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技術 電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置

出願人 シャープ株式会社
発明者 内野彰子福島功太郎
出願日 2005年4月1日 (15年7ヶ月経過) 出願番号 2005-106586
公開日 2006年10月19日 (14年1ヶ月経過) 公開番号 2006-285034
状態 未査定
技術分野 電子写真における感光体
主要キーワード 発生度合 初期線 ナフチリデン基 アルミニウム陽極酸化皮膜 回転軸線まわり 試験用画像 フィルスマイヤー反応 疲労劣化
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

帯電性感度および光応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに曝されても特性が低下しない電子写真感光体の提供。

解決手段

電子写真感光体の電荷輸送層を第1電荷輸送層および第2電荷輸送層の二層で構成し、電荷発生層に積層される第1電荷輸送層にエナミン化合物を含有させ、第1電荷輸送層にさらに積層される第2電荷輸送層にスチリル系化合物を含有させる。

概要

背景

複写機プリンタファクシミリ装置などとして多用されている電子写真方式画像形成装置(以後、電子写真装置とも称する)では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、装置に備わる電子写真感光体(以後、単に感光体とも称する)の感光層を、帯電器によって所定の電位に一様に帯電させ、露光手段から画像情報に応じて光を照射して露光し、静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体の表面に現像手段から現像剤を供給して現像剤の成分であるトナーを付着させることによって静電潜像を現像し、可視像であるトナー像を形成する。形成されたトナー像を、転写手段によって感光体の表面から記録紙などの転写材上に転写し、定着手段によって定着させる。トナー像が転写された後の感光体の表面は、クリーニング手段によって清掃され、転写材上に転写されずに感光体表面に残留するトナーおよび転写時に感光体表面に付着したまま残留する記録紙の紙粉などの異物が除去される。その後、感光体の表面電荷除電器などによって除電され、静電潜像が消失する。

このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性支持体に、光導電性材料を含有する感光層が積層されて成る。電子写真感光体としては、従来から、無機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以後、無機系感光体と称する)が用いられている。無機系感光体の代表的なものとしては、アモルファスセレン(a−Se)またはアモルファスセレンひ素(a−AsSe)などから成る層を感光層に用いたセレン系感光体酸化亜鉛化学式:ZnO)または硫化カドミウム(化学式:CdS)を色素などの増感剤とともに樹脂中に分散させたものを感光層に用いた酸化亜鉛系または硫化カドミウム系感光体、アモルファスシリコン(a−Si)から成る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以後、a−Si感光体と称する)などがある。

しかしながら、無機系感光体には以下のような問題がある。たとえば、セレン系感光体および硫化カドミウム系感光体は、耐熱性および保存安定性に問題がある。またセレンおよびカドミウム人体および環境に対して毒性を有するので、これらを用いた感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。また酸化亜鉛系感光体は、感度が低く、かつ耐久性が低いという欠点を有し、現在ではほとんど使用されていない。また、無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は、高感度および高耐久性などの長所を有する反面、プラズマ化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称CVD)法を用いて製造されるので、感光層を均一に成膜することが難しく、画像欠陥が発生しやすいという短所を有する。またa−Si感光体は、生産性が低く、製造原価が高いという短所も有する。

このように無機系感光体には多くの問題があることから、電子写真感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み、従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて、有機系の光導電性材料、すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称OPC)が多用されるようになっている。有機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以後、有機系感光体と称する)は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するけれども、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べ、多くの利点を有する。また有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このように多くの利点を有することから、有機系感光体は次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。また近年の研究開発によって、有機系感光体の感度および耐久性は向上されており、現在では、特別な場合を除き、電子写真感光体としては、有機系感光体が用いられるようになってきている。

特に、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって、有機系感光体の性能は著しく改善されている。機能分離型感光体は、有機系感光体の有する前述の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。

機能分離型感光体には積層型単層型とがあり、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る積層型の感光層が設けられる。電荷発生層および電荷輸送層は、それぞれ、電荷発生物質または電荷輸送物質が結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。また単層型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とがバインダ樹脂中に共に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。

機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料スクアリリウム色素アゾ顔料ペリレン顔料多環キノン顔料シアニン色素スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く、電荷発生能力に優れる種々の材料が提案されている。

また、電荷輸送物質としては、たとえばピラゾリン化合物(たとえば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(たとえば、特許文献2、3および4参照)、トリフェニルアミン化合物(たとえば、特許文献5参照)およびスチルベン化合物(たとえば、特許文献6および7参照)などの種々の化合物が知られている。最近では、縮合多環式炭化水素を中心母核に持つ、ピレン誘導体ナフタレン誘導体ターフェニル誘導体(たとえば、特許文献8および9参照)なども開発されている。

電荷輸送物質には、
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(化学式:NOx)などの酸化性ガス硝酸などの活性物質に対して安定であること、
(3)優れた電荷輸送能を有すること、
(4)有機溶剤およびバインダ樹脂との相溶性に優れること、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。しかしながら、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。

また、近年では、デジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置に対する小型化および高速化の要求に対応し、感光体の高感度化が求められており、電荷輸送物質の電荷輸送能力の向上が希求されている。また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性に優れる感光体が求められる。感光体の光応答性が悪い、すなわち露光後の表面電位減衰速度が遅いと、残留電位が上昇し、感光体の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、減衰すべき部分の表面電位が露光によって充分に減衰せず、早期に画質が低下するなどの弊害が生じる。機能分離型感光体では、光吸収によって電荷発生物質で発生した電荷が、電荷輸送物質によって感光体表面に輸送されることによって、光が照射された部分の感光体の表面電荷が消去されて表面電位が減衰するので、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存する。したがって、充分な光応答性を有する感光体を実現するためにも、電荷輸送物質の電荷輸送能力の向上が求められる。

このような要求から、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質よりも高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質として、特定の構造を有するエナミン化合物が提案されている(たとえば、特許文献10、11、12および13参照)。

特公昭52−4188号公報
特開昭54−150128号公報
特公昭55−42380号公報
特開昭55−52063号公報
特公昭58−32372号公報
特開昭54−151955号公報
特開昭58−198043号公報
特開平2−190862号公報
特開平7−48324号公報
特開平2−51162号公報
特開平6−43674号公報
特開平10−69107号公報
特開平7−134430号公報

概要

帯電性、感度および光応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに曝されても特性が低下しない電子写真感光体の提供。電子写真感光体の電荷輸送層を第1電荷輸送層および第2電荷輸送層の二層で構成し、電荷発生層に積層される第1電荷輸送層にエナミン化合物を含有させ、第1電荷輸送層にさらに積層される第2電荷輸送層にスチリル系化合物を含有させる。なし

目的

本発明の目的は、各種の環境下において、帯電性、感度および光応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに曝されても特性が低下しない電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

導電性支持体電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層が順次積層される電子写真感光体であって、第1電荷輸送層は、下記一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有し、第2電荷輸送層は、下記一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。〔式中、Ar1およびAr2はそれぞれ、置換基を有してもよい、アリール基または複素環基を示す。Ar3は置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基またはアルキル基を示す。Rは2価の芳香環基もしくは複素環基、または基=CAr4Ar5(Ar4およびAr5はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5は同時に水素原子になることはない。)を示す。R1は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2、R3およびR4はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環基もしくはアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。R2およびR3がそれぞれ複数個あるとき、複数個のR2は同一でもよくまたは異なっていてもよく、複数個のR3は同一でもよくまたは異なっていてもよい。R5は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。lは1〜6の整数を示す。R5が複数個あるとき、複数個のR5は同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するナフチレン基とともに2価の縮合環基を形成していてもよい。〕〔式中、Ar6は置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar7は水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基もしくはアリール基を示す。Ar8は置換基を有してもよい、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を示す。R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。Ar9は置換基を有してもよいアリール基または一般式(3)(式中、R7は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)で表される1価基を示す。〕

請求項2

一般式(1)で表されるエナミン化合物が、下記一般式(1a)で表されるエナミン化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。〔式中、Ar4、Ar5、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。mは1または2を示す。R8、R9およびR10はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。i、jおよびkはそれぞれ1〜5の整数を示す。R8、R9またはR10が複数個あるとき、複数個のR8、R9またはR10はそれぞれ同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するフェニル基とともに1価の縮合環基を形成していてもよい。〕

請求項3

一般式(1a)で表されるエナミン化合物が、下記一般式(1b)で表されるエナミン化合物であることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。〔式中、mは一般式(1a)における定義と同義である。R10aは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。〕

請求項4

一般式(2)で表されるスチリル系化合物が、一般式(2)において、Ar6が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有してもよいフェニル基であり、Ar7が水素原子であり、Ar8がフェニレン基であり、R6が水素原子であり、Ar9がフェニル基であるスチリル系化合物であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。

請求項5

第2電荷輸送層が、さらにバインダ樹脂を含有し、第2電荷輸送層における前記スチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)が、2.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。

請求項6

第1電荷輸送層および第2電荷輸送層は、バインダ樹脂と、酸化防止剤および光安定剤のうちの少なくともいずれか一方とをさらに含有し、第2電荷輸送層における前記スチリル系化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W2は、第1電荷輸送層における前記エナミン化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W1よりも大きい(W2>W1)ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。

請求項7

請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体を露光する露光手段と、露光によって形成された静電潜像現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置

技術分野

0001

本発明は、電子写真方式画像形成に用いられる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置に関する。

背景技術

0002

複写機プリンタファクシミリ装置などとして多用されている電子写真方式の画像形成装置(以後、電子写真装置とも称する)では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、装置に備わる電子写真感光体(以後、単に感光体とも称する)の感光層を、帯電器によって所定の電位に一様に帯電させ、露光手段から画像情報に応じて光を照射して露光し、静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体の表面に現像手段から現像剤を供給して現像剤の成分であるトナーを付着させることによって静電潜像を現像し、可視像であるトナー像を形成する。形成されたトナー像を、転写手段によって感光体の表面から記録紙などの転写材上に転写し、定着手段によって定着させる。トナー像が転写された後の感光体の表面は、クリーニング手段によって清掃され、転写材上に転写されずに感光体表面に残留するトナーおよび転写時に感光体表面に付着したまま残留する記録紙の紙粉などの異物が除去される。その後、感光体の表面電荷除電器などによって除電され、静電潜像が消失する。

0003

このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性支持体に、光導電性材料を含有する感光層が積層されて成る。電子写真感光体としては、従来から、無機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以後、無機系感光体と称する)が用いられている。無機系感光体の代表的なものとしては、アモルファスセレン(a−Se)またはアモルファスセレンひ素(a−AsSe)などから成る層を感光層に用いたセレン系感光体酸化亜鉛化学式:ZnO)または硫化カドミウム(化学式:CdS)を色素などの増感剤とともに樹脂中に分散させたものを感光層に用いた酸化亜鉛系または硫化カドミウム系感光体、アモルファスシリコン(a−Si)から成る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以後、a−Si感光体と称する)などがある。

0004

しかしながら、無機系感光体には以下のような問題がある。たとえば、セレン系感光体および硫化カドミウム系感光体は、耐熱性および保存安定性に問題がある。またセレンおよびカドミウム人体および環境に対して毒性を有するので、これらを用いた感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。また酸化亜鉛系感光体は、感度が低く、かつ耐久性が低いという欠点を有し、現在ではほとんど使用されていない。また、無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は、高感度および高耐久性などの長所を有する反面、プラズマ化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称CVD)法を用いて製造されるので、感光層を均一に成膜することが難しく、画像欠陥が発生しやすいという短所を有する。またa−Si感光体は、生産性が低く、製造原価が高いという短所も有する。

0005

このように無機系感光体には多くの問題があることから、電子写真感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み、従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて、有機系の光導電性材料、すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称OPC)が多用されるようになっている。有機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以後、有機系感光体と称する)は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するけれども、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べ、多くの利点を有する。また有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このように多くの利点を有することから、有機系感光体は次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。また近年の研究開発によって、有機系感光体の感度および耐久性は向上されており、現在では、特別な場合を除き、電子写真感光体としては、有機系感光体が用いられるようになってきている。

