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課題

本発明は、メタボリックシンドローム肥満症肝線維症悪性腫瘍等の予防又は治療に有用なアディポネクチン受容体発現賦活薬を提供することを課題とする。

解決手段

本発明は、ベザフィブラート等のフィブラート系薬剤を有効成分として含有するアディポネクチン受容体(AdipoR1及びAdipoR2)の発現賦活薬、及びそれを用いた肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の予防又は治療薬を提供する。

概要

背景

アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質であるアディポサイトカイン一種であり、インスリン抵抗性、肝の線維化、悪性腫瘍等への関与及び動脈硬化への防御因子として知られている。例えば、糖尿病肥満を呈する病態では血中アディポネクチン濃度が低下していること、肝炎においては肝の線維化に防御因子として重要な役割を担っていること、及びメタボリックシンドローム患者においては血中アディポネクチン濃度は肥満度反比例して低下しており、インスリン抵抗性指標逆相関することが報告されている(非特許文献1参照)。また、アディポネクチンは、インスリン抵抗性を伴う肥満患者の脂肪細胞におけるPPAR(ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体)γの標的分子として注目されている。具体的には、血中アディポネクチン濃度は、糖尿病治療薬チアゾリジンジオン(以下、TZDという)誘導体等のインスリン感受性増強薬で代表されるPPARγアゴニストにより顕著に上昇することから、TZD誘導体は、肥満における脂肪機能異常を改善することにより脂肪組織からアディポネクチンの分泌を促し、その結果、肥満を伴うメタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性を改善すると考えられている(非特許文献1参照)。

アディポネクチン受容体(以下、AdipoRということもある)は、インスリン感受性の調節に重要な組織である肝臓及び骨格筋に存在し、組織への糖の取込みやPPARαを介した脂肪酸のβ−酸化に関与しており、アディポネクチンの機能の主要な部分はアディポネクチン受容体を介していることが明らかになっている(非特許文献2参照)。
AdipoRには、AdipoR1とAdipoR2の2つのサブタイプが存在し(非特許文献3参照)、AdipoR1は全身組織に分布し、AdipoR2は主に肝臓に分布する。最近、肝臓において、AdipoR1の刺激AMPキナーゼ活性化(糖新生抑制)作用を示し、AdiopoR2の刺激はPPARαの活性化を介した脂肪酸のβ−酸化の亢進作用を示すことが報告された(非特許文献4参照)。

一般に、受容体に対するアゴニスト濃度が上昇すると、生体フィードバック機構により、標的臓器の受容体発現量が減少する等によるアゴニストに対する感受性が低下して、血中アゴニスト濃度を上昇させるだけでは耐性が生じて次第に作用しにくくなると考えられている。アディポネクチンとアディポネクチン受容体の関係についても同様に、血中アディポネクチン濃度の上昇により、標的臓器(肝臓及び骨格筋等)でのアディポネクチンに対する感受性低下が起こると考えられる。そのため、アディポネクチン受容体の発現量を増加させることにより、血中アディポネクチン濃度とは独立してアディポネクチンに対する感受性を高め、その作用をより長期間持続できる薬剤が望まれる。

以上のように、アディポネクチン受容体の発現量を増加させることにより、アディポネクチンの作用を活性化することは、メタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性を改善し、又は肝線維化、悪性腫瘍もしくは動脈硬化等を抑制するのに効果的であり、この作用を有する薬物は、メタボリックシンドローム、特に肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症肝線維症、悪性腫瘍もしくは動脈硬化の予防又は治療薬として用いることができる(非特許文献1及び5参照)。

フィブラート系薬剤作用機序は多様であり、個々の医薬について固有の特性を有するが、PPARαに対するリガンドとしての作用は共通している。PPAR(ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体:Peroxisome Proliferator Activated Receptor)はリガンド応答性転写因子であり、グルココルチコイドアンドロゲンプロゲステロンミネラルコルチコイドエストロゲン、活性化ビタミンD等をリガンドとする核内受容体ファミリーに属し、PPARα、γ及びδのサブタイプが存在する。

