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課題

転舵負荷時、転舵アクチュエータ余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にする車両用操舵制御装置を提供する。

解決手段

操舵ハンドルとは機械的に切り離され、左右前輪9,9を転舵する舵取り機構8に設けられ、左右前輪9,9に転舵トルクを付与する転舵モータ6と、転舵指令角に基づいて前記転舵モータ6を駆動する転舵コントローラ12と、前記転舵モータ実電流Iが第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正する転舵指令角減少補正手段と、運転者の転舵意思の有無を判定する転舵意思判定手段と、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角増加補正手段と、を備える。

概要

背景

従来、ハンドル前輪舵取り機構とが機械的に切り離された、いわゆるステアバイワイヤ(SBW)システムにおいて、転舵モータ過負荷時に転舵モータへの駆動電流を制限すると共に、転舵モータの駆動電流制限時に、操舵反力を増大させるように反力モータを駆動することで、ハンドルの切り込み過ぎを防ぐようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2004−322715号公報

概要

転舵負荷時、転舵アクチュエータ余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意した方向への車両走行を可能にする車両用操舵制御装置を提供する。操舵ハンドルとは機械的に切り離され、左右前輪9,9を転舵する舵取り機構8に設けられ、左右前輪9,9に転舵トルクを付与する転舵モータ6と、転舵指令角に基づいて前記転舵モータ6を駆動する転舵コントローラ12と、前記転舵モータ実電流Iが第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正する転舵指令角減少補正手段と、運転者の転舵意思の有無を判定する転舵意思判定手段と、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角増加補正手段と、を備える。

目的

本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、高転舵負荷のとき、転舵アクチュエータの余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる車両用操舵制御装置を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

この技術が所属する分野

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請求項1

運転者が操作する操作部と、前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪転舵する転舵部と、前記転舵部に設けられ、操向輪に転舵トルクを付与する転舵アクチュエータと、前記操作部の操作状態に応じた転舵指令角に基づいて前記転舵アクチュエータを駆動する転舵制御手段と、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正する転舵指令角減少補正手段と、運転者の転舵意思の有無を判定する転舵意思判定手段と、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する転舵指令角増加補正手段と、を備えたことを特徴とする車両用操舵制御装置

請求項2

請求項1に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段は、転舵指令角が減少補正された後、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値より小さな第2閾値以下となった場合、転舵指令角を固定し、転舵指令角固定状態で運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項3

請求項1または2に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵意思判定手段は、前記操作部の操作量が転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項4

請求項1または2に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵意思判定手段は、前記操作部の操作トルクが転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項5

請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段は、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が、転舵指令角の増加補正によって前記第1閾値より大きな第3閾値以上となった場合、増加補正を停止することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項6

請求項5に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段は、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間を、減少補正されている間の転舵アクチュエータの駆動許容量に基づいて設定し、転舵指令角の増加補正が開始されてから前記通電時間を経過すると、増加補正から減少補正へ移行することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項7

請求項1乃至6の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角減少補正手段は、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、その時の転舵指令角を、転舵指令角と実転舵角との偏差タイヤ反力を維持する偏差が得られる転舵指令角まで減少補正することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項8

請求項1乃至7の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角の減少補正の途中にて実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角以上になったと判定された場合、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御に復帰する切り戻し時転舵制御復帰手段を設けたことを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項9

請求項1乃至8の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段は、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が、転舵指令角の増加補正により前記第1閾値より大きな第3閾値以上となり、増加補正状態を維持したままで設定時間を経過した後、転舵指令角の減少補正に移行し、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値より小さな第2閾値以下となった場合、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御に移行することを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項10

請求項1乃至9の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段は、転舵指令角の増加補正によっても前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第3閾値に達しない場合であって、かつ、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上となった場合、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御に復帰する乗り越え成功時転舵制御復帰手段を設けたことを特徴とする車両用操舵制御装置。

請求項11

運転者が操作する操作部と、前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪を転舵する転舵部と、前記転舵部に設けられ、操向輪に転舵トルクを付与する転舵アクチュエータと、前記操作部の操作状態に応じた転舵指令角に基づいて前記転舵アクチュエータを駆動する転舵制御手段と、を備えた車両用操舵制御装置において、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正し、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正することを特徴とする車両用操舵制御装置。

技術分野

0001

本発明は、運転者が操作する操作部と、操向輪転舵する転舵部と、が機械的に切り離され、転舵部に操向輪に転舵トルクを付与する転舵アクチュエータを有するステアバイワイヤシステムによる車両用操舵制御装置の技術分野に属する。

背景技術

0002

従来、ハンドル前輪舵取り機構とが機械的に切り離された、いわゆるステアバイワイヤ(SBW)システムにおいて、転舵モータ過負荷時に転舵モータへの駆動電流を制限すると共に、転舵モータの駆動電流制限時に、操舵反力を増大させるように反力モータを駆動することで、ハンドルの切り込み過ぎを防ぐようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2004−322715号公報

発明が解決しようとする課題

0003

しかしながら、上記従来技術にあっては、転舵モータの駆動電流制限として、転舵モータの温度が所定温度以上になると転舵モータの駆動電流を制限し、転舵モータ温度が所定温度以下になるまで、駆動電流の制限を継続する制御を行うため、過負荷時に、転舵モータの駆動電流の制限を開始すると、転舵モータ温度が所定温度以下になるまでは制限された電流値のままとなる。このため、例えば、タイヤが轍などに入り過負荷となって、転舵モータの駆動電流の制限が開始された場合、轍などを乗り越えることができなくなり、運転者の意図した方向に対して車両の走行ラインズレが生じる虞がある、という問題があった。

0004

本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、高転舵負荷のとき、転舵アクチュエータの余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる車両用操舵制御装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0005

上述の目的を達成するため、本発明の車両用操舵制御装置では、
運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪を転舵する転舵部と、
前記転舵部に設けられ、操向輪に転舵トルクを付与する転舵アクチュエータと、
前記操作部の操作状態に応じた転舵指令角に基づいて前記転舵アクチュエータを駆動する転舵制御手段と、
前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正する転舵指令角減少補正手段と、
運転者の転舵意思の有無を判定する転舵意思判定手段と、
転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する転舵指令角増加補正手段と、
を備えたことを特徴とする。

