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概要
背景
近年の半導体プロセスの微細化技術の急速な進歩によって、半導体集積回路の大規模化、複雑化が急激に進み、これに伴って半導体集積回路の検査がいっそう困難になっている。この問題に対処するため、半導体集積回路の検査を容易化する手段としてスキャン方式などによる検査容易化設計手法が普及し、縮退故障モデルで表される故障は効率的に検査できるようになった。縮退故障モデルで仮定された故障を検出する場合、故障検出の能力はクロック周波数に依存しないため、従来スキャンテストを実施する際には、一般的に実動作速度よりも低いクロック周波数を使って行われてきた。しかし、半導体プロセスの微細化の進行と共に、プロセスのばらつきが顕在化し、従来のスキャン方式を使った低いクロック周波数による検査だけでは十分に検査品質を保証することができなくなり、実動作時と同じクロック周波数を使った遅延故障検査技術のような、遅延を考慮した検査が必要とされるようになった。従来の遅延故障検査技術は「特開平9−269959号公報」などに開示されている。
特開平9−269959号公報
Angela Kristic, Kwang-Ting (Tim) Cheng ”Delay Fault Testing forVLSICircuits".(出版社:Kluwer Academic Publishers、出版日:1998年9月1日、77頁〜100頁)
概要
遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価することのできる遅延故障シミュレーション方法を提供する。 操作21において、定義された遷移故障1〜6の重みを算出する。次に、操作22において、故障検出率の分母を、遷移故障1〜6の重みの総和として計算する。次に、操作23において故障シミュレーション操作を行う。次に、操作24では、遷移故障1〜6の検出時の重みの総和を計算する。次に、操作25では、操作22の結果と操作24の結果を用いて故障検出率を計算する。以上のようにして、遅延故障用の検査系列の品質を評価する際に、各遅延故障について、その遅延故障が故障シミュレーションによって検出された際の信号経路上の遅延値を重み付けすることによって、遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価する。
目的
本発明はこのような問題を解決するために、遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価することのできる遅延故障シミュレーション方法を提供することを目的とする。
効果
実績
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請求項1
検査系列を用いて、定義された遅延故障に対する故障検出率を算出する遅延故障シミュレーション方法であって、故障シミュレーション手段と、定義された各々の遅延故障について第1の重みを計算する第1の重み付け手段と、前記故障シミュレーション手段によって前記遅延故障が検出された際に検出された前記遅延故障について第2の重みを計算する第2の重み付け手段と、定義された遅延故障の第1の重みの総量に対する、検出された前記遅延故障の第2の重みの総量の割合を故障検出率として計算する故障検出率計算手段とを備えた遅延故障シミュレーション方法。
請求項2
請求項3
請求項4
前記第1の重み付け手段は、前記遅延故障の定義箇所を通る検査可能な最大遅延量をもつ信号経路を選択する最長信号経路選択手段を備える請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項5
請求項6
前記遅延量は、設計上の遅延値である請求項2、3、4または5記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項7
前記遅延量は、ゲート段数である請求項2、3、4または5記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項8
前記遅延量は、単位遅延である請求項2、3、4または5記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項9
前記遅延量は、ビアコンタクト数である請求項2、3、4または5記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項10
前記故障シミュレーション手段は、前記遅延故障を検出するための検査系列を生成する検査系列生成手段を備え、前記検査系列生成手段で生成された検査系列を用いて故障シミュレーションを実行する請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項11
前記検査系列生成手段は、前記遅延故障の定義箇所を通る検査可能な最大遅延量をもつ信号経路を選択する最長信号経路選択手段を備え、前記第1の重み付け手段は、各々の前記遅延故障に対して、前記最長信号経路選択手段によって選択された信号経路が変化した場合、最後に選択された信号経路の遅延量を用いる請求項10記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項12
前記第2の重み付け手段は、前記故障シミュレーション手段において同一の遅延故障が複数回検出された場合、前記遅延故障が検出された各信号経路のうち、最大の重みをもつ信号経路の重みを用いて重み付けを行う請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項13
前記第2の重み付け手段は、前記故障シミュレーション手段において同一の遅延故障が複数回検出された場合、前記遅延故障が最初に検出された信号経路の重みを用いて重み付けを行う請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項14
前記遅延故障は遷移故障である請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項15
前記遅延故障はセグメント遅延故障である請求項1記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項16
前記遅延量は、前記遅延故障の定義箇所を通る信号経路のタイミング設計上の要求値に対する、前記遅延故障の定義箇所を通る信号経路の設計上の遅延値の相対的な値である請求項2、3、4、または5記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項17
