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技術 ブレーキ制御装置

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 宮崎徹也
出願日 2006年2月23日 (14年10ヶ月経過) 出願番号 2006-047011
公開日 2007年9月6日 (13年3ヶ月経過) 公開番号 2007-223466
状態 特許登録済
技術分野 ブレーキシステム(制動力調整) ブレーキシステム(制動力調整)
主要キーワード 中間目標値 変動許容幅 推定温度値 回復判定 中間目標 発生エネルギ 制御管 低下温度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

摩擦部材温度推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑え、ブレーキの効き具合をより安定化させる。

解決手段

ブレーキ制御装置は、作動流体の供給により摩擦部材押圧して車輪制動する制動力付与機構と、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制すべく、作動流体の圧力を制御するために設定される目標値を摩擦部材の推定温度を利用して演算する制御部と、を備える。制御部は、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される所定の場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限する。

概要

背景

従来から、ブレーキパッド温度推定装置推定したブレーキパッド推定温度に基づいて、車両加速時の駆動輪スリップを抑制するためのブレーキ制御を行う車輪スリップ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このブレーキパッド温度推定装置においては、通常の制動時及びブレーキ制御時のそれぞれにおけるブレーキパッドの上昇温度と、制動及びブレーキ制御を行っていないときのブレーキパッドの低下温度とが算出される。これらの上昇温度及び低下温度からブレーキパッドの温度が推定される。

また、温度検出手段により検出された温度の連続的な変化に追従してパッドロータとの間の摩擦係数を決定し、この摩擦係数と踏力とに基づいてブレーキ油圧目標値を決定する車両ブレーキ装置のための電気的制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。あるいは、ブレーキ本体の摩擦材表面温度の変化を検出する温度センサの出力を受けてエアタンクからブレーキ本体に供給される作動流体の圧力がブレーキ本体の摩擦材の摩擦係数の変化に応じて補正されるように制御する車両用ブレーキ装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平7−156780号公報
特開平5−92760号公報
特開平3−7644号公報

概要

摩擦部材温度推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑え、ブレーキの効き具合をより安定化させる。ブレーキ制御装置は、作動流体の供給により摩擦部材押圧して車輪を制動する制動力付与機構と、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制すべく、作動流体の圧力を制御するために設定される目標値を摩擦部材の推定温度を利用して演算する制御部と、を備える。制御部は、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される所定の場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限する。

目的

そこで、本発明は、摩擦部材温度の推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑え、ブレーキの効き具合をより安定化させることができるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

摩擦部材押圧して車輪制動する制動力付与機構と、前記摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制すべく、前記摩擦部材の押圧力を制御するために設定される目標値を前記摩擦部材の推定温度を利用して演算する制御部と、を備えるブレーキ制御装置であって、前記制御部は、摩擦部材温度推定精度の低下が予測される所定の場合に前記目標値の演算に際して前記推定温度の利用を制限することを特徴とするブレーキ制御装置。

請求項2

前記制御部は、前記推定温度を利用することなく演算された未補正目標値を推定温度に応じて補正することにより補正済目標値を演算し、当該補正済目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御する一方、前記所定の場合には補正済目標値の代わりに未補正目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

請求項3

前記制御部は、補正済目標値に代えて未補正目標値を用いる際に補正済目標値から未補正目標値へと徐々に移行させることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。

請求項4

前記所定の場合は、摩擦部材の温度推定が開始される際に取得される温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離していると予測される場合であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

請求項5

前記制御部は、車両に搭載された少なくとも2つの温度センサの一方による測定値を前記温度初期値として取得し、前記温度センサの他方による測定値と前記温度初期値とを比較することにより、前記実際の摩擦部材温度からの前記温度初期値の乖離が予測されるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載のブレーキ制御装置。

請求項6

前記所定の場合は、摩擦部材温度の時間変化率所定値を超えた場合であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

請求項7

前記制御部は、前記制動力付与機構が発生させる制動力の大きさを示す指標に基づいて前記摩擦部材温度の時間変化率が前記所定値を超えたか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ制御装置。

請求項8

前記所定の場合は、摩擦部材の推定温度を演算するために必要とされる測定値を測定するセンサに異常が生じた場合であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

請求項9

前記制御部は、前記推定温度の利用を制限している間、温度推定の精度が回復したか否かを判定し、精度が回復したと判定した場合には前記推定温度の利用制限解除することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

請求項10

前記制御部は、推定温度の利用制限を開始する際に、回復判定基準値よりも大きな差を有する2つの温度初期値のそれぞれから推定温度の演算を開始し、前記2つの温度初期値のそれぞれから導出された2つの推定温度の差が前記回復判定基準値よりも小さくなったときに温度推定の精度が回復したと判定することを特徴とする請求項9に記載のブレーキ制御装置。

技術分野

0001

本発明は、車両に設けられた車輪に付与される制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。

背景技術

0002

従来から、ブレーキパッド温度推定装置推定したブレーキパッド推定温度に基づいて、車両加速時の駆動輪スリップを抑制するためのブレーキ制御を行う車輪スリップ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このブレーキパッド温度推定装置においては、通常の制動時及びブレーキ制御時のそれぞれにおけるブレーキパッドの上昇温度と、制動及びブレーキ制御を行っていないときのブレーキパッドの低下温度とが算出される。これらの上昇温度及び低下温度からブレーキパッドの温度が推定される。

