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技術 欝モデルマウス作製方法

出願人 土江伸誉谷口泰造有限会社行動医科学研究所
発明者 土江伸誉桐山美香谷口泰造
出願日 2005年3月4日 (15年9ヶ月経過) 出願番号 2005-061427
公開日 2005年10月13日 (15年2ヶ月経過) 公開番号 2005-278646
状態 特許登録済
技術分野 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード 水槽内壁 対処行動 基準円 もがき cm群 各試行間 試行後 交互作用
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2005年10月13日)のものです。
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図面 (8)

課題

解決手段

(a) 用いるマウス四肢又は尾が底に届かない深さに水を満たした水槽と、マウスが四肢の何れかで体を支えて頭部を水面上に維持できる深さで水没して不可視に設けられた逃避台とを用意し、(b)水中にマウスを放ち所定時間内にマウスが逃避台上に到達するのに成功したときはこれを回収し、失敗したときはこれを該逃避台上に一旦載せた上で回収することよりなる試行を行い、(c)試行(b)を1日に所定回数反復し、(d)ステップ(c)を所定日数反復し、 (e) 各日における、自ら該逃避台上に到達した割合が、ステップ(d)をとおして一旦上昇した後下降したか、及び/又は、逃避潜時の平均が、ステップ(d)をとおして一旦短縮した後延長したものであるマウスであって、最終日の全ての試行に不動化挙動を示すマウスを選択することによるものである、欝モデルマウス作製方法。

概要

背景

現在、抗欝薬スクリーニングに用いられている最も標準的な方法は、Porsolt等によって考案された強制水泳試験である。この方法では、被験動物ラット)は、プレキシガラス製の円筒(直径18cm、高さ40cm)に入れられ、水深15cmの水中(25℃)に15分間放置される。最初は、ラットは溺れないよう懸命に泳ぐが、その後は頭を水上に維持するのに必要な動きを除き全くの不動状態を呈するに至る。これが、逃避不可能であることをラットが学習したことによる「絶望」状態を示すものと見做されており、その状態に対して抗欝薬候補化合物の効果が試験される(非特許文献1参照)。

しかしながら、逃避不可能な条件下での被験動物の不動化という挙動を「欝」であると結論付けるには、証拠が不十分である。すなわち、不動化という挙動は、エネルギー消費を最小限に抑えるための適応行動の一つであるかも知れない。また、何らかの抗欝処置による不動状態からの回復は、単に無意味な「もがき」の再開に過ぎないかも知れない。従って、強制水泳試験による抗欝薬スクリーニングの妥当性については、再検討の必要が指摘されていた(非特許文献2参照)。

一方、海馬依存性学習課題とされるMorris型水迷路学習という方法が知られている(非特許文献3参照)。この方法では、所定の大きさの水槽中の水に投入された被験動物(ラット)が、水面下に置かれた不可視逃避台を見つけ出すまでの時間が測定され、それにより、空間認知能力が評価される。
Porsolt, R.D. et al., Nature, 266: 730-732 (1977)
Hawking, J. et al., Nature, 274: 512 (1978)
Morris, R. G. et al., Place navigation impaired in rats with hippocampal lesions. Nature 297, 681-683. (1982)

概要

モデルマウス作製方法の提供。(a) 用いるマウス四肢又は尾が底に届かない深さに水を満たした水槽と、マウスが四肢の何れかで体を支えて頭部を水面上に維持できる深さで水没して不可視に設けられた逃避台とを用意し、(b)水中にマウスを放ち所定時間内にマウスが逃避台上に到達するのに成功したときはこれを回収し、失敗したときはこれを該逃避台上に一旦載せた上で回収することよりなる試行を行い、(c)試行(b)を1日に所定回数反復し、(d)ステップ(c)を所定日数反復し、 (e) 各日における、自ら該逃避台上に到達した割合が、ステップ(d)をとおして一旦上昇した後下降したか、及び/又は、逃避潜時の平均が、ステップ(d)をとおして一旦短縮した後延長したものであるマウスであって、最終日の全ての試行に不動化の挙動を示すマウスを選択することによるものである、欝モデルマウス作製方法。 なし

目的

上記背景において、本発明は、従来の代表的な欝モデル動物作製方法とは全く異なった、すなわち、逃避可能な課題であるにも拘わらず被験動物が逃避行動を全く諦めてしまうような、ヒトの鬱病患者に類似した、より妥当性が高い欝モデル動物を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

