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技術 セメント系硬化体の組織、濃度プロファイル、および拡散係数の測定方法

出願人 太平洋セメント株式会社株式会社太平洋コンサルタント
発明者 森大介細川佳史山田一夫山本一雄
出願日 2004年7月29日 (15年11ヶ月経過) 出願番号 2004-222343
公開日 2005年10月6日 (14年8ヶ月経過) 公開番号 2005-274551
状態 特許登録済
技術分野 放射線を利用した材料分析 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード 断面セクション 骨材部分 相関グラフ フィッテング 含有塩素量 各基準濃度 解析解 ペースト部分
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この項目の情報は公開日時点(2005年10月6日)のものです。
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図面 (9)

課題

セメント硬化体について、断面組織の成分を判定すると共に、目的元素濃度プロファイルおよび拡散係数分光学的に測定する方法を提供する。

解決手段

セメント系硬化体の断面を多数のピクセル区画し、各ピクセルごとに少なくともSiO2濃度、CaO濃度、SO3濃度の何れかの濃度を測定し、この測定した濃度の分布頻度に基づいて各濃度の基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に従ってピクセル部分の組織を判定する。また、各ピクセルごとに目的元素の濃度を測定し、ペースト部分と判定された部分の目的元素濃度に基づいて濃度プロファイルを求め、この濃度プロファイルに基づいて拡散方程式から目的元素の拡散係数を求める。

概要

背景

コンクリート等に含まれる塩素鉄筋腐食し、構造物耐用年数に大きな影響を与えるので、コンクリート中の塩素含有状態を把握することが必要になる。コンクリート等に含まれる塩素の拡散状態を測定する方法としては、コンクリート試料を薄く切断し、多数の切断片化学分析して含有塩素量を測定する方法があるが、分析に多大な手間と時間を必要とし、しかも分析精度も低いと云う問題がある。また、スライス法に代えて塩素の浸透方向に供試体研削して分析試料サンプリングする研削法も知られているが、セメントペースト部分と骨材比率が一定のサンプルを得るのが容易ではない。

このような化学的分析方法に代えて最近は電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた方法が試みられている。この方法は供試体の深さ方向の断面についてEPMA分析による元素マッピングを行う方法である。具体的には、例えば、急結剤を混合したモルタルの断面について、EPMAを用いてCaとAlの濃度を測定し、Al/Ca濃度比分布曲線に基づいて急結剤の添加率を定量する方法が提唱されている(非特許文献1)。このようなEPMAを利用した分析方法は、迅速に目的元素濃度プロファイル拡散係数を測定できる利点を有するが、コンクリート等は骨材を多数含有しており、骨材とペースト部分では元素の拡散状態が大幅に異なるので測定値を単純に処理しても正確な濃度プロファイルや拡散状態を把握することは難しい。
コンクリート工学年次論文報告集 Vol.21、No.2、PP.1381-1386、1999

概要

セメント硬化体について、断面組織の成分を判定すると共に、目的元素の濃度プロファイルおよび拡散係数を分光学的に測定する方法を提供する。セメント系硬化体の断面を多数のピクセル区画し、各ピクセルごとに少なくともSiO2濃度、CaO濃度、SO3濃度の何れかの濃度を測定し、この測定した濃度の分布頻度に基づいて各濃度の基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に従ってピクセル部分の組織を判定する。また、各ピクセルごとに目的元素の濃度を測定し、ペースト部分と判定された部分の目的元素濃度に基づいて濃度プロファイルを求め、この濃度プロファイルに基づいて拡散方程式から目的元素の拡散係数を求める。 なし

目的

本発明は、このような従来の分析方法を改良したものであり、コンクリート等のように骨材を含有するセメント系硬化体について、ペースト部分と骨材部分とに対応しておのおの測定値を整理することによって精度の高い分析結果を得ることができる測定方法を提供するものである。なお、特に示さない限り、本発明においてコンクリートとはモルタルを含む意味である。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

セメント系硬化体の断面を多数のピクセル区画して各ピクセルごとにSiO2濃度を測定し、測定したSiO2濃度に基づいて、そのピクセル部分の組織を判定することを特徴とするセメント系硬化体の断面組織判定方法

請求項2

請求項1の判定方法において、各ピクセルについて測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、測定したSiO2濃度が上記基準濃度範囲内であるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する断面組織の判定方法。