0006

特に、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって、有機系感光体の性能は著しく改善されている。機能分離型感光体は、有機系感光体の有する前述の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。

0007

機能分離型感光体には積層型単層型とがあり、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る積層型の感光層が設けられる。電荷発生層および電荷輸送層は、それぞれ、電荷発生物質または電荷輸送物質が結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。また単層型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とがバインダ樹脂中に共に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。

0008

機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料スクアリリウム色素アゾ顔料ペリレン顔料多環キノン顔料シアニン色素スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く、電荷発生能力に優れる種々の材料が提案されている。

0009

また、電荷輸送物質としては、たとえばピラゾリン化合物(たとえば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(たとえば、特許文献2、3および4参照)、トリフェニルアミン化合物(たとえば、特許文献5参照)およびスチルベン化合物(たとえば、特許文献6および7参照)などの種々の化合物が知られている。最近では、縮合多環式炭化水素を中心母核に持つ、ピレン誘導体ナフタレン誘導体ターフェニル誘導体(たとえば、特許文献8および9参照)なども開発されている。

0010

電荷輸送物質には、
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(化学式:NOx)などの酸化性ガス硝酸などの活性物質に対して安定であること、
(3)優れた電荷輸送能を有すること、
(4)有機溶剤およびバインダ樹脂との相溶性に優れること、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。しかしながら、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。

0011

また、近年では、デジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置に対する小型化および高速化の要求に対応し、感光体の高感度化が求められており、電荷輸送物質の電荷輸送能力の向上が希求されている。また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性に優れる感光体が求められる。感光体の光応答性が悪い、すなわち露光後の表面電位減衰速度が遅いと、残留電位が上昇し、感光体の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、減衰すべき部分の表面電位が露光によって充分に減衰せず、早期に画質が低下するなどの弊害が生じる。機能分離型感光体では、光吸収によって電荷発生物質で発生した電荷が、電荷輸送物質によって感光体表面に輸送されることによって、光が照射された部分の感光体の表面電荷が消去されて表面電位が減衰するので、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存する。したがって、充分な光応答性を有する感光体を実現するためにも、電荷輸送物質の電荷輸送能力の向上が求められる。

0012

このような要求から、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質よりも高い電荷輸送能力を有する電荷輸送物質として、特定の構造を有するエナミン化合物が提案されている(たとえば、特許文献10、11、12および13参照)。

0013

特公昭52−4188号公報
特開昭54−150128号公報
特公昭55−42380号公報
特開昭55−52063号公報
特公昭58−32372号公報
特開昭54−151955号公報
特開昭58−198043号公報
特開平2−190862号公報
特開平7−48324号公報
特開平2−51162号公報
特開平6−43674号公報
特開平10−69107号公報
特開平7−134430号公報

発明が解決しようとする課題

0014

前述の特許文献10〜13に開示のエナミン化合物を用いた感光体は、光応答性などの電気特性には優れるけれども、以下のような問題を有する。前述の特許文献10〜13などに開示のエナミン化合物を含む電荷輸送層は、帯電プロセスにおいて、帯電手段として用いられるコロナ放電式の帯電器(以下、コロナ放電帯電器と称する)から放出されるオゾンおよび放出されたオゾンが空気中の窒素と反応して生成する窒素酸化物などの酸化性ガスに弱いという欠点を有する。このため、エナミン化合物を含有する電荷輸送層を感光体の表面層として用いると、特に画像形成装置の停止時などにコロナ放電帯電器周辺に残留しているオゾンなどの酸化性ガスによって感光体表面および感光層を構成する材料が酸化され、感光体に表面抵抗の低下などの損傷が生じる。感光体の表面抵抗が低下すると、感光体の帯電性などが変化するので、白抜けおよび黒帯などの画像欠陥が発生するという問題が生じる。ここで、白抜けとは、トナーが付着すべき部分にトナーが付着されていない部分が発生する現象のことである。また黒帯とは、トナーが付着すべき部分とそれ以外の部分とにわたってトナーが帯状に付着した部分が発生する現象のことである。

0015

本発明の目的は、各種の環境下において、帯電性、感度および光応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに曝されても特性が低下しない電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。

課題を解決するための手段

0016

本発明は、導電性支持体に電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層が順次積層される電子写真感光体であって、
第1電荷輸送層は、下記一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有し、
第2電荷輸送層は、下記一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。

0017

0018

〔式中、Ar1およびAr2はそれぞれ、置換基を有してもよい、アリール基または複素環基を示す。Ar3は置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基またはアルキル基を示す。Rは2価の芳香環基もしくは複素環基、または基=CAr4Ar5(Ar4およびAr5はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5は同時に水素原子になることはない。)を示す。R1は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2、R3およびR4はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環基もしくはアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。R2およびR3がそれぞれ複数個あるとき、複数個のR2は同一でもよくまたは異なっていてもよく、複数個のR3は同一でもよくまたは異なっていてもよい。R5は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。lは1〜6の整数を示す。R5が複数個あるとき、複数個のR5は同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するナフチレン基とともに2価の縮合環基を形成していてもよい。〕

0019

0020

〔式中、Ar6は置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar7は水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基もしくはアリール基を示す。Ar8は置換基を有してもよい、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を示す。R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。Ar9は置換基を有してもよいアリール基または一般式(3)

0021

0022

(式中、R7は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)で表される1価基を示す。〕

0023

また本発明は、一般式(1)で表されるエナミン化合物が、下記一般式(1a)で表されるエナミン化合物であることを特徴とする。

0024

0025

〔式中、Ar4、Ar5、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。mは1または2を示す。R8、R9およびR10はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。i、jおよびkはそれぞれ1〜5の整数を示す。R8、R9またはR10が複数個あるとき、複数個のR8、R9またはR10はそれぞれ同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するフェニル基とともに1価の縮合環基を形成していてもよい。〕

0026

また本発明は、一般式(1a)で表されるエナミン化合物が、下記一般式(1b)で表されるエナミン化合物であることを特徴とする。

0027

0028

〔式中、mは一般式(1a)における定義と同義である。R10aは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。〕

0029

また本発明は、一般式(2)で表されるスチリル系化合物が、一般式(2)において、
Ar6が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有してもよいフェニル基であり、
Ar7が水素原子であり、
Ar8がフェニレン基であり、
R6が水素原子であり、
Ar9がフェニル基であるスチリル系化合物であることを特徴とする。

0030

また本発明は、第2電荷輸送層が、さらにバインダ樹脂を含有し、
第2電荷輸送層における前記スチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)が、2.0以上6.0以下であることを特徴とする。

0031

また本発明は、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層は、バインダ樹脂と、酸化防止剤および光安定剤のうちの少なくともいずれか一方とをさらに含有し、
第2電荷輸送層における前記スチリル系化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W2は、第1電荷輸送層における前記エナミン化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W1よりも大きい(W2>W1)ことを特徴とする。

0032

また本発明は、前記本発明の電子写真感光体と、
電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された電子写真感光体を露光する露光手段と、
露光によって形成された静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。

発明の効果

0033

本発明によれば、電子写真感光体(以後、単に感光体とも称する)は、導電性支持体に電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層が順次積層されて成る。第1電荷輸送層は、一般式(1)で表されるエナミン化合物、好ましくは一般式(1a)で表されるエナミン化合物、さらに好ましくは一般式(1b)で表されるエナミン化合物を含有する。第2電荷輸送層は、一般式(2)で表されるスチリル系化合物、好ましくは一般式(2)において、Ar6が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有してもよいフェニル基であり、Ar7が水素原子であり、Ar8がフェニレン基であり、R6が水素原子であり、Ar9がフェニル基であるスチリル系化合物を含有する。

0034

一般式(1)で表されるエナミン化合物および一般式(2)で表されるスチリル系化合物は電荷輸送物質として機能する。第1電荷輸送層に電荷輸送物質として一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有させることによって、帯電性、感度および光応答性などの電気特性に優れ、繰返し使用されても、また湿度および温度などの周囲の環境が変化しても電気特性を維持することのできる環境安定性および電気的耐久性に優れる感光体が実現される。また第1電荷輸送層に積層される第2電荷輸送層に電荷輸送物質として一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有させることによって、感光体に耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができる。したがって、前述のように電荷発生層に積層して一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する第1電荷輸送層を設け、さらに第1電荷輸送層に積層して一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有する第2電荷輸送層を設けることによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性、ならびにこれらの電気特性の環境安定性および耐久性に優れるとともに、耐酸化性ガス性にも優れる信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。

0035

また本発明によれば、第2電荷輸送層における一般式(2)で表されるスチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)は、2.0以上6.0以下である。このことによって、応答性などの電気特性を低下させることなく、第2電荷輸送層の耐刷性を向上させることができる。したがって、優れた電気特性および耐酸化性ガス性を有するとともに、機械的耐久性に優れ、摺擦による表面の磨耗および傷の発生などが抑制された電子写真感光体を得ることができる。

0036

また本発明によれば、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層は、酸化防止剤および光安定剤のうちの少なくともいずれか一方を含有する。これによって、感光体の耐酸化性ガス性を向上させることができる。また、第2電荷輸送層における一般式(2)で表されるスチリル系化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率(以後、第2電荷輸送層における酸化防止剤および/または光安定剤の比率とも称する)W2は、第1電荷輸送層における一般式(1)で表されるエナミン化合物およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率(以後、第1電荷輸送層における酸化防止剤および/または光安定剤の比率とも称する)W1よりも大きい(W2>W1)。このことによって、酸化防止剤および/または光安定剤を添加することによる電気特性への悪影響を抑え、効率的に耐酸化性ガス性を向上させることができる。したがって、電気特性を低下させることなく、一層優れた電気的耐久性を有する電子写真感光体を実現することができる。

0037

また本発明によれば、画像形成装置は、本発明の電子写真感光体と帯電手段と露光手段と現像手段とを備え、帯電手段によって本発明の電子写真感光体を帯電させ、露光手段によって露光し、露光によって形成された静電潜像を現像手段によって現像する。前述のように、本発明の電子写真感光体は、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、ならびにこれらの電気特性の環境安定性および耐久性に優れるとともに、耐酸化性ガス性にも優れる。したがって、本発明の電子写真感光体を用いることによって、各種の環境下において、白抜けおよび黒帯などのない高品質の画像を長期間にわたって安定して提供することのできる信頼性に優れる画像形成装置を得ることができる。

発明を実施するための最良の形態

0038

図1は、本発明の実施の一形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体(以後、単に感光体とも称する)1は、導電性素材から成る導電性支持体11と、導電性支持体11上に積層される下引層12と、下引層12上に積層される層であって電荷発生物質を含有する電荷発生層13と、電荷発生層13の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含有する電荷輸送層16とを含む。電荷発生層13と電荷輸送層16とは、感光層17を構成する。すなわち、感光体1は積層型感光体である。

0039

電荷輸送層16は、少なくとも2つの層を含む。本実施の形態では、電荷輸送層16は、電荷発生層12に接して設けられる第1電荷輸送層14と、第1電荷輸送層14に接し、かつ外方に臨んで設けられる第2電荷輸送層15との2つの層を含む。すなわち、第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15は、この順に電荷発生層13に積層される。

0040

導電性支持体11は、本実施形態では円筒形状を有する。導電性支持体11としては、(a)アルミニウムステンレス鋼、銅、ニッケルなどの金属材料、(b)ポリエステルフィルムフェノール樹脂パイプ紙管などの絶縁性物質の表面にアルミニウム、銅、パラジウム酸化錫酸化インジウムなどの導電性材料から成る層を設けたものなどが好適に用いられ、その中でも、体積抵抗が1010Ω・cm以下という導電性を有するものが好ましい。導電性支持体11には、前述の体積抵抗を調整する目的で表面に酸化処理が施されてもよい。

0041

導電性支持体11は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに、他の各層12,13,14,15の支持部材としても機能する。導電性支持体11の形状は、本実施形態では円筒形状であるけれども、これに限定されることなく、板状、シート状、フィルム状またはベルト状などであってもよい。

