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技術 内燃機関の自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関

出願人 トヨタ自動車株式会社株式会社デンソー
発明者 高橋茂規
出願日 2006年2月28日 (14年8ヶ月経過) 出願番号 2006-052672
公開日 2007年9月13日 (13年2ヶ月経過) 公開番号 2007-231786
状態 特許登録済
技術分野 点火時期の電気的制御 人力操作始動装置、始動装置細部 機関出力の制御及び特殊形式機関の制御 車両用機関または特定用途機関の制御 内燃機関に供給する空気・燃料の電気的制御 内燃機関の複合的制御 内燃機関の始動装置
主要キーワード 負荷解除 軽減動作 出力低下量 停止確認 圧電素子式 踏み込み解除操作 振動式センサ タイミングプーリー
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

内燃機関自動停止させるに際し、内燃機関停止条件の成立前の運転状況に係わらず、内燃機関が停止するまでに要する時間が著しく長くなることなく且つ適正な位置でピストンを停止させることができる内燃機関の自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関を提供する。

解決手段

アイドリングストップ制御の開始時、エアコンディショナを停止すると共にオルタネータ発電を停止する。これらによるエンジン負荷を予め認識しておき、これらの停止動作と略同時にこのエンジン負荷の大きさに応じた点火プラグ2の遅角量をもって点火タイミングを設定する。これにより、負荷解除に伴いエンジン1の吹け上がりが防止できる。その後、エンジン回転数所定値まで低下した時点で点火カット及び燃料カットを行いエンジン1を停止させる。負荷解除された状態で点火カット及び燃料カットがされることで、ピストン停止位置は常に一定になる。

概要

背景

市街地等を自動車走行する際に交差点信号待ち等で停車すると、エンジンアイドリング運転状態となり、その間、燃料を浪費してしまう。この点に鑑み、従来より、自動車が停車するなど一定の条件が成立した場合には、燃焼室への燃料供給を停止(所謂フューエルカット)してエンジンを停止させる所謂「アイドリングストップ制御」が行われている(例えば下記の特許文献1を参照)。

また、この「アイドリングストップ制御」によってエンジンが停止している状態(以下、この状態をアイドリングストップ状態と呼ぶ)から所定のエンジン始動条件(例えばオートマチックトランスミッション車にあってはブレーキペダル踏み込み解除操作シフトレバーの操作、マニュアルトランスミッション車にあってはクラッチペダル踏み込み操作等)が成立した場合には、スタータ機構を駆動し、その駆動力をエンジンに伝達(所謂クランキング)してエンジンを再始動させるようにしている。

このようにアイドリングストップ状態からエンジンを再始動させる場合、一般には、上記クランキングを行いながら所定の気筒(以下、初曝対象気筒と呼ぶ)に対して燃料供給及び点火プラグ点火動作を行うことにより初曝を行わせることになる。

このようなエンジンの再始動に際し、何れの気筒を初曝対象気筒とするか、また、この初曝対象気筒のアイドリングストップ状態におけるピストン位置ピストン停止位置)が何れの位置にあるかといった条件は、エンジン再始動始動性に大きな影響を与える。

例えば、上記ピストン停止位置が適切な位置でない場合には、この再始動時に大きな振動が発生して運転者や乗員に違和感を与えてしまったり、エンジン始動までに要する時間が長くなって運転者に違和感(所謂、発進のもたつき感)を与えてしまったりする。

以下、この振動の発生原因及びエンジン始動までに要する時間が長くなる原因について説明する。尚、以下では、理解を容易にするために、4気筒のガソリンエンジンであって燃料をポート噴射するものを例に挙げて説明する。

−初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近にある場合−
初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程における下死点付近にある場合(例えば吸入行程においてクランク角ピストン上死点後150°の位置にピストンがある場合)、気筒内の容積が大きくなっているために大量の空気が気筒内には存在している。また、このアイドリングストップ状態では直前までエンジンが駆動していたため、シリンダブロック等からの熱がこの気筒内の空気に伝達され、気筒内の空気は高温になっている。更に、吸入行程にある気筒では吸気バルブ開放しているためエンジン停止と略同時に気筒内圧力大気圧まで上昇することになり、これによっても気筒内の空気量は通常のエンジン駆動時における吸入行程の場合に比べて増大している。つまり、初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程における下死点付近にある場合には、この気筒内には比較的高温で大量の空気が存在している。そして、この気筒が吸入行程において燃料供給された後に圧縮行程移行すると混合気自己着火してしまう可能性があり、この際、大きな振動が発生してしまうことになる。

また、初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程以外(圧縮膨張排気の何れかの行程)における下死点付近にある場合には、吸気バルブが閉鎖しており、また、上記アイドリングストップ制御では気筒内への燃料供給が停止された状態でエンジンが停止しているため、気筒内には燃料が存在していない。このため、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されない状況となっており、その吸入行程の後の圧縮、膨張行程に達しなければ初曝が行えず、エンジン始動までに要する時間が長くなってしまうことになる。

−初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近以外の位置にある場合−
一方、初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近以外の位置にある場合、その気筒が吸入行程以外(圧縮、膨張、排気の何れかの行程)にある際には、上述した場合と同様に、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されない状況となっており、その吸入行程の後の圧縮、膨張行程に達しなければ初曝が行えないことになって、エンジン始動までに要する時間が長くなってしまうことになる。

以上が、上記振動の発生原因やエンジン始動までに要する時間が長くなる原因である。このような状況を回避するためには、アイドリングストップ時のピストン停止位置を適切に設定し、その適切なピストン停止位置にある気筒を初曝対象気筒とすることが必要である。その一例としては、アイドリングストップ時に吸入行程にある気筒のピストン停止位置を上死点付近に設定し、その気筒を初曝対象気筒とすることが挙げられる。

尚、このようなピストン停止位置の設定及び初曝対象気筒の決定は、上述したポート噴射エンジンの場合の例であり、筒内直噴エンジンの場合にはピストンの適切な停止位置及び初曝対象とすべき気筒の選択は上記ポート噴射の場合とは異なる可能性がある。つまり、このようなピストン停止位置としての適正な位置は、エンジンの仕様等によって異なるため、必ずしもアイドリングストップ時に吸入行程にある気筒のピストンが上死点付近にあることが常に好ましいとは限らない(本発明が対象とする最適なピストン停止位置はこれに限定されるものではない)。

ところで、上記アイドリングストップ時のピストン停止位置を適切に設定することは容易ではない。下記の特許文献2や特許文献3ではアイドリングストップ時にクランクシャフトを逆回転させてピストン停止位置を調整することが開示されている。また、特許文献4にはストッパによってピストン停止位置を規制することが開示されている。
特開2002−70699号公報
特開2005−282434号公報
特開2005−315202号公報
特開2002−39038号公報

概要

内燃機関自動停止させるに際し、内燃機関停止条件の成立前の運転状況に係わらず、内燃機関が停止するまでに要する時間が著しく長くなることなく且つ適正な位置でピストンを停止させることができる内燃機関の自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関を提供する。アイドリングストップ制御の開始時、エアコンディショナを停止すると共にオルタネータ発電を停止する。これらによるエンジン負荷を予め認識しておき、これらの停止動作と略同時にこのエンジン負荷の大きさに応じた点火プラグ2の遅角量をもって点火タイミングを設定する。これにより、負荷解除に伴いエンジン1の吹け上がりが防止できる。その後、エンジン回転数所定値まで低下した時点で点火カット及び燃料カットを行いエンジン1を停止させる。負荷解除された状態で点火カット及び燃料カットがされることで、ピストン停止位置は常に一定になる。

目的

本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関を自動停止させるに際し、内燃機関停止条件の成立前の運転状況に係わらず、内燃機関が停止するまでに要する時間が著しく長くなることなく且つ適正な位置でピストンを停止させることができる内燃機関の自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

