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技術 X線回折分析方法およびX線回折分析装置

出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 桜井健次
出願日 2005年3月9日 (15年9ヶ月経過) 出願番号 2005-066097
公開日 2006年9月21日 (14年3ヶ月経過) 公開番号 2006-250642
状態 特許登録済
技術分野 放射線を利用した材料分析
主要キーワード 検出器周辺 キャピラリプレート 軸ゴニオメータ X線回折法 X線回折分析装置 保持角度 平均情報 傾角調整機構
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図面 (2)

課題

不均一な結晶構造を有する試料局所構造情報を備えるX線回折図形を短時間で容易に取得することを実現する。

解決手段

単色の入射X線6の光軸、試料4、および二次元位置敏感型検出器7を固定した状態で単色の入射X線6の波長を変えながら試料表面の被測定領域A全体を照らし、被測定領域A内の異なる部位から出射する回折X線10を二次元位置敏感型検出器7の別々の検出素子でそれぞれ区別して検出し、それぞれの波長について、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成し、複数の波長値に対する回折X線画像を一つのセットとして記録する。

概要

背景

X線回折法は、X線結晶性試料照射したときに生じる回折X線を検出することにより、その試料の結晶構造に対応するX線回折図形を得る技術である。X線回折図形は、目的や使用する装置に応じてさまざまな形式で取得されることが知られている。例えば、通常の粉末X線回折計では回折角度回折X線強度が組となったデータの形で取得され、横軸回折角をとり縦軸に回折X線強度をとったグラフ表現される。デバイ・シェラーカメラ等では、回折X線の強度が濃淡として現れた写真としてX線回折図形が取得される。

一般的に粉末多結晶体)を対象として用いる粉末X線回折法は、均一で且つランダム配向をもつ試料の結晶構造を知ることを目的としている。したがって、複数の回折スポット(回折X線強度が強いところ、回折X線強度プロファイルではピークとしてあらわれる)を収集してその強度や相互の幾何学的な位置関係を把握することが重要である。そのために、典型的には、試料を照らす入射X線としてX線管からの特性X線を用い、2軸ゴニオメータのいわゆるθ/2θ走査によって試料からの回折X線の強度の回折角依存性強度プロファイルを測定する。

一方、X線回折測定を目的に作られた試料ではない、いわゆる実試料は、例えば、異なる結晶構造が共存する、方位の異なる集合組織が含まれている、欠陥がある、負荷をあたえられたことによる結晶構造の歪みがある等の不均一な場合が多く、試料の各部位の局所的な結晶構造を知ることも重要となる。しかし、上述の一般的な粉末X線回折法で得られる情報は試料のうちの入射X線で照らされた領域の平均情報であるため、部位による結晶構造の差異についての情報を得ることはできない。

そこで、試料に照射するX線のビームサイズを小さくして試料の各部位の情報を得る技術が提案された(非特許文献1)。確かに、微小なビームサイズの入射X線を用い、試料ステージのXY走査でX線照射領域を変え、各照射領域で従来の粉末X線回折法と同様に2軸ゴニオメータのθ/2θ走査による測定を行えば、試料の各部位の情報を得ることは可能である。しかし、一試料の測定に膨大な時間がかかってしまうという問題がある。例えば、試料上の1点分のX線回折図形を得るのに要する時間が一般的な粉末X線回折法による測定時間と同様の20〜30分程度であるとすれば、仮にもし試料上での測定点数が100×100の10000点であれば測定に約5000時間、すなわち約200日もかかることになる。

測定時間を短縮するために、最近では、一次元または二次元の位置敏感型検出器を用いて検出器の各素子で異なる回折角度の回折X線の情報を検出することにより、2軸ゴニオメータのθ/2θ走査を省略する技術が一般的となっている。しかし、試料の各部位の情報を得るために部位ごとに1点ずつ測定しなければならないことにはかわりがないため、試料の広い領域中の各部位の情報を得ようとすると測定点が多数となり依然として測定に長時間を要してしまう。

他方、試料を入射X線の光軸に対して垂直な軸のまわりで回転可能に支持し、位置敏感
型検出器を入射X線に対する散乱角(2θ角)を固定して設置し、試料と位置敏感型検出器との間にコリメータを配置することによって試料表面の被測定領域中の各部位と位置敏感型検出器の各検出素子とを一対一対応付け、被測定領域全体を平行性のよい単色X線で照らして各部位からの回折X線をそれぞれ別の検出素子で検出することにより、試料上の測定点の走査を省略して試料のθ走査だけによって回折図形を得る技術も提案されている(特許文献1)。この技術では、一般的な粉末回折法で要する測定時間と同程度の時間で試料の各部位の結晶構造の情報を得ることができる。しかし、試料のθ走査の際に試料上の各部位と検出器上の各素子との対応付けがかわらないようにするために試料位置の厳密な調整が必要である。また、試料を回転させるために、試料とコリメータとの間に試料外形のサイズに相応の距離を必ずとる必要があるため、外形の大きな試料を測定しようとすると、装置もそれに応じて大きくする必要があり、また回折X線の検出効率も悪くなってしまう。測定中に試料を回転させても入射X線が被測定領域を照らし続けるようにするには、入射X線のビームサイズが大きくなければならないという問題もある。
Y. Chikaura, Y. Yoneda and G. Hildebrandt, "Polycrystal scattering topography", Journal of Applied Crystallography, vol.15, pp.48-54, 1982
ドイツ特許第4430615号公報(DE4430615C2)

