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技術 方向性電磁鋼板の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 早川康之大村健吉川慎一
出願日 2004年2月27日 (16年10ヶ月経過) 出願番号 2004-054160
公開日 2005年9月8日 (15年3ヶ月経過) 公開番号 2005-240147
状態 特許登録済
技術分野 電磁鋼板の製造 軟質磁性材料
主要キーワード Se含有量 大型変圧器 Oスラリー 雰囲気露点 湿潤水 砥粒入り 表面酸化被膜 コイル層間
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

インヒビター成分を使用せずに、磁束密度鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.010〜0.035%、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜3.0%を含有し、Al:100ppm以下並びにN、SおよびSeを各50ppm以下に抑制した組成をもつ溶鋼を用いて製造したスラブ熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下の雰囲気再結晶焼鈍を施し、次いで、800℃以上の温度で二次再結晶焼鈍を施した後、脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用してから1000℃以上の温度でフォルステライト被膜を形成する最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする。

概要

背景

方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して最終仕上焼鈍中に二次再結晶を生じさせることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2記載のMnS、MnSeを使用する方法が開示され工業的に実用化されている。これらとは別にCuSeとBNを添加する技術が特許文献3に、Ti、Zr、Vの窒化物を使用する方法が特許文献4に記載されるなど数多く知られている。
特公昭40−15644号公報
特公昭51−13469号公報
特公昭58−42244号公報
特公昭46−40855号公報

これらのインヒビター成分を用いる方法は安定して二次再結晶粒発達させるのに有用な方法であるが、析出物を微細に分散させる必要があるので、熱間圧延前スラブ加熱温度を1300℃以上の高温で行う必要がある。しかしながら、スラブ高温加熱は、加熱を実現する上での設備コストがかかり、さらに熱間圧延時に生成するスケールの量も多大になるので、歩留りが低下するだけでなく、設備メンテナンス等の問題も多くなる。

インヒビター成分を使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法は、特許文献5〜8に開示されている。これらの技術に共通していることは、表面エネルギー駆動力として{110}面が優先的に成長するという現象を利用していることである。このような結晶方位による表面エネルギー差を駆動力として有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求される。例えば特許文献5記載の技術では板厚が0.2mm以下、特許文献6記載の技術では板厚が150μm以下に制限されている。

ところが、現行使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるので、実際に使用される前記板厚の製品について上記技術のような表面エネルギーを使用する方法を適用しても、磁束密度B8は1.7T程度の低い値にとどまるものであった。
特開昭64−55339号公報
特開平2−57635号公報
特開平7−76732号公報
特開平7−197126号公報

概要

インヒビター成分を使用せずに、磁束密度と鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。質量%で、C:0.010〜0.035%、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜3.0%を含有し、Al:100ppm以下並びにN、SおよびSeを各50ppm以下に抑制した組成をもつ溶鋼を用いて製造したスラブを熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下の雰囲気再結晶焼鈍を施し、次いで、800℃以上の温度で二次再結晶焼鈍を施した後、脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用してから1000℃以上の温度でフォルステライト被膜を形成する最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする。

目的

本発明は、インヒビター成分を使用することによって生じる問題点を回避すべく、インヒビター成分を使用せずに、磁束密度と鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とし、従来、インヒビター成分を用いない方向性電磁鋼板の製造方法として知られていた表面エネルギーを利用する方法に必然的に付随する、鋼板板厚が限定されること、二次再結晶方位集積が劣ること、表面酸化被膜がないために鉄損が劣るという問題点を解決しようとするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

質量%で、C:0.010〜0.035%、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜3.0%を含有し、Al:100ppm以下並びにN、SおよびSeを各50ppm以下に抑制した組成をもつ溶鋼を用いて製造したスラブ熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下の雰囲気再結晶焼鈍を施し、次いで、800℃以上の温度で二次再結晶焼鈍を施した後、脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用してから1000℃以上の温度でフォルステライト被膜を形成する最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項2

脱炭焼鈍前表面研削を行い、その後、50℃以上の温度で酸洗を行うことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項3

