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技術 燃料電池の劣化診断方法及び装置

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 加藤学
出願日 2004年3月30日 (17年6ヶ月経過) 出願番号 2004-099159
公開日 2005年10月13日 (16年0ヶ月経過) 公開番号 2005-285614
状態 特許登録済
技術分野 燃料電池(システム) 燃料電池(本体)
主要キーワード 点検設備 部分流路 演算規則 周波数特性曲線 リファレンス値 測定周波数範囲 初期劣化 交流信号源
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

燃料電池劣化を効率的且つ高精度に診断する。

解決手段

燃料電池セルに対して、劣化の診断を行う際には、最初に、予め定められた測定周波数F1、F2及びF3の交流信号を燃料電池セルに対して印加してインピーダンスを測定する。複素平面上で得られたこれらインピーダンスに対し、実軸との交点、即ち抵抗値が夫々取得され、更にこれら抵抗値から、劣化診断要素が生成される。劣化診断要素は、周波数F1、F2及びF3に対する抵抗値を夫々R1、R2及びR3とすると、R1、R2−R1、及びR3−2R2+R1として規定されており、この劣化診断要素の値を、異なる時刻に得られた劣化診断要素の値と比較することによって、燃料電池の劣化が診断される。

概要

背景

この様な燃料電池劣化診断方法の一つとして、交流インピーダンス法を利用した燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。

特許文献1に記載の燃料電池システム(以下、「従来の技術」と称する)によれば、燃料電池に対し、異なる2つの周波数をもった交流信号印加され、夫々の周波数に対応する燃料電池のインピーダンスが算出される。従来の技術では、この算出されたインピーダンスに基づいて燃料電池のインピーダンスの周波数特性演算し、周波数特性曲線を得ることによって、燃料電池の経時的な変化がリアルタイム計測可能であるとされている。

特開2003−86220号公報

概要

燃料電池の劣化を効率的且つ高精度に診断する。燃料電池セルに対して、劣化の診断を行う際には、最初に、予め定められた測定周波数F1、F2及びF3の交流信号を燃料電池セルに対して印加してインピーダンスを測定する。複素平面上で得られたこれらインピーダンスに対し、実軸との交点、即ち抵抗値が夫々取得され、更にこれら抵抗値から、劣化診断要素が生成される。劣化診断要素は、周波数F1、F2及びF3に対する抵抗値を夫々R1、R2及びR3とすると、R1、R2−R1、及びR3−2R2+R1として規定されており、この劣化診断要素の値を、異なる時刻に得られた劣化診断要素の値と比較することによって、燃料電池の劣化が診断される。

目的

本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、効率的且つ高精度に燃料電池の劣化を診断する燃料電池の劣化診断方法及び装置を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
5件
牽制数
4件

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請求項1

予め定められた電流密度で駆動される燃料電池に対し、周波数F1、F2(F1>F2)及びF3(F2>F3)を含む少なくとも3つの測定周波数交流信号印加することにより、前記燃料電池における、前記測定周波数に夫々対応する少なくとも3つの複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得工程と、前記取得された複素インピーダンスから、前記測定周波数に夫々対応する前記燃料電池の少なくとも3つの抵抗値を特定する抵抗値特定工程と、前記特定された抵抗値の所定関数である劣化診断要素に基づいて、前記燃料電池の劣化診断する診断工程とを具備することを特徴とする燃料電池の劣化診断方法

請求項2

前記診断工程は、前記劣化診断要素の値の経時変化に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項3

前記診断工程は、前記劣化診断要素の値と基準値との相対比較に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項4

前記基準値は、初期又は基準時期に実行された前記診断工程における前記劣化診断要素の値であることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項5

前記周波数F1は、前記複素インピーダンスを規定する、前記抵抗値を表す第1軸、及び前記第1軸に直交すると共に容量値を表す第2軸を有する座標平面上で、前記測定周波数を含む測定周波数範囲で描かれる前記複素インピーダンスの周波数特性曲線と前記第1軸との交点であって、且つ前記燃料電池における直流抵抗を規定する点に相当する周波数に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項6

前記周波数特性曲線は、一部が円弧をなすと共に第1の要因が支配的な第1の領域、及び一部が円弧をなすと共に第1の要因とは異なる第2の要因が支配的な第2の領域を有し、前記周波数F2は、前記第1の領域内で決定され、前記周波数F3は、前記第2の領域内で決定されることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項7

前記周波数F2及びF3は、前記第1の領域及び前記第2の領域の夫々における前記円弧の頂点又は該頂点近傍の点に相当する周波数であることを特徴とする請求項6記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項8

前記劣化診断要素は、前記周波数F1、F2及びF3の夫々に対応する前記抵抗値を夫々R1、R2及びR3とした場合に、R1、R2−R1、及びR3−2R2+R1という3つの劣化診断要素を含むことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項9

前記燃料電池に対し、予め前記周波数特性曲線を取得する特性取得工程を更に具備し、前記周波数F1、F2及びF3は、前記取得された周波数特性曲線に基づいて決定されることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項10

前記測定周波数は、周波数F4(F3>F4)を含み、前記周波数F4は、前記周波数特性曲線と前記第1軸との交点に相当する周波数であることを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項11

前記燃料電池の劣化を診断した結果、前記燃料電池が劣化している場合に、前記劣化している燃料電池の存在を通知する通知工程を更に具備することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料電池の劣化診断方法。