前記遅延故障の定義箇所を通る信号経路のタイミング設計上の要求値は、前記遅延故障の定義箇所を通る信号経路のクロックレートである請求項16記載の遅延故障シミュレーション方法。
請求項18
技術分野
背景技術
0002
近年の半導体プロセスの微細化技術の急速な進歩によって、半導体集積回路の大規模化、複雑化が急激に進み、これに伴って半導体集積回路の検査がいっそう困難になっている。この問題に対処するため、半導体集積回路の検査を容易化する手段としてスキャン方式などによる検査容易化設計手法が普及し、縮退故障モデルで表される故障は効率的に検査できるようになった。縮退故障モデルで仮定された故障を検出する場合、故障検出の能力はクロック周波数に依存しないため、従来スキャンテストを実施する際には、一般的に実動作速度よりも低いクロック周波数を使って行われてきた。しかし、半導体プロセスの微細化の進行と共に、プロセスのばらつきが顕在化し、従来のスキャン方式を使った低いクロック周波数による検査だけでは十分に検査品質を保証することができなくなり、実動作時と同じクロック周波数を使った遅延故障検査技術のような、遅延を考慮した検査が必要とされるようになった。従来の遅延故障検査技術は「特開平9−269959号公報」などに開示されている。
特開平9−269959号公報
Angela Kristic, Kwang-Ting (Tim) Cheng ”Delay Fault Testing forVLSICircuits".(出版社:Kluwer Academic Publishers、出版日:1998年9月1日、77頁〜100頁)
発明が解決しようとする課題
0003
従来は、定義された遅延故障に対する故障シミュレーションで検出された遅延故障の故障検出率を次のような計算式で算出していた。
故障検出率=検出された遅延故障数/定義された全遅延故障数×100[%](式1)
しかしながら、従来用いていた故障検出率では、どの遅延故障も重要度が等しいと見なされるため、(式1)の故障検出率は検査系列の実際の故障検査に対する品質を十分に反映できていない、という問題があった。この問題を図を用いて具体的に説明する。
0005
図12は、2つの信号経路(1,2)の故障検査品質の違いを説明するための半導体集積回路の回路図である。符号FF1〜FF10はフリップフロップを示し、符号G1〜G6はANDゲートを示し、符号n1〜n15は信号線を示す。信号線n1〜n15の傍に示した2nsなどの値は、それぞれの信号線の遅延値を示す。またANDゲートG1〜G6はすべて同一の内部遅延値1nsを持つものとする。さらには、フリップフロップFF1〜FF10はスキャン設計(図示していない)を施されており、遷移故障の検査はスキャン操作を用いて行うものとする。
0006
図13は、ある半導体集積回路上に定義した遷移故障の特徴を示すための図である。与えられた検査系列1〜3それぞれにおいて、遷移故障1〜6(検査系列2では遷移故障1、2、4のみ)が検出される。遷移故障1〜6の右側に示した矢印の長さと、その近傍に示した値は、各検査系列において各遷移故障が故障シミュレーションで検出された際の遷移が伝搬する信号経路の設計上の遅延値を示す。また太線の矢印は、検査系列1〜3において最大遅延値を持つ信号経路で故障が検出された際の遅延値を示す。また図の右側の点線は半導体集積回路の1クロックレートの値を表す。
0008
図12において、信号線n4に遷移故障を定義したものと仮定する。一般に、遷移故障を定義する箇所としては、主に信号線とゲートの端子の場合があるが、ここでは、信号線に対して遷移故障を定義する場合を取り上げて説明を行う。従来、遷移故障を検出する場合において、どの信号経路上で検出するかは区別しない。すなわち、FF4→n10→G3→n4→G4→n14→FF8(信号経路1とする)の信号経路上に遷移を伝搬させてFF8で(スキャン操作により)観測してもよいし、またFF2→n8→G1→n2→G2→n3→G3→n4→G4→n5→G5→n6→G6→n7→FF10(信号経路2とする)の信号経路上に遷移を伝搬させてフリップフロップFF10で(スキャン操作により)観測してもよく、いずれの信号経路で故障が検出されても定義した遷移故障が検出されたことには変わりなく、したがって故障検出率も同等である。
0009
一方、信号経路1の遅延値は6nsであり、信号経路2の遅延値は17nsである。一般に、信号経路の設計上の遅延値が大きいほど(1クロックレートに近いほど)、この信号経路が遅延故障を生じる可能性が大きい。言い換えると、遷移が伝搬する信号経路の設計上の遅延値が大きいほど、遅延故障を検出できる可能性が大きい。したがって、従来の故障検出率算出方法では、遷移故障が信号経路1で検出された場合と、信号経路2で検出された場合とで全く同じ故障検出率となるため、故障検出率が検査系列の故障検査品質を正しく反映していない。
0010
次に図13において、検査系列1〜3において、遷移故障1〜6が検出された信号経路の最大遅延値を比較すると、遷移故障1の7nsに対して、遷移故障6は2nsであり、故障を検出する可能性は遷移故障1の方が遷移故障6よりも高いことは明らかである。しかし、従来は遷移故障1が1個検出された場合と遷移故障6が1個検出された場合の故障検出率は等しく、故障検出率が検査系列の故障検出品質を正しく反映していない。
0011
さらには、もし定義された遷移故障が遷移故障1〜6の6個であった場合、検査系列1で故障シミュレーションを行った時点ですべての故障が検出されて、故障検出率は100%となり、続いて検査系列2、3を故障シミュレーションしても故障検出率の変化はない。しかし実際には、検査系列2、3によって遷移故障1、3、4はより長い信号経路で故障検出が行われるため、検査系列1のみを使用するよりも、さらに検査系列2、3を追加した方が故障検査品質がより向上するのは明らかである。
0012
したがって、従来の故障検出率算出方法では、故障検出率が検査系列の故障検査品質を正しく反映していないという問題があった。
0013
本発明はこのような問題を解決するために、遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価することのできる遅延故障シミュレーション方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0014
上記課題を解決するために、本発明の故障シミュレーション方法では、各遅延故障に対して、故障が検出された際の信号経路による故障検出能力の差を重みとして加えて故障検出率を計算する。故障検出能力としては、例えば、信号経路上の設計上の遅延値が考えられる。
0015
このように、遅延故障用の検査系列の品質を評価する際に、故障検出能力を考慮することによって、例えば遅延故障が検出される際の信号経路上の設計上の遅延値を考慮することによって、遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価することができるものである。
