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技術 ミクログリア細胞の輸送方法

出願人 住友ベークライト株式会社
発明者 渡辺芳明
出願日 2005年1月21日 (13年11ヶ月経過) 出願番号 2005-013529
公開日 2006年8月3日 (12年5ヶ月経過) 公開番号 2006-197860
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード 輸送状態 輸送用容器 保冷温度 ベークライト製 加温条件 研究室間 凍結耐性 氷冷温
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この項目の情報は公開日時点(2006年8月3日)のものです。
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課題

ミクログリア細胞を安定した状態で輸送できる輸送手段を提供すること。

解決手段

輸送容器中でグリア細胞培養上清を含有する保存液を用いて常温で輸送することを特徴とするミクログリア細胞の輸送方法であり、好ましくは、保存液中に更にマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、または顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF)、ないしは両者の混合物を含有しているミクログリア細胞の輸送方法。

概要

背景

ミクログリア細胞神経組織に存在し、特に中枢神経系に於いては主要な生体防御機能を担う細胞である。この細胞は神経系疾患病因解明、その治療薬の開発などに於いて重要なターゲットとなっており、その細胞機能の解明が活発に研究されている。このような研究の広がりは多くの研究室において、この細胞が研究素材として必要となることを意味する。これにより研究室間あるいは細胞製造工場から研究現場へと、細胞を安定した状態で届けることが必要となってくる。
新しい技術の進展には、多くの技術者研究者によりデータが追試、確認されなければならない。細胞機能を研究する場合には、対象となる細胞が異なっていては明確な判断が出来ない。そのため同一の細胞を用いて試験を行う必要がある。この際に問題となるのが研究室間の細胞の受け渡し方法、いわゆる輸送方法である。

これまでに実施されている細胞の輸送方法として、最も確実で安定している方法は液体窒素温度輸送する方法である。液体窒素温度では、細胞は安定に保存できる。そのためこの温度での輸送が安全と考えられ、専用輸送容器も開発されている。株化細胞のような耐性のある細胞では好適な方法として、しばしば用いられている。また、保冷温度が高く多少のダメージはあるにせよ、その簡便性からドライアイス保冷での輸送も行われている。

全ての細胞が株化細胞のように凍結耐性があるわけではなく、多くの初代細胞凍結保存することができない。このような凍結に耐えられない細胞は常温で輸送しなければならない。培養容器に細胞を培養し、新鮮血清添加培養液などを容器に満たして輸送する。接着性の細胞は容器の底面に接着させて、浮遊性の細胞は容器内に浮遊させ、培養液充填した状態で輸送する。容器は培養フラスコ培養チューブ、そのまま試験に用いることが出来る培養プレートなどが用いられている。

通常の(哺乳類の)細胞は、37℃の炭酸ガス(5〜10%)インキュベーター中で静置培養される。理想的にはこの状態を維持して輸送することが理想的であるが実用的方法とはなりえず、前記の常温輸送が行われる。明らかに温度、
炭酸ガス濃度振動の点が細胞に悪影響を与える。細胞の特性により、この条件が深刻な影響を与える場合があり、多くの改善の余地が残されている。

ミクログリア細胞は接着性細胞で培養容器に接着させて培養が行われる。そのためこの形での輸送が好適と考えられるが、輸送時の条件に充分耐えられず機能低下が見られる場合が多い。また簡単な加温条件でも充分とはいえない。通常の血清添加培養液に、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、あるいは顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF)などを添加しても著しい効果は認められない。

組織培養の技術(第2版)59-61ページ(1988年)
脳・神経研究プロトコール18-24ページ(1995年)

概要

ミクログリア細胞を安定した状態で輸送できる輸送手段を提供すること。輸送容器中でグリア細胞培養上清を含有する保存液を用いて常温で輸送することを特徴とするミクログリア細胞の輸送方法であり、好ましくは、保存液中に更にマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、または顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ないしは両者の混合物を含有しているミクログリア細胞の輸送方法。なし

目的

本発明の目的は、神経分野の薬理試験毒性試験に用いられるミクログリア細胞を安定した形で輸送する輸送方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

輸送容器中でグリア細胞培養上清を含有する保存液を用いて常温輸送することを特徴とするミクログリア細胞輸送方法

請求項2

保存液中に更にマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)または顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF)、ないしは両者の混合物を含有している請求項1記載のミクログリア細胞の輸送方法。

請求項3

輸送容器中でミクログリア細胞が浮遊状態である請求項1又は2記載のミクログリア細胞の輸送方法。

請求項4

輸送容器がガスバリア性を有するものである請求項1〜3いずれか記載のミクログリア細胞の輸送方法。

技術分野

0001

本発明は、神経組織において免疫機能を担うミクログリア細胞輸送方法に関するものである。

背景技術

0002

ミクログリア細胞は神経組織に存在し、特に中枢神経系に於いては主要な生体防御機能を担う細胞である。この細胞は神経系疾患病因解明、その治療薬の開発などに於いて重要なターゲットとなっており、その細胞機能の解明が活発に研究されている。このような研究の広がりは多くの研究室において、この細胞が研究素材として必要となることを意味する。これにより研究室間あるいは細胞製造工場から研究現場へと、細胞を安定した状態で届けることが必要となってくる。
新しい技術の進展には、多くの技術者研究者によりデータが追試、確認されなければならない。細胞機能を研究する場合には、対象となる細胞が異なっていては明確な判断が出来ない。そのため同一の細胞を用いて試験を行う必要がある。この際に問題となるのが研究室間の細胞の受け渡し方法、いわゆる輸送方法である。

