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課題
解決手段
概要
背景
ごみ焼却場等において発生する酸性ガス等の排ガス処理用途として使用される消石灰として、輸送時の配管への付着や配管閉塞などの問題が少ない消石灰が望まれている。特に、一般的に使用されている汎用消石灰においては、輸送や貯蔵、圧送時における配管等への付着や流動性不良の問題が存在する。従って、汎用消石灰を使用する際、輸送配管の維持管理などには多くの人的負担やコストが必要とされる。
上記諸問題を解決する方策として、消石灰、粉末生石灰及び、グリコール類、グリコールエーテル類又はエタノールアミン類から選択された少なくとも1種の添加剤からなり、前記の消石灰と粉末生石灰の重量割合が、98:2〜70:30である改質した低付着性消石灰が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、付着性を改善する添加剤としてパーライトを含む付着性改善消石灰が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第2963626号公報(請求項1)
特開2003−252621号公報(請求項1)
概要
流動性に優れ、かつ付着性を改善した付着抑制型消石灰を提供する。本発明の付着抑制型消石灰は、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰からなるか、或いは、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を40重量%以上の割合で含むことを特徴とする。この消石灰に、グリコール類及びエタノールアミン類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を消石灰100重量%に対して0.1〜5重量%の割合で添加するか、又はシラスバルーン、バーミキュライト及びパーライトからなる群より選ばれた1種又は2種以上の無機粉体を消石灰100重量%に対して0.5〜5重量%の割合で添加することが好ましい。なし
目的
しかしながら、特許文献1又は2に示される消石灰では、一定の付着抑制効果は得られているが、添加剤を必ず加える必要があるため汎用消石灰に比べてコストが上昇してしまうこと、また用途によっては使用が制限されるなどの問題があり、更なる改良が要望されていた。また、上記特許文献1又は2に示される消石灰では流動性不良の問題点については、十分に解消されているとはいえなかった。
本発明の目的は、汎用消石灰に比べて流動性に優れ、かつ付着性を低減し得る付着抑制型消石灰を提供することにある。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
請求項2
活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を40重量%以上の割合で含むことを特徴とする付着抑制型消石灰。
請求項3
請求項4
技術分野
0001
本発明は、酸性物質の中和剤や排煙、排水中の酸除去剤として利用されるほか、各種化学工業の反応用アルカリとして一般的に用いられ、汎用消石灰に比べて流動性に優れ、かつ付着性を低減することができる付着抑制型消石灰に関するものである。
背景技術
0002
ごみ焼却場等において発生する酸性ガス等の排ガス処理用途として使用される消石灰として、輸送時の配管への付着や配管閉塞などの問題が少ない消石灰が望まれている。特に、一般的に使用されている汎用消石灰においては、輸送や貯蔵、圧送時における配管等への付着や流動性不良の問題が存在する。従って、汎用消石灰を使用する際、輸送配管の維持管理などには多くの人的負担やコストが必要とされる。
上記諸問題を解決する方策として、消石灰、粉末生石灰及び、グリコール類、グリコールエーテル類又はエタノールアミン類から選択された少なくとも1種の添加剤からなり、前記の消石灰と粉末生石灰の重量割合が、98:2〜70:30である改質した低付着性消石灰が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、付着性を改善する添加剤としてパーライトを含む付着性改善消石灰が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第2963626号公報(請求項1)
特開2003−252621号公報(請求項1)
発明が解決しようとする課題
0003
