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課題
解決手段
概要
背景
内視鏡検査により食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁における粘膜部分に腫瘍等といった病変部が発見された場合、高周波処置具を用いてこの病変粘膜の部位を切除する処置が行われる。この場合、処置の安全性を確保するために、内視鏡による観察下において処置を行うが、このために用いられる高周波処置具は内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通させて処置すべき部位に導くようにする。ここで、体腔内壁において、粘膜層の下部には粘膜下層が存在しており、筋層はこの粘膜下層により覆われている。そして、高周波処置具を用いて病変粘膜層を切開して除去する処置は、病変部に取り残しがないようにしなければならず、また筋層には何等のダメージを与えないようにしなければならない。
粘膜層の切開に用いられる高周波処置具は、棒状部を有する電極部材からなる高周波ナイフを可撓性シース内に装着することにより構成され、可撓性シースの基端部には操作手段が連結されており、この操作手段による遠隔操作で高周波ナイフを可撓性シースの先端から出没するように制御できる構成としている。可撓性シースから突出させた高周波ナイフに通電することによって、粘膜を焼灼して切開することができる。
高周波ナイフを構成する電極部材の構造としては、棒状の電極部材を真っ直ぐ延在させた針状ナイフと、棒状の電極部材の先端に大径電極部を連設するかまたは先端を概略L字状に曲折することによりフック部を形成したフックナイフとがある。針状ナイフは、粘膜を突き刺すように操作され、また電極部材を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより粘膜等を切開することができる。一方、フックナイフは粘膜等の組織を先端のフック部で引っ掛けて、内視鏡の挿入部側に引き込むように動作させることにより切開が行われることになる。
既に説明したように、高周波ナイフの通電時に、この高周波ナイフが筋層に対しては確実に非接触状態に保たれなければならない。針状ナイフを用いる場合には、この針状ナイフが可撓性シースの前方に位置しており、しかも粘膜に刺入されることになるから、処置を行う際に針状ナイフの先端が内視鏡の観察視野により捉えることができないことがある。従って、針状ナイフの可撓性シースからの突出長さ及びその方向が正確に制御されない限り、処置の安全性が確保できないことになる。
これに対して、フックナイフは、内視鏡の観察下でフックナイフを粘膜等に引っ掛けるようになし、次いでこのフックナイフに高周波電流を流しながら処置具挿通チャンネル内に引き込むように動作させることによって粘膜を切開することになる。従って、フックナイフを操作している間は、このフックナイフの先端部を常に内視鏡の観察下で行うことができるので、通電状態にしたときに筋層に接触しないように操作することができる。
ただし、フックナイフを用いる場合において、粘膜等の組織を引っ掛ける操作を円滑に行うために、フックナイフの先端部分の安定性が得られなければならない。そこで、作動時におけるフックナイフの安定を図る機構を備える構成としたものが特許文献1に提案されている。この特許文献1の高周波処置具は、可撓性シースの先端に電気絶縁部材を装着し、この電気絶縁部材に透孔を設けて、フックナイフを構成する電極部材における棒状の部位をこの透孔に挿通させるようになし、また先端のフック部は電気絶縁部材の先端外面に接離可能となっている。通電時には電極部材を可撓性シースから所定の長さ突出させるが、透孔の孔径と電極部材の外径との間の径差を最小限となし、しかも電極部材の突出長を規制することによって、電極部材を安定的に保持する構成としている。