前記溶鋼に、さらに質量%で、Ni:0.005〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、インヒビター成分を使用しない素材を用いて、磁束密度鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して最終仕上焼鈍中に二次再結晶を生じさせることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2記載のMnS、MnSeを使用する方法が開示され工業的に実用化されている。これらとは別にCuSeとBNを添加する技術が特許文献3に、Ti、Zr、Vの窒化物を使用する方法が特許文献4に記載されるなど数多く知られている。
特公昭40−15644号公報
特公昭51−13469号公報
特公昭58−42244号公報
特公昭46−40855号公報

0003

これらのインヒビター成分を用いる方法は安定して二次再結晶粒発達させるのに有用な方法であるが、析出物を微細に分散させる必要があるので、熱間圧延前スラブ加熱温度を1300℃以上の高温で行う必要がある。しかしながら、スラブ高温加熱は、加熱を実現する上での設備コストがかかり、さらに熱間圧延時に生成するスケールの量も多大になるので、歩留りが低下するだけでなく、設備メンテナンス等の問題も多くなる。

0004

インヒビター成分を使用しないで方向性電磁鋼板を製造する方法は、特許文献5〜8に開示されている。これらの技術に共通していることは、表面エネルギー駆動力として{110}面が優先的に成長するという現象を利用していることである。このような結晶方位による表面エネルギー差を駆動力として有効に利用するためには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くすることが必然的に要求される。例えば特許文献5記載の技術では板厚が0.2mm以下、特許文献6記載の技術では板厚が150μm以下に制限されている。

0005

ところが、現行使用されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとんどであるので、実際に使用される前記板厚の製品について上記技術のような表面エネルギーを使用する方法を適用しても、磁束密度B8は1.7T程度の低い値にとどまるものであった。
特開昭64−55339号公報
特開平2−57635号公報
特開平7−76732号公報
特開平7−197126号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、インヒビター成分を使用することによって生じる問題点を回避すべく、インヒビター成分を使用せずに、磁束密度と鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とし、従来、インヒビター成分を用いない方向性電磁鋼板の製造方法として知られていた表面エネルギーを利用する方法に必然的に付随する、鋼板板厚が限定されること、二次再結晶方位集積が劣ること、表面酸化被膜がないために鉄損が劣るという問題点を解決しようとするものである。

課題を解決するための手段

0007

上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.010〜0.035%、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜3.0%を含有し、Al:100ppm以下並びにN、SおよびSeを各50ppm以下に抑制した組成をもつ溶鋼を用いて製造したスラブを熱間圧延して得られた熱延板に、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下の雰囲気再結晶焼鈍を施し、次いで、800℃以上の温度で二次再結晶焼鈍を施した後、脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用してから1000℃以上の温度でフォルステライト被膜を形成する最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。

0008

(2)脱炭焼鈍前表面研削を行い、その後、50℃以上の温度で酸洗を行うことを特徴とする上記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

0009

(3)前記溶鋼に、さらに質量%で、Ni:0.005〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

発明の効果

0010

本発明によれば、インヒビター成分を使用しない素材を用い、二次再結晶時に0.010〜0.025質量%のCを残留させて磁束密度を向上させ、二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程に分離する技術を適用してフォルステライト被膜を形成し、再結晶焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルを0.06以下に低減してサブスケールの生成を極力抑制して、二次再結晶焼鈍後脱炭性を改善することにより、磁束密度と鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の提供が可能になった。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明者らは、既にインヒビター成分を含有しない高純度素材において、固溶窒素の粒界移動抑制効果を利用して二次再結晶を発現させる技術を特開2000−129356号公報にて提案した。ただし、インヒビター成分を使用しない特開2000−129356号公報の技術で得られる磁束密度に関しては、既存のインヒビター成分を使用する技術に比較すると低い値であった。

0012

次に、本発明者らは、前述のインヒビター成分を含有しない素材を用いた、フォルステライト被膜を有しない方向性電磁鋼板の製造方法において、炭素Cが残存する状態で二次再結晶焼鈍を実施することにより、磁束密度が向上するという知見を得て、二次再結晶前は適量のCを残存させ、二次再結晶完了後に脱炭焼鈍をかねる平坦化焼鈍を行ってCを除去する技術を特開2003−34821号公報で提案した。しかしながら、特開2003−34821号公報記載の方向性電磁鋼板は、フォルステライト被膜を有しないため、磁歪が大きく、変圧器騒音が大きくなるという問題があり、フォルステライト被膜を必要とする用途、主として大型変圧器に適用することはできない。