所定の内燃機関自動停止条件成立した後に、内燃機関の駆動を停止するための内燃機関自動停止制御を行う内燃機関の自動停止装置において、上記内燃機関自動停止条件が成立した際に、内燃機関に作用している負荷解除または所定負荷まで軽減する負荷制御手段と、上記負荷制御手段による負荷の解除動作または負荷の軽減動作が行われる前の内燃機関の負荷の大きさを認識する負荷認識手段と、上記負荷認識手段からの信号を受け、内燃機関自動停止条件が成立した際、内燃機関自動停止条件が成立する前の内燃機関の負荷の大きさと内燃機関自動停止条件が成立した後の内燃機関の負荷の大きさとの差を求め、その差が大きいほど点火栓点火時期の遅角量を大きくするように遅角量を決定し、上記内燃機関自動停止制御の開始前において、負荷制御手段による負荷の解除動作または負荷の軽減動作と略同時に、上記決定した遅角量で点火栓の点火時期を遅角させる点火時期制御手段とを備えていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項2

所定の内燃機関自動停止条件が成立した後に、点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる内燃機関の自動停止装置において、上記内燃機関自動停止条件が成立した際に、内燃機関に作用している負荷を解除する負荷制御手段と、上記負荷制御手段による負荷の解除動作が行われる前の内燃機関の負荷の大きさを認識する負荷認識手段と、上記負荷認識手段からの信号を受け、内燃機関自動停止条件が成立した際、内燃機関自動停止条件が成立する前の内燃機関の負荷の大きさが大きいほど点火栓の点火時期の遅角量を大きくするように遅角量を決定し、負荷制御手段による負荷の解除動作と略同時に、上記決定した遅角量で点火栓の点火時期を遅角させる点火時期制御手段と、上記点火時期制御手段による点火栓の点火時期の遅角動作によって内燃機関の回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる自動停止手段とを備えていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項3

上記請求項2記載の内燃機関の自動停止装置において、自動停止手段は、点火時期制御手段による点火栓の点火時期の遅角動作によって内燃機関の回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で、先ず点火栓の点火動作を停止し、その後、燃料供給の停止を行う構成とされていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項4

上記請求項2または3記載の内燃機関の自動停止装置において、内燃機関は多気筒内燃機関であって、自動停止手段は、内燃機関が停止した際、吸入行程にある気筒ピストンの停止位置が上死点付近となるように点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行う構成とされていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項5

上記請求項2〜4のうち何れか一つに記載の内燃機関の自動停止装置において、所定間隔をもって内燃機関の回転数を検知し、その検知した回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で、自動停止手段が点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うようになっており、点火時期制御手段は、上記所定間隔をもって検知される内燃機関の回転数が自動停止動作開始回転数となることなく、この自動停止動作開始回転数を下回った場合には、点火栓の点火時期を進角させて内燃機関の回転数を上昇させるようになっており、自動停止手段は、この内燃機関の回転数が自動停止動作開始回転数に達した時点で点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる構成となっていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項6

上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の内燃機関の自動停止装置において、点火時期制御手段によって点火栓の点火時期の遅角動作が開始されると同時にスロットルバルブ開度を小さくして吸入空気量を減少させるスロットル制御手段を備えていることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項7

上記請求項1〜6のうち何れか一つに記載の内燃機関の自動停止装置において、内燃機関は、停車中にアイドリングストップ条件が成立した際に自動的に内燃機関を停止させるアイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載されるものであることを特徴とする内燃機関の自動停止装置。

請求項8

上記請求項1〜7のうち何れか一つに記載の内燃機関の自動停止装置を備えた自動車用内燃機関であって、内燃機関が自動停止している状態で内燃機関再始動条件が成立した際、停止状態において吸入行程にある気筒に対して燃料供給を行うと共に、この気筒が膨張行程を迎える際に点火栓の点火動作を開始することにより、この気筒を初曝対象気筒とする構成とされていることを特徴とする自動車用内燃機関。

技術分野

0001

本発明は、内燃機関自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関に係る。特に、本発明は、例えば自動車用内燃機関(以下、エンジンという)のアイドリング運転時にエンジンを自動停止するための自動停止装置において、ピストンの停止位置の適正化を図るための改良に関する。

背景技術

0002

市街地等を自動車走行する際に交差点信号待ち等で停車すると、エンジンがアイドリング運転状態となり、その間、燃料を浪費してしまう。この点に鑑み、従来より、自動車が停車するなど一定の条件が成立した場合には、燃焼室への燃料供給を停止(所謂フューエルカット)してエンジンを停止させる所謂「アイドリングストップ制御」が行われている(例えば下記の特許文献1を参照)。

0003

また、この「アイドリングストップ制御」によってエンジンが停止している状態(以下、この状態をアイドリングストップ状態と呼ぶ)から所定のエンジン始動条件(例えばオートマチックトランスミッション車にあってはブレーキペダル踏み込み解除操作シフトレバーの操作、マニュアルトランスミッション車にあってはクラッチペダル踏み込み操作等)が成立した場合には、スタータ機構を駆動し、その駆動力をエンジンに伝達(所謂クランキング)してエンジンを再始動させるようにしている。

0004

このようにアイドリングストップ状態からエンジンを再始動させる場合、一般には、上記クランキングを行いながら所定の気筒(以下、初曝対象気筒と呼ぶ)に対して燃料供給及び点火プラグ点火動作を行うことにより初曝を行わせることになる。

0005

このようなエンジンの再始動に際し、何れの気筒を初曝対象気筒とするか、また、この初曝対象気筒のアイドリングストップ状態におけるピストン位置ピストン停止位置)が何れの位置にあるかといった条件は、エンジン再始動始動性に大きな影響を与える。

0006

例えば、上記ピストン停止位置が適切な位置でない場合には、この再始動時に大きな振動が発生して運転者や乗員に違和感を与えてしまったり、エンジン始動までに要する時間が長くなって運転者に違和感(所謂、発進のもたつき感)を与えてしまったりする。

0007

以下、この振動の発生原因及びエンジン始動までに要する時間が長くなる原因について説明する。尚、以下では、理解を容易にするために、4気筒のガソリンエンジンであって燃料をポート噴射するものを例に挙げて説明する。

0008

−初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近にある場合−
初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程における下死点付近にある場合(例えば吸入行程においてクランク角でピストン上死点後150°の位置にピストンがある場合)、気筒内の容積が大きくなっているために大量の空気が気筒内には存在している。また、このアイドリングストップ状態では直前までエンジンが駆動していたため、シリンダブロック等からの熱がこの気筒内の空気に伝達され、気筒内の空気は高温になっている。更に、吸入行程にある気筒では吸気バルブ開放しているためエンジン停止と略同時に気筒内圧力大気圧まで上昇することになり、これによっても気筒内の空気量は通常のエンジン駆動時における吸入行程の場合に比べて増大している。つまり、初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程における下死点付近にある場合には、この気筒内には比較的高温で大量の空気が存在している。そして、この気筒が吸入行程において燃料供給された後に圧縮行程移行すると混合気自己着火してしまう可能性があり、この際、大きな振動が発生してしまうことになる。

0009

また、初曝対象気筒のピストン停止位置が吸入行程以外(圧縮膨張排気の何れかの行程)における下死点付近にある場合には、吸気バルブが閉鎖しており、また、上記アイドリングストップ制御では気筒内への燃料供給が停止された状態でエンジンが停止しているため、気筒内には燃料が存在していない。このため、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されない状況となっており、その吸入行程の後の圧縮、膨張行程に達しなければ初曝が行えず、エンジン始動までに要する時間が長くなってしまうことになる。

0010

−初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近以外の位置にある場合−
一方、初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近以外の位置にある場合、その気筒が吸入行程以外(圧縮、膨張、排気の何れかの行程)にある際には、上述した場合と同様に、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されない状況となっており、その吸入行程の後の圧縮、膨張行程に達しなければ初曝が行えないことになって、エンジン始動までに要する時間が長くなってしまうことになる。

0011

以上が、上記振動の発生原因やエンジン始動までに要する時間が長くなる原因である。このような状況を回避するためには、アイドリングストップ時のピストン停止位置を適切に設定し、その適切なピストン停止位置にある気筒を初曝対象気筒とすることが必要である。その一例としては、アイドリングストップ時に吸入行程にある気筒のピストン停止位置を上死点付近に設定し、その気筒を初曝対象気筒とすることが挙げられる。

0012

尚、このようなピストン停止位置の設定及び初曝対象気筒の決定は、上述したポート噴射エンジンの場合の例であり、筒内直噴エンジンの場合にはピストンの適切な停止位置及び初曝対象とすべき気筒の選択は上記ポート噴射の場合とは異なる可能性がある。つまり、このようなピストン停止位置としての適正な位置は、エンジンの仕様等によって異なるため、必ずしもアイドリングストップ時に吸入行程にある気筒のピストンが上死点付近にあることが常に好ましいとは限らない(本発明が対象とする最適なピストン停止位置はこれに限定されるものではない)。

