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技術 細胞膜に材料が結合した細胞

出願人 旭化成株式会社
発明者 草加孝之
出願日 2004年4月30日 (16年7ヶ月経過) 出願番号 2004-135187
公開日 2005年11月10日 (15年1ヶ月経過) 公開番号 2005-312377
状態 拒絶査定
技術分野 酵素,微生物の固定化,処理 微生物、その培養処理
主要キーワード 分配効率 材料表 定量サンプリング スポンジ状構造体 PEG相 磁性プローブ アンカーリング ポリスチレン担体
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課題

細胞と材料との結合を安定化せしめた、材料が結合した細胞を提供することである。

解決手段

下記の(1)〜(3)の特徴を有する両親媒性化合物と、材料との反応生成物が、非共有結合により細胞膜に結合した細胞。(1)1個以上の環式化合物を有する(2)分子中に親水性基1個以上有する(3)材料を結合しうる官能基を上記(1)とは異なる位置に1個以上有する

概要

背景

細胞膜表面の改質による細胞機能の修飾や、細胞を各種担体へ固定する技術の開発が、近年、盛んに行われている。たとえば特許文献1には、細胞表面に存在する官能基に対して生体適合性ポリマーを反応させ、共有結合により表面を修飾する方法が報告されている。また、非特許文献1には、水溶性高分子としてポリアクリルアミドを用いて、その高分子末端反応性基と膜蛋白あるいは糖鎖とを反応させる工程を含む細胞表面の修飾方法リガンドと細胞膜上のレセプターとの結合を介して細胞表面を修飾する方法、及び疎水性アンカーを用いて細胞表面を修飾する方法が開示されている。

このように、細胞膜蛋白及び糖鎖に高分子末端の反応性基を用いて結合させることにより、細胞表面の修飾を行う方法はいくつか知られているが、このような化学修飾を直接細胞膜上に行うことは、細胞表面物質性質を変化させ、細胞に障害を与えるおそれがある。これらを克服する試みも近年、散見されるようになった。

例えば、特許文献2には(1)1つの末端脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、(2)分子中に親水性基を含む部分を1個以上有し、及び(3)修飾対象物質を共有結合しうる反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有するという特徴を有する両親媒性化合物と修飾対象物質との反応生成物非共有結合により細胞膜に結合した細胞が開示されている。しかしながら、同公報では、脂肪族炭化水素とは好ましくは炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝の脂肪族炭化水素基としており、環式化合物基への言及は一切無く、また、細胞を担体へ固定するという記述も一切無い。

さらに、同公報中の「炭素数がそれぞれ21を越える場合、疎水性が強く柔軟性が小さいため細胞膜への結合が困難になる場合があり、また炭素数が7より少ない場合には、細胞膜への結合後、疎水性が弱いために細胞膜から抜け落ちる場合がある。R2が式(2)で示されるリン脂質含有化合物の残基の場合には、アシル基が2本あるために細胞膜の修飾後の安定性一本鎖より高く、細胞膜にアンカーリングした状態で分子の脱落が生じにくい。」との記載は、脂肪族炭化水素基による細胞との非共有結合が不安定であることを示唆するものである。

非特許文献2には、オレイル基を片末端に有する両親媒性化合物を用いて、接着細胞および非接着細胞を担体表面に固定化する方法、および細胞固定型マイクロアレイの開示があるが、環式化合物基への言及は一切見当たらない。また、オレイル基は直鎖状の脂肪族炭化水素基であるため、細胞膜の流動性が高い部分に選択的に導入されるため、細胞との結合が不安定であり外れやすいという欠点を有する。

ところで、ステロイドシクロペンタヒドロフェナントレン環(C17H28)をもつ化合物の総称であり、そのうち、特に3位にヒドロキシル基をもち炭素数27から30のものはステロールと総称される。ステロールは生体膜の重要な構成成分であり、とくにC27のコレステロールは最も代表的なステロールである。

非特許文献3によれば、コレステロールは動物界に広く分布し、細胞の常成分として細胞膜、細胞小器官オルガネラ)膜、ミエリン鞘などの構成成分をなすとともに、胆汁性腺ホルモン副腎皮質ホルモンビタミンDなどの前駆体となり、また動物個体の発生時、形態形成にあずかるシグナルタンパク質の一つヘッジホッグ遺伝子産物はコレステロールの修飾を受けて初めて機能を発揮すると言われている。このように、ステロール類、なかでもコレステロールは、他の炭化水素、たとえば脂肪族炭化水素よりも生体に密接に関与していることが推察できる。
特表2000-507849号公報
特開2003-116529号公報
Polymer Preprints, Japan, 47, 10, 2499-2500, 1998
BioTechniques,35,p1014-1021,2003
生化学辞典,p549,2000年

概要

細胞と材料との結合を安定化せしめた、材料が結合した細胞を提供することである。下記の(1)〜(3)の特徴を有する両親媒性化合物と、材料との反応生成物が、非共有結合により細胞膜に結合した細胞。(1)1個以上の環式化合物を有する(2)分子中に親水性基1個以上有する(3)材料を結合しうる官能基を上記(1)とは異なる位置に1個以上有するなし

目的

本発明の課題は、材料が結合した細胞を提供することにある。その中でも特に、脂肪族炭化水素基による従来法で問題となる、細胞と材料との結合を安定化せしめ、かつ、材料が結合した細胞を提供することである。より詳しくは、環式化合物を対象細胞の細胞膜の流動性の低い部分に非共有結合させることにより結合を安定化せしめ、かつ、材料が結合した細胞を提供すること、あるいは環式化合物が対象細胞の細胞膜に非共有結合すること自体により、該細胞膜の流動性を低下させることによって結合を安定化せしめた、材料が結合した細胞を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

下記(1)〜(3)の特徴(1)1個以上の環式化合物を有する(2)分子中に親水性基を1個以上有する(3)材料を結合しうる官能基を上記(1)とは異なる位置に1個以上有するを有する両親媒性化合物と、材料との反応生成物が、非共有結合により細胞膜に結合した細胞

請求項2

材料が、生理活性物質プローブ又は担体である請求項1に記載の細胞。

請求項3

細胞が、動物細胞である請求項1に記載の細胞。

請求項4

環式化合物が、炭素環式化合物である請求項1に記載の細胞。

請求項5

炭素環式化合物が、ステロイドである請求項4に記載の細胞。

請求項6

ステロイドが、コレステロールである請求項5に記載の細胞。

請求項7

親水性基が、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物の残基である請求項1〜6のいずれかに記載の細胞。

