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技術 流体軸受装置およびこれを備えたモータ

出願人 NTN株式会社
発明者 村上和豊江上正樹
出願日 2005年5月24日 (15年11ヶ月経過) 出願番号 2005-151617
公開日 2006年12月7日 (14年5ヶ月経過) 公開番号 2006-329275
状態 特許登録済
技術分野 すべり軸受 電動機,発電機と機械的装置等との結合 軸受の取付、その他 軸受の取付、その他
主要キーワード 評価項目値 合格判定基準 接着固定面 円筒領域 合否判定基準 米粒大 接着隙間 線膨張係数比
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (11)

課題

接着隙間を適正に管理して、接着固定面を有する部材とブラケットとの間の接着強度を高めた流体軸受装置を提供する。

解決手段

モータステータコイル4の取付け部6bを有するブラケット6の線膨張係数で、ブラケット6の内周に固定されるハウジング7の線膨張係数を除した値が0.5以上2.0以下となるように、ブラケット6およびハウジング7の材料を選定する。ハウジング7の外周に形成された接着固定面7eを、ブラケット6の内周面6aに、嫌気性接着剤あるいはエポキシ系接着剤を用いて接着固定する。

概要

背景

上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する流体軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。

この種の流体軸受は、軸受隙間内の潤滑流体動圧を発生させるための動圧発生部を備えた動圧軸受と、動圧発生部を備えていない、いわゆる真円軸受(軸受断面が真円形状である軸受)とに大別される。

例えば、HDD等のディスク駆動装置スピンドルモータに組み込まれる流体軸受装置では、軸部材ラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の流体軸受装置(動圧軸受装置)におけるラジアル軸受部としては、例えば軸受部材内周面(軸受部材がハウジング軸受スリーブとを備える場合には、軸受スリーブの内周面)と、これに対向する軸部材の外周面との何れか一方に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、両面間ラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2003−239951号公報

概要

接着隙間を適正に管理して、接着固定面を有する部材とブラケットとの間の接着強度を高めた流体軸受装置を提供する。モータのステータコイル4の取付け部6bを有するブラケット6の線膨張係数で、ブラケット6の内周に固定されるハウジング7の線膨張係数を除した値が0.5以上2.0以下となるように、ブラケット6およびハウジング7の材料を選定する。ハウジング7の外周に形成された接着固定面7eを、ブラケット6の内周面6aに、嫌気性接着剤あるいはエポキシ系接着剤を用いて接着固定する。

目的

本発明の課題は、接着隙間を適正に管理して、接着固定面を有する部材とブラケットとの間の接着強度を高めた流体軸受装置を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

軸部材と、ブラケットと、ラジアル軸受隙間に形成した流体膜で軸部材をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受部と、ブラケットの内周面接着固定される接着固定面とを備えた流体軸受装置において、接着固定面を有する部材の線膨張係数をブラケットの線膨張係数で除した値が0.5以上2.0以下であることを特徴とする流体軸受装置。

請求項2

さらに、内周面が軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成する軸受スリーブと、内周に軸受スリーブが固定され、外周に接着固定面が形成されたハウジングとを備える請求項1記載の流体軸受装置。

請求項3

さらに、内周面が軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成し、かつ、外周面に接着固定面を形成した軸受部材を備える請求項1記載の流体軸受装置。

請求項4

接着固定面を有する部材とブラケットとの接着固定に使用する接着剤が、嫌気性接着剤若しくはエポキシ系接着剤である請求項1記載の流体軸受装置。

請求項5

接着固定面を有する部材およびブラケットの何れか一方又は双方が金属材料で形成される請求項1記載の流体軸受装置。

請求項6

接着固定面を有する部材およびブラケットの何れか一方又は双方が樹脂組成物で形成される請求項1記載の流体軸受装置。

請求項7

ポリフェニレンサルファイド(PPS)がベース樹脂として樹脂組成物に含まれる請求項6記載の流体軸受装置。

請求項8

炭素繊維充填材として樹脂組成物に含まれる請求項6又は7記載の流体軸受装置。

請求項9

無機化合物が充填材として樹脂組成物に含まれる請求項6又は7記載の流体軸受装置。

請求項10

Na含有量が2000ppm以下の樹脂組成物である請求項6又は7記載の流体軸受装置用ハウジング

請求項11

ポリフェニレンサルファイド(PPS)はリニア型である請求項7記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項12

炭素繊維の引張り強さが3000MPa以上である請求項8記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項13

炭素繊維は、PAN系繊維である請求項8記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項14

炭素繊維のアスペクト比が6.5以上である請求項8記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項15

樹脂組成物中に、炭素繊維が10vol%以上35vol%以下含まれる請求項8記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項16

無機化合物が、ホウ酸アルミニウムウィスカである請求項9記載の流体軸受装置用ハウジング。

請求項17

請求項1〜16の何れか記載の流体軸受装置と、ステータコイルと、ステータコイルとの間に励磁力を生じるロータマグネットとを備えるモータ

技術分野

0001

本発明は、軸受隙間に形成した流体膜回転部材を支持する流体軸受装置およびこれを備えたモータに関するものである。この種の軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ用、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータプロジェクタカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適に使用可能である。

背景技術

0002

上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する流体軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。

0003

この種の流体軸受は、軸受隙間内の潤滑流体動圧を発生させるための動圧発生部を備えた動圧軸受と、動圧発生部を備えていない、いわゆる真円軸受(軸受断面が真円形状である軸受)とに大別される。

0004

例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる流体軸受装置では、軸部材ラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の流体軸受装置(動圧軸受装置)におけるラジアル軸受部としては、例えば軸受部材内周面(軸受部材がハウジング軸受スリーブとを備える場合には、軸受スリーブの内周面)と、これに対向する軸部材の外周面との何れか一方に、動圧発生部としての動圧溝を形成すると共に、両面間ラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2003−239951号公報

