図面 (/)

技術 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、電子写真装置、プロセスカートリッジ

出願人 株式会社リコー
発明者 紙英利戸田直博河崎佳明近藤麻衣子北嶋良一小島成人永目宏
出願日 2004年1月8日 (16年11ヶ月経過) 出願番号 2004-003143
公開日 2005年7月21日 (15年5ヶ月経過) 公開番号 2005-195961
状態 特許登録済
技術分野 電子写真における感光体
主要キーワード ヒートレスグラス 含フッ素ランダム共重合体 化学結合エネルギー 含フッ素ブロック共重合体 状態密度分布 温度特性データ トランジットタイム 接着仕事
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2005年7月21日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題

耐摩耗性に優れる感光体を提供し、電子写真装置の感光体交換回数を低減化に寄与する事を目的とする。また、同時に、離型性に優れる感光体を提供し、感光体周り感光体接触部材へのダメージが少ない長寿命作像エンジンを提供することを目的とする。また、製造コストが安価で、広く市場に提供できるイニシャルコストの低い感光体を提供し、同時に、1枚当たりプリントコストの低い感光体を提供することを目的とする。

解決手段

導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生成分を含む電荷発生層電荷輸送成分を含む電荷輸送層とからなる感光層が形成された感光体に、更に架橋性バインダー樹脂を含む感光体最表面層を積層してなる電子写真感光体において、該感光体最表面層に水酸基と残存未硬化部位が無いことを特徴とする電子写真感光体。

概要

背景

複写機レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される電子写真感光体は、セレン酸化亜鉛硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、地球環境への負荷低減低コスト化、および設計自由度の高さで無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。

この有機感光体は層構成別に分類することができ、例えば、(1)ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂やPVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体導電性支持体上に設ける均質単層型、(2)フタロシアニンペリレンなどの顔料を樹脂中に分散させたものを導電性支持体上に設ける分散単層型、(3)導電性支持体上に設ける感光層を、アゾ顔料などの電荷発生物質を含有する電荷発生層CGL)と、トリフェニルアミンなどの電荷輸送物質を含有する電荷輸送層(CTL)に機能分離した積層型に分類することができる。

積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。特に積層型は高感度化に有利であり、加えて、高感度化や高耐久化に対する設計上の自由度が高いこともあって、現在、有機感光体の多くがこの層構成を採っている。

近年、地球環境保全に配慮したモノづくりの重要度が急激に増加している。そこで、感光体のライフサイクル原材料の製造、輸送から廃品処理にいたる全ての過程)を見直すと、地球環境保全に貢献するために感光体はサプライ製品使い捨てされる製品)から機械部品転換することが重要となる。この対応として、感光体自体の設計および使いこなし面から、感光体の摩耗創傷を抑制することが必要となる。同時に、感光体周り感光体接触部材へ与えるダメージも少なくすることができれば、作像エンジン経時劣化を抑制することが可能となり、結果、部品交換頻度装置自体の買い換えを抑制し、省資源化大気汚染防止などの環境負荷低減に貢献することができる。

また、電子写真装置に使用するトナーの種類によっては、感光体表面にフィルミングを来すケースが多々見られる。感光体表面にトナーの成分材料がフィルミングした状態で画像を出力すると、出力画像輪郭の不明な歪んだ画像となりやすい。感光体を長期に亘って使用するためには程度差はあるもののフィルミングの防止策を考慮する必要がある。更に球形トナーを用いる電子写真プロセスにおいては、感光体表面の滑性を頼りに残留トナークリーニング機能成立させるケースも見られることから、この場合においては所定の表面摩擦係数持続させることも必要となる。

有機感光体の耐摩耗性向上に対して、たとえば特許文献1(特開平11−288113号公報)に記載のごとく電荷輸送成分ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂中に共重合させる手段が開示されている。

この手段によれば表面層に配合する低分子化合物含有量を減量化することが可能になる。感光体の表面層に含有する低分子化合物は多くが剛性可塑剤(antiplasticizer)として作用するため、これを減量することで樹脂本来フレキシビリティー発現される。これにより機械的ストレスに対する耐性を向上させることができる。加えて、樹脂自体に高度な電荷輸送性具備することが可能であることから静電特性面のパフォーマンスも確保できるメリットを奏する。
しなしがら、この手段を適用する感光体は材料の共重合化における製造コストが割高となることから現在、実用化が困難な状況にある。

別の手段として、たとえば特許文献2(特開2002−229227号公報)に記載のごとく電荷輸送層を機能分離し、表面側の電荷輸送層に高硬度フィラーを配合する手段が提案されている。
この手段によれば比較的低コスト機械的耐久性電気的なストレスに対する耐性を有機感光体に付与することができる。

しかしながら、この手段を適用する感光体は電子写真プロセスにおけるクリーニング工程が不十分となるケースがある。加えて、高硬度フィラーを高度に配合する構成や高硬度フィラーが配合する電荷輸送層を厚膜化する構成を採る場合、感光体の感度特性面で劣化を来たしてしまうため、電子写真装置の設計自由度に制約を与えてしまうことがある。

他に有機感光体と比較して無機感光体であるアモルファスシリコン感光体機械的強度に極めて優れる性状を示す。
しかしながら、誘電率が低いため帯電能に劣ること、画像ボケを抑制する目的でドラムヒーターを併用する必要のあるケースが多いため、電子写真装置の低消費電力化に不利となる欠点が指摘される。また製造コストも割高であり、以上を総じてアモルファスシリコン感光体を搭載する電子写真装置は一般にコストの高い製品となる。このため市場提供できる対象がごく一部に制約されてしまう欠点をもつ。

現在、地球環境負荷低減を配慮した感光体のロングライフ化に際して、従来、蓄積された技術は個々に有益な手段であるものが多い。しかしながら、近年、急激な勢いで課題視される環境問題への対応としては効果に隠れる欠点が無視できず、従来、提案されてきた技術はどれも不十分と断じざるを得ない。
特開平11−288113号公報
特開2002−229227号公報

概要

耐摩耗性に優れる感光体を提供し、電子写真装置の感光体交換回数を低減化に寄与する事を目的とする。また、同時に、離型性に優れる感光体を提供し、感光体周りの感光体接触部材へのダメージが少ない長寿命作像エンジンを提供することを目的とする。また、製造コストが安価で、広く市場に提供できるイニシャルコストの低い感光体を提供し、同時に、1枚当たりプリントコストの低い感光体を提供することを目的とする。導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生成分を含む電荷発生層と電荷輸送成分を含む電荷輸送層とからなる感光層が形成された感光体に、更に架橋性バインダー樹脂を含む感光体最表面層を積層してなる電子写真感光体において、該感光体最表面層に水酸基と残存未硬化部位が無いことを特徴とする電子写真感光体。 なし

目的

本発明は、電子写真装置の省エネルギー化と感光体のライフサイクルにおける省資源省エネルギー環境汚染の削減化を具現化するために必要となる耐摩耗性に優れる感光体を提供し、電子写真装置の感光体交換回数を低減化に寄与する事を目的とするものである。本発明は、また、同時に、離型性に優れる感光体を提供し、感光体周りの感光体接触部材へのダメージが少ない長寿命作像エンジンを提供することを目的とするものである。また、製造コストが安価で、広く市場に提供できるイニシャルコストの低い感光体を提供し、同時に、1枚当たりのプリントコストの低い感光体を提供することを目的とするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
10件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生成分を含む電荷発生層電荷輸送成分を含む電荷輸送層とからなる感光層が形成された感光体に、更に架橋性バインダー樹脂を含む感光体最表面層を積層してなる電子写真感光体において、該感光体最表面層に水酸基と残存未硬化部位が無いことを特徴とする電子写真感光体。

請求項2

前記感光体最表面層の3200〜3800cm−1における光透過率が95%以上であり、且つ、示差走査熱量計によるDSCカーブにおける吸熱ピーク観測されないことを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。

請求項3

露光現像間時間の時間変化に対する電子写真感光体の露光部電位の変化量が0.7V/msec以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。

請求項4

感光体表面の表面自由エネルギーが30mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項5

感光体表面の表面自由エネルギーの経時変化が2mN/m未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項6

前記架橋性バインダー樹脂が電荷輸送成分、熱硬化性樹脂単量体、及び熱硬化性界面活性剤との架橋反応によって得られる樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項7

電荷輸送層中の電荷輸送成分と感光体最表面層の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャル差が0.1eV以下であることを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。

請求項8

感光体最表面層に含有される電荷輸送層に用いた電荷輸送成分の含有量aと、感光体最表面層に用いた電荷輸送成分の含有量bとの間に以下の関係を持たすことを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。a/(a+b)<0.01またはa/(a+b)>0.99

請求項9

感光体最表面層の電荷輸送成分に下記一般式(1)で表される電荷輸送成分が含有されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。(式中、R1、R2は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R1、R2は同一であっても異なってもよい。また、Ar1、Ar2およびAr3はアリレン基を表し、アリレン基としてはR1およびR2と同様のアリール基の2価基が挙げられ、これらは同一であっても異なってもよい。)

請求項10

感光体最表面層の電荷輸送成分に下記一般式(2)で表される電荷輸送成分が含有されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。(式中、R3、R4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3、R4は同一であっても異なってもよい。また、Ar4、Ar5およびAr6はアリレン基を表し、アリレン基としてはR3およびR4と同様のアリール基の2価基が挙げられ、これらは同一であっても異なってもよい。また、m、nは1〜10の繰り返し数を表す。)

請求項11

感光体最表面層中の電荷輸送成分の含有量が7.5wt%以上であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項12

電荷輸送層中に含有される電荷輸送成分が、重量平均分子量10000以上、200000以下の高分子電荷輸送物質であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項13

電荷輸送層の電界強度160kV/cmにおける電荷移動度が、1.0×10−4cm2/V・sec以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項14

電荷輸送層がα−フェニルスチルベン骨格を有する電荷輸送物質と高分子電荷輸送物質乃至ポリスチレン樹脂との固溶体であることを特徴とする請求項13記載の電子写真感光体。

請求項15

テーバー摩耗試験によるCS−5摩耗量をF、CS−10摩耗量をG、CS−17摩耗量をHとしたとき、感光体最表面層樹脂膜テーバー摩耗量の関係が下記式の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の電子写真感光体。H−G<2mg且つF<0.5mg且つH<3.0mg

請求項16

テーバー摩耗試験によるCS−10中心線表面粗さをJ、CS−17中心線表面粗さをKとしたとき、感光体最表面層樹脂膜のテーバー摩耗試験による表面粗さの関係が下記式の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜15ののいずれか一項に記載の電子写真感光体。K−J<0.10μm且つK<0.25μm

請求項17

感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂がアミノ樹脂乃至、アミノ樹脂混合物であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項18

感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂がフレキシブルユニットを有する熱硬化性アミノ樹脂乃至、アミノ樹脂混合物であることを特徴とする請求項17記載の電子写真感光体。

請求項19

感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂に含有させる熱硬化性界面活性剤が少なくともフッ素樹脂成分反応性水酸基を含有する共重合体であることを特徴とする請求項6〜18のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

請求項20

熱硬化性界面活性剤がブロック共重合体であることを特徴とする請求項19記載の電子写真感光体。

請求項21

熱硬化性界面活性剤がフッ素樹脂シロキサングラフト型ポリマーであることを特徴とする請求項19記載の電子写真感光体。

請求項22

感光体最表面層を形成する際、酸性物質を併用して成膜することを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。

請求項23

感光体最表面層を形成する際、レベリング剤を併用して成膜することを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。

請求項24

感光体最表面層をリングコート塗工により成膜することを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。

請求項25

請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えた電子写真装置

請求項26

請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ

技術分野

0001

本発明は複写機ファクシミリレーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等の電子写真装置および電子写真用プロセスカートリッジに使用される電子写真感光体およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

複写機、レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される電子写真感光体は、セレン酸化亜鉛硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、地球環境への負荷低減低コスト化、および設計自由度の高さで無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。

