図面 (/)

技術 脂肪酸類の製造方法

出願人 花王株式会社
発明者 加瀬実小松利照
出願日 2005年10月6日 (14年4ヶ月経過) 出願番号 2005-293277
公開日 2007年4月19日 (12年10ヶ月経過) 公開番号 2007-099958
状態 特許登録済
技術分野 食用油脂 脂肪類、香料
主要キーワード 加水分解反応槽 法制化 高圧熱水 加水分解反応装置 粉末酵素 トリメチルシリル化剤 脂溶性脂肪酸 搾油後
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2007年4月19日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

油脂の加水分解により、構成脂肪酸中トランス不飽和脂肪酸モノアシルグリセロール含量が低く、かつ色の低減された良好な外観を有する脂肪酸類の製造方法の提供。

解決手段

油脂を加水分解することにより脂肪酸類を製造する方法であって、油脂を高温高圧分解法で部分的に加水分解した後、酵素分解法により加水分解する脂肪酸類の製造方法。

概要

背景

脂肪酸類の製造は、油脂を加水分解することにより行われている。油脂を加水分解する方法は、高温高圧分解法と(特許文献1)、酵素分解法(特許文献2)が行われている。前者は、高温及び高圧条件下で行うもので、生産性が高いという利点を有するが、原料不飽和脂肪酸の多いものを使用すると、条件によってはトランス不飽和脂肪酸を多く生成する場合がある。一方、後者はリパーゼ等の酵素触媒とし、反応は0〜70℃という低温で行われるため、トランス不飽和脂肪酸を生成することはないが、高温高圧分解法に比べて生産性が低い。

また、高温高圧分解法においては、反応当初に分解が開始されるまでの誘導期間が存在するが、当該誘導時間をなくす又は短縮するために、まずグリセリドを1,3位特異性リパーゼを用い、酵素分解法により部分加水分解して部分分解グリセリドを調製し、その後、高温高圧分解法を行うという技術も存在する(特許文献3)。

特開2003−113395号公報
特開2000−160188号公報
特表平8−507917号公報

概要

油脂の加水分解により、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸とモノアシルグリセロール含量が低く、かつ色の低減された良好な外観を有する脂肪酸類の製造方法の提供。油脂を加水分解することにより脂肪酸類を製造する方法であって、油脂を高温高圧分解法で部分的に加水分解した後、酵素分解法により加水分解する脂肪酸類の製造方法。なし

目的

脱臭工程を省略した未精製の原料油脂は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下であり、これを酵素分解法により加水分解を行えば、トランス不飽和脂肪酸の含量が上昇することはない。しかし、原料由来の色がそのまま残るため、得られる脂肪酸類としては外観が悪い。一方、高温高圧分解法のみにより加水分解して得た脂肪酸類は、着色成分が分解されることにより良好な外観になるが、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が高くなる。またモノアシルグリセロール含量も高くなるという課題も明らかとなった。
従って、本発明の目的は、油脂の加水分解により、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸とモノアシルグリセロール含量が低く、かつ色の低減された良好な外観を有する脂肪酸類の製造方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

油脂を加水分解することにより脂肪酸類を製造する方法であって、油脂を高温高圧分解法で部分的に加水分解した後、酵素分解法により加水分解する脂肪酸類の製造方法。

請求項2

高温高圧分解法による加水分解を、脂肪酸濃度が0.5〜90質量%となるまで行う請求項1記載の脂肪酸類の製造方法。

請求項3

加水分解反応に供する油脂の構成脂肪酸中トランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下である請求項1又は2に記載の脂肪酸類の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、油脂を加水分解することによる脂肪酸類の製造方法に関する。

背景技術

0002

脂肪酸類の製造は、油脂を加水分解することにより行われている。油脂を加水分解する方法は、高温高圧分解法と(特許文献1)、酵素分解法(特許文献2)が行われている。前者は、高温及び高圧条件下で行うもので、生産性が高いという利点を有するが、原料不飽和脂肪酸の多いものを使用すると、条件によってはトランス不飽和脂肪酸を多く生成する場合がある。一方、後者はリパーゼ等の酵素触媒とし、反応は0〜70℃という低温で行われるため、トランス不飽和脂肪酸を生成することはないが、高温高圧分解法に比べて生産性が低い。