PPARαは、肝臓、心筋消化管血管内皮細胞大動脈平滑細胞マクロファージ及びリンパ球等で発現し、肝臓における脂肪酸β−酸化亢進及びリポプロテインリパーゼLPL)活性化等の脂質異化作用に関連している。
PPARγは、脂肪細胞等で発現し、脂肪組織における脂肪細胞分化及び脂肪合成促進等の脂質同化作用に関連している。
PPARδは、骨格筋等で発現し、脂肪酸酸化の活性化に関連している。

また、肝臓は脂質代謝および糖新生に関与し、骨格筋は糖の取り込みおよび脂質代謝を担っている。一方、脂肪組織は脂肪の貯蔵器官であると同時に、アディポサイトカインといわれるホルモンを分泌し、分泌されたアディポサイトカインが全身の糖脂質代謝および各種炎症性の病態に関与していることが報告されている(非特許文献6参照)。
したがって、糖脂質代謝において、肝臓、骨格筋および脂肪組織の各組織が担う機能も、それらを制御する因子も明らかに異なるものである(非特許文献7参照)。

フィブラート系薬剤であるベザフィブラートが、肥満を伴う糖尿病モデル動物においてアディポネクチン遺伝子の発現を増加させて、血漿アディポネクチン濃度を上昇させるとの報告がある(非特許文献8参照)が、アディポネクチン受容体の発現を賦活してその感受性を改善する作用は知られていない。前述したように、血中アディポネクチン濃度の上昇作用のみでは、標的臓器(肝臓及び骨格筋等)でのアディポネクチンに対する感受性低下が起こり、薬物の長期投与によりアディポネクチン作用の減弱化につながると考えられる。一方、アディポネクチン受容体の発現賦活作用を有する薬物は、耐性を起こしにくいので、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の長期投与が必要な慢性疾患治療等に使用する薬物として、血中アディポネクチン濃度上昇作用のみを有する薬物よりも好ましい。

また、フィブラート系薬剤であるWy−14643及びベザフィブラートが、マクロファージ由来培養細胞においてのAdipoR2mRNAの発現量を増加したという報告(非特許文献9参照)及びWy−14643がKKAyマウスにおいて白色脂肪組織中のAdipoR1及びAdipoR2 mRNAの発現量を増加したという報告がある(非特許文献10参照)。しかし、脂肪組織ではPPARαは発現していないことから、脂肪組織においてWy−14643は、PPARαに対してリガンドとして作用していないと考えられる。更に、上述のとおり、マクロファージ、脂肪組織、肝臓及び骨格筋の各組織におけるアディポネクチン受容体の機能は全く異なるものである上に、マクロファージ由来細胞及び白色脂肪組織におけるアディポネクチン受容体が、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の病態において何らかの生理学意義を有するとの報告もない。

すなわち、上記のいずれの文献にも、フィブラート系薬剤による肝臓及び骨格筋におけるアディポネクチン受容体の発現賦活作用について記載も示唆もない。

ところで、メタボリックシンドロームは、内臓脂肪蓄積背景とした高トリグリセライド・低HDLコレステロール血症糖代謝異常、高血圧等の危険因子合併する病態である。それぞれが軽度でも、合併することにより動脈硬化性疾患発症する危険性が高くなることから、動脈硬化性疾患のハイリスク群として注目されている。WHO は、2型糖尿病耐糖能異常及びインスリン抵抗性のうち少なくとも1 つの症状を示し、かつ高血圧、肥満症、脂質代謝異常高トリグリセライド血症・低HDL-コレステロール血症)及び微量アルブミン尿のうち少なくとも2つの症状を示す場合をメタボリックシンドロームと定義している。

また、NCEPATPIII (National Cholesterol Education Program: Adult Treatment Panel III, 16, 2001)では、下記基準の3項目以上当てはまる場合、メタボリックシンドロームと診断する。

メタボリックシンドロームの治療には、現在、個々の危険因子に対する薬物療法が試みられている。すなわち、高トリグリセライド・低HDLコレステロール血症にはフィブラート系又はスタチン系薬剤;糖代謝異常にはスルホニルウレア系薬剤速効型インスリン分泌促進薬α−グルコシダーゼ阻害薬又はインスリン抵抗性改善薬;高血圧にはアンギオテンシン変換酵素阻害薬又はアドレナリンα受容体拮抗薬等が用いられている。しかしながら、メタボリックシンドロームの背景疾患である肥満に対しては、運動療法食事療法が主であり、薬物療法としては中枢性食欲抑制剤が使用されているにすぎない。