請求項8

下記(1)〜(3)の特徴を有する両親媒性化合物。(1)1個以上の環式化合物を有する(2)分子中に親水性基を1個以上有する(3)材料を結合しうる官能基を上記(1)とは異なる位置に1個以上有する

請求項9

環式化合物と該官能基との距離が、6原子以上の親水性部を介在している請求項8に記載の両親媒性化合物。

請求項10

異なる位置が、親水性部の末端である請求項8又は9に記載の両親媒性化合物。

請求項11

環式化合物が、炭素環式化合物である請求項8に記載の両親媒性化合物。

請求項12

炭素環式化合物が、ステロイドである請求項11に記載の両親媒性化合物。

請求項13

ステロイドが、コレステロールである請求項12に記載の両親媒性化合物。

請求項14

細胞と材料の結合方法であって、下記(1)および(2)の工程を含む方法。(1)請求項8〜13のいずれかに記載の両親媒性化合物と、材料とを反応させる工程(2)上記工程(1)で得られた反応生成物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程

請求項15

細胞と材料の結合方法であって、下記(1)および(2)の工程を含む方法。(1)請求項8〜13のいずれかに記載の両親媒性化合物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程(2)上記工程(1)で得られた細胞膜に両親媒性化合物が結合した細胞と材料とを結合させる工程

技術分野

0001

本発明は、材料で修飾された細胞に関する。より詳しくは、両親媒性化合物と、生理活性物質プローブ又は担体との反応生成物非共有結合により細胞膜に結合させた細胞に関するものである。また、本発明はそのような細胞に用いられる両親媒性化合物、細胞と材料との結合方法に関するものである。

背景技術

0002

細胞膜表面の改質による細胞機能の修飾や、細胞を各種担体へ固定する技術の開発が、近年、盛んに行われている。たとえば特許文献1には、細胞表面に存在する官能基に対して生体適合性ポリマーを反応させ、共有結合により表面を修飾する方法が報告されている。また、非特許文献1には、水溶性高分子としてポリアクリルアミドを用いて、その高分子末端反応性基と膜蛋白あるいは糖鎖とを反応させる工程を含む細胞表面の修飾方法リガンドと細胞膜上のレセプターとの結合を介して細胞表面を修飾する方法、及び疎水性アンカーを用いて細胞表面を修飾する方法が開示されている。

0003

このように、細胞膜蛋白及び糖鎖に高分子末端の反応性基を用いて結合させることにより、細胞表面の修飾を行う方法はいくつか知られているが、このような化学修飾を直接細胞膜上に行うことは、細胞表面物質性質を変化させ、細胞に障害を与えるおそれがある。これらを克服する試みも近年、散見されるようになった。

0004

例えば、特許文献2には(1)1つの末端脂肪族炭化水素基を1個以上含有し、(2)分子中に親水性基を含む部分を1個以上有し、及び(3)修飾対象物質を共有結合しうる反応性官能基を上記(1)とは異なる末端に1個以上有するという特徴を有する両親媒性化合物と修飾対象物質との反応生成物が非共有結合により細胞膜に結合した細胞が開示されている。しかしながら、同公報では、脂肪族炭化水素とは好ましくは炭素数6〜24の飽和又は不飽和の直鎖又は分枝の脂肪族炭化水素基としており、環式化合物基への言及は一切無く、また、細胞を担体へ固定するという記述も一切無い。

0005

さらに、同公報中の「炭素数がそれぞれ21を越える場合、疎水性が強く柔軟性が小さいため細胞膜への結合が困難になる場合があり、また炭素数が7より少ない場合には、細胞膜への結合後、疎水性が弱いために細胞膜から抜け落ちる場合がある。R2が式(2)で示されるリン脂質含有化合物の残基の場合には、アシル基が2本あるために細胞膜の修飾後の安定性一本鎖より高く、細胞膜にアンカーリングした状態で分子の脱落が生じにくい。」との記載は、脂肪族炭化水素基による細胞との非共有結合が不安定であることを示唆するものである。

0006

非特許文献2には、オレイル基を片末端に有する両親媒性化合物を用いて、接着細胞および非接着細胞を担体表面に固定化する方法、および細胞固定型マイクロアレイの開示があるが、環式化合物基への言及は一切見当たらない。また、オレイル基は直鎖状の脂肪族炭化水素基であるため、細胞膜の流動性が高い部分に選択的に導入されるため、細胞との結合が不安定であり外れやすいという欠点を有する。

0007

ところで、ステロイドシクロペンタヒドロフェナントレン環(C17H28)をもつ化合物の総称であり、そのうち、特に3位にヒドロキシル基をもち炭素数27から30のものはステロールと総称される。ステロールは生体膜の重要な構成成分であり、とくにC27のコレステロールは最も代表的なステロールである。

0008

非特許文献3によれば、コレステロールは動物界に広く分布し、細胞の常成分として細胞膜、細胞小器官オルガネラ)膜、ミエリン鞘などの構成成分をなすとともに、胆汁性腺ホルモン副腎皮質ホルモンビタミンDなどの前駆体となり、また動物個体の発生時、形態形成にあずかるシグナルタンパク質の一つヘッジホッグ遺伝子産物はコレステロールの修飾を受けて初めて機能を発揮すると言われている。このように、ステロール類、なかでもコレステロールは、他の炭化水素、たとえば脂肪族炭化水素よりも生体に密接に関与していることが推察できる。
特表2000-507849号公報
特開2003-116529号公報
Polymer Preprints, Japan, 47, 10, 2499-2500, 1998
BioTechniques,35,p1014-1021,2003
生化学辞典,p549,2000年