0016
すわなち、本発明の故障シミュレーション方法は、検査系列を用いて、定義された遅延故障に対する故障検出率を算出する遅延故障シミュレーション方法であり、故障シミュレーション手段と、定義された各々の遅延故障について第1の重みを計算する第1の重み付け手段と、故障シミュレーション手段によって遅延故障が検出された際に検出された遅延故障について第2の重みを計算する第2の重み付け手段と、定義された遅延故障の第1の重みの総量に対する、検出された遅延故障の第2の重みの総量の割合を故障検出率として計算する故障検出率計算手段とを備えている。
0017
この方法によれば、故障が検出された際の信号経路による故障検出能力の差を重みとして加えて故障検出率を計算するので、遅延故障検査系列の品質をより高精度に評価することができる。
0018
上記の第1の重みとしては、遅延故障の定義箇所を通る信号経路のうち、遅延量が最大である信号経路の遅延量を用いることが好ましい。また、上記の第1の重みとしては、遅延故障の定義箇所を通る検査可能な最大遅延量をもつ信号経路の遅延値を用いてもよい。
0019
上記第1の重み付け手段は、遅延故障の定義箇所を通る検査可能な最大遅延量をもつ信号経路を選択する最長信号経路選択手段を備えることが好ましい。
0020
また、第2の重みは、遅延故障の定義箇所を通る信号経路のうち、遅延故障が実際に検出された際に、遷移が伝搬した信号経路の遅延量を用いることが好ましい。
0021
また、信号経路の遅延量としては、例えば設計上の遅延値が使用される。なお、信号経路の遅延量としては、ゲート段数を使用してもよいし、単位遅延を使用してもよく、さらにビアコンタクト数であってもよい。
0022
上記の故障シミュレーション手段は、遅延故障を検出するための検査系列を生成する検査系列生成手段を備え、検査系列生成手段で生成された検査系列を用いて故障シミュレーションを実行することが好ましい。
0023
上記の検査系列生成手段は、遅延故障の定義箇所を通る検査可能な最大遅延量をもつ信号経路を選択する最長信号経路選択手段を備え、第1の重み付け手段は、各々の遅延故障に対して、最長信号経路選択手段によって選択された信号経路が変化した場合、最後に選択された信号経路の遅延量を用いることが好ましい。
0024
また、上記の第2の重み付け手段は、故障シミュレーション手段において同一の遅延故障が複数回検出された場合、遅延故障が検出された各信号経路のうち、最大の重みをもつ信号経路の重みを用いて重み付けを行うことが好ましい。
0025
上記の第2の重み付け手段は、故障シミュレーション手段において同一の遅延故障が複数回検出された場合、遅延故障が最初に検出された信号経路の重みを用いて重み付けを行ってもよい。
0026
上記の遅延故障は例えば遷移故障、またはセグメント遅延故障である。
発明の効果
0027
本発明の故障シミュレーション方法は、各遅延故障が検出された信号経路上の重み(遅延値など)を考慮することによって、個々の遅延故障の重要度を故障検出率に反映させることができるため、遅延故障検査系列の品質評価の精度を高めることができる。さらに述べると、実際に故障を発生する可能性が大きい遅延故障ほど故障検出率への影響度合いを大きくすることができる。すなわち、そのような故障が検出された場合には故障検出率向上の度合いが大きく、逆に検出されない場合の故障検出率低下の度合いも大きくすることができる。
発明を実施するための最良の形態
0028
一般に使われている遅延故障のモデルとしては、主に遷移故障、セグメント遅延故障、パス遅延故障がある。このうち、遷移故障は特定の箇所で大きな遷移伝搬遅延が発生することによって遅延故障を生じる故障を表し、信号線またはゲートの端子に対して故障を定義する。
0029
パス遅延故障はフリップフロップの出力または外部入力を始点とし、フリップフロップの入力または外部出力を終点とする信号伝搬経路上に、微小な遷移伝搬遅延が複数箇所存在することによって遅延故障を生じる故障を表し、信号伝搬経路全体に対して故障を定義する。またパス遅延故障は特定の箇所で大きな遷移伝搬遅延が発生することによって遅延故障も同時に検出できるという特徴を持つ。
0030
セグメント遅延故障は両者の中間の特徴を持ち、信号伝搬経路の限られた一部の区間に微小な複数の遷移伝搬遅延が存在することによって遅延故障を生じる故障を表し、信号伝搬経路の一区間(連続する複数の信号線またはゲートの端子)に対して故障を定義する。またセグメント遅延故障は故障を定義した信号伝搬経路の一区間の特定の箇所で大きな遷移伝搬遅延が発生することによって遅延故障も同時に検出できるという特徴を持つ。
0031
本明細書では、このうち遷移故障を例にとり、故障定義を信号線に対して行うものとして説明を行うが、遷移故障の代りにセグメント遅延故障を用いても同様の効果が得られ、また遷移故障の故障定義箇所も信号線の代りにゲートの端子であっても操作に本質的な違いはなく同様の効果が得られる。
0032
図1は、本発明による故障シミュレーション方法における全体のデータの流れを示すフローチャートである。図1において、符号1は検査対象となる半導体集積回路の接続情報(ネットリスト)などからなる論理回路データを示し、符号2はレイアウトツールなどから出力される物理設計後の半導体集積回路内の設計上の遅延値である遅延情報を示し、符号3は故障シミュレーション対象となる遅延故障の故障リストを示し、符号4は故障シミュレーションに用いる検査系列集合を示し、符号5は故障シミュレーション全体操作を示し、符号6は故障シミュレーション全体操作の結果、出力される故障検出率を示す。
0034
一般に1個の遅延故障を検査する場合、概念的には初期検査系列と遷移検査系列の連続する2つの検査系列からなる連続する2時刻分の検査系列を用いて検査を行う。スキャン設計が施された半導体集積回路にこの2時刻分の検査系列を適用する場合、スキャン操作を用いて2つの検査系列を半導体集積回路中の各フリップフロップへ与える際には、この2つの検査系列は同時に各フリップフリップへ与えられるため、実際には1つの検査系列と解釈することもできるが、いずれの解釈でも実質的な相違はないため、本明細書では、「1個の遅延故障を2時刻分の検査系列を用いて検査する」ものとする。
0035
なお、遅延情報2、遅延故障リスト3、検査系列4は、故障シミュレーション全体操作5の入力として必ずしも必須のものではなく、故障シミュレーション全体操作5の中で新たに生成してもよい。例えば遅延情報2の物理設計後の詳細な遅延情報の代りに単位遅延(信号線、ゲート共に同一の最小遅延値を設定)を用いてもよく、また遅延故障リスト3を与える代りに、全信号線に対して故障定義を行ってもよい。また故障シミュレーション全体操作5の中に検査系列生成操作を持つ場合には、検査系列4を与える代わりに、検査系列生成操作によって検査系列を生成してもよい。