請求項12

予め定められた電流密度で駆動される燃料電池に対し、周波数F1、F2(F1>F2)及びF3(F2>F3)を含む少なくとも3つの測定周波数の交流信号を印加することにより、前記燃料電池における、前記測定周波数に夫々対応する少なくとも3つの複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、前記取得された複素インピーダンスから、前記測定周波数に夫々対応する前記燃料電池の少なくとも3つの抵抗値を特定する抵抗値特定手段と、前記特定された抵抗値の所定関数である劣化診断要素に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断する診断手段とを具備することを特徴とする燃料電池の劣化診断装置

技術分野

0001

本発明は、例えば、組み付け作業時間経過等による燃料電池劣化診断するための燃料電池の劣化診断方法及び装置の技術分野に関する。

背景技術

0002

この様な燃料電池の劣化診断方法の一つとして、交流インピーダンス法を利用した燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。

0003

特許文献1に記載の燃料電池システム(以下、「従来の技術」と称する)によれば、燃料電池に対し、異なる2つの周波数をもった交流信号印加され、夫々の周波数に対応する燃料電池のインピーダンスが算出される。従来の技術では、この算出されたインピーダンスに基づいて燃料電池のインピーダンスの周波数特性演算し、周波数特性曲線を得ることによって、燃料電池の経時的な変化がリアルタイム計測可能であるとされている。

0004

特開2003−86220号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、本願発明者の研究によれば、従来の技術は、以下に示す問題点を有する。

0006

交流インピーダンス法によって得られる燃料電池のインピーダンスの軌跡は、完全な半円とはならない。従って、従来の技術に示される様に、2点の測定点から燃料電池のインピーダンスの周波数特性曲線を算出しようとしても、誤差が極めて大きく、精度の高い結果を得ることは困難である。また、対象とする周波数範囲精細な測定を行えば、高精度な周波数特性曲線を得ることが可能であるが、多大な時間が必要であると共に、係る測定によって燃料電池は劣化する。即ち、従来の技術では、効率的且つ高精度に燃料電池の劣化を診断することは事実上不可能である。

0007

本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、効率的且つ高精度に燃料電池の劣化を診断する燃料電池の劣化診断方法及び装置を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

上述した課題を解決するため、本発明に係る燃料電池の劣化診断方法は、予め定められた電流密度で駆動される燃料電池に対し、周波数F1、F2(F1>F2)及びF3(F2>F3)を含む少なくとも3つの測定周波数の交流信号を印加することにより、前記燃料電池における、前記測定周波数に夫々対応する少なくとも3つの複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得工程と、前記取得された複素インピーダンスから、前記測定周波数に夫々対応する前記燃料電池の少なくとも3つの抵抗値を特定する抵抗値特定工程と、前記特定された抵抗値の所定関数である劣化診断要素に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断する診断工程とを具備することを特徴とする。

0009

本発明に係る燃料電池の劣化診断方法によれば、インピーダンス取得工程において、予め定められた電流密度で駆動される燃料電池に対し少なくとも3つの測定周波数の交流信号が印加され、夫々の測定周波数に対応する少なくとも3つの複素インピーダンスが取得される。

0010

ここで、本発明に係る「燃料電池」とは、燃料電池セルであっても、一定数量の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックであっても構わない。

0011

複素インピーダンスは、実部である抵抗値と、虚部である容量値表現され、抵抗値特定工程においては、この抵抗値が測定周波数毎に少なくとも3つ特定される。そして、診断工程では、劣化診断要素に基づいて燃料電池の劣化が診断される。

0012

ここで、「劣化診断要素」とは、係る抵抗値の所定関数として規定される値である。劣化診断要素は、例えば、抵抗値自体、抵抗値に何らかの四則演算が施されたもの、又は複数の抵抗値間で何らかの演算規則に基づいて演算がなされたもの等、抵抗値の関数である限り如何なる値であってもよい。即ち、「所定の関数」とは、この様な何らかの演算規則等の結果得られる値を指す概念である。劣化診断要素は、一つであっても、複数であってもよく、本発明に係る燃料電池の劣化を診断可能な限りにおいて、その数量は限定されない。

0013

診断工程においては、係る劣化診断要素に基づいて燃料電池の劣化が診断される。ここで、本発明に係る「劣化」とは、例えば、燃料電池セルをスタックに組み付ける際に生じる接触抵抗の増加、ガス拡散不足触媒活性低下、又は触媒有効利用率下等の劣化や、経時変化によって燃料電池内部に生じた物理的又は化学的な劣化を含み、燃料電池において何らかの機能の低下を招く、又は招く可能性を有する現象全てを含んで規定される。

0014

本発明において、「診断する」とは、劣化診断要素に基づいて、定性的若しくは定量的、又は経験的、実験的若しくはシミュレーション等によって燃料電池の劣化状態を診断する趣旨で規定される。

0015

例えば、予め劣化診断のための基準値と劣化診断要素の値とを比較することによって燃料電池の劣化を診断してもよい。また、この様な基準値を複数設けることによって、燃料電池の劣化状態が多段階に診断されてもよい。更には、燃料電池スタックを構成する燃料電池セルの全てについてこの様な診断を実行し、燃料電池セル毎に得られた劣化診断要素を当該セル間で比較することによって、比較的に劣化又は異常があると推定されるセルを抽出する様な処理であってもよい。この様な態様では、実使用される前段階で異常なセルを除去、調整、又は修理することが可能となって効率的である。