発明が解決しようとする課題

0005

ところで、上記構成の流体軸受装置を、例えばHDD等の磁気ディスク装置用のスピンドルモータに組込んで使用する場合、流体軸受装置のモータへの組付けは、通常ハウジングの外周面を、ステータコイル取付け部を有するブラケットの内周面に接着固定することにより行われる。ハウジングとブラケットとの間で高い接着強度が確保できる場合は問題ないが、接着強度が不足する場合には、磁気ディスク装置を内蔵した情報機器の落下に伴う衝撃により接着面が剥離し、流体軸受装置、ひいては磁気ディスク装置の機能低下を招く恐れがある。そのため、かかるハウジングとブラケットとの間には高い接着力が求められる。特に最近では、ディスク容量の増大化要求を受けて、上記ディスク装置に組込まれる磁気ディスク枚数が増加する傾向にあり、これにより落下時の衝撃力が益々増大するため、上記ハウジングとブラケットとの間にはより一層の高い接着力が要求される。

0006

また、この種の接着固定に使用される接着剤には、作業性やアウトガス特性などの観点から、嫌気性接着剤エポキシ系接着剤が使用されることが多い。通常、これらの接着剤の硬化には、塗布後の加熱作業を伴うため、硬化工程中のハウジングおよびブラケットの熱膨張により、接着剤が供給される両部材間の直径すき間(接着隙間)が変動する。この種の接着隙間は、必要に応じて所定の幅に設定されるのが望ましいが、加熱を伴って接着剤を硬化させる場合には、加熱時、両部材間の接着隙間が変動した状態で接着剤が硬化するため、加熱前の接着隙間と異なる幅で接着が行われることになる。これでは、予め上記接着隙間の幅を適正に設定したとしても、両部材間で充分な接着強度を得ることができない恐れがある。

0007

本発明の課題は、接着隙間を適正に管理して、接着固定面を有する部材とブラケットとの間の接着強度を高めた流体軸受装置を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

前記課題を解決するため、本発明は、軸部材と、ブラケットと、ラジアル軸受隙間に形成した流体膜で軸部材をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受部と、ブラケットの内周面に接着固定される接着固定面とを備えた流体軸受装置において、接着固定面を有する部材の線膨張係数をブラケットの線膨張係数で除した値が0.5以上2.0以下であることを特徴とする流体軸受装置を提供する。

0009

このように、本発明は、接着固定面を有する部材およびブラケットの熱膨張に伴う接着隙間の変動に着目してなされたものであり、接着固定面を有する部材の線膨張係数をブラケットの線膨張係数で除した値が0.5以上2.0以下であることを特徴とする。かかる構成によれば、加熱に伴う接着隙間の変動を、極力接着剤の硬化に悪影響を及ぼさない範囲に抑えた状態で、接着固定面を有する部材とブラケットとの接着固定を行うことができる。従って、加熱を伴って硬化させる接着剤を使用する場合であっても、接着固定面を有する部材とブラケットとの間で高い接着強度を得ることができ、ディスク装置のディスク容量増大化の要求にも対応することができる。

0010

ここで、両部材間の線膨張係数比{(接着固定面を有する部材の線膨張係数)/(ブラケットの線膨張係数)}を上記範囲に規定したのは次の理由による。すなわち、上記線膨張係数比が2.0を超えると、接着剤の加熱時、接着隙間が過小となり、場合によっては負すき間となることで、未硬化の接着剤が接着隙間からはみ出し、接着剤が不足する恐れがあるためである。また、上記線膨張係数比が0.5を下回り、接着隙間が過大となることで、接着強度の低下を招く恐れがあるためである。

0011

接着固定面を有する部材とブラケットとの接着固定に使用する接着剤としては、作業性、特に硬化速度やアウトガス特性の観点から、嫌気性接着剤や紫外線硬化型接着剤、あるいはエポキシ系接着剤が好適である。

0012

上述の線膨張係数比の範囲内(0.5以上2.0以下)である限り、接着固定面を有する部材およびブラケットの何れか一方又は双方を金属材料で形成することができる。あるいは両部材の何れか一方又は双方を樹脂組成物で形成することもできる。

0013

後者の場合、樹脂組成物を構成するベース樹脂としては、接着固定面を有する部材に求められる特性、例えば耐油性成形性(成形時の流動性)、アウトガス特性等に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)を挙げることができる。また、ベース樹脂以外に、炭素繊維無機化合物の何れか一方あるいは双方を充填材として樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物における線膨張係数の調整が可能となる。

0014

上記構成の樹脂組成物におけるNa含有量は2000ppm以下であることが好ましい。これによれば、潤滑油中へのNaイオン溶出量が抑えられ、軸受内部あるいは軸受外部の清浄度高レベルに保つことが可能となる。また、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の中でも、最も側鎖の少ないリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)が、単位体積当り分子末端基の数が少なく、Na含有量が少ない点で好ましい。

0015

炭素繊維としては、3000MPa以上の引張り強度を有するものが好ましい。高強度と共に、高い導電性を兼ね備えたものとして、例えばPAN系(ポリアクリロニトリル系)の炭素繊維を挙げることができる。

0016

これら炭素繊維を樹脂組成物に配合することによる補強効果、寸法安定効果静電除去効果等は、炭素繊維のアスペクト比を考慮することでより一層顕著に発揮される。すなわち、炭素繊維の繊維長が大きいほど補強効果や静電除去効果が高まり、繊維径が小さいほど耐摩耗性、特に摺動相手材の損傷が抑えられる。これらの観点から、具体的には炭素繊維のアスペクト比を6.5以上にするのが好ましい。

0017

また、炭素繊維の樹脂組成物中の配合量は、上記炭素繊維を配合することによる付加効果(補強効果、導電性向上、寸法安定性向上)を十分に発揮しつつも、樹脂組成物としての流動性(低溶融粘度)を確保するため、10〜35vol%とするのが好ましい。