0003

また、温度検出手段により検出された温度の連続的な変化に追従してパッドロータとの間の摩擦係数を決定し、この摩擦係数と踏力とに基づいてブレーキ油圧目標値を決定する車両ブレーキ装置のための電気的制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。あるいは、ブレーキ本体の摩擦材表面温度の変化を検出する温度センサの出力を受けてエアタンクからブレーキ本体に供給される作動流体の圧力がブレーキ本体の摩擦材の摩擦係数の変化に応じて補正されるように制御する車両用ブレーキ装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平7−156780号公報
特開平5−92760号公報
特開平3−7644号公報

発明が解決しようとする課題

0004

摩擦部材の温度と摩擦係数とは一定の関係を有しているから、摩擦により生じる制動力は摩擦部材の温度に応じて変動する。このことから、上述のように従来から摩擦部材の温度に応じて制動力を調整することが行われている。そのために、ブレーキの摩擦部材の温度の推定値を用いる場合には、例えば異常の発生や外乱等に起因して温度の推定精度が低下してしまうことがあり得る。推定精度が低下すれば、摩擦部材の実際の温度から推定温度が乖離する可能性がある。推定温度が摩擦部材の実際の温度から乖離した場合には、摩擦部材の温度変化に起因する制動力の変動を充分に抑制することが難しくなる。

0005

そこで、本発明は、摩擦部材温度の推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑え、ブレーキの効き具合をより安定化させることができるブレーキ制御装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、摩擦部材を押圧して車輪を制動する制動力付与機構と、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制すべく、摩擦部材の押圧力を制御するために設定される目標値を摩擦部材の推定温度を利用して演算する制御部と、を備えるブレーキ制御装置であって、制御部は、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される所定の場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限する。

0007

この態様によれば、ブレーキ制御装置は、摩擦部材を押圧して車輪を制動する制動力付与機構と、摩擦部材の押圧力を制御するために設定される例えば目標圧目標減速度等の目標値を摩擦部材の推定温度を利用して演算する制御部と、を備える。目標値の演算に際して摩擦部材の推定温度を利用することにより摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制することが可能となる。ブレーキの効きの変動が抑制されることにより、制動時における摩擦部材の温度変化に伴う違和感を軽減することができる。

0008

このとき制御部は、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限する。仮に推定精度の低下により推定温度が摩擦部材の実際の温度から乖離したとしても、推定温度の利用が制限されることにより目標値の演算結果への推定温度の影響を軽減することができる。したがって、推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑えることが可能となり、ブレーキの効き具合をより安定化させることができる。

0009

なお、ここで摩擦部材温度は、例えば、摩擦部材の温度初期値と、制動により生じる摩擦熱に基づいて演算される上昇温度と、外気温との温度差に基づいて演算される冷却温度とを用いて推定することができる。

0010

また、制御部は、推定温度を利用することなく演算された未補正目標値を推定温度に応じて補正することにより補正済目標値を演算し、当該補正済目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御する一方、所定の場合には補正済目標値の代わりに未補正目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御してもよい。

0011

この態様によれば、未補正目標値は摩擦部材の推定温度を利用することなく演算され、補正済目標値は未補正目標値を推定温度に応じて補正することにより演算される。制御部は補正済目標値を通常用いて摩擦部材の押圧力を制御する。その一方、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される所定の場合には、制御部は、補正済目標値の代わりに未補正目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御する。これにより、推定精度が良好である場合には補正済目標値を用いることにより摩擦部材の温度変化に起因する制動力の変動を抑制することが可能となる。推定精度の低下が予測される場合には推定温度の利用が停止され、補正済目標値の代わりに未補正目標値が用いられる。よって、摩擦部材温度の推定精度に応じてより適切な目標値を用いることができるので、より適切に制動力を制御することができる。

0012

このとき制御部は、補正済目標値に代えて未補正目標値を用いる際に補正済目標値から未補正目標値へと徐々に移行させてもよい。この態様によれば、補正済目標値を用いて制動力を制御する温度補償制御から未補正目標値を用いて制動力を制御する温度非補償制御へと緩やかに移行させることができる。よって、摩擦部材温度の利用を停止する際に生じ得るブレーキの効きの変動を緩和することができる。

0013

また、上述の所定の場合は、摩擦部材の温度推定が開始される際に取得される温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離していると予測される場合であってもよい。この態様によれば、例えば車両の走行駆動源始動時などのように摩擦部材の温度推定が開始される際に、車両に搭載された温度センサの1つである外気温センサ等から温度推定に使用する温度初期値が取得される。例えば外気温センサに異常がある場合や、走行駆動源が直近駆動停止から充分に時間を経ずに始動された場合などにおいては、この温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離していると予測される。温度推定に使用される初期値が実際の摩擦部材温度から所定値以上隔たっている場合には、摩擦部材温度の推定精度の低下が予測される。よって、制御部は、このような場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限することにより、推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を簡易に抑えることができる。