発明の効果

0006

本発明の車両用操舵制御装置にあっては、前記操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵指令角減少補正手段において、転舵トルクを減少させるように転舵指令角が減少補正され、転舵指令角が減少補正された後、転舵意思判定手段により運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵指令角増加補正手段において、転舵トルクを増加させるように転舵指令角が増加補正される。
すなわち、転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角が減少補正されることで、熱負荷(転舵負荷の積算値)により減少補正する場合に比べ、減少補正の開始タイミングが早期となる。よって、転舵負荷の積算値による場合と本発明による場合との減少補正量の偏差分が転舵アクチュエータの余力となり、転舵アクチュエータの余力が確保される。
この転舵指令角を減少補正した状態で、運転者に転舵意思があると判定された場合には、転舵指令角が増加補正により、少なくとも転舵アクチュエータの余力相当分により瞬間的に大きな転舵トルクを出すことができる。よって、例えば、轍や縁石などを乗り越え、運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる。
この結果、高転舵負荷のとき、転舵アクチュエータの余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる。

発明を実施するための最良の形態

0007

以下、本発明の車両用操舵制御装置を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例1および実施例2に基づいて説明する。

0008

まず、構成を説明する。
[全体構成]
図1は、実施例1の車両用操舵制御装置を適用したステアバイワイヤ(SBW)システムの構成図である。
実施例1のSBWシステムは、図1に示すように、操舵ハンドル1(操作部)と、操舵角センサ2と、操舵トルクセンサ3と、反力モータ4と、バックアップクラッチ5と、転舵モータ6(転舵アクチュエータ)と、転舵角度センサ7と、舵取り機構8(転舵部)と、左右前輪9,9(操向輪)と、転舵トルクセンサ10と、反力コントローラ11と、転舵コントローラ12(転舵制御手段)と、通信ライン13と、を備えている。

0009

実施例1のSBWシステムは、運転者が操作する操舵ハンドル1と、前記操舵ハンドル1とは機械的に切り離され、左右前輪9,9を転舵する舵取り機構8と、前記操舵ハンドル1に操舵反力を付与する反力モータ4と、前記舵取り機構8に転舵力を付与する転舵モータ6と、を備え、操舵ハンドル1と舵取り機構8との間に機械的な繋がりが無い構成となっている。
ただし、機械的なバックアップ機構として、バックアップクラッチ5を備えており、操舵ハンドル1と舵取り機構8との間を機械的に連結することが可能である。つまり、SBWシステムに何らかの異常が発生した場合、バックアップクラッチ5を連結することで安全な走行が可能となる。

0010

実施例1では、操舵ハンドル1の回転操作を操舵角センサ2で検出し、反力コントローラ11で転舵指令角が演算される。前記転舵コントローラ12では、実際の転舵角が転舵指令角に一致するように、転舵モータ6の駆動指令値が演算され、転舵モータ6が駆動されることで転舵動作が行われる。

0011

前記転舵モータ6は、ブラシレスモータ等で構成される。また、操舵ハンドル1に操舵反力を与えるための前記反力モータ4は、転舵モータ6と同様に、ブラシレスモータ等で構成されており、反力コントローラ11で演算された駆動指令値に基づいて駆動される。反力コントローラ11および転舵コントローラ12で演算される駆動指令値は、反力モータ4および転舵モータ6への電流指令値となる。

0012

実施例1のSBWシステムは、操舵ハンドル1と、左右前輪9,9および転舵モータ6との間に機械的な繋がりが無い構成となっているので、反力モータ4によって操舵反力を発生させている。操舵反力は、舵取り機構8のラックにかかる軸力操舵角操舵角速度などに応じて生成される。また、操舵ハンドル1と反力モータ4との間に操舵トルクセンサ3を設け、操舵トルクモニタできるようになっている。
転舵トルクセンサ10は、舵取り機構8のラックにかかる軸力を検出する。
操舵トルクセンサ3は、シャフトねじれを検出し、そこからトルクを算出する構成となっている。SBW制御時には、この操舵トルクセンサ3の値を用いることはないが、反力モータ失陥時等において、バックアップクラッチ5を締結し、転舵モータ6をアシストに用いるEPS制御モード(=電動パワーステアリング制御モード)では、操舵トルクセンサ3の値を制御に用いる。

0013

前記転舵コントローラ12で演算される電流指令値は、転舵指令角に所定の応答特性実転舵角追従するように制御演算する角度サーボ系により算出される。
転舵コントローラ12の角度サーボ系は、例えば、図2転舵角制御ブロック図に示すように、ロバストモデルマッチング手法を用いた方法で構成される。この方法では、予め与えておいた所望の特性に一致させるためのモデルマッチング補償器により、転舵指令角に対し所定の規範応答特性を実現するための電流指令値を演算し、ロバスト補償器により外乱成分に応じた補償電流が演算される。これにより、外乱発生時においても実転舵角が規範応答特性で追従可能な、耐外乱性に優れた制御系が実現できる。

0014

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御手段]
図3は、実施例1の転舵コントローラ12にて実行される高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
なお、この処理は、転舵コントローラ12においてSBW制御演算周期(例えば、5msec)毎に実行される。

0015

ステップS101では、転舵モータ6を駆動している実電流Iを取得し、ステップS102へ移行する。
この転舵モータ実電流Iは、操向輪を転舵する転舵負荷の値に相当する。

0016

ステップS102では、ステップS101での転舵モータ実電流Iの取得に続き、転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上の状態のままで一定時間T1を経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS104へ移行し、Noの場合はステップS103へ移行する。
ここで、第1閾値I_th1は、転舵モータ6の定格電流からマージンを持った値に設定される。ただし、通常走行応答性の低下など、走行に支障のない程度で設定する。

0017

ステップS103では、ステップS102でのI≧I_th1の状態のままで一定時間T1を経過していないとの判断に続き、操舵角から求めた指令転舵角を用いた転舵制御、つまり、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御を実行し、リターンへ移行する。

0018

ステップS104では、ステップS102でのI≧I_th1の状態のままで一定時間T1を経過したとの判断に続き、転舵指令角を減少補正する制御を実行し、ステップS105へ移行する(転舵指令角減少補正手段)。
ここで、転舵指令角減少補正では、ステップS102の転舵指令角減少補正条件が成立した時の転舵指令角を、転舵指令角と実転舵角との偏差がタイヤ反力を維持する偏差が得られる転舵指令角まで減少補正する。

0019

ステップS105では、ステップS104での転舵指令角の減少補正に続き、転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS106へ移行し、Noの場合はステップS104へ戻る。
ここで、第2閾値I_th2は、前記第1閾値I_th1より小さな値、つまり、転舵モータ6の定格電流から十分な安全マージンを持った値に設定される。