また、前述した電極部材を用いて病変部を切開する処置を施している間には出血が生じる場合があり、このために病変部が確認できなくなるおそれがある。そこで、電気絶縁部材に電極部材を挿通させる透孔とは別の開口を形成するか、または透孔を十字形状乃至三角形状とすることによって、電極部材の棒状部が進入できない液体流出部を形成している。可撓性シースの基端部にシリンジを接続して、このシリンジに生理食塩水を充填し、このシリンジを操作することによって、出血部に向けて液体流出部から生理食塩水を噴出させて洗浄することができる。
特開2004−313537号公報
概要
粘膜剥離等の処置を効率的に行うために、針状ナイフを用いた高周波処置具を簡単な構成で形成でき、しかも処置の安全性を確保する。 可撓性シース2の先端部に硬質筒体20が挿入・固定され、この硬質筒体20には、針状ナイフ13の外径より大きい孔径の貫通孔21が形成されており、前端面20aは可撓性シース2の先端面2aとほぼ同一の平面を形成して円環状端壁Pとなり、硬質筒体20の後端面20bはテーパ面で、針状ナイフ13にストッパ突起22が設けられ、その前端面22aがテーパ面に当接可能な傾斜面となっており、これにより針状ナイフ13の突出長さが規制され、また相隣接するストッパ突起22,22間には連通路24が形成される。
目的
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、針状ナイフを用いた簡単な構成の高周波処置具によって、安全かつ効率的な処置を可能にすることにある。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 3件
- 牽制数
- 4件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿通可能な可撓性シースと、この可撓性シースの内部に設けられ、可撓性コードの先端に高周波電流が印加される針状の電極からなる高周波ナイフを設けた処置具本体とから構成した高周波処置具において、前記可撓性シース内には、前端面がこの可撓性シースの先端面と概略同一平面をなすようにして電気絶縁性を有する硬質筒体が挿入固定されており、前記硬質筒体は前記高周波ナイフの外径より大きい孔径を有するものであって、その後端部を外周側から内周縁に向けて内向きに傾斜するテーパ面形状となし、前記高周波ナイフの軸線方向の所定位置に複数のストッパ突起が放射状に設けられており、これら各ストッパ突起の前端面は前記硬質筒体のテーパ面に対応する傾斜部となり、前記高周波ナイフを前記硬質筒体から突出させて、前記ストッパ突起の傾斜部が前記硬質筒体のテーパ面に当接したときに、相隣接するストッパ突起間に前記可撓性シースの内外を連通させる連通路が形成される構成としたことを特徴とする高周波処置具。
請求項2
前記硬質筒体はセラミックで形成され、前記ストッパ突起は金属で形成されていることを特徴とする請求項1記載の高周波処置具。
請求項3
技術分野
背景技術
0002
内視鏡検査により食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁における粘膜部分に腫瘍等といった病変部が発見された場合、高周波処置具を用いてこの病変粘膜の部位を切除する処置が行われる。この場合、処置の安全性を確保するために、内視鏡による観察下において処置を行うが、このために用いられる高周波処置具は内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通させて処置すべき部位に導くようにする。ここで、体腔内壁において、粘膜層の下部には粘膜下層が存在しており、筋層はこの粘膜下層により覆われている。そして、高周波処置具を用いて病変粘膜層を切開して除去する処置は、病変部に取り残しがないようにしなければならず、また筋層には何等のダメージを与えないようにしなければならない。
0003
粘膜層の切開に用いられる高周波処置具は、棒状部を有する電極部材からなる高周波ナイフを可撓性シース内に装着することにより構成され、可撓性シースの基端部には操作手段が連結されており、この操作手段による遠隔操作で高周波ナイフを可撓性シースの先端から出没するように制御できる構成としている。可撓性シースから突出させた高周波ナイフに通電することによって、粘膜を焼灼して切開することができる。
0004
