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図面 (10)

課題

光エネルギ変換効率を高め、さらに低コスト化した半導体電極を提供する。また、光エネルギ変換効率を向上させたエネルギ変換システムを提供する。

解決手段

半導体材料から形成される半導体層3と、半導体層3上に設けられた金属元素イオンから形成される金属イオン層4と、を含むことを特徴とする。

概要

背景

太陽エネルギを有効に利用するために、太陽エネルギを利用し易い形態に変換、貯蔵する技術の開発が盛んに進められており、特に、太陽光を利用して水を分解して水素を製造する技術は、水素を燃料とする燃料電池自動車の早期実用化ための重要な技術となっている。

本多・嶋両博士は、1971年に二酸化チタン(TiO2)単結晶電極白金電極からなる電池系で、二酸化チタンにそのバンドギャップ以上の光を照射すると、水の水素と酸素への分解が起こること(本多−藤嶋効果)を報告した。これは人工光合成システム構築の可能性及び太陽光の化学エネルギへの変換、すなわち、水素というクリーンエネルギ生産の可能性を示すものであった。しかし、TiO2単結晶電極などの半導体電極を用いた水電解反応は、実際にはエネルギ変換効率が1%以下と低いことから実用化されず、エネルギ変換効率を高めるための研究が行われている。

その一つが、可視光領域の光を有効に利用できる可視光応答型光触媒の開発である。バンドギャップが3.2 eVである二酸化チタンは、波長388 nm以下の光を吸収するが、388 nmの波長は紫外領域である。図9の太陽光の波長スペクトル分布に示すように、388 nm以下の波長を持つ光のエネルギ量は、太陽光エネルギ全体の約4%とごく僅かにすぎず、二酸化チタンでは、太陽光のエネルギ全体の43%を占める可視光域(400nm-800nm)が有効に使われていない。

そこで、可視光応答性を有する光触媒として、そのバンドギャップが2.4 eVであり、可視光を吸収することが可能な光触媒BiVO4が開示されている(非特許文献1参照)。しかし、BiVO4の伝導帯電位は、水素の酸化還元電位よりも高く、可視光による水電解反応は起こらない。しかし犠牲試薬として硝酸銀を添加した水溶液中では、光を用いた酸素生成反応に高い活性を示す。

また、エネルギ変換効率を高めるために、量子収率(実際に化学変化をおこした電子数と吸収された光子数との比)を向上させる技術も開発されている。量子収率が低下する要因には、光吸収により生じた電子ホールとが半導体内部や溶液との界面で再結合すること、溶液界面において電子とホールとが目的反応と異なる反応により消費されてしまうことに起因するものがあるが、これらの要因を防ぐための改良が行われている。例えば、BiVO4を電極化した光電極を使用して、水素と酸素とが発生する場所を異なる電解槽とすることで、酸素の発生に伴う電極の不活性化を抑制して量子収率を高めた技術が開示されている(非特許文献2参照)。

さらに、粉末光触媒粒子助触媒(Ptなどの貴金属担持して、電荷分離を促進し、活性な反応サイトを形成することで、量子収率を向上させたものも開発されている。例えば、粉末のBiVO4粒子によるアルキルフェノール分解反応において、BiVO4粒子にAgまたはAg酸化物を担持したもの(非特許文献3参照)が開示されている。

また、電極に助触媒を担持した半導体電極も開発されており、例えば、TiO2電極に金属コロイド(Au、Ptなど)を担持したもの(非特許文献4参照)、Fe2O3光電極に貴金属属(Au、Ag)を担持したものが開示されている(非特許文献5参照)。
A. Kudo, K.Ueda, H. Kato, I. Mikami, Catal. Lett., 53(1998), 229
K. Sayama, A. Nomura, Z. Zou, R. Abe, H. Arakawa, Chem. Commun. (2003) 2908
S. Kohtani, J. Hiro, N. Yamamoto, A. Kudo, K. Tokumura, R. Nakagaki, Catal. commun. 6 (2005) 185
V. Subramanian, E. Wolf, and P. V. Kamat, J. Phys. Chem. B, 105 (2001) 11439
A.Watanabe,H.Kozuka,J.Phys.Chem.B,107(2003)12713.