請求項3

請求項1または2の判定方法において、SiO2濃度に代えて、またはSiO2濃度と共にCaO濃度および/またはSO3濃度を測定し、測定した各々の濃度頻度分布に基づいてその濃度の基準濃度範囲を定め、この基準濃度範囲に基づいて、或いはこれらの基準濃度範囲の組合せに基づいて、各ピクセル部分の組織を判定する方法。

請求項4

請求項3の判定方法において、各ピクセルについてSiO2濃度と共にCaO濃度を測定し、測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、または測定したCaO濃度の頻度分布に基づいてCaOの基準濃度範囲を定め、何れか一方の基準濃度範囲に従って各ピクセルについてペースト部分か否かを判定し、この最初の判定によってペースト部分とされたピクセルについて、さらに他方の濃度の頻度分布に基づいて基準濃度範囲を定めて組織判定を行い、この後の判定によって非ペースト部分とされるピクセルを除外して最終的にペースト部分を判定する方法。

請求項5

請求項3の判定方法において、各ピクセルについてSiO2濃度と共にCaO濃度を測定し、測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、また測定したCaO濃度の頻度分布に基づいてCaOの基準濃度範囲を定め、全ピクセルについてSiO2基準濃度範囲に従った判定とCaO基準濃度範囲に従った判定を各々行い、両方の判定によって何れもペースト部分と判定されるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する方法。

請求項6

請求項4または5の判定方法において、(イ)SiO2濃度およびCaO濃度の組合せに代えて、(ロ)SiO2濃度およびSO3濃度の組合せ、(ハ)CaO濃度およびSO3濃度の組合せ、または(ニ)SiO2濃度およびCaO濃度およびSO3濃度の組合せ、に基づいて各ピクセルについてペースト部分か非ペースト部分かを判定する方法。

請求項7

請求項1〜6の何れかの方法によって各ピクセル部分の組織を判定し、また各ピクセルごとに目的元素の濃度を測定し、ペースト部分と判定された部分の目的元素濃度に基づいて、目的元素の濃度プロファイルを求めることを特徴とするセメント系硬化体における濃度プロファイルの測定方法

請求項8

請求項7の濃度プロファイルに基づいて拡散方程式から目的元素の拡散係数を求めることを特徴とするセメント系硬化体における拡散係数の測定方法。

請求項9

目的元素が塩素イオウ炭素、またはアルカリ金属であり、これらの拡散係数を求める請求項8の測定方法。

請求項10

コンクリート構造物について、試料コア採取し、その断面セクション研磨した断面を用いる請求項1〜6の何れかの断面組織の判定方法、または請求項7〜9の何れかの測定方法。

請求項11

電子線マイクロアナライザーを用い、セメント系硬化体断面をピクセルごとに元素濃度を測定する請求項1〜10の何れかに記載する方法。

技術分野

0001

本発明は、骨材を含有するセメント系硬化体、例えばコンクリート等について、その断面組織を判定すると共に、目的元素濃度プロファイルおよび拡散係数分光学的に測定する方法に関する。

背景技術

0002

コンクリート等に含まれる塩素鉄筋腐食し、構造物耐用年数に大きな影響を与えるので、コンクリート中の塩素含有状態を把握することが必要になる。コンクリート等に含まれる塩素の拡散状態を測定する方法としては、コンクリート試料を薄く切断し、多数の切断片化学分析して含有塩素量を測定する方法があるが、分析に多大な手間と時間を必要とし、しかも分析精度も低いと云う問題がある。また、スライス法に代えて塩素の浸透方向に供試体研削して分析試料サンプリングする研削法も知られているが、セメントペースト部分と骨材の比率が一定のサンプルを得るのが容易ではない。

0003

このような化学的分析方法に代えて最近は電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた方法が試みられている。この方法は供試体の深さ方向の断面についてEPMA分析による元素マッピングを行う方法である。具体的には、例えば、急結剤を混合したモルタルの断面について、EPMAを用いてCaとAlの濃度を測定し、Al/Ca濃度比分布曲線に基づいて急結剤の添加率を定量する方法が提唱されている(非特許文献1)。このようなEPMAを利用した分析方法は、迅速に目的元素の濃度プロファイルや拡散係数を測定できる利点を有するが、コンクリート等は骨材を多数含有しており、骨材とペースト部分では元素の拡散状態が大幅に異なるので測定値を単純に処理しても正確な濃度プロファイルや拡散状態を把握することは難しい。
コンクリート工学年次論文報告集 Vol.21、No.2、PP.1381-1386、1999