概要

不均一な結晶構造を有する試料の局所構造情報を備えるX線回折形を短時間で容易に取得することを実現する。 単色の入射X線6の光軸、試料4、および二次元位置敏感型検出器7を固定した状態で単色の入射X線6の波長を変えながら試料表面の被測定領域A全体を照らし、被測定領域A内の異なる部位から出射する回折X線10を二次元位置敏感型検出器7の別々の検出素子でそれぞれ区別して検出し、それぞれの波長について、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成し、複数の波長値に対する回折X線画像を一つのセットとして記録する。

目的

本発明は、不均一な結晶構造を有する試料の局所構造情報を備えるX線回折図形、特に二次元の回折X線強度分布画像を短時間で容易に取得することを可能とするX線回折分析方法を提供することを課題とする。また、そのようなX線回折分析方法を実施するための簡単な構成のX線回折分析装置を提供することも課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
0件

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請求項1

不均一な結晶構造を有する試料局所構造情報を備えるX線回折図形を取得するためのX線回折分析方法において、単色の入射X線が試料表面の二次元位置敏感型検出器によって見込まれる被測定領域全体を照らすように試料を固定配置すること、試料で回折されて二次元位置敏感型検出器で検出される回折X線の入射X線に対する散乱角が所望の角度になるように二次元位置敏感型検出器を固定配置すること、単色の入射X線を試料に照射したときに被測定領域内の異なる部位から出射する回折X線を二次元位置敏感型検出器の別々の検出素子でそれぞれ区別して検出し、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成すること、単色の入射X線の光軸、試料、および二次元位置敏感型検出器を固定した状態で単色の入射X線の波長を所望の波長範囲内で変化させながら測定を行い、複数の波長値に対してそれぞれ二次元の回折X線画像を形成してそれらを波長値情報とともに一つのセットとして記録することを特徴とするX線回折分析方法。

請求項2

単色の入射X線の波長を、所望の格子面についての回折スポットの回折X線強度の波長依存プロファイルの波長に対する広がりと同じ波長範囲内で変化させること、少なくとも回折X線強度が最大となる波長、前記波長範囲最長波長および最短波長の三つの波長値について二次元の回折X線画像を形成してそれらを波長値情報とともに一つのセットとして記録することを特徴とする、請求項1に記載のX線回折分析方法。

請求項3

被測定領域の各部位から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することにより、被測定領域の異なる部位から出射する回折X線をそれぞれ二次元位置敏感型検出器の別々の検出素子で区別して検出することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のX線回折分析方法。

請求項4

単色の入射X線の入射角度が試料表面に対して0〜3度となるように試料位置を固定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線回折分析方法。

請求項5

複数の散乱角度位置でそれぞれ同一の格子面間隔に対応する強度ピークを示す波長値を中心とする所望の波長範囲内の複数の波長値に対する二次元の回折X線画像のセットを形成し、それらの複数の画像セットを用いて試料の応力分布を表す二次元画像を作成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のX線回折分析方法。

請求項6

単色の入射X線の入射角度が試料表面に対して0〜3度となるように試料位置を固定すること、検出される回折X線の試料表面に対する出射角度が60度、90度、120度となる散乱角度位置を含む三つ以上の散乱角度位置でそれぞれ所望の波長範囲内の複数の波長値に対する二次元の回折X線画像のセットを形成し、それらの複数の画像セットを用いて試料の応力分布を表す二次元画像を作成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のX線回折分析方法。

請求項7

不均一な結晶構造を有する試料の局所構造情報を備えるX線回折図形を取得するためのX線回折分析装置において、単色の入射X線を波長可変且つ光軸固定に発生させるX線発生部が固定配置されていること、二次元に配列された複数の検出素子を備える二次元位置敏感型検出器を複数の散乱角度位置でそれぞれ測定中固定保持できること、前記入射X線が試料表面の前記二次元位置敏感型検出器により見込まれる被測定領域全体を照らすように、試料を測定中固定保持できること、前記試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域内の各部位から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が設けられており、前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子が前記被測定領域内の異なる部位から出射する回折X線をそれぞれ別々に検出すること、前記検出素子がそれぞれ検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成すること、前記入射X線の光軸、前記試料、および前記二次元位置敏感型検出器を固定した状態で前記入射X線の波長を所望の波長範囲内で変えることにより、当該波長範囲内の複数の波長値についてそれぞれ前記二次元の回折X線画像を形成し、それらの回折X線画像を波長値情報とともに一つの画像セットとして記録することを特徴とするX線回折分析装置。

請求項8

試料表面が水平に位置するように前記試料が固定配置されることを特徴とする、請求項7に記載のX線回折分析装置。

請求項9

試料表面に対する前記入射X線の入射角が0〜3度の範囲内の角度になるように前記試料が固定配置されることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のX線回折分析装置。