高周波ナイフを構成する電極部材の構造としては、棒状の電極部材を真っ直ぐ延在させた針状ナイフと、棒状の電極部材の先端に大径電極部を連設するかまたは先端を概略L字状に曲折することによりフック部を形成したフックナイフとがある。針状ナイフは、粘膜を突き刺すように操作され、また電極部材を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより粘膜等を切開することができる。一方、フックナイフは粘膜等の組織を先端のフック部で引っ掛けて、内視鏡の挿入部側に引き込むように動作させることにより切開が行われることになる。
0005
既に説明したように、高周波ナイフの通電時に、この高周波ナイフが筋層に対しては確実に非接触状態に保たれなければならない。針状ナイフを用いる場合には、この針状ナイフが可撓性シースの前方に位置しており、しかも粘膜に刺入されることになるから、処置を行う際に針状ナイフの先端が内視鏡の観察視野により捉えることができないことがある。従って、針状ナイフの可撓性シースからの突出長さ及びその方向が正確に制御されない限り、処置の安全性が確保できないことになる。
0006
これに対して、フックナイフは、内視鏡の観察下でフックナイフを粘膜等に引っ掛けるようになし、次いでこのフックナイフに高周波電流を流しながら処置具挿通チャンネル内に引き込むように動作させることによって粘膜を切開することになる。従って、フックナイフを操作している間は、このフックナイフの先端部を常に内視鏡の観察下で行うことができるので、通電状態にしたときに筋層に接触しないように操作することができる。
0007
ただし、フックナイフを用いる場合において、粘膜等の組織を引っ掛ける操作を円滑に行うために、フックナイフの先端部分の安定性が得られなければならない。そこで、作動時におけるフックナイフの安定を図る機構を備える構成としたものが特許文献1に提案されている。この特許文献1の高周波処置具は、可撓性シースの先端に電気絶縁部材を装着し、この電気絶縁部材に透孔を設けて、フックナイフを構成する電極部材における棒状の部位をこの透孔に挿通させるようになし、また先端のフック部は電気絶縁部材の先端外面に接離可能となっている。通電時には電極部材を可撓性シースから所定の長さ突出させるが、透孔の孔径と電極部材の外径との間の径差を最小限となし、しかも電極部材の突出長を規制することによって、電極部材を安定的に保持する構成としている。
0008
また、前述した電極部材を用いて病変部を切開する処置を施している間には出血が生じる場合があり、このために病変部が確認できなくなるおそれがある。そこで、電気絶縁部材に電極部材を挿通させる透孔とは別の開口を形成するか、または透孔を十字形状乃至三角形状とすることによって、電極部材の棒状部が進入できない液体流出部を形成している。可撓性シースの基端部にシリンジを接続して、このシリンジに生理食塩水を充填し、このシリンジを操作することによって、出血部に向けて液体流出部から生理食塩水を噴出させて洗浄することができる。
特開2004−313537号公報
発明が解決しようとする課題
0009
ところで、電極部材を構成するフックナイフにより粘膜や粘膜下層を引っ掛けて処置具挿通チャンネル内に向けて引き込むように操作し、次いでフックナイフに通電することにより、組織を焼灼して切断し、再び処置具挿通チャンネルからフックナイフを導出させるという操作を繰り返し行うことから、その操作が複雑かつ面倒になり、操作の効率性が得られない。従って、病変粘膜を除去する処置に長い時間が必要となり、その分だけ被検者の苦痛及び術者の負担が増大するおそれがある。また、フック部は常に外部に露出した状態となっており、例えば処置具挿通チャンネルに挿入する操作を行っている間に、電極部材に誤って通電されると、チャンネル内壁を損傷させる等といった問題点もある。
0010
また、可撓性シースの先端に設けた電気絶縁部材には、電極部材が進入できない流体流出部を形成するために、複数の透孔を形成するか、または複雑な形状の透孔を形成している。ここで、電気絶縁部材は耐熱性の良好なもので形成する必要があり、このためにセラミックで形成するのが望ましいが、このセラミックに前述した形状の透孔を形成するのは困難であるという問題点もある。