0020

ステップS106では、ステップS105でのI≦I_th2との判断に続き、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードとし、ステップS107へ移行する。
この転舵保持制御モードでは、転舵モータ6への電流指令値が、
今回転舵指令角δf=前回転舵指令角δf(1)
の式により算出される。

0021

ステップS107では、ステップS106での転舵指令角固定に続き、操舵角から求めた転舵指令角が実転舵角以下か否か、つまり、轍や縁石などの転舵負荷により転舵指令角に対して離れていた実転舵角が、転舵指令角に収束したか否かを判断し、Yesの場合はステップS103へ移行し、Noの場合はステップS108へ移行する。

0022

ステップS108では、ステップS107での操舵角から求めた転舵指令角>実転舵角であるとの判断に続き、操舵角センサ2からの操舵角と、操舵トルクセンサ3からの操舵トルクと、転舵モータ実電流Iとを取得し、ステップS109へ移行する。

0023

ステップS109では、ステップS108での操舵角、操舵トルク、転舵モータ実電流Iの取得に続き、操舵角が制限補正時より切り増しされた、あるいは、制限補正時より操舵トルクが増加したか否かを判断し、Yseの場合はステップS110へ移行し、Noの場合はステップS106へ戻る(転舵意思判定手段)。
すなわち、このステップS109では、操舵角センサ2により検出される操舵ハンドル1の操作量が転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定する。また、操舵トルクセンサ3により検出される操舵ハンドル1の操作トルクが転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定する。

0024

ステップS110では、ステップS109での操舵角が制限補正時より切り増しされた、あるいは、制限補正時より操舵トルクが増加したとの判断に続き、転舵モータ6の転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間T_thを演算し、ステップS112へ移行する。
ここで、通電時間T_thの演算手法図4に基づいて説明する。
まず、通電時間T_thは、減少補正されている転舵モータ6の駆動許容量に基づいてい設定される。つまり、モータの過負荷を検出するために電流の積算値を用いる方法などが知られている。そこで、電流の積算値が一定以上になったときに制限を行った場合(図4点線特性)と、今回の方法のように、定格からマージンを持った値を第1閾値I_th1に設定し、温度保護を行う場合よりも短い時間で転舵指令角の制限を行う場合(図4実線特性)と、の電流積算値偏差ΔIを減少補正が開始されてから常に計算しておく。そして、電流積算値偏差ΔIを第3閾値I_th3にて割った結果を通電時間T_thとする。

0025

ステップS111では、ステップS110での転舵指令角増加補正での通電時間T_thの演算に続き、転舵指令角を増加補正する(転舵指令角増加補正手段)。
ここで、転舵指令角の増加補正は、転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3を超える値となるまで、つまり、第3閾値I_th3となる転舵指令角の増加補正を上限として急峻な勾配にて転舵指令角を増加する。
なお、第3閾値I_th3は、前記第1閾値I_th1よりも大きな値に設定する。例えば、第3閾値I_th3は、第1閾値I_th1の20%アップした値に設定するなどである。ただし、当然ながら、転舵モータ6の通電可能な電流値以下に設定するものとする。

0026

ステップS112では、ステップS111での転舵指令角の増加補正に続き、転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3以上であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS113へ移行し、Noの場合はステップS111へ戻る。

0027

ステップS113では、ステップS112でのI≧I_th3との判断に続き、転舵指令角の増加補正の開始から通電時間T_thを経過したか否かを判断し、Yesの場合はステップS104へ戻り、Noの場合はステップS114移行する。

0028

ステップS114では、ステップS113での通電時間T_thを経過していないとの判断に続き、転舵指令角の増加補正を停止し、ステップS112へ戻る。

0029

次に、作用を説明する。
上記のような構成のSBWシステムにおいては、ステアリングラック最大転舵位置に到達している場合や、タイヤが縁石に当たっている場合など、ラックの移動が不可能な状態においても、バックアップクラッチの開放によって、操作部と転舵部とが切り離されているので、操舵ハンドルは回転可能な状態にある。
すなわち、図5に示すように、操舵角を単純に切り増し操作している場合、時刻t1において、ラック移動が不可能な状態となったとき、タイヤはそれ以上転できないのに、操舵角に応じた転舵指令角は切り増し方向に増大する。そして、転舵コントローラでは、位置サーボ制御を行っているため、転舵アクチュエータは実転舵角を転舵指令角に追従させようと過大な電流を流し続けてしまう。その結果、転舵アクチュエータの実電流Iはリミッタ値となり、リミッタ値を流し続ける。

0030

これに対し、実施例1の車両用操舵制御装置では、高転舵負荷のとき、転舵アクチュエータの余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができるようにした。

0031

すなわち、タイヤが轍や縁石などに当たるような高転舵負荷のとき、転舵モータにリミッタ値による電流を流し続けると、モータ過熱によりフェイルに至る。これに対し、転舵モータの過熱保護手法としては、一般的にモータ電流の積算値が所定値以上、あるいは、モータ温度が所定温度以上となった場合に制限をかけることでなされる。しかし、この場合、一旦、モータ電流に制限がかけられると、運転者が轍や縁石などを乗り越えて走行したいという要求があっても、転舵トルクを上げることができず、轍や縁石などを乗り越えての転舵走行要求応えることができない。

0032

高転舵負荷のとき、転舵モータ6の余力を確保しておく過熱保護手段を用いれば、運転者に転舵要求があった場合、轍や縁石などを乗り越えての転舵走行要求に応えることができるという点に着目し、実施例1では、左右前輪9,9を転舵する転舵モータ6の実電流Iが第1閾値I_th1以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正し、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する手段を採用した。

0033

したがって、転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角が減少補正されることで、熱負荷(転舵負荷の積算値)により減少補正する場合に比べ、減少補正の開始タイミングが早期となる。よって、転舵負荷の積算値による場合と実施例1による場合との減少補正量の偏差分が転舵モータ6の余力となり、転舵モータ6の余力が確保される。
この転舵指令角を減少補正した状態で、運転者に転舵意思があると判定された場合には、転舵指令角が増加補正により、少なくとも転舵モータ6の余力相当分により瞬間的に大きな転舵トルクを出すことができる。よって、例えば、轍や縁石などを乗り越え、運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる。
この結果、高転舵負荷のとき、転舵モータ6の余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる。

0034

以下、実施例1の車両用操舵制御装置における、[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御動作]、[転舵指令角の減少補正作用]、[転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り増した場合の増加補正作用]、[転舵指令角の減少補正後に操舵トルクが増加した場合の増加補正作用]、[転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り戻した場合の制御復帰作用]、[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御作用]について説明する。