0003

これまでに実施されている細胞の輸送方法として、最も確実で安定している方法は液体窒素温度輸送する方法である。液体窒素温度では、細胞は安定に保存できる。そのためこの温度での輸送が安全と考えられ、専用輸送容器も開発されている。株化細胞のような耐性のある細胞では好適な方法として、しばしば用いられている。また、保冷温度が高く多少のダメージはあるにせよ、その簡便性からドライアイス保冷での輸送も行われている。

0004

全ての細胞が株化細胞のように凍結耐性があるわけではなく、多くの初代細胞凍結保存することができない。このような凍結に耐えられない細胞は常温で輸送しなければならない。培養容器に細胞を培養し、新鮮血清添加培養液などを容器に満たして輸送する。接着性の細胞は容器の底面に接着させて、浮遊性の細胞は容器内に浮遊させ、培養液充填した状態で輸送する。容器は培養フラスコ培養チューブ、そのまま試験に用いることが出来る培養プレートなどが用いられている。

0005

通常の(哺乳類の)細胞は、37℃の炭酸ガス(5〜10%)インキュベーター中で静置培養される。理想的にはこの状態を維持して輸送することが理想的であるが実用的方法とはなりえず、前記の常温輸送が行われる。明らかに温度、
炭酸ガス濃度振動の点が細胞に悪影響を与える。細胞の特性により、この条件が深刻な影響を与える場合があり、多くの改善の余地が残されている。

0006

ミクログリア細胞は接着性細胞で培養容器に接着させて培養が行われる。そのためこの形での輸送が好適と考えられるが、輸送時の条件に充分耐えられず機能低下が見られる場合が多い。また簡単な加温条件でも充分とはいえない。通常の血清添加培養液に、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、あるいは顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子GM−CSF)などを添加しても著しい効果は認められない。

0007

組織培養の技術(第2版)59-61ページ(1988年)
脳・神経研究プロトコール18-24ページ(1995年)

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の目的は、神経分野の薬理試験毒性試験に用いられるミクログリア細胞を安定した形で輸送する輸送方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

接着性の細胞であるミクログリア細胞を輸送するには、培養容器に接着させた状態で通常の血清添加培養液を輸送用保存液として用いる方法が一般的であるが、この方法では安定した状態の細胞を得ることが出来ない。そこで他の培養液を輸送用保存液として検討したところ、ミクログリア細胞の機能が維持されるものを見出した。ここに着目し、さらに種々の培養方法試験方法の検討を行った結果、本発明に至ったものである。

0010

即ち本発明は、
(1)輸送容器中でグリア細胞培養上清を含有する保存液を用いて常温で輸送することを特徴とするミクログリア細胞の輸送方法、
(2)保存液中に更にマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)または顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ないしは両者の混合物を含有している(1)記載のミクログリア細胞の輸送方法、
(3)輸送容器中でミクログリア細胞が浮遊状態である(1)又は(2)記載のミクログリア細胞の輸送方法、
(4)輸送容器がガスバリア性を有するものである(1)〜(3)いずれか記載のミクログリア細胞の輸送方法、
である。

発明の効果

0011

本発明を用いることによりミクログリア細胞を安定した状態で輸送することが可能となり、多くの研究室で本細胞を用いた試験が容易に行えるようになる。これによりミクログリア細胞の様々な特性研究が行われ、神経系疾患の病因解明や治療薬の開発が加速されることが期待される。

発明を実施するための最良の形態

0012

試験に用いるミクログリア細胞は、混合グリア細胞培養系を用いて得ることができる。混合グリア細胞培養系を形成するには、ラットマウスなどの胎児ないしは新生児の脳を用いる。ヒト由来とすることも可能である。これを細切トリプシンなどにより、結合組織を切断し細胞を分離する。これを血清添加培養液で培養することにより、アストロサイトを主要な細胞とする混合グリア細胞培養系が形成される。この状態で培養を継続すると、ミクログリア細胞が顕微鏡観察下、容易に認めることが出来る状態で出現してくる。この期間は使用する脳の量、由来が胎児、新生児、成熟動物などにより異なる。使用する培養液は、血清添加培養液が適するが、さらにミクログリア細胞増殖作用を持つM−CSF、GM−CSFなどの増殖誘導因子を添加してもよい。