0003

この有機感光体は層構成別に分類することができ、例えば、(1)ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂やPVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体導電性支持体上に設ける均質単層型、(2)フタロシアニンペリレンなどの顔料を樹脂中に分散させたものを導電性支持体上に設ける分散単層型、(3)導電性支持体上に設ける感光層を、アゾ顔料などの電荷発生物質を含有する電荷発生層CGL)と、トリフェニルアミンなどの電荷輸送物質を含有する電荷輸送層(CTL)に機能分離した積層型に分類することができる。

0004

積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。特に積層型は高感度化に有利であり、加えて、高感度化や高耐久化に対する設計上の自由度が高いこともあって、現在、有機感光体の多くがこの層構成を採っている。

0005

近年、地球環境保全に配慮したモノづくりの重要度が急激に増加している。そこで、感光体のライフサイクル原材料の製造、輸送から廃品処理にいたる全ての過程)を見直すと、地球環境保全に貢献するために感光体はサプライ製品使い捨てされる製品)から機械部品転換することが重要となる。この対応として、感光体自体の設計および使いこなし面から、感光体の摩耗創傷を抑制することが必要となる。同時に、感光体周り感光体接触部材へ与えるダメージも少なくすることができれば、作像エンジン経時劣化を抑制することが可能となり、結果、部品交換頻度装置自体の買い換えを抑制し、省資源化大気汚染防止などの環境負荷低減に貢献することができる。

0006

また、電子写真装置に使用するトナーの種類によっては、感光体表面にフィルミングを来すケースが多々見られる。感光体表面にトナーの成分材料がフィルミングした状態で画像を出力すると、出力画像輪郭の不明な歪んだ画像となりやすい。感光体を長期に亘って使用するためには程度差はあるもののフィルミングの防止策を考慮する必要がある。更に球形トナーを用いる電子写真プロセスにおいては、感光体表面の滑性を頼りに残留トナークリーニング機能成立させるケースも見られることから、この場合においては所定の表面摩擦係数持続させることも必要となる。

0007

有機感光体の耐摩耗性向上に対して、たとえば特許文献1(特開平11−288113号公報)に記載のごとく電荷輸送成分ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂中に共重合させる手段が開示されている。

0008

この手段によれば表面層に配合する低分子化合物含有量を減量化することが可能になる。感光体の表面層に含有する低分子化合物は多くが剛性可塑剤(antiplasticizer)として作用するため、これを減量することで樹脂本来フレキシビリティー発現される。これにより機械的ストレスに対する耐性を向上させることができる。加えて、樹脂自体に高度な電荷輸送性具備することが可能であることから静電特性面のパフォーマンスも確保できるメリットを奏する。
しなしがら、この手段を適用する感光体は材料の共重合化における製造コストが割高となることから現在、実用化が困難な状況にある。

0009

別の手段として、たとえば特許文献2(特開2002−229227号公報)に記載のごとく電荷輸送層を機能分離し、表面側の電荷輸送層に高硬度フィラーを配合する手段が提案されている。
この手段によれば比較的低コスト機械的耐久性電気的なストレスに対する耐性を有機感光体に付与することができる。

0010

しかしながら、この手段を適用する感光体は電子写真プロセスにおけるクリーニング工程が不十分となるケースがある。加えて、高硬度フィラーを高度に配合する構成や高硬度フィラーが配合する電荷輸送層を厚膜化する構成を採る場合、感光体の感度特性面で劣化を来たしてしまうため、電子写真装置の設計自由度に制約を与えてしまうことがある。

0011

他に有機感光体と比較して無機感光体であるアモルファスシリコン感光体機械的強度に極めて優れる性状を示す。
しかしながら、誘電率が低いため帯電能に劣ること、画像ボケを抑制する目的でドラムヒーターを併用する必要のあるケースが多いため、電子写真装置の低消費電力化に不利となる欠点が指摘される。また製造コストも割高であり、以上を総じてアモルファスシリコン感光体を搭載する電子写真装置は一般にコストの高い製品となる。このため市場提供できる対象がごく一部に制約されてしまう欠点をもつ。

0012

現在、地球環境負荷低減を配慮した感光体のロングライフ化に際して、従来、蓄積された技術は個々に有益な手段であるものが多い。しかしながら、近年、急激な勢いで課題視される環境問題への対応としては効果に隠れる欠点が無視できず、従来、提案されてきた技術はどれも不十分と断じざるを得ない。
特開平11−288113号公報
特開2002−229227号公報

発明が解決しようとする課題

0013

本発明は、電子写真装置の省エネルギー化と感光体のライフサイクルにおける省資源省エネルギー環境汚染の削減化を具現化するために必要となる耐摩耗性に優れる感光体を提供し、電子写真装置の感光体交換回数を低減化に寄与する事を目的とするものである。本発明は、また、同時に、離型性に優れる感光体を提供し、感光体周りの感光体接触部材へのダメージが少ない長寿命作像エンジンを提供することを目的とするものである。また、製造コストが安価で、広く市場に提供できるイニシャルコストの低い感光体を提供し、同時に、1枚当たりプリントコストの低い感光体を提供することを目的とするものである。

課題を解決するための手段

0014

上記の技術課題を達成するために製造コストが高騰してしまうことや、電子写真装置内にドラムヒーター等、従来無用であった手段を付加することでプリントコストを上昇させたり、あるいは装置の消費電力を増加させたりしては広く市場に受け入れてもらえない。このような不具合を断ち切れない方策は環境負荷低減に対しても貢献することができない。なぜなら、環境パフォーマンスの高い製品を広く使用して貰えなければ、環境負荷低減量トータル量が小さくなってしまうためである。

0015

本発明に際しては、電子写真装置の複雑化の抑制と感光体製造コストおよびプリントコストの抑制を具備することが必須となる。

0016

本発明はかかる課題を解決するために、第一に感光体自体の電子写真装置におけるストレス耐性を向上化することが前提となる。しかしながら、このストレス耐性を向上するのみでは実際の電子写真装置内での使用における感光体のロングライフ化は困難である。なぜなら低摩耗性の感光体は、残像画像の発生やクリーニング不良に伴う局部的なボケ画像の発生あるいは、トナー成分が感光体表面へフィルミングすることによる作像可能部分全面のボケ画像の発生が生じやすくなるためである。従来、このような異常画像の発生は感光体表面を適度に削ることが解決策となっていた。ストレス耐性の向上を図りつつ、且つ、これらの異常画像発生の抑制技術を搭載する必要がある。

0017

発明者は以上の必須条件適合し、且つ、課題を解決する構成として、導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層が形成され、更に感光体最表面層を積層してなる有機感光体において、該感光体最表面層に水酸基と残存未硬化部位が無いことで解決できることを見出した。

0018

すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生成分を含む電荷発生層と電荷輸送成分を含む電荷輸送層とからなる感光層が形成された感光体に、更に架橋性バインダー樹脂を含む感光体最表面層を積層してなる電子写真感光体において、該感光体最表面層に水酸基と残存未硬化部位が無いことを特徴とする電子写真感光体。

0019

(2) 前記感光体最表面層の3200〜3800cm−1における光透過率が95%以上であり、且つ、示差走査熱量計によるDSCカーブにおける吸熱ピーク観測されないことを特徴とする前記(1)記載の電子写真感光体。
(3)露光現像間時間の時間変化に対する電子写真感光体の露光部電位の変化量が0.7V/msec以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の電子写真感光体。

0020

(4)感光体表面の表面自由エネルギーが30mN/m以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(5) 感光体表面の表面自由エネルギーの経時変化が2mN/m未満であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

0021

(6) 前記架橋性バインダー樹脂が電荷輸送成分、熱硬化性樹脂単量体、及び熱硬化性界面活性剤との架橋反応によって得られる樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(7)電荷輸送層中の電荷輸送成分と感光体最表面層の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャル差が0.1eV以下であることを特徴とする前記(6)に記載の電子写真感光体。
(8) 感光体最表面層に含有される電荷輸送層に用いた電荷輸送成分の含有量aと、感光体最表面層に用いた電荷輸送成分の含有量bとの間に以下の関係を持たすことを特徴とする前記(6)記載の電子写真感光体。
a/(a+b)<0.01または
a/(a+b)>0.99

0022

(9)感光体最表面層の電荷輸送成分に下記一般式(1)で表される電荷輸送成分が含有されることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。



(式中、R1、R2は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R1、R2は同一であっても異なってもよい。また、Ar1、Ar2およびAr3はアリレン基を表し、アリレン基としてはR1およびR2と同様のアリール基の2価基が挙げられ、これらは同一であっても異なってもよい。)

0023

(10)感光体最表面層の電荷輸送成分に下記一般式(2)で表される電荷輸送成分が含有されることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。



(式中、R3、R4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R3、R4は同一であっても異なってもよい。また、Ar4、Ar5およびAr6はアリレン基を表し、アリレン基としてはR3およびR4と同様のアリール基の2価基が挙げられ、これらは同一であっても異なってもよい。また、m、nは1〜10の繰り返し数を表す。)

0024

(11)感光体最表面層中の電荷輸送成分の含有量が7.5wt%以上であることを特徴とする前記(6)〜(10)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(12)電荷輸送層中に含有される電荷輸送成分が、重量平均分子量が10000以上、200000以下の高分子電荷輸送物質であることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。

0025

(13)電荷輸送層の電界強度160kV/cmにおける電荷移動度が、1.0×10−4cm2/V・sec以上であることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(14) 電荷輸送層がα−フェニルスチルベン骨格を有する電荷輸送物質と高分子電荷輸送物質乃至ポリスチレン樹脂との固溶体であることを特徴とする前記(13)記載の電子写真感光体。

0026

(15)テーバー摩耗試験によるCS−5摩耗量をF、CS−10摩耗量をG、CS−17摩耗量をHとしたとき、感光体最表面層樹脂膜テーバー摩耗量の関係が下記式の関係を満たすことを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
H−G<2mg 且つ F<0.5mg 且つ H<3.0mg
(16) テーバー摩耗試験によるCS−10中心線表面粗さをJ、CS−17中心線表面粗さをKとしたとき、感光体最表面層樹脂膜のテーバー摩耗試験による表面粗さの関係が下記式の関係を満たすことを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
K−J<0.10μm 且つ K<0.25μm

0027

(17)感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂がアミノ樹脂乃至、アミノ樹脂混合物であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(18) 感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂がフレキシブルユニットを有する熱硬化性アミノ樹脂乃至、アミノ樹脂混合物であることを特徴とする前記(17)記載の電子写真感光体。

0028

(19)感光体最表面層の架橋性バインダー樹脂に含有させる熱硬化性界面活性剤が少なくともフッ素樹脂成分反応性水酸基を含有する共重合体であることを特徴とする前記(6)〜(18)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(20) 熱硬化性界面活性剤がブロック共重合体であることを特徴とする前記(19)記載の電子写真感光体。
(21) 熱硬化性界面活性剤がフッ素樹脂シロキサングラフト型ポリマーであることを特徴とする前記(19)記載の電子写真感光体。

0029

(22)感光体最表面層を形成する際、酸性物質を併用して成膜することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
(23) 感光体最表面層を形成する際、レベリング剤を併用して成膜することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
(24) 感光体最表面層をリングコート塗工により成膜することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。

0030

(25) 前記(1)〜(21)のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えた電子写真装置。
(26) 前記(1)〜(21)のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ

0031

以下、本発明の概略を説明する。
1感光体のストレス耐性向上手
1.1耐摩耗性向上手段
電子写真プロセスで生じる感光体の摩耗は、主に以下に記す過程において発生または加速されていると考えられる。
(1)クリーニング過程による摩耗
電子写真プロセスにおいて、感光体表面に残留するトナーを除去する方法として、クリーニングブラシ方式やクリーニングブレード方式が一般に用いられている。例えば、クリーニングブレード方式の場合、クリーニングブレードの先端部を回転する感光体表面に所定の押圧力物理的に食い込ませることにより残留トナーを感光体表面から除去している。このときのブレードの摺擦により、感光体表面は摩耗やキズが生じる。この摩耗は機械的な摩耗が支配的であると考えられる。

