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技術 操作性評価方法、プログラム、記録媒体および操作性評価装置

出願人 株式会社豊田中央研究所
発明者 羽田昌敏速水則行山田大介
出願日 2005年7月5日 (15年5ヶ月経過) 出願番号 2005-195623
公開日 2006年6月22日 (14年6ヶ月経過) 公開番号 2006-160241
状態 未査定
技術分野 車両の試験 車両用電気・流体回路
主要キーワード 制約付き最適化 方向法 剛性データ 幾何学量 粘性パラメータ 伝達空間 回転ブレーキ 総合誤差
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

人間による対象物の操作性を評価する技術において、その評価の信頼性を向上させる。

解決手段

対象物単独の粘性弾性との少なくとも一方と、人間が対象物を操作している操作状態において人間のうち対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方とが合成された合成粘弾性を取得し、その取得された合成粘弾性に基づき、人間による対象物の操作性を評価する。

概要

背景

操作者である人間による対象物の操作性を評価する手法として、試験者である人間による官能評価が存在する。このことを、車両の操舵系を設計する場合を例にとり、具体的に説明する。

車両には、複数種類操作部材が、人間によって操作される対象物として存在する。それら操作部材としては、例えば、ステアリング操作部材(例えば、ステアリングホイール)、ブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル)、アクセル操作部材(例えば、アクセルペダル)、クラッチ操作部材(例えば、クラッチペダル)、および変速のために操作されるシフト操作部材(例えば、シフトレバー)が該当し、その他の操作部材(例えば、ボタンダイヤル、スイッチ等)も該当する。それら操作部材のうちのステアリングホイールは、操舵系を介して車両を操舵するために運転者である人間によって操作される対象物の一例である。

この種の操舵系においては、ステアリングホイールの操舵角度に対する操舵トルクの特性が、主に、そのステアリングホイールのコラム軸線まわりの剛性および粘性によって決まる。それら剛性および粘性は、当該操舵系を構成する複数の部品個々の特性、それら部品を互いに結合するジョイントの特性、操舵反力制御を行うモータなどの動力源アシスト特性等、各種の個別特性に依存する。

そのため、この種の操舵系の設計においては、それら個別特性の調整が行われる。その調整のため、一般に、試験者が当該操舵系の試作品試験的に使用して官能評価が行われ、その官能評価の結果に基づいてそれら個別特性が調整され、ひいては、当該操舵系の全体特性が設計される。

しかしながら、この官能評価では、操作性の評価結果を定量化するのに限界があるうえに、この官能評価の結果が試験者によって変動してしまい、その官能評価の信頼性を向上させるのにも限界がある。

そのため、官能評価に依存することなく、人間による対象物の操作性を定量的に評価する手法が既にいくつか提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−220872号公報

概要

人間による対象物の操作性を評価する技術において、その評価の信頼性を向上させる。対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方と、人間が対象物を操作している操作状態において人間のうち対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方とが合成された合成粘弾性を取得し、その取得された合成粘弾性に基づき、人間による対象物の操作性を評価する。

目的

効果

実績

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請求項1

人間による対象物の操作性を評価する操作性評価方法であって、前記対象物単独の粘性弾性との少なくとも一方である対象物粘弾性と、前記人間が前記対象物を操作している操作状態において前記人間のうち前記対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方である人間粘弾性とが合成された合成粘弾性を取得する合成粘弾性取得工程と、その取得された合成粘弾性に基づいて前記操作性を評価する評価工程とを含む操作性評価方法。

請求項2

前記合成粘弾性取得工程は、前記対象物と前記人間とのいずれかに、前記操作性を評価するために着目すべき位置を評価位置として設定する評価位置設定工程と、前記人間粘弾性とは無関係に、前記対象物粘弾性を取得する対象物粘弾性取得工程と、前記対象物粘弾性とは無関係に、前記人間粘弾性を取得する人間粘弾性取得工程と、それら取得された対象物粘弾性の値と人間粘弾性の値とを、前記設定された評価位置に関して、互いに合成することにより、前記合成粘弾性を算出する合成粘弾性算出工程とを含む請求項1に記載の操作性評価方法。

請求項3

前記対象物粘弾性取得工程は、前記取得された対象物粘弾性と、前記操作状態において前記対象物のうち前記人間に接触する対象物側接触部分の挙動とに基づき、前記対象物を物理的に表現する対象物物理モデルを用いた逆力学解析手法により、前記操作状態において前記人間が前記対象物から受ける外力を算出する外力算出工程を含み、前記人間粘弾性取得工程は、その算出された外力と、前記操作状態において前記人間のうち前記対象物に接触する人間側接触部分の挙動と、前記人間の関節の受動抵抗とに基づき、前記人間を物理的に表現する人間物理モデルを用いた逆力学解析手法により、前記人間側接触部分に作用する内力を算出する内力算出工程と、その算出された内力と、前記操作状態における前記人間側接触部分の挙動と、前記人間における筋の粘弾性特性とに基づき、前記人間粘弾性を算出する人間粘弾性算出工程とを含む請求項2に記載の操作性評価方法。

請求項4

前記外力算出工程は、前記対象物が外部環境から受ける拘束を考慮して前記外力を算出し、前記内力算出工程は、前記人間が外部環境から受ける拘束を考慮して前記内力を算出する請求項3に記載の操作性評価方法。

請求項5

前記合成粘弾性算出工程は、前記人間と前記対象物とが互いに接触する接触条件を考慮して前記合成粘弾性を算出する請求項2ないし4のいずれかに記載の操作性評価方法。

請求項6

前記人間粘弾性算出工程は、さらに、前記算出された内力と、前記操作状態における前記人間側接触部分の挙動と、前記筋の粘弾性特性とに基づき、前記各筋の活性度である筋活性度推定する筋活性度推定工程と、その推定された筋活性度と、前記筋の粘弾性特性とに基づき、前記人間粘弾性を誘導する人間粘弾性誘導工程とを含む請求項3または4に記載の操作性評価方法。

請求項7

前記筋活性度推定工程は、前記人間のうちの解析されるべき解析部位における複数本の筋についての前記筋活性度の推定値合計値が実質的に最小となり、かつ、各筋につき、前記人間の関節に作用する力と前記人間の筋に作用する筋力との間に力のつりあいが実質的に成立するように前記筋活性度の推定値を算出する筋活性度算出工程を含む請求項6に記載の操作性評価方法。

請求項8

前記合成粘弾性取得工程は、前記操作状態において前記対象物に作用する力を第1センサによって検出する第1検出工程と、前記操作状態において前記対象物が示す挙動を第2センサによって検出する第2検出工程と、前記第1センサによる検出値と前記第2センサによる検出値とに基づいて前記合成粘弾性を算出する算出工程とを含む請求項1に記載の操作性評価方法。

請求項9

前記評価工程は、設計者が前記対象物を前記対象物粘弾性に関して設計することを支援するために、前記合成粘弾性の目標値を入力する目標値入力工程と、前記取得された合成粘弾性の、前記入力された目標値に対する誤差が減少するように、前記対象物粘弾性の設計値修正する設計値修正工程とを含む請求項1ないし8のいずれかに記載の操作性評価方法。

請求項10

前記人間は、車両の乗員であり、前記対象物は、前記車両において前記乗員によって操作される操作部材である請求項1ないし9のいずれかに記載の操作性評価方法。

請求項11

前記操作部材は、ステアリング操作部材と、ブレーキ操作部材と、アクセル操作部材と、クラッチ操作部材と、変速のために操作されるシフト操作部材とのうちの少なくとも一つを含む請求項10に記載の操作性評価方法。

請求項12

前記人間は、回転軸を有する関節と、前記回転軸まわりに互いに回動可能に配置される2本の骨と、それら2本の骨を互いに結合する筋とを有する結合組織を含み、その結合組織においては、(a)前記筋が、互いに離れた2個の付着点において前記2本の骨にそれぞれ付着させられ、(b)その筋が、それら2個の付着点の途中に位置する少なくとも1個の経由点において、前記回転軸の近傍を通過するように前記2本の骨に幾何学的に関連付けられ、(c)前記筋に発生する筋力によって前記回転軸まわりに発生する関節トルクの大きさが、前記2個の付着点と前記少なくとも1個の経由点とによって規定される前記筋の経路と前記回転軸との距離および方向で決まる筋モーメントアームに依存し、前記人間物理モデルは、前記少なくとも1個の経由点の位置を表現し、当該操作性評価方法は、さらに、前記少なくとも1個の経由点の位置を変更することによって前記筋モーメントアームを調整する筋モーメントアーム調整工程を含む請求項3または4に記載の操作性評価方法。

請求項13

前記筋モーメントアーム調整工程は、前記筋モーメントアームの参照値を目標にして、前記少なくとも1個の経由点の位置の変更量の最適値を探索的に取得する探索的取得工程を含む請求項12に記載の操作性評価方法。

請求項14

前記探索的取得工程は、前記人間における複数の筋のうちのいずれかを設計対象筋として選択する選択工程と、その選択された設計対象筋の経由点の位置を、互いに異なる複数の基準方向にそれぞれ仮想的に変更することにより、複数の仮想筋を設定する設定工程と、その設定された各仮想筋ごとに、前記筋モーメントアームを前記仮想筋モーメントアームとして算出する算出工程と、前記各仮想筋ごとに算出された仮想筋モーメントアームの前記参照値に対する誤差の、前記設計対象筋の筋モーメントアームの前記参照値に対する誤差からの偏差の大きさおよび符号に基づき、前記複数の基準方向のうち前記各仮想筋に対応するものを変更方向として、前記設計対象筋の経由点の位置を変更する変更工程とを含む請求項13に記載の操作性評価方法。

請求項15

前記筋モーメントアーム調整工程は、前記筋につき、前記2本の骨が前記関節において成す関節角度を、時系列的複数個の関節角度として入力する関節角度入力工程と、前記筋につき、前記各経由点ごとに、前記入力された複数個の関節角度に共通する1個の位置を最適位置として決定する最適位置決定工程とを含む請求項12ないし14のいずれかに記載の操作性評価方法。

請求項16

前記最適位置決定工程は、前記筋モーメントアームの、前記入力された複数個の関節角度にそれぞれ対応する複数個の参照値からの誤差を算出する総合誤差算出工程であって、前記各関節角度ごとに、前記筋モーメントアームの、各関節角度に対応する参照値からの誤差を算出し、前記入力された複数個の関節角度についてそれぞれ算出された複数個の誤差の合成値を総合誤差として算出するものと、その算出される総合誤差が許容範囲内に収まるように、前記最適位置を前記複数個の関節角度に共通に決定する共通決定工程とを含む請求項15に記載の操作性評価方法。

請求項17

前記筋モーメントアーム調整工程は、前記筋につき、前記2本の骨が前記関節において成す関節角度を入力する関節角度入力工程と、前記筋につき、前記各経由点ごとに、前記入力された1個の関節角度に対応する1個の位置を最適位置として決定する最適位置決定工程とを含む請求項12ないし14のいずれかに記載の操作性評価方法。

請求項18

前記最適位置決定工程は、前記筋モーメントアームの、前記入力された1個の関節角度に対応する1個の参照値からの誤差を個別誤差として算出する個別誤差算出工程と、その算出される個別誤差が許容範囲内に収まるように、前記最適位置を各関節角度ごとに決定する個別決定工程とを含む請求項17に記載の操作性評価方法。

請求項19

請求項1ないし18のいずれかに記載の方法を実施するためにコンピュータにより実行されるプログラム

請求項20

請求項19に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体

請求項21

人間による対象物の操作性を評価する操作性評価装置であって、前記対象物と前記人間とのいずれかに、前記操作性を評価するために着目すべき位置を評価位置として設定する評価位置設定手段と、その設定された評価位置に関して、前記対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方である対象物粘弾性と、前記人間が前記対象物を操作している操作状態において前記人間のうち前記対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方である人間粘弾性とが合成された合成粘弾性を取得する合成粘弾性取得手段と、その取得された合成粘弾性に基づいて前記操作性を評価する評価手段とを含む操作性評価装置。

請求項22

前記評価手段は、設計者が前記対象物を前記対象物粘弾性に関して設計することを支援するために、前記合成粘弾性の目標値を入力する目標値入力手段と、前記取得された合成粘弾性の、前記入力された目標値に対する誤差が減少するように、前記対象物粘弾性の設計値を修正する設計値修正手段とを含む請求項21に記載の操作性評価装置。

技術分野

0001

本発明は、人間による対象物の操作性を評価する技術に関するものであり、特に、その評価の信頼性を向上させる技術に関するものである。

背景技術

0002

操作者である人間による対象物の操作性を評価する手法として、試験者である人間による官能評価が存在する。このことを、車両の操舵系を設計する場合を例にとり、具体的に説明する。

0003

車両には、複数種類操作部材が、人間によって操作される対象物として存在する。それら操作部材としては、例えば、ステアリング操作部材(例えば、ステアリングホイール)、ブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル)、アクセル操作部材(例えば、アクセルペダル)、クラッチ操作部材(例えば、クラッチペダル)、および変速のために操作されるシフト操作部材(例えば、シフトレバー)が該当し、その他の操作部材(例えば、ボタンダイヤル、スイッチ等)も該当する。それら操作部材のうちのステアリングホイールは、操舵系を介して車両を操舵するために運転者である人間によって操作される対象物の一例である。

0004

この種の操舵系においては、ステアリングホイールの操舵角度に対する操舵トルクの特性が、主に、そのステアリングホイールのコラム軸線まわりの剛性および粘性によって決まる。それら剛性および粘性は、当該操舵系を構成する複数の部品個々の特性、それら部品を互いに結合するジョイントの特性、操舵反力制御を行うモータなどの動力源アシスト特性等、各種の個別特性に依存する。

0005

そのため、この種の操舵系の設計においては、それら個別特性の調整が行われる。その調整のため、一般に、試験者が当該操舵系の試作品試験的に使用して官能評価が行われ、その官能評価の結果に基づいてそれら個別特性が調整され、ひいては、当該操舵系の全体特性が設計される。

0006

しかしながら、この官能評価では、操作性の評価結果を定量化するのに限界があるうえに、この官能評価の結果が試験者によって変動してしまい、その官能評価の信頼性を向上させるのにも限界がある。

0007

そのため、官能評価に依存することなく、人間による対象物の操作性を定量的に評価する手法が既にいくつか提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−220872号公報

発明が解決しようとする課題

0008

典型的な従来技術によれば、人間による対象物の操作性を評価するために、その対象物単独の剛性または粘性が計算または実測によって取得され、その取得値に基づいてその操作性が評価される。