0018

上記樹脂組成物に充填される無機化合物として、イオン溶出量の少ない無機化合物が好適に使用可能である。この種の無機化合物であれば、有害となる恐れのある潤滑油中へのイオン溶出を小さく抑えることができるので、潤滑油変性劣化や粘度低下を避けて、軸受性能を高レベルに保つことができる。あるいは、軸受装置やその周辺に前述のイオンが析出するといった事態を避けて、軸受内部又は軸受装置周辺の清浄度を確保することができる。

0019

上記条件を満たす無機化合物として、具体的には、ホウ酸アルミニウム化合物や、酸化チタン酸化亜鉛などを挙げることができるが、この中でも、特にホウ酸アルミニウム化合物がより好ましく使用可能である。また、これら無機化合物には、繊維状や粉末状のものが存在するが、ハウジングの補強効果を考慮すると、繊維状、特にウィスカ形状が好ましい。

0020

上記構成の流体軸受装置としては、軸部材およびブラケットに加えて、さらに、内周面が軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成する軸受スリーブと、内周に軸受スリーブが固定され、外周に接着固定面が形成されたハウジングとを備えるものが考えられる。この場合、上記接着固定面を有する部材は、ハウジングに相当する。

0021

あるいは、軸部材およびブラケットに加えて、さらに、内周面が軸部材の外周面との間でラジアル軸受隙間を形成し、かつ、外周面に接着固定面を形成した軸受部材を備えるものが考えられる。この場合、上記接着固定面を有する部材は、軸受部材に相当する。

0022

上記構成の流体軸受装置は、この流体軸受装置と、ステータコイルと、ステータコイルとの間に励磁力を生じるロータマグネットとを備えるモータとして好適に提供可能である。

発明の効果

0023

以上のように、本発明によれば、接着隙間を適正に管理して、接着固定面を有する部材とブラケットとの間の接着強度を高めた流体軸受装置を提供することができる。

発明を実施するための最良の形態

0024

以下、本発明の第1実施形態を図1図4に基づいて説明する。

0025

図1は、本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸2を備えた回転部材3を回転自在に非接触支持する流体軸受装置(動圧軸受装置)1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4は後述するブラケット6のコイル取付け部6bに取付けられ、ロータマグネット5は回転部材3の外周に取付けられている。流体軸受装置1のハウジング7は、ブラケット6の内周に固定される。回転部材3には、図示は省略するが、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)が一又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、回転部材3および回転部材3に保持されたディスクが軸2と一体に回転する。

0026

図2は、流体軸受装置1を示している。この流体軸受装置1は、ブラケット6と、ブラケット6の内周に固定されるハウジング7と、ハウジング7に固定される軸受スリーブ8と、ハウジング7および軸受スリーブ8に対して相対回転する回転部材3とを主に備えている。この実施形態においては、回転部材3が軸部材に該当する。なお、説明の便宜上、軸方向両端に形成されるハウジング7開口部のうち、蓋部材10で封口される側を下側、封口側と反対の側を上側として以下説明する。

0027

回転部材3は、例えばハウジング7の開口側に配置されるハブ部9と、軸受スリーブ8の内周に挿入される軸2とを備えている。

0028

ハブ部9は金属あるいは樹脂で形成され、ハウジング7の開口側(上側)を覆う円盤部9aと、円盤部9aの外周部から軸方向下方に延びた筒状部9bと、筒状部9bの外周に設けられたディスク搭載面9cおよび鍔部9dとで構成される。図示されていないディスクは、円盤部9aの外周に外嵌され、ディスク搭載面9cに載置される。そして、図示しない適当な保持手段(クランパなど)によってディスクがハブ部9に保持される。

0029

軸2は、この実施形態ではハブ部9と一体に形成され、その下端抜止めとしてフランジ部2bを別体に備えている。フランジ部2bは、金属製で、例えばねじ結合等の手段により軸2に固定される。

0030

軸受スリーブ8は、例えば真ちゅう等の銅合金アルミ合金などの金属で形成することもでき、焼結金属からなる多孔質体で形成することもできる。この実施形態では、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。

0031

軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として複数の動圧溝を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば図3に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をヘリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。

0032

軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝形成領域スラスト軸受面として、フランジ部2bの上端面2b1と対向し、軸2(回転部材3)の回転時には、上端面2b1との間に第二スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。

0033

ハウジング7は、樹脂で円筒状に形成される。この実施形態では、ハウジング7は、その軸方向両端を開口した形状をなし、かつ他端側を蓋部材10で封口している。一端側の端面(上端面)の全面または一部環状領域には、スラスト軸受面7aが設けられる。この実施形態では、スラスト軸受面7aに、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように複数の動圧溝7a1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。このスラスト軸受面7a(動圧溝7a1形成領域)は、ハブ部9の円盤部9aの下端面9a1と対向し、回転部材3の回転時には、下端面9a1との間に後述する第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。

0034

ハウジング7の他端側を封口する蓋部材10は、金属あるいは樹脂で形成され、ハウジング7の他端内周側に設けられた段部7bに固定される。ここで、固定手段は特に限定されず、例えば接着(ルーズ接着、圧入接着を含む)、圧入、溶着(例えば超音波溶着)、溶接(例えばレーザ溶接)などの手段を、材料の組合わせや要求される組付け強度、密封性などに合わせて適宜選択することができる。

0035

ハウジング7の内周面7cには、軸受スリーブ8の外周面8bが、例えば接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)、圧入、溶着等の適宜の手段で固定される。

0036

ハウジング7の外周には、上方に向かって漸次拡径するテーパ状のシール面7dが形成される。このテーパ状のシール面7dは、筒状部9bの内周面9b1との間に、ハウジング7の封口側(下方)から開口側(上方)に向けて半径方向寸法が漸次縮小した環状のシール空間Sを形成する。このシール空間Sは、軸2およびハブ部9の回転時、第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間の外径側と連通している。

