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技術 6価クロムフリー黒色防錆皮膜と表面処理液および処理方法

出願人 ユケン工業株式会社
発明者 野嶋成彦飯島博文永谷康宏岡本達裕神谷雅幸早川美奈子
出願日 2004年1月5日 (16年6ヶ月経過) 出願番号 2004-000422
公開日 2005年7月21日 (14年11ヶ月経過) 公開番号 2005-194553
状態 特許登録済
技術分野 金属の化成処理 その他の表面処理
主要キーワード 打抜き加工品 取り付けミス 小物製品 ボルト材 揺動処理 一次加工品 半加工品 低次酸化物
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課題

クロメート皮膜匹敵する黒色外観と良好な耐食性を併せ持つ、6価クロムフリー黒色防錆皮膜亜鉛系めっき鋼材の表面に形成する。特に、ジンケート浴のみならず塩化浴電気めっきした場合にも有効な手段を提供する。

解決手段

価クロム化合物コバルト化合物シュウ酸リン酸、および硫酸を含有し、6価クロム硝酸イオンを含有しない酸性水溶液からなり、水溶液中のリン酸イオン硫酸イオン質量比が1より大である表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼材に反応型の浸漬処理を行うと、耐食性に優れた黒色防錆皮膜が形成される。この皮膜は、めっき表面との界面の亜鉛低次酸化物を含んだ黒色層と、その上のリン酸塩層と、最上層の亜鉛を含有しないクロム/リン酸化物層の3層からなる皮膜構造を有する。その上に、有機または無機オーバーコート層を形成してもよい。

概要

背景

亜鉛めっき鋼材亜鉛合金めっき鋼材とを含む亜鉛系めっき鋼材防錆処理として、6価クロムを含有する処理液を用いたクロメート処理がある。亜鉛系めっきのままでは、亜鉛酸化による白錆がすぐに発生するため、長期的な耐食性を得ることができない。しかし、めっき後にクロメート処理を施すことにより、亜鉛系めっき鋼材の耐食性は飛躍的に向上し、塩水噴霧SST)試験における白錆発生までの時間が96〜120 時間という耐食性が亜鉛系めっき鋼材に付与される。そのため、クロメート処理は亜鉛系めっき鋼材に対して広く利用されてきた。

クロメート処理は、6価クロム化合物であるクロム酸(または重クロム酸) に各種の鉱酸や他の添加剤を含有させたものであって、その組成を変化させることにより、青・黄・緑・黒の4種類の色調の皮膜(クロメート皮膜) を形成することができる。そのため、例えば、自動車メーカーにおいては、この色調の違いを利用して、左右に取り付ける部品識別することが行われている。従って、クロメート皮膜の色は、高級感を付与するといった美観の向上だけではなく、形状が似ている部品を識別するのにも役立っている。

クロメート皮膜の主成分は、3価クロムと6価クロムとの化合物であるクロム酸クロムである。このクロム酸クロムは、クロメート処理中にクロム酸の一部が亜鉛の溶解 (即ち、酸化) により還元されて3価クロムイオンになり、この3価クロムイオンが亜鉛表面近傍でのpH上昇に伴ってまたクロム酸と結合することにより生成したものである。クロメート皮膜の形成を促進するため、クロメート処理液中の6価クロムの一部を予め3価クロムに還元した部分還元型クロメート処理液も利用されるが、その場合でも、形成されたクロメート皮膜はクロム酸クロムを主成分とするものであることに変わりはなく、3価クロムと6価クロムの両方を含有する皮膜となる。

ところが、6価クロム化合物は発がん性があり、人体や環境に有害であるため、その使用が規制されるようになってきた。そのため、亜鉛系めっき鋼材の防錆処理についても、6価クロム化合物を含有しない、6価クロムフリー処理液の使用に切り替わりつつある。そのような6価クロムフリー処理液としては、3価クロム化合物を使用した酸性処理液と、クロム化合物を全く使用しない無機系 (例、ケイ酸系) もしくは有機系 (樹脂系) の処理液とがある。処理の目的である亜鉛系めっき鋼材の耐食性の改善という点では、3価クロム化合物を含有する酸性処理液の方が、一般に耐食性の高い皮膜を形成することができる。

しかし、従来の3価クロム化合物を含有する酸性処理液のほとんどは、亜鉛系めっき鋼材の表面処理に用いた場合、形成された防錆皮膜が無色または淡い色調、特に黄色系の色調となり、下地の亜鉛系めっきの表面が見えるため、製品に高級感を付与することができなかった。

例えば、下記特許文献1には、3価クロム化合物とシュウ酸Coイオンとを含有する酸性処理液で亜鉛系めっき鋼材を表面処理することが記載されているが、色調に関しては全く記載がない。下記特許文献2に記載された、亜鉛または亜鉛合金上に形成された、6価クロムを含まず、3価クロムを含む防錆皮膜は、透明かつ基本的に無色であると明記されている。

黒色の防錆皮膜に関して、下記特許文献3には、3価クロム化合物を用いて、6価クロムを含有しない黒色化成皮膜を形成する処理溶液が記載されている。この処理溶液は、硝酸イオンと3価クロムとのモル比(NO3-/Cr3+) が0.5 未満となる量で硝酸イオン)を含有し、3価クロムはキレート剤との水性錯体の形態で存在し、さらにCoおよび/またはNiイオンを、キレート剤と難溶性の塩を形成しない状態で含有する。