発明が解決しようとする課題

0004

本発明は、このような従来の分析方法を改良したものであり、コンクリート等のように骨材を含有するセメント系硬化体について、ペースト部分と骨材部分とに対応しておのおの測定値を整理することによって精度の高い分析結果を得ることができる測定方法を提供するものである。なお、特に示さない限り、本発明においてコンクリートとはモルタルを含む意味である。

課題を解決するための手段

0005

本発明によれば以下の構成からなるセメント系硬化体の組織判定方法に関する。
(1)セメント系硬化体の断面を多数のピクセル区画して各ピクセルごとにSiO2濃度を測定し、測定したSiO2濃度に基づいて、そのピクセル部分の組織を判定することを特徴とするセメント系硬化体の断面組織の判定方法。
(2)上記(1)の判定方法において、各ピクセルについて測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、測定したSiO2濃度が上記基準濃度範囲内であるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する断面組織の判定方法。
(3)上記(1)または(2)の判定方法において、SiO2濃度に代えて、またはSiO2濃度と共にCaO濃度および/またはSO3濃度を測定し、測定した各々の濃度頻度分布に基づいてその濃度の基準濃度範囲を定め、この基準濃度範囲に基づいて、或いはこれらの基準濃度範囲の組合せに基づいて、各ピクセル部分の組織を判定する方法。
(4)上記(3)の判定方法において、各ピクセルについてSiO2濃度と共にCaO濃度を測定し、測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、または測定したCaO濃度の頻度分布に基づいてCaOの基準濃度範囲を定め、何れか一方の基準濃度範囲に従って各ピクセルについてペースト部分か否かを判定し、この最初の判定によってペースト部分とされたピクセルについて、さらに他方の濃度の頻度分布に基づいて基準濃度範囲を定めて組織判定を行い、この後の判定によって非ペースト部分とされるピクセルを除外して最終的にペースト部分を判定する方法。
(5)上記(3)の判定方法において、各ピクセルについてSiO2濃度と共にCaO濃度を測定し、測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、また測定したCaO濃度の頻度分布に基づいてCaOの基準濃度範囲を定め、全ピクセルについてSiO2基準濃度範囲に従った判定とCaO基準濃度範囲に従った判定を各々行い、両方の判定によって何れもペースト部分と判定されるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する方法。
(6)上記(4)または(5)の判定方法において、(イ)SiO2濃度およびCaO濃度の組合せに代えて、(ロ)SiO2濃度およびSO3濃度の組合せ、(ハ)CaO濃度およびSO3濃度の組合せ、または(ニ)SiO2濃度およびCaO濃度およびSO3濃度の組合せ、に基づいて各ピクセルについてペースト部分か非ペースト部分かを判定する方法。

0006

さらに、本発明は以下の構成からなる、セメント系硬化体における濃度プロファイルおよび拡散係数の測定方法に関する。
(7)上記(1)〜(6)の何れかの方法によって各ピクセル部分の組織を判定し、また各ピクセルごとに目的元素の濃度を測定し、ペースト部分と判定された部分の目的元素濃度に基づいて、目的元素の濃度プロファイルを求めることを特徴とするセメント系硬化体における濃度プロファイルの測定方法。
(8)上記(7)の濃度プロファイルに基づいて拡散方程式から目的元素の拡散係数を求めることを特徴とするセメント系硬化体における拡散係数の測定方法。
(9)目的元素が塩素、イオウ炭素、またはアルカリ金属であり、これらの拡散係数を求める上記(8)の測定方法。

0007

さらに、本発明は以下の判定方法および測定方法に関する。
(10)コンクリート構造物について、試料コア採取し、その断面セクション研磨した断面を用いる上記(1)〜(6)の何れかの断面組織の判定方法、または上記(7)〜(9)の何れかの測定方法。
(11)電子線マイクロアナライザーを用い、セメント系硬化体断面をピクセルごとに元素濃度を測定する上記(1)〜(10)の何れかに記載する方法。

