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技術 電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置

出願人 シャープ株式会社
発明者 鳥山幸一福島功太郎小幡孝嗣有村拓也
出願日 2003年11月19日 (17年0ヶ月経過) 出願番号 2003-389669
公開日 2005年6月9日 (15年5ヶ月経過) 公開番号 2005-148642
状態 特許登録済
技術分野 電子写真における感光体 有機低分子化合物及びその製造
主要キーワード テスト紙 双極子成分 初期線 保証レベル 界面自由エネルギー 水素結合成分 表面保護層用塗布液 非ハロゲン系有機溶剤
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (18)

課題

感度および光応答性が高く、これらの電気特性が光暴露環境変化および繰返し使用のいずれによっても低下せず、かつクリーニング性に優れ、形成される画像に画質低下を長期間に渡って生じることのない耐久性に優れる電子写真感光体を提供する。

解決手段

電子写真感光体1において、感光層14に下記一般式(1)で示されるエナミン化合物、たとえば下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物を含有させるとともに、感光層14表面の表面自由エネルギー(γ)を、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下とする。

化27】

化28】

概要

背景

複写機プリンタまたはファクシミリ装置などとして用いられる電子写真方式画像形成装置(以下、電子写真装置とも称する)では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、装置に備わる電子写真感光体(以下、単に感光体とも称する)の感光層を、帯電器によって所定の電位に一様に帯電させ、露光手段から画像情報に応じて照射されるレーザ光などの光によって露光し、静電潜像を形成する。形成された静電潜像に対して現像手段から現像剤を供給し、感光体の表面に現像剤の成分であるトナーと呼ばれる着色された微粒子を付着させることによって静電潜像を現像し、トナー画像として顕像化する。形成されたトナー画像を、転写手段によって感光体の表面から記録紙などの転写材上に転写し、定着手段によって定着させる。

転写手段による転写動作の際、感光体表面のトナーがすべて記録紙に転写して移行されるのではなく、一部が感光体表面に残留する。また転写時に感光体と接触する記録紙の紙粉が感光体表面に付着したまま残留することもある。このような感光体表面の残留トナーおよび付着紙粉などの異物は、形成される画像の品質に悪影響を及ぼすので、クリーニング装置によって除去される。また近年ではクリーナーレス化技術が進み、独立したクリーニング手段を有することなく現像手段に付加されるクリーニング機能によって残留トナーを回収する、いわゆる現像兼クリーニングシステムで除去している。このようにして感光体表面をクリーニングした後、除電器などによって感光層表面除電し、静電潜像を消失させる。

このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性材料から成る導電性基体上に、光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成される。電子写真感光体としては、従来から、無機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、無機系感光体と称する)が用いられている。無機系感光体の代表的なものとしては、アモルファスセレン(a−Se)またはアモルファスセレンひ素(a−AsSe)などから成る層を感光層に用いたセレン系感光体酸化亜鉛化学式:ZnO)または硫化カドミウム(化学式:CdS)を色素などの増感剤とともに樹脂中に分散したものを感光層に用いた酸化亜鉛系または硫化カドミウム系感光体、およびアモルファスシリコン(a−Si)から成る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以下、a−Si感光体と称する)などがある。

しかしながら、無機系感光体には以下のような欠点がある。セレン系感光体および硫化カドミウム系感光体は、耐熱性および保存安定性に問題がある。またセレンおよびカドミウム人体および環境に対する毒性を有するので、これらを用いた感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。また酸化亜鉛系感光体は、低感度であって、かつ耐久性が低いという欠点があり、現在ではほとんど使用されていない。また、無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は、高感度および高耐久性などの長所を有する反面、プラズマ化学気相成長法を用いて製造されるので、感光層を均一に成膜することが難しく、画像欠陥が発生しやすいなどの短所を有する。またa−Si感光体は、生産性が低く、製造原価が高いという短所も有する。

このように無機系感光体には多くの欠点があることから、電子写真感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み、従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて、有機系の光導電性材料、すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称:OPC)が多用されるようになっている。有機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、有機系感光体と称する)は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するけれども、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べ、多くの利点を有する。また有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このように多くの利点を有することから、有機系感光体は次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。また近年の研究開発によって、有機系感光体の感度および耐久性は向上されており、現在では、特別な場合を除き、電子写真感光体としては、有機系感光体が用いられるようになってきている。

特に、有機系感光体の性能は、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって著しく改善されている。機能分離型感光体は、有機系感光体の有する前述の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。

機能分離型感光体には積層型単層型とがあり、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて構成される積層型の感光層が設けられる。電荷発生層および電荷輸送層は、通常、電荷発生物質および電荷輸送物質がそれぞれ結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。また単層型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とがバインダ樹脂中に共に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。

機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料スクアリリウム色素アゾ顔料ペリレン顔料多環キノン顔料シアニン色素スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く、電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。

また、電荷輸送物質としては、たとえばピラゾリン化合物(たとえば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(たとえば、特許文献2、3および4参照)、トリフェニルアミン化合物(たとえば、特許文献5および6参照)およびスチルベン化合物(たとえば、特許文献7および8参照)などの種々の化合物が知られている。最近では、縮合多環式炭化水素を中心母核に持つ、ピレン誘導体ナフタレン誘導体およびターフェニル誘導体(たとえば、特許文献9参照)なども開発されている。

電荷輸送物質には、
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(化学式:NOx)および硝酸などの活性物質に対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤およびバインダ樹脂との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。しかしながら、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。

また、近年では、デジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置に対する小型化および高速化の要求に対応し、感光体特性として高感度化が要求されており、電荷輸送物質には、特に高い電荷輸送能力が求められている。また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性に優れる感光体が求められる。感光体の光応答性が低い、すなわち露光後の表面電位減衰速度が遅いと、残留電位が上昇し、表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、消去されるべき部分の表面電荷が露光によって充分に消去されず、早期に画像品質が低下するなどの弊害が生じる。機能分離型感光体では、光吸収によって電荷発生物質で発生した電荷が、電荷輸送物質によって感光層表面に輸送されることによって、光が照射された部分の感光体の表面電荷が消去されるので、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存する。したがって、充分な光応答性を有する感光体を実現するという観点からも、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められる。

このような要求を満たす電荷輸送物質として、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質よりも高い電荷輸送能力を有するエナミン化合物が提案されている(たとえば、特許文献10、11および12参照)。また別の従来技術では、感光体の正孔輸送能を向上させるために、感光層にポリシランと特定の構造を有するエナミン化合物とを含有させることが提案されている(たとえば、特許文献13参照)。

また、電子写真装置では、感光体に対して、前述の帯電、露光、現像、転写、クリーニングおよび除電の動作が繰返し実行されるので、感光体には、感度が高いことおよび光応答性に優れることに加えて、電気的および機械的外力に対する耐久性に優れることが求められる。具体的には、感光体の表面層に対して、クリーニング部材などによる摺擦によって磨耗および傷が発生せず、また帯電時の放電で発生するオゾンおよびNOxなどの活性物質の付着によって劣化しないことが求められる。

すなわち、電子写真装置の低コスト化およびメンテナンスフリーを実現するためには、電子写真感光体が、充分な耐久性を有し、長期間安定して動作し得ることが重要となる。このような耐久性および動作の長期安定性を左右する要因の1つに、表面のクリーニング性すなわちクリーニングされ易さがあり、クリーニングされ易さには、電子写真感光体の表面状態が関係する。

電子写真感光体のクリーニングとは、電子写真感光体表面と、付着している残留トナーおよび紙粉などの異物との間の付着力を超える力を、異物に作用させて電子写真感光体の表面から付着物を除去することである。したがって、電子写真感光体表面の濡れ性が低いほどクリーニングし易いということができる。電子写真感光体表面の濡れ性すなわち付着力は、表面自由エネルギー表面張力同義)を指標として表すことができる。

表面自由エネルギー(γ)とは、物質を構成する分子間に作用する力である分子間力が最表面において起こす現象である。

電子写真感光体の表面にトナーが固着、融着して転写材に転写されずに残留したトナーが、帯電からクリーニングに至る工程を繰返し経ているうち、電子写真感光体の表面に被膜状に広がる現象は、濡れ性のうち「付着濡れ」に相当する。また紙粉、ロジンタルクなどが固着し、その後電子写真感光体との接触面積が増大して強固な濡れになる現象も同様に「付着濡れ」に相当する。

図17は、付着濡れの状態を例示する側面図である。図17に示す付着濡れにおいて、濡れ性と表面自由エネルギー(γ)との関係は、以下に示すYoungの式(I)によって表される。

γ1=γ2・cosθ+γ12 …(I)
ここで、γ1:物質1表面の表面自由エネルギー
γ2:物質2表面の表面自由エネルギー
γ12:物質1と物質2との界面自由エネルギー
θ:物質1に対する物質2の接触角

式(I)より、物質1に対する物質2の濡れ性の低減、すなわちθを大きくして濡れにくくすることは、電子写真感光体と異物との濡れ仕事に関連する界面自由エネルギーγ12を大きくし、各表面自由エネルギーγ1およびγ2を小さくすることによって達成される。

式(I)において、電子写真感光体の表面への異物、水分等の付着を考える場合、物質1を電子写真感光体、物質2を異物とすればよい。したがって、実際の電子写真感光体をクリーニングする場合、電子写真感光体の表面自由エネルギーγ1を制御することにより、式(I)右辺の濡れ性すなわち電子写真感光体に対する異物であるトナーおよび紙粉などの付着状態を制御することができる。

そこで電子写真感光体の表面状態を規定する従来技術には、純水との接触角を用いるものがある(たとえば、特許文献14参照)。しかしながら、固体液体との濡れに関しては、前述の図17に示すようにその接触角θを測定することができるけれども、電子写真感光体とトナー、電子写真感光体と紙粉などのように、固体と固体との場合には、接触角θを測定することができない。したがって特許文献14に開示の技術は、電子写真感光体表面と純水との間における濡れ性については適用できるけれども、現像剤を構成するトナー、紙粉などの固体に対する濡れ性およびクリーニング性との関係については充分に説明することができない。

固体同士の間における濡れ性は、固体と固体との間の界面自由エネルギーによって表すことができる。固体と固体との間の界面自由エネルギーについては、非極性な分子間力について述べたForkes理論を、さらに極性、または水素結合性の分子間力による成分まで拡張できるとされている(非特許文献1参照)。この拡張Forkes理論によれば、各物質の表面自由エネルギーは2〜3成分で求められる。前述の電子写真感光体表面に対するトナーおよび紙粉の付着に該当する付着濡れの場合における表面自由エネルギーについては、3成分で求めることができる。

以下固体物質間における表面自由エネルギーについて説明する。拡張Forkes理論では、下記式(II)に示す表面自由エネルギーの加算則が成立つものと仮定する。

γ=γd+γp+γh …(II)
ここで、γd:双極子成分(極性による濡れ)
γp:分散成分(非極性の濡れ)
γh:水素結合成分水素結合による濡れ)

式(II)の加算則をForkes理論に適用すると、ともに固体である物質1と物質2との間の界面自由エネルギーγ12は、下記式(III)のように求められる。

γ12=γ1+γ2−{2√(γ1d・γ2d)+
2√(γ1p+γ2p)+2√(γ1h+γ2h)}
…(III)
ここで、γ1:物質1の表面自由エネルギー
γ2:物質2の表面自由エネルギー
γ1d,γ2d:物質1,物質2の双極子成分
γ1p,γ2p:物質1,物質2の分散成分
γ1h,γ2h:物質1,物質2の水素結合成分

被測定対象の固体物質における前述の式(II)に示す各成分の表面自由エネルギー(γd,γp,γh)は、各成分の表面自由エネルギーが既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって算出できる。したがって、物質1および物質2のそれぞれについて、各成分の表面自由エネルギーを求め、さらに各成分の表面自由エネルギーから式(III)によって物質1と物質2との界面自由エネルギーを求めることができる。