0042

下引層12は、導電性支持体11と感光層17との接着層としての役割を果たすとともに、導電性支持体11から感光層17に電荷が流込むのを抑制するバリア層としても機能する。したがって、下引層12を設けることによって、導電性支持体11から感光層17への電荷の流入を抑え、感光体1の帯電特性を維持することができるので、感光体1の寿命延ばすことができる。

0043

下引層12は、たとえば、ポリアミドポリウレタンセルロースニトロセルロースポリビニルアルコールポリビニルピロリドンポリアクリルアミドゼラチンでんぷんカゼイン、N−メトキシメチル化ナイロンなどの樹脂材料によって形成される。また、導電性支持体11がアルミニウムから成る場合または表面にアルミニウム層が形成された絶縁性物質から成る場合には、アルミニウム陽極酸化皮膜を下引層12として用いることもできる。下引層12には、体積抵抗値の調整などを目的として、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウムなどの金属酸化物粒子を分散させてもよい。下引層12の厚さは、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。下引層12の厚さが0.1μm未満であると、下引層12を設ける効果が充分に発揮されず、導電性支持体11から感光層17に電荷が流入して感光体1の帯電性が低下する恐れがある。下引層12の厚さが10μmを超えると、感光体1の感度が低下する恐れがある。

0044

電荷発生層13は、公知の電荷発生物質を含んで構成することができる。電荷発生物質としては、光を吸収してフリー電荷を発生するものであれば、どのような材料を用いてもよく、たとえば無機顔料有機顔料有機染料などが挙げられる。無機顔料としては、セレンおよびその合金ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体などが挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系化合物アゾ系化合物キナクリドン系化合物多環キノン系化合物ペリレン系化合物などが挙げられる。有機染料としては、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩などが挙げられる。前述の電荷発生物質の中でも、有機顔料および有機染料などの有機光導電性化合物が好ましい。さらに有機光導電性化合物の中でもフタロシアニン系化合物が好適に用いられ、特に下記一般式(4)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を用いることが最適である。下記一般式(4)で表されるチタニルフタロシアニン化合物を用いることによって、感光体1の感度および帯電性が向上され、画像再現性に優れる感光体1が実現される。

0045

0046

一般式(4)において、R21、R22、R23およびR24はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。r,s,yおよびzはそれぞれ1〜4の整数を示す。符号R21、R22、R23またはR24で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子塩素原子臭素原子などが挙げられ、これらの中でもフッ素原子、塩素原子が好ましい。アルキル基としては、メチル基エチル基、n−プロピル基n−ブチル基などの直鎖状アルキル基イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基エトキシ基、n−プロポキシ基などの直鎖状アルコキシ基イソプロポキシ基などの分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。

0047

前記一般式(4)で表されるチタニルフタロシアニン化合物は、たとえばモーザ(
Moser)およびトーマス(Thomas)による「フタロシアニン化合物(Phthalocyanine
Compounds)」に記載されている方法などの従来公知の製造方法によって製造することができる。たとえば、一般式(4)で表されるチタニルフタロシアニン化合物のうち、R21、R22、R23およびR24がいずれも水素原子であるチタニルフタロシアニンは、フタロニトリル四塩化チタンとを加熱融解するかまたはα−クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させてジクロロチタニウムフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。またイソインドリンテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、チタニルフタロシアニンを製造することができる。

0048

電荷発生層13には、前述の電荷発生物質の他に、化学増感剤光学増感剤などの増感剤を添加してもよい。化学増感剤としては、電子受容性物質、具体的には、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどのシアノ化合物アントラキノンp−ベンゾキノンなどのキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトフルオレノンなどのニトロ化合物などが挙げられる。光学増感剤としては、キサンテン系色素チアジン色素トリフェニルメタン系色素などの色素などが挙げられる。

0049

電荷発生層13の形成には、真空蒸着法スパッタリング法CVD法などの気相堆積法または塗布法などを適用することができる。これらの中でも塗布法が好適に用いられる。塗布法を用いる場合、適当な溶剤中に前述の電荷発生物質を分散させ、さらに必要に応じて前述の増感剤、結着剤であるバインダ樹脂などを加えて電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法などの公知の方法によって下引層12上に塗布し、乾燥または硬化させて電荷発生層13を形成する。電荷発生物質は、溶剤中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕されてもよい。粉砕機としては、ボールミルサンドグラインダペイントシェイカ超音波分散機などが挙げられる。

0050

塗布法において、塗布液に加えられるバインダ樹脂としては、結着性を有するものが用いられる。具体的には、ポリアリレートポリビニルブチラールポリカーボネートポリエステルポリスチレンポリ塩化ビニルフェノキシ樹脂エポキシ樹脂シリコーン樹脂ポリアクリレートなどが挙げられる。

0052

電荷発生物質として、結晶転移を起こしやすい無機顔料または有機顔料を用いる場合には、電荷発生物質の粉砕およびミリング時の結晶転移に基づく感度低下、ならびにポットライフによる特性低下を防ぐために、前述の溶剤の中でも、シクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルケトンおよびテトラヒドロキノンのいずれか、またはこれらの混合溶剤を用いることが好ましい。

0053

塗布液の塗布には、下引層12の形成される導電性支持体11が円筒状である場合、スプレイ法垂直型リング法、浸漬塗布法などを用いることができる。また下引層12の形成される導電性支持体11の形状が板状、シート状またはフィルム状である場合、塗布液はベーカアプリケータ、バーコータキャスティングスピンコータなどを用いて塗布することができる。

0054

電荷発生層13の厚さは、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層13の厚さが0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下する恐れがある。電荷発生層13の厚さが5μmを超えると、電荷発生層13内部での電荷移動が感光層17表面の電荷を消去する過程律速段階となり、感光体1の感度が低下する恐れがある。

0055

電荷輸送層16は、第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15がこの順に電荷発生層13に積層されて成る。第1電荷輸送層14は、電荷発生層13に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含んで構成することができる。第2電荷輸送層15は、電荷発生物質が発生した電荷を、第1電荷輸送層14を介して受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含んで構成することができる。

0056

電荷発生層13に接して設けられる第1電荷輸送層14には、電荷輸送物質として、下記一般式(1)で表されるエナミン化合物が含有される。

0057

0058

〔式中、Ar1およびAr2はそれぞれ、置換基を有してもよい、アリール基または複素環基を示す。Ar3は置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基またはアルキル基を示す。Rは2価の芳香環基もしくは複素環基、または基=CAr4Ar5(Ar4およびAr5はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アリール基、複素環基、アラルキル基もしくはアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5は同時に水素原子になることはない。)を示す。R1は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2、R3およびR4はそれぞれ、水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、複素環基もしくはアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示す。R2およびR3がそれぞれ複数個あるとき、複数個のR2は同一でもよくまたは異なっていてもよく、複数個のR3は同一でもよくまたは異なっていてもよい。R5は水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。lは1〜6の整数を示す。R5が複数個あるとき、複数個のR5は同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するナフチレン基とともに2価の縮合環基を形成していてもよい。〕

0059

一般式(1)で表されるエナミン化合物は、電荷輸送能力、特にホール輸送能力に優れる。したがって、一般式(1)で表されるエナミン化合物を電荷輸送物質として第1電荷輸送層14に含有させることによって、感度が高く、光応答性および帯電性に優れる感光体1を実現することができる。このような感光体1の良好な電気的特性は、感光体1の周囲の環境、たとえば湿度または温度が変化しても維持され、また感光体1が繰返し使用された後であっても低下せず維持される。

0060

しかしながら、電荷輸送層16を一層で形成して、その電荷輸送層に一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有させると、繰返し使用されることによって感光体の表面抵抗が徐々に低下し、画像に白抜けおよび黒帯などの画像欠陥が発生するという問題が生じる。これは、一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する電荷輸送層が感光体の表面層となるので、帯電時のコロナ放電で発生するオゾンおよび窒素酸化物(NOx)などの酸化性ガスによって一般式(1)で表されるエナミン化合物が酸化され、感光体の表面抵抗が低下するためであると考えられる。

0061

そこで、本実施形態では、電荷輸送層16を第1電荷輸送層14と第2電荷輸送層15との2つの層で形成し、電荷発生層13に接して設けられる第1電荷輸送層14の電荷輸送物質として一般式(1)で表されるエナミン化合物を用い、外方に臨んで設けられる第2電荷輸送層15の電荷輸送物質として、下記一般式(2)で表されるスチリル系化合物を用いることとした。

0062

0063

〔式中、Ar6は置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar7は水素原子または置換基を有してもよい、アルキル基もしくはアリール基を示す。Ar8は置換基を有してもよい、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基を示す。R6は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。Ar9は置換基を有してもよいアリール基または一般式(3)

0064

0065

(式中、R7は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。)で表される1価基を示す。〕

0066

第2電荷輸送層15の電荷輸送物質として一般式(2)で表されるスチリル系化合物を用いることによって、感光体1に耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができる。これは、一般式(2)で表されるスチリル系化合物が、帯電時に発生するオゾンおよび窒素酸化物(NOx)などの酸化性ガスに対して安定であるためであると推察される。すなわち、表面層である第2電荷輸送層15の電荷輸送物質として一般式(2)で表されるスチリル系化合物を用いることによって、酸化性ガスと電荷輸送物質との相互作用が抑制され、帯電時に発生する酸化性ガスによる表面層の劣化が抑えられるものと推察される。これによって、感光体1の表面抵抗の低下を防ぐことができるので、白抜けおよび黒帯などの画像欠陥を生じさせることのない感光体1が実現される。

0067

このように、電荷輸送層16を2つ以上の層で形成し、外方に臨む第2電荷輸送層15に一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有させ、第2電荷輸送層15と電荷発生層13との間に、一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する第1電荷輸送層14を設けることによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性、ならびにこれらの電気特性の環境安定性および耐久性に優れるとともに、耐酸化性ガス性にも優れる信頼性の高い感光体1を得ることができる。

0068

以下、一般式(1)で表されるエナミン化合物および一般式(2)で表されるスチリル系化合物について説明する。まず、第1電荷輸送層14に含有される一般式(1)で表されるエナミン化合物について説明する。

0069

一般式(1)において、符号Ar1またはAr2で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基ビフェニリル基ターフェニル基アントリル基ピレニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。

0070

これらのアリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、t−ブチル基などのアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)、トリフルオロメチル基モノフルオロエチル基などのハロアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のハロアルキル基)、2−プロペニル基スチリル基などのアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのモノアルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基)、ジメチルアミノ基ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などのジアルキルアミノ基(好ましくは炭素数2〜8のジアルキルアミノ基)、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、チエニル基などの複素環基(好ましくは異項原子として酸素原子窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種を含む5員もしくは6員の単環式複素環基)、フェノキシ基などのアリールオキシ基フェニルチオ基などのアリールチオ基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。

0071

これらの置換基を有するアリール基としては、トリル基メトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、p−(フェニルチオ)フェニル基、p−スチリルフェニル基などが挙げられる。これらの置換基の結合するアリール基がフェニル基である場合、これらの置換基は、p−トリル基、p−メトキシフェニル基などのように、フェニル基のパラ位置換することが好ましい。また、これらの置換基は、これらが結合するアリール基とともに1価の縮合環基を形成してもよい。該1価の縮合環基としては、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基などが挙げられる。

0072

一般式(1)において、符号Ar1またはAr2で示される複素環基としては、フリル基、チエニル基、チアゾリル基ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基ベンゾチアゾリル基ベンゾオキサゾリル基カルバゾリル基などが挙げられ、これらの中でも、異項原子として酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1種、好ましくは酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種を含む単環式または縮合環式複素環基が好ましい。ここで、縮合環式複素環基とは、単環式の複素環同士が縮合してなる縮合環から生じる1価基および芳香環と複素環とが縮合してなる縮合環から生じる1価基のことである。

0073

これらの複素環基が有してもよい置換基としては、前述のアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。またフェニル基、ナフチル基などのアリール基も挙げられる。その中でも、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。置換基を有する複素環基としては、N−メチルインドリル基、N−エチルカルバゾリル基などが挙げられる。