0009

しかしながら、本発明者らの研究により、操作中に人間が対象物から感じる剛性または粘性は、その対象物単独の剛性または粘性に必ずしも一致しないことが判明した。さらに、操作中に人間が対象物から感じる剛性または粘性は、対象物単独の剛性または粘性に、人間単独の剛性または粘性、すなわち、人間の筋および関節が持つ剛性または粘性という動特性による影響を与えたものに一致する可能性があることも判明した。

0010

このことを、前述の操舵系を例にとり、具体的に説明するに、運転者が車両を操縦する場合には、運転者がステアリングホイールを手で握ることによって人間から操舵系へ操作力が伝達される。そのため、運転者の手とステアリングホイールとの間には、あたかも機械的なジョイントが介在するのと等価な物理特性が発生する。そのため、運転者である人間の筋や関節あるいは身体が持つ剛性または粘性が、ステアリングホイールのコラム軸線まわりの回転運動に何らかの物理的な影響を与える。その結果、操舵中に運転者がステアリングホイールから感じる剛性または粘性は、そのステアリングホイール単独の剛性または粘性に、運転者単独の剛性または粘性という動特性による影響を与えたものに一致する可能性がある。

0011

以上説明した事情背景として、本発明は、人間による対象物の操作性を評価する技術において、その評価の信頼性を向上させることを課題としてなされたものである。

課題を解決するための手段

0012

本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。

0013

さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。

0014

(1) 人間による対象物の操作性を評価する操作性評価方法であって、
前記対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方である対象物粘弾性と、前記人間が前記対象物を操作している操作状態において前記人間のうち前記対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方である人間粘弾性とが合成された合成粘弾性を取得する合成粘弾性取得工程と、
その取得された合成粘弾性に基づいて前記操作性を評価する評価工程と
を含む操作性評価方法。

0015

この方法によれば、対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方と、人間が対象物を操作している操作状態において人間のうち対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方とが合成された合成粘弾性が取得される。その取得された合成粘弾性に基づいて操作性が評価される。

0016

したがって、この方法によれば、対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方のみに基づいて操作性が評価される場合より、操作性の評価の信頼性を向上させることが容易となる。さらに、人間単独の粘性と弾性との少なくとも一方のみに基づいて操作性が評価される場合より、操作性の評価の信頼性を向上させることが容易となる。

0017

本項および下記の各項における「合成粘弾性」は、典型的には、対象物粘弾性と人間粘弾性とを加算的または乗算的に合成して取得された値として定義されるが、合成粘弾性の取得値が人間または対象物の物理特性の解析よりむしろ操作性の評価に用いられるという側面を重視する場合には、その他の値、例えば、対象物粘弾性と人間粘弾性とを減算的または除算的に合成して取得された値として定義することが可能である。

0018

(2) 前記合成粘弾性取得工程は、
前記対象物と前記人間とのいずれかに、前記操作性を評価するために着目すべき位置を評価位置として設定する評価位置設定工程と、
前記人間粘弾性とは無関係に、前記対象物粘弾性を取得する対象物粘弾性取得工程と、
前記対象物粘弾性とは無関係に、前記人間粘弾性を取得する人間粘弾性取得工程と、
それら取得された対象物粘弾性の値と人間粘弾性の値とを、前記設定された評価位置に関して、互いに合成することにより、前記合成粘弾性を算出する合成粘弾性算出工程と
を含む(1)に記載の操作性評価方法。

0019

この方法によれば、合成粘弾性を数値解析によって取得することが可能となるため、特定の物理量の実測もその実測のための試験品製作も完全にないしは部分的に省略可能となる。

0020

(3) 前記対象物粘弾性取得工程は、
前記取得された対象物粘弾性と、前記操作状態において前記対象物のうち前記人間に接触する対象物側接触部分の挙動とに基づき、前記対象物を物理的に表現する対象物物理モデルを用いた逆力学解析手法により、前記操作状態において前記人間が前記対象物から受ける外力を算出する外力算出工程を含み、
前記人間粘弾性取得工程は、
その算出された外力と、前記操作状態において前記人間のうち前記対象物に接触する人間側接触部分の挙動と、前記人間の関節の受動抵抗とに基づき、前記人間を物理的に表現する人間物理モデルを用いた逆力学解析手法により、前記人間側接触部分に作用する内力を算出する内力算出工程と、
その算出された内力と、前記操作状態における前記人間側接触部分の挙動と、前記人間における筋の粘弾性特性とに基づき、前記人間粘弾性を算出する人間粘弾性算出工程と
を含む(2)項に記載の操作性評価方法。

0021

この方法においては、対象物を物理的に表現する対象物物理モデルを用いた逆力学解析手法により、操作状態において人間が対象物から受ける外力が算出される。その算出された外力を含む複数の物理量に基づき、かつ、人間を物理的に表現する人間物理モデルを用いた逆力学解析手法により、人間に作用する内力が算出される。さらに、その算出された内力と、人間における筋の粘弾性特性とを含む複数の物理量に基づき、人間粘弾性が算出される。

0022

ここに、「筋の粘弾性特性」は、例えば、前記内力としての筋力と、前記挙動としての筋長および/または筋長変化速度との間に成立する力学的な関係を意味する。筋の粘弾性特性を表現する式は、例えば、筋モデルまたは筋要素モデルと称される。

0023

よって、本項に係る方法においては、例えば、前記算出された内力を含む複数の物理量に基づき、上述の筋モデルまたは筋要素モデルを用いることにより、人間粘弾性が算出されるということができる。

0024

本項および下記の各項における「外力」および「内力」はいずれも、狭義の力のみならずモーメントまたはトルクを含む広義の力を意味しており、その広義の力は例えば、一般化力と称される。

0025

本項および下記の各項における「挙動」は、人間または対象物の変位(長さ、位置、角度等を含む)と、変位速度(長さが変化する速度、角速度等を含む。)と、変位加速度(長さが変化する加速度、角加速度等を含む。)との少なくとも一つを意味するように定義することが可能である。

0026

(4) 前記外力算出工程は、前記対象物が外部環境から受ける拘束を考慮して前記外力を算出し、
前記内力算出工程は、前記人間が外部環境から受ける拘束を考慮して前記内力を算出する(3)項に記載の操作性評価方法。

0027

この方法によれば、対象物が外部環境から受ける拘束と、人間が外部環境から受ける拘束とを考慮して人間粘弾性をより正確に算出することが可能となる。

0028

本項および下記の各項における「外部環境」は、例えば、人間については、人間が対象物以外の環境から物理的な拘束を受ける場合に、その環境を意味するように定義することが可能であり、また、対象物については、対象物が人間以外の環境から物理的な拘束を受ける場合に、その環境を意味するように定義することが可能である。

0029

(5) 前記合成粘弾性算出工程は、前記人間と前記対象物とが互いに接触する接触条件を考慮して前記合成粘弾性を算出する(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の操作性評価方法。

0030

この方法によれば、人間と前記対象物とが互いに接触する接触条件を考慮して合成粘弾性をより正確に算出することが可能となる。

0031

本項における「接触条件」は、例えば、人間と対象物とがすべての可動方向において剛体結合される条件、人間と対象物とが面接触する条件、人間と対象物とが点接触する条件等を意味するように定義することが可能である。

0032

(6) 前記人間粘弾性算出工程は、さらに、
前記算出された内力と、前記操作状態における前記人間側接触部分の挙動と、前記筋の粘弾性特性とに基づき、前記各筋の活性度である筋活性度推定する筋活性度推定工程と、
その推定された筋活性度と、前記筋の粘弾性特性とに基づき、前記人間粘弾性を誘導する人間粘弾性誘導工程と
を含む(3)または(4)項に記載の操作性評価方法。

0033

筋に発生する筋力の大きさは、その筋の緊張度すなわち筋活性度に依存するため、筋活性度の大小によって筋力の大きさが異なる。このことは、筋の剛性と粘性との少なくとも一方が筋活性度によって変化することを意味し、ひいては、人間粘弾性も筋活性度によって変化することを意味する。したがって、人間粘弾性をより正確に算出することが必要である場合には、筋活性度をも考慮して人間粘弾性を算出することが有効である。

0034

このような知見に基づき、本項に係る方法においては、前記算出された内力を含む複数の物理量と、筋の粘弾性特性とに基づき、各筋の筋活性度が推定され、その推定された筋活性度と、筋の粘弾性特性とに基づき、人間粘弾性が誘導される。

0035

(7) 前記筋活性度推定工程は、前記人間のうちの解析されるべき解析部位における複数本の筋についての前記筋活性度の推定値合計値が実質的に最小となり、かつ、各筋につき、前記人間の関節に作用する力と前記人間の筋に作用する筋力との間に力のつりあいが実質的に成立するように前記筋活性度の推定値を算出する筋活性度算出工程を含む(6)項に記載の操作性評価方法。

0036

この方法によれば、複数本の筋についての筋活性度の合計値が最小化されるように筋が作用するという筋活性度の最小化特性(人間の動作効率最大化特性)と、筋における力のつりあいとの双方を考慮して筋活性度をより正確に推定することが可能となる。

0037

(8) 前記合成粘弾性取得工程は、
前記操作状態において前記対象物に作用する力を第1センサによって検出する第1検出工程と、
前記操作状態において前記対象物が示す挙動を第2センサによって検出する第2検出工程と、
前記第1センサによる検出値と前記第2センサによる検出値とに基づいて前記合成粘弾性を算出する算出工程と
を含む(1)項に記載の操作性評価方法。

0038

この方法によれば、操作状態において対象物に作用する力の検出と、操作状態において対象物が示す挙動の検出とを行うことにより、より複雑な数値計算を行うことなく、合成粘弾性を算出することが可能となる。

0039

本項における「第1センサ」は、例えば、力センサトルクセンサ等であり、「第2センサ」は、例えば、位置センサ角度センサ速度センサ角速度センサ加速度センサ角加速度センサ等である。取得すべき合成粘弾性が剛性を含む場合には、第2センサが位置センサ、角度センサ等を含むように構成される。取得すべき合成粘弾性が粘性を含む場合には、第2センサが速度センサ、角速度センサ等を含むように構成される。

0040

(9) 前記評価工程は、設計者が前記対象物を前記対象物粘弾性に関して設計することを支援するために、
前記合成粘弾性の目標値を入力する目標値入力工程と、
前記取得された合成粘弾性の、前記入力された目標値に対する誤差が減少するように、前記対象物粘弾性の設計値修正する設計値修正工程と
を含む(1)ないし(8)項のいずれかに記載の操作性評価方法。

0041

この方法によれば、合成粘弾性という、操作性をより正確に定量化し得る物理量を用いることにより、操作性が改善された対象物の設計が支援されるため、その設計者の負担が軽減されるとともに、その対象物の設計品質が向上する。

0042

(10) 前記人間は、車両の乗員であり、
前記対象物は、前記車両において前記乗員によって操作される操作部材である(1)ないし(9)項のいずれかに記載の操作性評価方法。

0043

(11) 前記操作部材は、ステアリング操作部材と、ブレーキ操作部材と、アクセル操作部材と、クラッチ操作部材と、変速のために操作されるシフト操作部材とのうちの少なくとも一つを含む(10)項に記載の操作性評価方法。

0044

(12) 前記人間は、回転軸を有する関節と、前記回転軸まわりに互いに回動可能に配置される2本の骨と、それら2本の骨を互いに結合する筋とを有する結合組織を含み、
その結合組織においては、(a)前記筋が、互いに離れた2個の付着点において前記2本の骨にそれぞれ付着させられ、(b)その筋が、それら2個の付着点の途中に位置する少なくとも1個の経由点において、前記回転軸の近傍を通過するように前記2本の骨に幾何学的に関連付けられ、(c)前記筋に発生する筋力によって前記回転軸まわりに発生する関節トルクの大きさが、前記2個の付着点と前記少なくとも1個の経由点とによって規定される前記筋の経路と前記回転軸との距離および方向で決まる筋モーメントアームに依存し、
前記人間物理モデルは、前記少なくとも1個の経由点の位置を表現し、
当該操作性評価方法は、さらに、前記少なくとも1個の経由点の位置を変更することによって前記筋モーメントアームを調整する筋モーメントアーム調整工程を含む(3)または(4)項に記載の操作性評価方法。

0045

人間は、回転軸を有する関節と、前記回転軸まわりに互いに回動可能に配置される2本の骨と、それら2本の骨を互いに結合する筋とを有する結合組織を含んでいる。

0046

その結合組織においては、筋が、互いに離れた2個の付着点において前記2本の骨にそれぞれ付着させられる。その筋は、それら2個の付着点の途中に位置する少なくとも1個の経由点において、前記回転軸の近傍を通過するように前記2本の骨に幾何学的に関連付けられる。前記筋に発生する筋力によって前記回転軸まわりに関節トルクが発生し、その関節トルクの大きさは、前記2個の付着点と前記少なくとも1個の経由点とによって規定される前記筋の経路と前記回転軸との距離および方向で決まる筋モーメントアームに依存する。

0047

したがって、筋モーメントアームを用いて関節トルクを精度よく取得するためには、その筋モーメントアームを精度よく取得することが必要であり、その筋モーメントアームの高精度な取得には、人間を物理的に表現する人間物理モデルにおいて定義される付着点と経由点とのうち少なくとも経由点の位置を正確に定義することが有効である。

0048

しかしながら、本来であれば人間物理モデルに対してそれら付着点および経由点が精度よく位置決めされるべきところ、何らかの理由により、経由点の実際の位置が、人間物理モデルおよび付着点の位置に対する正規の相対位置からずれてしまう可能性がある。このようなずれが発生しているにもかかわらず、それら人間物理モデル、付着点の位置および経由点の位置を用いて筋モーメントアームの算出を行うと、その筋モーメントアームを精度よく算出することができない。

0049

以上説明した事情を背景として、本項に係る方法は、筋モーメントアームの算出精度を向上させることを課題としてなされたものであり、この方法によれば、少なくとも1個の経由点の位置を変更することによって筋モーメントアームが調整される。

0050

したがって、この方法によれば、経由点の位置と共に人間物理モデルを用いて行われる計算の精度が、経由点の位置および筋モーメントアームの精度不足に起因して低下してしまう事態を回避することが容易となる。

0051

(13) 前記筋モーメントアーム調整工程は、前記筋モーメントアームの参照値を目標にして、前記少なくとも1個の経由点の位置の変更量の最適値を探索的に取得する探索的取得工程を含む(12)項に記載の操作性評価方法。

