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技術 澱粉糊及びその製造方法

出願人 株式会社林原生物化学研究所
発明者 岡岩太郎早川典子西本友之福田恵温三宅俊雄
出願日 2005年4月26日 (15年8ヶ月経過) 出願番号 2005-127337
公開日 2006年2月16日 (14年10ヶ月経過) 公開番号 2006-045496
状態 特許登録済
技術分野 接着剤、接着方法
主要キーワード 文化財保存 伝統工芸 可溶性糖質 デラックス 枝切り 洗濯糊 ハードタイプ 文化財
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課題

糊化度が低く、且つ、分子量が低い新規澱粉糊及びその製造方法を提供することを課題とする。

解決手段

澱粉の糊化度が50%未満であり、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物ゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターン平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す澱粉糊とその製造方法を提供することにより上記課題を解決する。

概要

背景

澱粉糊は、家庭用洗濯糊、事務用接着剤用などとして古くから今日まで長年にわたり使用されている。従来、澱粉糊の製造方法は、澱粉を加熱あるいはアルカリにより糊化する方法が一般的であるものの、このような方法で得られる澱粉糊は、そのままでは澱粉が老化したり、微生物が増殖したり、さらには微生物が産生する酵素(主にアミラーゼ)によって低分子化したりして、澱粉の糊化度が低下し、接着力が著しく低下することにより使用不能に陥りやすい。そのため、老化、微生物、酵素に対する耐性を付与する目的で、ホルムアルデヒドベンゼンカルボン酸などの化学合成物質や3価金属や亜鉛などの金属化合物を澱粉糊に添加したり、エーテル化澱粉エステル化澱粉など合成化学的に加工した澱粉を用いたり、また、澱粉糊の一部あるいは全部を澱粉以外の他の多糖高分子化合物置換したりする方法が採用されている。このような方法で製造された澱粉糊は、その接着力が強力で安定であるものの、澱粉糊本来の糊以外に他の化学成分を含有することから、もはや純粋な意味での澱粉糊ではなく、換言すれば、添加物含有糊といってもよく、本来の澱粉糊に比べその毒性や環境汚染が危惧される。とりわけ、伝統的な工芸品の作製や文化財などの修復においては、古来より用いられてきた澱粉糊が好ましいことは言うまでもない。

一方、日本画など伝統工芸品を修理補修する際に、表具師が使用している古糊という特別な澱粉糊が知られている。これは、厳の日に小麦粉澱粉糊を大釜に入れて弱火で煮た後、瓶などに入れ和紙で蓋をし、3年から10年以上土蔵の床下や土中に保存することで作られる。古糊は、適度な接着性を有し、紙を張ったときに紙の収縮が少なく絵が皺になりにくいことや、剥離性が良好なため、数十年後に修復する際に無理に引き剥がして破損することなく、確実に修復が可能なことなどの優れた特性を有すると言われている。古糊は、その分子構造の研究(非特許文献1を参照)から、極端に糊化度が低下した老化澱粉であるとともに、部分的に分解した低分子化澱粉であることがわかっている。このことは、糊化度が低下し低分子化した澱粉糊であっても、その糊化度の低下及び低分子化の程度が適度に保たれていれば、適度な接着性を有し修復性の良好な澱粉糊として、日本画など伝統工芸品の修理・補修に有用であることを意味しており、このような澱粉糊は、消費型から循環型目指す現代社会に望まれる環境に優しい接着剤といえる。しかしながら、適度な低糊化度で低分子化した澱粉糊は、上記した古糊のみがわずかに伝統的に製造されているだけで、社会需要に対応できていないのが現状である。環境に優しい低糊化度で低分子化した新規澱粉糊の安定した提供が望まれる。

山田哲也ら、『古糊の研究』、応用糖質科学、第43巻、第2号、137〜142頁(1996年)

概要

糊化度が低く、且つ、分子量が低い新規な澱粉糊及びその製造方法を提供することを課題とする。澱粉の糊化度が50%未満であり、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物ゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターン平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す澱粉糊とその製造方法を提供することにより上記課題を解決する。 なし

目的

本発明は、糊化度が低く、且つ、分子量が低い新規な澱粉糊及びその製造方法を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

澱粉糊化度が50%未満で、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物ゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターン平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示すことを特徴とする澱粉糊

請求項2

請求項1記載の澱粉糊を乾燥して得られる乾燥澱粉

請求項3

糊化澱粉を0乃至15℃で冷蔵しながら澱粉分解酵素を作用させ、次いで、水で洗浄する工程を含むことを特徴とする澱粉糊の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、澱粉糊及びその製造方法に関し、詳細には、澱粉糊化度が50%未満であり、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物ゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターン平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す新規な澱粉糊、及び、その製造方法に関する。