0016

ここで、特に、本発明に係る診断工程においては、劣化診断要素に基づいて劣化を診断するため、従来技術の如くインピーダンスの周波数特性曲線を実測又は演算によって取得する必要が生じない。また、測定周波数が少なくとも3つあるため、どの様な周波数特性曲線を有する燃料電池にも比較的に対応可能であり、従来技術の如き誤差が生じる可能性もない。また、その様な誤差が生じないように、劣化診断要素における前述の「所定の関数」を適切に設定することも容易に可能である。従って、高効率且つ高精度に燃料電池の劣化を診断することが可能となるのである。

0017

本発明に係る燃料電池の劣化診断方法の一の態様において、前記診断工程は、前記劣化診断要素の値の経時変化に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断する。

0018

燃料電池は、時間経過と共に、その程度を問わず何らかの劣化を生じることが多いから、異なる時刻において取得される燃料電池のインピーダンスには、何らかの経時変化が生じる。従って、この様な経時変化を何らかの形で取得することができれば、燃料電池に経時的に生じた劣化を診断することが可能となる。ここで、燃料電池においてインピーダンスに変化が生じるならば、このインピーダンスに対応する抵抗値、更には係る抵抗値の所定関数である劣化診断要素の値にも変化が生じる。詰まり、劣化診断要素の値の経時変化に基づいて、燃料電池の劣化を診断することができる。尚、この様な経時変化において、時間経過の大小は何ら限定されるものではなく、例えば、自動車等においては、定期点検タイミング間隔であってもよいし、単に異なる二つの時刻間として規定されてもよい。この態様によれば、燃料電池に生じた経時劣化を簡便に診断することが可能である。

0019

本発明に係る燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記診断工程は、前記劣化診断要素の値と基準値との相対比較に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断する。

0020

ここで述べられる「基準値」とは、劣化診断要素の値と比較可能である限りにおいて何らの限定を受けるものではない。予め、係る基準値となり得る数値が、経験的に、又はシミュレーション等によって判明している場合にはその様な数値であってもよいし、任意の時刻に行われた劣化の診断における劣化診断要素の値であってもよい。

0021

この態様によれば、劣化診断要素の値を基準値と比較することによって劣化の診断が可能となるから、明確且つ速やかに燃料電池の劣化を診断することが可能である。

0022

また、この態様では、前記基準値は、初期又は基準時期に実行された前記診断工程における前記劣化診断要素の値であってもよい。

0023

ここで、「初期」とは、燃料電池の本格的な発電の前段階を指す。この様な段階において燃料電池の劣化診断を行った際に得られる劣化診断要素の値を、例えば、基準値又はリファレンス値とすることによって、燃料電池の劣化を速やかに診断することが可能である。

0024

本発明に係る燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記周波数F1は、前記複素インピーダンスを規定する、前記抵抗値を表す第1軸、及び前記第1軸に直交すると共に容量値を表す第2軸を有する座標平面上で、前記測定周波数を含む測定周波数範囲で描かれる前記複素インピーダンスの周波数特性曲線と前記第1軸との交点であって、且つ前記燃料電池における直流抵抗を規定する点に相当する周波数に設定されている。

0025

この様な座標平面は、複素インピーダンス平面とも称される。この座標平面上に燃料電池の複素インピーダンスをプロットする場合、このプロットの周波数変化の軌跡が、即ち、ここで述べられる「周波数特性曲線」となる。この周波数特性曲線は、「コールコールプロット」とも呼ばれている。この周波数特性曲線をある周波数範囲で描く際、この曲線は第1軸、即ち抵抗値を規定する軸とある周波数で交差する。本態様において、周波数F1は、この交差点であって、且つ燃料電池の直流抵抗を規定する点に相当する周波数に設定されている。ここで「直流抵抗」とは、典型的には接触抵抗である。

0026

この直流抵抗を与える周波数F1は、燃料電池が経時変化に晒されても変化することが無いとされているため、劣化診断の精度を高め得る周波数の一つとなっている。即ち、燃料電池に何らかの変化が生じた際に周波数F1において特定される抵抗値の差分は、そのまま劣化の程度を示す一つの指針となるので、劣化診断を高精度に行うことが可能となる。

0027

尚、係る周波数F1は、予め経験的、又はシミュレーション等によって与えられる性質のものであってもよいし、ある燃料電池において取得された周波数特性に基づいて与えられてもよい。通常、燃料電池において、構成、構造、又は仕様が等しければ、未使用状態におけるインピーダンスの周波数特性は一定か又は大きな差異は無い程度であり、従って、リファレンスとなるべき周波数特性が知れていれば十分である。従って、従来技術の様に測定毎に周波数特性を取得する必要は全くなく、燃料電池の劣化は問題視される程度には生じない。

0028

周波数F1が直流抵抗を規定する点に相当する周波数である燃料電池の劣化診断方法の一の態様では、前記周波数特性曲線は、一部が円弧をなすと共に第1の要因が支配的な第1の領域、及び一部が円弧をなすと共に第1の要因とは異なる第2の要因が支配的な第2の領域を有し、前記周波数F2は、前記第1の領域内で決定され、前記周波数F3は、前記第2の領域内で決定される。

0029

周波数特性曲線は、既に述べた様に複雑な形状を有しており、一般に真円とはならない。また、燃料電池を駆動する際の電流密度によってもこの周波数特性曲線の形状は変化する。この周波数特性曲線には、第1の要因が支配的な第1の領域と、第2の要因が支配的な第2の領域とがあるとされており、それら領域の重なり方の違によって、周波数特性の形状も変化する。