発明が解決しようとする課題

0009

本発明の課題は、材料が結合した細胞を提供することにある。その中でも特に、脂肪族炭化水素基による従来法で問題となる、細胞と材料との結合を安定化せしめ、かつ、材料が結合した細胞を提供することである。より詳しくは、環式化合物対象細胞の細胞膜の流動性の低い部分に非共有結合させることにより結合を安定化せしめ、かつ、材料が結合した細胞を提供すること、あるいは環式化合物が対象細胞の細胞膜に非共有結合すること自体により、該細胞膜の流動性を低下させることによって結合を安定化せしめた、材料が結合した細胞を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。まず、細胞膜の構造・成分に深い洞察を加えた。細胞膜は主に非共有結合をした脂質とタンパク質からなる極めて薄いフィルムである。細胞膜は流動的な構造をしており、構成成分の大半は膜平面状を移動できる。脂質分子は厚さ約5nmの切れ目のない二重層作っており、この脂質二重層に含まれる脂質やタンパク質の種類、組成や割合などによって細胞膜の流動性が異なる。量が最も多いリン脂質(Phospholipid)には親水性の頭部と2本の疎水性の炭化水素鎖尾部がある。尾の部分は普通は脂肪酸で出来ており、その長さは様々で(通常、炭素数14〜24個)、通常2本のうち1本はシス型二重結合を1から数個含み(不飽和脂肪酸)、もう一方は全く二重結合を含まない(飽和脂肪酸)。二重結合があると尾はそこで屈曲する、このため脂肪酸の尾(脂肪族炭化水素基)の長さや飽和度は、分子が相互に密集できる度合い、つまり細胞膜の流動性に影響する。脂質中の脂肪族炭化水素基が短いと炭化水素鎖同士の相互作用が少なくなり、シス型の不飽和二重結合があると鎖がねじれて炭化水素鎖が密に並びにくくなるので、どちらの場合も流動性が上がる。ほとんどの細胞の脂質二重層は前述のリン脂質のみでできているわけではなく、コレステロールや糖脂質を含んでいる。脂質2重層中のコレステロールは、そのヒドロキシル基がリン脂質分子極性を持つ頭部近くに来るような並び方をしている。柔軟性に乏しい平面構造をしたステロイド環は、最も極性基に近い炭化水素鎖と相互作用してその部分を固定している。これによりコレステロールは脂質二重層の一部分を変形しにくくし、細胞膜の流動性を低下させる。

0011

近年、細胞膜上にはラフトというマイクロドメインが多数存在することがわかってきた。ラフトは脂質間相互作用を基礎とするドメインであり、細胞膜の外層ではglycosylphosphatidylinositolで膜にアンカーされたタンパク質(GPIアンカー型タンパク質)、コレステロール、スフィンゴ脂質などが、内層ではGタンパク質やSrcファミリーキナーゼ(SFK)など飽和脂肪酸を含むタンパク質、コレステロール、スフィンゴミエリンなどがラフトを形成すると言われている。このようにラフトは様々なシグナル伝達に関わるタンパク質が特殊な脂質との相互作用によって濃縮されている(Simons K, Ikonen E :Nature 387 p569-572 1997)。ラフトは生化学的には界面活性剤不溶低密度画分(detergent resistant membrane:DRM)として定義されており、主要な構成成分であるコレステロールとの親和性は高いが、オレイル基(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7CH2-;Oleyl基)などの脂肪族炭化水素基との親和性は低いと考えられる。

0012

以上のような考察から、脂肪族炭化水素基は細胞膜のラフト以外の流動性の高い部分とのみ相互作用しているため、材料を結合せしめた両親媒性化合物と細胞との間の非共有結合の部位が不安定であるという結論に達した。そこで、細胞膜の流動性を低下せしめることが出来るような、平面状で柔軟性に乏しい環状構造を有する脂質を、細胞膜に非共有結合により導入することによって細胞と該両親媒性化合物間の結合が安定するという仮説のもと、細胞と非共有結合する脂質部分としてコレステロールに代表される環式化合物の使用を発案するに至った。そして、この仮説を検証し、本発明の完成に至ったものである。

0013

すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)下記(a)〜(c)の特徴
(a)1個以上の環式化合物を有する
(b)分子中に親水性基を1個以上有する
(c)材料を結合しうる官能基を上記(a)とは異なる位置に1個以上有する
を有する両親媒性化合物と、材料との反応生成物が、非共有結合により細胞膜に結合した細胞。
(2)材料が、生理活性物質、プローブ又は担体である上記(1)に記載の細胞。
(3)細胞が、動物細胞である上記(1)に記載の細胞。
(4)環式化合物が、炭素環式化合物である上記(1)に記載の細胞。
(5)炭素環式化合物が、ステロイドである上記(4)に記載の細胞。
(6)ステロイドが、コレステロールである上記(5)に記載の細胞。
(7)親水性基が、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物の残基である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞。
(8)下記(a)〜(c)の特徴を有する両親媒性化合物。
(a)1個以上の環式化合物を有する
(b)分子中に親水性基を1個以上有する
(c)材料を結合しうる官能基を上記(a)とは異なる位置に1個以上有する
(9)環式化合物と該官能基との距離が、6原子以上の親水性部を介在している上記(8)に記載の両親媒性化合物。
(10)異なる位置が、親水性部の末端である上記(8)又は(9)に記載の両親媒性化合物。
(11)環式化合物が、炭素環式化合物である上記(8)に記載の両親媒性化合物。
(12)炭素環式化合物が、ステロイドである上記(11)に記載の両親媒性化合物。
(13)ステロイドが、コレステロールである上記(12)に記載の両親媒性化合物。
(14)細胞と材料の結合方法であって、下記(a)および(b)の工程を含む方法。
(a)上記(8)〜(13)のいずれかに記載の両親媒性化合物と、材料とを反応させる工程
(b)上記工程(a)で得られた反応生成物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程
(15)細胞と材料の結合方法であって、下記(a)および(b)の工程を含む方法。
(a)上記(8)〜(13)のいずれかに記載の両親媒性化合物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程
(b)上記工程(a)で得られた細胞膜に両親媒性化合物が結合した細胞と材料とを結合させる工程

発明の効果

0014

本発明の細胞は、生理活性物質やプローブなどによる細胞膜表面の改質がより安定に施されており、さらに細胞が従来より安定に各種担体へ固定されている。また、本発明により提供される細胞と材料の結合方法によって、安定、迅速、簡単、大量に材料が細胞膜に結合した細胞を提供できる。