0013

また、本発明者らは、従来同時に行なっていた二次再結晶とフォルステライト被膜形成のための仕上げ焼鈍を、二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程とを分離する技術を特開2003−41323号公報で提案した。しかしながら、特開2003−41323号公報の技術では、磁気特性の向上が不十分という問題があった。

0014

よって、主として大型変圧器のような用途にも適用可能とするため、インヒビター成分を使用することなしに、磁束密度と鉄損が共に優れかつ密着性が良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を開発する必要があった。

0015

そこで、本発明者らは、既に特開2003−41323号公報で提案した二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程とを分離する技術を適用することを前提として、以下に示す実験を行い、磁束密度と鉄損が共に優れかつ密着性が良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板を製造することを試みた。

0016

以下、本発明を完成させるに至った実験について説明する。
質量%で、C:0.038%、Si:3.2%およびMn:0.05%を含有し、Al:30ppm、N:29ppm、S:15ppm、Se:2ppmおよびその他の成分を30ppm以下に低減したインヒビター成分を含まない鋼Aと、質量%で、C:0.019%、Si:3.2%およびMn:0.05%を含有し、Al:30ppm、N:25ppm、S:10ppm、Se:1ppmおよびその他の成分を30ppm以下に低減したインヒビター成分を含まない鋼Bのスラブを連続鋳造にてそれぞれ製造した。ついで、1200℃に加熱した後、熱間圧延により2.4mmの板厚に仕上げた。熱延板を1000℃の窒素雰囲気中で60秒間均熱した後、急冷し、その後、冷間圧延を行って0.30mmの最終板厚とした。

0017

そして、露点を種々変更した30体積%の水素と70体積%の窒素の雰囲気下にて850℃で60秒間均熱する再結晶焼鈍を施した後、二次再結晶焼鈍を施した。二次再結晶焼鈍は、露点−20℃の窒素雰囲気にて、常温から900℃まで50℃/hの昇温速度で加熱した後、900℃で50時間保定した。続いて、露点60℃で50体積%の水素と50体積%の窒素の雰囲気下にて825℃で120秒間均熱する脱炭焼鈍を行った。続いて、3質量%TiO2と97質量%MgOからなる焼鈍分離剤を適用し、フォルステライト被膜を形成させる最終仕上焼鈍を1120℃の水素雰囲気中で行った。

0018

再結晶焼鈍時の酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)を0.01〜0.26の範囲で変化させたときの、最終仕上焼鈍後の磁束密度B8および鉄損W17/50を、それぞれ図1および図2に、また、二次再結晶焼鈍前および最終仕上焼鈍後の鋼板中のC含有量を、鋼Aについて図3に、鋼Bについて図4にそれぞれ示す。

0019

図1および図2によると、鋼Bでは酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下(露点:15℃以下)で安定して高磁束密度かつ低鉄損が得られている。一方、鋼Aでは、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.08〜0.20(露点:20〜35℃)の範囲で、やや高い磁束密度が得られているものの、鉄損がかなり高い値を示しており、磁気特性が劣化している。

0020

また、図3によると、鋼Aでは酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以上(露点:15℃以上)の範囲で、最終仕上焼鈍後に0.010質量%を超えるCが残留しているのがわかり、このCの残留が、磁気特性を大きく劣化させたものと考えられる。なお、鋼Aでは、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.04以下(露点:10℃以下)の範囲だと、最終仕上焼鈍後のC含有量は0.010質量%以下に低減することができるものの、素材スラブでのC含有量が高いため、二次再結晶焼鈍前におけるC含有量は0.025質量%を超えている。このように二次再結晶焼鈍前におけるC含有量が多くなると、二次再結晶焼鈍中にオーステナイト(γ)変態が起こるようになり、二次再結晶粒の成長が不完全となる結果、大きく磁気特性が劣化したものと考えられる。

0021

さらに図4によると、素材スラブでのC含有量が適正な鋼Bでは、酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06以下(露点:15℃以下)の範囲で、二次再結晶焼鈍前では、0.010〜0.025質量%の範囲内のC含有量を確保し、かつ最終仕上焼鈍後では、C含有量を0.003質量%以下にまで低減されており、この結果、安定して高磁束密度かつ低鉄損が得られた。なお、鋼Bでも酸素ポテンシャルP(H2O)/P(H2)が0.06超え(露点15℃超え)の条件では、再結晶焼鈍時に脱炭が進行し、二次再結晶焼鈍前のC含有量が0.010質量%未満に減少しており、その結果、磁束密度が低い。