0030

ここで、第1の要因とは、例えば、燃料電池内において酸素が反応する際の反応抵抗であると考えられ、第2の要因とは、例えば、燃料電池内における酸素の拡散に関する抵抗であると考えられる。電流密度条件によっては、これら二つの領域が、例えば、一部円弧状となることによって識別可能となることがある。そこで、この二つの領域から、夫々周波数F2及びF3を選択することによって、燃料電池の劣化が、如何なる要因に起因するものかの判別が容易となる。尚、この態様は、周波数F2及びF3が、夫々異なる要因が支配的とされる領域から選択される限りにおいて、実際に燃料電池の劣化診断に供する電流密度を限定するものではない。

0031

周波数F1が直流抵抗を規定する点に相当する周波数である燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記周波数F2及びF3は、前記第1の領域及び前記第2の領域の夫々における前記円弧の頂点又は該頂点近傍の点に相当する周波数である。

0032

周波数F2及びF3は、異なる要因が支配的とされる領域から選択される限り、上述の効果は担保されるものであるが、例えば、夫々の領域に現れる円弧の頂点にこれら周波数を規定することもできる。この場合、前述の直流抵抗と同様、円弧の頂点を与える周波数は、燃料電池に生じた劣化の影響を受けず保存される。従って、燃料電池の劣化診断に際してその誤差が生じにくく、高精度な劣化診断が可能となるのである。

0033

尚、ここで述べられる「頂点近傍」とは、厳密に頂点である必要はないとの趣旨であり、周波数特性曲線において、円弧の頂点として認識しうる点を全て含んで規定される。

0034

周波数F1が直流抵抗を規定する点に相当する周波数である燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記劣化診断要素は、前記周波数F1、F2及びF3の夫々に対応する前記抵抗値を夫々R1、R2及びR3とした場合に、R1、R2−R1、及びR3−2R2+R1という3つの劣化診断要素を含む。

0035

既に述べた様に、劣化診断要素の形態は、劣化を診断可能な限りにおいて制約を受けるものではないが、効果的に劣化を診断し得る劣化診断要素を生成することは可能である。この態様では、劣化診断要素が、周波数F1、F2及びF3の夫々に対応する抵抗値を夫々R1、R2及びR3とした場合に、R1、R2−R1、及びR3−2R2+R1という3つの劣化診断要素を含む。ここで、R1とは、即ち、前述した直流抵抗の値である。ここで、特に、F2及びF3を夫々異なる要因が支配的な領域から選択した場合には、R2−R1の値によって第1の要因に係る劣化の度合いが、R3−2R2+R1の値によって第2の要因に係る劣化の度合いが夫々容易に診断可能となる。従って、極めて高効率且つ高精度に劣化の診断が可能となるのである。

0036

周波数F1が直流抵抗を規定する点に相当する周波数である燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記燃料電池に対し、予め前記周波数特性曲線を取得する特性取得工程を更に具備し、前記周波数F1、F2及びF3は、前記取得された周波数特性曲線に基づいて決定される。

0037

この態様によれば、特性取得工程において、燃料電池のインピーダンスの周波数特性曲線が取得される。但し、この周波数特性曲線は、周波数F1、F2及びF3を決定するためのものであって、周波数特性曲線を取得すること自体が目的のものではないから、燃料電池の劣化を促進しない程度に実施することが可能である。また、測定周波数が決定された後は、係る周波数特性を取得する必要は生じないので、燃料電池の劣化が生じる可能性は少ない。一方で、この様に予め周波数特性を取得した上で、測定周波数を決定することによって、適切な測定周波数を選択することが可能となるので非常に効果的である。

0038

周波数F1が直流抵抗を規定する点に相当する周波数である燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記測定周波数は、周波数F4(F3>F4)を含み、前記周波数F4は、前記周波数特性曲線と前記第1軸との交点に相当する周波数である。

0039

この態様では、周波数F4を測定周波数として備える。周波数F4は、周波数特性曲線と第1軸との交点であって、直流抵抗R1とは異なる交点である。この様に測定周波数を増やすことによって、周波数特性曲線の近似精度が向上するので、一層燃料電池の劣化診断に係る精度が向上する。この様に測定周波数に周波数F4を含む場合には、この周波数F4に相当する抵抗値をR4とすると、例えば、R4をダイレクトに比較することによって、燃料電池の劣化診断に供することが可能である。

0040

本発明に係る燃料電池の劣化診断方法の他の態様では、前記燃料電池の劣化を診断した結果、前記燃料電池が劣化している場合に、前記劣化している燃料電池の存在を通知する通知工程を更に具備する。

0041

燃料電池が、例えば、自動車等に搭載されている場合には、定期的な点検整備や、走行距離に基づく点検整備だけでは、実使用上問題のあるレベルまで劣化が進行してしまう場合が考えられる。その様な場合、当該搭載状態において、例えば、自動的に、又は一定の期間毎に本発明に係る燃料電池の劣化診断を実施してもよい。

0042

この態様は係る際に特に好適であって、劣化診断工程の結果、燃料電池が何らかの劣化状態にある場合には、通知工程によって、その旨が通知されるので、リアルタイムに燃料電池の劣化の有無を知ることが可能となる。

0043

上述した課題を解決するため、本発明に係る燃料電池の劣化診断装置は、予め定められた電流密度で駆動される燃料電池に対し、周波数F1、F2(F1>F2)及びF3(F2>F3)を含む少なくとも3つの測定周波数の交流信号を印加することにより、前記燃料電池における、前記測定周波数に夫々対応する少なくとも3つの複素インピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、前記取得された複素インピーダンスから、前記測定周波数に夫々対応する前記燃料電池の少なくとも3つの抵抗値を特定する抵抗値特定手段と、前記特定された抵抗値の所定関数である劣化診断要素に基づいて、前記燃料電池の劣化を診断する診断手段とを具備することを特徴とする。

