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技術 積層セラミック電子部品の製造方法

出願人 TDK株式会社
発明者 福井隆史上田要金慎太郎佐藤新佐藤陽
出願日 2005年3月24日 (15年9ヶ月経過) 出願番号 2005-086825
公開日 2006年10月5日 (14年2ヶ月経過) 公開番号 2006-269817
状態 特許登録済
技術分野 酸化物セラミックスの組成1 酸化物セラミックスの組成2 セラミックコンデンサ 固定コンデンサ及びコンデンサ製造装置
主要キーワード 耐圧レベル Mo酸化物 圧電積層体 桁落ち 露出端面 ガラスビード 温度可変 ICP質量分析装置
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2006年10月5日)のものです。
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図面 (2)

課題

IR温度依存性劣化させることなく、卑金属を用いた内部電極層端部酸化を改善できる結果、容量バラツキを改善することができる、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する方法を提供すること。

解決手段

層間厚みが5μm以下の誘電体層と、卑金属を含む内部電極層とを有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、誘電体層用ペーストと、卑金属を含む内部電極層用ペーストとを、交互に100層以上配置した積層体を、還元性雰囲気下焼成し、その後アニール処理する工程と、該アニール処理後の積層体を、酸素分圧P3が2.9×10−39 Paを超え6.7×10−24 Pa未満の強還元性雰囲気下で、300℃を超え600℃未満の保持温度T3で第1の熱処理をする工程と、該熱処理後の積層体を、酸素分圧P4が1.9×10−7Paを超え4.1×10−3Pa未満の雰囲気下で、500℃を超え1000℃未満の保持温度T4で第2の熱処理をする工程とを、有する積層セラミック電子部品の製造方法。

概要

背景

近年、積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを構成する内部電極層構成材料として、PtやPdなどの高価な貴金属に代えて、Niなどの安価な卑金属を使用することが可能となり、大幅なコストダウンが実現した。

しかしながら、卑金属を用いた内部電極層の金属化を適切に行うには、グリーンチップ焼成還元性雰囲気下で行う必要がある。また、還元性雰囲気下での焼成に対して誘電体材料耐還元性を持たせるために、グリーンチップ中の焼成前誘電体層にMnを含ませることがある。さらに、還元性雰囲気下での焼成後に、焼結体中の誘電体層を再酸化させるために、通常、焼結体に対してアニール処理を施す。

特許文献1では、卑金属を用いた内部電極層を含む積層セラミックコンデンサを製造するために、耐還元性の誘電体材料とともに、還元性雰囲気下で焼成を行い、次いで焼成雰囲気より酸素分圧の高い中性雰囲気下でアニール処理を行う技術が開示してある。特許文献2では、アニール処理時の処理雰囲気における酸素分圧をCO2ガスやN2 ガスで制御し、アニール処理時の保持温度を600〜1100℃とする技術が開示されている。特許文献3では、アニール処理時の保持温度を500〜1100℃(実施例900℃)とし、該保持温度の保持時間を9時間とする技術が開示されている。

即ち、上記特許文献1〜3のいずれも、グリーンチップの焼成後に、得られた焼結体に対してアニール処理を行うだけであった。

しかしながら、誘電体高容量化薄層化がより一層促進され、コンデンサ中の誘電体割合がますます減少していっている近年の状況下では、アニール処理の処理条件のみを最適化しても、各種特性に優れたコンデンサを製造することが困難である。

特に、焼成後にアニール処理を行うだけの従来の技術では、室温から高温部までのIR温度依存性は良好であったが、アニール処理雰囲気における処理温度及び酸素分圧を適正に制御しきれず、内部電極層の端部(外部端子電極電気的に接続されるべき部分)が酸化することがあった。内部電極層の端部が酸化すると、コンデンサ素体の端部に形成される外部端子電極との接触が不十分となり、その結果、最終物たるコンデンサの容量がばらつくことがある(容量バラツキ)。内部電極層の端部酸化は、誘電体層の薄層・多層化が進むほど悪化する傾向があった。

特開2000−124058号公報
特開平10−163063号公報
特開平8−124785号公報

概要

IR温度依存性を劣化させることなく、卑金属を用いた内部電極層の端部酸化を改善できる結果、容量バラツキを改善することができる、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する方法を提供すること。層間厚みが5μm以下の誘電体層と、卑金属を含む内部電極層とを有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、誘電体層用ペーストと、卑金属を含む内部電極層用ペーストとを、交互に100層以上配置した積層体を、還元性雰囲気下で焼成し、その後アニール処理する工程と、該アニール処理後の積層体を、酸素分圧P3が2.9×10−39 Paを超え6.7×10−24 Pa未満の強還元性雰囲気下で、300℃を超え600℃未満の保持温度T3で第1の熱処理をする工程と、該熱処理後の積層体を、酸素分圧P4が1.9×10−7Paを超え4.1×10−3Pa未満の雰囲気下で、500℃を超え1000℃未満の保持温度T4で第2の熱処理をする工程とを、有する積層セラミック電子部品の製造方法。 なし

目的

本発明の目的は、IR温度依存性を劣化させることなく、卑金属を用いた内部電極層の端部酸化を改善できる結果、容量バラツキを改善することができる、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する方法を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

層間厚みが5μm以下の誘電体層と、卑金属を含む内部電極層とを有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、誘電体層用ペーストと、卑金属を含む内部電極層用ペーストとを、交互に100層以上配置した積層体を、還元性雰囲気下焼成し、その後アニール処理する工程と、該アニール処理後の積層体を、酸素分圧P3が2.9×10−39Paを超え6.7×10−24Pa未満の強還元性雰囲気下で、300℃を超え600℃未満の保持温度T3で第1の熱処理をする工程と、該熱処理後の積層体を、酸素分圧P4が1.9×10−7Paを超え4.1×10−3Pa未満の雰囲気下で、500℃を超え1000℃未満の保持温度T4で第2の熱処理をする工程とを、有する積層セラミック電子部品の製造方法。