しかし、本発明者らが特許文献3の実施例を追試したところ、確かに黒色の防錆皮膜が形成される場合もあるが、その場合でも形成された防錆皮膜は全体に均一な真っ黒な皮膜とはならず、黒色度が不十分で黒みが薄く、着色が不均一な皮膜となることが多かった。また、ジンケート浴に比べて、塩化浴により電気めっきした亜鉛系めっき鋼材を処理した場合には防錆皮膜に色が着きにくく、下地の電気亜鉛めっきに用いためっき浴がジンケート浴である場合と塩化浴である場合との間で、防錆皮膜の黒色の着色状況に大きな差を生じた。

下記特許文献4には、亜硫酸イオン供給源酸化性物質の供給源(例、硝酸、過酸化物等)を含む、亜鉛等の金属表面に黒色皮膜を形成するための表面処理剤が記載されている。この表面処理剤は、さらに3価クロムを含む各種金属カチオンを含有しうる。しかし、この表面処理剤から形成された皮膜は、基本的に防錆皮膜ではなく、耐食性に劣るものである。また、3価クロム化合物を含有させる場合でも、硝酸または他の酸化剤が共存するため、特許文献3に記載された酸性処理液と同様に、真っ黒の美麗な黒色皮膜を形成することはできないと考えられる。

亜鉛を黒く変色する方法として、モリブデン酸塩法と塩素酸塩法 (以下、モリブデン酸塩法等という) が古くから知られている。これらの方法によれば、亜鉛表面に均一で真っ黒な皮膜を形成することができる。しかし、その皮膜は、亜鉛上に別の金属が置換析出したものであるため、耐食性はクロメート皮膜に遠く及ばず、防錆皮膜であると言えるものではない。
特許第3332373号明細書
特表2000−509434号公報
特開2003−268562号公報
特開2003−213446号公報

概要

クロメート皮膜に匹敵する黒色外観と良好な耐食性を併せ持つ、6価クロムフリーの黒色防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材の表面に形成する。特に、ジンケート浴のみならず塩化浴で電気めっきした場合にも有効な手段を提供する。3価クロム化合物、コバルト化合物、シュウ酸、リン酸、および硫酸を含有し、6価クロムと硝酸イオンを含有しない酸性水溶液からなり、水溶液中のリン酸イオン硫酸イオン質量比が1より大である表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼材に反応型の浸漬処理を行うと、耐食性に優れた黒色防錆皮膜が形成される。この皮膜は、めっき表面との界面の亜鉛の低次酸化物を含んだ黒色層と、その上のリン酸塩層と、最上層の亜鉛を含有しないクロム/リン酸化物層の3層からなる皮膜構造を有する。その上に、有機または無機オーバーコート層を形成してもよい。

目的

前述したように、6価クロムを利用せずに、部品の識別を可能にする明確な色調と、クロメート皮膜に匹敵するような耐食性とを併せ持つ、有色の防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材の表面に形成することができる処理液の開発が望まれていた。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
4件

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請求項1

亜鉛系めっき鋼材の表面に黒色防錆皮膜を形成するための酸性表面処理液であって、3価クロム化合物コバルト化合物キレート形成能のある有機酸リン酸、および硫酸を含有し、6価クロム硝酸イオンを含有しない酸性水溶液からなり、水溶液中のリン酸イオン硫酸イオン質量比が1以上であることを特徴とする表面処理液。

請求項2

前記有機酸がシュウ酸である、請求項1に記載の表面処理液。

請求項3

液のpHが2〜3の範囲である、請求項1または2に記載の表面処理液。

請求項4

亜鉛系めっき鋼材を請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理液中に浸漬した後、乾燥して、黒色防錆皮膜をめっき表面に形成することを特徴とする、亜鉛系めっき鋼材の黒色化処理方法

請求項5

形成された黒色防錆皮膜の上に有機または無機オーバーコート層を形成する、請求項4に記載の亜鉛系めっき鋼材の黒色化処理方法。

請求項6

塩化浴を用いた電気亜鉛系めっき表面に、3価クロム化合物を含有し、6価クロムを含まない、明度指数(L*a*b*表色系のL* の値)が15未満の黒色防錆皮膜を有する、黒色化亜鉛系めっき鋼材。

請求項7

亜鉛系めっき表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理液を用いた浸漬処理により形成された、6価クロムを含まず、3価クロムを含む、明度指数が15未満の黒色防錆皮膜を有する、黒色化亜鉛系めっき鋼材。

請求項8

前記黒色防錆皮膜の上にさらに無色の無機または有機オーバーコート層を有する、請求項6または7に記載の黒色化亜鉛系めっき鋼材。

技術分野

0001

本発明は、6価クロム化合物を使用せずに、鋼板からボルトナットといった小物製品までを含む多様な亜鉛系めっき鋼材の表面に、均一に真っ黒の美麗で高級感のある黒色防錆皮膜を形成する技術に関する。より詳しくは、本発明は、そのような黒色防錆皮膜を有す6価クロムフリー黒色化亜鉛系めっき鋼材、ならびに亜鉛系めっき上にそのような黒色防錆皮膜を形成するための表面処理液および処理方法に関する。

背景技術

0002

亜鉛めっき鋼材亜鉛合金めっき鋼材とを含む亜鉛系めっき鋼材の防錆処理として、6価クロムを含有する処理液を用いたクロメート処理がある。亜鉛系めっきのままでは、亜鉛酸化による白錆がすぐに発生するため、長期的な耐食性を得ることができない。しかし、めっき後にクロメート処理を施すことにより、亜鉛系めっき鋼材の耐食性は飛躍的に向上し、塩水噴霧SST)試験における白錆発生までの時間が96〜120 時間という耐食性が亜鉛系めっき鋼材に付与される。そのため、クロメート処理は亜鉛系めっき鋼材に対して広く利用されてきた。