概要

光エネルギ変換効率を高め、さらに低コスト化した半導体電極を提供する。また、光エネルギ変換効率を向上させたエネルギ変換システムを提供する。半導体材料から形成される半導体層3と、半導体層3上に設けられた金属元素イオンから形成される金属イオン層4と、を含むことを特徴とする。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

半導体材料から形成される半導体層と、前記半導体層上に設けられた金属元素イオンから形成される金属イオン層と、を含むことを特徴とする半導体電極

請求項2

前記金属元素イオンは、遷移金属イオンの中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の半導体電極。

請求項3

前記半導体材料は、BiまたはVの少なくとも一方の元素を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体電極。

請求項4

前記半導体材料は、BiVO4であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体電極。

請求項5

前記半導体材料は、LaをドープしたBiVO4であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体電極。

請求項6

前記金属元素イオンは、Ag+、Cr3+ 、Pd2+、Au3+、Rh3+、Fe3+ の中から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4又は5記載の半導体電極。

請求項7

前記金属イオンを含む溶液中に、前記半導体材料から形成される半導体層を1〜20時間浸漬して得られたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体電極。

請求項8

半導体材料から形成される半導体層と、前記半導体層上に設けられた金属元素イオンから形成される金属イオン層と、を含む半導体電極に光を照射して、得られた光エネルギにより光触媒反応を起こすことを特徴とするエネルギ変換システム

請求項9

前記半導体電極に光を照射して得られた光エネルギから水を分解して水素を製造することを特徴とする請求項8記載のエネルギ変換システム。

技術分野

0001

本発明は、太陽光に代表される光エネルギを利用して水または有機物などの分解を行う半導体電極とそれを用いたエネルギ変換システムに関する。

背景技術

0002

太陽エネルギを有効に利用するために、太陽エネルギを利用し易い形態に変換、貯蔵する技術の開発が盛んに進められており、特に、太陽光を利用して水を分解して水素を製造する技術は、水素を燃料とする燃料電池自動車の早期実用化ための重要な技術となっている。

0003

本多・嶋両博士は、1971年に二酸化チタン(TiO2)単結晶電極白金電極からなる電池系で、二酸化チタンにそのバンドギャップ以上の光を照射すると、水の水素と酸素への分解が起こること(本多−藤嶋効果)を報告した。これは人工光合成システム構築の可能性及び太陽光の化学エネルギへの変換、すなわち、水素というクリーンエネルギ生産の可能性を示すものであった。しかし、TiO2単結晶電極などの半導体電極を用いた水電解反応は、実際にはエネルギ変換効率が1%以下と低いことから実用化されず、エネルギ変換効率を高めるための研究が行われている。

0004

その一つが、可視光領域の光を有効に利用できる可視光応答型光触媒の開発である。バンドギャップが3.2 eVである二酸化チタンは、波長388 nm以下の光を吸収するが、388 nmの波長は紫外領域である。図9の太陽光の波長スペクトル分布に示すように、388 nm以下の波長を持つ光のエネルギ量は、太陽光エネルギ全体の約4%とごく僅かにすぎず、二酸化チタンでは、太陽光のエネルギ全体の43%を占める可視光域(400nm-800nm)が有効に使われていない。

0005

そこで、可視光応答性を有する光触媒として、そのバンドギャップが2.4 eVであり、可視光を吸収することが可能な光触媒BiVO4が開示されている(非特許文献1参照)。しかし、BiVO4の伝導帯電位は、水素の酸化還元電位よりも高く、可視光による水電解反応は起こらない。しかし犠牲試薬として硝酸銀を添加した水溶液中では、光を用いた酸素生成反応に高い活性を示す。

0006

また、エネルギ変換効率を高めるために、量子収率(実際に化学変化をおこした電子数と吸収された光子数との比)を向上させる技術も開発されている。量子収率が低下する要因には、光吸収により生じた電子ホールとが半導体内部や溶液との界面で再結合すること、溶液界面において電子とホールとが目的反応と異なる反応により消費されてしまうことに起因するものがあるが、これらの要因を防ぐための改良が行われている。例えば、BiVO4を電極化した光電極を使用して、水素と酸素とが発生する場所を異なる電解槽とすることで、酸素の発生に伴う電極の不活性化を抑制して量子収率を高めた技術が開示されている(非特許文献2参照)。

0007

さらに、粉末光触媒粒子助触媒(Ptなどの貴金属担持して、電荷分離を促進し、活性な反応サイトを形成することで、量子収率を向上させたものも開発されている。例えば、粉末のBiVO4粒子によるアルキルフェノール分解反応において、BiVO4粒子にAgまたはAg酸化物を担持したもの(非特許文献3参照)が開示されている。

