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技術 アクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

出願人 セイコーエプソン株式会社
発明者 李欣山西脇学
出願日 2006年7月12日 (12年6ヶ月経過) 出願番号 2006-192068
公開日 2007年3月22日 (11年9ヶ月経過) 公開番号 2007-073931
状態 未査定
技術分野 圧電、電歪、磁歪装置 インクジェット(粒子形成、飛翔制御) 超音波モータ、圧電モータ、静電モータ
主要キーワード 分極強度 最大反り 引張り方向 スパッタリング圧力 ジルコニウム層 圧電性セラミックス アクチュエータ装置 長手方向外側
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

圧電体層圧電特性を良好に保持でき且つ上電極剥離を防止することができるアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。

解決手段

基板振動板を形成する工程と、振動板上に下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成する工程とを有し、且つ圧電素子を形成する工程では、圧電体層上にスパッタリング法によって上電極を形成し、その際の温度を25〜250(℃)、圧力を0.4〜1.5(Pa)として、厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下である上電極を形成する。

概要

背景

アクチュエータ装置に用いられる圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体層を、下電極上電極との2つの電極で挟んで構成されたものがある。このようなアクチュエータ装置は、一般的に、撓み振動モードのアクチュエータ装置と呼ばれ、例えば、液体噴射ヘッド等に搭載されて使用されている。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインク加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。また、インクジェット式記録ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置としては、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。

このような圧電素子を有するアクチュエータ装置では、リソグラフィ法という精密で、且つ簡便な手法で圧電素子を高密度に作り付けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くできて高速駆動が可能になるという利点がある。しかしながら、このように形成した圧電素子は、圧電素子を構成する各膜の膜質、あるいは膜応力等に起因する膜剥離が生じてしまうという問題がある。特に、圧電素子の最上層である上電極が圧電体層から剥離し易いという問題がある。

なお、圧電素子を構成する膜の応力を調整するために、例えば、圧電層(圧電体層)の間に応力緩和層を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。このような構成とすることで、圧電素子を構成する膜の剥離をある程度は防止することができるかもしれない。しかしながら、圧電体層の圧電特性が低下してしまい、圧電素子を駆動した際に所望の変位量が得られないという問題が生じる虞がある。

勿論、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、その他のあらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置においても同様に存在する。

特開平5−286131号公報(第3図、段落[0013]等)
特開2004−128492号公報(特許請求の範囲等)

概要

圧電体層の圧電特性を良好に保持でき且つ上電極の剥離を防止することができるアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。基板に振動板を形成する工程と、振動板上に下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成する工程とを有し、且つ圧電素子を形成する工程では、圧電体層上にスパッタリング法によって上電極を形成し、その際の温度を25〜250(℃)、圧力を0.4〜1.5(Pa)として、厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下である上電極を形成する。なし

目的

本発明は、このような事情に鑑み、圧電体層の圧電特性を良好に保持でき且つ上電極の剥離を防止することができるアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

基板振動板を形成する工程と、該振動板上に下電極圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成する工程とを有し、且つ前記圧電素子を形成する工程では、前記圧電体層上にスパッタリング法によって前記上電極を形成し、その際の温度を25〜250(℃)、圧力を0.4〜1.5(Pa)として、厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下である前記上電極を形成することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。

請求項2

前記上電極を形成する際のパワー密度を3〜30(kW/m2)としたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置の製造方法。

請求項3

前記上電極の材料として、イリジウム(Ir)を用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法。

請求項4

請求項1〜3の何れかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするアクチュエータ装置。

請求項5

請求項4に記載のアクチュエータ装置を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド

請求項6

請求項5に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置

技術分野

0001

本発明は、振動板上に、下電極圧電材料からなる圧電体層及び上電極で構成される圧電素子を有するアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置、並びにこのアクチュエータ装置を用いた液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。

背景技術

0002

アクチュエータ装置に用いられる圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体層を、下電極と上電極との2つの電極で挟んで構成されたものがある。このようなアクチュエータ装置は、一般的に、撓み振動モードのアクチュエータ装置と呼ばれ、例えば、液体噴射ヘッド等に搭載されて使用されている。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインク加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。また、インクジェット式記録ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置としては、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。

0003

このような圧電素子を有するアクチュエータ装置では、リソグラフィ法という精密で、且つ簡便な手法で圧電素子を高密度に作り付けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くできて高速駆動が可能になるという利点がある。しかしながら、このように形成した圧電素子は、圧電素子を構成する各膜の膜質、あるいは膜応力等に起因する膜剥離が生じてしまうという問題がある。特に、圧電素子の最上層である上電極が圧電体層から剥離し易いという問題がある。