0003

クロメート処理は、6価クロム化合物であるクロム酸(または重クロム酸) に各種の鉱酸や他の添加剤を含有させたものであって、その組成を変化させることにより、青・黄・緑・黒の4種類の色調の皮膜(クロメート皮膜) を形成することができる。そのため、例えば、自動車メーカーにおいては、この色調の違いを利用して、左右に取り付ける部品識別することが行われている。従って、クロメート皮膜の色は、高級感を付与するといった美観の向上だけではなく、形状が似ている部品を識別するのにも役立っている。

0004

クロメート皮膜の主成分は、3価クロムと6価クロムとの化合物であるクロム酸クロムである。このクロム酸クロムは、クロメート処理中にクロム酸の一部が亜鉛の溶解 (即ち、酸化) により還元されて3価クロムイオンになり、この3価クロムイオンが亜鉛表面近傍でのpH上昇に伴ってまたクロム酸と結合することにより生成したものである。クロメート皮膜の形成を促進するため、クロメート処理液中の6価クロムの一部を予め3価クロムに還元した部分還元型クロメート処理液も利用されるが、その場合でも、形成されたクロメート皮膜はクロム酸クロムを主成分とするものであることに変わりはなく、3価クロムと6価クロムの両方を含有する皮膜となる。

0005

ところが、6価クロム化合物は発がん性があり、人体や環境に有害であるため、その使用が規制されるようになってきた。そのため、亜鉛系めっき鋼材の防錆処理についても、6価クロム化合物を含有しない、6価クロムフリー処理液の使用に切り替わりつつある。そのような6価クロムフリー処理液としては、3価クロム化合物を使用した酸性処理液と、クロム化合物を全く使用しない無機系 (例、ケイ酸系) もしくは有機系 (樹脂系) の処理液とがある。処理の目的である亜鉛系めっき鋼材の耐食性の改善という点では、3価クロム化合物を含有する酸性処理液の方が、一般に耐食性の高い皮膜を形成することができる。

0006

しかし、従来の3価クロム化合物を含有する酸性処理液のほとんどは、亜鉛系めっき鋼材の表面処理に用いた場合、形成された防錆皮膜が無色または淡い色調、特に黄色系の色調となり、下地の亜鉛系めっきの表面が見えるため、製品に高級感を付与することができなかった。

0007

例えば、下記特許文献1には、3価クロム化合物とシュウ酸Coイオンとを含有する酸性処理液で亜鉛系めっき鋼材を表面処理することが記載されているが、色調に関しては全く記載がない。下記特許文献2に記載された、亜鉛または亜鉛合金上に形成された、6価クロムを含まず、3価クロムを含む防錆皮膜は、透明かつ基本的に無色であると明記されている。

0008

黒色の防錆皮膜に関して、下記特許文献3には、3価クロム化合物を用いて、6価クロムを含有しない黒色化成皮膜を形成する処理溶液が記載されている。この処理溶液は、硝酸イオンと3価クロムとのモル比(NO3-/Cr3+) が0.5 未満となる量で硝酸イオン)を含有し、3価クロムはキレート剤との水性錯体の形態で存在し、さらにCoおよび/またはNiイオンを、キレート剤と難溶性の塩を形成しない状態で含有する。

0009

しかし、本発明者らが特許文献3の実施例を追試したところ、確かに黒色の防錆皮膜が形成される場合もあるが、その場合でも形成された防錆皮膜は全体に均一な真っ黒な皮膜とはならず、黒色度が不十分で黒みが薄く、着色が不均一な皮膜となることが多かった。また、ジンケート浴に比べて、塩化浴により電気めっきした亜鉛系めっき鋼材を処理した場合には防錆皮膜に色が着きにくく、下地の電気亜鉛めっきに用いためっき浴がジンケート浴である場合と塩化浴である場合との間で、防錆皮膜の黒色の着色状況に大きな差を生じた。

0010

下記特許文献4には、亜硫酸イオン供給源酸化性物質の供給源(例、硝酸、過酸化物等)を含む、亜鉛等の金属表面に黒色皮膜を形成するための表面処理剤が記載されている。この表面処理剤は、さらに3価クロムを含む各種金属カチオンを含有しうる。しかし、この表面処理剤から形成された皮膜は、基本的に防錆皮膜ではなく、耐食性に劣るものである。また、3価クロム化合物を含有させる場合でも、硝酸または他の酸化剤が共存するため、特許文献3に記載された酸性処理液と同様に、真っ黒の美麗な黒色皮膜を形成することはできないと考えられる。

0011

亜鉛を黒く変色する方法として、モリブデン酸塩法と塩素酸塩法 (以下、モリブデン酸塩法等という) が古くから知られている。これらの方法によれば、亜鉛表面に均一で真っ黒な皮膜を形成することができる。しかし、その皮膜は、亜鉛上に別の金属が置換析出したものであるため、耐食性はクロメート皮膜に遠く及ばず、防錆皮膜であると言えるものではない。
特許第3332373号明細書
特表2000−509434号公報
特開2003−268562号公報
特開2003−213446号公報

発明が解決しようとする課題

0012

前述したように、6価クロムを利用せずに、部品の識別を可能にする明確な色調と、クロメート皮膜に匹敵するような耐食性とを併せ持つ、有色の防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材の表面に形成することができる処理液の開発が望まれていた。