0008

〔発明の具体的な説明〕
以下、本発明を具体的に説明する。なお、特に示さない限り%は質量%である。
本発明のセメント系硬化体の組織判定方法は、セメント系硬化体の断面を多数のピクセルに区画して各ピクセルごとにSiO2濃度を測定し、測定したSiO2濃度に基づいて、そのピクセル部分の組織を判定することを特徴とする方法である。具体的には、各ピクセルについて測定したSiO2濃度の頻度分布に基づいてSiO2の基準濃度範囲を定め、測定したSiO2濃度が上記基準濃度範囲内であるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する方法である。

0009

本発明の上記判定方法は、SiO2濃度に代えて、またはSiO2濃度と共にCaO濃度および/またはSO3濃度を測定し、測定した各々の濃度頻度分布に基づいて各濃度の基準濃度範囲を定め、この基準濃度範囲に基づいて、またはこれらの基準濃度範囲の組合せに基づいて、各ピクセル部分の組織を判定する方法を含む。具体的には、例えば、(イ)SiO2濃度とCaO濃度の組合せ、(ロ)SiO2濃度とSO3濃度の組合せ、(ハ)CaO濃度とSO3濃度の組合せ、(ニ)SiO2濃度とCaO濃度とSO3濃度の組合せ、に基づいて各ピクセルについてペースト部分か非ペースト部分かを判定する方法を含む。

0010

また、本発明は上記組織判定方法に基づいた目的元素の濃度プロファイルの測定方法、およびその拡散係数の測定方法を含む。

0011

SiO2濃度やCaO濃度を指標にしてコンクリート等の組織を判定する場合、コンクリート等の一般的な組織を基準にして、試料断面の組織を判定する方法がある。具体的には、セメントペースト部分と骨材部分とはCaO濃度とSiO2濃度が異なり、例えば、ポルトランドセメントを用いたセメントペーストのCaO濃度は概ね40〜50%程度であり、SiO2濃度は12〜18%程度である。一方、骨材は砂利岩屑などであるので、例えば一般的な骨材のSiO2濃度は概ね50%以上であり、CaO濃度は10%以下である。

0012

そこで、この一般的なSiO2濃度とCaO濃度を基準にし、例えば、測定したSiO2濃度が12%〜18%のピクセルをペースト部分とし、また、CaO濃度を基準にする場合には、CaO濃度が40〜50%のピクセルをペースト部分と判定する方法が考えられる。ところが、コンクリート等の組織はセメントや骨材の種類や配合量によって異なり、一般的なSiO2濃度やCaO濃度を画一的基準にして組織判定を行うと誤差が大きくなる場合がある。

0013

本発明の判定方法は、先の画一的な濃度基準に代えて、個々の断面試料ごとにSiO2やCaO等の基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に基づいて断面組織を判定する。この基準濃度範囲は個々の断面試料について各ピクセルごとに測定したSiO2やCaO等の濃度の頻度分布に基づいて定める。このように、本発明の判定方法は個々の断面試料ごとにSiO2やCaO等の基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に基づいて断面組織を判定するので判定精度が格段に優れる。

0014

本発明の組織判定方法について、以下、SiO2濃度を例にして説明すると、セメント系硬化体について、試料の断面を多数のピクセルに区画してピクセルごとにSiO2濃度を測定する。この測定手段としてEPMAを用いることができる。なお、測定手段はEPMAに限らず他の手段を用いても良い。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM/EDS)、X線分析顕微鏡オージェ電子分光法AES)、X線光電子分光分析法(XPS,ESCA)、二次イオン質量分析法SIMS,IMA)等が利用できる。図1に、モルタルの断面についてEPMAによるSiO2濃度の測定結果を示す面分析写真を示す。これは、モルタル断面をX軸方向(図上横方向)とY軸方向(図上縦方向)の升目に区画し、各々のピクセルについて、図示する濃度区分ごとにSiO2濃度を表示したものである。なお、試料断面の大きさは、例えば各辺が約5cmであって、断面内の各ピクセルの大きさはX軸0.1mm、Y軸0.1mmである。

0015

図1のSiO2濃度測定図に基づいたSiO2濃度の頻度分布を図2に示す。図中、横軸はSiO2濃度を2%ごとに区切った(0%を越えて2%以下、2%を越えて4%以下、…98%を越えて100以下)濃度区分を示し、縦軸は濃度頻度を示す。各ピクセルについて測定したSiO2濃度は横軸の濃度区分に従って、その測定頻度が縦軸に示されている。すなわち、縦軸の濃度頻度には各濃度区分に属するピクセルの個数が示されている。

