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技術 ES細胞の分化能の改善方法

出願人 国立研究開発法人理化学研究所
発明者 若山照彦引地貴亮
出願日 2006年3月15日 (12年11ヶ月経過) 出願番号 2006-071193
公開日 2007年9月27日 (11年4ヶ月経過) 公開番号 2007-244271
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 出生率 ペインティング 雄性発生 単為発生 寄与率 マニピュレーター 再プログラム 塩化ストロンチウム
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

ES細胞分化能およびキメラ動物への寄与率を改善するための、あるいはES細胞の遺伝子発現を正常化するための、簡便かつ確実な方法、並びに分化能が改善されたES細胞、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞、および遺伝子発現が正常化されたES細胞の提供。

解決手段

ES細胞由来の核をレシピエント細胞移植し;次いで、作出されたクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法、および再樹立されたES細胞。

概要

背景

遺伝子改変動物の作成においてES細胞は不可欠であるが、ES細胞は長期間の培養などが原因で分化能が低下し、生殖細胞へ寄与しなくなりやすいという欠点がある。これでは折角得られたES細胞を用いた研究の進捗が図れない。また、ES細胞から臓器を作り出す再生医療においてもES細胞の分化能の低下は深刻な問題となっている。

これまで、ES細胞の分化能を改善する試みは、培養条件の改善や分化能の高い細胞選別によって行われてきたが、これらの方法は多くの時間や労力を要するうえに確実性も低いので、通常は、別のES細胞で代替するのが実情であった。しかし特定の代替できないES細胞の場合、実験を最初からやり直す必要があった。また、最近になって、本発明者らは、分化能の低いES細胞を使用するにあたり、キメラマウス精巣からES細胞由来精子を取り出す方法も案出している。しかしながら、これまでの方法は、ES細胞自身の分化能を改善するものではなかった。

さらにES細胞は長期間の培養などが原因でキメラ動物への寄与率が低下し、あるいは遺伝子発現が正常な状態でなくなる傾向がある。このような問題もまた研究の進捗の妨げとなり、再生医療においても深刻な問題となっている。

一方、核移植技術(非特許文献1〜4参照)はクローン動物の作成および体細胞由来ES細胞の作成に用いられていたが、ES細胞の分化能の改善をはじめとする上記問題を解決するために核移植技術が用いられたことはなかった。
Wilmut et al., Nature 1997; 385:810-813.
Wakayama, T. et al. Science 292, 740-743 (2001)
Wakayama, T. et al. Proc Natl Acad Sci U S A 96, 14984-14989 (1999)
Wakayama, T. et al. Nature 394, 369-374 (1998)

概要

ES細胞の分化能およびキメラ動物への寄与率を改善するための、あるいはES細胞の遺伝子発現を正常化するための、簡便かつ確実な方法、並びに分化能が改善されたES細胞、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞、および遺伝子発現が正常化されたES細胞の提供。ES細胞由来の核をレシピエント細胞移植し;次いで、作出されたクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法、および再樹立されたES細胞。なし

目的

ES細胞の分化能を改善するための、簡便かつ確実な方法を提供することが、本発明の課題であった。さらに、ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善、あるいはES細胞の遺伝子発現を正常化させるための、簡便かつ確実な方法を提供することも、本発明の課題であった。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ES細胞分化能を改善する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法。

請求項2

ES細胞の分化能を改善する方法であって、請求項1記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法。

請求項3

請求項1または2記載の方法により得られる、分化能が改善されたES細胞。

請求項4

ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法。

請求項5

ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善する方法であって、請求項4記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法。

請求項6

請求項4または5記載の方法により得られる、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞。

請求項7

ES細胞の遺伝子発現を正常化する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法。

請求項8

ES細胞の遺伝子発現を正常化する方法であって、請求項7記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法。

請求項9

請求項7または8記載の方法により得られる、遺伝子発現が正常化されたES細胞。

技術分野

0001

本発明は、細胞能力改善方法に関する。詳細には、ES細胞核移植によって再樹立することにより、その分化能およびキメラ動物への寄与率を改善し、遺伝子発現を正常化する方法に関する。さらに本発明は、上記方法により得られる、分化能が改善されたES細胞、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞、および遺伝子発現が正常化されたES細胞にも関する。

