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技術 分極反転の製造方法

出願人 松下電器産業株式会社
発明者 水内公典山本和久北岡康夫
出願日 2006年1月17日 (13年10ヶ月経過) 出願番号 2006-008468
公開日 2006年4月20日 (13年7ヶ月経過) 公開番号 2006-106803
状態 特許登録済
技術分野 光偏向、復調、非線型光学、光学的論理素子
主要キーワード 特性要因図 印加電荷 短周期構造 櫛形電極パターン 非反転領域 波面特性 CW駆動 相殺効果
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図面 (15)

課題

高温熱処理すると結晶光損傷が増大し、SHG出力の不安定性が増大する。

解決手段

c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶に周期状の分極反転層を形成する行程と、前記結晶表面にプラズマ照射する行程とを、有することを特徴とする分極反転の製造方法。

概要

背景

単一分極強誘電体結晶分極を部分的に反転させる分極反転は、非線形光学効果電気光学効果音響光学効果等の光波制御を可能にし、通信光情報処理計測等広い分野で応用されている。中でも非線形光学効果を利用した光波長変換素子への適用は、半導体レーザ波長変換による小型の短波長光源を実現できるため、盛んに研究が行われている。

従来の分極反転製造方法は、強誘電体電極を形成し電極間電圧印加することで分極反転を形成している(電子情報通信学会論文誌、金高健二 他、C-I、vol.J78-C-I, No.5 pp.238-245)。強誘電体であるLiNbO3の表面に周期構造の電極を裏面に平面電極を形成する。電極間に電圧を印加し流れる電荷量を制御して、分極反転構造を形成している。従来の分極反転の製造方法を図13に示す。分極反転に必要な電荷量は(自発分極Ps)×(電極範囲面積)×2で与えられている。また、分極反転部の広がりは、電極の周期Λと電極幅Wの比W/Λの値で決まり、基板の厚みに依存しない値だけ広がると考えられている。形成された分極反転は周期3μm、分極反転が形成された領域の面積は1mm2程度であった。

また、従来の光波長変換素子の構造は、位相整合をとるため周期状の分極反転構造を非線形光学結晶内に形成した素子構造報告されている(例えば、電気情報通信学会論文誌、佐学 他、C−I,vol.J78-C-I,No.8,pp.366-372)。

従来の光波長変換素子の構造を図14に示す。光波長変換素子はLiTaO3基板に周期7.8μmの分極反転層を形成し、分極反転層により位相整合をとることで、素子内に集光された基本波第二高調波(以下SHGとする)に変換している。

また、その作製方法は、LiTaO3基板の+Z面に櫛形電極を、-Z面に平面電極を形成し、電極間にパルス状の高電圧を印加することで周期状の分極反転層を形成している。その後、電極を除去し、光導波路の両端面を光学研磨して入出射部を形成している。
電子情報通信学会論文誌、金高健二 他、C-I、vol.J78-C-I, No.5 pp.238-245
電気情報通信学会論文誌、佐藤学 他、C−I,vol.J78-C-I,No.8,pp.366-372

概要

高温熱処理すると結晶光損傷が増大し、SHG出力の不安定性が増大する。c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶に周期状の分極反転層を形成する行程と、前記結晶表面にプラズマ照射する行程とを、有することを特徴とする分極反転の製造方法。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶周期状の分極反転層を形成する行程と、前記結晶表面にプラズマ照射する行程とを、有することを特徴とする分極反転の製造方法。

請求項2

前記プラズマを照射する行程を100〜300℃以下の温度中で行う請求項1記載の分極反転の製造方法。

請求項3

c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶の表面に櫛形電極を形成する工程と、前記結晶の裏面に平面電極を形成する工程と、前記電極間電圧印加して周期状の分極反転層を形成する工程と、前記結晶を熱処理する工程を有する分極反転の製造方法。

請求項4

c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶の表面に櫛形電極を形成する工程と、前記結晶の裏面に平面電極を形成する工程と、前記電極間に電圧を印加して周期状の分極反転層を形成する工程とを有し、前記電極間に印加する電圧として、前記結晶の分極反転が生じる電界以上の電圧を印加した後、前記結晶の分極が生じない程度の電界を2秒間以上印加する分極反転の製造方法。

請求項5

前記熱処理工程の温度が150〜300℃である請求項3記載の分極反転の製造方法。

請求項6

前記分極反転が生じない程度の電界が10〜20kV/mmである請求項4記載の分極反転の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、コヒーレント光源を応用した、光情報処理光応用計測分野に使用される光導波路および波長変換素子に関するものである。

背景技術

0002

単一分極強誘電体結晶分極を部分的に反転させる分極反転は、非線形光学効果電気光学効果音響光学効果等の光波制御を可能にし、通信、光情報処理、計測等広い分野で応用されている。中でも非線形光学効果を利用した光波長変換素子への適用は、半導体レーザ波長変換による小型の短波長光源を実現できるため、盛んに研究が行われている。

0003

従来の分極反転製造方法は、強誘電体電極を形成し電極間電圧印加することで分極反転を形成している(電子情報通信学会論文誌、金高健二 他、C-I、vol.J78-C-I, No.5 pp.238-245)。強誘電体であるLiNbO3の表面に周期構造の電極を裏面に平面電極を形成する。電極間に電圧を印加し流れる電荷量を制御して、分極反転構造を形成している。従来の分極反転の製造方法を図13に示す。分極反転に必要な電荷量は(自発分極Ps)×(電極範囲面積)×2で与えられている。また、分極反転部の広がりは、電極の周期Λと電極幅Wの比W/Λの値で決まり、基板の厚みに依存しない値だけ広がると考えられている。形成された分極反転は周期3μm、分極反転が形成された領域の面積は1mm2程度であった。

0004

また、従来の光波長変換素子の構造は、位相整合をとるため周期状の分極反転構造を非線形光学結晶内に形成した素子構造報告されている(例えば、電気情報通信学会論文誌、佐学 他、C−I,vol.J78-C-I,No.8,pp.366-372)。

0005

従来の光波長変換素子の構造を図14に示す。光波長変換素子はLiTaO3基板に周期7.8μmの分極反転層を形成し、分極反転層により位相整合をとることで、素子内に集光された基本波第二高調波(以下SHGとする)に変換している。