0044

係る劣化診断装置によれば、上述した様な劣化診断を実行することが可能となるので、燃料電池の劣化を効率的且つ高精度に診断することが可能である。

0045

本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態により明らかにされる。

発明を実施するための最良の形態

0046

以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池の劣化診断方法について説明する。
<実施形態>
測定システム100の構成>
始めに、本実施形態に係る燃料電池の劣化診断方法を実現するための測定システムについて、図1を参照して説明する。ここに、図1は、測定システム100の回路構成図である。

0047

図1において、測定システム100は、燃料電池セル10に対し、本発明に係る「燃料電池の劣化診断装置」の一例たる測定装置110が接続されてなる。

0048

燃料電池セル10は、本発明に係る「燃料電池」の一例であり、固体高分子型燃料電池の一セルである。本実施形態において、燃料電池セル10は、N個の燃料電池セル10が積層されてなる不図示の燃料電池スタックの一構成要素である。ここで、燃料電池セル10について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、燃料電池セル10の断面構造図である。例えばサービスステーションなどの点検設備自宅ガレージ等における、燃料電池セル10の定期点検時、設置時、故障時等に、測定装置110は、燃料電池セル10に図1の如くに接続される。

0049

図2において、燃料電池セル10は、紙面に垂直な方向に面的に広がるイオン交換膜からなる電解質膜11を有する。電解質膜11の一方面には、触媒層12及び拡散層13からなるアノード電極14が形成されており、他方面には、触媒層15及び拡散層16からなるカソード電極17が形成されている。このアノード電極14、カソード電極17及びこれら両極に挟持される電解質膜11とは、膜−電極アセンブリ(Membrane-Electrode Assembly)18を形成する。

0050

燃料ガス流路19は、アノード電極14に対し、燃料ガス(通常は水素ガス)を供給する流路である。酸化剤ガス流路20は、カソード電極17に対し、酸化剤ガス(通常は空気)を供給する流路である。尚、燃料ガス流路19は、図2中で紙面に垂直な方向に延在すると共に並列に配列された複数の部分流路を含んでなるか、又は直列蛇行して延びる1本の流路からなる。酸化剤ガス流路20も同様に複数の部分流路を含んでなるか、又は蛇行して延びる流路からなる。更に、燃料ガス流路19及び酸化剤ガス流路20は相互に、交差する方向に延在していてもよい。膜−電極アセンブリ18、燃料ガス流路19及び酸化剤ガス流路20は、燃料電池セル10をそれに隣接する不図示の燃料電池セルから分離するためのセパレータ21によって両側から覆われている。セパレータ21の両端には、冷媒流路22が形成されている。冷媒流路22についても、複数の部分流路を含んでなるか、又は蛇行して延びる流路からなる。

0051

上記構成において、拡散層13に供給される水素ガスが触媒層12によって電子水素イオンに分離される。係る電子は、アノード電極14から図示略の外部回路と通ってカソード電極17に到達すると共に、水素イオンは、電解質膜11を通ってカソード電極17に移動する。一方、カソード電極17では、拡散層16に供給される空気内の酸素分子が、外部回路を通ってきた電子を受け取って酸素イオンとなると共に、更に水素イオンと結合して水となって排出される。燃料電池セル10では、この様にして発電が行われる。

0052

尚、前述の燃料電池スタックが構成される際には、セパレータ21に設けられた冷媒流路22同士が対面する様に、即ち、冷媒流路22が隣接する2個の燃料電池セル10間で共有される様に積層される。

0053

図1戻り、測定装置110は、燃料電池セル10のアノード電極14とカソード電極17との間に直列に接続された交流信号源111及び負荷112、負荷112と並列に挿入されたインピーダンスアナライザ113、並びにインピーダンスアナライザ113に接続された劣化診断部114を備える。

0054

インピーダンスアナライザ113は、インピーダンス測定部113aと抵抗値特定部113bを備える。インピーダンス測定部113aは、交流信号源111の周波数に対応した燃料電池セル10の複素インピーダンスを順次測定することが可能であり、本発明に係る「インピーダンス取得手段」の一例として機能する、或いは、本発明に係る「インピーダンス取得工程」の一例を実行する。

0055

抵抗値特定部113bは、インピーダンス測定部113aによって測定された複素インピーダンスの夫々に対応する抵抗値を順次特定することが可能であり、本発明に係る「抵抗値特定手段」の一例として機能する、或いは、本発明に係る「抵抗値特定工程」の一例を実行する。

0056

劣化診断部114は、交流信号源111、インピーダンスアナライザ113及び劣化診断部114の後述する各部を夫々上位制御するCPU(Central Processing Unit)115、及びメモリ116を備える。メモリ116は、抵抗値特定部113bによって特定された燃料電池セル10の前述の抵抗値を、CPU115の制御に従って格納(記憶)することが可能な、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶媒体である。劣化診断部114は、本発明に係る「診断手段」の一例として機能する。

0057

尚、アノード電極14及びカソード電極17と、測定装置110とは、例えば、これら両極の夫々に設けられた集電板を介して接続されていてもよい。

0058

係る構成の下、一定の電流密度で駆動される燃料電池セル10に対して、交流信号源111から交流信号が印加されると共に、インピーダンスアナライザ113によって、その交流信号の周波数における燃料電池セル10の複素インピーダンスが順次測定され、その複素インピーダンスの夫々に対応した抵抗値が特定される。劣化診断部114では、この抵抗値に基づいて後述する劣化診断処理が実行される。