背景技術

0002

遺伝子改変動物の作成においてES細胞は不可欠であるが、ES細胞は長期間の培養などが原因で分化能が低下し、生殖細胞へ寄与しなくなりやすいという欠点がある。これでは折角得られたES細胞を用いた研究の進捗が図れない。また、ES細胞から臓器を作り出す再生医療においてもES細胞の分化能の低下は深刻な問題となっている。

0003

これまで、ES細胞の分化能を改善する試みは、培養条件の改善や分化能の高い細胞の選別によって行われてきたが、これらの方法は多くの時間や労力を要するうえに確実性も低いので、通常は、別のES細胞で代替するのが実情であった。しかし特定の代替できないES細胞の場合、実験を最初からやり直す必要があった。また、最近になって、本発明者らは、分化能の低いES細胞を使用するにあたり、キメラマウス精巣からES細胞由来精子を取り出す方法も案出している。しかしながら、これまでの方法は、ES細胞自身の分化能を改善するものではなかった。

0004

さらにES細胞は長期間の培養などが原因でキメラ動物への寄与率が低下し、あるいは遺伝子発現が正常な状態でなくなる傾向がある。このような問題もまた研究の進捗の妨げとなり、再生医療においても深刻な問題となっている。

0005

一方、核移植技術(非特許文献1〜4参照)はクローン動物の作成および体細胞由来ES細胞の作成に用いられていたが、ES細胞の分化能の改善をはじめとする上記問題を解決するために核移植技術が用いられたことはなかった。
Wilmut et al., Nature 1997; 385:810-813.
Wakayama, T. et al. Science 292, 740-743 (2001)
Wakayama, T. et al. Proc Natl Acad Sci U S A 96, 14984-14989 (1999)
Wakayama, T. et al. Nature 394, 369-374 (1998)

発明が解決しようとする課題

0006

ES細胞の分化能を改善するための、簡便かつ確実な方法を提供することが、本発明の課題であった。さらに、ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善、あるいはES細胞の遺伝子発現を正常化させるための、簡便かつ確実な方法を提供することも、本発明の課題であった。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは鋭意研究を重ね、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立した結果、再樹立されたES細胞の分化能が改善されることを見出した。さらに本発明者らは、上記方法にて再樹立したES細胞のキメラ動物への寄与率が改善されること、遺伝子発現が正常化されることも見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。

0008

すなわち、本発明は下記の方法を提供するものである:
(1)ES細胞の分化能を改善する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法;
(2)ES細胞の分化能を改善する方法であって、(1)記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法;
(3)(1)または(2)記載の方法により得られる、分化能が改善されたES細胞;
(4)ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法;
(5)ES細胞のキメラ動物への寄与率を改善する方法であって、(4)記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法;
(6)(4)または(5)記載の方法により得られる、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞;
(7)ES細胞の遺伝子発現を正常化する方法であって、ES細胞をドナー細胞として核移植を行い、作出したクローン胚からES細胞を再樹立することを特徴とする方法;
(8)ES細胞の遺伝子発現を正常化する方法であって、(7)記載の方法を数回繰り返すことを特徴とする方法;
(9)(7)または(8)記載の方法により得られる、遺伝子発現が正常化されたES細胞。

発明の効果

0009

本発明によれば、分化能が低下したES細胞の分化能を、簡便かつ確実に改善することができる。さらに本発明によれば、ES細胞のキメラ動物への寄与率の改善、ならびにES細胞の遺伝子発現の正常化も、簡便かつ確実に行うことができる。