モデルマウス作製方法であって、(a) 用いるマウス四肢又は尾の何れもが底に届かない深さに水を満たした水槽と、該水槽の一部に備えられ、マウスが四肢の何れかで体を支えて少なくとも頭部を水面上に維持できる深さで水面下に没して不可視に設けられた逃避台とを用意し、(b) 該水槽の水中にマウスを放ち、所定時間内に該マウスが該逃避台上に到達するのに成功したときはこれを回収し、該マウスが該逃避台上に到達するのに失敗したときはこれを該逃避台上に一旦載せた上で回収することよりなる試行を行い、(c) 上記(b)の試行を1日に所定回数反復し、(d) 上記(c)のステップ所定日数反復し、そして(e) 各日における、該所定回数にわたる上記(b)の試行をとおして自ら該逃避台上に到達した割合が、該所定日数にわたる上記(d)のステップをとおして一旦上昇した後に下降したか、及び/又は、各日における、該所定回数にわたる上記(b)の試行をとおした逃避潜時の平均が、該所定日数にわたる上記(d)のステップをとおして一旦短縮した後に延長したものであるマウスであって、最終日の全ての試行において不動化挙動を示すマウスを選択することによるものである、欝モデルマウス作製方法。

請求項2

上記(b)の試行における該所定時間が50〜70秒である、請求項1の方法。

請求項3

上記(c)における該所定回数が4〜7回である、請求項1又は2の方法。

請求項4

該水槽及び該逃避台を、第1日目の全試行のうち失敗する試行の比率が50%を超えるように選択することを特徴とする、請求項1ないし3の何れかの方法。

請求項5

該水槽及び該逃避台を、第1日目の全試行のうち失敗する試行の比率が50〜70%となるように、選択することを特徴とする、請求項1ないし4の何れかの方法。

請求項6

上記(d)における所定日数が少なくとも4日である、請求項1ないし5の何れかの方法。

請求項7

最終日及びその直前の日の全ての試行において不動化の挙動を示すマウスを選択するものである、請求項1ないし6の何れかの方法。

請求項8

該水槽が、80≦D≦130で規定されるD[cm]を直径とする円又はこれと等しい面積を有する多角形等の水面を与えるものであり、該逃避台の上面の面積が、8≦d≦D/20+6.5で表されるd[cm]を直径とする円又はこれと等しい面積を有する多角形等であることを特徴とする、請求項1ないし7の何れかの方法。

請求項9

請求項1ないし8の何れかの方法によって作製された欝モデルマウス。

請求項10

請求項1ないし8の何れかの方法によって作製された欝モデルマウスにスクリーニング対象化合物投与して上記(b)の試行を行わせ、マウスが不動化の挙動から回復するか否か及び/又は逃避潜時が短縮するか否かを観察し、不動化の挙動から回復した及び/又は逃避潜時が短縮したマウスに投与したスクリーニング対象化合物を抗欝性の化合物として選択することを特徴とする、抗欝薬スクリーニング方法

請求項11

マウスにスクリーニング対象化合物を投与して請求項1ないし8の何れかの方法により欝モデルマウス作製を行い、欝状態に陥るマウスの比率を、当該化合物を投与しないマウスを用いて当該方法により欝モデルマウス作製を行ったときに欝状態に陥るマウスの比率と比較して、欝状態に陥るマウスの比率の低下をもたらしたスクリーニング対象化合物を抗欝性の化合物として選択することを特徴とする、抗欝薬スクリーニング方法。

技術分野

0001

本発明は、欝モデルマウス作製方法、それにより作製された欝モデルマウス、及びこれを用いた抗欝薬スクリーニング方法に関する。

背景技術

0002

現在、抗欝薬スクリーニングに用いられている最も標準的な方法は、Porsolt等によって考案された強制水泳試験である。この方法では、被験動物ラット)は、プレキシガラス製の円筒(直径18cm、高さ40cm)に入れられ、水深15cmの水中(25℃)に15分間放置される。最初は、ラットは溺れないよう懸命に泳ぐが、その後は頭を水上に維持するのに必要な動きを除き全くの不動状態を呈するに至る。これが、逃避不可能であることをラットが学習したことによる「絶望」状態を示すものと見做されており、その状態に対して抗欝薬候補化合物の効果が試験される(非特許文献1参照)。