請求項10

前記二次元位置敏感型検出器が任意の散乱角度位置でそれぞれ測定中固定保持され得ることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のX線回折分析装置。

請求項11

試料と二次元位置敏感型検出器との間の距離を調節するための機構が設けられていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載のX線回折分析装置。

請求項12

前記試料の位置および傾きを微調整するための位置・傾角調整機構が設けられていることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載のX線回折分析装置。

請求項13

二次元位置敏感型検出器で検出される回折X線の試料面に対する出射角度が60〜120度の範囲内になるような複数の散乱角度位置でそれぞれ前記二次元位置敏感型検出器が測定中固定保持され得ることを特徴とする、請求項9に記載のX線回折分析装置。

技術分野

0001

本発明は、多結晶体、歪みや欠陥を有する部材等の不均一な結晶構造をもつ試料局所構造情報を備えるX線回折図形を取得するためのX線回折分析方法およびX線回折分析装置に関する。

背景技術

0002

X線回折法は、X線結晶性の試料に照射したときに生じる回折X線を検出することにより、その試料の結晶構造に対応するX線回折図形を得る技術である。X線回折図形は、目的や使用する装置に応じてさまざまな形式で取得されることが知られている。例えば、通常の粉末X線回折計では回折角度回折X線強度が組となったデータの形で取得され、横軸回折角をとり縦軸に回折X線強度をとったグラフ表現される。デバイ・シェラーカメラ等では、回折X線の強度が濃淡として現れた写真としてX線回折図形が取得される。

0003

一般的に粉末(多結晶体)を対象として用いる粉末X線回折法は、均一で且つランダム配向をもつ試料の結晶構造を知ることを目的としている。したがって、複数の回折スポット(回折X線強度が強いところ、回折X線強度プロファイルではピークとしてあらわれる)を収集してその強度や相互の幾何学的な位置関係を把握することが重要である。そのために、典型的には、試料を照らす入射X線としてX線管からの特性X線を用い、2軸ゴニオメータのいわゆるθ/2θ走査によって試料からの回折X線の強度の回折角依存性強度プロファイルを測定する。

0004

一方、X線回折測定を目的に作られた試料ではない、いわゆる実試料は、例えば、異なる結晶構造が共存する、方位の異なる集合組織が含まれている、欠陥がある、負荷をあたえられたことによる結晶構造の歪みがある等の不均一な場合が多く、試料の各部位の局所的な結晶構造を知ることも重要となる。しかし、上述の一般的な粉末X線回折法で得られる情報は試料のうちの入射X線で照らされた領域の平均情報であるため、部位による結晶構造の差異についての情報を得ることはできない。

0005

そこで、試料に照射するX線のビームサイズを小さくして試料の各部位の情報を得る技術が提案された(非特許文献1)。確かに、微小なビームサイズの入射X線を用い、試料ステージのXY走査でX線照射領域を変え、各照射領域で従来の粉末X線回折法と同様に2軸ゴニオメータのθ/2θ走査による測定を行えば、試料の各部位の情報を得ることは可能である。しかし、一試料の測定に膨大な時間がかかってしまうという問題がある。例えば、試料上の1点分のX線回折図形を得るのに要する時間が一般的な粉末X線回折法による測定時間と同様の20〜30分程度であるとすれば、仮にもし試料上での測定点数が100×100の10000点であれば測定に約5000時間、すなわち約200日もかかることになる。

0006

測定時間を短縮するために、最近では、一次元または二次元の位置敏感型検出器を用いて検出器の各素子で異なる回折角度の回折X線の情報を検出することにより、2軸ゴニオメータのθ/2θ走査を省略する技術が一般的となっている。しかし、試料の各部位の情報を得るために部位ごとに1点ずつ測定しなければならないことにはかわりがないため、試料の広い領域中の各部位の情報を得ようとすると測定点が多数となり依然として測定に長時間を要してしまう。

0007

他方、試料を入射X線の光軸に対して垂直な軸のまわりで回転可能に支持し、位置敏感
型検出器を入射X線に対する散乱角(2θ角)を固定して設置し、試料と位置敏感型検出器との間にコリメータを配置することによって試料表面の被測定領域中の各部位と位置敏感型検出器の各検出素子とを一対一対応付け、被測定領域全体を平行性のよい単色X線で照らして各部位からの回折X線をそれぞれ別の検出素子で検出することにより、試料上の測定点の走査を省略して試料のθ走査だけによって回折図形を得る技術も提案されている(特許文献1)。この技術では、一般的な粉末回折法で要する測定時間と同程度の時間で試料の各部位の結晶構造の情報を得ることができる。しかし、試料のθ走査の際に試料上の各部位と検出器上の各素子との対応付けがかわらないようにするために試料位置の厳密な調整が必要である。また、試料を回転させるために、試料とコリメータとの間に試料外形のサイズに相応の距離を必ずとる必要があるため、外形の大きな試料を測定しようとすると、装置もそれに応じて大きくする必要があり、また回折X線の検出効率も悪くなってしまう。測定中に試料を回転させても入射X線が被測定領域を照らし続けるようにするには、入射X線のビームサイズが大きくなければならないという問題もある。
Y. Chikaura, Y. Yoneda and G. Hildebrandt, "Polycrystal scattering topography", Journal of Applied Crystallography, vol.15, pp.48-54, 1982
ドイツ特許第4430615号公報(DE4430615C2)