請求項2

前記P3が、1.3×10−32〜1.1×10−25Paであり、前記T3が、400〜550℃であり、前記P4が、3.5×10−6〜1.1×10−3Paであり、前記T4が、600〜900℃である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。

請求項3

0.1〜1.0μmの平均粒径を持つチタン酸バリウム原料と、ガラス成分原料と、添加物成分原料とを有し、前記ガラス成分原料が、Ba化合物及びCa化合物の一方又は双方と、Si化合物とを有し、前記添加物成分原料が、Mg化合物と、Mn化合物と、V化合物、W化合物及びMo化合物から選ばれる1種または2種以上と、R(但し、Rは、Y,Sc,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びTbから選ばれる1種又は2種以上)の化合物とを有し、チタン酸バリウム原料をBaTiO3に、Ba化合物をBaOに、Ca化合物をCaOに、Si化合物をSiO2に、Mg化合物をMgOに、Mn化合物をMnOに、V化合物をV2O5に、W化合物をWO3に、Mo化合物をMoOに、Rの化合物をR2O3に換算したときに、BaTiO3:100モルに対する比率が、Ba化合物+Ca化合物:0.1〜12モル、Si化合物:0.1〜12モル、Mg化合物:3モル以下(但し、0モルを除く)、Mn化合物:0.5モル以下(但し、0モルを除く)、V化合物+W化合物+Mo化合物:0.3モル以下(但し、0モルを除く)、Rの化合物:0.02〜5モルである誘電体層用ペーストを用いる、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造方法に関する。

背景技術

0002

近年、積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを構成する内部電極層構成材料として、PtやPdなどの高価な貴金属に代えて、Niなどの安価な卑金属を使用することが可能となり、大幅なコストダウンが実現した。

0003

しかしながら、卑金属を用いた内部電極層の金属化を適切に行うには、グリーンチップ焼成還元性雰囲気下で行う必要がある。また、還元性雰囲気下での焼成に対して誘電体材料耐還元性を持たせるために、グリーンチップ中の焼成前誘電体層にMnを含ませることがある。さらに、還元性雰囲気下での焼成後に、焼結体中の誘電体層を再酸化させるために、通常、焼結体に対してアニール処理を施す。

0004

特許文献1では、卑金属を用いた内部電極層を含む積層セラミックコンデンサを製造するために、耐還元性の誘電体材料とともに、還元性雰囲気下で焼成を行い、次いで焼成雰囲気より酸素分圧の高い中性雰囲気下でアニール処理を行う技術が開示してある。特許文献2では、アニール処理時の処理雰囲気における酸素分圧をCO2ガスやN2 ガスで制御し、アニール処理時の保持温度を600〜1100℃とする技術が開示されている。特許文献3では、アニール処理時の保持温度を500〜1100℃(実施例900℃)とし、該保持温度の保持時間を9時間とする技術が開示されている。

0005

即ち、上記特許文献1〜3のいずれも、グリーンチップの焼成後に、得られた焼結体に対してアニール処理を行うだけであった。

0006

しかしながら、誘電体高容量化薄層化がより一層促進され、コンデンサ中の誘電体割合がますます減少していっている近年の状況下では、アニール処理の処理条件のみを最適化しても、各種特性に優れたコンデンサを製造することが困難である。

0007

特に、焼成後にアニール処理を行うだけの従来の技術では、室温から高温部までのIR温度依存性は良好であったが、アニール処理雰囲気における処理温度及び酸素分圧を適正に制御しきれず、内部電極層の端部(外部端子電極電気的に接続されるべき部分)が酸化することがあった。内部電極層の端部が酸化すると、コンデンサ素体の端部に形成される外部端子電極との接触が不十分となり、その結果、最終物たるコンデンサの容量がばらつくことがある(容量バラツキ)。内部電極層の端部酸化は、誘電体層の薄層・多層化が進むほど悪化する傾向があった。

0008

特開2000−124058号公報
特開平10−163063号公報
特開平8−124785号公報

発明が解決しようとする課題

0009

本発明の目的は、IR温度依存性を劣化させることなく、卑金属を用いた内部電極層の端部酸化を改善できる結果、容量バラツキを改善することができる、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

上記目的を達成するために、本発明によれば、
層間厚みが5μm以下の誘電体層と、卑金属を含む内部電極層とを有する積層セラミック電子部品を製造する方法であって、
誘電体層用ペーストと、卑金属を含む内部電極層用ペーストとを、交互に100層以上配置した積層体を、還元性雰囲気下で焼成し、その後アニール処理する工程と、
アニール処理後の積層体を、酸素分圧P3が2.9×10−39 Paを超え6.7×10−24 Pa未満の強還元性雰囲気下で、300℃を超え600℃未満の保持温度T3で第1の熱処理をする工程と、
該熱処理後の積層体を、酸素分圧P4が1.9×10−7Paを超え4.1×10−3Pa未満の雰囲気下で、500℃を超え1000℃未満の保持温度T4で第2の熱処理をする工程とを、有する積層セラミック電子部品の製造方法が提供される。

0011

好ましくは、前記P3が、1.3×10−32 〜1.1×10−25 Paである。
好ましくは、前記T3が、400〜550℃である。
好ましくは、前記P4が、3.5×10−6〜1.1×10−3Paである。
好ましくは、前記T4が、600〜900℃である。