0016

図2に示すSiO2濃度頻度分布グラフにおいて、最大頻度ピークを中心にし、その両側の変曲点A、Bを境界とする範囲をSiO2濃度の基準濃度範囲とする。具体的には、図2に示すグラフでは、濃度頻度の最大ピークはSiO2濃度14%〜16%の部分、変曲点Aは2%〜4%の部分、変曲点Bは26%〜28%の部分である。従って、この最大頻度ピークを含む変曲点A、Bによって区画される濃度範囲はSiO2濃度2%を越えて〜28%未満の範囲である。この濃度範囲をSiO2の基準濃度範囲とする。

0017

以上のようにして定めたSiO2基準濃度範囲に従って、各ピクセルごとのSiO2測定濃度チェックし、測定したSiO2濃度が上記基準濃度範囲内であるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する。

0018

例えば、図1において各ピクセルについて測定したSiO2濃度が表1のとおりであり(表1は断面の一部:X=1〜9、Y=1〜9についての測定値)、SiO2濃度頻度分布から求めた基準濃度範囲が上述のように2%以上〜28%未満であるとき、この基準濃度範囲内のピクセルがペースト部分(表中の太枠部分)であり、それ以外の部分は非ペースト部分(骨材部分、または空隙部分)である。

0019

0020

CaO濃度およびSO3濃度についてもSiO2濃度と同様に試料断面のピクセルごとに濃度を測定し、測定した濃度の頻度分布に基づいて基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に基づいて断面組織を判定することができる。

0021

図1に示すものと同一のモルタル断面について、SiO2濃度と同様の各ピクセルについて測定したCaO濃度の面分析写真を図3に示す。また、上記SiO2の基準濃度範囲に従ってペースト部分と判断されたピクセルについて、CaO濃度測定図に基づいたCaO濃度の頻度分布を図4に示す。図4に示すCaO濃度頻度分布グラフにおいて、最大頻度ピークを中心にし、その両側の変曲点A、Bを境界とする範囲をCaO濃度の基準濃度範囲とする。具体的には、図4に示すグラフでは、濃度頻度の最大ピークはCaO濃度36%〜38%の部分、変曲点Aは18%〜20%の部分、変曲点Bは64%〜66%の部分である。従って、この最大頻度ピークを含む変曲点AおよびBによって区画される濃度範囲は18%を越えて〜66%未満の範囲である。この濃度範囲をCaOの基準濃度範囲とする。

0022

図1に示すものと同一のモルタル断面について、SiO2濃度およびCaO濃度の場合と同様の各ピクセルについて測定したSO3濃度の面分析写真を図6に示す。また、図6のSO3濃度測定図に基づいたSO3濃度の頻度分布を図7に示す。図7の横軸はSO3濃度を0.25%ごとに示している。一般的なセメントペーストにおいては、ペースト部分のSO3濃度は概ね1.0〜2.5%程度である。図6に示すSO3濃度頻度分布グラフにおいて、上記濃度範囲内での最大頻度ピークを中心にし、その両側の変曲点A、Bを境界とする範囲をSO3濃度の基準濃度範囲とする。具体的には、図7に示すグラフでは、濃度頻度の最大ピークはSO3濃度1.75〜2.0%の部分、変曲点Aは0.5〜0.75%の部分、変曲点Bは6.25%〜6.5%の部分である。従って、この最大頻度ピークを含む変曲点AおよびBによって区画される濃度範囲は0.5%を越えて〜6.5%未満の範囲である。この濃度範囲をSO3の基準濃度範囲とする。

0023

以上のようにして定めたSiO2濃度、CaO濃度、SO3濃度の各基準濃度範囲を組合せて判断することによって組織判定の精度を高めることができる。具体的には、例えば以下の方法を適用することができる。
(イ)SiO2濃度の基準濃度範囲に従って各ピクセルについてペースト部分か否かを判定し、この最初の判定によってペースト部分とされたピクセルについて、さらにCaO濃度の頻度分布に基づいてその基準濃度範囲を定めて組織判定を行い、この後の判定によって非ペースト部分とされるピクセルを除外して最終的にペースト部分を判定する(請求項3の方法)。
(ロ)全ピクセルについてSiO2基準濃度範囲に従った判定とSO3基準濃度範囲に従った判定を各々行い、両方の判定結果を重ね合わせて判断し、何れの基準濃度範囲によってもペースト部分と判定されるピクセルをペースト部分とし、それ以外のピクセルを非ペースト部分と判定する(請求項4の方法)。