0003

しかしながら、逃避不可能な条件下での被験動物の不動化という挙動を「欝」であると結論付けるには、証拠が不十分である。すなわち、不動化という挙動は、エネルギー消費を最小限に抑えるための適応行動の一つであるかも知れない。また、何らかの抗欝処置による不動状態からの回復は、単に無意味な「もがき」の再開に過ぎないかも知れない。従って、強制水泳試験による抗欝薬スクリーニングの妥当性については、再検討の必要が指摘されていた(非特許文献2参照)。

0004

一方、海馬依存性学習課題とされるMorris型水迷路学習という方法が知られている(非特許文献3参照)。この方法では、所定の大きさの水槽中の水に投入された被験動物(ラット)が、水面下に置かれた不可視逃避台を見つけ出すまでの時間が測定され、それにより、空間認知能力が評価される。
Porsolt, R.D. et al., Nature, 266: 730-732 (1977)
Hawking, J. et al., Nature, 274: 512 (1978)
Morris, R. G. et al., Place navigation impaired in rats with hippocampal lesions. Nature 297, 681-683. (1982)

発明が解決しようとする課題

0005

上記背景において、本発明は、従来の代表的な欝モデル動物作製方法とは全く異なった、すなわち、逃避可能な課題であるにも拘わらず被験動物が逃避行動を全く諦めてしまうような、ヒトの鬱病患者に類似した、より妥当性が高い欝モデル動物を提供することを目的とする。

0006

本発明者らは、上記目的の達成に向けて検討を重ねた。その結果、Morris型水迷路学習の方法を変形して、一定以上の難度の課題をマウスに反復して課すことにより、大半のマウスでは逃避台への到達という課題達成の速度や成功率が高まるのに対し、一部のマウスは、逃避台への到達に成功して逃避が可能であることを経験した後の試行で、課題達成の速度や成功率が低下し次第に水中で不動化の挙動のみを示すようになることを見出した。この挙動は、諦めや絶望以外の選択肢が充分あるにも拘わらず動機付けが低下し行動を停止するという、欝状態に相当するものであると判断される。本発明は、この発見に基づき更に検討の結果完成したものである。

課題を解決するための手段

0007

すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)欝モデルマウス作製方法であって、
(a) 用いるマウスの四肢又は尾の何れもが底に届かない深さに水を満たした水槽と、該水槽の一部に備えられ、マウスが四肢の何れかで体を支えて少なくとも頭部を水面上に維持できる深さで水面下に没して不可視に設けられた逃避台とを用意し、
(b) 該水槽の水中にマウスを放ち、所定時間内に該マウスが該逃避台上に到達するのに成功したときはこれを回収し、該マウスが該逃避台上に到達するのに失敗したときはこれを該逃避台上に一旦載せた上で回収することよりなる試行を行い、
(c) 上記(b)の試行を1日に所定回数反復し、
(d) 上記(c)のステップ所定日数反復し、そして
(e) 各日における、該所定回数にわたる上記(b)の試行をとおして自ら該逃避台上に到達した割合が、該所定日数にわたる上記(d)のステップをとおして一旦上昇した後に下降したか、及び/又は、各日における、該所定回数にわたる上記(b)の試行をとおした逃避潜時の平均が、該所定日数にわたる上記(d)のステップをとおして一旦短縮した後に延長したものであるマウスであって、最終日の全ての試行において不動化の挙動を示すマウスを選択することによるものである、
欝モデルマウス作製方法。
(2)上記(b)の試行における該所定時間が50〜70秒である、上記1の方法。
(3)上記(c)における該所定回数が4〜7回である、上記1又は2の方法。
(4)該水槽及び該逃避台を、第1日目の全試行のうち失敗する試行の比率が50%を超えるように選択することを特徴とする、上記1ないし3の何れかの方法。
(5)該水槽及び該逃避台を、第1日目の全試行のうち失敗する試行の比率が50〜70%となるように、選択することを特徴とする、上記1ないし4の何れかの方法。
(6)上記(d)における所定日数が少なくとも4日である、上記1ないし5の何れかの方法。
(7)最終日及びその直前の日の全ての試行において不動化の挙動を示すマウスを選択するものである、上記1ないし6の何れかの方法。
(8)該水槽が、80≦D≦130で規定されるD[cm]を直径とする円又はこれと等しい面積を有する多角形等の水面を与えるものであり、該逃避台の上面の面積が、8≦d≦D/20+6.5で表されるd[cm]を直径とする円又はこれと等しい面積を有する多角形等であることを特徴とする、上記1ないし7の何れかの方法。
(9)上記1ないし8の何れかの方法によって作製された欝モデルマウス。
(10)上記1ないし8の何れかの方法によって作製された欝モデルマウスにスクリーニング対象化合物投与して上記(b)の試行を行わせ、マウスが不動化の挙動から回復するか否か及び/又は逃避潜時が短縮するか否かを観察し、不動化の挙動から回復した及び/又は逃避潜時が短縮したマウスに投与したスクリーニング対象化合物を抗欝性の化合物として選択することを特徴とする、抗欝薬スクリーニング方法。
(11)マウスにスクリーニング対象化合物を投与して上記1ないし8の何れかの方法により欝モデルマウス作製を行い、欝状態に陥るマウスの比率を、当該化合物を投与しないマウスを用いて当該方法により欝モデルマウス作製を行ったときに欝状態に陥るマウスの比率と比較して、欝状態に陥るマウスの比率の低下をもたらしたスクリーニング対象化合物を抗欝性の化合物として選択することを特徴とする、抗欝薬スクリーニング方法。