0012

好ましくは、加湿したN2ガスと乾燥N2 ガスとH2 ガスとの混合ガスを用いて、P3及び/又はP4を調整する。

0013

好ましくは、0.1〜1.0μmの平均粒径を持つチタン酸バリウム原料と、ガラス成分原料と、添加物成分原料とを有し、
前記ガラス成分原料が、Ba化合物及びCa化合物の一方又は双方と、Si化合物とを有し、
前記添加物成分原料が、Mg化合物と、Mn化合物と、V化合物、W化合物及びMo化合物から選ばれる1種または2種以上と、R(但し、Rは、Y,Sc,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びTbから選ばれる1種又は2種以上)の化合物とを有し、
チタン酸バリウム原料をBaTiO3 に、Ba化合物をBaOに、Ca化合物をCaOに、Si化合物をSiO2 に、Mg化合物をMgOに、Mn化合物をMnOに、V化合物をV2 O5 に、W化合物をWO3 に、Mo化合物をMoOに、Rの化合物をR2 O3 に換算したときに、
BaTiO3 :100モルに対する比率が、
Ba化合物+Ca化合物:0.1〜12モル、
Si化合物:0.1〜12モル、
Mg化合物:3モル以下(但し、0モルを除く)、
Mn化合物:0.5モル以下(但し、0モルを除く)、
V化合物+W化合物+Mo化合物:0.3モル以下(但し、0モルを除く)、
Rの化合物:0.02〜5モルである誘電体層用ペーストを用いる。
なお、本発明において、「保持温度」とは、文字通りの意味の他に、最高温度を意味することもある。

発明の効果

0014

本発明者らは、卑金属を用いた内部電極層を含む積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を製造する上で、アニール条件が強過ぎる(温度:高,酸素分圧:高)と、誘電体層の再酸化は良好に行われるが、内部電極層の端部酸化が進行しやすくなる結果、容量バラツキを生じ、他方で、アニール条件が弱すぎる(温度:低,酸素分圧:低)と、誘電体層の再酸化が不十分となる傾向にあることを突き止めた。そして、鋭意研究を重ねたが、焼成後のアニール処理だけでは、誘電体層の再酸化と、内部電極層の端部酸化の改善による容量バラツキの改善とを両立させることが困難であるとの結論に至った。この現象は、特に、誘電体層の層間厚みが薄くなり(誘電体層の薄層化)、誘電体層の積層数が多くなる(誘電体層の多層化)ほど、悪化する傾向にある。具体的には、層間厚みが5μm以下で、積層数が100層以上となるときである。

0015

本発明者らは、使用を意図する温度範囲(たとえば室温から高温部まで)でのIR温度依存性を劣化させることなく、誘電体層の再酸化を良好に行いつつ内部電極層の端部酸化の改善による容量バラツキを改善するために、通常のアニール後に、特定条件の第1の熱処理及び第2の熱処理をセットで施すことが有効であることを見出した。

0016

”IR温度依存性”は、絶縁抵抗IRが温度変化に対してどのように変動するのかを見極める指標である。このIR温度依存性は、所定温度(たとえば150℃)でのIRが、基準温度(たとえば室温20℃)でのIRに対して変化する割合(変化率)を算出することで評価できる。複数の温度間でのIRの変化率が小さいほどIR温度依存性が良く、大きいほどIR温度依存性が悪いと判断できる。

0017

本発明では、複数の温度として室温(20℃)と高温部(150℃)を例示し、それぞれの温度での絶縁抵抗をIR20、IR150 としたときに、下記式1で示される”IR桁落ち”の大小を算出することで、IR温度依存性の善し悪しを評価している。log(IR150 /IR20) …式1

0018

すなわち、本発明によれば、通常のアニール処理後に特定条件での第1及び第2の熱処理を施す。こうすることで、使用を意図する温度範囲(たとえば室温から高温部まで)でのIR温度依存性を劣化させることなく(具体的には、上記式1で示されるIR桁落ちを−1.50超に保持することができる)、内部電極層の端部酸化の改善による容量バラツキを改善することができる。

0019

積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電積層体部品チップバリスタチップサーミスタ等の表面実装SMD)チップ型電子部品が例示される。

発明を実施するための最良の形態

0020

以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。

0021

図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、図2は実施例における焼成、アニール処理、第1の熱処理及び第2の熱処理の各温度変化を示すグラフである。

0022

本実施形態では、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示し、まず、積層セラミックコンデンサの構成を説明し、その後、積層セラミックコンデンサの製造方法を説明する。

0023

積層セラミックコンデンサ

0024

図1に示すように、本発明の積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両側端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。

0025

一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。

0026

コンデンサ素子本体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。

0027

誘電体層2は、本発明方法により得られる誘電体磁器組成物を含有する。本発明方法により得られる誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウムと、ガラス成分と、添加物成分とを有する。

0028

チタン酸バリウムは、組成式(BaO)m ・TiO2 で表され、前記式中のモル比mが、好ましくは0.990〜1.035である。

0029

ガラス成分は、本実施形態ではBa酸化物及びCa酸化物の一方又は双方と、Si酸化物とを含有する場合を例示する。好ましくは、前記ガラス成分は、(Ba1−x Cax )SiO3 (但し、x=0.3〜0.7)で表される。

0030

添加物成分は、本実施形態では、Mg酸化物と、Mn酸化物と、V酸化物、W酸化物及びMo酸化物から選ばれる1種または2種以上と、R(但し、Rは、Y,Sc,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びTbから選ばれる1種又は2種以上、好ましくはY、Dy及びHoから選ばれる1種または2種以上)の酸化物とを、含有する場合を例示する。

0031

誘電体層2の厚み(層間厚み)は、5μm以下、好ましくは2μm以下と薄層化されている。本実施形態では、このように誘電体層2の厚みを薄層化したときでも、IR温度依存性に影響を与えず、しかも後述する内部電極層3の端部酸化が生じない結果、容量バラツキが改善されている。誘電体層2の積層数は、目的や用途に応じて適宜決定すればよいが、本発明では100層以上、好ましくは200層以上に多層化されても、IR温度依存性に影響を与えず、しかも内部電極層3の端部酸化が生じない結果、容量バラツキが改善されている。