0006

また、その作製方法は、LiTaO3基板の+Z面に櫛形電極を、-Z面に平面電極を形成し、電極間にパルス状の高電圧を印加することで周期状の分極反転層を形成している。その後、電極を除去し、光導波路の両端面を光学研磨して入出射部を形成している。
電子情報通信学会論文誌、金高健二 他、C-I、vol.J78-C-I, No.5 pp.238-245
電気情報通信学会論文誌、佐藤学 他、C−I,vol.J78-C-I,No.8,pp.366-372

発明が解決しようとする課題

0007

分極反転の製造方法についての課題を述べる。

0008

電界印加により形成される分極反転は、変換効率向上、生産性の向上から大面積に渡る分極反転構造の形成が必要である。しかしながら、従来の方法では周期状の分極反転が形成される面積が1mm2程度と小さく、大面積に渡り分極反転を形成すると、分極反転が形成されない、非反転領域が多数形成され均一な分極反転構造ができないといった問題があった。また周期3μm程度の粗い周期構造しか形成できず、さらに短周期の分極反転構造を形成するのが難しいという問題があった。

0009

また分極反転を均一に形成するための、基板厚み電極形状印加電荷量等の関係が明らかではないため、微細な分極反転形状を形成するのが難しいという問題があった。

0010

また、電界印加により形成された周期状の分極反転構造は、短周期で深い構造を実現し、バルク型の光波長変換素子において高効率の波長変換を可能にした。しかしながら、高圧電界を印加するため結晶内に局所的な屈折率変化残留し、結晶内を通る光の伝播損失になっていた。これを低減するため400℃以上の高温アニール処理する方法も報告されているが、高温で熱処理すると結晶の光損傷が増大し、SHG出力の不安定性が増大するという問題があった。

0011

次に、光波長変換素子についての課題を述べる。従来の光波長変換素子はLiTaO3に周期状分極反転構造を形成することで位相整合をとり波長変換を行っている。そのため位相整合は波長許容度は0.1nm程度(相互作用長:10mm程度の場合)と非常に厳しく、環境温度の変化、焦電効果による電界の発生、光損傷等の影響による結晶の屈折率変化により変換効率が大きく変動し、出力が不安定になるという問題があった。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決するため本発明では、c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶に周期状の分極反転層を形成する行程と前記結晶表面にプラズマ照射することを特徴とする分極反転の製造方法である。

0013

また、c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶の表面に櫛形電極を形成する工程と、前記結晶の裏面に平面電極を形成する工程と、前記電極間に電圧を印加して周期状の分極反転層を形成する工程と、前記結晶を熱処理する工程を有する光波長変換素子の製造方法である。

0014

また、c板のLiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)結晶の表面に櫛形電極を形成する工程と、前記結晶の裏面に平面電極を形成する工程と、前記電極間に電圧を印加して周期状の分極反転層を形成する工程とを有し、前記電極間に印加する電圧として、前記結晶の分極反転が生じる電圧以上の電圧を印加した後、前記結晶の分極が生じない程度の電界を2秒間以上印加する光波長変換素子の製造方法である。

発明の効果

0015

以上説明したように、分極反転を形成時に、分極反転部分の形状が電極周辺部にある最小の値(ΔWmin)以上広がったときにのみ、分極が均一に形成されることが見いだされた。従って、分極反転の拡大(Wmin)を考慮した電極形状を作製することで、均一な分極反転構造が高い精度で形成できるため、その実用効果は大きい。

0016

また、分極反転を形成する際、電極に与える電荷量を分極反転部の最小拡大部を含めた値以上印加することで、分極反転の際形成される非反転領域の形成を防止し、均一な分極反転構造を形成できるため、その実用効果は大きい。

0017

また、周期状分極反転構造を形成する際、分極反転部の拡大により隣接する分極反転部同士が接触し周期状分極反転構造の形成を困難にするのを防止するため、分極反転部の最小拡大分を考慮して電極を形成することで、周期状の分極反転構造の形成が可能となり、その実用効果は大きい。

0018

また、周期状分極反転構造を形成する際、電極に与える電荷量を分極反転部の最小拡大部を含めた値以上印加することで、分極反転の際形成される非反転領域の形成を防止し、均一な分極反転構造を形成できるため、その実用効果は大きい。

0019

また、分極反転形成後、基板にプラズマを照射することで、耐光損傷性に優れた光波長変換素子が形成できるため、その実用効果は大きい。

0020

また、光波長変換素子を作製するプロセスにおいて、分極反転形成後に基板を特定の温度でアニール処理することで、光の伝搬損失および光損傷を大幅に低減できるため、その実用効果は大きい。

0021

また、光波長変換素子を作製するプロセスにおいて、電界印加直後に2秒間以上直流電圧を印加することで、分極反転の周期構造の均一化が大幅に増大するため、その実用効果は大きい。

0022

また、分極反転部の拡大が基板厚みに依存する関係を見いだしたことより、基板厚みに制限された分極反転周期を有する光波長変換素子構造をとることで、変換効率の高い素子が構成できるため、その実用効果は大きい。

0023

また、光波長変換素子の表面に金属膜を装着することで、焦電効果による屈折率変化を低減できる。さらに、結晶の熱伝導率を増大させることができるため、温度制御高速化、安定化が可能となり、光波長変換素子の出力安定化が可能となるため、その実用効果は大きい。

0024

また、分極反転構造を分割し、各分割部分で互いに分極反転周期の位相を変えることで、光損傷の原因となる光励起による電荷の相殺効果を高めることができた。これによって、光損傷の少ない出力の安定な光波長変換素子が実現できるため、その実用効果は大きい。

0025

また、分極反転構造を分割し、各分割部分での分極反転周期を互いに変えることにより、光波長変換素子の波長許容度を向上させることができた。本発明の構成は、分割された部分の相関関係が素子の長さ方向に渡り均一なめ、光損傷等の長さ方向に分布をもった、屈折率変化に対しても、安定な位相整合特性を達成するため、光損傷に対し安定な出力の光波長変換素子が実現でき、その実用効果は大きい。

0026

また、分極反転構造を有する非線形光学結晶を積層することにより、厚い基板のバルク型光波長変換素子が作製できる。電界印加により形成可能な周期状分極反転は、短周期の分極反転構造を実現する場合、その基板厚みが制限される。そこで、薄い基板に形成した分極反転構造を積層することで厚いバルク型素子を実現できる。作製された素子は、素子長増大による変換効率の向上ならびに、素子アライメント尤度が増大する。さらに、光損傷および、焦電効果の低減も可能となるため、その実用効果は大きい。