0013

ところで、上記アイドリングストップ時のピストン停止位置を適切に設定することは容易ではない。下記の特許文献2や特許文献3ではアイドリングストップ時にクランクシャフトを逆回転させてピストン停止位置を調整することが開示されている。また、特許文献4にはストッパによってピストン停止位置を規制することが開示されている。
特開2002−70699号公報
特開2005−282434号公報
特開2005−315202号公報
特開2002−39038号公報

発明が解決しようとする課題

0014

しかしながら、上述した特許文献2や特許文献3に開示されているものでは、クランクシャフトの逆回転による悪影響が懸念される。例えばクランクシャフトの逆回転に伴ってカムシャフトも逆回転し、また、補機類逆転駆動されてしまうため、それぞれに作用する負荷が大きくなって各部品寿命を短くしてしまうことが懸念される。また、特許文献4に開示されているものは、ピストン停止位置を調整するための新たな部材としてストッパを組み込む必要があり、部品点数の増大や、エンジン組み立て作業としてこのストッパの取り付け工程が新たに必要になってしまうため実用的でない。

0015

そこで、本願発明の発明者らは、クランクシャフトを逆回転させたりストッパを使用したりすることなく、アイドリングストップ制御によってエンジンが停止すると同時にピストン停止位置が適切な位置に設定される(例えば、吸入行程にある気筒のピストンを上死点付近で停止できる)エンジン制御動作について考察を行い、以下の「ピストン停止位置制御」について開発を進めている。

0016

具体的には、エンジン負荷がある一定値であって、且つエンジン回転数がある一定値である状態ではエンジンの出力エネルギも一定値であるため、この状態から点火プラグの点火動作の解除(以下、点火カットと呼ぶ)及び燃料噴射の停止(以下、フューエルカットと呼ぶ)を行うと、常にある一定の位置でピストンは停止することになる。

0017

この原理を利用し、アイドリングストップ制御の開始時にエンジンに作用している負荷を解除(エアコンディショナ作動停止オルタネータ発電停止等)し、エンジン回転数がある一定値となっている状態(上記負荷が無い状態でのアイドル目標回転数:例えば650rpm)で点火カット及びフューエルカットを実行すると、クランクシャフトの回転や各ピストンの往復動慣性力と、この慣性力を打ち消す方向の反力フリクション等の抵抗力)との関係によって、ある一定の位置でピストンを停止できることを本願発明の発明者らは見出した。

0018

図9は、このピストン停止位置制御におけるエンジン回転数の変化状態を示す図である。この図では、横軸が時間であり、縦軸がエンジン回転数である。このピストン停止位置制御では、上記負荷が解除された状態でのアイドル回転数(上記負荷の作用に伴うアイドルアップ制御がなされていない状態のアイドル回転数:図9における範囲Aの回転数)において点火カット及びフューエルカットを実行する。

0019

図9における線図Iは、上記負荷が作用していない状態でアイドリングストップ条件が成立して点火カット及びフューエルカットが行われた場合のエンジン回転数の変化を示している。この場合、アイドリングストップ条件の成立前にエンジン回転数は上記範囲Aにあるのでアイドリングストップ条件の成立と略同時に点火カット及びフューエルカットが行われ、この点火カット及びフューエルカット後の経過時間αでエンジンが停止することになる。

0020

このように、負荷が作用していない状態で点火カット及びフューエルカットを行えば、常に経過時間αでエンジンが停止することになるため、この時間αが経過した時点でのピストン停止位置が適切な位置となるように(例えば、吸入行程にある気筒のピストンが上死点付近となるように)点火カット及びフューエルカットを行えば、アイドリングストップ時のピストン停止位置を常に適切に設定することが可能になる。

0021

しかしながら、実際のエンジンの運転状態では、エアコンディショナが作動されるなど比較的高い負荷が作用している場合が多く、この状況でアイドリングストップ条件が成立して負荷を解除した場合、この負荷解除に伴ってエンジン回転数が急激に上昇してしまう(エンジンの吹け上がりが発生してしまう)可能性がある。

0022

図9における線図IIは、上記負荷が作用してアイドルアップ制御がなされている状態でアイドリングストップ条件が成立し、負荷が解除されたためにエンジン回転数が急上昇する場合を示している。このような状況では、エンジン回転数が急上昇した後に、アイドル回転数のフィードバック制御によりエンジン回転数が目標アイドル回転数まで低下され(負荷の作用に伴うアイドルアップ制御がなされていない状態のアイドル回転数(図9における回転範囲Aの回転数)まで低下され)、アイドル回転数が回転範囲Aに達した時点で点火カット及びフューエルカットが行われることになる。この線図IIからも明らかなように、エンジン回転数が急上昇した後のアイドリングストップ制御では、単位時間当たりのエンジン回転数の下降量が著しく大きくなり、点火カット及びフューエルカットが行われた後に短時間のうちに(図中の時間βで)エンジンが停止してしまう可能性がある。このため、上記線図Iの場合に対して、アイドリングストップ時のピストン停止位置にずれが生じてしまい、このピストン停止位置を適切に設定することができなくなる。また、エンジン回転数が急上昇した後にこのエンジン回転数が所定の範囲Aに達するまでは点火カット及びフューエルカットが行われないため、アイドリングストップ条件が成立してからエンジンが停止するまでに要する時間(図中の時間γ)が長くなってしまう可能性がある。

0023

尚、以上説明したエンジンの自動停止動作はアイドリングストップ制御によってエンジンを自動停止させる場合について説明したが、エンジンと走行用電動モータとを搭載しこれらのうち片側の駆動力または両方の駆動力により走行する所謂ハイブリッド車において、走行中にエンジンを自動停止させる場合(走行用電動モータの駆動力のみによる走行を開始する際や回生運転開始時)にも同様の課題が生じる可能性がある。つまり、上述した「ピストン停止位置制御」をハイブリッド車の走行中におけるエンジン自動停止制御に利用する場合、ピストン停止位置を適正にするべく、エンジン停止条件の成立と同時に発電等の負荷を解除することになるが、これに伴ってエンジン回転数が急激に上昇し(エンジンが吹け上がり)、上記の場合と同様にピストン停止位置にずれが生じてしまったりエンジンが停止するまでに要する時間が長くなってしまったりする可能性がある。

0024

本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関を自動停止させるに際し、内燃機関停止条件の成立前の運転状況に係わらず、内燃機関が停止するまでに要する時間が著しく長くなることなく且つ適正な位置でピストンを停止させることができる内燃機関の自動停止装置及びこの自動停止装置を備えた自動車用内燃機関を提供することにある。

課題を解決するための手段

0025

−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、内燃機関に作用する負荷(例えば電気的な負荷)を解除した後に内燃機関の停止動作を行わせることによってピストン停止位置を適切に設定するに際し、上記負荷を解除した際に点火栓点火タイミング遅角させ、且つこの遅角量を適切に設定することで内燃機関の吹け上がりを抑制し、これによって短時間で正確な位置にピストンを停止させることを可能にしている。

0026

−解決手段−
具体的に、本発明は、所定の内燃機関自動停止条件が成立した後に、内燃機関の駆動を停止するための内燃機関自動停止制御を行う内燃機関の自動停止装置を前提とする。この内燃機関の自動停止装置に対し、負荷制御手段、負荷認識手段、点火時期制御手段を備えさせている。負荷制御手段は、上記内燃機関自動停止条件が成立した際に、内燃機関に作用している負荷を解除または所定負荷まで軽減するものである。負荷認識手段は、上記負荷制御手段による負荷の解除動作または負荷の軽減動作が行われる前の内燃機関の負荷の大きさを認識する。点火時期制御手段は、上記負荷認識手段からの信号を受け、内燃機関自動停止条件が成立した際、内燃機関自動停止条件が成立する前の内燃機関の負荷の大きさと内燃機関自動停止条件が成立した後の内燃機関の負荷の大きさとの差を求め、その差が大きいほど点火栓の点火時期の遅角量を大きくするように遅角量を決定し、上記内燃機関自動停止制御の開始前において、負荷制御手段による負荷の解除動作または負荷の軽減動作と略同時に、上記決定した遅角量で点火栓の点火時期を遅角させる。