0003

また、高温高圧分解法においては、反応当初に分解が開始されるまでの誘導期間が存在するが、当該誘導時間をなくす又は短縮するために、まずグリセリドを1,3位特異性リパーゼを用い、酵素分解法により部分加水分解して部分分解グリセリドを調製し、その後、高温高圧分解法を行うという技術も存在する(特許文献3)。

0004

特開2003−113395号公報
特開2000−160188号公報
特表平8−507917号公報

発明が解決しようとする課題

0005

近年、世界的に食用油について、健康面に及ぼす影響が着目されており、トランス不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸コレステロールとともにLDL(悪玉)コレステロール値を上昇させ、冠状動脈心臓疾患リスクを増大させることが、科学的に裏付けられている。アメリカでは、約1300万人が冠状動脈性心臓疾患にかかっており、毎年、50万人以上が冠状動脈性心臓疾患関連で死亡している。このような状況下で、米国では“Nutrition Facts”(栄養表示)に、従来の脂質、飽和脂肪酸、コレステロール表示に加え、2006年1月1日よりトランス不飽和脂肪酸含量の表示を義務化することとなった。また、デンマークでは、2004年より食用油のトランス不飽和脂肪酸濃度を2.0質量%以下とすることを法制化し、EU諸国全体へ波及することは必至である。このように、食用油のトランス不飽和脂肪酸の低減が世界的に望まれている。また、油脂を加水分解して製造した脂肪酸類中のモノアシルグリセロール含量は、乳化抑制の点から低いほうが好ましい。

0006

脱臭工程を省略した未精製の原料油脂は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下であり、これを酵素分解法により加水分解を行えば、トランス不飽和脂肪酸の含量が上昇することはない。しかし、原料由来の色がそのまま残るため、得られる脂肪酸類としては外観が悪い。一方、高温高圧分解法のみにより加水分解して得た脂肪酸類は、着色成分が分解されることにより良好な外観になるが、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が高くなる。またモノアシルグリセロール含量も高くなるという課題も明らかとなった。
従って、本発明の目的は、油脂の加水分解により、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸とモノアシルグリセロール含量が低く、かつ色の低減された良好な外観を有する脂肪酸類の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

そこで、本発明者は、油脂の加水分解反応において、高温高圧分解法と酵素分解法の組合せについて種々検討したところ、まず、油脂を高温高圧分解法により部分的に加水分解し、その後、酵素分解法により加水分解した場合にのみ、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸とモノアシルグリセロール含量が低く、かつ良好な外観を有する脂肪酸類を製造できることを見出した。なお、当該方法と逆の順で行った場合には、モノアシルグリセロールの含量を低減することはできないことも見出した。

0008

すなわち、本発明は、油脂を加水分解することにより脂肪酸類を製造する方法であって、油脂を高温高圧分解法で部分的に加水分解した後、酵素分解法により加水分解する脂肪酸類の製造方法を提供するものである。

発明の効果

0009

本発明によれば、油脂の加水分解により、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸とモノアシルグリセロール含量が低く、かつ良好な外観を有する脂肪酸類を製造することができる。

発明を実施するための最良の形態

0010

本発明における「高温高圧分解法」とは、原料油脂に水を加えて、高温、高圧の条件で反応することにより、脂肪酸類とグリセリンを得る方法をいう。また、本発明における「酵素分解法」とは、原料油脂に水を加えて、リパーゼ等の酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸類とグリセリンを得る方法をいう。更に、本発明における「脂肪酸類」とは、脂肪酸のみならず、グリセリン、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールトリアシルグリセロールが存在するものも含む。

0011

本発明において、加水分解の対象となる原料油脂は、植物性油脂動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油ひまわり油とうもろこし油大豆油あまに油米油紅花油、綿実油牛脂魚油等を挙げることができる。また、これらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、原料油脂中の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。