発明を実施するための最良の形態

0015

以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう環式化合物とは、構成原子の全部あるいは一部が環を形成する化合物を指す。環が炭素原子のみからなるもの(炭素環式)、炭素原子および窒素酸素硫黄など、異種の原子からなるもの(ヘテロ環式または複素環式)とに分けられるが、その両者とも本発明には好適である。環の飽和、不飽和結合の位置や数は限定されるものではなく、脂環式芳香環式といった分類にも限定されない。化合物中の環の数は特に限定されるものではないが、多環式化合物の方が細胞膜内に挿入された場合、平面構造を形成する部分が大きいため細胞膜の流動性を下げる効果を望むことが出来るため好ましい。

0016

さらに、細胞膜上に存在するタンパク質に相互作用する環式化合物も本発明には好適であり、何ら限定されるものではないが敢えて例示をすれば、複素単環を有するウリジンなどは、ある種の細胞膜表面にも存在する糖転移酵素であるβ-1,4-ガラクトース転移酵素(β1,4-GalTase)に認識される(Kenichi Hatanaka et al Macromolecular Bioscience 1(9) p397-400 2001)ため効果的に用いることが出来る。

0017

本発明でいう炭素環式化合物とは、環状炭化水素を含まない飽和又は不飽和の直鎖又は分枝の炭化水素のみを有するいわゆる脂肪族炭化水素は含まず、合成または天然の環状炭化水素(脂環式、芳香環式を問わない)のことをいう。
本発明でいうステロイドとは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環(C17H28)をもつ化合物の総称であり、なかでもコレステロールである下記式(1)が好適に用いられる。

0018

本発明の親水性基としては、合成及び天然の水溶性化合物、好ましくは水溶性高分子化合物の残基を用いることができる。親水性基を与える水溶性化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコールポリサッカライド多糖)、ポリ乳酸ポリビニルアルコールポリビニルピロリドンポリアミノ酸ポリペプチドポリアリルアミンポリアクリル酸及びポリアクリルアミド等が挙げられるがこれに限定されない、好ましくはポリアルキレングリコール、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドであり、より好ましくはポリアルキレングリコールであり、中でもポリエチレングリコールが好適に用いられる。

0019

本発明でいうアルキレングリコールは炭素数2〜4、好ましくは炭素数2又は3のオキシアルキレン基であり、例えばオキシエチレン基オキシプロピレン基オキシトリメチレン基オキシブチレン基オキシテトラメチレン基などが挙げられる。これらの中で特にオキシエチレン基が好ましい。分子内には複数のオキシアルキレン基が存在するが、このオキシアルキレン基は1種単独であってもよく、あるいは2種以上が組み合わされていてもよい。2種以上が組み合わされる場合には、その組み合わせ方に制限はない。またオキシアルキレン基はブロック状であってもランダム状であってもよい。ただし、全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の比率が低いと水溶性が低下する場合があるので、全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の比率は50〜100モル%であることが好ましい。

0020

本発明でいう材料とは、生理活性物質やプローブや担体のことである。生理活性物質とは何らかの生物学的機能を有する物質のことで、例えば、抗体、接着分子サイトカイン成長因子酵素阻害剤やレセプター・アンタゴニスト又はアゴニストなどに限らず、アミノ酸オリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質ヌクレオチドオリゴヌクレオチドポリヌクレオチド糖蛋白質単糖類多糖類、及びビタミン類など、低分子物質から高分子物質まで種々の物質を用いることができる。

0021

プローブとは、例えば、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、酵素基質金属イオンなどを検出するための物質のことであり、蛍光プローブ発光プローブ磁性プローブ放射性プローブ、及び金コロイド等の微粒子プローブ等が用いられる。

0022

担体とは、通常、細胞よりも大きい細胞を固定するための固体であり(細胞固定型マイクロアレイがその代表例)、材質としては入手しやすさや安定性、安全性、成形性および滅菌性に優れ、細胞毒性が低いという点でポリエチレンポリプロピレンポリスチレンアクリル樹脂ナイロンポリエステルポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子アガロースセルロース酢酸セルロースキチンキトサンアルギン酸塩等の天然高分子ヒドロキシアパタイトガラスアルミナチタニア等の無機材料ステンレスチタンアルミニム等の金属があげられるが、これに限定されるものではない。

0023

更に、上記担体の表面を改質した材料も好適に使用することができ、表面改質について例示するなら、タンパク質や合成高分子を該材料表面に塗布することや、材料表面からのグラフト重合プラズマコロナ処理、荷電を有する重合体を材料との静電相互作用によって材料表面に結合させるなどの方法によって改質できるがこれに限定されない。

0024

また、担体の形状としては平板メッシュ、織布、不織布、スポンジ状構造体粒子集合体等があげられ、これらをそのまま、あるいは積層体、3次元成型体(ブロック状)等の形態で用いられる。

0025

本発明でいう材料を結合しうる官能基とは、あらゆる形態の結合を材料との間で形成しうるものが含まれる。例えば、ファンデルワールス力による結合、疎水結合水素結合イオン結合配位結合、共有結合などを材料と本発明の両親媒性化合物との間で形成しうる官能基である。望ましくは、材料表面と反応し共有結合を形成するものであり、例えば、コハク酸イミド基、マレイミド基アミノ基、カルボキシル基アルデヒド基グリシジル基又はチオール基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、両親媒性化合物中の材料を結合しうる官能基は、細胞膜と相互作用する環式化合物部分とは同一分子中でも親水性部を介してなるべく離れた位置にあることが望ましい。説明のために例示するなら、材料を結合しうる官能基と、細胞膜と相互作用する環式化合物部分との両者の距離は、6原子以上の親水性部を介在させる方が望ましく、また両者の数は1分子中にそれぞれ1個以上存在すればよい。より好ましくは、材料を結合しうる官能基は、親水性部の末端に配置される。

0026

本発明の両親媒性化合物の具体例としては、環式化合物としてコレステロールを1つPEG末端に有するSUNBRIGHT CS-020(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH)(実施例中、環式化合物A) 、
SUNBRIGHT CS-010(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH)(同環式化合物B)、SUNBRIGHT CS-050(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH) (同環式化合物D)、非イオン性多糖であるプルラン分子中に環式化合物としてコレステロールを複数有するLIPIDURE CP-100T(Cholesterol Pullulan)(同環式化合物C)(以上、日本油脂社製)、又は、環式化合物A及びDのPEG末端の水酸基をカルボキシル基に変換した、化合物(同環式化合物E、F)などがあげられる。
また、細胞膜と非共有結合する部分の環式化合物として、コレスタノール植物ステロールを末端に有し、親水性基としてポリオキシエチレンを有する非イオン性界面活性剤乳化剤などが挙げられ、これらはポリオキシエチレンの部分の分子量が異なるものが複数市販されており、さらに新たに合成することも可能である。