0027

また、上記目的を達成するための他の解決手段としては以下の構成も挙げられる。先ず、所定の内燃機関自動停止条件が成立した後に、点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる内燃機関の自動停止装置を前提とする。この内燃機関の自動停止装置に対し、負荷制御手段、負荷認識手段、点火時期制御手段、自動停止手段を備えさせている。負荷制御手段は、上記内燃機関自動停止条件が成立した際に、内燃機関に作用している負荷を解除する。負荷認識手段は、上記負荷制御手段による負荷の解除動作が行われる前の内燃機関の負荷の大きさを認識する。点火時期制御手段は、上記負荷認識手段からの信号を受け、内燃機関自動停止条件が成立した際、内燃機関自動停止条件が成立する前の内燃機関の負荷の大きさが大きいほど点火栓の点火時期の遅角量を大きくするように遅角量を決定し、負荷制御手段による負荷の解除動作と略同時に、上記決定した遅角量で点火栓の点火時期を遅角させる。自動停止手段は、上記点火時期制御手段による点火栓の点火時期の遅角動作によって内燃機関の回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる。

0028

上述した如く、内燃機関の負荷がある一定値であって、且つエンジン回転数がある一定値である状態から点火栓の点火動作の停止や燃料供給の停止を行うと、常にある一定の位置でピストンは停止することになり、内燃機関の始動性を良好にする適切な位置でピストンを停止させることが可能である。この場合、単に内燃機関に作用している負荷を解除または軽減するだけでは、それに伴って内燃機関の回転数が急激に上昇してしまい、ピストン停止位置にずれが生じてしまったり内燃機関が停止するまでに要する時間が長くなってしまったりする。このため、本解決手段では、内燃機関に作用している負荷の解除または軽減と略同時に点火栓の点火時期を遅角させることで内燃機関の出力を低下させている。また、その点火時期の遅角量は、内燃機関に作用している負荷が軽減される量に見合った量とされている。つまり、内燃機関の負荷が大幅に軽減される場合にはその分だけ内燃機関の回転数の急上昇割合も大きくなる傾向があるため、この場合には点火時期の遅角量も大きく設定する。このようにして遅角量を設定することにより、負荷の軽減分に適した内燃機関の出力低下量が得られることになり、上記負荷が解除または軽減された場合でも内燃機関の回転数の変化は抑制される。つまり、内燃機関の回転数を安定させた状態のまま内燃機関の自動停止動作に移行することができ、短時間で適切なピストン停止位置で内燃機関を停止させることが可能となる。

0029

また、上述したように、内燃機関の回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うことにより内燃機関を停止させる場合におけるより具体的な構成としては以下のものが挙げられる。つまり、点火時期制御手段による点火栓の点火時期の遅角動作によって内燃機関の回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点では、上記自動停止手段が、先ず点火栓の点火動作を停止し、その後、燃料供給の停止を行う構成としている。

0030

このように、内燃機関の自動停止動作において、燃料供給の停止を行う前段階で点火栓の点火動作を停止させておけば、内燃機関の自動停止動作が開始された後に筒内に残存する混合気が燃焼する(膨張行程を実行する)気筒は存在しなくなる。このため、内燃機関の停止時におけるピストン停止位置を高い精度で適切な位置に設定することが可能になり、再始動時の良好な始動性を行うための信頼性が向上する。

0031

また、内燃機関を多気筒内燃機関とし、内燃機関が停止した際、吸入行程にある気筒のピストン停止位置が上死点付近となるように、自動停止手段が点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行う構成としている。

0032

この構成は、特に、燃料噴射弁吸入ポートに備えられるポート噴射タイプの内燃機関に有効な構成である。つまり、上述した如く、初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近にある場合には、気筒内に比較的高温で大量の空気が存在しており、混合気が自己着火して大きな振動が発生してしまう可能性がある。また、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されないため、内燃機関の始動までに要する時間が長くなってしまう。また、初曝対象気筒のピストン停止位置が下死点付近以外の位置にある場合であって、その気筒が吸入行程以外(圧縮、膨張、排気の何れかの行程)にある際にも、上述した場合と同様に、次回の吸入行程を迎えるまで気筒内に燃料が供給されないため、内燃機関の始動までに要する時間が長くなってしまう。従って、吸入行程にある気筒のピストン停止位置が上死点付近となるように内燃機関を停止させ、その気筒を初曝対象気筒とすれば、再始動の開始と略同時に気筒内に燃料を供給でき、その直後の圧縮行程及び膨張行程で初曝を完了させることができる。このため、混合気の自己着火による振動の発生を回避しながらも極めて短時間で内燃機関を始動させることが可能になる。

0033

また、所定間隔(例えば所定クランク角回転毎または所定時間毎)をもって内燃機関の回転数を検知し、その検知した回転数が所定の自動停止動作開始回転数に達した時点で、自動停止手段が点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うようにした場合においては、上記所定間隔をもって検知される内燃機関の回転数が上記自動停止動作開始回転数となることなく、この自動停止動作開始回転数を下回った場合には、点火時期制御手段が、点火栓の点火時期を進角させて内燃機関の回転数を上昇させるようにする。そして、この内燃機関の回転数が自動停止動作開始回転数に達した時点で自動停止手段が点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うようにする。

0034

この構成は、例えば内燃機関の回転速度の変動を考慮し、各気筒の膨張行程において最も回転速度が高くなるタイミングで内燃機関の回転数を検知しながら、この回転数が自動停止動作開始回転数に達したか否かを判断し、この回転数に達すると点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行うようにする場合に適用される。この場合、内燃機関の回転速度が急変した場合には、検知される内燃機関の回転数が自動停止動作開始回転数となることなしにこの自動停止動作開始回転数を下回ってしまう可能性があり、点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止による内燃機関の自動停止動作に移行できなくなる可能性がある。このため、本解決手段では、このような状況では、点火栓の点火時期を進角させて内燃機関の回転数を上昇させ、その回転数が自動停止動作開始回転数に達した時点で自動停止手段が点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止を行って確実に内燃機関の自動停止動作に移行させることができるようにしている。

0035

上記自動停止装置のより具体的な構成として、上記点火時期制御手段によって点火栓の点火時期の遅角動作が開始されると同時にスロットルバルブ開度を小さくして吸入空気量を減少させるスロットル制御手段を備えさせることが挙げられる。このように点火時期の遅角動作と共に吸入空気量の減少動作を行えば、内燃機関の回転数を速やかに上記自動停止動作開始回転数まで低下させることが可能となり、内燃機関自動停止条件が成立してから内燃機関自動停止制御(点火栓の点火動作の停止及び燃料供給の停止)を開始するまでの時間の短縮化を図ることができ、よりいっそう短時間で適切なピストン停止位置で内燃機関を停止させることが可能となる。

0036

上述した各解決手段に係る内燃機関の自動停止装置の適用形態として具体的には、アイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載された内燃機関を自動停止させるものとして適用することが掲げられる。つまり、停車中にアイドリングストップ条件が成立した際に自動的に内燃機関を停止させるアイドリングストップ制御動作を行う自動車に搭載されるものである。

0037

また、上述した各解決手段のうち何れか一つに記載の自動停止装置を備え、内燃機関再始動条件が成立した際に始動動作を行う自動車用内燃機関も本発明の技術的思想範疇である。つまり、内燃機関が自動停止している状態で内燃機関再始動条件が成立した際、停止状態において吸入行程にある気筒に対して燃料供給を行うと共に、この気筒が膨張行程を迎える際に点火栓の点火動作を開始することにより、この気筒を初曝対象気筒とする構成とされた自動車用内燃機関である。

発明の効果

0038

本発明では、内燃機関自動停止条件が成立した際に、内燃機関に作用する負荷(電気的な負荷等)を解除し、その後に内燃機関の停止動作を行わせることによってピストン停止位置を適切に設定するようにしたものに対し、上記負荷を解除した際に点火栓の点火タイミング遅角させ、且つこの遅角量を適切に設定することで内燃機関の吹け上がりを抑制している。このため、内燃機関の回転数を安定させた状態のまま内燃機関の自動停止動作に移行することができ、短時間で適切なピストン停止位置で内燃機関を停止させることが可能となり、内燃機関の再始動時に大きな振動が発生することなく且つ短時間で再始動を完了することができる。

