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技術 生体物質複合体、並びに、生体物質複合体担持体、対象物質の精製方法、アフィニティークロマトグラフィー用容器、分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置及びセンサーチップ

出願人 三菱化学株式会社株式会社LSIメディエンス
発明者 五十島健史花崎美奈子田中裕之白谷俊史竹内久雄和田康裕金森芳和
出願日 2006年3月13日 (14年8ヶ月経過) 出願番号 2006-068319
公開日 2007年4月19日 (13年7ヶ月経過) 公開番号 2007-101520
状態 拒絶査定
技術分野 クロマトグラフィによる材料の調査、分析
主要キーワード 塊部分 混和状態 各測定部位 芳香族イソシアナート類 解析用途 機構解析 周期元素 多孔体膜
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2007年4月19日)のものです。
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図面 (12)

課題

所望の特定物質を従来よりも多量に含有できるようにした生体物質複合体を提供する。

解決手段

生体物質と、生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる、粒径が10μm以下の粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体に、該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結合している生物物質複合体であって、該生物複合体と、該特定物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、該生体物質複合体と該試料液とを分離し、該特定物質に結合した該対象物質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法

概要

背景

生体物質構造体は、例えば、医療診断遺伝子解析プロテオミクスに用いることができ、特に、アフィニティー精製及び医薬作用解析ツールなどとして用いて好適である。このようなアフィニティー精製及び医薬作用解析ツールへ用いられる構造物はこれまでにいくつか報告がなされている。

従来から用いられているアフィニティークロマトグラフィー担体は、例えば、無機系材料では、多孔質シリカゲル粒子等が挙げられ、天然高分子系では、アガロースデキストランセルロース等の多糖類からなる粒子などが挙げられ、合成高分子では、ポリスチレンポリアクリルアミド等からなる粒子などが用いられている。

しかしながら、これらの従来のアフィニティークロマトグラフィー担体を用いてアフィニティー精製等を行なった場合には、アフィニティークロマトグラフィー用担体への非特異吸着の抑制が困難である場合が多く、さらに精製純度を上げる場合には回収効率が低くなっていた。

近年、これらを解決する方法として、特許文献1に記載のように、ラテックス微粒子を用いたアフィニティー精製方法が提案されている。この方法は、ラテックス粒子ブラウン運動を利用するため、目的精製物のラテックス微粒子表面への特異的吸着が効率よく行なわれ、さらに、遠心分離により目的物吸着したラテックス回収するため、サンプル量が少なくてすむという利点を有する。

一方、遠心操作を行わず、磁力で分離を行なう技術も提案されていて、これを実現するために、磁性体を内包したラテックスの開発も行われている(特許文献2、非特許文献1)。
さらに、特許文献3では、グルタルアルデヒドアルブミン不溶化した凝集塊に、抗体又は抗原類を結合させた生化学微粒子が報告されている。

特開平10−195099号公報
特開2003−327784号公報
特許第2836009号公報
阿部正紀,半田宏, BIO INDUSTRY, Vol.21, No.8, p.7.

概要

所望の特定物質を従来よりも多量に含有できるようにした生体物質複合体を提供する。生体物質と、生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる、粒径が10μm以下の粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体に、該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結合している生物物質複合体であって、該生物複合体と、該特定物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、該生体物質複合体と該試料液とを分離し、該特定物質に結合した該対象物質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法。なし

目的

本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、所望の特定物質を従来よりも多量に含有できるようにした生体物質複合体及びそれを有する生体物質複合体担持体を提供し、これにより、非特異的吸着を抑制して、対象物質を高効率且つ容易に分離又は分析できるようにした、対象物質の精製方法、アフィニティークロマトグラフィー用容器分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置及びセンサーチップを提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

生体物質と、該生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる、粒径が10μm以下の粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体に、該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結合していることを特徴とする、生体物質複合体

請求項2

該粒子状塊同士の間に空間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の生体物質複合体。

請求項3

該生体物質複合体の重量に対する、該生体物質の重量の比率が0.1以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の生体物質複合体。

請求項4

乾燥状態で30nm以上の径を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項5

該化合物の少なくとも1種が、該生体物質と結合可能な官能基を2点以上有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項6

該化合物が無電荷であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項7

該化合物が、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項8

該化合物の分子量が1000以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項9

液体中に混和した状態での該化合物の径が1nm以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項10

該生体物質が、生体分子であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項11

該生体分子が、タンパク質であることを特徴とする、請求項10に記載の生体物質複合体。

請求項12

該特定物質が、金属キレートビタミン、糖、グルタチオンボロン酸、タンパク質、抗原核酸生理活性物質、脂質、ホルモン環境ホルモン及びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項13

該特定物質と該生体物質とが、親水性分子を介して結合していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の生体物質複合体。

請求項14

該親水性分子がエチレンオキサイドを含有していることを特徴とする請求項13に記載の生体物質複合体。

請求項15

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体が固相担体に固定されてなることを特徴とする、生体物質複合体担持体

請求項16

該生体物質複合体の厚みが5nm以上であることを特徴とする、請求項15に記載の生体物質複合体担持体。

請求項17

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体と、上記特定物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、上記生体物質複合体と上記試料液とを分離し、上記特定物質に結合した上記対象物質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法

請求項18

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体を保持した流路に、上記特定物質に特異的に相互作用する対象物質を含む試料液を流通させ、上記流路から流出する溶出液のうち、上記対象物質を含む分画回収することを特徴とする、対象物質の精製方法。

請求項19

流体収納しうる容器本体と、該容器本体内に保持された、請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体とを備えたことを特徴とするアフィニティークロマトグラフィー用容器。

請求項20

流路を形成された基板と、該流路に保持された、請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体とを備えたことを特徴とする、分離用チップ

請求項21

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体であって、特定の構造を有する物質を特異的に吸着させうる特定物質を用いた生体物質複合体と、対象物質を含有する試料液とを接触させ、上記生体物質複合体と上記試料液とを分離し、上記特定物質に吸着した上記対象物質の量を測定して、上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、対象物質の解析方法

請求項22

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体であって、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた生体物質複合体を保持した流路に、対象物質を含む試料液を流通させ、上記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定して、上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、対象物質の解析方法。

請求項23

流路を形成された基板、及び、該流路に保持され、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体を備える分離用チップと、該分離用チップの該流路に、対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、該流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えることを特徴とする、対象物質の解析用分離装置

請求項24

流路を形成された基板、及び、上記流路に保持され、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体を備える分離用チップを装着するチップ装着部と、該チップ装着部に上記分離用チップを装着した場合に、上記流路に、対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、上記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えることを特徴とする、対象物質の解析分離装置

請求項25

請求項1〜14のいずれか1項に記載の生体物質複合体を備えたことを特徴とする、センサーチップ

技術分野

0001

本発明は、生体物質複合体、並びに、これを用いた生体物質複合体担持体対象物質精製方法アフィニティークロマトグラフィー容器分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置及びセンサーチップに関する。

背景技術

0002

生体物質構造体は、例えば、医療診断遺伝子解析プロテオミクスに用いることができ、特に、アフィニティー精製及び医薬作用解析ツールなどとして用いて好適である。このようなアフィニティー精製及び医薬作用解析ツールへ用いられる構造物はこれまでにいくつか報告がなされている。

0003

従来から用いられているアフィニティークロマトグラフィー用担体は、例えば、無機系材料では、多孔質シリカゲル粒子等が挙げられ、天然高分子系では、アガロースデキストランセルロース等の多糖類からなる粒子などが挙げられ、合成高分子では、ポリスチレンポリアクリルアミド等からなる粒子などが用いられている。

0004

しかしながら、これらの従来のアフィニティークロマトグラフィー担体を用いてアフィニティー精製等を行なった場合には、アフィニティークロマトグラフィー用担体への非特異吸着の抑制が困難である場合が多く、さらに精製純度を上げる場合には回収効率が低くなっていた。

0005

近年、これらを解決する方法として、特許文献1に記載のように、ラテックス微粒子を用いたアフィニティー精製方法が提案されている。この方法は、ラテックス粒子ブラウン運動を利用するため、目的精製物のラテックス微粒子表面への特異的吸着が効率よく行なわれ、さらに、遠心分離により目的物吸着したラテックス回収するため、サンプル量が少なくてすむという利点を有する。

0006

一方、遠心操作を行わず、磁力で分離を行なう技術も提案されていて、これを実現するために、磁性体を内包したラテックスの開発も行われている(特許文献2、非特許文献1)。
さらに、特許文献3では、グルタルアルデヒドアルブミン不溶化した凝集塊に、抗体又は抗原類を結合させた生化学微粒子が報告されている。

0007

特開平10−195099号公報
特開2003−327784号公報
特許第2836009号公報
阿部正紀,半田宏, BIO INDUSTRY, Vol.21, No.8, p.7.

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、遠心分離操作等が煩雑となり、自動化および無人化するのが困難であり、近年の高いサンプル処理能力を要求される創薬分野や臨床検査の分野においては、非合理的となりうる。
また、特許文献2及び非特許文献1に記載の技術においては、磁性体を完全にカプセル化し、タンパク質の非特異吸着を抑制する必要があり、また、酸化鉄などを磁性体として利用する場合、鉄イオンなどの溶出を抑える必要がある。加えて、比表面積の大きな磁性体内包ラテックス粒子であるために、分散安定性を保つのが困難となる。また、ラテックス粒子及び磁性体ラテックス粒子とも作製が難しく、工業化に向けた大量生産品質保持に対して課題が残る。

0009

また、特許文献3の技術においては、グルタルアルデヒド等の低分子化合物を使用することにより、タンパク質が変性してしまう虞、さらに変性したタンパク質への非特異吸着の虞、構造体が緻密に結合することにより、内部に有効な空間ができず、反応性が低下する虞、グルタルアルデヒドなどの疎水性化合物による非特異吸着の虞などがある。

0010

そのため、医療や診断、遺伝子解析、プロテオミクスの分野、特に、アフィニティー精製若しくは医薬作用解析ツールの開発において、非特異吸着が少なく、高効率、短時間で処理ができるアフィニティークロマトグラフィー用担体として使用できる部材の開発が要望されていた。

0011

本発明は、上記の課題に鑑みて創案されたもので、所望の特定物質を従来よりも多量に含有できるようにした生体物質複合体及びそれを有する生体物質複合体担持体を提供し、これにより、非特異的吸着を抑制して、対象物質を高効率且つ容易に分離又は分析できるようにした、対象物質の精製方法、アフィニティークロマトグラフィー用容器、分離用チップ、対象物質の解析方法、対象物質の解析用分離装置及びセンサーチップを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明の発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、生体物質と、該生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体に、検体相互作用しうる所望の特定物質を結合させることにより、非特異吸着を抑制し、高効率な反応性、高効率なアフィニティー分離をすることができることを見出し、本発明を完成させた。

0013

即ち、本発明の要旨は、生体物質と、該生体物質に結合可能な化合物とが結合してなる、粒径が10μm以下の粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体に、該生体物質及び該化合物以外の特定物質が結合していることを特徴とする、生体物質複合体に存する(請求項1)。これにより、特定物質の特性を保ったまま、従来よりも多量の特定物質を担持した生体物質複合体を提供することができる。また、比表面積を増大させ、高効率な反応性を実現できるようになる。

0014

また、該粒子状塊同士の間には空間が形成されていることが好ましい(請求項2)。これにより、この空間を、特定物質を有効に作用させることができる反応場として用いることが可能となる。

0015

さらに、生体物質複合体の重量に対する、該生体物質の重量の比率が0.1以上であることが好ましい(請求項3)。これにより、該生体物質複合体中の生体物質含有比をより大きくすることができるようになり、これに伴って特定物質の含有比率も大きくさせることが可能となるため、特定物質の特質を十分に活用することが可能となる。

0016

また、本発明の生体物質複合体は、乾燥状態で30nm以上の径を有することが好ましい(請求項4)。該生体物質複合体の大きさを上記範囲とすることにより、より多くの対象物質などを相互作用させ、分離することが可能となる。

0017

さらに、該化合物の少なくとも1種が、該生体物質と結合可能な官能基を2点以上有することが好ましい(請求項5)。これにより、容易に該生体物質複合体を形成させることができるようになる。

0018

また、該化合物は無電荷であることが好ましい(請求項6)。これにより、生体物質複合体が、対象物質などの物質と非特異的相互作用を生じることを抑制することができる。ここで、非特異相互作用とは、生体物質複合体を用いて、特定物質と対象物質などとの間に所定の吸着や相互作用を生じさせようとする場合に、目的とする吸着や相互作用以外に生じる相互作用のことをいう。

0019

さらに、該化合物は、水に混和しうると共に、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうるものが好ましい(請求項7)。これにより、生体物質複合体の製造時に用いることのできる溶媒の幅を広げることができ、生体物質複合体を様々に設計することができる。また、生体物質複合体を使用する際に何らかの溶媒や分散媒等を用いる場合には、その用いることができる溶媒や分散媒の種類を増やすことができるため、生体物質複合体の用途を広げることができるようになる。

0020

また、該化合物の分子量は1000以上であることが好ましい(請求項8)。これにより、生体物質複合体の作製時に、生体物質に対する内部架橋を防止することが可能となり、効率的に生体物質複合体を作製することができるようになる。