0013

増殖してきたミクログリア細胞を採取することにより、評価試験系などの実験系を構成することが出来るが、この混合グリア細胞培養系では浮遊している状態のものと接着しているものが認められる。後者は培養器を軽く振とうすることにより浮遊状態へ変わり、より多くの細胞を採取することが出来る。より長い時間の振とうにより得られる細胞数は増すが、細胞に与えるダメージも多くなり、必ずしも好適な方法ではない。混合グリア細胞培養系の培養を継続すれば、ミクログリアの採取は複数回可能である。

0014

混合グリア細胞培養系を形成する培養容器は、特に制限されるものではないが多くのミクログリアを得ようとする場合には培養面積の大きなものを用いる必要がある。また、振とう操作を行い、より多くの細胞を得ようとする場合は容器を密閉状態にする必要がある。この点から容易に密閉状態に出来る培養フラスコなどが好適である。培養表面は通常の接着性細胞を培養するための表面状態であればよく、ミクロキャリアーファイバー状のものなど各種の培養器材が使用できる。また、細胞接着性因子(ポリリジンなど)をコートし接着性を高めた培養容器、培養基材も使用することが出来る。

0015

採取したミクログリア細胞は遠心分離し、輸送用保存液で所定の濃度に調節後輸送用容器に移す。細胞は浮遊状態が好適であるが、接着状態での輸送も不可能ではない。また、細胞数と保存液量の関係は特に限定されるものではないが、細胞数が多すぎる場合では凝集状態になる場合が認められる。ここで用いる輸送用保存液にはグリア細胞の培養上清が適する。前記混合グリア細胞培養で得られた培養系の培養上清を用いることが出来るし、また別にグリア細胞(アストロサイトなど)を培養して培養上清を得ることも出来る。ここで用いる培養上清には血清添加系が適する。血清を添加した状態で採取した培養上清、無血清系で採取した培養上清に血清添加、いずれの場合も可能である。これを用いてミクログリア細胞液を調製する。安定性を高めるためM−CSF又はGM−CSFを1〜500ng/mL添加することは効果的である。

0016

輸送する際の温度は常温(10〜25℃)が適する。冷蔵温度培養温度(37℃)は適さない。組織を輸送する場合に用いられる冷蔵温度や氷冷温度では細胞のダメージが大きい。また培養温度では輸送状態不適切な条件が逆に作用し好適な条件とはならない。

0017

輸送用保存液のpHを維持するために輸送容器はガスバリア性が必要である。細胞の試験検査などに、よく使われているポリプピレン製の容器では輸送中にpHが変化してしまい不適である。このような容器を用いる場合、さらにガスバリア性を有する素材で別包装する必要がある。容器自体にガスバリア性のあるガラスポリエチレンテレフタレートポリカーボネートナイロン、またはこれらをラミネートするなどして複合化したものが好適である。

0018

以下、本発明を実施例にもとづき説明する。
(ミクログリア細胞の採取)
ラット新生児大脳を定法により切り出し細切し、トリプシン0.25%液(SIGMA製)中で15分間酵素処理した。トリプシンを除き、DME/F−12液に牛胎児血清(10%量)を加えた培養液(いずれもインビトロジェン製)で分散し、40μmのメッシュに通した後、遠心分離した。分離した細胞を再度同じ培養液で分散した。1胎児分を培養液30mlで分散、150cm2の培養フラスコ(住友ベークライト製)を用いて5%炭酸ガスインキュベーター内で培養した。各フラスコは培養液を交換しながら、その後15日間培養した。容器を軽く前後左右に動かし培養液を攪拌し、浮遊したミクログリア細胞を遠心分離で採取して、以下の実験に用いた。又、採取した後の上澄み液を培養上清として以下の実験に用いた。

0019

(実施例1)
5×105個のミクログリア細胞を、上記の培養で得られた培養上清を細胞保存液として調製し、ポリエチレンテレフタレート製チューブ(CORNING製)に入れ常温で輸送した。輸送後、遠心分離し回収された細胞数をカウントしたところ、3.8×105個であった。

0020

(実施例2)
5×105個のミクログリア細胞を、上記の培養で得られた培養上清に更にGM−CSFを5ng/mLの濃度となるように添加したものを細胞保存液として調製し、ポリエチレンテレフタレート製チューブ(CORNING製)に入れ常温で輸送した。輸送後、遠心分離し回収された細胞数をカウントしたところ、4.0×105個であった。

0021

(比較例1)
5×105個のミクログリア細胞を、DME/F−12液に牛胎児血清(10%量)を加えた培養液を細胞保存液として調製し、ポリプロピレン製チューブ(CORNING製)に入れ、37℃で加温輸送した。輸送後、遠心分離し回収された細胞数をカウントしたところ、0.4×105個であった。

0022

(比較例2)
5×105個のミクログリア細胞を、DME/F−12液に牛胎児血清(10%量)を加えた培養液に更にGM−CSFを5ng/mLの濃度となるように添加したものを細胞保存液として調製し、ポリプロピレン製チューブ(CORNING製)に入れ、37℃で加温輸送した。輸送後、遠心分離し回収された細胞数をカウントしたところ、0.1×105個であった。

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