0036
図2は、故障シミュレーション全体操作5のより詳細を示すフローチャートである。符号21は各定義故障の重みを算出する操作を示し、符号22は故障検出率の分母の値を計算する操作を示し、符号23は定義された遷移故障に対して故障シミュレーションを行う操作を示し、符号24は故障シミュレーション23によって検出された故障について、故障が検出された信号伝搬経路の遅延値を用いて重みを算出する操作を示し、符号25は故障検出率を計算する操作を示す。
0037
操作22では、各定義故障の重みの総和を故障検出率の分母として計算し、操作25では、故障検出率を以下の計算式を使って計算するものとする。
{(検出故障の重みの総和)/(定義故障の重みの総和)}×100[%] (式2)
図3は、各定義故障の重みを算出する操作21のより詳細を示すフローチャートである。符号31は与えられた定義故障について未処理の故障の有無の判定を示し、符号32は未処理の定義故障のうちの1個を選択する操作を示し、符号33は選択した故障の定義箇所を通る最長信号経路を選択する操作を示し、符号34は選択された最長信号経路の変数Dfに格納された遅延値を選択された定義故障に対する重みとして決定する操作を示す。操作33における最長信号経路の「最長」とは最大の遅延値をもつことを意味する。また操作33では、選択された最長信号経路の遅延値を選択された定義故障に対する変数Dfに書き込む操作も行う。
0038
操作33において、最長信号経路は、遅延情報2によって各信号線、各ゲートの詳細な遅延値がすべて与えられるため、最も大きな遅延値をもつ信号経路を選択することができる。この操作は、一般的な静的タイミング解析ツールによる解析結果を用いて実現してもよいし、または手作業または自動化されたプログラムによって選択してもよい。
0039
図6は、遷移故障シミュレーション操作23のより詳細を示すフローチャートである。符号61は故障が検出された信号経路を検出経路と定義した場合に、各定義故障に対して設けられた、故障検出時の検出経路の遅延値を格納するための変数である検出経路遅延値の変数Ddfを初期化する操作を示し、符号62は未処理の検査系列があるかどうかの判定を示し、符号63は未処理の検査系列を使って故障シミュレーションする操作を示し、符号64は故障シミュレーションにより検出された故障があるかどうかの判定を示し、符号65は検出故障のうち未処理の故障があるかどうかの判定を示し、符号66は未処理の検出故障を1個選択する操作を示し、符号67は検出経路の遅延値が変数Ddfに格納されている値より大きいかどうかの判定を示し、符号68は検出経路の遅延値を使って変数Ddfを更新する操作を示し、符号69は各検出故障に対して、変数Ddfに格納されている遅延値を用いて重み付けする操作を示す。
0040
図8は、遅延故障リスト3で与えられた遷移故障1〜6の定義箇所である信号線を通る最長信号経路の遅延値を示す。各遷移故障1〜6の右側に示された矢印の長さと値は、各々の遷移故障を通る最長信号経路の遅延値を表す。
0041
図10は、遷移故障1〜6の定義箇所である信号線を通る信号経路のうちの、実際に検査可能な信号経路のうち、最長の信号経路(検査可能最長信号経路と定義)の遅延値を示す。各遷移故障1〜6の右側に示された矢印の長さと値は、各々の遷移故障を通る検査可能最長信号経路の遅延値を表す。
0042
図14は、遅延故障リスト3で与えられた遷移故障1〜6の定義箇所である信号線を通る最長信号経路の遅延値を示したものであり、図中の図8と一致する記号は図8と同じものを示す。また図中の3本の点線は遷移故障1、3、4、5を通る信号経路に対するクロックレート(10ns)、遷移故障2を通る信号経路に対するクロックレート(2ns)、遷移故障6を通る信号経路に対するクロックレート(5ns)の3種類のクロックレートのそれぞれの値を表す。なお、遷移故障2を通る最長信号経路は4マルチサイクルパスであり、そのタイミング設計上の要求値は2ns×4=8nsとなる。
0043
図15は、半導体集積回路上に定義した遷移故障の特徴を示すための図であり、図中の図13と一致する記号は図13と同じものを示す。また図中の3本の点線は遷移故障1、3、4、5を通る信号経路に対するクロックレート(10ns)、遷移故障2を通る信号経路に対するクロックレート(2ns)、遷移故障6を通る信号経路に対するクロックレート(5ns)の3種類のクロックレートのそれぞれの値を表す。なお、遷移故障2を通る最長信号経路は図14と同じく4マルチサイクルパスであり、そのタイミング設計上の要求値は2ns×4=8nsである。
0045
まず与えられた論理回路データ1、遅延情報2、遅延故障リスト3(遷移故障1〜6を格納)、検査系列集合4を使って故障シミュレーション全体操作5を実行する。故障シミュレーション全体操作5では、まず操作21において、定義された遷移故障1〜6の重みを算出する。より詳細には、まず操作31において、遷移故障1〜6はすべて未処理なので操作32へ進み、遷移故障1を選択する。次に操作33では、遷移故障1の最長信号経路を選択する。同様に遷移故障2〜6について操作31〜操作33を繰返し、その結果、図8に示すような信号経路の選択が行われたものとする。次に操作31において、未処理の故障がなくなると操作34へ進む。ここでは、図8に示すように、遷移故障1〜6の最長信号経路の遅延値が、それぞれ9ns、8ns、10ns、9ns、7ns、5nsであるので、これらの遅延値を遷移故障1〜6の重みとして、遷移故障1〜6のそれぞれの変数Dfに格納する。
0046
次に操作22において、故障検出率の分母を、遷移故障1〜6の重みの総和として計算する。すなわち、9ns+8ns+10ns+9ns+7ns+5ns=48nsとなる。
0047