0021

さらに、液体中に混和した状態での該化合物の径が1nm以上であることが好ましい(請求項9)。これによっても、生体物質複合体の作製時に、生体物質に対する内部架橋を防止することが可能となり、効率的に生体物質複合体を作製することができるようになる。

0022

また、該生体物質は生体分子であることが好ましく(請求項10)、特に、タンパク質であることがより好ましい(請求項11)。これにより、本発明の生体物質複合体にタンパク質の特性を利用することができる。具体的には、例えば該生体物質にアルブミンを用いた場合、非特異的吸着を抑制することができる。また別の側面では、該生体物質にアビジンを用いれば、ビオチン化した特定物質を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。さらに別の側面では、該生体物質にプロテインAを用いれば、特定物質に抗体を用いた場合、抗体を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。

0023

さらに、該特定物質は、金属キレートビタミン、糖、グルタチオンボロン酸、タンパク質、抗原、核酸生理活性物質、脂質、ホルモン環境ホルモン及びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい(請求項12)。中でも、特定物質としては、金属キレート、ビオチン、糖、グルタチオン、ボロン酸、抗体、抗原、レセプター、生理活性物質及びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることがより好ましい。特定物質として金属キレート、グルタチオン、糖を用いれば、アフィニティータグ融合タンパク質の精製において、アフィニティータグとして、ポリヒスチジン(His−タグ)、グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質を用いた場合、有効に相互作用させて精製や分離を行なうことができる。さらに、特定物質として糖を用いれば、ウイルスを特異的に相互作用させることができる。また、特定物質としてボロン酸を用いることにより、糖鎖及び糖を含む化合物、例えば、糖鎖を有するタンパク質を有効に精製もしくは相互作用させることができる。さらに、特定物質として酵素を用いた場合、基質を相互作用させることができ、有効な固定化酵素を提供することができる。また、特定物質として脂質を用いることにより、脂質結合タンパク質スクリーニング若しくは分離・精製を行なうことができる。さらに、特定物質として、ホルモンや環境ホルモンを用いた場合、それに結合する生体物質をスクリーニングすることができる。さらに、特定物質としてビオチン等のビタミンを用いれば、作用物質にアビジン、ストレプトアビジン、もしくはアビジン誘導体を用いることで、ビオチン−アビジン結合により、効果的に精製もしくは相互作用させることができる。また、特定物質として抗体もしくは抗原を用いれば、特定物質を抗体とした場合には抗原を、特定物質を抗原とした場合には抗体を、有効に精製もしくは相互作用させることができる。さらに、特定物質として核酸(例えば、DNAやRNA等の核酸分子やPNAなどのペプチド核酸)を用いれば、本発明の生体物質複合体を遺伝子相互作用解析のために用いることができる。また、特定物質としてFK506(Chemistry & Biology Vol.9 691-698 (2002))などの生理活性物質を用いて、FKBP12などの結合たんぱく質を解析したり、もしくは、疾患に寄与するレセプターなどのたんぱく質を用いれば、本発明の生体物質複合体を医薬候補化合物作用機構解明ツールもしくはスクリーニングツールとして用いることができる。さらに、特定物質としてキレート形成基を用いれば、金属イオンの分離等に用いることができる。

0024

さらに、該特定物質と該生体物質とは、親水性分子を介して結合していることが好ましい(請求項13)。また、親水性分子は、エチレンオキサイドを含有していることが好ましい(請求項14)。これにより、本発明の生体物質複合体を用いてアフィニティー分離を行なう際に、効果的に検体と特定物質との相互作用をさせることができる。

0025

本発明の別の要旨は、上記の生体物質複合体が固相担体に固定されてなることを特徴とする、生体物質複合体担持体に存する(請求項15)。これにより、該生体物質複合体について、チップ(基板)、アレイビーズ分離膜マイクロタイタープレートマイクロ流路多孔体膜等へ、その利用形態を広げることが可能となる。

0026

また、生体物質複合体担持体においては、該生体物質複合体の厚みが5nm以上であることが好ましい(請求項16)。該生体物質複合体の大きさを上記範囲とすることにより、この生体物質複合体担持体を用いて分離を行なう際に、より多くの対象物質などを分離することが可能となる。

0027

本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体と、上記特定物質に特異的に吸着しうる対象物質を含む試料液とを接触させ、上記生体物質複合体と上記試料液とを分離し、上記特定物質に結合した上記対象物質を遊離させることを特徴とする、対象物質の精製方法に存する(請求項17)。これにより、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0028

本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体を保持した流路に、上記特定物質に特異的に相互作用する対象物質を含む試料液を流通させ、上記流路から流出する溶出液のうち、上記対象物質を含む分画を回収することを特徴とする、対象物質の精製方法に存する(請求項18)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0029

本発明の更に別の要旨は、流体収納しうる容器本体と、該容器本体内に保持された、上記の生体物質複合体とを備えたことを特徴とするアフィニティークロマトグラフィー用容器に存する(請求項19)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0030

本発明の更に別の要旨は、流路を形成された基板と、該流路に保持された、上記の生体物質複合体とを備えたことを特徴とする、分離用チップに存する(請求項20)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0031

本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体であって、特定の構造を有する物質を特異的に吸着させうる特定物質を用いた生体物質複合体と、対象物質を含有する試料液とを接触させ、上記生体物質複合体と上記試料液とを分離し、上記特定物質に吸着した上記対象物質の量を測定して、上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、対象物質の解析方法に存する(請求項21)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0032

本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体であって、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた生体物質複合体を保持した流路に、対象物質を含む試料液を流通させ、上記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定して、上記対象物質の構造を解析することを特徴とする、対象物質の解析方法に存する(請求項22)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0033

本発明の更に別の要旨は、流路を形成された基板、及び、該流路に保持され、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた上記の生体物質複合体を備える分離用チップと、該分離用チップの該流路に、対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、該流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えることを特徴とする、対象物質の解析用分離装置に存する(請求項23)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0034

本発明の更に別の要旨は、流路を形成された基板、及び、上記流路に保持され、特定の構造を有する物質と特異的に相互作用しうる特定物質を用いた上記の生体物質複合体を備える分離用チップを装着するチップ装着部と、該チップ装着部に上記分離用チップを装着した場合に、上記流路に、対象物質を含む試料液を流通させる試料液供給部と、上記流路から流出する溶出液の分画中の上記対象物質の量を測定する測定部とを備えることを特徴とする、対象物質の解析分離装置に存する(請求項24)。これによっても、非特異的吸着を抑制して、高効率で分離を容易に行なえるようになり、非特異的吸着を抑制したアフィニティー精製若しくは医薬作用等の解析ツール、さらには診断用解析ツールを実現することができる。

0035

本発明の更に別の要旨は、上記の生体物質複合体を備えたことを特徴とする、センサーチップに存する(請求項25)。生体物質複合体をDNAチップ蛋白チップ等のセンサーチップに用いることにより、非特異的吸着の抑制が可能、且つ、高反応性のセンサーチップを実現することができる。

発明の効果

0036

本発明の生体物質複合体及び生体物質複合体担持体によれば、特定物質の反応性を保ったまま多量の特定物質を含有する構造体を得ることができる。
また、本発明の対象物質の精製方法、アフィニティークロマトグラフィー用容器、分離用チップ、対象物質の解析方法、及び、対象物質の解析用分離装置によれば、非特異的吸着を抑制して、高効率な分離を容易に行なうことが可能となり、精製や解析を容易且つ高精度に行なうことが可能となる。
さらに、本発明のセンサーチップによれば、非特異的吸着の抑制が可能になると共に分析を高感度に行なうことが可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0037

以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態や例示物などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。

0038

[I.生体物質複合体]
本発明の生体物質複合体は、特定物質が生体物質構造体に結合したものである。また、生体物質複合体は、特定物質が結合した生体物質及び/又は結合用化合物を用いて構成された生体物質構造体ということもできる。
生体物質構造体は、生体物質、及び、この生体物質と結合可能な化合物(以下適宜、「結合用化合物」という)から構成される構造体であり、生体物質複合体においては、特定物質は、この生体物質構造体の生体物質及び/又は結合用化合物に結合している。即ち、特定物質は、生体物質及び結合用化合物の一方にのみ結合していてもよく、両方に結合していてもよい。なお、生体物質構造体には、通常、結合用化合物よりも生体物質のほうが多く存在するため、特定物質をより多量に生体物質複合体に結合させる観点からは、特定物質は少なくとも生体物質には結合するようにしておくことが好ましい。

0039

[I−1.特定物質]
特定物質は、本発明の生体物質複合体を構成する要素であり、当該特定物質が結合している生体物質構造体を構成する生体物質及び結合用化合物以外の物質であれば、その目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。
中でも、本発明の生体物質複合体を対象物質の精製や解析用途に用いる場合には、通常は、特定物質は、所定の物質(以下適宜、特定物質と相互作用する物質を「作用物質」という)と相互作用しうるものを用いるようにする。

0040

例えば、生体物質複合体を対象物質の精製などの用途で用いる場合には、特定物質として作用物質と相互作用できるものを用いるようにし、また、当該作用物質に該当する物質(即ち、特定物質と相互作用しうる物質)を対象物質として用いる。そして、上記の相互作用を利用して、対象物質の分離精製を行なうようにする。

0041

また、例えば、生体物質複合体を対象物質の解析用途に用いる場合にも、特定物質としては上記の作用物質と相互作用できるものを用いる。そして、対象物質と特定物質とが相互作用するかどうかを試し、対象物質と特定物質とが相互作用を生じるようであれば、上記の対象物質は作用物質のうちの1種に該当する、即ち、対象物質が特定物質と相互作用を生じるような特定の構造を有している、と解析することができる。これを利用し、対象物質の構造や、作用物質の構造を解析することが可能である。

0042

ここで、特定物質と作用物質との「相互作用」とは、特に限定されるものではないが、通常は、共有結合イオン結合キレート結合配位結合疎水結合水素結合ファンデルワールス結合、及び静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる物質間に働く力による作用を示す。ただし、本明細書に言う「相互作用」との用語は最も広義解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。

0043

さらに、生体物質複合体を精製や解析用途に用いる場合には、上記の相互作用は精製や解析が可能である限り任意である。その場合の相互作用の具体例としては、抗原と抗体との間の結合及び解離、タンパク質レセプターとリガンドとの間の結合及び解離、接着分子相手方分子との間の結合及び解離、酵素と基質との間の結合及び解離、アポ酵素補酵素との間の結合及び解離、核酸とそれに結合する核酸又はタンパク質との間の結合及び解離、情報伝達系におけるタンパク質同士の間の結合及び解離、糖タンパク質とタンパク質との間の結合及び解離、糖鎖とタンパク質との間の結合及び解離、生理活性物質(医薬または医薬候補化合物)とタンパク質等の生体物質との結合及び解離、アビジン系タンパク質とビオチンとの結合及び解離、金属キレート、グルタチオン、マルトース等の糖とアフィニティータグ融合タンパクとの結合及び解離、糖及び糖鎖とウィルスとの結合及び解離、キレート形成基と金属イオンとの結合及び解離などが挙げられる。
なお、精製や解析の方法によっては、対象物質に対して、相互作用の中でも特に吸着が可能であるものを用いるようにする場合もある。

0044

特定物質の具体例としては、金属キレート、グルタチオン、糖、ビタミン、ボロン酸、タンパク質、抗原、核酸、生理活性物質、脂質、ホルモン、環境ホルモン、キレート形成基などが挙げられる。
なお、特定物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよいが、特定の対象物質を分離する場合には通常は1種のみを用いる。

0045

このうち、金属キレート、グルタチオン、糖などは、例えば、アフィニティータグ融合タンパク質の分離の際に用いて好適である。
アフィニティータグ融合タンパク質の発現および精製は、組み換えタンパク質を大量に得るための一つの方法である。その具体例について簡単に説明すると、タンパク質をアフィニティータグとなるアミノ酸配列で修飾し、このアフィニティータグに対して特異的に相互作用する特定物質を用いて分離を行なうことにより、目的とするタンパク質の精製等を行なう手法などが挙げられる。このようなアフィニティータグとしては、例えば、ポリヒスチジン(His−タグ)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、カルモジュリンなどが挙げられる。この中で好ましいアフィニティータグはHis−タグ、GSTであり、特に好ましくはHis−タグである。

0046

具体例を挙げると、ポリヒスチジンを有する検体、例えばHis−タグを有する組み替えタンパク質などを精製する場合には、特定物質としては金属キレートを使用することができる。この場合、ヒスチジンと金属キレートとのアフィニティー相互作用を利用することになる。この相互作用は、ポリヒスチジン内のイミダゾール環に存在する片方窒素が金属の不飽和配位座に配位するために生じるものと考えられている。

0047

上記のHis−タグを用いるときに特定物質として金属キレートを用いる場合には、特定物質とする金属キレートに含まれる金属イオンの具体的な種類は任意であるが、一般的には遷移金属イオンが好ましい。中でも、周期律表の第4周期元素である鉄、コバルトニッケル、銅、亜鉛の各イオンは、製造価格の点及び分離精製工程において漏出しにくい点で好ましい。特に好ましくはニッケルである。

0048

金属キレートを形成させるためのキレート試薬としては、金属キレートを形成できれば、使用するキレート試薬に制限は無い。キレート試薬の具体例としては、イミノ二酢酸及びその誘導体、ニトリロトリ酢酸及びその誘導体などが挙げられる。また、市販されている試薬としては、例えば、AB−NTA、Maleimido−C3−NTA、Maleimido−C7−NTA(同仁化学研究所製)などが挙げられる。なお、キレート試薬は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