なお、最近、ベザフィブラートがメタボリックシンドローム患者における心筋梗塞発症を抑制することが報告された(非特許文献11参照)。しかしながら、この報告は複雑なメタボリックシンドロームのうちの一症状を抑制するという対症療法に関するものであり、背景疾患である肥満を治療することによりメタボリックシンドロームを根本的に治療するというものではない。

前田法一ら,Adiposcience,2004年,第1巻,p.247−257
山内敏正ら,Molecular Medicine 臨時増刊号・生活習慣病最前線,第42号,p.125−133
Yamauchiら,Nature,2003年,第423巻,p.762−769
小林正樹ら,日本肥満学会誌,2005年,第11巻(Supplement),p.152
信司ら,BIO Clinica,2004年,第19巻,p.29−34
前田法一ら,Adiposcience,2004年,第1巻,p.241−245
田中十志也ら,メタボリックシンドローム病態の分子生物学山堂,2005年,p.141−155
Moriら,Endcrine,2004年, 第25巻,p.247−251
Chinetti G.ら,Biochem Biophys Res Comm.,2004年, 第314巻,p.151−158
Tsuchidaら,Diabetes,2005年,第54,p.3358−3370
Alexander T.ら,Arch Intern Med.,2005年,第165巻,p.1154−1160

概要

本発明は、メタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の予防又は治療に有用なアディポネクチン受容体の発現賦活薬を提供することを課題とする。 本発明は、ベザフィブラート等のフィブラート系薬剤を有効成分として含有するアディポネクチン受容体(AdipoR1及びAdipoR2)の発現賦活薬、及びそれを用いた肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の予防又は治療薬を提供する。

目的

本発明は、フィブラート系薬剤を有効成分として含有するアディポネクチン受容体の発現賦活薬、それを用いた肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療薬を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

フィブラート系薬剤を有効成分とする肥満を伴うメタボリックシンドローム肝線維症肥満症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療薬

請求項3

肥満を伴うメタボリックシンドロームのための、請求項2記載の予防又は治療薬。

請求項4

肥満症のための、請求項2記載の予防又は治療薬。

請求項5

肝線維症のための、請求項2記載の予防又は治療薬。

請求項6

フィブラート系薬剤がベザフィブラートであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の発現賦活薬又は予防もしくは治療薬。

技術分野

0001

本発明は、アディポネクチン受容体発現賦活薬に関するものである。さらに詳しく述べれば、本発明は、アディポネクチン受容体発現賦活作用を有するフィブラート系薬剤を有効成分として含有するメタボリックシンドローム、特に肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症肝線維症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療薬に関するものである。

背景技術

0002

アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質であるアディポサイトカイン一種であり、インスリン抵抗性、肝の線維化、悪性腫瘍等への関与及び動脈硬化への防御因子として知られている。例えば、糖尿病や肥満を呈する病態では血中アディポネクチン濃度が低下していること、肝炎においては肝の線維化に防御因子として重要な役割を担っていること、及びメタボリックシンドローム患者においては血中アディポネクチン濃度は肥満度反比例して低下しており、インスリン抵抗性指標逆相関することが報告されている(非特許文献1参照)。また、アディポネクチンは、インスリン抵抗性を伴う肥満患者の脂肪細胞におけるPPAR(ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体)γの標的分子として注目されている。具体的には、血中アディポネクチン濃度は、糖尿病治療薬チアゾリジンジオン(以下、TZDという)誘導体等のインスリン感受性増強薬で代表されるPPARγアゴニストにより顕著に上昇することから、TZD誘導体は、肥満における脂肪機能異常を改善することにより脂肪組織からアディポネクチンの分泌を促し、その結果、肥満を伴うメタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性を改善すると考えられている(非特許文献1参照)。

0003

アディポネクチン受容体(以下、AdipoRということもある)は、インスリン感受性の調節に重要な組織である肝臓及び骨格筋に存在し、組織への糖の取込みやPPARαを介した脂肪酸のβ−酸化に関与しており、アディポネクチンの機能の主要な部分はアディポネクチン受容体を介していることが明らかになっている(非特許文献2参照)。
AdipoRには、AdipoR1とAdipoR2の2つのサブタイプが存在し(非特許文献3参照)、AdipoR1は全身組織に分布し、AdipoR2は主に肝臓に分布する。最近、肝臓において、AdipoR1の刺激AMPキナーゼ活性化(糖新生抑制)作用を示し、AdiopoR2の刺激はPPARαの活性化を介した脂肪酸のβ−酸化の亢進作用を示すことが報告された(非特許文献4参照)。