0014

このとき制御部は、車両に搭載された少なくとも2つの温度センサの一方による測定値を温度初期値として取得し、温度センサの他方による測定値と温度初期値とを比較することにより、実際の摩擦部材温度からの温度初期値の乖離が予測されるか否かを判定してもよい。測定により取得された温度初期値と他の温度センサによる測定値との差が大きければ温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離している可能性が高いと考えられる。一方、両者の差が小さければ温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離している可能性は低いと期待される。よって、2つの温度センサの測定値を比較することにより、実際の摩擦部材温度からの温度初期値の乖離が予測されるか否かを判定することができる。このようにすれば摩擦部材温度を直接測定するための計測機器を設けることなく車両に既存の温度センサを判定に用いることができるという点でも好ましい。

0015

更に、上述の所定の場合は、摩擦部材温度の時間変化率が所定値を超えた場合であってもよい。例えば浸水強風等により摩擦部材が急冷された場合には、摩擦部材温度の時間変化率が所定値を超えて大きくなり得る。このような場合には摩擦部材温度の推定精度の低下が予測されるので、目標値の演算に際して推定温度の利用を制限することにより推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑えることができる。

0016

このとき制御部は、制動力付与機構が発生させる制動力の大きさを示す指標に基づいて摩擦部材温度の時間変化率が所定値を超えたか否かを判定してもよい。摩擦部材温度が変動すれば摩擦部材の摩擦係数が変動し、これに伴って例えば車両減速度等の制動力付与機構が発生させる制動力の大きさを示す指標も変動する。よって、制動力の大きさを示す指標の変化から摩擦部材温度の変化を判定することができる。このようにすれば摩擦部材温度を直接測定するための計測機器を設けることなく摩擦部材温度の時間変化率をとらえることができるという点で好ましい。

0017

また、所定の場合は、摩擦部材の推定温度を演算するために必要とされる測定値を測定するセンサに異常が生じた場合であってもよい。このように、温度推定に必要な測定値を測定するセンサに異常が生じた場合にも推定精度の低下が予測されるので、目標値の演算に際して推定温度の利用を制限することが望ましい。

0018

制御部は、推定温度の利用を制限している間、温度推定の精度が回復したか否かを判定し、精度が回復したと判定した場合には推定温度の利用制限解除してもよい。この態様によれば、推定温度の利用を制限している間、温度推定の精度が回復したか否かが判定され、摩擦部材温度の推定精度が回復したら利用制限が速やかに解除されることとなる。これにより、推定精度の回復とともに摩擦部材の推定温度の利用を再開し、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制することが可能となる。

0019

制御部は、推定温度の利用制限を開始する際に、回復判定基準値よりも大きな差を有する2つの温度初期値のそれぞれから推定温度の演算を開始し、2つの温度初期値のそれぞれから導出された2つの推定温度の差が回復判定基準値よりも小さくなったときに温度推定の精度が回復したと判定してもよい。推定温度の値は演算を繰り返すにつれて温度初期値によらず収束していくものと考えられる。よって、2つの推定温度の値の差が設定された回復判定基準値よりも小さくなったことを条件として、推定精度が回復したものと判定することができる。

発明の効果

0020

本発明によれば、摩擦部材温度の推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑え、ブレーキの効き具合をより安定化させることができる。

発明を実施するための最良の形態

0021

以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。

0022

図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置10を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置10は、車両用電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12への操作に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に設定するものである。また、本実施形態に係るブレーキ制御装置10が搭載された車両は、4つの車輪のうちの操舵輪操舵する図示されない操舵装置や、これら4つの車輪のうちの駆動輪を駆動する図示されない内燃機関モータ等の走行駆動源等を備えるものである。

0023

制動力付与機構としてのディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ20FR〜20RLを含む。そして、各ホイールシリンダ20FR〜20RLは、それぞれ異なる流体通路を介して油圧アクチュエータ80に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」という。

0024

ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ20に油圧アクチュエータ80からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ20を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。あるいは、流体力により摩擦部材の押圧力を制御するのではなく、例えば電動モータ等の電動駆動機構を用いて摩擦部材の車輪への押圧力を制御する制動力付与機構を用いることもできる。

0025

ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態切り換えられる常閉型電磁開閉弁である。また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを貯留するためのリザーバタンク26が接続されている。

0026

マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されており、ブレーキ油圧制御管16は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右マスタカット弁27FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、左マスタカット弁27FLが設けられている。これらの右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FLは、何れも、非通電時に開状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に閉状態に切り換えられる常開型電磁弁である。

0027

また、右前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧力センサ48FRが設けられており、左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を計測する左マスタ圧力センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FRおよび48FLによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。

0028

一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギ窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。

0029

アキュムレータ50は、オイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。

0030

そして、高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、何れも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁リニア弁)である。

0031

また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。

0032

右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近には、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力であるホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という。

0033

上述の右マスタカット弁27FRおよび左マスタカット弁27FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、本実施形態における制御部としての電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納プログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェースメモリ等を備えるものである。

0034

図2は、本実施形態に係る制御ブロック図である。ECU200には、上述のマスタカット弁27FR,27FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等が電気的に接続されている。また、ECU200には、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が与えられる。更に、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が与えられ、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が与えられ、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が与えられる。