次に操作23において故障シミュレーション操作を行う。より詳細には、まず操作61において、定義された遷移故障1〜6についてそれぞれの検出経路遅延値の変数Ddfを0nsに初期化する。次に操作62では、検査系列1〜3が未処理なので、操作63で検査系列1を用いて故障シミュレーションを実行する。この結果、図13に示すように遷移故障1〜6が検出されたものとする。次に操作65では、遷移故障1〜6がすべて未処理なので、操作66において遷移故障1を選択する。操作67では、図13より遷移故障1の検出経路の遅延値は4nsであり、一方変数Ddfは0nsであるので、次に操作68において、変数Ddfを4nsに更新する。遷移故障2〜6について、同様に操作65〜68を繰返し、遷移故障1〜6の変数Ddfはそれぞれ4ns、7ns、6ns、3ns、7ns、2nsとなる。なお、図13には図示されていないが、もし1つの検査系列において同一の遷移故障が複数の信号経路で検出された場合は、そのうちの最長の信号経路を処理対象とするものとする。次に操作65では、未処理の故障がないので操作62に進む。ここでは検査系列2、3が未処理なので、次に操作63では検査系列2を用いて故障シミュレーションを実行する。この結果、図13に示すように遷移故障1、2、4が検出されたものとする。次に操作65では、遷移故障1、2、4が未処理なので、操作66において遷移故障1を選択する。操作67では、図13より遷移故障1の検出経路の遅延値は7nsであり、一方変数Ddfは4nsであるので、次に操作68において、変数Ddfを7nsに更新する。続いて操作65では、遷移故障2、4が未処理なので、操作66において遷移故障2を選択する。操作67では、図13より遷移故障2の検出経路の遅延値は3nsであり、一方変数Ddfは7nsであるので、操作65へ進む。続いて操作65では、遷移故障4が未処理なので、操作66において遷移故障4を選択する。操作67では、図13より遷移故障4の検出経路の遅延値は1nsであり、一方変数Ddfは3nsであるので、操作65へ進む。次に操作65では、未処理の故障がないので操作62に進む。ここでは検査系列3が未処理なので、次に操作63では検査系列3を用いて故障シミュレーションを実行する。この結果、図13に示すように遷移故障1〜6が検出されたものとする。次に遷移故障1〜6について、同様に操作65〜68を繰返し、その結果、遷移故障3、4の変数Ddfがそれぞれ9ns、5nsに更新される。次に操作62では、未処理の検査系列がないので、最後に操作69へ進む。ここでは遷移故障1〜6の変数Ddfに格納されている、それぞれ7ns、7ns、9ns、5ns、7ns、2nsを、遷移故障1〜6の検出時の重みとする。
0048
引き続いて操作24では、遷移故障1〜6の検出時の重みの総和を計算し、その結果、7ns+7ns+9ns+5ns+7ns+2ns=37nsとなる。最後に操作25では、操作22の結果と操作24の結果を用いて故障検出率を計算する。故障検出率は、(式2)に基づいて、(37ns/48ns)×100[%]= 77.1%となり、その結果が故障検出率6として出力される。
0049
この結果を従来技術と比較すると、従来技術では図13より、検査系列1で故障シミュレーションを行った段階で遷移故障1〜6がすべて検出されているため、(式1)より既に故障検出率は100%である。しかし図10と図13の比較により、検査系列1〜3で検出された遷移故障1〜6の検出経路の遅延値は、遷移故障5を除いて、検査可能最長信号経路の遅延値よりも小さい。したがって、従来技術では実際よりも高い故障検出率が出力されるために、検査品質を実際より高く評価してしまうのに対し、本発明の故障シミュレーション方法で算出した故障検出率は、遷移故障の検出される検出経路の潜在的な最大遅延値に対する、実際の検出経路の遅延値の割合を使って故障検出率を計算するため、より精度の高い故障検出率を出力できる。
0050
なお、操作23の詳細である図6の方法の代りに、各遷移故障について故障シミュレーションにおいて最初に検出された際の検出経路の遅延値を重みとして用い、検出された故障を故障シミュレーション対象から除外すれば、故障シミュレーションの処理を高速化できるという利点が得られる。
0051
また、上述の例では、重みとして設計上の遅延値を用いて説明を行ったが、タイミング設計上の要求値に対する、信号経路の設計上の遅延値の相対的な値を用いてもよい。一例として、クロックレート(10ns)に対する各設計上の遅延値の比を用いることにより、分母の計算において、9ns/10ns+8ns/10ns+10ns/10ns+9ns/10ns+7ns/10ns+5ns/10ns=0.9+0.8+1+0.9+0.7+0.5=4.8となる。一方、分子の計算においては、同様に0.7+0.7+0.9+0.5+0.7+0.2=3.7となる。以上の結果から故障検出率は(式2)に基いて、(3.7/4.8)×100[%]= 77.1%と計算され、上述の例と同じ結果が得られる。
0052
また、図8、図13の代わりにそれぞれ図14、図15を用いて、各遷移故障毎にタイミング要求値が異なる場合の例を説明すると、遷移故障1、3、4、5の重みの計算方法は、図8、図13の場合において、信号経路の設計上の遅延値の相対的な値を用いて計算した上記の例と同一である。遷移故障2の場合、タイミング設計上の要求値は8nsであるので、図14より故障検出率の分母の重みは、8ns/8ns=1である。また遷移故障6の場合、タイミング設計上の要求値は5nsであるので、図14より故障検出率の分母の重みは、5ns/5ns=1である。したがって、故障検出率の分母の値は、9ns/10ns+8ns/8ns+10ns/10ns+9ns/10ns+7ns/10ns+5ns/5ns=0.9+1+1+0.9+0.7+1=5.5となる。同様に遷移故障2、6の分子の重みは図15より、7ns/8ns=0.875、2ns/5ns=0.4となるため、故障検出率の分子の値は、0.7+0.875+0.9+0.5+0.7+0.4=4.075となる。以上から故障検出率は(式2)に基いて、(4.075/5.5)×100[%]= 74.1%と計算され、各遷移故障毎に異なるタイミング要求値に応じた故障検出率を算出することができる。
0053
図5は、操作21のより詳細を示す図3とは別の形態のフローチャートである。符号36は故障定義箇所を通る最長信号経路選択を行う操作を示し、符号37は選択された最長信号経路で検査系列生成が可能であるかどうかの判定を示し、符号38は他に未処理の信号経路があるかどうかの判定を示し、符号39は選択された故障を定義故障から取り除く操作を示す。その他の図3と同一の記号は、図3の一致する操作を同じものを示す。操作36では、最長信号経路選択を行う際に、処理済の信号経路がある場合、それを除いて未処理の信号経路中から最長の信号経路を選択するものとする。また操作37は、ここでは検査系列生成操作を行うことによって実施するものとする。
0055