0022

このようにインヒビター成分を含まない素材を用い、二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程に分離する技術を適用して磁気特性を向上させる場合、C量の比較的高い素材を用いると、再結晶焼鈍を酸素ポテンシャルの高い雰囲気で行い、二次再結晶焼鈍前のC含有量を低減して0.010〜0.025質量%の範囲に確保する必要がある。しかしながら、この再結晶焼鈍によりC含有量を低減させて前記範囲に調整する方法を用いた場合には、再結晶焼鈍時における雰囲気の酸素ポテンシャルが高いため、再結晶焼鈍後、二次再結晶焼鈍前にサブスケールが生成しやすくなる。

0023

サブスケールは、脱炭反応およびCの拡散に対して障壁となり脱炭を阻害してしまうので、二次再結晶完了後に安定して脱炭完了させることが極めて困難であるという問題が生じた。

0024

さらに、Cを二次再結晶前に残留させて二次再結晶焼鈍を行う場合には、二次再結晶焼鈍後の表面には、化学的に安定なグラファイト析出することも脱炭性の劣化に寄与しているものと推測される。

0025

鋼Bを用いた実験のように、あらかじめ素材(スラブ)中のC含有量を適正範囲内に確保しておき、再結晶焼鈍の酸素ポテンシャルを0.06以下に制限してサブスケールの生成を極力抑制することにより、二次再結晶焼鈍後での脱炭性を改善できることが分かった。

0026

ただし、サブスケールを形成させないままコイルに巻き取った状態で二次再結晶焼鈍を行うと、コイル層間密着が起こりやすいという製造上の問題が生じる。

0027

そのため、サブスケールの形成を抑制する本発明による製造方法を適用する場合には、必要に応じて焼鈍分離剤を適用した後、二次再結晶焼鈍を行なうのが望ましい。

0028

前記焼鈍分離剤としては、二次再結晶焼鈍時にサブスケールを形成し脱炭を阻害するMgOスラリーは使用せず、シリカアルミナ等を用いるのが好ましい。また、かかる焼鈍分離剤の塗布を行う際も水分を持ち込まず、サブスケール生成を抑制する目的で静電塗布を行うことなどが有効である。さらに、前記焼鈍分離剤として、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。

0029

また、表層に析出したグラファイトを除去する目的で、脱炭焼鈍前に表面研削および酸洗を行うことが、脱炭性および被膜密着性の改善に有利である。脱炭焼鈍前に#320の砥粒入り研削ブラシによる表面研削と、種々の温度で5秒間浸漬する塩酸による酸洗を行い、フォルステライト被膜密着性に及ぼす影響を調査する実験を行った。素材は前述した実験1で行った鋼Bを用いて、同様な工程条件で行った。第5図に、酸洗温度とフォルステライト被膜密着性の関係を示す。

0030

図5に示すように、被膜密着性は、表面研削および酸洗温度50℃以上で酸洗を順次施すことにより大幅に改善した。

0031

以上述べたように、インヒビター成分を使用しない素材を用い、二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程に分離する技術を採用してフォルステライト被膜を形成させる方法を適用するにあたって、あらかじめ素材(スラブ)中のC含有量を適正範囲内に確保し、再結晶焼鈍の酸素ポテンシャルを0.06以下に制限してサブスケールの生成を極力抑制する方法が、良好な脱炭性を確保するために有効であることを知見し、本発明を完成させた。

0032

また、本発明において、二次再結晶焼鈍後に行う脱炭焼鈍前に表面研削および酸洗を行うことが、フォルステライト被膜の密着性を改善する効果があることも見出した。

0033

そして、本発明では、インヒビター成分を使用せずに二次再結晶を発現させる方法であり、インヒビター固溶のためのスラブの高温加熱の省略や、インヒビター成分除去のための1200℃程度の高温純化焼鈍の省略が可能となり、簡略な製造工程で高磁束密度および低鉄損を得ることができる。