発明の効果

0008

本発明は、欝に陥るプロセス及びその強さを動物で研究することを可能にし、且つ、安全な場所への逃避という適応性の挙動が、投与化合物によって回復するか否かを観察することによる、抗欝薬のスクリーニングシステムを提供することができる。

発明を実施するための最良の形態

0009

本発明において、各回の試行におけるマウスの課題達成の速度は、自ら逃避台上に到達するに要した時間(「逃避潜時」という)の形で把握することができる。逃避潜時は、マウスが所定時間内に自ら逃避台に到達することに失敗したときは、当該所定時間を以ってこれに相当するものとする。そのように定義することにより、マウスが逃避台への到達に失敗した場合も含めて逃避潜時として記録することができ、課題達成の速度という面から経時的にマウスの成績を評価することが可能となる。

0010

本発明において、「不動化」とは、1日5回の試行の全てにおいて動物が「不動性」を示すことをいい、「不動性」とは、各試行中(例えば60秒間)において、動物が逃避台に到達せず、且つ、動物が水中で四肢を全く動かすことなく単に頭部を水面上に出して浮いているだけの状態が、各試行中の50%以上の時間を占める場合をいう。

0011

本発明においては、マウスに試行を課すが、その難度は、マウスが第1日目の試行全てにおいて平均で50%以上の率で失敗するようにするのが好ましい。水槽の広さと逃避台の大きさとをそのように設定しておくことによって、一部のマウスは、一旦は逃避台への到達を経験するにも拘わらず、その後到達することの困難さのために、次第に動機付けを低下させ不動化へと陥る。第1日目の全試行における失敗率の平均が60%以上となるようにすることがより好ましく、70%以上となるようにすることが更に好ましい。但し、難度は、余り高くすると成功経験のないままとなってしまうため、少なくとも1日目又は2日目の試行を通じて少なくとも1度は、自力で逃避台に辿り着く経験ができるように設定することが好ましい。通常は、第1日目の全試行における失敗率の平均が90%以下となるようにするのが好ましく、85%以下となるようにするのが更に好ましい。

0012

試行の難度は、主として、水槽が与える水面の大きさと逃避台の上面の大きさとの関係で決定される。例えば、水槽が直径90cmの円形の水面を与え、逃避台の上面が直径10cmの円形の板である場合、水槽を囲む無地衝立上の一箇所に、水面から30〜40cmの高さに1個の立体的目印(例えば横幅約30cm、厚みと高さ方向幅各約15cm程度のサイズの3次元物体)が設置されているときは、動物が初日の試行のうち約55%に失敗するようにすることができ、そのような立体的目印がない場合には、動物が初日の試行のうち約70%に失敗するようにすることができた。

0013

水槽は、円形とする場合直径80〜130cmの範囲とするのが好ましく、80〜120cmの範囲又は80〜110cmの範囲とするのが便利である。水槽の断面を多角形等とする場合も、これらの円(基準円)と等しい面積のものとすることが好ましい。ここに、「多角形等」とは、4角形、5角形、6角形その他任意の多角形を含み、また隣接する角を結ぶ各辺が直線であるものに限らず、曲線で構成されている図形も含み、且つ楕円等のように全体が曲線のみで構成されている図形も含むものと定義される。但し多角形等の外周は、基準円の円周から比較的離れない形状であることが好ましく、外周が、基準円と等しい面積の正方形内接円の円周と外接円の円周とで画される範囲に入るものであることが好ましい。基準円の直径をD(80≦D≦130cm)としたとき、そのような内接円の直径(DI)及び外接円の直径(DO)は、それぞれ、DI=0.5×π1/2×D≒0.886×D、DO=DI×21/2≒1.25×Dである。