0032

(2)帯電過程による影響
特開平10−10767号公報に記載の如く、感光体は帯電過程において、感光体内部の僅かな欠陥部位放電絶縁破壊が生じてしまうことがある。特に感光体が絶縁耐圧の低い有機感光体の場合は、この絶縁破壊が著しい。更に、放電により感光体表面が変質して耐摩耗性の劣化を引き起こす。これにより繰り返し使用した際に表面層の摩耗量が増加し、感光体の寿命を縮めてしまう。また、放電は表面層膜厚の薄いところにより強くなることから、繰り返し使用において生じた創傷部分は帯電劣化(変性)が生じ易くなり表面層の凹凸をより大きくしてしまう。結果、凝着摩耗(疲労摩耗)を促進してしまうと考えられる。

0033

(3)現像過程による摩耗
2成分現像法の場合、電子写真感光体はキャリアによる表面研磨を受け、アブレッシブ摩耗を引き起こす。また、トナーに含まれる流動化剤等の添加剤にはシリカ等の硬い材料が多く、これらの添加剤が感光体に対して研磨剤として作用すると考えられる。現像過程に伴う感光体の摩耗は微小粒子によって連続的に行われていると考えることができる。この状況は感光体が絶えずヤスリあるいはクレンザーで磨かれている状況に喩えられる。このような現象は、シリカ等の硬い添加剤を多量に含むトナーやクリーニング手段に滞留し易いトナーを使用する電子写真装置に於いて深刻な問題となる。また、1成分現像法の場合も含め、現像に用いるトナーは、一度、感光体表面に付着し、次いで、転写またはクリーニング手段によって感光体表面から離れる過程を繰り返す。このときのトナー−感光体間接着仕事量が無視できず、トナーが感光体表面から離れる際に感光体表面が凝着摩耗を引き起こしてしまうと考えられる。

0034

電子写真感光体の耐摩耗性を向上させるためには、少なくとも上記の(1)〜(3)の全てについて対策を講じる必要がある。発明者はこれらの摩耗因子に対して感光体の耐久性を向上させることを検討したところ、感光体表面に架橋樹脂を積層することが有効であることを特定した。現時点では、この原因の詳細は不明であるが、発明者は次のように考えている。

0035

すなわち、感光体表面の摩耗形態として、アブレッシブ摩耗と凝着摩耗が生じていると考えられる。電子写真装置内では帯電工程が加わるため、これらの機械的なストレスによる摩耗に電気的なストレスが摩耗を加速していると思われる。

0036

有機感光体の表面層材料として一般に用いられているポリカーボネートの様な熱可塑性樹脂(線状高分子材料)の摩耗粉の重量平均分子量を観測すると、アブレッシブ摩耗によるものが、成膜時の値より半減しており、凝着摩耗によるもので1/3程度となる知見を得た。これより、表面層材料の高分子が一箇所でも切断することで、摩耗を来してしまうものと想定された。これに基づき、摩耗を防止する方策として、網目状に化学結合を形成する架橋性樹脂を用いることで摩耗を抑制できると考案した。すなわち、このような網目状構造にすることで、仮に高分子鎖の結合が一部破断しても、摩耗粉の生成を来さないと考えた。実際、架橋樹脂を用いることで一段、高い耐摩耗性が得られることを確認した。

0037

単に感光体表面に架橋樹脂を積層することではストレスに対する耐久性向上は認められず、硬化不良の状態を排除することが特に重要となる。

0038

これに対し示差走査熱量計(DSC)により計測される架橋樹脂材料のDSCカーブについて、架橋樹脂材料の分解温度まで吸熱ピークを持たない状態にすることが硬化不良を排除する指針となることを見出した。

0039

例えば、メラミン樹脂塗料硬化温度の異なる条件で加熱硬化後、得られた塗膜のDSCカーブを見ると硬化条件によりそれぞれ異なるカーブが得られる。その一例を図11に示す。原料同一材料であるにも関わらず、硬化条件によりDSCカーブは吸熱ピークの見られるケースと見られないケースなど、それぞれ異なることが解る。低温で硬化したものは示差走査熱量測定において、ブロードな吸熱ピークが見受けられる。これは残留溶媒蒸発に起因するものと特定される。この様な残留溶媒を残す硬化膜の耐摩耗性を評価すると、概ね不良の結果が得られる。また、溶媒沸点よりも十分に高い温度で加熱しても、架橋の未反応部を残した材料では機械的な強度は不良となる。この未硬化部の有無はDSCカーブの吸熱ピークから推測可能である。通常、熱硬化性樹脂硬化反応縮合反応となるため、本来、発熱反応と考えられる。しかしながら、縮合反応時に生成する反応水等の蒸発熱が吸熱ピークとして加算されるため、実際には発熱ピークよりも吸熱ピークの有無で硬化具合を判断しやすい。

0040

また、硬化温度の決定は熱天秤を用いたDTAカーブから、大凡の適当温度を見積ることができる。硬化樹脂塗料のDTAカーブをモニターすると、溶媒蒸発による重量減少、縮合反応による重量減少、酸化反応に伴う重量増加総合して観測される。図12にメラミン樹脂塗料のDTAカーブの一例を示す。このケースでは170℃近傍に大きな重量減少が観測された。そこで、この温度条件で硬化した樹脂膜について上記の方法でDSCカーブを得たところ、吸熱ピークが見られず、且つ、良好な機械強度が発現された。

0041

尚、本発明では示差走査熱量計はリガク社 Thermo PlusDSC8230を用いた。サンプル容器開放型アルミパン比較物質に測定サンプルと同量のα−アルミナを使用し、10℃/minの走査条件ファーストスキャン時のカーブをモニターしている。サンプルは予め感光体最表面層材料の成膜と同じ条件で加熱硬化した材料を選択した。

0042

本発明における感光体最表面層に用いる架橋樹脂は材料の耐摩耗性を可能な限り利用するため、化学結合エネルギーの大きな材料が好ましく、且つ、架橋樹脂膜全体の化学結合エネルギーの総和が大きな材料が好ましい。

0043

この実際的な指標の一つとして、発明者はCS−5、CS−10、およびCS−17摩耗輪を装着し、荷重条件250gfのテーバー摩耗試験による1000回転当たりの損失重量の関係が次の条件を満足することが重要となることを確認した。すなわち、テーバー摩耗試験によるCS−5摩耗量をF、CS−10摩耗量をG、CS−17摩耗量をHとしたとき、感光体最表面層樹脂膜に対するテーバー摩耗量の関係が下記式の関係を満たす。
H−G<2mg 且つ F<0.5mg 且つ H<3.0mg

0044

ここで、H−Gはテーバー摩耗試験による摩耗量に対する摩耗輪のアブレッシブ強度の寄与率を表すと解釈される。例えば、会社のロゴマークワンポイントを大量にプリントするケース等、感光体表面に入力される現像剤供給量偏りが生じるケースがある。このとき、感光体は偏摩耗を来すことが多い。H−Gはこれを抑制する指標となる。CS−5は他の摩耗輪と異なり、材質フエルトでできている。このため、CS−5を用いるテーバー摩耗試験では、アブレッシブ摩耗と異なる摩耗形態をとる。すなわちFは凝着摩耗などの非アブレッシブ摩耗の摩耗量を表すと解釈される。他方、HとGはアブレッシブ摩耗による摩耗量を表す。電子写真装置内における感光体の摩耗速度は装置のプロセス条件差やトナーの種類により大きく変動する。しかしながら、テーバー摩耗試験に代表される機械的なストレスによる摩耗量の大きなサンプルが電子写真装置内で摩耗が少なくなることは希である。発明者はHとFは感光体最表面層材料の機械的強度を表す指標であり、同一条件下による評価では以上の条件を満足するものは電子写真装置内での摩耗量が少ないことを確認した。

0045

1.2創傷防止手段
感光体表面に熱硬化性樹脂を積層し、例えば金属並の耐摩耗性が付与された場合、耐傷性の重要度が増すことになる。
感光体表面に傷が生じると、電子写真プロセスにおける放電ハザードが創傷部分に集中してその部位の変質をもたらしてしまう。また、創傷によって形成された溝にトナー成分や紙粉が埋めこまれることが原因して、局所的に地汚れや画像ボケ等の画像欠陥が生じやすくなる。
耐摩耗性向上が進むと、一度生じた傷は刻印されるかの如く経時で消失し難くなる。このため、創傷が感光体のロングライフ化を阻害することになる。

0046

これに対し、発明者はテーバー摩耗試験における表面粗さの関係が以下の条件を満足することで創傷による不具合が解消される知見を得た。
すなわち、テーバー摩耗試験によるCS−10中心線表面粗さをJ、CS−17中心線表面粗さをKとしたとき、感光体最表面層樹脂膜のテーバー摩耗試験による表面粗さの関係が下記式の関係を満たすと良い。
K−J<0.10μm 且つ K<0.25μm
ここで、K−Jは上述のテーバー摩耗試験による創傷に対する摩耗輪のアブレッシブ強度の寄与率を表すと解釈される。また、KとJはアブレッシブ摩耗による創傷の度合いを表すと解釈される。

0047

上の関係を満足するためには、表面層材料を網目状構造で架橋密度の大きな架橋樹脂を選択し、テーバー摩耗試験における摩耗量を極めて少なくするか、網目状構造の硬化樹脂膜にフレキシブルユニットを導入することが効果的である。

0048

具体的には硬化性樹脂の材料として炭素数が2つ以上のアルキレン骨格をもつ2官能以上の硬化剤を配合することで創傷の度合いが緩和される知見を得た。更に、炭素数5以上のアルキレン骨格を有する化合物を硬化剤に用いることで、耐傷性に対して飛躍的な向上効果が得られることも確認している。そこで、本発明では、炭素数2以上、好ましくは炭素数5以上のアルキレン骨格を有するフレキシブルユニットを導入することが耐傷性向上には望ましく、その配合量は大凡、30wt%以上含有すると良い。

0049

2 異常画像発生抑制化手段
2.1画像ボケ抑制手段
架橋樹脂を用いた感光体最表面層を積層した有機感光体は温湿度変化による環境変動により、画像流れを伴うものが少なくない。この傾向は、例えばケイ素化合物が含有される保護層積層感光体に対して一部知られている。これに対し、3200〜3800cm−1の透過率が95%以上となる架橋樹脂を選択することで、以上の不具合を未然に防止することが可能となる。

0050

3500cm−1近傍の吸収は、分子間水素結合性の水酸基の伸縮振動(3300cm−1)、水素結合関与しない伸縮振動(3600cm−1)、ケイ素化合物に結合する水酸基の伸縮振動(3500cm−1)と水酸基の伸縮振動に起因する吸収が多い。

0051

温湿度の影響による画像流れは、感光体表面に水分が吸着することによる電気的な表面抵抗の低下に起因することが多い。そこで、このような感光体表面への水分の吸着となる原因系を排除することで画像流れを未然に防止することができる。

0052

ここで、感光体最表面層の透過率測定結果の一例を図13に記す。図13において、透過率が95%を下回る感光体は高湿環境下におけるコピー画像の出力に際して、画像流れが観測された。これに対して、透過率が95%近傍のサンプルは画像流れの程度が低く、更に、最も透過率の高いサンプルは、画像流れが全く気にならない結果を得た。

0053

透過率を所定以下にするためには、成膜条件の工夫によっても解決できるが、架橋性バインダー樹脂として、メラミン樹脂等のアミノ樹脂乃至アミノ樹脂混合物を選択することが有利であることを確認している。

0054

尚、本発明では感光体最表面層の透過率測定は専用のアクセサリー(OMNI−Sampler)を取り付けたサーモニコレー社製 FT−IR NEXUS470を用い、ATR法により透過率を求めている。

0055

2.2残像画像抑制手段
また、以上の指針により作製する電子写真感光体は残像画像を発生しやすい。この残像画像はプリント速度を遅くすることで解消されることが多いことから、感光体の表面電位光減衰時間応答性に起因するものと考えられる。