背景技術

0002

澱粉糊は、家庭用洗濯糊、事務用接着剤用などとして古くから今日まで長年にわたり使用されている。従来、澱粉糊の製造方法は、澱粉を加熱あるいはアルカリにより糊化する方法が一般的であるものの、このような方法で得られる澱粉糊は、そのままでは澱粉が老化したり、微生物が増殖したり、さらには微生物が産生する酵素(主にアミラーゼ)によって低分子化したりして、澱粉の糊化度が低下し、接着力が著しく低下することにより使用不能に陥りやすい。そのため、老化、微生物、酵素に対する耐性を付与する目的で、ホルムアルデヒドベンゼンカルボン酸などの化学合成物質や3価金属や亜鉛などの金属化合物を澱粉糊に添加したり、エーテル化澱粉エステル化澱粉など合成化学的に加工した澱粉を用いたり、また、澱粉糊の一部あるいは全部を澱粉以外の他の多糖高分子化合物置換したりする方法が採用されている。このような方法で製造された澱粉糊は、その接着力が強力で安定であるものの、澱粉糊本来の糊以外に他の化学成分を含有することから、もはや純粋な意味での澱粉糊ではなく、換言すれば、添加物含有糊といってもよく、本来の澱粉糊に比べその毒性や環境汚染が危惧される。とりわけ、伝統的な工芸品の作製や文化財などの修復においては、古来より用いられてきた澱粉糊が好ましいことは言うまでもない。

0003

一方、日本画など伝統工芸品を修理補修する際に、表具師が使用している古糊という特別な澱粉糊が知られている。これは、厳の日に小麦粉澱粉糊を大釜に入れて弱火で煮た後、瓶などに入れ和紙で蓋をし、3年から10年以上土蔵の床下や土中に保存することで作られる。古糊は、適度な接着性を有し、紙を張ったときに紙の収縮が少なく絵が皺になりにくいことや、剥離性が良好なため、数十年後に修復する際に無理に引き剥がして破損することなく、確実に修復が可能なことなどの優れた特性を有すると言われている。古糊は、その分子構造の研究(非特許文献1を参照)から、極端に糊化度が低下した老化澱粉であるとともに、部分的に分解した低分子化澱粉であることがわかっている。このことは、糊化度が低下し低分子化した澱粉糊であっても、その糊化度の低下及び低分子化の程度が適度に保たれていれば、適度な接着性を有し修復性の良好な澱粉糊として、日本画など伝統工芸品の修理・補修に有用であることを意味しており、このような澱粉糊は、消費型から循環型目指す現代社会に望まれる環境に優しい接着剤といえる。しかしながら、適度な低糊化度で低分子化した澱粉糊は、上記した古糊のみがわずかに伝統的に製造されているだけで、社会需要に対応できていないのが現状である。環境に優しい低糊化度で低分子化した新規澱粉糊の安定した提供が望まれる。

0004

山田哲也ら、『古糊の研究』、応用糖質科学、第43巻、第2号、137〜142頁(1996年)

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、糊化度が低く、且つ、分子量が低い新規な澱粉糊及びその製造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者等は、上記課題を解決するため、澱粉の特性と澱粉分解酵素作用性、即ち、糊化しゲル化した澱粉は、本来の特性として、そのグルカン鎖の再結晶化が進行し徐々に老化し糊化度が低下していくこと、及び、α−アミラーゼなどの澱粉分解酵素は、糊化澱粉に対して高い分解性を示すものの、老化澱粉に対しては著しく作用性が弱いことに着目し、糊化度が低く、且つ、分子量が低い澱粉糊について鋭意研究を行った。その結果、澱粉の糊化度が50%未満であり、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンが平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す澱粉糊が糊化澱粉から調製できることを見出した。また、該澱粉糊が適度の低接着性を有し、パルプ紙などの洋紙から美濃紙などの和紙まで安定した接着性を示し、接着後の剥離性も良好であることを見出すとともに、その製造方法を確立して、本発明を完成した。

0007

すなわち、本発明は、澱粉の糊化度が50%未満であり、重量平均分子量が20,000乃至50,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンが平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す澱粉糊とその製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。