0013

特に、識別を可能にする点に加えて、高級感・重量感を与える色であるという理由から、黒色の外観を持つ防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材の表面に形成することが、亜鉛系めっき鋼材のユーザーから強く要望されていた。この点に関して、上記特許文献3に記載された処理液から亜鉛系めっき鋼材の表面に形成された化成皮膜は、黒色度がやや薄く、しかも不均一であって、従来のモリブデン酸塩法等により形成された均一に真っ黒の黒色皮膜と比べると、黒色度が不十分であり、特に塩化浴で亜鉛めっきした場合の着色は非常に薄かった。

0014

本発明の課題は、従来のモリブデン酸塩法等により形成されるのと同じレベルの美麗な黒色外観と、クロメート皮膜に匹敵しうる優れた耐食性とを併せ持つ、6価クロムフリーの黒色防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材の表面に形成する技術を開発することである。

0015

本発明の別の課題は、ジンケート浴のみならず、塩化浴を用いた亜鉛系めっき鋼材に対しても、美麗な黒色の防錆皮膜を形成できる技術を開発することである。

課題を解決するための手段

0016

本発明者らは、耐食性の良好な皮膜を形成できることが知られている3価クロム化合物を含有する6価クロムフリーの酸性の表面処理液において、3価クロム化合物以外の成分の種類や量を選択することにより、ジンケート浴や塩化浴を含む各種のめっき手法によりめっきを施した亜鉛系めっき鋼材のめっき表面に、モリブデン酸塩法等と同様に真っ黒に見える美麗な黒色外観と、クロメート皮膜に匹敵する良好な耐食性とを併せ持つ黒色防錆皮膜を形成することができることを見出した。

0017

一方で、本発明者らは、従来のモリブデン酸塩法等により形成された均一で真っ黒な皮膜について、L*a*b*表色系の測定機器を用いて調べたところ、この種の黒色皮膜では、上記表色系の明度指数L* の値 (以下、L値という、L値が小さいほど皮膜の黒みは増す) が常に15未満であることを知った。

0018

また、上記特許文献3の実施例に従って形成した黒色皮膜についても同様に調べたところ、L値は15以上であり、20以上となる場合もあった。さらに、この特許文献3の実施例ではジンケート浴を用いて電気亜鉛めっきをしているが、塩化浴で電気めっきした亜鉛めっき鋼板に同様に黒色皮膜を形成したところ、L値は最低でも20を超え、場合により30以上と非常に大きかった。そして、黒色皮膜におけるL値と肉眼で見た黒色度とがよく相関し、L値が15未満、特に14以下であると、真っ黒に見える黒色皮膜となり、L値が20以上では灰色となり、L値が30以上では着色は非常に薄いものとなることがわかった。

0019

そこで、本発明者らが開発した上記の黒色防錆皮膜について、同様にL値を測定したところ、モリブデン酸塩法等により形成された黒色皮膜と同様に、この皮膜のL値は15未満、ほとんどは14以下であった。

0020

ここに、本発明は、下記の通りである。
(1)亜鉛系めっき鋼材の表面に黒色防錆皮膜を形成するための酸性の表面処理液であって、3価クロム化合物、コバルト化合物キレート形成能のある有機酸リン酸、および硫酸を含有し、6価クロムと硝酸イオンを含有しない酸性水溶液からなり、水溶液中のリン酸イオン硫酸イオン質量比が1以上であることを特徴とする表面処理液。

0021

(2)前記有機酸がシュウ酸である、上記(1) に記載の表面処理液。
(3)液のpHが2〜3の範囲である、上記(1) または(2) に記載の表面処理液。
(4)亜鉛系めっき鋼材を上記 (1)〜(3) のいずれかに記載の表面処理液中に浸漬した後、乾燥して、黒色防錆皮膜をめっき表面に形成することを特徴とする、亜鉛系めっき鋼材の黒色化処理方法

0022

(5)形成された黒色防錆皮膜の上に有機または無機オーバーコート層を形成する上記(4) に記載の亜鉛系めっき鋼材の黒色化処理方法。
(6)塩化浴を用いた電気亜鉛系めっき表面に、3価クロム化合物を含有し、6価クロムを含まない、L値が15未満の黒色防錆皮膜を有する、黒色化亜鉛系めっき鋼材。

0023

(7)亜鉛系めっき表面に、上記 (1)〜(3) のいずれかに記載の表面処理液を用いた浸漬処理により形成された、6価クロムを含まず、3価クロムを含む、L値15未満の黒色防錆皮膜を有する、黒色化亜鉛系めっき鋼材。

0024

(8)前記黒色防錆皮膜の上にさらに無色の無機または有機オーバーコート層を有する、上記(6) または(7) に記載の黒色化亜鉛系めっき鋼材。

発明の効果

0025

本発明によれば、3価クロム化合物を主な皮膜形成成分とし、6価クロムを含まない処理液を利用して、6価クロムを含有するクロメート皮膜に匹敵する耐食性を示す、6価クロムフリーの黒色防錆皮膜を亜鉛系めっき鋼材のめっき表面に形成することができる。

0026

この3価クロム系の黒色防錆皮膜は、従来のモリブデン酸塩法等により形成された黒色皮膜と同様に、L値が15未満で、肉眼で見て均一に真っ黒である。また、特許文献3に記載の技術では、塩化浴を用いて電気亜鉛めっきした鋼材にはジンケート浴に比べて黒色の色が着きにくかったが、本発明の黒色防錆皮膜は、塩化浴とジンケート浴との間で差がなく、亜鉛めっきが塩化浴である場合にも、ジンケート浴の場合と同様の真っ黒な美麗な黒色の防錆皮膜をめっき表面に形成することができる。