0035

また、ECU200には車輪速センサ60が電気的に接続されており、車輪速度を示す信号が与えられる。更にECU200には外気温センサ62やエンジン水温センサ64、吸気温センサ(図示せず)等を含む複数の温度センサが電気的に接続されている。外気温センサ62は車両内部の温度調整用空調機器付随して設けられており、車両外部の温度を示す信号をECU200に与える。エンジン水温センサ64は車両を走行駆動するためのエンジンを冷却する冷却水の温度を示す信号をECU200に与える。

0036

このように構成されるブレーキ制御装置10では、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込みストロークとマスタシリンダ圧とに基づいて演算周期ごとに車両の目標減速度が逐次設定され、この目標減速度に応じて各ホイールシリンダ20の目標液圧が逐次設定される。そして、各ホイールシリンダ圧が目標液圧に追従するようにECU200により増圧弁40および減圧弁42が制御される。その結果、ブレーキディスク22にブレーキパッドが押圧されて目標減速度に対応した制動力が各車輪に付与される。

0037

なお、このときマスタカット弁27FR及び27FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。

0038

ところで、ブレーキディスク22とブレーキパッドとの間の摩擦により生じた摩擦熱のためにブレーキパッドの温度が制動時に一時的に上昇することがある。ブレーキパッドの温度と摩擦係数との間には一定の関係があるから、ブレーキパッドの温度上昇によりブレーキパッドの摩擦係数が変化する。摩擦係数が変化すれば制動力にも変化が生じ、ブレーキの効き具合が変動してしまうこととなる。

0039

そこで、ECU200はブレーキパッドの温度を推定し、この推定温度を利用して目標液圧を演算する。これにより、ブレーキパッドの温度変化に起因するブレーキの効き具合の変動を抑制することが可能となる。また、ブレーキパッドの温度を直接測定することなく推定するためブレーキパッドの温度測定用に温度センサを設ける必要が無いので、温度センサ設置のコストが低減されるという点で好ましい。

0040

具体的には、ECU200は、ブレーキパッドの推定温度に応じた温度補正係数を目標液圧に乗算することにより目標液圧を補正する。ECU200には、ブレーキパッドの推定温度と温度補正係数との関係が予め設定されて記憶されている。なお、ECU200は、温度補正係数を目標減速度に乗算することにより温度の変動によるブレーキの効きの変化を補償するようにしてもよいし、他の手法により温度変化を目標値に反映させるようにしてもよい。なお以下では適宜、上述のようにブレーキパッドの温度変化に起因するブレーキ効き具合の変動を抑制するよう制動力を制御することをブレーキ温度補償制御と称し、ブレーキパッドの温度を利用することなく制動力を制御することを温度非補償制御と称することとする。

0041

図3は、本実施形態に係るブレーキパッドの推定温度と温度補正係数との関係の一例を示す図である。図3縦軸は温度補正係数を示し、図3横軸はブレーキパッドの推定温度を示す。図3に示されるように、常温を含む所定の温度領域Tにおいては温度補正係数は1に設定されている。したがって、ECU200により演算された推定温度値が温度領域Tに含まれる場合には、ブレーキパッドの推定温度とは無関係に目標減速度から演算された未補正の目標液圧と、温度補正係数を乗算した補正済の目標液圧とは一致する。

0042

一方、温度領域Tから外れ温度値においては温度値が温度領域Tから離れるほど緩やかに温度補正係数が1よりも大きくなるよう設定されている。したがって、演算された推定温度値が温度領域Tに含まれない場合には、ECU200は、推定温度値に応じた温度補正係数によりブレーキの効きが強化されるよう目標液圧を補正する。なお、温度値が温度領域Tを超えて大きい場合には温度補正係数に最大値が設定されている。このため温度値の上昇につれて温度補正係数がこの最大値に達すると、温度補正係数はこの最大値に一致して均一値となる。

0043

本実施形態においてはECU200は、ブレーキパッドの直近の推定温度に演算周期の間の温度変化分加算することにより推定温度を演算する。温度変化分は、演算周期の間の上昇温度から冷却温度を減算することにより与えられる。上昇温度は、ホイールシリンダ圧センサ44、車輪速センサ60等の測定値を用いて摩擦による発生エネルギから上昇温度を推定する公知の手法により演算され、冷却温度は外気温センサ62の測定温度等を用いて公知の手法により演算される。車両の走行駆動源の始動時などのようにECU200がブレーキパッドの温度推定を開始する際には、直近の推定温度に代えて適宜取得される温度初期値が用いられる。

0044

ところが、例えば異常の発生や外乱等に起因してブレーキパッド温度の推定精度が低下してしまうことがあり得る。推定精度が低下すれば摩擦部材の実際の温度から推定温度が乖離してしまうおそれがある。また、摩擦部材の実際の温度よりも推定温度が大きく変動してしまう可能性もある。そうすると、ブレーキパッドの温度変化に起因する制動力の変動を抑制してブレーキの効き具合を安定化させることが難しくなる可能性がある。