発明の効果

0008

本発明の澱粉糊は、糊化度が低く低分子量であって、適度の低接着性を有し、パルプ紙などの洋紙から美濃紙などの和紙まで安定した接着性を示し、接着後の剥離性も良好であることから、古来より用いられてきた古糊と同様に伝統工芸品の修理・補修にも有用であって、また、化学成分を含まないことから毒性や環境汚染の懸念がない環境に優しい糊である。さらに、本発明の澱粉糊の製造方法によれば、環境に優しい澱粉糊を安定に提供することが可能となる。

発明を実施するための最良の形態

0009

澱粉糊の糊化度は、中道徳・圭二編、生化学実験法19、『澱粉・関連糖質実験法』、学会出版センター発行(1988年)に記載されているBAP法(β−アミラーゼプルラナーゼ法)に従って測定することができ、本発明の澱粉糊の糊化度は50%未満である。糊化度が50%以上の澱粉糊は、接着力が強すぎて、剥がす必要性が生じた際にきれいに剥がせないなどの不都合が生じる恐れがある。

0010

澱粉糊の重量平均分子量は、分子量標準試料としてプルラン(株式会社林原生物化学研究所製造)を用いた高速液体クロマトグラフィー法で求めることができ、本発明の澱粉糊の重量平均分子量は、20,000乃至50,000ダルトンである。重量平均分子量が20,000ダルトン未満の澱粉糊は分子量が低すぎて接着力が弱く、また、重量平均分子量が50,000ダルトン超の澱粉糊は接着力が強すぎて好ましくない。

0011

澱粉糊のイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンは、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を用いて澱粉枝切り反応を行った反応物をゲル濾過クロマトグラフィーで分離し、分離した糖質の全糖量と平均グルコース重合度を調べることによって求めることができる。本発明の澱粉糊は、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターン(図1を参照)において、平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示す。詳細には、本発明の澱粉糊のイソアミラーゼ消化物は、主成分として、平均グルコース重合度約100にピークを示す平均グルコース重合度約400乃至約60の範囲の糖質を含み、副成分として、平均グルコース重合度約50乃至約10の範囲の糖質を含む。さらには、この副成分の、主成分に対する量比は約0.5未満である。

0012

上記の物性を有する本発明の澱粉糊は、適度な低接着性を有し、その接着性が洋紙、和紙に関わらず安定しており、紙を接着したときに紙の収縮性が少なく皺になりにくいことや、水などで湿らせて引き剥がす際に破損することなく引き剥がすことができ、修復が容易であることなどの優れた特性を有する。

0013

本発明の澱粉糊の製造に用いる澱粉は、小麦、米、トウモロコシなど由来地上澱粉、及び、馬鈴薯サツマイモなど由来の地下澱粉のいずれも澱粉でも、また、それらを2種以上混合したものでもよい。

0014

本発明の澱粉糊の製造に用いる糊化澱粉は、上記のような澱粉を一部または全部糊化したものを用いることができ、その糊化方法は、アルカリや有機溶媒などの化学的手段でも、加熱や電磁波などの物理的手段であってもよい。

0015

本発明の澱粉糊の製造方法において用いる澱粉分解酵素は、糊化澱粉を分解する作用を有する酵素であればよく、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼα−グルコシダーゼマルトトリオース生成アミラーゼマルトテトラオース生成アミラーゼ、マルトヘキサオース生成アミラーゼ、ネオプルラナーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼなどの加水分解酵素シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、α−グルカノトランスフェラーゼブランチングエンザイムなどの転移酵素の1種又は2種以上を組み合わせて作用させてもよい。また、糊化澱粉の分解に用いる酵素の作用量は、本発明の澱粉糊が製造できる作用量であればよく、それぞれの酵素作用に応じて適当な作用量を選択する。

0016

本発明の澱粉糊の製造方法において、澱粉分解酵素を作用させる澱粉濃度は、糊化度が低下する、即ち、老化が進行する濃度であればよく、通常、5質量%以上、好ましくは、10乃至50質量%を用いる。

0017

本発明の澱粉糊の製造方法において、澱粉分解酵素を作用させる温度は、糊化澱粉が凍結することのない、あるいは、微生物による汚染発酵が進行しない温度であればよく、通常、温度0乃至15℃に冷蔵しながら澱粉分解酵素を作用させる。この際、糊化澱粉は、1乃至数日間、温度0乃至15℃で冷蔵した後に澱粉分解酵素を作用させるのが好ましい。

0018

本発明の澱粉糊の製造方法において、糊化澱粉に澱粉分解酵素を作用させるpHは、使用する澱粉分解酵素の作用性と安定性を考慮して適宜選択すればよく、好ましくは、酸による加水分解が起こりにくく、且つ、糊化度が低下する、即ち、老化が進行しやすいpH約3乃至7の範囲を用いる。