0027

その結果、左右に取り付けるべき亜鉛系めっき鋼材製の部品を、一方は従来の無色の防錆皮膜、他方は本発明の黒色の防錆皮膜を形成することにより、肉眼で識別することが可能となり、それらを簡単に識別でき取り付け作業が容易になる上、取り付けミスを防ぐことができる。

0028

また、本発明の黒色防錆皮膜は、重厚で高級感のある黒色外観を亜鉛系めっき鋼材に付与することができ、かつ下地の亜鉛系めっきの金属質の表面は完全に見えなくなる。そのため、この黒色防錆皮膜は、特に外部に見える部品や製品への適用に適しており、それらに黒色の美麗な外観を付与して、その商品価値を高めることができる。

発明を実施するための最良の形態

0029

以下に本発明をより具体的に説明する。本明細書において、%は、特に指定しない限り質量%である。
本発明は、亜鉛系めっき鋼材に6価クロムフリーの黒色防錆皮膜を形成する技術に関する。

0030

めっき母材となる鋼材は、鋼板、鋼管線材棒材異形材といった一次加工品でも、それらをさらに加工した部品、半加工品もしくは製品であってもよい。後者の例としては、ボルトやナットといった小物部品プレス成形品打抜き加工品鍛造品鋳造品などが例示されるが、それらに限られるものではない。

0031

本発明において、亜鉛系めっき鋼材とは、亜鉛めっき鋼材と亜鉛合金めっき鋼材の両方を含む意味である。亜鉛合金めっきの例としては、Zn−Ni合金めっき、Zn−Fe合金めっき (合金化溶融亜鉛めっきを含む) 、Zn−Al合金めっきなどが例示される。亜鉛系めっきのめっき方法は、電気めっきでも溶融めっきでもよく、また気相めっき等の特殊なめっき方法であってもかまわない。めっき付着量も、鋼材に必要な耐食性を付与することができれば、特に制限されない。

0032

電気亜鉛系めっきのめっき浴は、当業者には周知のように、鋼材の種類により選択することができる。例えば、鋼板のめっきにはジンケート浴が、小物部品には塩化浴がよく使用されるが、それに限定されるものではない。上述したように、特許文献3に記載の技術とは異なり、本発明では、塩化浴を用いて電気めっきを行った亜鉛系めっき鋼材に対しても、真っ黒な美しい防錆皮膜を形成することができる。従って、塩化浴が適用されることが多い小物部品にも適用することができるので、例えば、ボルトやナットに耐食性と黒色外観の両方を同時に付与することができ、その商品価値を著しく高めることができる。

0033

本発明で亜鉛系めっき鋼材の表面に黒色防錆皮膜を形成するのに用いる表面処理液は、3価クロム化合物、コバルト化合物、キレート形成能のある有機酸、リン酸、および硫酸を含有し、6価クロムと硝酸イオンを含有しない酸性水溶液からなる。

0034

3価クロム化合物は、防錆皮膜の主要な皮膜形成成分である。本発明の場合、3価クロム化合物は、主に処理液中のリン酸イオンと反応して不溶性リン酸塩を形成することにより、耐食性に優れた皮膜を形成する。3価クロム化合物としては、酸性水溶液中に可溶性の化合物を使用すればよい。そのような3価クロム化合物の例としては、塩化クロム硫酸クロムのような無機酸塩と、酢酸クロム、シュウ酸クロムのような有機酸塩とが挙げられる。

0035

コバルト化合物も同様に酸性水溶液中に可溶性の化合物であればよい。そのようなコバルト化合物の例は、塩化コバルト硫酸コバルトのような無機酸塩と、酢酸コバルトシュウ酸コバルトのような有機酸塩とが挙げられる。コバルト化合物は、メカニズムは不明であるが、皮膜の黒色化に関与しており、表面処理液がコバルト化合物を含んでいないと、形成された皮膜は無色〜薄黄色となる。

0036

キレート形成能のある有機酸は、ジカルボン酸ヒドロキシカルボン酸を含むが、好ましくはシュウ酸、マロン酸コハク酸といった炭素数が6以下の脂肪族ジカルボン酸であり、価格も考慮するとシュウ酸が最も好ましい。表面処理液がこの種の有機酸を含有していなくても、皮膜は形成されるが、やはり無色〜薄黄色の皮膜となり、黒色化しない。その上、この有機酸は皮膜の耐食性にも影響し、表面処理液がこの種の有機酸を含有しないと、皮膜は耐食性が非常に劣ったものとなる。以下では、キレート形成能のある有機酸をシュウ酸で代表させて、本発明を説明する。

0037

リン酸と硫酸は、いずれも、適当な濃度に希釈したものを処理液の調製に使用してもよい。表面処理液がリン酸を含有せず、代わりに硝酸、硫酸および/または塩酸だけを含有している場合には、黒色度の高い皮膜は形成されない。代わりに、黒い状の微粒子が表面に付着した、美麗ではない (煤けた) 皮膜が形成されることが多い。

0038

水溶液中のリン酸イオンおよび硫酸イオンの量は、リン酸および硫酸として添加された量だけでなく、例えば、3価クロム化合物やコバルト化合物としてリン酸塩または硫酸塩を使用した場合には、そのような金属塩からアニオンとして供給されるリン酸イオンおよび硫酸イオンの量も含んだ量である。

0039

黒色の防錆皮膜を形成するには、水溶液中のリン酸イオン/硫酸イオンの質量比が1以上になるようにする。この質量比が1より小さくなって、リン酸イオンより硫酸イオンの量の方が多くなると、防錆皮膜が黒色にならずに、灰色になったり、リン酸を含有しない場合と同様に煤けたものとなることがある。この質量比が大き過ぎても、黒色度が低下することがあるので、この質量比は好ましくは5以下である。