発明を実施するための最良の形態

0039

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明を自動車に搭載された多気筒(例えば4気筒)ガソリンエンジンに適用した場合について説明する。

0040

−エンジンの構成説明−
先ず、図1を参照して、本実施形態に係るエンジン(内燃機関)の概略構成について説明する。この図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、4気筒分図1では1気筒分のみを示す)のシリンダボア11aを有するシリンダブロック11と、シリンダヘッド12とを備えている。各シリンダボア11a内には上下動可能に設けられたピストン13が備えられ、このピストン13が、コンロッドコネクティングロッド)14を介してエンジン1の出力軸であるクランクシャフト15に連結されている。そして、シリンダボア11aの内部において、ピストン13とシリンダヘッド12とにより囲まれた空間によって燃焼室16が区画形成されている。

0041

シリンダヘッド12には、各燃焼室16に対応して点火プラグ(点火栓)2が取り付けられている。また、シリンダヘッド12には、各燃焼室16に通じる吸気ポート12a及び排気ポート12bがそれぞれ設けられ、これら吸気ポート12a及び排気ポート12bには、吸気通路3及び排気通路4がそれぞれ接続されている。吸気ポート12a及び排気ポート12bの燃焼室16に通じる各開口端には、吸気バルブ31及び排気バルブ41がそれぞれ設けられている。吸気バルブ31及び排気バルブ41は、クランクシャフト15の動力によってそれぞれ回転する吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42によって開閉される。クランクシャフト15の動力は、タイミングベルト15a及び各タイミングプーリー33,43を介して、上記吸気カムシャフト32及び排気カムシャフト42に伝達されている。

0042

また、上記吸気ポート12aの近傍には、各気筒に対応して燃料噴射弁(インジェクタ)5がそれぞれ備えられている。各インジェクタ5には燃料供給系を介して所定圧力の燃料が供給されている。

0043

一方、吸気通路3にはサージタンク34が設けられ、このサージタンク34の上流側には、アクセルペダル35の操作に応じて駆動するスロットルモータ36aにより開閉されるスロットルバルブ36が設けられている。このスロットルバルブ36の開度に応じて吸気通路3へ導入される吸入空気量が調整されるようになっている。更に、このスロットルバルブ36の上流側には、吸入空気を浄化するためのエアクリーナ37が設けられている。

0044

エンジン1の運転が開始されると、吸気通路3内への吸入空気の導入とともにインジェクタ5から燃料が噴射されることにより、それら吸入空気と燃料とが混合されて混合気となる。そして、エンジン1の吸入行程において、吸気バルブ31により吸気ポート12aが開かれることにより混合気が吸気ポート12aを通じて燃焼室16に取り込まれる。この燃焼室16に取り込まれた混合気は、圧縮行程において圧縮された後、点火プラグ2によって着火され、その混合気が爆発・燃焼してクランクシャフト15に駆動力が付与される(膨張行程)。燃焼後の排気ガスは、排気バルブ41により排気ポート12bが開かれることによって排気通路4に排出され(排気行程)、更に触媒44を経て浄化された後、外部に放出される。なお、上記点火プラグ2は、イグナイタ21から出力される高電圧印加タイミングに応じて混合気への点火動作を実行している。

0045

また、図2(エンジンの概略構成を示す平面図)に示すように、クランクシャフト15の一端に取り付けられているリングギヤ17には、エンジン1の始動時に起動するスタータ8が連繋されている。このスタータ8は、スタータモータ81と、このスタータモータ81の駆動軸に取り付けられたピニオンギヤ82とを備えている。そして、このピニオンギヤ82がリングギヤ17に噛み合いながらスタータモータ81が回転駆動することによって、このスタータモータ81の駆動力がリングギヤ17を介してクランクシャフト15に伝達されてエンジン1のクランキングが行われるようになっている。

0046

一方、クランクシャフト15の他端に取り付けられているクランクシャフトプーリに対し、伝動ベルト9を介してオルタネータ91及びエアコンディショナのコンプレッサ92が動力伝達可能に連繋されている。これにより、エンジン1の駆動に伴ってオルタネータ91の発電動作やエアコンディショナの作動による車室内の空調が行えるようになっている。

0047

上記オルタネータ91は、クランクシャフト15の回転力を受けて発電するようになっている。具体的にはオルタネータ駆動回路により発電量が制御される。後述するエンジンECU6は、オルタネータ駆動回路に発電指令信号(出力要求信号)を発信する。オルタネータ駆動回路は、レギュレータコントローラとを備えている。

0048

オルタネータ91は、ダイオード整流器と、ステータと、クランクシャフト15の回転力を受けて回転するロータコイルとを備え、ロータコイルに励磁電流印加されると、ロータコイルが磁束を発生しつつ回転し、それによりステータに三相交流誘起される。このステータで発生した三相交流は、ダイオード整流器によって直流に変換されてオルタネータ91から出力される。そして、このオルタネータ91から出力された直流電圧が、バッテリ100に充電されるようになっている。

0049

上記レギュレータは、バッテリ100とロータコイルとの電気的な通電/非通電とを切り換えスイッチングトランジスタと、このスイッチングトランジスタをオンオフ駆動するトランジスタ駆動回路とから構成される。

0050

上記コントローラは、トランジスタ駆動回路と電気配線を介して接続され、トランジスタ駆動回路へ駆動信号を送信することにより、スイッチングトランジスタのオン/オフを制御する。その際、コントローラは、オルタネータ91から出力される電圧センシングし、その出力電圧を所望の電圧とすべく、レギュレータを制御してロータコイルの励磁電流を調節する。これにより発電電圧可変に制御される。

0051

エンジンECU6からオルタネータ駆動回路へは、「発電Hi」指令、「発電Lo」指令、「発電カット」指令、のいずれかが出力される。「発電Hi」指令は、オルタネータ91による発電量を最大にすべく、たとえば発電電圧が14.8Vになるような指令である。「発電Lo」指令は、たとえば所定時間内におけるバッテリ100への電流収支が±0(A)になるような指令である。すなわち、「発電Lo」指令は、必要最低限の電力のみをオルタネータ91に発電させる指令である。「発電カット」指令は、オルタネータ91による発電を行わない指令である。具体的には、バッテリ100における蓄電電圧値(通常は12V)よりも低い値の発電電圧(出力要求値:例えば10V)とすることにより、実質的にオルタネータ91が発電を行わないようにしている。この場合、エンジン1に対する発電負荷も「0」となる。

0052

一方、エアコンディショナのコンプレッサ92は、上記伝動ベルト9が巻き掛けられているエアコンプーリクラッチ機構を介して接続されており、エンジン1の駆動時にクラッチ機構が接続状態とされると、クランクシャフト15の駆動力が伝達されて駆動し、エアコンディショナの冷媒回路冷媒循環させることによって車室内の空調が行われる。従って、エンジン1の駆動時であってもクラッチ機構が切断状態であるときにはコンプレッサ92は駆動せず、エアコンディショナによるエンジン1に対する負荷は「0」となる。

0053

制御ブロックの説明−
以上のエンジン1は運転状態はエンジンECU(Electronic Control Unit)6によって制御される。このエンジンECU6は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63及びバックアップRAM64などを備えている。

0054

ROM62は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU61は、ROM62に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。

0055

RAM63は、CPU61での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM64は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM62、CPU61、RAM63及びバックアップRAM64は、バス67を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路65及び外部出力回路66と接続されている。

0056

外部入力回路65には、水温センサ71、エアフローメータ72、吸気温センサ73、O2センサ74、スロットルポジションセンサ75、クランク角センサ76、カム角センサ77、ノックセンサ78、吸気圧センサ79が接続されている。一方、外部出力回路66には、上記インジェクタ5、イグナイタ21及び、スロットルバルブ36を駆動するスロットルモータ36aなどが接続されている。