0027

また、同一の基板に周期の異なる2つの分極反転構造を形成することで、高次高調波発生が可能となる。単一結晶で、第3高調波、または第4高調波の発生が可能となり、加えて素子のアライメントも簡単になるため、その実用効果は、大きい。

0028

また、レーザ光源を光波長変換素子により波長変換することで、短波長光源が実現できる。安定な特性の光波長変換素子を用いることにより、出力の安定な光源が作製できるため、その実用効果は大きい。

発明を実施するための最良の形態

0029

本発明は、第2高調波発生を利用した光波長変換素子に必要な周期状分極反転構造を形成するための方法で、具体的な分極反転の形成方法としては、単一分極の強誘電体基板(ここでは、主にLiTaO3基板)に電極を形成し、電極間に高圧の電圧を印加することで電極下に分極反転部を形成する。ここで問題となるのは、
・分極反転を大面積に渡り形成する際に、電極下に分極反転が均一に形成できない。

0030

・微細な電極パターン下において分極反転部の形状が電極形状と同じにならない。

0031

・短周期の分極反転構造を形成する場合、隣接する分極反転部同士がくっついてしまい周期構造が形成できない。
等の問題が生じた。そこでこれらの問題を解決する方法について検討した結果について述べる。

0032

(実施の形態1)
最初に、従来例に示されている方法によるLiTaO3の分極反転を試みた。図1分極反転方法を示す。(a)c板のLiTaO3基板の+C面に電極パターン(電極の面積A)を形成し、(b)-C面に平面電極を形成した。(c)±C面の電極間にパルス状の電圧を印加して分極の反転を行った。電圧はLiTaO3の反転電圧(約21kV/mm)で、パルス幅を制御することで電極間に流れる電荷量を制御した。ところが、LiTaO3の自発分極Ps(50μC/cm2)から計算した分極反転に必要な電荷量2Ps・Aを印加すると、図2(a)に示すように、電極下に形成された分極反転は分極が反転しない非反転部分が多数形成された。またこの傾向は基板が厚くなるほど顕著に現れた。

0033

そこで、分極反転が均一に形成される方法について検討を行った結果、非反転領域を形成しない分極反転の状態が存在することを見いだした。そこで、非反転領域が形成されない分極反転条件を繰り返し実験したところ、+C面に形成した分極反転用の電極の周辺部に一定の値(ΔWmin)以上に分極反転部が広がったときに、図2(b)に示すような非反転を有さない分極反転が形成できることが明らかになった。さらに、ΔWminの値は用いる基板の厚みTに依存することを発見した。この関係を図3に示す。ΔWminと基板厚みTは実験結果(図3)より、
△Wmin=0.002×T−0.2 (μm) (1)
の関係があることが判明した。

0034

また、電極周辺部の分極反転部の広がりはC平面内でほぼ等方的に発生する。このため、均一な分極反転を形成するためには、分極反転部の拡大を考慮した電極形状、即ち図4に示すように、形成する分極反転形状の周辺部からΔWmin以上小さな電極を形成し、分極反転を行うことで、均一な分極反転を精度良く形成できるようになった。

0035

分極反転が電極周辺部にΔWmin以上広がって形成されるときにのみ、非反転領域を有さない均一な分極反転形状が形成されることより、非反転領域を有さない分極反転に必要な電荷量が計算できる。従来例のように電極面積Aと自発分極Psより電荷量Qを2Ps・Aとすると電荷量不足のため非反転領域が形成されてしまう。これを防止するためには、電極周辺部への反転部の広がりΔWmin(図3)の面積の電荷量を余分に加える必要がある。即ち、電極の外周L(電極の周辺部の全距離)にΔWminをかけた面積分以上の電荷量が余分に必要となる。そのため、均一な分極反転を形成するのに必要な電荷量Qは電極面積(A)に電極周辺部への広がり(L・ΔWmin)を加えた以上の値となり、
Q>2Ps(A+L・ΔWmin) (2)
の形で与えられることが明らかになった。

0036

(実施の形態2)
次に、微細な分極反転形状を必要とする光波長変換素子に利用される周期状分極反転構造の形成について検討した。光波長変換素子は半導体レーザ光を波長変換することで光の波長を半分に変換することができる。また半導体レーザと光波長変換素子を一体化することで小型の短波長光源が実現でき、光ディスク、特殊計測、医用バイオ等の多くの分野への応用が可能となる。現在、市販されている短波長の半導体レーザの波長は、800〜900nm、780nm近傍、630〜690nmである。それぞれの波長に対する周期はΛ=3〜4μm(波長:800〜900nm)、Λ=2.8μm近傍(波長:780nm)、Λ=1.5〜1.8μm(波長:630〜680nm)となっている。このような微細な反転形状を形成するには、反転の面内均一性を一層向上させる処理が必要となる。我々は、短周期分極反転を均一に形成する方法として、絶縁膜装荷の方法を提案した。図5にその製造方法を示す。(a)c板のLiTaO3基板の+C面に周期状の櫛形電極パターン(電極の面積A、電極指は長さLd、幅W、周期Λで距離Ls)を形成し、(b)-C面に平面電極を形成した。(d)+C面の電極パターンを絶縁膜(ここではSiO2を200nm堆積した)で被う。(e)±C面の電極間にパルス状の電圧を印加して分極の反転を行う。絶縁膜を用いないと分極反転が均一に形成される面積は10mm2以下になってしまい。変換効率の向上が難しいという問題があった。ところが、絶縁膜を用いることで分極反転を形成する領域が30mm2以上に拡大した。しかし、この場合でも、分極反転を均一に形成するには、(実施の形態1)に示した電極周辺部への分極反転部の拡大が必要があった。即ち、分極反転を均一に形成するには、図3に示したΔWmin以上の分極反転の拡大を必要とした。光波長変換素子に用いられる周期状の分極反転構造は、変換効率が最大になる最適な構造としてデューティ比(分極反転幅W/分極反転周期Λ)を50%程度に制御する必要がある。従って、電極周辺部への分極反転部の拡大を考慮すると、周期状の電極を構成する電極指の幅Wは、
W<Λ/2−2ΔWmin (3)
にしなければならない。