0034

本発明による方向性電磁鋼板の用途は主として大型変圧器であり、本発明は、素材としてインヒビター成分を使用せず、スラブの高温加熱や高温純化焼鈍を施す必要がないので、低コストにて大量生産可能であるという大きな利点がある。

0035

次に、本発明において、溶鋼の組成を限定した理由について以下で述べる。
なお、スラブの成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。

0036

・C:0.010〜0.035%
本発明では、二次再結晶焼鈍前にC量を0.010〜0.025%に調整することが、高い磁束密度を確保するのに必要である。この適正範囲に二次再結晶焼鈍前のC含有量を確保するためには、素材(スラブ)中のC含有量を0.010〜0.035%に制御する必要がある。素材(スラブ)中のC含有量が上記範囲外であると、二次再結晶前で酸素ポテンシャルの低い再結晶焼鈍雰囲気では、二次再結晶焼鈍前にC含有量を適正範囲に調整することが困難になる。

0037

・Si:2.0〜8.0%
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であるが、Si含有量が2.0%に満たないと、その添加効果に乏しく、一方、8.0%を超えると、冷間圧延性が著しく劣化するので、Si含有量は2.0〜8.0%とする。

0038

・Mn:0.005〜3.0%
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、Mn含有量が0.005%未満であると、効果がなく、3.0%を超えると磁束密度が低下するので、Mn含有量は0.005〜3.0%とする。

0039

・Al:100ppm以下、N、SおよびSe:各50ppm以下
そして、本発明では、従来知られているAlN、MnSe等のインヒビター成分を使用せずに二次再結晶を発現させることを意図しており、インヒビター固溶のためのスラブの高温加熱や、インヒビター成分除去のための高温純化焼鈍を省略して簡略な製造工程で低鉄損を得ようとするものである。それゆえ、Al含有量を100ppm以下とし、N、SおよびSe含有量に関してはそれぞれ50ppm以下へと低減する必要がある。

0040

以上が本発明で用いる溶鋼の基本組成である。
なお、本発明では、上記した組成に加えて、さらにNi:0.005〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%のうちから選択される1種または2種以上を含有させることができる。

0041

・Ni:0.005〜1.50%
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる元素である。Ni含有量が0.005%未満であると磁気特性の向上効果が小さく、また、1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するのでNi含有量は0.005〜1.50%とするのが好ましい。

0042

・Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Cr:0.01〜1.50%
Sn、Sb、Cu、PおよびCrは、鉄損を向上させる元素である。Sn、Sb、Cu、PおよびCrのそれぞれの含有量が、0.01%、0.005%、0.01%、0.005%および0.01%未満だと、鉄損向上効果が認められなくなる傾向があり、また、0.50%、0.50%、0.50%、0.50%および1.50%を超えると二次再結晶粒の発達が抑制されるおそれがある。このため、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%およびCr:0.01〜1.50%とするのが好ましい。

0043

その他窒化物形成元素であるTi、Nb、B、Ta、V等はもまた、それぞれ50ppm以下に低減することも鉄損の増加に伴う磁気特性の劣化を防ぐ上で好ましい。

0044

次に、本発明において、製造条件を限定した理由について以下で述べる。
上記成分組成を有する溶鋼は、通常の造塊法や連続鋳造法でスラブを製造してもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、本発明の成分組成では、1300℃以上の高温スラブ加熱は必要ない。

0045

次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は800〜1100℃の範囲が好適である。

0046

熱延板焼鈍後、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍を施す。

0047

また、冷間圧延の温度を100〜250℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる点で有効である。再結晶焼鈍は800〜1000℃の範囲で行うことが好適である。

0048

再結晶焼鈍後にC量を0.010〜0.025質量%に調整することが、高い磁束密度を確保する上で必要である。再結晶焼鈍後のC含有量が0.010%未満の場合は、固溶Cによる磁束密度の向上効果が得られず、また、再結晶焼鈍後のC含有量が0.025%を超える場合は、γ変態により二次再結晶粒が発達しないので磁気特性は大きく劣化する。

0049

なお、C含有量を制御する方法としては、製鋼段階でC含有量を上記範囲に制御し、その後の焼鈍工程をすべて非脱炭雰囲気で行って、C含有量を変化させない方法が最も簡便であるが、製鋼段階での低減が困難な場合には、再結晶焼鈍、あるいは熱延板焼鈍や中間焼鈍の雰囲気を湿潤水素雰囲気で行うことにより、二次再結晶焼鈍までに脱炭する方法を用いても良い。