このようにして求められる固体と固体との間の界面自由エネルギーの考え方に基づいて、別の従来技術では、電子写真感光体の表面自由エネルギーを指標として電子写真感光体表面とトナーなどとの濡れ性の制御を行なっている(特許文献15参照)。特許文献15には、表面自由エネルギーを35乃至65mN/mの範囲に規定することによって、電子写真感光体表面のクリーニング性を向上し、長寿命化の実現されることが開示されている。

しかしながら、本発明者らの調査によれば、特許文献15に開示される範囲の表面自由エネルギーを有する電子写真感光体を用いて、たとえば記録紙に対して実際に画像形成する実写性能試験を行ったところ、電子写真感光体表面において、紙粉などの異物との接触によると思われる傷の発生が確認された。またその傷に起因するクリーニング不良によって、記録紙に転写された画像上に黒すじが発生することを確認した。前述のような電子写真感光体表面に発生する傷は、表面自由エネルギーが大きくなるのに伴って顕著になる傾向があった。

さらに別の従来技術においては、電子写真感光体の耐久にともなう表面自由エネルギーの変化量(Δγ)を規定しているけれども、電子写真感光体の初期特性たとえば表面自由エネルギーを規定することによっては変化量Δγを定められないこと、また画像形成する際の環境および転写材の材質などの諸条件に依存して変化量Δγが変化することを考慮すると、実際の電子写真感光体の設計において、変化量Δγは不確定な要素を多分に含み設計基準として適さないという問題がある。

また、有機系感光体において、特許文献15に開示の技術のように感光体表面の表面自由エネルギーを制御するためには、表面層である感光層に用いられるバインダ樹脂の種類および配合量を調整することが必要であるけれども、バインダ樹脂の種類および配合量によっては、感光体の感度および光応答性が低下するという問題が生じる。

感光体の感度および光応答性は、前述のように電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存するので、電荷輸送能力の高い電荷輸送物質を用いれば、感度および光応答性の低下を抑えることができると考えられる。しかしながら、前述の特許文献10、11または12に開示されているエナミン化合物の電荷輸送能力は充分でなく、これらのエナミン化合物を用いても、充分な感度および光応答性を得ることはできない。特に低温環境下では充分な光応答性が得られず、実使用上充分な画像濃度を有する画像を形成することはできない。また特許文献13に開示されている感光体のように、感光層にポリシランと特定の構造を有するエナミン化合物とを含有させることも考えられるけれども、ポリシランを用いた感光体は、光暴露に弱く、メンテナンス時などに光に曝されることによって感光体としての諸特性が低下するという別の問題がある。

すなわち、特許文献15に開示されている感光体の構成と、特許文献10、11、12または13に開示されている感光体の構成とを組合せても、感度および光応答性が高く、また環境の変動によるこれらの電気特性の変化が小さく環境安定性に優れるとともに、クリーニング性にも優れ、長期間に亘って高品質の画像を提供することのできる耐久性に優れる感光体を実現することはできない。

特公昭52−4188号公報
特開昭54−150128号公報
特公昭55−42380号公報
特開昭55−52063号公報
特公昭58−32372号公報
特開平2−190862号公報
特開昭54−151955号公報
特開昭58−198043号公報
特開平7−48324号公報
特開平2−51162号公報
特開平6−43674号公報
特開平10−69107号公報
特開平7−134430号公報
特開昭60−22131号公報
特開平11−311875号公報
崎寧昭、敏雄外;「Forkes式の拡張と高分子固体の表面張力の評価」、日本接着協会誌、日本接着協会、1972年、Vol.8、No.3、p.131−141

概要

感度および光応答性が高く、これらの電気特性が光暴露、環境変化および繰返し使用のいずれによっても低下せず、かつクリーニング性に優れ、形成される画像に画質低下を長期間に渡って生じることのない耐久性に優れる電子写真感光体を提供する。 電子写真感光体1において、感光層14に下記一般式(1)で示されるエナミン化合物、たとえば下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物を含有させるとともに、感光層14表面の表面自由エネルギー(γ)を、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下とする。

目的

本発明の目的は、感光層に特定の電荷輸送物質を含有させるとともに、表面の表面自由エネルギーを制御することによって、感度が高く、充分な光応答性を有し、これらの電気特性が光暴露および環境変化のいずれによっても、また繰返し使用されても低下せず、かつクリーニング性に優れ、長期の使用においても表面傷を発生しにくく、形成される画像に画質低下を生じることのない耐久性に優れる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

導電性基体および導電性基体上に設けられる感光層を備え、一様に帯電される感光層が画像情報に応じた光で露光されることによって静電潜像の形成される電子写真感光体において、前記感光層が、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有し、かつ表面の表面自由エネルギー(γ)が、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下であることを特徴とする電子写真感光体。(式中、Ar1およびAr2は、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar4およびAr5は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5が共に水素原子になることはない。Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。R1は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2,R3およびR4は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のR2は同一でも異なってもよく、複数のR3は同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基を示す。)

請求項2

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。(式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar4,Ar5,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

請求項3

前記表面自由エネルギー(γ)が、28.0mN/m以上、35.0mN/m以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真感光体。

請求項4

前記感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて構成されることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の電子写真感光体。

請求項5

請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体を画像情報に応じた光で露光することによって静電潜像を形成させる露光手段と、静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、トナー画像を電子写真感光体の表面から転写材転写する転写手段と、トナー画像が転写された後の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段とを備えることを特徴とする画像形成装置

技術分野

0001

本発明は、電子写真方式画像形成に用いられる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置に関する。

背景技術

0002

複写機プリンタまたはファクシミリ装置などとして用いられる電子写真方式の画像形成装置(以下、電子写真装置とも称する)では、以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。まず、装置に備わる電子写真感光体(以下、単に感光体とも称する)の感光層を、帯電器によって所定の電位に一様に帯電させ、露光手段から画像情報に応じて照射されるレーザ光などの光によって露光し、静電潜像を形成する。形成された静電潜像に対して現像手段から現像剤を供給し、感光体の表面に現像剤の成分であるトナーと呼ばれる着色された微粒子を付着させることによって静電潜像を現像し、トナー画像として顕像化する。形成されたトナー画像を、転写手段によって感光体の表面から記録紙などの転写材上に転写し、定着手段によって定着させる。

0003

転写手段による転写動作の際、感光体表面のトナーがすべて記録紙に転写して移行されるのではなく、一部が感光体表面に残留する。また転写時に感光体と接触する記録紙の紙粉が感光体表面に付着したまま残留することもある。このような感光体表面の残留トナーおよび付着紙粉などの異物は、形成される画像の品質に悪影響を及ぼすので、クリーニング装置によって除去される。また近年ではクリーナーレス化技術が進み、独立したクリーニング手段を有することなく現像手段に付加されるクリーニング機能によって残留トナーを回収する、いわゆる現像兼クリーニングシステムで除去している。このようにして感光体表面をクリーニングした後、除電器などによって感光層表面除電し、静電潜像を消失させる。

0004

このような電子写真プロセスに用いられる電子写真感光体は、導電性材料から成る導電性基体上に、光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成される。電子写真感光体としては、従来から、無機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、無機系感光体と称する)が用いられている。無機系感光体の代表的なものとしては、アモルファスセレン(a−Se)またはアモルファスセレンひ素(a−AsSe)などから成る層を感光層に用いたセレン系感光体酸化亜鉛化学式:ZnO)または硫化カドミウム(化学式:CdS)を色素などの増感剤とともに樹脂中に分散したものを感光層に用いた酸化亜鉛系または硫化カドミウム系感光体、およびアモルファスシリコン(a−Si)から成る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以下、a−Si感光体と称する)などがある。

0005

しかしながら、無機系感光体には以下のような欠点がある。セレン系感光体および硫化カドミウム系感光体は、耐熱性および保存安定性に問題がある。またセレンおよびカドミウム人体および環境に対する毒性を有するので、これらを用いた感光体は、使用後には回収され、適切に廃棄される必要がある。また酸化亜鉛系感光体は、低感度であって、かつ耐久性が低いという欠点があり、現在ではほとんど使用されていない。また、無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は、高感度および高耐久性などの長所を有する反面、プラズマ化学気相成長法を用いて製造されるので、感光層を均一に成膜することが難しく、画像欠陥が発生しやすいなどの短所を有する。またa−Si感光体は、生産性が低く、製造原価が高いという短所も有する。

0006

このように無機系感光体には多くの欠点があることから、電子写真感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み、従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて、有機系の光導電性材料、すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称:OPC)が多用されるようになっている。有機系光導電性材料を用いた電子写真感光体(以下、有機系感光体と称する)は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するけれども、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べ、多くの利点を有する。また有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このように多くの利点を有することから、有機系感光体は次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。また近年の研究開発によって、有機系感光体の感度および耐久性は向上されており、現在では、特別な場合を除き、電子写真感光体としては、有機系感光体が用いられるようになってきている。

0007

特に、有機系感光体の性能は、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって著しく改善されている。機能分離型感光体は、有機系感光体の有する前述の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。

0008

機能分離型感光体には積層型単層型とがあり、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生機能を担う電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送機能を担う電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて構成される積層型の感光層が設けられる。電荷発生層および電荷輸送層は、通常、電荷発生物質および電荷輸送物質がそれぞれ結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。また単層型の機能分散型感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質とがバインダ樹脂中に共に分散されて成る単層型の感光層が設けられる。

0009

機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料スクアリリウム色素アゾ顔料ペリレン顔料多環キノン顔料シアニン色素スクアリン酸染料およびピリリウム塩系色素などの多種の物質が検討され、耐光性が強く、電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。

0010

また、電荷輸送物質としては、たとえばピラゾリン化合物(たとえば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(たとえば、特許文献2、3および4参照)、トリフェニルアミン化合物(たとえば、特許文献5および6参照)およびスチルベン化合物(たとえば、特許文献7および8参照)などの種々の化合物が知られている。最近では、縮合多環式炭化水素を中心母核に持つ、ピレン誘導体ナフタレン誘導体およびターフェニル誘導体(たとえば、特許文献9参照)なども開発されている。

0011

電荷輸送物質には、
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(化学式:NOx)および硝酸などの活性物質に対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤およびバインダ樹脂との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。しかしながら、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質は、これらの要求の一部を満足するけれども、すべてを高いレベルで満足するには至っていない。

0012

また、近年では、デジタル複写機およびプリンタなどの電子写真装置に対する小型化および高速化の要求に対応し、感光体特性として高感度化が要求されており、電荷輸送物質には、特に高い電荷輸送能力が求められている。また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性に優れる感光体が求められる。感光体の光応答性が低い、すなわち露光後の表面電位減衰速度が遅いと、残留電位が上昇し、表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになるので、消去されるべき部分の表面電荷が露光によって充分に消去されず、早期に画像品質が低下するなどの弊害が生じる。機能分離型感光体では、光吸収によって電荷発生物質で発生した電荷が、電荷輸送物質によって感光層表面に輸送されることによって、光が照射された部分の感光体の表面電荷が消去されるので、光応答性は電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存する。したがって、充分な光応答性を有する感光体を実現するという観点からも、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められる。

0013

このような要求を満たす電荷輸送物質として、前述の特許文献1〜9などに開示の電荷輸送物質よりも高い電荷輸送能力を有するエナミン化合物が提案されている(たとえば、特許文献10、11および12参照)。また別の従来技術では、感光体の正孔輸送能を向上させるために、感光層にポリシランと特定の構造を有するエナミン化合物とを含有させることが提案されている(たとえば、特許文献13参照)。

0014

また、電子写真装置では、感光体に対して、前述の帯電、露光、現像、転写、クリーニングおよび除電の動作が繰返し実行されるので、感光体には、感度が高いことおよび光応答性に優れることに加えて、電気的および機械的外力に対する耐久性に優れることが求められる。具体的には、感光体の表面層に対して、クリーニング部材などによる摺擦によって磨耗および傷が発生せず、また帯電時の放電で発生するオゾンおよびNOxなどの活性物質の付着によって劣化しないことが求められる。