0056

一般の有機感光体は、電子写真装置内で露光−現像間時間を短縮すると、多少なりとも露光部電位が上昇する。この露光部電位の露光−現像間時間依存性には、屈曲点と見られる傾きの異なる時間依存性が観測できる。この時間の短時間側ほど、露光−現像間時間の短縮により急激な露光部電位の上昇が観測される。発明者はこの時間依存性と残像との間に良好な対応関係があることを見出した。そして、この露光部電位上昇の時間依存性を特定値以下で使用することで残像が防止できることを見出した。具体的には、露光−現像間時間の時間変化に対する電子写真感光体の露光部電位の変化量(実機トランジットの時間依存性)を0.7V/msec以下で使用することで残像を抑制できることを見出した。

0057

この条件を満足する方策として、感光体最表面層の電荷輸送性を向増大させることや電荷輸送層と感光体最表面層との間に生じる電気的な障壁を低減させることが有効となる。例えば、前者に対しては感光体最表面層に電荷輸送物質を適当量含有させることや、酸化スズ等の導電性微粒子を配合させる手段が挙げられる。また、後者では感光体最表面層を成膜する際、下地となる電荷輸送層をある程度溶解させて成膜する手段を挙げることができる。

0058

ここで、電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性評価について説明する。
電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性を評価する手法としては、例えば特開平10−115944号公報や特開2001−312077号公報に見られる電荷輸送材料またはこれとバインダー樹脂からなる樹脂膜をタイムオブフライト(TOF)法から見積ることが多い。これは感光体の処方を設計する上で有用な方法である。しかしながら、装置内で使用される感光体の電荷輸送とTOF法による電荷輸送の条件は、前者が露光後、時々刻々と膜中の電界強度が変化していくのに対して、後者は電界強度が一定である違いが指摘される。また、積層型感光体に対しては、露光による電荷発生層からの電荷発生および電荷発生層から電荷輸送層への注入挙動が電荷輸送にもたらす影響もTOF法では計測値に反映されることは無い。

0059

また、感光体の応答性を直接評価する手法として、例えば特開2000−305289号公報に見られるパルス光照射後の感光体の表面電位変化高速表面電位計を用いて高速記録し、所定の電位に到達するのに要する応答時間を測定する手法が提案されている。この手法は一般にゼログラフィックタイムオブフライト(XTOF)法と称されている。この手法はTOF法の不具合を解消する評価手段として有用といえる。しかしながら、この手法では測定に用いる光源が電子写真装置に使われる露光手段と異なるケースが多く、直接的な測定方法とは言い切れない側面を有する。

0060

これに対して、特開2000−275872号公報に記載の感光体の特性評価装置を用いることで、感光体の露光部位が現像手段に到達する所定の時間(以下、簡単のため、プロセス時間と称す。)を設定し、LDから出力される感光体の露光量に対する露光部電位の関係(光減衰カーブ)を把握することが可能である。

0061

この装置において、プロセス時間を変えた場合の露光部電位の変化を計測すると、プロセス時間に対する露光部電位の関係に屈曲点を見出すことができる。便宜上、この屈曲点におけるプロセス時間を実機トランジットタイムと称する。この具体例を図20に示す。これによれば、プロセス時間と露光部電位の関係、すなわち電子写真感光体の表面電位光減衰の時間応答性を正確に把握することが可能となる。

0062

本発明ではこの評価法を基に、高速プリント時における画像濃度不安定性と残像画像発生との間の関係性の有無を調べたところ、以下の関係を把握するに至った。
(1)残像画像が発生するケースは、感光体が実機トランジットタイムよりも短い範囲で使用される際に発生するケースが多い。特に、除電手段を用いない電子写真装置においてこの傾向が強い。
(2)実機トランジットタイムよりも短い時間範囲におけるプロセス時間に対する露光部電位の変動を小さくすることで、残像画像の発生が解消される。
(3)実機トランジットタイムよりも短時間側のプロセス時間に対する露光部電位の変動として、プロセス時間の時間変化に対する露光部電位の変化量が0.7V/sec以下の場合、残像画像発生が解消される。
尚、装置の制約から35msec以下の露光部電位の変化量は測定していない。
(4)実機トランジットタイムよりも短時間側におけるプロセス時間に対する露光部電位の変動を抑制する手段として、感光体最表面層に電荷輸送成分を含有することが有効となる。

0063

以上の知見から、像露光から現像までの時間を短縮化する際に発生する出力画像の画像濃度不均一性と残像画像の発生を伴わない電子写真感光体とこれを用いた電子写真装置を提供できることを見出した。

0064

3感光体接触部材への低ダメージ化手段
感光体のロングライフ化に際し、高い耐摩耗性を有する感光体に対して感光体表面の汚染防止が要求される。例えば、感光体に付着した転写残トナーなどが感光体表面に滞留した状態で使用するとクリーニングブレードはこの滞留異物によって感光体が回転するごとに叩かれる状態が続く。ついには叩かれる部位の変質を経てクリーニングブレードのエッジ欠けてしまうことが少なくない。この場合、欠けた部分はクリーニング機能が消失し、異常画像発生の原因となる。このような劣化はクリーニングブレードに関わらず感光体に接触する部材全てに該当するものと言える。また、感光体表面に滞留する付着物は、転写残トナーの他にも紙粉、埃、キャリア等も考えられる。

0065

電子写真プロセスは感光体表面に電荷、現像剤、放電生成物転写物を付着させては除去する工程を高速に繰り返す方法と見ることができる。かかる視点から、感光体表面はこれらの付着物に対して離型性に優れる方が感光体接触部材へのダメージを小さくすることができる。

0066

感光体を取り巻く接触部材と滞留異物の主要因となるトナー間の接着仕事の算出例を挙げると、従来感光体に対する接着仕事として95mN/m、コピー用紙に対して91mN/m、クリーニングブレードに対して72〜90mN/m、トナー同士の接着仕事は101mN/mが得られた。転写残トナーは感光体上に接着している状態は好ましい状態とは言えず、容易に感光体表面から除去されることが好ましい。このとき、感光体表面とトナー間の接着仕事を70mN/m以下に設定することで、感光体上へのトナーの滞留や固着を未然に防止することができる。

0067

これに対し、感光体の低表面自由エネルギー化が重要となる。なぜなら、感光体の表面自由エネルギーと感光体とトナー間の接着仕事には相関関係があるためである。その関係を表す一例を図9に示す。図9では未使用感光体初期感光体)とトナー間の接着仕事の関係を表すプロットと、感光体表面に帯電工程を加えて表面を劣化させたもの(疲労後感光体)とトナー間の接着仕事の関係を表すプロットを併せて示す。表面劣化後の感光体も概ねこの相関性に従う。

0068

感光体の表面自由エネルギーが30mN/m以下に設定すれば、感光体とトナーの接着仕事を70mN/m以下にすることができる。
この条件下ではクリーニングブレードよりも接着仕事が小さく、実際、転写残トナーの感光体表面への滞留を格段に防止できることを確認した。

0069

この効果を確認する20万枚プリント後感光体表面の3次元画像図10に示す。感光体表面に付着物は観察されず、新品同様の滑らかな表面形状が保持された。また、20万枚プリント試験に用いたクリーニングブレードも全く損傷が見られない結果を得た。これらの知見と試験結果より、本発明において感光体の表面自由エネルギーは30mN/m以下とすることが重要となる。また、感光体の離型性を保持する都合からその経時変動は2mN/m以下であることが望ましい。

0070

感光体表面を低表面自由エネルギー化する手段としては、架橋性バインダー樹脂に反応性水酸基とフッ素樹脂成分が含有される界面活性剤を用いることが有効である。このような界面活性剤として、例えば(1)フルオロアルキル基を有する(メタアクリレートを含む共重合体として、特開昭60−221410号公報および特開昭60−228588号公報に記載のフッ素を含まないビニルモノマー含フッ素ビニル型モノマーとからなるブロック共重合体、(2)フッ素系グラフトポリマーとして、特開昭60−187921号公報に記載のポリメチルメタクリレートを側鎖にもつメタクリレートマクロモノマーとフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを共重合した櫛型グラフトポリマーが挙げられる。また、(3)フッ素樹脂にシリコーン成分が化学結合される特開2000−119354号公報に記載の化合物が有効である。

0071

尚、本発明では表面自由エネルギーと接着仕事を崎 寧昭、敏雄、日本接着協会紙8(3)、131−141(1972)に記載の拡張Fowkes式に基づいて算出している。

0072

感光体感度特性の確保
4.1感光体最表面層の電荷輸送成分の選択条件
電子写真装置で静電潜像が形成される仕組みを先の積層型有機感光体の場合について説明すると、感光体を帯電した後に書き込み光照射すると、光を吸収した電荷発生物質は電荷キャリアを発生し、この電荷キャリアが電荷輸送層に注入される。次に、帯電によって生じた電界にしたがって電荷キャリアは電荷輸送層中を移動し、感光体表面まで到達した電荷キャリアが帯電電荷中和することにより静電潜像を形成する。

0073

電荷発生層と電荷輸送層からなる感光層表面に更に最表面層を積層する場合、この最表面層が電気的に不活性ブロッキング層としてのみ機能すると静電潜像の形成が不能となる。

0074

これに対して、静電潜像を形成する手段として感光体最表面層に電荷輸送性を付与することが有効である。特に架橋樹脂を感光体表面に積層する場合、架橋樹脂中に電荷輸送性ユニットを導入することが有効である。但し、電荷輸送層に含有される電荷輸送成分とこの上に積層する感光体最表面層に組み込む電荷輸送性ユニットは同一材料を用いるケースは殆どないため、それぞれのマッチング性を考慮する必要がある。このマッチングが不適当である場合、所望の電荷輸送性が確保されず、最悪、感光体最表面層の架橋樹脂に電荷輸送性ユニットを導入しても静電潜像の形成ができない事態が生じる。

0075

本発明では、この不具合を回避するために電荷輸送層中の電荷輸送成分と異種の電荷輸送成分を含有する感光体最表面層について、(1)異種の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャル(Ip)差を0.1eV以下とすること、(2)混合する電荷輸送成分間のイオン化ポテンシャル差が大きく、一方が電荷輸送に関与しないトラッピングサイトとして作用する場合、その電荷輸送成分比率を1wt%未満とすることが重要である。

0076

この現象は現時点では不明点が多いが、以下のように考えている。
図14は二種の電荷輸送成分が混合される有機系電荷輸送性樹脂膜の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャル差に対する電荷移動度の関係をプロットした一例を表す。図中、電荷移動度は電界強度の平方根が400V1/2cm−1/2における値(μ400と表記する)を選んでいる。

0077

また、電荷輸送性樹脂膜は電荷輸送成分(簡単のためCTM1と表す)が50wt%の樹脂膜に、この電荷輸送成分に対して種々、イオン化ポテンシャルの異なる電荷輸送成分(CTM2と表す)を20wt%含有させた構成にしてある。CTM2がCTM1と同一である場合、CTM2を添加する分、樹脂膜中の電荷輸送成分濃度が増加するため、通常、電荷移動度は増加することになる。

0078

図14から、CTM2を配合しても、単純には電荷移動度は増加せず、CTM1とCTM2のイオン化ポテンシャル差が大きなケースでは、極端な電荷移動度の低下が見られることが理解される。また、このイオン化ポテンシャル差が0.1eV未満であれば、CTM2配合による電荷移動度の低下は見られないことも認識される。

0079

CTM2配合による移動度が増加するケースでは、添加した電荷輸送成分が電荷キャリアのホッピングイトとして作用していると考えられる。

0080

一般に有機材料からなる電荷輸送性樹脂膜はアモルファス状態であり、伝導帯価電子帯のエネルギー準位バンド構造をもたず、それぞれのエネルギー準位は図15の Amorphous Phase に示すような状態密度分布をもつと考えられる。電荷輸送性樹脂膜の移動度の温度特性データを Disorder formalism に基づいて算出されるエネルギー的disorder (σ)は電荷輸送性樹脂膜の電荷輸送成分含有量が50%程度の場合、0.1eV程度となることが多い(Paul M.Borsenberger,David S.Weiss,Organic Photoreceptors for Xerography,pp.290−324 & pp.491−503,MARCELDEKKER,1998)。イオン化ポテンシャル差が小さければ、個々のホッピングサイトエネルギー準位の分布に重なりが生じる。このとき実効ホッピングサイトとして機能するエネルギー準位の状態密度は増加し、移動度が向上すると思われる(図16)。