0037

ハウジング7外周の下端には接着固定面7eが形成される。接着固定面7eは、この実施形態では径一定の円筒状をなし、ブラケット6の内周面6aに接着剤を介して固定される(図2を参照)。

0038

このとき、内周面6aと接着固定面7eとの間の接着固定には、作業性、特に硬化速度やアウトガス特性の観点から、例えば紫外線硬化型接着剤や嫌気性接着剤、あるいはエポキシ系接着剤が用いられる。具体的には、紫外線硬化型接着剤として(株)スリボンド製の3000シリーズを、嫌気性接着剤として同じく(株)スリーボンド製の1300シリーズを、またエポキシ系接着剤として同じく(株)スリーボンド製の2200シリーズをそれぞれ一例として挙げることができる。また、ハウジング7の線膨張係数をブラケット6の線膨張係数で除した値が0.5以上2.0以下となるように、ハウジング7およびブラケット6の形成材料がそれぞれ選定される。

0039

このように、両部材6、7間の線膨張係数比{(ハウジング7の線膨張係数)/(ブラケット6の線膨張係数)}を上記範囲に規定することで、加熱時における内周面6aと接着固定面7eとの間の直径すき間(接着隙間)の変動を、接着剤の硬化にできるだけ悪影響を及ぼさない範囲に抑えた状態で、ハウジング7とブラケット6との接着固定を行うことができる。従って、上述のように、加熱を伴って硬化させる接着剤を使用する場合であっても、ハウジング7とブラケット6との間で高い接着強度を得ることができる。

0040

なお、例えば嫌気性接着剤など、上述の接着剤を用いる場合、加熱前における両部材6、7間の接着隙間の値としては、直径すき間で10μm〜100μmが一般的であり、硬化後の両部材6、7間の固定精度の向上、および接着力の安定化を考慮した場合、上記接着隙間としては、直径すき間で20μm〜40μmが好適である。

0041

上記範囲の線膨張係数比を満足する限り、ブラケット6およびハウジング7の材料は任意に選択可能であり、例えばブラケット6がステンレス等の金属で、ハウジング7が、LCPやPPS、PEEK等の結晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物でそれぞれ形成可能である。

0042

このうち、ハウジング7用の材料としては、使用時における上記エステル系潤滑油に対する高い耐油性(低吸油性)が要求されるが、この他にも、使用時のアウトガス発生量や吸水量を低く抑えることが必要となる。また、使用雰囲気下での温度変化を考慮して、高い耐熱性も要求される。

0043

上記例示のベース樹脂(LCP、PPS、PEEKなどの結晶性樹脂)であれば、上述の耐油性、アウトガス性吸水性、耐熱性の全てに優れたハウジング7を形成することができる。また、上記結晶性樹脂の中でも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、他の樹脂に比べて安価に入手可能であり、かつ成形時の流動性(溶融粘度)にも優れた樹脂であるため、この種のハウジング7用のベース樹脂として特に適している。

0044

ところで、ポリフェニレンサルファイド(PPS)は一般的に硫化ナトリウムパラジクロロベンゼン重縮合反応により製造され、同時に副生成物である塩化ナトリウムを含む。そのため、適当な溶媒を用いてポリフェニレンサルファイド(PPS)を洗浄する必要がある。洗浄するための溶媒としては、少なくとも10以上の比誘電率を有するものであればよく、好ましくは20以上、より好ましくは50以上のものであればなおよい。さらに環境面も考慮すると、例えば水(比誘電率約80)が好ましく、特に超純水が好ましい。このような溶媒で洗浄を行うことにより、主にポリフェニレンサルファイド(PPS)末端基のNaが取り除かれるため、ポリフェニレンサルファイド(PPS)中のNa含有量を低減(例えば、2000ppm以下)させることができ、ハウジング7を形成する樹脂材料として使用可能となる。また、末端基のNaを取り除くことで結晶化速度が速まるメリットも有する。

0045

ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、架橋型ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、側鎖の少ないセミリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)と、および側鎖の少ないリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)とに大別されるが、この中でも側鎖の少ないリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)が、1分子当りの分子末端基の数が少なく、Na含有量が少ない点でより好ましい。また、リニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)は、他タイプのポリフェニレンサルファイド(PPS)に比べて洗浄が容易であり、あるいは、洗浄によりNa含有量をほとんど低減する必要がない点でも好ましい材料である。具体的には、Na含有量が2000ppm以下のもの、より好ましくは1000ppm、さらに好ましくは500ppm以下のものがリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)に該当する。これによれば、潤滑油中へのNaイオン溶出量を抑えて、流体軸受装置1や、回転部材3に保持されたディスク、あるいはディスクヘッド(図示せず)表面にNaが析出するのを防ぐことができる。

0046

上記ベース樹脂には、充填材として炭素繊維と無機化合物のうち何れか一方又は双方が配合可能である。充填材は、ベース樹脂への配合量を変えることで、これらベース樹脂および充填材を含む樹脂組成物で形成されるハウジング7の線膨張係数を調整する作用を有する。

0047

また、充填材として炭素繊維を配合することで、ハウジング7の高強度化が図られると共に、ハウジング7の温度変化に伴う寸法変化を抑えて高い寸法安定性を得ることができる。これにより、スラスト軸受面7aの動圧溝7a1を高精度に形成し、使用時における第一スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を高精度に制御することが可能となる。また、炭素繊維をベース樹脂に配合することで炭素繊維の持つ高い導電性が発現され、ハウジング7に充分な導電性(例えば体積抵抗で1.0×106Ω・cm以下)を付与することができる。これにより、使用時にディスクに帯電する静電気を回転部材3およびハウジング7(さらに軸受スリーブ8を経由する場合もある)を介して接地側部材(ブラケット6など)に逃がすことができる。