0014

逃避台の上面の大きさは、マウスが四肢でその上に載り易いように、円であれば直径8cm以上であることが好ましい。また、水槽の広さに応じて調節することが好ましく、水槽により与えられる水面が直径80cm、90cm、110cm、120cm又は130cmの円であるときは、逃避台は、円形とするときは、それぞれ直径10.5cm以下、11.0cm以下、11.5cm以下、12.0cm以下、12.5cm以下及び13.0cm以下とすることが好ましい。この関係は、水槽の直径をD[cm]、逃避台の直径をd[cm]としたとき、8≦d≦D/20+6.5で表される。逃避台の上面が円でないときは、直径d[cm]の円の面積と同じ面積の多角形等であることが好ましい。ここに「多角形等」は前記定義に同じであり、また、外周が、直径d[cm]の円と等しい面積の正方形の内接円(直径0.886×d)の円周と外接円(1.25×d)の円周とで画される範囲に入るものであることが好ましい。

0015

本発明において、「逃避台」の上面(マウスが四肢で自らを支えて載ることのできる部分)の形態は任意であってよい。平板でもよいが、これに限定されず、網状のものを用いてもよい。平板でない場合には、逃避台の上面について「面積」とは、これを上方から見たときの面積をいう。

0016

各試行の所定時間の長さは、50〜70秒程度であることが好ましい。各試行間の動物の休息時間の長さは、適宜に設定してよい。

0017

1日に反復される試行の回数は、5回程度行うのが好ましいが、これに限定されず、マウスの状態を見ながら、4〜7回など、適当な回数反復することができる。

0018

試行は複数日にわたって行われ、通常は4日以上行われる。欝状態に陥る動物の割合を増やし且つ確かに欝状態に陥っていることを確認するためには、5日、6日、7日又は8日間にわたって試行が行われる。それ以上の期間にわたって試行を反復してもよい。試行は通常、原則として連日で行うことが好ましい。

0019

マウスが欝状態に陥ったことは、その日の試行においてマウスが不動化の挙動を示したということによって判定される。但し、その状態の安定化を図るため、またその状態が安定していることを確認するために、隣り合った2日にわたる試行の双方において不動化の挙動を示したマウスを選択するようにすることが、より好ましい。

0020

水槽の水温は、20〜25℃の範囲でよく、気温は通常の動物飼育室の室温と同様であってよい。

0021

本発明において、逃避台について「不可視」とは、水面から逃避台がほぼ見えない状態であることをいう。不可視に逃避台を設けるには、水槽の水に無毒性インディアインク、墨汁等の色素又は顔料を添加すればよい。逃避台の色を、添加する色素又は顔料と近い色にしておくことで、水面下5mm程度の深さにある逃避台も、容易に不可視とすることができる。尤も、水と屈折率の近い透明な材料で形成する等、他の適宜な方法を採用してもよい。

0022

本発明により作製される欝モデルマウスに、経口、注射その他の方法で、スクリーニング対象化合物を投与して、試行を与え、マウスが不動化の挙動から回復するか否か及び/又は逃避潜時が短縮するか否かを観察し、不動化の挙動から回復し及び/又は逃避潜時が短縮したマウスに投与したスクリーニング対象化合物を、抗欝性の化合物として選択することができる。
代わりとして、マウスにスクリーニング対象化合物を投与して本発明の欝モデルマウス作製方法に付し、それにより欝状態に陥るマウスの比率を、当該化合物を投与しないマウスを用いて当該方法により欝モデルマウス作製を行ったときに欝状態に陥るマウスの比率と比較して、欝状態に陥るマウスの比率の低下をもたらしたスクリーニング対象化合物を、抗欝性の化合物として選択することができる。これら、何れの方法も、従来の方法による評価とは異なり、課題解決が可能な条件であるにも拘わらずマウスが適応的な対処行動を全く諦めてしまうという、ヒトの欝に類似したモデルを用いるため、従来の方法に比して、妥当性の高いスクリーニングが可能となる。