0004

なお、圧電素子を構成する膜の応力を調整するために、例えば、圧電層(圧電体層)の間に応力緩和層を設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。このような構成とすることで、圧電素子を構成する膜の剥離をある程度は防止することができるかもしれない。しかしながら、圧電体層の圧電特性が低下してしまい、圧電素子を駆動した際に所望の変位量が得られないという問題が生じる虞がある。

0005

勿論、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、その他のあらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置においても同様に存在する。

0006

特開平5−286131号公報(第3図、段落[0013]等)
特開2004−128492号公報(特許請求の範囲等)

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、このような事情に鑑み、圧電体層の圧電特性を良好に保持でき且つ上電極の剥離を防止することができるアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

上記課題を解決する本発明の第1の態様は、基板に振動板を形成する工程と、該振動板上に下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成する工程とを有し、且つ前記圧電素子を形成する工程では、前記圧電体層上にスパッタリング法によって前記上電極を形成し、その際の温度を25〜250(℃)、圧力を0.4〜1.5(Pa)として、厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下である前記上電極を形成することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第1の態様では、上電極の圧電体層との密着性が確保されるため、圧電体層の圧電特性が良好に保持しつつ上電極の膜質を向上させることができる。したがって、変位特性及び耐久性に優れたアクチュエータ装置を実現することができる。

0009

本発明の第2の態様は、前記上電極を形成する際のパワー密度を3〜30(kW/m2)としたことを特徴とする第1の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第2の態様では、所望の応力を有する上電極をより確実に形成することができる。

0010

本発明の第3の態様は、前記上電極の材料として、イリジウム(Ir)を用いたことを特徴とする第1又は2の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第3の態様では、上電極として所定の材料を用いることで、上電極の膜質がさらに確実に向上する。

0011

本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様の製造方法によって製造されたことを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第4の態様では、変位特性及び耐久性が著しく向上したアクチュエータ装置が実現される。

0012

本発明の第5の態様は、第4の態様のアクチュエータ装置を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第5の態様では、良好な吐出特性が得られ且つ耐久性も大幅に向上した液体噴射ヘッドが実現される。

0013

本発明の第6の態様は、第5の態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第6の態様では、吐出特性、耐久性等が向上することで、信頼性を大幅に向上した液体噴射装置を実現できる。

発明を実施するための最良の形態

0014

以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する保護基板リザーバ部と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。

0015

また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、後述するマスク膜52を介して接着剤熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。

0016

一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなり厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が積層形成されている。また、絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.1〜0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約0.5〜5μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。すなわち、本発明では、振動板が酸化膜を有し、圧電素子300はこの酸化膜上に形成されている。なお、一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路配線都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエータ装置と称する。

0017

また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧印加されるようになっている。

0018

また、本実施形態では、圧電素子300の各層及びリード電極90のパターン領域は、下電極膜60の接続部60a及びリード電極90の接続部90aに対向する領域を除いて、絶縁材料からなる絶縁膜95によって覆われている。すなわち、この接続部60a,90aを除いて、下電極膜60、圧電体層70、上電極膜80及びリード電極90の表面が、絶縁膜95によって覆われている。これにより、圧電体層70の水分(湿気)に起因する破壊が防止される。なお、絶縁膜95の材料としては、無機絶縁材料であれば、特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、五酸化タンタル(Ta2O5)等が挙げられるが、特に、酸化アルミニウム(Al2O3)を用いるのが好ましい。

0019

このような圧電素子300が形成された流路形成基板10には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300を保護するための圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤等によって接合されている。なお、圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動阻害しない程度の空間を確保できればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。また、保護基板30には、連通部13に対向する領域にリザーバ部32が設けられており、このリザーバ部32は、上述したように、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出され、これら下電極膜60及びリード電極90には、図示しないが、駆動ICから延設される接続配線の一端が接続される。

0020

保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラスセラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。

0021

保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。

0022

このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。

0023

以下、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3図6を参照して説明する。なお、図3図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。

0024

次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタリング法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。

0025

次いで、図3(c)に示すように、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等からなる下電極膜60を絶縁体膜55の全面に形成後、所定形状にパターニングする。例えば、本実施形態では、イリジウムからなる膜と、白金からなる膜とをスパッタリング法により積層し、積層された複数の膜を所定形状にパターニングすることにより下電極膜60とした。

0026

次に、図3(d)に示すように、下電極膜60及び絶縁体膜55上に、チタン(Ti)を、例えば、スパッタリング法等によって塗布することにより所定の厚さの種チタン層65を形成する。次に、この種チタン層65上に、圧電材料、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛PZT)からなる圧電体層70を形成する。なお、本実施形態では、金属有機物触媒に溶解・分散したいわゆるゾル塗布乾燥してゲル化し、さらに高温焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。また、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。