0012

本発明の態様において、原料油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分をろ過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、原料油脂は、アルカリを添加混合した後、水洗脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、原料油脂は、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤をろ過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、原料油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。更に、原料油脂は、必要に応じて、減圧下で水蒸気と接触させることにより、脱臭を行っても良い。この際、熱履歴を極力低くすることが油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減する点から好ましい。脱臭工程の条件については、温度は300℃以下、特に270℃以下にコントロールすることが好ましく、また、時間は10時間以下、特に5時間以下とすることが好ましい。

0013

本発明においては、原料油脂は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下、更に1質量%以下、特に0.5質量%以下のものを用いることが、加水分解後の脂肪酸類の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。例えば、原料油脂は、原料の全部又は一部に、未脱臭油脂を使用するのが、脂肪酸類の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸を低減できるので好ましい。ここで、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量は、油脂を2種以上使用する場合は、それらの合計量中の含有量である。

0014

高温高圧分解法による加水分解では、原料油脂の構成脂肪酸不飽和度が高いものほど、加熱によるトランス化が起こり易い。特に、不飽和度が1であるオレイン酸の場合は、加熱によってはほとんどトランス化が起こらず、不飽和度が2以上である脂肪酸、例えばリノール酸リノレン酸の場合は、トランス化が顕著となる。

0015

本発明の製造方法で用いる原料油脂は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下、更に0.01〜1質量%、特に0.1〜1質量%であることが、生理効果の点から好ましい。色相Cは20以上、更に35以上であることが、本発明による外観の向上効果が顕著である点から好ましい。
なお、本発明における「構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸の含有量」及び「脂肪酸組成」は、日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステル調製法(2.4.1.2−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f-96(GLC法)により測定した値をいう。また、原料油脂又は脂肪酸類の「色相C」は、American Oil Chemists. Society Official Method Ca 13e-92 (Lovibond法) で5.25インチセルにより測定し、次の式(1)で求めた値をいう。
C=10R+Y (1)
(式中、R=Red値、Y=Yellow値

0016

本発明において、油脂の高温高圧分解法による加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができ、原料油脂と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよく、次の反応条件で行われる。加水分解反応装置に供給される原料油脂及び水は、必要により予め脱気又は脱酸素した原料油脂及び水を用いることが油脂の酸化抑制の点から好ましい。

0017

高温高圧分解法による加水分解においては、油脂100質量部に対し、水を10〜250質量部となるように加え、温度200〜270℃、圧力2〜8MPaの条件下で0.1〜6時間かけて加水分解するのが好ましい。脂肪酸類の工業的生産性、脱色、トランス不飽和脂肪酸の生成を抑制する点から、温度は210〜265℃、更に215〜260℃とすることが好ましい。油脂100質量部に対する水の量は、同様の点から、更に15〜150質量部、特に20〜120質量部とすることが好ましい。また、圧力は同様の点から、更に2〜7MPa、特に2.5〜6MPaとすることが好ましい。更に、反応時間は同様の点から、更に0.2〜5時間、特に0.3〜4時間とすることが好ましい。

0018

好ましい反応装置としては、7〜40m3の容量の加水分解反応槽を備えた向流式のColgate−Emery法油脂分解(例えばIHI社)を挙げることができる。また、実験室規模の少量分解には市販のオートクレーブ装置(例えば日東高圧(株))を加水分解反応槽として用いてもよい。

0019

油脂の高温、高圧の条件下での加水分解反応は脂肪酸濃度によって管理し、所定の脂肪酸濃度に到達した時点で終了すればよい。なお、本発明における「脂肪酸濃度」は、油脂製品の知識(株式会社 幸書房)に従って、脂肪酸類の酸価及び脂肪酸組成を測定し、次式(2)で求めた値をいう。なお、酸価は、American Oil Chemists. Society Official Method Ca 5a-40により測定する。
脂肪酸濃度(質量%)=x×y/56.1/10 (2)
(x=酸価[mgKOH/g]、y=脂肪酸組成から求めた平均分子量)