0052

(14) 前記探索的取得工程は、
前記人間における複数の筋のうちのいずれかを設計対象筋として選択する選択工程と、
その選択された設計対象筋の経由点の位置を、互いに異なる複数の基準方向にそれぞれ仮想的に変更することにより、複数の仮想筋を設定する設定工程と、
その設定された各仮想筋ごとに、前記筋モーメントアームを前記仮想筋モーメントアームとして算出する算出工程と、
前記各仮想筋ごとに算出された仮想筋モーメントアームの前記参照値に対する誤差の、前記設計対象筋の筋モーメントアームの前記参照値に対する誤差からの偏差の大きさおよび符号に基づき、前記複数の基準方向のうち前記各仮想筋に対応するものを変更方向として、前記設計対象筋の経由点の位置を変更する変更工程と
を含む(13)項に記載の操作性評価方法。

0053

この方法によれば、前記(13)項における「探索的取得工程」の一具体的態様が提供される。

0054

この方法における「設定工程」は、例えば、前記基準方向の数と同数の仮想筋を設定する工程を含むようにすることが可能である。この場合、例えば、1本の仮想筋を互いに共同して規定する2個の経由点のうちのいずれかの位置のみがn個の基準方向に仮想的に変更される場合には、合計で2n個の基準方向に仮想筋が移動させられることになり、その結果、合計で2n個の仮想筋が発生させられることになる。

0055

本項に係る方法における「探索的取得工程」の一例においては、前記設定工程と、前記算出工程と、前記変更工程とが、経由点の最新位置に対応する筋モーメントアームの、参照値からの誤差が設定値以下となるまで、反復される。この際、前記設定工程においては、例えば、前記変更工程の前回の実行によって取得された経由点の最新位置を基準に、その経由点の位置が、例えば前回と同じ規則に従って仮想的に変更される。

0056

(15) 前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記筋につき、前記2本の骨が前記関節において成す関節角度を、時系列的複数個の関節角度として入力する関節角度入力工程と、
前記筋につき、前記各経由点ごとに、前記入力された複数個の関節角度に共通する1個の位置を最適位置として決定する最適位置決定工程と
を含む(12)ないし(14)項のいずれかに記載の操作性評価方法。

0057

この方法によれば、各経由点の位置が関節角度に応じて変化することが許容されない条件のもとに、各経由点の最適位置が、関節角度の変域全体について1個のみ、決定される。よって、この方法によれば、各経由点の位置変更に必要な計算負荷を軽減しつつ、関節角度に対する筋モーメントアームの変化をより精度よく実現することが可能となる。

0058

後に詳述するが、図32には、人体大腿二頭筋短頭の筋モーメントアームの実験値が、足関節底屈または背屈の角度である関節角度に応じて変化する様子がグラフで表されている。これは、膝関節を30度屈曲したときにおける内転正方向)および外転(負方向)の角度に対する筋モーメントアームを示したものである。

0059

これに対し、図60には、人体の大腿四頭筋側)の筋モーメントアームの実験値が膝関節の屈曲角度(関節角度と同義である。)に応じて変化する様子がグラフで表されている。

0060

図32に示すグラフは、関節角度の変化に対して単調に変化するグラフである。このグラフは、一直線で近似する妥当性が高いものである。これに対し、図60に示すグラフは、関節角度の変化に対して極値を有して変化する複雑なグラフである。このグラフは、一直線で近似する妥当性が低いものである。

0061

本項に係る方法は、関節角度に対する筋モーメントアームの変化特性図32に示す如き単調なグラフで表現される場合に、各経由点の位置変更に必要な計算負荷を軽減しつつ、関節角度に対する筋モーメントアームの変化をより精度よく実現するのにより有利である。

0062

(16) 前記最適位置決定工程は、
前記筋モーメントアームの、前記入力された複数個の関節角度にそれぞれ対応する複数個の参照値からの誤差を算出する総合誤差算出工程であって、前記各関節角度ごとに、前記筋モーメントアームの、各関節角度に対応する参照値からの誤差を算出し、前記入力された複数個の関節角度についてそれぞれ算出された複数個の誤差の合成値を総合誤差として算出するものと、
その算出される総合誤差が許容範囲内に収まるように、前記最適位置を前記複数個の関節角度に共通に決定する共通決定工程と
を含む(15)項に記載の操作性評価方法。

0063

この方法によれば、前記(15)項における「最適位置決定工程」の一具体的態様が提供される。

0064

この方法において「共通決定工程」は、例えば、前述の仮想筋を用いた最適化手法を用いるなどして仮想的に前記最適位置を決定する工程を含むように構成することが可能である。

0065

(17) 前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記筋につき、前記2本の骨が前記関節において成す関節角度を入力する関節角度入力工程と、
前記筋につき、前記各経由点ごとに、前記入力された1個の関節角度に対応する1個の位置を最適位置として決定する最適位置決定工程と
を含む(12)ないし(14)項のいずれかに記載の操作性評価方法。

0066

この方法によれば、各経由点の位置が関節角度に応じて変化することが許容される条件のもと、各経由点の最適位置が、関節角度の変域全体について複数個、決定される。よって、この方法によれば、関節角度に対する筋モーメントアームの変化をより精度よく実現することが可能となる。

0067

この方法は、関節角度に対する筋モーメントアームの変化特性が図60に示す如き非単調なグラフで表現される場合に、関節角度に対する筋モーメントアームの変化をより精度よく実現するのにより有利である。

0068

(18) 前記最適位置決定工程は、
前記筋モーメントアームの、前記入力された1個の関節角度に対応する1個の参照値からの誤差を個別誤差として算出する個別誤差算出工程と、
その算出される個別誤差が許容範囲内に収まるように、前記最適位置を各関節角度ごとに決定する個別決定工程と
を含む(17)項に記載の操作性評価方法。

0069

この方法によれば、前記(17)項における「最適位置決定工程」の一具体的態様が提供される。

0070

この方法において「個別決定工程」は、例えば、前述の仮想筋を用いた最適化手法を用いるなどして仮想的に前記最適位置を決定する工程を含むように構成することが可能である。

0071

(19) (1)ないし(18)項のいずれかに記載の方法を実施するためにコンピュータにより実行されるプログラム

0072

このプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(18)項のいずれかに係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。

0073

本項に係るプログラムは、それの機能を果たすためにコンピュータにより実行される指令の組合せのみならず、各指令に従って処理されるファイルやデータをも含むように解釈することが可能である。

0074

また、このプログラムは、それ単独でコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとしたり、他のプログラムと共にコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとすることができる。後者の場合、本項に係るプログラムは、データを主体とするものとすることができる。

0075

(20) (19)項に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体

0076

この記録媒体に記録されているプログラムがコンピュータにより実行されれば、前記(1)ないし(18)項のいずれかに係る方法と同じ作用効果が実現され得る。

0077

この記録媒体は種々な形式を採用可能であり、例えば、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、CD、CD−ROM等の光記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、ROM等のアンリムーバブルストレージ等のいずれかを採用し得る。

0078

(21) 人間による対象物の操作性を評価する操作性評価装置であって、
前記対象物と前記人間とのいずれかに、前記操作性を評価するために着目すべき位置を評価位置として設定する評価位置設定手段と、
その設定された評価位置に関して、前記対象物単独の粘性と弾性との少なくとも一方である対象物粘弾性と、前記人間が前記対象物を操作している操作状態において前記人間のうち前記対象物の操作に関与する部分単独の粘性と弾性との少なくとも一方である人間粘弾性とが合成された合成粘弾性を取得する合成粘弾性取得手段と、
その取得された合成粘弾性に基づいて前記操作性を評価する評価手段と
を含む操作性評価装置。

0079

この装置によれば、前記(1)項に係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。

0080

(22) 前記評価手段は、設計者が前記対象物を前記対象物粘弾性に関して設計することを支援するために、
前記合成粘弾性の目標値を入力する目標値入力手段と、
前記取得された合成粘弾性の、前記入力された目標値に対する誤差が減少するように、前記対象物粘弾性の設計値を修正する設計値修正手段と
を含む(21)項に記載の操作性評価装置。

0081

この装置によれば、前記(9)項に係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。

0082

(23)コンピュータ上において人間を物理的に表現する人間物理モデルを用いることにより、前記人間が示す挙動とその人間に作用する力とのうちの少なくとも一方を含む物理的状態量を解析する解析方法であって、
前記人間は、回転軸を有する関節と、前記回転軸まわりに互いに回動可能に配置される2本の骨と、それら2本の骨を互いに結合する筋とを有する結合組織を含み、
その結合組織においては、(a)前記筋が、互いに離れた2個の付着点において前記2本の骨にそれぞれ付着させられ、(b)その筋が、それら2個の付着点の途中に位置する少なくとも1個の経由点において、前記回転軸の近傍を通過するように前記2本の骨に幾何学的に関連付けられ、(c)前記筋に発生する筋力によって前記回転軸まわりに発生する関節トルクの大きさが、前記2個の付着点と前記少なくとも1個の経由点とによって規定される前記筋の経路と前記回転軸との距離および方向で決まる筋モーメントアームに依存し、
前記人間物理モデルは、前記筋と、前記2個の付着点と、前記少なくとも1個の経由点とを表現し、
当該解析方法は、前記少なくとも1個の経由点の位置を変更することによって前記筋モーメントアームを調整する筋モーメントアーム調整工程を含む解析方法。

0083

この方法によれば、前記(12)項に係る方法におけると基本的に同じ原理に従い、同様な作用効果が実現され得る。この方法は、前記(13)ないし(18)項のいずれかに記載の特徴的技術と組み合わせて実施することが可能である。

0084

(24) 複数の骨が関節において回動可能に互いに連結されるとともにその関節を跨いで延びる筋によって前記複数の骨が回動可能に互いに結合されて成る人体をコンピュータ上において表現する筋骨格モデルを作成するためにコンピュータによって実行される筋骨格モデル作成方法であって、
前記筋骨格モデルは、前記複数の骨をそれぞれ表現する複数の剛体セグメントを含むとともに、各剛体セグメントごとに、各剛体セグメントに付随する複数の定義点が設定され、かつ、それら定義点は、前記関節の位置を定義する関節点と、前記筋が各骨に付着する付着位置を定義する付着点と、前記筋が各骨の付着位置から別の骨に向かって延びる筋走行を規定する経由点とを含み、
当該筋骨格モデル作成方法は、前記経由点の位置をその経由点の初期位置から変更することにより、その経由点と前記関節点との距離および方向で決まる筋モーメントアームを調整する筋モーメントアーム調整工程を含む筋骨格モデル作成方法。

0085

(25) 前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記筋モーメントアームの目標値を目標モーメントアームとして入力する目標モーメントアーム入力工程と、
前記経由点の位置変更に先立ち、その経由点の位置を表すデータと、前記関節点の位置を表すデータとに基づき、前記筋モーメントアームを算出する算出工程と、
その算出された筋モーメントアームの、前記入力された目標モーメントアームからの誤差に基づき、前記経由点の位置を前記初期位置から変更する変更工程と
を含む(24)項に記載の筋骨格モデル作成方法。

0086

(26) 前記複数の骨は、前記関節において可変の関節角度を成すように配置され、
前記経由点の位置の成分は、基準位置と、その基準位置からの移動量とに分解されて定義され、
前記基準位置は、前記関節角度に依存しないのに対し、前記移動量は、前記関節角度に依存し、
前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記関節角度を入力する関節角度入力工程と、
前記移動量と前記関節角度との間に予め定められた関係に従い、前記入力された関節角度に対応する移動量を決定する移動量決定工程と、
その決定された移動量と、前記基準位置とに基づき、前記経由点の最終位置を決定する最終位置決定工程と
(24)項に記載の筋骨格モデル作成方法。

0087

(27) 前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記複数の骨が前記関節において成す関節角度を、時系列的な複数個の関節角度として入力する関節角度入力工程と、
前記経由点につき、前記入力された複数個の関節角度に共通する1個の位置を最適位置として決定する最適位置決定工程と
を含む(24)ないし(26)項のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法。

0088

(28) 前記筋モーメントアーム調整工程は、
前記複数の骨が前記関節において成す関節角度を、時系列的な複数個の関節角度として入力する関節角度入力工程と、
前記経由点につき、前記入力された複数個の関節角度に個別的に対応する複数個の位置をそれぞれ最適位置として決定する最適位置決定工程と
を含む(24)ないし(26)項のいずれかに記載の筋骨格モデル作成方法。

0089

(29) (24)ないし(28)項のいずれかに記載の方法を実施するためにコンピュータにより実行されるプログラム。

0090

(30) (29)項に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体。

発明を実施するための最良の形態

0091

以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。

0092

図1には、本発明の第1実施形態に従う操作性評価方法を実施するのに好適な操作性評価装置10のハードウエア構成概念的にブロック図で表されている。

0093

この操作性評価装置10は、車両において人間である操作者が対象物(例えば、ブレーキペダル)を操作する挙動をコンピュータ20上で表現し得る人間物理モデルを用いることにより、その操作者による対象物の操作性を数値解析し、その結果を利用して設計者による対象物の設計を支援するために設けられている。

0094

図1に示すように、この操作性評価装置10は、コンピュータ20に入力装置22と出力装置24とが接続されることによって構成されている。コンピュータ20は、よく知られているように、プロセッサ30とストレージ32とがバス34によって互いに接続されて構成されている。コンピュータ20においては、必要なプログラムがストレージ32から読み出されてプロセッサ30によって実行され、その際、その実行に必要なデータがストレージ32から読み込まれるとともに、その実行結果を表すデータが必要に応じてストレージ32に格納されて保存される。

0095

入力装置22は、例えば、図示しないが、ポインティングデバイスとしてのマウスキーボードとを含むように構成される。出力装置24は、図示しないが、文字、図形等の画像を画面上に表示するモニタを含むように構成される。

0096

図1に示すように、ストレージ32には、プログラムメモリ40とデータメモリ42とが設けられている。プログラムメモリ40には、骨格モデル作成プログラム、筋骨格モデル作成プログラム、操作性解析プログラムおよび設計支援プログラムを始めとする各種プログラムが予め記憶されている。データメモリ42には、コンピュータ20上において人体全身を3次元的に表現する複数種類の人間物理モデルを定義するためのモデルデータストアされる。このデータメモリ42には、さらに、前記対象物を表現する対象物物理モデルを定義するためのモデルデータもストアされる。

0097

それら複数種類の人間物理モデルは、有限要素人体モデルと、多関節剛体セグメントモデルである骨格モデルと、同じく多関節剛体セグメントモデルである筋骨格モデルとを含んでいる。