0027

圧電体層70の形成手順の一例としては、まず、図4(a)に示すように、種チタン層65上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、流路形成基板用ウェハ110上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する。次いで、圧電体前駆体膜71を、所定温度に加熱して一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒蒸発させることで圧電体前駆体膜71を乾燥させる。さらに、大気雰囲気下において一定の温度で一定時間、圧電体前駆体膜71を脱脂する。なお、ここで言う脱脂とは、ゾル膜の有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。

0028

そして、このような塗布・乾燥・脱脂の工程を、所定回数、例えば、2回繰り返すことで、図4(b)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定厚に形成し、この圧電体前駆体膜71を拡散炉等で加熱処理することによって結晶化させて圧電体膜72を形成する。すなわち、圧電体前駆体膜71を焼成することで種チタン層65を核として結晶が成長して圧電体膜72が形成される。なお、焼成温度は、650〜850℃程度であることが好ましく、例えば、本実施形態では、約700℃で30分間、圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成した。なお、このような条件で形成した圧電体膜72の結晶は(100)面に優先配向する。

0029

さらに、上述した塗布・乾燥・脱脂・焼成の工程を、複数回繰り返すことにより、図4(c)に示すように、例えば、5層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。

0030

なお、圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料に、ニオブニッケルマグネシウムビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等を用いてもよい。その組成は、圧電素子の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/3Ta2/3)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。

0031

このように圧電体層70を形成した後は、図5(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。このとき、本発明では、スパッタリング法、例えば、DC又はRFスパッタリング法によって、上電極膜80を、厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下であるように形成した。なおここでは、引張り方向の応力を正の値で示し、圧縮方向の応力を負の値で示す。

0032

上電極膜80の応力及び比抵抗が上記のような値となるようにするためには、上電極膜80を成膜する際のスパッタリング圧力を0.4〜1.5(Pa)とし、上電極膜80を成膜する際の温度、すなわち、流路形成基板用ウェハ110の加熱温度を、25℃(常温)〜250℃の範囲とする。これにより、上電極膜80を30〜100(nm)の厚さで形成することによって、上電極膜80の応力を所望の値とすることができ、また比抵抗も所望の値とすることができる。また、上電極膜80を成膜する際の温度を25℃(常温)〜250℃の範囲とすることで、上電極膜80を形成する際の熱による圧電体層70のダメージを防止して圧電体層70の圧電特性を良好に維持することができる。

0033

また、スパッタリング法によって上電極膜を成膜する際のパワー密度は、特に限定されないが、3〜30(kW/m2)の範囲とすることが好ましい。これにより、応力及び比抵抗を上記の値である上電極膜80をより確実に形成することができる。

0034

なお、上記の条件で上電極膜80を成膜することで、上電極膜80の比抵抗を2.0(×10−7Ω・m)以下とすることができるが、上電極膜80の比抵抗は、例えば、スパッタリング法によって上電極膜80を成膜する際に導入されるアルゴン(Ar)等のガス圧を変化させることによっても調整することができる。

0035

このように上電極膜80を形成した後は、図5(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。また、圧電素子300を形成した後は、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属層91を形成し、その後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して金属層91を圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電極90を形成する。

0036

次に、図5(d)に示すように、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)からなる絶縁膜95を形成する。すなわち、絶縁膜95を流路形成基板10の全面に形成し、その後、この絶縁膜95をイオンミリング等のドライエッチングによってパターニングして下電極膜60の接続部60a及びリード電極90の接続部90aとなる領域等を露出させる。

0037

次に、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。なお、この保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。

0038

次いで、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。次いで、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、このマスク膜52を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチングすることにより、図6(d)に示すように、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。

0039

なお、その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。

0040

以上説明したように、本発明では、圧電素子300を構成する上電極膜80を、その厚さが30〜100(nm)であって応力が0.3〜2.0(GPa)であり、且つ比抵抗が2.0(×10−7Ω・m)以下であるように形成するようにした。これにより、上電極膜80と圧電体層70との密着性が向上して上電極膜80の剥離が防止され、且つ圧電体層70の電気的特性が低下することもない。すなわち、上電極膜80は、圧縮方向の応力が強いと剥離し易く、一方、引張り方向の応力が強いと剥離し難いが圧電体層70の分極特性が低下する傾向にあるが、上述した条件で上電極膜80を形成することで、圧電体層70の電気的特性と上電極膜80の密着性とが何れも良好な圧電素子300が得られる。ちなみに、比抵抗は、2.0(×10−7Ω・m)以下であれば下限値は特に限定されないが、好ましくは、1.59(×10−7Ω・m)以上であることが好ましい。