0020

油脂の高温高圧分解法による部分的な加水分解は、工業的生産性、良好な外観、トランス不飽和脂肪酸及びモノグリセリドの生成を抑制する点から脂肪酸濃度が0.5〜90質量%、更に1.5〜85質量%、特に20〜70質量%となるまで行うことが好ましい。部分的な加水分解の結果、色相Cは35以下、更に1〜30、特に5〜25であることが好ましく、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量は0〜1.5質量%、更に0.1〜1.2質量%、特に0.2〜0.7質量%であることが好ましい。更に、モノグリセリドは1〜20質量%、更に1〜15質量%、特に3〜10質量%であることが好ましい。

0021

本発明においては、油脂を高温高圧分解法により部分的な加水分解を行った後に、酵素分解法により加水分解を行うことが必要である。
本発明の態様において、酵素分解法で使用する油脂分解用酵素としては、リパーゼが好ましい。リパーゼは、動物由来植物由来のものはもとより、微生物由来の市販リパーゼ、更にリパーゼを固定化した固定化酵素を使用することもできる。例えば、油脂分解用酵素は、リゾプス(Rizopus) 属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、クロモバクテリウム(Chromobacterium) 属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas) 属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium) 属、キャンディダ(Candida) 属等の微生物起源のリパーゼ及び膵臓リパーゼ等の動物リパーゼが挙げられる。高分解率を得るためには位置特異性のない(ランダム型)のリパーゼが良く、微生物起源ではシュードモナス(Pseudomonas) 属、及びキャンディダ(Candida) 属等が良い。

0022

本発明の態様において、油脂の酵素分解法による加水分解は、酵素を担体に固定化した固定化酵素を用いることが酵素活性を有効利用できる点から好ましい。固定化酵素は、固定化担体にリパーゼが担持されたものを用いることが好ましい。固定化担体としては、セライトケイソウ土カオリナイトシリカゲルモレキュラーシーブス多孔質ガラス活性炭炭酸カルシウムセラミックス等の無機担体セラミックスパウダーポリビニルアルコールポリプロピレンキトサンイオン交換樹脂疎水吸着樹脂キレート樹脂合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられるが、保水力の点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより多量のリパーゼを吸着できるという点から、多孔質であることが好ましい。

0023

固定化担体として用いる樹脂粒子径は100〜1000μmが好ましく、特に250〜750μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Hass社製Duolite A-568)が好ましい。

0024

酵素を固定化する場合、酵素を担体に直接吸着してもよいが、高活性発現するような吸着状態にするため、酵素吸着前にあらかじめ担体を脂溶性脂肪酸又はその誘導体で処理して使用してもよい。使用する脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基置換していてもよい脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸ラウリン酸ミスチリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リシノール酸イソステアリン酸等が挙げられる。またその誘導体としては、これらの脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステルリン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加した誘導体が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステルエチルエステルモノグリセライドジグリセライド、それらのエチレンオキサイド付加体ポリグリセリンエステルソルビタンエステルショ糖エステル等が挙げられる。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体は、2種以上を併用してもよい。

0025

これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体と担体の接触法としては、水又は有機溶剤中の担体にこれらを直接加えてもよいが、分散性を良くするため、有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加えてもよい。この有機溶剤としては、クロロホルムヘキサンエタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸又はその誘導体の使用量は、担体100質量部に対して1〜500質量部、更に10〜200質量部が好ましい。接触温度は0〜100℃、更に20〜60℃が好ましく、接触時間は5分〜5時間程度が好ましい。この処理を終えた担体は、ろ過して回収するが、乾燥してもよい。乾燥温度は室温〜100℃が好ましく、減圧乾燥を行ってもよい。