0004

一般に、受容体に対するアゴニスト濃度が上昇すると、生体フィードバック機構により、標的臓器の受容体発現量が減少する等によるアゴニストに対する感受性が低下して、血中アゴニスト濃度を上昇させるだけでは耐性が生じて次第に作用しにくくなると考えられている。アディポネクチンとアディポネクチン受容体の関係についても同様に、血中アディポネクチン濃度の上昇により、標的臓器(肝臓及び骨格筋等)でのアディポネクチンに対する感受性低下が起こると考えられる。そのため、アディポネクチン受容体の発現量を増加させることにより、血中アディポネクチン濃度とは独立してアディポネクチンに対する感受性を高め、その作用をより長期間持続できる薬剤が望まれる。

0005

以上のように、アディポネクチン受容体の発現量を増加させることにより、アディポネクチンの作用を活性化することは、メタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性を改善し、又は肝線維化、悪性腫瘍もしくは動脈硬化等を抑制するのに効果的であり、この作用を有する薬物は、メタボリックシンドローム、特に肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍もしくは動脈硬化の予防又は治療薬として用いることができる(非特許文献1及び5参照)。

0006

フィブラート系薬剤の作用機序は多様であり、個々の医薬について固有の特性を有するが、PPARαに対するリガンドとしての作用は共通している。PPAR(ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体:Peroxisome Proliferator Activated Receptor)はリガンド応答性転写因子であり、グルココルチコイドアンドロゲンプロゲステロンミネラルコルチコイドエストロゲン、活性化ビタミンD等をリガンドとする核内受容体ファミリーに属し、PPARα、γ及びδのサブタイプが存在する。

0007

PPARαは、肝臓、心筋消化管血管内皮細胞大動脈平滑細胞マクロファージ及びリンパ球等で発現し、肝臓における脂肪酸β−酸化亢進及びリポプロテインリパーゼLPL)活性化等の脂質異化作用に関連している。
PPARγは、脂肪細胞等で発現し、脂肪組織における脂肪細胞分化及び脂肪合成促進等の脂質同化作用に関連している。
PPARδは、骨格筋等で発現し、脂肪酸酸化の活性化に関連している。

0008

また、肝臓は脂質代謝および糖新生に関与し、骨格筋は糖の取り込みおよび脂質代謝を担っている。一方、脂肪組織は脂肪の貯蔵器官であると同時に、アディポサイトカインといわれるホルモンを分泌し、分泌されたアディポサイトカインが全身の糖脂質代謝および各種炎症性の病態に関与していることが報告されている(非特許文献6参照)。
したがって、糖脂質代謝において、肝臓、骨格筋および脂肪組織の各組織が担う機能も、それらを制御する因子も明らかに異なるものである(非特許文献7参照)。

0009

フィブラート系薬剤であるベザフィブラートが、肥満を伴う糖尿病モデル動物においてアディポネクチン遺伝子の発現を増加させて、血漿アディポネクチン濃度を上昇させるとの報告がある(非特許文献8参照)が、アディポネクチン受容体の発現を賦活してその感受性を改善する作用は知られていない。前述したように、血中アディポネクチン濃度の上昇作用のみでは、標的臓器(肝臓及び骨格筋等)でのアディポネクチンに対する感受性低下が起こり、薬物の長期投与によりアディポネクチン作用の減弱化につながると考えられる。一方、アディポネクチン受容体の発現賦活作用を有する薬物は、耐性を起こしにくいので、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の長期投与が必要な慢性疾患治療等に使用する薬物として、血中アディポネクチン濃度上昇作用のみを有する薬物よりも好ましい。