0011
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、針状ナイフを用いた簡単な構成の高周波処置具によって、安全かつ効率的な処置を可能にすることにある。
課題を解決するための手段
0012
前述の目的を達成するために、本発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿通可能な可撓性シースと、この可撓性シースの内部に設けられ、可撓性コードの先端に高周波電流が印加される針状の電極からなる高周波ナイフを設けた処置具本体とから構成した高周波処置具であって、前記可撓性シース内には、前端面がこの可撓性シースの先端面と概略同一平面をなすようにして電気絶縁性を有する硬質筒体が挿入固定されており、前記硬質筒体は前記高周波ナイフの外径より大きい孔径を有するものであって、その後端部を外周側から内周縁に向けて内向きに傾斜するテーパ面形状となし、前記高周波ナイフの軸線方向の所定位置に複数のストッパ突起が放射状に設けられており、これら各ストッパ突起の前端面は前記硬質筒体のテーパ面に対応する傾斜部となり、前記高周波ナイフを前記硬質筒体から突出させて、前記ストッパ突起の傾斜部が前記硬質筒体のテーパ面に当接したときに、相隣接するストッパ突起間に前記可撓性シースの内外を連通させる連通路が形成される構成としたことをその特徴とするものである。
0013
可撓性シースに固定的に設けた硬質筒体は、内部に高周波ナイフを挿通させる孔径を有する貫通孔を設けた円筒形状の部材であって、その後端部をテーパ面としたものであり、極めて簡単な形状のものである。ここで、硬質筒体の後端面を構成するテーパ面は高周波ナイフを貫通孔に呼び込むための呼び込みテーパ面として機能する。従って、硬質筒体の外周縁からテーパ面を形成しても良く、また途中からテーパ面を形成することもできる。ただし、外周縁からテーパ面までの距離は、高周波ナイフの先端部の半径より短いものとなし、また内周縁にまでテーパ面とする必要はある。
0014
高周波ナイフには、その先端から所定の間隔だけ離れた位置にストッパ突起が形成されている。このストッパ突起は少なくとも2箇所設けられ、好ましくは120°の間隔で3箇所、または90°の間隔で4箇所設けられる。このストッパ突起は硬質筒体のテーパ面と接離するものであり、高周波ナイフを可撓性シースから突出させると、ストッパ突起とテーパ面とが面接触して、可撓性シースの先端面からの突出長さを規制するストッパとして機能し、また高周波ナイフを可撓性シースの中心軸線の位置に向けて確実にガイドし、この中心軸線上に安定的に保持するための機能とを発揮する。さらに、ストッパ突起が硬質筒体の基端部に当接した最突出状態においても、硬質筒体の内径部には、相隣接するストッパ突起間の部位に、処置を施している部位に向けて送液したり、吸引したりするための連通路が形成される。なお、ストッパ突起の前端面の傾斜角と硬質筒体のテーパ角とはほぼ一致しているのが望ましいが、前述した機能が損なわれない限り、角度に多少の違いがあっても良い。
0015
前述したように、硬質筒体は電気絶縁部材で形成されるが、耐熱性も必要になる。従って、この硬質筒体を合成樹脂で形成することもできるが、簡単な円筒形状の部材であるから、加工性を素材の要件とする必要はない。このために、加工が困難なセラミックであっても容易に硬質筒体を形成することができる。一方、ストッパ突起は硬質部材とするが、必ずしも電気絶縁部材で形成する必要はない。従って、例えば加工が容易な金属材で形成することができる。
0016
可撓性シースの先端面と硬質筒体の前端面とを同一平面とすることによって、体腔内壁への当接面となる円環状端壁が形成される。処置具本体を体腔内壁に当接させたときに、その面圧をできるだけ小さくするために、この円環状端壁は広い面積を確保する必要がある。この点からは、硬質筒体の孔径をできるだけ小さくする方が望ましい。硬質筒体の内面と高周波ナイフの外面との間であって、相隣接するストッパ突起間の部位に連通路が形成されるが、この連通路の通路面積は大きい方が望ましい。このためには、硬質筒体の内径を大きくする方が有利である。以上の相反する要請を満足させるために、可撓性シースの外径を構成する円において、円環状端壁は全体の面積の65〜90%を占めるものとなし、より好ましくは80%程度とする。