0026

酵素の固定化を行う温度は、酵素の特性によって決定することができるが、酵素の失活が起きない温度、すなわち0〜60℃、更に5〜40℃が好ましい。また固定化時に使用する酵素溶液のpHは、酵素の変性が起きない範囲であればよく、温度同様酵素の特性によって決定することができるが、pH3〜9が好ましい。このpHを維持するためには緩衝液を使用するが、緩衝液としては、酢酸緩衝液リン酸緩衝液トリス塩酸緩衝液等が挙げられる。上記酵素溶液中の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の飽和溶解度以下で、かつ十分な濃度であることが好ましい。また酵素溶液は、必要に応じて不溶部を遠心分離で除去した上澄や、限外濾過等によって精製したものを使用することもできる。また用いる酵素質量はその酵素活性によっても異なるが、担体100質量部に対して5〜1000質量部、更に10〜500質量部が好ましい。

0027

酵素の固定化後に加水分解反応に適した状態にする点から、酵素溶液から濾過により、固定化酵素を回収し、余分な水分を除去したのち、乾燥することなしに反応基質となる大豆油等の油脂に接触させることが好ましい。接触後の固定化酵素中の水分は、用いる担体の種類によっても異なるが、固定化担体100質量部に対し0.1〜100質量部、更に1〜50質量部、特に5〜50質量部であることが好ましい。このときカラム等の充填容器封入して、ポンプ等により油脂を循環しても良いし、油脂中に固定化酵素を分散させても良い。接触させる温度は20℃〜60℃が良く、酵素の特性によって選ぶことができる。更に、接触する時間は1時間〜48時間程度で良く、この接触が終わったところで濾過し、固定化酵素を回収することが、工業的生産性の点から好ましい。

0028

固定化酵素の加水分解活性は20U/g以上、更に100〜10000U/g、特に500〜5000U/gの範囲であることが好ましい。ここで酵素の1Uは、40℃において、油脂:水=100:25(質量比)の混合液攪拌混合しながら30分間加水分解をさせたとき、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素の分解能を示す。

0029

本発明において、油脂の酵素分解法による加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができ、部分的に加水分解した脂肪酸類と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよく、次の反応条件で行われる。加水分解反応装置に供給される部分的に加水分解した脂肪酸類は、予め脱気又は脱酸素を行うことが脂肪酸類の酸化抑制の点から好ましい。

0030

酵素分解法の反応に用いる固定化酵素量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、分解する脂肪酸類100質量部に対して0.01〜30質量部、更に0.1〜15質量部、特に0.2〜10質量部が好ましい。また水の量は、分解する脂肪酸類の100質量部に対して10〜200質量部、更に20〜100質量部、特に30〜80質量部が好ましい。水は、蒸留水イオン交換水水道水井戸水等いずれのものでも構わない。グリセリン等その他の水溶性成分が混合されていても良い。必要に応じて、酵素の安定性が維持できるようにpH3〜9の緩衝液を用いてもよい。

0031

油脂の酵素分解反応に用いる部分的に加水分解した脂肪酸類は、そのまま用いてもよいが、必要により静置分離、遠心分離等の方法で脂肪酸類と水相を分離して、更に、油相中分配されたグリセリンは、遠心分離、水洗等により除去して精製してもよい。

0032

反応温度は、酵素の活性をより有効に引き出し、分解により生じた遊離脂肪酸が結晶とならない温度である0〜70℃、更に20〜50℃とすることが好ましい。また反応は、空気との接触が出来るだけ回避されるように、不活性ガス存在下で行うことが好ましい。

0033

加水分解反応は、前記の式(2)で示される脂肪酸濃度によって管理し、所定の脂肪酸濃度に到達した時点で終了すればよい。加水分解反応終了後は、静置分離、遠心分離等の方法により脂肪酸類と水相を分離することが好ましい。更に、油相中に分配されたグリセリンは、遠心分離、水洗等により除去して精製してもよい。

0034

本発明では、上記の如く、油脂の加水分解反応において、油脂100質量部に対して、10〜250質量部の水を加えて、温度200〜270℃、圧力2〜8MPaの条件下で0.1〜6時間かけて部分的に加水分解し、その後、部分的に加水分解した脂肪酸類100質量部に対して、固定化酵素0.01〜30質量部、水10〜200質量部をそれぞれ加え、温度0〜70℃の条件下で加水分解することにより、工業的生産性、良好な外観、トランス不飽和脂肪酸及びモノアシルグリセロール含量の低減された脂肪酸類を得ることができる。