0023

〔水迷路学習〕
(方法)
高さ20cmの台座の上に、直径90cm、深さ36cmの円筒形の水槽を置き、これを、高さ120cmの特徴のない、白色の衝立4枚で四方を囲んだ。衝立の表面には、目印となる2つのポスタービデオカメラ及び、立体的目印としての黒い人形(横幅約30cm、厚みと高さ方向幅各約15cm)を取り付けた。水槽に水を深さ約20cmまで満たし、水温を22±1℃に保った。水には、黒い円板形逃避台を水面下5mmの位置に配置したときにほぼ見えなくなる濃さにまで、墨汁を加えた。実験室の室温は21℃に維持した。

0024

直径10cm、15cm及び20cmの3種類のサイズの円形逃避台のいずれかを、その外周と水槽内壁との距離が20cmとなる位置に、水深5mmの深さで、設置した。

0025

8〜12週齢雄性C57BL/6Nマウス〔試験開始時体重26.3±3.59g(平均±SD)〕を、上記の3種の逃避台の何れを用いて水迷路学習を課すかにより、無作為に25匹ずつの3群(10cm群、15cm群、20cm群)に分けた。これら全てのマウスについて、1日5回の試行訓練を8日間連続して施した。試行は、飼育室暗期から明期切り替わってから少なくとも2時間を経過した後で開始することとし、午前9時より午後2時までの間に行った。各試行において、マウスが60秒以内に逃避台上に到達した場合は、それに要した時間(秒)を逃避潜時として記録し、マウスを10秒間その上に滞在させた後、水槽から出した。マウスが60秒以内に逃避台上に到達しなかった場合には、実験者が動物を逃避台へと連れて行き、その上に10秒間載せ、その試行につき「失敗」と判定して、逃避潜時を60秒と記録した。各試行間の時間間隔は(各試行後の逃避台上の滞在時間である10秒間を除き)、20秒間とした。

0026

(結果)
図1は、逃避潜時(秒)の平均値及び標準誤差縦軸に、訓練日数を横軸にとって、各群の動物における逃避潜時(秒)の変化を表したグラフである。15cm群又は20cm群では、15cm群の方が遅れるものの、両群とも訓練日数と共に逃避潜時は短縮しており、逃避行動を被験動物が的確にとるようになってゆくことが分かる。これに対して、より難度の高い試行を課した10cm群では、試験開始4日目までは逃避潜時が短縮したものの、以後は逆に延長し続け、他の2群とは全く異なったパターンを示していることがかる。分散分析ANOVA)において、逃避台のサイズの主効果(F(2,72)=26.92)、訓練日数の主効果(F(7, 504)=44.28)及びそれらの交互作用(F(14, 504)=4.32)は、全て有意であった(Ps<0.05)。

0027

図2は、各日の5回の試行のうち逃避に失敗した試行の比率(%)の平均値及び標準誤差を縦軸に、訓練日数を横軸にとって、各群の動物における試行失敗率(%)の変化を表したグラフである。このグラフにも示されているように、15cm群と20cm群においては、何れも試行に失敗する比率は訓練日数と共に減少していった、10cm群においては、試験開始3日目までは減少していた試行失敗率が、4日目以降は逆に上昇し続けた。第1日目における試行失敗率をみると、10cm群が約55%と、半分以上が失敗しており、15cm群では、約40%であり、20cm群では27%であった。分散分析(ANOVA)において、逃避台のサイズの主効果(F(2,72)=18.29)、訓練日数の主効果(F(7, 504)=17.19)及びそれらの交互作用(F(14, 504)=3.10)は、全て有意であった(Ps<0.05)。

0028

図3は、不動化を示した動物の割合(%)を縦軸に、訓練日数を横軸にとって、各群における不動化を呈する動物の出現率推移を比較したグラフである。図に示されているように、2日目では不動化を呈する動物はいなかった。20cm群では不動化を呈する動物は現われず、15cm群でも5日目に不動化を呈する動物が一時的に現れたことを除き、何れの動物も逃避行動をとった。これとは対照的に、10cm群においては、3日目以降不動化を呈する動物が見られ始め、その比率は訓練日数とともに直線的に増大し、8日目には28%に達した。