0008

また、電極に助触媒を担持した半導体電極も開発されており、例えば、TiO2電極に金属コロイド(Au、Ptなど)を担持したもの(非特許文献4参照)、Fe2O3光電極に貴金属属(Au、Ag)を担持したものが開示されている(非特許文献5参照)。
A. Kudo, K.Ueda, H. Kato, I. Mikami, Catal. Lett., 53(1998), 229
K. Sayama, A. Nomura, Z. Zou, R. Abe, H. Arakawa, Chem. Commun. (2003) 2908
S. Kohtani, J. Hiro, N. Yamamoto, A. Kudo, K. Tokumura, R. Nakagaki, Catal. commun. 6 (2005) 185
V. Subramanian, E. Wolf, and P. V. Kamat, J. Phys. Chem. B, 105 (2001) 11439
A.Watanabe,H.Kozuka,J.Phys.Chem.B,107(2003)12713.

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、前述したいずれの半導体電極を用いた場合においても、エネルギ変換効率を向上させることは難しかった。

0010

前述した非特許文献3には、Agの担持方法として、粉末のBiVO4粒子をAgNO3水溶液に浸漬した後、光を照射してBiVO4粒子にAgを析出させる方法や、AgNO3水溶液と粉末のBiVO4粒子とを混合した水溶液を攪拌しながら水を蒸発させた後、さらにバーナーで加熱して、NO3-の分解後に水素気流下でAgを還元してAgOあるいはAg2OをBiVO4粒子に形成する方法も開示されている。しかし、このような方法では、粉末の光触媒粒子に助触媒を担持させる工程が複雑であり、さらに助触媒である貴金属の担持量が増加してしまい、コストが高騰する恐れを有していた。

0011

また、非特許文献4、非特許文献5に示すように、光電極に貴金属を担持した半導体電極とした場合には、非常に微弱光でのみ金の光電流が僅かに向上するものであり、太陽光並みの強い光を半導体電極に照射すると光電流値が増加せず、光エネルギ変換効率を向上させることは難しかった。

0012

このように粉末の光触媒と光電極とでは、使用材料は非常に似ているが、電荷分離過程反応機構が大きく異なり、光触媒での知見がそのまま光電極に生かされるとは限らない。特に、TiO2光電極を用いた場合には、TiO2光電極に助触媒を担持したても、酸素の発生を促進することができないという報告もなされている(「光触媒」、NTS出版、2.1章、P309参照)。

課題を解決するための手段

0013

本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、本発明の半導体電極は、半導体材料から形成される半導体層と、半導体層上に設けられた金属元素イオンから形成される金属イオン層と、を含むことを要旨とする。

0014

本発明のエネルギ変換システムは、上記半導体電極を用いて、半導体電極に光を照射し、その光エネルギにより光触媒反応を起こすことを要旨とする。

発明の効果

0015

本発明の半導体電極によれば、金属元素イオンを半導体層表面吸着などにより付加させることにより、光エネルギ変換効率を高め、さらに低コスト化することができる。

0016

本発明のエネルギ変換システムによれば、光エネルギ変換効率を向上させることができる。

発明を実施するための最良の形態

0017

以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る半導体電極とそれを用いたエネルギ変換システムについて説明をする。

0018

本発明の実施の形態に係る半導体電極の拡大断面図を図1に示す。半導体電極1は、導電性ガラスから形成される基材2と、基材2上に設けられた半導体材料から形成される半導体層3と、半導体層3表面に金属イオンが吸着されて形成された金属イオン層4とを有する。

0019

ここで、半導体層3上に金属イオン層4を形成した構成としたが、本発明の半導体電極は、図1に示す形態に限定されず、半導体層3の表面部に存在する金属と、金属イオンの一部とが置換されて、半導体層3の表面部に金属イオンを内在させた状態にしても良い。さらに、半導体層3の周囲に金属イオンが存在する形態は、前述したどちらか一方の状態に限定されず、両者が混在した状態となり半導体層3の表面に金属イオンが存在しても良く、半導体層3表面に金属イオンを付加させた状態であれば良い。この金属イオンの付加により、電荷分離が促進されて活性な反応サイトが形成されるため、量子収率が向上し、エネルギ変換効率が高まる。