0074

一般式(1)において、符号Ar3で示されるアリール基および複素環基としては、前述のAr1またはAr2で示されるアリール基および複素環基と同様のものが挙げられる。これらの各基が有してもよい置換基としては、前述のAr1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。これらの中でも、符号Ar3で示されるアリール基の有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、フェノキシ基、フェニルチオ基が好ましい。また、符号Ar3で示される複素環基の有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アリール基が好ましい。

0075

一般式(1)において、符号Ar3で示されるアラルキル基としては、ベンジル基フェネチル基、1−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル部分の炭素数が1〜3であるアラルキル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。これらのアラルキル基が有してもよい置換基としては、Ar1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられ、その中でも、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。置換基を有するアラルキル基としては、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。

0076

一般式(1)において、符号Ar3で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの分岐鎖状アルキル基、シクロヘキシル基シクロペンチル基などのシクロアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5〜7のシクロアルキル基が特に好ましい。これらのアルキル基が有してもよい置換基としては、Ar1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられ、その中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、異項原子として酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種を含む5員または6員の単環式複素環基が好ましい。置換基を有するアルキル基としては、たとえばトリフルオロメチル基、フルオロメチル基などのハロアルキル基、1−メトキシエチル基などのアルコキシアルキル基、2−チエニルメチル基、2−チエニルエチル基などのチエニルアルキル基などが挙げられる。

0077

一般式(1)において、符号Rで示される2価の芳香環基としては、1−インダニリデン基、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチリデン基などの2価の縮合環式芳香環基などが挙げられ、その中でも環数2〜4の2価の縮合環式芳香環基が好ましい。また、2価の複素環基としては、ベンゾスベロニリデン基、9−キサンテニリデン基などの、異項原子として酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子など、好ましくは酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1種を含む2価の縮合環式複素環基などが挙げられ、その中でも環数2〜4の2価の縮合環式複素環基が好ましい。2価の複素環基に含まれる窒素原子は、水素原子とともにイミノ基を形成していてもよく、またアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)とともにN−アルキルイミノ基を形成していてもよい。これらの2価の芳香環基および複素環基は、環構造中にメチレン基エチレン基メチルメチレン基などのアルキレン基ビニレン基プロペニレン基などのアルケニレン基オキシメチレン基(化学式:−O−CH2−)などのヘテロアルキレン基チオビニレン基(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロアルケニレン基などの2価基を含んでいてもよい。

0078

一般式(1)において符号Rで示される基=CAr4Ar5において、符号Ar4またはAr5で示されるアリール基および複素環基としては、前述のAr1およびAr2で示されるアリール基および複素環基と同様のものが挙げられる。その中でも、アリール基としてはフェニル基が好ましい。また、符号Ar4またはAr5で示されるアラルキル基およびアルキル基としては、前述のAr3で示されるアラルキル基およびアルキル基と同様のものが挙げられる。その中でも、アラルキル基としてはアルキル部分の炭素数が1〜3であるアラルキル基が好ましく、アルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。

0079

符号Ar4またはAr5で示される各基が有してもよい置換基としては、前述のAr1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。その中でも、アリール基の有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、フェニルチオ基、フェノキシ基、スチリル基が好ましい。また、複素環基の有する置換基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、アルキル基の有する置換基としてはチエニル基が好ましい。

0080

一般式(1)において、符号R1で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、これらの中でもフッ素原子、塩素原子が好ましい。また、符号R1で示されるアルキル基としては、前述のAr3で示されるアルキル基と同様のものが挙げられ、その中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基が有してもよい置換基としては、前述のAr1およびAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられ、その中でもハロゲン原子が好ましい。

0081

一般式(1)において、符号R2、R3またはR4で示されるアルキル基およびアラルキル基としては、前述のAr3で示されるアルキル基およびアラルキル基と同様のものが挙げられる。これらの中でも、符号R4で示されるアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、符号R4で示されるアラルキル基としてはベンジル基が好ましい。また、符号R2、R3またはR4で示されるアリール基および複素環基としては、前述のAr1およびAr2で示されるアリール基および複素環基と同様のものが挙げられる。これらの中でも、符号R4で示されるアリール基としてはフェニル基が好ましく、符号R4で示される複素環基としてはチエニル基が好ましい。これらの各基が有してもよい置換基としては、前述のAr1およびAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。

0082

一般式(1)において、符号R5で示されるハロゲン原子としては、前述の符号R1で示されるハロゲン原子と同様のものが挙げられ、これらの中でもフッ素原子、塩素原子が好ましい。符号R5で示されるアルキル基としては、符号Ar3で示されるアルキル基と同様のものが挙げられ、その中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。符号R5で示されるアリール基としては、前述の符号Ar1またはAr2で示されるアリール基と同様のものが挙げられる。

0083

一般式(1)において、符号R5で示されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられ、その中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などの対称ジアルキルアミノ基、エチルメチルアミノ基、イソプロピルエチルアミノ基などの非対称ジアルキルアミノ基などが挙げられ、その中でも炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。これらの各基が有してもよい置換基としては、前述の符号Ar1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。

0084

一般式(1)において、lが2以上であってR5が複数個あるとき、複数個のR5がこれらの結合するナフチレン基とともに形成していてもよい2価の縮合環基としては、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−アントリレン基などが挙げられる。

0085

一般式(1)で表されるエナミン化合物のうち、好ましい化合物としては、一般式(1)において、R2およびR3の一方が水素原子であり、他方が水素原子、チエニル基、ベンジル基または置換基としてハロゲン原子および炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれる1種もしくは2種以上を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基であるエナミン化合物が挙げられる。
これらのエナミン化合物のうち、より好ましい化合物としては、一般式(1a)

0086

0087

〔式中、Ar4、Ar5、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。mは1または2を示す。R8、R9およびR10はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基もしくはアリール基を示す。i、jおよびkはそれぞれ1〜5の整数を示す。R8、R9またはR10が複数個あるとき、複数個のR8、R9またはR10はそれぞれ同一でもよくまたは異なっていてもよく、またこれらが結合するフェニル基とともに1価の縮合環基を形成していてもよい。〕で表されるエナミン化合物が挙げられる。

0088

一般式(1a)において、符号R8、R9またはR10で示される各基の具体例としては、一般式(1)において符号R5で示される各基と同様のものが挙げられる。その中でも、アルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アルコキシ基としては炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、ジアルキルアミノ基としては炭素数2〜8のジアルキルアミノ基が好ましい。また、これらの各基が有してもよい置換基としては、一般式(1)において符号Ar1またはAr2で示されるアリール基の有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。

0089

一般式(1a)において、iが2以上であってR8が複数個あるときに複数個のR8がこれらの結合するフェニル基とともに形成していてもよい1価の縮合環基、jが2以上であってR9が複数個あるときに複数個のR9がこれらの結合するフェニル基とともに形成していてもよい1価の縮合環基、またはkが2以上であってR10が複数個あるときに複数個のR10がこれらの結合するフェニル基とともに形成していてもよい1価の縮合環基としては、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基などが挙げられる。

0090

一般式(1a)で表されるエナミン化合物のうち、特に好ましい化合物としては、一般式(1b)

0091

0092

〔式中、mは一般式(1a)における定義と同義である。R10aは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。〕で表されるエナミン化合物が挙げられる。

0093

一般式(1b)において、符号R10aで示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。また、符号R10aで示される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの炭素数1〜4の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられる。

0094

一般式(1a)で表されるエナミン化合物、特に一般式(1b)で表されるエナミン化合物は、一般式(1)で表されるエナミン化合物の中でも、電荷輸送能力に優れ、また合成が比較的容易であり、かつ収率が高いので、比較的安価に製造することができる。したがって、一般式(1a)で表されるエナミン化合物、好ましくは一般式(1b)で表されるエナミン化合物を用いることによって、光応答性を向上できるとともに、感光体1の製造原価を低減することができる。

0095

また、一般式(1a)で表されるエナミン化合物の中でも、特に優れた電荷輸送能力を有し、感光体1の光応答性の向上に大きく寄与できることから、一般式(1a)においてmが1であるエナミン化合物を用いることが好ましく、一般式(1b)においてmが1であるエナミン化合物を用いることが特に好ましい。

0096

一般式(1)で表されるエナミン化合物のうち、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、一般式(1)において、Ar1およびAr2が共にフェニル基であり、Ar3がフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはチエニル基であり、Ar4およびAr5のうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R1,R2,R3およびR4が共に水素原子であり、nが1であるエナミン化合物を挙げることができる。

0097

一般式(1)で表されるエナミン化合物のうち、下記一般式(1c)で表されるエナミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表32に示す例示化合物を挙げることができる。なお、表1〜32では、各例示化合物を一般式(1c)の各基に対応する基で表している。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で表されるエナミン化合物である。

0098

0099

〔式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、R1、R2、R3、R4、R5、nおよびlは一般式(1)における定義と同義である。〕

0100

0101

ただし、表1〜32において、Ar4の欄とAr5の欄とが1つにつながっている行では、一般式(1)においてRが2価の芳香環基または複素環基であるエナミン化合物を例示する。この場合、一般式(1)において符号Rで示される置換基は、Ar4の欄とAr5の欄とがつながっている欄に示す。また、一般式(1)においてnが2または3であるエナミン化合物のうち、複数個のR2で示される基が同一であり、かつ複数個のR3で示される基が同一であるものを例示する場合には、R2およびR3をそれぞれ1個示す。一般式(1)で表されるエナミン化合物は、以下の表1〜32に示す例示化合物No.1〜No.220に限定されるものではない。

0102

0103

0104

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0130

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0133

0134

一般式(1)で表されるエナミン化合物は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、下記一般式(5)で表されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(6)で表される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(7)で表されるエナミン中間体を製造する。

0135

〔式中、Ar1、Ar2およびR1は一般式(1)における定義と同義である。〕

0136

〔式中、Ar3、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。〕

0137

0138

〔式中、Ar1、Ar2、Ar3、R1、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。〕

0139

この脱水縮合反応は、たとえば以下のようにして行う。適当な溶媒に、一般式(5)で表されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、一般式(6)で表される2級アミン化合物とを略等モル量ずつ加えて溶解させ、溶液を調製する。使用される溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ブタノールなどのアルコール類およびジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類などを挙げることができる。調製された溶液中に、触媒、たとえばp−トルエンスルホン酸カンファースルホン酸ピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、必要に応じて加熱して反応させる。触媒の添加量は、一般式(5)で表されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、10分の1(1/10)〜1000分の1(1/1000)モル当量であることが好ましく、より好ましくは25分の1(1/25)〜500分の1(1/500)モル当量であり、さらに好ましくは50分の1(1/50)〜200分の1(1/200)モル当量である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶媒と共沸させて系外に取除くことが好ましい。これによって、一般式(7)で表されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。

0140

次に、一般式(7)で表されるエナミン中間体をアシル化することによって下記一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。

0141

0142

〔式中、Ar1、Ar2、Ar3、R1、R5およびlは一般式(1)における定義と同義である。R11は一般式(1)においてR2またはR4で示される基を示す。〕

0143

たとえば、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R11が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体は、一般式(7)で表されるエナミン中間体をフィルスマイヤー反応ホルミル化することによって製造することができる。

0144

フィルスマイヤー反応は、たとえば以下のようにして行う。適当な溶媒中に、オキシ塩化リンと、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−N−フェニルホルムアミドまたはN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、フィルスマイヤー試薬を調製する。このとき使用される溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。フィルスマイヤー試薬1.0〜1.3モル当量が調製された溶液中に、一般式(7)で表されるエナミン中間体1.0モル当量を加え、たとえば60〜110℃の加熱下で2〜8時間撹拌して反応させる。反応終了後、1〜8規定(N)のアルカリ性水溶液で加水分解を行う。加水分解に用いられるアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。以上のようにして、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R11が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。

0145

また、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R11が水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体は、一般式(7)で表されるエナミン化合物をフリーデルクラフトアシル化反応でアシル化することによって製造することができる。

0146

このフリーデル−クラフトアシル化反応は、たとえば以下のようにして行う。適当な溶媒中に、ルイス酸1.0〜1.2モル当量と下記一般式(9)で表されるハロゲン化アシル1.0モル当量とを加え、0.5〜1時間程度撹拌してフリーデル−クラフトアシル化試薬を調製する。このとき使用される溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。ルイス酸としては、塩化アルミニウム塩化スズ塩化亜鉛などが挙げられる。