0050

再結晶焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルを0.06以下に低減してサブスケールの生成を極力抑制することが、二次再結晶焼鈍後での脱炭性を確保するために必要である。

0051

続いて、800℃以上で二次再結晶焼鈍を施す。焼鈍温度が800℃以上としたのは、800℃未満だと、二次再結晶組織が十分に発達しないからである。なお、焼鈍時間は、二次再結晶組織を十分に発達させるため、20時間以上とすることが好ましい。

0052

ここで、サブスケールを形成させないままコイルに巻き取った状態で二次再結晶焼鈍を行うと、コイル層間の密着が起こりやすいという製造上の問題が生じる。そのため、サブスケールの形成を抑制する本発明による製造方法では、焼鈍分離剤を適宜用いることが望ましい。焼鈍分離剤としてはサブスケールを形成し脱炭を阻害するMgOスラリーは使用せず、シリカ、アルミナ等を用いる。また、かかる焼鈍分離剤の塗布を行う際も水分を持ち込まず、サブスケール生成を抑制する目的で静電塗布を行うことなどが有効である。さらに、前記焼鈍分離剤として、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。

0053

二次再結晶焼鈍後、表層に析出したグラファイトを除去する目的で、脱炭焼鈍前に、必要に応じて、研削ブラシによる表面研削および酸洗を順次行うことが脱炭性および被膜密着性の改善に有利である。

0054

脱炭焼鈍前の研削方法は特に定めないが、例えば、砥粒入り研削ブラシ、弾性砥石ロールベルトサンダー等を用いる方法が適している。また、脱炭焼鈍前の酸洗方法も特に定めないが、例えば、塩酸酸洗が好ましく、さらに電解脱脂等を併用しても良い。酸洗温度は50℃以上に確保することが有効である。

0055

その後、脱炭焼鈍を施す。脱炭焼鈍は、750〜900℃の範囲の湿潤水素雰囲気で行い、C含有量を50ppm以下、望ましくは30ppm以下へと低減する。

0056

脱炭焼鈍後は、MgOを主体とした焼鈍分離剤を適用してから1000℃以上の温度でフォルステライト被膜を形成させる最終仕上焼鈍を施す。

0057

焼鈍分離剤は、フォルステライト被膜を形成するため、MgOを主体としたものを用い、具体的には、MgOに、TiO2:1〜3質量%を含有したものや、さらに、少量のMgSO4やBを含有するもの等が挙げられる。

0058

最終仕上焼鈍温度は、フォルステライト被膜形成のため1000℃以上にすることが必要である。

0059

最終仕上焼鈍後は、平坦化焼鈍を行い形状矯正することが好ましい。平坦化焼鈍後は、さらに表面に絶縁コーティングを施してもよい。絶縁コーティングとしては、良好な鉄損を得るため、燐酸塩コロイダルシリカを混合させた張力コーティングを適用することが有利である。

0060

上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。

0061

質量%で、C:0.023%、Si:3.3%、Mn:0.05%およびSn:0.05%を含有し、Al:23ppm、N:23ppmに抑制し、その他の成分を30ppm以下に低減したインヒビター成分を含まないスラブを1150℃で加熱し熱間圧延にて2.4mmに仕上げた。熱延板焼鈍を980℃で60秒間均熱する条件で行った。その後、常温での冷間圧延にて0.30mmの最終板厚に仕上げた。
ついで、表1に示す種々の酸素ポテンシャルの雰囲気で、900℃で10秒間均熱する再結晶焼鈍を行った。なお、前記酸素ポテンシャルは、25体積%の水素と75体積%の窒素からなる雰囲気下で雰囲気露点を変化させることによって設定した。
ついで、50質量%シリカと50質量%アルミナゾルからなる焼純分離剤を適用して窒素雰囲気中で875℃までを50℃/hで加熱し、その後、Ar雰囲気へと切り替えて50時間875℃で保持する二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍後、脱炭焼鈍を、露点60℃、30体積%の水素と70体積%の窒素からなる雰囲気にて850℃で100秒間均熱する方法で行った。続いて、95質量%MgOと5質量%TiO2からなる焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍を1120℃で10時間の水素雰囲気での均熱により実施した。最終仕上焼鈍後、850℃で30秒間の平坦化焼鈍を行い形状矯正し、製品板を得た。