0020

金属元素イオンとしては、遷移金属イオン、具体的にはAg+、Cr3+、Pd2+、Au3+、Rh3+、Fe3+ 、Ru2+、Pt2+、Cu2+、Ni2+の中から選択される一種を用いることが好ましい。

0021

半導体材料としては、TiO2、WO3、SrTiO3、ZrO3、KTaO3、InTaO4、Nb2O5、BiVO4の中から選択される酸化物半導体を用いることができ、特に、金属元素イオンが吸着するBiまたはVの元素を含む半導体とすることが好ましく、例えば、BiVO4を挙げることができる。さらに、LaをドープしたBiVO4を用いても良い。なお半導体材料はこれらに限定されるものではないが、BiVO4、LaをドープしたBiVO4を用いた場合には金属元素イオンとしてはAg+、Cr3+、Pd2+、Au3+、Rh3+、Fe3+の中から選択される一種を用いることが好ましい。さらには例示示した中でも、特に、Ag+、Cr3+が好ましく、光電流値の増加効果を長期間に亘り得ることができ、エネルギの変換効率が向上する。

0022

基材2としては、導電性ガラスを用いたが、導電性ガラスに限定されず金属板を用いても良い。

0023

また、半導体電極1は、金属塩水溶液中に、半導体材料から成る半導体層3を1〜20時間浸漬して得られることが好ましい。その際、金属塩水溶液の金属イオン濃度は溶解度以下(例えば金属塩に硝酸銀を用いる場合には3.95mol/l以下)となり、さらに0.05mol/l以上0.5mol/l以下の範囲とすることが好ましい。

0024

さらに、本発明の実施の形態に係る半導体電極を用いたエネルギ変換システムの一例である水分解水素製造装置5の構成を図2に示す。水分解水素製造装置5は、水槽6内に半導体電極1(作用極)と対極7(例えば、Pt電極カーボン電極)を配置し、半導体電極1と対極7とに導線を接続して外部短絡線8を構成している。外部短絡線8には、ポテンショスタット9と電流計10とが設けられ、ポテンションスタット9によって半導体電極1と対極7との間の電位差を制御し、それによって回路中に生じる電流を電流計10によって計測している。また、水槽6には、電解反応溶液抵抗下げるための安定な支持電解質11(例えば、Na2SO4水溶液)を貯留している。さらに、水槽6外部には人工光源であるキセノンランプ12が設置され、キセノンランプ12から半導体電極1(作用極)に光13を照射して光水電解を行なう。

0025

ここで、対極7としては、反応に合わせた材料を選択することができ、水素を発生させるためには、水素発生過電圧の低いPt電極、カーボン電極を用いることが有効であるが、安価なCo-Mo電極を用いても良い。

0026

支持電解質11としては、一般的に電解反応の支持電解質として用いられるNaOH、Na2SO4、H2SO4、Na2HPO4を用いることができる。

0027

図2に示す水分解水素製造装置5によりn型半導体であるBiVO4を半導体電極として用いて水を分解する動作原理について、図3により説明する。半導体電極1に光13を照射すると、半導体電極1に光が吸収されて、伝導帯に電子が生成し、価電子帯に正孔14が生成する。半導体電極1の表面に移動した正孔14は、化1に示す反応により、水を酸化して酸素を生成する。

0028

H2O→2H++1/2O2+2e− …(化1)
一方、生成した電子(e−)15は、半導体電極1中の基材2に移動した後、外部短絡線10を通り対極9に移動する。その際BiVO4の伝導体は水素の発生電位0V(vs.SHE)よりも高いため、バイアス電位をかけて電子のエネルギを高くする。この電子15は、対極9上に水を還元し、化2に示す反応によって水素17を生成する。

0029

2H++2e−→H2 …(化2)
この結果、水が分解されて、半導体電極1(作用極)において酸素が生成し、対極7において水素が生成する。

0030

また、図4に、バイアスがない場合の光水電解のバンド構造を示す。このようにバイアスなしで光水電解反応を進行させるためには、次の3条件を満たす半導体材料を用いる必要がある。まず第1に、価電子帯上端エネルギ準位酸素発生電位(1.23 V vs. SHE)よりもエネルギ的に充分に低く、第2に、伝導帯下端のエネルギ準位が水素発生電位(0 V vs. SHE)よりもエネルギ的に充分に高く、第3に、価電子帯に生じたホールが半導体自身を酸化しないことである。なお、第1と第2の条件で挙げた充分とは、水電解反応が確認される程度に水素発生または酸素発生過電圧をかけることが可能であることを意味する。