0049

さらに、キレート試薬を用いず、生体物質が有する官能基を修飾する方法もある。例えば、生体物質が有するアミノ基に対して、モノクロロ酢酸モノブロモ酢酸モノクロロプロピオン酸、モノブロモプロピオン酸、又はこれらの金属塩等で修飾し、これに金属イオンを結合させ、特定物質である金属キレートとすることも可能である。

0050

また、アフィニティータグとしてGST、マルトース結合たんぱく質などを用いた場合は、特定物質としては、例えば、グルタチオン;マルトース等の糖などを、それぞれ用いることができる。

0051

さらに、本発明の生体物質複合体を用いて抗体抗原反応を生ぜしめる場合には、特定物質として、抗体もしくは抗原を用いることができる。ここで用いられる抗体、抗原は任意であるが、例えば、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab’)2、Fab’、Fabなどが挙げられる。なお、特定物質として抗体もしくは抗原を用いた生体物質複合体を診断用解析ツールに用いる場合、作用物質を含む対象物質(検体)は、例えば、血液、血清血漿髄液、尿、糞便鼻汁唾液などの体液細胞組織やそれらの抽出液などが挙げられる。

0052

また、本発明の生体物質複合体を遺伝子解析に用いることもできる。この場合、特定物質としては、例えば、ヌクレオチドオリゴヌクレオチド、核酸(DNA,RNA,PNA)などを用いることができる。なお、この時の核酸は二本鎖でも一本鎖でもよい。

0053

さらに、本発明の生体物質複合体を医薬の作用機構を明らかにするために用いる場合は、特定物質としては、生理活性物質、例えば、生理活性能を有する化合物を用いることができる。生理活性物質としてFK506などの医薬を用いた場合には、FKBP12などの結合たんぱく質を解析することができる。また、生理活性物質として医薬候補化合物を用い、疾患に寄与するレセプターなどのたんぱく質を作用物質として用いた場合には、本発明の生体物質複合体を医薬候補化合物の作用機構解明ツールもしくはスクリーニングツールとして用いることができる。さらに、逆に、膜タンパク質やレセプターなどのたんぱく質を特定物質として用いて、作用物質として医薬候補化合物などの化合物を用いた場合も、医薬候補化合物の作用機構解明ツールもしくはスクリーニングツールとして用いることができる。

0054

また、本発明の生体物質複合体を、ウイルスを検知するためのセンサーとする場合は、特定物質として、糖及び糖鎖を用いることができる。このような糖の例として、シアリル多糖などが挙げられる。
さらに、本発明の生体物質複合体を、糖を有する化合物、例えば、糖鎖含有タンパク質などの分離・精製に用いる場合には、特定物質としては、ボロン酸を用いることができる。

0055

また、特定物質としてタンパク質を用いる場合、そのタンパク質の例としては、上述した抗体やレセプターなどの他、酵素などを挙げることができる。特定物質として酵素を用いることにより、高効率な固定化酵素を提供することができる。この場合、酵素を繰り返し使用することが可能となる。
また、特定物質としてタンパク質、DNA、RNAなどの核酸、低分子を用いた場合、作用物質として、タンパク質−核酸連結分子を用いたタンパク質のスクリーニング方法及び機能改変方法を提供することができる。この方法は本発明の生体物質複合体を用いて、酵母ツーハイブリッド、TAPファージディスプレイ、IVV(in vitro virus)、mRNAディスプレイ、STABLEリボゾーム・ディスプレイなどの公知の解析技術を用いることができる(例えば、川ら、「蛋白核酸 酵素」、Vol.48、No.11、P1474(2003)等参照)。

0056

さらに、特定物質として脂質を用いることにより、本発明の生体物質複合体を用いて、脂質結合タンパク質などのスクリーニング若しくは分離・精製を行なうことができる。
また、ホルモンや環境ホルモンの作用機構を調べるために、特定物質としてホルモンや環境ホルモンを用いることもできる。その場合、本発明の生体物質複合体を用いて、ホルモンや環境ホルモンに結合する生体分子をスクリーニングすることが可能となる。
さらに、特定物質としてビタミンを用いる場合、例えば、ビオチンなどを用いることができる。これにより、作用物質として、アビジンを結合させたタンパク質などの物質の精製などに用いることができる。
また、特定物質として、糖及び糖鎖を用いることにより、例えばレクチンなどの糖結合タンパク質の分離・精製を行なうことができる。このような糖の例として、マンノースを含有する糖やシアリル多糖などが挙げられる。

0057

また、本発明の生体物質複合体を金属イオンの分離又は除去に用いる場合には、特定物質としては、キレート形成基を用いることができる。このキレート形成基を形成するには、例えば上述のキレート試薬を用いることができる。さらに、例えば、キレート試薬を用いずに生体物質が有する官能基を修飾する方法において例示した化学種も、キレート形成基として挙げられる。具体的なキレート形成基の例としては、イミノジカルボン酸基、イミノプロピオン酸基、エチレンジアミン三酢酸基、エチレンジアミン四酢酸基、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸基、ヒドロキシエチルイミノ三酢酸基などが挙げられる。

0058

なお、特定物質構造体をアフィニティー精製や解析などのアフィニティー分離技術を利用した分離精製に用いた場合、上記の特定物質が、分離精製対象である対象物質の標的物質となる。
上述したものの中でも、特定物質としては、金属キレート、ビオチン、糖、グルタチオン、ボロン酸、抗体、抗原、レセプター、生理活性物質及びキレート形成基からなる群より選ばれる少なくともいずれかであることがより好ましい。

0059

[I−2.リンカー
本発明の生体物質複合体においては、特定物質は生体物質及び/又は結合用化合物に結合しているのであるが、特定物質と生体物質及び/又は結合用化合物とは直接に結合する以外にも、何らかのリンカーを介して結合していてもよい。通常は、リンカーを用いることにより、特定物質と対象物質との相互作用を高めることが可能となるため、リンカーを使用して特定物質と生体物質及び/又は結合用化合物とを間接的に結合させることが好ましい。

0060

リンカーに制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、親水性を有する分子(親水性分子)をリンカーとして用いることが好ましい。即ち、リンカーが親水性であることが好ましい。
リンカーが親水性であるためには、リンカーを構成する分子中に、例えば、アミノ基、カルボン酸基水酸基スルフォン酸基グリシジル基ニトリル基、エチレンオキサイド等の親水性の原子団が含まれるようにすることが望ましい。中でも、ポリエチレンオキサイド鎖は、タンパク質の非特異吸着を抑制することが知られているため、生体物質や対象物質としてタンパク質を用いる場合には、エチレンオキサイド鎖を含有するリンカーを用いることが望ましい。
なお、リンカーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。

0061

[I−3.生体物質構造体]
生体物質構造体は、図1(a)や図1(b)に示すように、生体物質と結合用化合物とが結合してなる粒子状塊が、互いに結合してなるものである。また、この粒子状塊は、通常、図2(a)に示すような生体物質と結合用化合物とが複数結合して図2(b)のように粒子状になったものであり、必ずしも完全な円形となっているとは限らないが、図1(a),(b)においては粒子状塊を模式的に円で示してある。

0062

詳しくは、生体物質に対して結合用化合物が結合官能基によって結合し、その構造の繰り返しによって、鎖状及び/又は網目状の構造を内部に持つ粒子状塊が形成される。さらにこの粒子状塊同士の結合も、通常粒子状塊に含まれる生体物質と結合用化合物との結合によって形成される。

0063

よって、生体物質構造体は、通常、下記式(A)で表される部分構造を2以上有する。
R1−R2 式(A)
{上記式(A)において、R1は生体物質を表わし、R2は結合用化合物を表わす。ただし、生体物質構造体が何らかの固相担体に結合している場合、R2は固相担体に直接結合していない結合用化合物を表わす。また、各R1,R2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。}

0064

即ち、生体物質構造体は、上記式(A)のように生体物質と結合用化合物とが結合した部分構造が、直鎖状及び/又は網目状に結合した構造体である。具体的には、上記式(A)のR1はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR2に結合し、R2はそれぞれ独立に他の1又は2以上のR1に結合している。ただし、生体物質構造体は、例えば生体物質R1同士や結合用化合物R2同士が結合した部分構造を含んでいてもかまわない。ここで、R1同士やR2同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用、電気的相互作用等の物理的相互作用による結合を示す。

0065

したがって、生体物質構造体は、結合用化合物同士の間には生体物質が存在し、また、生体物質同士の間には結合用化合物が存在する橋架け構造を少なくとも一部に有しており、生体物質及び結合用化合物の両方によって、生体物質構造体が構成されている。

0066

生体物質構造体において生体物質と結合用化合物が互いに橋架け構造を有しているかどうかは、例えば、結合用化合物を分解しないようにしながら生体物質を分解した場合に、生体物質構造体では生体物質構造体が大きく崩壊することにより確認することができる。さらに、崩壊したものを調べることにより、生体物質構成要素以外の生体物質構造体を構成する化合物を特定することができる。例えば従来の樹脂ビーズなどに直接生体物質を結合させ、樹脂ビーズが構造体を形成するものを用いた場合は、分解後にその樹脂ビーズが残ることとなる。生体物質の分解方法及び解析方法は後述する方法([I−5−4]等参照)を用いることができるが、上記の目的で用いる場合には、例示物の中で生体物質だけでなく結合用化合物も分解する虞があるものは、上記の橋架け構造の確認が正確に行えなくなる虞があるため、使用は避けるべきである。

0067

(1)生体物質
生体物質は、生体物質構造体を構成する要素であり、また、生体物質複合体を構成する要素でもある。この生体物質は、目的に応じて、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の物質を用いることができる。

0068

ただし、生体物質構造体に特定物質を固定化させて生体物質複合体を構成する観点からは、特定物質を生体物質に結合させる場合には、生体物質は特定物質と結合しうるものを用いる。また、生体物質が特定物質に対してリンカーを介して結合するようにする場合には、生体物質としては当該リンカーと結合しうるものを用いる。

0069

生体物質と特定物質又はリンカーとの結合は、生体物質複合体の種類や用途などに応じて、どのような結合であってもよい。
生体物質と特定物質又はリンカーとの結合の具体例を挙げると、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合などが挙げられるが、これらの分類に当てはまらない別の結合であってもよい。

0070

一方、特定物質を結合用化合物に結合させて生体物質には結合させないようにする場合には、生体物質としては用途に応じて任意のものを用いることができる。例えば、特定物質と何らかの作用物質との間で所定の相互作用を生じさせようとする場合には、生体物質としては、当該作用物質との間で非特異的な相互作用を生じないものを使用するようにすることが好ましい。

0071

生体物質の具体例を挙げれば、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、アルブミン、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチドアミノ酸サイトカイン、ホルモン、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA,RNA,PNA)、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、上述以外の生体物質由来高分子有機物質、低分子化合物、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などの生体分子などが挙げられる。

0072

また、このほか、細胞等の生体分子以外の物質を生体物質として用いることもできる。
さらに、イムノグロブリンやその派生物であるF(ab’)2、Fab’、Fab、レセプターや酵素とその派生物、核酸、天然あるいは人工のペプチド、人工ポリマー糖質、脂質、無機物質あるいは有機配位子、ウイルス、細胞等も、生体物質の例として挙げられる。

0073

また、上記の生体物質の例の中でも、タンパク質としては、タンパク質の全長であっても、結合活性部位を含む部分ペプチドであってもよい。また、アミノ酸配列、及びその機能が既知のタンパク質でも、未知のタンパク質でもよい。これらは、合成されたペプチド鎖生体より精製されたタンパク質、あるいはcDNAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳し、精製したタンパク質等でも標的物質として用いることができる。また、合成されたペプチド鎖は、これに糖鎖が結合した糖タンパク質であってもよい。これらのうち好ましくは、精製されたタンパク質である。

0074

タンパク質を使用することにより、本発明の生体物質複合体にタンパク質の特性を利用することができる。具体的には、例えば該生体物質にアルブミンを用いた場合、非特異的吸着を抑制することができる。また別の側面では、該生体物質にアビジンを用いれば、ビオチン化した特定物質を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。さらに別の側面では、該生体物質にプロテインAを用いれば、特定物質に抗体を用いた場合、抗体を容易に且つ多量に固定化することが可能となる。

0075

さらに、上記の生体物質の例の中でも、核酸としては、特に制限はなく、DNA、RNAの他、アプタマー等の核酸塩基、PNA等のペプチド核酸を用いることもできる。また、塩基配列あるいは機能が、既知の核酸でも、未知の核酸でもよい。中でも好ましくは、タンパク質に結合能力を有する、核酸としての機能及び塩基配列が既知のものか、あるいは、ゲノムライブラリー等から制限酵素等を用いて切断単離してきたものを用いることができる。

0076

また、上記の生体物質の例の中でも、糖鎖としては、その糖配列あるいは機能が、既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。好ましくは、既に分離解析され、糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
さらに、上記の生体物質の例の中でも、低分子化合物としては、上記の生体物質に要求される条件を満たす限り、特に制限はない。機能が未知のものでも、あるいはタンパク質に結合する能力が既に知られているものでも用いることができる。
なお、生体物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