発明を実施するための最良の形態

0010

本発明に用いるES細胞はいかなるES細胞であってもよい。すなわち、いかなる動物由来するものであってもよく、例えば、ほ乳類由来のものであってもよい。ほ乳類由来のES細胞としては、マウスラットハムスターモルモットのごとき齧歯類由来のもの、ウシウマヒツジヤギブタ等の有蹄類由来のもの、イヌネコウサギなどの他のほ乳類由来のもの、ならびに、霊長類由来のものが挙げられる。また本発明に用いるES細胞の取得手段・経路も限定されない。ES細胞としては受精した初期胚から得られたものが一般的であるが、単為発生的あるいは雄性発生的に得られたものであってもよい。多くのES細胞株が商業的に入手可能であり、例えば、C57BL/6系とCBA系マウスとの交雑系マウスから樹立されたES細胞などがある。

0011

これらのES細胞の分化能が何らかの原因で低下した場合、あるいは分化能が本来的に低い場合に、本発明の方法を適用することができる。

0012

本発明の方法において、先ず、ES細胞をドナー細胞として核移植を行う。ES細胞の核移植の方法は当該分野において公知であり、例えば、G1期あるいはG2/M期のES細胞を未受精卵電気融合する方法、ES細胞の核を直接未受精卵に注入する方法、あるいは未受精卵を活性化した直後に核を移植する方法などが知られている。特に、ES細胞核の導入には体細胞核移植法(SCNT法)(Wakayama, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 96, 14984-14989 (1999); Wakayama, T. et al. Nature 394, 369-374 (1998))が好ましく用いられる。核移植は通常、顕微鏡下でマニピュレーターを用いて行う。

0013

核移植のレシピエントとして使用される細胞としては、一般的には除核した未受精卵母細胞が用いられるが、除核した他の細胞、例えば、除核したES細胞、除核したEG細胞、除核した胚細胞などであってもよい。除核した卵母細胞をレシピエントとして用いる場合には、中期II段階のものが好ましく用いられる。レシピエント細胞の除核方法も種々の方法が公知であり、例えば、核をピペット吸引する方法、透明帯スリットを入れ、卵子を押すことでスリットから核を吐き出させる方法、遠心処理デメコルチン(Demecortine)などの薬品処理によって核を卵子から分離する方法などが知られている。除核および核移植は、通常、顕微鏡下でマニピュレーターを用いて行う。その際、ピエゾドライブを併用すると作業効率が向上するので好ましい。

0014

本発明において核移植して得られたクローン胚からのES細胞の再樹立法も公知のものを用いることができる。一般的には、核移植により得られたを培養してクローン化胚盤胞を得て、その内部細胞塊を分離してフィーダー細胞上で培養することにより、ES細胞を再樹立することができる。また、胚盤胞を直接フィーダー細胞上で培養することによりES細胞を再樹立してもよい。本発明の方法におけるES細胞の再樹立に使用する培地組成や培養条件は、当業者が適宜選択できるものである。

0015

本発明の方法を複数回繰り返して行ってもよい。すなわち、本発明の方法により再樹立されたES細胞から核を得て、これをレシピエント細胞に移植し、得られたクローン胚からES細胞を再樹立する。かかる操作を複数回繰り返す。本発明の方法を繰り返し適用しても元のES細胞の特徴は失われにくく、細胞の性質の変化も起こりにくい。繰り返し回数には特に制限はないが、操作に要する時間や労力を考慮すると数回が適当であり、1〜3回でも十分な効果が得られる。ここで、数回とは1回ないし9回程度を意味する。本発明の方法を繰り返すことにより、ES細胞の分化能がさらに改善される。また、本発明の方法を適用すると、ES細胞のキメラマウスへの寄与率も改善される。本発明の方法を繰り返すことにより、ES細胞の遺伝子発現も正常化される。

0016

本発明の方法によりES細胞の分化能が改善されるが、それは核移植されたES細胞核が再プログラムされることにより、例えば、DNAのメチル化等の異常が抑えられて、遺伝子発現が正常化されることにより、分化能が改善され、あるいはキメラ動物を作成した場合に寄与率が改善されると考えられる。このことから、本発明の方法を用いると、ES細胞の分化能の改善、キメラ動物への寄与率の改善のみならず、ES細胞の生存率細胞分裂能、増殖能なども回復あるいは改善されうると考えられる。