0040

本発明の表面処理液は、硝酸イオンを含有しない。上記特許文献3に記載の表面処理液は硝酸を含有し、特許文献4に記載の処理液は酸化剤を含有する。本発明の表面処理液が硝酸イオンを含有すると、特許文献3に記載の表面処理液と同様に、形成された防錆皮膜の黒色度が低下し、特に塩化浴による亜鉛めっき表面においてその傾向が高くなる。従って、本発明では、表面処理液の調製に用いる成分として、遊離の硝酸だけでなく、硝酸クロム硝酸コバルトといった硝酸イオンの供給源となる硝酸塩も使用しない。

0041

表面処理液のpHは2〜3の範囲内であることが好ましい。pHが低すぎると処理中の亜鉛めっきの溶出が多くなり、亜鉛系めっき鋼材の耐食性が低下する。pHが高すぎると、皮膜形成が起こりにくくなり、黒色度も低下する傾向がある。

0042

この表面処理液は、亜鉛系めっき浴の表面にL値が15未満の黒色防錆皮膜を形成することができる限り、上記成分以外に、6価クロムを含まない他の成分を含有しうる。そのような成分の例としては、液のpHを調整するための化合物が挙げられる。また、コバルト化合物に加えて、ニッケル化合物を併用してもよい。

0043

上記特許文献3に記載の処理液は、耐食性の向上のためにコロイダルシリカ三塩化チタンをはじめとする多様な金属種の化合物をさらに含有することができ、実際に全ての実施例においてそのような追加の金属化合物を含有させている。本発明の表面処理液にもそのような追加の金属化合物を含有させることができるが、種類によっては皮膜の性状がやや変質することがある。例えば、コロイダルシリカを表面処理液に含有させると、皮膜の光沢はやや高まるが、黒色皮膜としての高級感はやや失われる。本発明の表面処理液の場合、コロイダルシリカ等の追加の金属化合物を含有させなくても、クロメート皮膜なみの優れた耐食性を亜鉛系めっき鋼材に付与することができる。

0044

本発明の表面処理液中の上記各成分の含有量は、耐食性に優れた黒色皮膜が形成されるように選択すればよい。処理液中の3価クロムイオンの含有量は 0.5〜30 g/lの範囲とすることが好ましく、より好ましくは 1.5〜20 g/lの範囲である。

0045

シュウ酸または他のキレート形成能を有する有機酸は、3価クロム化合物とコバルト化合物、さらに存在すれば他の金属化合物が沈殿しないような量で含有させる。通常は、3価クロムイオンに対するモル比で 0.2〜4の範囲内が好ましく、このモル比はより好ましくは 0.4〜2の範囲内である。

0046

コバルト化合物の含有量は、コバルトイオンとして 0.1〜10 g/lの範囲内とすることが好ましい。この量はより好ましくは 0.3〜5g/l であり、さらに好ましく 0.5〜3g/l である。

0047

リン酸イオンおよび硫酸イオンは、前述したように、リン酸イオン/硫酸イオンの質量比が1以上となり、かつ表面処理液のpHが好ましい値となる量で含有させる。
本発明の表面処理液は亜鉛系めっき鋼材の反応型化成処理に使用するものである。従って、所望の皮膜を形成するのに十分な時間、亜鉛系めっき鋼材を表面処理液に浸漬した後、乾燥することにより、表面処理を実施することができる。

0048

浸漬時間 (処理時間) や処理温度(表面処理液の浴温度) といった処理条件は、十分な耐食性と黒色外観を持つ防錆皮膜が形成されるように選択すればよく、表面処理液の組成によっても適切な処理条件は異なる。処理による皮膜形成が亜鉛系めっき鋼材の全体に均一に進行するように、浸漬中に表面処理液を適当な手段 (例、揺動) により攪拌してもよい。

0049

一般に、弱酸塩である酢酸クロムを含有する表面処理液より、強酸塩である塩化クロムを含有する表面処理液の方が、反応がより起こり易いので、処理時間を短めにするか、および/または処理温度を低めにすることができる。例えば、塩化クロムを含有する表面処理液では、処理時間を30〜120 秒、処理温度を20〜70℃とすることが好ましい。一方、酢酸クロム (または他の3価クロム有機酸塩) を含有する表面処理液の場合は、処理時間を60〜180 秒、処理温度は40〜70℃とすることが好ましい。但し、L値が15未満の防錆性に優れた黒色防錆皮膜が形成できれば、処理条件はこの範囲外であってもよい。

0050

処理を受ける亜鉛系めっき鋼材は、クロメート処理の場合と同様の前処理を予め施しておくことが好ましい。この前処理は、例えば、まず亜鉛系めっき鋼材を水洗した後、塩酸、硝酸、硫酸といった鉱酸の水溶液に浸漬して、めっき表面を活性化させ、再び水洗することにより実施できる。

0051

本発明の表面処理液を用いて浸漬処理した亜鉛系めっき鋼材は、その後、表面の余分な成分を取り除いて正常な皮膜を形成させるために、水洗した後、乾燥することが好ましい。この乾燥は、常温乾燥でも、加熱乾燥でもよい。

0052

こうして、本発明により、亜鉛系めっき鋼材の表面に、3価クロム化合物を含有し、6価クロムを含まない処理液を用いて反応型浸漬処理により形成された黒色防錆皮膜を有する、黒色化亜鉛系めっき鋼材が提供される。この亜鉛系めっき表面に形成された黒色防錆皮膜は、当然、6価クロムを含まず、3価クロムを含む皮膜である。