0035

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御動作]
通常走行時で、転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1に達さないときには、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS103→リターンという流れが繰り返され、ステップS103では、操舵角から求めた指令転舵角を用いた転舵制御、つまり、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御が実行される。

0036

そして、轍や縁石などの高転舵負荷にタイヤが当たり、転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上の状態のままで一定時間T1を経過すると、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS104→ステップS105へと進み、ステップS105にて転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下であると判断されるまで、ステップS104にて転舵指令角の減少補正が実行される。

0037

そして、ステップS105にて転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下であると判断されると、ステップS105からステップS106へと進み、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードが開始される。

0038

上記のように、転舵指令角を減少補正後、転舵指令角を固定した転舵保持制御モードになると、図3のフローチャートにおいて、ステップS106からステップS107へと進み、ステップS107にて、操舵角から求めた転舵指令角>実転舵角と判断される限りは、ステップS107からステップS108→ステップS109へと進み、ステップS109にて操舵角が制限補正時より切り増しされた、あるいは、制限補正時より操舵トルクが増加したか否かが判断される。

0039

そして、ステップS109にて操舵角が制限補正時より切り増しされてもいなく、かつ、制限補正時より操舵トルクが増加もしていないと判断されると、ステップS106へ戻り、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードが維持される。

0040

一方、ステップS109にて操舵角が制限補正時より切り増しされた、あるいは、制限補正時より操舵トルクが増加したと判断された場合、ステップS110→ステップS111へ進み、転舵指令角の増加補正が開始され、さらに、ステップS112へと進み、ステップS112では、転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3以上であるか否かが判断される。
そして、ステップS112でI戻り、転舵指令角の増加補正が継続される。

0041

また、ステップS112でI≧I_th3と判断されると、ステップS113へ進み、転舵指令角の増加補正の開始時点からの経過時間が通電時間T_thを経過したか否かが判断され、通電時間T_thを経過していと、ステップS114へ進み、増加補正を停止し、ステップS112→ステップS113→ステップS114を繰り返す流れとなる。
そして、ステップS113において、通電時間T_thを経過したと判断されると、ステップS113からステップS104へ戻り、転舵指令角を減少補正し、さらに、ステップS105にて転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下か否かを判断し、I≦I_th2と判断された場合にはステップS106へ進み、転舵指令角が固定される。

0042

そして、ステップS107において、操舵角から求めた転舵指令角≦実転舵角という収束条件が成立すると、ステップS107からステップS103へと進み、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御に復帰する。

0043

なお、転舵指令角の減少補正後に運転者が切り戻し操作を行ったことで、ステップS107の収束条件が成立すると、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102→ステップS104→ステップS105→ステップS106→ステップS107→ステップステップS103へと進み、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御に復帰する。

0044

[転舵指令角の減少補正作用]
図6は、転舵指令角が減少補正されるときの(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図6に基づき、転舵指令角の減少補正作用を説明する。
時刻t0から操舵ハンドル1の切り増し操作を開始し、時刻t1にて轍や縁石などの高転舵負荷にタイヤが当たると、転舵モータ電流値が上昇し、時刻t1の直後において、第1閾値I_th1を超えるまでは、ステップS101→ステップS102→ステップS103→リターンという流れが繰り返され、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御が実行される。
そして、時刻t1において、転舵モータ電流値が第1閾値I_th1を超えると、ステップS101→ステップS102→ステップS104へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角が減少補正される。
そして、転舵指令角の減少補正により、転舵モータ電流値が減少して第2閾値I_th2以下になる時刻t2からは、ステップS105からステップS106へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行する。

0045

[転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り増した場合の増加補正作用]
図7は、転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り増した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図7に基づき、転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り増した場合の増加補正作用を説明する。
時刻t2から転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行するまでは、図6に示すタイムチャートと同様である。
そして、時刻t3にて運転者が轍や縁石などの乗り越えを意図してハンドル操作を行った場合であって、操舵ハンドル1に対し操舵反力を超える操舵トルクを運転者が付与することで、ハンドル操作方向に操舵角が高まった場合には、ステップS109の操舵角の切り増し条件が成立し、ステップS110→ステップS111へと進んで、転舵指令角の増加補正が開始される。
この転舵指令角の増加補正は、開始時刻t3から転舵モータ電流値が第3閾値I_th3(=乗り越え閾値)を超える時刻t4までは、急激に転舵モータ電流値を立ち上げることでなされ、時刻t4から時刻t5(開始時刻t3に通電時間T_thを加えた時刻)に達するまでは、転舵指令角の増加補正を停止し、ステップS112→ステップS113→ステップS114の流れが繰り返され、転舵モータ電流値が第3閾値I_th3が維持される。
この転舵指令角の増加補正により、実転舵角特性に示すように、時刻t4の時点から時刻t5まで実転舵角が増している。つまり、このことは、大きな転舵トルクの発生により轍などを乗り越えて転舵されたことをあらわしいている。
転舵指令角の増加補正終了時刻t5に達すると、ステップS113からステップS104→ステップS105へと進み、転舵指令角の減少補正に移行し、ステップS105にて第2閾値I_th2以下と判断されると、ステップS106へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行する。
そして、時刻t6において、ステップS106の操舵角から求めた転舵指令角≦実転舵角の条件が成立すると、一定の操舵角から求められた一定の転舵指令角を維持する通常制御が開始される。さらに、時刻t7の少し前にて操舵角を切り増し操作が行われたことで、時刻t7からは転舵モータ電流値が上昇した後、一定の転舵モータ電流値へ移行する制御となる。