0057

上記水温センサ71は、シリンダブロック11に形成されているウォータジャケット11b内を流れる冷却水の温度を検出し、その冷却水温信号をエンジンECU6に送信する。

0058

エアフローメータ72は、吸入空気量を検出し、その吸入空気量信号をエンジンECU6に送信する。

0059

吸気温センサ73は、上記エアフローメータ72と一体的に設けられ、吸入空気温度を検出して、その吸気温信号をエンジンECU6に送信する。

0060

O2センサ74は、排気中の酸素濃度を検知するものであり、排気中の空燃比理論空燃比にあるか否かを判定しその判定信号をエンジンECU6に送信する。

0061

スロットルポジションセンサ75は、スロットルバルブ36の開度を検出するものであって、そのスロットル開度検出信号をエンジンECU6に送信する。

0062

クランク角センサ76は、クランクシャフト15の近傍に配設されており、クランクシャフト15の回転角(クランク角CA)及び回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するものである。具体的に、このクランク角センサ76は、所定のクランク角(例えば30°)毎にパルス信号を出力する。このクランク角センサ76によるクランク角の検出手法の一例としては、クランクシャフト15と回転一体のロータ(NEロータ)の外周面の30°おきに外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記クランク角センサ76を配置する。そして、クランクシャフト15の回転に伴って外歯がクランク角センサ76の近傍を通過した際に、このクランク角センサ76が出力パルスを発生するようになっている。尚、このNEロータとしては、外周面に形成される外歯が10°おきに形成されたものが適用される場合もある。この場合、ECU内で分周して30°CA毎の出力パルスを発生する。

0063

カム角センサ77は、吸気カムシャフト32の近傍に配設されており、例えば第1気筒#1の圧縮上死点(TDC)に対応してパルス信号を出力することにより気筒判別センサとして使用される。つまり、このカム角センサ77は、吸気カムシャフト32の1回転毎にパルス信号を出力する。このカム角センサ77によるカム角の検出手法の一例としては、吸気カムシャフト32と回転一体のロータの外周面の1箇所に外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記カム角センサ77を配置し、吸気カムシャフト32の回転に伴って外歯がカム角センサ77の近傍を通過した際に、このカム角センサ77が出力パルスを発生するようになっている。このロータはクランクシャフト15の1/2の回転速度で回転するため、クランクシャフト15が720°回転する毎に出力パルスを発生する。言い換えると、ある特定の気筒が同一行程(例えば第1気筒♯1が圧縮上死点に達した時点)となる度に出力パルスを発生する構成である。

0064

ノックセンサ78は、シリンダブロック11に伝わるエンジンの振動を圧電素子式ピエゾ素子式)または電磁式マグネットコイル)などによって検出する振動式センサである。

0065

吸気圧センサ79は、サージタンク34に備えられており、吸気通路3内の圧力(吸気管内圧力)を検出し、その吸気圧信号をエンジンECU6に送信する。

0066

そして、エンジンECU6は、上記各種センサ71〜79の出力信号に基づいて、イグナイタ21、インジェクタ5、スロットルモータ36a等の各部を制御することにより、下記の点火時期制御(遅角制御)を含むエンジン1の各種制御を実行する。

0067

その一例として、イグナイタ21による点火プラグ2の点火タイミングの基本制御としては、点火タイミングがMBT(Minimum Spark Advance for Best Torque:最適点火時期)に近付くように点火タイミングの進角補正を行っていきながら、ノックセンサ78によってノッキングが検知された場合には、点火タイミングの遅角補正を行ってノッキングを解消するといった制御が行われる。また、インジェクタ5の燃料噴射の制御としては、エンジン負荷やエンジン回転数等に基づいて目標空燃比を算出し、エアフローメータ72によって検出された吸入空気量に基づき、上記目標空燃比が得られるように燃料噴射量の制御(インジェクタ5の開弁時間の制御)が行われる。また、スロットルモータ36aの駆動制御としては、運転者により操作されるアクセルペダル35の開度等に基づき、要求されたエンジン出力を得るための吸入空気量となるスロットルバルブ36の開度が得られるようにスロットルモータ36aの駆動量が制御される。尚、後述するアイドリングストップ制御(内燃機関自動停止制御)における点火プラグ2の点火タイミングの制御及びスロットルバルブ36の開度制御についての詳細は後で説明する。

0068

−アイドリングストップ制御のためのシステム構成
本実施形態に係る自動車は、交差点での信号待ち等のように一時的に停車した際に点火プラグ2の点火動作を停止(点火カット)すると共に、インジェクタ5からの燃料供給を停止(フューエルカット)してエンジン1を停止させる所謂アイドリングストップ制御を行うようになっている。以下、このアイドリングストップ制御を行うためのシステム構成について説明する。

0069

図1及び2に示すように、上記エンジンECU6にはアイドリングストップ制御を行うためのアイドルストップコントローラ68が接続されている。このアイドルストップコントローラ68は、アイドリングストップ条件(内燃機関自動停止条件)の成立時に、エンジンECU6に向けて点火カット信号及びフューエルカット信号を発信する。一方、エンジン始動条件(アイドリングストップ解除条件)が成立した際、このアイドルストップコントローラ68は、エンジンECU6に向けて点火カット解除信号及びフューエルカット解除信号を発信すると同時に、始動制御信号をスタータ8に送信するようになっている。

0070

また、このアイドルストップコントローラ68には、車速センサ68aからの車速検知信号、シフトレバー位置センサ68bからのシフト位置信号ブレーキペダルセンサ68cからのブレーキペダル踏み込み信号及びブレーキペダル踏み込み解除信号が入力されるようになっている。また、アイドルストップコントローラ68は、クランク角センサ76により検出されたエンジン回転数信号NEをエンジンECU6から受けるようになっている。

0071

本実施形態に係る自動車のアイドリングストップ条件は、イグニッションがONの状態で、例えば車速センサ68aからの車速検知信号によって車速が「0」であることが検知され、且つブレーキペダルセンサ68cからのブレーキペダル踏み込み信号によってブレーキペダルの踏み込み操作がなされていることが検知された場合に成立する。このアイドリングストップ条件が成立することで、アイドルストップコントローラ68は、エンジンECU6に向けて点火カット信号及びフューエルカット信号を発信することになる。また、この点火カット信号及びフューエルカット信号の発信に伴って、エンジンECU6は、後述するピストン停止位置制御動作のための点火タイミング制御及びスロットルバルブ開度制御を行った後に、点火プラグ2の点火動作を停止する制御を行い、その後、インジェクタ5の燃料噴射動作を停止する制御を行ってエンジン停止動作を開始する。

0072

一方、このアイドリングストップ制御によってエンジン1が停止している状態からエンジン1を始動させるためのエンジン始動条件は、上記アイドリングストップ条件が成立した後に、ブレーキペダルセンサ68cからのブレーキペダル踏み込み解除信号によってブレーキペダルの踏み込み解除操作がされたことが検知されるか、またはシフトレバー位置センサ68bからのシフト位置信号によってシフトレバーが「N(ニュートラル)」位置或いは「P(パーキング)」位置の何れかの位置から、走行レンジ位置(「D(ドライブ)」の位置、「1(第1速)」の位置、「2(第2速)」の位置、「R(リバース)」の位置の何れか)に操作されたことが検知された場合に成立する。このエンジン始動条件が成立することで、アイドルストップコントローラ68がエンジンECU6に向けて点火カット解除信号及びフューエルカット解除信号を発信すると同時に、始動制御信号をスタータ8に送信するようになっている。上記点火カット解除信号及びフューエルカット解除信号を受けたエンジンECU6は点火プラグ2の点火動作を開始すると共にインジェクタ5の燃料噴射動作を開始する制御を行う。また、上記始動制御信号によってスタータ8のスタータモータ81が作動してエンジン1のクランキングが行われる。

0073

そして、本実施形態の特徴は、上記アイドリングストップ条件が成立してアイドリングストップ制御が行われてエンジン1が停止した際のピストン停止位置を適切な位置に設定するために行われるピストン停止位置制御動作にある。このピストン停止位置の適切な位置とは、次回のエンジン始動条件が成立してエンジン1を再始動させる際の始動性を良好にするための位置である。この位置は、エンジンの仕様などにより異なるが、本実施形態では、吸入行程にある気筒のピストン13を上死点付近で停止させる場合を例に挙げて以下に説明する。