発明の効果
0017
以上の構成を採用することによって、簡単な構成の硬質筒体を可撓性シースに装着することにより、針状の電極からなる高周波ナイフの突出量を規制でき、かつこの高周波ナイフによる切開等の処置が行われる部位の安定性が確保され、しかも処置を行っている間に確実に流体の給排を行える等の効果を奏する。
発明を実施するための最良の形態
0018
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に高周波処置具の全体構成を示し、図2にその要部拡大断面を示す。さらに、図3及び図4はそれぞれ異なる作動状態での高周波処置具の先端部分の断面が示されている。
0019
まず、図1及び図2において、1は高周波処置具であって、この高周波処置具1は長尺の可撓性シース2を有し、この可撓性シース2の基端部には接続パイプ3が連結されており、さらにこの接続パイプ3の他端には操作手段4が連結されている。操作手段4は接続パイプ3に連結した本体軸4aと、この本体軸4aに嵌合されて、本体軸4aの軸線方向に摺動可能に設けたスライダ4bとから構成されている。スライダ4bには処置具本体10を構成する可撓性コード11の基端部が連結して設けられている。
0020
可撓性コード11は、図3から明らかなように、例えば導電線部11aの外周部を絶縁被覆11b内に挿通させたものからなり、少なくとも曲げ方向に可撓性を備えている。この可撓性コード11における導電線部11aの基端部はスライダ4bへの連結部から所定長さ突出して、接点部12が形成されている。そして、この接点部12は図示しない高周波電源装置に着脱可能に接続されるようになっている。
0021
処置具本体10を構成する可撓性コード11は、スライダ4bへの取付部から、接続パイプ3の内部を通り、可撓性シース2内に延在されている。そして、可撓性シース2の先端部からは針状ナイフ13が出没可能に設けられている。針状ナイフ13は好ましくは先端が球形となった所定長さを有する硬質の針状乃至棒状の導電部材からなり、つまりフック部を有さないものであり、可撓性コード11の導線部11aと電気的に接続されており、その所定の長さ分は外部に露出しており、通電時にはこの部分が体内組織に作用して、この組織を焼灼して切開等の処置が行われる。
0022
20は硬質筒体であって、この硬質筒体20は可撓性シース2の先端部に挿入・固定した硬質部材からなり、電気絶縁性及び耐熱性を有する部材、好ましくはセラミックで構成される。硬質筒体20の外面は、僅かではあるがそれぞれ径差のある3段の段差面が形成されており、前端側が最も小径で、後端部が最も大径となっている。そして、この硬質筒体20の外面と可撓性シース2の内面との間には接着剤が介装され、この接着と外面の段差との作用によって、硬質筒体20は可撓性シース2の先端側に向けて脱落することがないように固定されている。
0023
硬質筒体20には、貫通孔21が形成されており、その前端面20aは、その軸線と直交する面となっており、この前端面20aは可撓性シース2の先端面2aとほぼ同一の平面を形成しており、これらの端面2a,20aによって円環状端壁Pが形成されている。硬質筒体20の貫通孔21の孔径は針状ナイフ13の外径より大きく、従って針状ナイフ13はこの貫通孔21に対して遊嵌状態で挿通されることになる。
0024
針状ナイフ13は、図3に示したように、硬質筒体20より基端側に引き込まれた状態と、図4に示したように、円環状端壁Pから所定長さ突出した状態とに変位可能となっている。そして、針状ナイフ13の先端部が硬質筒体20の内部に確実に呼び込むことができるようにするために、硬質筒体20の後端面20bはテーパ面となっている。この後端面20bのテーパ面は外周側から内周縁に向けて内向きに所定角度傾斜するものであり、外周縁部の所定幅分は丸みを帯びた形状となっている。そして、この丸みを有する部位の幅は針状ナイフの半径以下としている。従って、針状ナイフ13を可撓性シース2の先端から押し出すように操作すると、この針状ナイフ13の先端部が硬質筒体20の後端面20bを構成するテーパ面に乗り上げるようにしてガイドされて、この硬質筒体20の中心軸線方向を志向するようになる。