0032

誘電体層2は、通常、誘電体粒子と粒界相とで構成される。粒界相は、通常、誘電体材料あるいは内部電極材料を構成する材質の酸化物や、別途添加された材質の酸化物、さらには工程中に不純物として混入する材質の酸化物を成分としている。

0033

内部電極層3は、実質的に電極として作用する卑金属の導電材で構成される。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、Co、Al、Ru、Rh、Ta、Re、Os、Ir、Pt及びWなどから選ばれる1種以上とNiとの合金が好ましく、合金中Ni含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、C、Nb、Fe、Cl、B、Li、Na、K、F、S等の各種微量成分が0.1重量%以下程度含まれていてもよい。本実施形態では、内部電極層3の厚さは、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.4μm以下と薄層化されている。

0034

外部電極4としては、通常Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金、In−Ga合金等が使用される。外部電極4の厚さは用途に応じて適時決定されればよいが、通常10〜200μm程度であることが好ましい。

0035

積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。

0036

(1)本実施形態では、焼成後に図1に示す誘電体層2を形成するための焼成前誘電体層を構成することとなる誘電体層用ペーストと、焼成後に図1に示す内部電極層3を形成するための焼成前内部電極層を構成することとなる内部電極層用ペーストを準備する。また、外部電極用ペーストも準備する。

0037

誘電体層用ペーストは、誘電体原料有機ビヒクルとを混練して調製する。

0038

(1−1)本実施形態で用いる誘電体原料は、上述した誘電体磁器組成物を構成する各原料を所定の組成比で含有する。このため、まずは、上記各原料たるチタン酸バリウム原料と、ガラス成分原料と、添加物成分原料とを準備する。

0039

チタン酸バリウム原料としては、ABO3 で表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、A/B値(組成式ABO3 におけるAサイトを構成する成分のモル数を、Bサイトを構成する成分のモル数で除した値)が、好ましくは0.990〜1.035、より好ましくは0.995〜1.02、さらに好ましくは1.000〜1.009であるものが用いられる。A/B値が小さすぎると、粒成長を生じ、高温負荷寿命IR寿命)が悪化する傾向にあり、A/B値が大きすぎると、焼結性が低下し、焼成が困難になる傾向にある。A/B値の測定は、ガラスビード法、蛍光X線分析法、ICP法などにより行うことができる。ICP(誘導結合プラズマ)法としては、ICP発光分光分析装置を用いたICP発光分光分析法や、ICP質量分析装置を用いたICP質量分析法が例示される。

0040

本発明では、平均粒径が0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.5μmのチタン酸バリウム原料を用いることが望ましい。平均粒径が小さすぎると比誘電率εが低くなり、所望の容量が得られず、逆に大きすぎると誘電体層2の薄層化が困難になるばかりか、焼成前誘電体層を構成することとなるシート時の表面が荒れすぎて、結果的にショート不良が増大し、耐圧レベルが低下するなどの不都合がある。チタン酸バリウム原料の平均粒径の制御方法は、たとえば固相法でチタン酸バリウム原料を得ようとする際の、仮焼後の仮焼済粉末を適正条件で粉砕する方法や、仮焼の温度などの条件を制御する方法などが挙げられる。

0041

チタン酸バリウム原料は、いわゆる固相法の他、いわゆる液相法によっても得ることができる。固相法(仮焼法)は、BaCO3 、TiO2 を出発原料として用いる場合、これらを所定量秤量して混合、仮焼、粉砕することにより、原料を得る方法である。液相法としては、しゅう酸塩法、水熱合成法アルコキシド法ゾルゲル法などが挙げられる。

0042

ガラス成分原料としては、Ba化合物及びCa化合物の一方又は双方と、Si化合物とを含有するものが用いられる。ガラス成分原料中のSi化合物は焼結助剤として作用し、Ca化合物及びBa化合物は静電容量の温度特性(温度に対する静電容量の変化率)を改善する効果を示す。

0043

本実施形態で用いるガラス成分原料は、混合物の形態でもよいし、あるいは複合酸化物の形態で用いてもよい。ただし、本実施形態では、混合物の形態よりも融点が低くなる複合酸化物の形態で用いることが好ましい。

0044

添加物成分原料としては、Mg化合物と、Mn化合物と、V化合物、W化合物及びMo化合物から選ばれる1種または2種以上と、R(但し、Rは、Y,Sc,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びTbから選ばれる1種又は2種以上)の化合物とを、用いる。

0045

Mg化合物は、容量温度特性平坦化させる効果および粒成長を抑制する効果がある。Mn化合物は、焼結を促進する効果と、IR(絶縁抵抗)を高くする効果と、高温負荷寿命を向上させる効果とがある。V化合物、W化合物及びMo化合物は、高温負荷寿命を向上させる効果がある。Rの化合物は、主として、高温負荷寿命を向上させる効果を示す。

0046

なお、Mg化合物とは酸化マグネシウム及び/又は焼成後に酸化マグネシウムになる化合物を意味し、Mn化合物とは酸化マンガン及び/又は焼成後に酸化マンガンになる化合物を意味する。V化合物とは酸化バナジウム及び/又は焼成後に酸化バナジウムになる化合物を意味し、W化合物とは酸化タングステン及び/又は焼成後に酸化タングステンになる化合物を意味し、Mo化合物とは酸化モリブデン及び/又は焼成後に酸化モリブデンになる化合物を意味する。Rの化合物とはR酸化物及び/又は焼成後にR酸化物になる化合物を意味する。

0047

(1−2)次に、チタン酸バリウム原料と、ガラス成分原料と、添加物成分原料とを混合して、最終組成にする。

0048

ガラス成分原料の混合量(比率)は、次の通りである。
チタン酸バリウム原料をBaTiO3 に、Ba化合物をBaOに、Ca化合物をCaOに、Si化合物をSiO2 に換算したとき、
好ましくは、Ba化合物+Ca化合物:0.1〜12モル及びSi化合物:0.1〜12モルであり、より好ましくは、Ba化合物+Ca化合物:0.1〜6モル及びSi化合物:0.1〜6モルである。Ba化合物+Ca化合物の添加量及びSi化合物の添加量が少なすぎると、比較的低温での緻密化が困難であり、しかも温度特性に悪影響を与えることがある。