0027

本発明の細胞は、前記材料を結合しうる官能基を有する両親媒性化合物と材料との反応生成物を非共有結合により細胞膜に結合していることを特徴としている。ここで、細胞としては、用途・目的に応じ適宜選択するが、例えばヒトやヒト以外の動物の細胞、細菌、真菌ウイルスなどがあげられ、正常細胞に限定されることはなく、腫瘍細胞遺伝子改変された細胞も含み、また生きている細胞に限定されることはなく、死細胞も含む。また、液体組織固形臓器組織の中にある細胞のいずれも含まれる。また、固形臓器中にわずかに存在するとされている、成人幹細胞組織幹細胞などや、ホルモンなどを産生する内分泌細胞。さらには移植することによって生体内で機能する膵島などの細胞集団も含まれる。

0028

本発明による細胞と材料の結合方法の一つは、下記の工程:(1)材料と前述の両親媒性化合物とを反応させる工程;及び(2)上記工程(1)で得られた反応生成物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程を含むことを特徴とする。ここで、前記工程(1)の反応工程で用いる溶媒の種類は、反応に関与しない溶媒であれば特に制限されないが、純水、リン酸緩衝液ホウ酸緩衝液トリス緩衝液酢酸緩衝液炭酸緩衝液グッド緩衝液等の緩衝液あるいはその等張液、あるいは有機溶剤又は上記の水性媒体と有機溶剤との混合物などを用いることができ、金属イオンなどを含有していても良い。これらは単独溶媒系でも混合溶媒系でもどちらでもよい。その際、材料を変性失活、溶解(担体の場合)しないものを選択することが必要である。たとえば、担体がポリスチレンの場合を例にあげると、ほとんどの有機溶媒耐性が無い。

0029

反応温度は、材料が変性、失活、溶解(担体の場合)しない温度であれば特に限定されないが、例えば、0〜100℃、さらに0〜40℃が好ましい。反応時間は通常は1分〜48時間程度であり、0.5〜16時間が好ましい。

0030

材料が生理活性物質やプローブなどの場合には(1)の反応工程後は、透析限外ろ過ゲルろ過等の通常の蛋白質精製法などを応用して反応生成物を精製することができる。材料が担体の場合には(1)の反応工程後は、水溶液や有機溶媒などを用いて洗浄することによって精製できる。また反応生成物の精製を行わずに工程(2)に用いてもよい。工程(3)においては工程(1)で得られた反応生成物と細胞とを接触させればよい。この際、材料が生理活性物質やプローブなどの場合には(1)の反応工程後の反応生成物は臨界ミセル形成濃度(以下CMCと略す)の0.1〜1000倍、好ましくはそのCMCの1〜500倍、より好ましくはそのCMCの10〜100倍の濃度になるように細胞用培地や等張液などしてに希釈して添加することができる。材料が担体の場合には任意の濃度の細胞懸濁液を接触させることが出来る。

0031

工程(1)で得られた反応生成物の細胞への結合は通常は0〜40℃で行い、1秒間〜120分間、好ましくは20〜37℃で5秒間〜30分間行う。この工程において、工程(1)で得られた反応生成物以外の添加剤を添加してもよい。細胞膜に上記反応生成物を結合させた後、細胞に等張液を添加して洗浄することが好ましい。用いる等張液としては細胞に傷害を与えない溶媒であれば特に限定されないが、リン酸緩衝液生理食塩水細胞培養液等の等張液を用いることができる。

0032

本発明による細胞と材料の結合方法のもう一つの形態は、先の結合方法の工程を逆にすることによっても可能である。すなわち(1)両親媒性化合物を非共有結合により細胞膜に結合させる工程を先に行い、(2)上記工程(1)で得られた細胞膜に両親媒性化合物が結合した細胞と材料とを結合させる工程を含むことを特徴とする。

0033

本発明により得られた、材料が結合した細胞は、そのまま(特に担体に結合された、細胞アレイなどの場合)、または必要に応じて、さらなる分離精製(洗浄を含む)、培養、活性化、増幅遺伝子導入凍結保存等の処理が施された後、細胞生物学免疫学等の基礎科学実験や、あるいは病気診断治療などに用いられる。

0034

本発明の両親媒性化合物の細胞への結合能は、例えば、水性2相分配法により評価することができる。
水性2相分配法とは、ある種の水溶性高分子の水溶液を混合した場合に、互いに混じり合わない2液の相に分離する現象を利用して、上の相あるいは下の相と細胞との親和性の相違を検出する方法である。水溶性高分子の種類・濃度・塩組成・pHなどを変化させることによって、上の相と下の相との間に親水性・疎水性や荷電の差異などを付与することが出来るため、細胞表面の物理化学的差異を見積もることが出来る。この方法の応用として、脂肪酸を共有結合したPEGを添加することによって、脂肪酸と細胞との親和性を測定することが出来る。すなわち脂肪酸を共有結合したPEGは、脂肪酸部分を細胞膜に挿入し細胞をPEGで覆うため、細胞のPEG相への親和性を著しく高める。このためPEG相に分配された細胞を定量することによって、脂肪酸部分の細胞との非共有結合能を見積もることが出来る。(参考文献として、生化学実験法13細胞分離法東京化学同人 1991を引用する)
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。

0035

本実施例は、まず実施例1〜4において、上述した水性2相分配法を用いて、本発明による両親媒性化合物が他の脂質構造を有する両親媒性化合物よりも細胞への結合能が高いことを示し、次に実施例5、6において、本発明による両親媒性化合物を担体に固定し、その担体に結合する細胞は他の脂質構造を有する両親媒性化合物よりも多いことを示したものである。
明細書中においてポリエチレングリコール(PEG)、およびポリエチレンオキサイド(PEO)、およびポリオキシエチレン(POE)は、同様の意味として用い-CH2CH2O-を繰り返し単位として有する親水性基であり、PEG繰り返しunitとは(-CH2CH2O-)を示す。

