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技術 機械構造用部品の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 林透大森靖浩黒澤伸隆木村秀途豊岡高明山田克美
出願日 2006年1月31日 (14年10ヶ月経過) 出願番号 2006-023222
公開日 2007年8月16日 (13年4ヶ月経過) 公開番号 2007-204796
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理 熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 破断繰り返し数 総加工率 平均ビッカース A1変態 表面切削 熱間加工条件 残留炭化物 高周波焼入条件
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2007年8月16日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

従来よりも疲労強度を一層向上させた機械構造用部品の製造方法を提案する。

解決手段

C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成鋼材に、800〜900℃の温度範囲総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施す。

概要

背景

従来、例えば自動車用ドライブシャフト等速ジョイントなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ焼戻しを行うことにより、機械構造用部品としての重要な特性であるねじり疲労強度曲げ疲労強度、転動疲労強度およびすべり転動疲労強度等の疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部品に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部品における疲労強度の一層の向上が要求されている。

上述したような疲労強度を向上させる手段としては、これまでにも種々の方法が提案されている。
例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、ねじり疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。

上記の特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オーステナイト粒径の微細化を図るものであるため、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。
また、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。

さらに、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品半径Rとの比(CD/R)を 0.3〜0.7 に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト結晶粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1 までの平均ビッカース硬さHfおよび高周波焼入れ後の軸中心部の平均ビッカース硬さHcで規定される値Aを、C量に応じて所定の範囲に制御することによってねじり疲労強度を向上させた機械構造用軸物部品が提案されている。
しかしながら、上記のCD/Rを制御したとしても疲労特性の向上には限界があり、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。

特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕)
特開平8−53714 号公報(特許請求の範囲)

概要

従来よりも疲労強度を一層向上させた機械構造用部品の製造方法を提案する。C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成鋼材に、800〜900℃の温度範囲総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施す。なし

目的

本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来よりも疲労強度を一層向上させた機械構造用部品の製造方法を提案することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成鋼材に、800〜900℃の温度範囲総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施すことを特徴とする機械構造用部品の製造方法。記C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0・・・(1)

請求項2

前記鋼材は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびW:1.0mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用部品の製造方法。記C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0・・・(2)

請求項3

前記鋼材は、さらに、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ、前記式(1)または(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用部品の製造方法。記C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0・・・(3)

技術分野

0001

本発明は、少なくとも部分的に高周波焼入れによる硬化層をそなえる、機械構造用部品の製造方法に関するものである。ここで、機械構造用部品としては、自動車用ドライブシャフトインプットシャフトアウトプットシャフトクランクシャフト等速ジョイント内輪および外輪、ハブ、そしてギア等を挙げることができる。

背景技術

0002

従来、例えば自動車用ドライブシャフトや等速ジョイントなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、機械構造用部品としての重要な特性であるねじり疲労強度曲げ疲労強度、転動疲労強度およびすべり転動疲労強度等の疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部品に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部品における疲労強度の一層の向上が要求されている。

0003

上述したような疲労強度を向上させる手段としては、これまでにも種々の方法が提案されている。
例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、ねじり疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。

0004

上記の特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オーステナイト粒径の微細化を図るものであるため、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。
また、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年の疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。

0005

さらに、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品半径Rとの比(CD/R)を 0.3〜0.7 に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト結晶粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1 までの平均ビッカース硬さHfおよび高周波焼入れ後の軸中心部の平均ビッカース硬さHcで規定される値Aを、C量に応じて所定の範囲に制御することによってねじり疲労強度を向上させた機械構造用軸物部品が提案されている。
しかしながら、上記のCD/Rを制御したとしても疲労特性の向上には限界があり、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。

0006

特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕)
特開平8−53714 号公報(特許請求の範囲)

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、従来よりも疲労強度を一層向上させた機械構造用部品の製造方法を提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

さて、発明者らは、前記したような疲労特性と耐遅れ破壊特性とを効果的に向上させるべく、特に高周波焼入れ組織について鋭意検討を行った。
その結果、高周波焼入前に施す加工の条件、加工時の冷却条件および高周波焼入条件規制することによって、ねじり疲労強度、曲げ疲労強度および転動疲労強度などの疲労特性が改善することを見出すに到った。