0081

他方、イオン化ポテンシャル差が0.1eVよりも大きいケースでは、CTM2の添加で電荷輸送性樹脂膜の移動度が低下している。特に、イオン化ポテンシャル差が0.5eVを越える電荷輸送成分を含有する電荷輸送性樹脂膜の電荷移動度はCTM2を添加しない電荷輸送性樹脂膜の電荷移動度と比べて極端に低い値が得られた。

0082

ここで電荷輸送成分が混合される有機系電荷輸送性樹脂膜の電荷輸送のパターンは、図17に表すモデルが想定される。尚、図17では電荷輸送成分が二種配合されるケースを想定している。

0083

この図において、(A)は電荷輸送成分が一種の場合を表す。また、PVKに見られるドナーセグメントダイマーカチオンラジカル(エキサイプレックス)を形成し、これがトッラプサイトとなるケースを (H)に示した。(B)はCTM2がCTM1と同じホッピングサイトとして機能するケース、(C)はCTM1とCTM2のイオン化ポテンシャル差に有意差があり、電荷キャリアがCTM1とCTM2間でホッピングするケースを表す。(D)は(C)の変形型を表し、CTM1からCTM2へ落ち込んだ電荷が、CTM1のホッピングサイトへ戻ることができず、CTM2のホッピングサイト間を電荷がホッピングするケースを表す。この場合、電荷輸送性樹脂膜の電荷移動度はイオン化ポテンシャルの低い電荷輸送成分のみが寄与することになる。また、(E)はCTM2を大量に添加した場合を表し、電荷の移動がCTM2のみが担うケースを表す。(F)は(C)と同様、CTM1とCTM2のイオン化ポテンシャル差に有意差があり、電荷がCTM1とCTM2の間でホッピングが生じるケースを表す。(G)はCTM2が電荷輸送の機能を担わず電荷輸送性樹脂膜中でスペーサーとして作用するケースを表す。また、(I)はCTM1にダイマーカチオンラジカルのようなトラップサイト内在し、このトラップサイトに捕捉された電荷の脱トラップをCTM2が助長するケースを表す。

0084

イオン化ポテンシャル差が0.5eV以上の場合における電荷移動度はCTM2とバインダー樹脂が電荷輸送成分の重量比20wt%の割合で含有される樹脂膜の測定値に近い。この知見から、イオン化ポテンシャル差が0.5eV以上の場合、図17(D)に示される電荷輸送パターンが生じていると考えられる。更にこの様な電荷輸送成分の組み合わせでは配合する電荷輸送成分の添加濃度が20wt%未満の場合、実質的な電荷輸送能が消失する(TOF法による移動度測定が不可能となる)と考えられる。

0085

以上の知見から、架橋樹脂膜を最表面層に積層する感光体において静電潜像を形成するために、最表面層に導入する電荷輸送成分は以下の条件にすることが重要となる。
(1)イオン化ポテンシャル差が0.1eV以下の場合
異種電荷輸送成分間において電荷輸送性に実質的な影響はない。かかる条件を満足する電荷輸送成分の選定方法として、例えば、電荷輸送層に用いる電荷輸送成分と類似の化合物を選ぶことや、適当な電子吸引性または電子供与性置換基を電荷輸送成分に導入すること、また、分子軌道計算から得られるイオン化ポテンシャルの比較から材料の絞り込みを行うことが有効となる。

0086

(2)イオン化ポテンシャル差が0.1eVを超える組み合わせの場合
感光体最表面層の電荷輸送成分が電荷輸送層に含有される場合、または電荷輸送層の電荷輸送成分が感光体最表面層に含有される場合、一方の電荷輸送成分がトラップサイトとして作用するため、電荷輸送性に影響を来す。特に感光体の製造工程で意図せずに微少量の一方の電荷輸送成分がしみ込む場合、このしみ込んだ電荷輸送成分が電荷輸送機能を担い、もともと配合される電荷輸送成分が電荷輸送機能を消失するケースがある。このような不具合が無視できる程度に配合比率を設定する必要がある。感光体最表面層に含有される電荷輸送成分の含有比率として、感光体最表面層に含有される電荷輸送層に用いた電荷輸送成分の含有量aと感光体最表面層に用いた電荷輸送成分の含有量bとの間に以下の関係を持たすとよい。
a/(a+b)<0.01または
a/(a+b)>0.99

0087

前者の条件を満足する手段として、感光体最表面層を設ける際、電荷輸送層を溶解させない条件にすることが有効である。具体的には、感光体最表面層をコートする塗料溶媒に電荷輸送層の貧溶媒を用いることや、電荷輸送層に高分子電荷輸送物質を用いて、感光体最表面層へしみこみにくくすることが有効である。
後者は電荷輸送成分の配合しない架橋性バインダー樹脂を感光体最表面層として積層する際、製造工程において、電荷輸送層中の電荷輸送成分のしみ込みを積極的に利用する場合の条件となる。

0088

4.2感光体最表面層へ含有させる電荷輸送成分の選定
感光体最表面層へ電荷輸送成分を含有させる場合、電荷輸送能に優れるα−フェニルスチルベン骨格を有する化合物を用いることが有効である。
特に以下の一般式(1)及び(2)に示す化合物は熱硬化性樹脂単量体との反応性に優れ、且つ、感度特性面でも良好な性能を示すものが多く有用といえる。

0089

0090

R1、R2は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R1、R2は同一であっても異なってもよい。
また、Ar1、Ar2およびAr3はアリレン基を表し、アリレン基としてはR1およびR2と同様のアリール基の2価基が挙げられ、同一であっても異なってもよい。

0091

R1、R2は置換もしくは無置換のアリール基を表すが、その具体例としては以下のものを挙げることができ、同一であっても異なってもよい。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基縮合多環基としてナフチル基ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基トリフェニレニル基クリニル基フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、非縮合多環基としてビフェニリル基ターフェニリル基、または、

0092

(ここで、Wは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基を表す。)



で表される。

0093

複素環基としては、チエニル基ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基カルバゾリル基などが挙げられる。
また、Ar1、Ar2およびAr3で示されるアリレン基としてはR1およびR2で示したアリール基の2価基が挙げられ、同一であっても異なってもよい。

0094

上述のアリール基及びアリレン基は以下に示す基を置換基として有してもよい。また、これら置換基は上記一般式中のR106、R107、R108の具体例として表される。
(1)ハロゲン原子トリフルオロメチル基シアノ基ニトロ基
(2)アルキル基としては、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C18、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基などが挙げられる。

0095

(3)アルコキシ基(−OR109)として、具体的には、メトキシ基エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。

0096

(4)アリールオキシ基としては、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。

0097

(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基などが挙げられる。

0098

(6)



式中、R110及びR111は各々独立にアルキル基またはアリール基を表し、アリール基としては例えばフェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。またアリール基上の炭素原子共同で環を形成しても良い。具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基モルホリノ基、ユロリジル基などが挙げられる。

0099

(7)メチレンジオキシ基、またはメチレンジチオ基などのアルキレンジオキシ基またはアルキレンジチオ基、などが挙げられる。

0100

一般式(1)の化合物はアルコール類セロソルブ類などの溶媒に溶解し易く、これらの溶媒を用いて成膜するとクリヤーで均一な成膜がし易く有用である。

0101

0102

R3、R4は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R3、R4は同一であっても異なってもよい。
また、Ar4、Ar5およびAr6はアリレン基を表し、アリレン基としてはR3およびR4と同様のアリール基の2価基が挙げられ、同一であっても異なってもよい。また、m、nは1〜10の繰り返し数を表す。
R3、R4は一般式(1)におけるR1、R2とそれぞれ同じ置換基を表す。また、Ar4、Ar5およびAr6も順に一般式(1)におけるAr1、Ar2、およびAr3と同じ置換基を表す。

0103

一般式(2)の化合物はケトン類エーテル類などの溶媒に溶解し易く、これらの溶媒を用いて成膜するとクリヤーで均一な成膜がし易く有用である。

0104

4.3感光体最表面層の電荷輸送成分の含有率
感光体最表面層は静電潜像を形成する必要から帯電電荷を中和する必要がある。特に感光体最表面層を積層すると、積層しない状態と比較してこの中和度合いが劣化するのが一般である。これを回避する手段として、感光体最表面層を1μm未満の薄膜とすることが有効である。感光体の使用に際して、最表面層の創傷が全く無視できる場合に有効な手段となる。

0105

また、別の手段として感光体最表面層を1μm以上の厚膜化を行う場合、相応の電荷輸送性を付与する必要がある。これには上記の電荷輸送成分のマッチング条件に加え、電荷輸送成分の選択、および電荷輸送成分の含有比率を増大させることが有効である。

0106

但し、感光体最表面層は感光層の一部である電荷輸送層のような厚膜(15〜40μm程度)にする必要がないため、電荷輸送層並の電荷移動度を確保する電荷輸送成分の含有量(大凡、電荷輸送層全重量に対して30wt%〜70wt%)は必要としない。発明者は実際の電子写真装置を用いた評価において、7.5wt%以上の含有量とすることで出力画像の画像濃度に支障の生じないことを確認した。これより、感光体最表面層に含有させる電荷輸送成分は大凡、7.5wt%以上が好ましい。

0107

上より、静電潜像形成に不足のない感度特性を保証する感光体で、大量プリントを行っても極めて摩耗量の少なく、また実使用において感光体表面への創傷も極めて少ない機械的強度に優れる電子写真感光体を提供することが可能となる。これにより、感光体寿命に起因する電子写真装置の感光体交換回数を低減化することができる。

0108

感光体に対して高度な耐摩耗性向上を付与すると、画像出力時に画像ボケや残像画像等の異常画像を伴うことが一般とも言えるが、本発明ではこれらの不具合を回避できる方策を見出した。これにより、異常画像の発生を予防することができる。従来、前者の不具合に対しては電子写真装置内にドラムヒーターを併用し、プリントコストの高騰をユーザーに課してきたが本発明ではこれを省くことが可能となる。後者の不具合は、ユーザーに劣化する画像品質妥協を課してきたがこれも実機トランジットの時間依存性を所定以下にすることにより解消される。

0109

更に、感光体の低表面自由エネルギー化を付与することで感光体表面への異物の滞留を予防し、クリーニングブレード等の感光体接触部材へ与えるダメージの低減を図れることを見出した。感光体接触部材へのダメージが少ないため、作像エンジンの長寿命化が可能となる。

0110

感光体と感光体を取り巻く部品の交換頻度も少なくなるため、プリントコストが低減される。また、以上の手段は有機感光体に適用するものであるため、安価に製造することも可能である。

0111

これらを総じて、感度特性を保証しつつ、機械強度に優れ、且つ、異常画像の発生が少なく、更には異物に対する離型性に優れる感光体を提供することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。

発明の効果

0112

以上説明したように、本発明の電子写真感光体は静電潜像形成に不足のない感度特性を保証するもので、大量プリントを行っても摩耗量が極めて少なく、また実使用において感光体表面への創傷も極めて少ない機械的強度に優れる電子写真感光体である。これにより、感光体寿命に起因する電子写真装置の感光体交換回数を低減化することができる。

0113

また、本発明の電子写真感光体は高耐摩耗性感光体に生じやすい画像ボケが回避できるため、ドラムヒーターを併用する必要がない。これにより、プリントコストの低い感光体を提供することができる。

0114

更に、感光体に低表面自由エネルギー化が付与されるることで感光体表面への異物の滞留を予防し、結果、クリーニングブレード等の感光体接触部材へのダメージを少なくできるため、作像エンジンの長寿命化が可能となる。