0049

添加物成分原料の混合量(比率)は、次の通りである。
チタン酸バリウム原料をBaTiO3 に、Mg化合物をMgOに、Mn化合物をMnOに、V化合物をV2 O5 に、W化合物をWO3 に、Mo化合物をMoOに、Rの化合物をR2 O3 に換算したとき、
好ましくは、
Mg化合物:3モル以下(但し、0モルを除く)、
Mn化合物:0.5モル以下(但し、0モルを除く)、
V化合物+W化合物+Mo化合物:0.3モル以下(但し、0モルを除く)、
Rの化合物:0.02〜5モルであり、
より好ましくは、
Mg化合物:0.1〜2.5モル、
Mn化合物:0.25モル以下(但し、0モルを除く)、
V化合物+W化合物+Mo化合物:0.01〜0.1モル、
Rの化合物:1〜3.5モルである。
Mg化合物の添加量が少なすぎると異常粒成長が生じる傾向にあり、多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。Mn化合物の添加量が多すぎると比誘電率が低下する傾向にある。V化合物、W化合物及びMo化合物の合計添加量が多すぎると、IRが著しく低下する傾向にある。Rの化合物の添加量が多すぎると焼結性が悪化する傾向にある。

0050

その後、この混合粉末を、必要に応じて、ボールミルなどで、純水などの分散媒とともに混合し、乾燥することによって、誘電体原料を得ることができる。

0051

なお、上記成分で構成される誘電体原料は、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩シュウ酸塩硝酸塩水酸化物有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。

0052

なお、誘電体原料中の各化合物含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。

0053

有機ビヒクルは、バインダおよび溶剤を含有するものである。バインダとしては、例えばエチルセルロースポリビニルブチラールアクリル樹脂などの通常の各種バインダを用いることができる。溶剤も、特に限定されるものではなく、テルピネオールブチルカルビトールアセトントルエンキシレンエタノールなどの有機溶剤が用いられる。

0054

誘電体層用ペーストは、誘電体原料と、水中に水溶性バインダを溶解させたビヒクルを混練して、形成することもできる。水溶性バインダは、特に限定されるものではなく、ポリビニルアルコールメチルセルロースヒドロキシエチルセルロース水溶性アクリル樹脂エマルジョンなどが用いられる。

0055

内部電極層用ペーストは、上述した各種導電性金属や合金からなる導電材料あるいは焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上述した有機ビヒクルとを混練して調製される。

0056

外部電極用ペーストも、この内部電極層用ペーストと同様にして調製される。

0057

ペーストの有機ビヒクルの含有量は、特に限定されず、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には必要に応じて各種分散剤可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されても良い。

0058

(2)次に、誘電体層用ペーストと内部電極層用ペーストとを用いて、焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とが積層されたグリーンチップを作製する。

0059

印刷法を用いる場合は、誘電体層用ペースト及び所定パターンの内部電極層用ペーストをキャリアシート上に積層印刷し、所定形状に切断した後、キャリアシートから剥離してグリーンチップとする。シート法を用いる場合は、誘電体層用ペーストをキャリアシート上に所定厚みで形成して得られたグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。

0060

(3)次に、得られたグリーンチップを脱バインダする。

0061

脱バインダは、雰囲気温度を、たとえば室温(20℃)から脱バイ保持温度に向けて所定の昇温速度で上げ、該保持温度で所定時間、保持させた後、所定の降温速度下げる工程であり、通常の条件で行うことができる。

0062

(4)次に、脱バインダ後のグリーンチップを焼成する。

0063

焼成は、雰囲気温度T0を、たとえば図2に示すように、たとえば室温(20℃)から焼成保持温度T1に向けて所定の昇温速度で上げ、該T1で所定時間、保持させた後、所定の降温速度で下げる工程である。

0064

本実施形態では、昇温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。焼成保持温度T1は、好ましくは1180〜1350℃、より好ましくは1200〜1280℃であり、該T1の保持時間は、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間である。T1が低すぎると、T1保持時間を長くしても緻密化が不十分となり、T1が高すぎると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層を構成する導電材の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体層を構成する誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。降温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間である。

0065

焼成の処理雰囲気は、還元性雰囲気である。還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえば加湿したN2ガスに対して乾燥N2 ガスを混合したものにH2 ガスを混合した混合ガスや、加湿したN2 ガスにH2 ガスを混合した混合ガスなどを用いることが好ましい。特に、焼成に際しては、脱バインダ時の保持温度までN2 ガスあるいは加湿したN2ガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けることが好ましく、後述のアニール保持温度T2まで冷却した後は、再びN2 ガスあるいは加湿したN2 ガス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。

0066

焼成雰囲気中の酸素分圧(PO2 )P1は、好ましくは10−12 〜10−4Pa、より好ましくは10−8〜10−5Paである。P1が低すぎると内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがあり、P1が高すぎると内部電極層が酸化する傾向にある。

0067

(5)次に、焼成後のチップ焼結体をアニール処理する。

0068

アニール処理は、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗を増加させることができる。

0069

アニール処理は、雰囲気温度T0を、たとえば図2に示すように、たとえば室温(20℃)からアニール保持温度T2に向けて所定の昇温速度で上げ、該T2で所定時間、保持させた後、所定の降温速度で下げる工程である。

0070

本実施形態では、昇温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。

0071

アニール保持温度T2は、好ましくは950〜1100℃、より好ましくは1000〜1100℃であり、該T2の保持時間は、好ましくは6時間以下、より好ましくは2〜5時間である。T2が低すぎると得られるコンデンサの絶縁抵抗の加速寿命(高温負荷寿命)が悪化し、信頼性が低下する傾向にあり、高すぎると得られるコンデンサに導通不良が発生する傾向があり、また内部電極層3の端部酸化が生じやすい。降温速度は、好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間である。