0077

(2)結合用化合物
結合用化合物は、上記生体物質と結合しうる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。したがって、結合用化合物としては、上記生体物質と結合可能な官能基(以下適宜、「結合官能基」)を有する化合物を任意に用いることができる。
ここで、結合とは、通常、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、静電力による結合のうち一つ以上の結合から成り立つものを指す。ここで、好ましくは共有結合である。

0078

結合官能基としては、上記の生体物質に結合可能な官能基であれば他に制限はなく、任意の官能基を用いることができる。通常は、生体物質の種類や本発明の生体物質複合体の用途などに応じて適当なものを選択することが好ましい。
なお、結合官能基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。

0079

結合官能基は、通常、反応性基として共有結合を介して生体物質と結合するものと、非共有結合を介して生体物質と結合するものとに大別される。
共有結合により結合する場合、結合官能基の具体例としては、スクシンイミド基、エポキシ基アルデヒド基マレイミド基、p−ニトロフェニル基等が挙げられる。

0080

この場合、結合官能基と共有結合によって結合する生体物質としては、例えば、タンパク質、核酸、糖等が挙げられる。
生体物質がタンパク質である場合、通常は、タンパク質の表層に存在するアミノ基、ヒドロキシル基チオール基等の基と、結合用化合物の結合官能基とが結合する。この際、例えばアミノ基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、例えばチオール基が結合官能基と結合する場合、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。

0081

また、生体物質が核酸である場合、通常は、核酸の末端に導入されるアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等の基と、結合用化合物の結合官能基とが結合する。この際、例えばアミノ基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、例えばチオール基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。

0082

さらに、生体物質が糖である場合、通常は、糖の側鎖に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等の基と、結合用化合物の結合官能基とが結合する。この際、例えばアミノ基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基等が挙げられる。また、例えばヒドロキシル基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはエポキシ基等が挙げられる。さらに、例えばチオール基が結合官能基と結合する場合には、結合官能基の具体例としてはマレイミド基等が挙げられる。

0083

一方、生体物質と結合用化合物とが非共有結合により結合する場合、例えば、錯体形成生体物質間相互作用などにより結合をさせることができる。
生体物質と結合用化合物とで錯体を形成させて結合させる場合、結合官能基の具体例としては、ボロン酸基等が挙げられる。
また、例えば生体物質間相互作用の中でもアビジン−ビオチン相互作用により結合させる場合には、結合官能基の具体例としては、ビオチン基等が挙げられる。

0084

さらに、例えば生体物質としてウイルスを用いる場合、結合官能基の具体例としては糖や多糖が挙げられる。
また、例えば生体物質が疎液領域を有している場合には、疎液相互作用による物理吸着により結合させるようにしても良い。

0085

また、結合用化合物が結合官能基を有する場合、結合用化合物は、1分子中に通常2点以上、好ましくは3点以上の結合官能基を有しているものを少なくとも1種以上含むことが好ましい。これは、本発明の構造を形成しやすくするためである。具体例を挙げると、1分子中に2点以上の結合官能基を有していれば、容易に生体物質と結合用化合物が結合した粒子状塊を形成させ、さらにそれら粒子状塊同士を結合させることにより、それらを用いた高次構造である生体物質構造体並びに生体物質複合体を形成できるようになる。

0086

ただし、本発明の生体物質複合体が、上記の粒子状塊を形成させやすくなるためには、結合用化合物同士の結合が無く、生体物質と結合用化合物との結合が主であることが好ましい。結合用化合物同士の結合がある場合、結合用化合物同士の凝集が形成されやすく、粒子状塊の粒径が大きくなる傾向があり、粒子状塊の粒径を制御し難くなるためである。
また、結合用化合物同士の結合があるときに、高分子を結合用化合物に用いた場合、結合用化合物の内部架橋が起こってしまい、さらに生体物質を固定化しにくくなる。ここで、結合用化合物同士の結合とは、分子間引力、疎液相互作用、電気的相互作用を除く結合を示す。

0087

このように結合用化合物同士の結合が無い生体物質複合体を形成させるためには、結合用化合物同士が結合しないような結合官能基を選択し、さらに、結合用化合物同士が結合する状況を排除することが望ましい。そのような官能基は具体的には前述したように、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、ボロン酸基、ビオチン基などが挙げられる。結合用官能基同士が結合する状況とは、過度の熱を加えることや、強力な紫外線照射することを示す。

0088

また、生体物質複合体に含まれる結合用化合物同士の結合を調べる方法としては、生体物質複合体中の生体物質を後述の方法で分解した時に、不溶物が形成されることで判断される。若しくは、生体物質複合体を熱分解性ガスクロマトグラフィーで分析することにより、結合用化合物同士の結合を示唆する化合物を検出することで判断される。具体的には、例えば、紫外線照射により生体物質と光反応性基を有する結合用化合物とを結合させる工程において、結合用化合物内の光反応性基(例えば、アジド基)により結合用化合物同士が結合した場合、光反応性基が関与した結合、若しくは残存光反応性基の存在により、結合用化合物同士の結合を推測することができる(「アフィニティークロマトグラフィー」東京化学同人刊、著者本勲武、別府正敏、P238〜等参照)。

0089

さらに、生体物質の特徴を生かすために、生体物質の活性を維持するためには、生体物質が失活しないよう生体物質の官能基及び結合用化合物の官能基を選択することが好ましい。例えば、タンパク質を生体物質として用い、タンパク質の活性部分にチオール基を有している場合には、チオール基以外の基(例えば、アミノ基)を生体物質の結合官能基として選択し、このアミノ基と結合するために、結合用化合物の結合官能基は、スクシンイミド基、エポキシ基が選択される。

0090

また、特定物質を結合用化合物に結合させようとする場合には、結合用化合物としては、特定物質又はリンカーと結合しうるものを用いるようにする。この際、結合用化合物と特定物質又はリンカーとの結合の具体例を挙げると、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び静電力による結合などが挙げられるが、これらの分類に当てはまらない別の結合であってもよい。

0091

したがって、この場合、結合用化合物としては、上記の結合官能基以外に、上記特定物質又はリンカーと結合可能な官能基を有するものを用いるようにすることが望ましい。このような官能基に制限はなく、任意の官能基を用いることができ、例えば、結合官能基と同様のものが挙げられる。また、具体的な種類は、特定物質の種類や本発明の生体物質複合体の用途などに応じて選択することができる。
なお、上記の特定物質又はリンカーと結合しうる官能基も、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いても良い。

0092

さらに、結合用化合物としては、通常は、水と混和しうるものを用いることが望ましい。生体物質複合体の製造時には、通常は、溶媒や分散媒等の媒質として水を用いるためである。詳しくは、生体物質複合体の製造時には、通常、水の存在下で結合用化合物を生体物質と混合し、結合用化合物と生体物質とを結合させて粒子状塊を作製する工程を経ることになるが、そのような場合に生体物質と結合用化合物とを均一に混合し、結合反応をスムーズに行なわせるためである。なお、本明細書においては、混和の形態としては、溶解していても良いし分散していても良い。

0093

また、結合用化合物は、少なくとも1種の有機溶媒に混和しうることが好ましい。これにより、結合用化合物の合成時に用いる溶媒の選択の幅を広げることができ、生体物質複合体の構造を様々に設計することができるようになるためである。例えば、結合用化合物が有機溶媒に混和できれば、結合用化合物の合成時に結合官能基を保護することを目的として、合成を有機溶媒中で行なうことができるようになる。

0094

さらに、結合用化合物は、水と有機溶媒との両方に混和できるものを用いることがより好ましい。結合用化合物が水と有機溶媒との両方に混和できれば、本発明の生体物質複合体を使用する際に何らかの溶媒を用いる場合に、その用いることができる溶媒の種類を増やすことができるため、用途を広げることができる。

0095

また、結合用化合物は無電荷であることが望ましい。結合用化合物が生体物質と同じ電荷同符号の電荷)を有していると、静電反発力により、結合用化合物と生体物質との結合が妨げられる虞がある。一方、結合用化合物が生体物質と反対の電荷(逆符号の電荷)を有していると、生体物質と結合用化合物内の電荷を有する部分とが静電的引力により結合してしまい、結合用化合物が有している結合官能基に生体物質が効果的に結合することを妨げる虞がある。また、結合用化合物と生体物質との静電的引力による結合は、生体物質複合体を分離精製に用いる場合、使用時に用いる溶液のpHや塩などの添加物により、容易に結合が壊れてしまうことが予想され、好ましくない。

0096

さらに、生体物質複合体を用いて対象物質の分離を行なおうとした時に、対象物質が結合用化合物と同じ電荷を有している場合には、生体物質複合体に含まれる特定物質との特異的な相互作用が妨げられる虞があり、また、対象物質と結合用化合物とが反対の電荷を有していた場合には、対象物質と結合用化合物とが電気的引力により非特異吸着を生じることが推測されるためである。

0097

なお、結合用化合物が無電荷であるとは、当該結合用化合物が、少なくとも構造式上、非イオン性もしくは両性イオン性(正及び負の両方の電荷を有しており、お互いの電荷が実質打ち消しあっているもの)であれば、当該結合用化合物は無電荷である。ただし、本発明の生体物質複合体の製造過程において、結合官能基の加水分解等により、結合用化合物が電荷をもったとしても、本発明の効果を損なわない限り、このような結合用化合物は好適にもちいることができる。

0098

結合用化合物の他の例としては、例えば、有機化合物無機化合物有機無機ハイブリッド材料などが挙げられる。
また、結合用化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。

0099

さらに、結合用化合物として用いられる有機化合物は、低分子化合物でも、高分子化合物でもよいが、好ましくは高分子化合物である。

0100

一方、結合用化合物として高分子化合物を用いる場合、高分子化合物は合成高分子化合物であっても良く、天然高分子化合物であっても良い。
結合用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、上記の条件を満たす合成高分子化合物であれば任意のものを用いることができる。ただし、通常は、生体物質と結合することのできるモノマーを有していることが望ましい。また、通常は、合成高分子化合物が水に混和できるようにするために、親水性モノマーを有していることが好ましい。さらに、好ましくは、上記の生体物質と結合することができるモノマーと親水性モノマーとを共重合させた合成高分子化合物を用いることが望ましい。なお、特定物質が結合用化合物に結合する場合は、上記のモノマーに加え、特定物質又はリンカーと結合できるモノマーを有していることが望ましい。

0101

即ち、結合用化合物として使用する合成高分子化合物の合成には、少なくともモノマー種として、生体物質と結合して粒子状塊を形成することができるモノマーと、粒子状塊同士で結合し、鎖状及び/又は網目状に結合した構造(即ち、生体物質構造体や生体物質複合体の構造)を構築するための結合官能基を有するモノマーとを有することが好ましく、さらに、親水性又は両親媒性の官能基を有するモノマーを用いることがより好ましい。これに加えて、合成高分子化合物が溶液中で形成するミセル等の構造体及び広がりを制御する目的で、疎水性モノマーを含有させるようにすることも、好ましい。さらに、特定物質と結合用化合物とを結合させる場合、特定物質を結合用化合物に結合させることを目的として、上記特定物質又はリンカーと結合可能な官能基を有するモノマーを含有させるようにすることが望ましい。なお、ここで挙げたモノマーは、それぞれ異なるモノマーであってもよいが、一つのモノマーが上記の機能のうちの2以上を兼ね備えていてもよい。

0102

結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物を構成するモノマーの具体例を挙げると、ラジカル重合において用いられるモノマーとしては、スチレンクロルスチレン、α−メチルスチレンジビニルベンゼンビニルトルエン等の重合性不飽和芳香族類;(メタアクリル酸イタコン酸マレイン酸フタル酸等の重合性不飽和カルボン酸スチレンスルホン酸スチレンスルホン酸ナトリウム等の重合性不飽和スルホン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、等の重合性カルボン酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、3−アクリルアミドフェニルボロン酸、N−アクリロイル−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミンブタジエンイソプレン酢酸ビニルビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルフリン塩化ビニル塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類;重合性不飽和ニトリル類ハロゲン化ビニル類;共役ジエン類ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマー類、などが挙げられる。

0103

また、結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物のモノマーとしては、例えば、付加重合で用いられるようなモノマーも使用できる。この付加重合に用いられるモノマーの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアナートナフタレンジイソシアナートトリレンジイソシアナートテトラメチルキシレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ジシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートヘキサメチレンジイソシアナートイソホロンジイソシアナート等の脂肪族又は芳香族イソシアナート類ケテン類、エポキシ基含有化合物類、ビニル基含有化合物類などが挙げられる。

0104

また、上記化合物群には、活性化水素を有する官能基を備えたモノマーを反応させることも可能である。その具体例としては水酸基又はアミノ基を有する化合物などが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコールプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールグリセリントリメチロールプロパンペンタエリスリトールソルビトールメチレングリコシドショ糖ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンのようなポリオール類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルメチレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチルp−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等のポリアミン類オキシム類などが挙げられる。

0105

さらに、結合用化合物として使用しうる合成高分子化合物には、上述したモノマーの他、架橋剤となりうる多官能性化合物共存させても良い。多官能性化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレイミド、N−エチロルマレイミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、ビニル芳香族酸のN−アルキロールアミド(例えばN−メチロール−p−ビニルベンズアミド等)、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。