0015

すなわち、電子写真装置の低コスト化およびメンテナンスフリーを実現するためには、電子写真感光体が、充分な耐久性を有し、長期間安定して動作し得ることが重要となる。このような耐久性および動作の長期安定性を左右する要因の1つに、表面のクリーニング性すなわちクリーニングされ易さがあり、クリーニングされ易さには、電子写真感光体の表面状態が関係する。

0016

電子写真感光体のクリーニングとは、電子写真感光体表面と、付着している残留トナーおよび紙粉などの異物との間の付着力を超える力を、異物に作用させて電子写真感光体の表面から付着物を除去することである。したがって、電子写真感光体表面の濡れ性が低いほどクリーニングし易いということができる。電子写真感光体表面の濡れ性すなわち付着力は、表面自由エネルギー表面張力同義)を指標として表すことができる。

0017

表面自由エネルギー(γ)とは、物質を構成する分子間に作用する力である分子間力が最表面において起こす現象である。

0018

電子写真感光体の表面にトナーが固着、融着して転写材に転写されずに残留したトナーが、帯電からクリーニングに至る工程を繰返し経ているうち、電子写真感光体の表面に被膜状に広がる現象は、濡れ性のうち「付着濡れ」に相当する。また紙粉、ロジンタルクなどが固着し、その後電子写真感光体との接触面積が増大して強固な濡れになる現象も同様に「付着濡れ」に相当する。

0019

図17は、付着濡れの状態を例示する側面図である。図17に示す付着濡れにおいて、濡れ性と表面自由エネルギー(γ)との関係は、以下に示すYoungの式(I)によって表される。

0020

γ1=γ2・cosθ+γ12 …(I)
ここで、γ1:物質1表面の表面自由エネルギー
γ2:物質2表面の表面自由エネルギー
γ12:物質1と物質2との界面自由エネルギー
θ:物質1に対する物質2の接触角

0021

式(I)より、物質1に対する物質2の濡れ性の低減、すなわちθを大きくして濡れにくくすることは、電子写真感光体と異物との濡れ仕事に関連する界面自由エネルギーγ12を大きくし、各表面自由エネルギーγ1およびγ2を小さくすることによって達成される。

0022

式(I)において、電子写真感光体の表面への異物、水分等の付着を考える場合、物質1を電子写真感光体、物質2を異物とすればよい。したがって、実際の電子写真感光体をクリーニングする場合、電子写真感光体の表面自由エネルギーγ1を制御することにより、式(I)右辺の濡れ性すなわち電子写真感光体に対する異物であるトナーおよび紙粉などの付着状態を制御することができる。

0023

そこで電子写真感光体の表面状態を規定する従来技術には、純水との接触角を用いるものがある(たとえば、特許文献14参照)。しかしながら、固体液体との濡れに関しては、前述の図17に示すようにその接触角θを測定することができるけれども、電子写真感光体とトナー、電子写真感光体と紙粉などのように、固体と固体との場合には、接触角θを測定することができない。したがって特許文献14に開示の技術は、電子写真感光体表面と純水との間における濡れ性については適用できるけれども、現像剤を構成するトナー、紙粉などの固体に対する濡れ性およびクリーニング性との関係については充分に説明することができない。

0024

固体同士の間における濡れ性は、固体と固体との間の界面自由エネルギーによって表すことができる。固体と固体との間の界面自由エネルギーについては、非極性な分子間力について述べたForkes理論を、さらに極性、または水素結合性の分子間力による成分まで拡張できるとされている(非特許文献1参照)。この拡張Forkes理論によれば、各物質の表面自由エネルギーは2〜3成分で求められる。前述の電子写真感光体表面に対するトナーおよび紙粉の付着に該当する付着濡れの場合における表面自由エネルギーについては、3成分で求めることができる。

0025

以下固体物質間における表面自由エネルギーについて説明する。拡張Forkes理論では、下記式(II)に示す表面自由エネルギーの加算則が成立つものと仮定する。

0026

γ=γd+γp+γh …(II)
ここで、γd:双極子成分(極性による濡れ)
γp:分散成分(非極性の濡れ)
γh:水素結合成分水素結合による濡れ)

0027

式(II)の加算則をForkes理論に適用すると、ともに固体である物質1と物質2との間の界面自由エネルギーγ12は、下記式(III)のように求められる。

0028

γ12=γ1+γ2−{2√(γ1d・γ2d)+
2√(γ1p+γ2p)+2√(γ1h+γ2h)}
…(III)
ここで、γ1:物質1の表面自由エネルギー
γ2:物質2の表面自由エネルギー
γ1d,γ2d:物質1,物質2の双極子成分
γ1p,γ2p:物質1,物質2の分散成分
γ1h,γ2h:物質1,物質2の水素結合成分

0029

被測定対象の固体物質における前述の式(II)に示す各成分の表面自由エネルギー(γd,γp,γh)は、各成分の表面自由エネルギーが既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって算出できる。したがって、物質1および物質2のそれぞれについて、各成分の表面自由エネルギーを求め、さらに各成分の表面自由エネルギーから式(III)によって物質1と物質2との界面自由エネルギーを求めることができる。

0030

このようにして求められる固体と固体との間の界面自由エネルギーの考え方に基づいて、別の従来技術では、電子写真感光体の表面自由エネルギーを指標として電子写真感光体表面とトナーなどとの濡れ性の制御を行なっている(特許文献15参照)。特許文献15には、表面自由エネルギーを35乃至65mN/mの範囲に規定することによって、電子写真感光体表面のクリーニング性を向上し、長寿命化の実現されることが開示されている。

0031

しかしながら、本発明者らの調査によれば、特許文献15に開示される範囲の表面自由エネルギーを有する電子写真感光体を用いて、たとえば記録紙に対して実際に画像形成する実写性能試験を行ったところ、電子写真感光体表面において、紙粉などの異物との接触によると思われる傷の発生が確認された。またその傷に起因するクリーニング不良によって、記録紙に転写された画像上に黒すじが発生することを確認した。前述のような電子写真感光体表面に発生する傷は、表面自由エネルギーが大きくなるのに伴って顕著になる傾向があった。

0032

さらに別の従来技術においては、電子写真感光体の耐久にともなう表面自由エネルギーの変化量(Δγ)を規定しているけれども、電子写真感光体の初期特性たとえば表面自由エネルギーを規定することによっては変化量Δγを定められないこと、また画像形成する際の環境および転写材の材質などの諸条件に依存して変化量Δγが変化することを考慮すると、実際の電子写真感光体の設計において、変化量Δγは不確定な要素を多分に含み設計基準として適さないという問題がある。

0033

また、有機系感光体において、特許文献15に開示の技術のように感光体表面の表面自由エネルギーを制御するためには、表面層である感光層に用いられるバインダ樹脂の種類および配合量を調整することが必要であるけれども、バインダ樹脂の種類および配合量によっては、感光体の感度および光応答性が低下するという問題が生じる。

0034

感光体の感度および光応答性は、前述のように電荷輸送物質の電荷輸送能力に依存するので、電荷輸送能力の高い電荷輸送物質を用いれば、感度および光応答性の低下を抑えることができると考えられる。しかしながら、前述の特許文献10、11または12に開示されているエナミン化合物の電荷輸送能力は充分でなく、これらのエナミン化合物を用いても、充分な感度および光応答性を得ることはできない。特に低温環境下では充分な光応答性が得られず、実使用上充分な画像濃度を有する画像を形成することはできない。また特許文献13に開示されている感光体のように、感光層にポリシランと特定の構造を有するエナミン化合物とを含有させることも考えられるけれども、ポリシランを用いた感光体は、光暴露に弱く、メンテナンス時などに光に曝されることによって感光体としての諸特性が低下するという別の問題がある。

0035

すなわち、特許文献15に開示されている感光体の構成と、特許文献10、11、12または13に開示されている感光体の構成とを組合せても、感度および光応答性が高く、また環境の変動によるこれらの電気特性の変化が小さく環境安定性に優れるとともに、クリーニング性にも優れ、長期間に亘って高品質の画像を提供することのできる耐久性に優れる感光体を実現することはできない。

0036

特公昭52−4188号公報
特開昭54−150128号公報
特公昭55−42380号公報
特開昭55−52063号公報
特公昭58−32372号公報
特開平2−190862号公報
特開昭54−151955号公報
特開昭58−198043号公報
特開平7−48324号公報
特開平2−51162号公報
特開平6−43674号公報
特開平10−69107号公報
特開平7−134430号公報
特開昭60−22131号公報
特開平11−311875号公報
崎寧昭、敏雄外;「Forkes式の拡張と高分子固体の表面張力の評価」、日本接着協会誌、日本接着協会、1972年、Vol.8、No.3、p.131−141

発明が解決しようとする課題

0037

本発明の目的は、感光層に特定の電荷輸送物質を含有させるとともに、表面の表面自由エネルギーを制御することによって、感度が高く、充分な光応答性を有し、これらの電気特性が光暴露および環境変化のいずれによっても、また繰返し使用されても低下せず、かつクリーニング性に優れ、長期の使用においても表面傷を発生しにくく、形成される画像に画質低下を生じることのない耐久性に優れる電子写真感光体およびそれを備える画像形成装置を提供することである。

課題を解決するための手段

0038

本発明は、導電性基体および導電性基体上に設けられる感光層を備え、一様に帯電される感光層が画像情報に応じた光で露光されることによって静電潜像の形成される電子写真感光体において、
前記感光層が、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含有し、
かつ表面の表面自由エネルギー(γ)が、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下であることを特徴とする電子写真感光体である。

0039

0040

(式中、Ar1およびAr2は、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar4およびAr5は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5が共に水素原子になることはない。Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。R1は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2,R3およびR4は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のR2は同一でも異なってもよく、複数のR3は同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基を示す。)

0041

また本発明は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物であることを特徴とする。

0042

0043

(式中、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar4,Ar5,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0044

また本発明は、前記表面自由エネルギー(γ)が、28.0mN/m以上、35.0mN/m以下であることを特徴とする。

0045

また本発明は、前記感光層は、
電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて構成されることを特徴とする。

0046

また本発明は、前記電子写真感光体と、
電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された電子写真感光体を画像情報に応じた光で露光することによって静電潜像を形成させる露光手段と、
静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段と、
トナー画像を電子写真感光体の表面から転写材へ転写する転写手段と、
トナー画像が転写された後の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。

発明の効果

0047

本発明によれば、電子写真感光体の感光層には、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物が電荷輸送物質として含有される。また電子写真感光体の表面は、表面自由エネルギー(γ)が、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下、好ましくは28.0mN/m以上、35.0mN/m以下になるように設定される。ここで言う電子写真感光体表面の表面自由エネルギーは、前述したForkesの拡張理論により算出導き出したものである。

0048

電子写真感光体表面の表面自由エネルギーは、電子写真感光体の表面に対するたとえば現像剤、紙粉などの濡れ性すなわち付着力の指標である。電子写真感光体表面の表面自由エネルギーを前記好適な範囲に設定することによって、特に現像剤に対しては現像に必要な程度の付着力を発現するにも関らず過度の付着力を抑制し、また紙粉等の異物に対する付着力を抑制することができるので、電子写真感光体表面から過剰の現像剤などの異物が除去され易くなる。このようにして、現像性能を低下させることなく、クリーニング性能を向上させることが可能になる。したがって、表面に付着する異物による傷が発生しにくいので寿命が長く、長期間安定して形成画像品質低下を生じさせることのない耐久性に優れる電子写真感光体が実現される。

0049

また、感光層に含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有する。また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、特に高い電荷輸送能力を有する。したがって、電子写真感光体の表面の表面自由エネルギーを前記範囲に設定するとともに、感光層に前記一般式(1)で示されるエナミン化合物、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を含有させることによって、感度が高く、充分な光応答性を有し、これらの電気特性が光暴露および環境変化のいずれによっても、また繰返し使用されても低下せず、かつクリーニング性に優れ、長期の使用においても表面傷を発生しにくく、形成される画像に画質低下を生じることのない耐久性に優れる電子写真感光体が実現される。