0017

さらに本発明は、上で説明した本発明の方法を用いて得られる、分化能が改善されたES細胞、キメラ動物への寄与率が改善されたES細胞、および遺伝子発現が正常化されたES細胞も提供する。これらのES細胞においては、生存率、細胞分裂能、増殖能なども回復あるいは改善されうる。したがって、かかるES細胞を用いることにより、研究の進捗や再生医療の進歩を図ることができる。

0018

以下に実施例を示して本発明をさらに具体的かつ詳細に説明するが、実施例はあくまでも例示説明であり、本発明を限定するものではない。

0019

A.材料および実験方法
単為発生胚の作成
中期II紡錘体核体を129/Sv卵母細胞から取り、C57BL/6−GFPTgマウスの卵母細胞の卵黄周囲に挿入した。次いで、交流電流(20V/cm,2MHz,2s)および直流電流(130V/cm,10μs)にて電気融合させた。SrCl2にて単為発生的に活性化させ、2つのさらなる極体を産生する再構築された卵子をCZB培地にて4日間培養して胚盤胞にまで成長させた。

0020

核移植およびES細胞の誘導
SCNT法(Wakayama, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 96, 14984-14989 (1999); Wakayama, T. et al. Nature 394, 369-374 (1998))にて核移植を行った。具体的には、最初に卵子の透明帯をピエゾ切り、そのまま同じピペットで卵子の核を吸い取る。次にピペットをドナー細胞のサイズに合わせて変え、ピペット内へドナー細胞の膜を壊して核を吸い込む。このときもピエゾを作用させると、容易にドナー細胞の細胞膜が破ける。そして除核した卵子へ、同様にピエゾで透明帯と細胞膜を破ってドナー核を注入する。核移植された卵子は、そのまま30分から数時間培養したあと、塩化ストロンチウムで活性化する。このとき卵子内の核は、数時間待った影響で凝縮分裂中期のようになっている。このままでは卵子を活性化したとき、その染色体の一部が2極体として放出されてしまう。そこでその偽第2極体の放出を押さえるために、サイトカラシンも同時に加える。活性化後、2〜3個の偽前核が出来、そのまま培養すると受精卵のように核の融合が起こり、発生が継続される。活性化した卵子は4日間体外培養した。胚盤胞段階に達したクローン胚を用いて、文献(Wakayama et al., Science 292;740-743, 2001)に記載の方法にて核移植ES細胞株を樹立した。ES細胞の誘導には、産生タイロード(AT)溶液を用いて透明帯を取り、0.1mg/mLの副腎皮質刺激ホルモンACTHフラグメント1−24)を添加したES細胞培地(Wakayama, S. et al. J Reprod Dev 51, 765-772 (2005))中のマウス胚フィーダー細胞上に胚盤胞を外植した(Ogawa, K. et al. Genes Cells 9, 471-477 (2004)記載の方法参照)。樹立されたすべての核移植ES細胞株について、アルカリ性ホスファターゼ活性(生殖細胞マーカー)および胚様体形成能全能性証拠)に関して試験した。

0021

胚盤胞注入およびFACS分析
文献(Wakayama, T. et al. Science 292, 740-743 (2001); Wakayama, S. et al. Proc Natl Acad Sci U S A 102, 29-33 (2005))に記載の方法にて胚盤胞注入を行った。FACSariaセルソーター(ベクトデッキソンBiosciences製)を用いてキメラマウスに対するES細胞の寄与率を分析した。交接後18.5日目および19.5日目のキメラ胚を切り出し、トリプシン処理した細胞を血清含有培地に添加し、800rpmの遠心分離にて集めた。集めた細胞を培地に再懸濁し、GFP陽性および陰性細胞数をFACSariaセルソーターにて計数した。各細胞タイプ(陽性および陰性)を別個チューブに集めた。7−ADD染色により生存していない細胞を除去した。

0022

インビトロ分化
文献(Watanabe, K. et al. Nat Neurosci 8, 288-296 (2005); Nishikawa, S. I. et al. Development 125, 1747-1757 (1988))に記載の方法にて神経細胞および中胚葉へのES細胞の分化を誘導した。神経細胞の分化には、細胞を神経マーカーにて染色し、コロニー数を計数した。中胚葉細胞分化は、FACSariaにより細胞をソーティングすることにより分析した。