0031

図5は、各種半導体(TiO2を含む)のバンド構造を示す図である。前述の第1から第3までの条件を満たし、光水電解反応が進行する半導体は、図5からも明らかなように、チタン酸塩(MTiO3)、タンタル酸塩(MTaO3)、ニオブ酸塩(M4Nb6O17)などに限られる。例えば、CdS、CdSeなどの化合物半導体は、価電子帯に生じたホールが自分自身を酸化してしまい、水中での反応が定常的に行なわれないため用いることができない。

0032

さらに、ここでは、半導体電極を用いたエネルギ変換システムとして水分解水素製造装置5を例に挙げて説明したが、これは、金属元素イオンが付加されない半導体電極を用いた場合と比べて、金属元素イオンの付加により、特に水分解反応の光エネルギ変換効率が向上するからである。しかし、本発明の実施の形態に係るエネルギ変換システムは、水分解水素製造装置に限定されず、有機物の分解をする有機物分解装置の一部に半導体電極を用いても良い。

0033

さらに、具体的に実施例を用いて説明をするが、本発明の半導体電極は、例示した実施例に限定されるものではない。

0034

まず、Bi(NO3)3・5H2Oの酢酸溶液(ca0.2 mol/L)とVO(acac)2(0.03 mol/L)のアセチルアセトン溶液とを、Bi:V=1:1の割合で混合して前駆体溶液とした。得られた前駆体溶液を導電性ガラス(F-SnO2,日本板硝子)にスピンコート法で塗布した後、乾燥し、その後、500℃で30分間焼成した。この工程を6回繰り返して、導電性ガラス上に、厚さ約500 nmのBiVO4から成る半導体層を形成した。XRDにより半導体層を観察したところ、BiVO4のmonoclinic相であることが確認された。

0035

その後、得られた導電性ガラス上にBiVO4から成る半導体層が形成された光電極を、所定濃度の金属塩水溶液に入れて、遮光下において12時間浸漬した。ここで、所定濃度の金属塩水溶液として、金属塩の種類とその濃度を表1に示すように変えた。添加金属イオンとして、Ag+、Pd2+、Cr3+、Au3+、Rh3+、Fe3+を用いたものを実施例1〜実施例6とし、添加金属イオンとして、Ru2+、Pt2+、Cu2+、Ni2+を用いたものを参考例1〜参考例4とし、未処理のものを比較例1とした。

0036

得られた半導体電極についてのAg元素担持量をXRF(X-ray Fluorescence Spectrometer)で測定したところ、Ag元素の担持量が1 wt%以下であり、従来技術として挙げた参考文献3に記載されたものに比べて低いことが判明した。

0037

また、実施例1〜実施例6、参考例1〜参考例4及び比較例1の半導体電極について光電流測定試験を行い、光電流値を求めて性能を比較した。なお、光電流測定試験をする際に、図2に示す実験装置を用いて、作用極として半導体電極、対極としてPt電極、支持電解質として濃度0.1 mol/LのNa2SO4水溶液、半導体電極に光を照射する光源としてキセノンランプ(300 W)を用いた。

0038

この実験装置を用いて、対極に対して作用極の電位を1.2Vと設定したときの光電流密度経時変化を測定した。表2に測定結果を示し、得られたデータを図6に図示した。なお、横軸に時間、縦軸に光電流値を示した。

0039

図6に示すように、添加する金属イオンの種類を変えて、半導体層の表面に金属イオンを吸着させた実施例1〜実施例6の半導体電極は、約1600時間経過後には、比較例1の未処理品と同等あるいはそれ以上の光電流値を示していた。また、Ag+、Cr3+を吸着させた実施例1と実施例3は、比較例1と比べて2倍以上の光電流値が得られ、特に、実施例1は、比較例1に比べて最大約4倍の光電流値が得られ、その効果は今回の計測時間内では定常的に持続していることが判明した。また、Pd2+、Au3+、Rh3+、Fe3+ を半導体層表面に吸着させて半導体電極とした実施例2及び実施例4〜実施例6では、定常的に光電流値が増加していることが判明した。なお、参考例1〜参考例4の金属イオンでは、光電流値の増加する効果を得ることができなかった。