0048

炭素繊維には、例えばPAN系やPich系など種々のものが使用可能であるが、補強効果や衝撃吸収性の観点から、比較的高い引張強度(好ましくは3000MPa以上)を有するものが好ましく、特に高い導電性を併せ持つものとしては、PAN系炭素繊維が好ましい。

0049

上記炭素繊維としては、以下の寸法範囲のものを使用することができる。

0050

(1)溶融樹脂混練して射出成形する際には、炭素繊維が裁断されて短繊維化する。短繊維化が進行すると、強度や導電性等の低下が顕著となり、これらの要求特性を満足することが難しくなる。従って、樹脂に配合する炭素繊維としては、成形時の繊維の折れを見込んで長めの繊維を使用することが好ましく、具体的には平均繊維長100μm以上、より好ましくは1mm以上の炭素繊維を使用するのが望ましい。(2)その一方、射出成形工程においては、金型内で硬化した樹脂を取り出し、これを再度溶融させ、バージン樹脂組成物と混練して再使用(リサイクル使用)する場合がある。この場合、一部の繊維は繰返しリサイクルされることになるので、当初の繊維長が長すぎる場合には、リサイクルに伴う裁断により、繊維が当初の繊維長に比べて著しく短くなって、樹脂組成物の特性変化(溶融粘度の低下等)が顕著になる。かかる特性変化を最小限に抑えるため、繊維長はできるだけ短い方が好ましく、具体的には平均繊維長を500μm以下(好ましくは300μm以下)とするのが望ましい。

0051

以上に述べた炭素繊維の繊維長の選択は、実際の射出成形工程で如何なる経歴の樹脂組成物を使用するかによって定めることができる。例えばバージン樹脂組成物のみを使用する場合、あるいはリサイクル樹脂組成物を混合使用する場合で、かつバージン樹脂組成物の比率が多い場合には、強度や導電性等の低下を抑制する観点から、上記(1)で述べた寸法範囲の炭素繊維を使用するのが好ましく、反対にリサイクル樹脂組成物の使用比率が多い場合には、リサイクルに伴う樹脂組成物の特性変化を抑制する観点から、上記(2)で述べた寸法範囲の炭素繊維を使用するのが望ましい。

0052

なお、(1)および(2)の何れの炭素繊維でも、炭素繊維の繊維径が小さいほど配合本数が増えるため、製品品質の均一化に有効であり、かつそのアスペクト比が大きいほど繊維補強による補強効果も高まる。従って、炭素繊維のアスペクト比は大きいほど好ましく、具体的には6.5以上のアスペクト比が好ましい。また、その平均繊維径は、作業性や入手性を考慮すると、5〜20μmが適当である。

0053

上述の炭素繊維による補強効果や摩耗低減効果、静電除去効果等を充分に発揮するため、炭素繊維のベース樹脂への充填量は10〜35vol%、より好ましくは15〜25vol%とするのがよい。これは、炭素繊維の充填量が10vol%未満だと、炭素繊維による補強効果や静電除去効果が充分に発揮されない他、ハブ部9との摺動部分におけるハウジング7の耐摩耗性、特に摺動相手材となるハブ部9の耐摩耗性が確保されず、一方で、充填量が35vol%を超えると、ハウジング7の成形性が低下し、高い寸法精度を得ることが困難になるためである。

0054

無機化合物としては種々のものが使用可能であるが、その中でも、イオン溶出量の小さい無機化合物が特に好ましい。この種の無機化合物であれば、有害成分となり得る潤滑油中へのイオンの溶出を抑えて、軸受性能を高レベルに保つことができる。あるいは、軸受装置やその周辺に上述のイオンが析出する事態を避けて、軸受内部又は軸受装置周辺の清浄度を確保することができる。

0055

上記条件を満たす無機化合物として、具体的には、ホウ酸アルミニウム化合物や、酸化チタン、酸化亜鉛などを挙げることができるが、この中でも、特にホウ酸アルミニウム化合物がより好ましく使用可能である。これら無機化合物には、繊維状や粉末状のものが存在し、このうち、ハウジングの補強効果を考慮すると、繊維状、特にウィスカ形状が好ましく、ハウジングの成形性(樹脂充填性)を考慮すると、粉末状のものが好ましい。

0056

上記ベース樹脂に炭素繊維や無機化合物などの充填材を配合した樹脂組成物の溶融粘度は、キャビティー内を溶融樹脂で高精度に充填するため、310℃、せん断速度1000s-1において500Pa・s以下に抑えるのがよい。従って、ベース樹脂(PPS)の溶融粘度は、充填材の配合による樹脂組成物の粘度増加を補償するためにも、310℃、せん断速度1000s-1において100Pa・s以下であることが好ましい。

0057

このように、上記線膨張係数比の範囲内で、ブラケット6およびハウジング7の材料を選定することで、特にハウジング7を上述の樹脂組成物で形成することで、ブラケット6との高い接着力をはじめ、高耐油性や低アウトガス性、成形時の高流動性低吸水性高耐熱性を兼ね備えたハウジング7を得ることができる。従って、流体軸受装置1およびこの軸受装置を組込んだディスク駆動装置の耐久性信頼性を高めることができる。

0058

上記構成の流体軸受装置1の内部には潤滑油が充填され、潤滑油の油面は常にシール空間S内に維持される。潤滑油としては、種々のものが使用可能であるが、特にHDD等のディスク駆動装置用の流体軸受装置に提供される潤滑油には、低蒸発率及び低粘度性が要求され、例えばジオクチルセバケートDOS)、ジオクチルアゼテート(DOZ)等のエステル系潤滑油が好適である。

0059

上記構成の流体軸受装置1において、軸2(回転部材3)の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸2の外周面2aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸2をラジアル方向に非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。

0060

これと同時に、ハウジング7のスラスト軸受面7a(動圧溝7a1形成領域)とこれに対向するハブ部9(円盤部9a)の下端面9a1との間のスラスト軸受隙間、および軸受スリーブ8の下端面8c(動圧溝形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、回転部材3をスラスト方向に非接触支持する第一スラスト軸受部T1と第二スラスト軸受部T2とがそれぞれ構成される。