0059

尚、測定システム100は、CPU115が、測定対象となる燃料電池セル10をN個のセルについて順次切り替えて測定できる様に構成されているが、図1においては、単一の燃料電池セル10のみが示されている。
<劣化診断処理の詳細>
<A:初期劣化診断処理の詳細>
次に、本実施形態に係る劣化診断処理の一態様である、初期劣化診断処理の詳細について、図3を参照して説明する。ここに、図3は、初期劣化診断処理のフローチャートである。尚、係る初期劣化診断処理は、例えば、燃料電池スタックを出荷する前段階において、燃料電池スタックを構成するN個の燃料電池セル10の初期劣化(不良)を診断する処理である。

0060

図3において、最初に、インピーダンス測定を行うための交流信号源111の周波数が決定される(ステップS201)。具体的には、CPU115が、任意の一燃料電池セル10に対し、交流インピーダンス法に基づくインピーダンス測定を実行する。即ち、ステップS201は、本発明に係る「特性取得工程」の一例である。

0061

ここで、ステップS201の詳細について、図4を参照して説明する。ここに、図4は、燃料電池セル10におけるインピーダンスの周波数特性曲線200の模式図である。

0062

図4において、X軸は抵抗値を表しており、Y軸は容量値を表している。周波数特性曲線200は、周波数F1及びF4においてX軸と交差しており、夫々の交点の読み値、即ち抵抗値はR1及びR4となっている。この内、高周波側の交点である抵抗値R1は、燃料電池セル10の直流抵抗を表している。

0063

また、周波数特性曲線200は、二つの領域に区別することができる。高周波側の第1の領域は、燃料電池セル10において、酸素が反応する際の反応の抵抗が主要因となってインピーダンスが決定されると考えられる領域であり、本発明に係る「第1の要因が支配的な第1の領域」の一例である。また、低周波側の第2の領域は、酸素が拡散する際の抵抗が主要因となってインピーダンスが決定されると考えられる領域であり、本発明に係る「第2の要因が支配的な第2の領域」の一例である。この二つの領域は、夫々一部が円弧形状をなしている。

0064

図4において、周波数F2は、第1の領域における、この円弧の頂点付近に相当する周波数であり、同様に周波数F3は、第2の領域における円弧の頂点付近に相当する周波数である。周波数F2及びF3に夫々対応する抵抗値は、夫々R2及びR3となっている。

0065

本実施形態においては、CPU115により、燃料電池セル10の測定周波数として、これら3つの周波数F1、F2及びF3が選択される。

0066

尚、測定周波数は、周波数特性曲線200上の如何なる点であっても構わない。例えば、周波数特性曲線200における抵抗値R4に対応する周波数F4(即ち、本発明に係る「周波数F4」の一例)であっても構わない。但し、直流抵抗を規定する点(即ち、抵抗値R1)に相当する周波数、第1の領域の円弧上の頂点及び第2の領域の円弧上の頂点に夫々相当する周波数は、劣化の進行の有無に因らず概ね保存されるため、高精度に劣化の診断を行うに好適である。

0067

また、ステップS201において、周波数特性曲線200は、測定周波数を決定するために取得される性質のものであり、当該決定が可能な限りにおいて、測定周波数範囲、及び測定周波数間隔の大小は問われない。更に、この様な周波数特性曲線200の取得は、任意の一燃料電池セル10についてのみ行われれば良く、従って、ステップS201に係るインピーダンス測定によって、燃料電池セル10の劣化は進行しない。換言すれば、係る劣化を進行させない範囲で、ステップS201は実行される。

0068

尚、測定周波数は、この様な実測を伴わず、例えば、シミュレーション等によって予め決定されていてもよい。また、既に述べた様に、仕様が同じであれば燃料電池セル間インピーダンス特性に差異は生じにくいから、本実施形態に係る燃料電池セル10のインピーダンスの周波数特性曲線に代替され得るデータ等が予め得られているならば、その様なデータに基づいて測定周波数が決定されてもよい。

0069

図3に戻り、測定周波数F1、F2及びF3が決定されると、CPU115は、処理対象となる燃料電池セル10を示すカウンタiを「1」にセットし(ステップS202)、更に、測定周波数を示すカウンタgを「1」にセットする(ステップS203)。

0070

次に、CPU115は、i番目の燃料電池セル10における、g番目の周波数(即ち、周波数Fg)に対応するインピーダンスZgを測定する(ステップS204)。例えば、ここでは、1番目の燃料電池セル10における周波数F1のインピーダンスZ1が測定される。ステップS204は、本発明に係る「インピーダンス取得工程」の一例である。

0071

インピーダンスZgが測定されると、CPU115は、Zgに対応する抵抗値Rgを特定する(ステップS205)と共に、その値を、メモリ116に格納する(ステップS206)。メモリ116では、係る抵抗値Rgが、i番目の燃料電池セル10におけるg番目の周波数に対応する抵抗値として格納される。尚、ステップS205は、本発明に係る「抵抗値特定工程」の一例である。

0072

次に、CPU115は、カウンタgを「1」インクリメントする(ステップS207)と共に、カウンタgの値が「4」であるか、即ち、ステップS201において決定された3つの測定周波数について、インピーダンスの測定が終了したか否かを判別する(ステップS208)。