0009

すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。

0010

(i) C:0.3〜1.3mass%、Si:1.1mass%以下、Mn:2.0mass%以下、Al:0.25mass%以下およびMo:0.05〜2.0mass%を下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成鋼材に、800〜900℃の温度範囲総加工率が10%以上の加工を施し、次いで700〜500℃の温度範囲で総加工率が10%以上の加工を施し、かつ700〜500℃の温度範囲の平均冷却速度を0.2℃/s以上として500℃以下まで冷却し、その後600〜800℃の温度範囲の昇温速度を400℃/s以上、加熱温度を800〜1050℃および800℃以上の滞留時間を5秒以下とする条件にて高周波焼入れを施すことを特徴とする機械構造用部品の製造方法。

C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0 ・・・(1)

0011

(ii) 前記鋼材は、さらに、Cr:2.5mass%以下、Cu:1.0mass%以下、Ni:2.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびW:1.0mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ前記式(1)に替えて下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用部品の製造方法。

C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0 ・・・(2)

0012

(iii) 前記鋼材は、さらに、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成となり、かつ、前記式(1)または(2)に替えて下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用部品の製造方法。

C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)(1+2.1Cr)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0 ・・・(3)

発明の効果

0013

本発明によれば、ねじり疲労特性をはじめとして、曲げ疲労特性、転動疲労特性およびすべり転動疲労特性等の全ての疲労特性に優れた機械構造用部品を安定して得ることができ、その結果、自動車用部品の軽量化等の要求に対し偉功を奏する。

発明を実施するための最良の形態

0014

以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の機械構造用部品は、自動車用のドライブシャフト、インプットシャフト、アウトプットシャフト、クランクシャフト、等速ジョイントの内輪および外輪、ハブ、そしてギア等、部品毎に様々な形状並びに構造に成るが、いずれにおいても、特に疲労強度が要求される部分または全部に焼入れを施して硬化層を形成するものである。

0015

まず、高周波焼入れ前組織に関しては、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織が存在するとよいことがわかっている。焼入れ前組織にベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が多いと、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織は炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時オーステナイト核生成サイトであるフェライト/炭化物界面の面積が増加し、生成したオーステナイトは微細化するため、焼入れ硬化層の旧オーステナイト粒径を微細化するのに有効に寄与する。

0016

ここで、微細なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織の組織分率を10vol%以上とすることが好ましい。そして上記組織の分率を10vol%以上とするには、後述する成分組成の鋼を800〜900℃での総加工率が10%以上となる熱間加工を施し、熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で500℃以下まで冷却することがとりわけ肝要である。すなわち、800〜900℃での総加工率が10%未満であると、十分に微細なベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織が得られない。また、熱間加工後に700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の冷却速度で冷却しないと、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を合計で10vol%以上とできない。

0017

さらに、700〜500℃の温度域でも総加工率10%以上の加工を施す。この温度域で加工を施すことにより、後の高周波焼入後の疲労強度を向上できる。この原因は、この温度範囲はMoが析出し易い温度であり、これに加工が加わることで析出が促進され、均一微細なMo析出物が得られるためと考えられる。このMo析出物は後述する高周波焼入れ条件では消失しないため、この析出物が疲労強度上昇に起与するものと考えられる。

0018

なお、冷却後には高周波焼入れを施すが、高周波焼入前に別途冷間加工を施すか、あるいは、A1変態点以下の温度で再加熱して温間加工を施しても良い。800℃以下での加工率は、20%以上とする事が好ましい。
なお、加工法としては、例えば、冷間鍛造、冷間しごき、転造加工ショット等が挙げられる。

0019

次に、本発明で用いる鋼の成分について説明する。
C:0.3〜1.3 mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.3mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.3mass%以上を添加する。一方、1.3 mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また切削性冷間鍛造性および耐焼き割れ性も低下する。このためCは、0.3〜1.3 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.4〜0.6 mass%の範囲である。

0020

Si:1.1mass%以下
Siは、脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が1.1mass%を超えると、被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は1.1mass%以下とする。
なお、強度向上のためには0.05mass%以上とすることが好ましい。