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、不均一な結晶構造を有する試料の局所構造情報を備えるX線回折図形、特に二次元の回折X線強度分布画像を短時間で容易に取得することを可能とするX線回折分析方法を提供することを課題とする。また、そのようなX線回折分析方法を実施するための簡単な構成のX線回折分析装置を提供することも課題とする。

課題を解決するための手段

0009

前記第一の課題は、本発明により、単色の入射X線が試料表面の二次元位置敏感型検出器によって見込まれる被測定領域全体を照らすように試料を固定配置すること、試料で回折されて二次元位置敏感型検出器で検出される回折X線の入射X線に対する散乱角(回折角、入射X線の光軸と回折X線の光軸の間の角)が所望の角度になるように二次元位置敏感型検出器を固定配置すること、単色の入射X線を試料に照射したときに被測定領域内の異なる部位から出射する回折X線をそれぞれ二次元位置敏感型検出器の別々の検出素子で区別して検出し、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成すること、単色の入射X線の光軸、試料、および二次元位置敏感型検出器を固定した状態で単色の入射X線の波長を所望の波長範囲内で変化させながら測定を行い、複数の波長値に対してそれぞれ二次元の回折X線画像を形成してそれらを波長値情報とともに一つのセットとして記録することを特徴とするX線回折分析方法によって解決される。

0010

前記第二の課題は、単色の入射X線を波長可変且つ光軸固定に発生させるX線発生部が固定配置されていること、二次元に配列された複数の検出素子を備える二次元位置敏感型検出器を複数の散乱角度位置でそれぞれ測定中固定保持できること、前記入射X線が試料表面の前記二次元位置敏感型検出器により見込まれる被測定領域全体を照らすように、試料を測定中固定保持できること、前記試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域内の各部位から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が設けられており、前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子が前記被測定領域内の異なる部位から出射する回折X線をそれぞれ別々に検出すること、前記検出素子がそれぞれ検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成すること、前記入射X線の光軸、前記試料、および前記二次元位置敏感型検出器を固定した状態で前記入射X線の波長を所望の波長範囲内で変えることにより、当該波長範囲内の複数の波長値についてそれぞれ前記二次元の回折X線画像を形成し、それらの回折X線画像を波長値情報とともに一つの画像セットとして記録することを特徴とするX線回折分析装置によって解決される。

発明の効果

0011

本発明に係るX線回折分析方法およびX線回折分析装置では、試料の被測定領域内の各部位から出射する回折X線を部位ごとに別々の検出素子で同時に測定するので、小さいビームサイズのX線を用いた技術では欠くことのできない被測定領域内の各部位の一点ずつの走査をしなくても、その走査を行ったのと同じ情報を取得することができる。したがって、そのような技術を用いる場合と比較して劇的に短い時間で一試料の測定を実施することができる。また、各検出素子で検出された回折X線強度がそのまま回折X線画像の各画素の画素値として記録されるので、局所的に異なる結晶構造が共存する、方位の異なる集合組織が含まれている、欠陥や歪がある等の不均一な試料についても、試料の格子面間隔に対応するデータである構造情報を、全体を平均した構造情報としてではなく部位ごとの個別の構造情報として二次元画像中の分布の形で簡単且つ迅速に取得することができる。さらに、回折X線強度のプロファイルの回折角度依存性ではなく波長依存性を利用することを基本とするので、測定中は試料も二次元位置敏感型検出器も動かす必要がない。そのため、通常のX線回折測定において用いられるような高精度の移動機構を一切必要としない簡単な構成のX線回折分析装置を実現できる。また、コンパクトな構造にしても測定中に試料周辺部と検出器周辺部とがぶつかる危険がない。さらに、測定の最中に試料の被測定領域内の各部位と二次元位置敏感型検出器の各検出素子との対応関係が変わってしまうという問題も生じることがない。入射X線と試料の被測定領域との関係も固定されているので、入射X線のビームサイズを大きめ見積もっておかなければ測定中に被測定領域全体を照らせなくなるという問題も生じない。本発明に係るX線回折分析装置では複数の散乱角度位置を測定に利用できるので、入射X線の使用可能な波長範囲が狭く限られている場合にも測定に用いる散乱角度を変えることによってさまざまな格子面についての構造情報を取得することが可能である。

0012

本発明に係るX線回折分析方法において、単色の入射X線の波長を、所望の格子面についての回折スポットの回折X線強度の波長依存プロファイルの波長に対する広がりとほぼ同じ波長範囲で変化させ、少なくとも回折X線強度が最大となる波長、前記波長範囲の最長波長および最短波長の三つの波長値について二次元の回折X線画像を形成してそれらを波長値情報とともに一つのセットとして記録することにより、それらの画像の比較から観察対象とした格子面を有する結晶構造の分布を簡単に取得することができる。