0053

この黒色防錆皮膜がなぜ黒色を呈するかを、皮膜断面をオージェ分光分析装置により測定し、得られた結果を使って検討したところ、めっき表面との界面に亜鉛の低次酸化物を含んだ黒色層が生成しており、このめっき界面 (即ち、皮膜最下層) の黒色層のために、皮膜全体が黒色に見えるようになっていると結論づけられた。

0054

周知のように、酸化亜鉛(ZnO) は白色物質であり、活性な亜鉛系めっきの表面はすぐに酸化して、酸化亜鉛の白色を呈するようになる (白錆が発生する) 。しかし、本発明の表面処理液の場合、亜鉛めっき表面では、亜鉛が不完全にしか酸化されず、亜鉛の低次酸化物(ZnOx : x<0.8)の状態にとどまる。そして、この皮膜最下層に含まれる亜鉛の低次酸化物が黒色を呈するために、皮膜全体が黒く見えるのである。

0055

この黒色の亜鉛低次酸化物がめっき表面に生成する理由は完全には解明されていないが、本発明の表面処理液が硝酸といった酸化剤を含有していないことと、コバルトイオンを含有することが関係していると考えられる。即ち、強力な酸化剤が存在していないため、酸性の表面処理液と接触して亜鉛が溶解して生じた亜鉛イオンが再び酸化物としてめっき表面で析出する際に、完全に酸化されずに、亜鉛の低次酸化物の状態でとどまると推測される。ZnOx のxが0.8 未満である亜鉛の低次酸化物は黒色となることは知られている。また、コバルトイオンは亜鉛の低次酸化物が生成する環境の創出に関与していると考えられる。コバルト以外の鉄系金属であるニッケルや鉄のイオンもいくらか有効であるが、コバルトイオンの効果が最も高い。それ以外に、リン酸と硫酸の比率やシュウ酸も皮膜の黒色化に関与しているが、その詳細は不明である。

0056

めっき界面に形成された、亜鉛の低次酸化物を主成分とする最下層 (第1層) の黒色層の上には、オージェ分光分析の結果、第1層の上のクロムと亜鉛の不溶性リン酸塩を主成分とする層 (第2層) と、表層の亜鉛を含有しないのクロム/リン酸化物層(第3層) とが形成されていた。この3層構造からなる皮膜は、例えば、第1層が200 nm、第2層が500 nm、第3層が200 nmの厚みを有していて、第2層が最も厚く、第1層と第3層の厚みは比較的小さかった。この3層構造の皮膜では、第2層と第3層とで耐食性が確保され、特に第3層が亜鉛を含有していないため、高い耐食性を示すことができるものと推測される。

0057

但し、前述したように、皮膜を黒色化しているのは、めっき界面に形成された第1層に含まれる亜鉛の低次酸化物であり、この黒色層がめっき界面に形成されていれば、その上の層は、耐食性があれば、上記とは異なる層であってもよい。

0058

この黒色防錆皮膜の全体の厚みは、特に制限されるものではないが、 300〜5000 nm の範囲であることが好ましい。300 nm以下では耐食性が不十分となる。5000 nm 以上の厚い皮膜を形成するには非常に長い処理時間が必要であって、コストが非常にかかる。

0059

この黒色防錆皮膜の上に、耐食性をさらに高めるために、オーバーコート層を形成してもよい。このオーバーコート層は、クロメート皮膜や他の化成処理皮膜の上に従来より形成されているものであって、公知の方法や塗布液を使用して形成することができる。オーバーコート層は、その下の黒色防錆皮膜の色を損なわないように、透明のものとすることが好ましい。

0060

具体的には、オーバーコート層は、コロイダルシリカ(ケイ酸ゾル) やチタニアゾルなどの金属酸化物(またはそれらの前駆物)またはリン酸塩を用いた無機質のものと、薄い樹脂被膜(例、ポリエステルアクリル樹脂エポキシ樹脂フェノール樹脂ポリウレタンメラミン樹脂フッ素樹脂等) からなる有機質のものがあり、いずれを使用してもよい。その厚みについても特に制限はないが、通常は 0.1〜30μm程度である。オーバーコート層は、一般に処理液の塗布と乾燥により形成され、塗布は、鋼材の形状に応じて、浸漬、噴霧ロール塗布など、適当な手段で実施すればよい。乾燥は普通には加熱乾燥である。

0061

冷間圧延鋼板またはボルトに、市販の亜鉛または亜鉛−鉄合金めっき液を用いて電気亜鉛系めっき(膜厚8μm)を施した。電気亜鉛めっきは、鋼板にはジンケート浴を、ボルトには塩化浴を用いて行った。電気亜鉛鉄合金めっきはジンケート浴を使用して行った。このめっき材(鋼板またはボルト)を、水洗した後、67.5%硝酸3ml/Lを含有する酸水溶液に室温で5秒間浸漬して活性化処理を行った。この活性化処理しためっき材を水洗してから、3価クロム化合物を含有し、6価クロムを含有しない、本発明の黒色防錆皮膜を形成するための表面処理液を用いて浸漬揺動処理を行い、最後に水洗した。使用した表面処理液の組成と処理条件(浸漬処理時間と処理浴温) を表1に示す。

0062

本実施例では黒色防錆皮膜の上にオーバーコート層は形成しなかった。
比較例として、3価クロム化合物を含有し、6価クロム化合物を含有しないが、組成が本発明の範囲外である表面処理液を使用して黒色化処理を行った。具体的には、シュウ酸、リン酸、またはコバルト化合物のいずれかを含有しないか、またはリン酸イオン/硫酸イオンの質量比が1より小である表面処理液を使用した。処理液組成と処理条件を表2に示す。