0019

本発明の澱粉糊の製造方法においては、糊化澱粉に澱粉分解酵素を作用させた後、水で洗浄することによって、使用した澱粉分解酵素やその作用によって生成したグルコースオリゴ糖など可溶性糖質を除去することにより、所望の澱粉糊を得ることができる。洗浄に用いる水量、洗浄回数は、糊化澱粉の性状や澱粉分解酵素の作用条件などを考慮して適宜設定すればよく、洗浄後の澱粉糊の回収方法は、澱粉糊を水中で自然に沈降させることや、遠心分離して分離することなど適当な手段を用いればよい。

0020

本発明の澱粉糊は、低い糊化度であるとともに、グルコースやオリゴ糖など可溶性発酵性糖質が少ないため、酵素や微生物による劣化を受け難く、品質が安定している。さらなる品質の安定化のため、酢酸乳酸などの有機酸類タンニンヒノキチオールなどの抗菌物質を添加してもよい。

0021

本発明の澱粉糊の性状は、水分を含んだゲル状であっても、水で希釈した液状であってもよい。また、本発明の澱粉糊の特性を変化させない範囲で乾燥し粉末化したものでもよく、この場合、水を加えることによって容易に復元することができる。本発明の澱粉糊を使用するに際し、必要に応じて、本発明の澱粉糊に、より接着力の強い通常の澱粉糊を適量加えて接着力の強さを調整することも随意である。

0022

以下、実験および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。

0023

<実験1:澱粉糊の調製>
澱粉糊用小麦澱粉商品名『クリーニングデラックス生糊』、中村製糊株式会社販売、水分42.2質量%)100gに水370gを加えよ攪拌しながら加熱し糊状にした。さらに、オートクレーブ内で約100℃、30分間保持し、完全に糊化した。この糊化した澱粉を室温約5℃の冷蔵室中で2日間冷蔵した後、α−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を澱粉固形物グラム当り128単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室内で14日間冷蔵した。続いて、これに、約5℃の冷水を約500ml加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿回収し、再度、同様に洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)し、沈殿を回収し、水分約87.5質量%の試料澱粉糊を約135g得た。

0024

対照の澱粉糊として、α−アミラーゼ処理及び洗浄操作を行わないこと以外は同様に操作して水分約87.5質量%の澱粉糊を調製し、それを新糊と名付けて以下の実験に供した。

0025

<実験2:糊化度の測定>
実験1に記載の方法で調製した試料澱粉糊(固形物として80mg)をガラスホモジナイザーに入れ、これに8mlの水を加え、10乃至20回ガラスホモジナイザーを上下させ分散させた。この分散させた懸濁液を2mlずつ容量25mlの2本のメスフラスコに入れ、1本は0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)で25mlに定容し、試験溶液とした。他の1本には、0.2mlの10M水酸化ナトリウム溶液を加え、50℃で5分間温浴し完全に糊化させた後、1mlの2M酢酸を加えpH6.0とし、さらに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)を用いて25mlに定容し、完全糊化試験溶液とした。これら試験溶液それぞれ4mlに対して、予め、プルラナーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)とβ−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造)をそれぞれ3.3単位/mlと0.8単位/mlとなるように0.8M酢酸緩衝液に溶解せしめた酵素液1mlを加え、40℃で30分間、振盪器付恒温槽中で反応を行った。反応後、1mlを採取し、5分間沸騰浴中で酵素を失活させ、それを水で5倍に希釈した後、還元糖量をソモギー・ネルソン法で、全糖量をフェノール硫酸法で測定した。ブランクとして、予め沸騰浴中で10分間保持して失活させた酵素液1mlと試験溶液4mlとを加え、同様に還元糖量を測定した。

0026

糊化度は、試験溶液からの還元糖量をA、全糖量をB、完全糊化試験溶液からの還元糖量をA’、全糖量をB’、ブランクの還元糖量をaとして、以下の式で計算した。

0027

0028

対照として、実験1で調製した新糊、及び、古糊(株式会社岡光堂製造、10年保存品、水分約87質量%)を用いて、同様に糊化度を測定した。これらの結果を表1に示す。

0029

0030

表1の結果から明らかなように、本発明の澱粉糊の糊化度は32.1%であり、対照の新糊の93.3%と比べ著しく低い数値であり、本発明の澱粉糊は低い糊化度を有していた。また、本発明の澱粉糊の糊化度は10年間保存して製造された古糊の糊化度40.3%より若干低いことも判明した。

