を相対的に長くすれば良い。

0067

微粉砕工程]
次に、粗粉砕粉に対してジェットミル粉砕装置を用いて微粉砕を実行する。本実施形態で使用するジェットミル粉砕装置にはサイクロン分級機が接続されている。ジェットミル粉砕装置は、粗粉砕工程で粗く粉砕された希土類合金(粗粉砕粉)の供給を受け、粉砕機内で粉砕する。粉砕機内で粉砕された粉末はサイクロン分級機を経て回収タンクに集められる。こうして、0.1〜20μm程度(典型的には3〜5μm)の微粉末を得ることができる。このような微粉砕に用いる粉砕装置は、ジェットミルに限定されず、アトライタボールミルであってもよい。粉砕に際して、ステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を粉砕助剤として用いてもよい。

0068

プレス成形
本実施形態では、上記方法で作製された磁性粉末に対し、例えばロッキングミキサー内で潤滑剤を例えば0.3wt%添加・混合し、潤滑剤で合金粉末粒子の表面を被覆する。次に、上述の方法で作製した磁性粉末を公知のプレス装置を用いて配向磁界中で成形する。印加する磁界の強度は、例えば1.5〜1.7テスラ(T)である。また、成形圧力は、成形体グリーン密度が例えば4〜4.5g/cm3程度になるように設定される。

0069

[焼結工程]
上記の粉末成形体に対して、650〜1000℃の範囲内の温度で10〜240分間保持する工程と、その後、上記の保持温度よりも高い温度(例えば1000〜1200℃)で焼結を更に進める工程とを順次行なうことが好ましい。焼結時、特に液相が生成されるとき(温度が650〜1000℃の範囲内にあるとき)、粒界相中のRリッチ相が融け始め、液相が形成される。その後、焼結が進行し、焼結磁石体が形成される。焼結後、必要に応じて、時効処理(500〜1000℃)が行われる。

0070

拡散工程
次に、こうして作製された焼結磁石体に重希土類元素RHを効率良く拡散浸透させて、保磁力HcJを向上させる。具体的には、重希土類元素RHの箔または粉末を焼結磁石体に接触させた状態で処理室内に配置し、加熱により、箔または粉末から重希土類元素RHを焼結磁石体の表面に供給しつつ、焼結磁石体の内部に拡散させる。

0071

本実施形態における拡散工程では、焼結磁石体の温度を700℃以上1000℃以下の範囲内に設定することが好ましい。本実施形態における拡散工程は、焼結磁石体の表面状況に敏感ではなく、拡散工程の前に焼結磁石体の表面にZnやSnなどからなる膜が形成されていてもよい。ZnやSnは、低融点金属であり、しかも、少量であれば磁石特性を劣化させず、また上記の拡散の障害ともならないからである。ZnやSnなどの元素を重希土類元素RHの箔または粉末に含有させておいたり、ZnやSnなどの箔または粉末を重希土類元素RHの箔または粉末と重ねたり混合したりして拡散工程を行っても良い。

0072

まず、Nd:31.8、B:0.97、Co:0.92、Cu:0.1、Al:0.24、残部:Fe(質量%)の組成を有するように配合した合金のインゴットストリップキャスト装置により溶融し、冷却することによって凝固した。こうして、厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片を作製した。

0073

次に、この合金薄片を容器内に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内に圧力500kPaの水素ガス雰囲気で満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。

0074

上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末に対し粉砕助剤として0.05wt%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が約3μmの微粉末を製作した。

0075

こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1020℃で4時間の焼結工程を行った。こうして、15mm角の立方体形状を有する焼結体ブロックを作製したあと、この焼結体ブロックを機械的に加工することにより、厚さ(磁化方向サイズ)1mm×縦10mm×横10mmの焼結磁石体を複数個作製した。

0076

これらの焼結磁石体を0.3%硝酸水溶液酸洗し、乾燥させた後、処理容器内に配置した。このとき、3枚の焼結磁石体を1組として、間にDy箔(ニラコ製:Dy純度99.9)を挟んだサンプル1〜6を用意した。各サンプル1〜6では、以下の表1に示すDy箔を焼結磁石体間に挟んだ。

0077

0078

図1(a)〜(f)は、それぞれ、サンプル1〜6について、焼結磁石体1とDy箔2との配置関係を模式的に示している。図1の左側が断面構成を示し、右側が平面構成を示している。

0079

サンプル1〜6を真空熱処理炉にて900℃、60min、1.0×10-2Paの条件で熱処理した後、500℃、60min、2Paの条件で時効処理を行った。この後、B−Hトレーサを用いて磁石特性(残留磁束密度:Br、保磁力:HcJ)を測定した。測定結果を以下の表2に示す。

0080

0081

図2(a)および(b)は、表2の結果を示すグラフである。各グラフの左端のデータ(グラフ中「As」と記載されているデータ)は、Dy拡散を行う前の磁石特性を示している。

0082

以上の結果から明らかなように、Dy箔の形状や面積比率によらず、残留磁束密度の低下を抑制しつつ保磁力HcJが向上した。

0083

一方、磁石体内部へのDyの拡散状況をEPMA(島津製作所製EPM−1610)によって評価した。図3は、サンプル2の断面EPMAによる分析結果を示す写真である。図3(a)は、サンプル2の一部断面の構成を示す図、SEM写真、およびDy濃度分布を示すグラフである。図3(b)は、焼結磁石体の最上面中央部における分析結果を示す写真であり、図3(c)は、焼結磁石体の最上面から約200μmの深さにおける分析結果を示す写真である。図4は、サンプル2の断面EPMAによる分析結果を示す写真であり、図4(a)は、図3(a)と同一である。図4(b)は、2つの焼結磁石体の界面近傍における分析結果を示す写真であり、図4(c)は、この界面近傍から約200μmの深さにおける分析結果を示す写真である。

0084

上記の熱処理により、Dy箔との界面から磁石素材の内部へDyが拡散したことが確認できた。

0085

本発明によれば、重希土類元素RHを無駄に消費することなく、焼結磁石体の内部にも効率よく拡散し、主相結晶粒の外郭部に重希土類元素RHが濃縮することができるため、高い残留磁束密度と高い保磁力とを兼ね備えた高性能磁石を提供することができる。

図面の簡単な説明

0086

(a)〜(f)は、それぞれ、サンプル1〜6について、焼結磁石体1とDy箔2との配置関係を示す模式図である。
本発明の実施例であるサンプル1〜6について得られた磁石特性を示すグラフであり、(a)は残留磁束密度Brを示すグラフであり、(b)は保磁力HcJを示すグラフである。
本発明の実施例であるサンプル2について得られた断面EPMA分析結果を示す写真であり、(a)は、深さ方向のDy濃度プロファイルを示すグラフなどであり、(b)は、焼結磁石体の上面中央部における分析結果を示す写真であり、(c)は、焼結磁石体の上面から約200μmの深さにおける分析結果を示す写真である。
上記サンプル2について得られた断面EPMA分析結果を示す写真であり、(a)は、深さ方向のDy濃度プロファイルを示すグラフなどであり、(b)は、2つの焼結磁石体の界面近傍の中央部における分析結果を示す写真であり、(c)は、焼結磁石体の界面から約200μmの深さにおける分析結果を示す写真である。

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