0050

このように本発明によれば、電気特性、環境安定性およびクリーニング性のいずれにも優れる電子写真感光体を提供することが可能になる。

0051

また本発明によれば、電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて構成される。このように、感光層を複数層が積層されて構成される積層型にすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、電子写真感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。また前述のように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層を構成する材料として電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、特に高い感度を有する電子写真感光体が実現される。

0052

また本発明によれば、画像形成装置には、電気特性、環境安定性およびクリーニング性のいずれにも優れる電子写真感光体が備えられる。したがって、各種の環境下において長期間に亘り安定して画質低下のない画像形成が可能であり、かつ低コストメンテナンス頻度の少ない画像形成装置が提供される。また画像形成装置に備わる電子写真感光体の電気特性は、光に曝されても低下しないので、メンテナンス時などに電子写真感光体が光に曝されることに起因する画質の低下が抑えられる。

発明を実施するための最良の形態

0053

図1は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の電子写真感光体1(以下、感光体と略称する)は、導電性材料から成る円筒状の導電性基体11と、導電性基体11の外周面上に積層される層であって電荷発生物質を含有する電荷発生層12と、電荷発生層12の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含有する電荷輸送層13とを含む。電荷発生層12と電荷輸送層13とは、感光層14を構成する。すなわち、感光体1は、積層型感光体である。

0054

導電性基体11は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに他の各層12,13の支持部材としても機能する。なお導電性基体11の形状は、本実施形態では円筒状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、シート状または無端ベルト状などであってもよい。

0055

導電性基体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛チタンなどの金属単体アルミニウム合金ステンレス鋼などの合金を用いることができる。またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレートナイロンもしくはポリスチレンなどの高分子材料硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔ラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子酸化スズ酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。これらの導電性材料は所定の形状に加工されて使用される。

0056

導電性基体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理薬品もしくは熱水などによる表面処理着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザ露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体表面で反射されたレーザ光と感光体内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。導電性基体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。

0057

電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などを挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が組合わされて使用されてもよい。

0058

前述の電荷発生物質の中でも、下記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用いることが好ましい。

0059

0060

前記一般式(A)において、X1,X2,X3およびX4は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、r,s,yおよびzは、それぞれ0〜4の整数を示す。

0061

前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、高い電荷発生効率と高い電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質に効率よく注入する。また後述するように、本実施の形態では、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質には、一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が使用されるので、光吸収によって電荷発生物質である前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物で発生する電荷は、電荷輸送物質である一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示されるエナミン化合物に効率的に注入され、感光層14表面に円滑に輸送される。したがって、電荷発生物質として前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用い、電荷輸送物質として後述する一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示されるエナミン化合物を用いることによって、高感度かつ高解像度の感光体1が実現される。

0062

前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、たとえばモーザ(Moser)およびトーマス(Thomas)による「フタロシアニン化合物(Phthalocyanine
Compounds)」に記載されている方法などの従来公知の製造方法によって製造することができる。たとえば、前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物のうち、X1,X2,X3およびX4が共に水素原子であるオキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリル四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα−クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニウムフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。またイソインドリンテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、オキソチタニウムフタロシアニンを製造することができる。

0063

電荷発生物質は、メチルバイオレットクリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料エリスロシンローダミンBローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。

0064

電荷発生層12の形成方法としては、前述の電荷発生物質を導電性基体11の表面に真空蒸着する方法、または前述の電荷発生物質を適当な溶剤中に分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法などが用いられる。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散して電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体11の表面に塗布する方法が好適に用いられる。以下、この方法について説明する。

0065

電荷発生層12に用いられるバインダ樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂ポリスチレン樹脂ポリウレタン樹脂フェノール樹脂アルキッド樹脂メラミン樹脂エポキシ樹脂シリコーン樹脂アクリル樹脂メタクリル樹脂ポリカーボネート樹脂ポリアリレート樹脂フェノキシ樹脂ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。共重合体樹脂の具体例としては、たとえば塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。

0066

電荷発生層用塗布液の溶剤には、たとえばジクロロメタンもしくはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素アセトンメチルエチルケトンもしくはシクロヘキサノンなどのケトン類酢酸エチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類テトラヒドロフランもしくはジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールアルキルエーテル類ベンゼントルエンもしくはキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N−ジメチルホルムアミドもしくはN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて混合溶剤として使用されてもよい。

0067

電荷発生物質とバインダ樹脂とを含んで構成される電荷発生層12において、電荷発生物質の重量W1とバインダ樹脂の重量W2との比率W1/W2は、100分の10(10/100)以上100分の99(99/100)以下であることが好ましい。前記比率W1/W2が10/100未満であると、感光体1の感度が低下する。前記比率W1/W2が99/100を超えると、電荷発生層12の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大するので、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。したがって、前記比率W1/W2の好適な範囲を、10/100以上、99/100以下とした。

0068

電荷発生物質は、バインダ樹脂溶液中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミルサンドミルアトライタ振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。

0069

電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物混入が起こらないように適当な条件を選択する。

0070

電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法バーコート法ロールコート法ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法のうちから、塗布の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を選択することができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。

0071

電荷発生層12の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層12の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下する。電荷発生層12の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層14の表面電荷を消去する過程律速段階となり、感光体1の感度が低下する。したがって、電荷発生層12の膜厚の好適な範囲を、0.05μm以上、5μm以下とした。

0072

電荷発生層12上には電荷輸送層13が設けられる。電荷輸送層13は、電荷発生層12に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含んで構成することができる。本実施の形態では、電荷輸送物質として、下記一般式(1)で示されるエナミン化合物が用いられる。

0073

0074

前記一般式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。Ar4およびAr5は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を示す。ただし、Ar4およびAr5が共に水素原子になることはない。Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは1〜6の整数を示す。mが2以上のとき、複数のaは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。R1は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を示す。R2,R3およびR4は、それぞれ水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。nは0〜3の整数を示し、nが2または3のとき、複数のR2は同一でも異なってもよく、複数のR3は同一でも異なってもよい。ただし、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基を示す。

0075

前記一般式(1)において、Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,a,R2,R3またはR4の示すアリール基の具体例としては、たとえばフェニルナフチルピレニルおよびアントリルなどを挙げることができる。これらのアリール基が有することのできる置換基としては、たとえばメチルエチルプロピルおよびトリフルオロメチルなどのアルキル基、2−プロペニルおよびスチリルなどのアルケニル基メトキシエトキシおよびプロポキシなどのアルコキシ基、メチルアミノおよびジメチルアミノなどのアミノ基、フルオロクロロおよびブロモなどのハロゲン基、フェニルおよびナフチルなどのアリール基、フェノキシなどのアリールオキシ基、ならびにチオフェノキシなどのアリールチオ基などを挙げることができる。このような置換基を有するアリール基の具体例としては、たとえばトリルメトキシフェニルビフェニリルテルフェニルフェノキシフェニル、p−(フェニルチオ)フェニルおよびp−スチリルフェニルなどを挙げることができる。

0076

前記一般式(1)において、Ar1,Ar2,Ar3,Ar4,Ar5,R2,R3またはR4の示す複素環基の具体例としては、たとえばフリルチエニルチアゾリルベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリルおよびベンゾオキサゾリルなどを挙げることができる。これらの複素環基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有する複素環基の具体例としては、たとえばN−メチルインドリルおよびN−エチルカルバゾリルなどを挙げることができる。

0077

前記一般式(1)において、Ar3,Ar4,Ar5,R2,R3またはR4の示すアラルキル基の具体例としては、たとえばベンジルおよび1−ナフチルメチルなどを挙げることができる。これらのアラルキル基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアラルキル基の具体例としては、たとえばp−メトキシベンジルなどを挙げることができる。

0078

前記一般式(1)において、Ar3,Ar4,Ar5,a,R1,R2,R3またはR4の示すアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、具体例としては、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルなどの鎖状アルキル基、ならびにシクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのシクロアルキル基などを挙げることができる。これらのアルキル基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアルキル基の具体例としては、たとえばトリフルオロメチルおよびフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、1−メトキシエチルなどのアルコキシアルキル基、ならびに2−チエニルメチルなどの複素環基で置換されたアルキル基などを挙げることができる。

0079

前記一般式(1)において、aの示すアルコキシ基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどを挙げることができる。これらのアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。

0080

前記一般式(1)において、aの示すジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたものが好ましく、具体例としては、たとえばジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどを挙げることができる。これらのジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。

0081

前記一般式(1)において、aまたはR1の示すハロゲン原子の具体例としては、たとえばフッ素原子および塩素原子などを挙げることができる。

0082

前記一般式(1)において、Ar4とAr5とを結合する原子の具体例としては、たとえば酸素原子硫黄原子および窒素原子などを挙げることができる。窒素原子は、たとえばイミノ基またはN−アルキルイミノ基などの2価基としてAr4とAr5とを結合する。Ar4とAr5とを結合する原子団の具体例としては、たとえばメチレン、エチレンおよびメチルメチレンなどのアルキレン基ビニレンおよびプロペニレンなどのアルケニレン基オキシメチレン(化学式:−O−CH2−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基、ならびにチオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含むアルケニレン基などの2価基などを挙げることができる。

0083

電荷輸送物質には、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、下記一般式(2)で示されるエナミン化合物が好適に用いられる。

0084

0085

前記一般式(2)において、b,cおよびdは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を示し、i,kおよびjは、それぞれ1〜5の整数を示す。iが2以上のとき、複数のbは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またkが2以上のとき、複数のcは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。またjが2以上のとき、複数のdは、同一でも異なってもよく、互いに結合して環構造を形成してもよい。Ar4,Ar5,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。

0086

前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアルキル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、具体例としては、たとえばメチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルなどの鎖状アルキル基、ならびにシクロヘキシルおよびシクロペンチルなどのシクロアルキル基などを挙げることができる。これらのアルキル基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアルキル基の具体例としては、たとえばトリフルオロメチルおよびフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、1−メトキシエチルなどのアルコキシアルキル基、ならびに2−チエニルメチルなどの複素環基で置換されたアルキル基などを挙げることができる。

0087

前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアルコキシ基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、具体例としては、たとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびイソプロポキシなどを挙げることができる。これらのアルコキシ基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。

0088

前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたものが好ましく、具体例としては、たとえばジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびジイソプロピルアミノなどを挙げることができる。これらのジアルキルアミノ基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができる。

0089

前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すアリール基の具体例としては、たとえばフェニルおよびナフチルなどを挙げることができる。これらのアリール基が有することのできる置換基としては、前述のAr1などの示すアリール基が有することのできる置換基と同様の置換基を挙げることができ、置換基を有するアリール基の具体例としては、たとえばトリルおよびメトキシフェニルなどを挙げることができる。

0090

前記一般式(2)において、b,cまたはdの示すハロゲン原子の具体例としては、たとえばフッ素原子および塩素原子などを挙げることができる。

0091

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有する。また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、特に高い電荷輸送能力を有する。したがって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質として電荷輸送層13に含有させることによって、感度が高く、光応答性および帯電性に優れ、高速の電子写真プロセスに対応可能な感光体1を実現することができる。このような感光体1の良好な電気特性は、感光体1の周囲の環境、たとえば温度、湿度が変化しても維持され、また繰返し使用されても低下せず維持される。すなわち、良好な電気特性を有し、かつ環境安定性および電気的耐久性に優れる感光体1が実現される。このように、感光体1は、環境安定性に優れるので、低温環境下においても充分な光応答性を有し、充分な画像濃度を有する画像を提供することができる。

0092

また、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質に用いることによって、前述のように良好な電気特性を有する感光体1を、電荷輸送層13にポリシランを含有させることなく実現することができるので、光に曝された場合であっても電気特性の低下することのない感光体1が得られる。

0093

また、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物は、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の中でも、合成が比較的容易であり、かつ収率が高いので、安価に製造することができる。したがって、前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質に用いることによって、前述のように良好な電気特性を有する感光体1を低い製造原価で製造することができる。