0062

得られた各製品板を用いて圧延方向の磁束密度B8と鉄損W17/50を測定した。また、フォルステライト被膜の密着性についても評価した。フォルステライト被膜の密着性は、鉄の丸棒に巻きつけて剥離が生じない最小曲げ剥離径(mm:丸棒の直径)を測定し、この測定値によって評価した。これらの結果を表1に示す。

0063

0064

表1によれば、本発明例No.1-1〜1-4は、いずれも高磁束密度と低鉄損を有する。
一方、再結晶焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルが本発明の範囲外である比較例No.1-5および1-6は、いずれも磁気特性およびフォルステライト被膜の密着性が著しく劣っている。

0065

表2に示す組成を有する溶鋼を用いて製造したスラブを1150℃に加熱し熱間圧延にて2.6mmに仕上げた。なお、表2に示されない成分に関してはすべて50ppm以下に低減した。熱延板焼鈍を1000℃で30秒間均熱する条件で行った。その後、冷間圧延で0.35mmの最終板厚に仕上げた。ついで、酸素ポテンシャルが0.003の雰囲気にて、900℃で20秒間均熱する条件で再結晶焼鈍を行った。なお、前記酸素ポテンシャルは、露点−20℃、50体積%の水素と50体積%の窒素からなる雰囲気にて設定した。ついで、50質量%シリカと50質量%アルミナゾルからなる焼鈍分離剤を適用して、窒素雰囲気にて900℃まで20℃/hで昇温し、その後、Ar雰囲気へと切り替えて900℃で50時間保持する二次再結晶焼鈍を行った。二次再結晶焼鈍後に鋼板温度80℃にて#320の砥粒入り研削ブラシを用いて2パスの両面研削を行った後、10%塩酸酸洗を施し、その後、露点0℃、40体積%の水素と60体積%の窒素からなる雰囲気(酸素ポテンシャル:0.015)で820℃で120秒間均熱する脱炭焼鈍を行った。脱炭焼鈍後、98質量%MgOと2質量%TiO2からなる焼鈍分離剤を適用して、最終仕上焼鈍を水素雰囲気にて1150℃で5時間の均熱により実施した。最終仕上焼鈍後、850℃で30秒間の平坦化焼鈍を行い形状矯正し、製品板を得た。
得られた各製品板を用いて圧延方向の磁束密度B8と鉄損W17/50を測定した。また、フォルステライト被膜の密着性についても評価した。これらの結果を表2に示す。

0066

0067

表2によれば、本発明例No.2-1〜2-7は、いずれも高磁束密度と低鉄損を有し、また、実施例1と比較してフォルステライト被膜の密着性が良好である。
一方、再結晶焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルが本発明の範囲外である比較例No.2-8〜2-13は、いずれも磁気特性およびフォルステライト被膜の密着性が劣っている。

0068

本発明によれば、インヒビター成分を使用しない素材を用い、二次再結晶時に0.010〜0.025質量%のCを残留させて磁束密度を向上させ、二次再結晶工程とフォルステライト被膜形成工程に分離する技術を適用してフォルステライト被膜を形成し、再結晶焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルを0.06以下に低減してサブスケールの生成を極力抑制して、二次再結晶焼鈍後の脱炭性を改善することにより、磁束密度と鉄損が共に優れた密着性の良好なフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板の提供が可能になった。

図面の簡単な説明

0069

再結晶焼鈍雰囲気の露点および酸素ポテンシャルと、最終仕上焼鈍後の磁束密度B8の関係を示す図である。
再結晶焼鈍雰囲気の露点および酸素ポテンシャルと、最終仕上焼鈍後の鉄損W17/50の関係を示す図である。
鋼Aにおける再結晶焼鈍雰囲気の露点および酸素ポテンシャルと、二次再結晶焼鈍前のC含有量および最終仕上焼鈍後のC含有量の関係を示す図である。
鋼Bにおける再結晶焼鈍雰囲気の露点および酸素ポテンシャルと、二次再結晶焼鈍前のC含有量および最終仕上焼鈍後のC含有量の関係を示す図である。
酸洗温度とフォルステライト被膜の最小曲げ剥離径の関係を示す図である。

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