0046

[転舵指令角の減少補正後に操舵トルクが増加した場合の増加補正作用]
図8は、転舵指令角の減少補正後に操舵トルクが増加した場合の(操舵トルク)・(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図8に基づき、転舵指令角の減少補正後に操舵トルクが増加した場合の増加補正作用を説明する。
時刻t2から転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行するまでは、図6に示すタイムチャートと同様である。
そして、時刻t3にて運転者が轍や縁石などの乗り越えを意図してハンドル操作を行った場合であって、反力制御により与えられた大きな操舵反力により、操舵角を増加させることはできないが、図8操舵トルク特性の(1)部分に示すように、操舵トルクの上昇が検出された場合には、ステップS109の操舵トルクの増加条件が成立し、ステップS110→ステップS111へと進んで、転舵指令角の増加補正が開始される。
この転舵指令角の増加補正は、開始時刻t3から転舵モータ電流値が第3閾値I_th3(=乗り越え閾値)を超える時刻t4までは、急激に転舵モータ電流値を立ち上げることでなされ、時刻t4から時刻t5(開始時刻t3に通電時間T_thを加えた時刻)に達するまでは、転舵指令角の増加補正が停止され、ステップS112→ステップS113→ステップS114の流れが繰り返され、転舵モータ電流値が第3閾値I_th3が維持される。
この転舵指令角の増加補正により、実転舵角特性に示すように、時刻t4の時点から時刻t5まで実転舵角が増しているし、加えて、時刻t5から操舵トルク特性の(2)部分に示すように、操舵トルクの下降がみられる。つまり、このことは、大きな転舵トルクの発生により縁石などを乗り越えて転舵されたことをあらわしいている。
転舵指令角の増加補正終了時刻t5に達すると、ステップS113からステップS104→ステップS105へと進み、転舵指令角の減少補正に移行し、ステップS105にて第2閾値I_th2以下と判断されると、ステップS106へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行する。
そして、時刻t6において、ステップS106の操舵角から求めた転舵指令角≦実転舵角の条件が成立すると、一定の操舵角から求められた一定の転舵指令角を維持する通常制御が開始される。

0047

[転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り戻した場合の制御復帰作用]
図9は、転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り戻した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図9に基づき、転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り戻した場合の復帰作用を説明する。
時刻t0から操舵ハンドル1の切り増し操作を開始し、時刻t1にて轍や縁石などの高転舵負荷にタイヤが当たると、転舵モータ電流値が上昇し、時刻t1の直後において、第1閾値I_th1を超えるまでは、ステップS101→ステップS102→ステップS103→リターンという流れが繰り返され、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御が実行される。
そして、時刻t1において、転舵モータ電流値が第1閾値I_th1を超えると、ステップS101→ステップS102→ステップS104へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角が減少補正される。
そして、転舵指令角の減少補正により、転舵モータ電流値が減少して第2閾値I_th2以下になる時刻t2からは、ステップS105からステップS106へと進み、補正後の転舵指令角特性に示すように、転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行する。
その後、時刻t3において、運転者がハンドル切り戻し操作を行うと、操舵角から算出された転舵指令角(=操舵角から求めた転舵指令角)が低下し、時刻t4にて、実転舵角と操舵角から求めた転舵指令角が一致し、ステップS106からステップS107→ステップS103へと進み、通常の転舵制御(操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御)に移行し、タイヤにセルフアライニングトルク復元トルク)が発生することで、転舵モータ電流値が低下する。

0048

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御作用]
上記のように、実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段(ステップS110)は、転舵指令角が減少補正された後(ステップS104)、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1より小さな第2閾値I_th2以下となった場合(ステップS105)、転舵指令角を固定し(ステップS106)、転舵指令角固定状態で運転者に転舵意思があると判定された場合(ステップS109)、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する。
例えば、転舵指令角が減少補正された後、転舵負荷の減少を待つことなく、転舵指令角を増加補正しようとする場合には、転舵負荷の減少分による転舵モータ余力を確保することができない。つまり、転舵指令角を十分に増加補正するための転舵モータ余力が不足し、轍や縁石などの乗り越えができなくなるおそれがある。
これに対し、実施例1では、上記のように、転舵指令角が減少補正された後、転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下となるまで待ち、転舵指令角固定した待ち状態で、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵指令角を増加補正するため、転舵指令角の増加補正に備えて十分な転舵モータ6の余力を確保でき、轍や縁石などを乗り越える高い転舵トルクを確実に出すことができる。

0049

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵意思判定手段(ステップS109)は、前記操舵ハンドル1の操作量が転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定する。
例えば、轍や縁石などにタイヤが当たった状態で、運転者が負荷を乗り越えての転舵を意図する場合には、ハンドルに対し操舵反力を超える操舵トルクを付与してハンドルを切り増し方向に増加させる。
これに対し、実施例1では、上記のように、操舵角の切り増し方向に増加により、運転者に転舵意思があると判定するため、ハンドル操作量の切り増し方向の増加を監視するだけで、運転者の転舵意思を容易に判定することができる。

0050

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵意思判定手段(ステップS109)は、前記操舵ハンドル1の操作トルクが転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定する。
例えば、轍や縁石などにタイヤが当たった状態において、反力制御側では、転舵負荷に応じて操舵反力を与える制御が行われる。したがって、操舵反力が大きい場合には、運転者が負荷を乗り越えての転舵を意図してハンドルを切り増し方向に増加させようとしても、舵角を増加させることができない場合がある。
これに対し、実施例1では、上記のように、操舵トルクの切り増し方向に増加により、運転者に転舵意思があると判定するため、操舵トルクの切り増し方向の増加を監視するだけで、操舵角が増加しないときでも、運転者の転舵意思を精度良く判定することができる。

0051

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段(ステップS111)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが、転舵指令角の増加補正によって前記第1閾値I_th1より大きな第3閾値I_th3以上となった場合、増加補正を停止する。
例えば、転舵指令角の増加補正において、転舵モータ実電流に上限値を与えないと、乗り越えできない負荷に直面した場合に、転舵モータに対し通電可能な最大電流を継続して与えてしまうことになり、大きなモータ負荷をかけてしまう。
これに対し、実施例1では、上記のように、転舵指令角の増加補正において、転舵モータ実電流Iに第3閾値I_th3という上限値を与えるようにしたため、可能な限りの転舵負荷の乗り越えを確保しながら、転舵モータ6に大きなモータ負荷を与えることを回避することができる。

0052

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段(ステップS110)は、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間T_thを、減少補正されている間の転舵モータ6の駆動許容量に基づいて設定し(ステップS111)、転舵指令角の増加補正が開始されてから設定時間を経過すると(ステップS113)、増加補正から減少補正へ移行する。
例えば、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間を短い固定時間により与えた場合には、転舵トルクの高まりが不足し、転舵負荷の乗り越え性能に劣る。逆に、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間を長い固定時間により与えた場合には、転舵モータに大きな負荷を与えてしまう。
これに対し、実施例1では、上記のように、転舵モータ6の駆動許容量、つまり、転舵モータ6の駆動余力に基づき、通電時間T_thを設定するため、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間T_thの最適設定により、転舵負荷の高い乗り越え性能とモータ負荷の低減との両立を図ることができる。
ちなみに、実施例1では、図4に示すように、電流積算値偏差ΔIによる面積(転舵モータ6の余力分)と、乗り越え増加補正による面積(転舵トルクの増加分)とが一致するように、通電時間T_thが設定されることで、転舵モータ6の負荷負担としては、転舵指令角増加補正を行っても、電流の積算値が一定以上になったときに制限を行う場合と同等となる。