0094

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、Ar1およびAr2が共にフェニル基であり、Ar3がフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基ナフチル基またはチエニル基であり、Ar4およびAr5のうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R1,R2,R3およびR4が共に水素原子であり、nが1であるものを挙げることができる。

0095

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表32に示す例示化合物No.1〜No.220を挙げることができるけれども、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、これらに限定されるものではない。なお、表1〜表32では、各例示化合物を前記一般式(1)の各基に対応する基で表している。たとえば、表1に示す例示化合物No.1は、下記構造式(1−1)で示されるエナミン化合物である。ただし、表1〜表32において、Ar4およびAr5が原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成したものを例示する場合には、Ar4の欄からAr5の欄に渡って、Ar4およびAr5が結合する炭素炭素二重結合と、その炭素−炭素二重結合の炭素原子と共にAr4およびAr5が形成する環構造とを合わせて示す。

0096

0097

0098

0099

0100

0101

0102

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0104

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0121

0122

0123

0124

0125

0126

0127

0128

0129

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば以下のようにして製造することができる。

0130

まず、下記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、下記一般式(4)で示される2級アミン化合物との脱水縮合反応を行うことによって、下記一般式(5)で示されるエナミン中間体を製造する。

0131

0132

(式中、Ar1,Ar2およびR1は、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0133

0134

(式中、Ar3,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0135

0136

(式中、Ar1,Ar2,Ar3,R1,aおよびmは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0137

この脱水縮合反応は、たとえば以下のように行う。前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物と、これと略等モル量の前記一般式(4)で示される2級アミン化合物とを、芳香族系溶媒アルコール類またはエーテル類などの溶媒に溶解させ、溶液を調製する。用いる溶媒の具体例としては、たとえばトルエン、キシレン、クロロベンゼンブタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。調製した溶液中に、触媒、たとえばp−トルエンスルホン酸カンファースルホン酸またはピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を加え、加熱下で反応させる。触媒の添加量は、前記一般式(3)で示されるアルデヒド化合物またはケトン化合物に対して、10分の1(1/10)〜1000分の1(1/1000)モル当量であることが好ましく、より好ましくは25分の1(1/25)〜500分の1(1/500)モル当量であり、50分の1(1/50)〜200分の1(1/200)モル当量が最適である。反応中、水が副成し反応を妨げるので、生成した水を溶媒と共沸させ系外に取除く。これによって、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。

0138

次に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化またはフリーデルクラフト反応によるアシル化を行うことによって、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体を製造する。このとき、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R5が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を製造することができ、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うと、下記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R5が水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を製造することができる。

0139

0140

(式中、R5は、前記一般式(1)において、nが0のときR4を示し、nが1,2または3のときR2を示す。Ar1,Ar2,Ar3,R1,R2,R4,a,mおよびnは、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0141

ビルスマイヤー反応は、たとえば以下のように行う。N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−Dimethylformamide;略称:DMF)または1,2−ジクロロエタンなどの溶媒中に、オキシ塩化リンとN,N−ジメチルホルムアミド、オキシ塩化リンとN−メチル−N−フェニルホルムアミド、またはオキシ塩化リンとN,N−ジフェニルホルムアミドとを加え、ビルスマイヤー試薬を調製する。調製したビルスマイヤー試薬1.0当量〜1.3当量に、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R5が水素原子であるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。

0142

また、フリーデル−クラフト反応は、たとえば以下のように行う。1,2−ジクロロエタンなどの溶媒中に、塩化アルミニウム酸塩化物とによって調製した試薬1.0当量〜1.3当量と、前記一般式(5)で示されるエナミン中間体1.0当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。このとき、場合によっては加熱する。その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体のうち、R5が水素原子以外の基であるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。

0143

最後に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体と下記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させるWittig−Horner反応を行うことによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を製造することができる。このとき、下記一般式(7−1)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが0であるものを得ることができ、下記一般式(7−2)で示されるWittig試薬を用いると、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物のうち、nが1,2または3であるものを得ることができる。

0144

0145

(式中、R6は、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。Ar4およびAr5は、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0146

0147

(式中、R6は、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。nは1〜3の整数を示す。Ar4,Ar5,R2,R3およびR4は、前記一般式(1)において定義したものと同義である。)

0148

このWittig−Horner反応は、たとえば以下のように行う。トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;略称:THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの溶媒中に、前記一般式(6)で示されるエナミン−カルボニル中間体1.0当量と、前記一般式(7−1)または(7−2)で示されるWittig試薬1.0〜1.20当量と、カリウムt−ブトキサイドナトリウムエトサイドまたはナトリウムメトキサイドなどの金属アルコキシド塩基1.0〜1.5当量とを加え、室温または30〜60℃の加熱下で、2〜8時間撹拌する。これによって、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。

0149

前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、たとえば前述の表1〜表32に示す例示化合物からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。

0150

また前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されてもよい。前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と混合されて使用される他の電荷輸送物質としては、カルバゾール誘導体オキサゾール誘導体オキサジアゾール誘導体チアゾール誘導体チアジアゾール誘導体トリアゾール誘導体イミダゾール誘導体イミダゾロン誘導体イミダゾリジン誘導体ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物インドール誘導体ピラゾリン誘導体オキサゾロン誘導体ベンズイミダゾール誘導体キナゾリン誘導体ベンゾフラン誘導体アクリジン誘導体フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体トリアリールアミン誘導体トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリN−ビニルカルバゾール)、ポリ(1−ビニルピレン)およびポリ(9−ビニルアントラセン)なども挙げられる。

0151

このように前記一般式(1)で示されるエナミン化合物と他の電荷輸送物質とを混合して用いる場合、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物以外の電荷輸送物質の割合が多すぎると、電荷輸送層13の電荷輸送能力が不足し、感光体1の感度および光応答性が充分に得られないことがあるので、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物が主成分として含有される混合物を電荷輸送物質に用いることが好ましい。

0152

電荷輸送層13を構成するバインダ樹脂には、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。またこれらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。前述の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、好適に用いられる。

0153

電荷輸送層13において、電荷輸送物質として含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比率A/Bは、30分の10(10/30)以上12分の10(10/12)以下であることが好ましい。前記比率A/Bを10/30以上10/12以下とし、バインダ樹脂を高い比率で電荷輸送層13に含有させることによって、電荷輸送層13の耐刷性を向上させ、感光体1の耐久性を向上させることができる。

0154

このように、前記比率A/Bを10/12以下とし、バインダ樹脂の比率を高くすると、結果として電荷輸送物質として含有される前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の比率が低下する。従来公知の電荷輸送物質を用いた場合に、電荷輸送層13における電荷輸送物質の重量とバインダ樹脂の重量との比率(電荷輸送物質/バインダ樹脂)を同様に10/12以下とすると、光応答性が不足し、画像欠陥の生じることがある。しかしながら、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物は、高い電荷輸送能力を有するので、前記比率A/Bを10/12以下とし、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の比率を低くしても、感光体1は、充分に高い光応答性を有し、高品質の画像を提供することができる。

0155

したがって、前記比率A/Bを10/30以上10/12以下とすることによって、感度および光応答性が高く、かつ耐久性に優れる感光体1を実現することができる。

0156

なお、前記比率A/Bが10/12を超え、バインダ樹脂の比率が低くなり過ぎると、感光層14の摩耗量が多くなり、感光体1の帯電性が低下する。また前記比率A/Bが10/30未満であり、バインダ樹脂の比率が高くなり過ぎると、感光体1の感度が低下する。また電荷輸送層13を浸漬塗布法によって形成する場合には、塗布液の粘度が増大し、塗布速度が低下するので、生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層13に白濁が発生する。したがって、前記比率A/Bの好適な範囲を、10/30以上、10/12以下とした。

0157

電荷輸送層13には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。たとえば、成膜性、可撓性または表面平滑性を向上させるために、可塑剤またはレベリング剤などを電荷輸送層13に添加してもよい。可塑剤としては、たとえばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル脂肪酸エステルリン酸エステル塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、たとえばシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。

0158

また機械的強度の増強および電気特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を電荷輸送層13に添加してもよい。

0159

電荷輸送層13は、前述の電荷発生層12を塗布によって形成する場合と同様に、たとえば適当な溶媒中に、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質およびバインダ樹脂、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層12上に塗布することによって形成される。

0160

電荷輸送層用塗布液の溶剤としては、たとえばベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。また前述の溶媒に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶媒をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。

0161

電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように種々の点で優れているので、電荷輸送層13を形成する場合にも多く利用されている。

0162

電荷輸送層13の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層13の膜厚が5μm未満であると、帯電保持能が低下する。電荷輸送層13の膜厚が50μmを超えると、感光体1の解像度が低下する。したがって、電荷輸送層13の膜厚の好適な範囲を、5μm以上、50μm以下とした。

0163

以上のようにして形成される電荷発生層12と電荷輸送層13とが積層されて、感光層14が構成される。このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層を構成する材料として電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、特に高い感度を有する感光体1が実現される。

0164

感光層14の各層、すなわち電荷発生層12および電荷輸送層13には、感度の向上を図り、繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などを抑えるために、電子受容物質および色素などの増感剤を1種または2種以上添加してもよい。

0165

電子受容物質としては、たとえば無水コハク酸無水マレイン酸無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレンテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアトラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。

0166

色素としては、たとえばキサンテン系色素チアジン色素トリフェニルメタン色素キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。

0167

また感光層14の各層12,13には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加してもよい。特に電荷輸送層13には、酸化防止剤または紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。これによって、電位特性を向上させることができる。また各層を塗布によって形成する際の塗布液の安定性を高めることができる。また感光体1の繰返し使用による疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。

0168

酸化防止剤としては、フェノール系化合物ハイドロキノン系化合物トコフェロール系化合物またはアミン系化合物などが用いられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体もしくはヒンダードアミン誘導体、またはこれらの混合物が好適に用いられる。これらの酸化防止剤の使用量は、合計で、電荷輸送物質100重量部当たり、0.1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。酸化防止剤の電荷輸送物質100重量部当たりの使用量が0.1重量部未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができず、また50重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。したがって、酸化防止剤の使用量の好適な範囲を、電荷輸送物質100重量部当たり、0.1重量部以上50重量部以下とした。

0169

図2は、本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の電子写真感光体2は、実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。

0170

電子写真感光体2において注目すべきは、導電性基体11と感光層14との間に、中間層15が設けられていることである。

0171

導電性基体11と感光層14との間に中間層15がない場合、導電性基体11から感光層14に電荷が注入され、感光層14の帯電性が低下し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像にかぶりなどの欠陥の発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷の減少した部分にトナーが付着してトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化の生じることがある。すなわち、導電性基体11と感光層14との間に中間層15がない場合、導電性基体11または感光層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ぽちなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となることがある。

0172

本実施形態の電子写真感光体2では、前述のように導電性基体11と感光層14との間には中間層15が設けられているので、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。

0173

また中間層15を設けることによって、導電性基体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また感光層14の導電性基体11からの剥離を抑え、導電性基体11と感光層14との接着性を向上させることができる。

0174

中間層15には、各種樹脂材料から成る樹脂層またはアルマイト層などが用いられる。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。また、カゼインゼラチンポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロンおよび12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的変性させた樹脂などを挙げることができる。

0175

中間層15は、金属酸化物粒子などの粒子を含有してもよい。中間層15にこれらの粒子を含有させることによって、中間層15の体積抵抗値を調節し、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入を防止する効果を高めることができるとともに、各種の環境下において感光体の電気特性を維持することができる。

0176

金属酸化物粒子としては、たとえば酸化チタン酸化アルミニウム水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。

0177

中間層15は、たとえば前述の樹脂を適当な溶剤中に溶解または分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布することによって形成される。中間層15に前述の金属酸化物粒子などの粒子を含有させる場合には、たとえば前述の樹脂を適当な溶剤に溶解させて得られる樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布することによって中間層15を形成することができる。