0074

先ず、このピストン停止位置制御動作の原理について説明する。エンジン1の作用する負荷がある一定値であって、且つエンジン回転数がある一定値である状態ではエンジン1の出力エネルギも一定値であるため、この状態から点火カット及びフューエルカットを行うと、常にある一定の位置でピストン13は停止する。このため、アイドリングストップ制御の開始時にエンジン1に作用している負荷を解除(エアコンディショナの作動停止やオルタネータ91の発電停止)し、エンジン回転数がある一定値となっている状態(上記負荷が無い状態でのアイドル目標回転数:例えば650rpm)で点火カット及びフューエルカットを実行すると、クランクシャフト15の回転や各ピストン13の往復動の慣性力と、この慣性力を打ち消す方向の反力(フリクション等の抵抗力)との関係によって、ある一定の位置でピストン13を停止できることになる。

0075

この原理を利用してピストン停止位置を適切な位置とするべく、本実施形態では、アイドリングストップ条件が成立してアイドリングストップ制御が開始された際に、エンジン1に作用している負荷を解除する。具体的には、エアコンディショナのコンプレッサ92のクラッチ機構を強制的に切断状態とすることによってエアコンディショナによるエンジン1に対する負荷を「0」とする。また、エンジンECU6からオルタネータ駆動回路へ上記「発電カット」指令を発信し、バッテリ100における蓄電電圧値よりも低い値の発電電圧(出力要求値:例えば10V)とすることにより、実質的にオルタネータ91が発電を行わないようにして、エンジン1に対する発電負荷を「0」とする。この状態で点火カット及びフューエルカットを実行することによりピストン停止位置を適切な位置に設定するようにしている。但し、単にエンジン1に作用している負荷を解除しただけでは、負荷解除に伴ってエンジン回転数が急激に上昇してしまう(エンジンの吹け上がりが発生してしまう)ことになり、これでは、上述した如く、ピストン停止位置にずれが生じてしまったりエンジン1が停止するまでに要する時間が長くなってしまったりする。

0076

そこで、本実施形態では、アイドリングストップ条件が成立してアイドリングストップ制御が開始された際に、エンジン1に作用している負荷を解除すると共に点火プラグ2の点火タイミングを遅角させるようにしている。

0077

この遅角量を決定するために、上記アイドルアップコントローラ68には点火タイミング遅角量決定マップが予め記憶されている。この点火タイミング遅角量決定マップは、上記アイドリングストップ条件が成立する前のエンジン1の負荷(上記エアコンディショナによるエンジン1に対する負荷及びエンジン1に対する発電負荷)に応じて点火プラグ2の点火タイミングの遅角量を決定するものである。

0078

具体的には、アイドリングストップ条件が成立する前のエンジン1の負荷が大きいほど点火タイミングの遅角量を大きな値として決定するようになっている。図4実線で示す線図は、この点火タイミング遅角量決定マップによって決定される「アイドリングストップ条件が成立する前のオルタネータ91に対する発電電圧(出力要求値)と点火タイミングの遅角量との関係(エアコンディショナ非作動時)」を示している。このように、アイドリングストップ条件が成立する前のオルタネータ91に対する出力要求値と点火タイミングの遅角量とが略比例するように点火タイミングの遅角量は決定される。また、図4破線で示す線図は、アイドリングストップ条件が成立する前にエアコンディショナが作動していた(コンプレッサ92の負荷がエンジン1に作用していた)場合において、上記点火タイミング遅角量決定マップによって決定される「アイドリングストップ条件が成立する前のオルタネータ91に対する発電電圧(出力要求値)と点火タイミングの遅角量との関係」を示している。このように、エアコンディショナが作動時していた場合には非作動時に比べて負荷が大きくなっていたことになるので、上記エアコンディショナ非作動時の場合(実線で示す線図の場合)に比べて遅角量が大きくなるよう決定される。

0079

このように点火タイミングの遅角量が設定されることにより、ピストン停止位置制御の開始に伴ってエンジン負荷が解除された場合であってもエンジン回転数が急激に上昇してしまう(エンジンの吹け上がりが発生してしまう)といったことが防止できるようになっている。

0080

次に、図5図7を用いてピストン停止位置制御の具体的な動作について説明する。図5は、アイドリングストップ制御時におけるスロットルバルブ36の開度、点火プラグ2の点火タイミング、エンジン回転数の変化を示している。図6及び図7は、アイドリングストップ制御の手順を示すフローチャート図である。尚、この制御では、エンジン1が駆動している際にアイドリングストップ条件が成立した場合に「1」となる停止要求フラグ、このアイドリングストップ条件の成立に伴ってエンジン1が停止した際に「1」となる停止確認フラグが使用される。また、以下では、アイドリングストップ条件が成立する前にエアコンディショナが作動していた(コンプレッサ92の負荷がエンジン1に作用していた)場合について説明する。

0081

先ず、ステップST1で停止確認フラグが「1」となっているか否か、つまり、現在、エンジン1はアイドリングストップ制御によって停止した状態にあるか否かを判定する。この判定がYESである場合には、現在アイドリングストップ状態にあるとして本制御動作を終了する。一方、NO判定されてエンジン1が駆動中であると判定された場合には、ステップST2に移り、アイドリングストップ条件が成立したか否かを判定する。この判定がNOである場合にはエンジン1の駆動を継続するため、本制御動作を終了する。一方、アイドリングストップ条件が成立したYESに判定された場合には、ステップST3に移って停止要求フラグを「1」に設定すると共に、ステップST4で、現時点でのオルタネータ91に対する出力要求値(現在の発電電圧)を読み込み、それを記憶する(負荷認識手段による負荷の認識動作)。

0082

そして、ステップST5に移って、エアコンディショナのコンプレッサ92のクラッチ機構を強制的に切断状態とすることによってエアコンディショナによるエンジン1に対する負荷を「0」とする(エアコン停止)。また、エンジンECU6からオルタネータ駆動回路へ上記「発電カット」指令を発信し、バッテリ100における蓄電電圧値よりも低い値の発電電圧(出力要求値:例えば10V)とすることにより、実質的にオルタネータ91が発電を行わないようにして、エンジン1に対する発電負荷を「0」とする(発電カット)。

0083

このエアコン停止及び発電カット(負荷制御手段による負荷の解除)と略同時のタイミングで点火プラグ2の点火タイミングを遅角させると共に、スロットルモータ36aを駆動してスロットルバルブ36の開度を小さくする(ステップST6)。具体的には、上記ステップST4で読み込んだオルタネータ91に対する出力要求値に基づき、上記点火タイミング遅角量決定マップによって点火タイミングの遅角量(図4に破線で示す線図により求まる遅角量)を決定して、点火プラグ2の遅角制御を実行する(点火時期制御手段による遅角動作)。これにより、エンジン1の出力を強制的に低下させ、上記エアコン停止及び発電カットといった負荷低減に伴うエンジン回転数の急上昇(エンジンの吹け上がり)を回避する。

0084

尚、アイドリングストップ条件が成立する前にエアコンディショナが作動していなかった(コンプレッサ92の負荷がエンジン1に作用していなかった)場合には、点火タイミング遅角量決定マップによって決定される点火タイミングの遅角量は図4に実線で示す線図により求まる量となる。

0085

図5では、タイミングT1でアイドリングストップ条件が成立し、同時にエアコン停止及び発電カットを行うと共に、点火プラグ2の遅角制御及びスロットルバルブ36の開度を小さくする制御を行っている。具体的な点火プラグ2の遅角制御の一例としては、クランク角度でピストン上死点前15°であった点火タイミングをピストン上死点後5°としている。また、スロットルバルブ36の開度を小さくする制御量としては、全閉位置から開方向に2degであった開度を1degに絞っている。この動作により、エアコン停止及び発電カットが行われる前のエンジン回転数(例えば800rpm)が、このエアコン停止及び発電カットが行われた後も維持され、エンジン回転数の急上昇は生じない。

0086

このようにして、エアコン停止及び発電カット、それに伴う点火タイミングの遅角制御及びスロットルバルブ開度の閉方向制御が開始された後、ステップST7に移り、エンジン回転数(NE)が自動停止動作開始回転数としての例えば620rpm〜650rpmの範囲まで低下したか否かが判定される。この値は、エンジン1に電気的な負荷が作用していない場合の目標アイドル回転数であって、この回転数から点火カット及びフューエルカットを実行することによりピストン停止位置を適切な位置に設定できる値となっている。これら値はこれに限るものではなくエンジン1の仕様(気筒数排気量等)などによって適宜設定される。