0031

<実験3:重量平均分子量の測定>
実験1に記載の方法で調製した試料澱粉糊3gにメタノール70mlを加えよく分散させた後、ガラスフィルター濾過し、ガラスフィルター上に試料澱粉糊を回収した。回収した試料澱粉糊をさらに同量のメタノールで懸濁し濾過して洗浄する操作を2回繰り返し、次いで、エチルエーテル70mlで洗浄した。これを16時間、30℃で真空乾燥し、ガラス製乳鉢粉砕して、試料澱粉糊の脱水物約350mgを調製した。この試料澱粉糊の脱水物(固形物として2mg)にジメチルスルホキシド2mlを加え95℃で2時間加熱して、完全に溶解させた。この溶液を濾過した後、HPLCに供し、重量平均分子量を測定した。

0032

HPLC条件は、HPLC用カラム(商品名『TSK−GEL α−M』、東ソー株式会社製造)を2本連結して使用し、溶離液として5mMの硝酸ナトリウム含むジメチルスルホキシドを用いて温度40℃、流速1mlで溶出し、示差屈折計を用いて検出した。分子量標準試料としてプルラン(林原生物化学研究所製造)を用いてキャリブレーションして、重量平均分子量を求めた。対照として、実験1で調製した新糊、及び、古糊(株式会社岡墨光堂製造、10年保存品、水分約87質量%)を用いて、上記と同様に脱水物を調製し重量平均分子量を測定した。これらの結果を表2に示す。

0033

0034

表2の結果から明らかなように、本発明の澱粉糊の重量平均分子量は3.1×104ダルトンであり、対照の新糊の103×104ダルトンと比べ、約1/30以下の低い数値であることが判明し、本発明の澱粉糊が低分子澱粉であることがわかった。また、10年間保存して製造された古糊の3.0×104ダルトンと比較的に近似した分子量であることも判明した。

0035

<実験4:イソアミラーゼ消化物のゲル濾過カラムクロマトグラフィー
実験3に記載の方法で調製した試料澱粉糊の脱水物(固形物として30mg)に1M水酸化ナトリウム溶液1mlを加え攪拌して、完全に溶解させた後、1M塩酸1mlで中和し、さらに0.1M酢酸緩衝液(pH3.5)1mlを加え、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)3.5単位を添加して40℃で48時間反応してイソアミラーゼ消化を行った。消化後、これに1M水酸化ナトリウム溶液1mlを加えて溶解させ、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(GPC)に供した。GPCは、Toyopearl HW−55Sゲル(東ソー株式会社製造)を内径2.0cm、長さ100cmのガラス製カラムに充填し、0.2w/v%塩化ナトリウム−0.02M水酸化ナトリウム溶液で平衡化したものを用い、試料チャージした後、同溶液で温度25℃、流速0.3ml/分で溶出させ、溶出液を3mlずつフラクションコレクターで回収した。溶出液中の全糖量及び還元糖量は、グルコースを標準試料として、それぞれフェノール・硫酸法及びPark−Johnson変法で測定した。平均グルコース重合度は以下の式で算出した。

0036

0037

対照として、古糊(株式会社岡墨光堂製造、10年保存品、水分約87質量%)を用いて、実験3に記載の方法で脱水物を調製し、上記した方法でイソアミラーゼ消化してGPCを行い、各溶出フラクションの全糖量及び還元糖量を測定して平均グルコース重合度を求めた。本発明の澱粉糊及び対照の古糊について、イソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンと各溶出フラクションの平均グルコース重合度を、それぞれ図1及び図2に示す。

0038

図1の結果から明らかなように、本発明の澱粉糊のイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンは、平均グルコース重合度約100付近主ピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示すことが判明した。一方、対照の古糊のイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンは、平均グルコース重合度約200付近のピークと平均グルコース重合度約17付近のピークを示すことが判明した。これらの結果から、本発明の澱粉糊を構成している糖質は、平均グルコース重合度約100付近の比較的長い単位鎖長を有するものが主成分であり、それより短い単位鎖長を有するものは比較的に少ないことがわかった。一方、古糊を構成している糖質の単位鎖長は、平均グルコース重合度約200付近の比較的長い単位鎖長を有するものと、平均グルコース重合度約17付近の比較的短い単位鎖長を有するものの2つの成分があることがわかり、本発明の澱粉糊と対照の古糊とでは、澱粉の分岐構造を形成する単位鎖長に違いがあることが判明した。