0106

さらに、上述したモノマーのうち、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジプロペニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマー類は、架橋剤としても使用することができる。
架橋剤となりうる多官能性化合物をモノマーとして使用することにより、結合用化合物の媒質中での広がりや硬さを制御することができる。

0107

また、前述の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマーとしては、スクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、p−ニトロフェニル基等を有するモノマーの例として、N−(メタ)アクリロイロキシスクシンイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、アクロレイン、マレイミドアクリレート、p−ニトロフェニルオキシカルボニルポリエチレングリコールメタクリレート、p−ニトロフェニルメタクリレート等が挙げられる。

0108

また、結合官能基としてボロン酸基を有するモノマーの例としては、3−アクリルアミドフェニルボロン酸等が挙げられる。
さらに、結合官能基としてビオチン基を有するモノマーの例としては、N−アクリロイル−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,9−ジアミン等が挙げられる。
また、結合官能基として糖や多糖を有するモノマーの例としては、2−(メタ)アクリル酸グリコシロキシエチル等が挙げられる。

0109

また、上記特定物質又はリンカーと結合可能な官能基を有するモノマーの例としては、上記の生体物質と結合しうる結合官能基を有するモノマーと同様のものが挙げられる。

0110

さらに、親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸、スルホン酸、スルホン酸ソーダ、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。

0111

また、結合用化合物は、前述のとおり無電荷のものが好ましい。したがって、結合用化合物として用いる合成高分子化合物を無電荷にする場合、この無電荷の合成高分子化合物に使用するモノマーは無電荷であれば特に限定されないが、具体例を挙げると、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルファリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−アセトアミド、ポリエチレングリコールモノ−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。

0112

ところで、モノマーをラジカル重合させて合成高分子化合物を合成する場合、通常はラジカル重合開始剤を混合することにより重合を開始させるが、その際に用いるラジカル重合開始剤は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。使用できるラジカル重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパンヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤過酸化ベンゾイルクメンヒドロペルオキシド過酸化水素過酸化アセチル過酸化ラウロイル過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤などが挙げられる。

0113

さらにレドックス系開始剤を混合することにより重合を開始させてもよい。レドックス系開始剤も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、その例としては、アスコルビン酸硫酸鉄(II)/ペルオキシ二硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド二亜硫酸ナトリウム、第三ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィン酸が挙げられる。なお、個々の成分、例えば還元成分は、混合物、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩と二亜硫酸ナトリウムとの混合物であってもよい。

0114

また、結合用化合物として合成高分子化合物を用いる場合、この合成高分子化合物は、開環重合等で合成される高分子を使用してもよい。その具体例としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
さらに、上述した合成高分子化合物は、加水分解等により合成される高分子を使用しても良い。その具体例としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解等することにより合成されるポリビニルアルコールなどが挙げられる。
また、上述した合成高分子化合物は、化学修飾により、前述の生体物質と結合する官能基を修飾することにより合成してもよい。

0115

さらに、この他、結合用化合物として、市販の合成高分子化合物を用いることができる。その具体例を挙げると、日本油脂社製のSUNBRIシリーズDE−030AS、DE−030CS、DE−030GS、PTE−100GS、PTE−200GS、HGEO−100GS、HGEO−200GSなどが挙げられる。

0116

一方、結合用化合物として天然高分子化合物を用いる場合、その具体例としては、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、でんぷん、セルロース等の多糖類、アルブミン、コラーゲンゼラチンなどのタンパク質、DNA、RNAなどの核酸等が挙げられる。これらの天然化合物は、そのまま使用しても良いし、また、化学修飾してから使用しても良い。

0117

なお、合成高分子化合物及び天然高分子化合物などの高分子化合物を結合用化合物として用いる場合、その高分子化合物の形態は任意である。例えば、水溶液中で溶解していても良いし、ミセルやエマルションのような会合体高分子ラテックスのような微粒子状のものでもかまわない。

0118

また、結合用化合物として用いられる無機化合物としては、例えば、金コロイド等の金属粒子シリカ等の無機微粒子などが挙げられる。さらに、これらの無機化合物を化学修飾することによって、生体物質と結合する官能基を有する結合用化合物としても良い。

0119

さらに、結合用化合物として用いられる有機無機ハイブリッドとしては、例えば、コロイダルシリカに高分子を被覆したもの、金属コロイドを高分子で被覆したもの(例えば、金、銀、白金等の粒子を保護コロイドで被覆したもの)、クレイ等の多孔質基体に高分子を吸着させたものなどが挙げられる。なお、これらの有機無機ハイブリッドは公知の方法で合成することが可能である(ポリマー系ナノコンポジット,工業調査会,中條 澄 著などを参照)。
さらに、これらの有機無機ハイブリッドに結合官能基を修飾することによって、結合用化合物として用いることもできる。

0120

また、結合用化合物の分子量や構造等は特に制限は無く任意である。したがって、結合用化合物として例えば低分子量の化合物を用いても良いが、その場合、固定化しようとする一つの生体物質内で架橋してしまい、生体物質構造体や生体物質複合体を形成できなくなる虞がある。これを防止する観点からは、結合用化合物の分子量としては、通常1000以上、好ましくは10000以上、また、通常100万以下、好ましくは50万以下が望ましい。なお、結合用化合物として合成又は天然の高分子化合物を用いる場合、重量平均分子量が上記範囲に収まることが好ましい。この範囲を下回ると効果的に粒子状塊が集合した生体物質構造体が形成できず、生体物質複合体を形成できなくなる虞があるためである。
なお、これら分子量の測定には種種の方法が使えるが、例えば、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、静的光散乱測定粘度測定など一般的な測定により、調べることができる。

0121

また、結合用化合物の大きさに制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、効果的に生体物質と結合用化合物とを結合させるためには、溶媒や分散媒などの液体(ここでは、媒質)中に混和した状態において、結合用化合物の径は、通常1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは、3nm以上であることが望ましい。なお、この条件を満たすには、本発明の生体物質複合体の製造前に結合用化合物を用意する場合に上記の粒径範囲に収まる結合用化合物を用意し、それを使用して本発明の生体物質複合体を製造するようにすることが望ましい。

0122

これらの結合用化合物の大きさの測定には、種種の方法が使用できるが、液体に分散している金属コロイド、無機粒子ポリマー微粒子などを結合用化合物として用いた場合は、静的光散乱測定法、動的光散乱測定法、光回折法などの一般的な手法により、調べることができる。また、これら金コロイド、無機粒子、ポリマー微粒子などが分散した分散液から反応媒等の液体を取り除いたものをSEM走査型電子顕微鏡)やTEM透過型電子顕微鏡)などの電子顕微鏡で観察した場合も、液体中での結合用化合物の径として取り扱っても良い。

0123

一方、溶液に溶解している高分子またはミセルなどの会合体を結合用化合物に用いた場合は、静的光散乱測定法、動的光散乱測定法、光回折法などの一般的な手法により、調べることができる。一般に、溶液に溶解している高分子やミセルなどは、測定手段及び解析方法で粒子径相違が見られるが、いずれかの手段や方法で得られた測定値により、その粒子径を評価することができる。
なお、光学的手法により液中の結合用化合物の径を測定する場合には、結合用化合物の平均粒子径が上記の範囲内に収まるようにすることが、効果的に生体物質と結合用化合物とを結合させるためには望ましい。

0124

さらに、結合用化合物が有する結合官能基の量は、特に限定されず、また結合用化合物の種類によって一概には規定できないが、例えば結合用化合物として高分子を用いた場合、結合用化合物に対して、モル%で、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、また、通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。この範囲を下回ると結合用化合物が生体物質と効率よく結合できない虞があり、上回ると溶媒や分散媒などに混和できなくなる虞があるためである。

0125

[I−4.生体物質複合体の構造]
本発明の生体物質複合体は、生体物質、及び、該生体物質と結合可能な化合物が結合してなる粒子状塊が互いに結合してなる生体物質構造体の、生体物質及び/又は結合用化合物に、特定物質が結合しているものである。さらに、本発明の生体物質複合体においては、通常、上記の粒子状塊の粒径は10μm以下となっている。

0126

生体物質構造体は、図2(a),(b)に模式的に示すように、生体物質と結合用化合物とが結合した粒子状塊が単一ユニットとして、図1(a),(b)に模式的に示すように、互いに鎖状及び/又は網目状に結合した構造体となっている。

0127

生体物質構造体は、このように生体物質及び結合用化合物の両方によって形成された粒子状塊が集合及び/または結合することによって形成する構造を有しており、したがって、生体物質複合体も同様に粒子状塊が集合及び/又は結合した構造を有している。このため、生体物質の比率を高めることが可能であり、これに伴い、生体物質に結合する特定物質の比率を高めることが可能となる。したがって、本発明の生体物質複合体では、従来よりも多量の特定物質を保持することができる。さらに、生体物質に加えて特定物質が結合用化合物にも結合しうる場合は、より多量の特定物質の保持が可能となる。

0128

また、多量の特定物質を保持できるようになるため、本発明の生体物質複合体によれば、結合用化合物(及び、後述する固相担体等)が生じる非特異的な相互作用を抑制できるという利点を得ることができる。即ち、生体物質として上記の非特異的相互作用を生じないものを用いれば、非特異的相互作用を生じうる結合用化合物等を多量の生体物質で覆うことができる。この際、生体物質構造体では生体物質が多量に存在するため、非特異的相互作用を効果的に抑制することが可能となる。したがって、非特異的相互作用の影響を排除しながら、特定物質と作用物質との相互作用を用いたアフィニティー分離を実施することができるようになる。

0129

一方、特定物質が結合用化合物に結合して生体物質に結合しない場合にも、後述するように生体物質構造体が3次元的な構造を有しているため、特定物質を従来よりも多量に保持することが可能である。また、非特異的相互作用を抑制できるという上記の利点は、結合用化合物と特定物質とが結合する場合においても得られる。

0130

なお、従来の生体物質を固相担体等に固定する技術では、アフィニティー精製などに用いられる場合、樹脂微粒子などの固相担体の表面に結合させるために、生体物質の固定化量は所定の上限値で制限され(通常、タンパク質の単層吸着は、せいぜい0.3〜1.0μg/cm2)、多量の生体物質を保持することができなかった。したがって、この生体物質に特定物質を結合させたとしても、特定物質の量は十分なものではなかった。

0131

さらに、粒子状塊は、集合して、粒子状塊同士の引力によって接触しあったり、その炭素鎖が絡まりあったりすることなどにより、互いに結合して生体物質構造体を構成している。例えば、ただ分子間引力により粒子状塊同士が結合して生体物質構造体が形成されたり、粒子状塊が結合用化合物の官能基と生体物質との結合により結合して生体物質構造体を形成したり、或いは、上記の両方の要因が組み合わさって粒子状塊同士が結合して生体物質構造体が形成されたりしている。そして、この生体物質構造体に特定物質が結合して生体物質複合体が構成されているのである。ここで、粒子状塊同士結合とは、通常、共有結合、イオン結合、キレート結合、配位結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、静電力による結合のうち一つ以上の結合から成り立つものを指し、中でも好ましくは共有結合である。この場合、粒子状塊の一部のみが結合しあっている状態でもよいが、できるだけ多くの粒子状塊が結合しあっていることが好ましく、全ての粒子状塊が結合しあっていることがより好ましい。
なお、通常は、粒子状塊は、絡まりあいや結合など、複数の要因により集合して生体物質構造体を構成し、生体物質複合体を構成しているものと推察される。

0132

また、粒子状塊は、その粒径が通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。粒子状塊の粒径が大きいと、分離精製に用いた時、十分な比表面積が得られず、アフィニティー分離などに用いた場合に高効率な分離精製結果が得られない虞がある。
さらに、粒子状塊の粒径を個別に測定する場合には、生体物質複合体中の粒子状塊のうち、少なくとも一部の粒子状塊が上記の範囲の粒径を有していればよいが、できるだけ多くの粒子状塊が上記範囲の粒径を有していることが好ましく、全ての粒子状塊が上記範囲の粒径を有していることがより好ましい。

0133

ここで粒子状塊の粒径は、光学顕微鏡、SEMやTEM等の電子顕微鏡、AFM(原子間力顕微鏡)などの顕微鏡で観察することにより測定できる。なお、顕微鏡で観察した場合、粒子状塊の形状は、粒子状のほか、生体物質複合体から房状張り出した形状として観察される場合もあるが、この房状の塊部分(房状塊)は生体物質複合体から粒子状塊が張り出して形成されたものと推察されるため、この房状の塊部分の径(通常は、短径)が上記の範囲内であればよい。

0134

粒子状塊の存在を調べる一つの方法として、前記AFMにより測定した画像からPower Spectral Density(パワースペクトル密度)を解析する場合を例に挙げてさらに詳述する。パワースペクトルを用いた解析は、物体表面の微小凸凹を評価するのに用いられ、凹凸に起因する変化量(例えば、高さ、深さ等)を波形に分解してフーリエ変換を行なうことに基づく解析法の一つである。

0135

AFM測定には、市販のAFM装置を使用することができるが、好ましくは、Digital Instruments社製のNanoScopeIIIa等が用いられる。また、プローブ先端半径Rが5nm以下のものが好ましく、具体的には、東陽テクニカ社製のSSSNCH等が好ましい。さらに、測定は試料表面を傷つけないよう、タッピングモードで測定することが望ましい。測定は、大気中でも液中でもかまわないが、良い像を得るためには、好ましくは大気中で、さらに好ましくは乾燥した状態で行なう。