0025
針状ナイフ13には、その先端から所定の距離だけ基端側に偏寄した位置にストッパ突起22が設けられている。ストッパ突起22は、図5及び図6に示したように、針状ナイフ13の外周部に相互に120°の位相をもって3箇所放射状に突設されており、その突出高さは可撓性シース2の内周面より低いものであり、少なくとも硬質筒体20に形成した貫通孔21の内周縁より高くなっている。そして、各ストッパ突起22は所定の厚みを有するものであり、その前端面22aは高周波処置具1の先端側に向けて突出する傾斜面となっている。このストッパ突起22の前端面22aの傾斜角は硬質筒体20の後端面20bの傾斜角にほぼ対応したものとなっている。ここで、ストッパ突起22は針状ナイフ13に嵌合される筒体23に一体に設けたステンレス等の金属部材からなり、筒体23は溶接等の手段で針状ナイフ13に固着して設けられている。
0026
従って、図4から明らかなように、針状ナイフ13が可撓性シース2の先端から、つまり円環状端壁Pから所定長さ突出させると、ストッパ突起22の前端面22aが硬質筒体20の後端面20bと実質的に面接触することになり、この位置が針状ナイフ13の最突出位置となる。ここで、針状ナイフ13の最突出位置において、円環状端壁Pから針状ナイフ13の先端までの間隔は、体腔内壁における粘膜の厚みより大きく、粘膜と粘膜下層との合計の厚みより小さくなるように設定される。
0027
そして、針状ナイフ13が最突出位置となったときに、図7に示したように、針状ナイフ13の外周と硬質筒体20の貫通孔21の孔径との径差に基づいて、相隣接するストッパ突起22,22間の部位に3箇所の連通路24が形成される。高周波処置具1の基端側の部位に設けた接続パイプ3は接続口3aを有するものであり、この接続口3aには生理食塩水等の液体を供給するシリンジや、吸引配管等が接続されるようになっている。
0028
以上の構成を有する高周波処置具1は、図8に示したように、観察部Wを有する内視鏡挿入部Sに設けた処置具挿通チャンネルCを介して体腔内に挿入され、例えば食道,胃,十二指腸,大腸等の体腔内壁に病変粘膜が存在する際には、この病変粘膜部を剥離して除去する処置を施すために用いられる。そこで、この病変粘膜を切除する処置について説明する。この処置は、内視鏡検査の結果、粘膜に病変部が存在していることが確認されたときに行われることになる。
0029
そこで、まず図9に示したように、切除すべき病変部Dが存在している粘膜に、その病変粘膜領域Dを囲むようにマーキングする。このマーキングする領域は、病変部を完全に取り除くことができ、しかも健康な粘膜部分に対してはできるだけダメージを与えないようにする。そして、マーキングは、例えば、病変粘膜領域Dの周囲の所要個所に焼灼スポットBを施すことにより行うことができ、この焼灼スポットBを形成するために、高周波処置具1を用いることができる。即ち、内視鏡挿入部Sの先端を病変粘膜領域Dの外縁部に対して所定の距離を隔てて対面させ、この状態で処置具挿通チャンネルCに高周波処置具1を挿入して、その先端部を粘膜表面に当接させる。このときには、針状ナイフ13は硬質筒体20より基端側の位置まで引き込んだ状態とする。この高周波処置具1の先端を構成する円環状端壁Pからは何等の部材も突出しておらず、この円環状端壁Pは粘膜表面に対して面接触する。
0030
この状態で、高周波処置具1の操作手段4を操作して、針状ナイフ13を突出させ、かつこの針状ナイフ13に高周波電流を印加する。その結果、粘膜における針状ナイフ13が接触している部位が焼灼されて、マーキングが施されることになる。ここで、このマーキングを行う際には、針状ナイフ13は粘膜層を貫通させる必要はなく、内視鏡挿入部Sによる観察部Wから得られる画像により認識できる程度にまで粘膜表面が焼灼させれば良い。つまり、針状ナイフ13が粘膜表面と接触しておればマーキングが形成される。勿論、操作手段4をフルストロークさせて、針状ナイフ13が可撓性シース2から最も突出した位置になっていても、この針状ナイフ13が筋層と接触するおそれはない。なお、マーキングは他の処置具を用いて行うことができ、また粘膜における切除すべき領域が観察部Wにより認識できるようになっておれば、前述のように焼灼という手法を採らなくても良い。