0010

また、フィブラート系薬剤であるWy−14643及びベザフィブラートが、マクロファージ由来培養細胞においてのAdipoR2mRNAの発現量を増加したという報告(非特許文献9参照)及びWy−14643がKKAyマウスにおいて白色脂肪組織中のAdipoR1及びAdipoR2 mRNAの発現量を増加したという報告がある(非特許文献10参照)。しかし、脂肪組織ではPPARαは発現していないことから、脂肪組織においてWy−14643は、PPARαに対してリガンドとして作用していないと考えられる。更に、上述のとおり、マクロファージ、脂肪組織、肝臓及び骨格筋の各組織におけるアディポネクチン受容体の機能は全く異なるものである上に、マクロファージ由来細胞及び白色脂肪組織におけるアディポネクチン受容体が、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の病態において何らかの生理学意義を有するとの報告もない。

0011

すなわち、上記のいずれの文献にも、フィブラート系薬剤による肝臓及び骨格筋におけるアディポネクチン受容体の発現賦活作用について記載も示唆もない。

0012

ところで、メタボリックシンドロームは、内臓脂肪蓄積背景とした高トリグリセライド・低HDLコレステロール血症糖代謝異常、高血圧等の危険因子合併する病態である。それぞれが軽度でも、合併することにより動脈硬化性疾患発症する危険性が高くなることから、動脈硬化性疾患のハイリスク群として注目されている。WHO は、2型糖尿病耐糖能異常及びインスリン抵抗性のうち少なくとも1 つの症状を示し、かつ高血圧、肥満症、脂質代謝異常高トリグリセライド血症・低HDL-コレステロール血症)及び微量アルブミン尿のうち少なくとも2つの症状を示す場合をメタボリックシンドロームと定義している。

0013

また、NCEPATPIII (National Cholesterol Education Program: Adult Treatment Panel III, 16, 2001)では、下記基準の3項目以上当てはまる場合、メタボリックシンドロームと診断する。

0014

0015

メタボリックシンドロームの治療には、現在、個々の危険因子に対する薬物療法が試みられている。すなわち、高トリグリセライド・低HDLコレステロール血症にはフィブラート系又はスタチン系薬剤;糖代謝異常にはスルホニルウレア系薬剤速効型インスリン分泌促進薬α−グルコシダーゼ阻害薬又はインスリン抵抗性改善薬;高血圧にはアンギオテンシン変換酵素阻害薬又はアドレナリンα受容体拮抗薬等が用いられている。しかしながら、メタボリックシンドロームの背景疾患である肥満に対しては、運動療法食事療法が主であり、薬物療法としては中枢性食欲抑制剤が使用されているにすぎない。

0016

なお、最近、ベザフィブラートがメタボリックシンドローム患者における心筋梗塞発症を抑制することが報告された(非特許文献11参照)。しかしながら、この報告は複雑なメタボリックシンドロームのうちの一症状を抑制するという対症療法に関するものであり、背景疾患である肥満を治療することによりメタボリックシンドロームを根本的に治療するというものではない。

0017

前田法一ら,Adiposcience,2004年,第1巻,p.247−257
山内敏正ら,Molecular Medicine 臨時増刊号・生活習慣病最前線,第42号,p.125−133
Yamauchiら,Nature,2003年,第423巻,p.762−769
小林正樹ら,日本肥満学会誌,2005年,第11巻(Supplement),p.152
信司ら,BIO Clinica,2004年,第19巻,p.29−34
前田法一ら,Adiposcience,2004年,第1巻,p.241−245
田中十志也ら,メタボリックシンドローム病態の分子生物学山堂,2005年,p.141−155
Moriら,Endcrine,2004年, 第25巻,p.247−251
Chinetti G.ら,Biochem Biophys Res Comm.,2004年, 第314巻,p.151−158
Tsuchidaら,Diabetes,2005年,第54,p.3358−3370
Alexander T.ら,Arch Intern Med.,2005年,第165巻,p.1154−1160

発明が解決しようとする課題

0018

本発明は、フィブラート系薬剤を有効成分として含有するアディポネクチン受容体の発現賦活薬、それを用いた肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療薬を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0019

本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、フィブラート系薬剤が優れたアディポネクチン受容体発現賦活作用を示すこと、特にフィブラート系薬剤のうちベザフィブラートが肝臓及び骨格筋組織においてアディポネクチン受容体の発現賦活作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。

0020

すなわち、本発明の要旨は、フィブラート系薬剤を有効成分とする肝臓及び骨格筋のアディポネクチン受容体発現賦活薬及びフィブラート系薬剤を有効成分とする肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療薬、に存する。

発明の効果

0021

本発明に係る予防又は治療薬は、優れた肝臓及び骨格筋のアディポネクチン受容体発現賦活作用を有するので、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の疾患に用いることができる。