0021

Mn:2.0mass%以下
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化深さを確保する上で有用な成分であるため、添加できる。含有量が 0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上が好ましい。好ましくは 0.3mass%以上である。一方、Mn量が 2.0mass%を超えると焼入れ後残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは 2.0mass%以下が好ましい。なお、Mnは含有量が多いと、母材硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2 mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは 1.0mass%以下である。

0022

Al: 0.25mass%以下
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素であるので添加してもよい。含有量が 0.005mass%に満たないとその添加効果に乏しいため、0.005mass%以上とすることが好ましい。一方0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは0.25mass%以下の範囲で含有させる。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。

0023

Mo:0.05mass%以上1.0mass%以下
Moは、焼入硬化層旧γ粒径を微細化するのに、さらに前述の微細析出物を得るのに必須の元素である。そのためには、0.05mass%以上含有する必要があるが、2.0mass%以上添加させてもその効果は飽和し、かつ被削性の劣化も招くため、Moは2.0mass%以下とする。

0024

本発明では、以上の5成分を基本成分とし、これら基本成分において、次式(1)を満足することが肝要である。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+3.0Mo)>2.0----(1)
これは、(1)式を満たすようにC、Si、MnおよびMoの含有量を調整することにより、高周波焼入前組織として、ベイナイトマルテンサイトの合計の組織分率を10vol%以上とすることが可能となり、高周波焼入れ後の硬化層を本発明の組織とすることが可能となる。また、(1)式の値が2.0以下では高周波焼入後の硬化層の硬さも小さくなり、さらに、硬化層深さを十分に確保することも困難となる。

0025

以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる6成分のうちの1種または2種以上を適宜含有させることができる。
Cr:2.5 mass%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5 mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。

0026

Cu:1.0 mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0 mass%を超えると熱間加工時割れが発生するため、1.0 mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5 mass%以下である。

0027

Ni:2.5 mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、2.5 mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、2.5 mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。さらに、好ましくは 0.1〜1.0 mass%である。

0028

V:0.5 mass%以下
Vは、鋼中でC, Nと結合し析出強化元素として作用する。V析出物を微細かつ多量に析出させることにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5 mass%以下とすることが好ましい。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3 mass%である。

0029

W:1.0 mass%以下
Wは、W(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。さらに、脆化作用により被削性を向上させる元素である。しかしながら、1.0mass%を超えて添加しても、効果が飽和する上、コストが上昇し、経済的に不利となるため、1.0 mass%以下で含有させることが好ましい。なお、被削性の改善のためには、Wは 0.005mass%以上含有させることが好ましい。

0030

上記の6成分のうちの1種または2種以上を、基本成分に添加する場合は、上記した式(1)と同様の理由から、次式(2)を満足する必要がある。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)>2.0----(2)

0031

さらに、本発明では、Ti:0.1mass%以下、Nb:0.1mass%以下、Zr:0.1mass%以下およびB:0.01mass%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有させることができる。
Ti:0.1mass%以下
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。さらにはTi(C,N)となり析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。この効果を得るためには、0.005mass%以上で含有することが好ましいが、0.1 mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1 mass%以下とすることが好ましい。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。

0032

Nb:0.1mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、Nb(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1 mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005 %未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005 mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。

0033

Zr:0.1mass%以下
Zrは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、Zr(C,N)として析出することにより均一伸びを向上させ、ひいては疲労強度をさらに向上させる効果がある。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.05mass%である。

0034

B:0.01mass%以下
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、好ましくは0.0003mass%以上で添加するが、0.01mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.01mass%以下に限定した。
上記の4成分のうちの1種または2種以上を、基本成分に添加する場合は、上記した式(1)と同様の理由から、次式(3)を満足する必要がある。
C1/2(1+0.7Si)(1+3Mn)(1+2.1Cr)(1+3.0Mo)(1+0.4Cu)(1+0.3Ni)(1+5.0V)(1+0.5W)(1+1000B)>2.0----(3)

0035

以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としてはP,O,Nが挙げられ、それぞれ、P:0.02mass%、N:0.01mass%、O:0.008mass%までをそれぞれ許容できる。

0036

次に、本発明の製造方法について説明する。
上記した所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延後に熱間鍛造などの熱間加工を施して部品形状とし、部品の少なくとも一部に加熱温度:800〜1000℃の条件下で高周波焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。