まず与えられた論理回路データ1、遅延情報2、遅延故障リスト3(遷移故障1〜6を格納)、検査系列集合4を使って故障シミュレーション全体操作5を実行する。故障シミュレーション全体操作5では、まず操作21において、定義された遷移故障1〜6の重みを算出する。より詳細には、まず操作31において、遷移故障1〜6はすべて未処理なので操作32へ進み、遷移故障1を選択する。次に操作36では、まず図3の操作33と同様に遷移故障1の故障定義箇所を通る最長信号経路(9nsの遅延値をもつ)を選択する。次に操作37において選択された信号経路が検査系列生成可能かどうかを判定し、検査系列生成不能と判定されたとする。次に操作38に進みまだ選択していない信号経路があるかどうかを判定し、他にあるとする。続いて再度操作36を行い、まだ選択していない信号経路中から最長の信号経路(8nsの遅延値をもつ)を選択する。次に操作37において選択された信号経路が検査系列生成可能かどうかを判定し、検査系列生成可能と判定されたとする。次に操作31へ進み遷移故障2〜6について同様の操作を繰返し、各故障について図10に示すような信号経路が選択されたとする。以上の操作で選択された信号経路の遅延値は、遷移故障1〜6のそれぞれにおいて実際に故障検出できる信号経路の最大遅延値を示す。次に操作31において、未処理の故障がなくなると操作34へ進む。ここでは、図10に示すように、遷移故障1〜6の信号経路の遅延値が、それぞれ8ns、7ns、9ns、7ns、7ns、3nsであるので、これらの遅延値を遷移故障1〜6の重みとして、遷移故障1〜6のそれぞれの変数Dfに格納する。
0056
次に操作22において、故障検出率の分母を、遷移故障1〜6の重みの総和として計算する。すなわち、8ns+7ns+9ns+7ns+7ns+3ns=41nsとする。残りの操作は本発明を実施するための第1の最良の形態と同じであり、操作24では、遷移故障1〜6の検出時の重みの総和は37nsとなるため、操作25では、操作22の結果と操作24の結果を用いて故障検出率を計算する。故障検出率は、(式2)に基づいて、(37ns/41ns)×100[%]= 90.2%となり、その結果が故障検出率6として出力される。
0057
この結果を従来技術と比較すると、従来技術では図13より、検査系列1で故障シミュレーションを行った段階で遷移故障1〜6がすべて検出されているため、(式1)より既に故障検出率は100%である。しかし図10と図13との比較により、検査系列1〜3で検出された遷移故障1〜6の検出経路の遅延値は、遷移故障5を除いて、検査可能最長信号経路の遅延値よりも小さい。したがって、従来技術では実際よりも高い故障検出率が出力されるために、検査品質を実際より高く評価してしまうのに対し、本発明の故障シミュレーション方法で算出した故障検出率は、実際に遷移故障が検出可能な検出経路の最大遅延値に対する、実際の検出経路の遅延値の割合を使って故障検出率を計算するため、より精度の高い故障検出率を出力できる。
0058
また本発明を実施するための第1の最良の形態において、故障検出率の分母を計算する際に用いた最長信号経路は、図8と図10の比較で示されるように実際には検査不能であることがあるため、本発明を実施するための第1の最良の形態で算出された故障検出率は、どれだけ検査系列を与えても故障検出率が100%に到達しない場合がある、という意味で悲観的な故障検出率となるが、本発明を実施するための第2の最良の形態で算出される故障検出率は、理論的に100%まで達成可能なものであり、本発明を実施するための第1の最良の形態よりも、さらに精度が高いと言える。
0059
さらには、上述の例では、重みとして設計上の遅延値を用いて説明を行ったが、タイミング設計上の要求値に対する、信号経路の設計上の遅延値の相対的な値(例えばクロックレート10nsに対する各設計上の遅延値の比)を用いても同様の効果が得られることは明らかである。
0060
図4は、操作21のより詳細を示す図3、図5とは別の形態のフローチャートである。符号35は、故障定義箇所を通る検査可能準最長信号経路選択を行う操作を示し、その他の図3と同一の記号は、図3の一致する操作と同じものを示す。ここで、検査可能準最長信号経路選択とは、実際に検査系列生成操作を行わない簡易的な操作で図5における操作36〜38と類似の操作により、故障定義箇所を通る検査可能な最長信号経路選択を行うことを示す。この操作はより詳細には「A.Murakami, S.Kajihara, T.Sasao, I.pomeranz and S.M.Reddy, "Selection of Potentially Testable Path Delay Faults for Test generation," International Test Conf., pp.376-384, Oct.2000.」に示されている方法などを使用することで求められる。「準最長」と呼んでいるのは、操作35で選択した検査可能最長信号経路は、実際には検査不能な場合があるためであるが、前述の文献により多くの場合において、選択された検査可能準最長信号経路と実際の検査可能最長信号経路は一致することが証明されている。
0061
図9は、遷移故障1〜6の定義箇所である信号線を通る信号経路のうちの、操作35で選択した検査可能準最長信号経路の遅延値を示す。各遷移故障1〜6の右側に示された矢印の長さと値は、各々の遷移故障を通る検査可能準最長信号経路の遅延値を表す。
0063
まず与えられた論理回路データ1、遅延情報2、遅延故障リスト3(遷移故障1〜6を格納)、検査系列集合4を使って故障シミュレーション全体操作5を実行する。故障シミュレーション全体操作5では、まず操作21において、定義された遷移故障1〜6の重みを算出する。より詳細には、まず操作31において、遷移故障1〜6はすべて未処理なので操作32へ進み、遷移故障1を選択する。次に操作35では、遷移故障1の検査可能準最長信号経路を選択する。同様に遷移故障2〜6について操作31、操作32、操作35を繰返し、その結果、図9に示すような信号経路の選択が行われたものとする。次に操作31において、未処理の故障がなくなると操作34へ進む。ここでは、図9に示すように、遷移故障1〜6の検査可能最長信号経路の遅延値が、それぞれ8ns、8ns、10ns、8ns、7ns、4nsであるので、これらの遅延値を遷移故障1〜6の重みとして、遷移故障1〜6のそれぞれの変数Dfに格納する。
0064
次に操作22において、故障検出率の分母を、遷移故障1〜6の重みの総和として計算する。すなわち、8ns+8ns+10ns+8ns+7ns+4ns=45nsとなる。以降の操作は、本発明を実施するための第1の最良の形態と同様であり、操作24では、遷移故障1〜6の検出時の重みの総和は37nsとなるため、操作25では、操作22の結果と操作24の結果を用いて故障検出率を計算する。故障検出率は、(式2)に基づいて、(37ns/45ns)×100[%]= 82.2%となり、その結果を故障検出率6として出力される。
0065
この結果を従来技術と比較すると、従来技術では図13より、検査系列1で故障シミュレーションを行った段階で遷移故障1〜6がすべて検出されているため、(式1)より既に故障検出率は100%である。しかし図10と図13の比較により、検査系列1〜3で検出された遷移故障1〜6の検出経路の遅延値は、遷移故障5を除いて、検査可能最長信号経路の遅延値よりも小さい。したがって、従来技術では実際よりも高い故障検出率が出力されるために、検査品質を実際より高く評価してしまうのに対し、本発明の故障シミュレーション方法で算出した故障検出率は、実際に遷移故障が検出可能である確率の高い検出経路の最大遅延値に対する、実際の検出経路の遅延値の割合を使って故障検出率を計算するため、より精度の高い故障検出率を出力できる。