発明を実施するための最良の形態

0022

フィブラート系薬物としては、例えば、ベザフィブラート、ベクロブラート、ビニフィブラート、シプロフィブラートクリノフィブラートクロフィブラート、クロフィブラートアルミニウムクロフィブリン酸エトフィブラート、フェノフィブラートゲムフィブロジル、ニコフィブラート、ピリフィブラート、ロニフィブラート、シムフィブラート、テオフィブラート、AHL−157等が挙げられ、ベザフィブラートが好ましい。

0023

本発明において、アディポネクチン受容体とは、AdipoR1及びAdipoR2を意味する。

0024

本発明のアディポネクチン受容体の発現賦活薬は、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症及び悪性腫瘍の予防又は治療のために用いることができる。対象となる悪性腫瘍としては、乳癌子宮内膜癌大腸癌腎細胞癌食道腺癌食道癌結腸癌直腸癌肝癌胆嚢癌膵臓癌腎臓癌非ホジキンリンパ腫多発性骨髄腫胃癌前立腺癌子宮癌子宮頸癌卵巣癌等が挙げられる。

0025

本発明に係る予防又は治療薬の剤形としては、例えば、散剤顆粒剤錠剤カプセル剤等の経口投与剤が挙げられる。これらの経口投与剤は、例えば錠剤の場合、有効成分に必要な賦形剤崩壊剤滑沢剤等を加え、常法により打錠して製造することができる。また、有効成分の投与量は、患者年齢、体重及び疾患の程度等により適宜決定することができる。例えば、ベザフィブラートでは、成人日当たり、通常100〜1000mg、好ましくは400〜600mgの範囲で投与する。

0026

本発明の内容を以下の実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。

0027

〔実施例1〕
マウス肝細胞由来Hepa1−6培養細胞(American Type Culture Collection製)にベザフィブラート100もしくは300μmol/L、又はフェノフィブラート100もしくは300μmol/L又は溶媒DMSO〔最終濃度1%〕)(コントロール群)を添加し、24時間後にSVTotal RNA Isolation SystemTM(プロメガ株式会社)を用いてTotal RNAを精製した。得られたRNAを鋳型として、ExScriptTMRTreagent Kit(タカラバイオ株式会社)にて逆転写反応をかけ、サンプルをcDNAに変換し、これを鋳型として文献公知のAdipoR1のプライマー(Bluer M.ら,2005年, Biochem Biophys Res Comm.,第329巻,p.1127−1132)またはPerfect RealTimeサポートシステムAdipoR2プライマー(タカラバイオ株式会社)を用いて SYBRTM Premix ExTaqTM (タカラバイオ株式会社) にてリアルタイム定量PCRを行った。この結果より、各組織におけるAdipoR1及びAdipoR2のmRNA量を算出した。また、内部標準物質であるPredeveloped TaqMan Assay Reagents ribosomal RNA ribosomal RNA(アプライドバイオシステムジャパン株式会社)を用いて同様にribosomal RNA量を算出し,この値との比(標的のmRNA量/ribosomal RNA量)を各mRNA発現量として解析した。反応はApplied Biosystems GeneAmp5700 SDS(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用いた。結果を図1に示す。

0028

ベザフィブラートはHepa1−6培養細胞におけるAdipoR1及びAdipoR2の発現量をコントロール群に比較して有意に増加させた。

0029

〔実施例2〕
2型糖尿病モデルマウスである遺伝的レプチン受容体欠損マウス(BKS.Cg−+Leptdb/+Leptdb/Jclマウス;以下、db/dbマウスという)に1%メチルセルロース溶液(コントロール群)、ベザフィブラート100mg/kgもしくは300mg/kg、又はフェノフィブラート300mg/kgを1日1回経口反復投与した。8週間投与後に、20%抱水クロラール和光純薬工業株式会社)腹腔内投与による麻酔を施し、肝臓組織及び骨格筋組織を摘出した。摘出した組織より、RNA抽出試薬ISOGEN(株式会社ニッポンジーン)を用いてtotal RNAを抽出し、さらにRNeasy Micro Kit(株式会社キアゲン)を用いてtotal RNAを精製した。得られたRNAを鋳型として、ExScriptTMRTreagent Kit(タカラバイオ株式会社)にて逆転写反応をかけ、サンプルをcDNAに変換する。これを鋳型として実施例記載と同様の方法でリアルタイム定量PCRを行い、各組織におけるAdipoR1及びAdipoR2のmRNA発現量を定量した。結果を図2に示す。