0087

尚、本アイドリングストップ制御において使用されるエンジン回転数(上記自動停止動作開始回転数に達したか否かの判定に使用されるエンジン回転数)は、各気筒の膨張行程において最も回転速度が高くなるタイミングでの回転数を使用している。例えば、各気筒の膨張行程におけるクランク角度でピストン上死点後90°付近での回転速度(所定クランク角度を回転するのに要する時間をクランク角センサ76の出力信号から認識して算出する回転速度)に基づいてエンジン回転数を求め、その回転数が上記自動停止動作開始回転数(620rpm〜650rpm)の範囲まで低下したか否かを判定している。

0088

このステップST7でNO判定された場合には、ステップST8に移る。このステップST8では、エンジン回転数が650rpmを未だ超えているか否かが判定される。この判定がYESである場合には、エンジン回転数を低下させるべく、点火タイミングを更に遅角させる(ステップST9)。逆に、このステップST8でNO判定された場合、つまり、エンジン回転数が既に620rpmを下回っている場合には、エンジン回転数を上記範囲(620rpm〜650rpmの範囲)まで上昇させるべく、点火タイミングを進角させる(ステップST10)。

0089

この動作は、上述した如く各気筒の膨張行程において最も回転速度が高くなるタイミングでのエンジン回転数を使用してエンジン回転数が自動停止動作開始回転数に達したか否かを判断していることに起因する。つまり、エンジン1の回転速度が急変した場合には、検知されるエンジン回転数が上記自動停止動作開始回転数(620rpm〜650rpm)となることなしにこの自動停止動作開始回転数を下回ってしまう可能性がある。例えばあるタイミングで検知されたエンジン回転数が655rpmであり、次のタイミングで検知されたエンジン回転数が615rpmであった場合等である。このような状況では、点火カット及びフューエルカットの開始条件が得られなくなる。このため、このような状況では、点火プラグ2の点火タイミングを進角させてエンジン回転数を上昇させ、そのエンジン回転数が自動停止動作開始回転数に達した時点で点火カット及びフューエルカットが開始できるようにしている。

0090

図8(a)は、上記点火タイミングの遅角制御のみによってエンジン回転数が上記自動停止動作開始回転数(図中Aの範囲)まで低下して点火カット及びフューエルカットが開始される場合のエンジン回転数の変化を示している。また、図8(b)は、上記点火タイミングの遅角制御によってエンジン回転数が低下し、このエンジン回転数が自動停止動作開始回転数(図中Aの範囲)となることなしにこの自動停止動作開始回転数を下回ってしまった後に、点火タイミングを進角させ、これによってエンジン回転数が上記自動停止動作開始回転数まで上昇して点火カット及びフューエルカットが開始される場合のエンジン回転数の変化を示している。

0091

図5では、タイミングT2及びタイミングT3でエンジン回転数が620rpmを下回ったため点火タイミングを進角させてエンジン回転数を上昇させている。

0092

このようにして点火タイミングが調整されてエンジン回転数が上記範囲(620rpm〜650rpmの範囲)に達すると、ステップST7でYES判定されてステップST11に移る。このステップST11では、先ず、上記ステップST7でYES判定されたタイミングの直後に点火タイミングを迎える気筒の点火プラグ2に対して点火動作を停止させる。その後に点火タイミングを迎える気筒に対しても同様に点火動作を停止させる。そして、上記最初に点火動作が停止された気筒の次の吸入行程では燃料が気筒内に導入されないようにインジェクタ5の燃料噴射を停止する(ステップST12)。その後に吸入行程を迎える気筒に対しても同様にインジェクタ5による燃料噴射を停止する(自動停止手段による自動停止動作)。つまり、各気筒にあっては、先ず点火カットが行われた後にフューエルカットが行われる。これによってエンジン停止動作が開始されエンジン回転数が低下していく。また、この点火カット及びフューエルカットの開始と略同時にスロットルバルブ36の開度を「0」(スロットル全閉)とする(ステップST13)。

0093

図5では、タイミングT4で点火カット、フューエルカット、スロットル全閉を行っている。

0094

以上のように、点火カット、フューエルカット、スロットル全閉の各動作が行われてエンジン回転数が低下していき、ステップST14でエンジン回転数が「0」(エンジンストール)が検知されると(ステップST14でYES判定されると)、ステップST15に移って、停止要求フラグを「0」に戻すと共に、停止確認フラグを「1」に設定して、本アイドリングストップ制御を終了する。

0095

図5では、タイミングT5でエンジン1が停止し、また、タイミングT6で停止要求フラグが「0」に戻される共に停止確認フラグが「1」に設定されている。また、同時にスロットル全閉状態が解除され、スロットルバルブ36が開放されて再始動に備えている。

0096

その後は、エンジン始動条件が成立することに伴い上述したエンジン再始動動作が行われることになる。尚、本実施形態のエンジン1では、アイドリングストップ制御の途中(未だエンジン1が完全に停止していない状況でエンジン始動条件が成立した場合には、エンジン1の完全停止を待たずにスタータモータ81が作動してエンジン1のクランキングによるエンジン始動が行われる。

0097

以上説明したように本実施形態では、アイドリングストップ条件が成立した際に、エンジン1に作用していた負荷(電気的な負荷等)を解除すると共に点火プラグ2の点火タイミング遅角させ、且つこの遅角量を上記負荷の大きさに応じて適切に設定することでエンジン1の吹け上がりを抑制している。このため、エンジン1の回転数を安定させた状態のまま自動停止動作に移行することができ、短時間で適切なピストン停止位置でエンジン1を停止させることが可能となり、エンジン1の再始動時に大きな振動が発生することなく且つ短時間で再始動を完了することができる。

0098

−その他の実施形態−
以上説明した実施形態は、インジェクタ5が吸気ポート12a内で燃料を噴射するポート噴射エンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、筒内直噴エンジンにも適用可能である。

0099

また、4気筒エンジンに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば6気筒エンジンなど他の任意の気筒数のエンジンに適用可能である。また、本発明が適用可能なエンジンは、自動車用エンジンに限るものでもない。

0100

また、エンジンと走行用電動モータとを搭載しこれらのうち片側の駆動力または両方の駆動力により走行する所謂ハイブリッド車において、走行中にエンジンを自動停止させる場合(走行用電動モータのみの駆動力による走行を開始する際や回生運転開始時)にも本発明は適用可能である。これによれば、車両走行中におけるピストン停止位置を適切に設定することができ、車両走行中のエンジン再始動時の始動性が良好になる。

0101

また、上述した実施形態では、吸入行程にある気筒のピストン停止位置を上死点付近に設定するようにしていたが、ピストン停止位置としての適正な位置は、エンジンの仕様等によって異なるため、本発明が対象とする最適なピストン停止位置はこれに限定されるものではない。

0102

更には、上記実施形態では、アイドリングストップ条件が成立した際に、エアコンディショナの作動停止及びオルタネータ91の発電停止によってエンジン負荷を解除するようにしていた。本発明はこれに限らず、その他の機器によるエンジン負荷を解除するようにしてもよい。また、エンジン負荷を解除するのに代えて、その負荷を軽減することも本発明の技術的思想には含まれる。

図面の簡単な説明

0103

実施形態に係るエンジンの概略構成を示すシステム構成図である。
実施形態に係るエンジンの概略構成を示す平面図
エンジンの制御ブロックの概略を示す図である。
点火タイミング遅角量決定マップによって決定されるアイドリングストップ条件成立前のオルタネータに対する出力要求値と点火タイミングの遅角量との関係を示す図である。
アイドリングストップ制御時におけるスロットルバルブ開度、点火タイミング、エンジン回転数の変化を示すタイムチャート図である。
アイドリングストップ制御の手順の一部を示すフローチャート図である。
アイドリングストップ制御の手順の他の一部を示すフローチャート図である。
(a)は点火タイミング遅角制御のみによってエンジン回転数が自動停止動作開始回転数まで低下した場合のエンジン回転数の変化を示し、(b)は点火タイミング遅角制御によってエンジン回転数が自動停止動作開始回転数を下回った場合のエンジン回転数の変化を示す図である。
本願発明が解決しようとする課題を説明するためのピストン停止位置制御におけるエンジン回転数の変化状態を示す図である。

符号の説明

0104

1エンジン(内燃機関)
13ピストン
2点火プラグ(点火栓)
36スロットルバルブ
5インジェクタ
91オルタネータ(負荷)
92コンプレッサ(負荷)

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