0115

これらを総じて、本発明の電子写真感光体は感度特性を保証しつつ、機械的強度に優れ、且つ、異常画像の発生が少なく、更には異物に対する離型性に優れることから、地球環境への負荷低減に貢献できる実用的価値に優れたものである。

発明を実施するための最良の形態

0116

以下、図面を参照しつつ本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。
図7は本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に電荷発生層25と電荷輸送層26と感光体最表面層28が設けられている。

0117

図8は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と電荷発生層25の間に下引き層24が設けられ、電荷発生層25の上に電荷輸送層26と感光体最表面層28が設けられている。

0118

導電性支持体21としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウムニッケルクロムニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ研磨などにより表面処理した管などを使用することができる。

0119

本発明における感光層は、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型感光層が好適である。以下、積層型感光層について説明する。

0120

積層型感光体における各層のうち、はじめに、電荷発生層25について説明する。電荷発生層は、積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能をもつ。この層には電荷発生物質が含有される。電荷発生層は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、公知の材料を用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニンクロロガリウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニン無金属フタロシアニンアズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料アントラキノン系又は多環キノン系顔料キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。このうち、金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料およびペリレン系顔料は電荷発生の量子効率並み高く、本発明に用いる材料として好適である。これらの電荷発生物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。

0121

電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミドポリウレタンエポキシ樹脂ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレートシリコーン樹脂アクリル樹脂ポリビニルブチラールポリビニルホルマール、ポリビニルケトンポリスチレンポリN−ビニルカルバゾールポリアクリルアミドなどが挙げられる。このうちポリビニルブチラールが使用されることが多く、有用である。これらのバインダー樹脂は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。

0122

また、電荷発生層のバインダー樹脂として高分子電荷輸送物質を用いることができる。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
電荷発生層に併用できる電荷輸送物質には電子輸送物質正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。
以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。

0123

電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレンテトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。
これらの電子輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。

0124

正孔輸送物質としては、電子供与性物質が好ましく用いられる。
その例としては、オキサゾール誘導体オキサジアゾール誘導体イミダゾール誘導体トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリンフェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体チアゾール誘導体トリアゾール誘導体フェナジン誘導体アクリジン誘導体ベンゾフラン誘導体ベンズイミダゾール誘導体チオフェン誘導体などが挙げられる。
これらの正孔輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。

0125

また、以下に表されるような高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾ−ル環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。

0126

電荷発生層を形成する方法としては、大きく分けて真空薄膜作製法溶液分散系からのキャスティング法がある。
前者の方法には、真空蒸着法グロー放電分解法イオンプレーティング法スパッタリング法反応性スパッタリング法CVD(化学気相成長)法などがある。

0127

また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフランシクロヘキサノンジオキサンジクロロエタンブタノンなどの溶媒を用いてボールミルアトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布すればよい。このうちの溶媒として、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼンジクロロメタントルエンおよびキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。塗布は、浸漬塗工法スプレーコート法ビードコート法などにより行うことができる。

0128

以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜1μmである。

0129

次に、電荷輸送層26について説明する。
電荷輸送層は電荷発生層で生成した電荷を注入し、感光体表面へ輸送する機能を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分と言うことができる。

0130

電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法グラビア塗工法、ノズルコート法スクリーン印刷法等が採用される。

0131

電荷輸送層の膜厚は、実用上、必要とされる感度と帯電能を確保する都合、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。一方、極端な薄膜化は感光層の静電容量を増大させるため、帯電能の劣化と感度劣化を招いてしまうことから15μm程度に止めることが好ましい。

0132

電荷輸送層の上層には、感光体最表面層が積層されているため、この構成における電荷輸送層の膜厚は、実使用上の膜削れを考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要であり薄膜化も可能となる。

0133

電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトンメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類酢酸エチル酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼンやジクロロメタン、トルエンおよびキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独としてまたは混合して用いることができる。

0134

電荷輸送層のバインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体ポリエステル、ポリビニル、ポリ塩化ビニル塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ポリ酢酸ビニルポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂フェノール樹脂アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。このうち、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートは電荷輸送成分のバインダー成分として用いる場合、電荷移動特性が良好な性能を示すものが多く、有用である。また、電荷輸送層はこの上に感光体最表面層が積層されるため、従来型の電荷輸送層に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレンなど、透明性が高いものの機械強度が多少低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、電荷輸送層のバインダー成分として有効に利用することができる。

0135

これらの高分子化合物は単独又は2種以上の混合物として、或いはそれらの原料モノマー2種以上からなる共重合体として、更には、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。

0136

電荷輸送層の改質に際して電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合にはフルオレン等の嵩高い骨格をもつカルドポリマー型のポリエステル、ポリエチレンテレフタレートポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、C型ポリカーボネートのようなビスフェノール型のポリカーボネートに対してフェノール成分の3,3’部位がアルキル置換されたポリカーボネート、ビスフェノールAのジェミナルメチル基が炭素数2以上の長鎖のアルキル基で置換されたポリカーボネート、ビフェニルまたはビフェニルエーテル骨格をもつポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンの様な長鎖アルキル骨格を有するポリカーボネート(例えば、特開平7−292095号公報に記載)やアクリル樹脂、ポリスチレン、水素ブタジエンが有効である。

0137

ここで電気的に不活性な高分子化合物とは、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。
これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は、電荷輸送層の全固形分に対して50wt%以下とすることが好ましい。

0138

電荷輸送物質に用いることのできる材料としては、上述の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質が挙げられる。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、その使用量は40〜200phr、好ましくは70〜100phr程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは80〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。

0139

また電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差を0.10eV以下とすることにより、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。

0140

電荷輸送層の上に感光体最表面層を積層する工程では、意図せず電荷輸送層の電荷輸送物質が感光体最表面層へしみだし、イオン化ポテンシャル差を0.1eV以下にすることが困難となるケースがある。これに対し、電荷輸送層の電荷輸送成分に高分子電荷輸送物質を含有させることで不具合を解消できることが多い。この目的では、高分子電荷輸送物質も低分子量体ではしみだしが生じてしまうため、その重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。他方、重量平均分子量が高すぎると、平滑膜を得ることが困難となるため、その上限は200000程度が適当範囲となる。

0141

特に感光体最表面層を設けた感光体はこれを設けないものと比較して感度特性上、不利となるケースが多い。これを補償するため、電荷輸送層の電荷移動度は高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が、電界強度160kV/cmの場合に1.2×10−5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性がβ≦1.6×10−3を満たすことが好ましい。更に好ましくは電界強度160kV/cmの場合に1.0×10−4cm2/V・sec以上が好ましい。

0142

ここで、電荷移動度の電界強度依存性は次の様にして大小を判断することができる。
すなわち、電界強度を低い値から高い値へ変えた場合の電荷移動度の変化を、縦軸に電荷移動度(単位:cm2/V・sec)、横軸に電界強度の平方根(単位:V1/2/cm1/2)として片対数グラフにプロットする。次に、プロットを結ぶ近似直線を引く。この具体例を図19に記す。この直線の傾きが大きくなるほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。この大きさを定量的に取り扱う数式として、本発明では以下の式1を用いる。
(式1)
β=logμ/E1/2

0143

式1におけるβが大きい電荷輸送層ほど、電荷移動度の電界強度依存性が高いと解釈される。多くの場合、βが大きい電荷輸送層は低電界領域での電荷移動度が低くなる。このときの感光体の静電特性面の影響として、残留電位の上昇や帯電電位下げて感光体を使用する場合、応答性が劣ってしまうケースが挙げられる。

0144

この条件を満足する手段として、例えば、電荷輸送物質の含有量を増加させる、ないし、バインダー樹脂にポリスチレンや高分子電荷輸送物質を用いることが有効である。特にα−フェニルスチルベン骨格を有する電荷輸送物質とポリスチレンとの固溶体や、同じくα−フェニルスチルベン骨格を有する電荷輸送物質と上述の高分子電荷輸送物質との固溶体は電荷移動度を増大できるため特に有効である。

0145

高感度化を満足させるには電荷輸送成分の配合量を70phr以上とすることが好ましい。また、電荷輸送物質としてα−フェニルスチルベン化合物ベンジジン化合物ブタジエン化合物単量体二量体およびこれらの構造を主鎖または側鎖に有する高分子電荷輸送物質は電荷移動度の高い材料が多く有用である。

0146

また、必要により電荷輸送層に後述する酸化防止剤、可塑剤、滑剤紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物およびレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これら低分子化合物の使用量は概して、0.1〜20phr、好ましくは、0.1〜10phr、レベリング剤の使用量は、0.001〜0.1phr程度が適当である。

0147

続いて、感光体最表面層28について説明する。
本発明における感光体最表面層は、少なくとも架橋性バインダー樹脂が用いられ、且つ、水酸基と残存未硬化部位の無い、電荷輸送層の上に積層される最表面層を表す。この感光体最表面層は静電潜像形成に不具合の生じない設計が施されており、膜厚が1μm未満の薄膜で用いられるか、これ以上の膜厚を積層する場合は電荷輸送性が付与される。前者の感光体最表面層は熱硬化性樹脂単量体、好ましくは熱硬化性樹脂単量体と熱硬化性界面活性剤の熱による架橋反応によって形成される樹脂膜であり、後者の感光体最表面層はこれに電荷輸送成分が加えられる。

0148

水酸基は感光体最表面層材料に水酸基を含有する化合物を用いた場合、感光体最表面層に残留する未反応水酸基を表す。本発明では感光体表面の3200〜3800cm−1における光透過率が95%以上の状態を水酸基が無いものとする。
また、残存未硬化部位の有無は感光体最表面層のDSCカーブにおける吸熱ピークが観測されないことから判断する。

0149

本発明の感光体最表面層は熱硬化性界面活性剤が配合されるため、表面自由エネルギーが低く、転写残トナーの感光体表面に滞留する付着物の離型性に優れる性状を有する。

0150

電荷輸送成分を含有する感光体最表面層の膜厚は1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。他方、感光体最表面層膜厚を厚膜化していくとポアソン方程式に従う残留電位の蓄積により感光体最表面層内に空間電荷が形成されることとなる。結果、出力画像の画像濃度が薄くなる、あるいはポジ残像などの異常画像を出力してしまうことになる。
そこで感光体最表面層内の空間電荷の形成が実質的に出力画像に影響しない程度に膜厚を設定する必要がある。これを満足する具体的な膜厚としては、大抵2μm〜10μmとなる。

0151

感光体最表面層用塗工液の分散溶媒は、例えば、電荷輸送層の説明で挙げたケトン類、エーテル類、芳香族化合物類、ハロゲン化合物類等である。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼンやジクロロメタン、トルエンおよびキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。

0152

また、最表面層を積層する工程で、意図せず、電荷輸送層に含有する電荷輸送成分が感光体最表面層へしみだすことがある。これが感光体最表面層の電荷輸送性に影響する場合は、感光体最表面層用塗工液の分散溶媒に電荷輸送層の貧溶媒を用いると良い。通常、エタノールイソプロピルアルコールなどのアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類が有効である。

0153

感光体最表面層に含有される電荷輸送成分として、電荷輸送層の説明に挙げた高分子電荷輸送物質、低分子電荷輸送物質、更に、反応性水酸基を含有する架橋性電荷輸送物質が挙げられる。このうち、反応性水酸基を含有する架橋性電荷輸送物質を含有させることは、最表面層樹脂膜の網目構造を密にし易く、感光体のロングライフ化に結びつくことが多いため有効である。

0154

この架橋性電荷輸送物質の具体例としては、特開平7−228557号公報記載のビスフェノール化合物、特開平8−198825号公報記載のジアミン化合物、特開平9−31035号公報、特開平9−263569号公報、特開平9−268164号公報、および特開平10−7629号公報記載のジヒドロキシル基含有ジアミン化合物、特開平9−278723号公報および特開平10−7630号公報記載のヒドロキシル基含有アミン化合物、および特開平9−194442号公報記載のヒドロキシル基含有スチルベン化合物、特開平10−53569号公報記載のアミン化合物が極めて有効である。これらは上述する高分子電荷輸送物質の原料として用いられており、いずれも電荷輸送能に優れた実績を有し、且つ反応性も良好な材料である。また、特開2001−142243号公報および特開2002−6517号公報に例示される反応性電荷輸送物質使用可能である。