0061

以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されることなく、他の構成を採ることもできる。以下、流体軸受装置の他の構成例について説明する。なお、以下に示す図において、第1実施形態と構成・作用を同一にする部位および部材については、同一の参照番号を付し、重複説明を省略する。

0062

上記第1実施形態では、ハウジング7の上端面に複数の動圧溝7a1を配列したスラスト軸受面7aを設ける(第一スラスト軸受部T1)と共に、軸受スリーブ8の下端面8cに複数の動圧溝を配列したスラスト軸受面を設けた(第二スラスト軸受部T2)場合を説明したが、本発明は、第一スラスト軸受部T1のみを設けた流体軸受装置にも同様に適用することができる。この場合、図示は省略するが、軸2は、フランジ部2bを有しないストレートな形状になる。したがって、ハウジング7は、蓋部材10を底部として一体に樹脂材料で形成することで、有底円筒形の形態にすることができる。また、軸2とハブ部9とは金属あるいは樹脂で一体成形できる他、軸2をハブ部9と別体に形成することもできる。この場合、軸2を金属製とし、この金属製の軸2をインサート部品としてハブ部9と一体に回転部材3を樹脂で型成形することもできる。

0063

図5は、本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置11を示している。この実施形態において、軸部材12は、その下端に一体または別体に設けられたフランジ部12bを備えている。また、ハウジング17は、円筒状の側部17aと、側部17aと別体構造をなし、側部17aの下端部に位置する底部17bとを備えている。ハウジング17の側部17aの上端部には内周側に突出したシール部13がハウジング17と一体に形成される。ハウジング17の底部17bの上端面17b1には、図示は省略するが、例えば複数の動圧溝をスパイラル状に配列した領域が形成される。そして、軸部材12の回転時、軸受スリーブ8の下端面8cと軸部材12のフランジ部12bの上端面12b1との間に第一スラスト軸受部T11が形成されると共に、ハウジング17の底部17bの上端面17b1とフランジ部12bの下端面12b2との間に第二スラスト軸受部T12が形成される。

0064

この実施形態において、ハウジング17の外周面17cは、ブラケット(図示は省略)の内周面に接着固定される接着固定面となる。従って、このハウジング17およびブラケットを形成する材料として、上記第1実施形態と同様、線膨張係数比が0.5以上2.0以下となるように材料をそれぞれ選定すれば、ブラケットとの接着力をはじめ、耐油性、耐摩耗性、清浄度、成形性等に優れたハウジング17を得ることができる。

0065

図6は、本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置21を示している。この実施形態において、シール部23は、ハウジング27の側部27aと別体に形成され、ハウジング27の上端部内周に接着、圧入、あるいは溶着等の手段により固定される。また、ハウジング27の底部27bは、ハウジング27の側部27aと一体に形成され、有底円筒状の形態を成している。なお、これ以外の構成は、第2実施形態に準じるので説明を省略する。

0066

この実施形態においても、ハウジング27の外周面27cは、ブラケット(同じく図示は省略)の内周面に接着固定される接着固定面となる。従って、ハウジング27およびブラケットを形成する材料として、上記第1実施形態と同様の線膨張係数比を満たす材料の組合わせを選択することで、ブラケットとの接着力をはじめ、耐油性、耐摩耗性、清浄度、成形性等に優れたハウジング27を得ることができる。

0067

以上の実施形態(第1〜第3実施形態)では、ハウジング7に接着固定面7eを設け、かつ軸受スリーブ8の内周面8aと軸2の外周面2aとの間でラジアル軸受隙間を形成する場合を説明したが、これらを単一材料一体品とすることもできる(図5図6に係る実施形態についても同様に一体化は可能)。図7は、本発明の第4実施形態に係る流体軸受装置31を示すもので、一体品としての軸受部材37を備える点で上記第1〜第3実施形態に係る流体軸受装置と構成を異にする。この場合、軸受部材37は、その内周面37aで軸2の外周面2aとの間にラジアル軸受隙間を形成し、かつ外周にブラケット6との接着固定面37eを有する。またラジアル軸受隙間に面する内周面37aには、例えば図3に示す動圧溝8a1、8a2形成領域(ラジアル軸受面)が形成される。同様に、軸受部材37の端面37b、37cは、それぞれ第1実施形態に示すスラスト軸受面7a、8cに対応した形状をなす。なお、これ以外の構成は、第1実施形態に準じるので説明を省略する。

0068

もちろん、以上説明した形態に限らず、ブラケット6との接着固定面7eを有する部材であれば、本発明を適用することが可能である。同様に、ブラケット6は、ハウジング7等の接着固定面7eを有する部材を内周に接着固定して、モータに流体軸受装置1を固定するための部材である限り、本発明を適用することが可能である。そのため、必ずしも、ブラケット6が、ステータコイル4の取付け部6bを有するものである必要は無く、例えば、ブラケット6を、モータのベース部材とは別体に製作し、これを接着固定面7eに接着固定することで、流体軸受装置1をモータに固定する場合に、本発明を適用することも可能である。

0069

また、以上の実施形態(第1〜第4実施形態)では、ハウジング7を樹脂組成物で形成する場合、1種類のベース樹脂(ポリフェニレンサルファイド)に炭素繊維や無機化合物などの充填材を配合した場合を説明したが、本発明の効果を妨げるものでない限り、他の結晶性樹脂や非晶性樹脂、あるいはゴム成分等の有機物を付加してもよく、また、炭素繊維に加えて金属繊維ガラス繊維、ウィスカ等の無機物を付加しても構わない。例えば、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)が耐油性に優れた離型剤として、カーボンブラック導電化剤としてそれぞれ配合可能である。