0147

0148

〔式中、R11は一般式(8)における定義と同義である。X1はハロゲン原子を示す。〕

0149

一般式(1)において、符号X1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、これらの中でも塩素原子、臭素原子が好ましい。

0150

このようにしてフリーデル−クラフトアシル化試薬1.0〜1.3モル当量が調製された溶液中に、一般式(7)で表されるエナミン中間体1.0モル当量を加え、たとえばマイナス(−)40〜80℃で2〜8時間撹拌して反応させる。反応終了後、1〜8規定(N)のアルカリ性水溶液で加水分解を行う。加水分解に用いられるアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。以上のようにして、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R11が水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。

0151

なお、一般式(1)においてnが0であるエナミン化合物を製造する場合には、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体として、R11がR4である化合物を製造する。また、一般式(1)においてnが1〜3であるエナミン化合物を製造する場合には、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体として、R11がR2である化合物を製造する。

0152

次いで、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体と、下記一般式(10a)または(10b)で表されるウィティッヒ(Wittig)試薬とを塩基性条件下で反応させるウィッティッヒ−ホルナー(Wittig−Horner)反応を行うことによって、一般式(1)で表されるエナミン化合物を製造することができる。

0153

0154

〔式中、Rは一般式(1)における定義と同義である。R12はアルキル基またはアリール基を示す。〕

0155

0156

〔式中、R、R2、R3、R4およびnは一般式(1)における定義と同義である。ただし、nは0でない。R13はアルキル基またはアリール基を示す。〕

0157

一般式(10a)および(10b)で表されるウィッティッヒ試薬は、一般式(1)におけるnの値に応じて適宜選択されて使用される。たとえば、一般式(1)においてnが0であるエナミン化合物を製造する場合には、一般式(10a)で表されるウィッティッヒ試薬が用いられる。また、一般式(1)においてnが1〜3であるエナミン化合物を製造する場合には、一般式(10b)で表されるウィッティッヒ試薬が用いられる。

0158

一般式(10a)および(10b)において、符号R12またはR13で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などが挙げられ、これらの中でも環数1〜3のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。

0159

一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体と一般式(10a)または(10b)で表されるウィッティッヒ試薬とのウィッティッヒ−ホルナー反応は、たとえば以下のようにして行う。適当な溶媒中に、一般式(8)で表されるエナミン−カルボニル中間体1.0モル当量と、一般式(10a)または(10b)で表されるウィッティッヒ試薬1.0〜1.20モル当量と、金属アルコキシド塩基1.0〜1.5モル当量とを加え、たとえば室温または30〜60℃の加熱下で2〜8時間撹拌して反応させる。このとき使用される溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。金属アルコキシド塩基としては、カリウムt−ブトキサイドナトリウムエトサイド、ナトリウムメトキサイドなどが挙げられる。

0160

以上のようにして、一般式(1)で表されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。なお、一般式(1)で表されるエナミン化合物は、通常の分離手段、たとえば溶媒抽出法再結晶法またはカラムクロマトグラフィーなどによって反応混合物から容易に単離精製でき、高純度のものとして得ることができる。

0161

一般式(1)で表されるエナミン化合物は、たとえば前述の表1〜表32に示す例示化合物No.1〜No.220からなる群から選ばれる1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。

0162

次に、第2電荷輸送層15に含有される一般式(2)で表されるスチリル系化合物について説明する。

0163

一般式(2)において、符号Ar6で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられ、これらの中でも環数1〜4のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。

0164

符号Ar6で示されるアリール基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数5〜6のシクロアルキル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの炭素数1〜4の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルコキシ基などのアルコキシ基、ベンジル基などのアラルキル基、フェニル基などのアリール基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、スチリル基、ビニル基などのアルケニル基などが挙げられ、その中でも、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ハロゲン原子が好ましい。

0165

符号Ar6で示されるアリール基の有する置換基がアルキル基またはアルコキシ基である場合、これらの置換基は炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子などでさらに置換されていてもよい。また、符号Ar6で示されるアリール基の有する置換基がアラルキル基またはアリール基である場合、これらの置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子などでさらに置換されていてもよい。

0166

一般式(2)において、符号Ar7で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。符号Ar7で示されるアリール基としては、符号Ar6で示されるアリール基と同様のものが挙げられる。これらの各基が有してもよい置換基としては、符号Ar6で示されるアリール基が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。その中でも、アルキル基の有する置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ハロゲン原子が好ましく、アリール基の有する置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。

0167

一般式(2)において、符号Ar8で示されるフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基およびアントリレン基が有してもよい置換基としては、符号Ar6で示されるアリール基が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。その中でも、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。符号Ar8で示されるフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基またはアントリレン基の有する置換基がアルキル基またはアルコキシ基である場合、これらの置換基は炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子などでさらに置換されていてもよい。

0168

一般式(2)において、符号R6で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。また、符号R6で示される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などの炭素数1〜4の直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられる。

0169

一般式(2)において、符号Ar9で示されるアリール基としては、符号Ar6で示されるアリール基と同様のものが挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、符号Ar6で示されるアリール基が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。その中でも、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基、ハロゲン原子、ベンジル基、スチリル基、ビニル基が好ましい。符号Ar9で示されるアリール基の有する置換基がアルキル基またはアルコキシ基である場合、これらの置換基は炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子などでさらに置換されていてもよい。また符号Ar9で示されるアリール基の有する置換基がビニル基である場合、ビニル基はフェニル基などのアリール基でさらに置換されていてもよい。このときビニル基に置換するアリール基は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などでさらに置換されていてもよい。

0170

一般式(2)において符号Ar9で示される一般式(3)において、符号R7で示される炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシ基としては、符号R6で示される炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシ基と同様のものが挙げられる。一般式(3)で表される1価基としては、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基などの、R7が水素原子であるものなどが挙げられる。

0171

一般式(2)で表されるスチリル系化合物のうち、好ましい化合物としては、一般式(2)において、Ar6が置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有してもよいフェニル基であり、Ar7が水素原子であり、Ar8がフェニレン基であり、R6が水素原子であり、Ar9がフェニル基であるスチリル系化合物(以後、スチリル系化合物(2a)と称する)が挙げられる。

0172

スチリル系化合物(2a)は、酸化性ガスによる感光体の疲労劣化に対して特に優れた抑制効果を発揮する。したがって、スチリル系化合物(2a)を用いることによって、耐酸化性ガス性に特に優れ、繰返し使用時において安定した電気特性を示す信頼性の高い感光体1が実現される。

0173

一般式(2)で表されるスチリル系化合物の具体例としては、以下の構造式(2−1)〜(2−70)で表されるものが挙げられるけれども、一般式(2)で表されるスチリル系化合物はこれらに限定されるものではない。なお以下において、t−Buはt−ブチル基(−C(CH3)3)を示し、n−Buはn−ブチル基(−CH2CH2CH2CH3)を示す。

0174

0175

0176

0177

0178

0179

0180

0181

一般式(2)で表されるスチリル系化合物は、たとえば前述の構造式(2−1)〜(2−70)で表されるスチリル系化合物からなる群から選ばれる1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。

0182

第1電荷輸送層14には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、一般式(1)で表されるエナミン化合物以外の電荷輸送物質が含有されてもよい。一般式(1)で表されるエナミン化合物と併用可能な電荷輸送物質としては、カルバゾール誘導体オキサゾール誘導体オキサジアゾール誘導体チアゾール誘導体チアジアゾール誘導体トリアゾール誘導体イミダゾール誘導体イミダゾロン誘導体イミダゾリジン誘導体ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物インドール誘導体ピラゾリン誘導体オキサゾロン誘導体ベンズイミダゾール誘導体キナゾリン誘導体ベンゾフラン誘導体アクリジン誘導体フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体トリアリールアミン誘導体トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリN−ビニルカルバゾール)、ポリ(1−ビニルピレン)、ポリ(9−ビニルアントラセン)なども挙げられる。

0183

また、第2電荷輸送層15には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、一般式(2)で表されるスチリル系化合物以外の電荷輸送物質が含有されてもよい。一般式(2)で表されるスチリル系化合物と併用可能な電荷輸送物質としては、前述の一般式(1)で表されるエナミン化合物と併用可能な電荷輸送物質として例示したものなどが挙げられる。

0184

第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15のバインダ樹脂としては、たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂などのメタクリル樹脂ポリメチルアクリレートなどのアクリル樹脂ポリスチレン樹脂ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂ポリエステル樹脂ポリエステルカーボネート樹脂ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂ポリアミド樹脂ポリエーテル樹脂ポリウレタン樹脂ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また成膜性および電位特性などにも優れているので、これらの1種または2種以上をバインダ樹脂に用いることが好ましい。

0185

また、第1電荷輸送層14のバインダ樹脂には、前述の樹脂の中から、電荷輸送物質として用いられる一般式(1)で表されるエナミン化合物との相溶性に優れるものを選択して用いることが好ましい。また、第2電荷輸送層15のバインダ樹脂には、電荷輸送物質として用いられる一般式(2)で表されるスチリル系化合物との相溶性に優れるものを選択して用いることが好ましい。

0186

感光体1の機械的耐久性を向上させる手段としては、電荷輸送層16中におけるバインダ樹脂の比率を高くすることが考えられる。しかしながら、バインダ樹脂の比率の増加に伴って電荷輸送層16中の電荷輸送物質が希釈されるので、バインダ樹脂の比率を高くし過ぎると、感光体1の光応答性が低下し、充分な感度が得られない恐れがある。感光体1の光応答性が低下すると、残留電位が上昇し、感光体1の表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになり、露光によって消去されるべき部分の表面電荷が充分に消去されずに表面電位が充分に減衰せず、早期に画像品質が低下するという問題が生じる。

0187

このような問題を生じさせることなく、感光体1の機械的耐久性を向上させるためには、電荷輸送層16を構成する2つの電荷輸送層14,15のうち、外方に臨んで設けられる第2電荷輸送層15におけるバインダ樹脂の比率を相対的に高くし、第2電荷輸送層15よりも導電性支持体11寄りに設けられる第1電荷輸送層14におけるバインダ樹脂の比率を相対的に低くすることが好ましい。具体的には、第2電荷輸送層15において電荷輸送物質として含有される一般式(2)で表されるスチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)を、第1電荷輸送層14において電荷輸送物質として含有される一般式(1)で表されるエナミン化合物の重量(A’)に対するバインダ樹脂の重量(B’)の比率(B’/A’)よりも大きくすることが好ましい。

0188

このように、感光体1の表面層となる第2電荷輸送層15ではバインダ樹脂の比率を高くして耐刷性を高めるとともに、第2電荷輸送層15と電荷発生層13との間に設けられる第1電荷輸送層14では電荷輸送物質である一般式(1)で表されるエナミン化合物の比率を高くしてホール移動度を速くすることによって、電荷輸送層16全体の光応答性を確保することができる。したがって、光応答性を低下させることなく、感光体1の機械的耐久性を向上させることができる。

0189

第2電荷輸送層15に充分な耐刷性を付与し、かつ光応答性の低下を極力抑えるためには、第2電荷輸送層15における前記比率B/Aは、2.0以上6.0以下であることが好ましい。前記比率B/Aが6.0を超えてバインダ樹脂の比率が高くなると、電荷輸送物質である一般式(2)で表されるスチリル系化合物の比率が相対的に低くなるので、ホッピング伝導が起こりにくくなり、ホール移動度が低下する可能性がある。また、前記比率B/Aが2.0未満であると、第2電荷輸送層15の耐刷性が充分に確保できず、感光体1の機械的耐久性が不充分になる恐れがある。