0155

感光体最表面層の電荷輸送成分には高分子電荷輸送物質を用いることが可能であるが、その重量平均分子量は10000以上200000以下とすることがより好ましい。

0156

電荷輸送成分の含有率は概ね、最表面層用塗工液全固形分重量の7.5wt%以上とすることが好ましい。上限は、塗工溶媒との溶解性や他の材料との反応性によって異なるが、40wt%前後となることが多い。

0157

電荷輸送層と感光体最表面層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.10eV以下であることが望ましい。同様に、感光体最表面層に2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.10eV以下となる材料を選択することが好ましい。

0158

本発明における熱硬化性樹脂単量体は、上記の特徴を確保する限り、公知の材料を用いることができる。具体的にはメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、有機シラン縮合物等の縮合物またはこれらの混合物が挙げられる。

0159

このうち、メラミン樹脂等のアミノ樹脂は自己縮合性を有する性状から他の原料との配合比率を大きく変えても成膜可能なケースが多く設計自由度が高い。
また耐摩耗性に優れ、且つ、電荷輸送成分との反応性も良好であることから有用である。
アミノ樹脂はアミノ化合物中のアミノ基とホルムアルデヒドとを付加縮合し、好ましくはさらにその生成したメチロール基を一部もしくは全てを脂肪族1価のアルコールエーテル化したものである。メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、および尿素樹脂がこれに該当する。
アミノ樹脂は単独で用いても成膜性を有するため、これのみで感光体最表面層としても良いが、一般に硬すぎて脆い性状となることが多いため、前述の架橋性電荷輸送物質や後述する熱硬化性界面活性剤と併用して成膜することが望ましい。

0160

また、熱硬化性のポリカプロラクトンジオールポリカプロラクトントリオールポリカプロラクトンポリオールないしラクトン変性(メタ)アクリレートなど、可撓性を付与するフレキシブルユニットを併用することは感光体最表面層の耐傷性を向上することができ有用である。フレキシブルユニットとして用いることのできる材料として、例えば、ダイセル化学工業株式会社からプラクセルシリーズ(プラクセルCD CD205、プラクセルCD CD205PL、プラクセルCD CD210、プラクセル 303、プラクセル305、プラクセル308、プラクセル320、プラクセル410D)、プラクセルFシリーズ(プラクセルFM2D、プラクセル FM3X、プラクセルFA2D)として市販されている。

0161

本発明における熱硬化性界面活性剤は公知の材料を用いることができる。例えば、特開平07−068398号公報標識番号[0017]に記載される(1)フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含む共重合体として、例えば特開昭60−221410号公報および特開昭60−228588号公報に記載のフッ素を含まないビニル型モノマーと含フッ素ビニル型モノマーとからなるブロック共重合体、(2)フッ素系グラフトポリマーとして、例えば特開昭60−187921号公報に記載のポリメチルメタクリレートを側鎖にもつメタクリレートマクロモノマーとフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを共重合した櫛型グラフトポリマーが挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、塗料添加剤として市販されており、例えば、含フッ素ランダム共重合体としては旭硝子株式会社から樹脂表面改質剤SC−101、SC−105として市販されている。含フッ素ブロック共重合体として、フッ化アルキル基含有重合体セグメントとアクリル系重合体セグメントからなるブロック共重合体として日本油脂株式会社から市販されているモディパーFシリーズ(例えば、F100、F110、F200、F210、F2020)がある。フッ素系グラフトポリマーとしては、東亜合成株式会社よりアロンGF−150、GF−300、RESEDA GF−2000の名前で市販されており、有用である。これらの界面活性剤は、単独で用いても良く、架橋樹脂成分として用いても良い。特に、本発明ではメタクリル酸エステルアクリル酸フッ化アルキルとの共重合体が有効である。

0162

また、特開2000−119354号公報に記載のフッ素樹脂にシリコーン成分が化学結合された材料は耐汚染性の向上に極めて優れた性状を示す。この材料は富士化成工業株式会社より、疎水性樹脂ZXシリーズ(例えば、ZX−007C、ZX−001、ZX−017、ZX−022等)として上市されている。

0163

また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。

0164

感光体最表面層の形成方法として、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特にスプレー塗工法とリングコート法は生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり好適である。

0165

感光体最表面層樹脂の硬化条件は、硬化膜のDSCカーブに吸熱ピークが残らない条件とすることが必要である。上に挙げた架橋樹脂を用いる場合、表面層塗工液を塗布後、150℃前後の加熱条件で30分程度加熱乾燥することで条件を満足することが多い。また、これよりも強い条件下で硬化が必要となる場合はジブチル錫系触媒ドデシルベンゼンスルホン酸等の触媒(酸性物質)を併用することで、硬化温度を低減できることが多い。

0166

本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と電荷発生層との間に下引き層24を設けることができる。下引き層は、接着性の向上、モワレの防止、上層の塗工性の改良、残留電位の低減、導電性支持体からの電荷注入の防止などの目的で設けられる。

0167

下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましく、このような樹脂としては、ポリビニルアルコールカゼインポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂共重合ナイロンメトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。

0168

また、下引き層には、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物、或いは金属硫化物金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層と同様、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。

0169

更に下引き層としては、シランカップリング剤チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾルゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、アルミナを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレンパリレン)などの有機物酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも下引き層として良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0.1〜5μmが適当である。

0170

また、本発明においては、感光体表面のガスバリアー性向上、及び耐環境性改善のため、各層に酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質及びレベリング剤を添加することができる。
これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。

0171

各層に添加できる酸化防止剤として、例えば次の(a)〜(d)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系酸化防止剤
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネートスチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンシクロヘキシルフェノールブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニルシクロヘキサン、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルベンゼンテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアネート、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)

0172

(b)アミン系酸化防止剤
フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニルp−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N′−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン

0173

(c)硫黄系酸化防止剤
チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールドデシルメルカプタンテトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメートイソプロピルキサンテートジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート

0174

(d)リン系酸化防止剤
トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイトフェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト

0175

各層に添加できる可塑剤として、例えば次の(a)〜(m)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニルリン酸トリクレジルリン酸トリオクチルリン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチルリン酸クレジルジフェニルリン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。

0177

(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチルトリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。

0178

(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチルアジピン酸ジn−ヘキシルアジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシルアジピン酸ジイソデシルアジピン酸ジカプリルアゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチルセバシン酸ジエチルセバシン酸ジブチルセバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。

0181

(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油エポキシ化アマニ油エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。

0183

(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン塩素化ジフェニル塩素化脂肪酸メチルメトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。

0185

(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。

0186

(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチルアセチルクエン酸トリエチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。

0187

(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリンアビエチン酸メチルなど。

0188

各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば次の(a)〜(f)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど。

0189

(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール
(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。

0190

(d)シアノアクリレート
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー金属錯塩系)
ニッケル〔2,2′−チオビス(4−t−オクチル)フェノレートノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメートコバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。

0191

(f)HALS(ヒンダードアミン
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。

0192

次に、図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。
図1は、本発明の電子写真装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。

0193

図1において、感光体11は、本発明の感光体最表面層を積層する電子写真感光体である。感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。

0194

帯電手段12は、コロトロンスコロトロン固体帯電器ソリッドステートチャージャー)、帯電ローラーを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写手段16には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャー分離チャージャーを併用したものが効果的である。

0195

露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯タングステンランプハロゲンランプ水銀灯ナトリウム灯発光ダイオードLED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルターバンドパスフィルター近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター干渉フィルター色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。

0196

現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシマグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。

0197

電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。

0198

図2には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。図2において、感光体11は、本発明の感光体最表面層を積層する電子写真感光体である。感光体11はベルト状の形状を示しているが、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。感光体11は駆動手段1Cにより駆動され、帯電手段12による帯電、露光手段13による像露光、現像(図示せず)、転写手段16による転写、クリーニング前露光手段1Bによるクリーニング前露光、クリーニング手段17によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体(この場合は支持体透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。

0199

以上の電子写真装置は、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。

0200

また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジの形状は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。

0201

図4には本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体11の周囲に帯電手段12、露光手段13、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段14Bk、14C、14M、14Y、中間転写体である中間転写ベルト1F、クリーニング手段17が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。感光体11は、本発明の感光体最表面層を積層する電子写真感光体である。各色の現像手段14Bk、14C、14M、14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段1Dにより、中間転写ベルト1F上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段1Eにより、受像媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。

0202

転写ドラム方式の電子写真装置では、転写ドラム静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図4に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けない特長がある。このような中間転写方式は図4に示す装置に限らず前述の図1図2図3および後述する図5(具体例を図6に記す。)に記す電子写真装置に適用することができる。

0203

図5には本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体11Y、11M、11C、11Bkが設けられている。この電子写真装置に用いられる感光体11は、本発明の感光体最表面層を積層する電子写真感光体である。各感光体11Y、11M、11C、11Bkの周りには、帯電手段12、露光手段13、現像手段14、クリーニング手段17等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体11Y、11M、11C、11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各感光体1Y、1M、1C、1Bkに対向する転写位置には転写手段16が配設されている。

0204

図5の形態のようなタンデム方式の電子写真装置は、各色毎に感光体1Y、1M、1C、1Bkを持ち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された受像媒体18に順次転写するため、感光体を一つしか持たないフルカラー電子写真装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。

0205

以下、実施例によって本発明を説明する。
始めに本発明に関わる測定方法について述べる。
(1)DSC測定
示差走査熱量計(Thermo PlusDSC8230、リガク社製)を用い、感光体最表面層のDSCカーブを一般の方法で求めた。DSCカーブは、ファーストスキャンデータを選んだ。被試験体はアルミパンに感光体最表面層用塗工液を滴下し、感光体製造時と同じ熱履歴を付加させたものとした。

0206

(2)赤外吸収スペクトル測定
専用のアクセサリー(OMNI−Sampler)を取り付けたサーモニコレー社製 FT−IR NEXUS470を用い、ATR法により500cm−1〜4000cm−1における透過スペクトルを測定した。透過スペクトルを測定すると、ピーク間の吸収のないベースラインオフセットすることがある。このオフセット分を全体の透過率から差し引き、吸収のない部分の透過率が100%となるようにした。こうして得られた透過スペクトルについて、3200cm−1〜3800cm−1の波数領域において透過率の最も小さい値(便宜上、IR最小透過率と称す)を求めた。

0207

(3)感光体の実機トランジットの時間依存性測定
特開2000−275872号公報に記載の感光体の特性評価装置を用い、この装置における露光と現像間時間(Ted)に対する露光部電位(VL)の変化と実機トランジットタイムを求めた。
測定条件は以下の条件で行った。
線速(mm/s): 160
副走査方向解像度(dpi):400
像面静止パワー(mW): 0.30(露光量:0.4μJ/cm2)
除電装置: 作動
帯電器: 感光体の帯電電位が−800Vとなるように調整した
露光と現像間時間(Ted)の調節は現像部に相当する表面電位プローブ露光ステーションに対する設置角度を変化させることで調整した。

0208

(4)接着仕事、表面自由エネルギーの算出
現像剤のトナー成分はトナー成分をペレット錠剤機にて円盤状に加圧成型したものを接触角測定用のサンプルとして用意した。また、バインダー樹脂混合物はアルミ板上に塗布後、150℃にて30分間加熱乾燥したものを接触角測定用のサンプルとして用意した。
これらのサンプルを自動接触角計(CA−W、協和界面科学社製)を使用して上記サンプルの接触角を求めた。対象とする標準物質としてイオン交換水ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを選んだ。