0036

[実施例1]
(水性2相分配法により、マウス線維芽細胞3T3-L1細胞への各両親媒性化合物分子の非共有結合能の分析を行った。)
21.5wt% Dextran(Dextran-T500;アマシャムファルマシア)の水溶液1.045g、40wt%ポリエチレングリコール(PEG8000;SIGMA)の水溶液0.5g、1M NaCl 0.25g、200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.4) 0.25gおよび蒸留水2.955gを混合して、終濃度4.5% Dextran,4.0% PEG,10mM NaCl,50mMリン酸Na緩衝液pH=7.4の水性2相分配系を作製した。ここに10mg/mlの濃度の各両親媒性化合物水溶液を添加して、終濃度0.0003wt%とした。使用したPEG脂質(両親媒性化合物)は、環式化合物としてコレステロールを1つPEG末端に有するSUNBRIGHT CS-020(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH) :日本油脂社製,n=約37,Mw=約2000(以下:環式化合物Aと記載)、脂肪族炭化水素基としてOleyl基を1つPEG末端に有するSUNBRIGHT OE-020CS(Oleyl-oxy-poly(ethylene glycol)-succinyl-N-hydroxy-succinimidyl ester;
示性式C18H35O(CH2CH2O)nCOCH2CH2COONC4H4O2) :日本油脂社製,n=約40,Mw=約2000(以下:脂肪族化合物Aと記載)、同じく脂肪族炭化水素基としてstearoyl基を2つPEG末端に有するSUNBRIGHT GS-020(Methoxy-poly(ethylene glycol)-distearoylglyceryl ether;示性式CH3O(CH2CH2O)nCH2CHOCO{(CH2)16CH3} CH2OCO{(CH2)16CH3}:日本油脂社製,n=約45,Mw=約2000(以下:脂肪族化合物Bと記載)、同じく脂肪族炭化水素基としてmyristoyl基を2つPEG末端に有するSUNBRIGHT GM-020(Methoxy-poly(ethylene glycol)-dimyristoylglyceryl ether;示性式CH3O(CH2CH2O)nCH2CHOCO{(CH2)12CH3} CH2OCO{(CH2)12CH3}:日本油脂社製,n=約45,Mw=約2000(以下:脂肪族化合物Cと記載)、メチル基をPEG末端に有する比較対照としての
SUNBRIGHT ME-020CS(Methoxy-poly(ethylene glycol)-succinyl-N-hydroxy-succinimidyl ester;示性式CH3O(CH2CH2O)nCOCH2CH2COONC4H4O2) :日本油脂社製,n=約45,Mw=約2000(以下:メトキシPEGと記載)である。

0037

3T3-L1(ATCC:CCL-92-1)細胞は、HEPES-NaOH(20mM)(Sigma社製)、ペニシリンストレプトマイシン(米国、GIBCO-BRL社製)、および10%のFBS(GIBCO-BRL社製)を含むDMEM培地(pH7.4)(GIBCO BRL社製11995-065)で継代培養した。トリプシン-EDTA(GIBCO-BRL社製)処理にて組織培養用dishから剥離回収した。生理リン酸緩衝食塩液pH=7.4(以下PBS(-)と記載)に5.0×106 cells/mlになるように再懸濁した。これをそれぞれの水性2相分配系に50μlずつ添加した後、相系を混合、室温にて40min静置して2相に分離させた。分配した上相を一定量サンプリングし、細胞数仕込んだ全細胞数に対するパーセントとして、CyQUANTモレキュラープローブ社)を用いて添付の取扱説明書に従って定量化した。この際、上相および下相のどちらにも分配されていない細胞は界面に存在している。

0038

水性2相分配系に添加したPEG脂質(両親媒性化合物)中の、細胞と非共有結合する部位と、細胞膜との親和性が高いほど、細胞表面がPEG鎖で覆われるので、上相(PEG相)への分配が多くなる。したがって、分子中のPEG繰り返しunitをほぼ同数(ほぼ同じ分子量、この場合Mw=約2000)のPEG脂質で比較した場合には、上相への分配が多いPEG脂質(両親媒性化合物)ほど、細胞膜との非共有結合部位が安定であると判断できる。これらの結果を
表1に示す。

0039

細胞膜と相互作用するstearoyl基が2つ分子内にある脂肪族化合物B、およびmyristoyl基が2本分子内にある脂肪族化合物Cに比べ、本発明の環式化合物Aは上相(PEG相)に分配される割合が多く、細胞膜との非共有結合がはるかに安定なことがわかる。また、PEGのみのメトキシPEG添加では、上相に細胞は分配されなかった。Oleyl基を1つ分子内に持つ脂肪族化合物Aは、3T3-L1細胞の上相への分配効率が高いが、本発明の環式化合物Aと比べると、劣っている。

0040

[実施例2]
(水性2相分配法により、ヒト由来線維芽細胞WI-38細胞への各両親媒性化合物分子の非共有結合能の分析を行った。)
21.5wt% Dextran(Dextran-T500;アマシャムファルマシア)の水溶液1.045g、40wt%ポリエチレングリコール(PEG8000;SIGMA)の水溶液0.5g、1M NaCl 0.25g、200mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.4) 0.25gおよび蒸留水2.955gを混合して、終濃度4.5% Dextran,4.0% PEG,10mM NaCl,50mMリン酸Na緩衝液pH=7.4の水性2相分配系を作製した。ここに10mg/mlの濃度の各両親媒性化合物水溶液を添加して、終濃度0.0003wt%とした。使用したPEG脂質(両親媒性化合物)は、環式化合物としてコレステロールを1つPEG末端に有する環式化合物A、脂肪族炭化水素基としてOleyl基を1つPEG末端に有する脂肪族化合物A、同じく脂肪族炭化水素基としてstearoyl基を2つPEG末端に有する脂肪族化合物B、同じく脂肪族炭化水素基としてmyristoyl基を2つPEG末端に有する脂肪族化合物C、同じく脂肪族炭化水素基としてpalmitoyl基を2つPEG末端に有するSUNBRIGHT GP-020(Methoxy-poly(ethylene glycol)-dipalmitoylglyceryl ether;示性式CH3O(CH2CH2O)nCH2CHOCO{(CH2)14CH3} CH2OCO{(CH2)14CH3}:日本油脂社製,n=約45,Mw=約2000(以下:脂肪族化合物Dと記載)、メチル基をPEG末端に有する比較対照としてのメトキシPEGである。