0035

〔固定化酵素製造法
Duolite A−568(Rohm & Hass社製)50gを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液500mL中で、1時間攪拌した。その後、500mLの蒸留水で1時間洗浄し、500mMのリン酸緩衝液(pH7)500mLで、2時間pHの平衡化を行った。その後50mMのリン酸緩衝液(pH7)500mLで2時間ずつ2回、pHの平衡化を行った。この後、濾過を行い担体を回収した後、エタノール250mLでエタノール置換を30分間行った。濾過した後、リシノール酸を50g含むエタノール250mLを加え30分間、リシノール酸を担体に吸着させた。この後濾過し、担体を回収した後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)250mLで4回洗浄し、エタノールを除去し、濾過して担体を回収した。その後市販の油脂に作用するリパーゼ(リパーゼAY「アマノ」30G,天野エンザイム社)の10%溶液1000mLと4時間接触させ、固定化を行った。濾過し、固定化酵素を回収して、50mMの酢酸緩衝液(pH7)250mLで洗浄を行い、固定化していない酵素や蛋白を除去した。以上の操作はいずれも20℃で行った。固定化後の酵素液残存活性固定化前の酵素液の活性差より固定化率を求めたところ、95%であった。その後、大豆油200gを加え、40℃、2時間攪拌した後、濾過して大豆油と分離し、固定化酵素とした。こうして得られた固定化酵素を、使用前に実際に反応を行う基質である部分的に加水分解した脂肪酸類で洗浄しろ過した。

0036

〔原料油脂〕
原料油脂として、表1に示す未脱臭大豆油を用いた。なお、グリセリド組成は、次に示す方法にて測定した。
〔グリセリド組成の測定法
ガラスサンプル瓶に、サンプル10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLとを加え、密栓した後、70℃で15分間加熱した。これに蒸留水1.0mL、ヘキサン2.0mLを加えて、混合後、ヘキサン層ガスクロマトグラフィー(GLC)にて測定した。
装置;Hewlett Packard製 6890型
カラム;DB−1HT(J&W Scientific製) 7m
カラム温度;initial=80℃、final=340℃
昇温速度=10℃/分、340℃にて20分間保持
検出器;FID、温度=350℃
注入部;スプリット比=50:1、温度=320℃
サンプル注入量;1μL
キャリアガスヘリウム、流量=1.0mL/分

0037

0038

〔高温高圧分解法による加水分解〕
油水向流式の高圧熱水分解装置に、原料油脂を装置の下側から、水を装置の上側からそれぞれ連続的に送液した。送液量は、原料油脂100質量部に対して水50質量部とした。この時、分解塔内の平均滞留時間(hr)(塔容積(m3)/(原料油の流量(m3/hr)+水の流量(m3/hr)))は約4hrであった。装置の中で原料油脂は高圧熱水(5.0MPa、240℃)により加熱された。油水向流式の高圧熱水型分解装置の途中にあるサンプリング口から反応液を適宜採取し、窒素シール遮光状態で25℃まで冷却した。その後、遠心分離(5,000g,30分)し、水層を除去後、脂肪酸層を温度70℃、真空度400Paで30分間、減圧脱水し、サンプルA〜Eを得た。表2に各脂肪酸類の分析値を示した。

0039

0040

〔酵素分解法による加水分解(1)〕
部分的に加水分解した脂肪酸類であるサンプルA〜D、及び表1に示す未脱臭大豆油について、固定化酵素を用いた酵素分解法による加水分解を行った。サンプルA〜D、又は未脱臭大豆油で洗浄した各固定化酵素(加水分解活性2700U/g)5g(乾燥重量)を、300mL容量の四つ口フラスコ量した。そこへ、それぞれ対応するサンプルA〜D、又は未脱臭大豆油100gと蒸留水60gを添加し、40℃で、窒素雰囲気下、密閉状態で、攪拌半月φ60mm×H15mm:250r/min)しながら、脂肪酸類の脂肪酸濃度が93質量%以上になるまで反応を行った。反応液を遠心分離(5,000×g,30分)し、水層及び固定化酵素を除去後、脂肪酸層を温度70℃、真空度400Paで30分間、減圧脱水して脂肪酸類(サンプルF〜J)を得た。表3に脂肪酸類の分析値(固定化酵素使用)を示した。ここで、各サンプルは、FについてはAを、GについてはBを、HについてはCを、IについてはDを、Jについては未脱臭大豆油をそれぞれ加水分解したものである。