0037

この一連の工程において、まず、熱間加工を800〜900℃の温度域の総加工率を10%以上として熱間加工後、700〜500℃の温度域を0.2 ℃/s以上の速度で冷却すると共に、700〜500℃の温度域で10%以上の加工を施すこと、さらに、以下に詳述する高周波焼入れ条件を採用することにより、高い疲労特性を得ることが可能となる。
以下、各製造工程について詳しく説明する。

0038

熱間加工条件
熱間加工の際の800〜900℃での総加工率を10%以上とし、その後700〜500℃の温度域を0.2℃/s以上の平均速度で500℃以下まで冷却する。この条件により、焼入れ前の組織を微細なベイナイトおよび/またはマルテンサイト組織とすることができ、その後の高周波焼入の加熱時にオーステナイト粒が微細化し、さらに、残留炭化物も減少し、結果として得られる硬化層は微細となる。より好ましくは、800〜900℃での総加工率を20%以上かつ平均冷却速度を0.5℃/s以上とする。
さらに、700〜500℃の間で総加工率が10%以上の加工を施す。これは、前述したとおり、微細Mo析出物の析出を促進、疲労強度を向上させるためである。

0039

[高周波焼入条件]
加熱温度を800〜1050℃とし、600〜800℃を400℃/s以上の昇温速度で昇温する。加熱温度が800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不充分となり、硬化層を得ることができない。一方、加熱温度が1050℃を超える場合と600〜800℃の昇温速度が400℃/s未満の場合にはオーステナイト粒の成長が促進され粗大な旧オーステナイト粒が多くなり、また、Mo析出物が溶解するため、疲労強度の低下を招く。

0040

なお、加熱温度は800〜950℃とすることが好ましく、600〜800℃の昇温速度は700℃/s以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃/s以上である。
また、高周波加熱時において800℃以上の滞留時間が長くなると、オーステナイト粒が成長して、さらには、Mo析出物が溶解する傾向にあるので、800℃以上の滞留時間は5秒以下とすることが好ましい。

0041

さらに、高周波焼入れ前に、冷間で10%以上の加工を施すことが好ましい。加工は、熱間加工工程で、前記冷却速度の冷却の前、なお、加工法としては、例えば、冷間鍛造、冷間しごき、転造加工、ショット等が挙げられる。800℃以下で加工を施すことにより、高周波焼入れ前のベイナイトあるいはマルテンサイト組織が微細化し、結果として高周波焼入れ後に得られる硬化層における旧オーステナイト粒が微細なものとなる。これにより、疲労強度がより向上する。

0042

本発明の機械構造用部品として、自動車のドライブシャフト、アウトプットシャフト、インプットシャフトを模擬したシャフトを製造した。すなわち、表1に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは 300×400mm であった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150mm角ビレット圧延した後、表2に示す熱間加工条件に従って棒鋼に圧延した。圧延後の冷却は表2に示す条件とした。

0043

ついで、この棒鋼を所定の長さに切断後、表面切削加工と一部冷間での引き抜き加工を加え径を調整すると同時に、スプライン部の転造加工を施して、図1に示す寸法・形状になるスプライン部2を有するシャフト1を作製した。このシャフトに、周波数:15 kHzの高周波焼入れ装置を用いて、表2に示す条件下で焼入れを行った後、加熱炉を用いて 170℃×30分の条件で焼もどしを行い、その後ねじり疲労強度について調査した。

0044

なお、ねじり疲労強度は、シャフトのねじり疲労試験において破断繰り返し数が1×105 回の時のトルク値(N・m)で評価した。ねじり疲労試験は、油圧式疲労試験機を用い、図2に示すように、スプライン部2a,2bをそれぞれ円盤状のつかみ具3a,3bに組み込み、つかみ具3a,3bとの間に周波数:1〜2Hzで繰り返しねじりトルク負荷することにより行った。

0045

0046

0047

0048

表2から明らかなように、本発明の条件を満足して製造されたシャフトはいずれも高いねじり疲労強度を得ることができた。

0049

これに対し、製造条件が本発明範囲を外れるものは、シャフトはいずれも疲労強度が低い。

図面の簡単な説明

0050

代表的なシャフトの正面図である。
シャフトのねじり疲労試験における試験要領を示す図である。

符号の説明

0051

1シャフト
2スプライン部
3 つかみ具

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