0041

WI-38(ATCC:CCL-75)は、HEPES-NaOH(20mM)(Sigma社製)、ペニシリンーストレプトマイシン(米国、GIBCO-BRL社製)、および10%のFBS(GIBCO-BRL社製)を含むα-MEM培地(pH7.4)(GIBCO BRL社製12561-056)で継代培養した。トリプシン-EDTA(GIBCO-BRL社製)処理にて組織培養用dishから剥離し回収した。生理的リン酸緩衝食塩液(以下PBS(-)と記載)に5.0×106cells/mlになるように再懸濁した。これをそれぞれの水性2相分配系に50μlずつ添加した後、相系を混合、室温にて40min静置して2相に分離させた。分配した上相を一定量サンプリングし、細胞数を仕込んだ全細胞数に対するパーセントとして、CyQUANT(モレキュラープローブ社)を用いて添付の取扱説明書に従って定量化した。これらの結果を表2に示す。

0042

本発明の環式化合物AはWI-38細胞では、上相(PEG相)に分配される割合が多く、用いた全ての脂肪族化合物(細胞膜と相互作用する脂肪族炭化水素基の数や炭素数によらず)に比べ、細胞膜との非共有結合が安定なことがわかる。また、PEGのみのメトキシPEG添加では、無添加と同様に上相に細胞は分配されなかった。

0043

[実施例3]
(水性2相分配法により、ヒト肺由来線維芽細胞WI-38細胞への各両親媒性化合物分子の非共有結合能の分析を行った。)
実施例2と同様に水性2相分配系を作製した。ここに10mg/mlの濃度の各両親媒性化合物水溶液を添加して、終濃度0.0003wt%とした。使用したPEG脂質(両親媒性化合物)は、環式化合物としてコレステロールを1つPEG末端に有する
SUNBRIGHT CS-010(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH) :日本油脂社製,n=約14,Mw=約1000(以下:環式化合物Bと記載)、脂肪族炭化水素基としてlauryl基1つが分岐構造をもったPEG鎖3つとともにソルビタンに結合した構造を有するTween20(polyoxyethylene(20)sorbitan Monolaurate) :和光純薬社製,PEG繰り返しunit=計約20,Mw=約1500(以下:脂肪族化合物Eと記載)、脂肪族炭化水素基としてOleyl基1つが分岐構造をもったPEG鎖3つとともにソルビタンに結合した構造を有するTween80(polyoxyethylene(20)sorbitan Monooleate) :和光純薬社製,PEG繰り返しunit=計約20,Mw=約1500(以下:脂肪族化合物Fと記載)である。

0044

WI-38細胞(ATCC:CCL-75)を実施例2と同様に水性2相分配系に添加し、相系を混合、室温にて40min静置して2相に分離させた。分配した上相を一定量サンプリングし、細胞数を仕込んだ全細胞数に対するパーセントとして、CyQUANT(モレキュラープローブ社)を用いて添付の取扱説明書に従って定量化した。これらの結果を表3に示す。

0045

水性2相分配系に添加したPEG脂質(両親媒性化合物)中の、分子中のPEG繰り返しunitが多い方が、細胞表面がPEG鎖で覆われるので、上相(PEG相)への分配が多くなることが予測される。環式化合物BのPEG繰り返しunitは約14に対し脂肪族化合物EおよびFのそれは約20であり、本発明の環式化合物Bの方がPEG繰り返しunitが少ないにも関わらず、上相への分配が多い。この結果からも本発明の環式化合物の方が、脂肪族化合物に比べ細胞膜との非共有結合部位が安定であると判断できる。

0046

[実施例4]
(水性2相分配法により、ヒト肺由来線維芽細胞WI-38細胞へのコレステロールプルランの非共有結合能の分析を行った。)
実施例2と同様に水性2相分配系を作製した。ここに10mg/mlの濃度のコレステロールプルラン水溶液を添加して、終濃度0.0003wt%とした。使用したコレステロールプルラン(両親媒性化合物)は、非イオン性多糖であるプルラン分子中に環式化合物としてコレステロールを複数有するLIPIDURE CP-100T(Cholesterol Pullulan) :日本油脂社製、分子量約100,000、コレステロール導入量(1.38個/100グルコースunit)(以下:環式化合物Cと記載)である。

0047

WI-38細胞(ATCC:CCL-75)を実施例2と同様に水性2相分配系に添加し、相系を混合、室温にて40min静置して2相に分離させた。分配した上相を一定量サンプリングし、細胞数を仕込んだ全細胞数に対するパーセントとして、CyQUANT(モレキュラープローブ社)を用いて添付の取扱説明書に従って定量化した。これらの結果を表4に示す。

0048

水性2相分配系に、非イオン性多糖であるプルラン分子中に環式化合物としてコレステロールを複数有するコレステロールプルラン添加した場合には、コレステロール部位が細胞膜と非共有結合し、細胞表面が非イオン性多糖に覆われる。この場合、同じ非イオン性の多糖であるDextran水溶液で構成された下相(Dextran相)への親和性が増し、上相(PEG相)への分配が少なくなる。環式化合物Cを添加した場合には、無添加の水性2相分配系に比べ、上相への分配が減っており、本発明には環式化合物を複数共有結合した多糖なども好適に使用できることが示された。

0049

[実施例5]
(材料(担体)が結合した両親媒性化合物の調整)
環式化合物としてコレステロールを1つPEG末端に有するSUNBRIGHT CS-050(Cholesteryl-oxy-poly(ethylene glycol);示性式C27H45O(CH2CH2O)nH) :日本油脂社製,n=約105,Mw=約5000(以下:環式化合物Dと記載)、および同じ構造でPEG部の分子量違いの環式化合物Aの末端官能基の変換を行った。すなわちコレステロールが共有結合している部分とは反対のPEG末端の水酸基を以下の方法でカルボキシル基に変換した。環式化合物A(1g:1mmol)、または環式化合物D(1g:0.2mmol)をそれぞれ50mlのトルエンに溶解し、150℃に熱してトルエン10mlとともに水分を共沸流去した。30℃に放冷後、tBuOK(アルドリッジ)をtBuOH(アルドリッジ)で1Mの濃度で溶解したものを3mlまたは0.6mlそれぞれに添加(末端水酸基量の3当量)し、室温で1時間撹拌した。さらにBrCH2COOEt(アルドリッジ)を332μlまたは66μlそれぞれに添加(末端水酸基量の3当量)し、90℃で1時間撹拌した。その後溶媒をエバポレータ-にて除去し、1N NaOH液15mlをそれぞれに添加、室温で6時間撹拌後、5N HCl液5mlをそれぞれ添加、次いでNaClを飽和量添加した。ここに15mlの塩化メチレンそれぞれ添加して反応後の化合物を抽出した。塩化メチレンの有機層分液漏斗塩化ナトリウム飽和水にて抽出精製し、無水MgSO4で脱水後溶媒を留去することにより末端がカルボキシル基に変換された化合物それぞれ0.8gまたは0.4g得た。上記の方法で環式化合物Aから合成したものを以下:環式化合物E、および環式化合物Dから合成したものを以下:環式化合物Fとする。