しかしながら、特許文献1又は2に示される消石灰では、一定の付着抑制効果は得られているが、添加剤を必ず加える必要があるため汎用消石灰に比べてコストが上昇してしまうこと、また用途によっては使用が制限されるなどの問題があり、更なる改良が要望されていた。また、上記特許文献1又は2に示される消石灰では流動性不良の問題点については、十分に解消されているとはいえなかった。
本発明の目的は、汎用消石灰に比べて流動性に優れ、かつ付着性を低減し得る付着抑制型消石灰を提供することにある。
課題を解決するための手段
0004
請求項1に係る発明は、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰からなることを特徴とする付着抑制型消石灰である。
請求項2に係る発明は、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を40重量%以上の割合で含むことを特徴とする付着抑制型消石灰である。
請求項1又は2に係る発明では、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を使用しているので、高活性の生石灰を消化して得られた汎用消石灰に比べて流動性に優れ、かつ付着性を低減することができる。
0005
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、グリコール類及びエタノールアミン類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を消石灰100重量%に対して0.1〜5重量%の割合で添加する付着抑制型消石灰である。
請求項3に係る発明では、消石灰に上記添加剤を添加することにより、付着抑制効果が一層促進される。
0006
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に係る発明であって、シラスバルーン、バーミキュライト及びパーライトからなる群より選ばれた1種又は2種以上の無機粉体を消石灰100重量%に対して0.5〜5重量%の割合で添加する付着抑制型消石灰である。
請求項4に係る発明では、消石灰に上記無機粉体を添加することにより、流動性や付着性が更に改善される。
発明の効果
0007
本発明の付着抑制型消石灰は、原料として活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を使用しているので、高活性の生石灰を消化して得られた汎用消石灰に比べて流動性に優れ、かつ付着性を低減することができる。また、消石灰に添加剤を所定の割合で添加する、或いは消石灰に無機粉体を所定の割合で添加することによって、付着性や流動性が更に改善され、これにより消石灰の輸送時における配管への付着や貯蔵時の排出性などの問題を大幅に解消することが可能となる。
発明を実施するための最良の形態
0008
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の付着抑制型消石灰は、活性度が20〜150ml、好ましくは40〜100mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰からなることを特徴とする。本発明における活性度とは、粒度10〜3mmの生石灰50gをフェノールフタレイン指示薬2〜3滴を滴下した水2リットル中に投入し、攪拌しながら4規定の塩酸を滴下し続け、溶液が僅かに赤色を呈する状態を維持して、5分間経過したときの塩酸消費量(単位:ml)をいう。上記条件での塩酸消費量が多いほど活性が高いことを示す。
0009
汎用されている消石灰の製造においては、通常、原料である生石灰に対して重量比で約65%程度の水を加え、水和することで製造されるが、原料である消石灰は、一般的には活性度が250ml以上の活性度の高いものが用いられている。一方、活性度が150ml以下の低活性生石灰は、通常ALC用原料や静的破砕材原料等として用いられる。本発明の付着抑制型消石灰は、低活性の生石灰により製造した消石灰の流動性や付着性が、前述した高活性の生石灰により製造した汎用消石灰に比べ、非常に優れていることに着目し発明に至ったものである。活性度を上記範囲内に規定したのは、活性度が上限値を越える生石灰は、この生石灰を用いて製造した消石灰の流動性や付着性に劣り、活性度が下限値未満では生石灰或いは消石灰製造時の経済的コストが大きくなるためである。消石灰の流動性や付着性において十分な効果を得るため、また経済的コスト等を考慮すると、原料である生石灰の活性度は40〜100mlが好ましい。
0010