0029

10cm群の動物は、訓練2日目には何れも、少なくとも1度は自ら逃避台を探し当ててこれに載ることに成功しており、それ故逃避台に逃避できることを経験済みであったにも拘わらず、3日目以降より、一部の動物について、不動性が顕著となり、1日の試行の全てにおいて不動状態を示すものである不動化の挙動に陥るものが見られた。表1に、10cm群の各被験動物についての、1日の試行における失敗率の推移を示す。10cm群の被験動物のうち、訓練3日目以降に高率で失敗を示した個体はその後の訓練でも引き続き高率で失敗を示した。なお、訓練3日目以降の失敗は、殆どが不動性によるものであった。

0030

0031

上記の結果において特すべきことは、10cm群の動物において、訓練により、逃避潜時が一旦短縮した後に、逃避成績が低下した点である。上記の実験条件は、学習性絶望〔Maier, S.F. et al., M.E.P. J. Exp. Psychol, 105: 3-46 (1976)〕や、欝についての従来の研究〔Porsolt, R.D. et al., Nature, 266: 730-732 (1977)〕とは全く異なるものである。すなわち、10cm群の被験動物が置かれた状況では、諦めや絶望以外にも対処方法があった。それにも拘わらず、直径10cmの不可視の逃避台への逃避という、比較的困難な条件で訓練された被験動物のうちの幾らかが、動機付けの低下から、不動状態へ陥った(これらは、欝を示すものである)。この観察結果は、客観的には解決できる筈の問題を気に病んで意欲を失い、遂には欝に至ってしまう人々の症例と類似している。また、10cm群のマウスには、全て同一条件の訓練を課したにも拘わらず、欝に陥る群とそうでない群とに2分した。これは、同じ環境下で欝に陥る人々とそうでない人々とに分かれることと類似している。

0032

〔水迷路学習〕
(方法)
8〜15週齢の雄性C57BL/6Nマウス(54匹)につき、立体的目印としての黒い人形を取り去った以外は実施例1と同一の条件で、直径10cmの逃避台を用いて、5日間の試行を行った。5日目の時点を基準として、不動化した動物とそうでない動物とに分け(それぞれ、敗者群及び勝者群とする)、それぞれを更に、訓練開始の20分前に抗欝薬イミプラミンを投与(30mg/kgを腹腔内投与)する群と生理食塩水を投与する群とに(但し、訓練5日目の逃避成績が等しくなるように)2分して、敗者−イミプラミン群、敗者−生食群、勝者−イミプラミン群及び勝者−生食群の4群を構成し、更に5日間試行を続行した。結果を以下に示す。

0033

(結果)
図4は、全てのマウスを、訓練6日目以降にイミプラミンを投与したものと生理食塩水を投与したものとに2分して(イミプラミン群及び生食群)、訓練初日から10日目までにわたる訓練日数に伴った試行失敗率(%)の推移を示したものである。訓練初日の試行失敗率は、全体で約70%であり、これら2つの群間有意差はない。第5日目まで(すなわち、薬物投与のない期間)は両群ともに、失敗率が一旦低下(2〜3日目)した後に上昇に転じている。6日目以降は、生食群では、試行失敗率が徐々に上昇する傾向を示しているが、イミプラミン投与群では逆に急速に低下し、逃避台に到達する率が上昇していることが分かる。

0034

また、訓練5日目に不動化を示したマウスのうち、その後に生理食塩水を投与された群(敗者−生食群)では、訓練6〜10日目で試行失敗率および逃避潜時が改善しなかったのに対し、イミプラミンを投与された群(敗者−イミプラミン群)では、これらの値が急速かつ大幅に改善するのが認められた。また、勝者群の訓練6〜10日目についても、生理的食塩水を投与された群(勝者−生食群)では逃避潜時の短縮及び試行失敗率の低下が途中で止まるのに対し、イミプラミンを投与された群(勝者−イミプラミン群)では、逃避潜時の短縮及び試行失敗率の改善が認められた。

0035

図5及び6は、ストレス時に血中レベルが上昇することの知られている11−ヒドロキシコルチコステロイド(11−OHCS)及びコルチゾルの血中レベルにつき、訓練最終日において不動化していたマウス5匹(不動群:イミプラミン投与マウス1匹、生理食塩水投与マウス4匹)、不動化していなかったマウス7匹(水泳群:イミプラミン投与マウス1匹、生理食塩水投与マウス6匹)、及び水迷路学習に付さなかった同週齢の同系雄性マウス6匹(対照群)を無作為に選び出し、訓練最終日の翌日に血中レベルを測定した結果を示す(平均±SE)。図より、不動群では何れの化合物の血中レベルも対照群より高いが、水泳群では、何れの化合物の血中レベルも不動群の約1/2であり、対照群と比較しても低かった。このことは、不動化したマウスでストレスレベルが高い一方、不動化せずに泳いだマウスでは不動化したマウスよりストレスレベルが低く、また、訓練に付さなかったマウスに比しても低いことを窺わせる。