0098

有限要素人体モデルは、人体を複数の有限要素(以下、単に「要素」という。)に分割することにより、人体を近似的に再現するためのモデルである。この有限要素人体モデルは、そもそも、人体の挙動を有限要素法によってシミュレーション解析するために用いられるが、本実施形態においては、骨格モデルを0からではなく、有限要素人体モデルを利用して作成することにより、骨格モデルの作成効率向上および作成時間短縮を目的にして有限要素人体モデルが利用される。

0099

この有限要素人体モデルに対し、骨格モデルおよび筋骨格モデルとしての多関節剛体セグメントモデルは、機構モデルともいわれ、複数の剛体セグメントが複数の関節まわりに回動可能に連結されることにより、人体の形状よりむしろその動作を再現するためのモデルである。

0100

有限要素人体モデルにおいては、人体の各組織が複数の要素によって表現されており、各要素の形状、密度材料物性値等、属性が定義されている。各要素を構成する複数の節点の位置(幾何学量の一例)や材料物性値などの物理量は、すべて唯一グローバル座標系において定義されている。

0101

この有限要素人体モデルにおいては、人体全身が骨格組織のみならず靭帯筋肉等の結合組織に関してもモデル化されることにより、人体全身が、それの解剖学的な形状と構造と特性とに関して忠実に表現されている。その結果、各部位の、外力に対する物理的な応答が精度よく表現されている。

0102

さらに、この有限要素人体モデルは、それの少なくとも1つの部位の形状、位置、機構学的特性および力学的特性の少なくとも1つを定義する可変パラメータを有するものとされており、その可変パラメータが、操作性解析に先立ち、ユーザである設計者または解析者により特定される。

0103

図2には、有限要素人体モデルが、人体の下肢部のみに関し、斜視図で示されている。図2に示すように、この有限要素人体モデルは、人体の骨格のみならず筋および皮膚等の軟組織をも再現している。この有限要素人体モデルにおける下肢部は、腰部100と、左右の大腿部102,102と、左右の部104,104と、左右の足部106,106とに分割されている。

0104

図3には、骨格モデルが、有限要素人体モデルのうち図2に示す部分に対応する部分に関し、斜視図で示されている。図3に示すように、この骨格モデルは、人体のうち骨格のみを再現している。この骨格モデルにおける下肢部は、腰骨110と、左右の大腿骨112,112と、左右の脛骨114,114と、左右の腓骨116,116と、左右の足骨118,118とに分割されている。各足骨118は、細かい骨の結合体である。

0105

この骨格モデルにおいては、人体の各組織が複数の剛体セグメントによって表現され、それら剛体セグメントが関節において回動可能に互いに連結されている。それら剛体セグメントは、腰骨110と、左右の大腿骨112,112と、左右の脛骨114,114と、左右の腓骨116,116と、左右の足骨118,118とを含んでいる。

0106

各剛体セグメントの形状の表面は、ポリゴンによって構成されている。ポリゴン上における複数個の頂点は、そのポリゴンのベースとなった複数の要素上における複数個の節点によって構成される。よって、各剛体セグメントの形状は、対応するポリゴンデータによって表されている。各剛体セグメントごとにローカル座標系割り当てられており、そのローカル座標系において、対応する剛体セグメントの質量、慣性モーメントおよびポリゴンの位置が定義される。

0107

図4には、筋骨格モデルが、骨格モデルのうち図3に示す部分に対応する部分に関し、斜視図で示されている。図4に示すように、この筋骨格モデルは、図3に示す骨格モデルに筋がワイヤ要素図4において太い実線で示す。)として付加されて構成されることにより、人体のうち骨格および筋のみを再現している。すなわち、この筋骨格モデルは、上述の骨格モデルと、ワイヤ要素として構成される筋モデル(筋要素モデル)とが合成されたものなのである。

0108

この筋骨格モデルにおいては、各筋が、対応する骨への付着点(骨に対する相対移動が阻止される位置であり、図4において黒丸で示す。)と、対応する骨に貼り付けられる際に各筋が付着点間の途中において経由する点(骨に対し、筋の延びる方向における相対移動は許容されるが、それと交差する方向における相対移動は阻止される位置であり、図4において黒丸で示す。)とに関して定義される。解剖学的には、筋が骨の表面に付着させられるため、各筋モデルも同様に、各剛体モデル骨要素モデル)の表面に付着させられる。

0109

図5には、操作性評価装置10が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。この操作性評価装置10は、人間物理モデル作成手段200と対象物物理モデル作成手段202と操作性解析手段204と設計支援手段205とを含んでいる。

0110

図5には、操作性解析手段204が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されており、図6には、この操作性解析手段204が、さらに詳しくブロック図で概念的に表されている。図6には、さらに、設計支援手段205も、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。

0111

ただし、図6には、説明の便宜上、操作性解析手段204が、人間および対象物のいずれについても、剛性と粘性とのうちの剛性のみを解析する態様で示されており、また、設計支援手段205が、対象物の剛性と粘性とのうちの剛性のみにつき、設計者による対象物の設計を支援する態様で示されている。

0112

図7には、互いに機械的に接触する人間と対象物(例えば、機械)との間に存在する複数の座標空間が概念的に表されている。それら座標空間は、人間から対象物に向かって、人間の筋が存在する筋空間、人間の挙動(例えば、変位qh、変位速度、変位加速度等)を表す一般化座標が存在する人間一般化座標空間、人間のうち、対象物との接触点が存在する人間接触点空間、仮想空間である接触伝達空間、対象物のうち、人間との接触点が存在する対象物接触点空間、および対象物の挙動(例えば、変位qm、変位速度、変位加速度等)を表す一般化座標が存在する対象物一般化座標空間である。

0113

図7には、さらに、互いに隣接した座標空間間において座標変換を行うための行列Ju,cJh,HおよびcJmが示されている。それら記号の定義は後に詳述する。例えば、行列Juは、図7(a)に示すように、筋空間と人間一般化座標空間との間において、筋長(=筋の変位)luと、人間の挙動の一種である人間変位qhとを物理的に互いに関連付ける(lu=Juqh)。また、行列Juは、図7(b)に示すように、筋空間と人間一般化座標空間との間において、筋長変化速度(=筋の変位速度)dlu/dtと、人間の挙動の一種である人間変位速度dqh/dtとを物理的に互いに関連付ける(dlu/dt=Judqh/dt)。

0114

図7(a)には、各座標空間ごとに、変位と力/トルクとを剛性(弾性)という物理特性によって互いに物理的に関連付けられる様子も示されている。具体的には、筋空間においては、筋の変位luと筋力fuとが筋剛性(人間剛性)Kuによって互いに物理的に関連付けられる。人間一般化座標空間においては、人間の変位quと一般化力τhとが、関節の受動特性に基づく剛性Kj0によって互いに物理的に関連付けられる。

0115

また、人間接触点空間においては、接触点の変位cと接触力τcとが剛性cKhによって互いに物理的に関連付けられる。対象物接触点空間においては、接触点の変位cと接触力τcとが剛性cKmによって互いに物理的に関連付けられる。対象物一般化座標空間においては、対象物の変位qmと一般化力τmとが対象物剛性Kmによって互いに物理的に関連付けられる。

0116

それら各種用語および各種記号のうち、「変位」は、ある物体並進運動の位置と回転運動の位置とを一般化して包括的に表現する用語である。具体的には、人間の変位quは、人間一般化座標空間において、人間のある点の並進運動の位置と回転運動の位置とを包括的に表現し、対象物の変位qmは、対象物一般化座標空間において、対象物のある点の並進運動の位置と回転運動の位置とを包括的に表現する。以上、「変位」の定義を説明したが、この説明は、後述の「変位速度」および「変位加速度」に準用される。

0117

また、「一般化力τ」は、ある物体に作用する並進力とトルクまたはモーメントとを一般化して包括的に表現する用語である。具体的には、一般化力τhは、人間一般化座標空間(関節を定義する関節空間でもある。)において人間の関節に作用する並進力およびトルクを意味する。その一般化力τhと同様に人間に作用する力に分類される物理量として筋力fuが存在するが、この筋力fuは、筋空間において筋に作用する並進力(圧縮力)を意味する。また、一般化力τmは、対象物一般化座標空間において対象物に作用する並進力およびトルクを意味する。

0118

また、接触力τcは、人間と対象物との接触点に作用する一般化力を意味しており、その接触点に作用する並進力とモーメントとを一般化して包括的に表現する用語である。図7に示すように、接触力τcは、人間接触点空間にも対象物接触点空間にも存在するが、それら2つの接触力τcは、大きさが同じで向きが互いに逆であるという関係を有する。

0119

以上、図7に示す各種用語および各種記号を部分的に説明したが、他の用語および記号は後に詳述する。

0120

図7(b)には、各座標空間ごとに、速度と力/トルクとを粘性という物理特性によって互いに物理的に関連付けられる様子も示されている。具体的には、筋空間においては、筋長の変化速度dlu/dtと筋力fuとが筋粘性(人間粘性)Buによって互いに物理的に関連付けられる。人間一般化座標空間においては、人間の変位速度dqh/dtと一般化力τhとが、関節の受動特性に基づく粘性Bj0によって互いに物理的に関連付けられる。

0121

また、人間接触点空間においては、接触点の変位速度dc/dtと接触力τcとが粘性cBhによって互いに物理的に関連付けられる。対象物接触点空間においては、接触点の変位速度dc/dtと接触力τcとが粘性cBmによって互いに物理的に関連付けられる。対象物一般化座標空間においては、対象物の変位速度dqm/dtと一般化力τmとが対象物粘性Bmによって互いに物理的に関連付けられる。

0122

図5に示す人間物理モデル作成手段200は、後にその実行内容フローチャートを参照して経時的に詳細に説明するが、概略的には、前記対象物を操作する人間である操作者の人体物理特性を含む人間物理モデルを、人体の剛体セグメントモデル(例えば、骨格モデル、筋骨格モデル等)または有限要素モデル(例えば、有限要素人体モデル)という形態で作成する。

0123

本実施形態における人間物理モデルは、さらに具体的に説明するに、人体の各部をnb個の剛体または弾性体である要素によって表現する。この人間物理モデルにおいては、それら要素がnj個の関節によって拘束あるいは連結されることにより、骨格系または筋骨格系が形成されている。さらに、この人間物理モデルにおいては、na本の筋および腱が、人体各部に対する付着点位置および経由点位置を用いて表現されている。

0124

この人間物理モデルの自由度ndは、図8において式(1)で表されている。したがって、人間物理モデルの挙動は、nd次元の一般化座標qhを用いて表現される。

0125

この人間物理モデルが持っている物理特性は、人体各部については、寸法、重心位置、主慣性モーメント関節位置、皮膚表面の粘弾性等である。また、関節については、種類、粘弾性等であり、筋については、骨への付着点位置、途中の経由点位置、後述の最大筋力fmaxおよびペネション角度、自然長、剛性(弾性)Ku、粘性Bu等である。

0126

この人間物理モデル作成手段200は、本実施形態においては、前述のように、有限要素モデルとしての有限要素人体モデルから第1の剛体セグメントモデルとしての骨格モデルを作成し、その作成された骨格モデルに、付着点と経由点とによって幾何学的に定義される筋要素モデルを付加することにより、第2の剛体セグメントモデルとしての筋骨格モデルを作成する。

0127

対象物物理モデル作成手段202は、人間によって操作される対象物(例えば、操作装置)の物理特性を含む対象物物理モデルを、対象物の剛体セグメントモデルまたは有限要素モデルという形態で作成する。

0128

本実施形態における対象物物理モデルは、さらに具体的に説明するに、対象物を構成するmb個の各部品を剛体または弾性体の要素によって表現する。この対象物物理モデルにおいては、それら要素がmj個のジョイントによって拘束あるいは連結されることにより、対象物が表現されている。

0129

この対象物物理モデルの自由度mdは、図8において式(2)で表されている。したがって、対象物物理モデルの挙動は、md次元の一般化座標qmを用いて表現される。

0130

この対象物物理モデルが持っている物理特性は、各部品については、寸法、重心位置、主慣性モーメント、ジョイント位置、表面の粘弾性等であり、また、各ジョイントについては、種類、粘弾性等である。

0131

図5に示す操作性解析手段204は、それら作成された人間物理モデルと対象物物理モデルとを用い、かつ、人間と対象物との間の拘束条件・接触条件を含む解析条件のもとに、人間による対象物の操作性を解析する。ここに、「拘束条件」とは、人間または対象物が外部環境によって拘束される条件を意味し、また、「接触条件」とは、人間と対象物とが互いに接触する条件(例えば、一体的に結合するように接触するか、面接触するか)を意味する。

0132

図5に示すように、この操作性解析手段204は、解析条件設定手段206と逆力学解析計算手段208と人間粘弾性テンソル算出手段210と対象物粘弾性テンソル算出手段212と合成粘弾性テンソル算出手段214とを含んでいる。

0133

解析条件設定手段206は、操作性解析のために解析条件を設定する。その解析条件は、人間が対象物を操作する際のその人間と外部環境(対象物以外の物体)との間の拘束条件および外力、対象物と外部環境(人間以外の物体)との間の拘束条件および外力、それら人間と対象物との間の接触条件および外力、互いに接触する人間および対象物から成る人間−対象物系(人間−機械系)において操作性が解析されるべき少なくとも一つの評価位置等を含んでいる。以下、解析条件をさらに具体的に説明する。

0134

本実施形態においては、操作中に人間が外部環境から受けるnc個の拘束が、ヤコビ行列Ghと人間挙動(変位速度)dqh/dtとを用いることにより、図8における式(3)によって表現される。また、人間によって操作される対象物が外部環境から受けるmc個の拘束が、ヤコビ行列Gmと対象物挙動(変位速度)dqm/dtとを用いることにより、図8における式(4)によって表現される。それら式(3)および(4)はいずれも、拘束条件を記述する拘束条件式である。

0135

人間と対象物との間にk個の接触点が存在する場合には、それら接触点のうち、i番目の接触点ciにおける拘束が、図9における式(5)によって表現される接触拘束行列Hiによって表現される。k個の接触点のすべてにおける拘束は、図9における式(6)によって表現される全体接触拘束行列H(図7参照)によって表現される。この全体接触拘束行列Hの一具体例は後述する。

0136

対象物粘弾性のみならず人間粘弾性をも考慮したうえで対象物の操作性すなわち人間−機械系動特性を求めたい評価位置rは、人間を表現している剛体もしくは弾性体、または対象物を表現している剛体もしくは弾性体上に定義される。また、評価位置rに関する可動方向が、可動方向行列Prによって記述される。例えば、評価位置rに原点を持つ6自由度xyz座標系のx軸およびy軸にのみ動く場合には、その行列Prは図9における式(7)で表現される。