0013

本発明に係るX線回折分析方法において、被測定領域の各部位から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することによって被測定領域の異なる部位から出射する回折X線をそれぞれ二次元位置敏感型検出器の別々の検出素子で区別して検出するようにすれば、より高い位置分解能で試料の結晶構造分布画像を作成することができる。

0014

本発明に係るX線回折分析方法において、単色の入射X線の入射角度が試料表面に対して0〜3度となるように試料位置を固定することにより、細長い線状の断面をもつ入射X線ビームを使用しても試料表面の広い領域を均一に照らすことが可能となる。

0015

本発明に係るX線回折分析方法において、複数の散乱角度位置でそれぞれ同一の格子面間隔に対応する強度ピークを示す波長値を中心とする所望の波長範囲内の複数の波長値に対する二次元の回折X線画像のセットを形成し、それらの複数の画像セットを用いて試料の応力分布を表す二次元画像を作成すれば、試料の広い領域での応力分布を短時間で簡単に知ることができる。その際、応力測定にはできるだけ大きな散乱角度に回折スポットをもつ格子面を用いることが有利であるので、入射X線の入射角度が試料表面に対して0〜3度となるような薄膜配置の場合には、検出される回折X線の試料表面に対する出射角度が60度、90度、120度となる散乱角度位置を含む三つ以上の散乱角度位置でそれぞれ格子面間隔に対応する強度ピークを示す波長値を含む所望の波長範囲内の複数の波長値
に対する二次元の回折X線画像のセットを形成すると、試料・検出器面間距離を問題が生ずるほど大きくすることなしに回折X線画像セットの取得を行い、精度のよい応力分布画像を形成することができる。

0016

本発明に係るX線回折分析装置において、試料表面が水平に位置するように試料が固定配置されると、液体に浮いた析出物のような不安定な試料の測定の際に有利である。

0017

本発明に係るX線回折分析装置において、試料表面に対する入射X線の入射角が0〜3度の範囲内の角度になるように試料が固定配置されると、細長い線状の断面をもつ入射X線ビームを使用しても試料表面の広い領域を均一に照らすことが可能となり有利である。その際、検出される回折X線の試料表面に対する出射角度が60〜120度の角度範囲内になるような複数の散乱角度位置でそれぞれ二次元位置敏感型検出器を測定中固定保持できることが望ましい。

0018

本発明に係るX線回折分析装置において、二次元位置敏感型検出器が任意の散乱角度位置でそれぞれ測定中固定保持され得ると、目的の格子面と使用可能な波長範囲に応じて自由に検出器位置を選択することができるので有利である。

0019

本発明に係るX線回折分析装置において、試料と二次元位置敏感型検出器との間の距離を調節する機構が設けられていると、それぞれの散乱角度位置で最適な試料・検出器間距離を選択することができるので有利である。

0020

本発明に係るX線回折分析装置において、試料の位置および傾きを微調整するための位置・傾角調整機構を有すると、試料のサイズや形状に応じて最適な状態で試料表面を入射X線で照らすことが可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0021

以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。

0022

本発明に係る多結晶体、歪みや欠陥を有する部材等の不均一な結晶構造を有する試料の局所構造情報を備えるX線回折図形を取得するためのX線回折分析方法では、まず、単色の入射X線が試料表面の所望の被測定領域全体を照射するように被測定領域の位置および入射X線に対する試料表面の傾きを決定し、試料を固定配置する。試料位置を固定した後、試料で回折されて検出器で検出される回折X線の入射X線に対する散乱角が所望の角度になる検出器角度位置に二次元位置敏感型検出器を配置し、固定する。ここでは試料位置を決定した後に、検出器位置を決定することを想定しているが、これを逆にしてもかまわない。試料と検出器を固定した後、試料に単色の入射X線を照射し、回折X線強度の測定を行う。被測定領域を二次元位置敏感型検出器を構成する各検出素子に対応して複数の部位に分割して考えると、被測定領域内の異なる部位から出射する回折X線はそれぞれ別々の検出素子で区別して検出される。回折X線強度を検出後、各検出素子が検出した回折X線強度をそれぞれの画素値とする二次元の回折X線画像を形成し、記録する。さらに、単色の入射X線の光軸、試料、および二次元位置敏感型検出器は固定したままで、入射X線の波長を所望の波長範囲内で変化させて、同様に回折X線強度の検出、二次元の回折X線画像の形成、記録を行うことを繰り返す。このようにして、単色の入射X線の波長を所望の範囲で順次変化させながら特定の波長の入射X線に対して回折X線強度測定を行い、それぞれ二次元の回折X線画像を形成して記録することにより、異なる波長値に対する二次元の回折X線画像を波長値情報とともに一つのセットとして記録することができる。入射X線の波長を変えて測定を繰り返す際に、試料および二次元位置敏感型検出器および試料表面の入射X線によって照らされる領域は固定されていて動くことがないので、すべての回折X線画像についてある特定の画素はある特定の試料部位に対応している。したがって
、これらの回折X線画像のセットからそれぞれの部位による結晶構造の違いの情報を例えば画像の明暗コントラストとして得ることができる。