0039

<実験5:接着性試験
接着性の試験には、高知県立紙業技術センター製造のパルプ紙(40g/m2)、岐阜県在住の太田弥八郎氏製造の美濃紙(紙)、奈良県在住の文化財保存選定技術者の上窪正一氏製造の美栖紙(炭酸カルシウム入り楮紙)、奈良県在住の文化財保存選定技術者の福西弘行氏製造の宇陀紙(白土入り楮紙)を用い、接着の組み合わせとして、パルプ紙とパルプ紙、美濃紙と美濃紙、美栖紙と宇陀紙の3つの組み合わせで接着性の試験を行った。

0040

実験1に記載の方法で調製した試料澱粉糊を水で質量比4倍に希釈し、撫で刷毛又は打ち刷毛の手法を用いて、上記組み合わせで接着した。接着したサンプルを、両端を含めず、幅30mm、長さ200mmに裁断し、相対湿度約100%に調整したデシケーター内に一晩静置した後、端から5cmを引き剥がし、島津万能試験機オートグラフAGS−Gを用いて接着強度を測定した。測定は、荷重速度50mm/分、剥離長さ100mm、温度25℃、相対湿度80%で5回測定しその平均値を接着強度とした。

0041

対照として、実験1で調製した新糊、及び、古糊(株式会社岡墨光堂製造、10年保存品、水分約87質量%)を用いて、同様に接着強度を測定した。撫で刷毛及び打ち刷毛の手法を用いた場合の結果をそれぞれ表3及び表4に示す。

0042

0043

0044

表3の結果から明らかなように、撫で刷毛の手法では、本発明の澱粉糊は、洋紙のパルプ紙とパルプ紙、及び、和紙の美濃紙と美濃紙、美栖紙と宇陀紙との接着において、それぞれ505mN、337mN、340mNのほぼ同程度の安定した接着強度を示した。一方、対照の新糊は、いずれも約3倍の強い接着強度を示した。また、古糊は、洋紙のパルプ紙とパルプ紙との接着では、本発明の澱粉糊より強い接着強度を示し、和紙と和紙との接着では、本発明の澱粉糊より弱い接着強度を示すことが判明した。

0045

表4の結果から明らかなように、打ち刷毛の手法によっても、本発明の澱粉糊は、洋紙のパルプ紙とパルプ紙、及び、和紙の美濃紙と美濃紙、美栖紙と宇陀紙との接着において、それぞれ499mN、623mN、480mNのほぼ同程度の安定した接着強度を示した。一方、対照の新糊は、いずれも約2〜3倍の強い接着強度を示した。また、本発明の澱粉糊と古糊は、和紙と和紙との接着において、撫で刷毛よりも打ち刷毛の手法を用いたほうが接着力が強かった。以上の結果から、本発明の澱粉糊は、古糊と同様に、洋紙、和紙に関わらず安定した低接着性を有する澱粉糊であることがわかった。

0046

<実験6:剥離試験
ペーパータオル(商品名『クリネックハンドタオルハードタイプ』、株式会社クレシア販売)を縦105cm、横225cmに裁断し、実験1に記載の方法で調製した試料澱粉糊を半面に薄く塗布し、折り曲げてもう半面と接着させ、手で軽く押し付けた後、温度25℃、相対湿度60%で調整したデシケーター内に24時間静置し接着させた。この接着した紙をガラス板上に置き、その片面全体に水を充分吸収するまで霧吹き噴霧した後、両手で緩やかに接着面を引き剥がし、剥離後の接着面の状態を肉眼で観察した。

0047

対照として、実験1で調製した新糊、及び、古糊(株式会社岡墨光堂製造、10年保存品、水分約87質量%)を用いて、同様に剥離試験を行った。これらの結果を表5にまとめた。

0048

0049

表5の結果から明らかなように、本発明の澱粉糊は、接着した後に水で剥がす際、接着した紙を傷めることなく剥がすことができることが判明し、古糊と同様に、修復性が良好な澱粉糊であることがわかった。