0137

図5に示す操作性解析手段204は、図6に示すように、前述の人間物理モデル、すなわち、人間筋特性(例えば、最大筋力fmax、筋剛性パラメータとして機能する、筋長lの関数gu、筋粘性パラメータとして機能する、筋長変化速度の関数hu、筋の自然長等)、人体の幾何学的特徴、人間の外部環境から受ける拘束を表す人間拘束条件Gh、人間の関節が持つ受動特性に基づく剛性である人間関節特性Kjo等を反映したモデルを用い、人間が対象物を操作する際のその人間の挙動(以下、人間の変位位置、変位速度および変位加速度を含み得る広義の概念として使用する。)と、前述の評価位置rとに基づき、人間剛性rKhを取得する人間剛性取得部204aを有する。

0138

図29において式(101)で表すように、人間における各筋ごとに、最大筋力fmaxと、筋長lの関数guと、筋長変化速度の関数huとが定義されれば、各筋の筋力fiが誘導される。すなわち、本実施形態においては、その式(101)が、人間物理モデルを構成する各筋要素モデルを記述する式の一例なのである。

0139

この人間剛性取得部204aは、入力手段216と、人間直交射影算出手段218と、人間のために逆力学解析を行う人間用逆力学解析手段220と、筋活性度推定手段222と、筋剛性算出手段224と、人間剛性座標変換手段226とを含んでいる。

0140

入力手段216は、前述の人間筋特性(人間の物理特性)、人間挙動、人間拘束条件、人間関節特性等を入力する。この入力手段216によって入力すべき人間の挙動(変位qh等)は、例えば、現実の挙動をモーションキャプチャ等を用いて計測することによって取得したり、現実の挙動を想定することによって取得することが可能である。この入力手段216は、入力装置22と、コンピュータ20のうち、該当する情報を入力するために実行される部分との組合せによって構成されている。

0141

人間直交射影算出手段218は、人間拘束条件Ghから、人間に対する拘束Ghの空間への直交射影行列(後述)Phを算出する。人間用逆力学解析手段220は、入力手段216から供給された人間挙動および人間関節特性と、人間直交射影算出手段218から供給された直交射影行列Phと、後述の対象物用逆力学解析手段232から供給される、人間が対象物から受ける接触力τcとに基づき、公知の逆力学解析手法により、前述の一般化力τh(図7参照)を算出する。

0142

筋活性度推定手段222は、入力手段216によって入力された人間筋特性および人間挙動と、人間用逆力学解析手段220から供給された一般化力τhとに基づき、後述の最適化手法により、各筋ごとに筋活性度αを推定する。筋剛性算出手段224は、入力手段216によって入力された人間筋特性と、筋活性度推定手段222から供給された筋活性度αとに基づき、図29において式(102)で表される関係に従い、各筋の剛性Kuを算出する。その剛性Kuは、図7に示すように、筋空間において定義される。

0143

人間剛性座標変換手段226は、図7に示す筋空間から、人間一般化座標空間と対象物一般化座標空間との間においてユーザによって指定される評価位置rが存在する評価点空間(図16(a)および図17(a)参照)への座標変換により、筋剛性算出手段224から供給された筋剛性(人間剛性)Kuを、その筋剛性Kuがその評価位置rまで伝達された等価人間剛性rKu(図16(a)および図17(a)参照)に変換する。この人間剛性座標変換手段226は、具体的には、上述の座標変換により、筋空間における人間剛性Kuを、入力手段216から供給された直交射影行列Phを含む拘束条件を考慮して、後述の式(22−1)を用いることにより、評価点空間における等価人間剛性rKhに変換する。

0144

図5に示す操作性解析手段204は、図6に示すように、前述の対象物物理モデル、すなわち、対象物の剛性Km、対象物の外部環境から受ける拘束を表す対象物拘束条件Gm等を反映したモデルを用い、人間が対象物を操作する際のその対象物の挙動(以下、対象物の変位位置、変位速度および変位加速度を含み得る広義の概念として使用する。)と、前述の評価位置rとに基づき、対象物剛性rKmを取得する対象物剛性取得部204bを有する。

0145

この対象物剛性取得部204bは、入力手段228と、対象物直交射影算出手段230と、対象物のために逆力学解析を行う対象物用逆力学解析手段232と、対象物剛性座標変換手段234とを含んでいる。

0146

入力手段228は、前述の対象物挙動、対象物拘束条件、対象物剛性等を入力する。この入力手段228によって入力すべき対象物の挙動(変位qm等)は、例えば、現実の挙動をモーションキャプチャ等を用いて計測することによって取得したり、現実の挙動を想定することによって取得することが可能である。この入力手段228は、入力装置22と、コンピュータ20のうち、該当する情報を入力するために実行される部分との組合せによって構成されている。

0147

対象物直交射影算出手段230は、対象物拘束条件Gmから、対象物に対する拘束Ghの零空間への直交射影行列(後述)Pmを算出する。対象物用逆力学解析手段232は、入力手段228から供給された対象物挙動および対象物剛性と、対象物直交射影算出手段230から供給された直交射影行列Pmとに基づき、公知の逆力学解析手法により、人間が対象物から受ける接触力τcを算出する。その算出された接触力τcは、前述のように、人間用逆力学解析手段220に供給される。

0148

対象物剛性座標変換手段234は、図7に示す対象物一般化座標空間から前述の評価点空間への座標変換により、入力手段228または後述の対象物剛性更新手段238から供給された対象物剛性Kmを、その対象物剛性Kmが評価位置rまで伝達された等価対象物剛性rKm(図16(a)および図17(a)参照)に変換する。この対象物剛性座標変換手段234は、具体的には、上述の座標変換により、対象物一般化座標空間における対象物剛性Kmを、入力手段228から供給された直交射影行列Pmを含む拘束条件を考慮して、後述の式(31−1)を用いることにより、評価点空間における等価対象物剛性rKmに変換する。

0149

すなわち、本実施形態においては、入力手段216および228と人間直交射影算出手段218と対象物直交射影算出手段230とが互いに共同して、図5に示す解析条件設定手段206を構成し、人間用逆力学解析手段220と対象物用逆力学解析手段232とが互いに共同して、図5に示す逆力学解析計算手段208を構成しているのである。

0150

さらに、本実施形態においては、筋活性度推定手段222と筋剛性算出手段224と人間剛性座標変換手段226とが互いに共同して、図6に示す人間粘弾性テンソル算出手段210を構成し、対象物剛性座標変換手段234が図6に示す対象物粘弾性テンソル算出手段212を構成しているのである。

0151

図6に示すように、操作性解析手段204は、さらに、合成剛性算出手段235を含んでおり、その合成剛性算出手段235は、図5に示す合成粘弾性テンソル算出手段214を構成している。

0152

合成剛性算出手段235は、人間剛性座標変換手段226から供給された等価人間剛性rKhと、対象物剛性座標変換手段234から供給された等価対象物剛性rKmとを数学的に互いに合成する。それにより、この合成剛性算出手段235は、操作中における対象物の、前述の評価位置rにおける剛性が、その対象物単独の剛性のみならず、その対象物を操作している人間の剛性をも考慮して取得される。この合成剛性算出手段235は、それら等価人間剛性rKhおよび等価対象物剛性rKmと、その他必要なパラメータとに基づき、後述の式(21−1)または(30−1)を用いることにより、合成剛性rKhmを算出する。

0153

図6に示すように、設計支援手段205は、入力手段236と、剛性誤差算出手段237と、対象物剛性更新手段238とを含んでいる。

0154

入力手段236は、上記算出された合成剛性rKhm(合成剛性rKhmの計算値)との比較のため、合成剛性rKhmの目標値を入力する。剛性誤差算出手段237は、合成剛性rKhmの計算値の、その入力された目標値に対する誤差を算出する。対象物剛性更新手段238は、その算出された誤差が許容値を超える場合に、対象物剛性Kmであって、図6に示すように、入力手段228を経て対象物剛性座標変換手段234に供給されるものを更新する。この対象物剛性更新手段238により、操作者による対象物の操作性を改善する観点から、対象物剛性Kmを最適化することが容易となる。

0155

ここで、人間粘弾性テンソル算出手段210において人間粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。

0156

人間粘弾性テンソル算出手段210は、前記作成された人間物理モデルと、前記拘束条件と、操作中の人間の挙動またはその挙動と内力との組合せを用いることにより、人間単独の剛性と粘性との少なくとも一方を含む人間粘弾性テンソルを算出する。

0157

その人間粘弾性テンソルのうちの人間剛性テンソルは、筋の剛性Kuと、関節が持つ受動特性に基づく剛性Kj0と、筋空間と、人間の挙動を表す一般化座標qhが張る空間である人間一般化座標空間との間のヤコビ行列Juとを用い、かつ、図11において式(13)ないし(15)で表される直交射影行列Phによって表される前述の拘束条件を考慮することにより、図10において式(8)および(9)で表される。剛性Kuと剛性Kj0とはそれぞれ、拘束条件を考慮する前の剛性である。剛性Kj0は、前述の人間物理モデルによって定義される既知のパラメータである。

0158

また、上述の人間粘弾性テンソルのうちの人間粘性テンソルは、筋肉の粘性Buと、関節が持つ受動特性に基づく粘性Bj0と、筋空間と人間一般化座標空間との間のヤコビ行列Juとを用い、かつ、上述の直交射影行列Phによって表される拘束条件を考慮することにより、図10において式(10)および(11)で表される。粘性Buと粘性Bj0とはそれぞれ、拘束条件を考慮する前の粘性である。粘性Bj0は、前述の人間物理モデルによって定義される既知のパラメータである。

0159

ヤコビ行列Juは、物理的には、関節に働く筋のモーメントアームに相当する。本実施形態においては、その筋モーメントアームが適宜調整されると、それに連動してヤコビ行列Ju中の該当要素が変更されるようになっている。このヤコビ行列Juは、操作中に人間の各関節に働く一般化力τhおよび操作中に人間の筋に働く筋力fuとの間に、図10において式(12)で表される関係を有する。

0160

以下、人間に対する拘束条件を考慮した剛性および粘性を人間粘弾性テンソル(図においてアルファベット上線を付して示すことにより、拘束条件を考慮した粘弾性テンソルであることを示す。このことは、他のパラメータについても同じとする。)というが、その人間粘弾性テンソルは、人間の姿勢や内力によってその値が変化するため、事前に取得された人間の挙動や内力(前述の一般化力を含む。)を用いて、人間粘弾性テンソルの操作中における変化が考慮される。

0161

ここで、対象物粘弾性テンソル算出手段212において対象物粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。

0162

対象物粘弾性テンソル算出手段212は、前記作成された対象物物理モデルと、前記拘束条件と、操作中の対象物の挙動またはその挙動と内力との組合せを用いることにより、対象物単独の剛性と粘性との少なくとも一方を含む対象物粘弾性テンソルを算出する。

0163

その対象物粘弾性テンソルのうちの対象物剛性テンソルは、拘束条件を考慮する前の対象物の剛性Kmを用い、かつ、図11において式(18)ないし(20)で表される直交射影行列Pmによって表される前述の拘束条件を考慮することにより、図11において式(16)で表される。剛性Kmは、前述の対象物物理モデルによって定義されている特性から求めることができる。

0164

また、上述の対象物粘弾性テンソルのうちの対象物粘性テンソルは、拘束条件を考慮する前の対象物の粘性Bmを用い、かつ、上述の直交射影行列Pmによって表される拘束条件を考慮することにより、図11において式(17)で表される。粘性Bmは、前述の対象物物理モデルによって定義されている特性から求めることができる。

0165

以下、対象物に対する拘束条件を考慮した剛性および粘性を対象物粘弾性テンソルというが、その対象物粘弾性テンソルは、対象物の姿勢や内力によってその値が変化するため、事前に取得された対象物の挙動や内力を用いて、対象物粘弾性テンソルの操作中における変化が考慮される。

0166

ここで、合成粘弾性テンソル算出手段214において合成粘弾性テンソルが誘導される論理を説明する。

0167

合成粘弾性テンソル算出手段214は、前記算出された人間粘弾性テンソルおよび対象物粘弾性テンソルと、事前に設定された拘束条件および評価位置rとを用いることにより、それら人間粘弾性と対象物粘弾性とを合成した合成粘弾性を表す合成粘弾性テンソルを算出する。その合成粘弾性テンソルは、合成剛性テンソルと合成粘性テンソルとを含んでいる。以下、それら合成剛性テンソルと合成粘性テンソルとを説明するが、評価位置rが対象物上にある場合と、操作者である人間上にある場合とに分けて、それらの順に説明する。

0168

1.評価位置rが対象物上にある場合

0169

(1)合成剛性テンソルの誘導

0170

評価位置rが対象物上にある場合には、図12において式(21−1)で示すように、評価位置rにおける合成剛性テンソルが、

0171

(a)図11において式(16)で表される対象物剛性テンソルと、
(b)図12において式(22−1)で表される等価人間剛性テンソルと、
(c)図12において式(23)を用いて説明されるヤコビ行列rJmと、
(d)評価位置rにおいて対象物が持つ剛性テンソルrKmと、
(e)図11において式(18)ないし(20)を用いて説明される直交射影行列Pmと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列Prと

0172

を用いることにより、記述される。

0173

等価人間剛性テンソルは、前述の人間剛性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列rJmは、評価位置rと対象物一般化座標qmとの間のヤコビ行列である。

0174

その等価人間剛性テンソルは、図12において式(22−1)で示すように、

0175

(a)図10において式(8)で表される人間剛性テンソルと、
(b)図13において式(24)、(25−1)および(25−2)で表されるヤコビ行列cJhと、
(c)図14において式(28−1)で表される、接触点cjにおいて人間表面が持つ剛性テンソルcjKhから成る行列cKhと、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Phと、
(e)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(f)図14において式(29−1)で表される、接触点cjにおいて対象物表面が持つ剛性テンソルcjKmから成る行列cKmと、
(g)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列rScと

0176

を用いることにより、記述される。

0177

表記について補足するに、図14における式(28−1)および(29−1)における「diag{ }」は、「{ }」内に記載された行列のうちの対角成分を抽出することを意味するオペレータである。このことは、式(28−2)および(29−2)についても同様である。

0178

図16(a)には、剛性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(a)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図16(a)には、等価人間剛性テンソルrKmと、座標系変換行列rScと、ヤコビ行列rJmとが、評価点空間に関連付けて示されている。