0037

また、周期状の分極反転構造を形成する場合に必要な電荷量の値も電極周辺部に広がる分極反転部の拡大を考慮すると計算できる。分極反転を形成する電極構造として図5に示したように、長さLd、幅Wの電極指を周期Λで距離Lsに渡って並べた櫛形電極を用いる場合、電極の面積はW・Ld・Ls/Λ、分極反転部の拡大部分の面積は2ΔWmin・Ld・Ls/Λで表される。従って、均一な分極反転を形成するための電荷量は、
Q>2Ps・(W+2ΔWmin)Ld・Ls/Λ (4)
で求められる。

0038

分極反転形成において特に難しいのが、短周期の分極反転構造を形成する場合である。分極反転部の広がりは、図3に示すように、基板の厚さに依存するが1μm以下の値である。このため、10μm以上の分極反転形状や周期状分極反転構造を形成する場合あまり問題にならない。ところが、分極反転で短周期の反転構造や微細な構造を形成する場合には、分極反転の拡大が大きな形状誤差となってくる。

0039

例えば、周期2.8μmの分極反転構造を形成するにはデューティ比50%の反転構造を形成するのに分極反転部の幅を1.4μmに制御する必要がある。基板の厚みが0.2mmのとき、分極反転部の幅を1.4μmにするには、分極反転部の幅方向の広がりWmin=0.2μmを考慮して電極の幅を1μm以下に制限しなければならなかった。

0040

さらに、分極反転周期2μm以下の反転構造の形成を試みた。分極反転周期1.7μm程度の反転構造の形成ができると波長680nm程度の赤色半導体レーザの波長変換が可能となり波長340nmの紫外光が発生できる。紫外光を用いると蛍光分光を利用した特殊計測、レーザプリンタ−等広い分野で応用できる。しかしながら、現在この波長帯の出力が可能な小型光源が存在しないため応用分野は広がっていない。しかしながら、周期2μmの分極反転構造を形成するには分極反転部を1μm以下にする必要がある。ここで0.5mm厚の基板を用いれば、分極反転部の拡大だけで1μmとなり、分極反転用の電極幅Wと両サイドの反転部の拡大をあわせると分極反転部の幅は2μm以上になり、周期構造が形成できなくなる。通常のフォトプロセスによるパターニングでは、電極の幅を0.4μm程度にしか小さくできないので、1μm幅の分極反転部を形成するには分極反転部の拡大は0.3μm以下に抑える必要がある。図3から判断すると、基板の厚みは0.2mm以下のものを用いないと分極反転が形成できない。分極反転の周期と基板の厚みの関係は電極幅が0.4μmと仮定して、(1)、(3)式から計算すると、
T<Λ/0.01 (5)
となる。

0041

即ち、短周期構造の分極反転を形成する場合、基板厚みが分極反転周期に規制されることを示している。特に周期2μm以下の分極反転層を必要とする紫外光発生用の波長変換素子の場合、基板厚みTが分極反転周期Λに限定されてしまう。実際に周期1.7μmの分極反転の形成を試みたところ0.2mm厚の基板では分極反転部の横方向拡大が大きくデューティ比50%の反転構造の形成は難しかった。基板厚みが0.17mm以下で反転構造の形成が可能となり、光波長変換素子を形成する場合、素子の基板厚みと分極反転周期は(4)式の関係を満足しなければならないことを確認できた。基板が0.17mmのときは基板表面から基板の中央部近傍までは均一な周期構造が形成できたが、基板の裏面近傍では周期構造に乱れが生じた。基板厚みが0.15mm以下のとき、分極反転構造が表面から裏面にかけて、均一になり変換効率の高い光波長変換素子が形成できた。波長680nmの赤色半導体レーザからの光を集光光学系で光波長変換素子内に集光し、シングルパスで波長変換を行ったところ、50mW入力で30μWの紫外光(波長:340nm)が得られた。このときの換算効率は1.2%/Wであった。さらに、基板の両端面に99%反射多層膜を形成し、共振器型にしたところ、出力3mWの紫外光が得られた。(5)式の条件を満足することで短周期の分極反転構造を有する光波長変換素子の構成が可能となるため、紫外光発生用の光波長変換素子の実現が可能となった。

0042

(実施の形態3)
ここでは、耐光損傷特性に優れた光波長変換素子を製造する方法について述べる。波長400nm程度の青色光から紫外光にかけて高出力のSHG光を発生する場合問題となるのが、光損傷である。例えば、波長430nmのSHG光を発生する場合、出力が1mW程度以上になると、SHG出力のビーム形状が歪な形状となった。これは、光損傷により結晶の屈折率が部分的に変化しSHG光のビーム形状に影響を与えたためである。より短い波長では、さらに低いSHG出力に対し同様の光損傷が観測された。光損傷の原因として、高圧の電界印加により分極反転を行った際に基板内蓄積される電荷が影響していると考察された。そこで、基板内の蓄積電荷解放する方法としてプラズマ処理による方法を試みた。Arと酸素雰囲気中でプラズマを発生させ、基板にプラズマを照射した。プラズマを20分程度照射したところ、蓄積電荷が減少し、約1.5倍の耐光損傷強度を示した。さらに、耐光損傷強度を高めるため、基板を加熱しながら、プラズマを照射した。100℃いかでは、室温での効果とあまり大差が無かったが。100℃以上になると耐光損傷強度が徐々に高まってきた。250℃程度で最大となり、プラズマを照射しない場合の5倍の耐光損傷強度を示した。基板温度が300℃を越えると、SHG変換効率の低下が見られ、光波長変換素子の特性劣化が観測された。これは、高温のプラズマ照射が分極反転構造に何らかの影響を与えるためと考えられる。

0043

(実施の形態4)
ここでは、耐光損傷性に優れ、かつ導波損失の小さなバルク型SHG素子の製造方法について述べる。

0044

光波長変換素子に必要な周期状分極反転は図5の製造方法に従う。電界印加による分極反転形成プロセスにおいて重要なのは、印加電圧波形である。LiTaO3において短周期の分極反転層を形成するには、パルス電圧波形として反転電圧(分極が反転する電圧でLiTaO3で約21kV/mm)以上の電圧を印加する必要がある。しかしパルス電圧印加後、瞬時に印加電圧を0に戻すと、反転した分極が再反転を生じ、分極反転層が消滅してしまう現象が観測された。そこで、パルス電圧印加後、CW電圧をしばらく印加したところ、反転した分極が安定化し、再反転が防止できることが分かった。