0023

B.実験結果
単為発生ES(pES)細胞株の樹立
近親交配による近交退化あるいはF2バックグラウンドによる遺伝学バランス不良を回避するのみならず、pES細胞中にGFPマーカーを導入して、クローニング成功率を向上させるF1遺伝学的バックグラウンドを生じさせるために、C57BL/6−GFP Tg(Okabe, M. et al. FEBSLett. 407, 313-319 (1997))および129/Sv雌性マウスに由来する雌性生殖的に再構築された卵子からpES細胞株を樹立した(Wakayama and Yanagimachi Biol Reprod, 59, 100-104(1998); Wakayama et al., Science 292, 740-743 (2001))。単為発生的に活性化された胚を胚盤胞に成長させ、胚盤胞をES細胞樹立培地(Ogawa, K. et al. Genes Cells 9, 471-477 (2004))に撒いた。約1ヶ月後、胚盤胞から4つのES細胞株(67%)が樹立された。これらをPG1−1〜PG1−4と命名した。

0024

pES細胞の核移植
上記のごとく新たに樹立されたpES細胞の核を、除核したB6D2F1卵母細胞中にSCNT法により移植した。得られたクローン化胚盤胞を、新たなES細胞の誘導に使用した(Wakayama, T. et al. Science 292, 740-743 (2001))。その結果、合計18の第2世代の核移植pES(NT−pES)細胞株(82%)が得られた。これらをPG2−1〜PG2−18と命名した。このプロセスを繰り返して、第2世代のNT−pES細胞核由来のクローン化胚盤胞から、9つの第3世代のNT−pES細胞株(82%)を得た。これらをPG3−1〜PG3−9と命名した。pES細胞株およびNT−pES細胞株の樹立結果を表1に示す。

0025

樹立されたpES細胞株細胞株およびNT−pES細胞株の性質
樹立されたすべてのpES細胞株およびNT−pES細胞株はアルカリ性ホスファターゼ活性、Oct3/4、Nanog、SSEA−1(ES細胞マーカー)が陽性であり、SSEA−3およびSSEA−4が陰性であった。さらにこれらの細胞株は胚様体(分化全能性の証拠)を形成した。

0026

5つの細胞株(PG1−1、PG2−1、PG3−1〜PG3−3)に関して、ギムザ染色およびSKY−FISHペインティングにより核型を調べたところ、第3世代においてさえも正常な核型が維持されていることがわかった(細胞の57〜67%)。顕微鏡観察によってもpES細胞とNT−pES細胞との間に相違は認められなかった。

0027

pES細胞株およびNT−pES細胞株のインビボにおける分化能、ならびにキメラマウスにおける寄与率
ICRまたはB6D2F2胚盤胞の胚盤腔への細胞注入により得られたキメラマウスにおけるpES細胞株およびNT−pES細胞株の分化能を調べた。交接19.5日後にキメラ子孫マウスを集め、蛍光顕微鏡下でGFP発現を調べることにより、pES細胞株およびNT−pES細胞株の寄与率を検討した。キメラマウスの出生率は、本発明の方法を繰り返すにつれ増加した(48%から78%、表2)。この実験において、pES細胞の寄与率は非常に低く、皮膚においてGFPを高発現するマウスはたった2匹(18%)しか生まれなかった。それらは翌日に母親に食殺された。NT−pES細胞株を用いた場合、GFP発現により調べたところ、細胞株によらず60%以上のキメラマウスが高い寄与を示した。




生後まもなく食殺されたので、正確には評価できなかった。
**生まれた翌日に食殺されたものを含む。
***寄与は、高い(皮膚の大部分においてGFPが発現)あるいは低い(低発現または部分的発現)で評価した。