0136

また、Power Spectral Density解析に用いるアルゴリズムは、表面形状の解析用としてASTME42.14STM/AFM分科委員会勧告に準じるものが好ましく、特に好ましいのは、Digital Instruments社製のNanoScopeIIIaに付属のPower Spectral Density機能を用いることである(参照文献:NanoScopeコマドリファレンスマニュアル)。

0137

これらの装置及びアルゴリズムを用いて生体物質構造体又は生体物質複合体の解析を行なった場合、例えば、1μm×1μmの視野でAFMによる測定を行なって、得られるAFM像からPower Spectral Density(PSD)解析を行なった場合には、2D isotropic PSDの値が100(nm4)以上であって、かつ、波長100nm未満の値を除いたパワースペクトルの和(Ic)とトータルパワースペクトル(It)の割合Ic/Itが通常30%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であるとき、サブミクロンオーダーの粒子状塊の存在を確認することができる。パワースペクトルは、物体の表面の凹凸を表わすものであり、その比率Ic/Itが上記範囲であれば、粒子状塊の構造に起因する凹凸が生体物質構造体又は生体物質複合体の表面に確認できるからである。

0138

また、粒子状塊の粒径は、光散乱X線中性子散乱等の分光学的手法により確認することもできる。この場合、測定される平均粒径が上記の範囲内にあればよい。粒子状塊の平均粒径が上記範囲内にある場合も、粒径が上記範囲内にある場合と同様の利点を得ることができる。
ここで、一例として、静的光散乱測定法による粒子状塊の確認の方法をさらに詳述する。例えば、生体物質構造体又は生体物質複合体の前方光散乱光強度測定をすることより、相関長を求めることで、粒子状塊を評価することができる。この方法は、生体物質複合体を透過した光を、散乱強度散乱角依存性を測定し、デバイ−ブージェ(Debye−Bueche)の理論に基づき、(光の強度)(-1/2)を波数の2乗(={(4πn/光の波長)×sin(散乱角度/2)}2)に対してプロットした傾きを求め、(傾き/切片)2から相関長を求める。ここでnは媒体屈折率である。測定に用いる光散乱装置は市販のものを使用することができるが、好ましくはDYNA3000である。生体分子複合体は、乾燥状態でも液体中で膨潤させても良いが、好ましくは液体中での測定である。

0139

また、本発明の生体物質複合体では、通常は粒子状塊同士は完全に密着せず、各粒子状塊同士の間には空間(空隙)が形成される。この空間には、生体物質複合体を用いてアフィニティー分離などを行なう際に、特定物質と相互作用させる対象物質が侵入することが可能であり、通常はこの空間において特定物質と対象物質との相互作用が生じることになる。したがって、3次元的な構造を有する本発明の生体物質複合体であっても、その中(内部)に含まれる特定物質は対象物質等と相互作用することが可能である。即ち、本発明の生体物質複合体は、3次元的に多くの特定物質を備えることができるにもかかわらず、その特定物質は活性を失わず相互作用をすることが可能であり、このため、本発明の生体物質複合体は、特定物質の反応性を保ったまま、従来よりも多量の特定物質を含有させることが可能となっている。

0140

本発明の生体物質複合体が、粒子状塊同士の間に空間を有しているかを調べる方法に制限はないが、例えば、光学顕微鏡、SEMやTEM等の電子顕微鏡、AFMなどの顕微鏡によって確認することができる。また、このほか、光散乱、X線、中性子散乱等の分光学的手法によっても確認することができる。
さらに、本発明の生体物質複合体の乾燥状態における体積と、液体を含ませた時の体積とを比較して、その体積が増加した場合には、上記の空間に液体が侵入したことにより体積が増加したものとして、本発明の生体物質複合体が空間を有していると認識してもよい。なお、これらの体積変化はいかなる方法で確認しても良いが、例えば生体物質複合体が膜状に形成されている場合、乾燥状態の膜厚とそれを液体に浸した時の膜厚とをそれぞれAFM等で測定し、両者を比較して確認することができる。

0141

また、本発明の生体物質複合体の大きさに制限は無く任意であるが、何らかの固相担体に結合していない場合には、生体物質複合体が乾燥した状態において、その径が、通常30nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であることが望ましい。ここで、生体物質複合体の径は、SEM、TEM等の電子顕微鏡、AFMなどの顕微鏡により測定することができる。生体物質複合体の大きさが小さすぎると、アフィニティー分離等に用いた場合に精製分離において生体物質複合体を遠心分離操作等で回収しにくくなるなどの虞がある。

0142

さらに、本発明の生体物質複合体は、固相担体に固定して、アフィニティー精製や医薬機能解析ツールとして用いることもでき、さらに、DDS(ドラッグデリバリーシステム)のための薬剤表面処理再生医療担体の表面処理、人工臓器の表面処理、カテーテルなどの表面処理等に適用可能である。これら表面処理などに本発明の生体物質複合体を使用する場合、所望の固相担体に、任意の手法によって本発明の生体物質複合体を固定した生体物質複合体担持体を形成し、それを用いることになる。なお、表面処理によって形成される生体物質複合体の厚さ(膜の膜厚)は任意であるが、乾燥状態で、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。これを下回る膜厚では、十分に皮膜形成できない可能性がある。なお、上記の厚さは、SEM、TEM、AFMなどで測定することができる。

0143

[I−5.生体物質複合体の組成
[I−5−1.特定物質の含有比率]
本発明の生体物質複合体において、含有される特定物質の比率に制限は無いが、通常は、より多量の特定物質が含有されていることが望ましい。具体的には、「(特定物質の重量)/(生体物質複合体の重量)」で表される生体物質複合体の重量に対する特定物質の重量の比率が、通常0.001重量%以上、好ましくは0.003重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上が望ましい。特定物質の比率がこの範囲を下回る場合、生体物質複合体を用いて分離精製を行なうときにその分離精製の効率が低下する虞がある。

0144

[I−5−2.特定物質の含有比率の測定法
なお、上記の特定物質の含有比率は、例えば、元素分析アミノ酸分析などにより測定することができる。

0145

[I−5−3.生体物質の含有比率]
本発明の生体物質複合体においては、含有される生体物質の比率にも制限は無いが、通常は、より多量の生体物質が含有されていることが望ましい。具体的には、「(生体物質の重量)/(生体物質複合体の重量)」で表される生体物質構造体の重量に対する生体物質の重量の比率が、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上が望ましい。生体物質の比率がこの範囲を下回る場合、構成される生体物質複合体中の結合用化合物を十分に生体物質で覆うことができなくなり、結合用化合物への非特異吸着を起こす虞がある。また、特定物質を生体物質にのみ結合させるようにする場合には、特定物質を十分多く結合させることができなくなり、この生体物質複合体を用いて分離精製を行なう場合に、その分離精製の効率が低下する虞もある。

0146

[I−5−4.生体物質の含有比率の測定法]
上記の生体物質の比率を測定する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の生体物質複合体に含まれる生体物質を酵素や薬品等を用いて分解し、生体物質、結合用化合物及び特定物質由来の物質をそれぞれ各種の方法で定量すればよい。
以下、この方法により生体物質の含有比率を測定する方法を説明する。

0147

(1)生体物質の分解方法
この方法により生体物質の比率を測定する場合には、生体物質を分解するための酵素や薬品等は、用いた生体物質や結合用化合物の種類に応じて任意のものを適当に用いればよい。その具体例を挙げると、生体物質が核酸である場合、例えば、リボヌクレアーゼデオキシリボヌクレアーゼ等の核酸分解酵素などが挙げられる。

0148

また、生体物質がタンパク質である場合、上記の酵素や薬品等としては、例えば、微生物プロテアーゼトリプシンキモトリプシンパパインレンネット、V8プロテアーゼ等のタンパク質分解酵素臭化シアン、2−ニトロ−5−チオシアン安息香酸塩酸硫酸水酸化ナトリウム等のタンパク質分解能を有する化学物質などが挙げられる。
さらに、生体物質が脂質である場合、上記の酵素や薬品等としては、例えば、リパーゼホスホリパーゼA2等の脂質分解酵素などが挙げられる。

0149

また、生体物質が糖である場合、上記の酵素や薬品等としては、例えば、α−アミラーゼβ−アミラーゼグルコアミラーゼプルラナーゼセルラーゼ等の糖分解酵素などが挙げられる。
なお、生体物質を分解するための上記の酵素や薬品等は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。

0150

(2)生体物質、結合用化合物及び特定物質由来の物質の定量方法
生体物質複合体の分解後、生体物質、結合用化合物及び特定物質由来の物質を定量する方法に制限は無く任意であるが、具体的な手法としては、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析(MS)、赤外分光法核磁気共鳴法(1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR)、高速液体クロマトグラフィーHPLC)、ゲル電気泳動キャピラリー電気泳動吸光度測定蛍光測定、元素分析、アミノ酸定量などが挙げられる。また、分析に際しては、各測定手法を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。

0151

[II.生体物質複合体の製造方法]
生体物質複合体の製造方法に制限は無いが、通常は、生体物質構造体の製造時の少なくとも何れかの工程の前、最中又は後において、生体物質又は結合用化合物に特定物質を結合させるようにする。したがって、生体物質複合体は、例えば、生体物質及び/又は結合用化合物に予め特定物質を結合させておき、その後に生体物質構造体を形成することによって作製するようにしてもよく、また、生体物質と結合用化合物とから生体物質構造体を作製した後に、生体物質構造体中の生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を結合させて作製するようにしてもよい。

0152

[II−1.生体物質構造体の製造方法]
生体物質構造体を作製する場合、通常は、生体物質と結合用化合物とを混合する工程(以下適宜、「混合工程」という)を行なう。この混合工程においては、生体物質及び結合用化合物は、溶媒又は分散媒などの媒質中において混合され、同一系内に共存することによって生体物質と結合用化合物とが結合し、生体物質構造体が形成される。生体物質構造体を効率的に得るため、混合工程の後、媒質を除去する濃縮工程や乾燥工程などを行なうようにしても良い。さらに、生体物質構造体の製造工程のいずれかの工程において、適宜、添加剤を系内に共存させるようにしてもよい。

0153

[II−1−1.混合工程]
混合工程では、生体物質と結合用化合物との混合を行なう。これにより粒子状塊が得られる。そして、この粒子状塊が集合し、結合することにより、生体物質構造体が形成される。なお、通常は、生体物質と結合用化合物とが結合して粒子状塊が形成される過程と、粒子状塊が集合して生体物質構造体が形成される過程とは一連の過程として進行する。

0154

(1)生体物質
生体物質は、上述したとおりである。

0155

(2)結合用化合物
結合用化合物は、上述したとおりである。

0156

(3)媒質
生体物質と結合用化合物とを混合する際には、溶媒や分散媒等の媒質を共存させ、その媒質の存在下において生体物質と結合用化合物とを結合させることが好ましい。なお、上記の通り、生体物質と結合用化合物とは必ずしも化学反応を生じて結合するわけではないが、本明細書においては、生体物質と結合用化合物とが結合する際の場を形成する物質を「媒質」と広義に呼ぶものとする。

0157

媒質としては、生体物質構造体の製造が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常は、生体物質及び結合用化合物並びに適宜用いられる添加剤が混和しうるものを用いることが望ましい。この際、生体物質、結合用化合物及び添加剤の混和状態は任意であり、溶解状態であっても分散状態であってもよいが、生体物質と結合用化合物とを安定して結合させるためには、生体物質及び結合用化合物が媒質中において溶解状態で存在していることが好ましい。

0158

媒質としては、通常は液体を用いる。この際、媒質は、生体物質と結合用化合物とが結合する場を形成することになり、生体物質や結合用化合物等の活性や構造の安定性などに影響を与えることがあるため、その影響を考慮して選択することが好ましい。通常は、媒質として水を用いる。

0159

また、媒質としては水以外の液体を用いても良く、例えば、有機溶媒を用いることができる。さらに、有機溶媒の中でも、両親媒性溶媒、即ち、水に混和しうる有機溶媒が好ましい。水以外の媒質の具体例としては、メタノール、エタノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒の他に、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホオキシド)、ジオキサンアセトニトリルピリジンアセトン、グリセリンなどが挙げられる。

0160

また、これらの媒質として液体を用いる際には、この媒質に塩を加えても良い。塩の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、具体例としては、NaCl、KCl、リン酸ナトリウム酢酸ナトリウム塩化カルシウム炭酸水素ナトリウム炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また、用いる塩の量に制限は無く、用途に応じて任意の量の塩を用いることができる。

0161

さらに、媒質として水を用いている場合、水としては、純水のほか、生体物質や結合用化合物以外の溶質を溶解した水溶液を用いることもできる。その例としては、各種緩衝液を挙げることができ、その具体例としては、炭酸バッファーリン酸バッファー酢酸バッファー、HEPESバッファー、TRISバッファーなどが挙げられる。
なお、媒質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。

0162

(4)添加剤
生体物質構造体の製造工程のいずれかの工程においては、生体物質、結合用化合物及び媒質、並びに、これらを混合した混合物などに対して、本発明の効果を著しく妨げない限り、任意の添加剤を共存させてもよい。添加剤の例としては、上記の塩の他、酸、塩基、バッファー、グリセリン等の保湿剤、生体物質の安定剤としての亜鉛等の金属イオン、消泡剤変性剤などを挙げることができる。
また、添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