0053

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角減少補正手段(ステップS104)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上となった場合、この時の転舵指令角を、転舵指令角と実転舵角との偏差がタイヤ反力を維持する偏差が得られる転舵指令角まで減少補正する。
例えば、転舵指令角の減少補正において、転舵指令角を実転舵角まで減少補正すると、操向輪に転舵トルクの発生が無くなり、タイヤが路面から受ける外力によって動かされることになる。また、転舵指令角の減少補正量を小さく設定すると、タイヤ反力は出るが、転舵モータの負荷を低減させることができない。
これに対し、実施例1では、上記のように、転舵指令角の減少補正において、タイヤ反力を維持する偏差が得られる転舵指令角まで減少補正するため、転舵指令角の減少補正時、タイヤが路面から受ける外力によって動かされることなく、転舵モータ6の負荷を低減させることができる。

0054

実施例1の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角の減少補正の途中にて実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角以上になったと判定された場合、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御に復帰する切り戻し時転舵制御復帰手段(ステップS107→ステップS103)を設けた。
例えば、転舵指令角の減少補正が行われている途中において、運転者がハンドルの切り戻し操作をした場合、切り戻し操作を検出して通常の転舵制御に復帰した場合には、切り戻し操作の検出時点での実転舵角と操舵角から求めた転舵指令角とにズレが生じている場合には、そのズレ分がタイヤとハンドルとの中立ズレ(=Nズレ)となり、増減補正からの復帰後、正常な転舵制御を行うことができない。
これに対し、実施例1では、上記のように、実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角以上になったと判定された場合、通常の転舵制御に復帰するため、転舵指令角の減少補正途中での切り戻し操作時、通常の転舵制御への復帰開始時点で実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角と一致し、Nズレを発生することなく、スムーズに補正制御の途中から通常の転舵制御へ移行することができる。

0055

次に、効果を説明する。
実施例1の車両用操舵制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。

0056

(1)運転者が操作する操舵ハンドル1と、前記操舵ハンドル1とは機械的に切り離され、左右前輪9,9を転舵する舵取り機構8と、前記舵取り機構8に設けられ、左右前輪9,9に転舵トルクを付与する転舵モータ6と、前記操舵ハンドル1の操作状態に応じた転舵指令角に基づいて前記転舵モータ6を駆動する転舵コントローラ12と、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正する転舵指令角減少補正手段(ステップS104)と、運転者の転舵意思の有無を判定する転舵意思判定手段(ステップS109)と、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する転舵指令角増加補正手段(ステップS111)と、を備えたため、高転舵負荷のとき、転舵モータ6の余力を確保しつつ、運転者に転舵意思がある場合には、瞬間的に大きな転舵トルクを出して運転者の意図した方向への車両走行を可能にすることができる。

0057

(2) 前記転舵指令角増加補正手段(ステップS111)は、転舵指令角が減少補正された後(ステップS104)、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1より小さな第2閾値I_th2以下となった場合(ステップS105)、転舵指令角を固定し(ステップS106)、転舵指令角固定状態で運転者に転舵意思があると判定された場合(ステップS109)、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正するため、転舵指令角の増加補正に備えて十分な転舵モータ6の余力を確保でき、轍や縁石などを乗り越える高い転舵トルクを確実に出すことができる。

0058

(3) 前記転舵意思判定手段(ステップS109)は、前記操舵ハンドル1の操作量が転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定する。
例えば、轍や縁石などにタイヤが当たった状態で、運転者が負荷を乗り越えての転舵を意図する場合には、ハンドルに対し操舵反力を超える操舵トルクを付与してハンドルを切り増し方向に増加させるため、ハンドル操作量の切り増し方向の増加を監視するだけで、運転者の転舵意思を容易に判定することができる。

0059

(4) 前記転舵意思判定手段(ステップS109)は、前記操舵ハンドル1の操作トルクが転舵指令角減少補正時より切り増し方向に増加した場合、運転者に転舵意思があると判定するため、操舵トルクの切り増し方向の増加を監視するだけで、操舵角が増加しないときでも、運転者の転舵意思を精度良く判定することができる。

0060

(5) 前記転舵指令角増加補正手段(ステップS111)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが、転舵指令角の増加補正によって前記第1閾値I_th1より大きな第3閾値I_th3以上となった場合、増加補正を停止する(ステップS114)ため、可能な限りの転舵負荷の乗り越えを確保しながら、転舵モータ6に大きなモータ負荷を与えることを回避することができる。

0061

(6) 前記転舵指令角増加補正手段(ステップS110)は、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間T_thを、減少補正されている間の転舵モータ6の駆動許容量に基づいて設定し(ステップS111)、転舵指令角の増加補正が開始されてから通電時間T_thを経過すると(ステップS113)、増加補正から減少補正へ移行するため、転舵指令角の増加補正を継続することが可能な通電時間T_thの最適設定により、転舵負荷の高い乗り越え性能とモータ負荷の低減との両立を図ることができる。

0062

(7) 前記転舵指令角減少補正手段(ステップS104)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1以上となった場合、この時の転舵指令角を、転舵指令角と実転舵角との偏差がタイヤ反力を維持する偏差が得られる転舵指令角まで減少補正するため、転舵指令角の減少補正時、タイヤが路面から受ける外力によって動かされることなく、転舵モータ6の負荷を低減させることができる。

0063

(8) 前記転舵指令角の減少補正の途中にて実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角以上になったと判定された場合、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御に復帰する切り戻し時転舵制御復帰手段(ステップS107→ステップS103)を設けたため、転舵指令角の減少補正途中での切り戻し操作時、通常の転舵制御への復帰開始時点で実転舵角が操舵角から求めた転舵指令角と一致し、Nズレを発生することなく、スムーズに補正制御の途中から通常の転舵制御へ移行することができる。

0064

実施例2は、転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わった場合、および、転舵指令角の増加補正の途中にて乗り越えが成功した場合における通常転舵制御への移行制御を加えた例である。
なお、全体構成については、図1及び図2に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。