0066
また操作35で選択された検査可能準最長信号経路は、図9と図10の比較で示されるように、実際には検査不能である場合があるため、本発明を実施するための第1の最良の形態と同様にどれだけ検査系列を与えても故障検出率が100%に到達しない場合がある、という意味で悲観的な故障検出率となる問題があるが、本発明を実施するための第1の最良の形態よりも100%に近い故障検出率まで到達可能であるため、本発明を実施するための第1の最良の形態よりも高精度と言える。
0067
さらには、操作35は、操作36〜38に較べて非常に短い計算時間で実行可能であり、かつ故障検出率も本発明を実施するための第2の最良の形態で得られる故障検出率に近く、本発明を実施するための第1の最良の形態よりも高精度である。したがって、実行時間とで故障検出率精度のトレードオフが優れている。
0068
なお、上述の例では、重みとして設計上の遅延値を用いて説明を行ったが、タイミング設計上の要求値に対する、信号経路の設計上の遅延値の相対的な値(例えばクロックレート10nsに対する各設計上の遅延値の比)を用いても同様の効果が得られることは明らかである。
0069
図7は、遷移故障シミュレーション操作23のより詳細を示す図6とは別の実現例のフローチャートである。符号72は未検出の故障があるかどうかの判定を示し、符号73は未処理の故障を1個選択する操作を示し、符号74は選択した故障の故障定義箇所を通る最長信号経路を選択する操作を示し、符号75は選択された最長信号経路に対して検査系列を生成する操作を示し、符号76は検査系列生成が成功したかどうかの判定を示し、符号77は他の未処理の信号経路があるかどうかの判定を示し、符号78は検査系列が生成された際の故障検出経路の遅延値が変数Dfより小さいかどうかの判定を示し、符号79は変数Dfを更新する操作を示し、符号80は故障検出率の分母を再計算する操作を示す。その他の図6と同一の記号は、図6の一致する操作と同じものを示す。
0070
図11は、遷移故障1〜6が検査系列A、Bのそれぞれによる故障シミュレーションで検出された際の、検出経路の遅延値を示す図である。与えられた検査系列A、Bそれぞれにおいて、遷移故障1〜6(検査系列Aでは遷移故障1、2、4のみ)が検出される。遷移故障1〜6の右側に示した矢印の長さと、その近傍に示した値は、各検査系列において各遷移故障が故障シミュレーションで検出された際の遷移が伝搬する信号経路の設計上の遅延値を示す。また太線の矢印は、検査系列A、Bにおいて最大遅延値を持つ信号経路で故障が検出された際の遅延値を示す。また図の右側の点線は半導体集積回路の1クロックレートの値を表す。
0072
まず与えられた論理回路データ1、遅延情報2、遅延故障リスト3(遷移故障1〜6を格納)、検査系列集合4を使って故障シミュレーション全体操作5を実行する。故障シミュレーション全体操作5において、操作21では、より詳細には図3の方法を用いて、本発明を実施するための第1の最良の形態と同様に実施する。また操作22についても本発明を実施するための第1の最良の形態と同様である。次に操作23において故障シミュレーション操作23を行う。より詳細には、まず操作61において、定義された遷移故障1〜6についてそれぞれの検出経路遅延値の変数Ddfを0nsに初期化する。次に操作72では遷移故障1〜6がすべて未検出なので、操作73で遷移故障1を選択する。次に選択した遷移故障1を通る最長信号経路を選択する。この操作は、操作36と同様に一般的な静的タイミング解析ツールによる解析結果を用いて実現してもよいし、または手作業または自動化されたプログラムによって選択してもよい。図8に示すように、遷移故障1を通る最長の信号経路は9nsの信号経路であり、これが選択される。引き続いて操作75で検査系列生成を行うが、失敗したものとする。次に操作77において、他の未処理の信号経路があると判定され、続いて操作74へ進む。ここでは未処理の信号経路のうちから最長の信号経路を選択し、8nsの信号経路が選択されたものとする。続いて操作75で検査系列生成が成功したものとする。このとき生成された検査系列を検査系列Aとする。次に操作76の判定により操作78へ進み、操作76において検査系列生成された信号経路の遅延値と遷移故障1の変数Dfに格納されている値との比較を行う。遷移故障1の変数Dfは、操作34によって図8に示されるように9nsが格納されている。したがって、ここでは検査系列が生成された信号経路の遅延値が8nsであり、変数Dfより小さいので、次に操作79において、変数Dfを8nsに更新する。
0073
引き続いて操作63では、操作75で生成された検査系列Aを用いて故障シミュレーションを実行する。この結果、図11に示すように遷移故障1、2、4が検出された。次に操作64では、検出故障があるため、操作65へ進む。ここでは、遷移故障1、2、4がいずれも未処理であるので、次に操作66において、遷移故障1を選択する。次に操作67では、遷移故障1の検出経路の遅延値は、図11に示されるように8nsであり、また変数Ddfの値は0nsであるので、次に操作68において、変数Ddfの値を8nsへ更新する。遷移故障2、4についても、同様に操作65〜68を繰り返し、その結果、遷移故障2、4の変数Ddfはそれぞれ3ns、1nsとなる。次に操作65では、未処理の故障がないので、操作72へ戻る。
0074
操作72では、遷移故障3、5、6が未検出なので、操作73において遷移故障3を選択する。次に選択した遷移故障3を通る最長信号経路を選択する。図8に示すように、遷移故障3を通る最長の信号経路は10nsの信号経路であり、これが選択される。引き続いて操作75で検査系列生成を行うが、失敗したものとする。次に操作77において、他の未処理の信号経路があると判定され、続いて操作74へ進む。ここでは未処理の信号経路のうちから最長の信号経路を選択し、9nsの信号経路が選択されたものとする。続いて操作75で検査系列生成が成功したものとする。このとき生成された検査系列を検査系列Bとする。次に操作76の判定により操作78へ進み、操作76において検査系列生成された信号経路の遅延値と遷移故障3の変数Dfに格納されている値との比較を行う。遷移故障3の変数Dfは、操作34によって図8に示されるように10nsが格納されている。したがって、ここでは検査系列生成された信号経路の遅延値が9nsであり、変数Dfより小さいので、次に操作79において、変数Dfを9nsに更新する。
0075