0179

(2)合成粘性テンソルの誘導

0180

評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(21−2)で示すように、評価位置rにおける合成粘性テンソルが、

0181

(a)図11において式(17)で表される対象物粘性テンソルと、
(b)図12において式(22−2)で表される等価人間粘性テンソルと、
(c)図12において式(23)を用いて説明されるヤコビ行列rJmと、
(d)評価位置rにおいて対象物が持つ粘性テンソルrBmと、
(e)図11において式(18)ないし(20)を用いて説明される直交射影行列Pmと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列Prと

0182

を用いることにより、記述される。

0183

等価人間粘性テンソルは、前述の人間粘性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列rJmは、評価位置rと対象物一般化座標qmとの間のヤコビ行列である。

0184

その等価人間粘性テンソルは、図12において式(22−2)で示すように、

0185

(a)図10において式(10)で表される人間粘性テンソルと、
(b)図13において式(24)、(25−1)および(25−2)で表されるヤコビ行列cJhと、
(c)図14において式(28−2)で表される、接触点cjにおいて人間表面が持つ粘性テンソルcjBhから成る行列cBhと、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Phと、
(e)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(f)図14において式(29−2)で表される、接触点cjにおいて対象物表面が持つ粘性テンソルcjBmから成る行列cBmと、
(g)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列rScと

0186

を用いることにより、記述される。

0187

図16(b)には、粘性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(b)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図16(b)には、等価人間粘性テンソルrBmと、座標系変換行列rScと、ヤコビ行列rJmとが、評価点空間に関連付けて示されている。

0188

2.評価位置rが人間である操作者上にある場合

0189

(1)合成剛性テンソルの誘導

0190

評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(30−1)で示すように、評価位置rにおける合成剛性テンソルが、

0191

(a)図10において式(8)で表される人間剛性テンソルと、
(b)図15において式(31−1)で表される等価対象物剛性テンソルと、
(c)図15において式(32)を用いて説明されるヤコビ行列rJhと、
(d)図11において式(13)ないし(15)を用いて説明される直交射影行列Phと、
(e)評価位置rにおいて人間が持つ剛性テンソルrKhと、
(f)図9において式(7)で例示される可動方向行列Prと

0192

を用いることにより、記述される。等価対象物剛性テンソルは、前述の対象物剛性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列rJhは、評価位置rと人間一般化座標qhとの間のヤコビ行列である。

0193

その等価対象物剛性テンソルは、図15において式(31−1)で示すように、

0194

(a)図11において式(16)で表される対象物剛性テンソルと、
(b)図15において式(33)および(34)で表されるヤコビ行列cJmと、
(c)図14において式(28−1)で表される、接触点cjにおいて人間表面が持つ剛性テンソルcjKhから成る行列cKhと、
(d)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(e)図14において式(29−1)で表される、接触点cjにおいて対象物表面が持つ剛性テンソルcjKmから成る行列cKmと、
(f)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列rScと

0195

を用いることにより、記述される。

0196

図17(a)には、剛性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(a)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図17(a)には、等価人間剛性テンソルrKmと、座標系変換行列rScと、ヤコビ行列rJhとが、評価点空間に関連付けて示されている。

0197

(2)合成粘性テンソルの誘導

0198

評価位置rが対象物上にある場合には、図15において式(30−2)で示すように、評価位置rにおける合成粘性テンソルが、

0199

(a)図10において式(10)で表される人間粘性テンソルと、
(b)図15において式(31−2)で表される等価対象物粘性テンソルと、
(c)図15において式(32)を用いて説明されるヤコビ行列rJhと、
(d)評価位置rにおいて人間が持つ粘性テンソルrBhと、
(e)図9において式(7)で例示される可動方向行列Prと

0200

を用いることにより、記述される。等価対象物粘性テンソルは、前述の対象物粘性テンソルを評価位置rまで伝達したものであり、ヤコビ行列rJhは、評価位置rと人間一般化座標qhとの間のヤコビ行列である。

0201

その等価対象物粘性テンソルは、図15において式(31−2)で示すように、

0202

(a)図11において式(16)で表される対象物粘性テンソルと、
(b)図15において式(33)および(34)で表されるヤコビ行列cJmと、
(c)図14において式(28−2)で表される、接触点cjにおいて人間表面が持つ粘性テンソルcjBhから成る行列cBhと、
(d)図9において式(5)および(6)で表される接触拘束行列Hと、
(e)図14において式(29−2)で表される、接触点cjにおいて対象物表面が持つ粘性テンソルcjBmから成る行列cBmと、
(f)図13において式(26)および(27)で表される座標系変換行列rScと

0203

を用いることにより、記述される。

0204

図17(b)には、粘性に関し、筋空間と対象物一般化座標空間との間に存在する複数の座標空間であって、図7(b)に示す複数の座標空間に対して、評価位置rが存在する評価点空間が追加されたものが示されている。図17(b)には、等価人間粘性テンソルrBmと、座標系変換行列rScと、ヤコビ行列rJhとが、評価点空間に関連付けて示されている。

0205

ここで、人間と対象物とのうち人間を例にとり、粘弾性テンソルを算出する際に拘束Ghを考慮する手法を説明するために、図13において式(25−2)が誘導される論理を、図18ないし図20を参照して説明する。

0206

図13においては、式(25−1)により、接触点の変位速度と、人間の変位速度とが、ヤコビ行列cJhによって互いに関連付けられている。そのヤコビ行列cJhは、図18に概念的に表すように、人間の変位速度を、人間一般化座標空間から人間接触点空間にマッピングするための行列である。

0207

図8においては、式(3)により、人間の変位速度と、拘束点空間において人間が動かないことを表す零行列0とが、ヤコビ行列Ghによって互いに関連付けられている。そのヤコビ行列Ghは、図18に概念的に表すように、人間の変位速度を、人間一般化座標空間から拘束点空間にマッピングするための行列である。

0208

ここに「拘束点空間」は、人間または対象物のうち外部環境によって拘束される各拘束点ごとに定義される空間である。例えば、人間が、それの骨盤において外部環境としてのグラウンドに拘束され、かつ、対象物としてのブレーキペダルがそれの回転軸において外部環境としてのグラウンドに拘束される場合には、人間については、骨盤に第1の拘束点が設定されて、そこに第1の拘束点空間が定義される一方、対象物については、回転軸に第2の拘束点が設定されて、そこに第2の拘束点空間が定義されることになる。

0209

図11においては、式(13)により、ヤコビ行列Ghと、拘束点空間において人間が動かないことを表す零行列0とが、直交射影行列Phによって互いに関連付けられている。その直交射影行列Phは、図19に概念的に表すように、その零空間を、拘束点空間から人間一般化座標空間にマッピングするための行列である。その人間一般化座標空間にマッピングされた零空間は、人間一般化座標空間のうち、人間が拘束Ghを満たし、かつ、動くことが許容される部分的な空間を意味している。

0210

したがって、拘束Ghを考慮した人間一般化座標空間から接触点空間へのマッピングは、図13において式(25−2)で表すことができるとともに、図20に概念的に図示することができる。よって、直交射影行列Phを適切に設定すれば、拘束Ghが適切に考慮されて人間粘弾性テンソルが誘導されることになる。

0211

同様にして、図11の式(18)に示す直交射影行列Pmを適切に設定すれば、図8の式(4)に示す拘束Gmが適切に考慮されて対象物粘弾性テンソルが誘導されることになる。ひいては、それら人間粘弾性テンソルと対象物粘弾性テンソルとから、合成粘弾性テンソルが適切に誘導されることになる。

0212

以上のようにして誘導された合成粘弾性テンソルは、人間による対象物の操作性を反映する物理量であるため、その操作性の解析・評価に用いたり、その操作性が改善されるように対象物を設計するために用いたり、その対象物またはその操作性を、例えば車両走行中に、操作者の好みに応じて適応的に制御するために用いることが可能である。

0213

図21には、人間物理モデル作成手段200が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。この人間物理モデル作成手段200は、有限要素人体モデル読出手段240と、骨格モデル作成手段242と、筋骨格モデル作成手段244とを備えている。

0214

有限要素人体モデル読出手段240は、前述の有限要素人体モデルを表すデータをデータメモリ42から読み出し、その読み出された有限要素人体モデルは骨格モデル作成手段242に供給される。有限要素人体モデルは、前述のように、人体を複数の有限要素によって表現する有限要素モデルであって、人体を構成する複数の部位と複数の有限要素との帰属関係が予め設定されたモデルである。

0215

その骨格モデル作成手段242は、後に詳述するが、その供給された有限要素人体モデルを用いることにより、前述の骨格モデルを作成する。この骨格モデル作成手段242においては、その有限要素人体モデルを構成する複数の有限要素が前記帰属関係に従って分類されて結合されることにより、人体を構成する複数の部位が、複数の剛体セグメントとして、それら複数の剛体セグメントが関節まわりに回動可能であるように表現される。このようにして作成された骨格モデルは筋骨格モデル作成手段244に供給される。

0216

その筋骨格モデル作成手段244は、前述の有限要素人体モデルにおける複数の有限要素のうち、全体における複数の筋を表現するものに従い、前記供給された骨格モデル上に、それら複数の筋をそれぞれワイヤとして表現するワイヤ要素を、各筋の各剛体セグメントに対する付着点および途中の経由点の位置と共に定義する。それにより、筋骨格モデルが作成される。

0217

図22には、共通の関節の回転軸まわりに互いに回動可能に連結された2本の骨に1本の筋がそれら2本の骨に跨って付着されている様子が示されている。その筋は、それの一端部において、一方の骨に付着点Pにおいて付着させられる一方、その他端部において、他方の骨に付着点Qにおいて付着させられている。

0218

図22に示すように、その筋は、それの中間部においては、いずれの骨にも付着させられていないが、2個の付着点P,Q間を通過する際に経由する2個の経由点A,Bが規定されている。経由点Aは、2本の骨のうち、付着点Pが属するものに力学的に支持され、経由点Bは、付着点Qが属する骨に力学的に支持される。

0219

このようなジオメトリのもとに2本の骨が1本の筋によって連結されているため、その筋に張力が発生すると、それら2本の骨には関節の回転軸まわりの関節トルクが発生する。その関節トルクの大きさは、筋に発生する筋力の大きさに依存することはもとより、その筋力の作用直線と回転軸との距離、すなわち、筋モーメントアームにも依存する。すなわち、筋力が同じでも、筋モーメントアームが長いほど、関節トルクが大きくなるのである。

0220

したがって、関節トルクを精度よく算出するためには筋モーメントアームを正確に定義することが重要である。筋モーメントアームは、図22に示すように、回転軸に対する2個の経由点A,Bの相対位置に依存するため、筋モーメントアームの正確な定義にはそれら経由点A,Bの位置の正確な定義が必要である。しかしながら、何らかの理由により、それら経由点A,Bの初期位置を正確に定義することが困難であるかまたは不可能である場合がある。

0221

そのため、本実施形態においては、それら経由点A,Bについて暫定的に定義された位置を、後に詳述する最適化手法によって更新することにより、筋モーメントアームを調整する機能が実現される。

0222

その機能を、筋骨格モデルを作成する機能と共に実現するため、図21に示すように、筋骨格モデル作成手段244は、筋の付着点および経由点の位置を定義する位置定義手段250と、筋の配置を定義する配置定義手段252と、筋の物理量を定義する物理量定義手段254と、筋の内部の粘弾性特性を定義する粘弾性特性定義手段256と、定義された経由点の初期位置を更新することにより、筋モーメントアームを調整する筋モーメントアーム調整手段258とを含むように構成されている。

0223

図23には、その筋モーメントアーム調整手段258が、それによって実現される機能に着目してブロック図で概念的に表されている。

0224

この筋モーメントアーム調整手段258は、設計対象筋モーメントアーム計算手段350と、参照モーメントアーム入力手段352と、設計対象筋モーメントアーム誤差計算手段354とを含んでいる。

0225

設計対象筋モーメントアーム計算手段350は、複数の筋のうち設計対象筋として指定された1本の筋に割り当てられる2個の付着点の位置に基づき、その設計対象筋のモーメントアームを計算する。参照モーメントアーム入力手段352は、実測値として予め報告されている筋モーメントアームを参照モーメントアームとして入力する。設計対象筋モーメントアーム誤差計算手段354は、計算された設計対象筋モーメントアームの、入力された参照モーメントアームに対する偏差を設計対象筋モーメントアーム誤差として計算する。その計算された設計対象筋モーメントアーム誤差が許容値を超える場合には、設計対象筋についてモーメントアームの調整が行われる。

0226

図23に示すように、筋モーメントアーム調整手段258は、さらに、仮想筋モーメントアーム計算手段356と、仮想筋モーメントアーム誤差計算手段358と、経由点位置更新手段360とを含んでいる。

0227

仮想筋モーメントアーム計算手段356は、各経由点の位置に既知の摂動を与えることにより、設計対象筋に対応する仮想筋を作成する。図24には、図22と同様にして、2本の骨が、関節の回転軸まわりに回動可能な状態で、1本の筋によって互いに連結される様子がより簡略化されて示されている。図24には、さらに、その筋のうち、一方の骨に関連する経由点Aと、他方の骨に関連する経由点Bとの間の部分のみが直線的に示されている。

0228

それら経由点AとBとをつなぐ筋が、設計対象筋であり、この設計対象筋に対し、この仮想筋モーメントアーム計算手段356が実行されると、図24においてそれぞれ直線で示される6本の仮想筋が生成される。それら仮想筋は、経由点AおよびBのうち経由点Aのみに、x方向とy方向とz方向とにそれぞれ摂動を与えることによって生成された、いずれももとの経由点Bを通過する3本の仮想筋と、経由点AおよびBのうち経由点Bのみに、x方向とy方向とz方向とにそれぞれ摂動を与えることによって生成された、いずれももとの経由点Aを通過する3本の仮想筋とからなっている。

0229

具体的には、もとの経由点Bを通過する3本の仮想筋は、図24に示すように、もとの経由点Aにx方向の摂動を与えて求めた点Axともとの経由点Bとをつなぐ仮想筋と、もとの経由点Aにy方向の摂動を与えて求めた点Ayともとの経由点Bとをつなぐ仮想筋と、もとの経由点Aにz方向の摂動を与えて求めた点Azともとの経由点Bとをつなぐ仮想筋とである。

0230

また、もとの経由点Aを通過する3本の仮想筋は、図24に示すように、もとの経由点Bにx方向の摂動を与えて求めた点Bxともとの経由点Aとをつなぐ仮想筋と、もとの経由点Bにy方向の摂動を与えて求めた点Byともとの経由点Aとをつなぐ仮想筋と、もとの経由点Bにz方向の摂動を与えて求めた点Bzともとの経由点Aとをつなぐ仮想筋とである。