0050

組織培養用ではない未処理のポリスチレン製FalconTM96穴プレート351172(Becton Dickinson社製)に、牛血清アルブミン(以下BSAと表記)の0.1wt%生理的リン酸緩衝食塩水pH=7.4(以下PBS(-)と表記)溶液100μl/wellで添加、室温で16hr放置してBSAを物理吸着させた。これを蒸留水150μl/wellで2回洗浄した後風乾することによって、表面にBSAコートした96穴プレートを調整した。

0051

次に表面に吸着したBSAのアミノ基と各種PEG脂質(両親媒性化合物)とを共有結合することによって、材料(担体)が結合した両親媒性化合物の調整した。用いたPEG脂質(両親媒性化合物)は、脂肪族炭化水素基としてOleyl基を1つPEG末端に有するSUNBRIGHT OE-040CS(Oleyl-oxy-poly(ethylene glycol)-succinyl-N-hydroxy-succinimidyl ester;示性式C18H35O(CH2CH2O)nCOCH2CH2COONC4H4O2) :日本油脂社製,n=約85,Mw=約4000(以下:脂肪族化合物Gと記載)、前記と同じ構造でPEG部の分子量違いの脂肪族化合物A、上記で調整した環式化合物E、および環式化合物F、比較対照としてはメトキシPEG、BSAコートしたポリスチレンプレート、何も処理していないポリスチレンプレートである。上記PEG脂質(両親媒性化合物)の、それぞれ1mg/ml水溶液を調整し、BSAコート96穴プレートに100μl/wellで添加し、室温で1時間放置(これにより、末端が
succinyl-N-hydroxy-succinimidyl ester化されている脂肪族化合物A,脂肪族化合物G、メトキシPEGはBSAのアミノ基と共有結合する)した。続いて水溶性カルボジイミド(WSC,EDC:和光純薬)の100mM水溶液を10μl/wellで添加し、室温で一晩放置(これにより、末端がカルボキシル化されている環式化合物E、環式化合物FはBSAのアミノ基と共有結合する)した。反応後のプレートを蒸留水150μl/wellで2回洗浄した後風乾することによって、材料(担体)が結合した両親媒性化合物の調整した。

0052

[実施例6]
(材料(担体)が結合した両親媒性化合物と細胞との非共有結合能の評価)
3T3-L1(ATCC:CCL-92-1;マウス株化線維芽細胞)細胞、およびNIH-3T3(ATCC:CRL-1658;マウス株化線維芽細胞)は実施例1の3T3-L1細胞と同様に継代培養し、調製した。3T3-L1細胞およびNIH-3T3細胞の懸濁液を、血清を添加していないDMEM培地(pH7.4)(Sigma社製D-5523)に2.5×105cells/mlになるように再懸濁した。これを実施例5で作製した、材料(担体)が結合した両親媒性化合物である96穴プレートに100μl/wellで播種した。遠心分離器にて50G 1min遠心して細胞を底面に沈めて接触させ、37℃ 5% CO2飽和水蒸気下25minインキュベーションした。材料表面非吸着の細胞を上清とともにデカンテーションし、PBS(-)150μlを用いてリンスした。この際に底面に付着している細胞の写真をとることによって、材料(担体)が結合した両親媒性化合物と細胞との非共有結合能の評価とした。すなわち、より細胞が付着している表面ほど該両親媒性化合物と細胞との非共有結合能が強いと考えられる。この結果を図1および図2に示す。

0053

図1は材料(ポリスチレン担体)が結合した両親媒性化合物と3T3-L1細胞との非共有結合能の評価を写真で示し、(1)はポリスチレン担体に脂肪族化合物Aが結合したものと3T3-L1細胞との結合、(2)は同様に脂肪族化合物Gが結合したもの、(3)は同様に環式化合物Eが結合したもの、(4)は同様に環式化合物Fが結合したもの、(5)は同様にメトキシPEGが結合したもの、(6)はポリスチレンプレートにBSAをコートしたのみのもの、(7)は未処理のポリスチレンプレートを示す。

0054

また、図2は材料(ポリスチレン担体)が結合した両親媒性化合物とNIH-3T3細胞との非共有結合能の評価を写真で示し、(1)はポリスチレン担体に脂肪族化合物Aが結合したものとNIH-3T3細胞との結合、(2)は同様に脂肪族化合物Gが結合したもの、(3)は同様に環式化合物Eが結合したもの、(4)は同様に環式化合物Fが結合したもの、(5)は同様にメトキシPEGが結合したもの、(6)はポリスチレンプレートにBSAをコートしたのみのもの、(7)は未処理のポリスチレンプレート

0055

上より、明らかに、本発明の環式化合物Eまたは環式化合物Fとポリスチレンプレート担体が結合した表面には、他の何れの処理に比べても3T3-L1またはNIH-3T3細胞が多く付着している。すなわち本発明の環式化合物は細胞との非共有結合能が強いことが示された。

0056

本発明を利用して調製された細胞は、細胞生物学や免疫学等の基礎科学実験や、あるいは病気の診断、治療など広範な範囲に用いることが可能で、基礎医科学の発展に貢献すること極めて大である。

図面の簡単な説明

0057

材料(ポリスチレン担体)が結合した両親媒性化合物と3T3-L1細胞との非共有結合能の評価を写真で示したものである。
材料(ポリスチレン担体)が結合した両親媒性化合物とNIH-3T3細胞との非共有結合能の評価を写真で示したものである。

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