0070

以上、ハウジング7を樹脂組成物で、ブラケット6を金属で形成する場合を中心に説明したが、上述のように、線膨張係数比が上記範囲内(0.5以上2.0以下)である限り、他の組合わせも可能である(軸受部材37とブラケット6との組合わせについても同様である。)。例えばハウジング7とブラケット6を共に樹脂組成物で形成することもでき、両部材6、7を共に金属で形成することもできる。あるいは、ハウジング7を金属で、ブラケット6を樹脂組成物で形成することも可能である。ハウジング7を金属で形成する場合、使用可能な金属材料として、SUS420、SUJ2SUS304等のステンレス、いわゆる砲金などの銅合金(青銅黄銅など)、アルミニウム材(A5056など)を例示することができる。

0071

また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1、T2として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。

0072

例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、図示は省略するが、軸方向の溝を円周方向の複数箇所に形成した、いわゆるステップ状の動圧発生部、あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸2(あるいは軸部材12)の外周面2aとの間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受を採用してもよい。

0073

あるいは、ラジアル軸受面となる軸受スリーブ8の内周面8aを、動圧発生部としての動圧溝や円弧面等を設けない真円内周面とし、この内周面と対向する軸2の真円状外周面2aとで、いわゆる真円軸受を構成することができる。

0074

また、スラスト軸受部T1、T2の一方又は双方は、同じく図示は省略するが、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。

0075

また、以上の実施形態では、軸受スリーブ8や軸受部材37の側にラジアル軸受面が、ハウジング7や軸受部材37の側にスラスト軸受面7a、37b、37cがそれぞれ形成される場合を説明したが、これら動圧発生部が形成される軸受面は固定側の部材に限らず、例えばこれらに対向する軸2やフランジ部2bあるいはハブ部9の側(回転側)に設けることもできる。

0076

本発明の有用性を明らかにするため、線膨張係数の異なる複数の材料でハウジング模擬試験片およびブラケット模擬試験片を作成し、ハウジングとブラケットとの間の接着強度をはじめ、流体軸受装置用ハウジングの要求特性に対する評価を行った。上記試験片の材料には、5種類の金属材料、および3種類の樹脂組成物を使用した。樹脂組成物のベース樹脂には、何れもリニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用した。また、充填材には、それぞれ1種類の炭素繊維と無機化合物を使用した。上記材料の組成、および配合比図8に示す通りである。

0077

なお、この実施例では、5種類の金属材料(何れもJIS規格品)として、2種類のステンレス(SUS420、SUS304)、黄銅(CAC301)、アルミダイカストADC12)、およびアルミニウム(A5056)を使用した。また、リニア型ポリフェニレンサルファイド(PPS)として大日本インキ化学工業(株)製のLC−5Gを、炭素繊維(PAN系)として東邦テナックス(株)製のHM35−C6S(繊維径;7μm、平均繊維長;6mm、引張り強さ;3240MPa)を、無機化合物として四国化成工業(株)製のアルボレクスグレード;Y、主要構成要素;ホウ酸アルミニウム、平均径;0.5〜1.0μm、平均繊維長;10〜30μm、形状;ウィスカ)をそれぞれ使用した。また、この実施例では添加材としてカーボンブラックを配合し、具体的には、三菱化学(株)製のカーボンブラック(グレード;♯3350B、平均粒子径;24nm)を使用した。

0078

また、図8に示す組成のうち、3種類の樹脂組成物については、以下の方法で一旦ペレット状に成形し、かかるペレットを用いて後述の試験片を製作した。ペレットの成形方法を以下に示す。上述のベース樹脂および充填材を、図8に示す配合比に基づいてドライブレンドしたものを、サイドフィード付き二軸押出機スクリューL/D比;約30)内に供給し、スクリュー回転速度150rpm、温度 300〜330℃で溶融混練した。混練後、φ4mmのダイ穴から溶融ストランドを引き出し、冷却後、米粒大樹脂組成物ペレットを製作した。なお、溶融混練中における炭素繊維の折損を極力避けるため、上記ブレンド体を、二軸押出機のサイドフィード部から所定の速度で供給するようにした。

0079

評価項目は、(0)線膨張係数比、ハウジング模擬試験片の(1)イオンの不溶性、(2)体積抵抗[Ω・cm]、(3)リング摩耗深さ[μm]、(4)摺動相手材の摩耗深さ[μm]、(5)接着力[N]の計6項目である。このうち、(0)線膨張係数比、および(5)接着力について、ハウジング模擬試験片およびブラケット模擬試験片の双方について、(1)イオンの不溶性から(4)摺動相手材の摩耗深さについては、ハウジング模擬試験片について試験評価を行った。各評価項目評価方法評価項目値測定方法)、および合否判定基準は以下に示す通りである。