0023

本発明に係るX線回折分析方法では、多くの場合1つまたはいくつかの特定の格子面に対応する回折スポットに着目し、その回折スポットに対応する波長の入射X線に対して試料内のある部位は明るく別の部位は暗いといったコントラストをもつ回折X線強度像を取得する。試料上の位置と画像の各画素とが1対1に対応しているので、画像の明暗から試料のどの部位に注目した格子面をもつ結晶構造が存在するのかを容易に知ることができる。

0024

上述の被測定領域とは、試料表面を二次元の面としてみたときに、二次元位置敏感型検出器が見込む領域、すなわち二次元位置敏感型検出器によって検出され得る回折X線が出射する地点が形成する領域のことをさしている。すなわち、入射X線が試料内部に侵入して試料内部で回折X線が発生し、その回折X線が試料表面から出射するときに、試料表面を二次元の面としてみたときの被測定領域内のいずれかの部位から出射する回折X線だけが検出器で検出される。また、その出射部位(出射位置)が回折X線の発生位置と判断される。その際、試料内での実際の発生位置と出射位置との試料面上でのずれは検出器の分解能に対して無視できる程度の誤差にすぎないので無視することができる。被測定領域は、検出手段として用いる二次元位置敏感型検出器の検出器面(すべての検出素子の検出面によって形成される二次元の面)とほぼ同じ大きさであり、例えば二次元位置敏感型検出器の検出器面が10mm角であれば被測定領域もまたほぼ10mm角となる。したがって、この場合には入射X線は10mm角よりも広い領域を一度に均一に照らすように試料に対する入射角度を決められる必要がある。有利には、入射角度が試料表面に対して0〜3度程度の低角となるように試料位置を固定するとよい。このように試料表面に対して低角の入射角度で入射X線を照射する配置は、基板上に準備された薄膜を基板の影響をうけずに低バックグラウンドで測定する技術として知られており、薄膜配置と呼ばれる。本発明に係るX線回折分析方法に薄膜配置を適用する場合には、バックグラウンド下げることにもまして、細長い線状の断面をもつ入射X線ビームでも試料表面の広い領域を均一に照らすことができるという点で効用が大きい。ただし、低角であるといっても、必ず3度より小さい角度でなければならないというものではない。0度〜3度の角度範囲にあることを基本として考えてはいるが、被測定領域の大きさと入射X線ビーム断面の大きさの関係、バックグラウンドの影響、検出器を試料に近接させて配置する場合には検出器位置と入射X線光路との関係等を考慮して、被測定領域全体を照らすという最低限の条件を満たすように決定すればよい。

0025

試料表面と検出器面との間の距離(試料・検出器間距離)は近ければ近いほど回折X線を効率よく検出し、短時間で測定を実施することができるが、近接した配置でないと測定ができないというものではない。したがって、この距離は二次元位置敏感型検出器およびそれに付属した角度発散制限手段等の検出部が入射X線をさえぎらない範囲で最も試料表面に近接した位置を基準とするが、装置の他の部材との位置関係、他の散乱角度位置での測定とのデータ比較上の問題等を考慮してそれより離れた位置を選んでもよい。使用する装置の構造、試料の形状やサイズにもよるが、試料表面に対して検出器面がほぼ正対した位置で2〜5mm程度、この位置から被測定領域と同一面内に入射X線の光軸に対して垂直に延在する中心軸線のまわりで二次元位置敏感型検出器位置を約±30度動かした位置で12〜15mm程度が試料表面と二次元位置敏感型検出器の検出器面との間の距離の目安である。ただし、それより離れたら測定が行えないというものではない。また、蛍光X線と回折X線とで強度の距離依存性が異なることを利用して、蛍光X線が強いバックグラウンドとなって好ましくない影響を与えるときにはあえて距離を遠ざけてもよい。

0026

一つの検出素子が異なる部位から出射した回折X線を一緒に検出することがないように
するためには、各検出素子について回折X線の光軸に平行な成分だけを選択的にとりだす手段、例えば回折X線の角度発散を抑制する角度発散制限手段、を用いるとよい。

0027

入射X線としてどのような波長範囲の単色X線を用いることができるかは、第一に、X線発生部がどのような波長範囲で単色X線を発生させ得るかによって決まる。大気による吸収、光学系や窓材によるロス等を考えると、一般的な放射光ビームライン実験室系X線発生装置で利用できるのは、波長が0.31nm程度より短い(X線エネルギーが4keV程度より高い)単色X線である。ただし、これより波長の長い単色X線を発生させる手段があればそのような長波長の単色X線を利用することも考えられる。第二に、検出部の構成要素も重要な決定要因である。合成石英キャピラリ集合させたキャピラリプレートを角度発散制限手段として用いる場合には短波長側の限界は0.095nm(X線エネルギーが13keV)程度を目安と考えるとよい。これよりも短波長のX線を使用すると回折X線がキャピラリプレートの壁部を透過してしまい、キャピラリプレートが角度発散制限手段としての用を果たさなくなってしまう。合成石英に金コーティングを施す等の処置を行えばこれよりも短波長の入射X線を使用することも可能となる。このように、角度発散制限手段の材質をも考慮して入射X線の波長を決定する必要がある。また、入射X線の波長(すなわち回折X線の波長)が短くなると検出素子の検出感度が低下することも考慮にいれなければならない。以上のことから、通常の装置構成で入射X線として利用できる単色X線の波長範囲はエネルギーにして4〜13keVの範囲であると考えておくとよい。さらに、その範囲内でも、試料の構成成分によって、吸収端波長より長い波長の単色X線を入射X線として用いて蛍光X線の発生を抑制する(すなわち、検出されるX線強度に占めるバックグラウンドの割合を低下させる)ことが望ましい。例えば、鉄鋼試料では、鉄の吸収端0.1743nm(7111eV)よりも短い波長の入射X線を照射すると鉄から発生する蛍光X線が強いバックグラウンドとなる。したがって、このような試料では事実上測定には0.1743nmよりも長波長の入射X線を用いることとなる。