0028

pES細胞株およびNT−pES細胞株のインビボにおける分化能
インビトロにおけるpES細胞株およびNT−pES細胞株の神経細胞および中胚葉細胞への分化能を調べた。抗−ネスチン、抗−TuJ、および抗−TH抗体を、神経細胞のそれぞれ初期、中期、および終期分化マーカーとして使用した(Watanabe, K. et al. Nat Neurosci 8, 288-296 (2005))。すべてのコロニー中の陽性コロニーの数とパーセンテージを計算した。分化開始から7日目のpES細胞株およびNT−pES細胞株の初期の分化は受精ES細胞のそれと同様であった(図1a)。しかしながら、分化開始から7日目および10日目のpES細胞株およびNT−pES細胞株の分化は、対照ES細胞よりも程度が低かった(図1b)。分化開始から7日目の終期分化も対照ES細胞よりも程度が低かったが、さらに3日後にはNT−pES細胞の分化はpES細胞よりも有意に増加した(PG1:23.4%、PG2:53.5%、PG3:54.8%、図1c)。TuJ陽性コロニー中のTH陽性細胞のコロニー数をカウントしたところ、NT−pES細胞のTH陽性割合は対照ES細胞のそれとほとんど同じであった(図1d)。次に、PDGFR−aおよびFLK1/KDRを中胚葉マーカーとして用いて(Nishikawa, S. I. et al. Development 125, 1747-1757 (1998))、分化開始から4日目にFACSにより分化割合を調べた(図2)。その結果、中胚葉への分化割合は、pES細胞よりもNT−pES細胞において増加しており、NT−pES細胞の分化能が改善されていた。

0029

以上の結果より、単為発生ES細胞はインビボおよびインビトロにおいてES細胞よりも低い分化能を有するが、本発明の方法により、すなわち核移植およびNT−pES細胞の樹立により、その分化能を改善しうることが示された。

0030

U2af1−rs1プロモーター領域のDNAメチル
HpaII消化を用いるサザンブロットにより、上で得られたpES細胞株およびNT−pES細胞株のU2af1−rs1プロモーター領域のDNAメチル化を調べた。結果を図3に示す。この領域は母性アリール上で高メチル化されるので、対照ES細胞(E14TG2a細胞)では2本のバンド(母性アリール由来の未消化バンドおよび父性アリール由来の消化バンド)が検出された。pES細胞では1本のバンド(母性アリール由来未消化バンド)が検出された。しかしながら、すべてのNT−pES細胞株では2本のバンドが検出され、本発明の方法による核移植で父性アリールが脱メチル化されたことが示唆された。

0031

まとめ
本発明の方法により、ES細胞の分化能を改善することができた。この分化能の改善は1回の核移植でも確認された。本発明の方法を繰り返して適用することにより、分化能をさらに改善することができた。本発明の方法により、ES細胞のキメラマウスへの寄与率も改善された。また、繰り返して本発明の方法を適用しても、細胞の性質に著しい変化はみられなかった。

0032

本発明は、ES細胞を用いる各種の研究分野において利用可能であり、再生医療の分野においても利用可能である。

図面の簡単な説明

0033

図1は、インビトロにおけるpES細胞株(PG1)およびNT−pES細胞株(PG2、PG3)の神経細胞および中胚葉細胞への分化能を示す図である。抗−ネスチン、抗−TuJ、および抗−TH抗体を、神経細胞のそれぞれ初期、中期、および終期分化マーカーとして使用した。すべてのコロニー中の陽性コロニーの数とパーセンテージを計算した。(a)は抗−ネスチン抗体陽性コロニーの割合、(b)は抗−TuJ抗体陽性コロニーの割合、(c)は抗−TH抗体陽性コロニーの割合、(d)は抗−TuJ抗体陽性かつ抗−TH抗体陽性コロニーの割合を示す。対照ES細胞は129B6細胞(当研究室において作出)であった。
図2は、対照細胞(E14TG2a(西川研究室(理研CDB)より分与))、pES細胞(PG1−1)およびNT−pES細胞(PG3−1)の分化割合をFACSにより調べた結果を示す図である。
図3は、HpaII消化を用いるサザンブロットにより、上で得られたpES細胞株およびNT−pES細胞株のU2af1−rs1プロモーター領域のDNAメチル化を調べた結果示すサザンブロットである。

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