0178

中間層用塗布液の溶剤には、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。たとえば、水、メタノールエタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が用いられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。

0179

前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機またはペイントシェーカなどを用いる一般的な方法を使用することができる。

0180

中間層用塗布液中において、樹脂および金属酸化物合計重量Cと、中間層用塗布液に使用されている溶剤の重量Dとの比率C/Dは、1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂の重量Eと金属酸化物の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。

0181

中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、中間層15を形成する場合にも多く利用されている。

0182

中間層15の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。中間層15の膜厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層15として機能しなくなり、導電性基体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性基体11からの感光層14への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層14の帯電性の低下が生じる。中間層15の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層15を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層15の形成が困難になるとともに、中間層15上に感光層14を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するので好ましくない。したがって、中間層15の膜厚の好適な範囲を、0.01μm以上、20μm以下とした。

0183

なお、本実施の形態においても、感光層14の各層12,13には、実施の第1形態と同様に、可塑剤、レベリング剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子、電子受容物質もしくは色素などの増感剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。

0184

図3は、本発明の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の電子写真感光体3は、実施の第2形態の電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。

0185

電子写真感光体3において注目すべきは、感光層140が、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単一の層で構成されていることである。すなわち、電子写真感光体3が、単層型感光体であることである。

0186

本実施の形態の単層型感光体3は、オゾン発生の少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また塗布されるべき感光層140が一層のみであるので、製造原価および歩留が実施の第1形態および第2形態の積層型感光体1,2に比べて優れている。

0187

なお、本実施の形態においても、感光層140には、実施の第1形態による感光層14と同様に、可塑剤、レベリング剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子、電子受容物質もしくは色素などの増感剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤などの各種添加剤を添加してもよい。

0188

感光層140は、実施の第1形態の電子写真感光体1に設けられる電荷輸送層13と同様の方法で形成される。たとえば、前述の電荷発生物質と、前記一般式(1)、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を含む電荷輸送物質と、バインダ樹脂と、必要な場合には前述の添加剤とを、前述の電荷輸送層用塗布液と同様の適当な溶剤に溶解または分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法などによって中間層15の表面に塗布することによって、感光層140を形成することができる。

0189

感光層140における前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の重量A’とバインダ樹脂の重量B’との比率A’/B’は、実施の第1形態の電荷輸送層13における前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比率A/Bと同様の理由から、10/30以上10/12以下であることが好ましい。

0190

感光層140の膜厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。感光層140の膜厚が5μm未満であると、帯電保持能が低下する。感光層140の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する。したがって、感光層140の膜厚の好適な範囲を、5μm以上、100μm以下とした。

0191

以上のように構成される本発明の実施の第1形態〜第3形態の感光体1,2,3の表面、すなわち感光層14,140表面の表面自由エネルギー(γ)は、拡張Forkes理論によって算出される値が、20.0mN/m以上、35.0mN/m以下、好ましくは28.0mN/m以上、35.0mN/m以下になるように制御設定される。

0192

表面自由エネルギー(γ)が20.0mN/m未満では、トナーなどの異物の感光体への付着力の減少による弊害が顕著になる。弊害の一つは、トナーなどの異物の感光体への付着力の減少に伴い、トナーの記録紙への転写率が向上して、クリーニングブレードへ向かう残留トナーが減少することである。この結果、クリーニングブレードが感光体表面に充分に押圧されず、クリーニングブレードの反転および感光体表面にトナーがすじ状に残留するいわゆるブレードスキップマークが発生し、黒すじの発生などの画質の低下を招く。また付着力の減少に伴い、トナー飛散加速されるので、飛散したトナーが画像形成装置内部および感光体表面に付着しやすくなり、記録紙の表面または裏面に、飛散したトナーによる影響、たとえば画像のかぶりなどが生じるようになる。表面自由エネルギー(γ)が35.0mN/mを超えると、トナーおよび紙粉などの異物の感光体表面に対する付着力が増大するので、これらの異物がクリーニングブレードに引っ掛かることによって感光体表面が傷付き易くなり、この表面傷に起因してクリーニング性が悪化する。したがって、表面自由エネルギー(γ)を20.0mN/m以上、35.0mN/m以下とした。

0193

感光体表面の表面自由エネルギー(γ)の前記範囲への制御設定は、以下のようにして行われる。比較的低い表面自由エネルギー値を有する材料、たとえばポリテトラフルオロエチレン(略称PTFE)を代表とするフッ素系材料ポリシロキサン系材料などを、感光層14または感光層140に導入し、その含有量を調整することによって実現できる。また感光層14または感光層140に含まれる電荷発生物質、電荷輸送物質およびバインダ樹脂の種類、これらの組成比を変化させることによっても実現できる。また感光層14または感光層140を形成する際の乾燥温度を調整することによっても実現できる。なお、必要に応じて感光層14,140の上に、樹脂などから成る表面保護層を設ける場合には、表面保護層の主たる成分である樹脂の種類を変化させたり、表面保護層用塗布液を塗布した後の乾燥温度を調整したりすることによって、感光体表面の表面自由エネルギー(γ)の調整を実現することができる。

0194

感光体1,2,3は、前述のように、前記一般式(1)、好ましくは前記一般式(2)で示される電荷輸送能力の高いエナミン化合物を電荷輸送物質として電荷輸送層13または感光層140に含有するので、感度および光応答性を低下させることなく、感光体表面の表面自由エネルギー(γ)を前記範囲に制御設定することができる。したがって、電気特性、クリーニング性能および環境安定性のいずれにも優れる感光体1,2,3が実現される。特に、実施の第1形態の感光体1および実施の第2形態の感光体2のように、感光層14を複数層が積層されて構成される積層型にすることによって、各層を構成する材料およびその組合せの自由度が増すので、感光体表面の表面自由エネルギー値を所望の範囲に設定することが容易になる。

0195

このようにして制御設定される感光体表面の表面自由エネルギー(γ)は、前述のように表面自由エネルギーの双極子成分、分散成分および水素結合成分が既知である試薬を使用し、その試薬との付着性を測定することによって求められる。具体的には、試薬に純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンを使用し、接触角計CA−X(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、感光体表面に対する接触角を測定し、測定結果に基づき表面自由エネルギー解析ソフトEG−11(商品名;協和界面株式会社製)を用いて各成分の表面自由エネルギーを算出することができる。なお試薬は、前述の純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレンに限定されるものではなく、双極子成分、分散成分、水素結合成分が適宜な組合せの試薬を用いてもよい。また測定方法も、前述の方法に限定されるものではなく、たとえばウィルヘルミ法つり板法)またはドゥ・ヌイ法などが用いられてもよい。

0196

なお、本発明の電子写真感光体は、前述の図1図3に示す実施の第1形態〜第3形態の電子写真感光体1,2,3の構成に限定されるものではなく、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を感光層に含有し、かつ感光体表面の表面自由エネルギー(γ)が前記範囲に設定されるものであれば、他の異なる構成であってもよい。

0197

図4は、本発明の実施の第4の形態である画像形成装置30の構成を簡略化して示す配置側面図である。図4に示す画像形成装置30は、本発明の実施の第1形態の感光体1を搭載するレーザプリンタである。以下図4を参照してレーザプリンタ30の構成および画像形成動作について説明する。なお図4に記載のレーザプリンタ30は、本発明の例示であり、以下の記載内容によって本発明の画像形成装置が限定されるものではない。

0198

画像形成装置であるレーザプリンタ30は、感光体1、半導体レーザ31、回転多面鏡32、結像レンズ34、ミラー35、帯電手段であるコロナ帯電器36、現像手段である現像器37、転写紙カセット38、給紙ローラ39、レジストローラ40、転写手段である転写帯電器41、分離帯電器42、搬送ベルト43、定着手段である定着器44、排紙トレイ45およびクリーニング手段であるクリーナ46を含んで構成される。半導体レーザ31、回転多面鏡32、結像レンズ34およびミラー35は、露光手段49を構成する。

0199

感光体1は、図示しない駆動手段によって矢符47の方向に回転可能なようにレーザプリンタ30に搭載される。半導体レーザ31から出射されるレーザビーム33は、回転多面鏡32によって感光体1の表面に対してその長手方向(主走査方向)に繰返し走査される。結像レンズ34は、f−θ特性を有し、レーザビーム33をミラー35で反射させて感光体1の表面に結像させて露光させる。感光体1を回転させながらレーザビーム33を前述のように走査して結像させることによって、感光体1の表面に画像情報に対応する静電潜像が形成される。

0200

前述のコロナ帯電器36、現像器37、転写帯電器41、分離帯電器42よびクリーナ46は、矢符47で示す感光体1の回転方向上流側から下流側に向ってこの順序で設けられる。コロナ帯電器36は、レーザビーム33の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられ、感光体1の表面を均一に帯電させる。したがって、レーザビーム33が、均一に帯電された感光体1表面を露光することになり、レーザビーム33によって露光された部位の帯電量と露光されなかった部位の帯電量とに差異が生じて前述の静電潜像が形成される。

0201

現像器37は、レーザビーム33の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられ、感光体1表面に形成された静電潜像にトナーを供給し、静電潜像をトナー画像として現像する。転写紙カセット38に収容される転写紙48は、給紙ローラ39によって1枚ずつ取出され、レジストローラ40によって感光体1への露光と同期して転写帯電器41に与えられる。転写帯電器41によって、トナー画像が転写紙48に転写される。転写帯電器41に近接して設けられる分離帯電器42は、トナー画像が転写された転写紙48を除電して感光体1から分離する。

0202

感光体1から分離された転写紙48は、搬送ベルト43によって定着器44に搬送され、定着器44によってトナー画像が定着される。このようにして画像が形成された転写紙48は、排紙トレイ45に向けて排紙される。なお分離帯電器42によって転写紙48が分離された後、さらに回転を続ける感光体1は、その表面に残留するトナーおよび紙粉などの異物がクリーナ46によって清掃される。クリーナ46によってその表面が清掃された感光体1は、クリーナ46と共に設けられる図示しない除電ランプによって除電された後、さらに回転され、前述の感光体1の帯電から始まる一連の画像形成動作が繰返される。

0203

レーザプリンタ30に備わる感光体1の表面は、表面自由エネルギーが前述の好適な範囲に設定されているので、レーザプリンタ30による画像形成において、トナー画像を形成するトナーは、感光体1表面から転写紙48上へ容易に移行転写されて残留トナーが発生しにくく、また転写時に接触する転写紙48の紙粉なども感光体1表面に付着しにくい。また感光体1表面に付着したトナーおよび紙粉などの異物は、トナー画像を転写後の感光体1表面を清掃するために設けられるクリーナ46のクリーニングブレードによって容易に除去される。したがって、クリーニングブレードの研磨能力を弱く設定することができ、またクリーニングブレードの感光体1表面に対する当接圧力も小さく設定することができるので、感光体1の寿命が延長される。さらに、クリーニング後の感光体1表面は、トナーおよび紙粉などの異物の付着が無く、常に清浄な状態に保たれるので、画質の良好な画像を長期間安定して形成することが可能である。

0204

またレーザプリンタ30に備わる感光体1は、前述のように前記一般式(1)で示されるエナミン化合物、好ましくは前記一般式(2)で示されるエナミン化合物を感光層14に含有し、電気特性および環境安定性にも優れるので、レーザプリンタ30は、たとえば低温低湿環境下においても高品質の画像を形成することが可能である。

0205

したがって、本実施の形態の画像形成装置であるレーザプリンタ30では、各種の環境下において、長期間に亘り安定して画質低下のない画像形成が可能である。また感光体1の寿命は長く、クリーナ46も簡易な構成で済むことから、低コストでメンテナンス頻度の少ない画像形成装置30が実現される。また感光体1の電気特性は、光に曝されても低下しないので、メンテナンス時などに感光体1が光に曝されることに起因する画質の低下が抑えられる。

0206

以上に述べた本実施の形態の画像形成装置であるレーザプリンタ30は、前述の図4に示す構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。