0190

また、第1電荷輸送層14における前記比率B’/A’は、0.8以上2.0以下であることが好ましい。前記比率B’/A’を前記範囲に選択することによって、電荷輸送層16に充分な光応答性を付与するとともに、第1電荷輸送層14中における一般式(1)で表されるエナミン化合物の結晶化を抑え、第1電荷輸送層14の均一性を向上させることができる。これによって、感光体1を用いて形成される画像に黒ぽちなどの画像欠陥が発生することを防ぐことができる。前記比率B’/A’が2.0を超えてバインダ樹脂の比率が高くなると、バインダ樹脂に対する一般式(1)で表されるエナミン化合物の比率が低くなるので、ホール移動度が遅くなり、電荷輸送層16全体の光応答性が充分に得られない可能性がある。また、前記比率B’/A’が0.8未満であると、バインダ樹脂に対する電荷輸送物質の比率が高くなり過ぎ、繰返し使用される過程において、第1電荷輸送層14中で一般式(1)で表されるエナミン化合物の結晶化が発生し、画質が著しく低下する恐れがある。

0191

また、電荷輸送層16の各層、すなわち第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15には、酸化防止剤および光安定剤のうちの少なくともいずれか一方を添加することが好ましい。特に、感光体1の表面層である第2電荷輸送層15には、酸化防止剤および光安定剤の両方またはいずれか一方を添加することが好ましい。これによって、帯電時に発生するオゾン、NOxなどの酸化性ガスによる電荷輸送層16の各層14,15の劣化を軽減し、感光体1の電気的耐久性を一層向上させることができる。また、各層14,15を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高め、塗布液中への不純物の発生を防ぐことができるので、塗布液の寿命を延ばすことができるとともに、形成された各電荷輸送層14,15中の不純物を低減し、感光体1の電気的耐久性を向上させることができる。

0192

酸化防止剤としては、一般に樹脂などに添加して使用される酸化防止剤を用いることができ、たとえばヒンダードフェノール化合物トリメトキシホスフィントリフェノキシホスフィンなどのリン系酸化防止剤、ジ(n−オクチルスルフィドなどのイオウ系酸化防止剤ハイドロキノンおよびその誘導体、p−フェニレンジアミンおよびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体などが挙げられる。

0193

これらの中でも、ヒンダードフェノール化合物が好適に用いられる。ここで、ヒンダードフェノール化合物とは、フェノール性水酸基(−OH)を有し、かつそのフェノール性水酸基の近傍に嵩高い原子団を有する化合物のことである。嵩高い原子団としては、たとえば分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基などを挙げることができる。

0194

ヒンダードフェノール化合物の中でも、下記一般式(11)で表されるヒンダードフェノール化合物が好適に用いられる。

0195

〔式中、R14は炭素数1〜4のアルキル基を示す。〕

0196

一般式(11)において、符号R14で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。

0197

光安定剤としては、一般に樹脂などに添加して使用される光安定剤を用いることができ、たとえばヒンダードアミン化合物ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体などが挙げられる。

0198

これらの中でも、ヒンダードアミン化合物が好適に用いられる。ここで、ヒンダードアミン化合物とは、アミノ窒素原子を有し、かつそのアミノ窒素原子の近傍に嵩高い原子団を有するアミン化合物のことである。嵩高い原子団としては、たとえば分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基などを挙げることができる。ヒンダードアミン化合物は、芳香族アミン系および脂肪族アミン系のいずれであってもよいけれども、脂肪族アミン系であることが好ましい。

0199

ヒンダードアミン化合物の中でも、下記一般式(12)で表されるヒンダードアミン化合物が好適に用いられる。

0200

0201

〔式中、R15は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基を示す。R16およびR17はそれぞれ、アシルオキシ基を示す。R16およびR17が結合する炭素原子には、R16およびR17に代えて、2価の脂肪族複素環基が結合していてもよい。〕

0202

一般式(12)において、符号R15で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。符号R15で示されるアシル基としては、アセチル基などが挙げられる。符号R16またはR17で示されるアシルオキシ基としては、アセトキシ基ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。R16およびR17の結合する炭素原子に結合していてもよい2価の脂肪族複素環基としては、ピロリジンジイル基、イミダゾリジンジイル基、イミダゾリジンジオンジイル基、テトラヒドロフランジイル基、ジオキソランジイル基、ピペリジンジイル基などが挙げられる。これらの各基は、アルキル基などの置換基を有していてもよい。

0203

一般式(12)で表されるヒンダードアミン化合物の具体例としては、たとえば、下記構造式(12−1)で表されるヒンダードアミン化合物を挙げることができる。

0204

0205

なお、前述のヒンダードフェノール化合物は、ヒンダードアミン化合物の特徴を併せ持っていてもよい。すなわち、ヒンダードフェノール化合物は、アミノ窒素原子をさらに有し、その近傍に嵩高い原子団を有していてもよい。

0206

第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15の両方の層に酸化防止剤および/または光安定剤を含有させる場合、第2電荷輸送層15における酸化防止剤および/または光安定剤の比率W2は、第1電荷輸送層14における酸化防止剤および/または光安定剤の比率W1よりも大きい(W2>W1)ことが好ましい。このように、オゾン、NOxなどの酸化性ガスに曝される第2電荷輸送層15により多くの酸化防止剤および/または光安定剤を含有させることによって、第2電荷輸送層15で効率良く酸化性ガスを捕捉して不活性化することができるので、酸化性ガスによる感光体1の劣化を効果的に防止することができる。また、電荷輸送層16全体としては、含有される酸化防止剤および/または光安定剤の総量を抑制することができるので、酸化防止剤および/または光安定剤を含有させることによる感光体1の電気特性への悪影響を抑制することができる。したがって、光応答性などの電気特性を低下させることなく、耐酸化性ガス性を向上させ、感光体1の電気的耐久性を一層向上させることができる。

0207

なお、第1電荷輸送層14に一般式(1)で表されるエナミン化合物とそれ以外の電荷輸送物質とが含有される場合、第2電荷輸送層15に一般式(2)で表されるスチリル系化合物とそれ以外の電荷輸送物質とが含有される場合などには、第2電荷輸送層15における一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W2’を、第1電荷輸送層14における一般式(1)で表されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量の比率W1’よりも大きく(W2’>W1’)することが好ましい。

0208

酸化性ガスによる感光体1の劣化を充分に抑制するためには、第2電荷輸送層15における酸化防止剤および/または光安定剤の比率W2、すなわち一般式(2)で表されるスチリル系化合物およびバインダ樹脂の合計重量(A+B)に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量(C2)の比率〔C2/(A+B)〕は、0.01以上0.1以下であることが好ましい。前記比率W2が0.01未満であると、耐酸化性ガス性向上および塗布液の安定性向上の効果が充分に発揮されない可能性がある。前記比率W2が0.1を超えると、感光体1の電気特性に悪影響が生じる恐れがある。

0209

第1電荷輸送層14における酸化防止剤および/または光安定剤の比率W1、すなわち一般式(1)で表されるエナミン化合物およびバインダ樹脂の合計重量(A’+B’)に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量(C1)の比率〔C1/(A’+B’)〕は、光応答性などの電気特性の低下をより確実に抑えるために、0.1以下であることが好ましく、0.04以下であることがさらに好ましい。前記比率W1が0.1を超えると、感光体1の光応答性が低下する恐れがある。また、前記比率W1の下限は、特に制限されないけれども、感光体1の耐酸化性ガス性および塗布液の安定性を向上させるという観点からは、0.001以上であることが好ましい。前記比率W1が0.001未満であると、耐酸化性ガス性および塗布液の安定性の向上効果が充分に発揮されない可能性がある。

0210

さらに、第1電荷輸送層14において、一般式(1)で表されるエナミン化合物の重量(A’)に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量(C1)の比率(C1/A’)は、0.001以上0.1以下であることが好ましく、より好ましくは0.001以上0.05以下である。前記比率C1/A’が0.001未満であると、耐酸化性ガス性の向上および塗布液の安定性の向上に充分な効果が発揮されない可能性がある。前記比率C1/A’が0.1を超えると、感光体1の電気特性に悪影響が生じる恐れがある。

0211

また、第2電荷輸送層15において、一般式(2)で表されるスチリル系化合物の重量(A)に対する酸化防止剤および/または光安定剤の合計重量(C2)の比率(C2/A)は、0.001以上1以下であることが好ましく、より好ましくは0.05以上0.5以下である。前記比率C2/Aが0.001未満であると、耐酸化性ガス性および塗布液の安定性の向上効果が充分に得られない可能性がある。前記比率C2/Aが1を超えると、感光体1の電気特性に悪影響が生じる恐れがある。

0212

また、電荷輸送層16の各層、すなわち第1電荷輸送層14および第2電荷輸送層15には、成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させるために、可塑剤または表面改質剤などの各種添加剤を添加してもよい。可塑剤としては、たとえばビフェニル塩化ビフェニル、ベンゾフェノン、o−ターフェニルフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル脂肪酸エステルリン酸エステル、各種フルオロ炭化水素塩素化パラフィンエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。表面改質剤としては、シリコーンオイルフッ素樹脂などが挙げられる。また、電荷輸送層16の各層14,15には、機械的強度の増強および電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物微粒子を添加してもよい。

0213

電荷輸送層16の各層14,15は、前述の電荷発生層12の形成に用いられる塗布法などを用いて形成することができる。第1電荷輸送層14を形成するための第1電荷輸送層用塗布液は、たとえば、適当な溶剤に一般式(1)で表されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂を溶解または分散させ、必要に応じて前述の酸化防止剤、光安定剤などの各種添加剤を添加して調製される。同様に、第2電荷輸送層15を形成するための第2電荷輸送層用塗布液は、たとえば、適当な溶剤に一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂を溶解または分散させ、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤などの各種添加剤を添加して調製される。これらの塗布液の溶剤には、前述の電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤と同様のものを用いることができる。また、各塗布液塗布方法としては、前述の下引層12上に電荷発生層用塗布液を塗布する際と同様の方法を用いることができる。

0214

第1電荷輸送層14の厚さd1は、第2電荷輸送層15の厚さd2よりも大きい(d1>d2)ことが好ましい。第1電荷輸送層14の厚さd1が第2電荷輸送層15の厚さd2以下(d1≦d2)であると、感光体1の光応答性が充分に得られない可能性があるけれども、前述のように第1電荷輸送層14の厚さd1を第2電荷輸送層15の厚さd2よりも大きく(d1>d2)することによって、光応答性に特に優れる感光体1を実現することができる。

0215

第1電荷輸送層14の厚さd1は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上30μm以下である。第1電荷輸送層14の厚さd1が5μm未満であると、電荷輸送層16全体の光応答性が充分に得られない可能性がある。第1電荷輸送層14の厚さd1が40μmを超えると、電荷輸送層16全体の厚さが大きくなり過ぎ、解像度が低下する恐れがある。

0216

第2電荷輸送層15の厚さd2は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上10μm以下である。第2電荷輸送層15の厚さd2が1μm未満であると、耐酸化性ガス性が充分に確保できない可能性がある。また、摩耗によって第2電荷輸送層15の全てが感光体1の電気的な寿命前に消失し、充分な寿命が得られない可能性がある。第2電荷輸送層15の厚さd2が20μmを超えると、電荷輸送層16全体の厚さが大きくなり過ぎ、解像度が低下する恐れがある。

0217

また、電荷輸送層16全体の厚さ、すなわち第1電荷輸送層14の厚さd1と第2電荷輸送層15の厚さd2との和(d1+d2)は、10μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上40μm以下である。電荷輸送層16全体の厚さが10μm未満であると、感光体1の帯電保持能が低下する恐れがある。電荷輸送層16全体の厚さが50μmを超えると、感光体1の解像度が低下する恐れがある。

0218

以上に述べたように、本実施形態の感光体1では、電荷輸送層16は第1電荷輸送層14と第2電荷輸送層15との2つの層で構成されるけれども、これに限定されず、3つ以上の層で構成されてもよい。このように3つ以上の層で構成することによって、感光体の光応答性、感度などの電気特性の調整が容易になる。ただし、本実施形態のように2つの層で電荷輸送層16を構成する方が、形成するべき層が少ないので、生産性、製造原価および歩留の点で優れている。