0045

そこで、本実施形態においては、ECU200は温度補償制御を通常実行し、ブレーキパッド温度の推定精度が低下すると予測される場合に温度非補償制御へと緩やかに移行する。すなわち通常はECU200は上述のように、推定温度を利用することなく演算された未補正目標圧を推定温度に応じて補正することにより補正済目標圧を演算し、当該補正済目標圧を用いてホイールシリンダ圧を制御する。その一方、ECU200は、温度の推定精度が低下すると予測される場合に補正済目標圧の代わりに未補正目標圧を用いてホイールシリンダ圧を制御する。このときECU200は、補正済目標圧と未補正目標圧との間に設定される中間目標値を用いて補正済目標圧から未補正目標圧へと徐々に移行させる。このようにして、ブレーキパッド温度の推定精度が低下すると予測される場合に目標液圧の演算に際しての推定温度の利用が制限される。

0046

図4は、本実施形態におけるホイールシリンダ圧の制御処理を説明するためのフローチャートである。図4に示される処理は制動時に所定の周期例えば数msecごとに実行されてホイールシリンダ圧が制御される。図4に示されるように、制動要求が発生して処理が開始されると、ECU200は、まずブレーキペダル12の踏み込みストロークとマスタシリンダ圧とに基づいて車両の目標減速度を演算する(S10)。目標減速度が演算されると、ECU200は、ブレーキパッド温度を用いることなく未補正目標圧を演算する(S12)。

0047

次いでECU200は、ブレーキパッド温度の推定精度の低下が予測される状態であるか否かを判定する(S14)。以下では、ブレーキパッド温度の推定精度の低下が予測される状態を便宜上適宜「推定精度低下状態」と称する。いかなる場合を推定精度低下状態
とするかについては図5及び図6を参照して詳述する。

0048

推定精度低下状態に該当しないと判定された場合には(S14のNo)、ECU200は温度補償制御を実行すべく、ブレーキパッドの推定温度を演算する(S16)。演算された推定温度からECU200は、予め記憶されたブレーキパッドの推定温度と温度補正係数との関係(図3参照)を用いて温度補正係数を導出する(S18)。この温度補正係数を未補正目標圧に乗ずることによりECU200は補正済目標圧を演算する(S20)。そしてECU200は、各ホイールシリンダ圧が補正済目標圧に追従するよう増圧弁40および減圧弁42を制御する。典型的にはホイールシリンダ圧センサ44により測定されるホイールシリンダ圧と補正済目標圧との偏差とするようホイールシリンダ圧はフィードバック制御される。その結果、ホイールシリンダ圧に応じてブレーキディスク22にブレーキパッドが押圧され、目標減速度に対応した制動力が各車輪に付与される。

0049

一方、推定精度低下状態に該当すると判定された場合には(S14のYes)、ECU200は更に直前の演算周期において導出された温度補正係数が基準値よりも大きいか否かを判定する(S24)。温度補正係数が基準値以下である場合には(S24のNo)、ECU200は、各ホイールシリンダ圧が未補正目標圧に追従するよう制御する(S22)。これにより、直前の演算周期で演算された補正済目標圧から未補正目標圧へと目標液圧が置き換えられる。ここで基準値は、この置き換えによるブレーキの効きの変動が著しいものとならないように適宜設定される。具体例を挙げると、基準値は例えば1.05に設定される。そうすると、直前の温度補正係数が1.05以下である場合、つまり未補正目標圧に対して5%以内の増加補正を行っていた場合には、速やかに補正済目標圧から未補正目標圧へと目標液圧が置き換えられる。

0050

これに対して、温度補正係数が基準値を超える場合には(S24のYes)、ECU200は、補正済目標圧と未補正目標圧との中間の値となる中間目標圧を演算し(S26)、各ホイールシリンダ圧が中間目標圧に追従するよう制御する(S22)。中間目標圧は、ブレーキの効きの変動が著しいものとならない程度に直前の温度補正係数を減少させて得られる中間補正係数を未補正目標圧に乗じて算出される。ECU200はこの中間目標圧を1回の制動中均一に維持し、次回の制動時に更に未補正目標圧に近づけて減少させる。あるいは、次回の制動時には未補正目標圧に置き換えてしまってもよい。このようにECU200は補正済目標圧を段階的に未補正目標圧まで制動ごとに減少させていく。例えば直前の演算周期における温度補正係数が1.12である場合には、ECU200は制動ごとに中間補正係数を例えば1.07、1.02、1.00というように段階的に減少させる。なお、制動ごとに目標圧を未補正目標圧に近づけるのではなく、経過時間や走行距離等に応じて徐々に温度補償制御から温度非補償制御に移行するようにしてもよい。

0051

次に、推定精度低下状態の判定処理について説明する。図5は、本実施形態において推定精度低下状態を判定するための処理の一例を説明するためのフローチャートである。図5においては、ブレーキパッドの温度推定が開始される際に取得される温度初期値が実際の摩擦部材温度から乖離していると予測される場合を推定精度低下状態と判定するための処理が示されている。本実施形態においては、ブレーキパッドの温度推定は車両の走行駆動源の始動時から開始され、ブレーキパッドの温度推定に用いられる温度初期値として外気温センサ62の当該始動時における測定値が用いられる。よって、図5に示される処理は、車両の走行駆動源が始動されたとき、典型的にはイグニッションキーがONとされたとき(以下適宜、IG−ON時という)にECU200により実行される。