引き続いて操作63では、操作75で生成された検査系列Bを用いて故障シミュレーションを実行する。この結果、図11に示すように遷移故障1〜6が検出された。次に操作64では、検出故障があるため、操作65へ進む。ここでは、遷移故障1〜6がいずれも未処理であるので、次に操作66において、遷移故障1を選択する。次に操作67では、遷移故障1の検出経路の遅延値は、図11に示されるように6nsであり、また変数Ddfの値は8nsであるので、次に操作65へ戻る。ここでは、遷移故障2〜6がまだ未処理であるので、次に操作66において、遷移故障2を選択する。次に操作67では、遷移故障2の検出経路の遅延値は、図11に示されるように5nsであり、また変数Ddfの値は3nsであるので、操作68において変数Ddfの値を5nsへ更新する。以下、残りの遷移故障3〜6についても、同様に操作65〜68を繰り返し、その結果、遷移故障3〜6の変数Ddfはそれぞれ9ns、5ns、4ns、1nsとなる。次に操作65では、未処理の故障がないので、操作72へ戻る。
0076
次に操作80では、操作22で計算された故障検出率の分母の値を再計算する。遷移故障1、3の変数Dfの値は操作22の時点では、それぞれ9ns、10nsであるが、上記操作によって、遷移故障1、3の変数Dfの値はそれぞれ8ns、9nsへ更新されている。この最新の変数Dfの値を用いて、故障検出率の分母の値を再計算する。すなわち、8ns+8ns+9ns+9ns+7ns+5ns=46nsとなる。最後に操作69では、遷移故障1〜6の変数Ddfに格納されている、それぞれ8ns、5ns、9ns、5ns、4ns、1nsを、遷移故障1〜6の検出時の重みとする。
0077
引き続いて操作24では、遷移故障1〜6の検出時の重みの総和を計算し、その結果、8ns+5ns+9ns+5ns+4ns+1ns=32nsとなる。最後に操作25では、操作22の結果と操作24の結果を用いて故障検出率を計算する。故障検出率は(式2)に基づいて、(32ns/46ns)×100[%]= 69.6%となり、その結果が故障検出率6として出力される。
0078
この結果を従来技術と比較すると、従来技術では図11より、検査系列A、Bで故障シミュレーションを行うことによって遷移故障1〜6がすべて検出されているため、(式1)より既に故障検出率は100%である。しかし図10と図11の比較により、遷移故障1〜6の検出経路の遅延値は、遷移故障1、3を除いて、検査可能最長信号経路の遅延値よりも小さい。したがって、従来技術では実際よりも高い故障検出率が出力されるために、検査品質を実際より高く評価してしまうのに対し、本発明の故障シミュレーション方法で算出した故障検出率は、遷移故障の検出される検出経路の潜在的な最大遅延値に対する、実際の検出経路の遅延値の割合を使って故障検出率を計算するため、より精度の高い故障検出率を出力できる。
0079
また、操作80における故障検出率の分母の再計算を行わない場合、操作22で計算された故障検出率の分母の値は48nsであるため、故障検出率は(32ns/48ns)×100[%]= 66.7%となる。一方、図10の検査可能最長信号経路の遅延値を用いて故障検出率の分母を計算した場合が、最も理想的な故障検出率となり、このときの故障検出率は(32ns/41ns)×100[%]= 78.0%となる。したがって、操作80により故障検出率の分母の再計算を行うことによって、故障検出率の精度をより高くすることができる。
0081
また、上述の例では、重みとして設計上の遅延値を用いて説明を行ったが、タイミング設計上の要求値に対する、信号経路の設計上の遅延値の相対的な値(例えばクロックレート10nsに対する各設計上の遅延値の比)を用いても同様の効果が得られることは明らかである。
0082
なお、以上のすべての本発明を実施するための最良の形態において、各遷移故障に対する重みとして、遅延情報2で与えられた物理設計上の遅延値の代わりに、単位遅延値や、論理合成時に用いる仮想遅延値、ゲート段数、等のより簡易的な遅延量を用いても、ほぼ同様の効果が得られ、かつ遅延値処理データ量を削減して処理全体を高速化できる利点も得られる。また、各遷移故障に対する重みとして、遅延値の代りに、信号経路上のビアコンタクト数を用いても、ほぼ同等の効果が得られる。
0083
また、すべての本発明を実施するための最良の形態において、遅延故障の例として遷移故障を取り上げて説明したが、遷移故障の代りにセグメント遅延故障やパス遅延故障であっても同様の効果が得られる。
0084
本発明にかかる故障シミュレーション方法は、遅延故障一般に対する精度の高い故障検出率算出方法を有するため、遷移故障、セグメント遅延故障、パスディレイ故障等に対する遅延故障検査として有用である。また検査系列生成の際には、付随して故障シミュレーションを実行する場合が多いため、遅延故障検査系列生成等の用途にも応用できる。さらには、準備した検査系列が量産検査における遅延故障検査に十分な品質であるかどうかを判断するための手段としての用途にも応用できる。
図面の簡単な説明
0085
本発明を実施するための最良の形態を説明するフローチャートである。
操作5のより詳細を説明するフローチャートである。
操作21のより詳細を説明するフローチャートである。
操作21のより詳細を説明する別の方法のフローチャートである。
操作21のより詳細を説明する別の方法のフローチャートである。
操作23のより詳細を説明するフローチャートである。
操作23のより詳細を説明する別の方法のフローチャートである。
本発明を実施するための最良の形態における遷移故障の特性を示す図である。
本発明を実施するための最良の形態における遷移故障の特性を示す図である。
本発明を実施するための最良の形態における遷移故障の特性を示す図である。
本発明を実施するための最良の形態における遷移故障の特性を示す図である。
従来技術の課題を説明するための回路図である。
従来技術および本発明を実施するための最良の形態における遷移故障の特性を示す図である。
遅延故障リスト3で与えられた遷移故障1〜6の定義箇所である信号線を通る最長信号経路の遅延値を示す図である。
半導体集積回路上に定義した遷移故障の特徴を示すための図である。
符号の説明
0086
5故障シミュレーション全体操作
6故障検出率
21 各定義故障の重みを算出する操作
23遷移故障シミュレーション操作
25 故障検出率計算操作
34 遷移故障に対して信号経路の遅延値の変数Dfを重み付けする操作
61 各定義故障の検出経路遅延値の変数Ddfを初期化する操作
67 検出経路の遅延値と変数Ddfの値の大小を比較する操作
68 変数Ddfの値を更新する操作
69 各検出故障に重み付けする操作
78検査系列生成経路の遅延値と変数Dfの値の大小を比較する操作
79 変数Dfの値を更新する操作