0163

(5)混合の操作
生体物質構造体を製造する際には、媒質の存在下、上述した生体物質と結合用化合物とを混合し、媒質中に少なくとも生体物質と結合用化合物とを含有する混合物を調製する。これにより得られる混合物は、媒質の存在下、生体物質、及び、上記生体物質と結合可能な結合用化合物とを共存させたものであり、この混合物中において、生体物質と結合用化合物とが結合して粒子状塊が調製される。また、混合物中において、生体物質及び結合用化合物は溶媒に混和していることが好ましい。

0164

混合に際し、生体物質、結合用化合物、媒質、添加剤等は、生体物質構造体の製造が可能である限りどのような状態で用意をしてもよい。ただし、生体物質に関しては、通常は、何らかの溶媒や分散媒に生体物質を溶解又は分散させた溶液や分散液として用意する。この場合、生体物質を希釈させる溶媒や分散媒は、生体物質の活性や構造の安定性等を考慮して調整することが好ましく、例えば、混合に用いる上記の媒質と同様のものを溶媒や分散媒として用いることができる。

0165

用意した生体物質、結合用化合物、媒質、添加剤等を混合する際の具体的な操作も任意である。例えば、生体物質の溶液(水溶液など)又は分散液と結合用化合物の溶液(水溶液など)又は分散液とを混合してもよく、生体物質の溶液又は分散液と固体状の結合用化合物とを混合してもよく、固体状の生体物質と結合用化合物の溶液又は分散液とを混合してもよく、固体状の生体物質及び結合用化合物と溶媒とを混合してもよい。また、後述する固相担体に生体物質構造体を固定する目的で、固相担体上でこの混合物を調製することができる。

0166

(6)混合時の組成
混合する際の生体物質、結合用化合物、媒質、添加剤等の混合比率は、本発明の生体物質複合体を得ることができる限り任意である。ただし、「(生体物質の重量)/{(生体物質の重量)+(結合用化合物の重量)}」で表される混合比率の値は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上が望ましい。これを下回る混合比では、形成される生体物質構造体中の生体物質の組成が低くなり、十分に結合用化合物を生体物質で覆うことができなくなって、非特異吸着を引き起こす虞がある。

0167

また、媒質中における生体物質及び結合用化合物の割合(濃度)も本発明の生体物質複合体を得ることができる限り任意であるが、生体物質及び結合用化合物の合計濃度を、通常0.1g/L以上、好ましくは1g/L以上、より好ましくは10g/L以上とすることが望ましい。この範囲を下回ると、粒子状塊及び生体物質構造体が生成しにくくなり、生体物質複合体を得られなくなる虞があるためである。

0168

(7)生体物質構造体の形成メカニズム
生体物質と結合用化合物とを混合することによって粒子状塊が形成され、この粒子状塊が集合することにより、生体物質構造体が構成される。
生体物質構造体の形成過程は明らかではないが、以下のように推測できる。即ち、生体物質と結合用化合物とを共存させた混合物を調製すると、混合物中において生体物質と結合用化合物とが結合し(図2(a)参照)、図2(b)に示すような粒子状塊が生成される。このような生体物質構造体が形成される過程での粒子状塊の確認は、動的光散乱測定などによって行なうことができる。例えば、10nm程度のタンパク質と10nm程度の結合用化合物を溶液中で混合した場合、サブミクロンオーダーの粒子状塊が確認されることがある。この粒子状塊は、さらに粒子状塊同士が集合することによって、図1(a),(b)に示すように、粒子状塊が鎖状及び/又は網目状に集合した構造を有する生体物質構造体を形成するものと推測される。

0169

また、この際には、結合する粒子状塊は、互いに有する生体物質及び結合用化合物が結合することによって、粒子状塊同士が互いに結合して生体物質構造体を形成することもあるものと推測される。この場合、生体物質構造体はより安定になるため、広い環境や用途への適用が可能となり、好ましい。なお、予め特定物質を結合させた生体物質及び/又は結合用化合物を用いて上記の方法により生体物質構造体を作製する場合、作製されるものは本発明の生体物質複合体となるのであるが、この場合も上記と同様のメカニズムで生体物質複合体が形成されるものと思料される。

0170

[II−1−2.濃縮工程及び乾燥工程]
混合工程の最中や混合工程の後において、適宜、上記の混合物から媒質を除去する濃縮工程や乾燥工程を行なうようにしても良い。

0171

上記の混合物中の溶媒の量が多い場合などにおいては、混合物中に粒子状塊又は生体物質構造体が生成しにくい場合や、生成しない場合がある。これらの場合には、混合物を濃縮することで、粒子状塊を効率的に形成させ、生体物質構造体を効率的に製造することができ、生体物質複合体を効率的に得ることが可能となる。
さらに、上記の混合物が粒子状塊又は生体物質構造体の断片を含んでいる場合においても、濃縮により、粒子状塊又は生体物質構造体を更に形成させることができる。したがって、このような粒子状塊や生体物質構造体の成長のために、濃縮を行なってもよい。

0172

ただし、均一な生体物質構造体を形成し、均一な生体物質複合体を得るためには、混合物調製の初期の段階においては、媒質中で生体物質と結合用化合物とを均一に混合することが好ましい。したがって、一旦比較的大量の媒質中に生体物質及び結合用化合物を共存させ、それを濃縮することにより粒子状塊を生成させて、生体物質構造体を製造することが好ましい。

0173

また、生体物質構造体の形成後、媒質を乾燥除去してもよい。なお、通常は、混合物を乾燥させる過程において混合物は濃縮されるので、濃縮と乾燥とは一連の操作として行なうことができる。
混合物を乾燥、濃縮する方法は任意であるが、例えば、限外濾過減圧乾燥などが挙げられる。また、このほか、単に常圧下での蒸発により乾燥や濃縮を行なうようにしてもかまわない。

0174

上記混合物を乾燥、濃縮する際の温度条件は任意であるが、生体物質の変性等を避ける観点から、通常25℃以下、好ましくは10℃以下で行なうことが望ましい。
また、混合物を乾燥、濃縮する際の圧力条件も任意であるが、通常は、常圧以下に減圧して行なうことが望ましい。

0175

さらに、混合物の濃縮は、生体物質と結合用化合物とが接触する確率を上げて粒子状塊を形成させやすくすること、または、それら粒子状塊同士が接触する確率を上げて生体物質構造体を構成させやすくすることを目的とする。そのため、濃縮の前、最中又は後において、遠心分離によって混合物を沈殿させたり、貧溶媒を添加したり、硫酸アンモン等の添加物を加えたりして、粒子状塊や生体物質構造体を沈殿させるようにしてもよい。

0176

[II−1−3.その他の工程]
また、本発明の生体物質構造体の製造方法においては、上述した以外の工程を行なっても良い。
例えば、生体物質構造体の製造後、その生体物質構造体中の生体物質に対して、所望の官能基を修飾するようにしてもよい。
また、例えば、本発明の生体物質複合体を何らかの固相担体に固定させ、生体物質複合体担持体を作製するようにしてもよい。

0177

[II−2.特定物質の結合]
上述した混合工程、濃縮工程、乾燥工程及びその他の工程のうち、少なくともいずれか1つの工程の工程前、工程中または工程後において、生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を結合させることにより、本発明の生体物質複合体が得られる。

0178

生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を結合させる方法に制限は無く、任意である。
通常は、生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を接触させることにより、結合させることができる。また、リンカーを用いる場合には、まずリンカーを生体物質及び/又は結合用化合物に接触させてから、当該リンカーが結合した生体物質及び/又は結合用化合物に特定物質を接触さたり、逆に、リンカーを特定物質と接触させてから、当該リンカーが接触した特定物質を生体物質及び/又は結合用化合物に接触させたりする。

0179

例えば、生体物質及び/又は結合用化合物もしくは生体物質構造体に含まれる官能基(修飾した場合も含む)と特定物質又はリンカーに含まれる官能基(修飾した場合も含む)とを反応させることにより結合させる場合には、官能基の組み合わせの例を挙げると、以下の通りである。即ち、共有結合により結合させる場合、結合の一方の官能基がアミノ基であれば、他方の官能基としてはスクシンイミド基、エポキシ基、アルデヒド基などが挙げられる。また、結合の一方の官能基がヒドロキシル基であれば、他方の官能基としてはエポキシ基などが挙げられる。さらに、結合の一方の官能基がチオール基であれば、他方の官能基としてはマレイミド基などが挙げられる。

0180

また、生体物質間相互作用を特定物質の結合に用いることもできる。例えば、アビジン類とビオチンとの相互作用により、特定物質を生体物質構造体に結合させることができる。具体例を挙げると、生体物質構造体に含まれる生体物質をアビジン類とした場合、特定物質又はリンカーに含まれるか修飾したビオチンを用いて、結合させることができる。一方、ビオチンが生体物質構造体に含まれるか若しくは修飾された場合、特定物質またはリンカーに含まれるかもしくは修飾したアビジン類を用いて、結合させることができる。

0181

その他、プロテインA(プロテインG,プロテインA/G)と抗体(特にFc部分)との結合、抗体と抗原との結合、糖・糖鎖とウイルスとの結合、ボロン酸と糖との結合、金属キレートとタグ融合タンパク(例えばニッケルキレートヒスタグ融合タンパク)との結合、糖(例えばマルトース)とタグ融合タンパク(例えばマルトース結合タンパク)との結合、グルタチオンとグルタチオン−S−トランスフェラーゼとの結合などが挙げられる。このうち好ましくはアビジン類とビオチンとの結合である。

0182

リンカー又は特定物質と、生体物質及び/又は結合用化合物とを接触させる場合の具体的な操作としては、通常は、適切な媒質中に生体物質若しくは結合用化合物並びに特定物質若しくは適宜用いるリンカーを共存させるようにする。この際、温度条件、反応時間、使用装置などは、特定物質を生体物質に結合させることができる限り任意である。通常は、これらの条件は特定物質、生体物質、結合用化合物、リンカー等の種類に応じて設定される。ただし、出来る限り、生体物質が失活しない条件で行なうことが好ましい。

0183

例えば、結合時の温度条件は、通常は室温以下で行なうことが好ましい。具体的には、通常25℃以下、好ましくは10℃以下で行なうことが望ましい。しかしながら、特定物質又はリンカーの生体物質及び/又は結合用化合物への結合が上記の望ましい温度範囲では進行しない場合には、結合が進行しやすい温度領域で行なうようにしてもよい。

0184

また、結合時の媒質としては、生体物質の失活を抑えるためには、水を主体とすることが好ましい。しかしながら、特別物質やリンカーなどが水に溶けにくいかまたは分散しにくいなどの特定を有している場合には、媒質として水溶性有機溶媒を用いるようにしてもよい。その際、水溶性有機溶媒の比率は任意であるが、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。

0185

水溶性有機溶媒の具体例としては、メチルアルコールエチルアルコールn−プロピルアルコールイソプロピルアルコールn−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールイソブチルアルコールn−アミルアルコール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド類のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールチオジグリコールヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類エチレングリコールモノメチルエーテルエチレングリコールモノエチルエーテルジエチレングリコールモノメチルエーテルジエチレングリコールモノエチルエーテルトリエチレングリコールモノメチルエーテルトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの低級ジエルキルエーテル類、グリセリン、スルホランN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。この中で好ましくは、ジメチルホルムアミドである。なお、結合時の媒質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、生体物質複合体の作製後、媒質を除去してもよい。

0186

以下、特定物質として金属キレートを生体物質に結合させる場合を例に挙げて、具体的な方法を説明する。
特定物質として金属キレートを生体物質に結合させる場合には、例えば、まず生体物質にキレート試薬(キレート形成基)を結合させ、そのキレート形成基に所望の金属イオンを結合させることにより、生体物質に特定物質を結合させることができる。

0187

このような反応は、非特異吸着の抑制や親水性向上等の目的で、適宜公知の手法を用いて改変可能である。例えば、非特異吸着を抑制する目的で、生体物質にアルブミンを用いて、アルブミンのアミノ基を特定物質を結合させる官能基とする場合には、キレート試薬にスクシンイミド基を導入してアミノ基とスクシンイミド基とを反応させれば、共有結合により生体物質にキレート試薬を導入することができる。

0188

また、例えば、キレート試薬に疎水的なAB−NTA(N(5−Amino−1−carboxypenyl)−iminodiacetic acid)などを用いた場合には、親水性を高めるために、親水性のエチレンオキサイドを有するEGS(Ethylene glycol−bis(succinimidylsuccinate))などのリンカーをさらに介在させることが好ましい。また、EGSを用いることにより、キレート試薬にスクシンイミド基を導入することもできるので有利である。

0189

この反応においては、生体物質、結合用化合物、キレート試薬、リンカー、金属イオンを一度に共存させて生体物質複合体を形成させても良い。ただし、まず生体物質構造体を作製し、次にキレート試薬とリンカーとを反応させた反応物を得て、これを前記の生体物質構造体と接触させることにより生体物質構造体にキレート試薬を導入し、その後、金属イオンを接触させて、金属キレートを特定物質とする生体物質複合体を作製することが好ましい。