0073

測定が終了していない周波数がある場合(ステップS208:NO)、CPU115は、処理をステップS204まで戻し、ステップS204からステップS208に至る処理が繰り返される。こうして、i番目の燃料電池セル10において、全ての測定周波数(F1、F2及びF3)に対応する抵抗値Rgがメモリ116に格納されると(ステップS208:YES)、CPU115は、メモリ116に格納された抵抗値Rgから、劣化診断要素を演算する(ステップS209)。尚、この時点でメモリ116に格納されたRgとは、即ち、前述の直流抵抗R1、第1の領域における円弧の頂点に相当する抵抗値R2及び第2の領域における円弧の頂点に相当する抵抗値R3のことである。

0074

本実施形態において、劣化診断要素は、これらR1、R2及びR3を用いて、「R1」、「R2−R1」及び「R3−2R2+R1」と規定される。CPU115は、これら3つの劣化診断要素の演算が終了すると、これらの値をメモリ116に格納する。(ステップS210)。メモリ116は、格納された劣化診断要素の値を、i番目の燃料電池セル10に対する劣化診断要素の値として格納する。尚、劣化診断要素は、ここで例示する態様に限定されず、抵抗値Rgの何らかの関数として表される値であればよい。但し、本実施形態に係る劣化診断要素は、劣化の要因をある程度特定可能に設定されているので効果的である。尚、測定周波数として、前述の周波数F4が更に選択されている場合には、周波数F4に対応する抵抗値R4をダイレクトに比較することによって、劣化の有無を判定してもよい。

0075

次にCPU115は、カウンタiを「1」インクリメントすると共に、カウンタiの値が「N+1」であるか、即ち、全N個の燃料電池セル10に対して、劣化診断要素の演算が終了したか否かを判別する(ステップS212)。

0076

劣化診断要素の演算が実行されていない燃料電池セル10がある場合、(ステップS212:NO)、CPU115は、処理をステップS203まで戻すと共に、ステップS203からステップS212までの処理を、全N個の燃料電池セル10について繰り返す。N個の燃料電池セル10について、劣化診断要素の演算が終了し、それらが、夫々燃料電池セル10と個別に対応付けられる形でメモリ116に格納されると(ステップS212:YES)、CPU115は、全ての燃料電池セル10間で、劣化診断要素の値を比較する(ステップ213)。

0077

CPU115は、劣化診断要素の値の比較結果に基づいて、劣化したセルがあるか否かを診断する(ステップS214)。劣化を診断するに際し、CPU115は、全N個のセル間で、個々の劣化診断要素の値の平均値を計算する。係る平均値からの偏差が大きい劣化診断要素を有する燃料電池セル10が、即ち、劣化していると診断される。尚、ステップS214における劣化診断の基準は、劣化診断要素の比較に基づいてなされる限り如何なるものであってもよい。事前に、経験的又はシミュレーション等によって、劣化診断の基準値が与えられており、当該基準値と個々のセルの劣化診断要素の値を比較することによって劣化の診断がなされてもよい。また、劣化診断に供する偏差の大小は自由に決定されてよい。

0078

この様に診断された結果判明する燃料電池セル10の劣化は、例えば、実使用による経時劣化とは異なり、燃料電池セル10をスタックに組み付ける際に個々の燃料電池セル10に生じる初期劣化が主である。この様な初期劣化としては、例えば、接触抵抗の増加、ガス拡散不足、触媒活性低下、又は触媒有効利用率低下等の劣化などが挙げられる。尚、ステップS214は、本発明に係る「診断工程」の一例である。

0079

CPU115は、劣化している燃料電池セル10が無いと診断した場合には(ステップS214:NO)、現時点でメモリ116に格納されている個々の燃料電池セル10の劣化診断要素の値を、リファレンスの劣化診断要素の値として改めて格納する(ステップS218)。

0080

また、CPU115は、劣化している燃料電池セル10があると判断した場合(ステップS214:YES)、劣化していると判断された燃料電池セル10の存在を外部に通知する(ステップS215)。この際、劣化と判定された燃料電池セル10を特定する情報(例えば、セル番号等)が一緒に通知される。即ち、ステップS215は、本発明に係る「通知工程」の一例である。

0081

劣化が通知された燃料電池セル10は、例えば、修復又は交換等がなされた(ステップS216)後、再診断される(ステップS217)。具体的には、当該セルに対してのみステップS203からステップS210に亘る処理が再実行され、新たに得られた劣化診断要素の値に基づいて新たにセル間の劣化診断要素の値の平均値が算出されて劣化が診断される。係る処理は、劣化しているセルが無いと診断されるまで繰り返される。尚、図面の煩雑化を防ぐ目的から、図3において、係る再診断処理の繰り返しに係る部分は省略されている。

0082

最終的に、全N個の燃料電池セルについて、劣化が無いと診断されると、処理はステップS218に移行する。CPU115は、その時点における個々の燃料電池セル10における劣化診断要素の値を、最終的な劣化診断要素の値、即ち、リファレンスの劣化診断要素の値としてメモリ116に格納し、初期劣化診断処理が終了する。
<B:経時劣化診断処理の詳細>
燃料電池セル10は、前述した如き初期劣化に加え、時間経過と共にある程度劣化する。次に、この様な経時的な劣化を診断するための、本実施形態に係る劣化診断処理の他の態様である経時劣化診断処理について、図5を参照して説明する。ここに、図5は、経時劣化診断処理のフローチャートである。尚、同図において、図3重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、この経時劣化診断処理が実行されるタイミングは、燃料電池セル10又は燃料電池スタックの仕様用途や使用状況に応じて異なる。