0030

ベザフィブラートは肝臓及び骨格筋におけるAdipoR1及びAdipoR2の発現量をコントロール群に比較して有意に増加させた。

0031

〔実施例3〕
db/dbマウスに1%メチルセルロース溶液(コントロール群)、ベザフィブラート100mg/kgもしくは300mg/kg、又はフェノフィブラート300mg/kgを1日1回経口反復投与した。8週間投与後に尾静脈より採血を行い、血中糖化ヘモグロビン値、血漿中グルコース濃度、血漿中トリグリセライド濃度及び血漿中アディポネクチン濃度を測定した。結果を図3に示す。

0032

ベザフィブラートの反復投与は、4週間後の血中糖化ヘモグロビン値、血漿中グルコース濃度及び血漿中トリグリセライド濃度をコントロール群に比較して有意に低下させた。一方、フェノフィブラートの反復投与は、4週間後の血漿中トリグリセライド濃度をコントロール群に比較して有意に低下させた。

0033

このように、ベザフィブラート及びフェノフィブラートはdb/dbマウスの糖尿病及び高脂血症を改善した。

0034

上より、ベザフィブラートは肝臓及び骨格筋におけるAdipoR1及びAdipoR2の発現量を増加させ、肝臓及び骨格筋におけるアディポネクチン作用を活性化することが示された。したがって、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症もしくは悪性腫瘍の予防又は治療に応用される。

0035

本発明に係る予防又は治療薬は、肝臓及び骨格筋における優れたアディポネクチン受容体(AdipoR1及びAdipoR2)発現賦活作用を有するので、肥満を伴うメタボリックシンドローム、肥満症、肝線維症、悪性腫瘍等の疾患に用いることができる。

図面の簡単な説明

0036

マウス肝細胞由来Hepa1−6培養細胞にベザフィブラート及びフェノフィブラートを添加24時間後の細胞中のAdipoR1及びAdipoR2mRNA発現量を示したグラフである。棒グラフは、左から、Control:コントロール群;BF100:ベザフィブラート100μmol/L添加群;BF300:ベザフィブラート300μmol/L添加群;FEN100:フェノフィブラート100μmol/L添加群;FEN300:フェノフィブラート300μmol/L添加群;のAdipoR1及びAdipoR2 mRNA発現量をそれぞれ示す。縦軸は、コントロール群のmRNA発現量を100%とした各群の発現量の平均値(%)及び標準誤差を示す。図中、*及び**はそれぞれ有意水準5%、1%未満で統計的有意差が認められたことを示す。
ベザフィブラート及びフェノフィブラート8週間反復投与後のdb/dbマウスの(A)肝臓及び(B)骨格筋におけるAdipoR1及びAdipoR2 mRNA発現量をそれぞれ示したグラフである。棒グラフは、左から、Control:コントロール群;BF100:ベザフィブラート100mg/kg投与群;BF300:ベザフィブラート300mg/kg投与群;FEN300:フェノフィブラート300mg/kg投与群;のAdipoR1及びAdipoR2 mRNA発現量をそれぞれ示す。縦軸は、コントロール群のmRNA発現量を100%としたときの各群の発現量の平均値(%)及び標準誤差を示す。図中、*及び**は図1と同じ意味である。
ベザフィブラート及びフェノフィブラート8週間反復投与によるdb/dbマウスの糖尿病及び高脂血症改善効果を示したグラフである。(A)は糖化ヘモグロビン値(%);(B)は血漿中グルコース濃度(mg/dL);(C)は血漿トリグリセライド濃度(mg/dL);(D)は血漿中アディポネクチン濃度(ng/mL)をそれぞれ示したグラフである。各グラフにおいて、Nは正常対照群;Cはコントロール群;BF100、BF300、FEN300は、図2と同じ意味である。各縦軸は、それぞれの平均値及び標準誤差を示す。図中、#及び##は正常対照群とコントロール群間にそれぞれ有意水準5%、1%未満で統計的有意差が認められたことを示し、*及び**は図1と同じ意味である。

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