0072

アニールの処理雰囲気は、好ましくは中性雰囲気である。中性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2ガスに対して乾燥N2 ガスを混合した混合ガスや、加湿したN2 ガスなどを用いることが好ましい。アニールに際しては、雰囲気温度T0を、N2ガス雰囲気下でT2まで上げた後、雰囲気を変更してもよく、アニールの全過程を加湿したN2 ガス雰囲気としてもよい。

0073

アニール雰囲気中の酸素分圧(PO2 )P2は、好ましくは10−3〜1Pa、より好ましくは10−2〜1Paである。P2が低すぎるとコンデンサの寿命が悪化し、P2が高すぎるとコンデンサに導通不良を生じるおそれがある。

0074

(6)次に、アニール処理後のチップ焼結体を熱処理する。
本発明では、アニール処理後に、特定条件下での第1の熱処理を施した後、後述の第2の熱処理を施す点に特徴がある。

0075

第1の熱処理は、雰囲気温度T0を、たとえば図2に示すように、たとえば室温(20℃)から熱処理保持温度T3に向けて所定の昇温速度で上げ、該T3で所定時間、保持させた後、所定の降温速度で下げる工程である。

0076

本実施形態では、昇温速度は、好ましくは50〜1000℃/時間、より好ましくは200〜1000℃/時間である。これが早すぎると端部酸化の改善による容量バラツキを改善する効果が少なくなり、遅すぎると誘電体層2がダメージを受けるおそれがある。

0077

後述する酸素分圧P3の強還元性雰囲気下を前提とした場合に、本発明では、第1の熱処理保持温度T3を、300℃を超え600℃未満、好ましくは400〜550℃とする。T3が低すぎたり高すぎると、後述の第2の熱処理を行っても、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができない。

0078

該T3の保持時間は、好ましくは10時間以下、より好ましくは0〜5時間である。つまり0時間でもよい。保持温度T3をゼロ時間、すなわち最高温度に到達したと同時に降温させても本発明の効果が得られる。降温速度は、好ましくは50〜1000℃/時間、より好ましくは200〜1000℃/時間である。

0079

第1の熱処理の処理雰囲気は、強還元性雰囲気である。強還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2ガスと乾燥N2 ガスとH2 ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。こうしたN2 +H2 混合ガスは、加湿したN2 ガスに対して乾燥N2 ガスを混合したものに、0.1〜9容量%のH2 ガスを混合することにより得ることができる。

0080

第1の熱処理に際しては、雰囲気温度T0を、N2ガス雰囲気下でT3まで上げた後、雰囲気を変更してもよく、熱処理の全過程を加湿したN2ガスと乾燥N2 ガスとH2 ガスとの混合ガス雰囲気としてもよい。

0081

前記保持温度T3を前提とした場合に、本発明では、熱処理雰囲気中の酸素分圧(PO2 )P3を、2.9×10−39 Paを超え6.7×10−24 Pa未満、好ましくは1.3×10−32 〜1.1×10−25 Paとする。P3が低すぎたり高すぎると、後述の第2の熱処理を行っても、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができない。

0082

(7)次に、第1の熱処理後のチップ焼結体に、第2の熱処理を施す。この第2の熱処理により、焼結体で構成されるコンデンサ素子本体10が形成される。

0083

上記第1の熱処理後に第2の熱処理を行うことで、使用を意図する温度範囲(たとえば室温(20℃)から高温部(150℃)まで)でのIR温度依存性を劣化させることがない。具体的には、たとえば、室温(20℃)と高温部(150℃)のそれぞれの温度での絶縁抵抗をIR20、IR150 としたときに、下記式1で示される”IR桁落ち”を−1.50超、好ましくは−1.40以上とすることができる。すなわち、IR温度依存性を小さくできる。log(IR150 /IR20) …式1
これに加え、内部電極層の端部酸化の改善による容量バラツキを改善することができる。
すなわち、上述した第1の熱処理及び第2の熱処理をセットで施すことで、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができる。

0084

第2の熱処理は、雰囲気温度T0を、たとえば図2に示すように、たとえば室温(20℃)から第2の熱処理保持温度T4に向けて所定の昇温速度で上げ、該T4で所定時間、保持させた後、所定の降温速度で下げる工程である。

0085

本実施形態では、昇温速度は、好ましくは50〜1000℃/時間、より好ましくは200〜1000℃/時間である。これが早すぎると端部酸化の改善による容量バラツキを改善する効果が少なくなり、遅すぎると誘電体層2がダメージを受けるおそれがある。

0086

後述する酸素分圧P4の雰囲気下を前提とした場合に、本発明では、第2の熱処理保持温度T4を、500℃を超え1000℃未満、好ましくは600〜900℃とする。T4が低すぎても高すぎても、IR温度依存性を劣化させることなく、最終的たるコンデンサ1の容量バラツキを改善することができない。

0087

T4の保持時間は、好ましくは10時間以下、より好ましくは0〜5時間である。つまり0時間でもよい。保持温度T3をゼロ時間、すなわち最高温度に到達したと同時に降温させても本発明の効果が得られる。降温速度は、好ましくは50〜1000℃/時間、より好ましくは200〜1000℃/時間である。

0088

第2の熱処理の処理雰囲気は、好ましくは中性雰囲気である。中性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したN2ガスに対して乾燥N2 ガスを混合した混合ガスや、加湿したN2 ガスなどを用いることが好ましい。第2の熱処理に際しては、雰囲気温度T0を、N2ガス雰囲気下でT4まで上げた後、雰囲気を変更してもよく、第2の熱処理の全過程を加湿したN2 ガス雰囲気としてもよい。