0031
次に、図10に示したように、病変粘膜領域Dの内部に生理食塩水の局注を行う。このためには、処置具挿通チャンネルから一度高周波処置具1を引き出し、これに代えて可撓性チューブの先端に注射針Nを設けた局注手段を処置具挿通チャンネルC内に挿通させる。ここで、筋層LBと粘膜層LUとの間には粘膜下層LMが存在しており、注射針Nは粘膜層LUを貫通して粘膜下層LMにまで刺入して生理食塩水を注入する。その結果、粘膜下層LMが膨出・隆起する。このように、粘膜下層LMを膨隆させるのは、粘膜層LUを筋層LBから離間させて、円滑かつ安全に処置を行うためである。
0032
粘膜下層LMを十分膨隆させた後に、局注手段を処置具挿通チャンネルCから抜き出して、高周波処置具1を再び挿通させる。そして、高周波処置具1の可撓性シース2及び硬質筒体20の先端面2a,20aで形成される円環状端壁Pを病変粘膜領域Dの外縁部のいずれかに当接させる。ここで、円環状端壁Pを粘膜層LMに正対させるようになし、かつこの円環状端壁Pが粘膜表面に軽く押し当てるようになし、極力押圧力を作用させないようにする。
0033
ここで、高周波処置具1の先端を粘膜表面に押し当てたときに、粘膜層LMが押圧変形されないようにするには、円環状端壁Pの面積が広くする必要がある。ただし、針状ナイフ13は、その強度の点等からある程度の太さを持たせなければならず、この針状ナイフ13を硬質筒体20の貫通孔21に円滑に挿通させるためには、この貫通孔21の孔径を最小限にしても、図11(a)に斜線で示したように、円環状端壁Pは高周波処置具1の先端外径を構成する円Oに対して最大90%の面積とするのが限度となる。また、円環状端壁Pの内側には連通路24が形成されており、この連通路24の通路面積を十分確保した上で、ストッパ壁22と硬質筒体20の後端面20bとの当接面積を安定的に確保するには、図11(b)に斜線で示したように、円環状端壁Pの面積は少なくとも65%以上としなければならない。具体的には、円環状端壁Pの面積比は、図11(c)に斜線で示したように、85%程度とするのが望ましい。これにより、高周波処置具1を粘膜層LMに押し当てたときに、この粘膜表面は最小限度しか押圧されず、筋層LBまでの距離を十分確保できる。
0034
そして、操作手段4を操作して、針状ナイフ13をストッパ部材14の先端から突出させ、かつこの間に針状ナイフ13に高周波電流を流す。針状ナイフ13が最突出状態になると、図12に示したように、針状ナイフ13は粘膜層LUを貫通して、粘膜下層LMにまで導かれ、もって病変粘膜領域Dの切開が開始される。そして、観察部Wによる観察下で、内視鏡挿入部Sを動かしたり、またそのアングル部を湾曲操作したりする操作により、焼灼スポットBに沿うように切開していく。
0035
ここで、ストッパ突起22が硬質筒体20の後端面20bと当接する位置までしか針状ナイフ13が突出しないので、可撓性シース2からの最突出長さは粘膜層LUの厚み寸法より大きく、粘膜層LU及び粘膜下層LMとの合計の厚み寸法より短いものとして設定されている。また、局注により粘膜下層LMを膨隆させていることから、円環状端壁Pが粘膜表面を極端に押圧変形させていない限り、粘膜層LUを確実に切開することができ、しかも筋層LBに対して何等のダメージを与えることなく、粘膜層LUの切開が行われる。また、前述したテーパ面の接合により針状ナイフ13の可撓性シース2の先端からの突出部分は、この可撓性シース2の中心軸線と一致するようにセンタリングされる。従って、内視鏡挿入部Sの観察部Wによって針状ナイフ13の先端の位置が確認されなくても、処置を安全に行うことができる。その結果、図13に示したように、病変粘膜領域Dの外周では粘膜層LUが切開されて、粘膜下層LMが露出した状態となる。なお、図13においては、病変粘膜領域Dの全領域を一度に切開するようにしているが、病変粘膜領域Dが広い場合には、一部分を切開して、後述する剥離を行うようになし、この操作を複数回繰り返すようにするのが望ましい。