0045

ところが、CW電圧の印加時間が形成された分極反転構造の均一性にも大きく影響を与えることが明らかになった。例えば、基板厚0.2mmのLiTaO3にパルス電圧として4.2kV印加した後、CW電圧を3kV印加し、CW電圧の印加時間と分極反転周期の均一性の関係を測定したところ、2秒以下では、形成される分極反転の周期構造の不均一性が大きくなるのが分かった。周期構造の均一性を得るにはTbの時間を3秒以上必要であり、5秒以上にする非常に均一性の高い反転層が形成され、効率の高い光波長変換素子が製造できることが明らかになった。

0046

また、CW電圧としては、印加電界で20〜10kV/mmの間が望ましかった。20kV/mm以上の電界を印加すると、分極反転がさらに進行するため、分極反転構造が最適な形状からずれてくるという問題が生じた。また10kV/mm以下の電界では、分極反転構造の均一化に寄与しなかった。

0047

一方、電界印加により形成された分極反転層は結晶内に周期状の屈折率変化を有するため光の伝搬損失が存在し、光波長変換素子と特性が劣化することが分かった。そこで、400℃程度で数分間アニール処理したところ伝搬損失の低減は図れたが、光波長変換素子において光損傷増大することを発見した。素子長10mmの光波長変換素子に波長860nmの基本波を入射して、波長430nmのSHG発生を行ったところ、数100μW以上のSHGが出射した場合に光損傷により出力が不安定になる現象が観測された。そこでアニール処理温度について種々の検討を行った結果、アニール処理温度と光損傷の間に相関関係があることを見いだした。以下に、アニール処理温度と結晶の伝搬損失並びに光損傷の関係を測定した結果を示す。

0048

0049

伝搬損失は150℃程度の低温のアニール処理でも改善されることが分かった。また、光損傷は350℃以上では増大する傾向が観測された。従って、伝搬損失が小さく光損傷の小さな素子を形成するには150℃〜350℃の温度で熱処理を行う必要があることが分かった。特に光損傷強度の強い光波長変換素子を形成するには180℃〜280℃程度で熱処理するのが望ましかった。この温度範囲で熱処理した光波長変換素子により波長430nmのSHG発生を行ったところ、10mW以上のSHG出力においても光損傷による出力変動は観測されず、従来難しかった高出力のSHG発生が可能な素子が作製できた。

0050

本実施の形態により形成した光波長変換素子が、特に有効である使用方法として、共振器型の光波長変換素子がある。共振器内に光波長変換素子を挿入することにより高いパワー密度の基本波を利用することができ、変換効率の大幅な向上が可能となる。しかしながら、光波長変換素子を透過する光の損失があると共振器特性が劣化してしまい、共振器内の光のパワー密度が増大しないという問題が生じる。光の伝搬損失としては数%以下に抑える必要がある。本実施の形態の方法で作製した光波長変換素子は伝搬損失が3%以下であり、共振器内に挿入することにより、変換効率の大幅な向上が図れた。

0051

なお、本実施例では基板にLiTaO3基板を用いたが他にMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3、またはLiNbO3またはその混合物であるLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、そのほかKTP(KTiOPO4)でも同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3、KTPはともに、高い非線形性を有するため、高効率の光波長変換素子が作製できる。

0052

次に、出力安定化を目的とした本発明のバルク型の光波長変換素子について説明する。具体的な素子構造としては、
・金属膜を光波長変換素子表面に堆積することにより、素子の温度均一性を図ると共に、焦電効果を防止する構造。

0053

・分極反転周期の位相分布を変えることにより、光損傷の低減と光波長変換素子の許容度の拡大を実現する構造。

0054

・分極反転の周期の分布を変えることにより、光波長変換素子の許容度の拡大を実現する構造。

0055

・分極反転構造を有する結晶を張り合わせることにより、素子の高効率化を行い、焦電効果を防止する構造。
である。以下の実施の形態において、それぞれの光波長変換素子の特性について述べる。

0056

(実施の形態5)
ここでは、バルク型光波長変換素子に金属膜を付加することで焦電効果の低減を図った結果について説明する。

0057

光波長変換素子の構造を図6を用いて説明する。図6に示すように、C板のLiTaO3結晶1(結晶のC軸に垂直な面)内に周期状の分極反転層4が形成されている。さらに、表面をAl膜5で被っている。結晶1の端面は光学研磨されており、入射端より入射した波長860nmの基本波6は結晶内で、波長430nmの第2高調波(SHG)7に変換される。

0058

従来のバルク型光波長変換素子は、温度が変化すると焦電効果により表面に電荷が溜り、これによって生じる屈折率変化によりSHG出力が変化していた。そこで基板表面に金属膜を形成し、発生する焦電電荷を相殺した。その結果、基板表面に生じる表面電荷をなくすことができ、温度変化0〜60℃において、焦電効果による出力変動は観測されず安定な出力が得られた。

0059

また、表面に金属膜を形成することにより、結晶の温度制御が容易になった。光波長変換素子は波長許容度が狭いため、温度変化による結晶の屈折率変化により位相整合条件が変化し、出力が低下する。これを防止するために、光波長変換素子の温度を制御する必要がある。しかしながら、LiTaO3結晶は熱伝導度が低いため、素子長10mmに渡って結晶温度の均一性を保つのが難しいという問題があった。ところが、結晶を金属膜で被うことで光波長変換素子の熱伝導度が増大し、素子長全域に渡る温度の均一化が容易になった。さらに、温度制御も高速に行え、急激な温度変化に対しても焦電効果が発生しないため安定な出力が得られた。

0060

また、金属膜に電流を流し、金属膜をヒータとして使用する実験も行った。金属膜としてTiを30nm堆積し、ストライプ状に加工して、これに電流を流すことで薄膜ヒータとして用いた。ヒータにより結晶の温度を50℃に制御し、雰囲気温度の変化0〜50℃に対し、SHGの出力変動を±5%以下まで低減できることを確認した。金属膜をヒータとして用いることで、結晶の焦電効果を低減すると同時に、結晶温度安定化が図れた。

0061

また、金属膜を結晶表面に付加することで、結晶の汚れによる特性の劣化も防止できる。雰囲気温度の変化による焦電電荷は、結晶雰囲気中のダスト吸着し、長時間使用していると、結晶表面に多くのダストが付着して光波長変換素子特性の劣化が起こる。このようなダストの付着も結晶表面を金属膜で被うことで防止できた。