0190

さらに具体的な例として、生理活性物質(医薬)の作用機構を解明するための生体物質複合体の作製について以下に説明する。
特定物質として生理活性物質(医薬)であるFK506をアビジン−ビオチン相互作用を用いて生体物質に結合させる場合には、生体物質としてアビジン類(例えばストレプトアビジンなど)を用いる。FK506には、親水性リンカーとしてエチレンオキサイド鎖を結合させ、その末端にビオチンを導入して、ビオチン化FK506を得る(参考文献Chemistry & Biology、Vol.9、691−698(2002))。この時、生体物質(例えばストレプトアビジン)と結合用化合物とビオチン化FK506を一度に共存させ結合させても良いが、生体物質構造体を作製した後に、該生体物質構造体にビオチン化FK506を接触させるほうが好ましい。

0191

さらに、生体物質に対するキレート試薬の結合や、キレート試薬を結合させた生体物質への特定物質の結合などは、通常は媒質内で行なうが、使用する媒質は任意であり、例えば、生体物質構造体の製造時に使用する媒質の例として例示したものと同様のものや、例示した水性有機溶媒などが挙げられる。なお、この場合の溶媒も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
また、結合時の反応条件も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。

0192

[III.生体物質複合体を用いたアフィニティー分離の説明]
本発明の生体物質複合体は、アフィニティー分離に用いて好適である。したがって、本発明の生体物質複合体は、例えば、アフィニティー精製や医薬機能解析ツール、若しくは診断用解析ツールとして用いることができる。

0193

具体的には、例えば、特定物質として生理活性物質を用いて、アフィニティー精製や医薬作用機構解析ツールを目的とした場合、血清などの中に含まれる微量なタンパク質などの生体物質が精製すべき対象物質となり、特定物質と対象物質との相互作用により、それを夾雑物の中から得ることができる。また、例えば生体物質複合体に含まれる特定物質に対する医薬候補化合物の作用機構の分析を目的とした場合、特定物質としてレセプターなどの疾患に寄与するタンパク質を用いることにより、複数の医薬候補化合物が分析すべき対象物質となり、それを生体物質複合体に接触させ、特異的に結合した医薬候補化合物を分析することにより、その医薬候補化合物の選抜もしくは作用機構の解明を行なうことができる。

0194

さらに、例えば、特定物質としてニッケルキレートを用いて、アフィニティー精製を目的とした場合、遺伝子工学より合成したHis−タグ融合タンパク質が対象物質となり、培養液に含まれる夾雑物から合成されたHis−タグ融合タンパク質を精製・分離することができる。
また、例えば、特定物質として抗体もしくは抗原を用いて、診断用解析ツールとした場合、血液、血清、血漿、髄液、尿、糞便、鼻汁、唾液などの体液、細胞、組織やそれらの抽出液などの検体に含まれる、特定物質である抗体もしくは抗原に特異的に結合する物質が対象物質となり、その対象物質の量もしくは存在の有無を分析することにより疾患を診断することが可能となる。

0195

上記のようにアフィニティー分離を行なう場合には、生体物質複合体に含まれる特定物質と対象物質との上述した特異な相互作用を用いることにより、分離精製、構造や機能の解析などを行なう。このとき、まず、生体物質複合体に対象物質を含む試料液(検体)を接触させ、試料液中の対象物質とその他の物質とを分離させることになる。

0196

(1)分離精製の対象となる対象物質
分離精製の対象となる対象物質とは、特定物質と特異的に相互作用する(アフィニティー結合する)作用物質を示す。このような対象物質の例としては、上述の生体物質複合体が有している生体物質と同様のものが使用できる。
具体例としては、医薬の候補となりうる物質(医薬候補物質)を分離する場合には、特定物質として当該医薬候補物質に生じさせたい所望の相互作用を生じうるものを用い、医薬候補物質を含有する可能性がある検体から、上記の医薬候補物質となりうる化合物を対象物質として分離するようにすることができる。

0197

(2)対象物質を含む試料液
対象物質は、通常は、組成物である検体中に、他の物質と共に共存している。また、検体は気体であることもあるが、通常は、液体として用意される。この際、検体は、何らかの溶媒中に対象物質が含有された溶液や分散液となっていることが多い。なお、以下適宜、溶液や分散液として存在する液体状の検体を「試料液」という。

0198

試料液の溶媒や分散媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、生体物質複合体製造時の媒質として上述したものを用いることができる。
また、試料液中の対象物質の濃度も任意であるが、通常1μg/L以上、好ましくは5μg/L以上、より好ましくは10μg/L以上が望ましい。この範囲を下回る濃度であると、精製の効率が低下し、本発明の利点を十分に発揮できなくなる虞がある。

0199

さらに、対象物質以外の物質は、試料液中の濃度として、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下が望ましい。この範囲を上回ると試料液の粘度が高くなりすぎ、生体物質複合体の内部まで十分に対象物質が侵入して特定物質と接触することができなくなる虞がある。

0200

(3)生体物質複合体と試料液との接触方法
本発明の生体物質複合体に対象物質を含む試料液を接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、生体物質複合体を充填したカラムの中に、対象物質を含む試料液を移動相とともに流すことにより接触させる方法が挙げられる。この時、生体物質複合体は乾燥した状態でもかまわないが、試料液を接触させる前に、移動相となる液体で湿潤させることが好ましい。

0201

また、別の方法では、例えば、対象物質を含む試料液をマイクロチューブなどの容器に入れ、その中に生体物質複合体を加えることによって接触させたり、逆に、生体物質複合体を入れた容器に対象物質を含む試料液を加えることによって接触させたりすることも可能である。

0202

さらに、本発明の生体物質複合体を固相担体に固定化することにより、さらに分離精製の効率を向上させることも可能である。例えば、微小流路の表面に本発明の生体物質複合体を固定化し、その流路に対象物質を含む試料液を送り込むことにより、小型で高効率な分離精製装置を構成することができる。

0203

また、生体物質複合体に対象物質を含む試料液を接触させるときは、適宜、如何なる条件に設定するようにしてもよいが、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは10℃以下で行なうことが望ましい。
さらに、接触させる前、最中、後に適宜、試料液を乾燥、濃縮することも可能である。その際の圧力条件も任意であるが、通常常圧以下が望ましい。

0204

(4)対象物質の分離
本発明の生体物質複合体と試料液との接触後にどのようにして対象物質の分離を行なうかは、特定物質や対象物質の種類などに応じて任意である。
例えば、特定物質と対象物質とが特異的に相互作用することにより、対象物質とその他の物質との間でリテンションタイム(保持時間)に違いが生じる場合には、このリテンションタイムの違いを利用して、分画精製し、対象物質をその他の物質から分離することができる(アフィニティークロマトグラフィー)。

0205

また、相互作用の中でも特に、対象物質が特定物質に特異的な相互作用によって吸着する場合には、特定物質に対象物質を吸着させ、その状態で試料液を生体物質複合体から分離し、その後対象物質を特定物質から遊離させて回収することにより、対象物質をその他の物質から分離することもできる。対象物質を特定物質から遊離させる方法は特に限定されないが、例えば、添加塩、pH、昇温等のほか、生体物質複合体に分離精製対象物よりも吸着力の強い既知の化学物質や、同等もしくは弱い吸着力だとしても高濃度の化学物質を添加することなどによって、対象物質を生体物質複合体から遊離させ、回収することができる。

0206

これら、分離させた対象物質は、目的に応じて、希釈もしくは濃縮することが可能である。例えば、希釈する場合は目的に応じた溶媒を添加すればよく、濃縮する場合は減圧もしくは加温またはその両方を用いて溶媒を蒸発させたり、限外ろ過フィルタを用いたり、凍結乾燥法を用いて溶媒を完全に取り除いたりするようにすればよい。

0207

また、本発明の生体物質複合体によって分離された対象物質を分析する場合、その方法は限定されないが、一般的には、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析(MS)、赤外分光法、核磁気共鳴法(1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、吸光度測定、蛍光測定などが挙げられる。また、分析に際しては、各測定手法を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。後述する第2実施形態で特定物質に吸着した対象物質の量を測定したり、第4実施形態で測定部21による分画中の対象物質の量の測定を行なったりする場合には、ここで例示した方法を用いる測定機器を用いることが可能である。

0208

(5)生体物質複合体を用いたアフィニティー分離の利点
従来技術によるアフィニティー分離では、その分離に用いるアフィニティークロマトグラフィー用担体の表面に特定物質を固定するため、特定物質の導入量は制限されていた(通常、タンパク質の単層吸着は、0.3〜1.0μg/cm2)。したがって、従来は、アフィニティークロマトグラフィー用担体では、特定物質と対象物質とを相互作用させる場合に、単位体積における相互作用可能な対象物質の量が少なかった。

0209

さらに、従来はそのアフィニティークロマトグラフィー用担体を完全に特定物質で覆うことができなかったため、アフィニティークロマトグラフィー用担体への非特異的な相互作用が生じやすく、分離精製効率が低かった。そのため、精製純度を高めるためには、複数回の精製を必要とし、分離精製に時間と手間がかかっていた。

0210

これに対して、本発明の生体物質複合体では、生体物質複合体に導入された特定物質の反応性を保つことができる。また、生体物質複合体中の特定物質の比率を高めることにより、生体物質複合体の単位体積における特定物質と特異的に相互作用する対象物質の量を高めることが可能である。さらに、生体物質複合体中に占める特定物質の比率を高めることにより、結合用化合物の比率を低く抑えることが可能であるため、結合用化合物に基づく非特異吸着を抑制することができる。これらにより、従来よりも、非特異吸着が抑制でき、さらに分離精製にかかる所要時間を短縮することが可能となる。

0211

また、本発明の生体物質複合体は、任意の固相単体の表面に形成することができ、近年盛んに研究が進められているマイクロチップおよびマイクロ流路等への応用が可能である。したがって、広範な用途へ適用しうることも、本発明の生体物質複合体を用いた場合の利点の一つである。

0212

さらに、本発明の生体物質複合体は、特定物質と相互作用する作用物質を検出するセンサーとして好適に使用できる。この際、具体的には、例えば、各センサーに用いるセンサーチップとして、本発明の生体物質複合体を備えたものを用いるようにすればよい。上記のセンサーとしては、例えば、特定物質にDNAやタンパク質又は糖を用いた場合、いわゆるDNAアレイ若しくはDNAチップ、又は、プロテインアレイ若しくはプロテインチップ、さらにウイルス検知用チップ等のアレイやセンサーチップを用いたバイオセンサー、診断用解析ツールなどが挙げられる。

0213

このように、本発明の生体物質複合体を適用することができるバイオセンサーの具体例としては、蛍光法ELISA法化学発光法、RI法、SPR(表面プラズモン共鳴)法、QCM(水晶発振子マイクロバランス)法、ピエゾカンチレバー法レーザー方式カンチレバー法、質量分析法電極法電界効果トランジスタFET)法、カーボンナノチューブを利用したFET及び/又は単一電子トランジスタ法、電気化学的方式によるセンサーなどが挙げられる。中でもQCM法及びSPR法による検出は、簡便に検体を無標識で分析することができるため、好適に用いられる。

0214

(6)実施形態
以下、生体物質複合体を用いて、試料液から対象物質を分離する実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

0215

(6−1)第1実施形態
本実施形態は、液中に、対象物質(分離対象物質)と、その他の物質とが共存する試料液から、対象物質を分離精製するものである。
また、図3は、本実施形態に用いるアフィニティークロマトグラフィー用容器を模式的に示す断面図である。

0216

この実施形態においては、図3に示すような、容器本体1内に生体物質複合体2を保持したアフィニティークロマトグラフィー用容器(以下適宜、「アフィニティー用容器」という)3を用いる。ここで、容器本体1の形状に制限は無く、試料液等の流体を収納しうるものであれば任意である。

0217

また、本実施形態のアフィニティー用容器3では、容器本体1の内部表面に生体物質複合体2を固定してあり、これにより、容器本体1の外部に生体物質複合体2が出ないよう、容器本体1内に保持されている。ただし、生体物質複合体2は容器本体1に固定せず、単に容器本体1内に収納するのみであっても構わない。
さらに、本実施形態に用いる生体物質複合体2の特定物質と、精製の対象である対象物質とは、特異的に相互作用することにより、対象物質は特定物質に特異的に吸着できるようになっているものとする。

0218

このアフィニティー用容器3を用いて試料液から対象物質を分離する場合、まず、アフィニティー容器3内に試料液を注入する。これにより、生体物質複合体2が試料液と接触し、特定物質に対象物質が吸着する。
次に、試料液と生体物質複合体2とを分離すべく、試料液をアフィニティー用容器3の外へ排出する。これにより、試料液内に含まれていた対象物質以外の成分は排出される。一方、対象物質は生体物質複合体2の特定物質に吸着することにより、アフィニティー用容器3内に保持される。
そして、例えば対象物質と特定物質との相互作用を弱めうる所定のpHに調整した回収用溶液をアフィニティー用容器3に注入することなどにより対象物質を生体物質複合体2から遊離させ、遊離した対象物質を上記の回収用溶液と共に回収する。

0219

以上のようにすれば、試料液中の対象物質を分離精製することができる。また、この際、特定物質として対象物質と特異的に相互作用するものを用いており、しかも、本発明の生体物質複合体は活性を保った特定物質を非常に多量に含有するものであるために、非特異的吸着を抑制して、高効率な分離精製を容易に行なうことが可能である。

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