消石灰の原料である生石灰は、石灰石を堅炉又はキルン等の焼成炉、或いは電気炉等により焼成し、脱炭酸して得られる。生石灰の活性度は元の石灰石の性状やサイズ或いは焼成温度や焼成時間、焼成雰囲気等の条件等で変わるが、前述した汎用消石灰の原料となっている生石灰は、900℃以上1100℃未満の温度で2〜3時間焼成することにより得られ、生石灰結晶粒子の発達が小さく空隙率が比較的大きいもので、250〜400ml程度と高い活性度を示す。一方、本発明に用いる低活性の生石灰は、上記焼成温度より高温の1100℃〜1200℃で1〜3時間焼成することにより得られ、生石灰結晶粒子の発達が大きく空隙率が小さいものとなり、活性度20〜150mlと低活性の生石灰が得られる。
0011
また、本発明の別の付着抑制型消石灰としては、活性度が20〜150mlの低活性生石灰を消化して得られた消石灰を40重量%以上の割合で含むことを特徴とする。低活性生石灰を消化して得られた消石灰を前述した汎用消石灰と所定の割合で混合することができ、用途に併せて、使い分けすることができる。このうち、流動性や付着性で実用的な効果を得るために、低活性生石灰から得られた消石灰を60重量%以上の割合で含むことが好ましく、60〜80重量%の割合で含むことが特に好ましい。
0012
また、本発明の付着抑制型消石灰に、グリコール類及びエタノールアミン類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加剤を消石灰100重量%に対して0.1〜5重量%の割合で添加しても良い。消石灰に上記添加剤を所定の割合で添加することにより、付着抑制効果が一層促進される。グリコール類としては、ジエチレングリコールやエチレングリコールが、エタノールアミン類としてはトリエタノールアミンなどが挙げられる。添加剤量が下限値未満では十分な付着抑制効果が得られず、上限値を越えてもその効果は変わらずコスト増となる。添加剤量は0.5〜1.5重量%が特に好ましい。消石灰に上記添加剤を所定の割合で添加し、混合攪拌することにより、消石灰表面に付着させることによって、消石灰の流動性や付着性を改善できる。混合攪拌方法としては、縦型或いは横型の羽根付きミキサーや流動層型の気流攪拌ミキサー等が使用できる。なお、上記添加剤を前述した汎用消石灰に添加することで流動性や付着性の改善効果はある程度認められるが、本発明の付着抑制型消石灰に上記添加剤を付着させることにより、改善効果が一層促進される。なお、添加剤の添加方法は、消石灰製造時に使用する消化水に添加混合することによっても同様の効果が得られる。
0013
また、本発明の付着抑制型消石灰に、シラスバルーン、バーミキュライト及びパーライトからなる群より選ばれた1種又は2種以上の無機粉体を消石灰100重量%に対して0.5〜5重量%の割合で添加しても良い。消石灰に上記無機粉体を所定の割合で添加することにより、流動性や付着性が更に改善される。シラスバルーンとは、火山灰に含まれるシラスを加熱処理することにより得られる中空球状の微粒子である。バーミキュライトは、SiO2、MgO、Al2O3等を主成分とする薄片状の鉱物であり、原石をある粒度に粉砕、分級し、加熱炉で急速に加熱することにより膨張させたものである。パーライトは、SiO2、Al2O3、K2O等を主成分とする真珠石を粉砕し、高熱処理して原石の約10倍の容積に膨張させたものである。 無機粉体の添加量が下限値未満では十分な付着抑制効果が得られず、上限値を越えてもその効果は変わらず、コスト増となる。添加量は1〜3重量%が特に好ましい。排ガス処理剤などにおいて、これらの無機粉体を消石灰とともに使用する方法は既に公知であるが、本発明にある付着抑制型消石灰にこれらの無機粉体を添加することにより、流動性や付着性を更に改善することができる。
0014
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
<実施例1〜4,比較例1〜3>
先ず、石灰石を電気炉により1100℃、3時間で焼成し、活性度が148mlの生石灰を作製した。次いで、作製した生石灰を10mm以下の粒度にそれぞれ調整し、生石灰100重量部に対し水65重量部を加えて水和、熟成した。次に、得られた消化物を乾燥した後、粒度を150μm以下に調整して所望の消石灰を得た(実施例1)。また、石灰石の焼成条件を次の表1に示す条件にそれぞれ変更させて所望の消石灰を得た(実施例2〜4,比較例1〜3)。
0015