0083

図5において、ステップS202からステップS210に至る処理は、図3と同じである。尚、経時劣化診断処理において、測定周波数は前述の初期劣化診断処理と等しいため、測定周波数を改めて決定する必要はない。

0084

図5において、i番目の燃料電池セル10における劣化診断要素がメモリ116に格納されると(ステップS210)、CPU115は、メモリ116に格納されている、この燃料電池セル10のリファレンスの劣化診断要素の値と、この劣化診断要素の値とを比較し(ステップS301)、i番目の燃料電池セル10が劣化しているか否かを診断する(ステップS302)。この際、その時点で得られた劣化診断要素の値とリファレンスの劣化診断要素の値との偏差に基づいて劣化の診断が行われる。尚、燃料電池セル10が劣化していると判断される偏差の基準値は、予め参照値として与えられていてもよい。

0085

i番目の燃料電池セル10が劣化していると診断された場合(ステップS302:YES)、CPU115は、そのセル番号をメモリ116に一時的に格納する(ステップS303)と共に処理をステップS211に移行させる。一方、i番目の燃料電池セル10が劣化していないと判断した場合(ステップS302:NO)には、処理をそのままステップS211に移行させる。

0086

ステップS211によってカウンタiがインクリメントされると、全N個の燃料電池セル10に対して経時劣化の有無が診断されたか否かが判別される(ステップS212)。経時劣化の診断が実行されていない燃料電池セル10が存在する場合には(ステップS212:NO)、全N個の燃料電池セル10に対して経時劣化の有無が診断処理されるまでステップS203からステップS212に至る処理が繰り返されると共に、全N個の燃料電池セル10に対して経時劣化の有無が診断されると(ステップS212:YES)、CPU115は、メモリ116に格納された、経時劣化があると診断された燃料電池セル10の番号を外部に通知して(ステップS215)、経時劣化診断処理は終了する。即ち、経時劣化診断処理は、主として、一燃料電池セル10内で劣化診断に係る比較を行う点で初期劣化診断処理と異なっている。

0087

尚、ここでは、劣化診断要素の値を、前述したリファレンスの劣化診断要素の値と比較しているが、比較対象はこれに限定されない。経時劣化診断処理が、例えば、定期点検の様に繰り返し行われる場合には、前回の経時劣化診断処理において得られた劣化診断要素の値が比較対照となってもよい。

0088

ここで、図6を参照し、経時劣化診断処理について補足的に説明する。ここに、図6は、経時劣化診断処理が実行された結果を複素平面上に表した図である。尚、図6は、図4と同様の複素インピーダンス平面であるとする。

0089

図6には、燃料電池スタックを構成する任意の燃料電池セル10に対して、時刻TA、TB及びTcにおいて、経時劣化診断処理が実施された結果が示されている。同図において、時刻TAにおいて得られたR1、R2及びR3は、夫々R1A、R2A及びR3Aであり、同様に、時刻TBにおいてR1B、R2B、及びR3B、並びに時刻TCにおいてR1C、R2C、及びR3Cが夫々得られている。

0090

図6に示す様に、本実施形態に係る経時劣化診断処理が実行された結果は、複素インピーダンス平面上では散在する点として示される。従って、図4に示す様な周波数特性曲線を劣化診断処理の度に、又は燃料電池セル10毎に繰り返す場合と比較すると、燃料電池セル10の劣化診断に必要な処理時間は、1/5〜1/10程度となっており、効率的な劣化の診断が可能となっている。

0091

また、図4に示した通り、F1は燃料電池セル10の直流抵抗を表し、F2は第1の領域から選択された測定周波数であり、F3は第2の領域から選択された測定周波数であるため、これらの抵抗値から生成される劣化診断要素の値によって、燃料電池セル10の劣化を高精度に診断することが可能である。

0092

例えば、R1AとR1Cの差分が大きければ、即ち、燃料電池セル10における接触抵抗の劣化が考えられ、R2A−R1AとR2C−R1Cとの差分が大きければ、第1の要因、即ち、酸素の反応に関する何らかの劣化が進行していると診断することができる。更に、R3A−2R2A+R1AとR3C−2R2C+R1Cとの差分が大きければ、第2の要因、即ち、酸素の拡散に関する何らかの劣化が進行していると診断することができる。

0093

この様に主たる支配要因が異なった領域から測定周波数を選択することによって、単に燃料電池セル10の劣化の有無を診断するのみならず、劣化の要因をある程度特定することが可能となって、夫々の劣化要因に応じた適切な処置が可能となるのである。

0094

尚、例えば、燃料電池スタックを車載する場合等には、任意のタイミングで劣化診断を実施することが難しい。この様な場合には、測定装置110を車に搭載してもよい。この車載された測定装置110によって、絶えず燃料電池セルの劣化を監視することが可能となる。

0095

本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う燃料電池の劣化診断方法及び装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。

図面の簡単な説明

0096

本発明の実施形態に係る測定システム100の構成回路図である。
本発明の実施形態に係る燃料電池セル10の断面構造図である。
本発明の実施形態に係る初期劣化診断処理のフローチャートである。
初期劣化診断処理に係る周波数特性曲線200の模式図である。
本発明の実施形態に係る経時劣化診断処理のフローチャートである。
経時劣化診断処理の結果を複素平面に表した図である。

符号の説明

0097

10…燃料電池セル、100…測定システム、110…測定装置、111…交流信号源、112…負荷、113…インピーダンスアナライザ、113a…インピーダンス測定部、113b…抵抗値特定部、114…劣化診断部、115…CPU、116…メモリ。200…周波数特性曲線。

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