0065

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御手段]
図10は、実施例2の転舵コントローラ12にて実行される高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
なお、この処理は、転舵コントローラ12においてSBW制御演算周期(例えば、5msec)毎に実行される。
また、図10のフローチャートにおいて、ステップS201〜ステップS214の各ステップは、図3に示すフローチャートのステップS101〜ステップS114の各ステップと同様の処理を行うステップであるため、説明を省略する。

0066

ステップS215では、ステップS213での通電時間T_thを経過したとの判断に続き、転舵指令角を減少補正する制御を実行し、ステップS216へ移行する。

0067

ステップS216では、ステップS215での転舵指令角の減少補正に続き、転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下か否かを判断し、Yesの場合はステップS217へ移行し、Noの場合はステップS215へ戻る。
ここで、第2閾値I_th2は、前記第1閾値I_th1より小さな値、つまり、転舵モータ6の定格電流から十分な安全マージンを持った値に設定される。

0068

ステップS217では、ステップS216でのI≦I_th2との判断に続き、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御を実行し、ステップS207へ移行する。

0069

ステップS218では、ステップS212での転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3未満であるとの判断に続き、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上であるか否かを判断し、Yesの場合はステップS203へ移行し、Noの場合はステップS211へ移行する。

0070

次に、作用を説明する。
以下、実施例2の車両用操舵制御装置における、[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御動作]、[転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わった場合の制御復帰作用]、[転舵指令角の増加補正中に乗り越えが成功した場合の制御復帰作用]、[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御作用]について説明する。

0071

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御動作]
ステップS201〜ステップS214までの制御動作は、図3のフローチャートと同様であるので、説明を省略する。
ステップS213において、通電時間T_thを経過したと判断されると、ステップS213からステップS215へと進み、転舵指令角を減少補正し、さらに、ステップS216にて転舵モータ実電流Iが第2閾値I_th2以下か否かを判断し、I≦I_th2と判断された場合にはステップS217へ進み、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御が実行される。
そして、ステップS207において、操舵角から求めた転舵指令角≦実転舵角という収束条件が成立すると、ステップS207からステップS203へと進み、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御に復帰する。
一方、ステップS212でI増加補正後の転舵指令角以上であるか否かが判断され、増加補正後の転舵指令角が操舵角から求めた転舵指令角を超えている間はステップS211へ戻り、増加補正が継続されるが、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上になると、ステップS218からステップS203へと進み、正常時におけるSBWシステムでの転舵制御に復帰する。

0072

[転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わった場合の制御復帰作用]
図11は、転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わり、通電時間T_thを経過した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図11に基づき、転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わり、通電時間T_thを経過した場合の制御復帰作用を説明する。
時刻t2から転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行するまでは、図6に示すタイムチャートと同様である。
そして、時刻t3にて運転者が轍や縁石などの乗り越えを意図してハンドル操作を行った場合であって、操舵ハンドル1に対し操舵反力を超える操舵トルクを付与することで、ハンドル操作方向に操舵角が高まった場合には、ステップS209の操舵角の切り増し条件が成立し、ステップS210→ステップS211へと進んで、転舵指令角の増加補正が開始される。
この転舵指令角の増加補正は、開始時刻t3から転舵モータ電流値が第3閾値I_th3(=乗り越え閾値)を超える時刻t4までは、急激に転舵モータ電流値を立ち上げることでなされ、時刻t4から時刻t5(開始時刻t3に通電時間T_thを加えた時刻)に達するまでは、転舵指令角の増加補正がステップS212→ステップS213→ステップS214の流れが繰り返され、転舵モータ電流値が第3閾値I_th3が維持される。
この例の場合、転舵指令角の増加補正があっても、図11の実転舵角特性に示すように、時刻t4の時点から時刻t5までの間において実転舵角の増大がない。このことは、大きな転舵トルクを発生しても轍などの転舵負荷の乗り越えが不成功に終わってしまったことをあらわしいている。
転舵指令角の増加補正終了時刻t5に達すると、ステップS213からステップS215→ステップS216へと進み、転舵指令角の減少補正に移行し、ステップS216にて第2閾値I_th2以下と判断されると、ステップS217へと進み、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御に移行する。つまり、第2閾値I_th2以下と判断された時刻t6からは、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御へ移行する。

0073

[転舵指令角の増加補正中に乗り越えが成功した場合の制御復帰作用]
図12は、転舵指令角の増加補正中に乗り越えが成功した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
この図12に基づき、転舵指令角の増加補正中に乗り越えが成功した場合の制御復帰作用を説明する。
時刻t2から転舵指令角を固定する転舵保持制御モードに移行するまでは、図6に示すタイムチャートと同様である。
そして、時刻t3にて運転者が轍や縁石などの乗り越えを意図してハンドル操作を行った場合であって、操舵ハンドル1に対し操舵反力を超える操舵トルクを付与することで、ハンドル操作方向に操舵角が高まった場合には、ステップS209の操舵角の切り増し条件が成立し、ステップS210→ステップS211へと進んで、転舵指令角の増加補正が開始される。
この転舵指令角の増加補正は、開始時刻t3から転舵モータ電流値が第3閾値I_th3(=乗り越え閾値)を超える時刻t4までは、急激に転舵モータ電流値を立ち上げることでなされ、時刻t4から転舵モータ電流値が第3閾値I_th3を下回る時刻t5までは、ステップS212→ステップS213の流れが繰り返され、転舵モータ電流値が第3閾値I_th3が維持される。
この転舵指令角の増加補正により、実転舵角特性に示すように、時刻t4から時刻t5まで実転舵角が増していて、時刻t5は、開始時刻t3に通電時間T_thを加えた時刻に達する前の時刻である。このことは、大きな転舵トルクの発生により通電時間T_thに到達する前に轍などの転舵負荷の乗り越えに成功していることをあらわしいている。
したがって、転舵負荷の乗り越えに成功時刻t5に達すると、ステップS212からステップS218へ進み、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上であるか否かが判断される。すなわち、転舵負荷の乗り越えが成功した場合、転舵モータ6の電流値は負荷乗り越え時から下がるので、時刻t6を経過した後の時刻t7のの少し前にて操舵角を切り増し操作が行われると、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上という条件が成立し、ステップS218からステップS203へ進み、時刻t7からは通常の転舵制御(操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御)へ復帰することになる。