0024

例えば、試料断面の各ピクセルについて測定したCaO濃度が表2に示す値であるとき(表2は断面の一部:X=1〜9、Y=1〜9についての測定値)、上述のようにCaO基準濃度範囲が18%〜66%であれば、表1の結果と表2の結果とに基づき、上記(イ)の手法によって最終的にペーストと判断される部分は表3の太枠部分である。

0025

0026

0027

また、試料断面の各ピクセルについて測定したSiO2濃度が表4に示す値であって、SO3濃度が表5に示す値であるとき(各表は断面の一部:X=11〜19、Y=11〜19についての測定値)、上述のようにSiO2の基準濃度範囲が2%〜28%であれば、このSiO2基準濃度範囲に基づいてペーストと判定される部分は表4の太枠に囲まれた部分である。また、SO3の基準濃度範囲が0.5%〜6.5%であれば、SO3基準濃度範囲に基づいてペーストと判定される部分は表5の太枠に囲まれた部分である。この表4および表5の結果に基づき、上記(ロ)の手法によって最終的にペーストと判断される部分は表6の太枠部分である。

0028

0029

0030

0031

なお、測定したSiO2濃度を横軸にプロットし、CaO濃度を縦軸にプロットしたグラフを図5に示す。このグラフにおいても、おのおの基準濃度範囲を参照してペースト部分、骨材部分、空隙部分、これらの混在部分を判定することができる。

0032

以上の組織判定を利用して目的元素の濃度プロファイルを求めることができ、更にこの濃度プロファイルに基づいてその拡散係数を求めることができる。

0033

拡散係数を測定する元素の一例として塩素濃度の測定結果を図8および表7に示す。なお、拡散係数を測定する元素としては塩素の他にイオウ、炭素、アルカリ金属などが挙げられる。図8図1に示すものと同一のモルタル断面についてEPMAによる塩素濃度の測定結果を示す面分析写真であり、表7の測定結果は、図8のモルタル断面をX軸方向とY軸方向に升目状に区分し(断面の一部:X=11〜19、Y=11〜19の部分)、各ピクセルごとの塩素濃度を示したものである。この表7のピクセルごとの塩素濃度について、上述の判定方法に基づいてペースト部分と判断されたピクセルを太枠で示す。

0034

表7は、X=11〜19、Y=11〜19の各列の方向における塩素濃度の変化を示している。この表5において、太枠で囲まれたペースト部分のみの塩素濃度を拡散係数の算出数値として用いる。具体的には、X11の列からX19の列ごとに、Y11からY19の太枠で囲まれたペースト部分のみの塩素濃度の平均値Aを求め、この各X列の値をその深さにおける塩素濃度とする。なお、表中の平均値Bは各X列についてY列の全ピクセルの塩素濃度に基づく平均値を参考例として示したものである。

0035

0036

表7の塩素濃度をX列についてプロットすれば、X列方向の塩素濃度プロファイルが得られる。このグラフを図9に示す。このような方法によれば、空隙や骨材の影響が排除されているので、塩素濃度の変化が明瞭に示された濃度プロファイルを得ることができる。なお、図9において、本発明に基づく平均値Aの塩素濃度曲線は塩素の浸透状態を良好に示しているが、平均値Bはペースト以外の部分を含む平均値であるため、塩素濃度曲線が大幅に変動しており、信頼性が低い。

0037

図9に示す塩素濃度のプロファイルに基づき、塩素浸透を拡散とみなせば塩素の拡散係数を求めることができる。すなわち、次式に示す拡散方程式の解析解を、非線形最小二乗法を用いて拡散係数Dおよび表面濃度Coを可変パラメータとしてフィッテングさせることによって、図9に示す塩素濃度プロファイルの拡散係数Dおよび表面濃度Coを算出することができる。
C=Co〔1−erf(x/2√Dt)〕 ……〔1〕
〔式中、C:深さx(cm)、時刻t(sec)における塩化物イオン濃度(mass%、dry試料)、Co:表面における塩化物イオン濃度(mass%、dry試料)、D:見掛けの拡散係数(cm2/sec)、erf:誤差関数である。〕