0219

電荷輸送層16を3つ以上の層で構成する場合には、一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有する第2電荷輸送層15を外方に臨むように設け、第2電荷輸送層15と第1電荷輸送層14との間または第1電荷輸送層14と電荷発生層13との間に、別の電荷輸送層をさらに設ければよい。別の電荷輸送層は、一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有することが好ましい。これによって、電荷輸送層16を構成する層数の増加による光応答性の低下を防ぐことができる。別の電荷輸送層が一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有しない場合、別の電荷輸送層は、第1電荷輸送層14と第2電荷輸送層15との間に設けることが好ましい。これによって、一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する第1電荷輸送層14を電荷発生層13に接して設けることができるので、感光体の光応答性の低下を抑えることができる。

0220

図2は、本発明の実施の他の形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。本実施の形態の画像形成装置100は、前述の実施形態の感光体1を備える。画像形成装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される前述の感光体1と、感光体1を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる図示しない駆動手段とを備える。駆動手段は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体1の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。

0221

感光体1の周囲には、帯電手段である帯電器32と、露光手段30と、現像手段である現像器33と、転写手段である転写器34と、清掃手段であるクリーナ36とが、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。

0222

帯電器32は、コロナ放電などによって感光体1の表面43を負または正の所定の電位に帯電させる。帯電器32は、たとえばコロナ放電帯電器などの非接触式の帯電手段によって実現される。露光手段30は、たとえば半導体レーザ素子光源として備え、光源から画像情報に応じて光31を照射することによって、帯電された感光体1の表面43を露光する。現像器33は、露光手段30による露光によって感光体1の表面43に形成された静電潜像を現像剤で現像し、可視像であるトナー像を形成する。本実施形態では、現像器33は、感光体1に対向して設けられ感光体1の表面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。

0223

転写器34は、感光体1との間に供給される転写材である記録用紙51にたとえばトナーと逆極性の電荷を与えることによって、感光体1の表面43に形成されたトナー像を、感光体1の表面43から記録用紙51に転写させる。転写器34は、たとえばコロナ放電帯電器などの非接触式の転写手段によって実現される。クリーナ36は、トナー像が転写された後の感光体1の表面43を清掃する。本実施形態では、クリーナ36は、感光体表面43に押圧され、転写器34による転写動作後に感光体1の表面43に残留するトナーおよび紙粉などの異物を前記表面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーなどの異物を収容する回収用ケーシング36bとを備える。

0224

トナー像が転写された記録用紙51が搬送される方向には、転写されたトナー像を記録用紙51に定着させる定着器35が設けられる。本実施形態では、定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。

0225

画像形成装置100では、以下のようにして画像が形成される。まず、図示しない制御部からの指示に応じて、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動され、その表面43が帯電器32によって帯電される。次いで、制御部からの指示に応じて、露光手段30から光31が照射され、感光体1が露光される。これによって、光31が照射された部分の表面電荷が減少し、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じて、感光体1の表面43に静電潜像が形成される。次いで、現像器33によって静電潜像が現像され、感光体1の表面43にトナー像が形成される。

0226

また、感光体1への露光と同期して、記録用紙51が、図示しない搬送手段によって矢符42方向から転写器34と感光体1との間の転写位置に供給される。記録用紙51が転写位置に供給されると、感光体1の表面43に形成されたトナー像が転写器34によって記録用紙51に転写される。次いで、定着器35によって記録用紙51が加熱および加圧されて、トナー像が記録用紙51に定着される。このようにして画像が形成された記録用紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。

0227

一方、トナー像が記録用紙51に転写された後に、さらに矢符41方向に回転する感光体1は、その表面43がクリーナ36のクリーニングブレード36aによって擦過され、清掃される。このようにしてトナーなどの異物が除去された感光体1の表面43は、除電ランプからの光によって電荷が除去される。これによって感光体1の表面43の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度感光体1の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。

0228

画像形成装置100に備わる感光体1は、前述のように帯電性、感度および光応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、コロナ放電帯電器などの帯電器32から発生するオゾンおよび窒素酸化物などの酸化性ガスによる劣化を受けにくいという利点を有する。このため、感光体1は、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下せず、繰返し使用後においても実使用上充分な電気特性を有する。したがって、画像形成装置100は、耐久性に優れ、白抜けおよび黒帯などの画像欠陥のない高品質の画像を長期間にわたって安定して形成することができる。

0229

本発明に係る画像形成装置は、以上に述べた図2に示す画像形成装置100の構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。

0230

たとえば、本実施形態の画像形成装置100では、帯電器32は、非接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、たとえば帯電ローラなどの接触式の帯電手段であってもよい。また転写器34は、押圧力を用いずに転写を行なう非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、押圧力を利用して転写を行なう接触式の転写手段であってもよい。接触式の転写手段としては、たとえば、転写ローラを備え、記録用紙51の感光体1の表面43に当接される面と反対側の面から転写ローラを感光体1に対して押圧し、感光体1と記録用紙51とを圧接させた状態で、転写ローラに電圧印加することによって、トナー像を記録用紙51に転写させるものなどを用いることができる。

0231

以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。

0232

[製造例]
(製造例1)例示化合物No.1の製造
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mLに、下記構造式(13)で表されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)と、下記構造式(14)で表されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取除きながら、6時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌されているヘキサン100mL中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノール洗浄することによって、淡黄色粉末状化合物36.2gを得た。

0233

0234

0235

得られた化合物を液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid Chromatography−
Mass Spectrometry;略称LC−MS)で分析した結果、下記構造式(15)で表されるエナミン中間体(分子量の計算値:411.20)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが412.5に観測されたことから、得られた化合物が下記構造式(15)で表されるエナミン中間体であることが確認された(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン中間体の純度が99.5%であることが判った。

0236

0237

以上のように、2級アミン化合物である構造式(13)で表されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミンと、アルデヒド化合物である構造式(14)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとの脱水縮合反応を行なうことによって、構造式(15)で表されるエナミン中間体を得ることができた。

0238

(製造例1−2)エナミン−アルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(略称DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2当量)を徐々に加え、約30分間攪拌してフィルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、(製造例1−1)で得られた構造式(15)で表されるエナミン中間体20.6g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、反応溶液を徐々に加熱して温度80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌して反応させた。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)−水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶媒再結晶することによって、黄色粉末状化合物20.4gを得た。

0239

得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:439.19)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが440.5に観測されたことから、得られた化合物が下記構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体であることが確認された(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン−アルデヒド中間体の純度が99.7%であることが判った。

0240

0241

以上のように、構造式(15)で表されるエナミン中間体をフィルスマイヤー反応でホルミル化することによって、構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができた。

0242

(製造例1−3)例示化合物No.1の製造
(製造例1−2)で得られた構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体8.8g(1.0当量)と、下記構造式(17)で表されるジエチルシンナミルホスホネート6.1g(1.2当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた。

0243

0244

その後、反応溶液を温度50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行なうことによって、黄色結晶10.1gを得た。

0245

得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物(分子量の計算値:539.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが540.5に観測された。また、得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl3)中における核磁気共鳴(Nuclear Magnetic
Resonance;略称NMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.1のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。LC−MSの分析結果およびNMRスペクトル測定結果から、得られた結晶が例示化合物No.1のエナミン化合物であることが確認された(収率:94%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1のエナミン化合物の純度が99.8%であることが判った。

0246

以上のように、構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体と、ウィッティッヒ試薬である構造式(17)で表されるジエチルシンナミルホスホネートとのウィッティッヒ−ホルナー反応を行なうことによって、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物を得ることができた。

0247

(製造例2)例示化合物No.61の製造
前述の構造式(13)で表されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(p−メトキシフェニル)−α−ナフチルアミン4.9g(1.0当量)を用いる以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応によるエナミン中間体の製造(収率:94%)およびフィルスマイヤー反応によるエナミン−アルデヒド中間体の製造(収率:85%)を行ない、さらにウィッティッヒ−ホルナー反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.9gを得た。なお、各反応に使用する試薬の量は、試薬と基質との当量関係が製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同じになるように変更した。

0248

得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物(分子量の計算値:555.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが556.7に観測された。また、得られた化合物のCDCl3中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.61のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物が例示化合物No.61のエナミン化合物であることが確認された(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.61のエナミン化合物の純度が99.0%であることが判った。

0249

以上のように、脱水縮合反応、フィルスマイヤー反応およびウィッティッヒ−ホルナー反応の3段階の反応を行うことによって、3段階収率73.5%で、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を得ることができた。

0250

(製造例3)例示化合物No.46の製造
(製造例1−2)で得られた構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)と、下記構造式(18)で表されるウィッティッヒ試薬1.53g(1.2当量)とを、無水DMF15mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.71g(1.25当量)を室温で徐々に加えた。

0251

0252

その後、反応溶液を温度50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌して反応させた。反応溶液を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行なうことによって、黄色結晶2.37gを得た。

0253

得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的化合物である表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物(分子量の計算値:565.28)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが566.4に観測された。また、得られた化合物のCDCl3中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.46のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物が例示化合物No.46のエナミン化合物であることが確認された(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度が99.8%であることが判った。

0254

以上のように、構造式(16)で表されるエナミン−アルデヒド中間体と構造式(18)で表されるウィッティッヒ試薬とのウィッティッヒ−ホルナー反応を行なうことによって、表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。

0255

[実施例]
(実施例1)
酸化チタンTTO−MI−1(商品名、Al2O3およびZrO2で表面処理された樹枝状ルチル型チタン成分85%、石原産業株式会社製)3重量部と、アルコール可溶性ナイロン樹脂CM8000(商品名、東レ株式会社製)3重量部とを、メタノール60重量部と1,3−ジオキソラン40重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェイカにて10時間分散処理して下引層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を浸漬後引上げ自然乾燥して厚さ0.9μmの下引層を形成した。導電性支持体には、外径30mm、長手方向の長さ346mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体を用いた。

0256

次いで、ブチラール樹脂S−LEBL−2(商品名、積水化学工業株式会社製)10重量部と、1,3−ジオキソラン1400重量部と、チタニルフタロシアニン(前述の一般式(4)においてR21、R22、R23およびR24がいずれも水素原子であるもの)15重量部とを、ボールミルにて72時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。この塗布液を、下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて先に形成した下引層上に塗布し、自然乾燥して厚さ0.2μmの電荷発生層を形成した。

0257

次いで、電荷輸送物質として前述の表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)55重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)45重量部と、酸化防止剤としてスミライザーHT(商品名、住友化学工業株式会社製)2重量部とを混合し、テトラヒドロフラン708重量部に溶解させて第1電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を、先に形成した電荷発生層上に下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて塗布し、自然乾燥して厚さ20μmの第1電荷輸送層を形成した。なお、スミライザーBHTは、前述の一般式(11)においてR14がメチル基であるヒンダードフェノール化合物、すなわち2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノールである。

0258

次いで、電荷輸送物質として前述の構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)110重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)90重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(住友化学工業株式会社製)10重量部とを混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解させて第2電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を、下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて先に形成した第1電荷輸送層上に塗布し、温度130℃で1時間乾燥して厚さ5μmの第2電荷輸送層を形成し、全体の厚さが25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして実施例1の感光体を作製した。

0259

(実施例2)
第1電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.61のエナミン化合物に代えて前述の表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を用いること以外は実施例1と同様にして、実施例2の感光体を作製した。

0260

(実施例3)
第1電荷輸送層の形成に際し、酸化防止剤であるスミライザーBHT(住友化学工業株式会社製)の使用量を10重量部に変更すること以外は実施例1と同様にして、実施例3の感光体を作製した。

0261

(実施例4)
第2電荷輸送層の形成に際し、酸化防止剤であるスミライザーBHT(住友化学工業株式会社製)の使用量を1重量部に変更すること以外は実施例1と同様にして、実施例4の感光体を作製した。

0262

(実施例5)
実施例1と同様にして下引層、電荷発生層および第1電荷輸送層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)77重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)63重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)8重量部とを混合し、テトラヒドロフラン980重量部に溶解させて第2電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を用いて実施例1と同様にして第2電荷輸送層を形成し、実施例5の感光体を作製した。