0062

なお、本実施例では基板にLiTaO3基板を用いたが他にMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3、またはLiNbO3またはその混合物であるLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、そのほかKTP(KTiOPO4)でも同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3、KTPはともに、高い非線形性を有するため、高効率の光波長変換素子が作製できる。

0063

(実施の形態6)
ここでは、分極反転の周期構造を変えることにより耐光損傷性の向上を図った結果について述べる。

0064

光励起により発生した電荷が結晶の分極方向に移動して結晶内に電荷分布偏りを生じる。これによって発生した電界により、電気光学効果を介した屈折率変化が発生し光損傷となる。電荷の移動は結晶の分極方向に沿って移動するため、結晶内の分極反転層と非反転層部分では電荷の移動が逆方向となる。そのため、短周期の分極反転構造を形成することで光励起により生じた電界を相殺することができる。ここでは、光励起による電界を相殺する効果をさらに高めるため、周期状の分極反転構造を光の伝搬方向に平行な方向で分割し、各部分での分極反転の位相を互いにずらした構成をとった。図7(a)に示すように伝搬方向に平行にA,B,C,D,E領域に分割し、各領域間での分極反転周期の位相が図7(b)に示すように互いに異なるように形成されている。分極反転構造に位相差を形成することにより、各領域間において光励起による電界の相殺が起こり、光損傷を低減することができた。

0065

さらに、位相差を調整することにより光波長変換素子の波長許容度の拡大が可能となる。分極反転構造を伝搬方向にいくつかのセグメントに分割し、各セグメントの位相を制御することで光波長変換素子の波長許容度が拡大することが報告されている(エレクトロニクスレター記載、M.L.Bortz,M.Fujimura,and M.M.Fejer, Electronics Letters, vol.30, pp.34-35, 1994)。しかしながら、伝搬方向に反転構造を分割すると、長さ方向に渡り光損傷の分布が形成された場合(SHGは伝搬距離に対し二乗で増大するため光損傷の分布が形成される)、各セグメント間の相互関係が変化するため波長許容度拡大の効果が表れず、SHGの出力低下が生じるという問題があった。そこで、本発明の構成では伝搬方向に平行に分極反転構造を分割する構成をとった。本発明の構成では、伝搬方向に屈折率分布が生じた場合でも、各セグメント間の相互関係が常に保たれるため、SHG出力の安定化が図れた。

0066

なお、本実施例では基板にLiTaO3基板を用いたが他にMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3、またはLiNbO3またはその混合物であるLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、そのほかKTP(KTiOPO4)でも同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3、KTPはともに、高い非線形性を有するため、高効率の光波長変換素子が作製できる。

0067

(実施の形態7)
ここでは、分極反転構造を変えることによる光波長変換素子の波長許容度の拡大について述べる。

0068

周期状の分極反転構造を用いた光波長変換素子は、高効率の波長変換が可能であるが、反面、位相整合波長許容度が狭いため励起する基本波の波長変動により出力が大幅に低下するといった問題がある。そのため、位相整合波長を拡大することにより出力の安定化を図る必要がある。

0069

本実施の形態では、図8(a)に示すように分極反転構造を光の進行方向に平行にAとBに2分割し、それぞれの分極反転周期Λ1とΛ2が異なるように形成した。このため、SHG出力の基本波波長依存性は、セグメントAでとセグメントBでは図8(b)に示すように僅かにずれており、光波長変換素子全体ではAとBの波長依存性を足した値となり波長許容度が増大する。

0070

従来の構成としては伝搬方向に分極反転構造を分割し、各セグメントにおける周期構造を変えることで互いのセグメント間の相互作用により位相整合波長の許容度を拡大する方法があった。しかしながら、従来の構成では、伝搬方向に光損傷による屈折率分布が生じた場合、各セグメント間の相互関係が変化し、位相整合許容度が必ずしも増大しないという問題があった。

0071

これに対し、本構成を用いると光の伝搬方向に対し均一な周期構造をとるため、伝搬方向において光損傷による屈折率分布が生じた場合もセグメント間の相互関係が変化しない。従って、光損傷による位相整合波長の変化に対しても安定な出力特性を得ることができた。

0072

さらに、導波損失や基本波からSHGへのパワー移行により、基本波は伝搬するに従い減少する。このような基本波パワーの変化に対しても、分極反転構造との相互関係が変化しないため、素子設計が容易になる。

0073

なお、本実施例では基板にLiTaO3基板を用いたが他にMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3、またはLiNbO3またはその混合物であるLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、そのほかKTP(KTiOPO4)でも同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3、KTPはともに、高い非線形性を有するため、高効率の光波長変換素子が作製できる。

0074

(実施の形態8)
ここでは、分極反転構造を積層化することによる変換効率の向上並びに出力の安定化を図った結果について述べる。

0075

LiTaO3、LiNbO3結晶に電界印加により深い分極反転層の形成が可能である。例えば、これらの結晶に周期3〜4μmの分極反転層を厚さ200μmに渡って形成することが報告されている。しかしながら、このような短周期の分極反転を深さ方向に渡り均一に形成できる基板厚みには限界がある。例えば、現在報告されているのは、厚みとして150〜200μm程度であり、300μmを越えると反転の不均一性が増大する。従って、バルク型の光波長変換素子を形成する結晶の厚みは約200μm程度に制限されてしまう。

0076

このような光波長変換素子をバルク型として用いる場合、いくつかの問題が生じる。第一に、結晶内を通る基本波のビーム径が結晶の厚みに規制される。ビーム径が結晶の厚みより大きくなるとビームが歪み、得られるSHG出力の波面特性が劣化して、十分な集光が得られなくなからである。ビーム径が制限されると素子長が制限される。例えば、200μm程度の厚みの場合、素子長は10mm程度である。第二に、基本波を入射する面積が狭いため光学系のアライメントに微調性が必要となる。これらの問題を解決する方法として、本発明では分極反転した基板を光学的に接触させる(オプティカルコンタクト)ことにより基板の厚みを増大させる方法を見いだした。

0077

光波長変換素子の構造としては、図9に示すように、周期状の分極反転構造4を形成したLiTaO3基板8と9を張り合わせて構成している。複数の基板を張り合わせると、さらに厚みを増大させることができる。