0041

さらに、このような上電極膜80はその膜質も向上し表面が実質的に凹凸のない平滑な面となるため、絶縁膜95もこの上電極膜80上に均一な厚さで良好に形成され、その結果、絶縁膜95の剥離も防止される。したがって、変位特性及び耐久性に優れたアクチュエータ装置が得られ、長期に亘って良好な印刷品質を維持可能なインクジェット式記録ヘッドを実現することができる。

0042

ここで、下記表1に示す成膜条件で上電極膜であるIr膜を成膜した実施例1〜8及び比較例1〜15のアクチュエータ装置を作製し、これら各実施例及び比較例のアクチュエータ装置における上電極膜の最大反り方向の応力を測定すると、アクチュエータ装置の変位量、及び上電極膜(TE)の圧電体層との密着力を評価した。その結果を、下記表1に併せて示す。

0043

なお、アクチュエータ装置の変位量がおよそ210(nm)以下であると上記液体噴射ヘッドの構造においてインクの吐出特性に影響を及ぼす。このため、アクチュエータの変位量は、変位量は210(nm)以上であれば「良好」と評価し、210(nm)より小さい場合には「低下」(不良)と評価した。また、上電極膜(TE)の圧電体層との密着力は、アクチュエータ装置が作製された段階で上電極膜の状態を観察し、上電極膜の剥離の有無及び圧電体層との上電極膜との間の空間の有無によって評価した。すなわち、上記剥離及び空間が存在すれば「低下」(不良)と評価し、存在しなければ「良好」と評価した。

0044

0045

上記表1に示すように、実施例1〜8のアクチュエータ装置では、変位量及びTE密着力は何れも「良好」と評価されたが、比較例1〜15のアクチュエータ装置では、変位量又はTE密着力の少なくとも一方が「低下」と評価されている。この結果から明らかなように、本発明よれば、上電極膜80と圧電体層70との密着性を向上して上電極膜80の剥離を防止でき、且つ圧電体層70の電気的特性も良好に維持することができる。

0046

また、上記各実施例及び比較例のアクチュエータから任意に選択したアクチュエータ装置(実施例4及び比較例2のアクチュエータ装置)における圧電体層であるPZT薄膜残留分極(2Pr)を調べた結果を下記表2に示す。なお、下記表2には、Ir成膜条件、Ir応力、Ir比抵抗及びアクチュエータ装置の変位量を併せて示す。また、図7に実施例及び比較例のアクチュエータ装置におけるPZT薄膜(圧電体層)のヒステリシス曲線を示す。

0047

0048

上記表2に示すように、実施例のアクチュエータ装置では、PZT薄膜の残留分極(2Pr)とアクチュエータの変位量とは、共に良好な値を示しているが、比較例のアクチュエータ装置では、これらの値は、実施例のアクチュエータ装置に比べて何れも低くなっていた。また、図7に示すPZT薄膜のヒステリシス曲線からも、実施例のアクチュエータ装置の方が、比較例に比べて分極強度が大きいことが分かる。

0049

なお、上記表2に示した実施例は、スパッタ圧力(Pa)が0.4(Pa)としたものであるが、勿論、スパッタ圧力は0.4〜1.5(Pa)の範囲とすればよい。また、温度は250℃であるが、25〜250℃であればよい。これによりPZT薄膜の残留分極(2Pr)は、上記比較例よりも確実に高い数値となる。

0050

また、上電極膜80の材料としては、イリジウム(Ir)が用いていれていればよい。上電極膜80の具体的な態様としては、イリジウム(Ir)の単層からなるものに限定されず、イリジウム(Ir)を主成分とする合金層からなるものであってもよい。また、イリジウム(Ir)層又はイリジウム(Ir)を主成分とする合金層の圧電体層70と接する面とは反対側の面に他の層を積層して上電極膜80としてもよい。

0051

(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。

0052

また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図8は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図8に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。

0053

そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。

0054

なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。さらに、本発明は、液体噴射ヘッドに利用されるアクチュエータ装置だけでなく、例えば、センサ等、他のあらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置にも適用できることは言うまでもない。

図面の簡単な説明

0055

本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
実施例及び比較例に係るPZT薄膜のヒステリシス曲線である。
本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。

符号の説明

0056

10流路形成基板、 12圧力発生室、 13 連通部、 14インク供給路、 20ノズルプレート、 21ノズル開口、 30保護基板、 31圧電素子保持部、 32リザーバ部、 40コンプライアンス基板、 60下電極膜、 65種チタン層、 70圧電体層、 80上電極膜、 90リード電極、 95絶縁膜、 100 リザーバ、 300 圧電素子

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