0040

ここで、光電流の増加効果が現れたAg+を付加した半導体電極である実施例1について、さらに長時間に亘って光電流値を測定した。測定結果を図7に示す。図7に示すように、Ag+を半導体層表面に吸着させた実施例1の半導体電極は、未処理電極を使用した比較例1に比べて、光電流特性経時劣化が小さく、1時間後にはその差が約10倍であることが確認された。

0041

さらに、実施例1と比較例1について、光電流計実験時での対極(Pt極)7からの水素ガス発生量と、半導体電極1からの酸素ガス発生量を比較した結果を図8に示す。なお、横軸に時間、縦軸に発生したガスの量を示す。図8から明らかなように、水素ガスと酸素ガスの発生量の割合は2:1であり、比較例1に比べて実施例1の水素発生量酸素発生量が増加していることが判明した。この結果から、図6図7から観察された増加した光電流は、水を分解する反応に使用されていることが示唆された。

0042

以上説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体電極と、前述した非特許文献3、非特許文献4に示した光電極とでは、光電流を増加させる機構が異なる、すなわち、金属イオン(Ag+)を半導体に吸着させたものと、粉末の光触媒又は光電極に金属(Ag)を吸着させたものとは、異なる機構であることを説明する。なお、以下の記述は、現段階で得られた結果から想定される原因を示したものであり、本発明の適用範囲を限定するものではない。

0043

XPSの測定から、銀塩に浸漬後の光電極BiVO4表面に吸着したAgは、金属イオン(Ag+)の状態であった。その後、0.1 mol/LのNa2SO4水溶液中にて光電極BiVO4を1時間光照射するとAg+の吸着量は減少していたが、Ag+はメタル状態ではなかった。Ag+を吸着させた光電極BiVO4の1時間経過後の光電流値は、未処理電極の光電流値よりも5倍以上高く、僅かなAg+を吸着させても光電流の増加には効果的であることが判明した。1時間光電極BiVO4を光照射して反応を続けると、BiVO4およびAgに対するTON(BiVO4のモル数に対する流れた総電流量)は、1時間で200倍および18000倍以上となっていた。この結果から、光電流は、BiVO4自体の酸化によって生じるものではなく、水の光水電解に用いられていることが判明した。

0044

非特許文献3のBiVO4光触媒では、Agを担持するとアルキルフェノール分解活性が向上することが報告されている。その理由は、基質の吸着、電荷分離、レドックス反応を促進させる効果があることによるものと説明されている。これに対して、本発明の半導体電極では、その表面処理後に(金属)Agの存在は確認されないことからも、一般的なメタル−半導体での電荷分離を促進したものではない。また、BiVO4光触媒は、Ag+を効率的に還元してAgをメタル状態とするため、Ag+がBiVO4の還元サイトに吸着している場合には、Ag+はすぐメタル状態になるはずだが、本発明の半導体電極ではAgがメタル状態とはなっておらず、Ag-BiVO4触媒においても表面が酸化された銀が酸化サイトとして安定に働いている。本発明の半導体電極では、Ag+が酸化サイトに吸着することで安定化し、酸化反応、つまり酸素発生を促進しているものであると考えられる。

0045

以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明の主旨に沿うものであれば、これらの構成及び文言に限定されず、本発明の思想に含まれることは言うまでもない。例えば、実施例では、金属塩水溶液中に浸漬して半導体層の表面に金属イオンを付加した半導体電極を用いて、ホールにより酸化される物質として水を挙げて水電解反応を説明したが、水電解反応に限定されない。例えば、ホールにより酸化される物質として、工場廃水など有機物を含む電解質を用いても良く、有機物を分解するものとしても良い。さらに、本実施例では、光電極での適用例について述べたが、光触媒粉末にも用いることも可能である。

図面の簡単な説明

0046

本発明の実施の形態に係る半導体電極の拡大断面図である。
本発明の実施の形態に係る半導体電極を用いたエネルギ変換システムの一例である水分解水素製造装置を示す構成図である。
図2に示す水分解水素製造装置において、水を分解する原理を説明する図である。
バイアスがない場合の光水電解のバンド構造を示す図である。
各種半導体(TiO2を含む)のバンド構造を示す図である。
光電流密度の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
実施例1について、長時間光電流値を測定した結果を示すグラフである。
実施例1及び比較例1における、水素(H2)ガスと酸素(O2)ガスとの発生量を示すグラフである。
太陽光の波長スペクトル分布を示す図である。

符号の説明

0047

1…半導体電極,
2…基材,
3…半導体層,
4…金属イオン層,

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