0080

(0)線膨張係数比
図8に示す組成の材料の線膨張係数を、TMA(熱機械特性分析装置)を用いて測定した。具体的な手順を以下に示す。(ア)図8に示す組成の材料で、有底円筒状(φ10mm×φ8mm×15mm底厚;2mm)のカップ状試験片を製作した。材料が金属の場合、丸棒ら旋削加工で上記形状の試験片を形成した。材料が樹脂組成物の場合、底板部の外表面側ピンゲートを配して、上記形状の試験片を射出成形した。(イ)カップ状試験片をTMAにセットする。試験片をセットし難い場合には、その軸方向両端をカットしてリング状に加工したものを用いてもよい。試験片の径方向における熱膨張量を正確に計測するため、測定プローブ測定方向を試験片の径方向に一致させる。(ウ)測定荷重:0.05N、測定温度域:23℃〜100℃、昇温速度:5℃/min、雰囲気ガス窒素、の条件下で径方向への熱膨張量を測定した。なお、測定温度域の上限値は、後述する接着剤の加熱硬化条件(90℃×1h)を考慮に入れて設定した。(エ)上記手順で得られた各材料(組成No.1〜8)の線膨張係数は図8に示す通りである。また、この結果を基に、以下の式から、図9および図10に示す各実施例および比較例の線膨張係数比を算出した。
線膨張係数比[無次元]=(ハウジング模擬試験片の線膨張係数)
/(ブラケット模擬試験片の線膨張係数)
(1)イオンの不溶性
図8に示す組成の材料で形成したカップ状試験片からの各種イオン(Naイオンを含む)溶出の有無をイオンクロマトグラフィを用いて確認した。具体的な手順を以下に示す。(ア)空のビーカに超純水を所定量入れ、その中に予め超純水で表面を充分に洗浄した上記試験片を投入する。(イ)上記ビーカを80℃に加温した恒温槽に1hセットし、試験片の表面および内部に含有するイオンを超純水中に溶出させる。他方、試験片を投入しない純水のみ入ったビーカも同様に80℃に加温した恒温槽に1hセットし、これをブランクとする。(ウ)上記で準備した、試験片を投入した超純水に含有するイオン量を、イオンクロマトグラフィにより測定する(測定値A)。別途ブランクに含有するイオン量も同様に測定する(測定値B)。(エ)測定値Aから測定値Bを減算し、イオン溶出の有無を確認する。
なお、合否判定基準としては、イオンクロマトグラフィに一般的に使用されるカラムにて分析可能なイオン(下記の表1を参照)を検出対象イオンとした。表に記載のイオンが検出されなければ合格(○)、検出されれば不合格(×)とした。



(2)体積抵抗[Ω・cm]
図8に示す組成の材料で形成した試験片を用いて、JIS 7194による四探針法により測定を行った。合否判定基準としては、1.0×106Ω・cm以下を合格(○)、1.0×106Ω・cmを超えるものを不合格(×)とした。
(3)リング摩耗深さ[μm]および
(4)摺動相手材の摩耗深さ[μm]
図8に示す組成の材料で形成したリング状の試験片を、潤滑油中でディスク状の摺動相手材に所定荷重で押し当てた状態でディスク側を回転させるリングオンディスク試験にて測定した。具体的には、φ21mm(外径)×φ17mm(内径)×3mm(厚み)のリング状試験片を使用した。また、表面粗さRa0.04μm、φ30mm(直径)×5mm(厚み)のSUS420製のディスク材を摺動相手材として使用した。潤滑油には、ジエステル油としてジ(2−エチルヘキシルアゼレートを使用した。この潤滑油の40℃における動粘度は、10.7mm2/sである。リングオンディスク試験中、供試体に対する摺動相手材の面圧は0.25MPa、回転速度(周速)は1.4m/min、試験時間は14h、油温は80℃とした。合否判定基準について、リング摩耗深さに関しては、3μm以下を合格(○)、3μmを超えるものを不合格(×)とし、摺動相手材の摩耗深さに関しては、2μm以下を合格(○)、2μmを超えるものを不合格(×)とした。
(5)接着力[N]
図8に示す組成の材料で、ハウジングを模擬したカップ状試験片<1>を製作した。形状および寸法は、(0)線膨張係数比の試験時に製作したカップ状試験片と同じである。なお、ハウジング模擬試験片<1>の内周に砲金製のブッシュを圧入し、以下の抜去時に試験片<1>の変形が生じないようにした。一方、図8に示す材料でφ20mm×φ10mm×10mmのブラケット模擬試験片<2>を製作し、この試験片<2>の中央部に、試験片<1>との接着隙間が直径すき間で25μmとなるよう内径寸法を規定した孔を加工した。試験片<1>および<2>を充分に脱脂し、図8の組成No.6〜No.8に係る試験片<1>については、その接着面(試験片<1>の外周面)にプライマを塗布した。また、全ての試験片<2>の接着面(試験片<1>を試験片<2>に挿入した際、試験片<1>と相対する試験片<2>の表面)に嫌気性接着剤を塗布した。その後試験片<1>を試験片<2>に挿入し、90℃×1hで加熱硬化させた。なお、嫌気性接着剤として、スリーボンド社製「TB1359D」を、プライマとして、スリーボンド社製「TB1390F」をそれぞれ使用した。また、嫌気性接着剤の塗布量を約10mg、プライマの塗布量を約1mg(溶剤揮発後の成形体重量増加分として測定)とした。その後、試験片<2>から試験片<1>を引抜き、抜去時における最大荷重を接着力とした。合格判定基準としては、接着力が1000Nを超えるものを合格(○)、1000N以下のものを不合格(×)とした。

0081

図9および図10に、各実施例および比較例の評価項目(0)〜(5)に関する評価結果を示す。比較例1、2のように、ブラケット模擬試験片の線膨張係数に対するハウジング模擬試験片の線膨張係数の比が過小だと(0.5未満だと)、十分な接着力を得ることができない。また、比較例3、4のように、上記線膨張係数比が過大であっても(2.0を超えると)、十分な接着力を得ることができない。これに対して、本発明に係る実施例1〜8では、接着力をはじめ、耐摩耗性(リングおよび相手材の摩耗深さ)、清浄度(イオンの不溶性)、静電除去性(体積抵抗)等全ての面において優れた結果が得られた。

図面の簡単な説明

0082

本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置を組込んだスピンドルモータの断面図である。
第1実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。
軸受スリーブの断面図である。
ハウジングの上端面図である。
本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。
本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。
本発明の第4実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。
実施例および比較例に用いる材料の組成を示す図である。
実施例の試験結果を示す図である。
比較例の試験結果を示す図である。

符号の説明

0083

1、11、21、31流体軸受装置
2、12 軸
2a外周面
2b、12bフランジ部
3回転部材
4ステータコイル
5ロータマグネット
6ブラケット
7、17、27ハウジング
7aスラスト軸受面
7e、17c、27c接着固定面
8軸受スリーブ
9 ハブ部
10蓋部材
37軸受部材
R1、R2ラジアル軸受部
T1、T2、T11、T12スラスト軸受部

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