0036
病変粘膜領域Dの全周を切開しても、それだけでは粘膜層LUを除去することはできない。即ち、粘膜層LUと筋層LBとの間は線維性の粘膜下層LMで繋がっているので、この線維を切断することにより筋層LBから剥離する必要がある。この粘膜剥離も高周波処置具1を用いて行うことができる。即ち、図14に示したように、高周波処置具1の可撓性シース2から突出する針状ナイフ13を切開により生じた粘膜下層LMの露出部分に進入させて、この針状ナイフ13を水平移動させたり、スイング動作させたりすることにより、粘膜下層LMを切断するように動作させる。この動作は、内視鏡挿入部Sの先端部分を湾曲させる等の操作によって、容易に行うことができる。その結果、迅速かつ効率的に粘膜剥離が行われることになる。
0037
前述した粘膜剥離を行っている間、また前述した切開を行っている間に、この処置箇所等が出血する可能性がある。このために、接続パイプ3の接続口3aから可撓性シース2内に高圧で生理食塩水を供給する。硬質筒体20の前端面には、ストッパ突起22,22間において、硬質筒体20の貫通孔21の内側に、接続口3aに通じる連通路24が開口している。従って、この連通路24から出血個所に向けて生理食塩水を噴射することによって、出血部分を迅速に洗い流すことができる。この洗浄操作は、粘膜剥離の処置を継続している間に、つまり針状ナイフ13を可撓性シース2の先端から突出させたままで行える。
0038
粘膜剥離を行う際に、生理食塩水を補給する必要がある。既に局注して、生理食塩水により病変粘膜領域Dを膨隆させているが、切開を行う間に供給した生理食塩水が流出したり、体内に吸収されたりして、膨隆部が収縮してしまうことがある。そこで、粘膜下層LMを膨隆状態に維持させるために、生理食塩水を補給しながら粘膜剥離を行う。この生理食塩水の補給も連通路24から行うことができる。このときには、針状ナイフ13を硬質筒体22より基端側に引き込み、円環状端壁Pを粘膜下層LMに当接させた状態とするようになし、接続パイプ3の接続口3aから可撓性シース2内に生理食塩水を注入すると、より効率的に生理食塩水を供給でき、粘膜下層LMに向けて直接注入することができる。その結果、剥離しようとする粘膜下層LMを膨隆状態に維持することができる。
0039
このように、生理食塩水の追加補給は、処置具挿通チャンネルCに挿通されている高周波処置具1を取り出して、注射器を交換的に挿通させるという煩わしい操作を行う必要がなく、粘膜剥離処置が中断されることはない。従って、この点でも、処置の効率化,迅速化が図られる。しかも、円環状端壁Pから何等の部材も突出していないことから、溝21の先端を粘膜下層LMに当接させることができ、必要な箇所に向けて的確に生理食塩水を供給することができる。これによって、粘膜下層LMを確実に膨隆状態に維持して、針状ナイフ13による粘膜剥離を安全かつ迅速に行うことができる。
図面の簡単な説明
0040
本発明の実施の一形態を示す高周波処置具の全体構成図である。
図1の要部拡大断面図である。
処置具本体の先端部分の拡大断面図である。
電極部材を突出させた状態にして示す図3と同様の断面図である。
ストッパ壁の正面図である。
図5のX−X断面図である。
図4の正面図である。
本発明の実施の一形態を示す高周波処置具を内視鏡の処置具挿通チャンネルから導出させた状態を示す外観図である。
病変粘膜領域にマーキングを施した状態を示す平面図である。
病変粘膜領域に対して局注を行っている状態を示す組織の断面図である。
円環状端壁の占有面積に関する説明図である。
高周波処置具を用いて切開を行っている状態を示す組織の断面図である。
高周波処置具による切開が終了した状態を示す病変粘膜領域を含む平面図である。
粘膜剥離を行っている状態を示す組織の断面図である。
符号の説明
0041
1高周波処置具2 可撓性シース
3接続パイプ4操作手段
10処置具本体 11 可撓性コード
13針状ナイフ20硬質筒体
20a前端面 20b後端面
21貫通孔22ストッパ突起
22a 前端面 24連通路
P 円環状端壁