0263

(実施例6)
実施例1と同様にして下引層、電荷発生層および第1電荷輸送層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)330重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)270重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)23重量部とを混合し、テトラヒドロフラン1200重量部に溶解させて第2電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を用いて実施例1と同様にして第2電荷輸送層を形成し、実施例6の感光体を作製した。

0264

(実施例7)
実施例1と同様にして下引層、電荷発生層および第1電荷輸送層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)385重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)315重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)27重量部とを混合し、テトラヒドロフラン1200重量部に溶解させて第2電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を用いて実施例1と同様にして第2電荷輸送層を形成し、実施例7の感光体を作製した。

0265

(比較例1)
実施例1と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)71.5重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)58.5重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)2.3重量部とを混合し、テトラヒドロフラン892重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を、先に形成した電荷発生層上に実施例1の下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて塗布し、温度130℃で1時間乾燥して厚さ25μmの電荷輸送層を一層のみ形成した。このようにして、一層で形成される電荷輸送層を有する比較例1の感光体を作製した。

0266

(比較例2)
第1電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.61のエナミン化合物に代えて下記構造式(19)で表されるブタジエン系化合物を用いること以外は実施例1と同様にして、比較例2の感光体を作製した。

0267

0268

(比較例3)
実施例1と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物100重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)72重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)59重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)2.3重量部とを混合し、テトラヒドロフラン892重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を、先に形成した電荷発生層上に実施例1の下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて塗布し、温度130℃で1時間乾燥して厚さ25μmの電荷輸送層を一層のみ形成した。このようにして、一層で形成される電荷輸送層を有する比較例3の感光体を作製した。

0269

(比較例4)
実施例1と同様にして下引層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送物質として前述の表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物80重量部および構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物20重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂GK−700(商品名、出光興産株式会社製)72重量部およびポリカーボネート樹脂GH−503(商品名、出光興産株式会社製)59重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(商品名、住友化学工業株式会社製)2.3重量部とを混合し、テトラヒドロフラン892重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を、先に形成した電荷発生層上に実施例1の下引層の場合と同様に浸漬塗布法にて塗布し、温度130℃で1時間乾燥して厚さ25μmの電荷輸送層を一層のみ形成した。このようにして、一層で形成される電荷輸送層を有する比較例4の感光体を作製した。

0270

(比較例5)
第2電荷輸送層の形成に際し、構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物に代えて下記構造式(20)で表されるスチリル系化合物を用いること以外は実施例1と同様にして、比較例5の感光体を作製した。

0271

0272

(比較例6)
第2電荷輸送層の形成に際し、構造式(2−14)で表されるスチリル系化合物に代えて前述の構造式(19)で表されるブタジエン系化合物を用いること以外は実施例1と同様にして、比較例6の感光体を作製した。

0273

[評価]
以上のようにして作製した実施例1〜7および比較例1〜6の感光体について、以下のようにして特性を評価した。

0274

(評価1)
実施例1〜7および比較例1,2の各感光体を試験用画像形成装置にそれぞれ搭載し、温度5℃、相対湿度20%の低温/低湿(L/L:Low Temperature/Low Humidity)環境下および温度35℃、相対湿度85%の高温高湿(H/H:High Temperature/High
Humidity)環境下のそれぞれの環境下において、以下のようにして光応答性を評価した。試験用画像形成装置には、感光体の帯電手段としてコロナ放電帯電器を備える市販のレーザプリンタ(商品名:AR-450、シャープ株式会社製)に、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(商品名:CATE751、ジェンテック社製)を設けたものを用いた。なお、前述のレーザプリンタAR-450は、感光体表面を負に帯電して電子写真プロセスを行なう負帯電型の画像形成装置である。

0275

実施例1〜7および比較例1,2の各感光体が搭載された試験用画像形成装置を用い、感光体表面を帯電器によってマイナス(−)500Vに帯電させた後レーザ光による露光を施し、露光を施した直後の感光体の表面電位を測定し、その絶対値を露光電位VL〔V〕として求めた。露光電位VLが小さいほど、光応答性に優れると評価した。

0276

評価結果を表33に示す。なお、表33のBHT比率の欄には、第1電荷輸送層または第2電荷輸送層における電荷輸送物質およびバインダ樹脂の合計重量に対する酸化防止剤であるスミライザーBHTの重量の比率を記載する。また、B’/A’の欄には、第1電荷輸送層における電荷輸送物質の重量に対するバインダ樹脂の重量の比率を記載し、B/Aの欄には、第2電荷輸送層における電荷輸送物質の重量に対するバインダ樹脂の重量の比率を記載する。これらは、後述する表34においても同様に記載する。なお、電荷輸送層を一層で形成した比較例1については、第1電荷輸送層の欄に、用いられた電荷輸送物質の種類、電荷輸送層におけるBHT比率および電荷輸送物質の重量に対するバインダ樹脂の重量の比率を記載し、第2電荷輸送層の欄には「−」と記載した。

0277

0278

表33に示すように、実施例1〜7と比較例1との比較から、電荷輸送層が一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する第1電荷輸送層と一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有する第2電荷輸送層との2つの層で形成される実施例1〜7の感光体は、電荷輸送層が一般式(2)で表されるスチリル系化合物を含有する層のみで形成される比較例1の感光体に比べ、H/H環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、露光電位VLが小さく、光応答性に優れることが判った。

0279

実施例1〜7と比較例2との比較から、第1電荷輸送層の電荷輸送物質として一般式(1)で表されるエナミン化合物を用いた実施例1〜7の感光体は、一般式(1)で表されるエナミン化合物以外の電荷輸送物質を用いた比較例2の感光体に比べ、露光電位VLが小さく、光応答性に優れることが判った。

0280

実施例1,2,5〜7と実施例3との比較から、実施例1,2,5〜7のように、第2電荷輸送層における酸化防止剤であるBHTの比率W2を第1電荷輸送層におけるBHTの比率W1よりも大きくすることによって、露光電位VLを低減し、光応答性を向上させることができることが判った。

0281

実施例1〜6と実施例7との比較から、実施例1〜6のように、第2電荷輸送層における一般式(2)で表されるスチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)を6.0以下にすることによって、露光電位VLを小さくすることができ、光応答性をさらに向上できることが判った。

0282

また、実施例1と実施例2との比較から、第1電荷輸送層の電荷輸送物質として、前述の一般式(1b)においてmが1であるエナミン化合物を用いた実施例1の感光体は、一般式(1b)においてmが2であるエナミン化合物を用いた実施例2の感光体に比べ、露光電位VLが小さく、光応答性に優れることが判る。このことから、実施例1のように、第1電荷輸送層の電荷輸送物質として一般式(1b)においてmが1であるエナミン化合物を用いることによって、露光電位VLを一層低減し、光応答性に特に優れる感光体が得られることが判った。

0283

(評価2)
実施例1〜7および比較例3〜6の各感光体について、以下のようにして(a)耐酸化性ガス性および(b)耐刷性を評価した。

0284

(a)耐酸化性ガス性
実施例1〜7および比較例3〜6の各感光体を、感光体の帯電手段としてコロナ放電帯電器を備える市販のフルカラー複写機(商品名:ARC-150、シャープ株式会社製)にそれぞれ搭載し、温度5℃、相対湿度20%の低温/低湿(L/L)環境下において、所定のパターンテスト画像を記録用紙5000枚に連続して複写させた。その後複写機の電源切り、一晩(約20時間)放置した後、記録用紙にハーフトーン画像を複写させ、これを評価用画像とした。ここで、ハーフトーン画像とは、画像の濃淡白黒ドットによって階調表現した画像のことである。

0285

形成された評価用画像を目視によって観察し、各ドットがぼやけているか否か、すなわち画像ぼけが発生しているか否かを判断した。また、複写機の電源を切っている間にコロナ放電帯電器に近接して配置されていた感光体の部位からトナー像が転写された部分に相当する記録用紙の部位に、白抜けおよび黒帯が発生しているか否かを判断した。これらの判断結果に基づき、画像ぼけ、白抜けおよび黒帯などの画像欠陥の発生度合によって感光体の耐酸化性ガス性を評価した。耐酸化性ガス性の評価基準は以下のようである。
◎:優。画像欠陥が全く発生していない。
○:良。若干の画像欠陥が発生しているけれども、無視できる程度である。
△:可。若干の画像欠陥が発生しているけれども、実使用上問題がない程度である。
×:不可。多数の画像欠陥が発生し、実使用不可

0286

(b)耐刷性
実施例1〜7および比較例3〜6の各感光体を試験用画像形成装置にそれぞれ搭載し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿(N/N:Normal Temperature/Normal
Humidity)環境下で、シャープ株式会社製文字テストチャートを記録用紙10万枚に連続して形成させる耐刷試験を行なった。試験用画像形成装置には、市販のレーザプリンタ(商品名:AR-450、シャープ株式会社製)を、クリーニング器のクリーニングブレードが感光体に当接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を初期線圧で21.4g/cmに調整したものを用いた。

0287

耐刷試験前後の感光層の厚さを、光干渉法による瞬間マルチ測光システムMCPD−1100(商品名、大塚電子株式会社製)を用いて測定し、耐刷試験前の感光層の厚さと耐刷試験後の感光層の厚さとの差から、10万回転当りの感光層の膜減り量を求めた。膜減り量が小さいほど、耐刷性に優れると評価した。

0288

以上の評価結果を表34に示す。なお、表34では、電荷輸送層を一層で形成した比較例3および4については、第1電荷輸送層の欄に、用いられた電荷輸送物質、電荷輸送層におけるBHT比率および電荷輸送物質の重量に対するバインダ樹脂の重量の比率を記載し、第2電荷輸送層の欄には「−」と記載した。

0289

0290

実施例1〜7と比較例3との比較から、実施例1〜7のように、一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する第1電荷輸送層にさらに一般式(2)で表されるスチリル系化合物を有する第2電荷輸送層を積層することによって、比較例3のように一般式(1)で表されるエナミン化合物を含有する一層で電荷輸送層が形成される感光体に比べて耐酸化性ガス性を向上させることができ、長期間にわたって画像欠陥のない高品質の画像を形成できることが判った。

0291

実施例1〜7と比較例4との比較から、実施例1〜7のように電荷輸送層が二層で構成され、その二層のうち外方に臨む第2電荷輸送層に電荷輸送物質として一般式(2)で表されるスチリル系化合物が含有される感光体の方が、比較例4のように電荷輸送層が一層で構成され、その電荷輸送層に一般式(1)で表されるエナミン化合物と一般式(2)で表されるスチリル系化合物とが含有される感光体に比べて、より耐酸化性ガス性に優れることが判った。

0292

実施例1〜7と比較例5,6との比較から、実施例1〜7のように第1電荷輸送層の電荷輸送物質として一般式(2)で表されるスチリル系化合物を用いた感光体は、比較例5,6のように他の電荷輸送物質を用いた感光体に比べて耐酸化性ガス性に優れ,長期間にわたって繰返し使用しても、画像欠陥のない高品質の画像を提供できることが判った。

0293

また、実施例1,2,5〜7と実施例4との比較から、実施例1,2,5〜7のように第2電荷輸送層における酸化防止剤の比率W2を第1電荷輸送層における酸化防止剤の比率W1よりも大きくすることによって、耐酸化性ガス性が向上され、長期間にわたる画質の安定性が向上することが判った。

0294

実施例1〜4,6,7と実施例5との比較から、実施例1〜4,6,7のように第2電荷輸送層における一般式(2)で表されるスチリル系化合物の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)を2.0以上にすることによって、耐刷性を向上させ、優れた機械的耐久性を実現できることが判った。この結果と、前述の表33に示す結果から、実施例1〜4,6のように第2電荷輸送層における前記比率B/Aを2.0以上6.0以下にすることによって、光応答性および機械的耐久性のいずれにも優れる感光体が得られることが判った。

図面の簡単な説明

0295

本発明の実施の一形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。
本発明の実施の他の形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。

符号の説明

0296

1電子写真感光体
11導電性支持体
12下引層
13電荷発生層
14 第1電荷輸送層
15 第2電荷輸送層
16 電荷輸送層
17感光層
30露光手段
32帯電器
33現像器
34転写器
35定着器
36クリーナ
100 画像形成装置

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