0207

たとえば、感光体の外径が40mm以下の場合には、分離帯電器42を設けなくてもよい。また感光体1を、コロナ帯電器36、現像器37およびクリーナ46のうちの少なくともいずれか1つと一体的に構成して、プロセスカートリッジとしてもかまわない。たとえば、感光体1とコロナ帯電器36と現像器37とクリーナ46とを組込んだプロセスカートリッジ、感光体1とコロナ放電器36と現像器37とを組込んだプロセスカートリッジ、感光体1とクリーナ46とを組込んだプロセスカートリッジ、感光体1と現像器37とを組込んだプロセスカートリッジなどの構成にすることができる。このようないくつかの部材を一体化したプロセスカートリッジを用いることによって、装置の保守管理が容易になる。

0208

また、帯電器としては、コロナ帯電器36に限定されることなく、コロトロン帯電器スコロトロン帯電器鋸歯帯電器ローラ帯電器などを用いることができる。現像器37としては、接触式および非接触式のうち少なくともいずれか一方を用いてもかまわない。クリーナ46としては、ブラシクリーナなどを用いてもかまわない。また現像バイアスなどの高圧をかけるタイミングなどを工夫することによって、除電ランプを省く構成としてもよい。特に感光体の直径が小さいもの、低速のローエンドプリンタなどでは、除電ランプが設けられないものが多い。

0209

以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明は、以下の記載内容に限定されるものではない。

0210

[製造例]
以下、前記一般式(1)で示されるエナミン化合物の製造例について説明する。

0211

(製造例1)例示化合物No.1の製造
(製造例1−1)エナミン中間体の製造
トルエン100mLに、下記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)と、下記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)と、DL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)とを加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させて系外に取除きながら、6時間反応を行った。反応終了後反応溶液を10分の1(1/10)程度に濃縮し、激しく撹拌されているヘキサン100mL中に徐々に滴下し、結晶を生成させた。生成した結晶を濾別し、冷エタノール洗浄することによって、淡黄色粉末状化合物36.2gを得た。

0212

0213

0214

得られた化合物を液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid Chromatography−
Mass Spectrometry;略称:LC−MS)で分析した結果、下記構造式(10)で示されるエナミン中間体(分子量の計算値:411.20)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが412.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(10)で示されるエナミン中間体であることが判った(収率:88%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン中間体の純度は99.5%であることが判った。

0215

0216

以上のように、2級アミン化合物である前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミンと、アルデヒド化合物である前記構造式(9)で示されるジフェニルアセトアルデヒドとの脱水縮合反応を行うことによって、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体を得ることができた。

0217

(製造例1−2)エナミン−アルデヒド中間体の製造
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL中に、氷冷下、オキシ塩化リン9.2g(1.2当量)を徐々に加え、約30分間攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、製造例1−1で得られた前記構造式(10)で示されるエナミン中間体20.6g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、80℃を保つように加熱しながら3時間攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4規定(4N)−水酸化ナトリウム水溶液800mL中に徐々に加え、沈殿を生じさせた。生じた沈殿を濾別し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶媒再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物20.4gを得た。

0218

得られた化合物をLC−MSで分析した結果、下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体(分子量の計算値:439.19)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが440.5に観測されたことから、得られた化合物は下記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体であることが判った(収率:93%)。また、LC−MSの分析結果から、得られたエナミン−アルデヒド中間体の純度は99.7%であることが判った。

0219

0220

以上のように、前記構造式(10)で示されるエナミン中間体に対して、ビルスマイヤー反応によるフォルミル化を行うことによって、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を得ることができた。

0221

(製造例1−3)例示化合物No.1の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体8.8g(1.0当量)と、下記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネート6.1g(1.2当量)とを、無水DMF80mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶10.1gを得た。

0222

0223

得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物(分子量の計算値:539.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが540.5に観測された。

0224

また、得られた結晶の重クロロホルム(化学式:CDCl3)中における核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;略称:NMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.1のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図5は、製造例1−3の生成物の1H−NMRスペクトルを示す図であり、図6は、図5に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図7は、製造例1−3の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図8は、図7に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図9は、製造例1−3の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図10は、図9に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図5図10において、横軸化学シフト値δ(ppm)を示す。また図5および図6において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図5の参照符500で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。

0225

LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた結晶は、例示化合物No.1のエナミン化合物であることが判った(収率:94%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.1のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。

0226

以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と、Wittig試薬である前記構造式(12)で示されるジエチルシンナミルホスホネートとのWittig−Horner反応を行うことによって、表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物を得ることができた。

0227

(製造例2)例示化合物No.61の製造
前記構造式(8)で示されるN−(p−トリル)−α−ナフチルアミン23.3g(1.0当量)に代えて、N−(p−メトキシフェニル)−α−ナフチルアミン4.9g(1.0当量)を用いる以外は、製造例1と同様にして、脱水縮合反応によるエナミン中間体の製造(収率:94%)およびビルスマイヤー反応によるエナミン−アルデヒド中間体の製造(収率:85%)を行い、さらにWittig−Horner反応を行うことによって、黄色粉末状化合物7.9gを得た。なお、各反応において使用した試薬と基質との当量関係は、製造例1で使用した試薬と基質との当量関係と同様である。

0228

得られた化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物(分子量の計算値:555.26)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが556.7に観測された。

0229

また、得られた化合物の重クロロホルム(CDCl3)中におけるNMRスペクトルを測定したところ、例示化合物No.61のエナミン化合物の構造を支持するスペクトルが得られた。図11は、製造例2の生成物の1H−NMRスペクトルを示す図であり、図12は、図11に示すスペクトルの6ppm〜9ppmを拡大して示す図である。図13は、製造例2の生成物の通常測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図14は、図13に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。図15は、製造例2の生成物のDEPT135測定による13C−NMRスペクトルを示す図であり、図16は、図15に示すスペクトルの110ppm〜160ppmを拡大して示す図である。なお、図11図16において、横軸は化学シフト値δ(ppm)を示す。また図11および図12において、シグナルと横軸との間に記載されている値は、図11の参照符501で示されるシグナルの積分値を3としたときの各シグナルの相対的な積分値である。

0230

LC−MSの分析結果およびNMRスペクトルの測定結果から、得られた化合物は、例示化合物No.61のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.61のエナミン化合物の純度は99.0%であることが判った。

0231

以上のように、脱水縮合反応、ビルスマイヤー反応およびWittig−Horner反応の3段階の反応を行うことによって、3段階収率73.5%で、表9に示す例示化合物No.61のエナミン化合物を得ることができた。

0232

(製造例3)例示化合物No.46の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)と、下記構造式(13)で示されるWittig試薬1.53g(1.2当量)とを、無水DMF15mLに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド0.71g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を取除いた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶2.37gを得た。

0233

0234

得られた結晶をLC−MSで分析した結果、目的とする表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物(分子量の計算値:565.28)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが566.4に観測されたことから、得られた結晶は、例示化合物No.46のエナミン化合物であることが判った(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた例示化合物No.46のエナミン化合物の純度は99.8%であることが判った。

0235

以上のように、前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体と前記構造式(13)で示されるWittig試薬とのWittig−Horner反応を行うことによって、表7に示す例示化合物No.46のエナミン化合物を得ることができた。

0236

(比較製造例1)下記構造式(14)で示される化合物の製造
製造例1−2で得られた前記構造式(11)で示されるエナミン−アルデヒド中間体2.0g(1.0当量)を無水THF15mLに溶解させ、その溶液中に、アリブロマイド金属マグネシウムとから調製したグリニヤール試薬であるアリルマグネシウムブロマイドのTHF溶液モル濃度:1.0mol/L)5.23mL(1.15当量)を0℃で徐々に加えた。0℃で0.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーによって反応の進行状況を確認したところ、明確な反応生成物は確認できず、複数の生成物が確認された。常法により、後処理、抽出、濃縮を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、反応混合物の分離、精製を行った。

0237

しかしながら、目的とする下記構造式(14)で示される化合物を得ることはできなかった。

0238

0239

[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。まず、直径:30mm、長さ:340mmのアルミニウム製導電性基体上に種々の条件にて感光層を形成し、実施例および比較例として準備した感光体について説明する。

0240

(実施例1)
酸化チタン(TTO55A:石原産業社製)7重量部および共重合ナイロン(CM8000:東レ社製)13重量部を、メタノール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性基体を浸漬後引上げ、自然乾燥して層厚1μmの中間層を形成した。

0241

次いで、電荷発生物質としてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶型のオキソチタニウムフタロシアニン結晶2重量部と、ブチラール樹脂積水化学社製エスレックBM−2)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散して電荷発生層用塗布液を調製した。この塗布液を、中間層の場合と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した中間層上に塗布し、自然乾燥して層厚0.4μmの電荷発生層を形成した。

0242

次いで、電荷輸送物質として前述の表1に示す例示化合物No.1のエナミン化合物5重量部と、バインダ樹脂としてポリエステル樹脂Vylon290(東洋紡株式会社製)2.4重量部およびポリカーボネート樹脂G400(出光興産株式会社製)5.6重量部と、酸化防止剤としてスミライザーHT(住友化学株式会社製)0.05重量部とを混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度130℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、実施例1の感光体を作製した。

0243

(実施例2〜6)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、表1に示す例示化合物No.3、表9に示す例示化合物No.61、表16に示す例示化合物No.106、表21に示す例示化合物No.146または表26に示す例示化合物No.177のエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6の感光体を作製した。

0244

(実施例7)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂G400(出光興産株式会社製)8.0重量部のみを用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感光体を作製した。

0245

(実施例8)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂として、2種類のポリカーボネート樹脂、G400(出光興産株式会社製)4.0重量部およびGH503(出光興産株式会社製)4.0重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感光体を作製した。

0246

(実施例9,10)
実施例1と同様にして中間層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層の形成に際し、ポリカーボネート樹脂の一部に代えて、表面自由エネルギー(γ)の低い樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いる以外は、実施例1と同様にして、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、実施例9および実施例10の感光体を作製した。

0247

なお、実施例9および実施例10の感光体は、電荷輸送層用塗布液中におけるPTFEの含有比率が、実施例10の感光体の方が実施例9の感光体よりも大きくなるようにして、実施例10の感光体のγが、実施例9の感光体のγよりも小さくなるようにそれぞれ作製した。

0248

(比較例1)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、下記構造式(15)で示されるエナミン化合物(以下、比較化合物Aと称する)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感光体を作製した。なお、比較化合物Aは、前記一般式(1)において、エナミン骨格を構成する窒素原子(N)に結合するナフチレン基を、他のアリーレン基に置換した化合物に相当する。

0249

0250

(比較例2)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、下記構造式(16)で示されるエナミン化合物(以下、比較化合物Bと称する)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感光体を作製した。なお、比較化合物Bは、前記一般式(1)において、nが0であり、かつAr3が複素環基以外の基である化合物に相当する。

0251

0252

(比較例3)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、下記構造式(17)で示されるエナミン化合物(以下、比較化合物Cと称する)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感光体を作製した。なお、比較化合物Cは、前記一般式(1)において、エナミン骨格を構成する窒素原子(N)に結合するナフチレン基を、他のアリーレン基に置換した化合物に相当する。

0253

0254

(比較例4)
実施例1と同様にして中間層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、下記構造式(18)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimer;略称:TPD)を用いる以外は、実施例1と同様にして、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、比較例4の感光体を作製した。なお以下では、下記構造式(18)で示されるTPDを比較化合物Dと称する。

0255

0256

(比較例5)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、例示化合物No.1のエナミン化合物に代えて、下記構造式(19)で示されるブタジエン系化合物(以下、比較化合物Eと称する)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感光体を作製した。

0257

0258

(比較例6)
実施例1と同様にして中間層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂として、ポリエステル樹脂Vylon290(東洋紡株式会社製)1.6重量部と、2種類のポリカーボネート樹脂、G400(出光興産株式会社製)2.4重量部およびTS2020(帝人化成株式会社製)4重量部とを用いる以外は、実施例1と同様にして、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、比較例6の感光体を作製した。