0028

実際に測定する際に用いる入射X線の波長範囲は、観察しようとする試料の結晶構造と測定に用いる散乱角度(すなわち二次元位置敏感型検出器の配置角度)によって決まる。すなわち、所望の格子面についての回折スポットの回折X線強度プロファイルの波長に対する広がりよりも大きな波長範囲(回折X線強度がバックグラウンドレベルである波長から回折スポットに対応する回折X線強度ピークをはさんで再び回折X線強度がバックグラウンドレベルにおちつく波長まで)を一つの測定における単色の入射X線の波長掃引範囲(波長を変化させる範囲)とする。その範囲内で、少なくとも、回折X線強度が最大となる波長、前記波長範囲の最長波長および最短波長の三つの波長値について二次元の回折X線画像を形成してセットとして記録する。実際には、この三点を含むように所望の間隔で波長をステップ掃引しながらそれぞれの波長値に対して回折X線画像を取得する。それらの少なくとも三つの画像を比較することにより、どの部位が目的とした格子面(結晶構造)を有するかを明らかにすることができる。

0029

ある散乱角度位置で一つないし複数の回折スポットについての回折X線画像のセットを取得した後、別の回折角度位置に検出器位置を移動させて再び上記の手順で回折X線画像のセットを取得してもよい。複数の散乱角度位置で回折X線画像セットを取得すれば、入射X線の使用可能な波長範囲が限られていてある散乱角度位置での測定では取得できない格子面についての情報を含んだ回折X線画像セットをも取得することが可能となる。検出器位置を例えば散乱角90度の位置に選ぶことしかできない場合には、目的とする格子面の間隔に対応する波長が使用可能な波長範囲内にないために測定を断念しなければならない場合もあり得る。しかし、複数の検出器位置を選択可能であれば、回折角度を変えることにより、入射X線の波長範囲が狭く限定されている場合にも、目的の格子面での回折を生じさせ検出することが可能となる。

0030

複数の散乱角度についてそれぞれ所望の回折スポットに関する回折X線画像セットを収集することにより、それらの画像セットから応力分布の二次元画像を形成することも可能である。本発明に係るX線回折分析方法では入射X線の光軸も試料も固定であるので、入射角は固定したままで検出器の位置を複数変えて複数の回折角度について測定を行うことになる。それによってそれぞれ取得された回折X線画像セットから回折スポットを与える波長ピークの変化量の試料上での分布に対応した二次元画像を形成する。波長ピークの変化量の分布を試料面の法線と測定された格子面の法線との間の角度(通常ψ角と呼ぶ)への依存性として整理することにより、応力の分布を得ることができる。測定に用いる散乱角度は、試料表面に対する入射X線の入射角が0〜3度の薄膜配置の場合には、検出される回折X線の試料表面に対する出射角度が60〜120度程度の範囲内の角度となるように少なくとも三つ(例えば出射角度が60度、90度、120度の三つ)を選ぶことを目安とするとよい。もちろんより多くの角度を用いて測定を行ってもよい。装置の構成しだいでこれよりも幅広く角度を変えることも可能であるが、多くの場合には試料と検出器の干渉をさけるために検出される回折X線の試料表面に対する出射角度が90度からはなれると試料・検出器間距離を遠ざける必要がでてくるため、空間分解能も効率も悪くなってしまうことを考慮に入れる必要がある。それだけでなく、種々の補正が必要となる場合もある。一方、装置の構成上の理由や、使用可能な入射X線の波長と試料との関係等の理由で60〜120度の出射角度範囲よりも狭い範囲しか利用できない場合には、その中でできるだけ広い散乱角度範囲から少なくとも三つの散乱角度を選ぶようにする。

0031

図1は、本発明に係るX線回折分析装置の概念図である。本発明に係るX線回折分析装置はX線発生部1、試料部2、検出部3を有している。X線発生部1は、単色のX線を発生させることが可能であり、且つその波長を連続的に変えることができる。また、出射するX線の光軸は波長に依存せずに常に一致する。

0032

試料部2は、試料4と試料4を測定中固定保持する試料支持部5とを備えている。試料4は、X線発生部1で発生させられた単色の入射X線6が試料4の表面の所望の被測定領域A全体を照らすように、試料支持部5によって固定保持される。