0078

次に、本実施の形態の構成により、変換効率の高効率化が可能となった結果を示す。LiTaO3結晶は+C面より周期状の分極反転構造を形成する。従って、分極反転構造の均一性は+C面で最も優れ、−C面に近づくに従い劣化する。そこで、図9に示すように+C面どうしを接触させる構成をとった。基本波を基板の接触部分を中心に伝搬させることにより他の構成(例えば一つの基板を用いた場合、+C面と−C面とを接触した場合、または−C面どうしを接触した場合)に比べ、1.5〜2倍の高効率化が可能となった。さらに、従来の単一基板を用いた場合に比べ、素子長も2倍に増大させることが可能となり、変換効率をさらに2倍に増加させることができた。

0079

次に、基板を接着剤で貼合わせる際、接着剤に基板より屈折率の高い材料を用いた。接着剤は基本波および高調波に対して透明な材料である。材料としては、例えば、TiO2ゾルゲル液を用いた。基板間にTiO2ゾルゲル流し込み、約500℃で焼結することにより基板を接着できた。屈折率の高い接着材料を用いると、高屈折率部分を基板で挟んだ対称構造の光導波路が形成できる。基本波は導波モードとなり、接着剤の部分を中心に伝搬するため、光のパワー密度を増大させることができる。また、伝搬距離も長くとれるため、相互作用長が増大し変換効率が大幅に向上した。

0080

次に、光損傷および焦電効果による出力の不安定化を低減できることを示す。図9の光波長変換素子の構成では基板8の分極反転層と基板9の非反転層が重なっているが、位相をずらせて、2つの基板の反転層が互いに重なるようにすると、結晶の分極方向が2つの基板間で対立することになる。これによって、光損傷で生じる電荷および焦電効果により発生する電荷は結晶の張り合わせた部分で正負逆の電荷が発生するため相殺され結晶内に電界による屈折率変化が生じなくなる。すなわち、光損傷および焦電効果による屈折率変動が発生せず、安定なSHG出力が得られた。

0081

次に、結晶を積層構造にした場合の互いの分極反転構造の周期のずれについて述べる。周期状の分極反転構造を有する結晶を重ねて、光波長変換素子を構成する場合、結晶内を通る基本波の進行方向に対する分極反転の周期が、ほぼ等しくならないと、それぞれを通る光の位相整合条件が異なり高効率の波長変換が行えない。そこで、位相整合条件を満足する分極反転構造のずれについて検討した。高効率化には、互いの分極反転構造のずれが0となるのが望ましいが、実際にずれをなくすのは困難である。効率が低下しない分極反転周期のずれを計算するとΛav/L>ΔΛn(n=1、2、3・・)となることが分かった。

0082

但し、Λavは分極反転の周期の平均値、ΔΛn(n=1、2、3・・)は各分極反転層の周期とVavとの差の絶対値、Lは相互作用長である。例えば図9に示すように2つの結晶を重ねた場合、Λav=(Λ1+Λ2)/2であり、ΔΛ1=|Λ1−Λav|、ΔΛ2=|Λ2−Λav|である。周期3.6μm作用長10mmの場合、分極反転周期のずれは、3.6x10-4μm以下にする必要がある。

0083

実施に分極反転構造を有する素子を重ねる場合は、結晶に基本波を入射しながら、基板を微動台で調整し、変換効率が最大になるように調整した後、接着した。基板をオプティカルコンタクトした状態で加熱することで、基板間が接着する。また接着剤を用いる場合は、基板の屈折率に近いものを用いることにより、SHG光の波面収差を低減することができた。また、接着剤を用いず、基板同志をオプティカルコンタクトした状態で固定することで、SHG光の波面収差をほとんどなくすことも可能であり、集光特性に優れた光波長変換素子の構成が実現できた。

0084

重ねた基板の分極反転周期の差を積極的に利用する方法もある。実施の形態3で示したように、周期の異なる分極反転層を隣合わせに用い、ここに基本波を通すことにより、位相整合波長の許容度を増大させることも可能である。例えば、同一の周期を用いた基板を、重ね合わせわずかに回転させることにより、光の進行方向に対する周期に基板間で差を設けることにで、分極反転周期構造の異なる反転層を重ねた構造が実現できた。本方式により位相整合の波長許容度の拡大が可能であった。位相整合波長許容度が拡大することで、基本波の波長変動に対しても安定な出力が得られて有効であった。

0085

なお、本実施例では基板にLiTaO3基板を用いたが他にMgO、Nb、NdなどをドープしたLiTaO3、またはLiNbO3またはその混合物であるLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、そのほかKTP(KTiOPO4)でも同様な素子が作製できる。LiTaO3、LiNbO3、KTPはともに、高い非線形性を有するため、高効率の光波長変換素子が作製できる。

0086

(実施の形態9)
ここでは周期状分極反転構造を用いた、第3または第4高調波発生用のバルク型の光波長変換素子について述べる。

0087

前述の実施の形態において、周期状の分極反転構造を利用したバルク型の第2高調波発生を利用した光波長変換素子について説明した。周期状の分極反転を用いると、さらに高次の第3高調波、第4高調波の発生が可能となる。本実施の形態では、単一の素子による高次の高調波発生が可能な素子について述べる。

0088

従来、非線形光学効果を利用した第3高調波ならびに第4高調波発生は、非線形光学結晶を用いて、第2高調波発生を行い。さらに、他の非線形光学結晶を用いて、第2高調波を利用した第3または第4高調波発生を行っていた。これらの光学系では、複数の非線形光学結晶が必要であり、光学系の複雑な調整が必要であった。

0089

そこで、本実施の形態では、図10(a)に示す光波長変換素子の構成を用いた。図10(a)では、LiTaO3基板1が2つのセグメントA,Bに分割されており、セグメントAは基本波6を第2高調波に変換し、セグメントBではセグメントAを通過した基本波と第2高調波により第3高調波16を発生する。それぞれの分極反転の周期は、セグメントAでは、
Λ1=λ/2/(N2−N1)
セグメントBでは、
Λ2=λ/(3N3−N1−2N2)
となっている。但し、λは基本波の波長、N1は波長λの光に対する前記結晶の屈折率、N2は波長λ/2の光に対する前記結晶の屈折率、N3は波長λ/3の光に対する前記結晶の屈折率である。

0090

一つの非線形材料に異なる分極反転構造を形成することにより、単一の結晶で第3高調波発生が可能となった。さらに、基板に分極反転構造が形成されているため複雑な光学系調整が不要となり安定な出力が得られるという利点を持つ。本構造は、簡単な構成で短波長光の発生が可能であり、かつ安定な出力が得られる点で有効である。例えば、光源に波長1.06μmのYAGレーザを用い、レーザ光光波長変換することで、0.35μmの紫外光発生ができた。