0050

<実験7:α−アミラーゼ作用量の検討>
澱粉糊用小麦澱粉(商品名『クリーニング用デラックス生糊』、中村製糊株式会社販売、水分42.2質量%)100gに水370gを加えよく攪拌しながら加熱し糊状にした。さらに、オートクレーブ内で約100℃、30分間保持し、完全に糊化した。この糊化した澱粉を室温約5℃の冷蔵室中で2日間冷蔵した後、4つの200ml容ガラス製ビーカーに100gずつ採り、α−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を澱粉固形物1グラム当りそれぞれ2単位、8単位、32単位、128単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室に入れ、14日間冷蔵した。続いて、これらそれぞれに、約5℃の冷水を約100ml加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿を回収し、再度、同様に洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)し、沈殿を回収し、水分約85乃至88質量%の試料澱粉糊をそれぞれ約64.6g、約40.3g、約33.2g及び約29.3g調製した。それぞれ調製した澱粉糊について、実験2に記載の方法で糊化度を、実験3に記載の方法で重量平均分子量を測定し、実験6に記載の方法で剥離試験を行った。これらの結果を表6にまとめた。

0051

0052

表6の結果から明らかなように、酵素作用量を増加させるとともに、澱粉糊の糊化度と重量平均分子量とも低下することがわかり、剥離性を調べたところ、酵素作用量が固形分1グラム当り32単位及び128単位で作用させ調製した糊化度が36.1%及び32.1%で、重量平均分子量が40,200ダルトン及び31,000ダルトンの澱粉糊が良好な剥離性を示すことが判明した。

0053

<実験例8:α−アミラーゼ作用時間の検討>
澱粉糊用小麦澱粉(商品名『クリーニング用デラックス生糊』、中村製糊株式会社販売、水分42.2質量%)100gに水370gを加えよく攪拌しながら加熱し糊状にした。さらに、オートクレーブ内で約100℃、30分間保持し、完全に糊化した。この糊化した澱粉を室温約5℃の冷蔵室中で2日間冷蔵した後、4つの200ml容ガラス製ビーカーに100gずつ採り、α−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を澱粉固形物1グラム当り32単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室に入れ、それぞれ3、6、14、及び30日間冷蔵した。続いて、これらそれぞれに、約5℃の冷水を約100ml加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿を回収し、再度、同様に洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)し、沈殿を回収し、水分約87質量%の試料澱粉糊をそれぞれ約34.0g、約34.2g、約33.2g、及び約34.1g調製した。それぞれ調製した澱粉糊について、実験2に記載の方法で糊化度を、実験3に記載の方法で重量平均分子量を測定し、実験6に記載の方法で剥離試験を行った。これらの結果を表7にまとめた。

0054

0055

表7の結果から明らかなように、酵素作用時間を増加させるとともに、澱粉糊の糊化度は約42%から約34%へ僅かに低下する傾向を示した。一方、重量平均分子量は約36,000ダルトンから約40,000ダルトンの範囲でほぼ同じ数値を示すことがわかり、剥離性を調べたところ、いずれの酵素作用時間で作用させ調製した澱粉糊とも良好な剥離性を示すことが判明した。

0056

<実験9:デンプン種の検討>
小麦澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉(いずれも、和光純薬工業株式会社販売)それぞれ100gに、予め乳酸でpHを3.8に調整した水400gを加えよく攪拌しながら加熱し糊状にした。さらに、オートクレーブ内で約105℃、60分間保持し、完全に糊化した。この糊化した澱粉を室温約5℃の冷蔵室中で2日間冷蔵した後、α−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を澱粉固形物1グラム当り16単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室に入れ、7日間冷蔵した。続いて、これらそれぞれに、約5℃の冷水を約1,000ml加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿を回収し、再度、同様に洗浄した後、遠心分離(8000rpm、30分間)し、沈殿を回収し、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、及びサツマイモ澱粉からそれぞれ約225g、約276g、約217g、及び約312gの澱粉糊を調製した。それぞれ調製した澱粉糊について、実験2に記載の方法で糊化度を、実験3に記載の方法で重量平均分子量を測定し、実験6に記載の方法で剥離試験を行った。これらの結果を表8にまとめた。

0057

0058

表8の結果から明らかなように、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、及びサツマイモ澱粉のいずれの澱粉からも、澱粉糊の糊化度が50%未満の澱粉糊が調製することができ、それらの重量平均分子量も約23,200ダルトンから約26,900ダルトンの範囲でほぼ同じ数値を示すことがわかり、剥離性を調べたところ、いずれの澱粉糊とも良好な剥離性を示すことが判明した。