0052

図5に示される処理が開始されると、ECU200は、まず走行駆動源の直近の停止時、典型的にはイグニッションキーがOFFとされたとき(以下適宜、IG−OFF時という)からの経過時間が、設定された所定の時間よりも短いか否かを判定する(S30)。経過時間は例えばECU200の内部に構築されたタイマー等により計時される。経過時間が所定時間より短いと判定された場合には(S30のYes)、ECU200は、推定精度低下状態であると判定する(S42)。所定時間は、例えば、走行中に最大限加熱されたブレーキパッドがIG−OFF後に外気温と同程度にまで自然に冷却されるのに必要とされる時間に予め設定することが望ましい。なぜなら、前回のIG−OFF時から充分に時間が経過していないと、前回の走行中に加熱されたブレーキパッドが外気温と同程度にまで冷却されていない可能性がある。このような場合には外気温センサ62の測定温度は実際のブレーキパッド温度から乖離していると予測され、外気温センサ62の測定温度を推定温度の初期値として用いるのは適当ではないからである。

0053

IG−OFFからの時間が上述の所定時間を経過していると判定された場合には(S30のNo)、ECU200は、外気温センサ62に異常があるか否かを判定する(S32)。これは、例えば過去の走行中に外気温センサ62に故障等が発生しその故障がまだ修復されていないことを示す信号が記録されているというような場合に外気温センサ62に異常有りと判定するものである。外気温センサ62に異常有りと判定された場合には(S32のYes)、ECU200は推定精度低下状態であると判定する(S42)。外気温センサ62が故障中等の異常状態にある場合には、その測定温度を推定温度の初期値として用いるのは妥当ではないからである。なお、このとき、温度推定に必要とされる他の測定値を測定するためのセンサ、例えば車輪速センサ60やホイールシリンダ圧センサ44に異常がある場合にもECU200は推定精度低下状態にあると判定してもよい。

0054

外気温センサ62の異常を示す信号が検出されていないと判定された場合には(S32のNo)、ECU200は、外気温センサ62により測定された温度を示す信号を受け取る(S34)。なお、本実施形態では、測定温度としてIG−ON時に一度測定された温度を用いるが、IG−ONの前後あるいはIG−ON以降に数回にわたって測定された温度の平均値等を用いてもよい。あるいは、複数の測定値ごと図5に示される判定処理を実行し、一度ではなく複数回推定精度低下状態と判定された場合に推定精度低下状態であると確定するようにしてもよい。このようにすれば判定の精度をより高めることができる。

0055

次いで、測定された外気温が基準範囲内にあるか否かを判定する(S36)。ECU200には、外気温として適正と考えられる温度範囲が予め基準範囲として設定されて記憶されている。基準範囲は車両の環境温度に影響を与える要因、例えば車両の仕向地温度測定時の車両環境因子等に基づいて設定される。温度測定時の車両環境因子は車両外部から無線通信等によりECU200に供給され得るものであり、具体例としては温度測定時における車両の所在地天候測定日時等が挙げられる。このように設定される基準範囲に外気温センサ62の測定温度が含まれていないと判定された場合には(S36のNo)、外気温センサ62の故障等により測定温度が妥当ではないものと考えられるので、ECU200は、推定精度低下状態であると判定する(S42)。

0056

外気温センサ62の測定温度が上述の基準範囲に含まれていると判定された場合には(S36のYes)、更にECU200は、外気温センサ62の測定温度と車両に搭載されている他の温度センサの測定温度とのずれが所定値以内であるか否かを判定する(S38)。本実施形態では他の温度センサとしてエンジン水温センサ64を用いる。IG−ON時に同程度の温度を示すと考えられる複数の温度センサ間で測定値を比較することにより、外気温センサ62の測定温度の妥当性を判定することができる。よって、個々での所定値は、この妥当性を判定するという目的から複数の温度センサ間で測定値が同程度であるとみなせるように閾値として設定される。温度センサ間で測定値にずれが生じる理由としては例えば前回のIG−OFF時からの経過時間が短いことが挙げられる。IG−OFFからの経過時間が短ければエンジン水温が外気温程度にまで充分に冷却されていない可能性があるからである。よって、外気温センサ62及びエンジン水温センサ64の測定温度のずれが所定値を超えると判定された場合には(S38のNo)、ECU200は、推定精度低下状態であると判定する(S42)。

0057

また、ここで、エンジン水温センサ64に代えて吸気温センサ等の他の温度センサを用いてもよい。あるいは、測定温度と相関を有する所定の値、例えばエンジン水温と相関を有するエンジンアイドル回転数を代わりに用いることもできる。

0058

外気温センサ62及びエンジン水温センサ64の測定温度のずれが所定値以内であると判定された場合には(S38のYes)、ECU200は、外気温センサ62の測定温度をブレーキパッド温度推定の初期値として設定し(S40)、本処理を終了する。なお、上述の処理では測定された外気温が推定温度の初期値とされるのをすべての判定条件(S30,S32,S36,S38)を満足する場合としているが、これに代えて、いずれかの判定条件の1つあるいは複数を満足する場合としてもよい。また、本処理において上述の判定条件のいずれかを省略することも可能である。