0091

同様の構成でさらに高次の第4高調波の発生も可能である。この場合は、セグメントAで第2高調波を発生し、第2高調波よりセグメントBで第4高調波を発生する。この時に分極反転周期は、セグメントAでは、
Λ1=λ/2(N2−N1)
であり、セグメントBでは、
Λ2=λ/4(N4−N2)
である。ただし、λは基本波の波長、N1は波長λの光に対する前記結晶の屈折率、N2は波長λ/2の光に対する前記結晶の屈折率、N4は波長λ/4の光に対する前記結晶の屈折率である。

0092

次に、温度変化等による光波長変換素子の位相整合ずれが生じた場合の調整機構を付加しした光波長変換素子構成についても図10(b)に示す。結晶の温度変化により屈折率が変化すると、位相整合条件が変わり高調波出力が低下する。このとき光波長変換素子をわずかに回転させ光の進行方向に対する分極反転周期を変調させることによりセグメントAで、第2高調波の発生を最大に調整することができる。しかし、セグメントBでの位相整合条件もずれるため、第3高調波の位相整合条件が成立しなくなる場合がある。これを調整するため、セグメントBは分極反転周期が素子の位置により僅かづつ異なる用に形成する。光波長変換素子の位置を左右に調整すれば、セグメントBでの位相整合状態を最良に調整することが可能となり、第3高調波を効率よく取り出すことが可能となる。

0093

本構成を用いると、パラメトリック発振等への応用も可能であり、セグメントをさらに追加して、より高次の高調波の発生も可能である。

0094

(実施の形態10)
ここでは、上述した実施の形態の光波長変換素子を用いた短波長光源について述べる。

0095

レーザ光源と光波長変換素子を用いて、短波長光源が構成できる。図12に本実施の形態の短波長光源を示す。レーザ12からでた基本波6は、光波長変換素子14により波長変換され、SHG7となって出射される。例えば波長800nm帯の半導体レーザを用いると波長400nm帯の青色のSHG光が得られ、小型の青色光源が実現できる。位相整合条件は、光軸に対し基板の角度を回転させることで、実効的な分極反転周期を調整することで達成した。位相整合のアライメントの角度調整は容易であり、温度安定化を図ることで安定な光源が実現できた。

0096

安定な小型短波長光源は、高密度光記録カラーレーザプリンター、医用、バイオなどの幅広い分野での応用が可能となる。波長680nm帯の赤色半導体レーザを基本波として用いることで、波長340nmの紫外光発生が可能となり、作製が困難な小型の紫外光源が実現できる。バイオ、蛍光寿命測定、特殊計測等への応用が可能となる。また、レーザをパルス駆動すると高いピークパワーの基本波が得られるため、高効率の波長変換が可能になる。例えは、CW駆動では最大出力40mW程度の半導体レーザでも、パルス駆動することで数100mWの高いピークパワーの発生が可能となり、SHG出力としても数10mWのものが得られる。高いピークパワーを持ったSHG光は、蛍光寿命測定等に応用することで、不純物検出等が可能となる。また、半導体レーザを高周波のRF駆動することで、高いピークパワーをもったパルス列発振が可能となり、平均パワーでCW駆動の半導体レーザに比べ5倍以上の変換効率向上が可能となった。高出力の小型光源として優れた特性を示した。

0097

高出力のSHG光を発生した場合、光損傷による出力の不安定性が問題となる。本実施例で示した素子においても10mWを越えるSHG出力を発生した場合、出力の不安定性が観測される場合があった。これを解決するため、図11に示すように、光波長変換素子を微動台15に固定し基本波に対する光波長変換素子の位置を変動させた。光損傷は比較的ゆっくりした速度(数秒オーダ以上)で発生するため、光波長変換素子の位置を数10Hz以上の速さで変動することで、結晶内に照射されている光のパワーを分散させて、結果として光のパワー密度を低減することができる。この方法で耐光損傷の強度が2倍以上に向上し、安定な高出力SHGの発生が可能となった。

0098

一方、温度による位相整合条件の変化により、光波長変換素子の変換効率が劣化する減少が観測された。これは温度により基板結晶の屈折率が変化し、位相整合条件がずれたために発生した。そこで、図12に示すように、光波長変換素子を回転微動台15で制御した。周期状の分極反転層を有する光波長変換素子は、素子を光軸に対し傾けることで、光に対する実質的な分極反転周期を可変することが可能となる。この回転微動台を調整して、光波長変換素子の位相整合条件を常に最適に調整することにより、安定したSHGの発生が可能となった。

0099

本発明にかかる分極反転の製造方法は、耐光損傷性に優れ、光の伝搬損失および光損傷を大幅に低減した光波長変換素子の製造方法として有用である。

図面の簡単な説明

0100

(a)〜(c)分極反転の製造方法を示す作製工程斜視図
(a)非反転領域が形成された分極反転の表面図(b)均一な分極反転の表面図
分極反転部の拡大(Wmin)距離と基板厚みの関係を示す特性要因図
電極と分極反転部の位置関係を表す表面図
(a)〜(d)本発明の光波長変換素子の作製工程斜視図
本発明の光波長変換素子の構成斜視図
(a)本発明の光波長変換素子の構成斜視図(b)各領域における分極反転構造の位相関係を表す特性要因図
(a)本発明の光波長変換素子の構成斜視図(b)各領域における位相整合特性を表す特性要因図
本発明の光波長変換素子の構成斜視図
(a)高次高調波発生用の光波長変換素子の構成斜視図(b)位相整合調整機構付きの光波長変換素子の構成斜視図
本発明の短波長光源の構成斜視図
本発明の短波長光源の構成斜視図
従来の分極反転の製造方法を示す作製斜視図
従来の光波長変換素子の構成斜視図

符号の説明

0101

1 C板のLiTaO3基板
4分極反転層
5 Al膜
基本光
7SHG
8 第1のLiTaO3基板
9 第2のLiTaO3基板
11 SiO2
12レーザ
13集光光学系
14光波長変換素子
15微動台
16高調波
17櫛形電極
18平面電極
19絶縁膜
20電極
21分極反転部
22 非反転部分
23 LiNbO3基板
24 櫛形電極
25 平面電極

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