0059

ステンレス製容器に小麦澱粉(和光純薬工業株式会社販売)2質量部と水5質量部を入れよく混合し、それを1M塩酸水溶液でpH3.8に調整した後、ガスコンロ上で攪拌しながら約30分間加熱し、澱粉を糊状にした。直ちに、糊状になった澱粉の入った容器アルミホイルで蓋し、予め100℃に予熱していたオートクレーブに入れ、100℃で60分間保持し完全に澱粉を糊化した。続いて、糊化した澱粉の入った容器を室温約5℃の冷蔵室に入れ、2日間冷蔵した。この冷蔵した糊化澱粉にα−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を糊化澱粉物1グラム当り16単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室に入れ、2週間冷蔵し、澱粉の老化と低分子化を行った。続いて、これに、予め塩酸でpHを3.5に調整した冷水(5℃)を糊化澱粉物とほぼ同じ質量部加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿を回収し、再度、冷水(5℃)で同様に洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)して沈殿を回収し、水分87.8質量%の澱粉糊を原料の小麦澱粉質量当り約157%の回収率で製造した。得られた澱粉糊製品は、その糊化度が約22.4%であり、その重量平均分子量が約23,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンが平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示した。本品は、低接着性であるとともに、和紙や洋紙に対して安定な接着性を示す良質な澱粉糊である。

0060

実施例1の方法で調製した澱粉糊を、予め、約−80℃に冷却しておいた冷エタノールを用いて急速に冷却し、凍結真空乾燥機(FD−81、東京理化器械株式会社)で凍結真空乾燥し、水分約3%の澱粉糊粉末を約14%の回収率で製造した。得られた澱粉糊粉末製品は、その糊化度が約22.4%であり、その重量平均分子量が約23,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンが平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示すとともに、微生物による腐敗も少なく、長期の保存に対して安定性が高い。また、澱粉糊粉末製品約15質量部に水約85質量部を加え攪拌することで、容易に凍結真空乾燥前の澱粉糊に復元することができ、その復元された澱粉糊は、低接着性であるとともに、和紙や洋紙に対して安定な接着性を示す良質な澱粉糊である。

0061

ステンレス製容器にとうもろこし澱粉(和光純薬工業株式会社販売)2質量部と水5質量部を入れよく混合し、それを1M酢酸水溶液でpH3.8に調整した後、ガスコンロ上で攪拌しながら約30分間加熱し、澱粉を糊状にした。直ちに、糊状になった澱粉の入った容器をアルミホイルで蓋し、予め100℃に予熱していたオートクレーブに入れ、100℃で60分間保持し完全に澱粉を糊化した。続いて、糊化した澱粉の入った容器を室温約5℃の冷蔵室に入れ、2日間冷蔵した。この冷蔵した糊化澱粉にα−アミラーゼ剤(商品名『ネオスピターゼPK−2』、ナガセ生化学工業株式会社製造)を糊化澱粉物1グラム当り16単位加え、よく攪拌した後、室温約5℃の冷蔵室に入れ、1週間冷蔵し、澱粉の老化と低分子化を行った。続いて、これに、乳酸1,200ppmと酢酸1,500ppmとを含む冷水(5℃、pH3.5)を糊化澱粉物とほぼ同じ質量部加え、よく懸濁し、洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)した。得られた沈殿を回収し、再度、同様に洗浄した後、遠心分離(8,000rpm、30分間)し、沈殿を回収し、水分85.1質量%の澱粉糊を原料のとうもろこし澱粉質量当り約279%の回収率で製造した。得られた澱粉糊製品は、その糊化度が約35.8%であり、その重量平均分子量が約27,000ダルトンであって、且つ、そのイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンが、平均グルコース重合度約100にピークを示し、平均グルコース重合度約50から約10にかけて緩やかなショルダーを示し、低接着性であるとともに、和紙や洋紙に対して安定な接着性を示す良質な澱粉糊である。

0062

以上、述べたように、本発明によれば、糊化度が低く低分子量であって、適度の低接着性を有し、パルプ紙などの洋紙から美濃紙などの和紙まで安定した接着性を示し、接着後の剥離性も良好な澱粉糊を得ることができる。本発明の澱粉糊は、古来より用いられてきた古糊と同様に伝統工芸品の修理・補修にも有用であって、また、化学成分を含まないことから毒性や環境汚染の懸念がない環境に優しい糊である。さらに、本発明の澱粉糊の製造方法によれば、環境に優しい澱粉糊を安定に提供することが可能となる。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。

図面の簡単な説明

0063

本発明の澱粉糊の、イソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンと各溶出フラクションの平均グルコース重合度を示す図である。
古糊のイソアミラーゼ消化物のゲル濾過クロマトグラフィーにおける溶出パターンと各溶出フラクションの平均グルコース重合度を示す図である。

符号の説明

0064

—:全糖量
…:平均グルコース重合度

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