0059

本処理の終了後にECU200は、外気温センサ62の測定値に対して、温度推定の初期値とされた測定温度を含む変動許容幅を設定してもよい。この場合、ECU200は、以降の外気温センサ62の測定値が変動許容幅を超えた場合に外気温センサ62は異常であると判定し、外気温センサ62の測定温度を温度推定に用いないようにすることができる。外気温の変動幅は一般にそれほど大きくないと考えられるからである。また、測定温度のみならず外気温の時間変化率にも変動許容幅を設定してもよい。

0060

なお、前述のように、パッド推定温度を演算するための冷却温度の演算には外気温センサ62の測定値が用いられる。よって、外気温センサ62の異常が検出された場合には、冷却温度の演算に異常検出前の外気温を継続して用いてもよい。この場合、パッドの上昇温度を零と擬制すればパッド推定温度は異常検出前の外気温に徐々に収束することとなる。このようにしても緩やかに温度補償制御から温度非補償制御に移行させることができる。

0061

図6は、本実施形態において推定精度低下状態を判定するための処理の他の例を説明するためのフローチャートである。図6においては、車輪の浸水、浸、あるいは強風等の外乱により走行中にブレーキパッド温度が急低下したときに、車両減速度等の制動力を示す指標の変化に基づいて推定精度低下状態を判定するための処理が示されている。図6に示される処理は、IG−ON時からIG−OFF時まで所定の周期例えば数msecごとに実行される。

0062

図6に示される処理が開始されると、まずECU200は、車両減速度が急上昇したか否か、つまり車両減速度が所定の時間変化率を超えて急激に増大したか否かを判定する(S50)。浸水等の外乱によりブレーキパッド温度が急低下すると制動力が急増して車両減速度が急上昇することとなるからである。ここで車両減速度の所定の時間変化率は、浸水等の外乱が生じていないときに想定されるブレーキパッド温度の時間変化率に基づいて設定され、基本的にはその想定のパッド温度時間変化率を超えるよう予め設定される。設定される所定の時間変化率は均一値として設定されてもよいし、パッド温度等に応じて可変に設定されてもよい。なお、車両減速度は例えば車両に搭載されたGセンサにより測定される。

0063

車両減速度の急上昇が検出されない場合には(S50のNo)、ECU200は本処理を終了し、次の実行タイミングで再度本処理を開始する。なお、車両減速度に代えて車輪速の急低下を検出するようにしてもよい。一方、車両減速度の急上昇が検出されると(S50のYes)、ECU200は更に、車両の4つの車輪のうちの特定の車輪の車輪速が他の車輪の車輪速に対して低下しているか否かを判定する(S52)。車輪に浸水等が生じた場合には当該車輪にロックされやすい傾向が生じるからである。特定の車輪速の低下が検出されない場合には(S52のNo)、ECU200は本処理を終了し、次の実行タイミングで再度本処理を開始する。特定の車輪速の低下が検出された場合には(S52のYes)、ECU200は、推定精度低下状態であると判定する(S54)。

0064

なお、ECU200は、この特定の車輪速の低下に関する判定条件を省略し、車両減速度の急上昇に関する判定条件のみから推定精度低下状態を判定するようにしてもよい。あるいは、ECU200は、例えば車両環境因子としての天候情報、車両に搭載されているワイパ動作状態を示す情報や雨滴センサからの信号等の車両環境の天候を示す情報を併用して推定精度低下状態を判定するようにしてもよい。

0065

また、ECU200が推定精度低下状態と判定する条件として、推定温度の演算に必要な測定値を測定するためのセンサに車両の走行中に異常が検出された場合を加えてもよい。推定温度の演算に必要な測定値を測定するためのセンサとしては、例えば外気温センサ62、車輪速センサ60等を挙げられる。更に、エンジン水温センサ64やGセンサ等の他のセンサに異常が検出された場合も推定精度低下状態と判定されるようにしてもよい。あるいは、車両減速度とホイールシリンダ圧等から推定されるブレーキの効き具合を示す指標と、パッド推定温度に基づいて予測されるブレーキの効き具合を示す指標との差が大きい場合にも推定精度低下状態と判定されるようにしてもよい。

0066

更に、パーキングブレーキがONとされた状態で走行している場合にもECU200は推定精度低下状態と判定するようにしてもよい。パーキングブレーキがONとされた状態で走行すると、ブレーキパッドにパーキングブレーキから熱が流入するからである。なお、この場合、パーキングブレーキによる減速度に基づいてパーキングブレーキによる発熱量を演算してパーキングブレーキによるブレーキパッドの上昇温度を推定し、ブレーキパッドの推定温度に加味するようにしてもよい。このようにすれば、パーキングブレーキがONとされた状態で走行してもブレーキパッド温度の推定精度の低下を抑えることができる。