0033

検出部3は、二次元に配列された複数の検出素子からなる二次元位置敏感型検出器7と、試料4で発生して試料表面の被測定領域A内の各部位から出射する回折X線10の角度発散を制限することによって被測定領域A内の異なる部位から出射する回折X線10を二次元位置敏感型検出器7の別々の検出素子で区別して検出できるようにするコリメータ(例えば合成石英製キャピラリを集合させたキャピラリプレート、リソグラフィ技術により軽金属に同様の加工を施したもの)等の角度発散制限手段8と、二次元位置敏感型検出器7および角度発散制限手段8を測定中固定保持する検出器支持部9とを有する。図1には示されていないが、検出部3は、各検出素子で検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線画像を形成して記録するための画像形成記録部も有している。単色の入射X線6の光軸と、試料4の位置と、二次元位置敏感型検出器7および角度発散制限手段8の位置とを固定した状態で入射X線6の波長を所望の範囲で変えながら測定を行うことによって、この画像形成記録部が各波長値に対してそれぞれ二次元の回折X線画像を形成し、それらを入射X線6の波長値の情報とともに一つの画像セットとして記録する。

0034

X線発生部1は、多くの場合、連続X線源とモノクロメータ等の単色化手段とから構成される。連続X線源としては、放射光を用いることが好適である。しかしながら、強力な回転対陰極X線源など、他のX線源を用いてX線発生部1を構成することも可能である。図1に示す装置では、X線発生部1は、試料表面に平行な方向に長く試料表面と交差する方向に短い線状断面を有する単色の入射X線6を発生させる。試料表面に対して0〜3度程度の低角で入射X線6が入射する薄膜配置を採用することにより、このような線状の断面をもつ入射X線6でも試料表面の広い領域を均一に照らすことができる。

0035

検出器支持部9は、入射X線6の光軸および回折X線10の光軸を含む面内の複数の散乱角度位置で二次元位置敏感型検出器7を固定保持することができる。図1には代表として二つの散乱角度に対応する検出部の配置D1、D2が示されている。ここで、検出器支持部9は複数の予め定められた散乱角度位置にだけ検出器を固定配置できるような機構を有していればよい。薄膜配置を採用する場合には、検出される回折X線10の試料表面に対する出射角度が少なくとも60度、90度、120度の三つとなるような散乱角度位置で二次元位置敏感型検出器7を測定中固定保持できることが望ましい。しかし、さまざまな試料の測定を行うためには、所望の散乱角度範囲内、薄膜配置の場合には好ましくは検出される回折X線10の出射角度が60〜120度となるような散乱角度範囲内のすべての散乱角度位置に検出器を固定配置できるような機構をもつとよい。薄膜配置の場合の60〜120度という出射角度範囲は厳密にこの範囲でなければならないというものではないが、試料4と検出器との間の距離を大きく離さなくても、入射X線6を遮ったり部材間の接触を生じたりすることなく測定が行える角度範囲である。ただし、測定中に検出器位置を変更することはないので、検出器位置を変えるための機構は手動のものでよい。

0036

それぞれの散乱角度位置で入射X線6をさえぎらない範囲で可能な限り検出器を試料4に近接させた最適な検出器配置を実現するために、試料4の表面と二次元位置敏感型検出器7の検出器面との間の距離(試料・検出器間距離)を変更できるような機構を検出器支持部9が備えていると有利である。これもまた手動の機構でよい。

0037

試料支持部5は、入射X線6が試料4の被測定領域A全体を適切に照らすように試料表面の位置および角度を微調整するための位置・傾角調整機構を有していると有利である。ただし、この位置・傾角調整機構はあくまでも入射X線6と被測定領域Aとの位置関係を最適化するための機構である。本発明では測定中は試料4を一切動かさないので、通常のX線回折測定で入射角θを変えながら測定を行うために用いられる機構とはまったく異なるものである。したがって、手動の調整機構で十分である。

0038

図1に示す装置では、試料表面が水平に位置するように試料4を固定配置することを想定している。このような配置にすることによって、液体中の析出物のような不安定な試料をも取り扱うことが可能となる。

0039

二次元位置敏感型検出器7としては、多素子の半導体検出器、X線検出能力を有するCCDカメラCMOSイメージセンサー等を用いることができる。X線を直接検出することができるCCDカメラあるいはCMOSイメージセンサーでは、発生する電荷量から検出したX線のエネルギーを決定することにより、回折X線と蛍光X線を区別することも可能となる。他方、X線を直接検出するのではなく、X線によって発光するシンチレータを有し、そのシンチレータの発光を検知するような検出器であっても本発明を実施するうえではなんら問題はない。

0040

画像形成記録部は、一般的にはコンピュータをその一部として有するが、コンピュータの機能をマイクロチップとして二次元位置敏感型検出器7に内蔵させて構成することも可能である。

図面の簡単な説明

0041

本発明に係るX線回折分析装置の概念図である。

符号の説明

0042

1X線発生部
2試料部
3 検出部
4 試料
5試料支持部
6 単色の入射X線
7二次元位置敏感型検出器
8 角度発散制限手段
9検出器支持部
10回折X線
A被測定領域
D1、D2 検出器保持角度位置

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