0063

表1および表2において、「酸比」とは、リン酸イオン/硫酸イオンの質量比を意味する。硫酸イオンの量は、遊離の硫酸に加えて、コバルト化合物が硫酸コバルトである場合には、その硫酸イオンの量も含めた量である。

0064

また、従来例として、公知の亜鉛系めっき表面の黒色化用処理液を用いて黒色化処理を行った。その処理液の組成と処理条件は表3に示す。
上記のように表面処理した亜鉛系めっき材の外観(黒色度)と耐食性について、次のように評価した。それらの試験結果も、表1 (実施例) 、表2 (比較例) および表3 (従来例) に併記する。なお、亜鉛めっき材がボルトである場合、外観についてはボルト材により評価したが、明度と耐食性の評価は、鋼板に同じめっき浴とめっき条件で電気亜鉛系めっきおよび表面処理を行った試験片を用いて行った。

0065

外観:目視で次の基準で判定した。◎だけが良好な黒色皮膜である。
◎:黒色(均一に真っ黒) 、
○:灰色 (一部が黒色だが不均一であるものを含む) 、
△:黒っぽい煤状物質が表面に付着している、
×:白色〜薄黄色。

0066

明度:東京電色社製のデジタルカラーメーターTC-3600 を用いて、L値(L*a*b*表色系におけるL* 値) を測定し、次の基準で明度を評価した:
◎:L値<15
○:15≦L値<20
×:L値≧20。

0067

耐食性:JIS Z 2371に準じた塩水噴霧試験(SST)を120 時間行い、試験後の白錆発生状況 (面積率) により、下記の基準で判定した。試験時間を120 時間としたのは、96〜120 時間の塩水噴霧試験で白錆が発生しないクロメート皮膜の耐食性と比較するためである。

0068

◎:120 時間で白錆発生なし、
○:120 時間での白錆発生面積率が10%未満、
×:120 時間での白錆発生面積率が10%以上。

0069

0070

0071

0072

表3に示すように、モリブデン酸塩や塩素酸塩を用いた従来例の黒色化処理では、L値が15未満で均一に真っ黒の黒色皮膜が形成された。しかし、その皮膜は、耐食性に著しく劣るものであった。

0073

これに対し、表1に示すように、本発明の表面処理液を用いて黒色防錆皮膜を形成した実施例では、全例において、上記の従来例と同様に外観が完全に黒色(即ち、均一に真っ黒) で、L値は15未満の高級感のある美しい黒色皮膜が形成された。より詳しくは、L値は12〜14の範囲であり、最大で13.8であった。しかも、この黒色皮膜はクロメート皮膜に匹敵する優れた耐食性も同時に示した。また、処理材電気亜鉛めっき浴が塩化浴である場合にも、ジンケート浴の場合と全く同様の、L値が14以下の真っ黒の黒色防錆皮膜が形成され、めっき浴によって黒色防錆皮膜の着色に差が出ることがなかった。

0074

一方、表2に示すように、使用する表面処理液の組成が本発明の範囲外である比較例1〜8では、完全に黒色の外観が得られない上、耐食性も程度の差はあるが、低下する傾向があった。なお、これらの比較例の結果から、外観とL値がよく相関していることもわかる。

0075

別の比較例として、前述した特許文献3 (特開2003−268562号公報) の実施例1〜6に従って亜鉛めっき鋼板の表面に黒色防錆皮膜を形成した。この実施例1〜6では、ジンケート浴を用いた電気亜鉛めっき鋼板を表面処理しているが、本実施例においては塩化浴とジンケート浴の両方の方法で電気亜鉛めっきを実施した。処理液の組成と処理条件(温度、時間) は、この公報の表1に示されている組成および処理条件と同一であった。但し、シュウ酸を含有する処理液については、このシュウ酸が無水物であるか2水和物であるかが不明であったため、表示の濃度でシュウ酸無水物を使用した場合とシュウ酸2水和物を使用した場合の2種類の処理液を調製した。

0076

形成された黒色防錆皮膜の外観と明度(L値)を上記と同様に評価した。その結果は下記の通りであった。
(1)この公報の実施例1〜6に従って、ジンケート浴で電気亜鉛めっきした亜鉛めっき鋼板を表面処理した場合、実施例4および6ではL値=15の黒色皮膜が形成されたが、その他の実施例でのL値は、1例でL値が18であったのを除いて、L値は20以上であった (シュウ酸が無水物である場合と2水和物である場合の両方を含めて) 。

0077

(2)この公報の実施例1〜6の表面処理を、塩化浴で電気亜鉛めっきした亜鉛めっき鋼板に対して適用した場合、ジンケート浴の場合とは全く異なる結果が得られた。即ち、L値は最も低い場合でも22で、大半は30を超えるL値となった。L値が30を超えると、皮膜は淡い黄色であるか、またはそれが煤けたような色となり、灰色にもなっていなかった。

0078

これらの結果から、特許文献3に記載の表面処理液は、ジンケート浴による電気亜鉛系めっき鋼材については黒色防錆皮膜を形成できる場合もあるが、塩化浴で電気亜鉛めっきした亜鉛系めっき鋼材に対しては、黒色防錆皮膜を形成することができず、ジンケート浴と塩化浴とで、形成された皮膜に著しい差があることがわかる。即ち、この表面処理液は塩化浴を用いて電気亜鉛めっきを施した亜鉛めっき鋼材には適用しえないものである。

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