0067

図7は、本実施形態における推定精度の回復の判定処理を説明するための図である。図7の縦軸は温度を示し、横軸は経過時間を示す。図7では時刻0においてECU200が推定精度低下状態であると判定したものとする。ECU200は、時刻0において推定精度低下状態であると判定するとともに、2つの温度初期値T1及びT2を設定する。ECU200は、温度初期値T1及びT2の差が、予め設定された回復判定基準値ΔTよりも大きくなるように設定する。そして、この2つの温度初期値T1及びT2のそれぞれを用いてブレーキパッド推定温度の演算を開始する。温度T1を初期値として演算された推定温度と温度T2を初期値として演算された推定温度との差が回復判定基準値ΔTに達したとき(図7における時刻t)に、ECU200は推定精度が回復したと判定し、推定温度の利用制限を解除する。推定温度値は演算を繰り返すにつれて初期値によらず収束するものと考えられるから、2つの推定温度の値の差が、設定された回復判定基準値ΔTに達すれば推定精度が回復したものと判定することができる。これにより、温度非補償制御から温度補償制御へと再度移行され、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制することが可能となる。移行の際には温度非補償制御から温度補償制御へと速やかに移行させてもよいし、図4を参照して説明したのと同様に、中間目標値を介して緩やかに移行させてもよい。

0068

ここで、2つの温度初期値T1及びT2の一方を、推定精度低下状態と判定される直前の推定温度とし、他方を適宜設定される温度値としてもよい。または、温度初期値T1及びT2の両方を適宜設定してもよい。2つの温度初期値の差が小さいほうが演算される温度推定値が早く収束して利用制限を早く解除できるであろうが、その一方、両者の差が大きいほうが推定精度の回復をより精度よく判定することができるであろう。このため、温度初期値の設定は一律には定められず設計上の要求に応じて適宜定めることが望ましい。回復判定基準値ΔTについても同様に温度初期値に応じて適宜定めることが望ましい。

0069

具体例をいくつか挙げる。直近のIG−OFFからの経過時間が、設定された所定の時間よりも短いために推定精度低下状態と判定された場合には、例えば温度初期値T1を想定される最大値として500℃とし温度初期値T2を外気温とすることができる。パーキングブレーキがONの状態で走行したために推定精度低下状態と判定された場合には、例えば温度初期値T1を想定される最大値として300℃とし、温度初期値T2については直前の推定温度を用い温度推定を継続するようにしてもよい。浸水時には、例えば温度初期値T1を外気温とし、温度初期値T2については直前の推定温度を用い温度推定を継続するようにしてもよい。

0070

また、外気温センサ62に異常が生じた場合には、異常が生じたときの外気温を用いて継続して温度推定を行うとともに外気温センサ62が正常になったときに2つめの推定温度の演算を開始し、これらの2つの推定温度の差が回復判定基準値ΔTよりも小さくなったときにECU200は精度回復と判定してもよい。ホイールシリンダ圧センサ44や車輪速センサ60等に異常が生じた場合には、温度初期値T1を想定される最大値として500℃とし、温度初期値T2については直前の推定温度を用い温度推定を継続するようにしてもよい。

0071

以上のように本実施形態によれば、ECU200は、ブレーキパッド温度の推定精度の低下が予測される場合に目標圧の演算に際して推定温度の利用を制限する。これにより、推定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑えることが可能となり、ブレーキの効き具合をより安定化させることができる。また、ECU200は、推定温度の利用を制限している間、温度推定の精度が回復したか否かを判定し、精度が回復したと判定した場合には推定温度の利用制限を解除する。これにより、推定精度の回復とともに推定温度の利用を再開し、ブレーキパッドの温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制することが可能となる。このように本実施形態によれば、ブレーキパッド温度の推定精度が確保されているか否かに応じて、適正に制動力を補正してブレーキの効き具合を安定化させることができる。

0072

なお、付言すると、本実施形態においては補正のためのブレーキパッド温度として推定値を用いているが、ブレーキパッド温度の実際の測定値を用いることも可能である。すなわち、ブレーキ制御装置は、摩擦部材を押圧して車輪を制動する制動力付与機構と、摩擦部材の温度変化に起因して生じるブレーキの効きの変動を抑制すべく、摩擦部材の押圧力を制御するために設定される目標値を摩擦部材温度を利用して演算する制御部と、を備え、制御部は、摩擦部材温度の測定精度の低下が予測される所定の場合に目標値の演算に際して推定温度の利用を制限してもよい。このようにしても、測定温度の利用が制限されることにより目標値の演算結果への測定温度の影響を軽減することができる。したがって、測定精度の低下に伴う制動力制御への影響を抑えることが可能となり、ブレーキの効き具合をより安定化させることができる。

0073

このとき制御部は、測定温度を利用することなく演算された未補正目標値を測定温度に応じて補正することにより補正済目標値を演算し、当該補正済目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御する一方、摩擦部材温度の測定精度の低下が予測される所定の場合には補正済目標値の代わりに未補正目標値を用いて摩擦部材の押圧力を制御してもよい。

図面の簡単な説明

0074

本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。
本実施形態に係る制御ブロック図である。
本実施形態に係るブレーキパッドの推定温度と温度補正係数との関係の一例を示す図である。
本実施形態におけるホイールシリンダ圧の制御処理を説明するためのフローチャートである。
本実施形態において推定精度低下状態を判定するための処理の一例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態において推定精度低下状態を判定するための処理の他の例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態における推定精度の回復の判定処理を説明するための図である。

符号の説明

0075

10ブレーキ制御装置、 20ホイールシリンダ、 21ディスクブレーキユニット、 44ホイールシリンダ圧センサ、 60車輪速センサ、 62外気温センサ、 64エンジン水温センサ、 200 ECU。

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