0041

0042

〔酵素分解法による加水分解(2)〕
部分的に加水分解した脂肪酸類であるサンプルA〜D、及び表1に示す未脱臭大豆油について、粉末酵素を用いた酵素分解法による加水分解を行った。300mL容量の四つ口フラスコに、サンプルA〜D、又は未脱臭大豆油100gと蒸留水55gを秤量した。そこへ、リパーゼOF(起源:Candida cylindracea名糖産業)0.1gを蒸留水5gに溶解後、全量添加し、40℃で、窒素雰囲気下、密閉状態で攪拌(半月翼φ60mm×H15mm:250r/min)しながら、脂肪酸類の脂肪酸濃度が93質量%以上になるまで反応を行った。反応液を遠心分離(5,000×g,30分)し、水層及び粉末リパーゼが存在する中間層を除去後、脂肪酸層を温度70℃、真空度400Paで30分間、減圧脱水して脂肪酸類(サンプルK〜O)を得た。表4に脂肪酸類の分析値(粉末リパーゼ使用)を示した。ここで、各サンプルは、KについてはAを、LについてはBを、MについてはCを、NについてはDを、Oについては未脱臭大豆油をそれぞれ加水分解したものである。

0043

0044

表2〜表4より明らかなように、原料油脂を高温、高圧の条件下で部分的に加水分解し、脂肪酸類の脂肪酸濃度を0.5〜90質量%とし、その後、リパーゼにより加水分解すると、より構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量とモノアシルグリセロール含量が低く、良好な外観の脂肪酸類(サンプルG、H,I,L,M,N)ができることがわかった。
これに対し、原料油脂を高温、高圧の条件下の加水分解反応のみで得た脂肪酸類(サンプルE)は、良好な外観であるが、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量とモノアシルグリセロール含量が高いことが分かった。また、原料油脂を、高温、高圧の条件下で部分的に加水分解し、脂肪酸類の脂肪酸濃度を90質量%以上とし、その後、リパーゼにより加水分解して得た脂肪酸類(サンプルF,K)は、良好な外観でモノアシルグリセロール含量は低いが、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が高いことが分かった。
更に、原料油脂を酵素法加水分解反応のみで得た脂肪酸類(サンプルJ,O)は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量とモノアシルグリセロール含量は低いが、外観が損なわれることが分かった。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「 香料組成物」が 公開されました。( 2019/09/12)

    【課題】固形物層の分離が抑制され、細孔を通過する際に根詰まり又は目詰まりが抑えられるような香料組成物を提供する。【解決手段】香料、シクロデキストリン及び増粘性多糖類を含有させ、特に、噴霧乾燥時の噴霧効... 詳細

  • 昭和産業株式会社の「 炒め調理用の油脂組成物」が 公開されました。( 2019/09/12)

    【課題】本発明の課題は、澱粉系食材を好適に炒め調理する技術を提供することである。【解決手段】HLBが4.7〜8の乳化剤と食用油脂を含有する油脂組成物を炒め調理に用いることによって、澱粉系食材を好適に炒... 詳細

  • クラシエホームプロダクツ株式会社の「 悪臭化合物を低減するための組成物」が 公開されました。( 2019/09/12)

    【課題】一つ消臭成分の臭いを使用者が強く感じることによる嗜好性の低下を抑えた悪臭を低減するための組成物を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るインドール骨格を有する悪臭化合物を低減するための組成物... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い法人

関連性が強い法人一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