0036

本実施例の結果は、本発明の方法により、マウスを欝に陥らせ、それに対する抗欝薬の効果が評価できることを示している。また、欝に陥るまでには至っていない動物についても、その後の試行反復での失敗率の推移が抗欝薬投与で改善されることから、欝の予防という側面での抗欝薬の効果の評価にも、本発明の方法が使用できると考えられる。

0037

〔水迷路学習〕
(方法)
8〜15週齢の雄性C57BL/6Nマウス(26匹)につき、実施例2と同様の条件で試行を課し、敗者群(n=14:5日目に失敗率100%)及び勝者群(n=12:5日目に失敗率0%)に分けた後、それぞれを更に、訓練開始の20分前に抗欝薬イミプラミンを投与(30mg/kgを腹腔内投与)する群と生理食塩水を投与する群とに(但し、訓練5日目の逃避成績が等しくなるように)2分して、敗者−イミプラミン群(n=8)、敗者−生食群(n=6)、勝者−イミプラミン群(n=6)及び勝者−生食群(n=6)の4群を構成し、更に5日間試行を続行した。

0038

(結果)
上記の試験結果を、各日の試行失敗率の推移(表2)及び逃避潜時の推移(表3、図7)として示す。

0039

0040

0041

表2、3及び図7から明らかなように、水迷路学習において、敗者群のうちイミプラミンを投与されたマウスでは、敗者群のうち生食を投与されたマウスに比して、逃避潜時の顕著な改善が認められた。

0042

〔水迷路学習〕
強制水泳では抗欝効果の判定が困難であるマレイン酸フルボキサミン(参考文献1、2)について効果判定試験を行った。すなわち、実施例3と同様にして(但し、37匹のマウスを使用)、マウスの勝者群(5日目に失敗率0%)及び敗者群(5日目に失敗率100%)への群分け及びマレイン酸フルボキサミン(SSRI)の投与(50mg/kgを腹腔内投与)による効果を検討した。結果を、各日の試行失敗率の推移(勝者群;表4、敗者群;表5)及び逃避潜時の推移(勝者群;表6、敗者群;表7、両群;図8)として示す。
参考文献:
(1)Cryan, J. F., Markou, A., & Lucki, I. (2002) Assessing antidepressant activity in rodents: recent development and future needs. Trends in Pharmacological Sciences, 23, 238-245.
(2)Lucki, I. (1997) The forced swimming test as a model for core and component behavioral effects of antidepressant drugs. Behavavioral Pharmacology, 8, 523-532.

0043

0044

0045

0046

0047

表4、5、6及び7、並びに図8にみられるとおり、水迷路学習において、敗者群のうちマレイン酸フルボキサミン(SSRI)を投与されたマウスでは、敗者群のうち生食を投与されたマウスに比して、逃避潜時の極めて顕著な改善が観察された。このことは、本発明により作成される欝モデルマウスが、従来の強制水泳法では評価の困難であったSSRIについても、その抗欝効果の評価系として有用であることを示している。

0048

本発明は、ヒトの欝に類似した状態をマウスに作り出すことにより、欝に陥るプロセス及びその強度を動物で研究することを可能にし、且つ、抗欝薬のスクリーニングシステムを提供することができる。

図面の簡単な説明

0049

試験日数に伴う逃避潜時の推移を示すグラフ。
試験日数に伴う試行失敗率の推移を示すグラフ。
試験日数に伴う不動化に陥る動物の比率の推移を示すグラフ。
試験失敗率の推移に対してイミプラミンが及ぼす影響を示すグラフ。
水泳群、不動群、対照群の血中コルチゾルレベルを示すグラフ。
水泳群、不動群、対照群の血中11−OHCSレベルを示すグラフ。
平均逃避潜時の推移に対してイミプラミンが及ぼす影響を示すグラフ。
平均逃避潜時の推移に対してマレイン酸フルボキサミンが及ぼす影響を示すグラフ。

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