0089

前記保持温度T4を前提とした場合に、本発明では、第2の熱処理雰囲気中の酸素分圧(PO2 )P4を、1.9×10−7Paを超え4.1×10−3Pa未満、好ましくは3.5×10−6〜1.1×10−3Paとする。P4が低すぎたり高すぎると、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができない。

0090

なお、上述したアニール処理、第1の熱処理及び/又は第2の熱処理は、昇温過程と降温過程とだけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間をとし、温度保持工程を必ずしも設けなくてもよい。この場合、アニール保持温度T2、第1の熱処理保持温度T3及び第2の熱処理保持温度T4は最高温度と同義である。

0091

上記した脱バインダ処理、焼成、アニール及び熱処理において、N2ガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75℃程度が好ましい。

0092

(8)次に、得られたコンデンサ素子本体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。これにより、積層セラミックコンデンサ1が得られる。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したN2 とH2 との混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。

0093

製造された積層セラミックコンデンサ1は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。

0094

本実施形態では、アニール処理後の積層体を、所定範囲の酸素分圧P3の強還元性雰囲気下で、所定範囲の保持温度T3で第1の熱処理をする。次に、第1の熱処理後の積層体を、所定範囲の酸素分圧P4の雰囲気下で、所定範囲の保持温度T4で第2の熱処理をする。このように、第1の熱処理及び第2の熱処理をセットで施すことで、焼成前誘電体層の、層間厚みが5μm以下で、積層数が100層以上の薄層多層化が進んだケースでも、使用を意図する温度範囲(たとえば室温から高温部まで)でのIR温度依存性を劣化させることなく、内部電極層の端部酸化の改善による最終物たるコンデンサ1の容量バラツキを改善することができる。

0095

以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。

0096

たとえば、上述した実施形態では、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサ1を例示したが、本発明ではこれに限定されるものではない。

0097

また、上述した実施形態では、脱バインダ処理、焼成、アニール、第1の熱処理及び第2の熱処理は、それぞれ独立して行っているが、本発明ではこれに限定されず、少なくとも2つの工程を連続して行なってもよい。連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いてT1まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、T2に達したときに雰囲気を変更してアニールを行い、次いで冷却し、T3に達したときに雰囲気を変更して第1の熱処理を行ない、次いで雰囲気を変更しつつT4まで昇温して第2の熱処理を行うことが好ましい。

0098

次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。

0099

実施例1
誘電体原料の作製
まず、チタン酸バリウム原料、ガラス成分原料及び添加物成分原料を用意した。

0100

チタン酸バリウム原料としては、平均結晶粒径が0.35μmのBaTiO3 を用いた。

0101

ガラス成分原料としては、BaO,CaO及びSiO2 を用いた。

0102

添加物成分原料としては、平均粒径が0.01〜0.1μmの、MgO、MnO、Y2 O3 及びV2 O5 を用いた。

0103

次に、100モルのチタン酸バリウム原料に対して、ガラス成分原料としてのBCGと、添加物成分原料としてのMgO、MnO、Y2 O3 、V2 O5 を添加し、水を溶媒としてボールミルで16時間湿式混合(水粉砕)した。その後130℃で熱風乾燥させて誘電体原料を得た。

0104

誘電体原料は、100モルのチタン酸バリウム原料に対して、BaOおよびCaO:各4モル、SiO2 :4モル、MgO:1モル、MnO:0.4モル、Y2 O3 :1モル、V2 O5 :0.01モルが含有してあった。

0105

焼結体の作製及び評価
得られた誘電体原料にポリビニルブチラール樹脂およびエタノール系有機溶媒を添加し、再度ボールミルで混合し、ペースト化して誘電体層用ペーストを得た。

0106

次に、Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極用ペーストを得た。

0107

次に、誘電体層用ペーストを用いてドクターブレード法により、PETフィルム上に、厚さ3μmのグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを所定パターンで印刷した後、PETフィルムからグリーンシートを剥離した。

0108

次に、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着してグリーンチップを得た。内部電極を有するシートの積層数は350層とした。

0109

次に、得られたグリーンチップを所定サイズに切断し、下記に示す条件で、脱バインダ、焼成、アニール及び熱処理を行い、焼結体を得た。

0110

脱バインダ
昇温速度:25℃/時間、
保持温度:260℃、
保持時間:8時間、
雰囲気:空気中。
降温速度:300℃/時間、
降温温度:室温(20℃)。

0111

焼成
昇温速度:200℃/時間、
保持温度T1:1255℃、
保持時間:2時間、
雰囲気:還元性
雰囲気ガス:加湿したN2ガス(露点:20℃)と乾燥N2 ガスとH2 ガス(5容量%)との混合ガス、
酸素分圧P1:4.3×10−7Pa、
降温速度:200℃/時間、
降温温度:室温(20℃)。

0112

アニール
昇温速度:200℃/時間、
保持温度T2:1050℃、
保持時間:2時間、
雰囲気:中性
雰囲気ガス:加湿したN2ガス(露点:20℃)と乾燥N2 ガスとの混合ガス、
酸素分圧P2:1.3×10−1Pa、
降温速度:200℃/時間、
降温温度:室温(20℃)。

0113

第1の熱処理
昇温温度:500℃/時間、
保持温度T3:各表参照
温度保持時間:2時間、
雰囲気:強還元性
雰囲気ガス:加湿したN2ガス(露点:20℃)と乾燥N2 ガスとH2 ガスとの混合ガス、
酸素分圧P3:各表参照、
降温速度:500℃/時間、
降温温度:室温(20℃)。

0114

第2の熱処理
昇温温度:500℃/時間、
保持温度T4:各表参照、
温度保持時間:0時間、
雰囲気:中性
雰囲気ガス:加湿したN2ガス(露点:20℃)と乾燥N2 ガスとの混合ガス、
酸素分圧P4:各表参照、
降温速度:500℃/時間、
降温温度:室温(20℃)。