0231

仮想筋モーメントアーム計算手段356は、さらに、以上のようにして生成された各仮想筋ごとにモーメントアームを計算する。

0232

仮想筋モーメントアーム誤差計算手段358は、計算された仮想筋モーメントアームの、前記入力された参照モーメントアームに対する偏差を仮想筋モーメントアーム誤差として計算する。その計算された仮想筋モーメントアーム誤差の、前記計算された設計対象筋モーメントアーム誤差からの変化は、今回の摂動に対する応答を反映するため、経由点位置更新手段360は、それら仮想筋モーメントアーム誤差と設計対象筋モーメントアーム誤差との差に基づき、各経由点の位置ごとに、x方向における更新量と、y方向における更新量と、z方向における更新量とを決定する。この経由点位置更新手段360は、さらに、それら決定された更新量に従い、各経由点の位置を更新する。

0233

この経由点位置更新手段360による更新量の決定および更新は、その後に実行される設計対象筋モーメントアーム誤差計算手段354によって計算される設計対象筋モーメントアーム誤差が許容値以下となるまで、反復される。

0234

図25には、本実施形態に従う操作性評価方法の概略であってコンピュータ20によって実施されるものが工程図で示されている。コンピュータ20は、前述のように、入力装置22および出力装置24と共同して操作性評価装置10を構成している。

0235

図25に示すように、この操作性評価方法の各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、有限要素人体モデルが各要素ごとに、データメモリ42からストレージ32内の別の記憶領域であるワーキングエリア(図示しない)に順次読み出される。正確には、有限要素人体モデルを表すモデルデータが、各要素を表す要素データごとに、順次読み出される。すなわち、コンピュータ20のうちこのS1を実行する部分が、図21における有限要素人体モデル読出手段240を構成しているのである。

0236

次に、図25のS2において、読み出された各要素が分類されて他の要素と結合されることにより、骨格モデルが作成される。この骨格モデルは、人体の動作解析を行うために使用される。このS2の詳細は、骨格モデル作成プログラムとして図26にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS2を実行する部分が、図21における骨格モデル作成手段242を構成しているのである。

0237

続いて、図25のS3において、その作成された骨格モデルに筋が前述のワイヤ要素として付加されることにより、骨格モデルをベースとして筋骨格モデルが作成される。このS3の詳細は、筋骨格モデル作成プログラムとして図27にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS3を実行する部分が、図21における筋骨格モデル作成手段244を構成しているのである。

0238

その後、図25のS4において、操作者である人間による対象物の操作性が解析される。このS4の詳細は、操作性解析プログラムとして図34にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS4を実行する部分が、図5における操作性解析手段204を構成し、また、S1ないしS3を実行する部分が、人間物理モデル作成手段200を構成しているのである。

0239

続いて、図25のS5において、その操作性の解析結果が対象物および/またはその対象物が設置される車両の設計にフィードバックされることにより、設計者による車両設計が支援される。このS5の詳細は、設計支援プログラムとして図35にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS5を実行する部分が、図5における設計支援手段205を構成しているのである。

0240

以上で、この操作性評価方法の一回の実行が終了する。

0241

ところで、本実施形態においては、上述の操作性解析プログラムの実行により、作成された筋骨格モデルにおける各筋の筋活性度αが算出される。現実の人間であれば、衝突時には、身構えるなどして各部位の筋に能動的に筋力が発生し、人間の緊張度が高いほど、筋活性度αが上昇する。筋活性度αが上昇すると、筋の剛性Kuおよび粘性Buも上昇するため、人間の緊張度が高いほど、筋の硬直度が上昇する。

0242

したがって、人間物理モデルを用いて衝突時に人間の挙動を精度よく解析するためには、人間の複数の筋のそれぞれについて筋活性度αを推定し、その結果を考慮して人間の挙動を解析することが重要である。一方、人間物理モデルの要素(有限要素)を単位とするのではなく、同じ部位に属する複数の有限要素が互いに剛体的に結合されて成る剛体セグメントを単位としたうえで、人間の動作を解析し、さらに、その解析された動作から各筋の活性度αを筋モデルや最適化手法を採用することにより、筋活性度αを推定することが可能である。

0243

以上説明した知見を背景にして、この操作性解析プログラムにおいては、要素数が多い有限要素人体モデルではなく、それより少数の剛体セグメントを有する骨格モデルと筋骨格モデルとのいずれか一方、または、場合によっては両方を用いることにより、各筋ごとに筋活性度αが推定される。この操作性解析プログラムのうち、その筋活性度αを推定するために実行される部分が、筋活性度推定プログラムとして図36にフローチャートで概念的に表されている。これについては後述する。

0244

ここで、図26を参照することにより、前記骨格モデル作成プログラムを具体的に説明する。

0245

この骨格モデル作成プログラムの実行時には、まず、S101において、有限要素人体モデルを構成する複数の要素(有限要素)のうち人体の骨を表現するものが、人体を構成する複数の部位にそれぞれ分類される。有限要素人体モデルを構成する複数の要素のうち、骨以外の組織、すなわち、皮膚、肉等を表現するものは、その分類対象から除外されている。

0246

有限要素人体モデルにおいては、各要素ごとに、それが属する部位が予め定められている。すなわち、要素と部位との関係を規定するデータが、有限要素人体モデルを表すデータに予め組み込まれており、そのデータを用いて各要素の各部位への分類が行われる。各部位ごとに、それに分類された複数の要素が互いに結合されることによって、1個の剛体セグメントが構成される。

0247

次に、S102において、人体の複数の部位のうち隣り合った2個の部位間に関節位置となる点が定義される。その点は、有限要素人体モデルにおける複数個の点のいずれかと一致するように定義される。その点は、隣り合った2個の剛体セグメント間の関節位置を表している。

0248

続いて、S103において、各部位ごとに、それに属する複数の要素に関する属性情報(形状、密度、材料物性値等)から、重心位置、質量および慣性モーメントが算出される。それら重心位置、質量および慣性モーメントを算出する際には、有限要素人体モデルを構成する複数個の要素のうち骨を表現するもののみならず、皮膚、肉等、骨以外の組織部分を表現するものも考慮される。その結果、骨格モデルにおける各剛体セグメントは、その形状に関しては、骨の表面を反映するが、各剛体セグメントの重心位置、質量および慣性モーメントに関しては、各部位を構成するすべての組織部分を反映する。

0249

その後、S104において、各剛体セグメントごとにローカル座標系が定義される。各ローカル座標系は、それの原点において各剛体セグメントの重心位置に一致する。各ローカル座標系は、x座標軸とy座標軸とz座標軸とを有しており、それら座標軸の向きは、各剛体セグメントの複数の慣性主軸の向きにそれぞれ一致する。ただし、それら座標軸は、それら慣性主軸に、慣性モーメントの値の大きい順にそれぞれ割り当てられる。各ローカル座標系は、右手系となるように、各座標軸の符号の向きが調整される。

0250

続いて、S105において、各剛体セグメントの幾何学量(位置、方向等)が記述される座標系が、有限要素人体モデルが定義されているグローバル座標系から、各剛体セグメントに対応するローカル座標系に変換される。すなわち、座標変換が行われるのである。各剛体セグメントの幾何学量には、例えば、形状、重心位置、慣性モーメント情報、関節の位置、関節の可動方向等がある。

0251

その後、S106において、各要素の複数の属性情報のうち、骨格モデルを用いて人間の動作を解析する際に使用されないもの(例えば、各要素の材料物性値)が、後述の有限要素解析に備えて、ストレージ32の特定の記憶領域に保存される。

0252

続いて、S107において、各部位に分類された複数個の要素が互いに結合されることにより、剛体セグメントが構成される。各剛体セグメントの運動中、それを構成する複数の要素が互いに一体的に運動する。さらに、各々そのようにして構成された複数の剛体セグメントが、対応する関節において、互いに回動可能に連結される。

0253

その後、S108において、各関節ごとに、関節が受動的に運動させられる際の抵抗トルク(関節角度に応じて構造的に発生するトルク)が関節受動抵抗トルクとして定義される。この関節受動抵抗トルクは、関節角度の関数を定義する関数式マップテーブルとして表現することが可能である。

0254

以上で、この骨格モデル作成プログラムの一回の実行が終了する。

0255

次に、図27を参照することにより、前記筋骨格モデル作成プログラムを具体的に説明する。

0256

この筋骨格モデル作成プログラムの実行時には、まず、S201において、先に作成された骨格モデルの各剛体セグメントに付着させるべき各筋につき、各筋が各剛体セグメントの表面に付着させられるべき複数の付着点の位置と、それら付着点間の経由点であって各筋が各剛体セグメントに沿って延びる際に経由する点の位置とが定義される。それら付着点の位置と経由点の位置とは、各剛体セグメントのローカル座標系において定義される。

0257

すなわち、コンピュータ20のうちこのS201を実行する部分が、図21における位置定義手段250を構成しているのである。

0258

次に、図27のS202において、付着点位置と経由点位置とが定義された各筋が各剛体セグメントに沿って延びる際の経路すなわち複数の付着点および少なくとも一つの経由点を各筋が通過する順序が定義される。これにより、各筋が骨格モデル上に配置される。

0259

すなわち、コンピュータ20のうちこのS202を実行する部分が、図21における配置定義手段252を構成しているのである。

0260

続いて、図27のS203において、その配置された各筋の物理量が定義される。その物理量には、各筋の生理断面積、各筋において筋繊維と腱との成すペネーション角度等がある。ペネーション角度は、図28に示されている。それら生理断面積およびペネーション角度は、後述するが、各筋の最大筋力を算出するために利用される。

0261

各筋の最大筋力は、定数k(約5ないし10)を用いた次式によって算出することが可能である。

0262

最大筋力=k×生理断面積[cm2]×COS(ペネーション角度[rad])

0263

すなわち、コンピュータ20のうちこのS203を実行する部分が、図21における物理量定義手段254を構成しているのである。

0264

その後、図27のS204において、筋モデルとして例えばHillモデルを用いることにより、各筋の内部の粘弾性特性が定義される。Hillモデルによれば、各筋の筋力は、図29の式(101)によって算出することができる。この式は、各筋の筋力Fiが、筋活性度αiと、最大筋力fmaxiと、筋長liの関数gと、筋長変化速度d(li)/dtの関数hとの積として推定されることを表している。

0265

したがって、各筋の粘弾性特性を定義するために、具体的には、筋長の関数gと筋長変化速度の関数hとが定義されることになる。

0266

すなわち、コンピュータ20のうちこのS204を実行する部分が、図21における粘弾性特性定義手段256を構成しているのである。

0267

続いて、図27のS205において、筋モーメントアームの調整が行われる。このS205の詳細は、筋モーメントアーム調整プログラムとして図30にフローチャートで概念的に表されている。これについては後に詳述する。すなわち、コンピュータ20のうちこのS205を実行する部分が、図21における筋モーメントアーム調整手段258を構成しているのである。

0268

以上で、この筋骨格モデル作成プログラムの一回の実行が終了する。

0269

図29には、さらに、各筋の剛性Ku,iが、各筋の筋力fiを筋長liに関して微分することによって算出されることが式(102)によって表されている。したがって、各筋の筋力fiと筋長liとの関係が判明すれば、各筋の剛性Ku,iが誘導されることになる。

0270

次に、図30を参照することにより、前記筋モーメントアーム調整プログラムを具体的に説明する。

0271

この筋モーメントアーム調整プログラムにおいては、まず、S241において、筋モーメントアームの調整をユーザが希望する筋とそれの経由点とがそのユーザによって指定される。以下、その指定された筋を設計対象筋と称する。

0272

例えば、図24に示す例においては、同図において左側に示す第1の骨と、右側に示す第2の骨とがそれぞれ、設計対象筋として指定される。第1の骨には経由点Aが関連付けられており、それの位置は、(xA,yA,zA)として定義される。第2の骨には経由点Bが関連付けられており、それの位置は、(xB,yB,zB)として定義される。

0273

次に、図30のS242において、その指定された設計対象筋に、人間による対象物の操作中に与えられる関節角度の系列が入力される。同じ関節につき、一連の複数個の関節角度が入力されるのである。

0274

続いて、S243において、設計対象筋につき、各関節角度ごとに、経由点の位置を参照することにより、筋モーメントアームri(i:関節角度の番号)が計算される。筋モーメントアームriは、例えば、同じ関節に関連付けて指定された2個の経由点を通過する一直線(力の作用直線)と、その関節の回転軸の中心との距離として計算される。

0275

すなわち、コンピュータ20のうち、このS243を実行する部分が、図23に示す設計対象筋モーメントアーム計算手段350を構成しているのである。

0276

その後、S244において、設計対象筋と同じ現実の筋につき、同じ関節角度系列のもとに発生することが既に報告されている筋モーメントアームの系列が参照モーメントアームとして入力される。

0277

すなわち、コンピュータ20のうち、このS244を実行する部分が、図23に示す参照モーメントアーム入力手段352を構成しているのである。

0278

図31(a)および(b)には、図24に示す例につき、2本の骨間に張られた1本の筋が、初期状態すなわち筋モーメントアームが未だ調整されていない状態と、後述の最適化計算において筋モーメントアーム誤差が収束した収束状態すなわち筋モーメントアームの調整が完了した状態とについてそれぞれ正面図で示されている。

0279

図32には、筋モーメントアームが関節角度に応じて変化する様子が、それら初期状態および収束状態についてそれぞれグラフで表されている。図32には、さらに、ある文献によって教示されている筋モーメントアームと関節角度との関係が「文献値」というタイトルを付されてグラフで表されている。その関係に従う筋モーメントアームが上述の参照モーメントアームの一例である。

0280

続いて、図30のS245において、S243において設計対象筋について計算された筋モーメントアームriの、その入力された参照モーメントアームからの偏差が設計対象筋モーメントアーム誤差eとして計算される。その設計対象筋モーメントアーム誤差eは、前述の複数個の関節角度についての総合モーメントアーム誤差として計算される。

0281

すなわち、コンピュータ20のうち、このS245を実行する部分が、図23に示す設計対象筋モーメントアーム誤差計算手段354を構成しているのである。

0282

図33には、その設計対象筋モーメントアーム誤差eの計算手法の一例が式(201)で表されている。この例においては、各関節角度ごとに、重み係数wiが、参照モーメントアームと設計対象筋モーメントアームriとの差すなわち個別モーメントアーム誤差に掛け算される。特定の関節角度について個別モーメントアーム誤差を特に縮減することが必要である場合には、その関節角度に対応する重み係数wiが、他の関節角度に対応する重み係数wiより大きくなるように設定される。