0074

[高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御作用]
上記のように、実施例2の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段(ステップS211)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが、転舵指令角の増加補正により前記第1閾値I_th1より大きな第3閾値I_th3以上となり(ステップS212)、増加補正状態を維持したままで通電時間T_thを経過した後(ステップS213)、転舵指令角の減少補正に移行し(ステップS215)、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1より小さな第2閾値I_th2以下となった場合(ステップS216)、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御に移行する(ステップS217)。
例えば、転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わった場合には、増加補正の終了時点で転舵指令角と実転舵角との間に大きな偏差を持つにもかかわらず、いかにスムーズに通常の転舵制御へ復帰するかが重要になる。
これに対し、実施例2では、上記のように、転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わった場合、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御に移行した後、通常制御に復帰するようにしたため、運転者によりハンドルの戻し操作が行われるまで偏差の小さい転舵制御が維持されることで、その後、運転者の切り戻し操作を待って、スムーズに通常の転舵制御へ復帰することができる。

0075

実施例2の車両用操舵制御装置において、前記転舵指令角増加補正手段(ステップS211)は、転舵指令角の増加補正によっても前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3に達しない場合であって(ステップS212)、かつ、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上となった場合(ステップS218)、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御(ステップS203)に復帰する乗り越え成功時転舵制御復帰手段を設けた。
例えば、転舵指令角の増加補正によって乗り越えが成功した場合には、いかに早期のタイミングにて通常の転舵制御へ復帰するかが重要になる。
これに対し、実施例2では、上記のように、転舵指令角の増加補正によって乗り越えが成功した場合、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上となった時点から通常の転舵制御へ復帰するするため、運転者が切り増しハンドル操作を行ったタイミングにて通常の転舵制御へ復帰されることで、乗り越え直後に行われる運転者の切り増し操作に応答する早期のタイミングにて通常の転舵制御へ復帰することができる。

0076

次に、効果を説明する。
実施例2の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(8)に加え、下記に列挙する効果が得られる。

0077

(9) 前記転舵指令角増加補正手段(ステップS211)は、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが、転舵指令角の増加補正により前記第1閾値I_th1より大きな第3閾値I_th3以上となり(ステップS212)、増加補正状態を維持したままで通電時間T_thを経過した後(ステップS213)、転舵指令角の減少補正に移行し(ステップS215)、前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第1閾値I_th1より小さな第2閾値I_th2以下となった場合(ステップS216)、減少補正した転舵指令角を用いた転舵制御に移行する(ステップS217)ため、運転者によりハンドルの戻し操作が行われるまで偏差の小さい転舵制御が維持されることで、その後、運転者の切り戻し操作を待って、スムーズに通常の転舵制御へ復帰することができる。

0078

(10) 前記転舵指令角増加補正手段(ステップS211)は、転舵指令角の増加補正によっても前記左右前輪9,9を転舵する転舵モータ実電流Iが第3閾値I_th3に達しない場合であって(ステップS212)、かつ、操舵角から求めた転舵指令角が増加補正後の転舵指令角以上となった場合(ステップS218)、操舵角から求めた転舵指令角を用いた転舵制御(ステップS203)に復帰する乗り越え成功時転舵制御復帰手段を設けたため、運転者が切り増しハンドル操作を行ったタイミングにて通常の転舵制御へ復帰されることで、乗り越え直後に行われる運転者の切り増し操作に応答する早期のタイミングにて通常の転舵制御へ復帰することができる。

0079

以上、本発明の車両用操舵制御装置を実施例1および実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。

0080

本発明は、タイヤがそれ以上転舵できない状況で転舵アクチュエータに電流が流れ続けることを防止し、かつ、運転者が転舵負荷を乗り越えようとする意思を示した場合には、転舵アクチュエータが瞬間的に大きな力を発生させることができ、また、転舵負荷が減少し、切り増し方向に転舵可能となった場合、通常の転舵制御に復帰することができるような転舵アクチュエータの転舵指令角の補正手段を提供するものである。
したがって、具体的な構成は、実施例1,2に限られるものではなく、要するに、操向輪を転舵する転舵負荷の値が第1閾値以上となった場合、転舵トルクを減少させるように転舵指令角を減少補正し、転舵指令角が減少補正された後、運転者に転舵意思があると判定された場合、転舵トルクを増加させるように転舵指令角を増加補正する手段を備えたものであれば本発明に含まれる。

0081

実施例1,2では、バックアップ機構としてバックアップクラッチのみを備えたステアバイワイヤシステムへの適用例を示したが、例えば、バックアップクラッチとバックアップケーブルを有するSBWシステムであっても、また、バックアップ機構を持たないSBWシステムであっても適用することができる。要するに、操作部と転舵部を切り離し、操作部の操作状態に応じた転舵指令角に基づいて転舵アクチュエータを駆動する転舵制御手段を備えた車両用操舵制御装置であれば適用できる。

図面の簡単な説明

0082

実施例1の車両用操舵制御装置を適用したステアバイワイヤシステムの全体構成図である。
実施例1のステアバイワイヤ制御のうち転舵制御としてロバストモデルマッチング手法を採用した場合の制御ブロック図である。
実施例1の転舵コントローラ12にて実行される高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御処理の流れを示すフローチャートでである。
実施例1の転舵指令角の増加制御での通電時間をどのように決定するかを説明する転舵モータ電流値特性図である。
操舵角を増大している途中で転舵負荷にタイヤが当たったロック状態となった場合の操舵角・転舵角・転舵指令角・転舵アクチュエータ実電流値の各特性を示すタイムチャートである。
実施例1の車両用操舵制御装置において転舵指令角が減少補正されるときの(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
実施例1の車両用操舵制御装置において転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り増した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
実施例1の車両用操舵制御装置において転舵指令角の減少補正後に操舵トルクが増加した場合の(操舵トルク)・(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
実施例1の車両用操舵制御装置において転舵指令角の減少補正後にハンドルを切り戻した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
実施例2の転舵コントローラ12にて実行される高転舵負荷時の転舵指令角増減補正制御処理の流れを示すフローチャートでである。
実施例2の車両用操舵制御装置において転舵指令角の増加補正によっても乗り越えが不成功に終わり、通電時間T_thを経過した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。
実施例2の転舵指令角の増加補正中に乗り越えが成功した場合の(操舵角から算出された転舵指令角)・(補正後の転舵指令角)・(実転舵角)・(転舵モータ電流値)の各特性を示すタイムチャートである。

符号の説明

0083

1操舵ハンドル(操作部)
2操舵角センサ
3操舵トルクセンサ
4反力モータ
5バックアップクラッチ
6転舵モータ(転舵アクチュエータ)
7転舵角度センサ
8舵取り機構(転舵部)
9,9左右前輪(操向輪)
10転舵トルクセンサ
11反力コントローラ
12転舵コントローラ(転舵制御手段)
13 通信ライン

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