0115

なお、焼成、アニール、第1の熱処理及び第2の熱処理の際のN2ガスの加湿には、水温45℃のウェッターを用いた。

0116

焼成時及び第1の熱処理時の酸素分圧P1,P3は、炉の出口露点計を配置し、炉内へ導入したH2 濃度と、排出されてきたガスの露点を測定することにより計算した値である。アニール時の酸素分圧P2及び第2の熱処理時の酸素分圧P4は、露点、H2 濃度及び温度によって計算した値である。

0117

得られた焼結体は、サイズが2012形状(縦:2.0mm×横:1.2mm×高さ1.9mm)、2つの内部電極層の間に挟まれた誘電体層の数(積層数)は350、その厚さ(=層間厚み)は約2μm、内部電極層の厚さは1.2μmであった。

0118

コンデンサ試料の作製及び特性
得られた焼結体の端面を、外部電極としてCuペーストにて塗布/焼付けを行い、図1の積層セラミックコンデンサ試料を得た。

0119

容量バラツキ
得られたコンデンサ試料について、同一ロットの30個に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(横河電機社製:YHP4284)にて、周波数1kHz、入力信号レベル測定電圧)1Vrms/μmの条件下で、静電容量Cを測定し、3σ/x(xは30個の平均)として容量バラツキを算出した。(3σ/x)の値が15以下の場合に容量バラツキが少なく、良好であると判断した。

0120

IR温度依存性(桁落ち)
IR温度依存性(桁落ち)は、得られたサンプルの高温(150℃)における絶縁抵抗IR150 と、室温(20℃)における絶縁抵抗IR20とを測定し、下記式1で示される桁落ちを算出して評価した。評価基準は、−1.50超を良好とした。log(IR150 /IR20) …式1
各温度での絶縁抵抗の測定には、温度可変IR測定器を用い、測定電圧6.3V、電圧印加時間60sで測定した。

0121

結果を各表に示す。各表での酸素分圧の標記「〜E−n」は、「〜×10−n」の意味である。

0122

0123

表1から以下のことが理解される。まず、第1の熱処理にのみ着目してみる。アニール後の第1の熱処理を行わないと(試料1,2)、IR温度依存性は劣化していないが、内部電極層の端部酸化が改善しないために容量バラツキを生じる。酸素分圧P3及び保持温度T3が高くなるに連れて、内部電極層の端部酸化が改善する結果、コンデンサ試料の容量バラツキが改善されていく傾向にあるが(試料3〜8)、P3及びT3が高すぎると(試料8)、IR温度依存性が悪化する傾向にある。つまり、アニール後の第1の熱処理だけでは、コンデンサ試料の容量バラツキ改善とIR温度依存性を両立させることは困難であることが分かる。
これに対し、第1の熱処理に引き続き、第2の熱処理を行うことで、IR温度依存性を劣化させることなく、コンデンサ試料の容量バラツキを改善することができることが認められる。
次に、第2の熱処理を保持温度T4が750℃及び酸素分圧P4が9.5×10−5Paの条件で行うことを前提とした場合に、アニール後の第1の熱処理を行わないと(試料2)、あるいは第1の熱処理における酸素分圧P3及び保持温度T3が低すぎると(試料3)、その後に第2の熱処理を行っても、IR温度依存性を劣化させることなく、コンデンサ試料の容量バラツキを改善することができない。P3及びT3が高すぎても(試料8)、同様である。
これに対し、P3及びT3が適正範囲に制御されている場合には、IR温度依存性を劣化させることなく、コンデンサ試料の容量バラツキを改善することができることが認められる(試料4〜7)。

0124

0125

表2から以下のことが理解される。第1の熱処理を保持温度T3が450℃及び酸素分圧P3が5.5×10−30Paの条件で行うことを前提とした場合に、第1の熱処理後の第2の熱処理を行わないと(試料11)、あるいは第2の熱処理における酸素分圧P4及び保持温度T4が低すぎると(試料12)、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができない。P4及びT4が高すぎる場合(試料15)も同様である。
これに対し、P4及びT4が適正範囲に制御されている場合には、IR温度依存性を劣化させることなく、容量バラツキを改善することができる(試料5,12〜14)。

0126

実施例2
第1の熱処理のT3の保持時間及び第2の熱処理のT4の保持時間を、ゼロ(キープなし)〜24時間まで変化させた以外は、実施例1の表1に示す試料5と同じ条件で、コンデンサ試料を作製し、同じ評価を行った。その結果、同様の結果が得られた。

0127

実施例3
第1の熱処理の昇温速度及び第2の熱処理の昇温速度を、300℃/時間、1000℃/時間と変化させた以外は、実施例1の表1に示す試料5と同じ条件で、コンデンサ試料を作製し、同じ評価を行った。その結果、昇温速度:500℃/時間のケースと同様の結果が得られた。

0128

参考例1
誘電体層の層間厚みと積層数を変化させた以外は、実施例1の表1に示す試料1と同様にして、焼結体を作製し、容量バラツキを測定した。結果を表3に示す。

0129

0130

表3に示すように、誘電体層の層間厚みを薄くし、あるいは誘電体層の積層数を増加させるに従って、内部電極層の端部酸化が進行する結果、容量バラツキが悪化する傾向にあることが理解される(試料1,21〜23)。特に、誘電体層の層間厚みを5μm以下とし、あるいは誘電体層の積層数を100以上とした場合に、アニール処理後に実施例1の第1〜2の熱処理を行わないと、内部電極層の端部酸化が悪化するために、3σ/xとして容量バラツキの値が15を超えてしまうことが確認できた(試料1,23)。

図面の簡単な説明

0131

図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
図2は実施例における焼成、アニール処理、熱処理及び第2の熱処理の各温度変化を示すグラフである。

符号の説明

0132

1…積層セラミックコンデンサ
10…コンデンサ素子本体
2…誘電体層
3…内部電極層
4… 外部電極

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