0259

(比較例7)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂TS2050(帝人化成株式会社製)8.0重量部のみを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感光体を作製した。

0260

(比較例8)
電荷輸送層の形成に際し、バインダ樹脂として、ポリカーボネート樹脂J500(出光興産株式会社製)8.0重量部のみを用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感光体を作製した。

0261

(比較例9)
実施例1と同様にして中間層および電荷発生層を形成した。次いで、電荷輸送層の形成に際し、ポリカーボネート樹脂の一部に代えて、表面自由エネルギー(γ)の低い樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いる以外は、実施例1と同様にして、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を、浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥して層厚28μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、比較例9の感光体を作製した。

0262

以上のように、実施例1〜10および比較例1〜9の各感光体作製において、電荷輸送層用塗布液に含まれる電荷輸送物質の種類、ならびにバインダ樹脂の種類および含有量を変化させるとともに、塗布後の乾燥温度を変化させることによって、感光体表面の表面自由エネルギー(γ)が所望の値になるように調整した。これらの実施例1〜10および比較例1〜9の感光体表面のγは、接触角測定機CA−X(協和界面株式会社製)および解析ソフトEG−11(協和界面株式会社製)によって求めた。

0263

市販のデジタル複写機AR−450(シャープ株式会社製)を、感光体回転数が毎分165.5回転、レーザ光による露光から現像までの時間が60ミリ秒になるように改造した試験用複写機に、実施例1〜10および比較例1〜9の各感光体をそれぞれ装着し、各感光体のクリーニング性、画質安定性、表面粗さおよび電気特性の評価試験を行った。なお、前述のデジタル複写機AR−450は、感光体表面の帯電を負帯電プロセスで行う負帯電型の画像形成装置である。次に、各性能の評価方法について説明する。

0264

[クリーニング性]
クリーニング性の評価は、温度:25℃、相対湿度:50%の常温常湿(N/N:
Normal Temperature/Normal Humidity)環境下および温度:5℃、相対湿度:20%の低温/低湿(L/L:Low Temperature/Low Humidity)環境下のそれぞれの環境下において、以下のようにして行なった。

0265

試験用複写機に備わるクリーナのクリーニングブレードが感光体に当接する当接圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を初期線圧で21gf/cmに調整した。この複写機を用い、印字率6%の文字テスト原稿テスト紙SF−4AM3(シャープ株式会社製)に形成し、これを初期評価用画像とした。次いで、文字テスト原稿をテスト紙10万枚に形成した後、さらに文字テスト画像をテスト紙に形成し、これを10万枚の画像形成後の評価用画像とした。なお本実施例では、後述する他の評価試験においても、この文字テスト原稿およびテスト紙を共通して用いた。

0266

初期および10万枚の画像形成後の評価用画像を目視することによって、黒白2色の境界部の鮮明度感光体回転方向へのトナー漏れによる黒すじの有無を試験し、さらに後述の測定器によってかぶり量Wkを求めて、クリーニング性を評価した。評価用画像のかぶり量Wkは、日本電色工業株式会社製Z−Σ90 COLORMEASURING SYSTEMを用いて反射濃度を測定して求めた。まず画像形成前のテスト紙の反射平均濃度Wrを測定した。次にそのテスト紙に対して評価用画像を形成し、画像形成後、テスト紙の白地部分各所の反射濃度を測定した。最もかぶりの多いと判断された部分、すなわち白地部でありながら濃度の最も濃い部分の反射濃度Wsと、前記Wrとから以下の式{100×(Wr−Ws)/Wr}で求められるWkをかぶり量と定義した。

0267

クリーニング性の評価基準は以下のようである。
◎:非常に良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%未満。
○:良好。鮮明度良く黒すじ無し。かぶり量Wkが3%以上5%未満。
△:実使用上問題無し。鮮明度実使用上問題のないレベルであり黒すじの長さが2.0mm以下かつ5個以下。かぶり量Wkが5%以上10%未満。
×:実用不可。鮮明度実使用上問題あり。黒すじの上記△の範囲を超えるもの。かぶり量Wkが10%以上。

0268

[画質安定性]
前述のクリーニング性を評価する場合と同様にして10万枚の画像形成を行い、初期および10万枚の画像形成後の評価用画像について、テスト紙の印字部の反射濃度Drを、サカタインクス株式会社製Machbes RD918を用いて測定することによって、画質安定性の評価試験を行った。反射濃度Drと規定目標最低反射濃度Dsから以下の式(Dr−Ds=ΔD)で求められるΔDを画像濃度保証レベルと定義し、画像濃度保証レベルΔDによって画質安定性を評価した。

0269

画質安定性の評価基準は以下のようである。
◎:非常に良好。ΔDが0.3以上。
○:良好。ΔDが0.1以上0.3未満。
△:やや不良。ΔDが−0.2以上0.1未満。
×:不良。ΔDが−0.2よりもマイナス方向に大きい。

0270

[表面粗さ]
前述のクリーニング性を評価する場合と同様にして10万枚の画像形成を行い、画像形成終了後、株式会社東京精密社製SurfCom570Aを用いて、感光体表面の日本工業規格(JIS)B0601に規定される最大高さRmaxを測定した。画像形成終了後における最大高さRmaxの小さい方が、耐久性に優れるものと評価した。

0271

[電気特性]
試験用複写機から現像器を取外し、代わりに現像部位表面電位計トレック・ジャパン社製:model 344)を設けた。この複写機を用い、温度:25℃、相対湿度:50%の常温/常湿(N/N)環境下において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定した。また、レーザ光によって露光を施した場合の感光体の表面電位を露光電位VL(V)として測定し、これをN/N環境下における露光電位VLNとした。帯電電位V0の絶対値が大きい程、帯電性に優れると評価し、露光電位VLNの絶対値が小さい程、光応答性に優れると評価した。

0272

また、温度:5℃、相対湿度:20%の低温/低湿(L/L)環境下において、N/N環境下と同様にして、露光電位VL(V)を測定し、これをL/L環境下における露光電位VLLとした。N/N環境下における露光電位VLNと、L/L環境下における露光電位VLLとの差の絶対値を、電位変動ΔVL(=|VLL−VLN|)として求めた。電位変動ΔVLが小さい程、環境安定性に優れると評価した。

0273

[評価結果]
クリーニング性、画質安定性および表面粗さの評価結果のうち、N/N環境下における評価結果を表33に示し、L/L環境下における評価結果を表34に示す。また電気特性の評価結果を表35に示す。なお、表33〜表35には、感光体表面の表面自由エネルギー(γ)の測定結果も合わせて示す。

0274

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0277

表33および表34に示すクリーニング性の評価では、表面の表面自由エネルギーγが、本発明範囲すなわち20.0〜35.0mN/mの範囲内にある実施例1〜10および比較例1〜5の感光体は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、すべて良好(○)以上の評価であった。特にγが、28.0〜35.0mN/mの範囲内にある実施例1〜8および比較例1〜5の感光体は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、非常に良好(◎)の評価であった。

0278

これに対し、γが本発明範囲を小さい方に外れる比較例9の感光体では、黒すじおよびかぶりが多数発生し、クリーニング性の評価は悪かった。これは、γが小さくなり、トナー等の感光体への付着力が減少したことによる弊害であると考えられる。すなわち、一つには、トナー等の感光体への付着力の減少に伴い、トナーのテスト紙への転写率が向上して、クリーニングブレードへ向かう残留トナーが減少し、その結果、クリーニングブレードが反転したり、ブレードスキップマークが感光体に発生し、黒すじの発生などの画質の低下を招いたものと考えられる。また、トナー等の感光体への付着力の減少に伴い、トナー飛散が加速され、テスト紙の表面または裏面に飛散トナーが付着し、画像のかぶりが発生したものと考えられる。

0279

また、γが本発明範囲を大きい方に外れる比較例6〜8の感光体に対するクリーニング性の評価は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、初期には良好(○)以上であったけれども、10万枚の画像形成後には悪化した。またγの増大に伴ってクリーニング性の評価が悪化する傾向が見られた。これは、γが大きい程、トナーおよび紙粉などの異物の感光体への付着力が高いので、これらの異物がクリーニングブレードに引掛って感光体表面を傷付け、この感光体表面に発生する傷に起因してクリーニング性が悪化したものと考えられる。このクリーニング性の悪化は、L/L環境下において特に顕著であった。

0280

次に、画質安定性すなわち画像濃度保証レベルΔDの評価では、γが35.0mN/m以下であり、かつ電荷輸送物質として前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いた実施例1〜10および比較例9の感光体は、N/N環境下およびL/L環境下のいずれにおいても、10万枚の画像形成の前後を通じて充分な画像濃度が得られ、いずれも非常に良好(◎:ΔDが0.3以上)の評価であった。

0281

これに対し、電荷輸送物質として前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いているけれども、γが35.0mN/mを超える比較例6〜8の感光体では、10万枚の画像形成後に画像濃度保証レベルΔDの劣化がそれぞれ認められた。具体的には、比較例7および8の感光体は、初期には非常に良好(◎)の評価であったけれども、10万枚の画像形成後には画像濃度保証レベルΔDが劣化し、特にL/L環境下において劣化が顕著であった。また比較例6の感光体は、N/N環境下では10万枚の画像形成の前後を通じて非常に良好(◎)の評価であったけれども、L/L環境下では、10万枚の画像形成後に画像濃度保証レベルΔDの劣化が認められた。この画像濃度保証レベルΔDの劣化は、γの増大に伴って、感光体表面に対する異物の付着力が増大し、付着した異物により発生する傷等によって表面粗さが粗くなることに起因すると考えられる。すなわち、比較例6〜8の感光体では、γが大きいので、10万枚の画像形成後には感光体表面の最大高さRmaxが大きく、すなわち傷等によって表面粗さが粗くなり、画像形成のためのレーザ光が感光体表面で乱反射され、充分な露光量を得ることができず、画像濃度が低下したものと考えられる。

0282

また、γは本発明範囲にあるけれども、電荷輸送物質として比較化合物A、B、C、DまたはEを用いた比較例1〜5の感光体は、L/L環境下における画像濃度保証レベルΔDが、初期から不良(×:ΔDが−0.2よりもマイナス方向に大きい)であった。これは、比較例1〜5の感光体は、電気特性の環境安定性が、本発明に係る前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いた実施例1〜10および比較例9の感光体よりも劣るので、L/L環境下では充分な光応答性が得られず、10万枚の画像形成の前後を通じて規定目標最低反射濃度Dsから著しく劣る結果となったものと考えられる。

0283

次に、表面粗さの評価では、10万枚の画像形成終了後における感光体表面の最大高さRmaxの測定結果から、γが35.0mN/mを超える比較例6〜8の感光体は、γが35.0mN/m以下である実施例1〜10および比較例1〜5,9の感光体に比べて、表面粗さの粗いことが判る。特にγの増大に伴って、表面粗さの粗くなる傾向が顕著であった。このことから、γの増大に伴って、感光体表面に対する異物の付着力が増大し、付着した異物により発生する傷等によって表面粗さが粗くなることが確認された。

0284

表35に示す電気特性の評価では、電荷輸送物質として本発明に係る前記一般式(1)で示されるエナミン化合物を用いた実施例1〜6および比較例6〜9の感光体は、電荷輸送物質として比較化合物A、B、CまたはDを用いた比較例1〜4の感光体に比べ、N/N環境下における露光電位VLNの絶対値が小さく、光応答性に優れることが判った。また実施例1〜6および比較例6〜9の感光体は、電荷輸送物質として比較化合物A、B、C、DまたはEを用いた比較例1〜5の感光体に比べ、電位変動ΔVLの値が小さく環境安定性に優れ、L/L環境下においても充分な光応答性を有することが判った。このことから、前述のように比較例1〜5の感光体は、実施例1〜10および比較例9の感光体よりも電気特性の環境安定性に劣り、L/L環境下では充分な光応答性が得られないことが確認された。

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