得られた消石灰を図1及び図2に示される粉体付着力測定装置を用いてその付着力を測定した。図1に示すように、試料容器11は2個の円筒状枠、即ち円筒状の上枠11aと、上枠11aと同形同大の下枠11bとから構成され、上枠11aは下枠11bに重ねて配置されている。下枠11bの下部にはフランジ11cが設けられる。この試料容器11を台座12に載せ、試料容器11内の底部に、枠の内径と同径であって複数の連通孔を有するプラスチック製円盤13aと濾紙14aをこの順に配置した。続いて、得られた消石灰を試料16として上枠11aから溢れるまでまんべんなく入れて軽くすり切り操作をし、その上に枠の内径と同径の濾紙14bと複数の連通孔を有するプラスチック製円盤13bをこの順に配置した。次に、円盤13bの上にピストン17を配置し、プレス機18によりピストン17に対して垂直方向に6kgf/cm2の圧力をかけて試料容器11内部に充填した消石灰試料16を圧縮した。
0016
次に、図2に示すように、圧縮した試料16を有する試料容器11を容器固定材22により台座21に固定し、続いて試料容器11の上枠11a上端にワイヤケーブル23の一端を接続した。ワイヤケーブル23は滑車24a,24bにより加重の伝達方向が変換されて、その他端が水容器26の上端に接続される。この水容器26はワイヤケーブル23により台座21から一定の間隔をあけて宙吊り状態で保持されている。続いて、水27を貯留したビュレット28から水容器26に注水し、注水した水容器26の重量によりワイヤケーブル23を介して試料容器11に対して上方向に引張り荷重をかけた。所定の引張り荷重により、試料16が上試料16aと下試料16bとに破断して上枠11aと下枠11bとが分離したとき、水容器26への注水を停止した。水容器26とこの水容器26に注入した水27の重量及び破断した上試料16aと上枠11aの重量をともに秤量し、秤量した各重量から次の式(1)に示す式により付着力を求めた。
0017
0019
0020
表1に示すように、原料として活性度が比較的高い生石灰を使用した比較例1〜3の消石灰に比べ、活性度が150ml以下の低活性生石灰を使用した実施例1〜4の消石灰では、付着力が低減しており、安息角の結果からも流動性に優れることが判る。
0021
<実施例5〜7、実施例8〜10、比較例4>
実施例3で作製した消石灰を用い、この消石灰に次の表2に示す割合で添加剤を添加して所望の消石灰を得た(実施例5〜7)。また、生石灰の水和時に次の表2に示す割合で添加剤を消化水に添加した以外は実施例3と同様にして消石灰を作製し、この消石灰を乾燥した後、粒度を150μm以下に調整して所望の消石灰を得た(実施例8〜10)。更に、比較例1で作製した消石灰を用い、この消石灰に次の表2に示す割合で添加剤を添加して所望の消石灰を得た(比較例4)。得られた消石灰を用いて実施例1と同様にして付着力測定及び安息角測定を行った。その結果を表2に示す。
0022
0023
表2より明らかなように、添加剤を添加した実施例5〜10の消石灰では、前述した表1に示す同じ活性度の生石灰を使用した実施例3の消石灰の結果に比べて付着性及び流動性が改善されていることが判った。また、添加剤を添加した高い活性度の生石灰を用いた比較例4の消石灰と比べても、付着性及び流動性が改善されていた。
0024
<実施例11〜13>
実施例3で作製した消石灰を消石灰A、比較例1で作製した消石灰を消石灰Bとし、これら消石灰A及びBを次の表3に示す割合で混合して所望の消石灰を得た。得られた消石灰を用いて実施例1と同様にして付着力測定及び安息角測定を行った。その結果を表3に示す。
0025
0026
表3の結果から、実施例11〜13の消石灰では、付着抑制効果を有する消石灰Aの割合が40重量%以上であれば比較例1の消石灰に比べて半分以下にまで付着力を低減した消石灰を得ることができていた。このことから低活性生石灰を消化して得られた消石灰を前述した汎用消石灰と所定の割合で混合することにより、用途に併せて使い分けできることが確認された。
0027
<実施例14〜16>
実施例3で作製した消石灰を用い、この消石灰に次の表4に示す割合で無機粉体を添加して所望の消石灰を得た。なお、無機粉体は開き目150μmの篩通過率が90%以上のものを用いた。得られた消石灰を用いて実施例1と同様にして付着力測定及び安息角測定を行った。その結果を表4に示す。
0028
0029
表4より明らかなように、無機粉体を添加した実施例14〜16の消石灰では、前述した表1に示す同じ活性度の生石灰を使用した実施例3の消石灰の結果に比べて付着性及び流動性が改善されていることが判った。
図面の簡単な説明
0030
実施例で使用した試料容器を示す断面図。
実施例で使用した粉体付着力測定装置を示す断面図。
符号の説明
0031
11試料容器
16消石灰試料