0209

個々の標準物質に対する接触角測定値と標準物質の表面自由エネルギー値γは、北崎 寧昭、畑敏雄ら、日本接着協会紙8(3)、131−141(1972)に記載のデータ(表1)を用いて、下記数2を用いて標準物質とサンプル間の接着仕事Wを算出した。

0210

0211

(数2)
WSolid Liquid=γLiquid(1+cosθ)

0212

次に、ヨウ化メチレンとα−ブロモナフタレンとサンプルの接着仕事W、および下記数3を用いて連立方程式を立てる。

0213

ここで、標準物質のγ1aとγ1bは上記資料のデータを使用する。
これから、サンプルの√γaと√γbを算出した。
次に水と感光体間の接着仕事、および数2を用いてサンプルの√γcを算出した。
得られた感光体の√γa、√γb、√γcと数4から感光体の表面自由エネルギーγを算出した。
(数4)
γ=γa+γb+γc
現像剤トナー成分とバインダー樹脂との接着仕事は以上の計算から求められる各数値を数3に代入して得た。

0214

(5)イオン化ポテンシャル測定
表面平滑なAl板上に後述する処方により作製した電荷輸送層もしくは感光体最表面層の塗工液を塗布し、イオン化ポテンシャル測定用のサンプルを作製した。イオン化ポテンシャルは大気雰囲気紫外線光電子分析装置(AC−1、理研計器社製)により測定した。これら樹脂膜に対して計測されるイオン化ポテンシャルを電荷輸送層中または感光体最表面層中の電荷輸送成分のイオン化ポテンシャルとした。

0215

(6)膜厚測定
渦電流方式膜厚測定器(FISCHER SCOPE mms、フィッシャー社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に膜厚を測定し、それらの平均値感光層膜厚とした。

0216

(7)電荷移動度測定
アルミ蒸着されたPETフィルム上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、10μmの塗工膜を作製設けた。塗工膜の上に厚さ200Åの金電極を蒸着し、電荷移動度測定用の試料セルを作製した。

0217

電荷移動度の測定はタイムオブフライト測定に基づいて行った。タイムオブフライト測定は、次のようにして行った。予め金電極側に負の電圧印加し、窒素ガスレーザー光を金電極側から試料に照射した。その際、アルミニウム電極アース間に入れた挿入抵抗光電流が流れることによって生じる電位の時間変化をデジタルオシロスコープで記録した。デジタルオシロスコープに出力された波形について前後から接線を引き、この交点からトランジットタイムtが求められる。波形が分散型になる場合を想定し、出力波形について両対数プロットをとり、この接線の交点からトランジットタイムtを求めた。電荷移動度μの算出は、膜厚をL、印加電圧をVとして式5から決定した。
また、電荷移動時間は電荷移動度を基に算出した。
(式5)
μ=L2/(V・t)
尚、測定環境は25℃50%RHの状態で行った。

0218

(8)感光体の表面粗さ測定
ドラム状の感光体表面を、東京精密社製ピックアップE−DT−S02Aを取り付けた触針式表面粗さ計(Surfcom、東京精密社製)により、うねりパラメーターSm(JIS−‘82規格凹凸間平均長さ)を測定した。

0219

(9)テーバー摩耗試験
表面が平滑なAl板上に、接着層としてポリアミド樹脂(東レ社製;CM8000)を約0.7μm塗布し、その上に後述する処方により作製した塗工液を塗布し、13μmの感光体最表面層を積層し、これをテーバー摩耗試験用のサンプルとした。摩耗試験は、東洋精機製作所社ロータリーアブレージョンテスターにより行なった。摩耗輪は、CS−5、CS−10およびCS−17を選択した。ターンテーブルの回転速度は60rpm、荷重は250gfとした。試験は3回行ない、1000回転当たりの質量減少量(Taber Wear Index)の平均値を算出し、摩耗量(mg)とした。

0220

また、テーバー摩耗試験後のサンプルの表面粗さは、100倍の対物レンズを取り付けた超深度形状測定顕微鏡(VK−8500,キーエンス社製)により、スキャン深さを5μm(0.01μm刻み)に設定し表面形状を測定した。中心線表面粗さ(Ra)は付属解析ソフトウエアを用いて算定した。

0221

(10)画像ボケ評価
耐久試験終了後、600dpi×600dpiの画素密度で、画像濃度が5%のドット画像を連続10枚プリントアウトした。この画像のドット形状実体顕微鏡で観察し、輪郭のシャープネスを5段階(5が優れ1が劣る)に分けて評価した。
(ドット画像評価基準
5:輪郭が明瞭で、良好。
4:輪郭のぼやけが極めてごく僅かに観察されるが、良好。
3:輪郭のぼやけがごく僅かに観察されるが実質的に良好。
2:輪郭のぼやけが観察され、画像の種類によっては問題となる。
1:ドット画像の判別できない。

0222

(11)残像ランク評価
耐久試験終了後、600dpi×600dpiの画素密度で、黒ベタパターン(画像濃度0.8)とハーフトーンパターン(画像濃度0.5)を交互に配置するパターンを複写印刷した。ハーフトーンパターン部に黒ベタパターンの残像が判別できるか否かの程度を5段階に分けて評価した。
(残像評価判定基準
5:残像が全く観察されず、良好。
4:残像が極めてごく僅かに観察されるが、良好。
3:残像がごく僅かに観察されるが実質的に良好。
2:残像が僅かに観察されるが実質的に問題無し。
1:残像が観察され、問題となる。

0223

(12)クリーニングブレード破損ラン
耐久試験終了後、試験機に装着されたクリーニングブレードを取り出し、100倍の対物レンズを取り付けた超深度形状測定顕微鏡(VK−8500、キーエンス社製)により、スキャン深さを5μm(0.01μm刻み)に設定しそのエッジ面を真上と真横から観察した。
(クリーニングブレード破損評価判定基準)
5:ブレードエッジの欠けが全く観察されず、良好。
4:ブレードエッジの欠けが極めてごく僅かに観察されるが、良好。
3:ブレードエッジの欠けがごく僅かに観察されるが実質的に良好。
2:ブレードエッジの欠けが僅かに観察されるが実質的に問題無し。
1:ブレードエッジの欠けが観察され、問題となる。

0224

(13)感光体表面電位測定
表面電位計(Trek MODEL344、トレック社製)のプローブを取り付けた改造現像ユニットを複写機内現像部に取り付け、感光体中央部の表面電位を測定した。

0225

実施例1
肉厚0.8mm、φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成下引き層用塗工液電荷発生層用塗工液電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成した。次に感光体最表面層用塗工液をスプレーで塗工し、0.95μmの感光体最表面層を設け本発明の電子写真感光体を得た。

0226

〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液
(ベッコライトM6401−50、大日本インキ化学工業社製)12重量部
メラミン樹脂溶液
スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)
8重量部
酸化チタン(CR−EL石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン200重量部

0227

〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料リコー社製) 5重量部



ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン200重量部
メチルエチルケトン80重量部

0228

〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(パンライトTS−2050、帝人化成社製)10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質7重量部



テトラヒドロフラン79重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)テトラヒドロ
フラン溶液1重量部

0229

〔感光体最表面層用塗工液〕
熱硬化性界面活性剤(モディパーF200、日本油脂社製)
10重量部(固形分:3重量部)
熱硬化性樹脂単量体(メラミン樹脂)
(スーパーベッカミンL−145−60、大日本インキ化学工業社製)
12重量部(固形分:7.2重量部)
テトラヒドロフラン180重量部
シクロヘキサノン50重量部

0230

感光体最表面層の硬化温度を決定するために、感光体最表面層用塗工液を種々、加熱温度を変えて硬化した樹脂膜の室温から250℃までのDSCを測定した。
このうち170℃30分の条件下で感光体最表面層用塗工液を硬化した樹脂膜のDSCカーブには吸熱ピークが見られなかった。そこで、硬化温度を170℃30分とした。
この感光体最表面層のIRスペクトルについて上述の方法にて求めた最小透過度が95%を下回るピークは無かった。

0231

比較例1
実施例1における感光体最表面層を設けなかった他は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。

0232

比較例2
実施例1における感光体最表面層の硬化条件を110℃30分に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
感光体最表面層用塗工液を硬化した樹脂膜のDSCカーブには吸熱ピークが観測された。
この感光体最表面層のIRスペクトルについて上述の方法にて求めた最小透過度が95%を下回るピークは無かった。

0233

比較例3
実施例1における感光体最表面層用塗工液を次のものに変え、硬化条件を150℃30分に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔感光体最表面層用塗工液〕
熱硬化性樹脂単量体(主剤
ヒートレスグラスGS−600−1BN、大橋化学工業社製) 10重量部
熱硬化性樹脂単量体(硬化剤)
(ヒートレスグラスGS−600−1BN、大橋化学工業社製) 1重量部
メチルイソブチルケトン30重量部
感光体最表面層用塗工液を硬化した樹脂膜のDSCカーブには吸熱ピークが見られなかった。この感光体最表面層のIRスペクトルについて上述の方法にて求めた最小透過度は92%(3400cm−1)だった。

0234

〔実施例1、比較例1〜3における感光体最表面層のスプレー塗工条件
塗工液吐出量: 10ml/min
塗工液吐出圧: 2.4kgf/cm2
被塗工ドラムの回転速度: 120rpm
塗工速度: 28mm/sec
スプレーヘッドと被塗工ドラムの距離:5cm
塗工回数: 1回

0235

以上のように作製した実施例1、および比較例1〜3の電子写真感光体を実装用にした後、電子写真装置(リコー社製、IPSiO Color 8000)に搭載し、画素密度が600dpi×600dpiで画像濃度が5%となるテキストグラフィック画像のパターンを連続5枚づつ印刷する条件で、通算2万枚、コピー用紙(リコー社製、TYPE6000、A4T目)にプリントアウトした。

0236

トナーは純正品を用いた。また、現像剤も純正現像剤ユニットに内包されるものをそのまま用いた。
電子写真装置の帯電手段は電子写真感光体に近接配置された帯電ローラーを用いた。

0237

帯電ローラーの印加電圧はAC成分としてピーク間電圧1.5kV、周波数0.9kHzを選択した。また、DC成分は試験開始時の感光体の帯電電位が−700Vとなるようなバイアスを設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また、現像バイアスは−500Vとした。尚、この装置において、除電手段は設けていない。また、クリーニングブレードは純正のものをそのまま用いた。
試験環境は、28℃/65%RHであった。

0238

試験終了時に、画素密度が1200dpi×1200dpiで画像濃度が5%のドット画像を連続10枚プリントアウトした。この画像のドット形状を実体顕微鏡で観察し、輪郭のシャープネスを5段階(5が優れ1が劣る)に分けて評価した。また、試験による感光体の摩耗量を測定した。
(ドット画像評価基準)
5:輪郭が明瞭で、良好。
4:輪郭のぼやけが極めてごく僅かに観察されるが、良好。
3:輪郭のぼやけがごく僅かに観察されるが実質的に良好。
2:輪郭のぼやけが観察され、画像の種類によっては問題となる。
1:ドット画像の判別できない。
試験結果を表2に記す。

0239

0240

実施例1の感光体は比較例1から比較例3の感光体と比較して耐摩耗性に優れ、且つ、試験後のプリント画像も不具合のない耐久性の高い結果が得られた。
これに比べ、感光体最表面層を積層しない比較例1の感光体は膜削れの激しい結果が得られた。これより、感光体のロングライフ化を図る手段として架橋樹脂膜からなる最表面層を積層することは有効な手段であると考えられる。

0241

但し、比較例2の試験終了後の摩耗量測定値から、実施例1と同じ架橋樹脂膜からなる最表面層を積層しても、硬化不良を残した状態では耐摩耗性の強化が十分に図れないと解釈される。すなわち、架橋樹脂膜を用いた感光体最表面層を積層する場合、硬化不良の排除が重要であると考えられる。最表面層硬化膜のDSCカーブにおける吸熱ピークの有無が硬化不良の有無を判断する指標となる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