0038

上記測定方法において、各ピクセルについて、ペースト部分と骨材部分を区別する判定元素として、SiO2濃度、CaO濃度、およびSO3濃度に代えて、炭素濃度銅濃度ニッケル濃度の何れかを用いることができる。例えば、モルタル等が石灰石骨材を含む場合には、骨材部分のCaO濃度が高くなるが、一般に炭素濃度は各部分において異なり、ペースト部分の炭素濃度は10%以下、骨材部分は10%より多く、空隙部分はほぼ0%である。従って、炭素濃度を基準にしてこれらの部分を区別することができる。また、銅スラグ骨材を含む場合には、骨材部分の銅濃度が多量であるのに対してペースト部分と空隙部分の銅濃度はほぼ0%であり、この銅濃度を基準にして各部分を区別することができる。また、フェロニッケル骨材を含む場合には、骨材部分のニッケル濃度が多量であるのに対してペースト部分と空隙部分のニッケル濃度はほぼ0%であり、このニッケル濃度を基準にして各部分を区別することができる。

0039

なお、本発明において、SiO2濃度、CaO濃度、SO3濃度、炭素濃度、銅濃度、ニッケル濃度などの濃度頻度に基づき各濃度について基準濃度を定めるときに、濃度頻度グラフにおける濃度区分の大きさは各濃度の一般的な濃度範囲に対応する大きさであることが好ましい。具体的には、例えば、SiO2濃度、CaO濃度、銅濃度、ニッケル濃度については、1%ごと〜5%ごとの濃度区分が適当であり、1%ごと、2%ごと、又は2.5%ごとの濃度区分がより好ましい。一方、SO3濃度や炭素濃度は、SiO2等より濃度が低いので、0.1%ごと〜0.5%ごとの濃度区分が適当であり、0.1%ごと、0.2%ごと、又は0.25%ごとの濃度区分がより好ましい。因みに、本発明において、ピクセルの大きさは一辺の大きさ0.001〜1.0mmが好ましく、0.005〜0.4mmがより好ましく、0.01〜0.2mmが特に好ましい。

0040

実際のコンクリート構造物について、本発明の上記組織判定方法および濃度プロファイル測定方法ないし拡散係数の測定方法を適用するには、ボーリング等によってコンクリート中の配筋の間から試料コアを採取し、その断面セクションを研磨し、好ましくは鏡面化した断面を用いて上記断面組織の判定方法を実施し、必要に応じて、この断面組織の判定方法に基づいて目的元素の濃度プロファイル測定方法、あるいは拡散係数の測定方法を実施することができる。なお、濃度プロファイルないし拡散係数を測定するには、試料コア3本以上の平均値を用いることが好ましい。また、試料コアの直径は10〜100mm程度が適当である。

発明の効果

0041

本発明の測定方法によれば、コンクリートやモルタルの断面について、この断面を多数のピクセルに区画し、各ピクセルごとSiO2濃度やCaO濃度、SO3濃度を測定してこれらの濃度に基づいて断面組織を容易に判定することができる。さらに、判定した空隙部分および骨材部分を除外し、ペースト部分に基づいて目的元素の濃度プロファイルを求めることによって、正確な濃度プロファイルを得ることができる。

0042

また、本発明の組織判定方法は、個々の断面試料ごとに、測定したSiO2濃度やCaO濃度等の濃度分布頻度に基づいて各濃度の基準濃度範囲を決定し、この基準濃度範囲に従って断面組織を判定するので、判定精度が格段に優れる。

図面の簡単な説明

0043

モルタル供試体の深さ方向断面のEPMAによるSiO2濃度写真。
図1に基づくSiO2濃度の頻度分布グラフ。
モルタル供試体の深さ方向断面のEPMAによるCaO濃度写真。
SiO2基準濃度範囲に従ってペースト部分と判断されたピクセルについてのCaO濃度の頻度分布グラフ。
SiO2濃度とCaO濃度の相関グラフ
モルタル供試体の深さ方向断面のEPMAによるSO3濃度写真。
図6に基づくSO3濃度の頻度分布グラフ。
モルタル供試体の深さ方向断面のEPMAによる塩素濃度写真。
表1の塩素濃度平均値に基づく塩素濃度グラフ。

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