0283

その後、図30のS246において、計算された設計対象筋モーメントアーム誤差eが許容値e0以下であるか否かが判定される。許容値e0以下である場合には、その判定がYESとなり、S247において、現在の経由点位置が最終的な経由点位置として確定される。以上で、この筋モーメントアーム調整プログラムの一回の実行が終了する。

0284

これに対し、計算された設計対象筋モーメントアーム誤差eが許容値e0を超える場合には、S246の判定がNOとなり、S248に移行する。

0285

このS248においては、設計対象筋の各経由点に摂動が摂動量dで与えられ、その結果、複数個の摂動点が作成される。図24に示す例においては、経由点Aと経由点Bとについてそれぞれ、3個ずつの摂動点が作成される。具体的には、経由点Aについては、摂動点Ax(xA+d,yA,zA)と、摂動点Ay(xA,yA+d,zA)と、摂動点Az(xA,yA,zA+d)とである。また、経由点Bについては、摂動点Bx(xB+d,yB,zB)と、摂動点By(xB,yB+d,zB)と、摂動点Bz(xB,yB,zB+d)とである。

0286

続いて、図30のS249において、それら作成された複数個の摂動点を用いて複数本の仮想筋が作成される。図24に示す例においては、前述のように、経由点Aに関する3個の摂動点Ax,Ay,Azのそれぞれともとの経由点Bとを通過する3本の仮想筋と、経由点Bに関する3個の摂動点Bx,By,Bzのそれぞれともとの経由点Aとを通過する3本の仮想筋とが作成される。

0287

その後、図30のS250において、S242と同様にして、その指定された設計対象筋に、人間による対象物の操作中に与えられる関節角度の系列が入力される。続いて、S251において、S243と同様にして、各仮想筋ごとに、筋モーメントアームが計算される。その後、S252において、S244と同様にして、参照モーメントアームが入力される。

0288

続いて、S253において、S245と同様にして、各仮想筋ごとに総合モーメントアーム誤差が計算される。以下、各総合モーメントアーム誤差を下記のように表記する。

0289

eAx−B:摂動点Axともとの経由点Bとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差
eAy−B:摂動点Ayともとの経由点Bとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差
eAz−B:摂動点Azともとの経由点Bとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差
eA−Bx:もとの経由点Aと摂動点Bxとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差
eA−By:もとの経由点Aと摂動点Byとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差
eA−Bz:もとの経由点Aと摂動点Bzとを通過する仮想筋の総合モーメントアーム誤差

0290

その後、S254において、誤差のヤコビアンJが計算される。このヤコビアンJは、仮想筋の数と同数の成分を有する行列であり、本実施形態においては、1×6の行列である。図33には、そのヤコビアンJの計算手法の一例が式(202)で表されている。この例においては、そのヤコビアンJのうち、各仮想筋に対応する成分が、設計対象筋モーメントアーム誤差eから各仮想筋の総合モーメントアーム誤差を差し引いた値を摂動量dで割り算した値を有している。このヤコビアンJにおいては、各成分が、対応する経由点の複数の座標値のうち対応するものの、摂動量dで与えられる摂動に対する増減傾向すなわち応答を表している。

0291

続いて、図30のS255において、各経由点ごとに、経由点位置の更新量Δが、上記計算されたヤコビアンJを用いて計算される。この更新量Δは、仮想筋の数と同数の成分を有する行列であり、本実施形態においては、6×1の行列である。

0292

図33には、その更新量Δの計算手法の一例が式(203)で表されている。この例においては、更新量Δが、主に設計対象筋モーメントアーム誤差eと、ヤコビアンJの逆行列の一例である疑似逆行列J+とに基づいて計算され、具体的には、それらの積と、学習係数と称される定数λとの積として計算される。

0293

ここで、式(203)およびこれに用いられる各種変数をさらに具体的に説明する。

0294

ヤコビアンJは、設計変数(経由点の位置を表す。)の微小変化量と誤差の変化量との関係を表すマトリクスである。この関係は、

0295

「誤差の変化量」=J・「設計変数の微小変化量」

0296

なる式(203−1)で表現することができる。一方、最適化計算においては、現在の誤差の大きさに応じて、設計変数の値が変更される。本実施形態においては、その設計変数の変更量が、最終的に求めるべき物理量である経由点位置の更新量Δである。

0297

上記の式(203−1)の両辺にそれぞれ、ヤコビアンJの疑似逆行列J+を左から掛けると、この式は、

0298

J+・「誤差の変化量」=「設計変数の微小変化量」

0299

なる式(203−2)に書き換えられる。ここに、ヤコビアンJの逆行列J−1ではなく、疑似逆行列J+を用いるのは、ヤコビアンJは、必ずしも正方行列になるとは限らないし、また、必ずしも逆行列を有するとは限らないからである。

0300

上記の式(203−2)は、

0301

J+・「現在の誤差の大きさ」=「誤差を減らすことができる設計変数の変更量」

0302

なる式(203−3)として把握することが可能である。

0303

以上説明した知見に基づき、本実施形態においては、図33に式(203)で示すように、疑似逆行列J+に現在の設計対象筋モーメントアーム誤差e(疑似逆行列J+と同数の要素を有するベクトル)を掛けることにより、設計変数の変更量、すなわち、経由点位置の更新量Δが計算されるようになっている。

0304

その後、図30のS256において、その計算された更新量Δを用いて各経由点位置が更新される。図33には、各経由点位置の更新のための計算手法の一例が式(204)で表されている。この例においては、経由点Aのx座標値xAは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値xAに対応する成分Δ1の加算によって更新される。経由点Aのy座標値yAは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値yAに対応する成分Δ2の加算によって更新される。経由点Aのz座標値zAは、更新量Δを表す行列のうち、その座標値zAに対応する成分Δ3の加算によって更新される。経由点Bについての各座標値xB,yB,zBについても同様にして更新される。

0305

続いて、図30のS242ないしS246が、前回の場合と同様にして、更新された経由点位置によって定義される設計対象筋について実行される。それらステップおよびS248ないしS256は、S247の判定がYESとなり、設計対象筋モーメントアーム誤差eが、十分に小さい値となって収束したであろうと予想される状態に至るまで、繰返し実行される。

0306

必要回数の反復的実行の結果、S247の判定がYESとなれば、S247において、現在のすなわち最新の経由点位置が最終的な経由点位置として確定される。以上で、この筋モーメントアーム調整プログラムの一回の実行が終了する。

0307

以上の説明から明らかなように、コンピュータ20のうち、S248ないしS251実行する部分が、図23に示す仮想筋モーメントアーム計算手段356を構成し、S252およびS253を実行する部分が、図23に示す仮想筋モーメントアーム誤差計算手段358を構成し、S254ないしS256、S246およびS247を実行する部分が、図23に示す経由点位置更新手段360を構成しているのである。

0308

次に、図34を参照することにより、前記操作性解析プログラムを具体的に説明する。

0309

この操作性解析プログラムにおいては、まず、S281において、後述のS287における逆力学解析に必要な人間物理モデルが定義される。具体的には、このS281においては、データメモリ42から人間物理モデルの一例である筋骨格モデルが読み込まれる。

0310

このS281においては、さらに、その読み込まれた筋骨格モデルにつき、該当する物理パラメータが定義される。例えば、図29の式(101)における関数gと関数hとが定義される。関数gは、筋剛性を定義する関数であり、一方、関数hは、筋粘性を定義する関数である。最適化されるべき物理パラメータとしては、それら関数gおよび関数hや、筋の自然長が存在する。

0311

図37には、そのようにして定義された筋骨格モデルの一例が、それの下肢部のみに関して斜視図で示されている。図37には、筋骨格モデルが、後述のブレーキペダルと共に示されている。この例においては、人間の下肢部が7個の剛体セグメントと6個の関節を用いて表現されている。股関節は3自由度の回転関節を持ち、膝関節は1自由度の回転関節を持ち、足首関節は3自由度の関節を持っている。骨盤は、6自由度のフリージョイントを介してグラウンドに連携させられている。この例は、合計20自由度を持っており、また、70個の筋を表現している。

0312

次に、図34のS282において、後述のS286における逆力学解析に必要な対象物物理モデルが定義される。この対象物物理モデルは、有限要素モデルとして定義することも、剛体セグメントモデルとして定義することも可能である。このS282においては、さらに、その読み込まれた対象物物理モデルにつき、該当する物理パラメータが定義される。そのような物理パラメータに対象物剛性Kmが存在する。この対象物剛性Kmの一例は、後述の回転ブレーキジョイントのばね特性を反映する。

0313

図38には、その対象物物理モデルの一例として、車両において運転者によって右足で踏み込まれて操作されるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル(例えば、図54に示すブレーキペダル402)を対象物の一例として、そのブレーキペダルを剛体セグメントで表現するモデルが側面図で示されている。この例においては、ブレーキペダルが、1個の剛体として表現されるとともに、1自由度を持つ回転ブレーキジョイント(例えば、図54に示す回転ブレーキジョイント406参照)を介してグラウンド(例えば、車両のうち剛体部分(例えば、図54に示す車両のうちの剛体部分404参照))に連携させられている。

0314

図38に示す対象物物理モデルの例においては、操作者によるブレーキペダルの踏込み対抗する力を弾性的に発生させる回転ブレーキジョイントが存在する。図39には、この回転ブレーキジョイントの一例が線形ばね特性を有することがグラフで表されている。この例においては、図39に示すように、回転ブレーキジョイントに作用するトルクが回転ブレーキジョイントの回転角度に対して比例的に変化する。

0315

続いて、図34のS283において、それら人間および対象物について解析条件が設定される。この解析条件には、例えば、前述の拘束条件や前述の評価位置r(人間および対象物のうち、ユーザが操作性を評価する際の注目部位の位置)が含まれる。

0316

図40には、図37に示す筋骨格モデルとしての人間物理モデルと、図38に示す対象物物理モデルとが、外部環境としてのグラウンド(例えば、車両のうちの剛体部分)に関連付けて配置される一例が示されている。

0317

この例においては、人間物理モデルによって表現される人間の骨盤が、前述の外部環境としてのグラウンドとの連結点において、そのグラウンドから1個の拘束Ghを受ける。さらに、対象物物理モデルによって表現されるブレーキペダルが、それの回転ブレーキジョイントのうちグラウンドとの連結点において、そのグラウンドから1個の拘束Gmを受ける。

0318

この例においては、さらに、人間がそれの右足先においてブレーキペダルに面接触するため、図41に斜視図で示すように、それら人間とブレーキペダルとの間に1個の接触点cが存在する。その接触点cは、拘束点であり、この拘束点に拘束点座標空間が設定されている。この拘束点座標空間は、図41に示すように、接触点cに原点を持つとともにブレーキペダルのパッド面法線方向と一致するようにz方向を有するxyz座標系によって定義される。

0319

その接触点cにおける拘束は、図42において式(301)で表現される接触拘束行列Hによって表現される。その接触拘束行列Hは、拘束の数と同数である4つの行と、各部位の自由度nd,md(x軸方向並進、y軸方向並進、z軸方向並進、x軸まわり回転、y軸まわり回転およびz軸まわり回転)の数と同数である6つの列とによって構成される。

0320

図42に示す式(301)で表現される接触拘束行列Hにおいては、要素が「1」であることが、その要素の位置に対応する運動方向において力が伝達されること、すなわち、その運動方向において運動が拘束されることを意味する。したがって、この接触拘束行列Hは、人間とブレーキペダルとの間に、x軸方向、y軸方向およびz軸方向の自由並進およびz軸まわりの自由回転は阻止されるが、x軸まわりおよびy軸まわりの自由回転は許容されること、すなわち、面接触状態を表現している。

0321

この例においては、さらに、評価位置rが回転ブレーキジョイントの回転軸に設定されている。ブレーキペダルがその評価位置rにおいて有する自由度rdは6である。図38に示すように、ブレーキペダルに設定された対象物一般化座標空間のxyz座標系は、回転ブレーキジョイントの回転軸上に原点を持つとともにその回転軸の方向にy方向が一致するように定義されている。したがって、図9に示す式(7)で表される可動方向行列Prは、図42において式(302)で表すように、ブレーキペダルが評価位置rにおいてy軸まわりの自由回転が可能であることを表現している。

0322

その後、図34のS284において、後述の逆力学解析に必要な各種情報が入力される。この各種情報には、図6を参照して前述したように、人間筋特性(人体の物理特性)、人間挙動(人間変位qh等)、対象物挙動(対象物変位qm等)、人間拘束条件(拘束Gh等)、対象物拘束条件(拘束Gm等)、人間関節特性(剛性Kj0等)および対象物物理特性(対象物剛性Km等)の他、例えば、可動方向行列Prを含んでいる。

0323

それら情報のうち、例えば、対象物挙動は、操作者による対象物の操作中に対象物の変位が示す経時的変化を表す複数個の対象物挙動データ(個別データ)の系列として入力される。同様にして、人間挙動は、操作者による対象物の操作中に操作者の変位が示す経時的変化を表す複数個の人間挙動データ(個別データ)の系列として入力される。それら複数個の対象物挙動データと、それら複数個の人間挙動データとが、時間に関連付けて1対1に互いに対応させられている。

0324

すなわち、コンピュータ20のうち、このS284を実行する部分が、入力装置22と共同することにより、図6に示す入力手段216および228を構成しているのである。

0325

その後、図34のS285において、S284において入力された拘束条件から直交射影行列が算出される。具体的には、図11において式(13)ないし(15)で表すように、入力された拘束Ghから直交射影行列Phが生成される。また、図11において式(18)ないし(20)で表すように、入力された拘束Gmから直交射影行列Pmが生成される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS285を実行する部分が、図6に示す人間直交射影算出手段218および対象物直交射影算出手段230を構成しているのである。

0326

続いて、図34のS286において、通常の運動方程式を用いた逆力学解析手法により、前記入力された対象物挙動および対象物物理特性と、前記算出された直交射影行列Pmとに基づき、対象物が人間から受ける接触力(人間が対象物から受ける接触力と等しい。)τcが計算される。前述のように、対象物挙動を表すデータは、複数個の対象物挙動データの系列として入力されるため、接触力τcは、各対象物挙動データごとに計算され、最終的には、複数個の接触力データの系列として計算される。すなわち、コンピュータ20のうち、このS286を実行する部分が、図6に示す対象物用逆力学解析手段232を構成しているのである。

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